明 細 義歯床裏装材用接着性組成物および歯科用硬化性組成物 技術分野
本発明は、 義歯床と義歯床裏装材を接着するための義歯床裏装材用接着剤およ び義歯床裏装材等の爾斗材料として好適に使用できる歯科用硬化性組成物に関す る。
従来の技術
義歯を長期間装着すると、 骨吸収や粘膜面の変形等によって装着している義歯 が口腔粘膜に適合しなくなってくる。 そこで、 適合しなくなった義歯床面に義歯 床裏装材を裏装して義歯を最適合させる手段が臨床的に用いられている。
義歯床に用いられている材料はアクリル系樹脂、 ポリ力一ポネート系樹脂、 ポ リスルホン酸樹脂などが挙げられるが、 ァクリル系樹脂が最も一般的に使用され ている。 一方、 裏装材に用いられている材料は (メタ) アクリル系樹脂のモノマ 一とポリマ一の混合物がほとんどであり、 義歯床とこれら裏装材を効果的に接着 するために、 義歯床面に塩化メチレン等のハロゲン原子を含有する有機溶剤を塗 布する方法が一般的に用いられている。 '
しかしながら、 義歯床と裏装材の材質が異なる場合にはハロゲン原子を含有す る有機溶剤を塗布するだけでは十分な接着強度が得られないことがある。 このた め、 汎用的に使用できる接着剤としてハロゲン原子を含有する有機溶剤に各種重 合体を添加した接着剤が開発されている。
このような接着剤としては、 塩素系有機溶剤とポリカーポネ一ト樹脂を用いた 接着剤 (特開昭 6 1 - 5 0 9 0 6号公報および特開昭 6 1 - 1 3 4 3 0 6号公報 参照)、塩素系有機溶剤と芳香族ポリエステル重合体またはポリエステルカーポネ 一トとを組合せた接着剤(特開昭 6 1 - 1 3 6 5 6 2号公報参照)、塩化メチレン にポリスチレン樹脂とポリメチルメタクリレー卜とを組合せた接着剤 (特開昭 5 8 - 7 2 5 0 9号公報参照) および塩ィ匕メチレンにポリカーボネート樹月旨とポリ
メチルメタクリレートと多官能メ夕クリル酸エステルを組合せた接着助剤 (特開 平 1 0— 2 3 1 2 2 8号公報参照) 等が知られている。 なお、 これら接着剤にお いては、 低沸点で揮発が早く取扱いが容易であることから、 ハロゲン原子を含有 する有機溶剤としては塩化メチレンが最も広く利用されている。
しかしながら、 近年ハロゲン原子を含有する有機溶剤については環境負荷や有 害性の点から、 より厳しい管理が要求されるようになってきている。 例えば、 平 成 1 0年に厚生省より各都道府県に対して 「医薬品の残留溶媒ガイドライン」 が 通知されている。 該ガイドラインにおいては医薬品中の残留溶媒についてその毒 性によってクラス 1からクラス 3に分類しており、 この分類によれば上記接着剤 に用いる塩化メチレンは、 許容できない毒性を引き起こすレベルではないが一定 レベルの毒性を示す溶媒であるクラス 2に分類され、 起こりうる有害な作用から 患者を守るためにその医薬品中の残留量を規制すべきものとされている。 また、 義歯床裏装材用接着剤として使用可能な他の塩素系有機溶剤についてもクラス 1 もしくはクラス 2に分類されている。従って、義歯床裏装材用接着剤においては、 塩素系有機溶剤を用いないものが望まれている。
また、 塩素系有機溶剤を用いない接着剤としては、 ポリサルホン系樹脂と歯科 用アクリル系樹脂の接着剤として、 特開昭 6 2 _ 1 4 9 6 0 9号公報に 3 0〜2 5 0 °Cの沸点を有する有機溶剤と熱可塑性ポリヒドロキシエーテルからなる接着 剤が開示されているが、 該接着剤は塗布後の乾燥に長時間を要し、 また接着強度 が塩素系有機溶剤を使用した場合と比べて劣っている。
また、 重合体を添加した接着剤一般についていえることであるが、 このような 接着剤を用いた場合の接着耐久性は必ずしも十分でなく、 さらに、 義歯床の処理 剤が塗布された面において裏装材が盛られずに接着操作終了後において露出する 部分 (以下処理材または接着剤余剰塗布面という) が白化することがあり、 その 審美性が低下することがあるという問題がある。
一方、 義歯床裏装材、 歯科用セメント、 コンポジットレジン、 歯冠用レジン等 の歯科材料として、 (メタ)アクリル酸エステル等のラジカル存在下で重合が可能 なラジカル重合性単量体、 有機過酸化物、 および第 3級ァミン化合物からなる組
成物が、 それらが室温から口腔内の温度で速やかに重合して硬化体が生じる性質 を利用して、 広く応用されている。
例えば、 直接法義歯床裏装材は、 長期間の使用により患者の口蓋に適合しなく なった義歯を改床し、 再度使用できる状態に修正するための材料であり、 室温か ら口腔内の温度で重合硬ィ匕するべ一ストを義歯床に盛付け、 直接患者の口腔に挿 入、 口腔粘膜面との適合を図った後、 口腔内で保持したまま重合硬化させて修正 を行う材料である。 該裏装材としては、 室温付近で硬ィ匕する上記組成物が広く使 われている。 従来、 このような裏装材としては、 一般にポリメチルメタクリレー ト (以下 PMMAと略す)、ポリェチルメタクリレート (以下 P EMAと略す)お よびメチルメタクリレートとェチルメタクリレートの共重合体 (以下 PMMA— P EMAと略す) 等の粉末状合成樹脂と有機過酸化物を混合した粉末成分と、 メ チルメタクリレート等のラジカル重合性単量体と第 3級ァミン化合物を混合した 液体成分とに分包された粉一液二成分系材料が用いられている。
このような二成分系材料は、 両成分を混合した際に室温から口腔内における温 度で容易にラジカルが発生し、 混合から所定の時間が経過した後、 重合硬化が進 行する。 また、 上記液体成分は、 粉末成分と接触させると短時間でその一部を溶 解するとともに、 合成樹脂粉末中に浸透して膨潤させる。 このため、 混合物の粘 度を適度に調節することができ、 臨床上の操作を容易にすることができる利点を 有する。
しかしながら、 上記の直接法義歯床裏装材は、 硬化時にその表面が空気中の酸 素や口腔内の異物により硬化阻害を受け、 硬化不十分な部分が生じやすいという 欠点があった。 そのような硬化が不十分な部分 (以下、 表面未重合層という) が 存在すると、 裏装を行った義齒の変色が起こりやすくなつたり、 口腔内の異物が 付着して不衛生な状態となりやすい等の問題の原因となる。
このような表面未重合層形成の問題は、 ラジカル重合性単量体、 有機過酸化物 および第 3級アミン化合物を含有する歯科用硬化性組成物に共通の問題であり改 善が求められていた。
硬化性組成物の表面未重合層の形成を防止し、 表面未重合量 (表面に存在する
未重合モノマ一量) を低減する方法としては、 エアーバリアー剤を塗布する方法 や硬化促進剤を使用する方法が知られている。 エア一バリア一剤を塗布する方法 とは、 エア一バリァ一剤の塗布によって形成される酸素遮断性の皮膜でラジカル 重合性単量体が硬化する間その表面を被覆し、 空気中の酸素による重合阻害を防 ぐ方法である。 エアーバリア一剤としては、 ポリビエルアルコールの水溶液 (特 開昭 5 8— 2 0 1 6 4号公報参照)、ポリビニルアルコール水溶液に有機過酸化物 を配合した組成物(特開昭 5 8 - 3 3 6 0 4号公報参照)、'低分子量のポリエチレ ングリコールと高分子量のポリエチレングリコールからなる組成物 (特開昭 5 9 - 1 3 4 7 0 5号公報参照)、水溶性酸素遮断性ポリマーと水溶性還元剤と界面活 性剤との水溶液からなる組成物 (特開平 9— 2 4 1 3 0 4号公報参照) が知られ ている。 また、 硬化促進剤を使用する方法とは、 例えば、 義歯床裏装材等の硬ィ匕 性組成物を口腔内で硬ィヒさせた後、 硬化促進剤を溶解した温水溶液へ義歯を浸漬 することにより、 二次的に硬ィ匕させる方法である。 市販の硬化促進剤として、 水 に溶解することにより炭酸ガスが発生し、 水に溶解した酸素を除去する方式の製 品や、 水溶性の重合開始剤を湯に溶解する方式の製品が実用化されている。
発明の開示
本発明の目的は、 塩素系有機溶剤と比べて安全性の高いハロゲン原子を含有し ない有機溶剤を用いた義歯床裏装材用接着性組成物を提供することにある。 本発明の他の目的は、 使用時の操作性、 初期接着強度、 接着耐久性および接着 剤余剰塗布面の審美性の優れた、 別言すれば、 接着面以外の義歯床面に付着して もその外観の低下を起こさない、 義歯床裏装材用接着性組成物を提供することに ある。
本発明のさらに他の目的は、 エア一バリァー剤や硬化促進剤を使用することに よって、 表面未重合量を問題とならないレベルに低減するのではなく、 それ自体 で表面未重合量が少なく硬化性が良好な歯科用硬化性組成物を提供することにあ る。
本発明のさらに他の目的は、 本発明の上記義歯床裏装材用接着性組成物および 上記歯科用硬ィ匕性組成物を用いる義歯床の裏装法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、 本発明の上記目的および利点は、 第 1に、 ハロゲン原子を含 有しない有機溶剤 1 0 0重量部、 重合体 0 . 1〜 3 5重量部およびラジカル重合 性単量体 0 . 1〜 1 0 0重量部を含有することを特徴とする義歯床裏装 (rel ining) 材用接着性組成物によって達成される。
本発明によれば、 本発明の上記目的および利点は、 第 2に、 ハロゲン原子を含 有しない有機溶剤 1 0 0重量部、 重合体 0 . 1〜3 5重量部およびラジカル重合 性単量体 0 . 1〜 1 0 0重量部を含有してなりそして義歯床裏装材用接着剤であ ることを特徴とする接着性組成物によって達成される。
本発明によれば、 本発明の上記目的および利点は、 第 3に、 ラジカフレ重合性単 量体、 有機過酸化物、 第 3級ァミンおよびヒドロキシカルボン酸を含有すること を特徴とする歯科用硬化性組成物によって達成される。
本発明によれば、 さらに、 本発明の上記目的および利点は、 第 4に、 本発明の 接着性組成物を、 義歯の口腔粘膜を接触する面上に塗布して該面上に重合体とラ ジカル重合性単量体からなる塗膜を形成せしめ次いで該塗膜上に本発明の歯科用 硬ィ匕性組成物を塗布しかつ硬化させて義歯床に補綴部分を形成せしめることを特 徵とする義歯床の裏装法によって達成される。
発明の好ましい実施形態
以下、 本発明の義歯床裏装材用接着性組成物についてまず説明する。 ' 本発明は、 論理に拘束されるものではないが、 本発明の接着性組成物において は、 重合体を配合することによって論理的な嵌合力を義歯床並びに裏装材の間に 付与すること、 および重合性単量体を配合することにより該重合性単量体が義歯 床に浸透すると共に硬化前の裏装材と混和して裏装材の硬化時に重合硬化するこ とにより接着強度並びに接着耐久性を向上させる一方で、 これら成分の配合量が 制御されることにより、 操作性や接着性組成物の余剰塗布面の審美性が良好にな つているものと思われる。
本発明の義歯床裏装材用接着性組成物は、 ハロゲン原子を含有しない有機溶剤 に対してそれぞれ特定量の重合体、およびラジカル重合性単量体を配合してなる。
ハロゲン原子を含有しない有機溶剤に重合体のみを配合した場合には、 接着性組 成物を義歯床の口腔粘膜側に塗布すると、 有機溶剤が揮発した後に重合体が析出 し義歯床表面が白化したり、 凹凸が現れたりして接着性組成物の余剰塗布面の審 美性が低下する。 また、 ハロゲン原子を含有しない有機溶剤にラジカル重合性単 量体のみを配合した場合には、 接着強度の向上はみられるが熱衝撃による接着耐 久性が低下する傾向にある。
本発明で用いるハロゲン原子を含有しない有機溶剤は、 その分子骨格中にハロ ゲン置換基を有さず、 ラジカル重合性単量体成分を溶解すると共に重合体成分を 溶解するもしくは膨潤させるものであれば特に限定されない。 安全性の観点から 前出の 「医薬品の残留溶媒ガイドライン」 に示されたクラス 1、 2に属さない有 機溶媒を使用するのが好ましい。 また、 接着性組成物自体が溶液状となり良好な 塗布性 (操作性) が得られることから重合体に対する溶解性が高いものを使用す るのが好ましい。 本発明において好適に用いられるハロゲン原子を含有しない有 機溶剤としては、 例えば炭化水素、 アルコール類、 エーテル類、 ケトン類および カルボン酸エステル類が挙げられる。 好ましくは炭素欽 5〜 8の炭化水素、 炭素 数 1〜5のアルコール類、 炭素数 4〜 8のエーテル類、 炭素数 2〜 6のケトン類 およぴ炭素数 2〜 6の力ルポン酸エステル類が用いられる。
これらの具体例としては、ヘプタン、ペンタンのごとき炭化水素、エタノール、 1—プロパノール、 2—プロパノール、 1—ブ夕ノール、 2—ブ夕ノールのごと きアルコール化合物;ジェチルエーテル、 テトラヒドロフラン、 t—プチルメチ ルェ一テルのごときエーテル類;アセトン、 メチルェチルケトン、 メチルイソブ チルケトンのごときケトン類;ぎ酸ェチル、 酢酸メチル、 酢酸ェチル、 酢酸プロ ピル、 酢酸イソプロピルのごときカルボン酸エステル類等が挙げられる。 これら ハ口ゲン原子を含有しない有機溶剤は単独で、 もしくは数種類のものを混合して 用いることができる。 これらハロゲン原子を含有しない有機溶剤の中でも、 低沸 点で揮発性を有するものは乾燥が速く取扱いが容易であることから、 2 0〜1 5 0 °C、 特に 3 0〜1 0 0 °Cの沸点を有するものが特に好適である。 また、 ケトン 類並びにカルボン酸エステル類を混合した混合溶剤は接着後の耐久性が優れてい
るために好ましい。 これら特徵を併せ持つことから、 アセトンとぎ ェチル、 ま たはァセトンと酢酸ェチルの組合せが最も好適に使用できる。
本発明で用いられる重合体としては、 例えばポリ (メタ) ァクリレート、 ポリ カーボネート、 ポリエステルのごとき一般的に入手可能な重合体が制限なく用い られる。 ハロゲン原子を含有しない有機溶剤とラジカル重合性単量体の混合物に 溶解して均一溶液となり塗布等の操作性が良好であること、 および義歯床として 一般的に使用されているポリ (メタ) ァクリレートに対する接着強度が高いとい う観点から、 アルキル(メタ) ァクリレート { (メタ) アクリル酸アルキルエステ ル化合物 } の単独重合体もしくは共重合体を使用するのが好適である。 本発明に おいて好適に使用できる重合体を具体的に例示すると、 メチルァクリレート、 メ チルメタクリレ一ト (MMAと略記する)、ェチルァクリレート、ェチルメタクリ レ一ト(EM Aと略記する。)、プロピルァクリレート、プロピルメタクリレート、 プチルァクリレート、プチルメタクリレートのごときァクリレートの単独重合体、 もしくはこれらの共重合体を挙げることができる。 これらのうち、 (メタ)ァクリ ル酸と炭素数 1〜 4のアルキルアルコールとのエステルの単独重合体または共重 合体を使用したものは、 接着強度および接着耐久性が高いという特長を有する。 中でもメチルァクリレートとェチルァクリレートの共重合体、 またはメチレメタ クリレートとェチルメタクリレートの共重合体が好ましく、 接着強度および接着 耐久性が特に高いことからメチルメタクリレートとエヂルメ夕クリレートの共重 合体を用いるのが最も好ましい。
これら重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、 ハロゲン原子を含有し ない有機溶剤とラジカル重合性単量体の混合物に容易に溶解し、 接着剤余剰塗布 面が均一の厚さを有し良好な審美性を有することから 1 0, 0 0 0〜 2 , 0 0 0 , 0 0 0、 特に 1 0 0, 0 0 0〜1 , 0 0 0 , 0 0 0であるのが好適である。
本発明の接着性組成物における重合体の配合量は、 ハロゲン原子を含有しない 有機溶剤 1 0 0重量部に対して重合体 0 . 1〜3 5重量部である必要があり、 好 ましくは 0 . 5〜1 0重量部である。 配合量が 0 . 1重量部未満では重合体配合 による物理的嵌合力の付与が不十分であることによると思われ十分な接着強度が
得られず、 また、 配合量が 3 5重量部を超えると接着剤の粘度が高くなり、 操作 性が低下する。
本発明の接着性組成物で使用されるラジカル重合性単量体は、 ビニル基等の重 合性不飽和結合を有するものであれば特に限定されず、例えばジビニルベンゼン、 アルキルピニルエーテル、 (メタ)ァクリレートのごとき化合物を使用することが できる。 重合体成分に対する溶解性が高く、 義歯や裏装材との親和性が高く一部 がこれらの構成材料と共重合することも期待でき、 高い接着強度も得られること から、 (メタ) ァクリレー卜系ラジカル重合性単量体を用いるのが好適である。
(メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体としては、 一般に歯科用修復材料で 使用可能な公知の (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体が何ら制限なく使用 できる。 このようなラジカル重合性単量体を具体的に例示すると、 下記 (1 ) 〜
( 4) に示されるような単官能および多官能ラジカル重合性単量体 (モノマー) が拳げられる。 なお、 以下の化合物名において、 (メタ) ァクリレートとはメタク リレートまたはァクリレートを意味する。
( 1 ) 単官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
メチルメタクリレート、ェチルメタクリレート、イソプロピルメ夕クリレート、 ヒド口キシェチルメタクリレート、 テトラヒドロフルフリルメタクリレート、 グ リシジルメタクリレート等のメタクリレート、 およびこれらのメタクリレートに 対応するァクリレート;あるいはアクリル酸、 メタクリル酸、 P—メタクリロイ ルォキシ安息香酸、 N— 2—ヒドロキシー 3—メタクリロイルォキシプロピル一 N—フエニルダリシン、 4ーメタクリロイルォキシェチルトリメリット酸、 およ びその無水物、 6—メタクリロイルォキシへキサメチレンマロン酸、 1 0—メタ クリロイルォキシデカメチレンマロン酸、 2—メタクリロイルォキシェチルジハ イドロジェンフォスフェート、 1 0—メタクリロイルォキシデカメチレンジハイ ドロジェンフォスフェート等および後述する歯科用硬化性組成物の項で、 単官能
(メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体として例示される式 (1 ) 〜 (7 ) で 示される化合物。
( 2 ) 二官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
( 2 - 1 ) 芳香族化合物系のもの
2 , 2 -ビス (メタクリロイルォキシフエニル) プロパン、 2 , 2 -ビス 〔4 一 (3—メ夕クリロイルォキシ) —2—ヒドロキシプロポキシフエニル〕 プロパ ン (以下、 b i s— GMAと略記する)、 2, 2—ビス (4ーメタクリロイルォキ シフエニル) プロパン、 2, 2—ビス (4ーメタクリロイルォキシポリエトキシ フエニル) プロパン (以下、 D— 2 6 Eと略記する)、 2 , 2—ビス (4—メタク リロイルォキシジエトキシフエニル) プロパン、 2 , 2—ビス (4—メタクリロ ィルォキシテ卜ラエトキシフエ二ル) プロパン、 2, 2 -ビス (4—メタクリロ ィルォキシペンタエトキシフエ二ル) プロパン、 2, 2—ビス (4ーメタクリロ ィルォキシジプロポキシフエニル) プロパン、 2 ( 4—メタクリロイルォキシジ エトキシフエニル) - 2 (4—メタクリロイルォキシジエトキシフエニル) プロ パン、 2 ( 4—メタクリロイルォキシジェトキシフェニル) - 2 (4一メタクリ ロイルォキシジトリエトキシフエニル) プロパン、 2 (4—メタクリロイルォキ シジプロポキシフエニル) - 2 - (4—メタクリロイルォキシトリエトキシフエ ニル) プロパン、 2 , 2—ビス (4—メ夕クリロイ レオキシプロポキシフエニル) プロパン、 2, 2—ビス (4ーメタクリロイルォキシイソプロポキシフエニル) プロパンおよびこれらのメタクリレ一ト^対応するァクリレート; 2—ヒドロキ シェチルメタクリレート、 2—ヒドロキシプロピルメタクリレート、 3—クロ口 一 2—ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらの メタクリレートに対応するアタリレートのような一 0 H基を有するビエルモノマ
( 2 - 2 ) 脂肪族化合物系のもの
エチレングリコ一レジメタクリレート、 ジェチレングリコ一ルジメタクリレー ト、 トリエチレングリコールジメ夕クリレート (以下、 3 Gと略記する)、 ブチレ ングリコールジメタクリレート、 ネオペンチルダリコールジメタクリレート、 プ ロピレングリコールジメタクリレート、 1, 3—ブタンジオールジメタクリレー ト、 1 , 4—ブタンジオールジメタクリレート、 1 , 6—へキサンジォ一ルジメ タクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応するァクリレート; 2—ヒド
口キシェチルメタクリレート、 2—ヒドロキシプロピルメタクリレート、 3—ク ロロ一 2—ヒドロキシプロピルメタクリレートのごときメタクリレ一トあるいは これらのメタクリレートに対応するァクリレートのような一 O H基を有するビニ ルモノマ一、 無水アクリル酸、 無水メタクリル酸、 1, 2—ビス (3—メタクリ ロイルォキシー 2—ヒドロキシプロボキシ) ェチル、 ジ (2—メタクリロイルォ キシプロピル) フォスフェート等。 '
( 3) ミ官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパン卜リメタクリレート、 トリメチ口一ルェタントリメタ クリレート、 ペン夕エリスリトールトリメタクリレート、 トリメチロールメタン トリメタクリレート等のメタクリレートおよびこれらのメタクリレートに対応す るァクリレート等。
(4) 四官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
テトラメチロールメタンテトラメタクリ.レート、 ペン夕エリスリトールテトラ メタクリレート、 およびこれらのメタクリレートに対応するァクリレート等。 これらのラジカル重合性単量体は、 単独あるいは 2種類以上組合せて用いるこ とができる。 上記ラジカル重合性単量体の中でも多官能 (メタ) アクリル系ラジ カル重合性単量体を用いるのが好ましく、 さらに初期接着強度がより高まること から、 三官能以上の多官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体を用いるの が特に好ましい。
ラジカル重合性単量体の配合量は八ロゲン原子を含有しない有機溶剤 1 0 0重 量部に対してラジカル重合性単量体 0. 1〜1 0 0重量部である必要がある。 該 配合量が 0. 1重量部未満では接着強度が向上せず、また、 1 0 0重量部を超える と接着 'ί生組成物の余剰塗布面がベたつきその審美性が低下する。 なお、 ラジカル 重合性単量体は、 重合体を効率よく溶解し、 接着剤余剰塗布面の審美性をより良 くするためには、 重合体童量の 1 Z 2以上を配合するのが好ましい。
本発明の接着性組成物は、 本発明の効果を阻害しない範囲であれば、 着色剤、 香料等の添加剤を含有していてもよい。
本発明の接着性組成物の調製方法は特に限定されず、 各成分を所定量はかり採
り、 混合することによって調製することができる。 また、 その使用方法も特に限 定されない。 例えば、 本発明の接着性組成物を、 義歯の口腔粘膜と接触する面上 に塗布して該面上に重合体とラジカル重合性単量体からなる塗膜を形成せしめて、 義歯の所定面上に接着性塗膜を形成する方法において使用される。 具体的には、 例えばスタンプバ一等で面出しした義歯床の口腔粘膜面側に本発明の接着性組成 物を筆等で薄く塗布し、 乾燥させた後に義歯床裏装材を盛り付けてこれを硬ィ匕さ せればよい。 本発明の接着性組成物は、 主要構成成分が共に (メタ) アクリル樹 脂である義歯床と裏装材との接着に用いた場合に特に高い効果を発揮する。
次に、 本発明の歯科用硬化性組成物について説明する。
本発明の歯科用硬化性組成物は、 エア一バリァー剤や硬ィ匕促進剤を使用しなく ても硬ィ匕時の表面未重合量が少なく、硬化体の耐久性が高いという特長を有する。 上記本発明の歯科用硬化性組成物の中でも、 重合体を含有してなるものは、 組成 物の粘性を自由に調節したり、 硬化させた際の強度が高いという特長を有する。 本発明の歯科用硬化性組成物で使用するラジカル重合性単量体としては、 ラジ カル重合が可能なものであれば特に限定されない。 一般に歯科材料用に使用され るァクリロイルォキシ基および Zまたはメタクリロイルォキシ基を有するラジカ ル重合性単量体等が制限なく使用できる。 このようなラジカル重合性単量体を具 体的に例示すれば下記 (I ) 〜 (IV) に示すものが挙げられる。
( I ) 単官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
メチル (メタ) ァクリレー卜、 ェチル(メタ) ァクリレート、イソプロピル(メ 夕) ァクリレート、 ヒドロキシェチル (メタ) ァクリレ 卜、 テ卜ラヒドロフリレ フリル (メタ) ァクリレ一ト、 グリシジル (メタ) ァクリレート、 下記式 ( 1 ) 〜 (7 ) のいずれかで示される (メタ) ァクリレート化合物
R1 0 0
II 2 II 4 、
-C0-R
2- OC-R
4 ( 2 )
なお、上記各式中、 R
1は、水素原子またはメチル基を意味し、 R
2および R
3は、 それぞれ独立にアルキレン基を意味し、 R
4はアルキル基を意味し、 mは 0また は 1を意味し、 nは 1〜; L0の整数 (ただし、 m+nは 2〜10の整数である。) を意味する。 上記 R
2または R
3としてのアルキレン基は特に限定されないが、 好 ましくは炭素数 2 6のアルキレン基である。
単官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体としては、 前記式 (1) で表 される化合物が好ましい。
重合体と併用する場合の溶解性あるいは膨潤性を勘案すると、 前記式 (1) に おいては、 R 2および R 3が、 互に独立に、 好ましくはメチレン基、 エチレン基、 ェチリデン基、 トリメチレン基、 プロピレン基、 テトラメチレン基、 1—メチル トリメチレン基、 1, 2—ジメチルエチレン基およびへキサメチレン基のごとき 炭素数が 1 6のアルキレン基、 より好ましくは炭素数 2 6のアルキレン基、 特に好ましくは炭素数 2 4のアルキレン基である。 また、 前記式 (1) におけ る R4のアルキル基としては、 同じ理由により、 メチル基、 ェチル基、 プロピル 基、 ブチル基のごとき炭素数 1 4のアルキル基、 これらの中でもメチル基また はェチル基であるのが好適である。
( Π ) 二官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
( i ) 脂肪族化合物
エチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 ジエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 トリエチレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 ブチレンダリ コールジ (メタ) ァクリレート、 ネオペンチルダリコ一ルジ (メタ) ァクリレー ト、 プロピレングリコールジ (メタ) ァクリレート、 1, 3—ブタンジォ一ルジ (メタ) ァクリレート、 1, 4—ブタンジオー^/ジ (メタ) ァクリレート、 1, 6—へキサンジオールジ (メタ) ァクリレート、 1, 9—ノナメチレングリコ一 ルジ(メタ) ァクリレート、 1 , 1 0—デカンジオールジ(メタ)ァクリレート、 無水 (メタ) アクリル酸;並びに 1, 2—ビス (3—メタァクリロキシ一 2—ヒ ドロキシプロボキシ) ェチル、 ジ (2—メタァクリロキシェチル) フォスフエ一 ト、 ジ (3—メタクリロキシプロピル) フォスフェート、 およびこれらのァクリ レ一卜。
( ii ) 芳香族化合物
2 , 2—ビス (メタクリロキシフエニル) プロパン、 2 , 2—ビス [ 4— ( 3 一メ夕クリロキシ) 一 2—ヒドロキシプロポキシフエニル] プロパン、 2, 2 - ビス (4—メタクリロキシエトキシフエニル) プロパン、 2, 2—ビス (4—メ タクリロキシジエトキシフエニル) プロパン、 2, 2—ビス (4ーメタクリロキ シテトラエトキシフエニル) プロパン、 2, 2—ビス ( 4—メタクリロキシペン タエトキシフエニル) プロパン、 2 , 2—ビス (4—メタクリロキシジプロポキ シフエニル)プロパン、 2 - (4ーメタクリロキシエトキシフエニル)—2— (4 一メ夕クリロキシジエトキシフエニル) プロパン、 2— (4—メ夕クリロキシジ エトキシフエニル) 一 2— (4—メタクリロキシトリエトキシフエニル) プロパ ン、 2— (4ーメタクリロキシジプロポキシフエニル) 一2— (4—メタクリロ キシ卜リエトキシフエニル) プロパン、 2, 2—ビス (4—メタクリロキシプロ ポキシフエニル) プロパン、 2, 2—ビス (4—メ夕クリロキシイソプロポキシ フエニル) プロパンおよびこれらのァクリレート。
( 三官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
トリメチロールプロパントリ (メタ) ァクリレート、 トリメチロールェタント リ (メタ) ァクリレート、 ペン夕エリスリトールトリ (メタ) ァクリレート、 ト リメチロールメタントリ (メタ) ァクリレート。
(IV) 四官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体
ペン夕エリスリ 1 ^一ルテトラメタァクリレート、 ペン夕エリスリトールテトラ ァクリレート。
上記ラジカル重合性単量体は単独で用いてもよく、 また 2種類以上組合せて用 いてもよい。 また、 ラジカル重合性を有する官能基数が異なる複数種の組合せも 自由に選択し得る。
上記ラジカル重合性単量体のうち、 本歯科用硬化性組成物の硬化によつて得ら れる硬化体の脆性と曲げ強度、 曲げ弾性率等の機械的特性とのパランスを勘案す ると、 単官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体および多官能 (メタ) ァ クリル系ラジカル重合性単量体の混合物が好適に使用される。 さらには、 単官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体および二官能 (メタ) アクリル系ラジ カル重合性単量体の混合物は、 物性パランスが取りやすいという観点から好適に 用いられる。 このとき、 単官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体および 二官能 (メタ) アクリル系ラジカル重合性単量体の比率は、 重量比で 5 : 9 5〜 9 5 : 5の範囲、 特に 2 0 : 8 0〜8 0 : 2 0の範囲が好適に用いられる。
また、 本発明の歯科用硬化性組成物を直接法義歯床裏装材のように口腔内で使 用する用途に用いる場合には、 刺激臭が少なく、 口腔内粘膜や皮膚に対する刺激 が低く、 重合時の発熱が低減される等の理由から単官能 (メタ) アクリル系ラジ カル重合性単量体としては、 前記式 (1 ) で示される '(メタ) ァクリレート化合 物を使用するのが特に好適である。 さらに、該化合物と併用される二官能(メタ) アクリル系重合性単量体としては、 臭気や、 皮膚、 粘膜への刺激性等を勘案する と、 1, 6 —へキサメチレンジオールジメタァクリレート、 1 , 9—ノナメチレ ンジオールジメタァクリレート、 1, 1 0—デカンジオールジメタァクリレ一ト 等が好適に使用できる。 また、 このような用途に使用する場合には、 全ラジカル 重合性単量体の 5〜9 5重量%が前記式 ( 1 ) で示される化合物とするのが好ま
しい
このような目的で好適に使用される前記式 ( 1 ) で示される化合物を具体的に 例示すると下記 M— AE— 1〜M— A E— 8として示される化合物が挙げられる c
前記式 ( 1 ) で示される化合物は、 市販されているものも多く、 また、 下記第 1および第 2の 2つの方法により簡単に製造することができる。
第 1の方法として、 对応するヒドロキシアルキル (メタ) アクリル酸エステル を対応するカルボン酸と反応させて脱水縮合させることにより容易に製造するこ とができる。 該方法によれば、 例えば、 1モルのヒドロキシアルキル (メタ) ァ クリル酸エステルと 1モルのカルボン酸を酸触媒、 重合禁止剤とともにトルエン
中、 加熱下で生成する水を留去しながら 2時間反応させた後に、 炭酸ナトリウム 水溶液で洗、净し、 硫酸ナトリゥム乾燥後、 溶剤を減圧留去することにより目的の 化合物を得ることができる。 また、 もう 1つの第 2の方法として、 対応するヒド ロキシアルキル (メタ) アクリル酸エステルをジケテンと反応させる {R. J. C l emens, Chemi ca l. Rev i ew, 86, 241 (1986)} 方法が挙げられる。 法によれば、 例えば、 1モルのヒドロキシアルキル (メ 夕) アクリル酸エステル、 lgのトリエチルァミン、 および lgのプチルヒドロ キシトルエンを 500mlの無水酢酸ェチルに溶解し、 この液に 88 g ( 1. 0 5モル) のジケテンを、 攪拌しながら 1時間以内に滴下して加えて反応させ、 次 いでこの反応混合物を還流下で 2時間加熱し、冷却後、希塩酸、水の順で洗浄し、 硫酸ナトリゥム乾燥後、 溶剤を減圧留去することにより目的の化合物を得ること ができる。
本発明の歯科用硬化性組成物で使用される有機過酸化物としては、 第 3級アミ ンとの接触によりラジカルを発生しうるものであれば何ら制限なく使用できる。 好適に使用される有機過酸ィヒ物を具体的に例示すると、 ベンゾィルパーォキサイ ド、 2, 4—ジクロロベンゾィルパーオキサイド、 ジラウロイルパーオキサイド 等が挙げられる。 これら有機過酸化物の好適な使用量は、 用いられる有機過酸化 物の種類によって異なるため一概に限定できないが、 全ラジカル重合性単量体 1 00重量部に対して、 好ましくは 0. 05〜5重量部、 さらに好ましくは 0. 1 〜 2重量部の範囲である。
本発明の歯科用硬化性組成物で使用する第 3級アミン化合物としては、 公知の 化合物が特に制限されず使用される。 好適に使用される第 3級ァミン化合物を具 体的に例示すると、 N, N—ジメチルァニリン、 N, N—ジェチルァニリン、 N, N—ジプロピルァニリン、 N, N—ジブチルァ二リン、 N—メチル, N—i3—ヒ ドロキシェチルァ二リン等のァニリン類、 N, N—ジメチルー p—トルイジン、 N, N—ジェチルー p—トルイジン、 N, N—ジプロピル— P—トルイジン、 N, N—ジブチルー!)ートルイジン、 p—トリルジェ夕ノールァミン、 P—トリルジ プロパノ一ルァミン等のトルイジン類、 N, N—ジメチル—ァニシジン、 N, N
—ジェチルー p—ァニシジン、 N, N—ジプロピル— p—ァニシジン、 N, N - ジブチル— P—ァニシジン等のァニシジン類、 N—フエニルモルフォリン、 N— トリルモルフォリン等のモルフオリン類、 ビス (N, N—ジメチルァミノフエ二 ル)メタン、 ビス(N, N—ジメチルァミノフエニル)エーテル等が挙げられる。 これらのァミン化合物は、 塩酸、 リン酸、 酢酸、 プロピオン酸等の有機酸などと の塩として使用してもよい。
上記第 3級ァミン化合物の内、 重合活性が高く、 なおかつ低刺激、 低臭という 観点から、 N, N—ジェチル— p—トルイジン、 N, N—ジプロピル—: —トル ィジン、 p—トリルジェ夕ノールァミン、 p—トリルジプロパノ一ルァミンが好 適に使用される。 さらには、 第 3級ァミン化合物をラジカル重合性単量体と混合 した状態で長期保存が必要となる場合には、 N,N—ジェチル一 P—トルィジン、 N, N—ジプロピル— p—トルイジンを用いるのが保存安定性の観点から好まし い。
第 3級ァミン化合物の使用量は全ラジカル重合性単量体 1 0 0重量部に対して、 好ましくは 0 . 0 5〜5重量部、 さらに好ましくは 0 . 1〜2重量部の範囲であ る。
上記、 有機過酸化物と第 3級ァミン化合物の組合せのうち、 好適なものを具体 的に例示すると、 ベンゾィルパーォキサイド /N, N—ジェチル— p—トルイジ ン、 ベンゾィルパーオキサイド ZN, N—ジプロピル— p—トルイジン、 ベンゾ ィルパ一ォキサイド / p—トリルジェ夕ノールアミン、 ベンゾィルパーォキサイ ド / p—トリルジブロパノールァミン等の組合せが挙げられる。 中でも、 第 3級 ァミン化合物をラジカル重合性単量体と混合した状態で長期保存が必要となる場 合には、 保存安定性の観点からベンゾィルパーオキサイド/ N, N—ジェチル— p -トルイジン、 ベンゾィルパーォキサイド ZN, N—ジプロピル一 p—トルイ ジンの組合せが最も好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、 ヒドロキシカルボン酸化合物を含有すること に最大の特徴を有する。 ヒドロキシカルボン酸化合物を含有することにより重合 硬化させたときに表面未重合層が形成されにくくなり、 表面未重合量を低減する
ことが可能となる。 本発明の歯科用硬化性組成物で使用するヒドロキシカルボン 酸化合物は、 力ルポキシル基および水酸基を有する化合物であれば特に限定され ない。 表面未重合量低減効果の高さの観点から、 カルボン酸基の α位に水酸基を 有する化合物を使用するのが好ましい。 好適に使用されるヒドロキシカルボン酸 化合物を例示すれば、ク工ン酸、 リンゴ酸、酒石酸、 ダリコール酸、ダルコン酸、 ひ—ォキシイソ酪酸、 2—ヒドロキシプロパン酸、 3—ヒドロキシブタン酸、 4 —ヒドロキシブタン酸、 ジメチ口一ルプロピオン酸等が挙げられる。 これらのヒ ドロキシカルボン酸化合物は単独使用しても 2種類以上を併用してもよい。 ヒドロキシカルボン酸化合物の使用量は特に限定されないが、 効果の点から、 全ラジカル重合性単量体 1 0 0重量部に対して、 好ましくは 0. 0 0 5〜2重量 部、 特に好ましくは 0. 1〜1重量部の範囲である。
本発明の歯科用硬化性組成物は、歯牙の欠損部や消失部の補綴、動揺歯の固定、 配列成形、 義歯床の裏装等の目的に用いることができる。 具体的には、 義歯補修 用即時重合レジン、 歯冠用即時重合レジン、 急速硬化即時重合レジン、 歯冠用硬 質レジン、 斗矯正用レジン等の歯冠用材料として、 または、 義歯床裏装用即時 重合レジン、 各個人トレー用即時重合レジン等の義歯床用材料として好適に使用 できる。
本発明の歯科用硬化性組成物には、 前記必須成分の他にも上記用途に応じて、 流動性を改良したり、 得られる硬化体の諸物性および硬化性をコントロールする ために、 合成樹脂粉末;無機フィラ一;エタノール、 ジブチルフタレ一ト、 ジォ クチルフタレ一ト等のアルコールまたは可塑剤;プチルヒドロキシトルエン、 メ トキシハイドロキノン等の重合禁止剤;色素、 顔料、 香料等を添加することがで きる。
本発明の歯科用硬化性組成物は本発明の接着性組成物と組合せて使用するのが 好ましい。 具体的には、 本発明の接着性組成物を、 義歯の口腔粘膜と接触する面 上に塗布して該面上に重合体とラジカフレ重合性単量体からなる を形成せしめ 次いで該塗膜上に本発明の歯科用硬化性組成物を塗布しかつ硬化させて義歯床に 補綴部分を形成せしめることにより義歯床を裏装することができる。
特に、 本発明の歯科用硬化性組成物を義歯床裏装用即時重合レジン等の直接法 義歯床裏装材として使用する場合には、 該材料に適度な粘性が必要とされるため に重合体粉末を配合するのが好適である。 このとき使用される重合体粉末は、 ラ ジカル重合性単量体へ完全にまたは部分的に溶解するかまたはラジカル重合性単 量体によって膨潤するものであれば何ら制限されない。 一般に化学的安定性、 透 明性などの点で、 ポリメチルメタァクリレ一ト、 ポリェチルメタァクリレート、 ポリプチルメ夕ァクリレー卜、 ポリスチレンおよびそれらの共重合体の粉末が好 適に使用される。 中でも、 ポリェチルメタァクリレートは前記式 ( 1 ) で示され る化合物により特に膨潤しゃすいので、 ポリェチルメタァクリレートまたはその 共重合体を用いるのが特に好ましい。
これら重合体粉末を構成する重合体の分子量や粒子径は特に制限されない。 得 られる硬化体の機械的強度やラジカル重合性単量体への溶解性や膨潤性を勘案す ると、 5 0, 0 0 0〜1 , 0 0 0 , 0 0 0の範囲であることが好ましく、 その平 均粒子径は 1〜: L 0 0 mであることが好ましい。 また、 重合体粉末を使用する 場合には、 全ラジカル重合性単量体 1 0 0重量部に対し、 好ましくは 5 0〜 5 0 0重量部、 特に好ましくは 1 0 0〜2 0 0重量部の範囲である。
本発明の歯科用硬化性組成物は、 化学重合触媒を含んでいるので、 全ての成分 を混合したとき重合が開始される。 従って、 通常、 使用前では、 重合が開始しな いように成分をいくつかに分けて保存し、 使用時にそれらを混合するのが一般的 である。 このときの分離保存形態は重合が開始しない形態であれば特に限定され ない。 例えば、 重合体粉末を含む義歯床裏装材として使用する場合には、 各成分 の計量のしゃすさ、 取扱いの容易さの観点から、 重合体粉末および有機過酸化物 が所定の割合で配合された粉末成分と、 ラジカル重合性単量体、 第 3級ァミン化 合物おょぴヒドロキシカルボン酸化合物がそれぞれ所定の割合で配合された液体 成分とをそれぞれ別の 2つの容器に収容して保存し、 これら 2つの容器をキット として用いるのが好適である。 このようなキットとした場合には、 使用時に各容 器から所定量の粉末および液体をそれ れ所定量取り出して混和し、 所定の型枠 中に入れ、 もしくは形を整えて、 常温ないし口腔内にて硬化させればよい。
また、 このキッ卜にはさらに本発明の接着性組成物を収容した第 3容器を組合 せることができる。
実施例
以下、 実施例 1〜 1 4によって本発明の接着性組成物を具体的に説明するが、 本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。 '
なお、 実施例 1〜 1 4並びに比較例 1〜4で用いたハロゲン原子を含有しない 有機溶剤、 重合体およびラジカル重合性単量体は次の通りである。
( a) ハロゲン原子を含有しない有機溶剤
酢酸ェチル、 アセトン、 ジェチルェ一テル、 およびへブタン。
( b) 重合体
ポリメチルメタクリレート (Mw= 5 0 0, 0 0 0、 P MMAと略記する) ポリェチルメタクリレート (Mw= 5 0 0 , 0 0 0、 P EM Aと略記する) メチルメタクリレート一ェチルメタクリレートとの共重合体 {M = 5 0 0 , 0 0 0、 MMA/EMAモル比 = 3 0 / 7 0、 P (MMA— EMA) と略記する } ( C ) ラジカル重合性単量体
メチルメ夕クリレート (MM Aと略記する)
トリエチレングリコールジメ夕クリレート (3 Gと略記する)
トリメチロールプロパントリメタクリレート (TMP Tと略記する)
テトラメチロールメタンテトラメタクリレ一ト (TMMTと略記する)
また、 接着性組成物の塗布後の表面性状、 初期接着強度、 および接着耐久性の 操作、 測定手順および評価基準は、 それぞれ下記 (1 ) 〜 (3 ) に示す通りであ る。
( 1 ) 接着性組成物塗布後の表面性状
各実施例と各比較例の義歯裏装材接着性組成物をポリメチルメ夕クリレ一ト樹 脂製の義歯床用材料 (ジ一シ一社製、 アクロン) で Ϊ乍製し表面を耐水研磨紙 # 3 2 0で研磨した樹脂板 (2 0 X 2 0 X 2 mm) に筆で塗布し、 乾燥後の表面性状 を観察した。該表面性状がムラなく均一である場合には、接着性組成物余剰塗布面 の審美性が良好であるといえる。
( 2 ) 接着強度の測定
ポリメタクリレート樹脂製の義歯床用樹脂(ジーシ一社製、商品名:アクロン) を用いて榭脂板 ( 1 0 X 1 0 X 2 mm) を作成し、 該板を耐水研磨紙 # 3 2 0で 研磨後、 2 4時間水中に浸漬させたものを被着体とした。 該被着体の表面をキム ワイプ (クレシァ社製) で拭って乾燥した後、 筆を用いて義歯床裏装材用接着性 組成物を塗布した。 この接着性組成物中の溶媒成分が揮発するまで放置して乾燥 させた後、直径 3 mmの孔の開いた両面テープを張りつけて接着面積を規定した。 その後、 アクリル系樹脂製裏装材((株) トクャマ製、 トクソ一リベースファース トタイプ) を取り扱い説明書に記載の粉 Z液比で練和して得られたペーストを、 前記両面テープの孔を塞ぐ量だけ盛り付けた後、 素早くァクリル製アタッチメン トで圧着して 3 7 °C湿潤下で硬化させ、 さらに 3 7 °C水中に 2 4時間浸漬したも のを測定用試料とした。 測定は引張試験機 (島津製作所製、 オートグラフ) を用 いてクロスへッドスピード 1 mm/m i nで行つた。接着強度は上記試料 1 0個 について測定を行い、 その平均値から求めた。
( 3 ) 接着耐久性の評価
上記と同様にして作成した接着強度測定用の試料に熱衝撃を繰返し印加するこ とにより接着耐久性を評価した。 試験は熱衝撃試験機 (トーマス科学器械株式会 社製) を用いて 4°Cの水中に 1分間保持、 6 0での温水中に 1分間保持のサイク ルを 1 0, 0 0 0回繰返すことにより行った。 熱衝撃試験後の試料 1 0個につい て引張接着強度を測定し、 その平均値を耐久性試験後の接着強度とした。 熱サイ クル試験を行っていない試料の引張接着強度と比較して、 強度減少率が 2 0 %以 下のものを〇、 2 0 %より大きく 4 0 %以下のものを△、 4 0 %を超えるものを Xとしてそれぞれ評価した。
実施例 1 '
ハロゲン原子を含有しない有機溶剤として酢酸ェチル 1 0 0重量部に、 重合体 として P (MMA- EMA) 5重量部、 ラジカル重合性単量体として TMMT 5 重量部を添加混合して溶液状の本発明の義歯床裏装材用接着性組成物を調製し た。
この義歯床裏装材用接着性組成物を用いての塗布後の表面性状を評価したとこ ろ、 良好な表面性状であった。 また、 アクリル樹脂製裏装材 ((株) トクャマ製、 トクソーリベースファーストタイプ) との接着試験を行った結果、 接着強度は 1 2 . O MP aであり、 接着耐久性は〇であった。
実施例 2〜 1 4
表 1に示した組成とする他は実施例 1と同様にして義歯床裏装材用接着性組成 物を調製し、 各性能の評価を行った。 その結果を表 1に併記した。 いずれの義歯 床裏装材用接着剤を用いた場合においても均一な表面性状が得られ、 高い接着強 度を示すと共に、 接着耐久性も〇であった。
比較例 1
義歯床裏装材用接着性組成物を用いない他は試験法 (2 ) の方法に基づいて試 料を作製し、 接着強度と接着耐久性について評価した。その結果、 接着強度は 6 . 9 MP aと低く、 また接着耐久性は Xであった。
比較例 2 , 3
重合体およびラジカル重合性単量体を添加しない例として、 表 1に示す組成の 義歯床裏装材用接着性組成物を調製し、 実施例 1と同様にして各性能の評価を行 つた。その結果、いずれの組成の義歯裏装材用接着性組成物も均一な表面性状であ つたが、 接着強度が実施例:!〜 1 4と比較して低く、 また接着耐久性が Xであつ た。
比較例 4
ラジカル重合性単量体を配合しない例として表 1に示す組成の義歯床裏装材用 接着性組成物を調製し、 実施例 1と同様にして各性能の評価を行った。この場合、 接着性組成物塗布後の表面が白化した。 また、 接着強度も 7 . 9 MP aと低く、 接着耐久性も△であった。
比較例 5
重合体を配合しない例として表 1〖こ示す組成の義歯床裏装材用接着性組成物を 調製し、実施例 1と同様にして各性能の評価を行った。接着強度は 1 0 . 5 MP a と高い値を示したが、 熱衝撃試験後の強度が 5 . 2 MP aと低下し、 接着耐久性
は Xとなった。
比較例 6
高分子重合体の添加量を 0 . 0 1重量部と本発明の範囲以下とした以外は、 実 施例 1と同様にして各性能の評価を行った。 この添加量では重合体を添加した効 果は認められなかった。
比較例 7
ラジカル重合性単量体の添加量を 0. 0 1重量部と本発明の範囲以下とした以 外は実施例 1と同舉な方法で各性能の評価を行った。 この添加量ではラジカル重 合性単量体を添加した効果は認められなかった。
実施例 a成 (重量部) 塗布後の 着性 (MPa)
耐久性評価
No. 溶媒 重合体 重合性単量体 表面性状 初期 熱衝撃試験後
実施例 1 酢酸ェチル (100) P (MMA-EMA) (5) TM T (5) 均一 12.0 10.7 〇 実施例 2 アセトン (100) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 均一 13.0 10.9 〇 実施例 3 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 均一 14.0 11.2 〇 実施例 酢酸工チル (30) /ジェチルエーテル (30) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 均一 12.1 10.4 〇 実施例 5 酢酸 Iチル (90) /ヘプタン (10) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 均一 11.5 10.1 〇 実施例 6 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) PMMA (5) TMMT (5) 均一 11.9 10.6 〇 実施例 7 酢酸工チル (50) /アセトン (50) 丽 A (5) TMMT (5) 均一 12.5 10.6 〇 実施例 8 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P腿 (2.5) PEMA. (2.5) TMMT (5) 均一 12.0 10.5 〇 実施例 9 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (0.1) TMMT (5) 均一 12.5 10.3 〇 実施例 10 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) MMA (5) 均一 11.6 10.1 〇 実施例 11 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) 3G (5) 均一 12.0 10.9 〇 実施例 12 m m (50) /アセトン (so) P (MMA-EMA) (5) TMPT (5) 均一 14.0 11.5 〇 実施例 13 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) 3G (2.5) /TMMT (2.5) 均一 13.8 11.2 〇 実施例 14 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMMT (0.1) 均一 11.7 10.6 〇 比較例 1 なし なし なし 6.9 2.5 X . 比較例 2 酢酸 Iチル (100) なし なし 均一 8.8 4.2 X 比較例 3 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) なし なし 均一 8.6 4.1 X 比較例 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) なし 白化 7.9 5.5 △ 比較例 5 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) . なし TMMT (5) 均一 10.5 5.2 X 比較例 6 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (0.01) TMMT (5) 均一 10.5 5.5 X 比蛟例 7 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMMT (0.01) むら有り 7.9 5.6 Δ
次に、 本発明の歯科用硬ィ匕性組成物を実施例 1 5〜4 4により具体的に説明す るが、 本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 なお、 各実施例 1 5 〜 2 6および比較例 8〜 1 9で使用した各種化合物の略号はそれぞれ次のような 化合物である。 また、 実施例 3 6〜4 4には、 本発明の歯科用硬化性組成物と本 発明の接着性組成物の組合せを示した。
単官能ラジカル重合性単量体:
1 , 6 -HD: 1 , 6—へキサンジオールジメタァクリレート
1, 9 -ND: 1 , 9—ノナンジオールジメタァクリレート
実施例 1 5
1 0 0重量部のラジカル重合性単量体 M— A E— 1に対し、 重合禁止剤として メトキシハイドロキノン 0 . 0 2 5重量部、 第 3級ァミン化合物としてジェチル — P—トルイジン 1重量部およびヒドロキシカルポン酸としてリンゴ酸 0. 5重 量部をあらかじめ溶解した溶液を作製した。 該溶液へ有機過酸化物として過酸化 ベンゾィル 1重量部を溶解して硬化性組成物を調製した。 ついで、 調製した硬化 性組成物を速やかに表面未重合量測定用のモールドへ流し入れ、 表面未重合厚さ を測定した。 その結果、 表面未重合厚さは 7 7. mであった。
なお、 表面未重合厚さの測定法は以下の測定法 (4) により行った。
(4) 表面未重合厚さの測定
外寸が縦横 2 5 mm、 内寸が縦横 2 0 mm、 厚さ 1 mmのポリテトラフルォロ エチレン製型枠を縦横 3 0 mm、 厚さ 3 mmのポリテトラフルォロエチレン板へ 粘着テープで貼り付けたものを測定用モールドとした。 硬化性組成物を該モール ドへ流し込み、 硬化性組成物の片面を空気に曝した状態で、 3 7 °Cに保温したィ ンキュベ一夕中で重合硬化させた。 得られた重合体をモールドから取り出し、 そ の厚みをマイクロメ一夕一で 5個所測定して平均値 (D 1 ) を求めた。 直ちに硬 ィ匕体をメタノールに 1分間浸漬して残留したラジカル重合性単量体を除去し、 つ いで硬化が不十分で柔らかい層を切除した後、 硬化体の厚みを 5個所測定して平 均値を求めた(D 2 )。 D 2— D 1をその硬化体の表面未重合厚さとし、該厚さで 硬化性能の相対的比較を行つた。
実施例 1 6〜 2 6
ラジカル重合性単量体の種類および添加したヒドロキシカルボン酸の種類およ び添加量を表 2に示されるように変えたこと以外は実施例 1 5と同様な評価を行 つた。これらの硬化性組成物の表面未重合厚さを測定した結果を表 2に併記した。 比較例 8〜 1 5
ヒドロキシカルボン酸を添加しない他は実施例 1' 5と同様にして硬化性組成物 を調製し、 表面未重合厚さを測定した。 その結果を表 2に併せて示した。
比較例 1 6〜: 1 9 .
ヒドロキシカルボン酸の代わりにヒドロキシカルボン酸でない酸を用いた他は
実施例 1 6と同様にして評価を試料を調整し評価を行った。 その結果を表 2に示 した。
表 2に示されているように、 ヒドロキシカルボン酸を配合していない比較例 8 〜1 5においては表面未重合厚さが 1 9 2〜2 0 2 mとなっているのに対し、 寒施例 1 5〜2 6では 7 7〜1 0 5 mとほぼ半分以下に減少しており、 本発明 の硬化性組成物におけるヒドロキシカルボン酸化合物を配合する効果が明らかで ある。 また、 ヒドロキシカルボン酸以外の酸を添加した比較例 1 6〜1 9では表 面未重合厚さが 1 9 5〜2 0 2 mであり、 ヒドロキシカルボン酸以外の酸を配 合した場合には表面未重合量低減効果がないことが確認された。
表 2 ノノ ) 口 1土
表面未重合厚さ 平里 Ί 添加量
1 (10重量 、 )
(重量部)
実施例 15 M-AE-1 リンゴ酸 0. 5 77
実施例 16 M-AE-1 リンゴ酸 0. 1 102
実施例 17 M-AE-1 リンゴ酸 0. 02 108
実施例 18 M-AE-1 クェン酸 0. 1 115
実施例 19 M-AE-1 酒石酸 0. 1 115
実施例 20 M-AE-2 リンゴ酸 0. 1 108
実施例 21 M-AE-3 リンゴ酸 0. 1 105
実施例 22 M-AE-4 リンゴ酸 0. 1 96
実施例 23 M-AE-5 リンゴ酸 0. 1 104
実施例 24 M-AE-6 リンゴ酸 0. 1 99
実施例 5 M-AE-7 リンゴ酸 0. 1 101
実施例 26 M-AE-8 リンゴ酸 0. 1 104
比較例 8 M-AE-1 なし 192
比較例 9 M-AE-2 なし 205
比較例 10 M-AE-3 なし 201
比較例 11 M-AE-4 なし 193
比較例 12 M-AE-5 なし 202
比較例 13 M-AE-6 なし 195
比較例 14 M-AE-7 なし 197
比較例 15 M-AE-8 なし 200
比較例 16 M-AE-1 酢酸 0. 1 202
比較例 17 M-AE-1 0. 1 199
比較例 18 M-AE-1 アクリル酸 0. 1 197
比較例 19 M-AE-1 メ夕クリル酸 0. 1 195
実施例 2 7
1 0 0重量部のラジカル重合性単量体 M— AE— 1に対し、 重合禁止剤として メトキシハイドロキノン 0 . 0 2 5重量部、 第 3級アミン化合物としてジェチル — P—トルイジン 1重量部およびヒドロキシカルボン酸化合物としてリンゴ酸 0 . 5重量部を溶解させて液体成分を調製した。 また、 これとは別に、 平均粒径.3 5 mのポリェチルメタァクリレート (重量平均分子量: 5 0 0 , 0 0 0 ) 1 0 0 重量部に有機過酸化物としての過酸化ベンゾィル 0 . 6重量部を分散させ粉末成 分を調製した。 ついで、 該液体成分 1重量部に対して粉末成分 1 . 6重量部を混 合 ·練和してペーストとした。 該ペーストを評価用試料として用いること以外は 実施例 1 5の評価方法 (4) と同様な方法で表面未重合厚さの評価を行った。 そ の結果、 表面未重合厚さは 6 3 mと良好な結果を示した。
実施例 2 8〜 3 5
ラジカル重合性単量体の組成並びにヒドロキシカルポン酸の種類および添加量 を表 3に示したように変え、 実施例 2 7と同様な方法で評価した。 その結果を表 3に併記した。
比較例 2 0〜 2 2
表 3に示したラジカル重合性単量体を用い、 ヒドロキシカルボン酸を添加しな いで、 実施例 2 7と同様に試料を調製し表面未重合厚さを測定した。 その結果を 表 3に併せて示した。
比較例 2 3〜 2 6
ヒドロキシカルボン酸の代わりに表 3に示した各種酸を用いた他は、 実施例 3 3と同様にして表面未重合厚さを評価した。 その結果を表 3に併せて示した。 表 3に示されるように実施例 2 7〜3 5の結果と比較例 2 0〜2 2の結果との 対比から、 第 3級ァミン、 ヒドロキシカルボン酸化合物をラジカル重合性単量体 へ溶解した液体成分と、 有機過酸化物を重合体粉末に分散させた粉末成分とを使 用直前に混合する剤の形式においてもヒドロキシカルボン酸添加による表面未重 合厚さの低減効果が確認された。 また、 比較例 2 3〜2 6の結果との対比から、 ヒドロキシカルボン酸以外の酸を用いた場合には、 表面未重合厚さの低減は認め
られず、 この効果がヒドロキシカルボン酸を添加した場合にのみ発現することが 明らかとなった。
表 3
義歯床裏装材用接着' 組成物として表 4に示した組成物'(本発明の義歯床裏装 材用接着性組成物) を用い、 義歯床裏装材としてトクソ一リベースファースト夕 イブの代わりに、 実施例 3 1で使用した粉成分と液成分からなる硬化性組成物を 用いたこと以外は実施例 1と同様な方法で評価を行った。 その結果を表 4に併記 した。
実施例 3 9〜4 1
義歯床裏装材用接着性組成物として表 4に示した組成物を用い、 義歯床裏装材 として実施例 3 3で使用した粉成分と液成分からなる硬化性組成物を用いたこと 以外は実施例 1と同様な方法で評価を行った。 その結果を表 4に併記した。 実施例 4 2〜4 4
義歯床裏装材用接着性組成物として表4に示した組成物を用い、 義歯床裏装材 として実施例 3 4で使用した粉成分と液成分からなる硬化性組成物を用いたこと 以外は実施例 1と同様な方法で評価を行った。 その結果を表 4に併記した。 比較例 2 7〜 3 5
実施例 3 1、 3 3および 3 4で用いた硬化性組成物を使用し、 義歯床裏装材用 接着性組成物を塗布しないか、 あるいは表 4の組成のものを使用したこと以外は 実施例 1と同様な方法で評価を行つた。 なお比較例 2 7〜 2 9においては実施例 3 1で用いた硬化性組成物、 比較例 3 0〜 3 2においては実施例 .3 3で用いた硬 化性組成物、 比較例 3 0〜 3 2においては実施例 3 4で用いた硬化性'組成物を使 用している。 これらの評価結果を表 4に併記した。
表 4 組成 (重量部) 使用した 塗布後の 接着性 (MPa)
耐久性評価
No. 溶媒 重合体 重合性単量体 硬化性組成物 表面性状 初期 熱衝撃試験後
実施例 36 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) 腿 (5) 均一 13.5 12.3 〇
実施例 37 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-E A) (5) TMPT (5) 均一 15.8 13.5 〇
実施例 38 酢酸工チル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 実施例 31で 均 16.3 13.3 〇
比較例 27 なし なし なし 使用したもの ― 6.6 1.8 X 比較例 28 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) なし 白化 7.8 5.5 △ 比較例 29 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) なし 画 T (5) 均一 9.8 6.1 Δ 実施例 39 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) MMA (5) 均一 14.2 12.8 〇
実施例 0 酢酸 Iチル (50) /ァセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMPT (5) 均一 16.7 13.9 〇
実施例 1 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 実施例 33で 均一 16.5 13.8 〇 C 比較例 30 なし なし なし 使用したもの 7.2 2.6 X 比較例 31 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) なし 白化 8.8 6.6 Δ
比較例 32 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) なし TMMT (5) 均一 10.5 7.7 △
実施例 42 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-B A) (5) MMA (5) 均一 13.1 10.8 〇
実施例 3 酢酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMPT (5) 均一 15.3 12.1 〇
実施例 44酉乍酸ェチル (50) /アセトン (50) P (MMA-EMA) (5) TMMT (5) 実施例 34で 均一 14.8 12.5 〇
比較例 33 なし なし なし 使用したもの 6.1 2.1 X 比較例 34 m n (so) /アセトン (so) P (MMA-EMA) (5) なし 白化 7.4 5.3 △
比較例 35 酢酸 Iチル (50) /アセトン (50) なし TMMT (5) 均一 9.6 6.0 Δ
表 4に示すように、 本発明による特定の構造を有するラジカル重合性単量体並 びにヒドロキシカルボン酸を含有する硬化性組成物からなる義歯床裏装材と、 本 発明の義歯床裏装材用接着性組成物を組合せて義歯床用材料との接着性能を評価 した結果、 接着強度が 1 3 . 1 - 1 6 . 7 MP aを示し、 それ以外の義歯床裏装 材を使用した場合 (実施例 1〜 1 4) に比較して特に優れた接着性を示すことが わかった。 また、 実施例 3 6と比較例 2 7〜 2 9の対比、 実施例 3 9と比較例 3 0〜 3 2の対比あるいは実施例 4 2と比較例 3 3〜 3 5の対比から、 本発明の義 歯床裏装材用硬化性組成物においても、 重合体および重合性単量体を含む義歯床 裏装材用接着性組成物を用いた場合に、 接着強度および接着耐久性が優れたもの となる。
以上のとおり、 本発明の義歯床裏装材用接着性組成物は、 ハロゲン原子を含む 有機溶剤を用いていないので環境への負荷が小さく、 かつ低有害性である。 しか も、使用時の操作性、 接着性能(接着強度並びに接着耐久性)、 および審美性の点 で従来の接着剤と同等以上の性能を有する。
また、 ヒドロキシカルボン酸を配合した本発明の歯科用硬化性組成物は、 従来 の材料と比較して表面未重合量が少ないことから、 この組成物から得られた硬化 体は口腔内で使用しても変色し難く、 汚れにくいものとなる。 さらに、 構成樹脂 粉末と併せて使用した本発明の歯科用硬化性材料は、 該樹脂化合物の溶解によつ て粘性が増大し、 使用時の操作性が良好であるばかりでなく、 硬化後の強度が優 れたものとなる。 さらに、 ラジカル重合性単量体として M— AE— 1のような特 定の構造を有する単官能ラジカル重合性を単量体と適当な構造の多官能ラジカル 重合性単量体を併せて用いることにより、 使用時の臭いが少なく、 手や口腔粘膜 等への刺激が少ない義歯床裏装用材料として好適な材料が提供できる。