JP6814678B2 - 管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管および自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管 - Google Patents

管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管および自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管 Download PDF

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本発明は、管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管および自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管に関する。
フェライト系ステンレス鋼板は、家電製品、厨房機器、電子機器など幅広い分野で使用されている。近年では、自動車や二輪車の排気管、燃料タンクやパイプに使用される素材としてフェライト系ステンレス鋼板の適用が検討されている。これらの部品に適用される素材は、排気環境ならびに燃料環境における耐食性および耐熱性に加えて、部品形状に成形するための高加工性が要求される。しかしながら、フェライト系ステンレス鋼板は、オーステナイト系ステンレス鋼板に比べて低コストであるものの、成形性に劣るため、用途や部品形状が限定される場合があった。
特に、近年では環境規制や軽量化に対応した部品構成の複雑化に伴い、部品の複雑形状化が指向されている。また、部品コストの低減および薄肉軽量化の観点から、部品成形における成形回数および溶接工数の低減が種々検討されている。自動車や二輪車の排気管は種々の部品と接合されるため、溶接部の強度、剛性および溶接性を確保するために、一定の肉厚が必要とされることから、非溶接部においても厚肉となり、排気システム全体の薄手化の妨げになる場合がある。
これに対して、排気管を構成し、他部品と溶接接合される鋼管の管端を増肉することにより、溶接箇所を厚肉化して強度、剛性および溶接性を確保する技術がある。この場合、溶接される管端のみを厚肉とすることができるため、非溶接部を薄肉化することが出来、排気システム全体の薄肉・軽量化が可能となる。
上記のような管端の厚肉化(増肉)に関する技術はいくつか開示されている。特許文献1には、管端の強度を確保し、パイプの軽量化を目的として、パイプを回転させながら管端にローラーを押し当てて、管端を径方向内側に折り曲げた後、ローラーによって密着させる加工方法が開示されている。特許文献2には、管端を二重管状に成形し、管端の肉厚を倍にすることで溶接時の溶け落ちを防ぐための工法が開示されている。特許文献3には、管端を折り返して増肉するための素管に関する技術が開示されており、溶接部の内面ビード部が管内面に突き出しており、その突出量が板厚の4〜15%と規定されている。
特開2010−234406号公報 特開2013−103250号公報 特開2004−255414号公報
本発明者らは、以下に示す既知技術の問題点を把握した。
特許文献1および特許文献2は、管端を増肉するための工法に関するものであり、スピニング加工あるいは鍛造加工を行うものである。素管の形状は必ずしも均一では無く、真円度や板厚分布が異なる。また、素管が溶接管である場合には、溶接部は母材と組織や材質特性が異なる。そのため、場合によっては管端に割れやネッキングが生じる問題があった。
特許文献3は、素管に関するものであり、鋼管溶接部の形状において、内面ビード形状を規定しているが、内面ビードが突出している場合、折り曲げ時に突出部を起点として割れやネッキングが発生する問題があった。
本発明の目的は、既知技術の上記問題点を解決し、特に自動車排気系部品用の素材として好適に用いられる、成形性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼管および自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは、フェライト系ステンレス鋼管の成形性に関して、鋼成分および鋼管溶接部の材質特性を詳細に研究した。その結果、例えば、スピニング加工による曲げを利用して管端を増肉する場合や、鍛造加工により管端を増肉する場合において、加工時の割れを抑制するためにはフェライト系ステンレス鋼管の溶接部の加工硬化が極めて重要であり、溶接部を含む領域が優れたn値を有することにより、管端における成形の自由度を格段に向上できることを知見した。
上記課題を解決する本発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 管状に成形された鋼母材と、溶接部とを備え、前記鋼母材が、質量%で、C:0.001〜0.020%、Si:0.01〜1.00%、Mn:0.01〜1.00%、P:0.010〜0.040%、S:0.0003〜0.0050%、Cr:10.0〜19.1%、N:0.001〜0.020%、B:0.0002〜0.0020%、Al:0.005〜0.300%、Mg:0.0002〜0.0030%およびSn:0.005〜0.500%を含有し、更に、Ti:0.05〜0.70%およびNb:0.05〜0.70%の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度が0.010〜0.40%であり、前記溶接部を含む領域のn値が0.15以上であることを特徴とする管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管。
(2) 前記鋼母材が、さらに質量%で、Ni:0.10〜0.50%、Mo:0.10〜2.00%、Cu:0.10〜2.00%、V:0.05〜1.00%、Ca:0.0002〜0.0030%、Zr:0.01〜0.30%、W:0.01〜3.00%、Co:0.01〜0.30%、Sb:0.005〜0.500%、REM:0.001〜0.200%、Ga:0.0002〜0.3000%、Ta:0.001〜1.000%およびHf:0.001〜1.000%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管。
) (1)または(2)に記載の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管からなり、管端の外径が素材の外径よりも大きいことを特徴とする自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管。
) (1)または(2)に記載の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管からなり、管端の内径が素材の内径よりも小さいことを特徴とする自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管。
本発明によれば、成形性および耐食性に優れた管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管および自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管を提供することができる。
以下に本発明の限定理由について説明する。
フェライト系ステンレス鋼管の加工性の指標としては、強度や伸びが挙げられる。一般的に、これらは鋼管の引張試験によって得られる特性である。一方、鋼管の管端を増肉加工する方法としては、スピニング加工による折り曲げや鍛造加工が挙げられるが、これらは管端の局所変形が作用するものであり、鋼管全体の特性とは異なる様式である。
また、本発明の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管(以下、単にフェライト系ステンレス鋼管または鋼管と記載する場合がある)は鋼母材として鋼板を素材とし、加工および溶接によって製造される。その溶接方法としては、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、レーザー溶接、ERW(Electric Resistance Welding)溶接等が用いられる。
管端の加工においては、溶接部の成形性が極めて重要になる。これは、溶接部の組織が母材の組織と異なるため、溶接部を起点として割れやネッキングが発生する場合があるためであり、また、溶接部の突合せ形状や溶け込み等にも影響する場合があるためである。
本発明では、管端増肉加工おける溶接部割れを抑制し、割れやネッキングのない高品質な管端増肉鋼管を提供することを目的とし、溶接部特性と管端増肉性について、種々の検討を行った。その結果、本発明者らは、管端増肉加工において、割れが発生する箇所は溶接部であり、その割れを抑制するためには、溶接部を含む領域の加工硬化能を向上させる必要があることを知見した。具体的には、鋼管の溶接部から、鋼管の溶接方向に引張付与が出来る様に、かつ、溶接部を試験片の幅内に含む様に弧状の引張試験片を採取し、引張試験を行った際の加工硬化指数(n値)を0.15以上とすることによって、管端のスピニング加工あるいは鍛造加工時に発生する割れを抑制できることを明らかにした。
なお、本明細書において管端増肉加工とは、スピニング加工や鍛造加工によって管の端部(管端)を管の内側または外側に折り込むことにより、管端を増肉する加工のことをいう。
ここで、溶接部の引張特性は、鋼管の溶接方向に引張付与が出来る様に、弧状の引張試験片(JIS 13号B)を採取し、引張試験を行う。鋼管の溶接部は種々の幅を有するが、引張試験片の幅内に含める様に試験片を採取する。加工硬化指数(n値)は、真応力−真歪曲線の傾きを求めればよく、本発明では、5%〜10%歪における傾きをn値と定義する。
先述した様に、鋼管の管端増肉加工は、管端を局所的にスピニング加工あるいは鍛造加工するため、溶接部の局所的な大変形挙動が重要となる。溶接部では、結晶粒の粗大化や形状因子が作用して、加工硬化能(n値)が低下する。溶接部を含む領域のn値が0.15未満であると、局部変形能が低く、管端増肉加工時に割れが生じる。溶接部を含む領域のn値を0.15以上にすることで、スピニング加工や鍛造加工のような強加工が施されても、溶接部の加工硬化によって歪の分散が作用し、周辺の母材が変形することで溶接部を含む領域が均一に変形される。スピニング加工の場合は曲げ変形、鍛造加工の場合は軸方向への圧縮変形になるが、いずれの場合でも同様の作用が生じる。なお、管端増肉加工におけるより厳しい加工条件を考慮すると、溶接部を含む領域のn値は0.20以上であることが好ましい。
溶接部を含む領域におけるn値の金属組織的な主因子として、凝固組織、介在物、偏析が考えられ、これらは母材成分が影響する。
凝固組織に関して、鋼管に変形が作用した際は、粒界での転位蓄積が多くなるため、結晶粒が細粒である程、n値が向上する。
また、介在物に関して、溶接部には酸化物や析出物が生成し、特にERW溶接の場合は、鋼材における酸化物の排出が不十分な場合に、溶接表層部に酸化物が多く生成される。酸化物や析出物の周りでは、局所変形が作用した際にボイドが発生しやすく、局所変形能が低下するため、これらの介在物は少ない方が良い。
更に、溶接部の凝固偏析が多いと変形が不均一になり、割れが発生しやすい。そのため、溶接部における凝固偏析は少ない方が良い。
また、本発明者らは、Snは溶接部の粒界に偏析し、溶接部の加工硬化特性を向上する効果を有するため、溶接部を含む領域のn値の向上に有効であることを知見した。さらに、本発明者らは、溶接部のSn偏析状態と、溶接部の加工硬化特性とを詳細に検討した結果、本発明が規定する加工硬化特性(n値が0.15以上)を満足するためには、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度が0.010%以上であれば良いことを知見した。溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度の上限に関しては、溶接部の靭性の観点から0.80%以下とすることが好ましい。溶接部を含む領域におけるn値の向上と拡管性(管端増肉加工性)との観点から、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度は、0.10〜0.40%がより好ましい。
なお、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度は、電子線マイクロアナライザによって溶接部のSn濃度を測定し、その最大値を溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度とする。
これらの因子を改善するために、本発明が規定する鋼成分範囲について次に説明する。なお、本明細書において%は質量%を意味する。
(C:0.001〜0.020%)
Cは、成形性と耐食性とを劣化させる。特に、0.020%を超えて含有すると、溶接部に硬質なマルテンサイトやCr炭化物の生成を伴い、n値を低下させることから、C含有量の上限を0.020%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、C含有量の下限を0.001%以上とする。更に、製造コストと溶接部の粒界腐食性を考慮すると、C含有量は0.002〜0.009%が好ましい。
(Si:0.01〜1.00%)
Siは、脱酸元素として添加される場合がある他、耐酸化性の向上をもたらすため、下限を0.01%以上として含有させる。一方、Siは固溶強化元素であるため、溶接部のn値を低下させることから、上限を1.00%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がる他、排気ガス雰囲気における耐酸化性、溶接性を考慮して、Si含有量は0.20〜0.90%が好ましい。更に、高温強度、高温高サイクル疲労特性および排気ガスによる浸炭の抑制を考慮すると、Si含有量は0.40〜0.90%がより好ましい。
(Mn:0.01〜1.00%)
Mnは、Si同様、固溶強化元素であるため、溶接部におけるn値の向上の観点からその含有量は少ないほど良い。また、Mnは、Sと結合してMnSを形成してSの偏析を抑制する効果がある他、酸化剥離性を向上させる元素でもある。耐食性を考慮して、Mn含有量の上限を1.00%以下とする。一方、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、Mn含有量の下限を0.01%以上とする。更に、材質と製造コストとを考慮すると、Mn含有量は0.05〜0.90%が好ましい。
(P:0.010〜0.040%)
Pは、MnやSi同様に固溶強化元素であるため、溶接部のn値の向上の観点からその含有量は少ないほど良い。溶接部の粒界偏析を抑制することを目的として、P含有量の上限を0.040%以下とする。但し、過度の低減は原料コストの増加に繋がるため、P含有量の下限を0.010%以上とする。更に、製造コストと耐食性とを考慮すると、P含有量は0.020〜0.030%が好ましい。
(S:0.0003〜0.0050%)
Sは、溶接部の凝固割れを抑制するために、S含有量を0.0050%以下にする必要がある。そのため、S含有量の上限を0.0050%以下とする。また、Sは、Mnと結合して偏析を抑制する効果を有する。この効果を得るために、S含有量の下限を0.0003%以上とする。精錬コストや、部品とした際の管端増肉部における隙間腐食の抑制を考慮すると、S含有量は、0.0005〜0.0030%が好ましい。
(Cr:10.0〜20.0%)
Crは、耐食性や耐酸化性を向上させる元素であり、排気系部品が曝される環境を考慮すると、異常酸化抑制の観点から10.0%以上の含有量が必要である。そのため、Cr含有量の下限を10.0%以上とする。一方、過度な含有は、鋼板が硬質となり溶接部の成形性を劣化させる他、溶接部のn値を低下させるため、Cr含有量の上限を20.0%以下とする。また、靭性劣化による鋼板製造時および鋼管製造時の、板破断および曲げ割れを考慮すると、Cr含有量は10.5〜18.0%未満が好ましい。更に、合金コストを考慮すると、Cr含有量は10.5〜15.0%がより好ましい。
(N:0.001〜0.020%)
Nは、Cと同様、成形性と耐食性とを劣化させる。特に、0.020%を超えて含有すると、溶接部に硬質なマルテンサイトやCr炭化物の生成を伴い、n値を低下させることから、N含有量の上限を0.020%以下とする。但し、過度の低減は精錬コストの増加に繋がるため、N含有量の下限を0.001%以上とする。更に、製造コストと溶接部の粒界腐食性を考慮すると、N含有量は0.002〜0.009%が好ましい。
(B:0.0002〜0.0020%)
Bは、粒界に偏析することで製品の二次加工性を向上させる元素である。管端増肉加工においては、スピニング加工や鍛造加工において多工程が施される。例えば、スピニング加工で管端の外側を増肉する場合、第一工程で外側に管端を膨らませた後、第二工程のスピニング加工で、膨らませた管端と、管の外側とが密着される。この際、鋼管の二次加工性が悪い場合には、第二工程にて溶接部で割れが生じる場合がある。本発明では、素材である鋼が、Bを0.0002%以上含有することにより、溶接部粒界にBが偏析して、強加工された後の割れを抑制することを知見した。そのため、B含有量の下限を0.0002%以上とする。一方、0.0020%を超えて含有すると、鋼材が著しく硬質化するため、B含有量の上限を0.0020%以下とする。更に、精錬コストや粒界腐食性を考慮すると、B含有量は0.0003〜0.0015%が好ましい。
(Mg:0.0002〜0.0030%)
Mgは、脱酸元素として含有させる場合がある他、溶接部の組織を微細化させ、成形性を向上させる元素である。本発明では、Mgを0.0002%以上含有することにより、特にTIG溶接による溶接部のn値が向上し、スピニング加工性や鍛造加工性が向上することを知見した。そのため、Mg含有量の下限を0.0002%以上とする。但し、0.0030%を超えて含有すると、粗大なMgO生成によって介在物起因の割れが生じるため、Mg含有量の上限を0.0030%以下とする。更に、精錬コストを考慮すると、Mg含有量は0.0002〜0.0010%が好ましい。
(Al:0.005〜0.300%)
Alは、脱酸元素として含有される他、酸化スケールの剥離を抑制する効果がある。また、本発明では、Alを含有することにより溶接部の清浄度が向上し、介在物起因の割れが抑制できることを知見した。そのため、Al含有量の下限を0.005%以上とする。一方、0.300%を超えて含有すると、粗大なAlNやAlが生成し、ボイドの基点になることから、Al含有量の上限を0.300%以下とする。更に、精錬コストと鋼板製造時の酸洗性とを考慮すると、Al含有量は0.010〜0.080%が好ましい。
(Sn:0.005〜0.500%)
Snは、耐食性および高温強度の向上に寄与する。特に、管端増肉鋼管を排気管として用いた場合、排気管外面の耐塩害性および排気管内面の対凝縮水腐食性を向上させる。上述したように、本発明者らは、溶接部を含む領域のn値の向上に、微量のSnを含有させることが有効であることを知見した。通常、ステンレス鋼管は鋼板をロール成形あるいは曲げ成形された後に、TIG溶接、レーザー溶接あるいはERW溶接によって溶接されて、製造される。この際、偏析元素は溶接部に偏析するが、Snは粒界偏析元素であるため溶接部の粒界に偏析する。これにより、溶接部における粒界が強化されて加工硬化特性が向上されることを見出した。Snを含有させることによる上記効果を得るため、Sn含有量の下限を0.005%以上とする。一方、0.500%を超えて含有すると、溶接部の粒界におけるSn偏析が顕著となり、粒界と粒内との変形差が大きくなりすぎることで、管端加工部に割れが生じ易くなる。そのため、Sn含有量の上限を0.500%以下とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、Sn含有量は0.005〜0.300%が好ましい。更に、高温で長時間高温に曝された際の靭性を考慮すると、Sn含有量は0.005〜0.150%がより好ましい。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、Ti、Nbのうち、1種または2種を0.05〜0.70%の範囲で含有する。Ti、Nbのうち、いずれか一方を0.05〜0.70%の範囲内で含有する場合は、他方を含有しなくてもよい。また、Ti、Nbの両方を、それぞれ0.05〜0.70%の範囲で含有してもよい。以下、Ti、Nbについて説明する。
(Ti:0.05〜0.70%)
Tiは、C、N、Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、深絞り性の向上、溶接部の凝固組織を微細化させるために含有させる元素である。TiによるC、Nの固定作用は、0.05%から発現するため、Tiを含有する場合には、Ti含有量の下限を0.05%以上とする。また、0.70%を超えて含有すると、粗大なTiNの生成によってスピニング加工および鍛造加工時の割れの基点となるため、Ti含有量の上限を0.70%以下とする。更に、靭性劣化による鋼板および鋼管製造時の破断を回避するために、Ti含有量の上限は0.30%以下が好ましい。
(Nb:0.05〜0.70%)
Nbは、Tiと同様、C、N、Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、深絞り性の向上、溶接部の凝固組織を微細化させる効果を発現するため、Nbを含有する場合には、Nb含有量の下限を0.05%以上とする。但し、0.70%を超えて含有すると、粗大なNb(C、N)が析出し、スピニング加工および鍛造加工時の割れの基点となるため、Nb含有量の上限を0.70%以下とする。更に、靭性劣化による鋼板製造時および鋼管製造時の破断を回避するために、Nb含有量の上限は0.55%以下が好ましい。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、上述した元素を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる。また、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、上述した元素に加えて、さらに以下の元素を選択的に含有しても、含有しなくても良い。含有しない場合のそれぞれの元素含有量の下限は、0%以上である。
(Ni:0.10〜0.50%)
Niは、隙間腐食の抑制や再不働態化を促進させるため、必要に応じて含有させるとよい。本発明の管端増肉鋼管の外面腐食性を向上させる作用は、0.10%以上で発現するため、Ni含有量の下限は0.10%以上とする。但し、0.50%を超えて含有すると、鋼材が硬質化して管端加工部に割れが生じやすくなるため、Ni含有量の上限は0.50%以下とする。尚、靭性、原料コストや応力腐食割れを考慮すると、Ni含有量は0.20〜0.40%が好ましい。
(Mo:0.10〜2.00%)
Moは、耐食性を向上させる元素であり、特にスピニング加工によって製造される、隙間構造を有する管端増肉鋼管の場合には有効な元素であるため、必要に応じて含有させるとよい。この効果は0.10%以上で発現するため、Mo含有量の下限を0.10%以上とする。また、2.00%を越えて含有すると、著しく成形性が劣化したり、製造性が悪くなるため、Mo含有量の上限を2.00%以下とする。合金コストと生産性とを考慮すると、Mo含有量は0.10〜1.80%が好ましい。更に、薄鋼板から鋼管への造管性を考慮すると、0.10〜1.20%がより好ましい。
(Cu:0.10〜2.00%)
Cuは、隙間腐食の抑制や再不働態化を促進して、高温強度、熱疲労特性を向上させるため、必要に応じて含有させるとよい。この作用は、0.10%以上から発現するため、Cu含有量の下限を0.10%以上とする。但し、過度な含有は、鋼材が硬質化して管端加工部に割れが生じやすくなるため、Cu含有量の上限を2.00%以下とする。尚、製造性を考慮すると、Cu含有量は0.10〜1.30%が好ましい。
(V:0.05〜1.00%)
Vは、隙間腐食を抑制するため、必要に応じて含有させるとよい。この作用は、0.05%以上から発現するため、V含有量の下限を0.05%とする。但し、1.00%を超えて含有すると、粗大なVNが生成することによって、管端加工部に割れが生じやすくなるため、V含有量の上限を1.00%以下とする。尚、原料コストを考慮すると、V含有量は0.10〜0.50%が好ましい。
(Ca:0.0002〜0.0030%)
Caは、脱硫のために必要に応じて含有させるとよい。この作用は0.0002%未満では発現しないため、Ca含有量の下限を0.0002%以上とする。また、0.0030%を超えて含有すると、水溶性の介在物であるCaSが生成して、管端加工部に割れが生じやすくなるため、Ca含有量の上限を0.0030%以下とする。更に、表面品質の観点から、Ca含有量は0.0002〜0.0015%が好ましい。
(Zr:0.01〜0.30%)
Zrは、CやNと結合して加工性や耐酸化性を向上させるため、必要に応じて0.01%以上含有させるとよい。但し、0.30%を超えて含有すると、粗大なZrNが生成されることによって、管端加工部に割れが生じやすくなるため、Zr含有量の上限を0.30%以下とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、Zr含有量は0.01〜0.10%が好ましい。
(W:0.01〜3.00%)
Wは、耐食性および高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて0.01%以上含有させるとよい。一方、3.00%を超えて含有すると、粗大なWCが生成されることによって管端加工部に割れが生じやすくなるため、W含有量の上限を3.00%以下とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、W含有量は0.01〜1.00%が好ましい。
(Co:0.01〜0.30%)
Coは、高温強度の向上に寄与するため、必要に応じて0.01%以上含有させるとよい。一方、0.30%を超えて含有すると、粗大なCoSが生成されることによって管端加工部に割れが生じやすくなるため、Co含有量の上限を0.30%以下とする。更に、精錬コストや製造性を考慮すると、Co含有量は0.01〜0.10%が好ましい。
(Sb:0.005〜0.500%)
Sbは、粒界に偏析して高温強度の向上に寄与する元素であるため、必要に応じて含有させるとよい。この効果を得るため、Sb含有量の下限を0.005%以上とする。但し、0.500%を超えて含有すると、粒界のSb偏析が顕著になり、管端加工部に割れが生じやすくなるため、Sb含有量の上限を0.500%以下とする。高温特性、製造コスト及び靭性を考慮すると、Sb含有量は0.030〜0.300%が好ましい。更に好ましくは、0.050〜0.200%である。
(REM:0.001〜0.200%)
REM(希土類元素)は、耐酸化性の向上に有効であり、必要に応じて0.001%以上含有させるとよい。また、0.200%を超えて含有しても、その効果は飽和する他、粗大酸化物の形成によって{111}方位の発達抑制が生じる。更に、REMの硫化物によって耐食性が低下したり、管端加工部に割れが生じやすくなる。そのため、REM含有量の上限を0.200%以下とする。製品の加工性や製造コストを考慮すると、REM含有量の下限を0.002%以上とし、上限を0.100%以下とすることが好ましい。
なお、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従う。スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。これらの元素を単独で含有させても良いし、混合物であっても良い。
(Ga:0.0002〜0.3000%)
Gaは、耐食性向上や水素脆化抑制のため、必要に応じて含有させても良い。しかし、0.3000%を超えて含有すると、粗大硫化物が生成し、管端加工部に割れが生じやすくなる。そのため、Ga含有量の上限を0.3000%以下とする。硫化物や水素化物形成の観点から、Ga含有量の下限を0.0002%以上とする。更に、製造性やコストの観点から、Ga含有量の下限は0.0020%以上が好ましい。
(Ta:0.001〜1.000%)
(Hf:0.001〜1.000%)
Ta、Hfは高温強度向上のために、それぞれ0.001%以上含有してもよい。しかし、1.000%を超えて含有すると、靭性の劣化を招くため、Ta、Hfの上限をそれぞれ1.000%以下とする。
また、その他の成分について本発明では特に規定するものではないが、Biを必要に応じて0.001〜0.020%含有してもかまわない。なお、As、Pb等の一般的な有害な元素や不純物元素はできるだけ低減することが好ましい。
以上説明した本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、溶接部における成形性に優れるため、管端増肉加工用であるフェライト系ステンレス鋼管として好適に用いることができる。
上記フェライト系ステンレス鋼管を管端増肉加工する場合には、管端を管の外側に増肉する場合と、管の内側に増肉する場合とが考えられる。管端を管の外側に増肉する場合は、増肉箇所の外径は素管の外径よりも大きくなる。一方、管端を管の内側に増肉する場合は、増肉箇所の内径は素管の内径よりも小さくなる。管端が増肉された鋼管は、管の外側または内側と、密着させた管端との間にわずかな隙間が生じるが、隙間腐食の抑制の観点から、隙間間隔は50μm以上であることが好ましい。
このように、管端を管の内側または外側に増肉した本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、耐食性に優れ、更に、管端の増肉部における強度、剛性および溶接性に優れるため、特に自動車や二輪車の排気系部品用のフェライト系ステンレス鋼管として好適に用いることができる。
次に、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管の製造方法について説明する。
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、本発明で規定される鋼成分を有するステンレス鋼板を素材とする。ステンレス鋼板の製造方法は、製鋼−熱間圧延−焼鈍・酸洗−冷間圧延−焼鈍の各工程よりなり、各工程の製造条件については、特に規定するものでは無い。
製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、転炉溶製し、続いて二次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法(連続鋳造)に従ってスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延機で熱間圧延される。
熱間圧延後の焼鈍工程は省略しても良く、酸洗後の冷間圧延は、通常のゼンジミアミル、タンデムミルのいずれで圧延しても良いが、鋼管の曲げ性を考慮すると、タンデムミル圧延の方が好ましい。冷間圧延においては、ロール粗度、ロール径、圧延油、圧延パス回数、圧延速度、圧延温度などは本発明の範囲内で適宜選択すれば良い。
冷間圧延の途中に中間焼鈍を入れても良く、中間および最終焼鈍はバッチ式焼鈍でも連続式焼鈍でも構わない。また、焼鈍の雰囲気は必要であれば水素ガスあるいは窒素ガスなどの無酸化雰囲気で焼鈍する光輝焼鈍でもよく、大気中で焼鈍しても構わない。
更に、最終焼鈍後の製品板に潤滑塗装を施して、更にプレス成形性を向上させても良く、潤滑膜の種類は適宜選択すれば良い。最終焼鈍後に形状矯正のために調質圧延やレベラーを付与しても構わないが、加工硬化能の低下を招くことから、これらは付与しないことが好ましい。
以上説明した方法により製造したフェライト系ステンレス鋼板を用いて、本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管を製造する。本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管の製造方法は、適宜選択すれば良く、例えば、上記鋼板をロール成形または曲げ成形によって管状に成形した後、溶接して製造するとよい。溶接方法は特に限定されず、ERW溶接、レーザー溶接、TIG溶接等選択すれば良く、溶接ワイヤーを用いても構わない。
また、鋼管のサイズについても特に限定されず、用途に応じて適宜決定すれば良い。但し、鋼管の肉厚が過度に厚い場合は、管端の増肉加工時に割れ等が生じ易いことから、鋼管の肉厚の上限は1.5mm以下が好ましく、更に軽量化効果を考慮すると1.2mm以下がより好ましい。一方、薄手材は増肉のメリットが小さいことから、鋼管の肉厚の下限は0.4mm以上が好ましい。
以上の方法により製造したフェライト系ステンレス鋼管を管端増肉加工する方法としては、管端のスピニング加工あるいは鍛造加工が好ましいが、これらの工法についても特に規定するものでは無い。加えて、管端増肉加工において、例えば第一工程と第二工程との間に、軟化熱処理を施しても構わない。
また、管の外側に増肉する場合と、管の内側に増肉する場合とが考えられるが、いずれに増肉しても構わない。
なお、管端を増肉加工する方法としては、作業能率や寸法精度を考慮すると、スピニング加工の方が好ましい。このスピニング加工は、管端を管の外側または内側に折り曲げ、次工程にて、折り曲げた管端と、管の外側または内側とを密着させる工法である。この際、管の外側または内側と、密着させた管端との間に隙間が生じるが、隙間腐食の抑制の観点から隙間間隔は50μm以上とすることが好ましい。
一方、鍛造加工は、鋼管を軸方向に鍛造して管端を増肉する工法である。鍛造加工における場合も、管の外側または内側と、密着させた管端との間の隙間間隔は、隙間腐食の抑制の観点から、50μm以上とすることが好ましい。
以上説明した本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管は、溶接部の加工硬化特性に優れる。そのため、本発明のフェライト系ステンレス鋼管を用いて管端増肉加工した場合、溶接部の割れが抑制され、寸法精度にも優れた管端増肉鋼管を得ることができる。この管端増肉鋼管は、非溶接部を薄肉化することができ、耐食性にも優れるため、特に自動車や二輪車用の排気系部品に加工される鋼管として使用することによって、薄肉・軽量化に寄与し、燃費向上が可能となる。
表1および表2に示す成分組成の鋼を溶製し、鋳造してスラブとし、熱間圧延後、熱延板焼鈍を省略して、酸洗を行い、冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延、最終焼鈍を施して、厚さ0.8mmの鋼板を得た。この鋼板を素材として、φ35の電気抵抗溶接鋼管(ERW鋼管)を製造した。なお、ERW溶接は、ロール成形後に高周波誘導加熱で材料を加熱して行った。
製造したERW鋼管について、溶接部のSn濃度を電子線マイクロアナライザによって測定し、その最大値を溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度とした。
また、上記ERW鋼管について、鋼管の溶接方向に引張付与が出来る様に、かつ、溶接部が試験片の幅内に含まれるように、弧状の引張試験片(JIS 13号B)を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行った。引張試験の結果から、真応力−真歪曲線を求め、5%〜10%歪における傾きをn値とした。
以上の方法により求めた溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度およびn値を表2に示す。
Figure 0006814678
Figure 0006814678
また、製造したERW鋼管について、スピニング加工または鍛造加工によって、内側または外側に管端増肉加工を行い、溶接部の割れ有無を目視で観察した。管端増肉加工後の溶接部に割れが確認されなかった場合を○、割れが確認された場合を×とした。
なお、スピニング加工は、管端を管の外側または内側に折り曲げ、次工程にて、折り曲げた管端と、管の外側または内側とを密着させた。鍛造加工は、管を軸方向に鍛造して、管端を内側または外側に増肉した。
また、耐食性の評価として、上述した方法により管端を増肉加工したサンプルについて、腐食試験を行った。腐食試験の前に大気中400℃で24時間の予備加熱処理を行った後、5%塩化ナトリウムを35℃で4hr噴霧し、その後、湿度25%、60℃で2時間乾燥させた後更に、湿度95%、50℃で2時間放置する試験を100サイクル繰り返した。この後、管端増肉部の隙間を開放し、顕微鏡を用いた焦点深度法によって、解放した管端の、管の外側または内側に密着していた側の面における、最大孔食深さを測定し、腐食深さとした。腐食深さが0.7mm未満のものを○、0.7mm以上のものを×とした。
以上説明した製造方法および試験結果を表3に示す。なお、増肉加工時に割れが発生したものについては、耐食性試験を実施しなかった。表3中の「−」は、耐食性試験を実施しなかったことを示す。
Figure 0006814678
表1〜表3より、本発明例の鋼管(鋼No.1〜No.18)は、化学組成が本発明の範囲内であり、溶接部を含む領域のn値が高く、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度が高いため、管端増肉加工において割れが発生せず、溶接部の局所的な加工硬化特性に優れており、更に、耐食性試験の結果から、耐食性に優れていることが分かる。
一方、表1の鋼No.19〜No.39は、化学組成、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度または溶接部を含む領域のn値の少なくとも一つが本発明の範囲外であり、増肉加工時に割れが発生し、または耐食性が十分ではなかった。以下に、各比較例について説明する。
鋼No.19は、C含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.20は、N含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.21は、Si含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.22は、C、MnおよびS含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.23は、P含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.24は、S含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.25は、Cr含有量が本発明の範囲外であったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.26は、Sn含有量が本発明の範囲外であり、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度が低く、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.27は、Ti含有量が本発明の範囲外であったため、耐食性が劣った例である。
鋼No.28は、Nb含有量が本発明の範囲外であったため、耐食性が劣った例である。
鋼No.29は、B含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.30は、Al含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.31は、Mg含有量が本発明の範囲外であったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.32は、Zr含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.33は、TiおよびNbの何れも含有せず、また、V含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.34は、Ni含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.35は、TiおよびNbの何れも含有せず、また、Mo含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.36は、Alを含有せず、また、Mn、PおよびW含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.37は、Co含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.38は、Mn、Cu、BおよびAl含有量が本発明の範囲外であり、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
鋼No.39は、化学組成は本発明の範囲を満足するが、溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度が低く、n値が低かったため、管端増肉加工時に割れが発生した例である。
本発明によれば、溶接部の加工性および耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼管を提供することが可能である。本発明に係るフェライト系ステンレス鋼管を、特に自動車や二輪車用の排気系部品に加工される素材として使用することによって、成形の自由度が向上するとともに、薄肉化が可能となり、新規設備を導入することなく、効率的な部品製造および燃費向上が可能となる。即ち、本発明は産業上極めて有益である。

Claims (4)

  1. 管状に成形された鋼母材と、溶接部とを備え、
    前記鋼母材が、質量%で、
    C:0.001〜0.020%、
    Si:0.01〜1.00%、
    Mn:0.01〜1.00%、
    P:0.010〜0.040%、
    S:0.0003〜0.0050%、
    Cr:10.0〜19.1%、
    N:0.001〜0.020%、
    B:0.0002〜0.0020%、
    Al:0.005〜0.300%、
    Mg:0.0002〜0.0030%および
    Sn:0.005〜0.500%
    を含有し、更に、
    Ti:0.05〜0.70%および
    Nb:0.05〜0.70%
    の1種または2種を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    前記溶接部におけるSn偏析部の最大Sn濃度が0.010〜0.40%であり、前記溶接部を含む領域のn値が0.15以上であることを特徴とする管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管。
  2. 前記鋼母材が、さらに質量%で、
    Ni:0.10〜0.50%、
    Mo:0.10〜2.00%、
    Cu:0.10〜2.00%、
    V:0.05〜1.00%、
    Ca:0.0002〜0.0030%、
    Zr:0.01〜0.30%、
    W:0.01〜3.00%、
    Co:0.01〜0.30%、
    Sb:0.005〜0.500%、
    REM:0.001〜0.200%、
    Ga:0.0002〜0.3000%、
    Ta:0.001〜1.000%および
    Hf:0.001〜1.000%
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管。
  3. 請求項1または2に記載の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管からなり、管端の外径が素材の外径よりも大きいことを特徴とする自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管。
  4. 請求項1または2に記載の管端増肉加工用フェライト系ステンレス鋼管からなり、管端の内径が素材の内径よりも小さいことを特徴とする自動車排気系部品用フェライト系ステンレス鋼管。
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