JP3967488B2 - 歯冠用材料又は義歯床用材料 - Google Patents
歯冠用材料又は義歯床用材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯冠用材料又は義歯床用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成高分子を使用した歯科用材料のうち、歯冠用材料又は義歯床用材料としては、一般にポリメチルメタクリレート(以下PMMAと略す)、ポリエチルメタクリレート(以下PEMAと略す)及びメチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合体(以下PMMA−PEMAと略す)等のポリマー成分;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のラジカル重合性化合物等のモノマー成分よりなる二成分系材料が用いられている。
【0003】
このような二成分系材料は、両成分を混合し、ラジカル重合開始剤を用いて硬化させることによって作成することができる。上記二成分系材料で使用されているモノマー成分は、ポリマー成分と接触させると短時間でその一部を溶解すると共にポリマー成分中に浸透して膨潤させる(以下、この様な作用を単にポリマー膨潤性ともいう)。このため、モノマー成分とポリマー成分との混合物の粘度を適度に調節することができ、臨床上又は技工上の操作を容易にすることができるという利点を有する。
【0004】
しかしながら、上記モノマー成分の主たる化合物であるメチルメタクリレートは、▲1▼強い刺激臭がある、▲2▼口腔内粘膜、皮膚等に強い刺激がある、▲3▼重合時の発熱が大きい等の問題がある。
【0005】
上記のような問題は、例えば歯科用接着充填材料(いわゆる歯科用セメント)においては、口腔内粘膜、皮膚等に直接触れることが少なく、また触れたとしても使用量が少ないため特に問題にならないが、歯冠用材料や義歯床用材料等の歯科用補綴材料のように患者の口腔内粘膜上で多量に直接硬化させることがある場合には大きな問題となる。
【0006】
近年これらの問題を改善する目的で以下に示すような各種モノマーが提案されている。
【0007】
すなわち、特開昭62−178502号公報には、下記式(A)で示される(メタ)アクリレートモノマーが開示されている。
【0008】
【化7】
【0009】
(式中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はアルキレン基を示し、R3はアルキル基を示す。)
このモノマーは、ポリマー膨潤性は高いが、若干の臭気があり、口腔内粘膜や皮膚等に刺激がある。
【0010】
特開平3−74311号公報には、下記式(B)で示される(メタ)アクリレートモノマーが開示されている。
【0011】
【化8】
【0012】
(式中、R1は水素原子又はアルキル基を示し、R2はアルキレン基を示し、R3はアルキル基を示す。)
このモノマーは、ポリマー膨潤性は高いが、口腔内粘膜、皮膚等に刺激がある。
【0013】
特開平3−206012号公報には、下記式(C)で示される(メタ)アクリレートモノマーが開示されている。
【0014】
【化9】
【0015】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜15のアルキレン基を示し、R3は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、R4は炭素数1〜15のアルキル基を示す。)
このモノマーは、ポリマー膨潤性は高いが、若干の臭気がある。
【0016】
特開平3−206013号公報には、下記式(D)で示される(メタ)アクリレートモノマーが開示されている。
【0017】
【化10】
【0018】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を示し、R2は炭素数1〜15のアルキレン基を示し、R3は炭素数1〜15のアルキル基を示す。)
このモノマーは、ポリマー膨潤性は高いが、若干の臭気があり、口腔内粘膜、皮膚等に刺激がある。
【0019】
特開平6−48912号公報には、下記式(E)で示される(メタ)アクリレートモノマーが開示されている。
【0020】
【化11】
【0021】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0又は1以上の整数を示し、nは1以上の整数、且つm+n=2以上の整数を示す。)
このモノマーは、ポリマー膨潤性は高いが、口腔内粘膜、皮膚等に刺激がある。
【0022】
また、特開平6−56619号公報には、下記式(F)で示される(メタ)アクリレートモノマーが開示されている。
【0023】
【化12】
【0024】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、nは2以上の整数を示す。)
このモノマーは、ポリマー膨潤性は高いが、口腔内粘膜、皮膚等に刺激がある。
【0025】
以上示したようなモノマーの出現により、従来のメチルメタクリレートに比べて臭気、口腔内粘膜、皮膚等の刺激、重合時の発熱はある程度低減できたが、まだ十分満足のできるものではなく、これらの改善が望まれていた。
【0026】
また、これらのモノマーを歯冠用材料や義歯床用材料として用いた場合、空気中の酸素による重合阻害のため、硬化体表面に未重合層を形成するという問題がある。
【0027】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、臭気、口腔内粘膜や皮膚等に対する刺激及び重合時の発熱が小さく、さらに硬化性が良好な歯冠用材料又は義歯床用材料を開発することを課題とした。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定の(メタ)アクリル酸エステル系化合物を用いることにより従来の欠点である▲1▼強い刺激臭がある、▲2▼口腔内粘膜、皮膚等に強い刺激がある、▲3▼重合時の発熱が大きいという欠点を一掃できることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0029】
即ち、本発明は、下記一般式(1)
【0030】
【化13】
【0031】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2及びR3は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R2とR3は異なっていても良く、R4は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)で示される(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体、及びラジカル重合開始剤を含有してなる歯冠用材料又は義歯床用材料である。
【0032】
上記歯冠用材料又は義歯床用材料のうち、上記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体以外のラジカル重合性単量体を更に含み、且つラジカル重合開始剤が、下記一般式(2)
【0033】
【化14】
【0034】
(式中、R5は炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数3〜8のシクロアルキル基である。)
で示されるピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅イオン又は第二鉄イオン形成化合物からなるラジカル重合開始剤である歯冠用材料又は義歯床用材料は、重合時の発熱が小さく、且つ、空気中の酸素による重合阻害が少ないため、硬化体表面の未重合層が少ないという特徴を有する。
【0035】
また、該歯冠用材料又は義歯床用材料に更に充填剤としてポリマー成分を含む歯冠用材料又は義歯床用材料は、硬化させたときの強度が高いという特徴を有する。
【0036】
【発明の実施形態】
本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料は、モノマー成分として前記一般式(1)で示される(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体(以下、M−AEモノマーと略すこともある。)を使用することを必須とする。
【0037】
該M−AEモノマーは{(アルキルカルボニル)アルキル}カルボニルオキシ基を有するという構造的特徴があり、歯冠用材料又は義歯床用材料として使用した時に低臭気、低刺激、且つポリマー膨潤性が高いという特徴を有する。
【0038】
前記一般式(1)中のR1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。歯冠用材料又は義歯床用材料として必要な性状、即ち、重合して得られる硬化体の機械的強度、口腔粘膜又は皮膚に対する低刺激性、臭気及び前記した二成分系歯冠用材料又は義歯床用材料として用いる場合のポリマーの溶解性等を勘案すると、該R1 はメチル基、エチル基等の1〜2のアルキル基であることが好ましい。
【0039】
また、前記一般式(1)中のR2及びR3はメチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基及びヘキサメチレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基であり、R2とR3は異なっていても良い。該アルキレン基としては、上記と同様の理由により、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、1,2−ジメチルエチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基であることが好ましい。
【0040】
また、前記一般式(1)中のR4は、炭素数1〜6のアルキル基である。該アルキル基は特に制限されないが、やはり上記と同様の理由により、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
【0041】
本発明で好適に使用できるM−AEモノマーとしては、前記一般式(1)において、好適なものとしてR1が炭素数1〜2のアルキル基であり、R2及びR3がそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキレン基であり、R4が炭素数1〜4のアルキル基であるものが挙げられる。
【0042】
本発明において特に好ましく用いられるM−AEモノマーを具体的に例示すると次の通りである。
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
上記M−AEモノマーは、市販品されているものが多く、また、次のような2つの方法等により簡単に製造することが出来る。
【0048】
即ち、第1の方法として、対応するヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルを対応するカルボン酸と反応させて脱水縮合させる事により容易に製造することができる。該方法によれば、例えば、1モルの対応するヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルと1モルの対応するカルボン酸を酸触媒、重合禁止剤とともにトルエン中、加熱下で生成する水を留去しながら2時間反応させた後に、炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム乾燥後、溶剤を減圧留去すれることにより目的のM−AEモノマーが得られる。
【0049】
また、もう1つの方法として、対応するヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステルをジケテンと反応させる{R.J.Clemens、Chemical Review,86,241(1986)}ことによっても得ることが出来る。該方法によれば、例えば、1モルの対応するヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、1gのトリエチルアミン、および1gのブチルヒドロキシトルエンを500mlの無水酢酸エチルに溶解し、この液に88g(1.05モル)のジケテンを、攪拌しながら1時間以内に滴下して加えて反応させ、次いでこの反応混合物を還流下で2時間加熱し、冷却後、希塩酸、水の順で洗浄し、硫酸ナトリウム乾燥後、溶剤を減圧留去することにより目的のM−AEモノマーが得られる。
【0050】
本発明においては、M−AEモノマー単独で用いることができる。しかし、重合して得られる硬化体の機械的強度その他物性に応じて、他の成分を混合して用いることが好ましい。
【0051】
他の成分としては、M−AEモノマーと共重合可能な、該M−AEモノマー以外のラジカル重合性単量体(以下、他のモノマーともいう。)、及び該M−AEモノマーに膨潤するポリマー成分等が挙げられる。他のモノマーを配合することにより硬化体の機械的強度の向上、又は吸水率の低減を実現することが出来る。また、ポリマー成分を配合することにより機械的強度が向上する。
【0052】
上記他のモノマーとしては、M−AEモノマー以外のモノマーで低刺激性、且つ低臭気のものであれば何ら制限なく用いられるが、一般には(メタ)アクリル酸エステル類が好適に使用される。該(メタ)アクリル酸エステル類としては、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ステアリルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ダイマージオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート(ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,2,4−トリメチルヘキシル−1,6−ジイソシアネートの反応生成物)等が挙げられる。
【0053】
なお、上記他のモノマーを使用する場合、全モノマーに占めるM−AEモノマーの占める割合は、広い範囲から選択できるが、一般的にはM−AEモノマーが5〜100重量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
また、上記ポリマー成分は、M−AEモノマーを含むモノマー成分に膨潤するものであれば何ら制限なく用いられるが、一般に化学的安定性、透明性などの点でPMMA、PEMA、PMMA−PEMA、ポリブチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル又は前記した他のモノマーである各種(メタ)アクリル酸エステル類の重合体が好適に使用される。中でもPEMAはM−AEモノマーにより特に膨潤しやすいので、PEMA、PMMA−PEMA、或いはこれらのポリマーと他のポリマーの混合物を用いることが好ましい。
【0055】
ポリマー成分の分子量は特に制限されないが、得られる硬化体の機械的強度やモノマー成分への溶解性や膨潤性等を勘案すると、5〜100万の範囲であることが好ましく、ポリマー成分の平均粒子径は10〜100μmであることが好ましい。
【0056】
ポリマー成分を併用する場合には、全モノマー量100重量部に対し、ポリマー量を50〜500重量部、好ましくは100〜200重量部の範囲で用いることが好ましい。このとき、M−AEモノマーの全モノマーに占める割合は、そのポリマーに対する膨潤性等を勘案して全モノマー量に対して、10〜100重量%、特に20〜100重量%の範囲であるのが好適である。
本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料には、モノマー成分を重合硬化させるためのラジカル重合開始剤が含有される。該ラジカル重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤、常温重合開始剤及び光重合開始剤が特に制限されず使用できる。しかしながら、本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料を口腔内で重合硬化させて使用する場合には、加熱することが困難であるため、ラジカル重合開始剤としては常温重合開始剤及び/又は光重合開始剤を使用するのが好適である。
【0057】
以下、各ラジカル重合開始剤について、好適に使用出来る重合開始剤、その好適な使用量、使用方法(本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料の硬化方法)等について説明する。
【0058】
まず、ラジカル重合開始剤が熱重合開始剤である場合について説明する。熱重合開始剤としては、加熱によってラジカルを発生するものであれば何ら制限なく使用され、過酸化物、アゾ化合物等が好適に用いられる。過酸化物、アゾ化合物としては公知のものが何ら制限なく使用される。好適に使用できる過酸化物を具体的に例示するとベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。また、好適に使用できるアゾ化合物を具体的に例示すると2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0059】
上記加熱重合開始剤の好適な使用量は、用いる加熱重合開始剤の種類、モノマー成分の組成等によって変わるため一概に限定できないが、一般には全モノマー成分100重量部に対して0.05〜5重量部さらに、0.1〜2重量部の範囲で用いることが好ましい。また、上記加熱重合開始剤を用いて硬化させる場合には、上記加熱重合開始剤を含む本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料を、一般には40〜150℃、好ましくは50〜130℃の範囲に加熱すればよい。
【0060】
また、ラジカル重合開始剤が常温重合開始剤である場合、常温重合開始剤としては、過酸化物とアミン又はその塩に代表される硬化促進剤との組み合わせ、並びにピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物と組み合わせによる重合開始剤が好適に使用される。
【0061】
上記過酸化物、アミン又はその塩については公知の化合物が特に制限されず用いられる。例えば、有機過酸化物としては前記で説明した化合物が用いられる。また、アミンとしては、アミンがアリール基に結合した第二級又は第三級アミンなどが硬化の加速性の点で好ましく用いられる。例えば、N,N'−ジメチルアニリン、N,N'−ジメチル−p−トルイジン、N−メチル−N'−β−ヒドロキシエチルアニリン、p−トリルジエタノールアミン等が好ましい例として挙げることができる。これらのアミンは、塩酸、酢酸、リン酸、有機酸などと塩を形成していてもよい。
【0062】
これらの組み合わせのうち好適なものを具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド/N,N'−ジメチル−p−トルイジン、ベンゾイルパーオキサイド/p−トリルジエタノールアミンの組み合わせ等が挙げられる。
【0063】
これら常温重合開始剤において、過酸化物及びアミンの使用量は、全モノマー成分100重量部に対してそれぞれ0.05〜5重量部、さらに0.1〜2重量部であることが好ましい。
上記常温重合開始剤を用いて硬化させる方法は特に限定されないが、一般にはベンゾイルパーオキサイドを配合したユニットとアミンを配合したユニットを使用時に適切な比率で混和して所定の型枠中に入れ、若しくは形を整えて、常温で重合して使用するのが好適である。
【0064】
また、常温重合開始剤がピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の組み合わせである場合、該組み合わせに用いる各化合物については公知の化合物が特に制限されず用いられる。中でも、ピリミジントリオン誘導体として下記一般式(2)
【0065】
【化19】
【0066】
(式中、R5は炭素数1〜8のアルキル基、又は炭素数3〜8のシクロアルキル基である。)
で示されるピリミジントリオン誘導体を使用した場合には、硬化体の透明性が良好であるため、該ピリミジオン誘導体を使用するのが特に好適である。
【0067】
なお、上記一般式(2)中のR5は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基であるが、化合物の結晶性、溶解性の点から、これら基の中でも特にメチル基、エチル基、プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基及びシクロへキシル基が好ましい。即ち、好適に使用できる上記一般式(2)で示されるピリミジオン誘導体としては、式中のR5が上記好適な基であるものが挙げられる。
【0068】
ハロゲンイオン形成化合物としては、溶液中でハロゲン化物イオンを形成させる化合物であれば特に限定されず公知の化合物が使用できる。好適なハロゲンイオン形成化合物としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジイソブチルアミンハイドロクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、トリエチルアミンハイドロクロライド、トリメチルアミンハイドロクロライド、ジメチルアミンハイドロクロライド、ジエチルアミンハイドロクロライド、メチルアミンハイドロクロライド、エチルアミンハイドロクロライド、イソブチルアミンハイドロクロライド、トリエタノールアミンハイドロクロライド、β−フェニルエチルアミンハイドロクロライド、アセチルコリンクロライド、2−クロロトリメチルアミンハイドロクロライド、(2−クロロエチル)トリエチルアンモニウムクロライド、テトラ−デシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
第二銅又は第二鉄イオン形成化合物としては、溶液中で2価の銅イオン又は3価の鉄イオンを形成する化合物であれば特に限定されない。好適な第二銅又は第二鉄イオン形成化合物としては、アセチルアセトン銅、酢酸第二銅、オレイン酸銅、アセチルアセトン鉄等があり、これらは1種又は2種以上混合して使用してもよい。また、ハロゲンイオン形成化合物と第2銅又は第2鉄イオン形成化合物とは必ずしも別の化合物である必要はなく、ハロゲン化物イオンと2価の銅イオン又は2価の鉄イオンの両方を同時に形成する化合物であってもよい。このような化合物として、例えば、ハロゲン化第2銅又はハロゲン化第2鉄を使用することも可能であり、具体的な例としては、塩化第二銅、臭化第二銅等のハロゲン化第二銅、塩化第二鉄、臭化第二鉄等のハロゲン化第2鉄等を挙げることができる。
【0070】
これらの組み合わせのうち好適なものを具体的に例示すると、1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオン/ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド/アセチルアセトン銅、5−ブチル−1−シクロヘキシルルピリミジントリオン/ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド/酢酸第二銅、5−sec−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン/ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド/アセチルアセトン銅及び1,5−ジシクロヘキシルピリミジントリオン/ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド/アセチルアセトン銅の組み合わせ等が挙げられる。
【0071】
上記ピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物からなる常温重合開始剤において、各成分の配合比は、ピリミジントリオン誘導体1重量部に対するハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の重量部で表して、それぞれ0.001〜0.5重量部及び0.0001〜0.05重量部の範囲が好適である。
【0072】
ラジカル重合開始剤として、上記のピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の組み合わせからなる常温重合開始剤を用いた場合には、前記した空気中の酸素による未重合層の形成が抑制されるため、歯冠用材料又義歯床用材料として用いるには好適である。このとき、審美性の観点からピリミジントリオン誘導体としては前記一般式(2)で示されるピリミジントリオン誘導体を使用するのが特に好適である。
【0073】
上記ピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の組み合わせからなる常温重合開始剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対して0.05〜15重量部の範囲で用いればよく、好ましくは0.1〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。各成分の添加量が0.1〜10重量部の範囲のときには、硬化速度も速く、第二銅又は第二鉄イオン形成化合物に含まれる金属イオンに由来する着色がない硬化体が得られる。
【0074】
上記ピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の組み合わせからなる常温重合開始剤を用いて硬化させる方法は特に限定されないが、一般にはピリミジントリオン誘導体及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物を配合したユニットとハロゲンイオン形成化合物を配合したユニットを使用時に適切な比率で混和して所定の型枠中に入れ、若しくは形を整え常温で重合して使用するのが好適である。
【0075】
また、ラジカル重合開始剤が光重合開始剤である場合、光重合開始剤としては公知の光増感剤が使用できる。好適に使用できる光重合開始剤(すなわち光増感剤)としては、ジアセチル、アセチルベンゾイル、ベンジル、カンファーキノン、9,10−フェナンスレンキノン、アセナフテンキノン等のα−ジケトン;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル;2,4−ジエチルチオキサンソン、メチルチオキサンソン等のチオキサンソン化合物等;ベンゾフェノン、p,p'−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p'−ジメトキシアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物が挙げられる。
【0076】
また、ラジカル重合開始剤として光重合開始剤を使用する場合には、硬化促進剤と併用することができる。硬化促進剤としてはジメチルパラトルイジン、N,N'−ジメチルベンジルアミン、N−メチルジブチルアミン、ジメチルアミノメタクリレート、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル等のアミン化合物;ジメチルホスファイト、ジオクチルホスファイト等のホスファイト化合物及びナフテン酸コバルトなどのコバルト系化合物;ピリミジントリオン類などが好適に使用される。これらの組み合わせのうち好適なものを具体的に例示すると、カンファーキノン/ジメチルアミノメタクリレート、カンファーキノン/p−ジメチルアミノ安息香酸エチル等の組み合わせが挙げられる。
【0077】
これらの光重合開始剤(光増感剤)及び硬化促進剤の添加量は全モノマー成分に対してそれぞれ共に0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜1重量部であることが好適である。
【0078】
上記光重合開始剤を用いて硬化させる方法は特に限定されないが、一般には光増感剤を配合したユニットと硬化促進剤を配合したユニットを使用時に適切な比率で混和して所定の型枠中に入れ、若しくは形を整え、光照射下に常温で重合して使用するのが好適である。光硬化の場合は高圧、中圧、低圧水銀灯による紫外線;ハロゲンランプ等による可視光線を照射することにより硬化させることができる。
【0079】
本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料には、前記した他のモノマー及びポリマー成分の他にも必要に応じて、流動性を改良したり、得られる硬化体の諸物性及び操作性をコントロールするために無機フィラー;エタノール、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のアルコール又は可塑剤;ブチルヒドロキシトルエン、メトキシハイドロキノン等の重合禁止剤;4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−(2−ベンゾトリアゾール)−p−クレゾール等の紫外線吸収剤、α−メチルスチレンダイマー等の重合調整剤;色素、顔料、香料等を添加することができる。
【0080】
本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料は、重合硬化させることにより、歯牙の欠損や喪失を補綴したり、動揺歯の固定をしたり、配列整形したりする目的で用いられる。
【0081】
具体的には、義歯補修用即時重合レジン、歯冠用即時重合レジン、急速硬化即時重合レジン、歯冠用硬質レジン、歯科矯正用レジン等の歯冠用材料として、又は義歯床用レジン、リベース用即時重合レジン、各個人トレー用即時重合レジン、義歯床用軟性レジン等の義歯床用材料として好適に使用できる。
【0082】
本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料の使用方法は特に限定されず、これら材料の使用方法として通常採用される方法が何等制限無く採用できる。
【0083】
例えば、歯冠用即時重合レジンやリベース用即時重合レジン用として使用する場合には、ポリマー成分にピリミジントリオン誘導体及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物を配合した粉末ユニットとモノマー成分にハロゲンイオン形成化合物を配合した液体ユニットを分けた状態保存し、使用直前に該二成分を混合し、常温で重合硬化させて使用すればよい。
【0084】
また、義歯床用軟性レジン用に使用する場合には、ピリミジントリオン誘導体、第二銅又は第二鉄イオン形成化合物及び充填剤及びモノマー成分の一部を配合したペースト状ユニットとモノマー成分の残りにハロゲンイオン形成化合物を配合した液体ユニットを使用直前に該二成分を混合し、常温で重合硬化させて使用すればよい。
【0085】
【実施例】
以下に本発明に関する実施例と比較例を示すが、本発明は該実施例に限定されるものではない。
【0086】
次に、各実施例及び各比較例で使用した物質についてまとめる。
【0087】
〔M−AEモノマー〕
下記の各略号で示される各構造の化合物を使用した。
【0088】
【化20】
【0089】
【化21】
【0090】
なお、上記各化合物は、次に示す製造例1及び2、並びにこれら製造例に準じた方法により得たものである。
【0091】
製造例1
ヒドロキシエチルメタクリレート13.0g(0.1モル)、レブリン酸 11.6g(0.1モル)、パラトルエンスルホン酸1g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1g、トルエン200mlを仕込み、還流温度で2時間反応させた。反応後、5%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄後、溶剤を留去してM−AE−4 13gを得た。
【0092】
製造例2
シクロヘキシル尿素10g(0.07モル)、メチルマロン酸ジエチル13.2g(0.07モル)、ナトリウムエトキシド4.8g(0.07モル)、エタノール100mlを仕込み、還流温度で5時間反応させた。反応後、反応液を水500mlに加え、塩酸で酸性にした。析出した油状物をジエチルエーテル抽出、硫酸マグネシウム乾燥、ろ過後、溶剤を留去すると褐色固体が得られる。得られた固体をメタノールより再結晶することによりc−Hex−MePTO 8gを得た。
【0093】
〔他のモノマー〕
各略号はそれぞれ右側に示される構造の化合物を表す。なお、下記OTM−1〜OTM6は、それぞれ従来の技術で示した(A)〜(F)の化合物に対応するものである。
【0094】
【化22】
【0095】
MMA:メチルメタクリレート(東京化成(株)社製)
IBM:イソブチルメタクリレート(東京化成(株)社製)
HDM:1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学(株)社製)
NMA:1,9−ノナンジオールジメタクリレート(共栄社油脂化学工業(株)社製)
DDM:1,10−デカンジオールジメタクリレート(共栄社油脂化学工業(株)社製)
NPG:ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学(株)社製)
BPMA:ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学(株)社製)
TMPT:トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学(株)社製)
UDMA:ウレタンジメタクリレート(新中村化学(株)社製)
DMA:ダイマージオールジメタクリレート(東亜合成(株)社製)
〔ポリマー成分〕
PMMA30:ポリメチルメタクリレート(平均分子量25万、平均粒経30μm)(積水化成品工業(株)社製)
PEMA10:ポリエチルメタクリレート(平均分子量25万、平均粒径10μm)(積水化成品工業(株)社製)
PEMA30:ポリエチルメタクリレート(平均分子量25万、平均粒径30μm)(積水化成品工業(株)社製)
PEMA35:ポリエチルメタクリレート(平均分子量25万、平均粒径35μm)(積水化成品工業(株)社製)
PMMA−PEMA:ポリメチルメタクリレート−ポリエチルメタクリレート共重合体(平均分子量50万、平均粒経50μm)(積水化成品工業(株)社製)
PHMA:ポリ−n−ヘキシルメタクリレート(平均分子量20万、平均粒経10μm)(アルドリッチ社製)
PST:ポリスチレン(平均分子量100万、平均粒径10μm)(アルドリッチ社製)
〔ラジカル重合触媒〕
AIBN:2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(東京化成(株)社製)
CNVA:4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(アルドリッチ社製)
ADMBN:アゾビスジメチルバレロニトリル(アルドリッチ社製)
DPO:デカノイルパーオキサイド(日本油脂(株)社製)
LPO:ラウロイルパーオキサイド(日本油脂(株)社製)
BPO:ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)社製)
DLPO:ジラウロイルパーオキサイド(日本油脂(株)社製)
DCBPO:ジ−p−クロロベンゾイルパーオキサイド(日本油脂(株)社製)
Me−c−HexPTO:1−シクロヘキシル−5−メチルピリミジントリオンs−Bu−c−HexPTO:5−sec−ブチル−1−シクロヘキシルピリミジントリオン
c−Hex−HexPTO:1−シクロヘキシル−5−ヘキシルピリミジントリオン
c−Hex−OcPTO:1−シクロヘキシル−5−オクチルピリミジントリオン
c−Hex−c−HexPTO:1,5−ジシクロヘキシルピリミジントリオンCQ:カンファーキノン(東京化成(株)社製)
DET:2,4−ジエチルチオキサントン(東京化成(株)社製)
BZ:ベンジル(東京化成(株)社製)
〔硬化促進剤〕
DEPT:N,N'−ジ(β−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン(東京化成社製)
DMPT:N,N'−ジメチル−p−トルイジン(東京化成(株)社製)
CuAcAc:アセチルアセトン銅(東京化成(株)社製)
DLDMAC:ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド(エアブラウン(株)社製)
CuAc:酢酸第二銅(東京化成(株)社製)
LDMBAC:ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド(竹本油脂(株)社製)
DMBA:N,N'−ジメチルベンジルアミン(東京化成(株)社製)
DMABAE:p−ジメチルアミノ安息香酸エチル(東京化成(株)社製)
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート(東京化成(株)社製)
〔重合禁止剤〕
MEHQ:ハイドロキノンモノメチルエーテル(東京化成(株)社製)
BHT:ブチルヒドロキシトルエン(東京化成(株)社製)
また、モノマー(M−AEモノマー及び他のモノマー)の評価および硬化性組成物を硬化させて得た硬化体の評価方法は以下の通りである。
【0096】
1.モノマーの評価方法
(1)〔皮膚に対する刺激性(以下、単に刺激性ともいう。)の評価〕
刺激性については、ドレーズ法(Draize法)、及び舌に付着させたときに感じる痛みの程度で評価した。
なお、ドレーズ法による評価は、背面をバリカンで刈毛したアンゴラ兎の刈毛部の左側に上記M−AE−1〜8を、右側に対照品であるOTM1〜6、MMA、IBM及びDDMをそれぞれ0.05mlづつ塗布し、24時間後の炎症状態を表1の評価表に準じて点数をつけ、6羽以上の平均点を求めた。この平均点が小さいほど皮膚刺激が小さいことになる。
【0097】
【表1】
【0098】
また、舌に付着させたときに感じる痛みによる評価は、上記モノマーを舌の先端部に1滴滴下し1分後の痛みについて、「無刺激」、「非常に弱い痛み」、「弱い痛み」、及び「強い痛み」の4段階で評価した。
【0099】
(2)〔臭気の評価〕
臭気については、臭いをかぐことにより、「無臭」、「微臭」、「刺激臭」及び「強い刺激臭」の4段階で評価した。
【0100】
(3)〔ポリマー成分を用いたときのポリマー膨潤性の評価〕
ポリマーとしてPEMA30を用い、ポリマーとモノマーの重量比を1.6に固定し、コーンプレート型粘度計のハイシャーレオメーター、IGK−1(石田技研社製)を用い、4分に粘度の経時変化を測定した。尚、モノマーがMMAの場合は粘度上昇が速すぎるためPMMA30を用いた。4分後の粘度変化から初期の粘度上昇の度合いを評価した。初期の粘度上昇が大きいほど、実際の使用時に練和後の待ち時間が少ないため好ましい。
【0101】
2.硬化体の評価方法
〔曲げ弾性率の評価〕
先ず、硬化性組成物を縦25mm横4mm厚さ2mmの金型に流し込み所定の条件下で間重合硬化させ、得られた硬化体を1500番の耐水研磨紙で研磨を行い測定試料を作製した。測定試料を23℃で24時間放置した後、引っ張り試験器により支点間距離20mm、クロスヘッドスピードは1mm/minで曲げ破壊試験を行い曲げ弾性率を測定した。
【0102】
〔未重合量の評価〕
先ず、硬化性組成物を縦20mm横20mm厚さ1mmのテフロン型に流し込み、所定の条件下で重合硬化させた。得られた硬化体の厚みをマイクロメーターで5ヶ所測定しその平均値(D1)を求めた。メタノールに1分間浸漬した後、表面未重合層を取り除き、硬化体の厚みをマイクロメーターで5ヶ所測定しその平均値(D2)を求めた。D1−D2を表面未重合層厚さとし、該厚さで未重合量を評価した。
【0103】
参考例1〜8、及び参考比較例1〜9
表2に示される各種モノマーについて、ポリマーの膨潤性、刺激性及び臭気を評価した。その結果を表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
参考例1〜8の結果から、M−AEモノマーは、参考比較例1〜9で使用した各モノマーに比べてトレーズ法、舌刺激とも低い事がわかる。さらに、臭い、ポリマー膨潤性については他のモノマーと同等であることがわかる。従って、M−AEモノマーを使用した本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料は臭気及び刺激性が低く、ポリマー成分と合わせて使用したときの操作性も良好であることが分かる。
【0106】
実施例1〜8
参考例1〜8の各M−AEモノマー100重量部に対して、ラジカル重合開始剤としてc−HexMePTO2重量部、CuAcAc0.001重量部及びDLDMAC0.3重量部を配合した後、常温で硬化させた。得られた硬化体はいずれも、透明性が高く、強度は従来品と同等以上であるという特徴を有しており、リベース用即時重合レジンとして充分使用可能なものであった。
【0107】
実施例9〜26
本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料を表3及び表4に示す種々のラジカル重合開始剤を用いて重合させ、得られた硬化体の曲げ弾性率及び表面未重合層厚さを測定した。その結果を合わせて表3及び表4に示す。なお、光重合は、市販の可視光照射器「トライアドキュアユニット」(デンツプライ社製)を用いて光を20分間照射して行った。
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
なお、実施例9〜22で得られた歯冠用材料又は義歯床用材料を用いて常法に従い加熱重合又は常温重合により義歯床及びリベースを作製したところ十分な強度を有する義歯床及びリベースが得られた。また、実施例14〜22の歯冠用材料又は義歯床用材料をトレー用即時重合レジン、急速硬化即時重合レジンとして使用し、それぞれ、トレー及び暫間歯を作製したところ、十分な性能のものが得られた。この時、ラジカル重合触媒としてピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の組み合わせからなるものを用いた場合には、表面未重合層厚さが特に薄いものが得られた。
【0111】
さらに、実施例23〜26の歯冠用材料又は義歯床用材料を用いて通法に従い光重合により義歯床及びリベースを作製したところ十分な強度を有する義歯床及びリベースが得られた。
【0112】
実施例27〜32
実施例18におけるポリマー成分、モノマー成分を表5に示すように変えた以外は、実施例18と同様にして重合させた。結果を表5に併せて示した。
【0113】
【表5】
【0114】
比較例1〜9
表6に示される所定量の各成分を混合し、硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物について、曲げ弾性率を測定した。その結果を表6に示す。
【0115】
【表6】
【0116】
実施例9〜32及び比較例1〜9の結果から、M−AEモノマーを用いた本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料から得られた硬化体は、重合触媒の種類に関わらず現状の歯冠用材料又は義歯床用材料を用いたときと同等の曲げ弾性率を示すことがわかる。さらに、重合触媒が、ピリミジントリオン誘導体、ハロゲンイオン形成化合物及び第二銅又は第二鉄イオン形成化合物の組み合わせの場合、他の重合触媒に比べて表面未重合層厚さが約1/3になることがわかる。
【0117】
【発明の効果】
M−AEモノマーを使用した本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料は、従来の歯冠用材料又は義歯床用材料に比べて臭気が少なく、刺激性も低い。さらにポリマー成分と合わせて使用した本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料は、ポリマー成分が容易に膨潤するため、使用時の操作性が良好であるばかりでなく硬化後の硬化体はその強度が優れたものとなる。
【0118】
このため、本発明の歯冠用材料又は義歯床用材料を用いて患者の治療を行った場合には、患者は口腔内での直接治療に際しても臭気、刺激面において不快感を味わうことがない。しかもその時に得られる硬化体はその機械的性質が優れているので、確実な治療を行うことが出来る。
Claims (6)
- 下記一般式(1)
- さらにポリマー成分を含んでなる請求項2記載の歯冠用材料。
- 下記一般式(1)
- さらにポリマー成分を含んでなる請求項5記載の義歯床用材料。
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