明 糸田 ¾
プ レ ー ナー型電磁 リ レ ー及びその製造方法
〔技術分野〕
本発明は、 半導体素子製造技術を用いて製造するプレーナ一型電 磁リ レ一及びその製造方法に関する。
〔背景技術〕
半導体デバイスの高集積化に代表されるマイ クロエレク トロニク スの発展によって、 様々 な機器がその高機能化と共に小型化してい る。 産業用ロボッ トのような比較的大きなエネルギを扱う制御系も その例外ではない。 このような制御系では制御装置のマイ クロエレ ク トロニクス化によって、 大きなエネルギの制御を非常に小さなェ ネルギで制御するようになっている。 この結果、 ノイズ等による誤 動作の問題が表面化し、 最終段の出力デバイスと して電磁リ レーの 需要が増大している。
ところが、 従来の電磁リ レーは半導体と比較すれば桁違いに大き な体積を占有する。 従"?て、 機器の小型化を推進するためには、 電 磁リ レーの小型化が必要である。
そ して、 従来の一般的な巻線タイプの電磁リ レーでは、 長さ 1 4 mm, 幅 9 mm, 高さ 5 m mが世界最小である ( 「超薄型シグナル リ レー」 ' 松下電工技報, No.35, pp27 〜31 (1987年))参照) 。 また、 最近では、 更に電磁リ レーの小型化を図るため、 マイ ク ロ マシニング技術を用いたプレーナー型電磁リ レーが提案されている
(H. Hosaka, H. Kuvvano and K. Κ. Yanagisawa " ELECTROMAGNETICMICRO RELAYS : CONCEPS AND FUNDAMENTAL CHARACTERISTICS", Pro IEE E ENS Workshop 93, pp.12 〜 17(1993)参照) 。
しかしながら、 上記のプレーナ一型電磁リ レーも、 コイルは従来 の巻線型を用いており、 小型化には限界がある。
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、 電磁リ レ一のより一
層の小型化を図るこ とを目的とする。
〔発明の開示〕
このため、 本発明のプレーナー型電磁リ レーでは、 半導体基板に. 平板状の可動板と該可動板を半導体基板に対して基板上下方向に摇 動可能に軸支する トーシヨ ンバーとを一体形成し、 前記可動板の上 面周縁部に通電により磁界を発生する平面コイルを敷設する と共に 下面側に可動接点部を設ける一方、 半導体基板の下面に前記可動板 の接点部に対応する位置に固定接点部を設けた絶縁基板を設け、 前 記 ト一ショ ンバーの軸方向と平行な可動板の対辺の平面コィル部に 磁界を作用させるよう互いに対をなす磁石を配置する構成と した。
かかる構成によれば、 半導体素子製造プロセスを利用 して半導体 基板に可動部を形成すると共に、 可動板に平面コイルを形成するよ う にしたので、 コイル部分を、 薄型化及び小型化するこ とができ、 従来の巻線型に比べて格段に電磁リ レーの小型化を図るこ とができ る。
また、 磁石は、 半導体基板の上面に上側基板を設け、 この上側基 板と半導体下面側の絶縁基板に固定する とよい。
また、 上側基板と下側絶縁基板で、 可動板収納空間を密閉構造と して真空封止するようにすれば、 可動板の揺動抵抗をな くすこ とが できるようになり、 可動板の応答性を高めるこ とができる。
この場合、 上側基板の中央部に溝を設けて、 可動板収納空間を形 成するようにすれば、 可動板を揺動させるための可動板収納空間を 確保するための半導体基板側の加工工程を省略するこ とができる。
また、 上側基板を絶縁基板とする とよい。
また、 磁石は永久磁石とする とよい。
また、 本発明の電磁リ レーでは、 半導体基板に、 平板状の可動板 と該可動板を半導体基板に対して基板上下方向に揺動可能に軸支す る ト一シ ョ ンバーとを一体形成し、 前記可動板の少な く とも上面周
縁部に永久磁石を設ける と共に下面側に可動接点部を設ける一方、 前記 トーシ ョ ンバ一の軸方向と平行な可動板の対辺側方の半導体基 板部分に、 通電により磁界を発生する平面コイルを設け、 半導体基 板の下面に前記可動板の接点部に対応する位置に固定接点部を設け た絶縁基板を設ける構成と した。
このように、 半導体基板側に平面コイルを形成すれば、 通電によ る平面コイルの発熱の影響を全く 考慮する必要がな く なる。
また、 永久磁石を、 薄膜構造とすれば、 可動板の揺動動作に影響 がな く 、 半導体製造技術で永久磁石を一体形成できるので、 永久磁 石の取付け工程が省略でき電磁リ レーの製造が容易となる。
この場合も、 前記半導体基板の上面に上側基板を設け、 上側基板 と半導体基板下面側の絶縁基板により、 可動板収納空間を密閉構造 と して真空封止するようにするとよい。
請求項 1 記載の電磁リ レーの製造方法と しては、 半導体基板の ト ー シ ョ ンバー形成部分を除いて基板の下面から上面に向けて異方性 エッチングより貫通させて前記 トーショ ンバ一部分で半導体基板に 揺動可能に軸支される可動板を形成する工程と、 可動板上面周囲に 電解めつきにより平面コィルを形成する工程と、 可動板下面側に可 動接点部を形成する工程と、 下側絶縁基板の上面に前記可動接点に 接離可能な固定接点部を形成する工程と、 半導体基板の上下面に陽 極接合によ り上側絶縁基板と下側絶縁基板を固定する工程と、 ト— シ ョ ンバー軸方向と平行な可動板の対辺に対応する上側絶縁基板部 分と下側絶縁基板部分に磁石を固定する工程とからなるこ とを特徴 と" 5 る。
また、 請求項 7記載の電磁リ レーの製造方法は、 半導体基板の ト — シ ョ ンバー形成部分を除いて基板の下面から上面に向けて異方性 エッチングよ り貫通させて前記 トーショ ンバ一部分で半導体基板に 揺動可能に軸支される可動板を形成する工程と、 可動板上面周囲に
薄膜の永久磁石を形成する工程と、 可動板下面側に可動接点部を形 成する工程と、 前記 トーシヨ ンバーの軸方向と平行な可動板の対辺 側方の半導体基板部分に電解めつきにより平面コイルを形成するェ 程と、 下側絶縁基板の上面に前記可動接点に接離可能な固定接点部 を形成する工程と、 半導体基板の上下面に陽極接合により上側絶縁 基板と下側絶縁基板とを固定する工程とからなるこ とを特徴とする, また、 これら各電磁リ レーの製造方法において、 平面コイルを形 成する工程では、 電铸コイル法を用いる とよい。 即ち、 半導体基板 上にスパッ タ リ ングでニッゲル層を形成した後、 二ッゲル層上に電 解めつき又はスパッ タ リ ングによって銅層を形成し、 次に、 平面コ ィル部分に相当する部分をマスク して銅ェッチング及び二ッケルェ ッチン グを順次行い、 次に前記マスクを除去した後にコィルパター ン上に銅電解めつきを行う ようにする。
かかる方法により平面コイルを形成すれば、 薄膜のコイルを低抵 抗で高密度に実装するこ とができるようになる。
〔図面の簡単な説明〕
第 1 図は本発明の電磁リ レーの第 1 実施例を示す構成図である。 第 2図は第 1 実施例の拡大縦断面図である。
第 3図は第 1 実施例の可動板の上面側の拡大斜視図である。
第 4 図は第 1 実施例の可動板の下面側の拡大斜視図である。
第 5図は本発明の電磁リ レーの動作原理を説明する図である。
第 6図は第 1 実施例の永久磁石による磁束密度分布の計算モデル 図である。
第 7図は計算した磁束密度分布位置を示す図である。
第 8図は第 7図に示す位置の磁束密度分布の計算結果を示す図で の 。
第 9図は可動板の変位量と電流量との計算結果を示すグラフであ る。
第 1 0図は トーシ ョ ンバ一及び可動板の橈み量の計算モデル図であ る。
第 1 1図 ( a ) 〜 ( : i ) は、 第 1 実施例のシリ コ ン基'板の加工工程 の説明図である。
第 12図 ( a ) 〜 ( g ) は、 第 1 実施例のガラス基板の加工工程の 説明図である。
第 1 3図は本発明の電磁リ レーの第 2実施例の構成を示す斜視図で ある。
第 1 4図は本発明の電磁リ レーの第 3実施例の構成を示す斜視図で ある。
〔発明を実施するための最良の形態〕
以下、 本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
第 1 図〜第 4 図に本発明に係るプレーナー型電磁リ レーの第 1 実 施例の構成を示す。
図において、 本実施例の電磁リ レー 1 は、 半導体基板であるシリ コ ン基板 2の上下面に、 それぞれ例えばホウゲイ酸ガラス等からな る上側及び下側絶縁基板と しての上側及び下側ガラス基板 3 , .4 を 陽極接合した 3層構造となっている。 そして、 前記上側ガラス基板 3 は、 後述する可動板 5上方部分を開放するよう、 例えば超音波加 ェ等によつて開口部 3 aが設けられている。
前記シ リ コ ン基板 2 には、 平板状の可動板 5 と、 この可動板 5 の 中心位置でシ リ コ ン基板 2 に対して基板上下方向に揺動可能に可動 板 5 を軸支する ト一シヨ ンバー 6, 6 とが異方性エッチングによつ て一体形成されている。 従って、 可動板 5及び トーシヨ ンバー 6 も シ リ コ ン基板と同一材料からなっている。 前記可動板 5 の上面周縁 部には、 第 3図に示すように、 通電により磁界を発生する銅薄膜か らなる平面コイル 7が絶縁被膜で覆われて設けられている。 こ こで、 コイルは抵抗分によってジユール熱損失があり抵抗の大きな薄膜コ
ィルを高密度に実装する と発熱によ り駆動力が制限されるこ とから 本実施例では、 従来公知の電解めつきによる電铸コィル法によつて 前記平面コイル 7を形成してある。 電铸コイル法は、 基板上にスパ ッ 夕で薄い二ッゲル層を形成し、 この二ッゲル層の上に電解めつき 又はスパッ 夕により銅層を形成し、 コイルに相当する部分を除いて 銅層及びニッケル層を除去し、 このコィルバ夕一ン上に銅電解めつ きを行って薄膜の平面コイルを形成する もので、 薄膜コイルを低抵 抗で高密度に実装できる特徴があり、 マイ ク口磁気デバイスの小型 化 · 薄型化に有効である。 また、 可動板 5 の下面側の両側には、 第 4 図に示すように、 コ字状の電気配線 8, 8が設けられ、 これら各 電気配線 8 , 8 のそれぞれの端部上面には、 例えば金, 白金等の可 動接点 9 , 9が設けられている。
更に、 下側ガラス基板 4 の上面には、 電気配線 10, 10が第 4 図の 二点鎖線で示すようなパターンで形成されており、 この電気配線 10, 10上面の前記可動接点 9, 9 に対応する位置に、 同じく 金, 白金等 からなる固定接点 11, 11が第 2図に示すように設けられている。 前 記電気配線 10, 10は、 第 2図に示すように、 下側ガラス基板 4 に設 けた貫通穴部分を介して下側ガラス基板 4 の下面側に引き出されて いる。
シ リ コ ン基板 2の ト一シヨ ンバー 6, 6 の側方上面には、 トーン ヨ ンバー 6 , 6 の部分を介して平面コイル 7 と電気的に接続する一 対の電極端子 12, 12が設けられており、 この電極端子 12, 12は、 シ リ コ ン基板 2上に電鎳コィル法によ り平面コィル 7 と同時形成され
O
上側及び下側ガラス基板 3 , 4 の第 1 図中左右側には、 前記 トー シ ヨ ンバー 6 , 6 の軸方向と平行な可動板 5 の対辺の平面コイル 7 部分に磁界を作用させる互いに対をなす円形状の永久磁石 13A, 13 B と 14A, 14Bが設けられている。 互いに対をなす一方の各 3個づ
つの永久磁石 13 A , 13 Bは、 第 2図に示すように、 下側が N極、 上 側が S極となるよう設けられ、 互いに対をなす他方の各 3個づつの 永久磁石 14 A , 14 Bは、 第 2図に示すように、 下側が S極、 上側が N極となるよう設けられている。
次に動作を説明する。
例えば、 一方の電極端子 12を +極、 他方の電極端子 12を一極と し て平面コイル 7 に電流を流す。 可動板 5 の両側では、 永久磁石 13 A と 13 B、 14 Aと 14 Bによって、 第 2図の矢印で示すように上下の磁 石間で可動板 5 の平面に沿って平面コイル 7を横切るような方向に 磁界が形成されており、 この磁界中の平面コイル 7 に電流が流れる と、 平面コイル 7の電流密度と磁束密度に応じて平面コイル 7、 言 い換えれば可動板 5 の両端に、 電流 · 磁束密度 · 力のフ レ ミ ングの 左手の法則に従った方向 (第 5図に示す) に磁気力 Fが作用 し、 こ の力はロ ー レ ンッカカヽら求められる。
この磁気力 Fは、 平面コイル 7 に流れる電流密度を i 、 永久磁石 13 A, 13 B と 14 A , 14 Bによる磁束密度を B とすると、 下記の ( 1 ) 式で求められる。
F = i X B · · · ( 1 ) 実際には、 平面コイル 7 の巻数 n と、 磁気力 Fが働く コイル長 w (第 5図中に示す) により異なり、 下記の ( 2 ) 式のようになる。
F = n w ( i x B ) ■ · · ( 2 ) 一方、 可動板 5が回動するこ とにより ト一シヨ ンバー 6 , 6が捩 じられ、 これによつて発生する トーシヨ ンバー 6 , 6 のばね反力 F ' と可動板 5 の変位角 øの関係は、 下記の ( 3 ) 式のようになる。
ø = (Mx / G I p)
= ( F ' L /8.5 x 109 r 4 ) x 1 , · · · ( 3 ) こ こで、 M_\ は捩りモー メ ン ト、 Gは横弾性係数、 I p は極断面 二次モー メ ン トである。 また、 L、 1 I 、 は、 それぞれ、 ト一シ ヨ ンバーの中心軸から力点までの距離、 トーシ ヨ ンバーの長さ、 ト — シ ヨ ンバーの半径であり、 第 5図に示してある。
そ して、 前記磁気力 Fとばね反力 F ' が釣り合う位置まで可動板 5が回動する。 従って、 ( 3 ) 式の F ' に ( 2 ) 式の Fを代入する こ とによ り、 可動板 5の変位角 øは平面コイル 7に流れる電流 i に 比例するこ とが判る。
従って、 可動板 5下面の可動接点 9, 9力、 トーシヨ ンバー 6の ばね力に打ち勝って下側ガラス基板 4上面の固定接点 11, 11に圧接 するのに充分な電流を平面コィル 7に流せば、 可動板 5の回動で可 動接点 9, 9 と固定接点 11, 11を接触させるこ とができる。 そして、 平面コイル 7に流す電流.の方向の切り換え又は電流を〇 NZO F F するこ とで、 接点の切り換え又は電流の通電 Z遮断を制御するこ と ができる。
次に、 本実施例の電磁リ レーにおける永久磁石による磁束密度分 布の計算結果について説明する。
第 6図は、 本実施例に使用 した円柱状の永久磁石の磁束密度分布 計算モデルを示し、 永久磁石の N極と S極それぞれの表面を微小領 域 dyに分割し、 求める点の磁束を計算した。
N極表面で形成される磁束密度を Bn 、 S極表面で形成される磁 束密度を B s とする と、 これらは円柱状の永久磁石による磁束密度 分布の計算式から各 ( 4 ) 、 ( 5 ) 式によって求めることができ、 任意の点における磁束密度 Bは、 B n と B s を合成したものになり、 ( 6 ) 式で示される。
d / 2
B z [(d/2)2 — y 2 1 1 / 2
dy
Bn
2 π [(y-yo)2 + z2] [(d/2)2 + z2 + yo; -2yoy] 1 /2
( 4 )
B r
B s = x
2 π
(z + l)[(d/2)2 1
一 y 2 】 / 2
dy
2 [(y- yo)2+ (z+ l)2] [(d/2)2 + (z+ l)2 +yo2 -2yoy] 1 /2
- - - ( 5 )
B二 B n + B s
(、 ,
6
こ こで、 ( 4 ) 、 ( 5 ) の各式において、 B r は永久磁石の残留 磁束密度、 x、 y、 zは永久磁石の周りの空間の任意の点を表す座 標、 1 は永久磁石の N極面と S極面との距離、 dは各極面の半径で める。
例えば、 半径 1 mm, 高さ 1 mm, 残留磁束密度 0.85Tの S m— C 0永久磁石 D I A N E T DM - 1 8 (商品名、 セィ コ一電子部 品製) を用いて、 第 7図に示すように配置した永久磁石の表面に垂 直な面 a の磁束密度分布を計算した結果を第 8図に示す。
第 7図のように配置した場合には、 磁石間の空間は、 略 0.3 T以 上の磁束密度となっている。
次に、 可動板 5の変位量の計算結果について説明する。
可動板 5 に形成する平面コイル 7 の幅を 1 0 0 z m、 巻数を 1 4、 可動板 5 の厚さを 2 0 ΙΏとし、 トーシヨ ンバー 6の半径を 2 5 j m , 長さを l mm、 可動板 5の幅を 4 mm、 長さを 5 mmとして、 ( 2 ) 式と ( 3 ) 式から求めた。 尚、 磁束密度は、 前述の磁束密度 分布計算で得られた 0.3 Tを使用した。
その結果、 第 9図の ( A) 及び ( B ) から電流 1.5 m Aで 2度の 変位角が得られるこ とがわかる。 尚、 ( C ) は電流と発生する熱量 Qとの関係を示すもので、 この時の単位面積当たりの発生熱量は 13
〃 ヮ ッ ト Zcin2 となった。
次に、 発熱量と放熱の関係について説明する。
発熱量はコイルの抵抗で発生するジュール熱であり、 従って、 単 位時間当たりに発生する熱量 Qは下記の ( 7 ) 式によって表される。
Q = i 2 R · ■ · ( 7 ) こ こで、 i はコイルに流れる電流、 Rはコイルの抵抗である。
発熱量対流による放熱量 Qc は下記の ( 8 ) 式で表される。
Q c - h S Δ T · · · ( 8 ) こ こで、 hは熱伝達係数 (空気は 5 X 1 0 3〜 5 X 1 0 — 2 〔ヮ ッ ト Zcm2 °C) ) 、 Sは素子の表面積、 Δ Τは素子表面と空気との温 度差である。
発熱部となる可動板の面積を 2 0隱2 ( 4 X 5 ) とすると、 ( 8 ) 式は、
Q c = 1.0 Δ T 〔 mワ ッ ト /。 C〕 · · · ( 8 ) ' となり、 数十 ヮ ッ トノ cm2 程度の発熱量ならば素子の温度上昇の 問題は無視できるこ とがわかる。
尚、 参考まで、 輻射による放熱量 Qr は下記の ( 9 ) 式で表され
O o
Q r = £ S σ T 4 · · · ( 9 ) こ こで、 ε は輻射率 (黒体は ε = 1 で一般に ε く 1 ) 、 Sは素子 の表面積、 σはステフ ア ンボルツマン定数 ( 7Γ 2k4/60h3c2) 、 Tは 素子の表面温度である。
また、 トーシ ョ ンバ一からの伝導による放熱量 Q a は下記の (10) 式で表される。
Qa = 2 A ( S/ 1 , ) Δ Τ · · · (10)
こ こで、 λ は熱伝導率 (シ リ コ ンは 8 4 ワ ッ ト Zm Κ) 、 Sは ト — シ ヨ ン バーの断面積、 1 , は トーシ ヨ ンバーの長さ、 Δ Τは ト一 シ ョ ンバ一の両端の温度差である。 トーショ ンバーの半径を 2 5 fi m、 長さを l mmとすると (10) 式は、
Qa =0.1 Δ T 〔mワ ッ ト Z°C〕 · · · (10) '
となる。
次に ト一シ ョ ンバーの可動板自重による撓みと、 電磁力による可 動板の撓みについて説明する。
第 10図にこれらの計算モデルを示す。 トーシヨ ンバーの長さを 1 ^ ト 一 シ ヨ ンバーの幅を b、 可動板の重さを f 、 可動板の厚さを t、 可動板の幅を W、 可動板の長さを L , とすると、 トーシヨ ンバーの 橈み量 Δ Υは、 片持ち梁の撓み量の計算方法を用いて、 下記の (11) 式のようになる。
Δ Y = ( 1 / 2 ) ( 4 1 ,s f /E b t 3 ) · · · (11) こ こで、 Eはシ リ コ ンのヤ ン グ率である。
また、 可動板の重さ : f は下記の (12) 式で表される。 f - W L , t p g · · · (12) こ こで、 pは可動板の体積密度、 gは重力加速度である。
また、 可動板の撓み量 Δ Χは、 同じく 片持ち梁の撓み量の計算方 法を用いて、 下記の ( 13) 式のようになる。
Δ X = 4 ( L ,/2 )3F E W t 3 (13) で、 Fは可動板の端に作用する磁気力である。 そして、 前記 磁気力 Fは ( 2 ) 式のコイル長 wを可動板の長さ Wと見做して求め る。
これら、 ト―シ ヨ ンバーの撓み量と可動板の橈み量の計算結果を 表 1 に示す。 尚、 可動板の橈み量は、 磁気力 Fを 3 0 Nと して計 算したものである。
1 . ト一ショ ンバーと可動板の撓み量の計算結果
上記の表 1 から明らかなように、 幅 5 0 〃 m、 長さ 1.0 m mの ト — シ ヨ ンバーの場合、 幅 6 mm、 長さ 1 3 mm、 厚さ 5 0 〃 ΙΏの可 動板による橈み量 Δ Υは、 0.178 mであり、 可動板の厚さを倍の 1 0 0 〃 mと しても、 撓み量 Δ Υは、 0.356 〃 mである。 また、 幅 6 m m , 長さ 1 3 mm、 厚さ 5 0 mの可動板の場合、 磁気力によ る撓み量 Δ Χは、 0.125 であり、 可動板両端の変位量を 2 0 0 m程度とすれば、 本実施例の電磁リ レーの特性には何ら影響はな い。
以上説明したよう に、 本実施例の電磁リ レーでは、 コイルの発熱 による影響も無視でき、 また、 可動板 5 の揺動特性も何ら問題はな : 、 従来と同様の機能を発揮するこ とができる。 そして、 半導体素
子の製造プロセスを利用して接点可動部やコイル等を形成するこ と によって、 従来に比べて格段に超小型で薄型の電磁リ レ一とするこ とができる。 このため、 最終段の出力を電磁リ レーで制御する制御 系システムの小型化を図るこ とがでぎる。 また、 半導体素子の製造 プロセスで製造するこ とで、 大量生産が可能となる。
尚、 本実施例では、 磁界の形成に永久磁石を用いたが、 電磁石を 用いてもよい。 また、 磁石を基板を設けて固定する構成としたが、 所定位置に磁石が固定できれば必ずしも基板に固定する必要はない。
次に上記第 1 実施例の電磁リ レーの製造工程を、 第 11図及び第 12 図を参照しながら説明する。
まず、 第 11図 ( a ) 〜 ( j ) にシ リ コ ン基板の加工工程を示す。 厚さ 300 のシ リ コ ン基板 101 の上下面を熱酸化して酸化膜 ( 1 m) 102 を形成する ( ( a ) 図参照) ) 。
次に、 表裏両面にホ ト リ ソグラフにより貫通穴のパタ一ンを形成 し、 貫通穴部分の酸化膜をエッチング除去し ( ( b ) 図参照) 、 更 に、 可動板形成部の裏面側 (図中で上側) の酸化膜を厚さ 0.5 urn まで除去する ( ( c ) 図参照) 。
次に、 表面側 (図中で下側) にワ ッ クス層 103 を設けた後、 裏面 側の貫通穴部分に異方性エッチングを 100 m行い ( ( d ) 図参照) 裏面側の可動板部分の薄い酸化膜を除去し ( ( e ) 図参照) 、 貫通 穴と可動板部分に異方性ェッチングを 100 m行う ( ( f ) 図参照) 次に、 貫通穴部分で囲まれた可動板裏面に相当するシリ コ ン基板 部分に、 電気配線部分を残してマスク し、 例えばニッケル或いは銅 のスパッ タを行ってコ字状の電気配線 8 , 8 を形成し、 更に、 可動 接点部分を除いてマスク し、 金或いは白金の層を例えば蒸着等によ つて形成し可動接点 9 , 9 を形成する ( ( g ) 図参照) 。
次に、 表面側のワ ッ クス層 103 を除去し、 表面側の酸化膜 102 上 に、 従来公知の電踌コイル法によって平面コイル 7、 電極端子部 (
図示せず) を形成する。 電铸コイ ル法は、 シ リ コ ン基板 101 の表面 側酸化膜 102 上にニッケルのスパッ 夕を行ってニッケル層を形成し. 電解めつき又はスパッ 夕により銅層を形成する。 次にポジ型のレジ ス トで平面コイル及び電極端子に相当する部分をマスク し、 銅エツ チング、 ニッケルエツチ ングを順次行い、 エツチング後、 レジス ト を除去し、 更に、 銅電解めつきを行ってニッケル層の全周を銅で覆 い平面コイル及び電極端子に相当する銅層を形成する。 次に、 銅層 を除いた部分にネガ型のメ ツキレジス トを塗布した後、 銅電解めつ きを行って銅層を厚く して、 平面コイル及び電極端子を形成する。 そ して、 平面コイル部分を例えば感光性ポリ イ ミ ド等の絶縁層で覆 う。 平面コイルを 2層にする場合は、 再度ニッケルのスパッ 夕工程 から絶縁層形成までの工程を繰り返し行えばよい ( ( h ) 図参照) c 次に、 表面側にワ ッ クス層 103 ' を設け、 可動板裏面部分をマス ク した後、 貫通穴部分に異方性エッチングを 100 / m行い、 貫通穴 部分を貫通させ、 可動板部分を除いてワ ッ クス層 103 ' を除去する c こ の際に、 上下の酸化膜 102 も除去する。 これにより、 可動板 5 と ト ー シ ョ ンバ一 (図示せず) が形成され、 第 1 図のシリ コ ン基板 2 が形成される ( ( i ) , ( Γ) 図参照) 。
以上で、 シリ コ ン基板 2の可動板 5及び トーシ ョ ンバーが一体に 形成される。
その後、 可動板部分のワ ッ クス層を除去した後、 シ リ コ ン基板 2 の上下面に上側ガラス基板 3 と下側ガラス基板 4 をそれぞれ陽極接 合によって結合し、 上下のガラス基板 3, 4 の所定位置に永久磁石 13A , 13B と HA, 14Bを取付ければよい。
次に、 第 12図 ( a ) 〜 ( g ) を参照しながら上下ガラス基板の加 ェ工程を説明する。
まず、 上側ガラス基板 3 は、 例えば超音波加工により可動板上方 部分に相当する位置に穴を開け、 開口部 3 aを形成すればよい ( (
a ) 図参照) 。 一方、 下側ガラス基板 4では、 まず、 電解放電加工 によってスルーホール用の貫通穴 4 a , 4 aをガラス基板 4 の裏面 側 (図中上側) から形成する ( ( b ) 図参照) 。 そして、 下側ガラ ス基板 4 の両面に、 例えば、 ニッケル或いは銅のスパッ 夕を行い、 金属層 104 を形成する ( ( c ) 図参照) 。
次に、 貫通穴 4 a を含む電気配線部分をマスク し、 その他の部分 をエッチングして金属層 104 を除去するこ とで、 電気配線 10, 10を 形成する ( ( d ) 図参照) 。
次に、 ガラス基板 4 の表面側 (図中下側) に リ フ トオフ用に、 ホ ト リ ソグラフによ り固定接点のパターンを形成して固定接点部を除 いて レ ジス ト 105 を塗布し ( ( e ) 図参照) 、 ガラス基板 4表面側 の全面に金或いは白金の蒸着により蒸着層 106 を形成し ( ( f ) 図 参照) 、 更に、 レジス トを除去するこ とで、 固定接点部を除く他の 部分の蒸着層 106 を除去し、 固定接点 11, 11を形成する ( ( g ) 図 参照) 。
第 13図に、 本発明の電磁リ レーの第 2実施例を示す。 尚、 第 1 実 施例と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
図において、 本実施例の電磁リ レー 21は、 シ リ コ ン基板 2及び下 側ガラス基板 4 の構成は第 1 実施例と同様であるが、 上側ガラス基 板 3 ' の構成が異なる。 即ち、 上側ガラス基板 3 ' は、 第 1 実施例 の上側ガラス基板 3の開口部 3 a に相当する部分を、 放電加工等に よって溝 3 A ' と して閉塞する構成としてある。
そ して、 シ リ コ ン基板 2の上下面に、 上側ガラス基板 3 ' と下側 ガラス基板 4 を、 第 13図中の矢印で示す如く、 シリ コ ン基板 2の上 下面に陽極接合によって結合して、 可動板 5 の揺動空間を密閉する 構成と している。 更に、 この密閉空間を真空雰囲気にして電磁リ レ 一 21を駆動させる。 尚、 永久磁石に代えて電磁石を用いてもよい。 かかる構成によれば、 可動板 5 の揺動空間を真空雰囲気とするこ
とで、 可動板 5が回動する際の空気抵抗がなく なるため、 可動板の 応答性を向上できる。 そして、 シ リ コ ン基板 2 に上下のガラス基板 3 ' , 4 を結合する際に、 接着剤を用いる とガスが可動板の揺動空 間に侵入する虞れがあるが、 本実施例のように 陽極接合を用いれ ばその心配はない。 また、 可動板 5 の揺動空間を真空封止する際に 空間内に硫化フ ッ素 ( S F e ) を封入するこ とで、 絶縁耐圧が向上
9 -S o
次に、 第 1 4図に本発明に係る電磁リ レーの第 3実施例を示し説明 する。 尚、 上記の各実施例と同一要素には同一符号を付して説明を 省略す '3
第 1 4図において、 本実施例の電磁リ レー 31では、 可動板 5側に、 平面コイルに代えて薄膜の永久磁石 32を設ける。 一方、 シ リ コ ン基 板 2の ト ーシ ヨ ンバー 6, 6 の軸方向と平行な可動板 5 の対辺側方 の部分に、 通電によ り磁界を発生する平面コイル 7 A , 7 Bを設け る。 また、 上側ガラス基板 3 ' は、 第 1 3図に示すものと同様で溝 3 A ' を有し閉塞された構成である。
かかる構成のように、 永久磁石 32を可動板 5側に設け、 平面コィ ル 7 A , 7 Bをシ リ コ ン基板 2側に設けるようにしても、 上述の各 実施例と同様に動作させるこ とができる。 また、 可動板 5側にコィ ルを設けていないので、 発熱に関する問題は生じない。 更に、 可動 板側に薄膜の磁石を用いているため、 可動板の動作が鈍く なると言 う こ とはな く 応答性を向上できる。 更に加えて薄膜永久磁石を半導 体素子製造技術で一体形成するので、 より一層小型化できると共に 磁石の設置工程が容易となり、 電磁リ レーの製造が容易となる利点 がある。 そして、 可動板 5 の揺動空間を真空封止するので、 第 13図 に示す実施例と同様で可動板 5 の応答性が良好となる。
尚、 本実施例では、 可動板の周囲に永久磁石を形成する構成と し たが、 可動板の全面に形成するようにしてもよい。
以上説明したように本発明によれば、 コィルを従来の巻線型では な く半導体素子製造技術を用いて形成する構成としたので、 従来の 巻線型コイルを用いる電磁リ レーに比較して格段に小型化及び薄型 化するこ とができる。 従って、 電磁リ レーを使用する制御系のシス テムの集積化及び小型化を図るこ とができる。 また、 可動板の揺動 空間を密閉空間と して真空封止する構成とすれば、 空気抵抗をな く すこ とができ、 可動板の応答性を向上でき、 リ レー応答性を高める こ とができる。
〔産業上の利用可能性〕
本発明は、 電磁リ レーの薄型化及び小型化を図るこ とができ、 電 磁リ レーによ り最終段の出力を制御する制御システムの小型化を図 るこ とができ、 産業上利用性は大である。