JP2007118172A - 研磨装置、研磨方法、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法 - Google Patents

研磨装置、研磨方法、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】配向パターンを有する回転ブラシを用いた場合であっても、基板端面の面取部を裏表均等に研磨することが可能な研磨装置、研磨方法、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法を提案することを目的としている。
【解決手段】円盤状または円柱状の被研磨体1の外周面に接触する一対の回転ブラシ2、3を備え、被研磨体1と一対の回転ブラシ2、3を各々平行な軸心で同方向に回転させて被研磨体1の外周面の研磨を行う研磨装置であって、一対の回転ブラシ2、3が各々螺旋状の配向パターンを有するとともに、各回転ブラシ2、3の配向パターンが互いに逆向きとなるように設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気記録媒体用のガラス基板および磁気ディスクの製造方法に関し、特に基板端面の研磨についての研磨装置および研磨方法に関する。
近年、情報化技術の高度化に伴い、情報記録技術、特に磁気記録技術は著しく進歩している。磁気記録媒体のひとつであるHDD(ハードディスクドライブ)等の磁気記録媒体用基板としては、アルミニウム基板が広く用いられてきた。しかし磁気ディスクの小型化、薄板化、および高密度記録化に伴い、アルミニウム基板に比べ基板表面の平坦性及び基板強度に優れたガラス基板に徐々に置き換わりつつある。
また、磁気記録技術の高密度化に伴い、磁気ヘッドの方も薄膜ヘッドから、磁気抵抗型ヘッド(MRヘッド)、大型磁気抵抗型ヘッド(GMRヘッド)へと推移してきており、磁気ヘッドの基板からの浮上量が10nm程度にまで狭くなってきている。このような磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドには固有の障害としてサーマルアスペリティ障害を引き起こす場合がある。サーマルアスペリティ障害とは、磁気ディスク面上の微小な凸或いは凹形状上を磁気ヘッドが浮上飛行しながら通過するときに、空気の断熱圧縮または接触により磁気抵抗効果型素子が加熱されることにより、読み出しエラーを生じる障害である。従って磁気抵抗効果型素子を搭載した磁気ヘッドに対しては、磁気ディスク表面は極めて高度な平滑度および平坦度が求められる。また塵埃や異物が付着したまま磁性層を形成すると凸部が形成されてしまうため、ガラス基板には、凹凸をなくすことによる発塵の防止、異物の除去する高度な洗浄が求められている。
さらに近年は、携帯機器に大容量の磁気記録媒体を搭載すべく、基板のサイズは縮小化の傾向がある。このため従来の3.5インチ基板や2.5インチ基板から、1.8インチ基板、1インチ基板、もしくはさらに小さな基板が求められるようになってきている。基板が小さくなれば許容される寸法誤差も小さくなり、さらに精密な外形加工が求められている。
上記のような状況において、従来からも、特開平10−154321(特許文献1)に示されるように、ガラス基板の端面(内周端面および外周端面)を所定以下の粗さの鏡面に研磨する構成が提案されている。これにより、パーティクル(塵埃)の発生および付着を防止し、基板主表面の凸部形成を防止して、ヘッドクラッシュやサーマルアスペリティを防止できるとしている。
また特開2004−155652(特許文献2)には、外周端面を研磨するための構成として、図4に示すように、複数枚の磁気ディスク用ガラス基板1を積層して円柱状とし、螺旋状の配向パターンを有する一対の回転ブラシ2をガラス基板1の外周面に接触させ、ガラス基板1の外周面を研磨する構成が記載されている(特に0041、図11、図12参照)。一対の回転ブラシ2とガラス基板1は各々平行な軸心で同方向(図ではCCW:反時計回り方向)に回転させると共に、回転ブラシ2は上下に移動させてまんべんなく研磨するように構成されている。回転ブラシを螺旋状の配向パターンとすることにより、スラリーを積極的に行き渡らせることができ、効率よく、かつ均一に研磨することができるとしている。
また特開2001−162510(特許文献3)には、ガラス基板の端面を研磨するために積層するに際し、ガラス基板の間にスペーサを介在させる構成が記載されている。ガラス基板の端面10には側壁部11と面取部12、13が形成されているが(図5(b)参照)、スペーサ14を介在させることにより端面の面取部にブラシの毛が入りやすく、研磨残りが生じないとしている。
特開平10−154321号公報 特開2004−155652号公報 特開2001−162510号公報
しかし、図4に示した研磨装置においては、回転ブラシが螺旋状の配向パターンを有している。従って図5(a)に示すように、斜線で示す回転ブラシ2とガラス基板1との接触部位において、ブラシの毛はガラス基板1に対し回転方向に移動すると共に、螺旋の進行方向(図では上方向)に向かって移動する。このため図5(b)に示すように基板端面は下側が多く研磨され(これをアップカットと称する)、下側の面取部13の長さD2の方が、上側の面取部12の長さD1よりも長くなる。なお図示しないが、ガラス基板1および回転ブラシ2を逆方向(CW:時計回り方向)に回転させた場合は逆に上側が研磨され(これをダウンカットと称する)、上側の面取部12の長さD1の方が、下側の面取部13の長さD2よりも長くなる。
このように基板両側の研磨量が異なると、形状に不均一性が生じ、規定寸法を満たさなくなり、歩留まりの低下を招くおそれがある。また、面取部の取代が基板両側で不均一となれば、主表面の面積に差異が生じることになり、基板両側で記録に利用できる有効面積が変わることとなる。これは、特に近年の磁気ディスクおよびガラス基板の小型化により、わずかな寸法差が大きな影響を持つようになってきたことが背景にある。また一方側ばかりが多く研磨されるにもかかわらず、他方側が研磨不良となって所定の表面粗さに満たない場合もあり、パーティクルの発生および吸着の原因となるおそれもある。
そこで本発明は、配向パターンを有する回転ブラシを用いた場合であっても、基板端面の面取部を裏表均等に研磨することが可能な研磨装置、研磨方法、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法を提案することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明に係る研磨装置の代表的な構成は、円盤状または円柱状の被研磨体の外周面に接触する一対の回転ブラシを備え、前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて前記被研磨体の外周面の研磨を行う研磨装置であって、前記一対の回転ブラシが各々螺旋状の配向パターンを有するとともに、各回転ブラシの配向パターンが互いに逆向きとなるように設けられていることを特徴とする。上記構成の研磨装置によれば、螺旋状の配向パターンを有する回転ブラシであっても被研磨体の軸心方向について同様にブラシ毛を運ぶことができ、均等に研磨することができる。本構成は、被研磨体が、複数枚の円盤状の磁気ディスクを積層して円柱状をなしている場合に特に有益である。
本発明に係る研磨方法の代表的な構成は、互いに逆向きとなる螺旋状の配向パターンを有する一対の回転ブラシを円盤状または円柱状の被研磨体の外周面に接触させ、前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて該被研磨体の外周面を研磨することを特徴とする。上記研磨方法によれば、螺旋状の配向パターンを有する回転ブラシを用いて被研磨体の軸心方向について均等に研磨することができる。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の代表的な構成は、複数枚の磁気ディスク用ガラス基板を積層して円柱状の被研磨体を構成し、互いに逆向きとなる螺旋状の配向パターンを有する一対の回転ブラシを前記被研磨体の外周面に接触させ、前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて該被研磨体の外周面を研磨する磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。上記製造方法によれば、積層したガラス基板の軸心方向について均等に研磨することができる。
前記ガラス基板は外周端面が面取り加工されており、前記一対の回転ブラシは前記面取り加工された面も研磨することを特徴とする。これにより、基板端面の面取部を裏表均等に研磨することができる。
前記ガラス基板は、アルミノシリケートガラスからなることでもよい。かかる場合に磁気ディスク用として良好なガラス基板を得ることができる。
本発明に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法の他の代表的な構成は、外周端面の基板両面側に面取部を有するガラス基板を複数枚積層した円柱状の被研磨体に対して、互いに逆向きとなる配向パターンを有する一対の回転ブラシを被研磨体の外周面に接触させ、被研磨体と一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて該被研磨体の外周面を研磨することにより、一対の回転ブラシの一方はガラス基板の一面側の面取部を主として研磨し、他方はガラス基板の他の面側の面取部を主として研磨することを特徴とする。上記製造方法によれば、互いに逆向きとなる配向パターンを有する回転ブラシであっても被研磨体の軸心方向について同様にブラシ毛を運ぶことができ、ガラス基板両側の面取部を均等に研磨することができる。
互いに逆向きとなる配向パターンを備えた一対の回転ブラシは、巻き方向が互いに異なる螺旋状に毛が配向されていてもよい。また互いに逆向きとなる配向パターンを備えた一対の回転ブラシは、回転軸に対して毛が一定の方向に傾斜した回転ブラシを2本用い、この毛の傾斜の向きが互いに反対向きになるように配置して研磨を行う組み合わせとしてもよい。
また本発明に係る磁気ディスクの製造方法の代表的な構成は、上記ガラス基板の製造方法により得られたガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする。これにより極めて高度な平滑度および平坦度を備えた磁気ディスクを製造することができる。
本発明によれば、螺旋状の配向パターンを有する回転ブラシを用いた場合であっても、基板端面の面取部を裏表均等に研磨することができる。従って基板の端面形状を均等にして歩留まりの低下を防止することができる。また両側の面取部の研磨品質を向上できることから、パーティクルの発生および吸着を防止し、高品質なガラス基板、ひいては高品質な磁気ディスクを得ることができる。
本発明に係る研磨装置、研磨方法、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクの製造方法の実施形態について、図を用いて説明する。図1は本実施形態にかかる研磨装置の概略構成図、図2は研磨部位の要部拡大図である。
図1は基板の端面研磨装置を説明する図である。ガラス基板1は複数枚が積層されて、円柱状の被研磨体を構成している。本実施形態では、この被研磨体を2つ同時に研磨する構成となっている。積層されたガラス基板1には回転ブラシ2、3が接触している。これらガラス基板1および回転ブラシ2、3は各々平行な軸心で同方向(図ではCCW:反時計回り方向)に回転させることにより、ガラス基板1の外周面の研磨を行う。またガラス基板1と回転ブラシ2、3の接点にはノズル4が近接されており、スラリー(研磨材)が供給される。
図2に示すように、ガラス基板1は、これより前のフォーミング工程において面取り加工され、既に端面10に側壁部11と面取部12、13とが形成されている。またガラス基板1は、スペーサ14を介して積層されている。
スペーサ14は、ガラス基板1の内周端面及び外周端面の面取部の研磨ブラシによる研磨残りを確実に防止するため、及び、研磨時におけるガラス基板等の破損を確実に防止するために設けられている。スペーサ14の形状は、ガラス基板1と同じく中心部に円孔を有する円板状である。スペーサ14の外径は、装着した際、スペーサの端部がガラス基板1の面取部12、13終端から0〜2mm程度内側(好ましくは0.5〜2mm程度内側)になるように、ガラス基板1の大きさにしたがって調整される。スペーサ14の厚さは、使用するブラシ毛の線径によって適宜調整され、0.1〜0.3mm程度が好ましい。またスペーサ14の材質としては、ポリウレタン、アクリル、プラスチック、ゴム、研磨工程で使用する研磨パッドと同じ材料などガラス基板1より軟質な材料からなることが好ましい。
回転ブラシ2、3はナイロン製の繊維からなり、外形が略円柱状であり、かつ外周面が研磨面となっている。回転ブラシ2、3のブラシ毛としては、蛇行形にカールさせたナイロン繊維(直径0.1〜0.3mm、長さ5〜10mm)が使用されているが、ナイロン繊維の代わりに塩化ビニル繊維、豚毛、ピアノ線、ステンレス製繊維などを用いてもよい。硬度が低い繊維、あるいは柔軟性の高い繊維を利用すれば、ブラシ毛の弾性変形によって擦る力が過大になることを防止でき、スクラッチなどの傷の発生をより良好に防止できる。また、カールさせた繊維は、窪み等に対する接触性がよく、ガラス基板1の面取部12、13をより効率よく研磨することが可能になる。なお、ブラシ毛として、樹脂に研磨剤を混入しこれを成形してブラシ毛に研磨剤を含有したものを用いれば、研磨速度をさらに高めることができる。
ここで回転ブラシ2、3は、ブラシ毛を互いに逆向きとなる螺旋状の配向パターンで植毛したものである。螺旋の傾斜角は±2°〜80°であり、好ましくは±45°〜70°である。基板の外周端面部分を研磨する場合、ブラシ毛の傾斜角を大きくすることにより、側壁部11と面取部12、13の両方を効率良く研磨加工することができる。
そして、特に2つの回転ブラシ2、3の螺旋を逆向きとしたことにより、図1に示すように、回転ブラシ2とガラス基板1との接触部位において、ガラス基板1の軸心方向について同様にブラシの毛を運ぶことができる。すなわち、図1において回転ブラシ2は、ガラス基板1に対し回転方向に移動すると共に、螺旋の進行方向(図では上方向)に向かって移動する。一方、回転ブラシ3は、ガラス基板1に対し回転方向に移動すると共に、螺旋の進行方向(図では下方向)に向かって移動する。
従って図2に示すように、回転ブラシ2のブラシ毛はガラス基板1の下側の面取部13に作用し(アップカット)、回転ブラシ3のブラシ毛はガラス基板1の上側の面取部12に作用する(ダウンカット)。
なお、上記の効果を奏するには、回転ブラシの毛を螺旋状に配向すること以外に、例えば、回転軸に対して毛が一定の方向に傾斜した回転ブラシを2本用い、この毛の傾斜の向きが互いに反対向きになるように配置して研磨を行う組み合わせとしてもよい。この場合にも、一方の回転ブラシがアップカットに作用し、他方の回転ブラシがダウンカットに作用することになる。
上記構成によれば、端面10の両側の面取部12、13を均等に研磨することができる。従ってガラス基板1の端面形状を均等にして歩留まりの低下を防止することができ、生産コストの低減化を図ることができる。また両側の面取部12、13の研磨品質を向上できることから、パーティクルの発生および吸着を防止して高清浄なガラス基板得ることができ、ひいてはパーティクルに起因する凸部のない平滑度の高い磁気ディスクを得ることができる。
なお、上記説明においてガラス基板1はスペーサ14を介して積層すると説明したが、必ずしもスペーサ14を用いることは必要でない。
[実施例1]
この実施例においては、以下の工程を経て、磁気ディスク用ガラス基板および磁気ディスクを製造した。
(1)形状加工工程及び第1ラッピング工程
本実施例に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法においては、まず、板状ガラスの表面をラッピング(研削)加工してガラス母材とし、このガラス母材を切断してガラスディスクを切り出す。板状ガラスとしては、様々な板状ガラスを用いることができる。この板状ガラスは、例えば、溶融ガラスを材料として、プレス法やフロート法、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法など、公知の製造方法を用いて製造することができる。これらのうち、プレス法を用いれば、板状ガラスを廉価に製造することができる。板状ガラスの材質としては、アモルファスガラスやガラスセラミクス(結晶化ガラス)を利用できる。板状ガラスの材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等を用いることができる。特にアモルファスガラスとしては、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用基板を供給することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。
本実施例においては、溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成型し、アモルファスの板状ガラスを得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO:58〜75重量%、Al:5〜23重量%、LiO:3〜10重量%、NaO:4〜13重量%を主成分として含有するものを使用した。
次に、この板状ガラスの両主表面をラッピング加工し、ディスク状のガラス母材とした。このラッピング加工は、遊星歯車機構を利用した両面ラッピング装置により、アルミナ系遊離砥粒を用いて行った。具体的には、板状ガラスの両面に上下からラップ定盤を押圧させ、遊離砥粒を含む研削液を板状ガラスの主表面上に供給し、これらを相対的に移動させてラッピング加工を行った。このラッピング加工により、平坦な主表面を有するガラス母材を得た。また、このラッピング加工により、ガラス母材の板厚は、板状ガラスよりも削減され、0.6mmとなった。
(2)切り出し工程(コアリング、フォーミング)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から、直径29mmのガラス基板を切り出した。ガラス母材の直径は96mmであり、1枚のガラス母材から、6枚のガラス基板を採取することができた。
次に、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、このガラス基板の中心部に円孔を形成し、ドーナツ状のガラス基板とした(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施した(フォーミング)。
(3)端面研磨工程
次に、ガラス基板の端面について、ブラシ研磨方法により、鏡面研磨を行った。このとき、研磨砥粒としては、酸化セリウム砥粒を含むスラリー(遊離砥粒)を用いた。次に、内周側端面については、磁気研磨法により鏡面研磨を行った。そして、端面研磨工程を終えたガラス基板を水洗浄した。この端面研磨工程により、ガラス基板の端面は、パーティクル等の発塵を防止できる鏡面状態に加工された。これによりガラス基板の直径は27.4mmとなり、1インチ型磁気ディスクに用いる基板とすることができる。
なお、この端面研磨工程においては、ガラス基板を重ね合わせて端面をポリッシングするが、この際に、ガラス基板の主表面にキズ等が付くことを避けるため、後述する第1研磨工程よりも前、あるいは、第2研磨工程の前後に行うことでもよい。
ここで端面研磨工程は、上記説明した研磨装置および研磨方法を用いて行った。これにより、基板両側の面取部を均等な研磨量とすることができ、また両側の面取部を同等に鏡面研磨することができた。
[評価]
本実施例に係る研磨装置と、従来の研磨装置を用いて、表面性状(鏡面状態)と研磨量について評価を行った。図3は比較例の構成と評価の結果を説明する図である。
図3(a)に示すように、比較例1は従来例にて説明した構成であって、同一の配向パターンの回転ブラシ2を2つ備え、ガラス基板1および一対の回転ブラシ2をCCW方向に回転させたものである。比較例2は同一のブラシ構成において、ガラス基板1および一対の回転ブラシ2をCW方向に回転させたものである。そして実施例は上記説明したように、配向パターンが逆向きとなる回転ブラシ2、3を備え、CCW方向に回転させたものである。
図3(b)は、基板両側の面取部12、13の表面性状を比較した図である。なお表面性状の検査は、電子顕微鏡で観察することによって評価した。すると比較例1では、下側の面取部13は100%のガラス基板1が鏡面となっていたが、上側の面取部12が鏡面になっていたものは31%程度に留まっていた。比較例2では上側の面取部12は90%が鏡面となっていたが、下側の面取部13が鏡面になっていたものは32%程度であった。これらに対し実施例の構成では、両側の面取部12、13がいずれも100%のものが鏡面となっていた。
図3(c)は、比較例1の場合と実施例の場合とで面取部の断面形状を比較した図である。図において描かれている円は曲率を表すための補助線である。比較例1では、上側の面取部12はあまり研磨されておらず、曲率が大きくなっている(角張っている)。そして下側の面取部13は多く研磨され、曲率が小さくなっている(丸まっている)。これに対し実施例の構成では、両側の面取部12、13の曲率は同程度であって、研磨量が同程度となっていることがわかる。
これらのことから、螺旋状の配向パターンを有する回転ブラシを用いた場合であっても、基板端面の面取部を裏表均等に研磨することができ、また両側の面取部の研磨品質を向上できたことがわかる。
なお、本実施例では螺旋状の配向パターンを有する回転ブラシを用いて説明しているが、回転軸に対して毛が一定の方向に傾斜した回転ブラシを2本用い、この毛の傾斜の向きが互いに反対向きになるように配置して研磨を行う組み合わせとしてもよい。この場合にも、同様に一方の回転ブラシがアップカットに作用し、他方の回転ブラシがダウンカットに作用することになるため、基板端面の面取部を裏表均等に研磨することができ、また両側の面取部の研磨品質を向上できる。
(4)第2ラッピング工程
次に、得られたガラス基板の両主表面について、第1ラッピング工程と同様に、第2ラッピング加工を行った。この第2ラッピング工程を行うことにより、前工程である切り出し工程や端面研磨工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後続の主表面に対する研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
(5)主表面研磨工程
主表面研磨工程として、まず第1研磨工程を施した。この第1研磨工程は、前述のラッピング工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とするものである。この第1研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、硬質樹脂ポリッシャを用いて、主表面の研磨を行った。研磨剤としては、酸化セリウム砥粒を用いた。
この第1研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤、純水(1)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。
次に、主表面研磨工程として、第2研磨工程を施した。この第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。この第2研磨工程においては、遊星歯車機構を有する両面研磨装置により、軟質発泡樹脂ポリッシャを用いて、主表面の鏡面研磨を行った。研磨剤としては、第1研磨工程で用いた酸化セリウム砥粒よりも微細な酸化セリウム砥粒を用いた。
この第2研磨工程を終えたガラス基板を、中性洗剤(1)、中性洗剤(2)、純水(1)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して、洗浄した。なお、各洗浄槽には、超音波を印加した。
(6)化学強化工程
次に、前述のラッピング工程及び研磨工程を終えたガラス基板に、化学強化を施した。化学強化は、硝酸カリウム(60%)と硝酸ナトリウム(40%)を混合した化学強化溶液を用意し、この化学強化溶液を400°Cに加熱しておくとともに、洗浄済みのガラス基板を300°Cに予熱し、化学強化溶液中に約3時間浸漬することによって行った。この浸漬の際には、ガラス基板の表面全体が化学強化されるようにするため、複数のガラス基板が端面で保持されるように、ホルダーに収納した状態で行った。
このように、化学強化溶液に浸漬処理することによって、ガラス基板の表層のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化溶液中のナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換され、ガラス基板が強化される。ガラス基板の表層に形成された圧縮応力層の厚さは、約100μm乃至200μmであった。
化学強化処理を終えたガラス基板を、20°Cの水槽に浸漬して急冷し、約10分間維持した。そして、急冷を終えたガラス基板を、約40°Cに加熱した濃硫酸に浸漬して洗浄を行った。さらに、硫酸洗浄を終えたガラス基板を、純水(1)、純水(2)、IPA(イソプロピルアルコール)、IPA(蒸気乾燥)の各洗浄槽に順次浸漬して洗浄した。なお、各洗浄槽には超音波を印加した。
上記の如く、第1ラッピング工程、切り出し工程、端面研磨工程、第2ラッピング工程、第1及び第2研磨工程、精密洗浄、化学強化工程を施すことにより、平坦、かつ、平滑な、高剛性の磁気ディスク用ガラス基板を得た。
(7)テクスチャー処理工程
テープ式のテクスチャー装置を用いて、研磨、及び円周状テクスチャー処理を施した。テープには織物タイプのテープを、硬質研磨剤には平均粒径0.125μmの多結晶ダイヤモンドが分散剤・潤滑剤(グリセリン)に溶かしてあるスラリーを用いて行った。このテクスチャー工程の後に、前記研磨剤のダイヤモンドスラリーと分散剤(潤滑剤)を洗い流すため、超純水シャワーによる前洗浄を5秒間行った。
(8)精密洗浄工程
次に、テクスチャーを形成したガラスディスクの精密洗浄を行った。これはヘッドクラッシュやサーマルアスペリティ障害の原因となる研磨剤残渣や外来の鉄系コンタミなどを除去し、表面が平滑で清浄なガラス基板を得るためのものである。この精密洗浄工程は以下の一連の洗浄工程を含む。
まず、洗浄液による洗浄工程を実施した。この洗浄液は、KOHとNaOHを1:1で混合した薬液を超純水で希釈し、洗浄能力を高めるために非イオン界面活性剤を添加した。洗浄液のPHは、超純水の希釈により12となるように調整した。ガラスディスクをこの洗浄液に浸漬させた上で揺動させながら2分間洗浄した。なお、このとき洗浄液の温度は50℃とし、超音波を加えて洗浄効果を高めるようにした。
次に、水リンス洗浄工程を2分間行った。これは、前述の洗浄で用いた洗浄液の残渣を除去するためのものである。次いで、IPA洗浄工程を2分間行った。これは、ガラスディスクを洗浄するとともに、基板上の水を除去するためのものである。最後に、IPA蒸気乾燥工程を2分間行った。これは、基板に付着している液状IPAをIPA蒸気により除去しつつ乾燥させるためのものである。
(9)磁気ディスク製造工程
上述した工程を経てテクスチャーを施されたガラス基板の両面に、枚葉式のスパッタリング装置を用いて、シード層、Cr下地層、CrMo下地層、CoPtCrTa磁性層、水素化カーボン保護層を成膜し、ディップ法によりパーフルオロポリエーテル潤滑層を形成して磁気ディスクを作製した。
得られた磁気ディスクについて異物により磁性層等の膜に欠陥が発生していないことを確認した。また、グライドテストを実施したところ、ヒット(ヘッドが磁気ディスク表面の突起にかすること)やクラッシュ(ヘッドが磁気ディスク表面の突起に衝突すること)は認められなかった。さらに、磁気抵抗型ヘッドで再生試験を行ったところ、サーマルアスペリティによる再生の誤動作は認められなかった。
本発明は、磁気記録媒体用のガラス基板および磁気ディスクの製造方法として、特に基板端面の研磨についての研磨装置および研磨方法として利用することができる。
実施形態にかかる研磨装置の概略構成図である。 研磨部位の要部拡大図である。 比較例の構成と評価の結果を説明する図である。 従来の端面研磨装置を説明する図である。 従来の研磨部位の要部拡大図である。
符号の説明
1 …ガラス基板
2、3 …回転ブラシ
4 …ノズル
10 …端面
11 …側壁部
12、13 …面取部
14 …スペーサ

Claims (8)

  1. 円盤状または円柱状の被研磨体の外周面に接触する一対の回転ブラシを備え、前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて前記被研磨体の外周面の研磨を行う研磨装置であって、
    前記一対の回転ブラシが各々螺旋状の配向パターンを有するとともに、各回転ブラシの配向パターンが互いに逆向きとなるように設けられていることを特徴とする研磨装置。
  2. 前記被研磨体は、複数枚の円盤状の磁気ディスクを積層して円柱状をなしていることを特徴とする請求項1記載の研磨装置。
  3. 互いに逆向きとなる螺旋状の配向パターンを有する一対の回転ブラシを円盤状または円柱状の被研磨体の外周面に接触させ、前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて該被研磨体の外周面を研磨することを特徴とする研磨方法。
  4. 複数枚の磁気ディスク用ガラス基板を積層して円柱状の被研磨体を構成し、
    互いに逆向きとなる螺旋状の配向パターンを有する一対の回転ブラシを前記被研磨体の外周面に接触させ、
    前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて該被研磨体の外周面を研磨することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  5. 前記ガラス基板は外周端面が面取り加工されており、前記一対の回転ブラシは前記面取り加工された面も研磨することを特徴とする請求項4記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  6. 前記ガラス基板は、アルミノシリケートガラスからなることを特徴とする請求項4記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  7. 外周端面の基板両面側に面取部を有するガラス基板を複数枚積層した円柱状の被研磨体に対して、互いに逆向きとなる配向パターンを有する一対の回転ブラシを前記被研磨体の外周面に接触させ、
    前記被研磨体と前記一対の回転ブラシを各々平行な軸心で同方向に回転させて該被研磨体の外周面を研磨することにより、
    前記一対の回転ブラシの一方はガラス基板の一面側の面取部を主として研磨し、他方はガラス基板の他の面側の面取部を主として研磨することを特徴とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
  8. 請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法により得られたガラス基板の表面に、少なくとも磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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