JPWO2021182266A5 - - Google Patents

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本発明はフェライト系ステンレス鋼に関する。より具体的には、高温水蒸気雰囲気下において、耐赤スケール性および高温強度に優れるフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法に関する。
ステンレス鋼を、排ガス経路部材、ストーブ燃焼機材、燃料電池用部材、またはプラント関連材などの用途に用いる場合、通常300~900℃の高温まで加熱される。また上記の用途では、水蒸気が含まれる環境下で当該ステンレス鋼が用いられるため、赤スケール(Fe系酸化物)が生成することがある。
そのため、高温水蒸気雰囲気下において、耐赤スケール性および高温強度を有するフェライト系ステンレス鋼が所望される。従来、耐赤スケール性および高温強度を向上させるために様々な方法が知られている。
特許文献1および特許文献2には、Siを添加することにより、Crの拡散を促進させてCr系酸化物の生成量を向上させ、酸化被膜を強化することが記載されている。これにより、特許文献1および特許文献2に記載の発明は耐水蒸気酸化性および耐赤スケールを向上させている。
日本国公開特許公報「特開2003-160844号」 日本国公開特許公報「特開2003-160842号」
上述のような従来技術は、鋼中のCrおよびSiに着目し、鋼中のCrおよびSiの含有量を適正化するものである。本発明者らは、耐赤スケール性および高温強度の向上には、不動態被膜中のCrの酸化物および水酸化物、ならびにSiの酸化物の濃度が重要であることに着目した。しかしながら、従来技術において不動態被膜中のCr系酸化物およびSi系酸化物の濃度に関する知見は得られなかった。
本発明の一態様は、優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼を実現することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼は、0.025質量%以下のC、0.05質量%以上3.0質量%以下のSi、0.05質量%以上2.0質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.03質量%以下のS、0.5質量%以下のNi、10.5質量%以上25.0質量%以下のCr、0.025質量%以下のN、0.05質量%以上1.0質量%以下のNb、3.0質量%以下のMo、1.8質量%以下のCu、0.2質量%以下のAl、0.5質量%以下のTiを含有し、残部に鉄および不可避的不純物を含み、表面、および、表面から0.5nmごとに表面からの深さ6nmの位置までにおいてXPS分析によりスペクトルを測定し、
(i)各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物または水酸化物として存在するCrの総原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値をCr(O)とし、
(ii)各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物として存在するSiの原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値をSi(O)としたときに、
下記式(1)を満足することを特徴とする。
240≦Cr(O)+Si(O)≦261・・・(1)
本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、0.025質量%以下のC、0.05質量%以上3.0質量%以下のSi、0.05質量%以上2.0質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.03質量%以下のS、0.5質量%以下のNi、10.5質量%以上25.0質量%以下のCr、0.025質量%以下のN、0.05質量%以上1.0質量%以下のNb、3.0質量%以下のMo、1.8質量%以下のCu、0.2質量%以下のAl、0.5質量%以下のTiを含有し、残部に鉄および不可避的不純物を含むフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、冷間圧延後に酸洗液を用いた脱スケール処理が施された鋼帯を、80~120g/Lの硝酸液を用いて、液温度を50℃以上70℃以下で、60秒以上120秒以下の時間浸漬する、表面活性化処理工程を含むことを特徴とする。
本発明の一態様によれば、優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼を実現することができる。
本発明の実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼の製造方法の一例を示すフローチャートである。 各実施例について、60±10℃の硝酸液(80~120g/L)による処理時間と、Cr(O)+Si(O)との関係を示すグラフである。 各実施例について、60±10℃の硝酸液(80~120g/L)による処理時間と、酸化増量との関係を示すグラフである。 各実施例について、Cr(O)+Si(O)と、酸化増量との関係を示すグラフである。 本発明の実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼をXPSにより測定したスペクトルの一例であり、Cr 2pスペクトルの深さ方向の変化を示すグラフである。 本発明の実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼をXPSにより測定したスペクトルの一例であり、Cr 2pスペクトルを、金属Cr、Crの酸化物、およびCrの水酸化物にピーク分離した結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の記載は、発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本出願において、「A~B」は、A以上B以下であることを示している。
また、本明細書において、「ステンレス鋼」との用語は、具体的な形状が限定されないステンレス鋼材を意味する。このステンレス鋼材としては、例えば、鋼板、鋼管、条鋼、などが挙げられる。
<フェライト系ステンレス鋼の成分組成>
本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼が含有する成分の組成は、以下のとおりである。なお、当該フェライト系ステンレス鋼は、以下に示す各成分以外は、鉄(Fe)、または不可避的に混入する少量の不純物(不可避的不純物)からなる。
(クロム:Cr)
Crは、不動態被膜を形成し、耐食性を確保するために必須の元素である。また、耐赤スケール性を確保するためにも有効である。しかしながら、Crを過度に含有すると、材料コストが上昇するとともに、靭性低下の要因となる。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Crの含有量は、10.5~25質量%であり、好ましくは、12.5~23質量%である。
(ケイ素:Si)
Siは、耐赤スケール性の改善に有効な元素である。しかしながら、Siを過度に含有すると、靭性や加工性が低下する要因となる。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Siの含有量は、0.05~3.0質量%であり、好ましくは、0.1~2.6質量%である。
(銅:Cu)
Cuは、高温強度確保のために添加する元素である。しかしながら、Cuを過度に含有すると、フェライト相が不安定化するとともに、材料コストが上昇する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Cuの含有量は0~1.8質量%である。
(モリブデン:Mo)
Moは、高温強度確保のために添加する元素である。しかしながら、Moを過度に含有すると硬質化し、加工性が低下するとともに材料コストが上昇する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Moの含有量は、0~3.0質量%である。
(ニオブ:Nb)
Nbは、高温強度確保のために添加する元素である。しかしながら、Nbを過度に含有すると、加工性および靭性が劣化する可能性がある。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Nbの含有量は、0.05~1.0質量%であり、好ましくは、0.05~0.7質量%である。
(チタン:Ti)
Tiは、Cおよび/またはNと反応することにより、フェライト系ステンレス鋼を900~1000℃においてフェライト系単層にすることができ、耐赤スケール性および加工性を向上させる元素である。しかしながら、Tiを過度に含有すると、加工性および表面品質が劣化する可能性がある。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Tiの含有量は、0~0.5質量%である。
(マンガン:Mn)
Mnは、フェライト系ステンレス鋼において、スケールの密着性を向上させる元素である。しかしながら、Mnを過度に含有すると、フェライト相が不安定化するとともに腐食起点となるMnSの発生を促進する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Mnの含有量は、0.05~2.0質量%であり、好ましくは、010~1.20質量%である。
(炭素:C)
Cは、過度に含有すると、炭化物量が増加し、耐食性が低下する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Cの含有量は0~0.025質量%であり、好ましくは0~0.020質量%である。
(リン:P)
Pは、過度に含有すると、加工性が低下する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Pの含有量は0~0.04質量%である。
(硫黄:S)
Sは、過度に含有するとフェライト系ステンレス鋼において腐食起点の発生を促進する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Sの含有量は0~0.03質量%である。
(ニッケル:Ni)
Niは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。しかしながら、Niを過度に含有すると、フェライト相が不安定化するとともに、材料コストが上昇する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Niの含有量は0~0.5質量%である。
(窒素:N)
Nは、過度に含有すると他の元素と窒化物を形成して硬質化を招く。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Nの含有量は0~0.025質量%である。
(アルミニウム:Al)
Alは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素である。また、Alは製鋼時の脱酸剤として有効な元素である。しかしながら、Alを過度に含有すると、表面品質が劣化する可能性があるため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、Alの含有量は0~0.2質量%であり、好ましくは0~0.1質量%である。
<その他の成分>
本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、0~2.5質量%のW、0~0.1質量%のLa、0~0.05質量%のCe、0.01質量%以下のB、0.0002質量%以上0.0030質量%以下のCa、0.001質量%以上0.5質量%以下のHf、0.01質量%以上0.40質量%以下のZr、0.005質量%以上0.50質量%以下のSb、0.01質量%以上0.30質量%以下のCo、0.001質量%以上1.0質量%以下のTa、0.002質量%以上1.0質量%以下のSn、0.0002質量%以上0.30質量%以下のGa、0.001質量%以上0.20質量%以下の希土類元素および0.0003質量%以上0.0030質量%以下のMgのうち1種以上を含有していてもよい。
(タングステン:W)
Wは、高温強度確保のために添加する元素である。しかしながら、Wを過度に含有すると、材料コストが上昇する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0~2.5質量%のWを添加してもよい。コストを考慮すると、Wの含有量は、0.01~1.5質量%であることが好ましい。
(ランタン:La)
Laは、耐赤スケール性および耐スケール剥離性を向上するために添加する元素である。しかしながら、Laを過度に含有すると、材料コストが上昇する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0~0.1質量%のLaを添加してもよい。コストを考慮すると、Laの含有量は、0~0.05質量%であることが好ましい。
(セリウム:Ce)
Ceは、耐赤スケール性および耐スケール剥離性を向上するために添加する元素である。しかしながら、Ceを過度に含有すると、材料コストが上昇する。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0~0.05質量%のCeを添加してもよい。
(ホウ素:B)
Bは、フェライト系ステンレス鋼を使用して製造された成形品の二次加工性を向上させる元素である。しかしながら、Bを過度に含有すると、CrB等の化合物が形成されやすくなり、耐赤スケール性を劣化させる可能性がある。そのため、本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.01質量%以下のBを添加してもよく、好ましくは0.0002質量%以上0.003質量%以下のBを添加してもよい。
(カルシウム:Ca)
Caは、耐高温酸化性を促進する元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.0002質量%以上のCaを添加してもよい。しかしながら、過度な添加は耐食性の低下を招くため、添加量の上限は0.0030質量%であることが好ましい。
(ジルコニウム:Zr)
Zrは、高温強度、耐食性および耐高温酸化性を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.01質量%以上のZrを添加してもよい。しかしながら、過度な添加は加工性、製造性の低下を招くため、添加量の上限は0.40質量%であることが好ましい。
(ハフニウム:Hf)
Hfは、耐食性、高温強度および耐酸化性を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.001質量%以上のHfを添加してもよい。しかしながら、過度な添加は加工性および製造性の低下を招く可能性があるため、添加量の上限は0.5質量%であることが好ましい。
(スズ:Sn)
Snは、耐食性および高温強度を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.002質量%以上のSnを添加してもよい。しかしながら、過度の添加は靭性および製造性の低下を招く可能性があるため、添加量の上限は1.0質量%であることが好ましい。
(マグネシウム:Mg)
Mgは、脱酸元素であることに加え、スラブの組織を微細化させ、成型性を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.0003質量%以上のMgを添加してもよい。しかし、過度な添加は耐食性、溶接性、表面品質の低下を招くため、添加量の上限は0.0030質量%であることが好ましい。
(コバルト:Co)
Coは、高温強度を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.01質量%以上のCoを添加してもよい。しかしながら、過度に添加すると靭性が低下し、製造性の低下を招くため、添加量の上限は0.30質量%であることが好ましい。
(アンチモン:Sb)
Sbは、高温強度を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.005質量%以上のSbを添加してもよい。しかしながら、過度な添加は溶接性、靭性を低下させるため、添加量の上限は0.50質量%であることが好ましい。
(タンタル:Ta)
Taは、高温強度を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.001質量%以上のTaを添加してもよい。しかしながら、過度な添加は溶接性、靭性を低下させるため、添加量の上限は1.0質量%であることが好ましい。
(ガリウム:Ga)
Gaは、耐食性および耐水素脆化特性を向上させる元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.0002質量%以上のGaを添加してもよい。しかし、過度な添加は溶接性、靭性を低下させるため、添加量の上限は0.30質量%であることが好ましい。
(希土類元素:REM)
REMは、スカンジウム(Sc)と、イットリウム(Y)と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)との総称を指す。REMは、単独の元素として添加されてもよく、または複数の元素の混合物として添加されてもよい。REMは、ステンレス鋼の清浄度を向上させるとともに、耐高温酸化性も改善する元素である。本発明の一実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼では、必要に応じて0.001質量%以上のREMを添加してもよい。しかし、過度な添加は合金コストを上昇させ、製造性を低下させるため、添加量の上限は0.20質量%であることが好ましい。
<不動態被膜中のCr(O)およびSi(O)について>
本発明の一態様におけるフェライト系ステンレス鋼に含まれる各元素について、元素ごとの含有量の意義について説明した。本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼は、下記で定義する不動態被膜中のCr(O)およびSi(O)が、下記式(1)を満足することにより、優れた高温強度および耐赤スケール性を有している。より具体的には、Cr(O)およびSi(O)が、下記式(1)を満たすことにより、水蒸気が含まれる300~900℃の環境下で優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼が提供され得る。なお、不動態被膜中のSiの酸化物は、不動態被膜中に含まれるSiの酸化物および表面に存在するSiの酸化物(例えば一酸化ケイ素)を含む。
Cr(O)+Si(O)≧240・・・(1)
以下では、図5および図6を用いて、Cr(O)およびSi(O)について説明する。図5は、本発明の実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼をXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析装置により測定したスペクトルの一例であり、Cr 2pスペクトルの深さ方向の変化を示すグラフである。図6は、本発明の実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼をXPSにより測定したスペクトルの一例であり、Cr 2pスペクトルを、金属Cr、Crの酸化物、およびCrの水酸化物にピーク分離した結果を示すグラフである。
まず、表面、および、表面から0.5nmごとに表面からの深さ6nmの位置までにおいてXPS分析装置により、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSi(6種の金属)のそれぞれのナロースペクトルを測定する。図5では、例として、Crのナロースペクトルが示されている。図5に示されるように、CrのスペクトルはCr酸化物およびCr水酸化物のピークと、金属Crのピークとを有している。
次に、得られた上記6種の金属各々について、ナロースペクトルを、金属原子からなる単体、酸化物、および水酸化物のピークにピーク分離する。図6では、例として、Crのナロースペクトルをピーク分離した結果を示している。次に、各ピークの面積から、金属Cr(単体)、Crの酸化物およびCrの水酸化物として存在するCrの割合をそれぞれ算出する。同様に他の全ての金属原子についてそれぞれの単体、酸化物、および水酸化物として存在する原子の割合を算出する。
そして、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSi(6種の金属)の割合と、各元素における各物質状態の割合とを用いて、各測定深さにおける、単体、酸化物または水酸化物として存在する上記6種の金属原子の総原子数を100原子%としたときの各金属の物質状態(単体、酸化物、または水酸化物)ごとの原子%濃度を求めることができる。
ここで、Cr(O)は、Crの酸化物および水酸化物の原子%濃度の積算値である。つまり、表面、および、表面から0.5nmごとに表面からの深さ6nmの位置までにおいてXPS分析によりスペクトルを測定し、各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物または水酸化物として存在するCrの総原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値である。
Si(O)は、Siの酸化物の原子%濃度の積算値である。つまり、同様にスペクトルを測定し、各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物として存在するSiの原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値である。
本実施形態において、Crの酸化物(酸化物として存在するCr)は、酸化クロム(III)(Cr)、酸化クロム(IV)(CrO)、および酸化クロムVI(CrO)の1種または2種以上を含む。Crの水酸化物(水酸化物として存在するCr)は、水酸化クロム(II)(Cr(OH))および水酸化クロム(III)(Cr(OH))の1種または2種以上を含む。Siの酸化物(酸化物として存在するSi)とは、二酸化ケイ素(SiO2)および一酸化ケイ素(SiO)の1種または2種を含む。
なお、上述のXPS測定において用いたXPS装置および測定条件は下記のとおりである。
装置:アルバック・ファイ社製 Quantera SXM
X線源:mono-AlKα線(hv=1486.6eV)
検出深さ:数nm(取り出し角度45°)
X線径:200μmφ
中和銃:1.0V、20μA
スパッタ条件:Ar、加速電圧:1kV、ラスター:2×2mm
スパッタ速度:1.3nm/min(SiO換算値)
本発明者らは、不動態被膜中のCrおよびSiに着目し、不動態被膜中のCr(O)およびSi(O)の和が、上記式(1)を満たすことにより、優れた耐赤スケール性および高温強度を有するフェライト系ステンレス鋼を実現することができるという知見を得るに至った。
従来、耐赤スケール性を向上させるための手法として、仕上げ加工として表面研磨をすることで鋼中のCr拡散を促進し、Crの酸化物の生成を促す手法、または溶融めっき層を表層に形成する手法などが用いられている。
本発明者らは、例えば、以下の製造方法により、上記式(1)を満たす、優れた耐赤スケール性および高温強度を有するフェライト系ステンレス鋼を得ることができることを見出した。
<製造方法>
本発明の一実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼は、例えば、フェライト系ステンレス鋼帯として得られる。図1は、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態におけるフェライト系ステンレス鋼帯の製造方法は、前処理工程S1、熱間圧延工程S2、焼鈍工程S3、第1酸洗工程S4、冷間圧延工程S5、最終焼鈍工程S6、第2酸洗工程S7、および表面活性化処理工程S8を含む。
(前処理工程)
前処理工程S1では、まず、真空またはアルゴン雰囲気の溶解炉を用いて、本発明の範囲内となるように組成を調整した鋼を溶製し、この鋼を鋳造して、スラブを製造する。その後、該スラブから熱間圧延用のスラブ片を切り出す。そして、当該スラブ片を大気雰囲気中で1100℃~1300℃の温度域に加熱する。該スラブ片を加熱して保持する時間は、限定されない。なお、工業的に前処理工程を行う場合、前記鋳造は連続鋳造であってよい。
熱間圧延工程S2は、前処理工程S1において得られるスラブ(鋼塊)を熱間圧延することにより、所定の厚みの熱延鋼帯を製造する工程である。
焼鈍工程S3は、熱間圧延工程S2で得られた熱延鋼帯を加熱することによって、鋼帯の軟質化を図る工程である。この焼鈍工程S3は、必要に応じて実施される工程であり、実施されなくてもよい。
第1酸洗工程S4は、鋼帯表面に付着したスケールを、塩酸または硝酸とフッ化水素酸との混合液などの酸洗液を用いて洗い落とす工程である。
冷間圧延工程S5は、第1酸洗工程S4においてスケール除去された鋼帯を、さらに薄く圧延する工程である。
最終焼鈍工程S6は、冷間圧延工程S5において薄く圧延された鋼帯を加熱することによってひずみを除去し、鋼帯の軟質化を図る工程である。最終焼鈍工程S6における焼鈍は、例えば、合金成分に応じて900~1100℃程度の温度で行われる。
第2酸洗工程S7は、最終焼鈍工程S6で得られた鋼帯の表面に付着したスケールを、硝酸液または硝酸とフッ化水素酸との混合液などの酸洗液を用いて洗い落とす工程である。第2酸洗工程S7は、鋼帯表面のスケールを除去し得る処理であれば特に限定されない。例えば、第2酸洗工程S7として、50~70℃の硝酸液(硝酸濃度150g/L)に浸漬させた状態で、0.2~0.3A/cmの条件で1~2分間電解する電解処理を実施してもよい。あるいは、第2酸洗工程S7として、50~70℃の、硝酸液(硝酸濃度100g/L)とフッ化水素酸(15~25g/L)との混合液中に1~2分浸漬する処理を実施してもよい。
表面活性化処理工程S8は、第2酸洗工程S7後の鋼帯を、80~120g/Lの硝酸液を用いて、液温度を50℃以上70℃以下で、60秒以上120秒以下の時間浸漬することにより、不動態被膜中のCrおよびSiを濃化させる工程である。本明細書において、上記の条件で行う処理を、表面活性化処理と呼ぶ。当該表面活性化処理を行うことにより、上記式(1)を満足するフェライト系ステンレス鋼帯を得ることができる。なお、この表面活性化処理工程S8は、第2酸洗工程S7と同じかまたは同様の装置を用いて実施することができる。
なお、本願発明のフェライト系ステンレス鋼は、不動態被膜中のCr(O)およびSi(O)が上記式(1)を満足することにより、優れた高温強度および耐赤スケール性を有している。本発明者らは、上記式(1)を満足するフェライト系ステンレス鋼は、上述の第2酸洗工程S7と、表面活性化処理工程S8とを両方実施することによって得ることができることを見出した。例えば、第2酸洗工程S7または表面活性化処理工程S8のいずれかの工程を省略した場合には、上記式(1)を満たすフェライト系ステンレス鋼を得ることができない。すなわち、第2酸洗工程S7においてスケールを除去した鋼帯に対し、上記表面活性化処理を施すことによって、不動態被膜中のCrおよびSiが濃化され、上記式(1)を満たす本願発明のフェライト系ステンレス鋼を得ることができる。
当該表面活性化処理工程に用いる条件について、硝酸液の濃度が80g/L未満である場合、硝酸による表面活性化効果が弱くなり、赤スケールの生成を抑制できない。また、硝酸液の濃度が120g/Lを超えると、硝酸との過剰反応により表面活性化効果がピークアウトし、赤スケールの生成を抑制できない。液温度が50℃未満である場合、硝酸による表面活性化効果が弱くなり、赤スケールの生成を抑制できない。また、液温度が70℃を超えると、硝酸との過剰反応により表面活性化効果がピークアウトし赤スケールの生成を抑制できない。さらに、浸漬時間が60秒未満である場合、硝酸による表面活性化効果が不十分となり、赤スケールの生成を抑制できない。また、120秒を超えると、硝酸との過剰反応により表面活性化効果がピークアウトし、赤スケールの生成を抑制できない。
上述したように、従来技術として、高温強度および耐赤スケール性を向上させるための仕上げ工程として、研磨仕上げまたはめっき層の形成などの工程が追加されている。しかしながら、このような仕上げ工程は、当該仕上げ工程のために新たな装置を導入する必要があり、製造コストが高くなるという問題がある。このような観点から、製造コストを上げずに、耐赤スケール性および高温強度に優れたフェライト系ステンレス鋼を製造する製造方法を提供することも本発明の課題の1つである。
本発明の一態様に係る製造方法は、脱スケール処理(第2酸洗工程)後に、80~120g/Lの硝酸液を用いて、液温度を50℃以上70℃以下で、60秒以上120秒以下の時間浸漬する、表面活性化処理を行う。これにより、製造コストを上げずに、優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼を実現することができる。
<実施例>
まず、下記の表1に示す成分を原料とし、上述の製造方法の第2酸洗工程S7までを施して、フェライト系ステンレス鋼を製造した。なお、表1に示す鋼材を製造するにあたり、用いた条件は以下のとおりである。第2酸洗工程S7として、下記に示すいずれの処理を施したかについては、後述する表2に示している。
・前処理工程S1におけるスラブ片の加熱温度 1230℃
・前処理工程S1におけるスラブ片の加熱時間 2時間
・熱間圧延工程S2後の板厚 4mm
・第1酸洗工程S4で用いた酸洗液 60℃の硝弗酸液(3%弗酸、10%硝酸を含む水溶液)
・冷間圧延工程S5後の板厚 1.5mm
・第2酸洗工程S7における酸洗条件 50~70℃の硝酸液(硝酸濃度150g/L)に浸漬させた状態で、0.2~0.3A/cmの条件で1~2分間電解する電解処理(硝酸電解)。または、硝酸(硝酸濃度100g/L)とフッ化水素酸(15~25g/L)の50~70℃の混合液中に1~2分浸漬する処理(フッ硝酸浸漬)。
Figure 2021182266000001

本発明の実施例について、以下に説明する。本実施例では、表1に示される各ステンレス鋼の組成は、重量%で示されている。また、表1に示す各成分以外の残部は、Feまたは不可避的に混入する少量の不純物である。また、表1中の下線は、本発明の比較例に係る各ステンレス鋼に含まれる各成分の範囲が、本発明の範囲外であることを示している。
表1に示すように、本発明の範囲において作製したフェライト系ステンレス鋼を、発明例鋼種A1~A13とした。また、本発明の範囲外の条件で作製したフェライト系ステンレス鋼を、比較例鋼種B1~B4とした。
表2は、発明例鋼種A1~A13および比較例鋼種B1~B4について、耐赤スケール性および高温強度を評価するための試験を実施した結果を示す表である。
Figure 2021182266000002

表2に記載の発明例No.1~51は、発明例鋼種A1~A13に対して、本発明の表面活性化処理または本発明の表面活性化処理の範囲外の酸洗処理を施した例である。具体的には発明例No.1、5、12、16、20、24、20、24、28、32、36、40、44、および48は、60±10℃の硝酸液(80~120g/L)への浸漬時間が40秒であるため、本発明の表面活性化処理の範囲外の酸洗処理が施されている。その他の発明例については、本発明の表面活性化処理が施されている。
比較例No.1~34は、発明例鋼種A1~A8および比較例鋼種B1~B4に対して、本発明の表面活性化処理の範囲外の酸洗処理を施した例である。具体的には、60±10℃の硝酸液(80~120g/L)を用いる点は共通であるが、浸漬時間の条件が本発明の表面活性化処理の範囲外である。比較例No.22は、発明鋼種A7に対して、第2酸洗工程S7を施さずに、本発明の表面活性化処理を施した例である。また、比較例No.34は、比較例鋼種B4に対して、本発明の表面活性化処理を施した例である。
まず、発明例No.1~51および比較例No.1~34について、不動態被膜中のCr(O)およびSi(O)を、以下に詳述するように測定および算出した。
<不動態被膜中のCr(O)およびSi(O)の測定>
不動態被膜におけるCrおよびSiの濃化度を評価するために、上記製造方法によって製造された鋼板の、Cr(O)およびSi(O)を上述のように算出し、Cr(O)+Si(O)の値を求めた。その結果を、表2の不動態被膜中(6nm)のCr+Siの積分濃度の欄に示している。Cr(O)およびSi(O)が、上記式(1)を満たす場合、本発明の範囲内である。
表2に示すように、発明例鋼種A1~A13に対して、本発明の表面活性化処理を施した発明例(No.1~51のうち、No.1、5、12、16、20、24、20、24、28、32、36、40、44、および48を除くもの)は、全て上記式(1)を満たした。
図2は、全ての実施例についての、60±10℃の硝酸液(80~120g/L)による処理時間と、Cr(O)+Si(O)との関係を示すグラフである。図2のグラフからわかるように、処理時間が60~120秒である場合、すなわち本発明の範囲内である表面活性化処理が施されている場合には、Cr(O)+Si(O)≧240となることが実証された。
<耐赤スケール性評価試験>
表2に示した発明例No.1~51および比較例No.1~34に対して耐赤スケール性評価試験を実施した。試験の結果を表2に示している。
耐赤スケール性の評価試験は、JIS Z 2281(金属材料の高温連続酸化試験方法)に準拠し、酸化増量を用いて評価した。評価の判断基準として、酸化増量が0.3mg/cm以下を許容範囲とした。
まず、上記製造方法によって製造された鋼板から、試験片として、20mm×25mmの試験片を切り出した。水蒸気濃度10vol%の大気環境中で、当該試験片を600℃で100時間連続加熱した。酸化増量は、試験前後の重量変化より算出した。
表2に示すように、発明例鋼種A1~A13に対して、本発明の表面活性化処理を施した発明例(No.1~51のうち、No.1、5、12、16、20、24、20、24、28、32、36、40、44、および48を除くもの)は、全て上記基準を満たした。
図3は、全ての実施例について、60±10℃の硝酸液(80~120g/L)による処理時間と、酸化増量との関係を示すグラフである。図3のグラフからわかるように、処理時間が60~120秒である場合、すなわち本発明の範囲内である表面活性化処理が施されている場合には、全て酸化増量0.3mg/cm以下を満たすことが実証された。
図4は、全ての実施例について、Cr(O)+Si(O)と、酸化増量との関係を示すグラフである。図4のグラフからわかるように、Cr(O)+Si(O)≧240を満たす場合には、全て酸化増量0.3mg/cm以下を満たすことが実証された。
<高温強度評価試験>
表2に示した発明例No.1~51および比較例No.1~34に対して高温強度評価試験を実施した。試験の結果を表2に示している。
高温強度評価試験は、JIS Z 2241(鉄鋼材引張試験方法)に準拠した試験片を用い、JIS G 0567(鉄鋼材料及び耐熱合金の高温引張試験方法)に準拠した引張方法により実施した。
試験片の板厚は2mm、板幅は12.5mmであり、標点間距離を50mmとした。標点間に対し、耐力までのひずみ速度を0.3%/min、引張強さを3mm/minとし、0.2%耐力値で評価した。評価の判断基準として、0.2%耐力が20MPa以上を許容範囲とした。
表2に示すように、発明例No.1~51は、全て上記基準を満たした。一方、比較例No.30~34は、上記基準を満たさなかった。
以上の試験結果から、総合評価として、耐赤スケール性評価試験および高温強度評価試験について、両方の基準を満たした場合を合格(〇)、片方または両方の基準を満たさなかった場合を不合格(×)とし、結果を表2に示した。
表2の総合評価から、以下のことが実証された。
・発明例鋼種A1~A13について、上記式(1)を満たす例は、全て総合評価として合格であった。
・発明例鋼種A1~A13であっても、上記式(1)を満たさない場合(比較例No.1~23)、総合評価は不合格であった。
・発明例鋼種A1~A7に対して本発明の表面活性化処理を施した場合、全て上記式(1)を満たし、かつ総合評価は合格であった。
・比較例鋼種B4に対して本発明の表面活性化処理を施した場合(比較例No.34)、上記式(1)を満たしたが、総合評価は不合格であった。
・発明例鋼種A1~A13に対して上述の硝酸電解またはフッ硝酸浸漬による第2酸洗工程S7を施した後、表面活性化処理工程S8を施した例は、全て上記式(1)を満たし、総合評価として合格であった。
・発明例鋼種A1~A13であっても、第2酸洗工程S7のみを実施し、表面活性化処理工程S8を実施しない場合(比較例No.5および10)、上記式(1)を満たさず、総合評価も不合格であった。
・発明例鋼種A1~A13であっても第2酸洗工程S7のみを実施せず、表面活性化処理工程S8のみを実施した場合(比較例No.22)、上記式(1)を満たさず、総合評価も不合格であった。
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼は、0.025質量%以下のC、0.05質量%以上3.0質量%以下のSi、0.05質量%以上2.0質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.03質量%以下のS、0.5質量%以下のNi、10.5質量%以上25.0質量%以下のCr、0.025質量%以下のN、0.05質量%以上1.0質量%以下のNb、3.0質量%以下のMo、1.8質量%以下のCu、0.2質量%以下のAl、0.5質量%以下のTiを含有し、残部に鉄および不可避的不純物を含み、表面、および、表面から0.5nmごとに表面からの深さ6nmの位置までにおいてXPS分析によりスペクトルを測定し、
(i)各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物または水酸化物として存在するCrの総原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値をCr(O)とし、
(ii)各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物として存在するSiの原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値をSi(O)としたときに、
下記式(1)を満足することを特徴とする。
Cr(O)+Si(O)≧240・・・(1)
上記構成によれば、優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼を実現することができる。
また、本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼は、2.5質量%以下のW、0.1質量%以下のLa、0.05質量%以下のCe、0.01質量%以下のB、0.0002質量%以上0.0030質量%以下のCa、0.001質量%以上0.5質量%以下のHf、0.01質量%以上0.40質量%以下のZr、0.005質量%以上0.50質量%以下のSb、0.01質量%以上0.30質量%以下のCo、0.001質量%以上1.0質量%以下のTa、0.002質量%以上1.0質量%以下のSn、0.0002質量%以上0.30質量%以下のGa、0.001質量%以上0.20質量%以下の希土類元素および0.0003質量%以上0.0030質量%以下のMgのうち1種以上をさらに含有してもよい。
上記構成によれば、耐赤スケール性および耐スケール剥離性をさらに向上させることができる。
また、本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、0.025質量%以下のC、0.05質量%以上3.0質量%以下のSi、0.05質量%以上2.0質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.03質量%以下のS、0.5質量%以下のNi、10.5質量%以上25.0質量%以下のCr、0.025質量%以下のN、0.05質量%以上1.0質量%以下のNb、3.0質量%以下のMo、1.8質量%以下のCu、0.2質量%以下のAl、0.5質量%以下のTiを含有し、残部に鉄および不可避的不純物を含むフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、脱スケール処理後の鋼帯を、80~120g/Lの硝酸液を用いて、液温度を50℃以上70℃以下で、60秒以上120秒以下の時間浸漬する、表面活性化処理工程を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、製造コストを上げることなく、優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼を製造することができる。
また、本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼の製造方法は、フェライト系ステンレス鋼が、2.5質量%以下のW、0.1質量%以下のLa、および0.05質量%以下のCeをさらに含有していてもよい。
上記構成によれば、製造コストを上げることなく、耐赤スケール性および耐スケール剥離性をさらに向上させた、優れた高温強度および耐赤スケール性を有するフェライト系ステンレス鋼を製造することができる。
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。

Claims (4)

  1. 0.025質量%以下のC、0.05質量%以上3.0質量%以下のSi、0.05質量%以上2.0質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.03質量%以下のS、0.5質量%以下のNi、10.5質量%以上25.0質量%以下のCr、0.025質量%以下のN、0.05質量%以上1.0質量%以下のNb、3.0質量%以下のMo、1.8質量%以下のCu、0.2質量%以下のAl、0.5質量%以下のTiを含有し、残部に鉄および不可避的不純物を含み、
    表面、および、表面から0.5nmごとに表面からの深さ6nmの位置までにおいてXPS分析によりスペクトルを測定し、
    (i)各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物または水酸化物として存在するCrの総原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値をCr(O)とし、
    (ii)各スペクトルを用いて、単体、酸化物または水酸化物として存在する、Fe、Cr、Ti、Nb、MoおよびSiの総原子数に対する、酸化物として存在するSiの原子数の割合を原子%濃度で各測定深さにおいて算出し、算出したすべての原子%濃度を積算した値をSi(O)としたときに、
    下記式(1)を満足することを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼。
    240≦Cr(O)+Si(O)≦261・・・(1)
  2. 2.5質量%以下のW、0.1質量%以下のLa、0.05質量%以下のCe、0.01質量%以下のB、0.0002質量%以上0.0030質量%以下のCa、0.001質量%以上0.5質量%以下のHf、0.01質量%以上0.40質量%以下のZr、0.005質量%以上0.50質量%以下のSb、0.01質量%以上0.30質量%以下のCo、0.001質量%以上1.0質量%以下のTa、0.002質量%以上1.0質量%以下のSn、0.0002質量%以上0.30質量%以下のGa、0.001質量%以上0.20質量%以下の希土類元素および0.0003質量%以上0.0030質量%以下のMgのうち1種以上をさらに含有する、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼。
  3. 0.025質量%以下のC、0.05質量%以上3.0質量%以下のSi、0.05質量%以上2.0質量%以下のMn、0.04質量%以下のP、0.03質量%以下のS、0.5質量%以下のNi、10.5質量%以上25.0質量%以下のCr、0.025質量%以下のN、0.05質量%以上1.0質量%以下のNb、3.0質量%以下のMo、1.8質量%以下のCu、0.2質量%以下のAl、0.5質量%以下のTiを含有し、残部に鉄および不可避的不純物を含むフェライト系ステンレス鋼の製造方法であって、
    冷間圧延後に酸洗液を用いた脱スケール処理が施された鋼帯を、80~120g/Lの硝酸液を用いて、液温度を50℃以上70℃以下で、60秒以上120秒以下の時間浸漬する、表面活性化処理工程を含むことを特徴とする、フェライト系ステンレス鋼の製造方法。
  4. 前記フェライト系ステンレス鋼が、2.5質量%以下のW、0.1質量%以下のLa、0.05質量%以下のCe、0.01質量%以下のB、0.0002質量%以上0.0030質量%以下のCa、0.001質量%以上0.5質量%以下のHf、0.01質量%以上0.40質量%以下のZr、0.005質量%以上0.50質量%以下のSb、0.01質量%以上0.30質量%以下のCo、0.001質量%以上1.0質量%以下のTa、0.002質量%以上1.0質量%以下のSn、0.0002質量%以上0.30質量%以下のGa、0.001質量%以上0.20質量%以下の希土類元素および0.0003質量%以上0.0030質量%以下のMgのうち1種以上をさらに含有する、請求項3に記載のフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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