明 細 書
ハニカム構造体成形用口金、及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、ハニカム構造体成形用口金、及びその製造方法に関する。更に詳しく は、ハニカム構造体を高精度に成形することが可能なハニカム構造体成形用口金、 及びその製造方法に関する。
背景技術
[0002] セラミック質のハ-カム構造体の製造方法としては、従来から、成形原料 (坏土)を 導入する裏孔と、この裏孔に連通する格子状等のスリットとが形成された口金基体を 備えたハ-カム構造体成形用口金(以下、単に「口金」と 、うことがある)を用いて押 出成形する方法が広く行われている。この口金は、通常、口金基体の一方の面に、 ハ-カム構造体の隔壁厚さに対応する幅のスリットが格子状等に設けられており、そ の反対側の面 (他方の面)に、スリットと連通する裏孔が大きな面積で開口して設けら れている。そして、この裏孔は、通常、格子状等のスリットが交差する位置に対応して 設けられ、両者は、口金基体内部で連通している。したがって、裏孔から導入された セラミック原料等の成形原料は、比較的内径の大きな裏孔から、幅の狭いスリットへと 移行して、このスリットの開口部からハニカム構造の成形体 (ハニカム成形体)として 押出される。
[0003] このようなハ-カム構造体成形用口金を構成する口金基体としては、例えば、ステ ンレス合金や超硬合金等の一種類の合金から構成された板状部材や、また、異なる 二種類の板状部材、例えば、スリットを形成するための板状部材と裏孔を形成するた めの板状部材とを積層して接合させた口金基体が用いられて!/ヽる(例えば、特許文 献 1及び 2)。
[0004] 従来のハ-カム構造体成形用口金の製造方法においては、このような口金基体に
、上記したスリットと裏孔とを機械加工して形成して 、る。
[0005] 特許文献 1 :特開 2000— 326318号公報
特許文献 2:特開 2003 - 285308号公報
発明の開示
[0006] 上記したように異なる二種類の板状部材を接合させた口金基体を得る場合には、 予め一方の板状部材に、裏孔や、裏孔から導入した成形原料をスリットに滑らかに移 動させるためのスリットに対応した形状の溝部等を予め形成しておくことがある。
[0007] し力しながら、異なる二種類の板状部材を接合させた口金基体は、板状部材同士 の接合面に大きな残留応力が生じるため、予め一方の板状部材に形成した裏孔ゃ 溝部が、その残留応力によって変形してしまう。このため、このような口金基体を用い て製造されたハ-カム構造体成形用口金は成形精度が低いという問題があった。
[0008] また、上記したように変形した裏孔ゃ溝部は、板状部材同士の接合面に対して垂 直な方向に応力を生じさせるため、接合させた板状部材が剥離してしまう 、う問題 bあった。
[0009] 本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、ハ-カム構造体を高精度に 成形することが可能なハニカム構造体成形用口金、及びその製造方法を提供する。
[0010] 本発明は、以下のハ-カム構造体成形用口金、及びその製造方法を提供するもの である。
[0011] [1] 成形原料を導入するための裏孔が形成された第一の板状部材と、前記成形原 料を格子状に成形するためのスリットが形成された第二の板状部材と、を有する口金 基体を備えたハ-カム構造体成形用口金であって、前記第一の板状部材における 前記第二の板状部材との接合面側に、前記スリットに対応した形状の溝部が形成さ れており、前記溝部の深さ y (mm)が、下記式(1)を満足するものであるハ-カム構 造体成形用口金。
y≤a- (tl X El +t2 X E2) / (tl X t2 X El X E2) …(1)
(但し、 tlは前記第一の板状部材の厚み (mm)から前記溝部の深さ (mm)を引いた 厚み (mm)、E1は前記第一の板状部材の前記裏孔が形成された状態を考慮した見 かけの 25°Cにおける体積弾性率 (GPa)、 t2は前記第二の板状部材の厚み (mm)、 E2は前記第二の板状部材の 25°Cにおける体積弾性率 (GPa)、 aは前記第一の板 状部材と前記第二の板状部材とのそれぞれの熱膨張係数、前記第一の板状部材と 前記第二の板状部材とを接合する際の接合温度と常温との温度差、及び溝部の幅と
ピッチによって決定する係数である)
[0012] [2] 前記第二の板状部材が、炭化タングステン基超硬合金から構成されたものであ る前記 [1]に記載のハニカム構造体成形用口金。
[0013] [3] 前記第一の板状部材が、オーステナイト相の冷却によってマルテンサイト変態、 ベイナイト変態、及びパーライト変態力 なる群より選択される少なくとも一つの相変 態を起こし得る金属又は合金力 構成されたものである前記 [ 1]又は [2]に記載のハ 二カム構造体成形用口金。
[0014] [4] 第一の板状部材と第二の板状部材とを有する口金基体を備え、前記第一の板 状部材に成形原料を導入するための裏孔が形成され、且つ、前記第二の板状部材 に前記成形原料を格子状に成形するためのスリットが形成されたハ-カム構造体成 形用口金を製造するハニカム構造体成形用口金の製造方法であって、前記第一の 板状部材の一方の表面に、前記スリットに対応した形状の溝部を、前記溝部の深さ y (mm)が下記式(2)を満足するように形成し、その前記第一の板状部材の前記一方 の表面に前記第二の板状部材を積層して、前記第一の板状部材と前記第二の板状 部材とが接合された前記口金基体を得る工程を含むハ-カム構造体成形用口金の 製造方法。
y≤a- (tl X El +t2 X E2) / (tl X t2 X El X E2) · · · (2)
(但し、 tlは前記第一の板状部材の厚み (mm)から前記溝部の深さ (mm)を引いた 厚み (mm)、E1は前記第一の板状部材の前記裏孔が形成された状態を考慮した見 かけの 25°Cにおける体積弾性率 (GPa)、 t2は前記第二の板状部材の厚み (mm)、 E2は前記第二の板状部材の 25°Cにおける体積弾性率 (GPa)、 aは前記第一の板 状部材と前記第二の板状部材とのそれぞれの熱膨張係数、前記第一の板状部材と 前記第二の板状部材とを接合する際の接合温度と常温との温度差、及び溝部の幅と ピッチによって決定する係数である)
[0015] [5] 前記第二の板状部材として、炭化タングステン基超硬合金から構成されたもの を用いる前記 [4]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0016] [6] 前記第一の板状部材として、オーステナイト相の冷却によってマルテンサイト変 態、ベイナイト変態、及びパーライト変態力 なる群より選択される少なくとも一つの相
変態を起こし得る金属又は合金力 構成されたものを用いる前記 [4]又は [5]に記 載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0017] [7] 積層した前記第一の板状部材と前記第二の板状部材とを、前記第一の板状部 材がオーステナイト変態を起こす温度以上に加熱して、前記第一の板状部材と前記 第二の板状部材とを接合する前記 [6]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造 方法。
[0018] [8] 得られた前記口金基体を、前記少なくとも一つの相変態が開始される温度まで 降温して、前記第一の板状部材を構成する金属組織又は合金組織を相変態させる 前記 [6]又は [7]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0019] [9] 接合された前記第一の板状部材と前記第二の板状部材とを、 0. 1〜: L00°CZ minの降温速度にて、前記少なくとも一つの相変態が開始される温度まで降温する 前記 [6]〜 [8]の 、ずれかに記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0020] [10] 前記第一の板状部材と前記第二の板状部材とを積層する前に、前記第一の 板状部材に前記裏孔の少なくとも一部を形成する前記 [4]〜 [9]の 、ずれかに記載 のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0021] 本発明のハニカム構造体成形用口金は、ハニカム構造体を高精度に成形すること ができるとともに、板状部材を接合させた口金基体において、板状部材の接合面に おける剥離を低減することができる。
[0022] また、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法は、上述した本発明のハ- カム構造体成形用口金を簡便に製造することができる。
図面の簡単な説明
[0023] [図 1]本発明のハ-カム構造体成形用口金の一の実施の形態を模式的に示す斜視 図である。
[図 2]図 1に示す口金を平面 Aで切断した断面を示す断面図である。
[図 3]図 1に示す口金によって押出成形されたノ、二カム構造体を示す斜視図である。
[図 4]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の一の実施の形態における、 第一の板状部材に溝部を形成する工程の一例を示す説明図であり、図 2と同様の断 面を示している。
[図 5]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の一の実施の形態における、 第一の板状部材と第二の板状部材とを積層する工程の一例を示す説明図であり、図 2と同様の断面を示している。
[図 6]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の一の実施の形態における、 第二の板状部材にスリットを形成する工程の一例を示す説明図であり、図 2と同様の 断面を示している。
符号の説明
[0024] 1:ハ-カム構造体成形用口金(口金)、 5:スリット、 6:裏孔、 7:溝部、 12:ハ-カム構 造体、 13:隔壁、 14:セル、 22:口金基体、 23:第一の板状部材、 24:第二の板状部 材、 27:ろう材、 28:接合面 (第一の板状部材と第二の板状部材との接合面)。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、図面を参照して、本発明のハニカム構造体成形用口金(以下、単に「口金」と いうことがある)、及びその製造方法の実施の形態について詳細に説明するが、本発 明は、これに限定されて解釈されるものではなぐ本発明の範囲を逸脱しない限りに おいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良をカ卩ぇ得るものである。
[0026] まず、本発明のハ-カム構造体成形用口金の一の実施の形態について具体的に 説明する。図 1は、本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施の形態を模式 的に示す斜視図であり、図 2は、図 1に示す口金を平面 Aで切断した断面を示す断 面図である。
[0027] 図 1及び図 2に示すように、本実施の形態のハニカム構造体成形用口金 1は、成形 原料を導入するための裏孔 6が形成された第一の板状部材 23と、この成形原料を格 子状に成形するためのスリット 5が形成された第二の板状部材 24と、を有する口金基 体 22を備えたハ-カム構造体成形用口金 1である。
[0028] この本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金 1は、第一の板状部材 23におけ る第二の板状部材 24との接合面側に、スリット 5に対応した形状の溝部 7が形成され ており、この溝部の深さ y (mm)が、下記式(3)を満足するものである。
y≤a- (tlXEl+t2XE2)/(tlXt2XElXE2) · · · (3)
(但し、 tlは第一の板状部材 23の厚み (mm)から溝部 7の深さ (mm)を引いた厚み(
mm)、 Elは第一の板状部材 23の裏孔 6が形成された状態を考慮した見かけの 25 °Cにおける体積弾性率 (GPa)、 t2は第二の板状部材 24の厚み (mm)、 E2は第二 の板状部材 24の 25°Cにおける体積弾性率 (GPa)、 aは第一の板状部材 23と第二 の板状部材 24とのそれぞれの熱膨張係数、第一の板状部材 23と第二の板状部材 2 4とを接合する際の接合温度と常温との温度差、及び溝部の幅とピッチによって決定 する係数である)
[0029] 上記したように、溝部 7の深さ y (mm)力 前記式(3)を満足するものであることによ り、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 28に生じる応力による溝部 7 の変形や歪みを減少させて、接合面 28に対して垂直方向の応力の発生を抑制する ことができる。このため、本実施の形態のハニカム構造体成形用口金 1は、ハニカム 構造体を高精度に成形することができるとともに、それぞれの板状部材を接合させた 口金基体 22において、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 28にお ける剥離を低減することができる。
[0030] なお、第一の板状部材 23の裏孔 6が形成された状態を考慮した見かけの 25°Cに おける体積弾性率 El (GPa)は、例えば、裏孔 6が形成された第一の板状部材 23の 有限要素 (FEM)シミュレーションを用いることにより、容易に求めることができる。
[0031] なお、上記した係数 aは、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とのそれぞれの 熱膨張係数、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを接合する際の接合温度と 常温との温度差、及び溝部の幅とピッチによって決定する係数であり、下記式 (4)に よって算出することができる。
a = k X ΔΤΧ (1 - α 2/ α 1) X (L~M) · · · (4)
(但し、 α ΐは第一の板状部材 23の熱膨張係数(1Z°C)、《2は第二の板状部材 24 の熱膨張係数(1Z°C)、 ΔΤは第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを接合す る際の接合温度と常温との温度差 (°C)、 Mは溝部 7の幅 (mm)、 Lは溝部 7のピッチ (mm)、 kは第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合時の相性 (以下、単に 「接合時の相性 k」 t 、うことがある)である)
[0032] 上記した接合時の相性 kは、接合強度を表す数値であり、第一の板状部材 23と第 二の板状部材 24とを実際に接合した実験結果より求めることができる。例えば、第一
の板状部材 23としてステンレス鋼を用い、第二の板状部材 24として超硬合金を用い た場合には、第一の板状部材の熱膨張係数 α 1が 11. 5 Χ 10_6 ( lZ°C)、第二の板 状部材の熱膨張係数 α 2が 6. 3 X 10_6 ( lZ°C)となり、第一の板状部材 23と第二 の板状部材 24とを接合する際の接合温度と常温との温度差 ΔΤを 1100°Cとし、溝 部 7の幅 Mを 0. 3mm、溝部 7のピッチ Lを 1. Ommとした場合には、上記の接合時の 相性 kは 1. 75となり、係数 aは約 610となる。
[0033] 本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金 1は、例えば、図 3に示すように、多孔 質の隔壁 13を備え、この隔壁 13によって流体の流路となる複数のセル 14が区画形 成されたハ-カム構造体 12を押出成形するための口金である。なお、図 3に示すノヽ 二カム構造体 12は、内燃機関、ボイラー、化学反応機器及び燃料電池用改質器等 の触媒作用を利用する触媒用担体や、排気ガス中の微粒子捕集フィルタ一等に好 適に用いることができる。
[0034] 図 1及び図 2に示すハニカム構造体成形用口金 1のスリット 5は、図 3に示すハニカ ム構造体 12の隔壁 13の部分を成形するためのものであり、この隔壁 13の形状に対 応して、図 1に示すように格子状に形成されている。
[0035] また、裏孔 6は、成形原料を導入するためのものである。裏孔 6の形状については、 導入された成形原料をスリット 5に導くことができるような形状であれば特に制限はな いが、図 1及び図 2に示すように、ハニカム構造体成形用口金 1のスリット 5における 交点と連通するような位置に形成されて ヽることが好ま ヽ。このように構成すること によって、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金 1を用いて押出成形を行う際 に、裏孔 6に導入した成形原料をスリット 5全体に均一に広げることができ、高い成形 性を実現することができる。
[0036] なお、裏孔 6の開口径の大きさ等については、ハ-カム構造体成形用口金 1の大き さや、押出成形するハニカム構造体 12 (図 3参照)の形状等によって適宜決定するこ とができる力 例えば、裏孔 6の開口径の大きさは、 10-0. 1mmであることが好まし く、 3〜0. 5mmであることが更に好ましい。このような裏孔 6は、例えば、電解加工 (E CM力卩ェ)、放電カ卩ェ (EDM力卩ェ)、レーザ力卩ェ、ドリル等の機械カ卩ェ等による従来 公知の方法によって形成することができる。
[0037] また、第一の板状部材 23の接合面 28側に形成された溝部 7は、裏孔 6から導入し た成形原料をスリット 5に導くための緩衝部分 (バッファ)として機能するものであり、こ のような溝部 7が形成されていることにより、ハ-カム構造体の押出成形を行う際に、 裏孔 6から導入した成形原料を支障なく滑らかに移動させることができ、高精度にハ 二カム構造体を成形することができる。
[0038] また、特に限定されることはないが、本実施の形態のハニカム構造体成形用口金 1 においては、第一の板状部材 23が、オーステナイト相の冷却によってマルテンサイト 変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態力 なる群より選択される少なくとも一つの 相変態を起こし得る金属又は合金力も構成されたものであることが好ましい。
[0039] このような第一の板状部材 23を構成する金属又は合金としては、例えば、鉄 (Fe)、 チタン (Ti)、ニッケル (Ni)、銅(Cu)、及びアルミニウム (A1)力もなる群力も選ばれる 少なくとも一つの金属を含む金属又は合金を挙げることができる。また、第一の板状 部材 23を構成する金属又は合金は、炭素(C)、ケィ素(Si)、クロム (Cr)、マンガン( Mn)、モリブデン (Mo)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の添加剤を更に含んだものあ つてもよい。
[0040] このような第一の板状部材 23を構成する合金としては、ステンレス合金、例えば、 S US630 (C ;0. 07以下, Si; l. 00以下, Mn; l. 00以下, P ;0. 040以下, S ;0. 0 30以下, Ni; 3. 00〜5. 00, Cr; 15. 50〜17. 50, Cu; 3. 00〜5. 00, Nb+Ta ; 0. 15〜0. 45, Fe ;残部(単位は質量%) )を好適例として挙げることができる。この ようなステンレス合金は、裏孔 6の形成するための機械力卩ェが比較的に容易であると ともに、安価な材料である。
[0041] また、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金 1においては、第二の板状部材 24が、炭化タングステン基超硬合金カゝら構成されたものであることが好ま U、。
[0042] 炭化タングステン基超硬合金は、少なくとも炭化タングステンを含む合金であり、炭 ィ匕タングステンを、鉄(Fe)、コノ レト(Co)、ニッケル (Ni)、チタン (Ti)、及びクロム( Cr)力 なる群より選択される少なくとも一つの金属で焼結した合金であることが好ま しい。このように、上記群より選択される少なくとも一つの金属を結合材として使用した 炭化タングステン基超硬合金は、耐摩耗性や機械的強度に特に優れている。このよ
うな炭化タングステン基超硬合金としては、例えば、コバルト (Co)を結合材として使 用した炭化タングステン基超硬合金を挙げることができる。具体的には、 WC-Co (C o含有率 0. 1〜50質量%)等の合金がある。
[0043] このような第一の板状部材 23及び第二の板状部材 24の厚みについては特に制限 はないが、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 28における残留応 力を有効に減少させることができるとともに、スリット 5と裏孔 6との一般的な形状を考 慮して適宜決定することができる。例えば、一般的なハ-カム構造体成形用口金 1を 製造する場合には、第二の板状部材 24の厚みに対する、第一の板状部材 23の厚 みの割合力 0. 1〜200であることが好ましぐ 1〜10であることが更に好ましい。
[0044] また、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金 1においては、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との間に、ろう材 27が配設されたものであってもよい。
[0045] このようなろう材 27は、異なる二種の金属や合金を接合する際に用いられている従 来公知のろう材を用いることができる。
[0046] なお、特に限定されることはないが、本実施の形態のハニカム構造体成形用口金 1 に用いられるろう材 27は、第一の板状部材 23を構成する金属又は合金に浸透し得 る材料カゝら構成されたものであることが好まし ヽ。このような材料から構成されたろう材 27を用いることにより、ろう材 27が第一の板状部材 23の組織内部に浸透するために 、ろう材 27が単独の層として存在しなくなる。これにより、ハニカム構造体成形用口金 1の機械的強度の低下を有効に防止することができる。また、ろう材 27が第一の板状 部材 23の組織内部に浸透するものであれば、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 28にはろう材 27が存在しないため、ろう材 27からの腐食や磨耗を有 効に防止することができる。
[0047] このようなろう材 27としては、具体的には、例えば、銅(Cu)、銀 (Ag)、金 (Au)、二 ッケル (Ni)、及びアルミニウム (A1)からなる群より選択される少なくとも一つを含む金 属又は合金のろう材 27を挙げることができる。なお、銅 (Cu)又は銅 (Cu)を含んだ合 金は、第一の板状部材 23として好適に用いることができるステンレス合金に対しての 浸透性が高いため、特に好適に用いることができる。
[0048] また、このようなろう材 27は、例えば、パラジウム(Pd)、ケィ素(Si)、スズ(Sn)、コバ
ルト(Co)、リン (P)、マンガン (Mn)、亜鉛 (Zn)、ホウ素(B)等の添加剤を更に含ん だものであってもよい。このような添加剤を更に含んだものは、接合信頼性を向上さ せることができる。
[0049] 次に、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の一の実施の形態につい て具体的に説明する。本実施の形態のハニカム構造体成形用口金の製造方法は、 図 1及び図 2に示す本発明のハ-カム構造体成形用口金の一の実施の形態 (ノヽユカ ム構造体成形用口金 1)を製造する方法である。ここで、図 4〜図 6は、本実施の形態 のハ-カム構造体成形用口金の製造方法における各工程を説明する説明図である
。なお、図 4〜図 6は、図 2と同様の断面を示している。
[0050] 本実施の形態のハニカム構造体成形用口金の製造方法は、図 1及び図 2に示すよ うに、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを有する口金基体 22を備え、第一 の板状部材 23に成形原料を導入するための裏孔 6が形成され、且つ第二の板状部 材 24に成形原料を格子状に成形するためのスリット 5が形成されたハ-カム構造体 成形用口金 1を製造するハニカム構造体成形用口金の製造方法であって、図 4に示 すように、第一の板状部材 23の一方の表面に、スリット 5 (図 2参照)に対応した形状 の溝部 7を、この溝部 7の深さ y (mm)が下記式(5)を満足するように形成し、図 5に 示すように、その第一の板状部材 23の一方の表面に第二の板状部材 24を積層して 、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とが接合された口金基体 22を得る工程を 含むハ-カム構造体成形用口金の製造方法である。
y≤a- (tl X El +t2 X E2) / (tl X t2 X El X E2) …(5)
(但し、 tlは第一の板状部材 23の厚み (mm)から溝部 7の深さ (mm)を引いた厚み( mm)、 Elは第一の板状部材 23の裏孔 6が形成された状態を考慮した見かけの 25 °Cにおける体積弾性率 (GPa)、 t2は第二の板状部材 24の厚み (mm)、 E2は第二 の板状部材 24の 25°Cにおける体積弾性率 (GPa)、 aは第一の板状部材 23と第二 の板状部材 24とのそれぞれの熱膨張係数、第一の板状部材 23と第二の板状部材 2 4とを接合する際の接合温度と常温との温度差、及び溝部 7の幅とピッチによって決 定する係数である)
[0051] なお、上記した係数 aは、本発明のハ-カム構造体成形用口金の実施の形態にて
説明した上記式 (4)によって算出することができる。例えば、第一の板状部材 23とし てステンレス鋼を用い、第二の板状部材 24として超硬合金を用いた場合には、第一 の板状部材 23の熱膨張係数 α 1が 11. 5 X 10"6 (1/°C)、第二の板状部材 24の熱 膨張係数《2が 6. 3 X 10_6 (1Z°C)となり、第一の板状部材 23と第二の板状部材 2 4とを接合する際の接合温度と常温との温度差 ΔΤを 1100°Cとし、溝部 7の幅 Mを 0 . 3mm、溝部 7のピッチ Lを 1. Ommとした場合には、上記の接合時の相性 kは 1. 75 となり、係数 aは約 610となる。
[0052] このように構成することによって、図 1及び図 2に示すようなハニカム構造体成形用 口金 1を簡便に製造することができる。以下、本実施の形態のハ-カム構造体成形 用口金の製造方法について、各工程毎に更に具体的に説明する。
[0053] まず、図 4に示すように、第一の板状部材 23の一方の表面に、スリット 5 (図 2参照) に対応した形状の溝部 7を、溝部 7の深さ y (mm)が前記式(5)を満足するように形成 する。
[0054] 第一の板状部材 23は、主に口金基体 22 (図 1参照)における裏孔 6が形成される 部分を構成するものであり、従来公知のハニカム構造体成形用口金に用いられる金 属又は合金力も構成されたものを用いることができる。特に、本実施の形態のハニカ ム構造体成形用口金の製造方法においては、本発明のハ-カム構造体成形用口金 の一の実施の形態にて説明したように、オーステナイト相の冷却によってマルテンサ イト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態カゝらなる群より選択される少なくとも一 つの相変態を起こし得る金属又は合金力も構成されたものを好適に用いることができ る。
[0055] このような金属又は合金としては、例えば、鉄 (Fe)、チタン (Ti)、ニッケル (Ni)、銅
(Cu)、及びアルミニウム (A1)力もなる群力も選ばれる少なくとも一つの金属を含む金 属又は合金を挙げることができる。なお、このような第一の板状部材 23を構成する金 属又は合金は、炭素(C)、ケィ素(Si)、クロム(Cr)、マンガン (Mn)、モリブデン (Mo ) ,白金 (Pt)、パラジウム (Pd)等の添加剤を含んだものであることが更に好ましい。
[0056] 例えば、第一の板状部材 23を構成する合金としては、ステンレス合金、より具体的 には、 SUS630 (C ;0. 07以下, Si . 00以下, Mn; l. 00以下, P ;0. 040以下,
S ;0. 030以下, Ni; 3. 00〜5. 00, Cr; 15. 50〜17. 50, Cu; 3. 00〜5. 00, N b+Ta ;0. 15〜0. 45, Fe ;残部(単位は質量%) )を好適例として挙げることができ る。このようなステンレス合金は、裏孔 6の形成するための機械加工が比較的に容易 であるとともに、安価な材料である。
[0057] 溝部 7を形成する方法としては、例えば、ダイヤモンド砥石による研削加工や放電 加工 (EDM力卩ェ)等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
[0058] また、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金の製造方法にお!、ては、第一の 板状部材 23の一方の表面に溝部 7を形成する前、又は溝部 7を形成した後に、第一 の板状部材 23の他方の表面力 溝部 7へと連通する裏孔 6 (図 2参照)を形成しても よい。なお、裏孔 6 (図 2参照)は、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを接合 した後に形成することもできる。図 5においては、溝部 7のみを形成した場合を示して いる。
[0059] 裏孔 6を形成する方法にっ 、ては特に制限はな 、が、例えば、電解加工 (ECMカロ ェ)、放電加工 (EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等による従来公知の 方法を好適に用いることができる。
[0060] なお、溝部 7の深さ y (mm)が、前記式(5)を満足しない、即ち、 a' (tl X El +t2 X E2) / (tl X t2 X El X E2)の値を超えてしまうものであると、第一の板状部材 23と 第二の板状部材 24との接合面に生じる熱応力によって溝部 7が大きく変形してしまう
[0061] 次に、図 5に示すように、溝部 7を形成した第一の板状部材 23の一方の表面に第 二の板状部材 24を積層して、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とが接合され た口金基体 22を得る。この第二の板状部材 24は、主に口金基体 22 (図 1参照)にお けるスリット 5 (図 1参照)が形成される部分を構成するものであり、炭化タングステン基 超硬合金力 構成されたものを好適に用いることができる。
[0062] 炭化タングステン基超硬合金は、少なくとも炭化タングステンを含む合金であり、炭 ィ匕タングステンを、鉄(Fe)、コノ レト(Co)、ニッケル (Ni)、チタン (Ti)、及びクロム( Cr)力 なる群より選択される少なくとも一つの金属で焼結した合金であることが好ま しい。このように、上記群より選択される少なくとも一つの金属を結合材として使用した
炭化タングステン基超硬合金は、耐摩耗性や機械的強度に特に優れている。このよ うな炭化タングステン基超硬合金としては、例えば、コバルト (Co)を結合材として使 用した炭化タングステン基超硬合金を挙げることができる。具体例としては、 WC— C o (Co含有率 0. 1〜50質量%)等の合金がある。
[0063] また、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金の製造方法にお!、ては、第一の 板状部材 23の一方の表面に第二の板状部材 24を積層する際に、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との間にろう材を配して接合してもよい。このようなろう材とし ては、本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施の形態にて説明したろう材を 好適に用いることができる。
[0064] 第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを積層して接合する際には、第一の板 状部材 23と第二の板状部材 24とを、第一の板状部材 23がオーステナイト変態を起 こす温度以上に加熱して接合することが好まし 、。このように構成することによって、 第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを良好に接合することができる。
[0065] また、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金の製造方法にお!、ては、得られ た口金基体 22を、上記した少なくとも一つの相変態が開始される温度まで降温して、 第一の板状部材 23を構成する金属組織又は合金組織を相変態させてもょ ヽ。この ように第一の板状部材 23を相変態させることによって、第一の板状部材 23の寸法を 変化させることができ、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 28にお ける残留応力を小さくすることができる。具体的には、接合面 28における残留応力は lOOOMPa以下にすることが好まし!/、。
[0066] 上記した第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 28における残留応 力(以下、単に「接合面 28における残留応力」ということがある)とは、接合面 28に残 留する引張応力や圧縮応力のことであり、例えば、 X線応力測定装置等を使用して 測定することができる。具体的な測定方法としては、例えば、まず、特性 X線を被検査 対象(口金基体 22)の表面に照射し、その反射回折線を測定する。次に、被検査対 象(口金基体 22)の表面の応力を、その表面に平行な成分から構成された二次元応 力とし、得られた反射回折線の測定結果をもとに、弾性力学における諸公式を用いる ことにより、上記した残留応力を算出することができる。
[0067] なお、反射回折線を測定する方法としては、フィルム法や計数管法等を好適例とし て挙げることができる。このような方法としては、例えば、日本材料学会 (編)、「X線応 力測定方法」、養賢社、 1981年、に記載されている。また、接合面 28における残留 応力は、 X線応力測定装置を用いずとも、例えば、口金基体 22に溝を加工し、その 際の反りの変化量を測定することによつても測定可能である。
[0068] 上記した第一の板状部材 23の寸法が変化する割合は、相変態中の降温速度に依 存するため、第一の板状部材 23の寸法変化と第二の板状部材 24の寸法変化とが近 づくように降温速度を調節し、第一の板状部材 23と第二の板状部材 24との接合面 2 8における残留応力を小さくする。
[0069] 本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金の製造方法にお!、ては、接合された 第一の板状部材 23と第二の板状部材 24とを、 0. l〜100°CZminの降温速度にて 、上記した少なくとも一つの相変態が開始される温度まで降温することが好ま 、。
[0070] また、第一の板状部材 23の寸法変化は、上記した相変態中の降温速度だけに依 存するものではなぐ例えば、第一の板状部材 23を構成する合金の成分にも影響を 受ける。このため、第一の板状部材 23を構成する合金の成分を調整することにより、 第一の板状部材 23の寸法変化を制御することもできる。第一の板状部材 23を構成 する合金の成分を調整する方法としては、第一の板状部材 23を構成する合金に、所 定の元素を添加する方法を挙げることができる。
[0071] このようにして口金基体 22を得た後、図 6に示すように、口金基体 22にスリット 5と裏 孔 6とを形成してハ-カム構造体成形用口金 1を製造する。なお、予め、第一の板状 部材 23に裏孔 6を形成した場合には、スリット 5のみを形成すればよい。
[0072] スリット 5を形成する方法にっ ヽては特に制限はな 、が、例えば、ダイヤモンド砲石 による研削加工や放電加工 (EDM力卩ェ)等の従来公知の方法を好適に用いることが できる。また、図 1に示すハ-カム構造体成形用口金 1は、スリット 5の形状が四角形 の格子状のものであるが、本実施の形態のハ-カム構造体成形用口金の製造方法 においては、第二の板状部材 24に形成するスリット 5の形状は四角形の格子状に限 定されることはなぐその他の多角形の格子状であってもよい。
[0073] また、第二の板状部材 24に形成するスリット 5の幅については、成形するハ-カム
構造体 12 (図 3参照)の形状によって適宜決定することができる。なお、例えば、一般 的なハニカム構造体を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金 1を製造する ためには、スリット 5の幅は、 5〜5000 111でぁることカ 子ましく、 10〜500 /ζ πιである ことが更に好ましい。
[0074] 以上のようにして、図 1及び図 2に示すような、成形原料を導入するための裏孔 6と、 成形原料を格子状に形成するためのスリット 5とが形成されたハ-カム構造体成形用 口金 1を製造することができる。
実施例
[0075] 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定 されるものではない。
[0076] (実施例 1)
成形原料を導入するための裏孔と、成形原料を格子状に形成するためのスリットと が形成され、裏孔に導入した成形原料をスリットから押出してハ-カム構造体を成形 するハニカム構造体成形用口金を製造した。
[0077] 実施例 1においては、 SUS630 (C ;0. 07以下, Si; l. 00以下, Mn; l. 00以下, P ;0. 040以下, S ;0. 030以下, Ni; 3. 00〜5. 00, Cr; 15. 50〜17. 50, Cu; 3 . 00〜5. 00, Nb+Ta;0. 15〜0. 45, Fe ;残部(単位は質量0 /0) )力ら構成された 第一の板状部材と、 WC— 16質量%Coの炭化タングステン基超硬合金から構成さ れた第二の板状部材と、銅力 構成されたろう材と、を用いてハ-カム構造体成形用 口金の製造を行った。
[0078] 第一の板状部材は、その面の大きさが 80mm X 80mmの正方形で、厚みが 12. 5 mmであり、第二の板状部材は、その面の大きさが 80mm X 80mmの正方形で、厚 みが 2. 5mmであり、ろう材は、その面の大きさが 80mm X 80mmの正方形で、厚み が 0. 01mmである。
[0079] まず、第一の板状部材に、深さが 1. 0 (mm)の格子状の溝部と、開口径約 lmmの 裏孔とを電解加工 (ECM加工)によって形成した。なお、溝部の幅は 0. 3mmとし、 溝部のピッチは 1. 0mmとした。また、第一の板状部材の裏孔が形成された状態を考 慮した見かけの 25°Cにおける体積弾性率 E1は 50GPaであり、第二の板状部材の 2
5°Cにおける体積弾性率 E2は 500GPaである。更に、第一の板状部材の熱膨張係 数は 11. 5 X 10_6 (1Z°C)であり、第二の板状部材の熱膨張係数は 6. 3 X 10"6 (1 Z°C)である。
[0080] 次に、第一の板状部材と第二の板状部材とを、その間にろう材を配して積層した後 に 1120°Cに加熱して、第一の板状部材と第二の板状部材とを接合させて口金基体 を得た。なお、接合時における常温は 20°Cであり、第一の板状部材と第二の板状部 材とを接合する際の接合温度と常温との温度差 ΔΤは 1100°Cである。また、接合時 の相性 kは 1. 75であり、上記式(1)における係数 aは 610である。
[0081] 得られた口金基体を常温まで降温した後、第二の板状部材にスリットを形成してハ 二カム構造体成形用口金を得た。スリットは、ダイヤモンド砲石によって四角形の格 子状に形成した。スリットの幅は約 0. lmm、深さは約 2. 5mmとし、隣接するスリット 相互の間隔は約 1. Ommとした。
[0082] 得られたハ-カム構造体成形用口金にっ 、て、第一の板状部材に形成した溝部の 変形の程度と、接合面の剥離について評価を行った。溝部の変形は、口金として使 用する際に問題の無い程度である場合には、溝部の変形を「小」とし、口金として使 用することが困難である場合には、溝部の変形を「大」とした。また、接合面の剥離は 超音波探傷映像装置によって確認した。また、得られたハ-カム構造体成形用口金 を用いてハ-カム構造体を押出成形して、成形性についての評価を行った。表 1に、 第一の板状部材の厚み (mm)から溝部の深さ(mm)を引いた厚み tl (mm)、第一の 板状部材の裏孔が形成された状態を考慮した見かけの 25°Cにおける体積弾性率 E 1 (GPa)、第二の板状部材の厚み t2 (mm)、第二の板状部材の 25°Cにおける体積 弾性率 E2 (GPa)、及び得られたハ-カム構造体成形用口金の評価結果を示す。
[0083] [表 1]
本実施例のハ-カム構造体成形用口金は、溝部の深さ (mm)が上記式(1)を満足 するものであり、溝部の変形が良好に抑制されており、ハニカム構造体を成形する際 に問題とならない程度に小さいものであった。また、第一の板状部材と第二の板状部 材との接合面に対して垂直な方向の応力の発生も抑制されており、第一の板状部材
と第二の板状部材と接合面の剥離も確認されな力つた。また、このハ-カム構造体成 形用口金は、成形性も良好であり、高精度にハニカム構造体を成形することができた
[0085] (実施例 2〜5)
実施例 1と同様の材料を用い、第一の板状部材の厚みを、実施例 2が 13. 5mm, 実施例 3が 13mm、実施例 4が 14mm、実施例 5が 17. 5mmとし、溝部の深さ(mm) を、実施例 2が 1. 5mm,実施例 3〜5が 1. Ommとした以外は、実施例 1と同様の方 法によってハニカム構造体成形用口金を製造した。
[0086] 得られたハニカム構造体成形用口金は、溝部の深さ(mm)が上記式(1)を満足す るものであり、実施例 1のハニカム構造体成形用口金と同様に、溝部の変形が小さく 、また、接合面の剥離もなぐ更に、成形性も良好であった。
[0087] (比較例 1〜3)
実施例 1と同様の材料を用い、第一の板状部材の厚みを、比較例 1が 14. 5mm, 比較例 2が 18mm、比較例 3が 14. 5mmとし、溝部の深さを、比較例 1及び 2が 3. 0 mm、比較例 3が 1. 5mmとした以外は、実施例 1と同様の方法によってハ-カム構 造体成形用口金を製造した。
[0088] 得られたハニカム構造体成形用口金は、溝部の深さ(mm)が上記式(1)の範囲を 超えてしまうものであり、溝部の変形が大きぐ第一の板状部材と第二の板状部材と の接合面に対して垂直な方向に応力が生じてしま 、、接合面に剥離が生じて ヽた。 また、溝部の変形や接合面の剥離が生じているために、成形したハ-カム構造体に 欠陥等を生じさせることがあった。
産業上の利用可能性
[0089] 本発明のハニカム構造体成形用口金は、内燃機関、ボイラー、化学反応機器及び 燃料電池用改質器等の触媒作用を利用する触媒用担体や、排気ガス中の微粒子捕 集フィルタ一等として用いられるハ-カム構造体を成形する際に用いることができる。 また、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法は、上記したハ-カム構造体 成形用口金を簡便に製造することができる。