明 細 書
情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法 技術分野
この発明は、 ハードディスクドライブ等の情報記録装置に用いられる磁気デ イスク、 光磁気ディスク、 光ディスク等の情報記録媒体に有用なガラス基板及 びその製造方法に関するものである。 より詳しくは、 その表面に複数のテクス チヤ一が形成された情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関するもの である。 背景技術
従来、 情報記録媒体の一種である磁気ディスクは、 円盤状をなすガラス基板 の表面に磁性膜を積層することによって作製されている。 このガラス基板は、 磁気ディスクに要求される高密度、 大容量の記録を可能とするため、 その表面 が平滑となるように研磨加工を施される。 一方、 表面を平滑に研磨された磁気 ディスクは、 情報を読み取るためのヘッドが吸着しやすくなる。 この吸着の低 減を目的とし、 テクスチャー処理を施すことにより、 ガラス基板の表面に適度 な凹凸、 すなわち、 テクスチャーを形成したものが提案されている (例えば、 特開 2 0 0 2— 1 1 7 5 3 2号公報参照) 。 ところで、 従来のテクスチャ一処理の代表的な方法としては、 ケミカル式テ タスチヤ一形成法と機械式テタスチヤ一形成法の 2つが挙げられる。 ケミカル 式テクスチヤ一形成法とは、 ガラス基板を酸性水溶液やアル力リ性水溶液から なるエツチング液に浸漬する等してその表面をエッチングし、 テクスチャーを 形成する方法である。 機械式テクスチヤ一形成法とは、 テクスチャーマシンを 用い、 ガラス基板の表面に研磨スラリーを供給しながら研磨テープを摺接させ ることによってテクスチャーを形成する方法である。
ケミカル式テタスチヤ一形成法と、 機械式テタスチヤ一形成法とを比較した 場合、 ケミカル式テクスチャー形成法は、 機械式テクスチャー形成法に比べ、 テクスチャーの形成を簡単に行うことができるという利点を有する。 一方、 ケ ミ力ル式テクスチヤ一形成法において、 エッチング液にガラス基板を浸漬する 等の手法では、 テクスチャーの形状を精密に制御しながらこれを形成すること は極めて難しいものとなる。 特に、 高密度、 大容量の記録を可能とするために は、 均一な形状のテクスチャーをガラス基板の表面全体に均一に分散させて形 成する必要がある。 そして、 テクスチャーの形状を精密に制御するには、 ケミ 力ル式テクスチヤ一形成法よりも、 機械式テタスチヤ一形成法が有利となる。 しかし、 機械式テクスチャー形成法は、 ケミカル式テクスチヤ一形成法に比 ベ、 テクスチヤー上に異常な高さの突起であるバリが発生しゃすく、 このバリ によってテクスチャーの形状が不均一なものとなるという問題がある。 つまり、 ケミカル式テクスチャー形成法であれば、 理論的にはガラス基板の表面が均一 にエッチングされることからバリは発生しにくい。 これに対し、 機械式テクス チヤ一形成法は、 ガラス基板の表面を研磨スラリーで削る際、 表面に加わる応 力、 削り残し等により、 バリが発生しやすくなるためである。 従って、 機械式 テクスチャー形成法においては、 いかにしてバリの発生を抑えるかが重要な課 題となっていた。 この発明は、 上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたも のである。 その目的とするところは、 テクスチャー上でのバリの発生を抑える ことができる情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供することにあ る。 発明の開示
上記の目的を達成するために、 本発明の一実施態様によれば、 円盤状をなす
ガラス素板の表面を研磨した後、 その表面にテクスチャー処理を施して製造さ れる情報記録媒体用ガラス基板の製造方法が提供される。 その製造方法におい て、 前記テクスチャー処理は、 ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しなが ら研磨部材を摺接させる機械式テクスチャー形成法により、 ガラス素板の表面 にその周方向に沿って延びる線状のテクスチャーを形成するための工程と、 テ タスチヤ一の形成時にそのテクスチャー上に形成されるバリを除去し、 テクス チャ一の形状を修正するための工程とを備える。 該テクスチャ一の形状の修正 は、 1 0 0 %モジュラスが 3〜4 O M P aの合成樹脂を材料とする発泡体より なる修正パッドを使用し、 この修正パッドでガラス素板の表面をテクスチャー の延びる方向と交差する方向に沿って擦ることによって行われる。 前記修正パッドのァスカー C硬度は 4 0〜7 0であることが望ましい。 前記 修正パッドはその表面に複数の穴を備え、 その穴の開口径は 4 8〜6 0 μ πιで あることが望ましい。 前記修正パッドでガラス素板の表面を擦る時間が 2〜 2 0秒であることが望ましい。 前記修正パッドはウレタン樹脂を材料とする発泡 体よりなることが望ましい。
前記テクスチャーの形状を修正するための工程よりも、 前又は後では、 ガラ ス素板の表面に付着した付着物を除去するための洗浄処理が行われることが望 ましい。
前記テクスチャーの形状を修正するための工程は、 修正パッドとしてスクラ ブパッドを使用し、 同スクラブパッドでガラス素板の表面を擦るスクラブ処理 工程を含み、 当該スクラブ処理工程では、 ガラス素板の表面上のバリ及ぴ付着 物の除去が行われることが望ましい。
本発明の別の実施態様によれば、 上記の製造方法によって製造された情報記
録媒体用ガラス基板が提供される。 そのガラス基板の表面の所定領域を原子間 力顕微鏡で測定した際、 所定領域の面積を基準面積とし、 当該表面と平行な面 に沿ってテクスチャーを切断した場合のテクスチャーの切断面の面積を測定面 積としたとき、 基準面積に対する測定面積の割合をベアリングレシオ (BR) として表し、 該ベアリングレシオ (BR) が 50%となる位置を基準面とし、 ベアリングレシオ (BR) が任意の値 (X%) となる位置においてテクスチャ 一を切断する面を測定面としたときの、 基準面から測定面までの高さをべァリ ングハイト (BH (X) ) として表した場合、 バリの存在はべアリングハイト BH (0. 01) からべァリングハイト BH (0. 4) の範囲で確認されると ともに、 テクスチャー上からバリを除去した状態で、 ベアリングハイ ト BH (0. 01) とベアリングハイト BH (0. 4) との差が 0. 01〜1. O n mでめ 。 図面の簡単な説明
図 1は情報記録媒体用ガラス基板を示す正面図。
図 2はスクラブ装置を示す概略図。
図 3 (a) はテクスチャーマシンを側面から見た状態を示す概略図、 図 3 (b) はテクスチャーマシンを正面から見た状態を示す概略図。
図 4 (a) は機械式テクスチャー形成法によってバリが発生したテクスチャ 一を示す概略図、
図 4 (b) は図 4 (a) の 4B— 4B線における断面図、
図 4 (c) は図 4 (a) の 4 C— 4 C線における断面図。
図 5はケミカル式テクスチヤ一形成法によるテクスチャーを示す概略図。 図 6はパリを除去したテクスチャーを示す概略図。
図 7はパリが発生したテクスチャーを示す原子間力顕微鏡 A FMによる鳥瞰 図。
図 8はパリを除去したテクスチャーを示す A F Mによる鳥瞰図。
図 9はべァリングレシオ BRとべァリングハイト BHとの関係を示すグラフ。
発明を実施するための最良の形態
以下、 この発明を具体ィ匕した一実施形態を、 図面に基づいて説明する。
図 1に示すように、 情報記録媒体用ガラス基板 1 1 (以下、 「ガラス基板 1
1」 という) は、 円盤状をなし、 中心に円孔 1 2を有する。 ガラス基板 1 1は、 シート状のガラス板から円盤状に切り出されたガラス素板を、 研磨及び機械加 ェすることによって得られる。 このガラス素板は、 フロート法、 ダウンドロー法、 リ ドロー法又はプレス法 で製造されたソーダライムガラス、 アルミノシリケ一トガラス、 ポロシリケ一 トガラス、 結晶化ガラス等の多成分系のガラス材料より形成されている。 さら に、 このガラス素板にテクスチャー加工を施すことにより、 ガラス基板 1 1の 表面に複数のテクスチャー 13が形成されている。 これらテクスチャー 13は、 それぞれガラス基板 1 1の周方向に沿って線状に延ぴている。 そして、 テクス チヤ一 13が形成されたガラス基板 1 1の表面に、 例えばコバルト (C o) 、 クロム (C r) 、 鉄 (F e) 等の金属又は合金よりなる磁性膜、 保護膜等を形 成することにより、 磁気ディスク、 光磁気ディスク、 光ディスク等の情報記録 媒体が構成される。
テクスチャー 1 3を有するガラス基板 1 1は、 好ましくは表面の微小うねり の高さ (NRa) が 0. 2 rim以下であり、 表面粗さ (R a) が 0. 5 n m以 下である。 また、 この場合の表面のうねりの高さ (Wa) は、 好ましくは 0. 5 nm以下である。 なお、 本明細書において、 微小うねりの高さ NR aとは、 Z y g o社製の三次元表面構造解析顕微鏡 (NewV i e w200) を用い、 測定波長 (え) を 0. 2〜1. 4 mmとして表面の所定領域を白色光で走査し て測定された値を示すものである。 同様に、 表面粗さ R aとは、 原子間力顕微
鏡 (AFM) で測定された値を示すものである。 また、 うねりの高さ Waとは、 Ph a s e Me t r i x社製の多機能ディスク干渉計 (O p t i f 1 a t ) を用い、 測定波長 (え) を 0. 4〜5. Ommとして表面の所定領域を白色光 で走査して測定された値を示すものである。 このガラス基板 1 1において、 微小うねりの高さ NR a、 表面粗さ Ra及び うねりの高さ Waのうち、 特に微小うねりの高さ NR aが 0. 2 nmを超え、 表面粗さ R aが 0. 5 nmを超えると、 その表面が荒れた平滑性の低いものと 判断される。 これは、 近年の情報記録媒体は、 さらなる高密度記録化を図るた め、 情報記録媒体の表面とヘッドとの距離をさらに接近させる傾向があるため である。 このヘッドが情報記録媒体上を移動する際、 うねりの高さ Waが若干 大きくとも、 うねりの高低差にへッドが追従することが可能である。 しかし、 微小うねりの高さ NR a及ぴ表面粗さ R aが大きいと、 へッドは微小うねりの 高低差に追従できなかったり、 凹凸を飛び越えることができなかったりして、 凹凸に引っ掛かったり、 衝突したりする等の不具合が頻繁に発生しやすくなる。
—方、 表面の平滑性が過剰に高いと、 ヘッドが情報記録媒体の表面に吸着さ れ、 移動が不可能になったりする等の不具合が発生する。 そこで、 テクスチャ 一 13は、 ガラス基板 1 1の表面を平滑としながらも、 へッドとの接触面積を 低減するために形成されている。 図 8に示すように、 テクスチャー 1 3が形成 されたガラス基板 1 1の表面は、 ほぼ均一な高さの凹凸状をなすことにより、 平滑でありながら、 ヘッドとの接触面積が低減されている。 そして、 テクスチ ャ一 1 3は、 へッドとの接触面積を低減することにより、 情報記録媒体の表面 に対するへッドの吸着を抑制する。 また、 テクスチャー 1 3は、 ガラス基板 1 1から情報記録媒体を形成した際、 高い磁気異方性と保磁力を付与する。 これ は、 磁性膜を形成する金属の原子が、 テクスチャー 13の側面に整然と配向さ れることによると考えられる。
次に、 前記ガラス基板の製造方法について説明する。
ガラス基板は、 加工工程、 面取り工程、 研削工程、 研磨工程、 洗浄処理工程 及びテクスチャ一処理工程を経て製造される。 前記加工工程においては、 シート状のガラス板を超硬合金又はダイヤモンド 製の力ッターを用いて切断することにより、 その中心に円孔を有する円盤状の ガラス素板が形成される。 前記面取り工程においては、 ガラス素板の内外周面 が研削され、 外径及ぴ内径寸法が所定の大きさにされるとともに、 內外周面の 角部が研磨されて面取り加工される。 前記研削工程においては、 ガラス素板に対し、 研磨装置を用いてラップ処理 が施されることにより、 ガラス素板全体での反りが修正され、 ガラス素板が略 平坦な板とされる。 前記研磨工程においては、 ガラス素板に対し、 研磨装置を 用レ、、 複数段階に分けて研磨処理が施されることにより、 ガラス素板の表面が 平滑面とされる。 前記洗浄処理工程においては、 洗浄液を使用し、 研磨処理後 のガラス素板が洗浄されることにより、 ガラス素板の表面に付着した研磨剤、 研磨粉、 塵埃等の付着物が除去される。 前記テクスチャー処理工程においては、 研磨工程でその表面を平滑とされた ガラス素板に対してテクスチャ一処理が施され、 ガラス素板の表面にテクスチ ヤーが設けられることにより、 ガラス基板が製造される。 このテクスチャー処 理は、 テクスチャ一を形成するためのテクスチャ一形成工程と、 テクスチャー の形状を修正するためのスクラブ処理工程との、 主に 2工程に分けて施される。 前記テクスチャー形成工程について説明する。 このテクスチャー形成工程で は、 ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しながら、 研磨部材を摺接させる
という機械式テクスチャー形成法により、 ガラス素板の表面に線状のテクスチ ヤーが形成される。 そして、 この機械式テクスチャー形成法では、 テクスチャ 一マシンと呼ばれる装置が使用される。 ここで、 テクスチャーマシンについて説明する。
図 3 ( a ) , ( b ) に示すように、 当該テクスチャーマシン内において、 ガ ラス素板 1 1 aは、 図示しないスピンドルにより、 回転可能に支持されている。 ガラス素板 1 1 aの両側には、 一対のローラ 3 1がガラス素板 1 1 aを挟んで 対向配置されている。 各ローラ 3 1は、 図示しない支持部材に対し、 回転軸 3 2を中心に回動自在に支持され、 ガラス素板 1 1 aの半径方向に沿って延びて いる。 また、 これらローラ 3 1は、 それぞれがガラス素板 1 1 aに対して接近 又は離間可能に配置されている。 ガラス素板 1 1 aの表面と、 各ローラ 3 1との間には、 研磨部材としてのテ 一プ部材 3 3がそれぞれ配設されている。 これらテープ部材 3 3は、 ガラス素 板 1 1 aの表面と各ローラ 3 1との間を通り、 図 3 ( a ) においてその上方か ら下方へと移動するように配置されている。 該テープ部材 3 3とガラス素板 1 l aの表面との間には、 図示しない供給部から研磨スラリーが供給され、 テー プ部材 3 3には、 この研磨スラリ一に含まれる砥粒が付着する。 上記のテクスチャーマシンにおいて、 回転するガラス素板 1 1 aの表面に一 対のローラ 3 1が両側方から接近することにより、 テープ部材 3 3がガラス素 板 1 1 aの表面に摺接される。 このテープ部材 3 3の摺接により、 ガラス素板 1 1 aの表面に前記砥粒が押し付けられる。 このとき、 ガラス素板 1 1 aはス ピンドルによって回転されているため、 ガラス素板 1 1 aの表面が砥粒によつ て削られ、 その表面に複数の浅い筋状の微細な溝が同心円状に形成される。 そ して、 これら浅!/、筋状の微細な溝がテクスチャーマシンでの加ェ時間に応じて
より深く削られ、 このような溝の間の部分にテクスチャーが同心円状をなすよ うに形成される。 前記テープ部材 3 3には、 織物、 不織布、 植毛が施されたスウェード材等の、 その表面に極微細な凹凸を有するものが使用される。 これは、 テープ部材 3 3 の極微細な凹凸に砥粒を引っ掛けて、 同テープ部材 3 3の表面に砥粒を保持す るためである。 また、 テープ部材 3 3の材料には、 ポリウレタン、 ポリエチレ ン、 ポリプロピレン等の合成樹脂、 綿等の天然繊維が使用されている。 特に、 その材料がスウェード材であれば、 合成樹脂製の発泡体を使用することも可能 である。 前記研磨スラリーとしては、 ダイヤモンド製の砥粒を水等の媒体に分散させ て得られるダイヤモンドスラリーが主に使用される。 また、 砥粒の粒径は、 平 均粒径 (D50) で好ましくは 0 . 0 5〜0 . 3 μ ηιであり、 より好ましくは 0 . 0 8〜0 . 2 5 mである。 平均粒径 D50が 0 . 0 5 m未満の場合、 ガラス 素板に対する研磨能力の低下を招き、 テクスチャーの形成速度が遅くなるため、 歩留まりの低下、 加工コストの高騰を招くおそれがある。 一方、 平均粒径 D50 が 0 . 3 /z mを超えると、 一つ一つの砥粒の粒径差が顕著となり、 テクスチャ 一を均一な形状で形成することが難しくなるおそれがある。 また、 ガラス素板 1 1 aの、 J I S B 0 6 0 1に規定される算術平均粗 さ ( R a ) が、 好ましくは 0 . 3 5〜1 . O n mである。 このガラス素板 1 1 aは、 テクスチャー形成工程よりも前の工程である研磨工程でこのような算術 平均粗さ R aとなるように研磨される。 算術平均粗さ R a力 S 0 . 3 5 n m未満 の場合、 ガラス素板 1 1 aの表面で砥粒が滑りやすくなり、 テクスチャーの形 状を精密に制御することができなくなるおそれがある。 算術平均粗さ R aが 1 - O n mを超えると、 このガラス素板 1 1 aから製造されたガラス基板は、 表面
品質の低いものとなるおそれがある。 つまり、 表面に大きな凹凸が残されたま まの状態でテクスチャーを形成すれば、 このような凹凸によってテクスチャー の頂部に凹み、 歪み等の欠陥が修正されずに残ることとなり、 このような欠陥 がガラス基板の表面の平滑性等といつた表面品質を低下させる。 前記スクラブ処理工程について説明する。 上記のテクスチャ一形成工程で機 械式テタスチヤ一形成法によってテクスチャ一を形成する場合、 大半のテクス チヤ一は形状の揃ったものとなるが、 一部のテクスチャー上には、 異常な高さ の突起からなるバリが形成されてしまう。 そこで、 このスクラブ処理工程では、 修正パッドとしてのスクラブパッドを使用し、 このスクラブパッドでガラス素 板の表面を擦ることにより、 バリを除去する。 ここで、 機械式テクスチャー形成法でテクスチャー上に形成されるバリにつ いて記載する。 研磨スラリーに含まれる砥粒には、 その粒径に若干の差異があ り、 一つ一つの砥粒が形成する溝の深さ及ぴ幅に差異を生じることから、 テク スチヤーの高さ等の形状にもばらつきが生じることとなる。 例えば、 溝が深く、 幅広に形成された箇所では、 テクスチャ一は低く、 細くなる。 これとは逆に、 溝が浅く、 幅狭に形成された箇所では、 テクスチャ一は高く、 太く形成される。 特に、 機械式テクスチャー形成法においては、 ガラス素板の表面が砥粒で削ら れるとさ、 砥粒から加わる応力によつてその周縁部分が潰れて歪んだり、 崖状 に切り立ったり、 あるいは削り残しが発生したりする可能性が高 、。 このように各テクスチャーの形状にばらつきが生じる場合、 それぞれの尾根 (テクスチャーの頂上) も波状をなすように歪むこととなる。 この歪みは不均 一なものとなりやすく、 歪んだ尾根の一部には、 他の尾根の高さと比較して異 常に高く、 細く鋭い突起状をなすものが存在しており、 これがバリとなる。 ま た、 このようなバリは、 テクスチャー上に散逸的に形成されることに限らず、
テクスチャーの延びる方向に沿って複数のバリが連続して形成されることも 多々ある。 一方、 従来のケミカル式テクスチャー形成法は、 ガラス素板の表面をエッチ ング液でエッチング、 つまり溶かしてテクスチャーを形成する方法である。 従 つて、 ケミカル式テクスチャー形成法は、 機械式テクスチャー形成法に比べて バリが形成されにく 、方法ではあるが、 ガラス素板の表面が不均一にエツチン グされたときにバリが形成されてしまう場合がある。 そして、 このケミカル式 テクスチャー形成法で形成されるバリは、 テクスチャーの形成方法が全く異な るものであることから、 機械式テクスチヤ一形成法で形成されるバリとは、 そ の形状及び性質が大きく異なる。 ケミカル式テクスチャー形成法によるバリを詳細に観察した場合、 図 5に示 すように、 このバリ 1 3 aは、 丸みを帯びた山状をなしていた。 つまり、 ケミ カル式テクスチャー形成法によるパリ 1 3 aは、 スクラブパッドで擦る際にス クラブパッドから加わる外力を受け流しやすい形状をなし、 除去しにくいもの となりやすい。 これに対し、 機械式テクスチャー形成法によるバリ 1 3 aは、 図 4 ( a ) に示すように、 細く鋭い突起状をなす。 従って、 機械式テクスチャ 一形成法によるバリ 1 3 aは、 スクラブパッドから加わる外力を受け流しにく く、 十分な外力を加えることが可能であり、 除去しやすいものとなる。 ケミカル式テクスチヤ一形成法によるバリ 1 3 aの表面には、 これを保護す るようにエッチング液によって、 ガラス素板の内部組成とは化学的性質の異な る層が形成されており、 強い外力を加えなければ除去することは難しい。 これ に対し、 機械式テクスチャー形成法によるバリ 1 3 aは、 周縁部分が砥粒で削 られて形成されたものであることから、 その表面に微細なひびを有しており、 弱い外力を加えるだけでその基部から折り取り、 除去することが十分に可能で
ある。 従って、 機械式テクスチャー形成法は、 ケミカル式テクスチャー形成法 に比べてバリは形成されやすいが、 形成されたバリは、 当該スクラブ処理工程 で十分に除去可能なものとなる。 当該スクラブ処理工程では、 図 2に示すスクラブ装置が使用される。 すなわ. ち、 スクラブ装置内において、 ガラス素板 1 1 aは、 その下部及び両側部の合 計 3箇所を 3本の支持シャフト 2 1によって支持されている。 また、 この状態 でガラス素板 1 1 aは、 各支持シャフト 2 1に固定されることなく支持のみさ れることにより、 外力を加えることで 3本の支持シャフト 2 1の内側で、 回転 可能である。 ガラス素板 1 1 aの表面上には円形状をなすスクラブパッド 2 2が配設され ている。 このスクラブパッド 2 2は、 支持シャフト 2 1と平行に延びる軸 2 3 によって支持されている。 この軸 2 3は図示しない駆動装置に接続されており、 その駆動装置から軸 2 3を介して駆動力が伝達されることにより、 スクラブパ ッド 2 2は軸 2 3を中心に図中に矢印で示す方向へ回転する。 また、 このスク ラブパッド 2 2は、 ガラス素板 1 1 aに対し、 その外周縁がガラス素板 1 1 a の中心と重なるように、 ガラス素板 1 1 aの直径方向へ変位しており、 そのほ ぼ半分がガラス素板 1 1 aに接触するように配設されている。 スクラブ装置において、 スクラブパッド 2 2が回転すると、 これに接触する ガラス素板 1 1 aは、 回転力を付与され、 スクラブパッド 2 2の回転方向と反 対方向へ回転する。 この状態で、 ガラス素板 1 1 aの表面にはその周方向に沿 つて延びるようにテクスチャー 1 3が形成されていることから、 ガラス素板 1 1 aは、 スクラブパッド 2 2により、 テクスチャー 1 3の延びる方向と交差す る方向に沿って擦られる。 このスクラブパッド 2 2の摺接により、 ノ リは、 テ クスチヤ一 1 3上から折り取られ、 除去される。
テクスチャー 1 3上からパリを確実に除去するためには、 上記のように、 ス クラブパッド 2 2でガラス素板 1 1 aを、 そのテクスチャー 1 3の延びる方向 と交差する方向に沿って擦る必要がある。 すなわち、 図 7に示すように、 機械式テクスチャー形成法によるバリ 1 3 a は、 その大半がテクスチャー 1. 3の延びる方向へ連続しており、 テクスチャー 1 3と同じ方向へ延びる壁のような形状で形成されている。 このようなバリ 1 3 aを除去する場合、 スクラブパッド 2 2でガラス素板 1. 1 aをテクスチャー 1 3の延びる方向、 つまりは周方向へ擦ると、 一部のバリ 1 3 aが除去されな い可能性がある。 これは、 他のバリ 1 3 aがスクラブパッド 2 2の表面を変形 させ、 一部のバリ 1 3 aにスクラブパッド 2 2が接触しなかったり、 あるいは 除去されたバリ 1 3 aが邪魔となり、 スクラブパッド 2 2からの外力が受け流 されたりするためと考えられる。 これに対し、 スクラブパッド 2 2でガラス素 板 1 1 aをテクスチャー 1 3の延びる方向と交差する方向に沿って擦れば、 バ リ 1 3 aがスクラブパッド 2 2からの外力を受け止めるように接触する。 従つ て、 より多くのパリ 1 3 aを折り取ることができ、 バリ 1 3 aを確実に除去す ることが可能となる。 当該スクラブパッド 2 2には、 合成樹脂製の発泡体よりなるスポンジ、 スゥ エード材等が使用される。 このスクラブパッド 2 2によってバリ 1 3 aが除去 される状況を詳細に検討すると、 バリ 1 3 aは、 スクラブパッド 2 2の表面に 形成された穴の内側に一旦入り込み、 この穴を形作る壁が横方向から接触する ことによって折り取られるものと考えられる。 そこで、 このスクラブパッド 2 2には、 微視的な観点で、 パリ 1 3 aに接触したときにガラス素板 1 1 aの表 面に対するパリ 1 3 aの強度に押し負けない程度に硬い素材が用いられる。 こ の微視的な観点で硬いものとは、 表面の穴を形作る壁が硬いこと、 つまりはス
クラブパッド 2 2に使用する材料そのものの硬さが硬いことを示す。 従って、 スクラブパッド 2 2には、 J I S K 6 2 5 6に規定されるとこ ろの材料の硬さを示す 1 0 0 %モジュラスが、 · 3〜4 O M P aの合成樹脂材料 が使用される。 この 1 0 0 %モジュラスが 3 M P a未満のものを材料とした場 合、 パリ 1 3 aを十分に除去することができなくなる。 1 0 0 %モジュラスが 4 O M P aを超えるものを材料とした場合、 ノくリ 1 3 aのみでなく、 テクスチ ヤー 1 3までをも削ってしまうこととなり、 テクスチャー 1 3の形状に影響を 与えることとなる。 このようなスクラプパッド 2 2の材料としては、 ウレタン樹脂を使用するこ とが好ましい。 これは、 ウレタン樹脂は、 種類が同一のものであれば、 1 0 0 %モジュラスの値が高いものほど、 樹脂中における分子の結晶化が進行して おり、 スクラブパッド 2 2の微視的な観点での硬さが確実に増すためである。 このウレタン樹脂には、 出発原料によってポリエステル系ウレタン樹脂、 ポリ エーテル系ウレタン樹脂、 ポリカーボネート系ウレタン樹脂等の種類が存在す る。 これらの中でもスクラブパッド 2 2の材料には、 ポリカーボネート系ウレ タン樹脂を使用することがより好ましい。 これは、 ポリカーボネート系ウレタ ン樹脂は、 他のものに比べ耐薬品性に優れており、 例えばスクラブ処理工程時 に酸性水溶液、 アルカリ性水溶液等の洗浄液を使用する場合、 その表面の微視 的な観点での硬さを維持することが可能となるためである。 また、 スクラブパッド 2 2としては、 表面の穴の開口径が 4 8〜6 0 x mの ものを使用することが好ましい。 この穴の開口径が大きくなるに従って、 穴を 形作る壁は薄くなり、 微視的な観点での硬さが低くなることから、 開口径が 6 0 μ πιを超えると、 バリ 1 3 aを十分に除去することができなくなるおそれが ある。
これに対し、 開口径が小さくなるに従って、 穴を形作る壁は厚くなり、 微視的 な観点での硬さは増すことから、 開口径を 4 8 i m未満とすれば、 テクスチャ 一 1 3を削り、 その形状に影響を与えるおそれがある。 一方、 この実施形態において、 スクラブ処理工程は、 パリを除去することに 加えて、 ガラス素板 1 1 aの表面に付着した、 除去後のパリ 1 3 a、 テクスチ ヤー形成時の研磨粉、 研磨スラリー等といった付着物を除去することも目的と する。 このため、 この実施形態のスクラブ処理工程では、 ガラス素板 1 1 aの 表面に洗浄液をシャワーしつつ、 同表面をスクラブパッド 2 2で擦ることによ り、 その表面の付着物が擦り落として取り除かれる。 洗浄液としては、 水、 純水、 ィソプロピルアルコール等のアルコール等の中 性水溶液が挙げられる。 この他に中性水溶液として、 塩ィヒナトリゥム等のアル 力リ金属塩等といった無機塩の水溶液を電気分解することにより得られた電解 水や、 ガスが溶解されたガス溶解水等の機能水が挙げられる。 さらに、 ガラス 材料に対してェツチング能を有するアル力リ性水溶液、 酸性水溶液等を洗浄液 として使用してもよい。 この場合には、 ガラス材料に対するエッチング能が低 い、 例えば水酸化力リゥム水溶液等のアル力リ性水溶液を使用することが好ま しい。 パリ 1 3 aを除去するとともに、 付着物を擦り落とし、 かつテクスチャー 1 3の形状に影響を与えないようにするため、 スクラブパッド 2 2には、 スクラ ブパッド 2 2全体での巨視的な観点で、 テクスチャー 1 3を削り取らない程度 の軟らかさが必要とされる。 このため、 スクラブパッド 2 2には、 前に挙げた 材料を用いてこれを形成したとき、 スクラブパッド 2 2全体での硬さを示す値 としての、 S R I S O 1 0 1に規定されるァスカー Cの硬度が、 4 0〜7 0の ものを使用することが好ましい。 ァスカー Cの硬度が 4 0未満の場合、 パリ 1
3 aのみならず、 付着物をも十分に除去することができなくなるおそれがある。 ァスカー Cの硬度が 7 0を超える場合、 パリ 1 3 aや付着物だけでなくテクス チヤ一 1 3までをも削り取ってしまうおそれがある。 当該スクラブパッド 2 2でガラス素板 1 1 aの表面を擦る時間は、 好ましく は 2〜2 0秒である。 前述したように、 機械式テクスチャー形成法によるパリ 1 3 aは、 従来のケミカル式テクスチャー形成法のものに比べれば除去しやす いものである。 このため、 スクラブパッド 2 2でガラス素板 1 1 aの表面を過 剰に長い時間、 つまり 2 0秒を超えて擦れば、 パリ 1 3 aが除去されたテクス チヤ一 1 3の上部を削り取ることとなり、 テクスチャー 1 3の形状に影響を与 えるおそれがある。 一方、 スクラブパッド 2 2でガラス素板 1 1 aの表面を擦 る時間を過剰に短く、 つまり 2秒未満とすれば、 パリ 1 3 aや付着物が十分に 除去されていない可能性があり、 得られるガラス基板 1 1の品質を低下させる こととなる。 当該スクラブパッド 2 2でガラス素板 1 1 aの表面を擦るとき、 スクラブパ ッド 2 2とガラス素板 1 1 aとの接触圧力は、 好ましくは 4 . 9〜4 9 k P a である。 この接触圧力は、 スクラブパッド 2 2の形状、 厚み等を種々変更する ことによって調整される。 つまりは、 スクラブパッド 2 2のガラス素板 1 1 a への接触面に同心円状の溝を形成したり、 厚みを増減したりすることによって 接触圧力が調整される。 接触圧力が 4 . 9 k P aより低レ、場合、 スクラブ処理 工程に係る作業時間が長くなつたり、 バリ 1 3 aや付着物等を十分に除去でき なくなつたり等の不具合を生じるおそれがある。 接触圧力が 4 9 k P aより高 い場合、 テクスチャーの形状に影響が与えられたり、 表面に接触傷が発生した り、 作業時にガラス素板 1 1 aが割れたり等の不具合を生じるおそれがある。 スクラブパッド 2 2の回転速度は、 好ましくは毎分 1 0〜5 0 0回 (m i n_
つ である。 回転速度が低すぎたり、 高すぎたりすると、 ガラス素板 1 l aの 表面からスクラブパッド 22が浮き上がつたり、 スクラブパッド 22が過剰に 接触したりして、 スクラブパッド 22の接触状態が不均一になり易く、 バリ 1 3 aや付着物等の不十分な除去、 接触傷の発生のような不具合を生じるおそれ 力 sある。 次いで、 テクスチャー上でのバリの有無を測定する方法について説明する。 バリの有無の測定には、 A FMでの測定結果を基に求められるベアリングレ シォ (BR) と、 ベアリングハイ ト (BH) を使用した方法が用いられる。 な お、 同 AFMでは、 J I S B 0601の規定に従い、 その走査線毎に粗さ曲 線を求めることが可能であり、 同粗さ曲線に基づき、 ガラス素板 1 1 aの表面 の凹凸を鳥瞰図として示すことができる。 このベアリングレシオ B と、 ベア リングハイト BHを使用した方法によれば、 バリの有無の他、 テクスチャーの 形状をも観察することが可能である。 まず、 ベアリングレシオ BRについて、 以下に説明する。 ベアリングレシオ BRを求めるためには、 まず第 1に、 ガラス素板 1 1 aの 表面の所定領域内において、 その表面状態が A FMを用いて測定される。 測定 された領域の面積が基準面積とされる。 例えば、 測定された領域が 1 0 /zm四 方の正方形であれば、 基準面積は 100 μιτα2である。 第 2に、 図 4 (a) 〜 (c) に示すように、 ガラス素板 1 1 aの表面と平行 な面に沿って各テクスチャー 13の画像が切断される。 ここでは、 図 4 (a) 中の 4 B— 4 B線を含む面で各テクスチャー 1 3の画像を切断したそれぞれの 切断面 14を図 4 (b) に示し、 4 C一 4 C線を含む面でテクスチャー 13を 切断した切断面 14を図 4 (c) に示す。 その後、 各テクスチャー 13の切断 面 14の面積の合計が算出される。 この切断面 14の面積の合計が、 測定面積
とされる そして、 前述の基準面積に対する当該測定面積の割合が、 ベアリングレシオ
BRとして示される。 例えば、 基準面積に対する測定面積の割合が 50%なら ば、 ベアリングレシオ B Rは 50 %であり、 その割合が 0. 0 1 %ならば、 ベ ァリングレシオ BRは 0. 01%である。 次に、 ベアリングハイト BHについて、 以下に説明する。
ベアリングハイ ト BHを求めるためには、 まず第 1に、 前記ベアリングレシ ォ BRが 50 %となる位置が求められる。 このベアリングレシオ BRが 50% となる位置が、 図 4 (a) 中に示した基準面 1 5とされる。 第 2に、 前記ベア リングレシオ B Rが所定値となるときに各テクスチャーを切断する面が求めら れる。 各テクスチャーを切断する面が測定面とされる。 ここでは、 図 4 (a) 中で、 4 B— 4 B線を含む面又は 4 C— 4 C線を含む面が測定面である。 そし て、 前述の基準面 1 5から当該測定面までの高さは、 ベアリングレシオ BRが X%のときのべアリングハイ トを BH (X) として示される。 例えば、 4B— 4 B線を含む面を測定面としたとき、 ここでのベアリングレシオ BRが 10% ならば、 ベアリングハイ トを BH (10) と表記し、 基準面 1 5から 4B— 4 B線を含む測定面までの高さ H 1が 0. 5 nmならば、 ベアリングハイ ト BH (10) は 0. 5 nmである。 また、 4 C— 4 C線を含む面を測定面としたと き、 ここでのベアリングレシオ BRが 0. 1 %ならば、 ベアリングハイ トを B H (0. 1) と表記し、 基準面 1 5から 4 C_4 C線を含む測定面までの高さ H 2が 1. 5 nmならば、 ベアリングハイ ト BH (0. 1 ) は 1. 5 nmであ る。 図 9は、 上記のようにして測定したベアリングレシオ BR (単位は%) とべ アリングハイト BH (単位は nm) との関係を示すグラフである。 図 4 (a)
に示したように、 テクスチャー 1 3は尾根状をなすものである。 このため、 ベ ァリングレシオ BRが大きくなるに従い、 テクスチャー 1 3の基端側 (裾野 部) に近づき、 これに伴ってベアリングハイト BH (X) は小さくなる。 これ とは逆に、 ベアリングレシオ BRが小さくなるに従い、 テクスチャー 13の上 端側 (頂上部) に近づき、 これに伴ってベアリングハイト BH (X) は大きく なる。 そして、 ベアリングレシオ BRとべアリングハイト BH (X) とは、 図 9中に実線 41で示したような関係を有する。 この実線 41で示した関係を以 後、 基準線 41と呼ぶ。 ここで、 図 6に示すように、 テクスチャー 1 3が良好な形状、 つまりはバリ や凹みがなく一定の勾配の尾根状をなすとき、 ベアリングハイトとベアリング レシオとの関係は、 基準線 41のように、 その大半が略直線的に表され、 ベア リングレシオ BRが小さくなると、 その傾斜が緩やかになる。 これに対し、 図 4 (a) に示すように、 テクスチャー 1 3上に細く切り立ったバリが存在する とき、 ベアリングレシオ BRが小さくなると、 ベアリングハイト BH (X) が 急激に上昇することから、 ベアリングレシオ BRとべァリングハイト BHとの 関係は、 図 9中に二点鎖線で示したような第 1異常線 42で示される。 第 1異 常線 42で示すような関係は、 機械式テクスチャー形成法でパリが形成された 場合に頻繁に見られる。 また、 図 5に示すように、 テクスチャー 1 3の頂上部が歪むことによってそ の一部が突出し、 これがバリ 1 3 aとなるとき、 ベアリングハイ ト BH (X) が急激に上昇する。 この場合、 ベアリングハイ ト B Hとべアリングレシオ B R との関係は、 図 9中に一点鎖線で示したような第 2異常線 43によって示され る。 第 2異常線 43のような関係は、 ケミカル式テクスチャー形成法でバリが 形成された場合に頻繁に見られる。
従って、 異なるベアリングレシオ BR毎に複数のベアリングハイト BH (X) を求め、 任意に選択した 2つのべアリングハイト BH (X) の差につい て検討することにより、 バリの有無、 テクスチャーの形状を測定することが可 能となる。 そして、 製造時におけるガラス素板について、 異なる BR毎に求め た複数の BH (X) の差を所定の値に維持することにより、 パリの発生を防止 し、 テクスチャーの形状を一定とすることが可能となる。 具体的には、 パリの存在は BH (0. 01) から BH (0. 4) の範囲で確 認される。 これは、 図 7に示したような A FMによる鳥瞰図と、 図 9のグラフ に示したような BRと BH (X) との関係とを照らし合わせ、 その結果、 本願 の発明者等によって初めて見出されたものである。 つまり、 図 7を見ると、 テ タスチヤ一 13の尾根上に所々細く切り立った部分が観測されており、 この部 分をバリ 13 aとしたところ、 同バリ 13 aは BH (0. 01) 〜BH (0. 4) の範囲内に存在していたことによる。 例えば、 2つの BH (X) の差、 すなわち、 第 1の差 (BH (0. 01) — BH (0. 4) ) は、 0. 01〜1. 0 nmであることが必要である。 第 1の 差 BH (0. 01) -BH (0. 4) が 0. O l nm未満の場合、 テクスチャ 一 1 3がその上端が平坦な断面略台形状をなすように形成されてしまう。 第 1 の差 (BH (0. 01) — BH (0. 4) ) が 1. O nmを超える場合、 テク スチヤー 13上に細く切り立った部分、 つまりバリ 1 3 aが形成されることと なる。 そして、 第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) を 0. 01〜 1 · 0 nmとすることで、 バリの形成を防止することが可能となる。 また、 テクスチャーの形状について、 第 2の差 (BH (0. 4) -BH (1. 0) ) は、 好ましくは 0. 15〜0. 20 nmである。 第 2の差 (BH (0. 4) -BH (1. 0) ) が 0. 15 nm未満の場合、 ベアリングレシオ BRが
0. 4%未満の位置において、 ベアリングハイト BHが急激に上昇する箇所が 高い確率で存在することを示し、 テクスチャー 1 3の尾根に高く突出した部分 が形成されてしまうおそれがある。 第 2の差 (BH (0. 4) 一 BH (1. 0) ) が 0. 2 nmを超えると、 ベアリングレシオ B Rが 0. 4 %未満の位置 において、 高い確率でベアリングハイト BHが上昇せず、 テクスチャーの尾根 に低く凹んだ部分が形成されてしまうおそれがある。 また、 テクスチャーの形状について、 第 2の差 (BH (0. 4) -BH (1.
0) ) が 0. 1 7〜0. 20 n mであり、 かつ第 1の差 (B H ( 0. 01) — BH (0. 4) ) が 0. 2〜0. 7 nmであることが好ましい。 例えば、 ケミ 力ル式テタスチヤ一形成法によるものと似通つた形状のパリが形成された場合、 このバリの存在は第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) に基づいて いては十分に確認することができない。 また、 先に挙げたように、 第 1の差
(BH (0. 01) -BH (0. 4) ) が 0. 01〜1. O nmの範囲を満た し、 あるいは、 第 2の差 (BH (0. 4) -BH (1. 0) ) が 0. 15〜0. 20 nmの範囲を満たしていても、 ベアリングレシオ BRとべァリングハイト BHの関係泉を描くと、 例えば、 BH (1. 0) と BH (0. 01) とを結ぶ 線が前記の基準線 41のような線を描かない場合もあり得る。 そこで、 テクス チヤ一の形状をより詳細に評価するには、 第 2の差 (BH (0. 4) -BH
(1. 0) ) と、 第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) との関係に 加え、 関連する各位置、 すなわち、 BH (0. 01) , BH (0. 4) 及び B H (1. 0) を確認することが好ましい。 そして、 第 1の差 (BH (0. 0
1) — BH (0. 4) ) 及び第 2の差 (BH (0. 4) 一 BH (1. 0) ) の 双方が前に挙げた範囲を満たし、 かつ、 両方の差における. BH (0. 4) の位 置がほぼ一致する場合には、 ベアリングレシオとベアリングハイトとの関係は 略直線状をなし、 勾配の均一なテタスチヤ一を形成することが可能となる。
カロえて、 第 3の差 (BH (1. 0) -BH (1 5. 0) ) の値は、 第 2の差 (BH (0. 4) -BH (1. 0) ) の値よりも大きくなることが好ましい。 第 3の差 (BH (1. 0) -BH (15. 0) ) の値が第 2の差 (BH (0. 4) 一 BH (1. 0) ) の値よりも小さいと、 ベアリングレシオ BRとべァリ ングハイ ト BHの関係線は下方へ膨らむように湾曲する。 この場合には、 細く 切り立ったバリ 13 aがテクスチャー 13の延びる方向へ連続して形成されて しまうおそれがある。 図 9に示すように、 前記ベアリングレシオ BRが 0. 4〜1 5. 0%の範囲 においては、 ベアリングハイ ト BH (X) はリニアに変化することが望ましい。 この場合、 テクスチャー 1 3の大半が一定の勾配の尾根状に形成される。 前記実施形態によって発揮される効果について、 以下に記載する。
前記実施形態のガラス基板 1 1によれば、 その表面にテクスチャー処理を施 す際、 機械式テクスチャー形成法によるものであることから、 テクスチャー 1 3は、 その形状を精度よく制御された状態で形成される。 しかし、 同じく機械 式テクスチャー形成法であるため、 テクスチャー 1 3上には異常な高さの突起 であるバリ 13 aが高い確率で形成される。 同テクスチャー処理においては、 テクスチャー 1 3を形成した後、 100%モジュラスが 3〜4 OMP aの合成 樹脂を材料としたスクラブパッド 22を用い、 ガラス素板 1 1 aの表面を擦る こととしている。 このようスクラプパッド 22でガラス素板 1 1 aを擦ると、 バリ 13 aはスクラブパッド 22によって折り取られ、 確実に除去される。 従 つて、 テクスチャー 13上でのバリ 13 aの発生を抑えることができる。 また、 製造されるガラス基板 1 1は、 その第 1の差 (BH (0. 01) 一 B H (0. 4) ) が 0. 01〜1. O nmとされている。 このため、 テクスチャ 一 13上でのパリ 1 3 aの発生を確実に抑えることができる。
スクラブパッド 22は、 ァスカー Cの硬度で 40〜70とされている。 この ため、 スクラブパッド 22でガラス素板 1 1 aの表面を擦るとき、 同表面がス クラブパッド 22によって傷つけられることを防止することができる。 スクラプパッド 22には、 その表面の穴の開口径が 48〜60 μπιのものが 使用されており、 その穴を形作る壁の厚みが調整されている。 このため、 スク ラブパッド 22によってガラス素板 1 1 aの表面が傷つけられることを防止し つつ、 パリ 13 aを確実に除去することができる。 また、 スクラブパッド 22でガラス素板 1 1 aの表面を擦る時間は、 2〜2 0秒である。 機械式テクスチヤ一形成法によるバリ 1 3 aは、 容易に折り取り、 除去することが可能であるため、 擦る時間を適度なものとすることにより、 ノ リ 13 aを確実に除去しつつ、 スクラブパッド 22によってガラス素板 1 1 a の表面が傷つけられることを防止することができる。 スクラブパッド 22には、 ウレタン樹脂を材料とする発泡体よりなるものが 使用されている。 このため、 100%モジュラスを確実に 3〜4 OMP aとす ることができる。 実施例
以下、 前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
フロート法により得られたアルミノシリケ一トガラスよりなるガラス素板の 表面に、 図 3 (a) , (b) に示すテタスチヤ一マシンを使用し、 機械式テク スチヤー形成法により、 テクスチャーを形成した。 このとき、 ガラス素板の組 成は、 S i O2が 63mo 1 %、 A 1203が 1 6mo 1 %、 Na20がl lmo 1 %、 L i 2Oが 4 m o 1 %、 M g Oが 2 m o 1 %、 C a Oが 4 m o 1 %であつ
た。 また、 ガラス素板のサイズは、 厚み 0. 65mm、 外径 65mm、 内径 2 0mmであった。 機械式テクスチャー形成法において、 研磨剤にはダイヤモン ド製で、 平均粒径が 0. 2 μ mの砥粒を使用した。 その後、 図 2に示す クラブ装置で、 100%モジュラスが 2 OMP aのポ リウレタン (PU) よりなるスクラブパッド 22を使用し、 ガラス素板の表面 を擦ってパリ 13 aを除去し、 ガラス基板を得た。 これを実施例 1の試料とし た。 また、 ケミカル式テクスチャー形成法でテクスチャーを形成した以外は、 実 施例 1と同様の処理を施すことにより、 比較例 1のガラス基板を試料として得 た。 上記の実施例 1及ぴ比較例 1について、 スクラブパッド 22で擦る前のガラ ス素板の第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) を測定したところ、 実施例 1では 4. 3 nmであり、 比較例 1では 4. 6 nmであった。 この後、 スクラブパッド 22でガラス素板を 0. 5秒間擦り、 第 1の差 (BH (0. 0 1) 一 BH (0. 4) ) を測定したところ、 実施例 1では 3. 6 nmであり、 比較例 1では 4. 1 n mであつた。 つまり、 実施例 1では、 0. 5秒で 0. 7 nmの高さ分だけバリを除去できたが、 これに対し比較例 1では、 0. 5 nm の高さ分だけしかバリを除去することができなかった。 その後、 1秒、 1. 5 秒、 2秒で測定したところ、 実施例 1では、 第 1の差 (BH (0. 01) — B H (0. 4) ) が 2. 1 nm, 2. O nm、 1. 9 nmとなった。 これに対し、 比較例 1では、 3. 9 nm、 2. 5 nm、 2. 4 nmとなった。 これらの結果 より、 機械式テクスチャー形成法によるパリは、 ケミカル式テクスチャー形成 法によるパリと比較し、 明らかに除去しやすいものであることが示された。
次いで、 実施例 1と同様の処理を施すとともに、 スクラブパッド 22でガラ ス素板 1 1 aの表面をテクスチャー 1 3の延びる方向と交差する方向に沿って 擦ったものを実施例 2の試料とし、 テクスチャー 1 3の延びる方向に沿って擦 つたものを比較例 2の試料とした。 このとき、 スクラブパッド 22で擦る前の 第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) は、 実施例 2で 4. 4nm、 比較例 2で 4. 5 n mであった。 これに対し、 スクラブパッド 22で擦つた後 の第 1の差 (BH (0. 01) — BH (0. 4) ) は、 実施例 2で 2. 3 nm、 比較例 2で 3. 6 nmとなった。 これらの結果より、 修正パッドであるスクラ ブパッド 22でガラス素板 1 1 aの表面を擦る際、 テクスチャー 13の延びる 方向と交差する方向へ擦ることにより、 バリが確実に除去されることが示され た。 また、 比較例 3については、 スクラブパッド 22で擦らず、 比較例 4及び 5 と、 実施例 3〜21については、 スクラブパッド、 22のパット材料及び作業時 間を表 1に示すように変更し、 パリの除去を行った。 なお、 表 1には、 各パッ ト材料における 100%モジュラスも合わせて示す。 そして、 第 1の差 (BH (0. 01) — BH (0. 4) ) を測定した。 この結果を表 1に示す。 表 1に おいて、 PUはポリウレタンを示し、 PV.Aはポリビニルアルコールを示す。
1
100%モジュラス BH0.01- パッド材料 作業時間 (秒)
(MPa) BH0.4 (nm) 比較例 3 - - - 1.50 比較例 4 PVA 1.5 20 1.40 比較例 5 PVA 1.5 18 1.30 実施例 3 PU 17 2 0.60 実施例 4 PU 17 4 0.66 実施例 5 PU 17 6 0.68 実施例 6 PU 17 8 0.58 実施例 7 PU 17 10 0.46 実施例 8 PU 17 14 0.52 実施例 9 PU 17 20 0.47 実施例 10 PU 17 6 0.68 実施例 11 PU 17 7 0.56 実施例 12 PU 20 2 0.30 実施例 13 PU 13 2 0.32 実施例 14 PU 13 10 0.48 実施例 15· PU 9 2 0.43 実施例 16 PU 9 6 0. D 卖施例 17 PU 9 10 0.41 卖施例 18 PU 20 6 0.45 実施例 19 PU 20 10 0.44 実施例 20 PU 20 20 0.45 実施例 21 PU 20 40 0.40
表 1の結果より、 100%モジュラスが 1. 5MP aである比較例 4及び 5 では、 第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) がそれぞれ 1. 4nm 及ぴ 1. 3 nmと高く、 パリがほとんど除去されていないことが示された。 こ れに対し、 実施例 3〜21では、 第 1の差 (BH (0. 01) -BH (0. 4) ) が 0. 01〜1. O nmの範囲内となり、 パリが除去されていることが 示された。 これらの結果より、 修正パッドに使用する材料の 100 %モジュラ スを 3〜4 OMP aとすることで、 バリを有効に除去できることが示された。
' なお、 前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
情報記録媒体として要求される耐衝撃性、 耐振動性、 耐熱性等を満たすため、 テクスチャー処理よりも前の工程、 あるいはテクスチャー処理よりも後の工程 でガラス素板に化学強化処理を施してもよい。 この化学強化処理とは、 ガラス 基板の,袓成中に含まれるリチウムイオンゃナトリゥムイオン等の一価の金属ィ オンを、 これと比較してそのイオン半径が大きなナトリクムイオンや力リゥム イオン等の一価の金属イオンにイオン交換することをいう。 そして、 ガラス基 板の表面に圧縮応力を作用させて化学強化する方法である。 この化学強化処理 は、 化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液に、 ガラス基板を所定時間浸漬 することによって行われる。 化学強化:^の具体例としては、 硝酸カリウム、 硝 酸ナトリウム、 硝酸銀等をそれぞれ単独、 あるいは少なくとも 2種を混合した ものが挙げられる。 化学強化処理液の温度は、 ガラス基板に用いた材料の歪点 よりも好ましくは 50〜 150 °C程度低レ、温度であり、 より好ましくは化学強 化処理液自身の温度が 300〜 450 °C程度である。 ガラス基板の材料の歪点 よりも 150°C程度低い温度未満では、 ガラス基板を十分に化学強化処理する ことができない。 一方、 ガラス基板の材料の歪点よりも 50°C程度低い温度を 超えると、 ガラス基板に化学強化処理を施すときに、 ガラス基板に歪みが発生 するおそれがある。
実施形態のスクラブ処理工程は、 バリを除去する処理と、 ガラス素板の表面 に付着した付着物を取り除く、 所謂洗浄処理とを兼ねる工程としたが、' これに 限らず、 バリを除去する処理と、 洗浄処理とをそれぞれ別の工程で行ってもよ い。 すなわち、 スクラブ処理工程では洗浄液を使用せず、 バリを除去するのみ とし、 このスクラブ処理工程よりも前の工程又は後の工程として新たに洗浄処 理を設け、 ガラス素板の表面に付着した付着物を除去するように構成してもよ レ、。 修正パッドは、 実施形態で示したスクラブパッド 2 2に限らず、 テクスチャ 一の延びる方向と交差する方向に沿ってガラス素板を擦ることが可能であり、 かつ 1 0 0 %モジュラスが 3〜4 O M P aの材料よりなるものであれば、 いず れを使用してもよい。 従って、 修正パッドさえこれらの条件を満たすなら、 例 えばテクスチャーマシンを使用して修正パッドとしての研磨テープで擦る、 修 正パッドとしてのスポンジを使用して手で擦る等の方法でパリを除去してもよ レ、。