JP2004265461A - 情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】テクスチャー上でのバリの発生を抑えることができる情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供する
【解決手段】情報記録媒体用ガラス基板は、機械式テクスチャー形成法により、円盤状をなすガラス素板の表面に複数のライン状をなすテクスチャーを形成して製造される。また、このガラス素板は、テクスチャーを形成した後、100%モジュラスが3〜40MPaの材料よりなる修正パッドでその表面を、テクスチャーの延びる方向と交差する方向へ擦られることにより、テクスチャー上に発生したバリを除去されている。
【選択図】 なし
【解決手段】情報記録媒体用ガラス基板は、機械式テクスチャー形成法により、円盤状をなすガラス素板の表面に複数のライン状をなすテクスチャーを形成して製造される。また、このガラス素板は、テクスチャーを形成した後、100%モジュラスが3〜40MPaの材料よりなる修正パッドでその表面を、テクスチャーの延びる方向と交差する方向へ擦られることにより、テクスチャー上に発生したバリを除去されている。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばハードディスク等のような情報記録装置の磁気記録媒体である磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体に用いられる情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関するものである。より詳しくは、その表面に複数のテクスチャーが形成された情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のような情報記録媒体の1つである磁気ディスクは、円盤状をなすガラス基板の表面に磁性膜等を積層することによって作製されている。このガラス基板は、磁気ディスクに要求される高密度、大容量の記録を可能とするため、その表面が平滑となるように研磨加工を施される。一方で、表面を平滑に研磨された磁気ディスクは、情報を読み取るためのヘッドが吸着しやすくなる。この吸着の低減を目的とし、テクスチャー処理を施すことにより、ガラス基板の表面に適度な表面凹凸であるテクスチャーを形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−117532号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のテクスチャー処理の方法としては、ケミカル式テクスチャー形成法と機械式テクスチャー形成法の主に2通りが挙げられる。ケミカル式テクスチャー形成法とは、ガラス基板を酸性水溶液、アルカリ性水溶液等からなるエッチング液に浸漬する等してその表面をエッチングし、テクスチャーを形成する方法である。機械式テクスチャー形成法とは、テクスチャーマシン等を用い、ガラス基板の表面に研磨スラリーを供給しながら研磨テープ等を摺接させることによってテクスチャーを形成する方法である。
【0005】
ケミカル式テクスチャー形成法と、機械式テクスチャー形成法とを比較した場合、ケミカル式テクスチャー形成法は、機械式テクスチャー形成法に比べ、テクスチャーの形成を簡単に行うことができるという利点を有する。一方で、ケミカル式テクスチャー形成法においては、エッチング液にガラス基板を浸漬する等の手法では、テクスチャーの形状を精密に制御しながらこれを形成することは極めて難しいものとなる。特に、高密度、大容量の記録を可能とするためには、均一な形状のテクスチャーをガラス基板の表面全体に均一に分散させて形成する必要がある。そして、テクスチャーの形状を精密に制御するには、ケミカル式テクスチャー形成法よりも、機械式テクスチャー形成法が有利となる。
【0006】
しかし、機械式テクスチャー形成法は、ケミカル式テクスチャー形成法に比べ、テクスチャー上に異常な高さの突起であるバリが発生しやすく、このバリによってテクスチャーの形状が不均一なものとなるという問題がある。つまり、ケミカル式テクスチャー形成法であれば、理論的にはガラス基板の表面が均一にエッチングされることからバリは発生しにくい。これに対し、機械式テクスチャー形成法は、ガラス基板の表面を研磨スラリーで削る際、表面に加わる応力、削り残し等により、バリが発生しやすくなるためである。従って、機械式テクスチャー形成法においては、いかにバリの発生を抑えるかが重要課題となっていた。
【0007】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、テクスチャー上でのバリの発生を抑えることができる情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、円盤状をなすガラス素板の表面を研磨した後、その表面にテクスチャー処理を施して製造される情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記テクスチャー処理は、ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しながら研磨部材を摺接させる機械式テクスチャー形成法により、ガラス素板の表面にその略周方向へ延びるライン状のテクスチャーを形成するための工程と、テクスチャーを形成するときにテクスチャー上に形成される異常な高さの突起であるバリを除去し、テクスチャーの形状を修正するための工程とを備えるとともに、該テクスチャーの形状の修正は、100%モジュラスが3〜40MPaの合成樹脂を材料とする発泡体よりなる修正パッドを使用し、この修正パッドでガラス素板の表面をテクスチャーの延びる方向と交差する方向へ擦ることによって行われることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、前記修正パッドには、アスカーCの硬度で40〜70のものを使用することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記修正パッドには、その表面の穴の開口径が48〜60μmのものを使用することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記修正パッドでガラス素板の表面を擦る時間が、2〜20秒であることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記修正パッドには、ウレタン樹脂を材料とする発泡体よりなるものを使用することを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された情報記録媒体用ガラス基板であって、その表面の所定領域を原子間力顕微鏡で測定した際、所定領域の面積を基準面積とし、当該表面と平行な面でテクスチャーを切断した場合のテクスチャーの切断面の面積を測定面積としたときの、基準面積に対する測定面積の割合をベアリングレシオ(BR)として、該BRが50%となる位置を基準面とし、BRが所定値(X%)となるようにテクスチャーを切断する面を測定面としたときの、基準面から測定面までの高さをベアリングハイト(BH(X))とした場合、バリの存在はBH(0.01)からBH(0.4)の範囲で確認されるとともに、テクスチャー上からバリを除去した状態で、BH(0.01)とBH(0.4)との差が0.01〜1.0nmであることを要旨とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、情報記録媒体用ガラス基板11(以下、略して「ガラス基板11」とも記載する)は、シート状のガラス板から円盤状に切り出されたガラス素板を研磨等することにより、中心に円孔12を有する円盤状に形成されている。このガラス素板は、フロート法、ダウンドロー法、リドロー法又はプレス法で製造されたソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、結晶化ガラス等の多成分系のガラス材料より形成されている。さらに、このガラス素板にテクスチャー加工を施すことにより、当該ガラス基板11は、その表面に複数のテクスチャー13が形成されている。これらテクスチャー13は、それぞれガラス基板11の周方向へ延びるライン状をなしている。そして、テクスチャー13が形成されたガラス基板11の表面に、例えばコバルト(Co)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属又は合金よりなる磁性膜、保護膜等を形成することにより、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体が構成される。
【0015】
テクスチャー13を有するガラス基板11は、好ましくは表面の微小うねりの高さ(NRa)が0.2nm以下であり、表面粗さ(Ra)が0.5nm以下である。また、この場合の表面のうねりの高さ(Wa)は、好ましくは0.5nm以下である。なお、NRaとは、Zygo社製の三次元表面構造解析顕微鏡(NewView200)を用い、測定波長(λ)を0.2〜1.4mmとして表面の所定領域を白色光で走査して測定された値を示すものである。Raとは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定された値を示すものである。Waとは、PhaseMetrix社製の多機能ディスク干渉計(Optiflat)を用い、測定波長(λ)を0.4〜5.0mmとして表面の所定領域を白色光で走査して測定された値を示すものである。
【0016】
このガラス基板11において、NRa、Ra及びWaのうち、特にNRaが0.2nmを超え、Raが0.5nmを超えると、その表面が荒れた平滑性の低いものと判断される。これは、近年の情報記録媒体は、さらなる高密度記録化を図るため、情報記録媒体の表面とヘッドとの距離をさらに接近させる傾向があるためである。このヘッドが情報記録媒体上を移動する際、Waならば、若干大きくとも、うねりの高低差にヘッドが追従することが可能である。しかし、NRa及びRaが大きいと、ヘッドは微小うねりの高低差に追従できなかったり、凹凸を飛び越えることができなかったり等して、凹凸に引っ掛かったり、衝突したり等の不具合が頻繁に発生しやすくなる。
【0017】
一方で、表面の平滑性が過剰に高すぎると、ヘッドが情報記録媒体の表面に吸着され、移動が不可能になったりする等の不具合を発生させる。そこで、テクスチャー13は、ガラス基板11の表面を平滑としながらも、ヘッドとの接触面積を低減するために形成されている。図8に示すように、テクスチャー13が形成されたガラス基板11の表面は、ほぼ均一な高さの凹凸状をなすことにより、平滑でありながら、ヘッドとの接触面積が低減されている。そして、テクスチャー13は、ヘッドとの接触面積を低減することにより、情報記録媒体の表面に対するヘッドの吸着を抑制するという機能を発揮する。また、当該テクスチャー13は、ガラス基板11を情報記録媒体とした際、高い磁気異方性と保磁力を付与するという機能をも有する。これは、磁性膜を形成する金属の原子が、テクスチャー13の側面で配向良く並べられることが理由であると考えられる。
【0018】
次に、前記ガラス基板の製造方法について説明する。
ガラス基板は、円盤加工工程、端面面取り工程、研削工程、研磨工程、洗浄処理工程及びテクスチャー処理工程を経て製造される。
【0019】
前記円盤加工工程においては、シート状のガラス板を超硬合金又はダイヤモンド製のカッターを用いて切断することにより、その中心に円孔を有する円盤状のガラス素板が形成される。前記端面面取り工程においては、ガラス素板の内外周端面が研削され、外径及び内径寸法が所定長さとされるとともに、内外周端面の角部が研磨されて面取り加工される。
【0020】
前記研削工程においては、ガラス素板に対し、研磨装置を用いてラップ処理が施されることにより、ガラス素板全体での反りが修正され、ガラス素板が略平坦な板とされる。前記研磨工程においては、ガラス素板に対し、研磨装置を用い、複数段階に分けて研磨処理が施されることにより、ガラス素板の表面が平滑面とされる。前記洗浄処理工程においては、洗浄液を使用し、研磨処理後のガラス素板に洗浄処理が施されることにより、ガラス素板の表面に付着した研磨剤、研磨粉、塵埃等の付着物が除去される。
【0021】
前記テクスチャー処理工程においては、研磨工程でその表面を平滑とされたガラス素板に対してテクスチャー処理が施され、ガラス素板の表面にテクスチャーが設けられることにより、ガラス基板が製造される。このテクスチャー処理は、テクスチャーを形成するための工程であるテクスチャー形成工程と、テクスチャーの形状を修正するための工程であるスクラブ処理工程との主に2工程に分けて施される。
【0022】
前記テクスチャー形成工程について説明する。このテクスチャー形成工程では、ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しながら、研磨部材を摺接させるという機械式テクスチャー形成法により、ガラス素板の表面にライン状のテクスチャーが形成される。そして、この機械式テクスチャー形成法では、テクスチャーマシンと呼ばれる装置が使用される。
【0023】
ここで、テクスチャーマシンについて説明する。
図3(a),(b)に示すように、当該テクスチャーマシン内において、ガラス素板11aは、図示しないスピンドルにより、その周方向へ回転するように支持されている。ガラス素板11aの両側部には、一対のローラ31がガラス素板11aを挟んで対向配置されている。各ローラ31は、図示しない支持部材に対し、回転軸32を中心に回動自在に支持されるとともに、それぞれがガラス素板11aの半径方向に延びるように配設されている。また、これらローラ31は、それぞれがガラス素板11aに対して接近又は離間可能に構成されている。
【0024】
ガラス素板11aの表面と、各ローラ31との間には、研磨部材としてのテープ部材33がそれぞれ配設されている。これらテープ部材33は、ガラス素板11aの表面と各ローラ31との間を通って、その一端側から他端側へと移動するように構成されている。該テープ部材33とガラス素板11aの表面との間には、図示しない供給部から研磨スラリーが供給されるとともに、テープ部材33には、この研磨スラリーに含まれる砥粒が付着するように構成されている。
【0025】
上記のテクスチャーマシンにおいて、テープ部材33は、回転するガラス素板11aの表面に一対のローラ31が両側方から接近することにより、ガラス素板11aの表面に摺接される。このテープ部材33の摺接により、ガラス素板11aの表面には前記砥粒が押し付けられる。このときガラス素板11aはスピンドルによって回転された状態であることから、ガラス素板11aの表面が砥粒によって削られ、同表面に複数の浅い筋状の微細な溝が同心円状に形成される。そして、これら浅い筋状の微細な溝がテクスチャーマシンでの加工時間に応じてより深く削られ、このような溝の間の部分にテクスチャーが同心円状をなすように形成される。
【0026】
前記テープ部材33には、織物、不織布、植毛品等のようなスウェード材等といった、その表面に極微細な凹凸を有するものが使用される。これは、テープ部材33の極微細な凹凸に砥粒を引っ掛ける等することにより、同テープ部材33の表面に砥粒を保持するためである。また、テープ部材33の材料には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂、綿等の天然繊維が使用されている。特にスウェード材よりなるものであれば、合成樹脂製の発泡体を使用することも可能である。
【0027】
前記研磨スラリーとしては、ダイヤモンド製の砥粒を水等の溶媒に分散させて得られるダイヤモンドスラリーが主に使用される。また、砥粒の粒径は、平均粒径(D50)で好ましくは0.05〜0.3μmであり、より好ましくは0.08〜0.25μmである。D50が0.05μm未満の場合、ガラス素板に対する研磨能力の低下を招き、テクスチャーの形成速度が遅くなるため、歩留まりの低下、加工コストの高騰を招くおそれがある。一方、D50が0.3μmを超えると、一つ一つの砥粒の粒径差が顕著となり、テクスチャーを均一な形状で形成することが難しくなるおそれがある。
【0028】
また、ガラス素板11aは、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.35〜1.0nmである。このガラス素板11aは、テクスチャー形成工程よりも前の工程である研磨工程でこのようなRaとなるように研磨される。Raが0.35nm未満の場合、ガラス素板11aの表面で砥粒が滑りやすくなり、テクスチャーの形状を精密に制御することができなくなるおそれがある。Raが1.0nmを超えると、このガラス素板11aから製造されたガラス基板は、表面品質の低いものとなるおそれがある。つまり、表面に大きな凹凸が残されたままの状態でテクスチャーを形成すれば、このような凹凸によってテクスチャーの上端部分に凹み、歪み等の欠陥が修正されず、残ることとなり、このような欠陥がガラス基板の表面の平滑性等といった表面品質を低下させる。
【0029】
前記スクラブ処理工程について説明する。上記のテクスチャー形成工程で機械式テクスチャー形成法によってテクスチャーを形成する場合、大半のテクスチャーは形状の揃ったものとなるが、一部のテクスチャー上には、異常な高さの突起からなるバリが形成されてまう。そこで、このスクラブ処理工程では、修正パッドとしてのスクラブパッドを使用し、このスクラブパッドでガラス素板の表面が擦られることにより、テクスチャー上に形成されたバリが除去される。
【0030】
ここで、機械式テクスチャー形成法でテクスチャー上に形成されるバリについて記載する。研磨スラリーに含まれる砥粒には、その粒径に若干の差異があり、一つ一つの砥粒が形成する溝の深さ及び幅に差異を生じることから、テクスチャーの高さ等の形状にもばらつきが生じることとなる。例えば、溝が深く、幅広に形成された箇所では、テクスチャーは低く、細くなる。これとは逆に、溝が浅く、幅狭に形成された箇所では、テクスチャーは高く、太く形成される。特に、機械式テクスチャー形成法においては、ガラス素板の表面が砥粒で削られるとき、砥粒から加わる応力によってその周縁部分が潰れて歪んだり、崖状に切り立ったり、あるいは削り残しが発生したり等する可能性が高い。
【0031】
このように各テクスチャーの形状がばらつく場合、それぞれの尾根(テクスチャーの頂上)も波状をなすように歪むこととなる。この歪みは不均一なものとなりやすく、歪んだ尾根の一部には、他の尾根の高さと比較して異常に高く、細く鋭い突起状をなすものが存在しており、これが前記バリとなる。また、このようなバリは、テクスチャー上に散逸的に形成されることに限らず、テクスチャーの延びる方向へ複数が連続して形成されることも多々ある。
【0032】
一方、従来のケミカル式テクスチャー形成法は、ガラス素板の表面をエッチング液でエッチング、つまり溶かしてテクスチャーを形成する方法である。従って、ケミカル式テクスチャー形成法は、機械式テクスチャー形成法に比べてバリが形成されにくい方法ではあるが、ガラス素板の表面が不均一にエッチングされたときにバリが形成されてしまう場合がある。そして、このケミカル式テクスチャー形成法で形成されるバリは、テクスチャーの形成方法が全く異なるものであることから、機械式テクスチャー形成法で形成されるバリとは、その形状及び性質が大きく異なる。
【0033】
形状について、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリを詳細に測定した場合、図5に示すように、このバリ13aは、丸みを帯びた山状をなすものとなる。つまり、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリ13aは、スクラブパッドで擦る際にスクラブパッドから加わる外力を受け流しやすい形状をなし、除去しにくいものとなりやすい。これに対し、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、図4(a)に示すように、細く鋭い突起状となすものとなる。従って、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、スクラブパッドから加わる外力を受け流しにくく、十分な外力を加えることが可能であり、除去しやすいものとなる。
【0034】
性質について、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリ13aの表面には、これを保護するようにエッチング液によって化学的性質の異なる層が形成されており、強い外力を加えなければ除去することは難しい。これに対し、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、周縁部分が砥粒で削られて形成されたものであることから、その表面に微細なひびを有しており、弱い外力を加えるだけでその基部から折り取り、除去することが十分に可能である。従って、機械式テクスチャー形成法は、ケミカル式テクスチャー形成法に比べてバリは形成されやすいが、しかし形成されたバリは、当該スクラブ処理工程で十分に除去可能なものとなる。
【0035】
当該スクラブ処理工程では、図2に示すようなスクラブ装置が使用される。すなわち、スクラブ装置内において、ガラス素板11aは、その下端部及び両側部の合計3箇所を3本の支持シャフト21によって支持されている。また、この状態でガラス素板11aは、各支持シャフト21に固定されることなく支持のみされることにより、外力を加えることで3本の支持シャフト21の内側で、その周方向へ回転可能に構成されている。
【0036】
ガラス素板11aの表面上には円形状をなすスクラブパッド22が配設されている。このスクラブパッド22は、支持シャフト21と平行に延びる軸23によって支持されている。この軸23は図示しない駆動装置に接続されており、この駆動装置から軸23を介して駆動力が伝達されることにより、スクラブパッド22は軸23を中心に図中に矢印で示す方向へ回転するように構成されている。また、このスクラブパッド22は、ガラス素板11aに対し、その外周縁がガラス素板11aの中心と重なるように、ガラス素板11aの直径方向へ位置ずれしており、そのほぼ半分がガラス素板11aに接触するように配設されている。
【0037】
スクラブ装置において、スクラブパッド22が回転すると、これに接触するガラス素板11aは、回転力を付与され、スクラブパッド22の回転方向と反対方向へ回転する。この状態で、ガラス素板11aの表面にはその周方向へ延びるようにテクスチャー13が形成されていることから、ガラス素板11aは、スクラブパッド22により、テクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦られる。このスクラブパッド22の摺接により、バリは、テクスチャー13上から折り取られ、除去される。
【0038】
テクスチャー13上からバリを確実に除去するためには、上記のように、スクラブパッド22でガラス素板11aを、そのテクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦る必要がある。
【0039】
すなわち、図7に示すように、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、その大半がテクスチャー13の延びる方向へ連続しており、テクスチャー13と同じ方向へ延びる壁のような形状で形成されている。このようなバリ13aを除去する場合、スクラブパッド22でガラス素板11aをテクスチャー13の延びる方向、つまりは周方向へ擦ると、一部のバリ13aが除去されない可能性がある。これは、他のバリ13aがスクラブパッド22の表面を変形させ、一部のバリ13aにスクラブパッド22が接触しなかったり、あるいは除去されたバリ13aが邪魔となり、スクラブパッド22からの外力が受け流されたり等するためと考えられる。これに対し、スクラブパッド22でガラス素板11aをテクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦れば、壁のような形状で形成されたバリ13aがスクラブパッド22からの外力を受け止めるように接触されることとなる。従って、より多くのバリ13aを折り取ることができ、バリ13aを確実に除去することが可能となる。
【0040】
当該スクラブパッド22には、合成樹脂製の発泡体よりなるスポンジ、スウェード材等が使用される。このスクラブパッド22によってバリ13aが除去される状況を詳細に検討すると、バリ13aは、スクラブパッド22の表面に形成された穴の内側に一旦入り込み、この穴を形作る周壁が横方向から接触されることによって折り取られるものと考えられる。そこで、このスクラブパッド22には、微視的な観点で、バリ13aに接触したときにガラス素板11aの表面に対するバリ13aの強度に押し負けない程度に硬いものが用いられる。この微視的な観点で硬いものとは、表面の穴を形作る周壁が硬いこと、つまりはスクラブパッド22に使用する材料そのものの硬さが硬いことを示す。
【0041】
従って、スクラブパッド22には、材料の硬さを示す値であり、JIS K 6256に規定される100%モジュラスが、3〜40MPaの合成樹脂を材料とするものが使用される。この100%モジュラスが3MPa未満のものを材料とした場合、バリ13aを十分に除去することができなくなる。100%モジュラスが40MPaを超えるものを材料とした場合、バリ13aのみでなく、テクスチャー13までをも削ってしまうこととなり、テクスチャー13の形状に影響を与えることとなる。
【0042】
このような材料としては、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。これは、ウレタン樹脂は、種類が同一のものであれば、100%モジュラスの値が高いものほど、樹脂中における分子の結晶化が進行し、スクラブパッド22の微視的な観点での硬さが確実に増すためである。このウレタン樹脂には、出発原料によってポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等の種類が存在する。これら種類の中でもスクラブパッド22の材料には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を使用することがより好ましい。これは、ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、他のものに比べ耐薬品性に優れており、例えばスクラブ処理工程時に酸性水溶液、アルカリ性水溶液等の洗浄液を使用する場合、その表面の微視的な観点での硬さを維持することが可能となるためである。
【0043】
また、スクラブパッド22としては、表面の穴の開口径が48〜60μmのものを使用することが好ましい。この穴の開口径が大きくなるに従って、穴を形作る周壁は薄くなり、微視的な観点での硬さが低くなることから、開口径が60μmを超えると、バリ13aを十分に除去することができなくなるおそれがある。これに対し、開口径が小さくなるに従って、穴を形作る周壁は厚くなり、微視的な観点での硬さは増すことから、開口径を48μm未満とすれば、テクスチャー13を削り、その形状に影響を与えるおそれがある。
【0044】
また一方で、この実施形態では、スクラブ処理工程においてバリを除去するとともに、ガラス素板11aの表面に付着した、除去後のバリ13a、テクスチャー形成時の研磨粉、研磨スラリー等といった付着物を除去することも目的とする。このため、この実施形態のスクラブ処理工程は、ガラス素板11aの表面に洗浄液をシャワーしつつ、同表面をスクラブパッド22で擦ることにより、その表面の付着物を擦り落として取り除くものとする。
【0045】
この洗浄液としては、水、純水、イソプロピルアルコール等のアルコール等の中性水溶液が挙げられる。この他に中性水溶液として、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩等といった無機塩の水溶液を電気分解することにより得られた電解水又はガスが溶解されたガス溶解水等の機能水等の中性水溶液が挙げられる。さらに、ガラス材料に対してエッチング能を有するアルカリ性水溶液、酸性水溶液等を洗浄液として使用してもよい。この場合には、ガラス材料に対するエッチング能が低い、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を使用することが好ましい。
【0046】
バリ13aを除去するとともに、付着物を擦り落とし、かつテクスチャー13の形状に影響を与えないようにするため、スクラブパッド22には、スクラブパッド22全体での巨視的な観点で、テクスチャー13を削り取らない程度の軟らかさが必要とされる。このため、スクラブパッド22には、前に挙げた材料を用いてこれを形成したとき、スクラブパッド22全体での硬さを示す値であり、SRISO101に規定されるアスカーCの硬度が、40〜70のものを使用することが好ましい。アスカーCの硬度が40未満の場合、バリ13aのみならず、付着物をも十分に除去することができなくなるおそれがある。アスカーCの硬度が70を超える場合、バリ13aや付着物だけでなくテクスチャー13までをも削り取ってしまうおそれがある。
【0047】
当該スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る時間は、好ましくは2〜20秒である。前述したように、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、従来のケミカル式テクスチャー形成法のものに比べれば除去しやすいものである。このため、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を過剰に長い時間、つまり20秒を超えて擦れば、バリ13aが除去されたテクスチャー13の上部を削り取ることとなり、テクスチャー13の形状に影響を与えるおそれがある。一方で、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る時間を過剰に短く、つまり2秒未満とすれば、バリ13aや付着物が十分に除去されていない可能性があり、得られるガラス基板11の品質を低下させることとなる。
【0048】
当該スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦るとき、スクラブパッド22とガラス素板11aとの接触圧力は、好ましくは4.9〜49kPaである。この接触圧力は、スクラブパッド22の形状、厚み等を種々変更することによって調整される。つまりは、スクラブパッド22のガラス素板11aへの接触面に同心円状の溝を形成したり、厚みを増減させることによって接触圧力が調整される。接触圧力が4.9kPaより低い場合、スクラブ処理工程に係る作業時間が長くなったり、バリ13a、付着物等を十分に除去できなくなったり等の不具合を生じるおそれがある。接触圧力が49kPaより高い場合、テクスチャーの形状に影響が与えられたり、表面に接触傷が発生したり、作業時にガラス素板11aが割れたり等の不具合を生じるおそれがある。
【0049】
スクラブパッド22の回転数は、好ましくは10〜500rpmである。回転数が低すぎたり、高すぎたりすると、ガラス素板11aの表面からスクラブパッド22が浮き上がったり、スクラブパッド22が過剰に接触したり等して、スクラブパッド22の接触状態が不均一になり易く、バリ13a、付着物等の不十分な除去、接触傷の発生等のような不具合を生じるおそれがある。
【0050】
次いで、テクスチャー上でのバリの有無を測定する方法について説明する。
バリの有無の測定には、AFMでの測定結果を基に求められるベアリングレシオ(BR)と、ベアリングハイト(BH)を使用した方法が用いられる。なお、同AFMでは、JIS B0601の規定に従い、その走査線毎に粗さ曲線を求めることが可能であり、同粗さ曲線に基づき、ガラス素板11aの表面の凹凸を鳥瞰図として示すことができる。このBRと、BHを使用した方法によれば、バリの有無の他、テクスチャーの形状をも測定することが可能である。まず、BRについて、以下に説明する。
【0051】
BRを求めるためには、まず第1に、ガラス素板11aの表面の所定領域内において、その表面状態がAFMを用いて測定される。この測定された所定領域の面積が基準面積とされる。例えば、測定された所定領域が10μm四方の正方形であれば、基準面積は100μm2である。
【0052】
第2に、図4(a)〜(c)に示すように、ガラス素板11aの表面と平行な面で各テクスチャー13が切断される。ここでは、図4(a)中の4B線を含む面で各テクスチャー13を切断したそれぞれの切断面14を図4(b)に示し、4C線を含む面でテクスチャー13を切断した切断面14を図4(c)に示す。その後、各テクスチャー13の切断面14の面積の合計が算出される。この切断面14の面積の合計が、測定面積とされる。
【0053】
そして、前述の基準面積に対する当該測定面積の割合が、BRとして示される。例えば、基準面積に対する測定面積の割合が50%ならば、BRは50%であり、割合が0.01%ならば、BRは0.01%である。
【0054】
次に、BHについて、以下に説明する。
BHを求めるためには、まず第1に、前記BRが50%となる位置が求められる。このBRが50%となる位置が、図4(a)中に示した基準面15とされる。第2に、前記BRが所定値となるときに各テクスチャーを切断する面が求められる。この各テクスチャーを切断する面が測定面とされる。ここでは、図4(a)中で、4B線を含む面又は4C線を含む面が測定面である。そして、前述の基準面15から当該測定面までの高さが、BRがX%のときのBH(X)として示される。例えば、4B線を含む面を測定面としたとき、ここでのBRが10%ならば、BH(10)と表記し、基準面15から4B線を含む測定面までの高さH1が0.5nmならば、BH(10)は0.5nmである。また、4C線を含む面を測定面としたとき、ここでのBRが0.1%ならば、BH(0.1)と表記し、基準面15から3C線を含む測定面までの高さH2が1.5nmならば、BH(0.1)は1.5nmである。
【0055】
図9は、上記のようにして測定したBR(単位は%)とBH(単位はnm)との関係を示すグラフである。図4(a)に示したように、テクスチャー13は尾根状をなすものである。このため、BRが大きくなるに従い、テクスチャー13の基端側(裾野部)に近づき、これに伴ってBH(X)は小さくなる。これとは逆に、BRが小さくなるに従い、テクスチャー13の上端側(頂上部)に近づき、これに伴ってBH(X)は大きくなる。そして、BRとBH(X)とは、図9中に実線で示したような関係線を描くこととなる。この実線で示した関係線を以後、基準関係線41とする。
【0056】
ここで、図6に示すように、テクスチャー13が良好な形状、つまりはバリ、凹み等がなく一定の勾配の尾根状をなすとき、基準関係線41のように、その大半が略直線状に延び、BRがある程度小さくなると傾斜が緩やかになる関係線となる。これに対し、図4(a)に示すように、テクスチャー13上に細く切り立ったバリが存在するとき、BRがある程度小さくなると、BH(X)が急激に上昇することから、図9中に一点鎖線で示したような第1異常関係線42となる。この第1異常関係線42のような関係線は、機械式テクスチャー形成法でバリが形成された場合に頻繁に見られる関係線である。
【0057】
また、図5に示すように、テクスチャー13の頂上部が歪むことによってその一部が突出した大きな尾根状をなし、これがバリ13aとなるとき、BH(X)がその途中で急激に上昇することから、図9中に一点鎖線で示したような第2異常関係線43となる。この第2異常関係線43のような関係線は、ケミカル式テクスチャー形成法でバリが形成された場合に頻繁に見られる関係線である。
【0058】
従って、異なるBR毎にBH(X)の差を求め、そのBH(X)の差を比較検討することにより、バリの有無、テクスチャーの形状を測定することが可能となる。そして、製造時におけるガラス素板について、異なるBR毎のBH(X)の差を所定値とすることにより、バリの発生を防止し、テクスチャーの形状を一定とすることが可能となる。
【0059】
具体的に、バリの存在はBH(0.01)からBH(0.4)の範囲で確認される。これは、本発明者等が図7に示したようなAFMによる鳥瞰図と、図9のグラフに示したようなBRとBH(X)との関係線とを照らし合わせ、その結果、初めて見出したものである。つまり、AFMによる鳥瞰図を見ると、テクスチャー13の尾根上に所々細く切り立った部分が観測されており、この細く切り立った部分をバリ13aとしたところ、同バリ13aはBH(0.01)〜BH(0.4)の範囲内に存在していたことによる。
【0060】
BH(X)の差であるBH(0.01)−BH(0.4)は、0.01〜1.0nmとされる。BH(0.01)−BH(0.4)が0.01nm未満の場合、テクスチャー13がその上端が平坦な断面略台形状をなすように形成されてしまう。BH(0.01)−BH(0.4)が1.0nmを超える場合、テクスチャー13上に細く切り立った部分、つまりバリ13aが形成されることとなる。そして、BH(0.01)−BH(0.4)を0.01〜1.0nmとすることで、バリの形成を防止することが可能となる。
【0061】
テクスチャーの形状について、BH(0.4)−BH(1.0)は、好ましくは0.15〜0.20nmである。BH(0.4)−BH(1.0)が0.15nm未満の場合、BRが0.4%未満の位置において、BHが急激に上昇する箇所が高い確率で存在することを示し、テクスチャー13の尾根に高く突出した部分が形成されてしまうおそれがある。BH(0.4)−BH(1.0)が0.2nmを超えると、BRが0.4%未満の位置において、高い確率でBHが上昇せず、テクスチャーの尾根に低く凹んだ部分が形成されてしまうおそれがある。
【0062】
また、テクスチャーの形状について、BH(0.4)−BH(1.0)が0.17〜0.20nmであり、かつBH(0.01)−BH(0.4)が0.2〜0.7nmであることが好ましい。例えば、ケミカル式テクスチャー形成法によるものと似通った形状のバリが形成された場合、このバリの存在はBH(0.01)−BH(0.4)では十分に確認することができない。また、BH(0.01)−BH(0.4)及びBH(0.4)−BH(1.0)の両方が前に挙げた範囲を満たしていても、BRとBHの関係線を描くと、同関係線が前記の基準関係線41のような線を描かない場合もあり得る。そこで、テクスチャーの形状をより詳細に評価するには、BH(0.4)−BH(1.0)と、BH(0.01)−BH(0.4)との関係を確認することが好ましい。そして、BH(0.01)−BH(0.4)及びBH(0.4)−BH(1.0)の双方が前に挙げた範囲を満たす場合、関係線は略直線状をなし、勾配の均一なテクスチャーを形成することが可能となる。
【0063】
加えて、BH(1.0)−BH(15.0)の値は、BH(0.4)−BH(1.0)の値よりも大きくなることが好ましい。BH(1.0)−BH(15.0)の値がBH(0.4)−BH(1.0)の値よりも小さいと、関係線は下方へ膨らむように湾曲する。この場合には、細く切り立ったバリ13aがテクスチャー13の延びる方向へ連続して形成されてしまうおそれがある。
【0064】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態のガラス基板11によれば、その表面にテクスチャー処理を施す際、機械式テクスチャー形成法によるものであることから、テクスチャー13は、形状を精度よく制御された状態で形成される。しかし、同じく機械式テクスチャー形成法であるため、テクスチャー13上には異常な高さの突起であるバリ13aが高い確率で形成される。同テクスチャー処理においては、テクスチャー13を形成した後、100%モジュラスが3〜40MPaの合成樹脂を材料としたスクラブパッド22を用い、ガラス素板11aの表面を擦ることとしている。このようスクラブパッド22でガラス素板11aを擦ると、バリ13aはスクラブパッド22によって折り取られ、確実に除去される。従って、テクスチャー13上でのバリ13aの発生を抑えることができる。
【0065】
・ また、製造されるガラス基板11は、そのBH(0.01)−BH(0.4)が0.01〜1.0nmとされている。このため、テクスチャー13上でのバリ13aの発生を確実に抑えることができる。
【0066】
・ また、スクラブパッド22は、アスカーCの硬度で40〜70とされている。このため、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦るとき、同表面がスクラブパッド22によって傷つけられることを防止することができる。
【0067】
・ また、スクラブパッド22には、その表面の穴の開口径が48〜60μmのものが使用されており、その穴を形作る周壁の厚みが調整されている。このため、スクラブパッド22によってガラス素板11aの表面が傷つけられることを防止しつつ、バリ13aを確実に除去することができる。
【0068】
・ また、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る時間は、2〜20秒である。機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、容易に折り取り、除去することが可能であるため、擦る時間を適度なものとすることにより、バリ13aを確実に除去しつつ、スクラブパッド22によってガラス素板11aの表面が傷つけられることを防止することができる。
【0069】
・ また、スクラブパッド22には、ウレタン樹脂を材料とする発泡体よりなるものが使用されている。このため、100%モジュラスを確実に3〜40MPaとすることができる。
【0070】
【実施例】
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
フロート法により得られたアルミノシリケートガラスよりなるガラス素板の表面に、図3(a),(b)に示したようなテクスチャーマシンを使用し、機械式テクスチャー形成法により、テクスチャーを形成した。このとき、ガラス素板の組成は、SiO2が63mol%、Al2O3が16mol%、Na2Oが11mol%、Li2Oが4mol%、MgOが2mol%、CaO 4mol%であった。また、ガラス素板のサイズは、厚み0.65mm、外径65mm、内径20mmであった。機械式テクスチャー形成法において、研磨剤にはダイヤモンド製であり、平均粒径が0.2μmの砥粒を含むものを使用した。
【0071】
その後、図2に示したようなスクラブ装置で100%モジュラスが20MPaのポリウレタンよりなるスクラブパッド22を使用し、ガラス素板の表面を擦ってバリ13aを除去し、ガラス基板を得た。これを実施例1の試料とした。
【0072】
また、ケミカル式テクスチャー形成法でテクスチャーを形成した以外は、実施例1と同様の処理を施すことにより、ガラス基板を得た。これを比較例1の試料とした。
【0073】
上記の実施例1及び比較例1について、スクラブパッド22で擦る前のガラス素板のBH(0.01)−BH(0.4)を測定したところ、実施例1は4.3nmであり、比較例1は4.6nmであった。この後、スクラブパッド22でガラス素板を0.5秒間擦り、BH(0.01)−BH(0.4)を測定したところ、実施例1は3.6nmであり、比較例1は4.1nmであった。つまり、実施例1は0.5秒で0.7nmの高さ分だけバリを除去できたが、これに対し比較例1は0.5nmの高さ分だけしかバリを除去することができなかった。その後、1秒、1.5秒、2秒で測定したところ、実施例1は、BH(0.01)−BH(0.4)が2.1nm、2.0nm、1.9nmとなった。これに対し、比較例1は3.9nm、2.5nm、2.4nmとなった。これらの結果より、機械式テクスチャー形成法によるバリは、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリと比較し、明らかに除去しやすいものであることが示された。
【0074】
次いで、実施例1と同様の処理を施すとともに、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面をテクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦ったものを実施例2の試料とし、テクスチャー13の延びる方向へ擦ったものを比較例2の試料とした。このとき、スクラブパッド22で擦る前のBH(0.01)−BH(0.4)は、実施例2で4.4nm、比較例2で4.5nmであった。これに対し、スクラブパッド22で擦った後のBH(0.01)−BH(0.4)は、実施例2で2.3nm、比較例2で3.6nmとなった。これらの結果より、修正パッドであるスクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る際、テクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦ることにより、バリが確実に除去されることが示された。
【0075】
また、比較例3については、スクラブパッド22で擦らず、比較例4及び5と、実施例3〜21については、スクラブパッド22のパット材料及び作業時間を表1に示すように変更し、バリの除去を行った。なお、表1には、各パット材料における100%モジュラスも合わせて示す。そして、BH(0.01)−BH(0.4)を測定した。この結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
表1の結果より、100%モジュラスが1.5MPaである比較例4及び5は、BH(0.01)−BH(0.4)がそれぞれ1.4nm及び1.3nmと高く、バリがほとんど除去されていないことが示された。これに対し、実施例3〜21は、BH(0.01)−BH(0.4)が0.01〜1.0nmの範囲内となり、バリが除去されていることが示された。これらの結果より、修正パッドに使用する材料の100%モジュラスを3〜40MPaとすることで、バリを有効に除去できることが示された。
【0077】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・ 情報記録媒体として要求される耐衝撃性、耐振動性、耐熱性等を満たすため、テクスチャー処理よりも前の工程、あるいはテクスチャー処理よりも後の工程でガラス素板に化学強化処理を施してもよい。この化学強化処理とは、ガラス基板の組成中に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等の一価の金属イオンを、これと比較してそのイオン半径が大きなナトリウムイオンやカリウムイオン等の一価の金属イオンにイオン交換することをいう。そして、ガラス基板の表面に圧縮応力を作用させて化学強化する方法である。この化学強化処理は、化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液にガラス基板を所定時間浸漬することによって行われる。化学強化塩の具体例としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸銀等をそれぞれ単独、あるいは少なくとも2種を混合したものが挙げられる。化学強化処理液の温度は、ガラス基板に用いた材料の歪点よりも好ましくは50〜150℃程度低い温度であり、より好ましくは化学強化処理液自身の温度が300〜450℃程度である。ガラス基板の材料の歪点よりも150℃程度低い温度未満では、ガラス基板を十分に化学強化処理することができない。一方、ガラス基板の材料の歪点よりも50℃程度低い温度を超えると、ガラス基板に化学強化処理を施すときに、ガラス基板に歪みが発生するおそれがある。
【0078】
・ 実施形態のスクラブ処理工程は、バリを除去する処理と、ガラス素板の表面に付着した付着物を取り除く、所謂洗浄処理とを兼ねる工程としたが、これに限らず、バリを除去する処理と、洗浄処理とをそれぞれ別の工程で行ってもよい。すなわち、スクラブ処理工程では洗浄液を使用せず、バリを除去するのみとし、このスクラブ処理工程よりも前の工程又は後の工程として新たに洗浄処理を設け、ガラス素板の表面に付着した付着物を除去するように構成してもよい。
【0079】
・ 修正パッドは、実施形態で示したスクラブパッド22に限らず、テクスチャーの延びる方向と交差する方向へガラス素板を擦ることが可能であり、かつ100%モジュラスが3〜40MPaの材料よりなるものであれば、いずれを使用してもよい。従って、修正パッドさえこれらの条件を満たすなら、例えばテクスチャーマシンを使用して修正パッドとしての研磨テープで擦る、修正パッドとしてのスポンジを使用して手で擦る等の方法でバリを除去してもよい。
【0080】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記テクスチャーの形状を修正するための工程よりも、前の工程又は後の工程では、ガラス素板の表面に付着した付着物を除去するための洗浄処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0081】
・ 前記テクスチャーの形状を修正するための工程とは、修正パッドとしてのスクラブパッドを使用し、同スクラブパッドでガラス素板の表面を擦るスクラブ処理工程であり、当該スクラブ処理工程では、バリを除去するとともに、スクラブパッドでガラス素板の表面を擦り、その表面に付着した付着物を取り除くことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0082】
・ 前記BRとBH(X)との関係をグラフに示した場合、グラフに描かれる関係線が、BRが0.4〜15.0%の範囲で略直線状に延びることを特徴とする請求項6に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1又は請求項6に記載の発明によれば、テクスチャー上でのバリの発生を抑えることができる。
【0084】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、バリを確実に除去することができるとともに、ガラス素板の傷つきの発生を押さえることができる。
【0085】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、100%モジュラスを確実に3〜40MPaとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】情報記録媒体用ガラス基板を示す正面図。
【図2】スクラブ装置を示す概念図。
【図3】(a)はテクスチャーマシンを側面から見た状態を示す概念図、(b)はテクスチャーマシンを正面から見た状態を示す概念図。
【図4】(a)は機械式テクスチャー形成法のバリが発生したテクスチャーを示す概念図、(b)は図4(a)の4B−4B線における断面図、(c)は図4(a)の4C−4C線における断面図。
【図5】ケミカル式テクスチャー形成法のテクスチャーを示す概念図。
【図6】バリを除去したテクスチャーを示す概念図。
【図7】バリが発生したテクスチャーを示すAFMによる鳥瞰図。
【図8】バリを除去したテクスチャーを示すAFMによる鳥瞰図。
【図9】BRとBHの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
11…情報記録媒体用ガラス基板、11a…ガラス素板、13…テクスチャー、13a…バリ、14…切断面、15…基準面、22…修正パッドとしてのスクラブパッド、33…研磨部材としてのテープ部材。
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばハードディスク等のような情報記録装置の磁気記録媒体である磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体に用いられる情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関するものである。より詳しくは、その表面に複数のテクスチャーが形成された情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のような情報記録媒体の1つである磁気ディスクは、円盤状をなすガラス基板の表面に磁性膜等を積層することによって作製されている。このガラス基板は、磁気ディスクに要求される高密度、大容量の記録を可能とするため、その表面が平滑となるように研磨加工を施される。一方で、表面を平滑に研磨された磁気ディスクは、情報を読み取るためのヘッドが吸着しやすくなる。この吸着の低減を目的とし、テクスチャー処理を施すことにより、ガラス基板の表面に適度な表面凹凸であるテクスチャーを形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−117532号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のテクスチャー処理の方法としては、ケミカル式テクスチャー形成法と機械式テクスチャー形成法の主に2通りが挙げられる。ケミカル式テクスチャー形成法とは、ガラス基板を酸性水溶液、アルカリ性水溶液等からなるエッチング液に浸漬する等してその表面をエッチングし、テクスチャーを形成する方法である。機械式テクスチャー形成法とは、テクスチャーマシン等を用い、ガラス基板の表面に研磨スラリーを供給しながら研磨テープ等を摺接させることによってテクスチャーを形成する方法である。
【0005】
ケミカル式テクスチャー形成法と、機械式テクスチャー形成法とを比較した場合、ケミカル式テクスチャー形成法は、機械式テクスチャー形成法に比べ、テクスチャーの形成を簡単に行うことができるという利点を有する。一方で、ケミカル式テクスチャー形成法においては、エッチング液にガラス基板を浸漬する等の手法では、テクスチャーの形状を精密に制御しながらこれを形成することは極めて難しいものとなる。特に、高密度、大容量の記録を可能とするためには、均一な形状のテクスチャーをガラス基板の表面全体に均一に分散させて形成する必要がある。そして、テクスチャーの形状を精密に制御するには、ケミカル式テクスチャー形成法よりも、機械式テクスチャー形成法が有利となる。
【0006】
しかし、機械式テクスチャー形成法は、ケミカル式テクスチャー形成法に比べ、テクスチャー上に異常な高さの突起であるバリが発生しやすく、このバリによってテクスチャーの形状が不均一なものとなるという問題がある。つまり、ケミカル式テクスチャー形成法であれば、理論的にはガラス基板の表面が均一にエッチングされることからバリは発生しにくい。これに対し、機械式テクスチャー形成法は、ガラス基板の表面を研磨スラリーで削る際、表面に加わる応力、削り残し等により、バリが発生しやすくなるためである。従って、機械式テクスチャー形成法においては、いかにバリの発生を抑えるかが重要課題となっていた。
【0007】
この発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、テクスチャー上でのバリの発生を抑えることができる情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、円盤状をなすガラス素板の表面を研磨した後、その表面にテクスチャー処理を施して製造される情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記テクスチャー処理は、ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しながら研磨部材を摺接させる機械式テクスチャー形成法により、ガラス素板の表面にその略周方向へ延びるライン状のテクスチャーを形成するための工程と、テクスチャーを形成するときにテクスチャー上に形成される異常な高さの突起であるバリを除去し、テクスチャーの形状を修正するための工程とを備えるとともに、該テクスチャーの形状の修正は、100%モジュラスが3〜40MPaの合成樹脂を材料とする発泡体よりなる修正パッドを使用し、この修正パッドでガラス素板の表面をテクスチャーの延びる方向と交差する方向へ擦ることによって行われることを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、前記修正パッドには、アスカーCの硬度で40〜70のものを使用することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記修正パッドには、その表面の穴の開口径が48〜60μmのものを使用することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記修正パッドでガラス素板の表面を擦る時間が、2〜20秒であることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記修正パッドには、ウレタン樹脂を材料とする発泡体よりなるものを使用することを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の情報記録媒体用ガラス基板の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された情報記録媒体用ガラス基板であって、その表面の所定領域を原子間力顕微鏡で測定した際、所定領域の面積を基準面積とし、当該表面と平行な面でテクスチャーを切断した場合のテクスチャーの切断面の面積を測定面積としたときの、基準面積に対する測定面積の割合をベアリングレシオ(BR)として、該BRが50%となる位置を基準面とし、BRが所定値(X%)となるようにテクスチャーを切断する面を測定面としたときの、基準面から測定面までの高さをベアリングハイト(BH(X))とした場合、バリの存在はBH(0.01)からBH(0.4)の範囲で確認されるとともに、テクスチャー上からバリを除去した状態で、BH(0.01)とBH(0.4)との差が0.01〜1.0nmであることを要旨とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、情報記録媒体用ガラス基板11(以下、略して「ガラス基板11」とも記載する)は、シート状のガラス板から円盤状に切り出されたガラス素板を研磨等することにより、中心に円孔12を有する円盤状に形成されている。このガラス素板は、フロート法、ダウンドロー法、リドロー法又はプレス法で製造されたソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、結晶化ガラス等の多成分系のガラス材料より形成されている。さらに、このガラス素板にテクスチャー加工を施すことにより、当該ガラス基板11は、その表面に複数のテクスチャー13が形成されている。これらテクスチャー13は、それぞれガラス基板11の周方向へ延びるライン状をなしている。そして、テクスチャー13が形成されたガラス基板11の表面に、例えばコバルト(Co)、クロム(Cr)、鉄(Fe)等の金属又は合金よりなる磁性膜、保護膜等を形成することにより、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等の情報記録媒体が構成される。
【0015】
テクスチャー13を有するガラス基板11は、好ましくは表面の微小うねりの高さ(NRa)が0.2nm以下であり、表面粗さ(Ra)が0.5nm以下である。また、この場合の表面のうねりの高さ(Wa)は、好ましくは0.5nm以下である。なお、NRaとは、Zygo社製の三次元表面構造解析顕微鏡(NewView200)を用い、測定波長(λ)を0.2〜1.4mmとして表面の所定領域を白色光で走査して測定された値を示すものである。Raとは、原子間力顕微鏡(AFM)で測定された値を示すものである。Waとは、PhaseMetrix社製の多機能ディスク干渉計(Optiflat)を用い、測定波長(λ)を0.4〜5.0mmとして表面の所定領域を白色光で走査して測定された値を示すものである。
【0016】
このガラス基板11において、NRa、Ra及びWaのうち、特にNRaが0.2nmを超え、Raが0.5nmを超えると、その表面が荒れた平滑性の低いものと判断される。これは、近年の情報記録媒体は、さらなる高密度記録化を図るため、情報記録媒体の表面とヘッドとの距離をさらに接近させる傾向があるためである。このヘッドが情報記録媒体上を移動する際、Waならば、若干大きくとも、うねりの高低差にヘッドが追従することが可能である。しかし、NRa及びRaが大きいと、ヘッドは微小うねりの高低差に追従できなかったり、凹凸を飛び越えることができなかったり等して、凹凸に引っ掛かったり、衝突したり等の不具合が頻繁に発生しやすくなる。
【0017】
一方で、表面の平滑性が過剰に高すぎると、ヘッドが情報記録媒体の表面に吸着され、移動が不可能になったりする等の不具合を発生させる。そこで、テクスチャー13は、ガラス基板11の表面を平滑としながらも、ヘッドとの接触面積を低減するために形成されている。図8に示すように、テクスチャー13が形成されたガラス基板11の表面は、ほぼ均一な高さの凹凸状をなすことにより、平滑でありながら、ヘッドとの接触面積が低減されている。そして、テクスチャー13は、ヘッドとの接触面積を低減することにより、情報記録媒体の表面に対するヘッドの吸着を抑制するという機能を発揮する。また、当該テクスチャー13は、ガラス基板11を情報記録媒体とした際、高い磁気異方性と保磁力を付与するという機能をも有する。これは、磁性膜を形成する金属の原子が、テクスチャー13の側面で配向良く並べられることが理由であると考えられる。
【0018】
次に、前記ガラス基板の製造方法について説明する。
ガラス基板は、円盤加工工程、端面面取り工程、研削工程、研磨工程、洗浄処理工程及びテクスチャー処理工程を経て製造される。
【0019】
前記円盤加工工程においては、シート状のガラス板を超硬合金又はダイヤモンド製のカッターを用いて切断することにより、その中心に円孔を有する円盤状のガラス素板が形成される。前記端面面取り工程においては、ガラス素板の内外周端面が研削され、外径及び内径寸法が所定長さとされるとともに、内外周端面の角部が研磨されて面取り加工される。
【0020】
前記研削工程においては、ガラス素板に対し、研磨装置を用いてラップ処理が施されることにより、ガラス素板全体での反りが修正され、ガラス素板が略平坦な板とされる。前記研磨工程においては、ガラス素板に対し、研磨装置を用い、複数段階に分けて研磨処理が施されることにより、ガラス素板の表面が平滑面とされる。前記洗浄処理工程においては、洗浄液を使用し、研磨処理後のガラス素板に洗浄処理が施されることにより、ガラス素板の表面に付着した研磨剤、研磨粉、塵埃等の付着物が除去される。
【0021】
前記テクスチャー処理工程においては、研磨工程でその表面を平滑とされたガラス素板に対してテクスチャー処理が施され、ガラス素板の表面にテクスチャーが設けられることにより、ガラス基板が製造される。このテクスチャー処理は、テクスチャーを形成するための工程であるテクスチャー形成工程と、テクスチャーの形状を修正するための工程であるスクラブ処理工程との主に2工程に分けて施される。
【0022】
前記テクスチャー形成工程について説明する。このテクスチャー形成工程では、ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しながら、研磨部材を摺接させるという機械式テクスチャー形成法により、ガラス素板の表面にライン状のテクスチャーが形成される。そして、この機械式テクスチャー形成法では、テクスチャーマシンと呼ばれる装置が使用される。
【0023】
ここで、テクスチャーマシンについて説明する。
図3(a),(b)に示すように、当該テクスチャーマシン内において、ガラス素板11aは、図示しないスピンドルにより、その周方向へ回転するように支持されている。ガラス素板11aの両側部には、一対のローラ31がガラス素板11aを挟んで対向配置されている。各ローラ31は、図示しない支持部材に対し、回転軸32を中心に回動自在に支持されるとともに、それぞれがガラス素板11aの半径方向に延びるように配設されている。また、これらローラ31は、それぞれがガラス素板11aに対して接近又は離間可能に構成されている。
【0024】
ガラス素板11aの表面と、各ローラ31との間には、研磨部材としてのテープ部材33がそれぞれ配設されている。これらテープ部材33は、ガラス素板11aの表面と各ローラ31との間を通って、その一端側から他端側へと移動するように構成されている。該テープ部材33とガラス素板11aの表面との間には、図示しない供給部から研磨スラリーが供給されるとともに、テープ部材33には、この研磨スラリーに含まれる砥粒が付着するように構成されている。
【0025】
上記のテクスチャーマシンにおいて、テープ部材33は、回転するガラス素板11aの表面に一対のローラ31が両側方から接近することにより、ガラス素板11aの表面に摺接される。このテープ部材33の摺接により、ガラス素板11aの表面には前記砥粒が押し付けられる。このときガラス素板11aはスピンドルによって回転された状態であることから、ガラス素板11aの表面が砥粒によって削られ、同表面に複数の浅い筋状の微細な溝が同心円状に形成される。そして、これら浅い筋状の微細な溝がテクスチャーマシンでの加工時間に応じてより深く削られ、このような溝の間の部分にテクスチャーが同心円状をなすように形成される。
【0026】
前記テープ部材33には、織物、不織布、植毛品等のようなスウェード材等といった、その表面に極微細な凹凸を有するものが使用される。これは、テープ部材33の極微細な凹凸に砥粒を引っ掛ける等することにより、同テープ部材33の表面に砥粒を保持するためである。また、テープ部材33の材料には、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂、綿等の天然繊維が使用されている。特にスウェード材よりなるものであれば、合成樹脂製の発泡体を使用することも可能である。
【0027】
前記研磨スラリーとしては、ダイヤモンド製の砥粒を水等の溶媒に分散させて得られるダイヤモンドスラリーが主に使用される。また、砥粒の粒径は、平均粒径(D50)で好ましくは0.05〜0.3μmであり、より好ましくは0.08〜0.25μmである。D50が0.05μm未満の場合、ガラス素板に対する研磨能力の低下を招き、テクスチャーの形成速度が遅くなるため、歩留まりの低下、加工コストの高騰を招くおそれがある。一方、D50が0.3μmを超えると、一つ一つの砥粒の粒径差が顕著となり、テクスチャーを均一な形状で形成することが難しくなるおそれがある。
【0028】
また、ガラス素板11aは、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは0.35〜1.0nmである。このガラス素板11aは、テクスチャー形成工程よりも前の工程である研磨工程でこのようなRaとなるように研磨される。Raが0.35nm未満の場合、ガラス素板11aの表面で砥粒が滑りやすくなり、テクスチャーの形状を精密に制御することができなくなるおそれがある。Raが1.0nmを超えると、このガラス素板11aから製造されたガラス基板は、表面品質の低いものとなるおそれがある。つまり、表面に大きな凹凸が残されたままの状態でテクスチャーを形成すれば、このような凹凸によってテクスチャーの上端部分に凹み、歪み等の欠陥が修正されず、残ることとなり、このような欠陥がガラス基板の表面の平滑性等といった表面品質を低下させる。
【0029】
前記スクラブ処理工程について説明する。上記のテクスチャー形成工程で機械式テクスチャー形成法によってテクスチャーを形成する場合、大半のテクスチャーは形状の揃ったものとなるが、一部のテクスチャー上には、異常な高さの突起からなるバリが形成されてまう。そこで、このスクラブ処理工程では、修正パッドとしてのスクラブパッドを使用し、このスクラブパッドでガラス素板の表面が擦られることにより、テクスチャー上に形成されたバリが除去される。
【0030】
ここで、機械式テクスチャー形成法でテクスチャー上に形成されるバリについて記載する。研磨スラリーに含まれる砥粒には、その粒径に若干の差異があり、一つ一つの砥粒が形成する溝の深さ及び幅に差異を生じることから、テクスチャーの高さ等の形状にもばらつきが生じることとなる。例えば、溝が深く、幅広に形成された箇所では、テクスチャーは低く、細くなる。これとは逆に、溝が浅く、幅狭に形成された箇所では、テクスチャーは高く、太く形成される。特に、機械式テクスチャー形成法においては、ガラス素板の表面が砥粒で削られるとき、砥粒から加わる応力によってその周縁部分が潰れて歪んだり、崖状に切り立ったり、あるいは削り残しが発生したり等する可能性が高い。
【0031】
このように各テクスチャーの形状がばらつく場合、それぞれの尾根(テクスチャーの頂上)も波状をなすように歪むこととなる。この歪みは不均一なものとなりやすく、歪んだ尾根の一部には、他の尾根の高さと比較して異常に高く、細く鋭い突起状をなすものが存在しており、これが前記バリとなる。また、このようなバリは、テクスチャー上に散逸的に形成されることに限らず、テクスチャーの延びる方向へ複数が連続して形成されることも多々ある。
【0032】
一方、従来のケミカル式テクスチャー形成法は、ガラス素板の表面をエッチング液でエッチング、つまり溶かしてテクスチャーを形成する方法である。従って、ケミカル式テクスチャー形成法は、機械式テクスチャー形成法に比べてバリが形成されにくい方法ではあるが、ガラス素板の表面が不均一にエッチングされたときにバリが形成されてしまう場合がある。そして、このケミカル式テクスチャー形成法で形成されるバリは、テクスチャーの形成方法が全く異なるものであることから、機械式テクスチャー形成法で形成されるバリとは、その形状及び性質が大きく異なる。
【0033】
形状について、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリを詳細に測定した場合、図5に示すように、このバリ13aは、丸みを帯びた山状をなすものとなる。つまり、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリ13aは、スクラブパッドで擦る際にスクラブパッドから加わる外力を受け流しやすい形状をなし、除去しにくいものとなりやすい。これに対し、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、図4(a)に示すように、細く鋭い突起状となすものとなる。従って、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、スクラブパッドから加わる外力を受け流しにくく、十分な外力を加えることが可能であり、除去しやすいものとなる。
【0034】
性質について、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリ13aの表面には、これを保護するようにエッチング液によって化学的性質の異なる層が形成されており、強い外力を加えなければ除去することは難しい。これに対し、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、周縁部分が砥粒で削られて形成されたものであることから、その表面に微細なひびを有しており、弱い外力を加えるだけでその基部から折り取り、除去することが十分に可能である。従って、機械式テクスチャー形成法は、ケミカル式テクスチャー形成法に比べてバリは形成されやすいが、しかし形成されたバリは、当該スクラブ処理工程で十分に除去可能なものとなる。
【0035】
当該スクラブ処理工程では、図2に示すようなスクラブ装置が使用される。すなわち、スクラブ装置内において、ガラス素板11aは、その下端部及び両側部の合計3箇所を3本の支持シャフト21によって支持されている。また、この状態でガラス素板11aは、各支持シャフト21に固定されることなく支持のみされることにより、外力を加えることで3本の支持シャフト21の内側で、その周方向へ回転可能に構成されている。
【0036】
ガラス素板11aの表面上には円形状をなすスクラブパッド22が配設されている。このスクラブパッド22は、支持シャフト21と平行に延びる軸23によって支持されている。この軸23は図示しない駆動装置に接続されており、この駆動装置から軸23を介して駆動力が伝達されることにより、スクラブパッド22は軸23を中心に図中に矢印で示す方向へ回転するように構成されている。また、このスクラブパッド22は、ガラス素板11aに対し、その外周縁がガラス素板11aの中心と重なるように、ガラス素板11aの直径方向へ位置ずれしており、そのほぼ半分がガラス素板11aに接触するように配設されている。
【0037】
スクラブ装置において、スクラブパッド22が回転すると、これに接触するガラス素板11aは、回転力を付与され、スクラブパッド22の回転方向と反対方向へ回転する。この状態で、ガラス素板11aの表面にはその周方向へ延びるようにテクスチャー13が形成されていることから、ガラス素板11aは、スクラブパッド22により、テクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦られる。このスクラブパッド22の摺接により、バリは、テクスチャー13上から折り取られ、除去される。
【0038】
テクスチャー13上からバリを確実に除去するためには、上記のように、スクラブパッド22でガラス素板11aを、そのテクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦る必要がある。
【0039】
すなわち、図7に示すように、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、その大半がテクスチャー13の延びる方向へ連続しており、テクスチャー13と同じ方向へ延びる壁のような形状で形成されている。このようなバリ13aを除去する場合、スクラブパッド22でガラス素板11aをテクスチャー13の延びる方向、つまりは周方向へ擦ると、一部のバリ13aが除去されない可能性がある。これは、他のバリ13aがスクラブパッド22の表面を変形させ、一部のバリ13aにスクラブパッド22が接触しなかったり、あるいは除去されたバリ13aが邪魔となり、スクラブパッド22からの外力が受け流されたり等するためと考えられる。これに対し、スクラブパッド22でガラス素板11aをテクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦れば、壁のような形状で形成されたバリ13aがスクラブパッド22からの外力を受け止めるように接触されることとなる。従って、より多くのバリ13aを折り取ることができ、バリ13aを確実に除去することが可能となる。
【0040】
当該スクラブパッド22には、合成樹脂製の発泡体よりなるスポンジ、スウェード材等が使用される。このスクラブパッド22によってバリ13aが除去される状況を詳細に検討すると、バリ13aは、スクラブパッド22の表面に形成された穴の内側に一旦入り込み、この穴を形作る周壁が横方向から接触されることによって折り取られるものと考えられる。そこで、このスクラブパッド22には、微視的な観点で、バリ13aに接触したときにガラス素板11aの表面に対するバリ13aの強度に押し負けない程度に硬いものが用いられる。この微視的な観点で硬いものとは、表面の穴を形作る周壁が硬いこと、つまりはスクラブパッド22に使用する材料そのものの硬さが硬いことを示す。
【0041】
従って、スクラブパッド22には、材料の硬さを示す値であり、JIS K 6256に規定される100%モジュラスが、3〜40MPaの合成樹脂を材料とするものが使用される。この100%モジュラスが3MPa未満のものを材料とした場合、バリ13aを十分に除去することができなくなる。100%モジュラスが40MPaを超えるものを材料とした場合、バリ13aのみでなく、テクスチャー13までをも削ってしまうこととなり、テクスチャー13の形状に影響を与えることとなる。
【0042】
このような材料としては、ウレタン樹脂を使用することが好ましい。これは、ウレタン樹脂は、種類が同一のものであれば、100%モジュラスの値が高いものほど、樹脂中における分子の結晶化が進行し、スクラブパッド22の微視的な観点での硬さが確実に増すためである。このウレタン樹脂には、出発原料によってポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂等の種類が存在する。これら種類の中でもスクラブパッド22の材料には、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を使用することがより好ましい。これは、ポリカーボネート系ウレタン樹脂は、他のものに比べ耐薬品性に優れており、例えばスクラブ処理工程時に酸性水溶液、アルカリ性水溶液等の洗浄液を使用する場合、その表面の微視的な観点での硬さを維持することが可能となるためである。
【0043】
また、スクラブパッド22としては、表面の穴の開口径が48〜60μmのものを使用することが好ましい。この穴の開口径が大きくなるに従って、穴を形作る周壁は薄くなり、微視的な観点での硬さが低くなることから、開口径が60μmを超えると、バリ13aを十分に除去することができなくなるおそれがある。これに対し、開口径が小さくなるに従って、穴を形作る周壁は厚くなり、微視的な観点での硬さは増すことから、開口径を48μm未満とすれば、テクスチャー13を削り、その形状に影響を与えるおそれがある。
【0044】
また一方で、この実施形態では、スクラブ処理工程においてバリを除去するとともに、ガラス素板11aの表面に付着した、除去後のバリ13a、テクスチャー形成時の研磨粉、研磨スラリー等といった付着物を除去することも目的とする。このため、この実施形態のスクラブ処理工程は、ガラス素板11aの表面に洗浄液をシャワーしつつ、同表面をスクラブパッド22で擦ることにより、その表面の付着物を擦り落として取り除くものとする。
【0045】
この洗浄液としては、水、純水、イソプロピルアルコール等のアルコール等の中性水溶液が挙げられる。この他に中性水溶液として、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩等といった無機塩の水溶液を電気分解することにより得られた電解水又はガスが溶解されたガス溶解水等の機能水等の中性水溶液が挙げられる。さらに、ガラス材料に対してエッチング能を有するアルカリ性水溶液、酸性水溶液等を洗浄液として使用してもよい。この場合には、ガラス材料に対するエッチング能が低い、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を使用することが好ましい。
【0046】
バリ13aを除去するとともに、付着物を擦り落とし、かつテクスチャー13の形状に影響を与えないようにするため、スクラブパッド22には、スクラブパッド22全体での巨視的な観点で、テクスチャー13を削り取らない程度の軟らかさが必要とされる。このため、スクラブパッド22には、前に挙げた材料を用いてこれを形成したとき、スクラブパッド22全体での硬さを示す値であり、SRISO101に規定されるアスカーCの硬度が、40〜70のものを使用することが好ましい。アスカーCの硬度が40未満の場合、バリ13aのみならず、付着物をも十分に除去することができなくなるおそれがある。アスカーCの硬度が70を超える場合、バリ13aや付着物だけでなくテクスチャー13までをも削り取ってしまうおそれがある。
【0047】
当該スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る時間は、好ましくは2〜20秒である。前述したように、機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、従来のケミカル式テクスチャー形成法のものに比べれば除去しやすいものである。このため、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を過剰に長い時間、つまり20秒を超えて擦れば、バリ13aが除去されたテクスチャー13の上部を削り取ることとなり、テクスチャー13の形状に影響を与えるおそれがある。一方で、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る時間を過剰に短く、つまり2秒未満とすれば、バリ13aや付着物が十分に除去されていない可能性があり、得られるガラス基板11の品質を低下させることとなる。
【0048】
当該スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦るとき、スクラブパッド22とガラス素板11aとの接触圧力は、好ましくは4.9〜49kPaである。この接触圧力は、スクラブパッド22の形状、厚み等を種々変更することによって調整される。つまりは、スクラブパッド22のガラス素板11aへの接触面に同心円状の溝を形成したり、厚みを増減させることによって接触圧力が調整される。接触圧力が4.9kPaより低い場合、スクラブ処理工程に係る作業時間が長くなったり、バリ13a、付着物等を十分に除去できなくなったり等の不具合を生じるおそれがある。接触圧力が49kPaより高い場合、テクスチャーの形状に影響が与えられたり、表面に接触傷が発生したり、作業時にガラス素板11aが割れたり等の不具合を生じるおそれがある。
【0049】
スクラブパッド22の回転数は、好ましくは10〜500rpmである。回転数が低すぎたり、高すぎたりすると、ガラス素板11aの表面からスクラブパッド22が浮き上がったり、スクラブパッド22が過剰に接触したり等して、スクラブパッド22の接触状態が不均一になり易く、バリ13a、付着物等の不十分な除去、接触傷の発生等のような不具合を生じるおそれがある。
【0050】
次いで、テクスチャー上でのバリの有無を測定する方法について説明する。
バリの有無の測定には、AFMでの測定結果を基に求められるベアリングレシオ(BR)と、ベアリングハイト(BH)を使用した方法が用いられる。なお、同AFMでは、JIS B0601の規定に従い、その走査線毎に粗さ曲線を求めることが可能であり、同粗さ曲線に基づき、ガラス素板11aの表面の凹凸を鳥瞰図として示すことができる。このBRと、BHを使用した方法によれば、バリの有無の他、テクスチャーの形状をも測定することが可能である。まず、BRについて、以下に説明する。
【0051】
BRを求めるためには、まず第1に、ガラス素板11aの表面の所定領域内において、その表面状態がAFMを用いて測定される。この測定された所定領域の面積が基準面積とされる。例えば、測定された所定領域が10μm四方の正方形であれば、基準面積は100μm2である。
【0052】
第2に、図4(a)〜(c)に示すように、ガラス素板11aの表面と平行な面で各テクスチャー13が切断される。ここでは、図4(a)中の4B線を含む面で各テクスチャー13を切断したそれぞれの切断面14を図4(b)に示し、4C線を含む面でテクスチャー13を切断した切断面14を図4(c)に示す。その後、各テクスチャー13の切断面14の面積の合計が算出される。この切断面14の面積の合計が、測定面積とされる。
【0053】
そして、前述の基準面積に対する当該測定面積の割合が、BRとして示される。例えば、基準面積に対する測定面積の割合が50%ならば、BRは50%であり、割合が0.01%ならば、BRは0.01%である。
【0054】
次に、BHについて、以下に説明する。
BHを求めるためには、まず第1に、前記BRが50%となる位置が求められる。このBRが50%となる位置が、図4(a)中に示した基準面15とされる。第2に、前記BRが所定値となるときに各テクスチャーを切断する面が求められる。この各テクスチャーを切断する面が測定面とされる。ここでは、図4(a)中で、4B線を含む面又は4C線を含む面が測定面である。そして、前述の基準面15から当該測定面までの高さが、BRがX%のときのBH(X)として示される。例えば、4B線を含む面を測定面としたとき、ここでのBRが10%ならば、BH(10)と表記し、基準面15から4B線を含む測定面までの高さH1が0.5nmならば、BH(10)は0.5nmである。また、4C線を含む面を測定面としたとき、ここでのBRが0.1%ならば、BH(0.1)と表記し、基準面15から3C線を含む測定面までの高さH2が1.5nmならば、BH(0.1)は1.5nmである。
【0055】
図9は、上記のようにして測定したBR(単位は%)とBH(単位はnm)との関係を示すグラフである。図4(a)に示したように、テクスチャー13は尾根状をなすものである。このため、BRが大きくなるに従い、テクスチャー13の基端側(裾野部)に近づき、これに伴ってBH(X)は小さくなる。これとは逆に、BRが小さくなるに従い、テクスチャー13の上端側(頂上部)に近づき、これに伴ってBH(X)は大きくなる。そして、BRとBH(X)とは、図9中に実線で示したような関係線を描くこととなる。この実線で示した関係線を以後、基準関係線41とする。
【0056】
ここで、図6に示すように、テクスチャー13が良好な形状、つまりはバリ、凹み等がなく一定の勾配の尾根状をなすとき、基準関係線41のように、その大半が略直線状に延び、BRがある程度小さくなると傾斜が緩やかになる関係線となる。これに対し、図4(a)に示すように、テクスチャー13上に細く切り立ったバリが存在するとき、BRがある程度小さくなると、BH(X)が急激に上昇することから、図9中に一点鎖線で示したような第1異常関係線42となる。この第1異常関係線42のような関係線は、機械式テクスチャー形成法でバリが形成された場合に頻繁に見られる関係線である。
【0057】
また、図5に示すように、テクスチャー13の頂上部が歪むことによってその一部が突出した大きな尾根状をなし、これがバリ13aとなるとき、BH(X)がその途中で急激に上昇することから、図9中に一点鎖線で示したような第2異常関係線43となる。この第2異常関係線43のような関係線は、ケミカル式テクスチャー形成法でバリが形成された場合に頻繁に見られる関係線である。
【0058】
従って、異なるBR毎にBH(X)の差を求め、そのBH(X)の差を比較検討することにより、バリの有無、テクスチャーの形状を測定することが可能となる。そして、製造時におけるガラス素板について、異なるBR毎のBH(X)の差を所定値とすることにより、バリの発生を防止し、テクスチャーの形状を一定とすることが可能となる。
【0059】
具体的に、バリの存在はBH(0.01)からBH(0.4)の範囲で確認される。これは、本発明者等が図7に示したようなAFMによる鳥瞰図と、図9のグラフに示したようなBRとBH(X)との関係線とを照らし合わせ、その結果、初めて見出したものである。つまり、AFMによる鳥瞰図を見ると、テクスチャー13の尾根上に所々細く切り立った部分が観測されており、この細く切り立った部分をバリ13aとしたところ、同バリ13aはBH(0.01)〜BH(0.4)の範囲内に存在していたことによる。
【0060】
BH(X)の差であるBH(0.01)−BH(0.4)は、0.01〜1.0nmとされる。BH(0.01)−BH(0.4)が0.01nm未満の場合、テクスチャー13がその上端が平坦な断面略台形状をなすように形成されてしまう。BH(0.01)−BH(0.4)が1.0nmを超える場合、テクスチャー13上に細く切り立った部分、つまりバリ13aが形成されることとなる。そして、BH(0.01)−BH(0.4)を0.01〜1.0nmとすることで、バリの形成を防止することが可能となる。
【0061】
テクスチャーの形状について、BH(0.4)−BH(1.0)は、好ましくは0.15〜0.20nmである。BH(0.4)−BH(1.0)が0.15nm未満の場合、BRが0.4%未満の位置において、BHが急激に上昇する箇所が高い確率で存在することを示し、テクスチャー13の尾根に高く突出した部分が形成されてしまうおそれがある。BH(0.4)−BH(1.0)が0.2nmを超えると、BRが0.4%未満の位置において、高い確率でBHが上昇せず、テクスチャーの尾根に低く凹んだ部分が形成されてしまうおそれがある。
【0062】
また、テクスチャーの形状について、BH(0.4)−BH(1.0)が0.17〜0.20nmであり、かつBH(0.01)−BH(0.4)が0.2〜0.7nmであることが好ましい。例えば、ケミカル式テクスチャー形成法によるものと似通った形状のバリが形成された場合、このバリの存在はBH(0.01)−BH(0.4)では十分に確認することができない。また、BH(0.01)−BH(0.4)及びBH(0.4)−BH(1.0)の両方が前に挙げた範囲を満たしていても、BRとBHの関係線を描くと、同関係線が前記の基準関係線41のような線を描かない場合もあり得る。そこで、テクスチャーの形状をより詳細に評価するには、BH(0.4)−BH(1.0)と、BH(0.01)−BH(0.4)との関係を確認することが好ましい。そして、BH(0.01)−BH(0.4)及びBH(0.4)−BH(1.0)の双方が前に挙げた範囲を満たす場合、関係線は略直線状をなし、勾配の均一なテクスチャーを形成することが可能となる。
【0063】
加えて、BH(1.0)−BH(15.0)の値は、BH(0.4)−BH(1.0)の値よりも大きくなることが好ましい。BH(1.0)−BH(15.0)の値がBH(0.4)−BH(1.0)の値よりも小さいと、関係線は下方へ膨らむように湾曲する。この場合には、細く切り立ったバリ13aがテクスチャー13の延びる方向へ連続して形成されてしまうおそれがある。
【0064】
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ この実施形態のガラス基板11によれば、その表面にテクスチャー処理を施す際、機械式テクスチャー形成法によるものであることから、テクスチャー13は、形状を精度よく制御された状態で形成される。しかし、同じく機械式テクスチャー形成法であるため、テクスチャー13上には異常な高さの突起であるバリ13aが高い確率で形成される。同テクスチャー処理においては、テクスチャー13を形成した後、100%モジュラスが3〜40MPaの合成樹脂を材料としたスクラブパッド22を用い、ガラス素板11aの表面を擦ることとしている。このようスクラブパッド22でガラス素板11aを擦ると、バリ13aはスクラブパッド22によって折り取られ、確実に除去される。従って、テクスチャー13上でのバリ13aの発生を抑えることができる。
【0065】
・ また、製造されるガラス基板11は、そのBH(0.01)−BH(0.4)が0.01〜1.0nmとされている。このため、テクスチャー13上でのバリ13aの発生を確実に抑えることができる。
【0066】
・ また、スクラブパッド22は、アスカーCの硬度で40〜70とされている。このため、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦るとき、同表面がスクラブパッド22によって傷つけられることを防止することができる。
【0067】
・ また、スクラブパッド22には、その表面の穴の開口径が48〜60μmのものが使用されており、その穴を形作る周壁の厚みが調整されている。このため、スクラブパッド22によってガラス素板11aの表面が傷つけられることを防止しつつ、バリ13aを確実に除去することができる。
【0068】
・ また、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る時間は、2〜20秒である。機械式テクスチャー形成法によるバリ13aは、容易に折り取り、除去することが可能であるため、擦る時間を適度なものとすることにより、バリ13aを確実に除去しつつ、スクラブパッド22によってガラス素板11aの表面が傷つけられることを防止することができる。
【0069】
・ また、スクラブパッド22には、ウレタン樹脂を材料とする発泡体よりなるものが使用されている。このため、100%モジュラスを確実に3〜40MPaとすることができる。
【0070】
【実施例】
以下、前記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
フロート法により得られたアルミノシリケートガラスよりなるガラス素板の表面に、図3(a),(b)に示したようなテクスチャーマシンを使用し、機械式テクスチャー形成法により、テクスチャーを形成した。このとき、ガラス素板の組成は、SiO2が63mol%、Al2O3が16mol%、Na2Oが11mol%、Li2Oが4mol%、MgOが2mol%、CaO 4mol%であった。また、ガラス素板のサイズは、厚み0.65mm、外径65mm、内径20mmであった。機械式テクスチャー形成法において、研磨剤にはダイヤモンド製であり、平均粒径が0.2μmの砥粒を含むものを使用した。
【0071】
その後、図2に示したようなスクラブ装置で100%モジュラスが20MPaのポリウレタンよりなるスクラブパッド22を使用し、ガラス素板の表面を擦ってバリ13aを除去し、ガラス基板を得た。これを実施例1の試料とした。
【0072】
また、ケミカル式テクスチャー形成法でテクスチャーを形成した以外は、実施例1と同様の処理を施すことにより、ガラス基板を得た。これを比較例1の試料とした。
【0073】
上記の実施例1及び比較例1について、スクラブパッド22で擦る前のガラス素板のBH(0.01)−BH(0.4)を測定したところ、実施例1は4.3nmであり、比較例1は4.6nmであった。この後、スクラブパッド22でガラス素板を0.5秒間擦り、BH(0.01)−BH(0.4)を測定したところ、実施例1は3.6nmであり、比較例1は4.1nmであった。つまり、実施例1は0.5秒で0.7nmの高さ分だけバリを除去できたが、これに対し比較例1は0.5nmの高さ分だけしかバリを除去することができなかった。その後、1秒、1.5秒、2秒で測定したところ、実施例1は、BH(0.01)−BH(0.4)が2.1nm、2.0nm、1.9nmとなった。これに対し、比較例1は3.9nm、2.5nm、2.4nmとなった。これらの結果より、機械式テクスチャー形成法によるバリは、ケミカル式テクスチャー形成法によるバリと比較し、明らかに除去しやすいものであることが示された。
【0074】
次いで、実施例1と同様の処理を施すとともに、スクラブパッド22でガラス素板11aの表面をテクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦ったものを実施例2の試料とし、テクスチャー13の延びる方向へ擦ったものを比較例2の試料とした。このとき、スクラブパッド22で擦る前のBH(0.01)−BH(0.4)は、実施例2で4.4nm、比較例2で4.5nmであった。これに対し、スクラブパッド22で擦った後のBH(0.01)−BH(0.4)は、実施例2で2.3nm、比較例2で3.6nmとなった。これらの結果より、修正パッドであるスクラブパッド22でガラス素板11aの表面を擦る際、テクスチャー13の延びる方向と交差する方向へ擦ることにより、バリが確実に除去されることが示された。
【0075】
また、比較例3については、スクラブパッド22で擦らず、比較例4及び5と、実施例3〜21については、スクラブパッド22のパット材料及び作業時間を表1に示すように変更し、バリの除去を行った。なお、表1には、各パット材料における100%モジュラスも合わせて示す。そして、BH(0.01)−BH(0.4)を測定した。この結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
表1の結果より、100%モジュラスが1.5MPaである比較例4及び5は、BH(0.01)−BH(0.4)がそれぞれ1.4nm及び1.3nmと高く、バリがほとんど除去されていないことが示された。これに対し、実施例3〜21は、BH(0.01)−BH(0.4)が0.01〜1.0nmの範囲内となり、バリが除去されていることが示された。これらの結果より、修正パッドに使用する材料の100%モジュラスを3〜40MPaとすることで、バリを有効に除去できることが示された。
【0077】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・ 情報記録媒体として要求される耐衝撃性、耐振動性、耐熱性等を満たすため、テクスチャー処理よりも前の工程、あるいはテクスチャー処理よりも後の工程でガラス素板に化学強化処理を施してもよい。この化学強化処理とは、ガラス基板の組成中に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等の一価の金属イオンを、これと比較してそのイオン半径が大きなナトリウムイオンやカリウムイオン等の一価の金属イオンにイオン交換することをいう。そして、ガラス基板の表面に圧縮応力を作用させて化学強化する方法である。この化学強化処理は、化学強化塩を加熱溶融した化学強化処理液にガラス基板を所定時間浸漬することによって行われる。化学強化塩の具体例としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸銀等をそれぞれ単独、あるいは少なくとも2種を混合したものが挙げられる。化学強化処理液の温度は、ガラス基板に用いた材料の歪点よりも好ましくは50〜150℃程度低い温度であり、より好ましくは化学強化処理液自身の温度が300〜450℃程度である。ガラス基板の材料の歪点よりも150℃程度低い温度未満では、ガラス基板を十分に化学強化処理することができない。一方、ガラス基板の材料の歪点よりも50℃程度低い温度を超えると、ガラス基板に化学強化処理を施すときに、ガラス基板に歪みが発生するおそれがある。
【0078】
・ 実施形態のスクラブ処理工程は、バリを除去する処理と、ガラス素板の表面に付着した付着物を取り除く、所謂洗浄処理とを兼ねる工程としたが、これに限らず、バリを除去する処理と、洗浄処理とをそれぞれ別の工程で行ってもよい。すなわち、スクラブ処理工程では洗浄液を使用せず、バリを除去するのみとし、このスクラブ処理工程よりも前の工程又は後の工程として新たに洗浄処理を設け、ガラス素板の表面に付着した付着物を除去するように構成してもよい。
【0079】
・ 修正パッドは、実施形態で示したスクラブパッド22に限らず、テクスチャーの延びる方向と交差する方向へガラス素板を擦ることが可能であり、かつ100%モジュラスが3〜40MPaの材料よりなるものであれば、いずれを使用してもよい。従って、修正パッドさえこれらの条件を満たすなら、例えばテクスチャーマシンを使用して修正パッドとしての研磨テープで擦る、修正パッドとしてのスポンジを使用して手で擦る等の方法でバリを除去してもよい。
【0080】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記テクスチャーの形状を修正するための工程よりも、前の工程又は後の工程では、ガラス素板の表面に付着した付着物を除去するための洗浄処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0081】
・ 前記テクスチャーの形状を修正するための工程とは、修正パッドとしてのスクラブパッドを使用し、同スクラブパッドでガラス素板の表面を擦るスクラブ処理工程であり、当該スクラブ処理工程では、バリを除去するとともに、スクラブパッドでガラス素板の表面を擦り、その表面に付着した付着物を取り除くことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【0082】
・ 前記BRとBH(X)との関係をグラフに示した場合、グラフに描かれる関係線が、BRが0.4〜15.0%の範囲で略直線状に延びることを特徴とする請求項6に記載の情報記録媒体用ガラス基板。
【0083】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。
請求項1又は請求項6に記載の発明によれば、テクスチャー上でのバリの発生を抑えることができる。
【0084】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、バリを確実に除去することができるとともに、ガラス素板の傷つきの発生を押さえることができる。
【0085】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の効果に加えて、100%モジュラスを確実に3〜40MPaとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】情報記録媒体用ガラス基板を示す正面図。
【図2】スクラブ装置を示す概念図。
【図3】(a)はテクスチャーマシンを側面から見た状態を示す概念図、(b)はテクスチャーマシンを正面から見た状態を示す概念図。
【図4】(a)は機械式テクスチャー形成法のバリが発生したテクスチャーを示す概念図、(b)は図4(a)の4B−4B線における断面図、(c)は図4(a)の4C−4C線における断面図。
【図5】ケミカル式テクスチャー形成法のテクスチャーを示す概念図。
【図6】バリを除去したテクスチャーを示す概念図。
【図7】バリが発生したテクスチャーを示すAFMによる鳥瞰図。
【図8】バリを除去したテクスチャーを示すAFMによる鳥瞰図。
【図9】BRとBHの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
11…情報記録媒体用ガラス基板、11a…ガラス素板、13…テクスチャー、13a…バリ、14…切断面、15…基準面、22…修正パッドとしてのスクラブパッド、33…研磨部材としてのテープ部材。
Claims (6)
- 円盤状をなすガラス素板の表面を研磨した後、その表面にテクスチャー処理を施して製造される情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
前記テクスチャー処理は、ガラス素板の表面に研磨スラリーを供給しながら研磨部材を摺接させる機械式テクスチャー形成法により、ガラス素板の表面にその略周方向へ延びるライン状のテクスチャーを形成するための工程と、テクスチャーを形成するときにテクスチャー上に形成される異常な高さの突起であるバリを除去し、テクスチャーの形状を修正するための工程とを備えるとともに、該テクスチャーの形状の修正は、100%モジュラスが3〜40MPaの合成樹脂を材料とする発泡体よりなる修正パッドを使用し、この修正パッドでガラス素板の表面をテクスチャーの延びる方向と交差する方向へ擦ることによって行われることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。 - 前記修正パッドには、アスカーCの硬度で40〜70のものを使用することを特徴とする請求項1に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記修正パッドには、その表面の穴の開口径が48〜60μmのものを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記修正パッドでガラス素板の表面を擦る時間が、2〜20秒であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 前記修正パッドには、ウレタン樹脂を材料とする発泡体よりなるものを使用することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
- 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された情報記録媒体用ガラス基板であって、
その表面の所定領域を原子間力顕微鏡で測定した際、所定領域の面積を基準面積とし、当該表面と平行な面でテクスチャーを切断した場合のテクスチャーの切断面の面積を測定面積としたときの、基準面積に対する測定面積の割合をベアリングレシオ(BR)として、該BRが50%となる位置を基準面とし、BRが所定値(X%)となるようにテクスチャーを切断する面を測定面としたときの、基準面から測定面までの高さをベアリングハイト(BH(X))とした場合、バリの存在はBH(0.01)からBH(0.4)の範囲で確認されるとともに、テクスチャー上からバリを除去した状態で、BH(0.01)とBH(0.4)との差が0.01〜1.0nmであることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
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