以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1〜図3を参照して、本実施形態に係るミラー装置1の構成を説明する。図1は、ミラー装置1の斜視図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、ミラー装置1の分解斜視図である。説明の便宜のために、各図にはX軸、Y軸及びZ軸を付している。
図1〜図3に示されるように、ミラー装置1は、ミラー構造体10と、下部磁性体20と、キャップ構造体30と、筐体40と、を備える。筐体40は、略直方体形状を有し、ミラー構造体10及び下部磁性体20を収容する。下部磁性体20は、筐体40の内側に設けられた開口部41の底面上に配置されている。ミラー構造体10は、下部磁性体20の上方(Z軸正方向の側)に配置されている。キャップ構造体30は、筐体40の開口部41を覆うように配置されている。
図4及び図5を参照して、ミラー構造体10の構成について詳細に説明する。図4は、ミラー構造体10の平面図である。図5は、ミラー構造体10における第一コイル17及び第二コイル18の配置を示す図である。ミラー構造体10は、支持部11と、支持部11に連結された第一可動部12(可動部)と、第一可動部12に連結された第二可動部13(可動部)と、第二可動部13に配置されたミラー16と、第一可動部12に配置された第一コイル17(コイル)と、第二可動部13に配置された第二コイル18(コイル)と、を備える。
支持部11は、Z軸方向から見た場合に矩形状を呈する枠体である。支持部11には、矩形の開口部11aが設けられている。開口部11aの外縁のうち、X軸方向に延びる2辺には、第一梁部を収容する略矩形の一対の凹部11b,11bが設けられている。第一可動部12は、支持部11の開口部11a内に配置された、薄板状の部材である。第一可動部12は、一対の第一梁部14,14により、支持部11に連結されている。一対の第一梁部14,14は、Y軸に平行な直線A1上に位置し、第一可動部12の両側に設けられている。第一可動部12は、矩形の開口部12aを有している。第一可動部12は、支持部11に対して、直線A1の周りに揺動可能とされている。
第二可動部13は、略正方形状のフレーム13Aと、フレーム13Aの内側に固定された円盤状のミラー配置部13Bとにより構成されている。フレーム13Aの4辺のうち互いに平行な2辺は、X軸方向に延びている。フレーム13Aの残り2辺は、Y軸方向に延びている。ミラー配置部13Bの外周面は、フレーム13Aの4辺それぞれの内周面に接している。第二可動部13は、一対の第二梁部15,15により、第一可動部12に連結されている。一対の第二梁部15,15は、X軸に平行な直線A2上に位置し、第二可動部13の両側に設けられている。第二可動部13は、第一可動部12に対して、直線A2の周りに揺動可能とされている。
第一梁部14は、蛇行形状とされている。ただし、第一梁部14の形状は、蛇行形状に限られるものではなく、第一梁部14を、Y軸方向に直線状に延びたものとしてもよい。
第二梁部15は、X軸方向に直線状に延びている。第二梁部15の一端は、第一可動部12の開口部12aの内周面に接続されている。第二梁部15の他端は、第二可動部13の外周面に接続されている。第二梁部15の他端側は、第二可動部13側に向かって徐々に幅が広くなっている。ただし、第二梁部15の形状は、直線形状に限られるものではなく、例えば、蛇行形状としてもよい。
ミラー16は、第二可動部13のミラー配置部13B上において、キャップ構造体30に対向する面の上に配置されている。ミラー16は、金属薄膜により構成された光反射膜である。
図5に示されるように、第一コイル17は、第一可動部12に配置されている。第一コイル17は、X軸に平行な辺と、Y軸に平行な辺とからなる、略長方形状を有する。なお、本明細書において、長方形には、正方形が含まれるものとする。第一コイル17は、例えば、第一可動部12のキャップ構造体30に対向する側の表面に螺旋状の溝を設け、この溝に金属材料を配置することにより構成することができる。第一コイル17は、一方の第一梁部14上に配置された配線17Aにより、支持部11上の一対のパッド19A,19Aに電気的に接続されている。したがって、一対のパッド19A,19Aの間に電流を供給することにより、第一コイル17に電流が供給される。
第二コイル18は、第二可動部13のフレーム13Aに配置されている。第二コイル18は、X軸に平行な辺と、Y軸に平行な辺とからなる、略長方形状を有する。第二コイル18は、例えば、フレーム13Aのキャップ構造体30に対向する側の表面に螺旋状の溝を設け、この溝に金属材料を配置することにより構成することができる。第二コイル18は、第二梁部15上に配置された配線18Aにより、第一可動部12上に引き出されているとともに、第一梁部14上に配置された配線18Bにより、支持部11上の一対のパッド19B,19Bに電気的に接続されている。したがって、一対のパッド19B,19Bの間に電流を供給することにより、第二コイル18に電流が供給される。
第一コイル17及び第二コイル18の巻き数は、適宜定めてよい。第一コイル17及び第二コイル18の巻き数を多くすると、第一コイル17及び第二コイル18に電流を供給した場合に第一コイル17及び第二コイル18に発生する力が強まり、それに応じてミラー16の揺動角を大きくすることができる。
上述した構成を有するミラー構造体10は、例えば、シリコン等の半導体基板に対して異方性エッチング等の加工を行って第一可動部12、第二可動部13、第一梁部14、第二梁部15を形成することにより、一体として形成されている。
再び図1〜図3を参照して説明を続ける。下部磁性体20は、直方体形状を有する、一の部材である。下部磁性体20の互いに直交する3辺は、それぞれX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に延びている。下部磁性体20は、第一磁性部21と、第二磁性部22と、第三磁性部23と、を有する。第一磁性部21及び第二磁性部22は、第一コイル17及び第二コイル18の各辺が延びる方向(すなわちX軸方向及びY軸方向)に交差する方向に配列されている。より詳細には、第一磁性部21及び第二磁性部22は、それぞれ、下部磁性体20において、下部磁性体20の底面の対角線方向における一端側及び他端側に配置されている。第三磁性部23は、第一磁性部21と第二磁性部22との間に配置されている。第一磁性部21と第三磁性部23との境界面24、及び第三磁性部23と第二磁性部22との境界面25は、Z軸に平行で、かつX軸及びY軸の両方と交差する平面である。境界面24及び境界面25は、X軸及びY軸に対して、例えばそれぞれ45°の角度をなしている。このように第一磁性部21、第二磁性部22及び第三磁性部23が配置されていることにより、第一磁性部21、第二磁性部22及び第三磁性部23は、例えば筐体40の底面の対角線方向に平行な方向の磁界を発生させる。
第一コイル17及び第二コイル18は、X軸に平行な辺と、Y軸に平行な辺と、からなる略長方形状とされている。第一コイル17及び第二コイル18の辺と、磁界の向きとが平行である場合には、第一コイル17及び第二コイル18に電流を流しても、第一コイル17及び第二コイル18の当該辺には力が作用しない。このため、下部磁性体20が発生させる磁界をX軸に平行な方向、又はY軸に平行な方向のものとする場合、第二可動部13をX軸回り及びY軸周りの2次元方向に揺動させるためには、下部磁性体20として、X軸に平行な方向の磁界と、Y軸に平行な方向の磁界と、の2つの方向の磁界を発生させる磁性体を別々に設ける必要がある。しかしながら、本実施形態では、下部磁性体20が有する第一磁性部21、第三磁性部23、及び第二磁性部22が、Z軸に平行で、且つX軸及びY軸の両方と交差する方向の磁界を発生させる。したがって、本実施形態では、2つの方向の磁界を発生させる磁性体を別々に設ける必要がない。
なお、下部磁性体20が発生させる磁界をX軸又はY軸に平行なものとした場合であっても、第一コイル17及び第二コイル18の各辺がX軸及びY軸の両方に対して交差する方向に延びるように第一コイル17及び第二コイル18が配置された場合には、下部磁性体20が、2つの方向の磁界を発生させなくても、第二可動部13をX軸及びY軸のそれぞれの周りの2次元方向に揺動させることができる。
下部磁性体20は、ミラー構造体10のミラー16が配置された面の裏面である裏面10bの側、すなわちZ軸負方向側に配置されている。したがって、第一磁性部21及び第二磁性部22は、ミラー構造体10の裏面10bの側に配置されている。
第一磁性部21は、第一極性の磁極21aと、第一極性とは異なる第二極性の磁極21bと、を有する。本実施形態では、第一極性はS極の極性であり、第二極性はN極の極性である。逆に、第一極性がN極の極性であり、第二極性がS極の極性であってもよい。
図2に示されるように、磁極21aは、ミラー構造体10と対向するように配置されている。すなわち、磁極21aは、第一磁性部21におけるZ軸正方向の側に配置されている。磁極21bは、磁極21aと逆の側、すなわち第一磁性部21におけるZ軸負方向の側に配置されている。
第二磁性部22は、第一極性の磁極22aと、第二極性の磁極22bと、を有する。磁極22bは、ミラー構造体10と対向するように配置されている。すなわち、磁極22bは、第二磁性部22におけるZ軸正方向の側に配置されている。磁極22aは、磁極22bと逆の側、すなわち第二磁性部22におけるZ軸負方向の側に配置されている。
第三磁性部23は、第一極性の磁極23aと、第二極性の磁極23bと、を有する。磁極23aは、第三磁性部23における、第一磁性部21と対向する側に配置されている。磁極23bは、第三磁性部23における、第二磁性部22と対向する側に配置されている。
第一磁性部21、第三磁性部23及び第二磁性部22は、ハルバッハ配列を構成している。具体的には、第一磁性部21において、第一極性の磁極21aと第一磁性部21の第二極性の磁極21bとは、ミラー構造体10の面10a及び面10bに対して垂直な方向において対向している。第一磁性部21に隣接する第三磁性部23において、第一極性の磁極23aと第三磁性部23の第二極性の磁極23bとは、ミラー構造体10の面10a及び面10bに対して平行な方向において対向している。第三磁性部23に隣接し、且つ第三磁性部23に関して第一磁性部21の反対側に位置する第二磁性部22において、第一極性の磁極22aと第二極性の磁極22bとは、ミラー構造体10の面10a及び面10bに対して垂直な方向において対向している。このように、第一磁性部21、第三磁性部23、及び第二磁性部22のうち隣り合う2つにおいて、それぞれが有する2つの磁極が対向する方向は、互いに垂直な方向である。
キャップ構造体30は、Z軸方向から見た場合に矩形を呈する、板状部材である。キャップ構造体30は、ミラー構造体10のミラー16が配置された面側、すなわちZ軸正方向側に配置されている。
キャップ構造体30は、第一領域31と、第二領域32と、第三領域33と、を有する。
図2に示されるように、第一領域31は、第一極性の磁極31aと、第二極性の磁極31bと、を有する。磁極31aは、第一磁性部21の第一極性の磁極21aに対向するように配置されている。すなわち、磁極31aは、第一領域31におけるZ軸負方向の側に配置されている。磁極31bは、第一領域31における、磁極31aと逆の側、すなわち第一領域31におけるZ軸正方向の側に配置されている。第一領域31における、ミラー構造体10に対向する側の面は、ミラー構造体10に対して平行である。
第二領域32は、第一極性の磁極32aと、第二極性の磁極32bと、を有する。磁極32bは、第二磁性部22の第二極性の磁極22bに対向するように配置されている。すなわち、磁極32bは、第二領域32におけるZ軸負方向の側に配置されている。磁極32aは、第二領域32における、磁極32bと逆の側、すなわち第二領域32におけるZ軸負方向の側に配置されている。第二領域32における、ミラー構造体10に対向する側の面は、ミラー構造体10に対して平行である。
第三領域33は、第一領域31と第二領域32との間に位置する。第三領域33は、着磁されていない。
第三領域33には、ミラー16に対応する位置、言い換えればZ軸方向から見てミラー16と重なる位置に、貫通孔34が形成されている。図2に示されるように、貫通孔34は、キャップ構造体30のミラー構造体10に対向する面30a側から裏面30b側に向かって拡径したテーパ状の内面34aにより画成されている。
キャップ構造体30は、例えばネオジウム系磁石又はサマリウムコバルト系磁石を用いて構成することができる。第一領域31及び第二領域32により形成される磁界を十分に強めるために、キャップ構造体30のZ軸方向の厚さTは、例えば1mm以上とすることが好ましい。また、キャップ構造体30のミラー構造体10に対向する側の面とミラー16とのZ軸方向における距離Dは、キャップ構造体30のZ軸方向の厚さTよりも小さいことが好ましい。
距離Dに関してさらに述べると、ミラー構造体10と、その上方に配置される磁性体(例えばキャップ構造体30)の高さ方向(Z軸方向)の位置精度及びフラットネスは、ミラー構造体10の周囲における磁界を制御するうえで、非常に重要なパラメータである。特許文献1に記載されたミラー装置のように、複数の磁性体を個別に配置した場合には、複数の磁性体の高さ方向の位置合わせ及びフラットネスの保持が難しい。このため、ミラー構造体10と磁性体との間の距離がずれることにより、所望の磁界が得られなくなるおそれがある。特に、上述した、キャップ構造体30とミラー16との間の距離Dが、キャップ構造体30の厚さTよりも小さい場合には、ミラー構造体10と磁性体との間の反発力が大きくなり、磁性体の位置決めが非常に困難である。そこで、距離Dが厚さTよりも小さいという関係を保ちつつ、距離Dを精度よく調整するには、本実施形態のように、第一領域31と第二領域32とを、キャップ構造体30として一体化することが好適である。
第一領域31と第二領域32との間に位置する第三領域33の大きさを変更することにより、第一領域31及び第二領域32により形成される磁界の分布を変更することができる。したがって、第三領域33の大きさは、第一領域31及び第二領域32により形成される磁界が第一コイル17及び第二コイル18の近傍に集中するように、適宜定めることができる。上述したように、第一領域31の第一極性の磁極31aは、第一磁性部21の第一極性の磁極21aに対向するように配置されており、第二領域32の第二極性の磁極32bは、第二磁性部22の第二極性の磁極22bに対向するように配置されている。したがって、第一磁性部21及び第二磁性部22は、第一磁性部21、第二磁性部22及び第三磁性部23と同様に、例えば筐体40の底面の対角線方向に平行な方向の磁界を発生させる。
キャップ構造体30は、一の部材からなり、この一の部材における対応する領域が着磁されることにより第一領域31と第二領域32とを有している。言い換えれば、キャップ構造体30は、一の部材のうち、第一領域31及び第二領域32を着磁することにより、構成されている。第一領域31及び第二領域32の着磁は、例えば、第一領域31及び第二領域32のそれぞれの部分の周囲にコイルを配置し、このコイルに所定の電流を流して磁界を発生させることにより行うことができる。
筐体40は、略直方体形状をなしており、開口部41を有している。筐体40は、開口部41内に、ミラー構造体10及び下部磁性体20を収容する。すなわち、筐体40は、ミラー構造体10、第一磁性部21、及び第二磁性部22を収容する。
次に、図6を参照して、下部磁性体20及びキャップ構造体30により形成される磁界について説明する。図6は、図1のII−II線で示される断面(すなわち図2と同じ断面)における磁界の分布を模式的に示す図である。
下部磁性体20による磁界F1は、第一磁性部21の第一極性の磁極21aから第二磁性部22の第二極性の磁極22bに向かって形成される。キャップ構造体30による磁界F2は、第一領域31の第一極性の磁極31aから第二領域32の第二極性の磁極32bに向かって形成される。図6に示されるように、第三磁性部23と第三領域33とにより挟まれる位置では、磁界F1,F2は、ほぼ下部磁性体20及びキャップ構造体30の面に沿って形成される。楕円R1及び楕円R2は、第一コイル17及び第二コイル18が位置する領域を模式的に示す。第一磁性部21、第二磁性部22、第一領域31、及び第二領域32により形成される磁界は、楕円R1及び楕円R2で示される位置において集中している。これにより、楕円R1及び楕円R2で示される位置において、第一コイル17及び第二コイル18に電流を供給した場合に第一コイル17及び第二コイル18に加わる力が強められる。
以上のように構成されるミラー装置1の組立工程の一例について説明する。まず、ミラー構造体10と下部磁性体20と、を筐体40の開口部41内に固定する。次に、キャップ構造体30における第一領域31及び第二領域32を予め着磁しておく。次に、キャップ構造体30を、開口部41を覆うように筐体40に接着する。以上の組立工程により、ミラー装置1が得られる。
ミラー装置1の動作は、次の通りである。第一コイル17に、ミラー16の所望の角度に応じた電流が供給されると、供給された電流に応じた力が第一コイル17に発生する。第一可動部12は、第一コイル17に発生する力と第一梁部14の復元力とが釣り合う角度まで、直線A1(図4参照)の周りに回転する。
同様に、第二コイル18に、ミラー16の所望の角度に応じた電流が供給されると、供給された電流に応じた力が第二コイル18に発生する。第二可動部13は、第二コイル18に発生する力と第二梁部15の復元力とが釣り合う角度まで、直線A2(図4参照)の周りに回転する。
ミラー装置1には、貫通孔34を通って光がZ軸正方向の側からミラー16に入射し、ミラー16に入射した光は、再び貫通孔34を通ってZ軸正方向の側に反射される。反射される光の進む方向は、ミラー16の角度によって変化する。このミラー16の角度は、上述の通り、第一コイル17及び第二コイル18に供給する電流の大きさを変化させて第一可動部12及び第二可動部13を回転させることにより制御可能である。したがって、第一コイル17及び第二コイル18に供給する電流を制御することによって、ミラー装置1により反射される光の進む方向を制御することができる。
図7は、本実施形態のミラー装置1におけるミラー16の揺動角と、比較例のミラー装置におけるミラーの揺動角とを比較して示す図である。図7の横軸は、第一コイル17及び第二コイル18に印加される印加電流(単位:mA)を表す。図7の縦軸は、揺動角(単位:°)を表す。図7の実線の曲線は、本実施形態のミラー装置1におけるミラー16の揺動角を表す。図7の破線の曲線は、比較例のミラー装置におけるミラーの揺動角を表す。比較例のミラー装置は、キャップ構造体30を有していない点で、本実施形態のミラー装置1と相違しており、その他の点では、本実施形態のミラー装置1に準じた構成を備えている。
図7に示されるように、印加電流が10mAのときに、本実施形態のミラー装置1の揺動角は約14°であるのに対し、比較例のミラー装置の揺動角は約6°である。このように、本実施形態のミラー装置1によれば、比較例のミラー装置に対して、2倍以上の揺動角が得られる。
本実施形態に係るミラー装置1によれば、第一磁性部21の第一極性の磁極21aとキャップ構造体30の第一領域31の第一極性の磁極31aとが対向しており、第二磁性部22の第二の極性の磁極22bとキャップ構造体30の第二領域32の第二極性の磁極32bとが対向している。このため、第一磁性部21、第二磁性部22、キャップ構造体30の第一領域31及び第二領域32により、第一コイル17及び第二コイル18の近傍に強い磁界F1,F2が形成される。第一領域31と第二領域32との間に位置する着磁されていない第三領域33の大きさを調整することにより、第一領域31及び第二領域32により形成される磁界F1,F2を第一コイル17及び第二コイル18の近傍に集中させることができる。さらに、この磁界F1,F2が、第三領域33を有するキャップ構造体30により第一コイル17及び第二コイル18の近傍に閉じ込められる。これにより、第一コイル17及び第二コイル18の近傍における磁界が一層強められる。
ここで、磁界F1,F2を第一コイル17及び第二コイル18の近傍に形成する第一領域31及び第二領域32は、キャップ構造体30として一体に形成される。このため、第一領域31及び第二領域32を第一コイル17及び第二コイル18に対して高精度に位置決めすることが容易となる。したがって、ミラー装置1によれば、第一コイル17及び第二コイル18の近傍に磁界F1,F2を確実に集中させることができる。
さらに、ミラー装置1は、開口部41を有し、ミラー構造体10、第一磁性部21、及び第二磁性部22を収容する筐体40をさらに備えている。キャップ構造体30は、開口部41を覆うように配置されている。このため、ミラー構造体10に対して、第一磁性部21と第二磁性部22とが、筐体40に収容されることにより位置決めされる。同時に、キャップ構造体30により、筐体40の開口部41が覆われるため、磁界F1,F2が第一コイル17及び第二コイル18の近傍に閉じ込められる。このため、第一磁性部21及び第二磁性部22により形成される磁界F1,F2をより確実に第一コイル17及び第二コイル18の近傍に集中させることができる。
第三領域33には、ミラー16に対応する位置に貫通孔34が形成されており、貫通孔34は、キャップ構造体30のミラー構造体10に対向する面30a側から裏面30b側に向かって拡径したテーパ状の内面34aにより画成されている。ミラー構造体10の第一コイル17及び第二コイル18の近傍における磁界F1,F2を強めるためには、キャップ構造体30の厚さを大きくし、かつキャップ構造体30をミラー構造体10に近接した位置に配置する必要がある。しかし、上述のように、貫通孔34がキャップ構造体30の面30a側から裏面30b側に向かって拡径したテーパ状の内面34aにより画成されていることにより、貫通孔34を通ってミラー16に入射する光、及びミラー16により反射されて貫通孔34を通る光が貫通孔34の周縁部に干渉しにくくなる。このため、ミラー16による光の入出力の角度をより大きくすることができる。
第一磁性部21と第二磁性部22との間に配置された第三磁性部23をさらに備え、第一磁性部21、第三磁性部23及び第二磁性部22が、ハルバッハ配列を構成している。このため、ハルバッハ配列を構成する第一磁性部21、第三磁性部23及び第二磁性部22により、第一コイル17及び第二コイル18の近傍に形成される磁界F1,F2をより強めることができる。
キャップ構造体30は、一の部材からなり、該一の部材における対応する領域が着磁されることにより第一領域31と第二領域32とを有している。このため、第一領域31と第二領域32とを有する一の部材をミラー構造体10に対して位置決めすることにより、第一領域31及び第二領域32の両方がミラー構造体10に対して所望の位置に確実に位置決めされることとなる。このため、磁界F1,F2を一層確実に第一コイル17及び第二コイル18の近傍に集中させることができる。
第一磁性部21と第二磁性部22とは、一の部材である下部磁性体20における対応する領域がそれぞれ着磁されることにより構成されている。このため、第一磁性部21及び第二磁性部22を構成する一の部材としての下部磁性体20をミラー構造体10に対して位置決めすることにより、第一磁性部21及び第二磁性部22の両方がミラー構造体10に対して所望の位置に確実に位置決めされることとなる。このため、磁界F1,F2を一層確実に第一コイル17及び第二コイル18の近傍に集中させることができる。
第一コイル17及び第二コイル18は、略長方形状を有しており、第一磁性部21と第二磁性部22とは、第一コイル17及び第二コイル18の各辺が延びる方向(すなわちX軸方向及びY軸方向)に交差する方向に配列されている。このため、第一磁性部21と第二磁性部22とにより形成される磁界の方向が、第一コイル17及び第二コイル18の各辺が伸びる方向に対して交差する方向となる。したがって、第一コイル17及び第二コイル18に電流が供給された場合に、第一コイル17及び第二コイル18の全ての辺に力が作用する。このため、ミラー16を効率よく揺動させることができる。
本実施形態では、ミラー構造体の下方に配置される第一磁性部21及び第二磁性部22が、X軸及びY軸の両方に交差する方向に磁界を発生させるように配置されている。このため、ミラー構造体10の上部に磁性体を配置されるにあたっては、第一磁性部21及び第二磁性部22が発生させる磁界の向きに沿って、X軸及びY軸の両方に交差する方向に配列される必要がある。この場合、ミラー構造体10の上部に配置される磁性体の位置合わせは、磁性体がX軸又はY軸に平行に配置される場合と比較して、一層難しい。しかしながら、本実施形態では、キャップ構造体30が一の部材からなり、キャップ構造体30における対応する領域が着磁されることにより第一領域31及び第二領域32が形成されている。このため、第一領域31及び第二領域32の位置合わせも着磁によって精度よく調整することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
上記実施形態では、下部磁性体20が筐体40に収容されるものであるとしたが、下部磁性体20と筐体40とが一体化されていてもよい。
上記実施形態では、貫通孔34がテーパ状の内面34aにより画定されるものであるとした。しかしながら、貫通孔34が、キャップ構造体30のミラー構造体10に対向する面30aに垂直な内面、言い換えればZ軸に平行な内面により画定されるものであってもよい。
上記実施形態では、下部磁性体20が第三磁性部23を有するものとした。しかしながら、下部磁性体20における第三磁性部23に相当する部分が磁化されていなくてもよい。
上記実施形態では、キャップ構造体30が、第一領域31と、第二領域32と、第三領域33と、を有する一の部材であるものとした。しかしながら、第一領域31に相当する部材、第二領域32に相当する部材、及び第三領域33に相当する部材をそれぞれ別個の部材とし、これらの別個の部材を組み合わせてキャップ構造体を構成することとしてもよい。
上記実施形態では、第一磁性部21、第二磁性部22、及び第三磁性部23を、一の部材における対応する領域がそれぞれ着磁されたものであるとしたが、第一磁性部21、第二磁性部22、及び第三磁性部23をそれぞれ別個の部材としてもよい。
第一コイル17及び第二コイル18の近傍における磁界F1,F2を強めるために、ミラー構造体10の上方のキャップ構造体30及び下方の下部磁性体20に加えて、ミラー構造体10の側方にも磁性体を配置してもよい。具体的には、例えば、筐体40の側壁部に磁性体を配置すればよい。この場合、筐体40の側壁部に磁性体を接着してもよく、筐体40の側壁部に溝を形成して、この溝に磁性体を埋め込んでもよい。
上記実施形態では、図5に示されるように、第二コイル18がミラー16の周囲に配置されるものとしたが、第二コイル18が、ミラー16の直下に配置されてもよい。言い換えれば、第二コイル18が、ミラー16に対して第一磁性部21及び第二磁性部22と同じ側に位置し、かつ、ミラー16に垂直な方向(Z軸方向)から見てミラー16と重なる位置に配置されていてもよい。
第二コイル18がミラー16の直下に配置された変形例を図8に示す。図8に示されるミラー構造体10では、第二可動部13が、ミラー16よりやや大きい円形形状となっている。第二コイル18は、略正八角形の螺旋形状を呈して、ミラー16の直下に配置されている。
図5に示されるミラー構造体10に代えて図8に示される変形例のミラー構造体10を用いた場合であっても、上述した実施形態と同様の作用効果が得られる。また、図8に示されるミラー構造体10では、第二コイル18は、ミラー16に対して第一磁性部21及び第二磁性部22と同じ側(Z軸方向の負の側)に配置され、かつ、ミラー16に垂直な方向(Z軸方向)から見てミラー16と重なるように配置されている。このように第二コイル18が配置されている場合には、第二コイル18が配置された、ミラー構造体10の中心に近い位置に磁界を形成するために、磁界を形成する第一磁性部21と第二磁性部22との距離を近づける必要がある。第一磁性部21と第二磁性部22との距離を近づけるのに合わせて、第一領域31と第二領域32との距離をより近づける必要もある。第一領域31と第二領域32とを別個の磁性体とする場合には、第一領域31と第二領域32との距離が近いと、第一領域31と第二領域32との距離を適切に調整しながらミラー装置1を組み立てることは難しい。しかしながら、本変形例では、第一領域31と第二領域32とがキャップ構造体30の有する領域として配置されているため、ミラー装置1の組み立て時における第一領域31と第二領域32との距離が精度よく調整しやすくなっている。