JP2014095147A - ジンケート型亜鉛系めっき浴、ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤および亜鉛系めっき部材の製造方法 - Google Patents
ジンケート型亜鉛系めっき浴、ジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤および亜鉛系めっき部材の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】鎖式アルキルハライドおよび脂環式アルキルハライド、ならびにそれらのアルキルハライドにおける水素の少なくとも一つがアミノ基、ヒドロキシ基、オキシアルキレンエーテル基、アルキルカルボキシアルキル基、アリールカルボキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ホスホン酸またはアリール基で置換された化合物、ならびにアルカンサルトンからなる群から選ばれる一種または二種以上とニコチン酸アミドとの反応生成物(a)と、グリシジルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物とを反応させて得られる反応生成物(A)、および浴可溶性亜鉛含有物質を含有するジンケート型亜鉛系めっき浴。
【選択図】 図1
Description
なお、亜鉛系めっき部材とは、被めっき部材と、この被めっき部材の被めっき面上に積層された亜鉛系めっき皮膜とを備えた部材をいう。
(1)鎖式アルキルハライドおよび脂環式アルキルハライド、ならびにそれらのアルキルハライドにおける水素の少なくとも一つがアミノ基、ヒドロキシ基、オキシアルキレンエーテル基、アルキルカルボキシアルキル基、アリールカルボキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ホスホン酸またはアリール基で置換された化合物、ならびにアルカンサルトンからなる群から選ばれる一種または二種以上とニコチン酸アミドとの反応生成物(a)と、グリシジルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物とを反応させて得られる反応生成物(A)、および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。
1.ジンケート型亜鉛系めっき浴
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、ジンケート型のめっき浴であるから、液性はアルカリ性である。また、本実施形態の好ましい一例に係る亜鉛系めっき浴はシアン化物を含有せず、有害なシアンガスが発生しないため、作業性に優れ、環境に優しい。
(1−1)浴可溶性亜鉛含有物質
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、浴可溶性亜鉛含有物質を含有する。本明細書において浴可溶性亜鉛含有物質とは、亜鉛系めっき皮膜として析出する亜鉛の供給源であって、亜鉛の陽イオンおよびこれを含有する浴可溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。本実施形態に係る亜鉛系めっき浴はジンケート型の浴であるから、めっき浴はアルカリ性である。したがって、浴可溶性亜鉛含有物質の一例はジンケートイオン([Zn(OH)4]2−)である。
浴可溶性亜鉛含有物質をめっき浴に供給する原料物質(本発明において、「亜鉛源」ともいう。)として、酸化亜鉛が例示される。
本発明の一実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、当該めっき浴が亜鉛合金めっき浴である場合には、浴可溶性金属含有物質を含有する。本明細書において浴可溶性金属含有物質とは、亜鉛合金めっき皮膜に含有される亜鉛以外の金属の供給源であって、金属元素の陽イオンおよびこれを含有する浴可溶性物質からなる群から選ばれる一種または二種以上の成分をいう。浴可溶性金属含有物質に含有される金属元素として、鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンが例示される。好ましい一例において、金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる。
本実施形態に係るめっき浴は次に説明する反応生成物(A)を添加剤成分として含有し、必要に応じてさらに他の添加剤成分も含有する。
本実施形態に係るめっき浴は、鎖式アルキルハライドおよび脂環式アルキルハライド、ならびにそれらのアルキルハライドにおける水素の少なくとも一つがアミノ基、ヒドロキシ基、オキシアルキレンエーテル基、アルキルカルボキシアルキル基、アリールカルボキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ホスホン酸またはアリール基で置換された化合物、ならびにアルカンサルトンからなる群から選ばれる一種または二種以上(本明細書において、これらの化合物を「付加化合物」と総称する場合もある。)とニコチン酸アミドとの反応生成物(a)と、グリシジルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物とを反応させて得られる反応生成物(A)を添加剤成分の一つとして含有する。
付加化合物の具体例と、上記の反応生成物(a)に含有されるピリジニウムアミド化合物におけるピリジン環の窒素に結合する基との関係を示せば、次のとおりである。
付加化合物:エチレンクロルヒドリン → 得られる基:ヒドロキシエチル基
付加化合物:ヨウ化メチル → 得られる基:メチル基
付加化合物:ヨウ化エチル → 得られる基:エチル基
付加化合物:臭化プロピル → 得られる基:プロピル基
付加化合物:ブロモメチルシクロヘキサン → 得られる基:シクロヘキシルメチル基
付加化合物:クロロ酢酸メチル → 得られる基:メチルカルボキシメチル基
付加化合物:クロロ酢酸 → 得られる基:カルボキシメチル基
付加化合物:プロパンサルトン → 得られる基:スルホプロピル基
付加化合物:塩化ベンジル → 得られる基:ベンジル基
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、上記の反応生成物(A)以外の添加剤成分を含有してもよい。そのような添加剤成分またはめっき浴中で添加剤成分を与える材料として、次のようなものが例示される。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、添加剤成分の一種として一次光沢剤を含有してもよい。かかる一次光沢剤の例として、各種亜鉛めっき浴に使用されるアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、ポリアミン化合物および水溶性カチオン高分子化合物などの水溶性の有機化合物などを挙げることができる。
このポリアミン化合物および水溶性カチオン高分子化合物として、ポリアリルアミン、ポリエポキシポリアミン、ポリアミドポリアミン、およびポリアルキレンポリアミン、などが例示される。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴は、添加剤成分の一種として一次光沢剤を含有してもよい。特に、光沢性の向上とつきまわり性の向上の観点からは、二次光沢剤として、芳香族アルデヒドおよびピリジニウム化合物のうち少なくとも一方を含有してもよい。
二次光沢剤として機能することができる芳香族アルデヒドとしては、アニスアルデヒド、ベラトルアルデヒド、サリチルアルデヒド、バニリン、ピペロナール、およびp−ヒドロキシベンズアルデヒドなどを挙げることができる。光沢性の向上と亜鉛系めっき浴に含有される化合物の安定性の観点から、二次光沢剤として含有されることが好ましい芳香族アルデヒドとして、ベラトルアルデヒド、およびバニリンが例示される。
二次光沢剤として機能することができるピリジニウム化合物としては、ベンジルピリジニウムカルボキシレート(塩化3−カルボキシベンジルピリジニウム)、および塩化3−カルバモイルベンジルピリジニウムなどを挙げることができる。
「めっき促進剤」とは、めっき金属の析出を促進させる機能を有するものであって、被めっき面に吸着してその吸着した領域近傍で金属イオンの還元反応が生じることを促進しているものと推測される。
そのようなめっき促進剤として、チアジアゾール骨格を有する化合物であるチアジアゾール化合物が例示される。チアジアゾール骨格に含まれる3つの硫黄が被めっき面に化学吸着し、この化学吸着した領域での金属イオンの還元反応を促進している可能性がある。チアジアゾール化合物の具体例として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−チオ酢酸−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジチオ酢酸−1,3,4−チアジアゾール、2−ヒドロキシエチルチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジヒドロキシエチルチオ−1,3,4−チアジアゾール、エピクロルヒドリン改質2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、ビス(1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル)などが挙げられる。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴が亜鉛合金めっき浴である場合には、キレート剤を含有させてもよい。
キレート剤の具体例として、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、エチレンジアミン、ヘキサミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、トリアミノトリエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミノプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)などが例示される。このキレート剤は、例えばジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン化合物のように、一次光沢剤としての機能も有するキレート剤であってもよい。なお、キレート剤がカルボン酸など酸の部分構造を有する場合には、キレート剤はフリーの酸の形態として亜鉛合金めっき浴に添加されてもよいし、塩として添加されてもよい。あるいは、アルカリ性である亜鉛合金めっき浴中で加水分解されることにより酸イオンを形成しうる誘導体(例えばエステル)の形態で亜鉛合金めっき浴に添加されてもよい。
酸化防止剤として、フェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール等のヒドロキシフェニル化合物や、L−アスコルビン酸、ソルビトール等が例示される。なお、上記のキレート剤が還元性物質である場合には、そのキレート剤が酸化防止剤の機能を有しているため、酸化防止剤を含有させなくともよい。
消泡剤として、シリコーン系消泡剤や、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコール等の有機系消泡剤が例示される。
本実施形態に係るめっき浴の溶媒は水を主成分とする。水以外の溶媒としてアルコール、エーテル、ケトンなど水への溶解度が高い有機溶媒を混在させてもよい。この場合には、めっき浴全体の安定性および廃液処理への負荷の緩和の観点から、その比率は全溶媒に対して10体積%以下とすることが好ましい。
本実施形態に係る亜鉛系めっき浴の調製方法は特に限定されない。亜鉛めっき浴の場合には、アルカリ成分、亜鉛源および反応生成物(A)を含む成分(そのような成分の具体例として前述の反応生成物を含む液体が挙げられ、以下、この成分を「反応生成物(A)源」ともいう。)、ならびに必要に応じ任意添加成分として前述のその他の添加剤成分などを水などの溶媒に溶解させることによって調製することができる。亜鉛合金めっき浴の場合には、アルカリ成分、亜鉛源、金属源および反応生成物(A)源、ならびに必要に応じ任意添加成分として前述のその他の添加剤成分などを溶媒に溶解させることによって調製することができる。通常は、溶媒にアルカリ成分を添加し、続いて他の成分を添加することによって、作業性を低下させることなくかつ安全に亜鉛系めっき浴を調製することができる。
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は、上記の本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に含有される添加剤成分を含有する。すなわち、本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤は反応生成物(A)を含有し、必要に応じ、さらに、一次光沢剤、二次光沢剤、めっき促進剤などの他の添加剤成分を含有する。なお、前述のように、反応生成物(A)は高圧水銀灯のi線(波長365nm)が照射されたときに青色の発光を呈するため、ある添加剤が反応生成物(A)を含有しているか否かを、その添加剤に高圧水銀灯のi線を照射したときに青色の発光が観測されるか否かによって判定することができる。
本実施形態に係るジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤が反応生成物(A)以外の成分を含有する場合におけるそれらの含有量は、その添加剤の機能との関係で適宜設定されるべきものである。
亜鉛系めっき部材は、本実施形態に係る亜鉛系めっき浴に被めっき部材を浸漬させ、被めっき部材をカソード(陰極)として電解を行うことによって得ることができる。被めっき部材の材質は導電性を有する限り特に限定されない。鉄系材料などの金属系材料、および樹脂系材料やセラミックス系材料などからなる導電性を有さない材料の表面に無電解めっきなどにより導電性材料からなる層が形成されたものが例示される。被めっき部材の形状も特に限定されない。板材や棒材、線材などの一次加工品、ねじ、ボルト、プレス加工品などの二次加工品が挙げられる。
なお、アノード(陽極)を構成する材料は特に限定されない。通常は、安価で入手しやすい鉄系材料が用いられる。
[実施例1]
(1)反応生成物(A1)源の製造
ニコチン酸アミド97.7g(0.8mol)と水168.6gを容量が1000mlの三つ口フラスコに入れ攪拌し、このフラスコ内にエチレンクロロヒドリン70.9g(0.88mol)を投入した。投入後フラスコ内の液温を100℃に維持して4時間攪拌し、その後、フラスコ内の液を攪拌しながら放冷して液温を35℃まで低下させた後、フラスコ内にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを主成分とする水溶液(四日市合成社製「カチオマスター(登録商標)G」、73%純分)166.7g(0.8mol)、水76.7mlを添加し撹拌した。続いて、フラスコ内の液温を65℃に調整し2時間環流して得られた反応物(以下、「反応生成物(A1)」ともいう。)を含む液体をめっき浴添加剤の一種として用いた。この液体は反応生成物(A)源の一種であり、以下、「反応生成物(A1)源」ともいう。得られた反応生成物(A1)源は、収量580.6g、固形分(すなわち、反応生成物(A1)の含有量)50重量%の褐色液体であった。
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が12g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、上記の反応生成物(A1)源を、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量が1.0g/Lとなる量(すなわち、反応生成物(A1)源としては2.0g/L)、およびN,N’−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル尿素]と1,1’−オキシビス[2−クロロエタン]とのポリマー(ローディア日華社製「MIRAPOL WT」、以下、「ポリマー1」という。)を、ポリマー1に基づきめっき浴中に形成されるカチオンポリマー(以下、「カチオンポリマー1」という。)の含有量が2g/Lとなる量、純水からなる溶媒に溶解させて、浴可溶性亜鉛含有物質および化合物(A1)を含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛めっき浴を調製した。
スターラー回転数1000rpmの液循環型ハルセル試験器(山本めっき試験器社製:スマートハルセルB−53−SM)を用意した。この試験器のめっき槽内の所定の位置に、縦45mm、横45mm、厚さ1mmのアノードとしての鉄板、および縦67mm、横100mm、厚さ0.3mmの被めっき部材(カソード)としての鉄板を配置した。めっき槽内に上記のめっき浴を液面が所定の高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の電解条件で電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
電流:1A
通電時間:10分
めっき浴温度:25℃
上記の電流では、カソードの電流密度は0.1A/dm2から5A/dm2の範囲であった。
実施例1に係るめっき浴の調製にあたり、上記の反応生成物(A1)源の配合量を変更して、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量を5.0g/Lとした以外は、実施例1と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
実施例1に係るめっき浴の調製にあたり、上記の反応生成物(A1)源の配合量を変更して、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量を10g/Lとした以外は、実施例1と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
実施例1に係るめっき浴の調製にあたり、反応生成物(A1)源に代えて、ベンジルピリジニウムカルボキシレート(BPC)の塩酸塩を配合し、その添加量をめっき浴中に形成されるBPCの含有量が0.24g/Lとなる量とした以外は、実施例1と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
比較例1に係るめっき浴の調製にあたり、BPCの塩酸塩の配合量を変更して、BPCの含有量を1.2g/Lとした以外は、比較例1と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
比較例1に係るめっき浴の調製にあたり、BPCの塩酸塩の配合量を変更して、BPCの含有量を2.4g/Lとした以外は、比較例1と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
(1)亜鉛合金めっき浴の調製
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が10g/Lとなる量、ニッケル源としての硫酸ニッケルを、これに由来する浴可溶性ニッケル含有物質のめっき浴中のニッケル換算含有量が1.5g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、キレート剤としてのテトラエチレンペンタミン(TEPA)を、めっき浴の含有量が15g/Lとなる量、および反応生成物(A1)源を、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量が1.0g/Lとなる量、純水からなる溶媒に溶解させて、浴可溶性亜鉛含有物質、浴可溶性ニッケル含有物質、反応生成物(A1)およびTEPAを含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛−ニッケル合金めっき浴を調製した。
スターラー回転数1000rpmの液循環型ハルセル試験器(山本めっき試験器社製:スマートハルセルB−53−SM)を用意した。この試験器のめっき槽内の所定の位置に、縦45mm、横45mm、厚さ1mmのアノードとしての鉄板、および縦67mm、横100mm、厚さ0.3mmの被めっき部材(カソード)としての鉄板を配置した。めっき槽内に上記のめっき浴を液面が所定の高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の電解条件で電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
電流:1A
通電時間:10分
めっき浴温度:25℃
上記の電流では、カソードの電流密度は0.1A/dm2から5A/dm2の範囲であった。
実施例4に係るめっき浴の調製にあたり、反応生成物(A1)源の配合量を変更して、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量を5.0g/Lとした以外は、実施例4と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
実施例4に係るめっき浴の調製にあたり、反応生成物(A1)源の配合量を変更して、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量を10g/Lとした以外は、実施例4と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
実施例4に係るめっき浴の調製にあたり、反応生成物(A1)源に代えてベンジルピリジニウムカルボキシレート(BPC)の塩酸塩を配合して、めっき浴中に形成されるBPCの含有量が0.24g/Lとなる量とするとともに、カチオンポリマー1の含有量が0.001mol/Lとなる量のポリマー1をめっき浴に配合した以外は、実施例4と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
比較例4に係るめっき浴の調製にあたり、BPCの塩酸塩の配合量を変更して、BPCの含有量を1.2g/Lとした以外は、比較例4と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
比較例4に係るめっき浴の調製にあたり、BPCの塩酸塩の配合量を変更して、BPCの含有量を2.4g/Lとした以外は、比較例4と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
(1)亜鉛合金めっき浴の調製
実施例4に係るめっき浴の調製にあたり、反応生成物(A1)源の配合量を変更して、めっき浴中の反応生成物(A1)の含有量を0.5g/Lとした以外は、実施例4と同様の操作によりめっき浴を調製した。
(2)亜鉛合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材の作製
スターラー回転数450rpmの縦100mm、横100mm、高さ145mmのめっき槽を用意した。めっき槽内の所定の位置に、縦130mm、横65mm、厚さ1mmのアノードとしてのニッケル板を2枚、および縦50mm、横100mm、厚さ1mmの被めっき部材(カソード)としての鉄板をアノードの間に配置した。めっき槽内に上記のめっき浴を液面が130mmの高さとなるまで入れた。アノードおよびカソードをめっき電源に接続し、次の電解条件で電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
電流密度:2A/dm2
通電時間:19分
めっき浴温度:25℃
得られためっき皮膜の厚さは6〜7μmの範囲であった。
実施例4に係るめっき浴を用いて、実施例7と同じようにニッケル板に対して電気めっきを行って、厚さが6〜7μmの亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
(1)反応生成物(A2)の製造
ニコチン酸アミド97.7g(0.8mol)と水222.6gを容量が1000mlの三つ口フラスコに入れ攪拌し、このフラスコ内にヨウ化メチル124.9g(0.88mol)を投入した。投入後フラスコ内の液温を100℃に維持して4時間攪拌し、その後、フラスコ内の液を攪拌しながら放冷して液温を35℃まで低下させた後、フラスコ内にグリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを主成分とする水溶液(四日市合成社製「カチオマスター(登録商標)G」、73%純分)166.7g(0.8mol)、水76.7mlを添加し撹拌した。続いて、フラスコ内の液温を65℃に調整し2時間環流して得られた反応物(以下、「反応生成物(A2)」ともいう。)を含む液体をめっき浴添加剤の一種として用いた。この液体は反応生成物(A)源の一種であり、以下、「反応生成物(A2)源」ともいう。得られた反応生成物(A1)源は、収量688.6g、固形分(すなわち、反応生成物(A2)の含有量)50重量%の褐色液体であった。
亜鉛源としての酸化亜鉛を、これに由来する浴可溶性亜鉛含有物質のめっき浴中の亜鉛換算含有量が10g/Lとなる量、ニッケル源としての硫酸ニッケルを、これに由来する浴可溶性ニッケル含有物質のめっき浴中のニッケル換算含有量が1.5g/Lとなる量、アルカリ成分としての水酸化ナトリウムを、めっき浴1Lあたりの溶解量が120gとなる量、キレート剤としてのテトラエチレンペンタミン(TEPA)を、めっき浴の含有量が15g/Lとなる量、および反応生成物(A2)源を、めっき浴中の反応生成物(A2)の含有量が1.0g/Lとなる量、純水からなる溶媒に溶解させて、浴可溶性亜鉛含有物質、浴可溶性ニッケル含有物質、反応生成物(A2)およびTEPAを含有するアルカリ性のジンケート型亜鉛−ニッケル合金めっき浴を調製した。
上記のめっき浴を用いて、実施例7と同じようにニッケル板に対して電気めっきを行って、厚さが6〜7μmの亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
比較例4に係るめっき浴の調製にあたり、BPCの塩酸塩の配合量を変更して、BPCの含有量を0.12g/Lとした以外は、比較例4と同様の操作によりめっき浴を調製した。
得られためっき浴を用いて、実施例7と同じようにニッケル板に対して電気めっきを行って、厚さが6〜7μmの亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
実施例4に係るめっき浴の調製にあたり、下記のカチオンポリマー2から4の含有量が1.5g/Lとなる量の各ポリマーをめっき浴に配合したとした以外は、実施例4と同様の操作によりめっき浴の調製および電気めっきを行って、亜鉛−ニッケル合金めっき皮膜を有する亜鉛系めっき部材を得た。
カチオンポリマー2:尿素1モルとN,N−ジメチルアミノプロピルアミン2モルとエピクロロヒドリン1モルの反応物
カチオンポリマー3:尿素1モルとN,N−ジメチルアミノプロピルアミン1.5モルとエピクロロヒドリン1モルの反応物
カチオンポリマー4:尿素1モルとN,N−ジメチルアミノプロピルアミン1.5モルとエピクロロヒドリン0.6モル、ジクロロエチルエーテル0.8モルとの反応物
(1)めっき浴の外観評価
実施例4から6および比較例4から6により作製しためっき浴の外観を目視で観察して、その性状を評価した。評価結果を表1に示す。なお、表1中の「含有量(g/L)」の列に示される数値は、実施例4から6については反応生成物(A1)の含有量であり、比較例4から6についてはBPCの含有量である。
実施例および比較例により作製しためっき皮膜を有する部材のめっき面性状を、電気めっきを行った際に高電流密度であった側の端部(以下、「高電流密度側端部」という。)から10mmごとの位置で目視にて観察して、次の基準で評価した。
1:ほぼ鏡面の高光沢
2:光沢
3:半光沢
4:無光沢
5:気泡発生に基づく粗な面
評価結果を表2から3に示す。なお、表2および3中の「含有量(g/L)」の列に示される数値は、実施例1から6および10から12については反応生成物(A1)の含有量であり、比較例1から6についてはBPCの含有量である。
実施例および比較例により作製しためっき皮膜を有する部材のめっき皮膜の厚さ(単位:μm)を、高電流密度側端部から10mmごとの位置で、蛍光X線膜厚計(SII社製:SFT−9200)により測定した。
測定結果を表4から6ならびに図1に示す。
実施例4から6および10から12ならびに比較例4から6により作製しためっき皮膜を有する部材のめっき皮膜におけるニッケルの共析率(単位:質量%)を、高電流密度側端部から10mmごとの位置で、蛍光X線膜厚計(SII社製:SFT−9200)により測定した。
測定結果を表7および8に示す。
実施例7から9および比較例7に係る亜鉛系めっき部材について、JASO M609に規定されるCCT(自動車部品外観腐食試験方法)に基づく耐食性試験を5サイクル行った。
(A)塩水噴霧
温度:35±1℃
塩水濃度:5±0.5%
その他はJIS Z2371:2000(ISO 9227:1990)に準拠した。
(B)乾燥
温度:60±1℃
相対湿度:20〜30%RH
(C)湿潤
温度:50±1℃
相対湿度:95%RH以上
(D)1サイクルの時間および内容
塩水噴霧2時間、乾燥4時間、湿潤2時間
各時間は、それぞれの移行時間(各条件に移行後、その条件の規定の温度および相対湿度に達するまでの時間)を含む。
(E)移行時間
噴霧から乾燥:30分以内
乾燥から湿潤:15分以内
湿潤から噴霧:30分以内(通常はこの移行時間は瞬時である。)
(F)試験片保持角度
原則として、試験片の評価対象面が垂直に対し15〜20°となるように保持する。
測定結果を表9に示す。
反応生成物(A1)源および反応生成物(A2)源、ならびに実施例1から9および比較例1から7に係るジンケート型亜鉛系めっき浴に高圧水銀灯(i線)を照射したところ、反応生成物(A1)または反応生成物(A2)を含有する、反応生成物(A1)源および反応生成物(A2)源ならびに実施例1から9に係るジンケート型亜鉛系めっき浴については、青色(450〜460nm)の発光が観測された。一方、比較例1から7に係るジンケート型亜鉛系めっき浴については青色の発光は確認されなかった。
Claims (8)
- 鎖式アルキルハライドおよび脂環式アルキルハライド、ならびにそれらのアルキルハライドにおける水素の少なくとも一つがアミノ基、ヒドロキシ基、オキシアルキレンエーテル基、アルキルカルボキシアルキル基、アリールカルボキシアルキル基、カルボキシアルキル基、ホスホン酸またはアリール基で置換された化合物、ならびにアルカンサルトンからなる群から選ばれる一種または二種以上とニコチン酸アミドとの反応生成物(a)と、グリシジルトリメチルアンモニウムのハロゲン化物とを反応させて得られる反応生成物(A)、および浴可溶性亜鉛含有物質を含有することを特徴とするジンケート型亜鉛系めっき浴。
- 前記反応生成物(A)を0.1g/L以上15g/L以下含有する請求項1に記載のめっき浴。
- シアン化物を含有しない請求項1または2に記載のめっき浴。
- 浴可溶性亜鉛含有物質を亜鉛換算で2g/L以上60g/L含有する請求項1から3のいずれか一項に記載のめっき浴。
- 浴可溶性金属含有物質をさらに含有し、
当該浴可溶性金属含有物質に含まれる金属元素は鉄、ニッケル、コバルトおよびマンガンからなる群から選ばれる一種または二種以上である請求項1から4のいずれか一項に記載のめっき浴。 - 請求項1に記載される反応生成物(A)を含有するジンケート型亜鉛系めっき浴用添加剤。
- 被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に積層された亜鉛系めっき皮膜とを備えた亜鉛系めっき部材の製造方法であって、
請求項1から5のいずれかに記載されるジンケート型亜鉛系めっき浴を用い、当該めっき浴に含有される前記反応生成物(A)の含有量を0.0001mol/L以上0.05mol/L以下の範囲に管理しながらめっきすることを特徴とする亜鉛系めっき部材の製造方法。 - 被めっき部材と、該被めっき部材の被めっき面上に積層された亜鉛合金めっき皮膜とを備えた亜鉛合金めっき部材の製造方法であって、
請求項5に記載されるジンケート型亜鉛系めっき浴であって浴可溶性ニッケル含有物質を含有するジンケート型亜鉛合金めっき浴を用い、
前記ジンケート型亜鉛合金めっき浴から得られた亜鉛合金めっき皮膜におけるニッケルの共析率を12質量%以上20質量%以下とする亜鉛合金めっき部材の製造方法。
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