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発明の名称
モノ ク ローナル抗体含有凍結乾燥製剤 産業上の利用分野
本発明は、 モノ ク ローナル抗体を主成分とする凍結乾燥製 剤に関する。
従来の技術
モノク ローナル抗体は、 特定のェピ トープのみに反応性を 有する均一なグロブリ ンタ ンパク貿である。 近年、 細胞融合、 培養、 及びタ ンパク質精製技術等の進歩によ り、 モノ ク ロ一 ナル抗体の大量調製が可能とな り、 例えば、 各種分析、 診断、 治療、 予防等、 広い分野で利用されるよう になった。 中でも、 治療あるいは予防薬と して、 モノ ク ローナル抗体への期待が 髙まっている。 と りわけ、 ヒ 卜に対する適用は、 今後更に進 展することが予想され、 抗原性の点で好ま しいヒ ト由来のモ ノ ク 口一ナル抗体の開発が進められている。
従来当該分野においては、 同様な目的のために免疫グロブ リ ンなどのポリ ク ローナルな抗体が診断治療に使用されてき た。 モノ ク ローナル抗体が特定のェピ トープのみに反応性を 有する均一なものであるのに対し、 ポリ ク ローナルな抗体は その名の通り複数の抗体の混合物である。 そのためポリ ク 口 一ナルな抗体は性質の異なる分子が相互に安定化し合い、 全 体と して比較的安定な状態となっている。 しかし、 精製され たモノ ク ローナル抗体は異なる分子同志の相互作用による安 定化が期待できず、 そのグロブリ ンタイプによ らず、 種々の
物理的、 化学的作用に対して不安定である。
モノク ローナル抗体やポリ ク ローナルな抗体などのグロブ リ ン蛋白は、 特に診断及び治療を 目的と した場合、 混入する ウィルスの不活化のために加熱処理が施されることがある。 また、 該グロブリン蛋白は溶液状態では長期保存には向かな い。 そのため凍結乾燥が該グロブリ ン蛋白分子を安定保存す るための製剤形態と して汎用されている。 更に、 必要によ り 該グロブリ ン蛋白は酸 · アルカ リ処理なども行われる。
これらの加熱、 凍結乾燥、 酸 · アルカ リ処理に対して、 ポ リ ク ローナルな抗体は一般に安定であるのに対し、 モノ ク ロ ーナル抗体はそれらの処理等によ リ変性し、 その活性を失い 易い。 と リわけ IgMは他のグロブリンタイプのモノク ローナ ル抗体 (例えば IgG、 IgA , IgE ) に比べてよ り不安定である。 加熱処理については例えば特開昭 61- 76423にはモノク ローナ ル抗体が加熱処理に対して不安定であ り、 この熱的不安定性 を克服するためにモノク ローナル抗体製剤中に卵アルブミ ン 加水分解物を添加する事を開示している。
一方、 凍結乾燥処理においてはモノ ク 口.ーナル抗体に特有 な問題点がある。 即ちモノク ローナル抗体を凍結乾燥するに 際して、 モノ ク ローナル抗体溶液を安定化剤を添加せずに凍 結乾燥した場合、 その処理中に生じる変性によ り抗原結合活 性が低下する という問題が生じ、 これを防止することが必要 である。 このような問題.点はモノク ローナル抗体において顕 著であ リ、 ポリ ク ローナルな抗体の場合は上記の理由からも ともと安定であ り、 大きな問題とはならない。
モノ ク ローナル抗体の凍結乾燥物の調製には、 凍結乾燥前 の溶液に異種タ ンパゥ質であるアルブミ ンを添加した り (例 えば特開昭 60- 146833、 特開昭 61 - 78730、 特開昭 61- 78731、 W0 90/11091)、 糖質であるマル トースを添加する こと (例え ば W0 89/11297)が既に公知である。
ポリ ク ロ一ナルな抗体である免疫グロブリ ンは、 比較的低 濃度で用いられることが多く 、 溶液保存あるいはそれに続く 凍結乾燥処理時に凝集体が生成することがある。 この凝集体 は該グロブリ ンを静注した場合にアナフィ ラキシ一様の重篤 な副作用の原因と考えられている。 そこで凝集体の形成を抑 えるために保存溶液に異種タ ンパク質を加えるこ と が知られ ている。 例えば, 異種タ ンパク質であるゼラチンを単独で免 疫グロ ブリ ン溶液に添加した り (例えば特開昭 58- 167518、 Vox. Sang. (1983)51.81-86)、 あるいは糖質であるシユーク ロースとゼラチンを併用 して添加すると、 保存中の凝集体形 成が防止され、 更に抗菌、 抗ウィルス作用が保持される こ と が知られている(SU 700132)。 これらに開示さ ている こ と はいずれもポリ ク 口一ナルな抗体である免疫グロブリ ンを髙 濃度溶液と した場合の凝集体形成の防止を 目的と している。 そ してこれらの何れにも凍結乾燥処理による抗原結合活性の 低下に関しては論じ られていない。 これに対して、 モノ ク ロ ーナル抗体は比較的低濃度で保存ない し凍結乾燥される。 そ してそのような低濃度であっても凍結乾燥処理時に生じる変 性とそれに伴う抗原結合活性の低下が問題となる。 そ してこ の問題の解決に免疫グロブリ ンにおける凝集体形成の防止の
ためのゼラチン添加が有用であるか否かについては従来知ら れていなかった。
他方、 カルボン酸及びその塩が、 多く のタ ンパク質溶液の PH維持のための緩衝液の成分と して使用されることは広く知 られている。 例えば W0 89/11298では、 モノ ク ローナル抗体 保存溶液に沈雜する凝集体形成の防止のため、 安定化剤と し てマルト一ス、 食塩、 リ ン酸ナ ト リ ウムを添加することが開 示されているが、 その際緩衝液成分と してリ ン酸ナ ト リ ウム の他にクェン酸ナ ト リ ウムも使用することが例示されている < しかし、 これはモノク ローナル抗体溶液の保存中に生じる凝 集体形成を防止するこ と について示されるもので、 モ ノ ク ロ ーナル抗体の凍結乾燥処理さ らには該処理時のモノ ク ローナ ル抗体の変性とそれに伴う抗原結合活性の低下の防止につい ては何も開示していない。 また、 W0 89/11297では、 凍結乾 燥前のモノ ク ローナル IgG抗体溶液にマルトースを安定化剤 と して添加し、 更に酢酸ナ ト リ ウムを緩衝液の成分と して 5 〜10ミ リモルの饞度に添加して、 該溶液の PHを 3〜 6の酸性 領域に維持することが開示されている。 この場合、 酢酸ナ ト リ ゥムの使用は明らかに緩衝液の成分と してのものであ り、 ¾10 89/11297 にはカルボン酸及びその塩が PH緩衝作用を示す 範囲を越えた PHにおいても凍結乾燥処理時の抗体の変性を防 止するための安定化剤と して作用するこ と については何ら示 されていない。 また、 該抗体溶液の PHについては注射剤と し て低い PHの抗体溶液を静注した場合、 投与部位に傷みを生ず る場合がある。 該抗体溶液を注射剤と して用いる場合、 中性
付近の PH範囲が望ま しいが、 この PH範囲での利用についても W0 89/11297には示されていない。
また、 免疫グロブリ ンを血清や血漿から調製する際に混入 する恐れのあるウィルスの不活化を 目的と して、 免疫グロブ リ ンを溶液状態で加熱処理するこ とがある。 例えば特開昭 62 -292731、 特開昭 61 - 194035、 特開昭 61-191622あるいは特開 昭 57 - 140724では、 カルボン酸を該グロブリ ン溶液に添加す ることが示されている。 また、 特開昭 61-78730及び特開昭 61 -78731では、 免疫グロブリ ンを乾燥状態で加熱処理する際に 酢酸ナ ト リ ウムを添加することが示されている。 しかし、 こ れらはいずれも加熱処理の際の安定化を 目的と してカルボン 酸を添加しているに過ぎない。 即ち凍結乾燥処理時の抗体の 変性とそれに伴う抗原結合活性を防止するためにカルボン酸 及びその塩が有用であるか否かについてはこれまで知られて いなかった。
発明が解決しょ う とする髁題
本発明の目的は、 モノ ク ローナル抗体の凍結乾燥処理時に 生じる変性と、 それに伴う抗原結合活性の低下を防止した、 安定なモ ノ ク ローナル抗体凍結乾燥製剤を提供する こ と にあ る。
課題を解決するための丰段
本発明者らは、 上記髁題を解決するために鋭意検討を行つ た結果, モノ ク ローナル抗体の凍結乾燥処理においてモノ ク ローナル抗体の安定化のためにゼラチン、 カルボン酸も し く はその塩が有効であることを見いだした。 すなわち、 凍結乾
燥前のモノク ローナル抗体を含む溶液がゼラチンを含有する ことによ り、 凍結乾燥処理時に生じるモノク ローナル抗体の 変性と、 それに伴う抗原結合活性の低下を防止出来ること。 また凍結乾燥前のモノ ク ローナル抗体を含む溶液がカルボン 酸も しく はその塩を含有するこ とによ り、 広い範西の PH領域 で、 しかも緩衝作用を示す範囲外の P Hにおいても凍結乾燥処 理時に生じるモノク ローナル抗体の変性と、 それに伴う抗原 結合活性の活性の低下を防止出来、 これによ りモ ノ ク ローナ ル抗体の安定かつ安全性の髙ぃ製剤組成物の作製が可能であ ることを見いだし、 本発明を完成するに至った。
即ち、 本発明はモノ ク ローナル抗体及びゼラチンを含有す るこ と を特徵とする凍結乾燥製剤及びモノク ローナル抗体及 びカルボン酸も し くはその塩を含有する Ρ Η 6 · 1〜 8 . 1である溶 液を凍結乾燥して諝製した製剤を提供するものである。
以下、 本発明を具体的に説明する。
本発明に使用きれるモノ ク ローナル抗体と しては、 ヒ ト、 マウス、 ラッ 卜等から通常得られるモノク ローナル抗体であ リ、 その由来や生産手段を問わない。 例えば従来報告されて いる細胞融合法や形質転換法等の方法によ り作製した抗体産 生細胞や、 ク ローニングした抗体遗伝子を組み込んだ細胞を 培養して得た培養液、 あるいはこのよ うな抗体産生細胞を移 植したマウスの腹水等から、 本発明に使用されるモノ ク ロ一 ナル抗体を得ることができる。 これらの細胞培養液あるいは マウスの腹水等から得られるモノ ク ローナル抗体の精製方法 と しては、 疏酸アンモニゥム塩析、 イオン交換ク ロマ ト ダラ
フィ 一、 ゲル滤過、 アブイ 二ティ ク ロマ ト グラ フィ ー、 超遠 心分離、 吸着ク ロマ ト グラ フィ ー, 疎水性ク ロマ 卜 グラ フィ —等の方法が使用できる。 本発明に使用されるモ ノ ク ローナ ル抗体のグロブリ ンタ イ プは、 lgG、 I gM、 Ig A及び I g Eである こ と が多いが、 そのタ イ プは問わず、 いずれのグロ プリ ンタ イ ブのものも使用できる。 その中でも特に I gMは、 他のグロ プリ ンタ イプの抗体に比べてよ リ不安定なため、 I g M型のモ ノ ク ローナル抗体において有効な安定化の方法は, 他のグロ ブリ ンタ イ プのモノ ク ローナル抗体にも容易に適用される。 また、 本発明において、 モノ ク ローナル抗体は単独で用いて もよい し、 複数のモ ノ ク ローナル抗体を混合して用いても差 し支えない。
ゼラチンは、 その調製方法によ リ等電点の異なる二つのタ イブ (中性タ イ プと酸性タ イプ) が得られるが、 本発明に用 いるのはそのいずれでも良く 、 更にォキシポリ ゼラチン、 変 性液状ゼラチン等の化学的修飾を受けたゼラチンも使用可能 である。
カルボン酸と しては、 クェン酸、 齚酸、 .シユ ウ酸、 コハク 酸、 フマル酸等が使用でき るが、 クェン酸が好ま しい。 また、 カルボン酸の塩と しては、 クェン酸ナ ト リ ウム、 クェン酸力 リ ウム、 酢酸ナ ト リ ウム、 酢酸カ リ ウム、 シユ ウ酸ナ ト リ ウ ム、 シユ ウ酸カ リ ウム、 コハク酸ナ ト リ ウム、 コハク酸カ リ ゥム、 フマル酸ナ ト リ ウム, フマル酸カ リ ウム等が使用でき るが、 クェン酸ナ ト リ ウムが好ま しい。
また、 モノ ク ローナル抗体の安定化、 または溶液の PH調整、
等張化及び緩衝作用を 目的と して、 ゼラチン、 カルボン酸あ るいはその塩に加え、 更に無機塩、 単糖類、 二糖類、 糖アル コールも し く はア ミ ノ酸を添加する こ とも'可能である。
無機塩は、 塩化ナ ト リ ウム、 塩化カ リ ウム、 塩化マグネシ ゥム等が使用できるが、 塩化ナ ト リ ウムが好ま しい。
単糖類は、 グルコース、 マンノース、 ガラク トース、 フル ク トース等が使用できるが、 グルコースあるいはマンノース が好ま しい。
二糖類は、 マル トース、 シユーク ロース、 ラ ク トース等が 使用できるが、 マルトースあるいはシユーク ロースが好ま し い
糖アルコールは, ソルビ トール、 マンニ トール等が使用で きるが、 マンニ トールが好ま しい。
アミ ノ酸は、 グリ シン、 ァラニン、 ノ リ ン、 ロイシン、 ィ ソ ロ イ シン、 チロ シン、 フ エ ニノレア ラニ ン、 セ リ ン、 ス レオ ニン、 グルタ ミ ン、 グルタ ミ ン酸、 ァスパラギン、 ァスパラ ギン酸、 アルギニン、 リ ジン、 ヒ スチジン、 プロ リ ン、 ト リ ブ ト フ ァ ン、 メチォニン、 システィ ン等が使用できるが、 グ リ シンあるいはアルギニンが好ま しい。
本発明の凍結乾燥製剤を作製する には、 ゼラチン、 カルボ ン酸も し く はその塩を含有するモ ノ ク ローナル抗体溶液を凍 結乾燥すれば良い。 好ま し く は、 ゼラチン、 カルボン酸も し く はその塩を含有し、 P Hの調整された緩衝液にモ ノ ク ローナ ル抗体溶液を添加する こ と、 あるいはモノ ク ローナル抗体溶 液にゼラチン、 カルボン酸も し く はその塩を添加する こ と等
によ り行う こ と ができる。 本発明で用い られるモ ノ ク ローナ ル抗体の溶液中での濃度は、 0.01mg/mfiから 50mgZinfiであ リ 、 好ま し く は、 O.lmgZmfl力、ら 10mg rafiである。 ゼラチンの添 加量は、 モ ノ ク ローナル抗体 1重量部に対し 100分の 1 重量 部から 100重量部であ リ、 好ま し く はモノ ク ローナル抗体 1 重量部に対し 10分の 1重量部から 10重量部である。 添加され るカルボン酸も し く はその塩の濃度は 2 mMから 500mMであ リ 、 好ま し く は 10mMから 200mMである。
モノ ク ローナル抗体を溶解する溶液の pHは、 ゼラチン を添 加す る場合は PH4.0~8.1であ り 、 カルボン酸を添加する場 合、 及びゼラ チ ン と カルボン酸の両方を添加する場合は PH 6·1〜8·1であ り、 好ま し く は ρΗ6·5〜7.8である。 ΡΗの調整は、 通常用い られる有機酸や無機酸、 無機塩等の化合物を皐独或 は組み合わせて使用する こ と が出来る。 PH調整に使用でき る 化合物と しては例えば、 クェン酸、 クェン酸ナ ト リ ウム、 ク ェン酸カ リ ウム, リ ン酸、 リ ン酸ナ ト リ ウム、 リ ン酸力 リ ウ ム、 塩酸、 卜 リ スヒ ド ロ キシメチルァ ミ ノ メ タ ン、 酢酸、 酢 酸ナ ト リ ウム、 酢酸カ リ ウム、 水酸化ナ ト リ ウム、 ホウ酸、 ホウ酸ナ ト リ ウム、 ホウ酸カ リ ウム等が例示できる。 モ ノ ク ローナル抗体を溶解する緩衝液の濃度は 5 mMから 500ιηΜであ り 、 好ま し く は 10mMから 500mMである。 このよ う に、 カノレボ ン酸も し く はその塩は PH調整に際しても使用され得るが、 上 記の量はこれらも含む全量を意味する。
この様に して調製されたモ ノ ク ローナル抗体溶液は、 この まま凍結 し凍結乾燥しても十分安定であるが、 溶液の等張化
やモノ ク ローナル抗体の容器付着性等を防止する目的で、 ッ ィーン 20やツイーン 80等の界面活性剤、 ヒ トゃ牛等のアルブ ミ ン、 あるいは EDTA等のキレー ト剤等'を添加するこ とも可能 である。
モノク ローナル抗体溶液の凍結乾燥は、 通常知られる方法 で行う ことができ、 その乾燥温度、 真空度は逋宜選択できる < 実施例
以下、 実施例を示して本発明を説明するが、 本発明はこれ に限定されるものではない。 また、 本発明ではモノク ローナ ル抗体と して IgMを例示しているが、 IgMは上述したごと く他 のグロブリンタイプの抗体 (例えば IgG、 IgA及び IgE)に比べ て不安定であ り、 IgMで示される安定化効果は、 他のグロブ リンタイプの抗体に容易に適用できるものである。
実施例 1
E血清型緑膿菌に反応性を有するェプスタ イ ン · バー ' ゥ ィルス (EBウィルス) 形質転換細胞株 MP-5038 (微ェ研条寄第 1596号)を培養し、 その培養上清から硫酸アン ΐニゥム塩析、 セフ ア ク リル S- 300 (フ アルマシア社)を用いたゲル ¾1過、 ヒ ドロキシァパタ イ ト HPLC力ラム(三井東圧化学)及びブルーセ ファ ロース(フ アルマシア社)を用いたカラムク ロマ トグラ フ ィ一によ リ、 ヒ ト ' モノク ローナル抗体を精製した。 この方 法で得られたモ ノ ク ローナル抗体は、 SDS-電気泳動及びゲ ル滤過カラムを用いた HPLCによる分析で、 99 %以上の純度を 有していた。 このモノ ク ローナル抗体を終濃度と して O . lmg / Ββとなる様に ΡΗ7.4 に調整されたリ ン酸緩衝化生理食塩液
(以下 PBSと称する)に溶解した。 一方、 ゼラチン (二ツ ビ社、 ハイ グレー ドゼラチン、 タ イプ A (中性ゼラチン)及びタ イプ B (酸性ゼラチン))を終濃度と して 0.001から 1 % となる様に 加え、 2 πιβ容量のポリ プロ ピレン製クライオチューブ (コー ニング社)に 0.5mfiずつ無菌的に分注し、 一 80 ^にて凍結させ た。 これを真空滅圧下凍結乾燥した。 乾燥後、 凍結前と等量 の注射用蒸留水を凍結乾燥物に加えて溶解後、 以下の方法に よ りモノク ローナル抗体の抗原結合活性を測定した。
(抗原結合活性測定法)
抗緑膿菌抗体の抗原結合活性の測定は、 以下のよ う に して 実施した。 E血清型緑膜菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 27581)ホルマ リ ン死菌体よ り 田辺 ら(免疫実験操作法 C、 (1978) 1793-1801)の方法によ り調製したリポ多糖(LPS)を PBS に 1 mg/mfi濃度となる様に溶解し、 これを 0.1Mリ ン酸緩衝液 (PH7.0)で 500倍に希釈した後、 96穴 EIAプレー ト(グライナ一 社、 イ ミ ュロ ン- 600)の各ゥエルに 50 1ずつ分注した。 4 °C に一晩放置して固定化した後、 0.05 % Tween20を含む PBS (以 下洗浄液と略す)を洗浄し、 0.5 %牛血清アルブ ミ ン を含む PBS (以下ブロ ッ ク液と略す) で各ゥエル当 り 200 1ずつ分注 し、 室温で 1時間振と う して非特異的タ ンパク質結合部位を 飽和させた。 ブロ ック液を除去した後、 適当な濂度から頫次 倍々希釈した被検体溶液を ゥエル当 り 100 μ ΐずつ入れ、 室温 で 2時間振と う した。 洗浄液で 4 回洗浄した後、 ブロ ッ ク液 で 1000倍に希釈したパーォキシダーゼ標識ャギ抗ヒ ト IgM抗 体(タ ゴ社)をゥエル当 リ 100 1ずつ分注し、 室温で 2時間振
と う した。 洗浄液で 4 回洗浄した後、 0.1Mクェン酸緩衝液 (PH4.0)で 1 回洗浄し、 l ng/mfl 2, 2, -アジノ ビス(3-ェチル ンズチアゾリ ン- 6-スルフォニ ッ タ ァシ ド) 及び 0.003%過 酸化水素水を同緩衝液に含む基質溶液をゥエル当 り 50 # 1ず つ分注し、 室温で振とう した。 30分後、 2 %コハク酸をゥェ ル当 り 50 iずつ加えて酵素反応を停止させた後, 414nmにお ける吸光度を 96六プレー ト リーダー(日本インターメ ッ ド社) にて測定した。 希釈倍率の逆数と吸光度の間で雨対数プロ ッ 卜を行い、 吸光度 0.1を示すときの希釈倍率を求め、 これを 抗原結合活性と した。
凍結前の抗原結合活性を 10と した相対活性で、 結果を表 1 に示した。 ゼラチンを添加せずにモノク ローナル抗体を凍結 乾燥した場合、 抗原結合活性は大き く滅少した。 これに対し て、 ゼラチンを添加した場合、 凍結乾燥後においても抗原結 合性が良く 回収され、 その効果は添加したゼラチンの濃度に 依存した。
〔表 1 〕
実施例 1 に用いたモノ ク ローナル抗体を終濃度と して 0.1 mg/mJliとなる様に各 pHの緩衝液に溶解した。 一方, 中性ゼラ チンを終濃度と して 0.01%となる様に加え、 ポリ プロ ピレン 製クライオチューブに 0.5mfiずつ無菌的に分注し、 一 80 に て凍結させ、 真空滅圧下凍結乾燥した。 凍結前と等容量の注 射用蒸留水を凍結乾燥物に加えて溶解後、 .抗原結合活性を測 定した。
凍結前の活性を 10と した相対活性で、 結果を表 2 に示した いずれの P Hにおいても抗原結合活性は良く 回収された。
〔表 2〕
実施例 3
クェン酸ナト リ ウムを含まないかあるいは 2 または lOmM含 有し、 PH 7 に調整された 20mMリ ン酸緩衝液に、 実施例 1で用 いたモノ ク ローナル抗体を終濃度と して O.liag ιιβとなる よう に溶解した。 この際、 溶液の塩濃度を塩化ナ ト リ ウムで 150mMに調整した。 このモノク ローナル抗体溶液を、 ポリプ ロ ピレン製クライオチューブに 0·5ιηβずつ無菌的に分注し、 一 80°Cにて凍結し、 真空減圧下凍結乾燥した。 凍結前と等量 の注射用蒸留水を凍結乾燥物に加えて溶解後、 抗原結合活性 を測定した。
凍結前の活性を 10と した相対活性で、 結果を表 3 に示した, クェン酸ナ ト リ ゥムを含有せずにモノ ク ローナル抗体を凍結 乾续した場合、 抗原結合活性は大き く滅少した。 これに対し て、 クェン酸ナ ト リ ウムを含有した場合、 凍結乾燥後におい ても抗原結合活性が良く 回収され、 その効果は含まれるクェ ン酸ナ 卜 リ ゥムの濃度に依存した。
〔表 3〕
実施例 4
クェン酸ナ ト リ ウムを ΙΟηΜから 200mMの擴度に含有し、 pH 6·1〜8·1に調整された 50mMリ ン酸緩衝液に、 実施例 1 で用い たモノク ローナル抗体を、 終濃度と して O.lmg/ιηβとなるよ う に溶解した。 この際、 溶液の塩濃度が 150mMに満たない場 合、 塩化ナ ト リ ウムを添加して 150mMと した。 このモノク ロ ーナル抗体溶液を、 ポリ プロ ピレン製ク ライオチューブに 0.5mfiずつ無菌的に分注し、 一 80 にて凍結し、 真空減圧下 凍結乾燥した。 凍結前と等量の注射用蒸留水を凍結乾燥物を 加えて溶解後、 抗原結合活性を測定した。
凍結前の活性を 10と した相対活性で、 結果を表 4 に示した , ΡΗ6·1〜8·1でクェン酸ナ 卜 リ ゥムを含有することによ リ、 凍 結乾燥後も抗原結合活性が良く 回収された。
〔表 4〕 抗 原 結 合 活 性
溶液の PH クェン酸ナ ト リ ウム濃度(mM)
10 50 100 200
6.1 10 10 10 10
7.0 9 10 10 10
8.1 Θ 10 10 一
実施例 5
実施例 1 で使用 したモ ノ ク ローナル抗体を終濃度と して 0.1mg/m£となる様に PBSに溶解した。 一方、 中性ゼラチンを 終濃度と して 0.003 %となる様に加え、 更にグルコース、 シ ユーク ロース、 マンニ トール、 グリシン、 あるいはアルギニ ンをそれぞれ終濃度と して 0.001から 0.1 %なる様に加え、 ポ リプロ ピレン製クライオチューブに 0.5ιηβずつ無菌的に分注 し、 一 にて凍結させた。 これを真空滅圧下凍結乾燥した , 凍結前と等容量の注射用蒸留水を凍結乾燥物に加えて溶解後, 抗原結合活性を測定した。
凍結乾燥前の活性を 10と した相対活性で, 結果を表 5 に示 した。 いずれの低分子物質においても抗体活性が良く 回収さ れ、 その効果は添加した低分子化合物の濃度に依存した。
〔表 5〕
ゼラチン 低分子物質 抗 原 結 合活性
濃度 (%) 濃度 (%) グルコ シユーク マンニ グリシン アルギ
ース ロース f ^一ル ニン
0.003 0.001 7 7 7 8 7
0.003 0.003 8 8 7 8 8
0.003 0.01 8 6 8 10 8
0.003 0.03 8 8 8 10 8
0.003 0.1 8 10 8 10 8
0.003 0 8 6 6 6 6
実施例 6
実施例 1で用いたモ ノ ク ローナル抗体を終濃度と して 0.1 nigZmfiとなる様に PBSに溶解した。 一方、 中性ゼラチンを終 濃度と して 0· 003 %となる様に加え、 更にマンニ トールを終 濃度と して 0.5あるいは 1 %となる様に加えた。 ポリ プロ ピ レン製クライオチューブに 0.5mfiずつ無菌的に分注し、 一 80 にて凍結させた。 これを真空滅圧下凍結乾燥した。 凍結前 と等容量の注射用蒸留水を凍結乾燥物に加えて溶解後、 抗原 結合活性を測定した。
凍結乾燥前の活性を 10と した相対活性で、 結果を表 6 に示 したが、 いずれのマンニ トール濃度においても抗原結合活性 が良く 回収された。
実施例 1で使用 したモ ノ ク ローナル抗体を、 1 eZmAの機 度となるよう に、 中性ゼラチン(0·01%)、 クェン酸ナ ト リ ウ ム(0.02Μ), マンニ トール(0.5%)及び塩化ナ ト リ ゥム(0.05Μ) を含む 0.1Mリ ン酸緩衝液(ΡΗ7.0) に溶解した。 このモ ノ ク ロ ーナル抗体溶液を、 lOmfi容量のガラス製バイアル (岩城ガラ ス社) に 丄 ιηβずつ無菌的に分注し、 一 80 にて凍結し、 真空 滅圧下凍結乾燥した。 凍結前と等容量の注射用蒸留水を凍結 乾燥物に加えて溶解後、 抗原結合活性を測定した。 その結果、
モノ ク ローナル抗体は、 凍結前の抗原結合活性を保持してい た。
実施例 8
実施例 1で用いたモノ ク ローナル抗体を、 l«gZ雇 ϋの濃度 となるように、 クェン酸ナ ト リ ウム (0.02Μ), 塩化ナ ト リ ウ ム(0.05Μ)、 マンニ トール(0.5%)を含む 0.1Mリ ン酸緩銜液 (ΡΗ7.0)に溶解した。 このモノク ローナル抗体溶液をガラス 製バイアルに分注し、 一 80 にて凍結後、 真空滅圧下凍結乾 燥した。 凍結前の等容量の注射用蒸留水を凍結乾燥物に加え て溶解後、 実施例 1 に従って抗原結合活性を測定した。 その 結果、 モノ ク ローナル抗体は、 凍結前の抗原結合活性を保持 していた。
実旌例 9
細胞融合法によ り作製し、 Α血清型緑瞜菌に対して反応性 を有するヒ ト Igfi を産生するヒ ト · ヒ トーハイブリ ドーマ MP 5121 (微ェ研条寄 2270号)を培養し、 その培養上清から実施例 丄 に従って、 モノク ローナル抗体を精製した。 このモノ ク ロ —ナル抗体を l mg/ Bfiの濃度となるよう に、 クェン酸ナ ト リ ゥム(0·02Μ)、 塩化ナ ト リ ウム(0·05Μ)、 マンニ トール(0·5%) を含む 0.1Mリン酸緩衝液(ΡΗ7.0)に溶解した。 このモ ノ ク ロ ーナル抗体溶液をガラス製バイアルに分注し、 一 80TCにて凍 結後、 真空滅圧下凍結乾燥した。 凍結前と等量の注射用蒸留 水を凍結乾燥物に加えて溶解後、 実施例 1 に従って抗原結合 活性を測定した。 なお、 抗原の LPSは、 A血清型緑臢菌(ATCC 27577)から抽出した。 その結果、 モノク ローナル抗体は、 凍
結前の抗原結合活性を保持していた。
実施例 10
細胞融合法によ り作製したヒ 卜 IgM 産生ヒ 卜 · ヒ トーハイ ブリ ドーマ MP 5097, MP 5139、 MP 5114及び MP 5156 (それぞ れ微ェ研条寄 2268号、 2272号、 2269号及び 2339号) の培養上 清からモノク ローナル抗体を精製した。 これらモノ ク ローナ ル抗体は緑膿菌との反応性を有し、 それぞれ、 B 、 E 、 G及 び I血清型菌に反応性を持っていた。 これら 4種のモノ ク ロ ーナル抗体と実施例 9で示したモノク ローナル抗体の合わせ て 5種類を、 それぞれ終濃度と して 5 mgZmJaの濃度となるよ う に、 クェン酸ナ ト リ ウム(0.02M)、 塩化ナ ト リ ウム(0.05M)、 マンニ トール(0·5 % )を含む 0· 1Mリ ン酸緩衝液(ΡΗ7·0)に溶 解した。 このモノク ローナル抗体溶液をガラス製バイアルに 分注し、 一 80 にて凍結後、 真空滅庄下凍結乾燥した。 凍結 前と等量の注射用蒸留水を加えて溶解後、 実施例 1 に従って 抗原結合活性を測定した。 なお、 それぞれの钪原は、 Α血清 型は ATCC 27577、 B血清型は ATCC 27578 , E血清型は ATCC 27581、 G血清型は ATCC 27584, 及び I血清型は ATCC 27586 から抽出した LPSを用いた。 その結果、 モ ノ ク ローナル抗体 は、 5種類の血清型緑膿菌 LPSそれぞれに対して、 凍結前の 抗原結合活性を保持していた。
発明の効果
本発明に示したゼラチンあるいはカルボン酸及びその塩の 添加にょ リ 、 凍結乾燥時の変性を抑え、 抗原結合活性を安 定に保持したモノ ク ローナル抗体凍結乾燥製剤の供給が可能
となった。 モノ ク ローナル抗体のグロブリ ンタイプは、 lgG、 IgH , IgA及び IgEのいずれの型にも適用可能であ り、 と りわ け安定性の乏しい IgMに対して十分適用できる。 モノ ク ロ一 ナル抗体は、 ヒ ト由来である場合もあ り、 マウスあるいはラ ッ 卜由来の場合でも本発明を適用できる。 また、 凍結乾燥製 剤中に含まれるモノクローナル抗体は一種の場合もあるが、 数種のモノ ク ローナル抗体を含む場合にも適用できる。
この発明のモノク ローナル抗体凍結乾燥製剤は、 免疫グロ ブリン製剤と同様に免疫補充療法剤と して、 細菌感染症、 ゥ ィルス感染症等に対する予防あるいは治療剤と して供耠可能 である。