明細書 ゴムクローラ 技術分野
本発明はゴムクローラの新規な構造に関するものであり、 更に詳しくは、 主と して湿地を走行するゴムクローラに係るものである。 背景技術
湿地を走行するに適したゴムクロ—ラは、 無端ゴム弾性体の長手方向に一定ピ ツチをもって芯金が埋設され、 この外側をスチールコードにて囲まれた構造をし ており、 外側にはラグが形成され、 芯金間にはスプロケットが嚙み合う係合穴が ゴム弾性体の内外を貫いて形成されている。
図 8はこの従来から広く存在するゴムク口―ラの内周側平面図、 図 9は外周側 平面図、 図 1 0は図 8の B— B線での断面図である。 1はゴム弾性体であって、 図 8において紙面の上下に連続する。 2はゴム弾性体 1中に一定ピッチをもって 埋設された芯金であり、 芯金 2は中央部がスプロケットとの係合部 2 aであり、 左右の翼部 2 b、 2 cがゴム弾性体 1中に埋設されている。 3はこの翼部 2 bの 外側に埋設されたスチールコードである。 そして、 芯金 2からゴム弾性体 1の内 側に突出する一対の突起 2 dが備えられている。 4 a、 4 bはゴム弾性体 1の外 周側に備えられた一直線状のラグであり、 交互に長短ラグ 4 a、 4 bが配置され ている。 5はスプロケットとの係合穴であり、隣り合う芯金 2、 2の中央部 2 a、 2 aの間に形成され、 ゴム弾性体 1の内外面を貫いて形成されている。
しかるに、 この種従来のゴムクローラの欠点はオペレーターに対する振動と、 係合穴 5を通り抜けた泥玉の発生である。 前者はゴムクローラの内周面を転動す る転輪 1 0がラグ 4 a、 4 b上にある時とその間にある時が交互に来るが、 ラグ 4 a、 4 bの上にある場合と、 これより外れた場合とでは接地面に対して支えが ある場合とない場合とが交互に来るものであり、 このため、 転輪 1 0が上下動す ることになり、 振動の発生は避けられなかった。
又、 係合穴 5近傍に付着した泥はスプロケット歯 2 0に押されて固まり、 これ
が泥玉状となって外部へ落下するため、泥玉が他の作物の上に落ちることがあり、 好ましい現象ではなかった。 発明の開示
本発明は以上のような従来技術に鑑みてなされたものであって、 その要旨は、 無端ゴム弾性体と、 この長手方向に一定ピッチをもって埋設された芯金と、 この 芯金に対し外側より囲んでなるスチールコードと、 芯金の間に形成されたスプロ ケットとの係合部と、 無端ゴム弾性体の外周面に形成したラグと、 からなるゴム クローラであって、 スプロケットとの係合部は有底の窪みをなしていることを特 徴とするものである。
そして、 このラグは、 当該有底の窪みの外側に形成されるのがよく、 更に言え ば、 かかるラグは、 ゴム弾性体の幅方向に向かって傾斜配置され、 更に、 ゴム弾 性体の幅方向の左右の半分視で、 幅方向端部に達する長ラグと中途で途切れる短 ラグとが交互に配置されたゴムクローラである。
本発明の最大の特徴は、 スプロケットとの係合部が有底の窪みをなしているこ とである。 従来のこの種ゴムクロ一ラにあっては、 スプロケットとの係合部が必 ず内外面を貫く構造であった。 このため、 この係合穴を通過した泥は玉状になつ て外側に排出され、 これが隣の作物の上に落とされるなどという問題点が指摘さ れていたところ、 本発明はこの泥玉状の排出物をなくしたものである。 尚、 泥等 がかかる有底の窪み内に溜ることが考えられていたが、 主として湿地を走行する ゴムクローラにあっては、 この窪み内に入り込む泥はいずれも水気が多分に含ん だものであって、 この窪み内で固まってしまうことはなく、 十分実用に供される ことが分かつたものである。
このように、 係合穴を有底の窪みとしたことの他の特徴は、 ゴム弾性体の外周 側に形成するラグを任意の配置にできることである。 即ち、 従来のゴムクローラ にあつては、 一定のピッチをもつて係合穴が必ず存在したためにそのラグの配置 の自由度は少なかったが、 本発明の場合には係合穴がないため、 ラグ配置の自由 度は極めて高いものとなったのである。 従って、 例えば振動の防止対策を図るに しても、 推進力を大きくするにしてもその目的にあったラグの選択が可能となつ
たものである。
尚、 スプロケットとの係合部が有底の窪みをなしているところ、 この有底の窪 み部分のゴムの厚みはそれほど厚いものではない。 従って、 ゴム弾性体のかかる 窪み部に対応する部位をやや肉盛とする場合もある。 この点につき更に言及すれ ば、 有底の窪みの部位に対応してラグを設けることが推奨されるものである。 かかるラグについて言えば、 振動の発生を低減させるために、 ゴム弾性体の幅 方向に向かって傾斜配置され、 更に、 推進力を大きくするためにゴムクローラの 外表面の泥を落とす必要があり、 このためには、 ゴム弾性体の幅方向の左右の半 分視で見た場合、 ゴム弾性体の幅方向端部に達するラグ (長ラグ) と中途で途切 れるラグ (短ラグ) とが交互に配置されたゴムクローラであるのがよい。
ラグを前者のような構造にすることにより、 振動の発生の原因となる転輪の走 行時に、 この転輪がラグ上に常にあるため転輪の上下動が少なくなり、 結果とし て振動の発生は少なくなるもので、 一方、 後者の構造とすることにより、 ラグ間 に挟まった泥に対してその内の一部の剥離 ·落下が促され、 推進力の向上につな がることになる。 図面の簡単な説明
図 1は本発明のゴムクローラの第 1例の内周側平面図である。
図 2は図 1のゴムクローラの外周側平面図である。
図 3は図 1の A— A線での断面図である。
図 4は窪み部における長手方向の拡大断面図である。
図 5はその幅方向の拡大断面図である。
図 6は本発明のゴムクローラの第 2例の外周側平面図である。
図 7は本発明のゴムクロ—ラの第 3例の外周側平面図である。
図 8はこの従来のゴムクローラの内周側平面図である。
図 9は図 8のゴムクローラの外周側平面図である。
図 1 0は図 8の B— B線での断面図である。
実施の形態
以下、 本発明のゴムクロ一ラを実施例をもって更に詳細に説明する。 図 1は本 発明のゴムクローラの第 1例の内周側平面図、 図 2は外周側平面図、 図 3は図 1 の A_ A線での断面図である。 又、 図 4は窪み部における長手方向の拡大断面図 であり、 図 5はその幅方向の拡大断面図である。
図中、 1はゴムクロ一ラの基体をなすゴム弾性体であり、 図にあって、 上下方 向に無端状に連結している。 2はゴム弾性体中に埋設された芯金であって、 ゴム 弾性体 1の長手方向に一定ピッチをもって埋設されている。 かかる芯金 2におい て左右の翼部 2 b、 2 cがゴム弾性体中に埋設され、 その中央部 2 aはスプロケ ット歯 2 0と係合する §15位である。 そして、 芯金 2にあっては、 一対の突起 2 d が中央部 2 aを挟んで立設され、 これがゴム弾性体 1の内面より突出している。 3はスチールコ一ドであり、 芯金 2の外周側を包んでゴム弾性体 1の長手方向に 向かって埋設されている。 5 0は芯金 2の中央部 2 aの間に形成されたスプロケ ット歯 2 0との係合部である窪みであり、 内外面に貫通しない有底構造をなして いる。
この窪み 5 0とスプロケット歯 2 0との関係は、 スプロケット歯 2 0の歯高 (H) よりも若干深く (D) 形成され、 走行の際にスプロケット歯 2 0は芯金 2 の中央部 2 aに接触するが、 窪み 5 0の内面 5 00 に接触しない方が好ましい。 一方、ラグ 4 a、 4 bはゴムクロ—ラの幅方向に長短のラグが交互に配置され、 両者はその中央部が山形をなし、 その山形の頂点に有底の窪み 5 0をふさぐ格好 でラグ 4 a、 4 bが配置されている。 そして、 ラグ 4 a、 4 bは頂部より左右に なだらかに傾斜しており、 ラグ 4 aは更に幅方向に水平に伸びて長ラグとなし、 ラグ 4 bはなだらかな傾斜をもって終わる短ラグとなっている。
点線で示す転輪 1 0は突起 2 dを跨いでゴムクローラの内表面を走行するもの であり、 これは次々にラグ 4 a、 4 bの上に次々に乗り上げつつ走行することに なり、 転輪 1 0が走行する部位のラグ 4 a、 4 bの間隔は比較的狭くなつている ため、 転輪 1 0の上下動は比較的少なくなる。
一方、 ラグ 4 a、 4 bにあって、 ラグ 4 bの先端部はラグ 4 aの場合と異なり、 水平部が欠落している。 従って、 ラグ 4 bの先端とラグ 4 aの水平部とで囲まれ
る平面 A、 Bは比較的ラグ間が広くなつている。 このため、 この間に挟まれた泥 がゴムクロ一ラと共に持ち上がっても剥離し易く、落下することになる。そして、 ゴムクローラが再度接地する際にはラグ 4 aの水平部位には泥がついていないた め、 推進力が働くことになる。 ラグ間に泥が完全に詰まったままで接地した場合 には推進力の伝達はほとんどなく、 ラグが空回りすることとなるが、 本発明の場 合には推進力は確実に伝達されることとなるものである。 ラグ 4 a、 4 bについ て言えば、 ラグの背丈は全て一律のものでもよいが、 図の例ではラグ 4 aの窪み 5 0と対応する部位が若干背丈の低いものとなっている。
図 6は本発明のゴムクローラの第 2例の外周側平面図である。 この例にあって は、 窪み 5 0の点については前例と同様の関係を有し、 ラグは 「へ」 字状に交互 に曲げられたものであり、 その頂部が窪み 5 0に対応するものである。 そして、 長ラグ側 1 4 aはほぼ同じ背丈をもって伸びており、 短ラグ側 1 4 bは頂部より 徐々に背丈の低いものとなっている。 転輪 1 0及び泥の排出機能にあっては前記 したゴムクローラの例とほぼ同じである。 尚、 短ラグ 1 4 b側の背丈は長ラグ側 1 4 aの背丈と同じにすることもでき、 場合によっては、 窪み 5 0に対応する部 位の背丈を若干低くすることもできる。
図 7は本発明のゴムクローラの第 3例の外周側平面図である。 この例にあって は、 窪み 4 0の点については前例と同様の関係を有し、 一方、 ラグ 2 4は中央部 が傾斜部をなし、 先端に水平部を有する形状となっている。 傾斜部は窪み 5 0に 対応するものである。 水平部を備えた側が長ラグ側 2 4 aとなるもので、 水平部 を持たない側が短ラグ 2 4 bとなるものである。 尚、 かかるラグ 2 4は背丈はほ ぼ同じ高さであるが、 窪み 5 0に対応する部位の背丈を若干低くすることもでき る。 転輪 1 0及び泥の排出機能にあっては前記したゴムクローラの例とほぼ同じ であるため省略する。
発明の効果
本発明は以上の通りであり、 係合穴から抜け出した泥玉の発生はなくなり、 か つ、 ラグの配置が比較的自由な配置とすることができるため、 振動の低減にもつ ながり実用上大きな特徴を有するゴムクローラが提供できたものである。