JP5684547B2 - 尿素scrシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、尿素水を用いて排ガス中のNOxを低減する装置、特に自動車排気ガス処理システムにおける自動車尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムなどに使用される機器類に使用される材料として好適な尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板に関するものである。
地球温暖化などの環境問題に対する対策において、主に輸送機器から排出される排気ガス規制が強化されており、炭酸ガス排出抑制の取り組みが進められている。自動車においては、燃料面からの取り組みに加え、車体軽量化や排気熱を再利用して燃費向上を図る方法、EGR(Exhaust Gas Recirculation)、DPF(Diesel Particulate Filter)および尿素SCRと呼ばれる排ガス処理装置を搭載する対策が採られている。
この中で、尿素SCRシステムは、エンジンから放出された高温の排気ガスがエキゾーストマニホールドや触媒コンバータを通り、マフラーから大気に放出される一連の排気システムの中に搭載される浄化装置である。尿素SCRシステムでは、500℃程度の高温の排気ガスに尿素を吹き付けて、熱および水分により分解してアンモニアを生成し、アンモニアとNOxとを触媒上で選択還元して無害な窒素に分解する。NOx低減を目的とした処理システムは比較的取り扱いが容易であるため、自動車のみならず定置型のNOx処理システムへの適用も検討されている。
尿素SCRシステムでは、尿素水を貯蔵して、排気ガスへの噴射を行なうため、構成する材料においては優れた耐食性が要求される。また、尿素SCRシステム内に上記の様に高温の排気ガスが通るため、優れた耐酸化性も必要となる。なお、尿素SCRシステムにおいては、通常の大気中での酸化に対する耐酸化性とは異なり、尿素水が吹きつけられた水蒸気雰囲気での耐酸化性が必要となる。
即ち、尿素SCRシステムの尿素水を貯蔵する部位では、尿素水中での耐食性(以後、耐尿素性と記す。)が求められ、高温の排気ガスが通る部位では、耐酸化性が求められる。
特許文献1には、内燃機関の排気ガスシステムに尿素混合物を配給する装置に関して開示されている。ここでは、構成する金属シートとしてフェライト系ステンレス鋼の使用が示されている。
特許文献2には、尿素水中での耐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼として、各成分元素に加えて添加Cr、Si、Mn、Ti、Nb量による関係式を満足する鋼が開示されている。ここでは、鋼成分による有効Cr量を所定の量以上にすることで尿素水溶液中環境における耐食性、金属溶出量が調べられている。
特許文献3には、尿素製造プラント用2相ステンレス鋼として、Cr,Ni,Mo,Wが多量に含まれる鋼が開示されており、腐食による減肉が小さい材料が必要とされている。
上記の様に、尿素SCRシステムに用いられる材料としては、これまで尿素環境における耐食性、即ち耐尿素性が重要とされてきた。しかしながら、主にディーゼルエンジンを主とする内燃機関において用いられる尿素SCRシステムにおいては、耐食性以外に水蒸気雰囲気における耐酸化性も重要となる場合があった。即ち、尿素SCRシステムにおいて高温の排気ガスに尿素水を吹き付けた場合、構成する材料は水蒸気雰囲気で酸化される。
上記の様なフェライト系ステンレス鋼の場合、大気中で500℃程度の雰囲気で長時間加熱されても、Crを主体とする緻密な保護性皮膜が生成し、酸化増量は殆ど生じず、酸化皮膜の剥離も生じない。
しかしながら、上記のフェライト系ステンレス鋼であっても、水蒸気雰囲気では酸化が加速されるとともに酸化皮膜の剥離が生じる。このため、上記のフェライト系ステンレス鋼を尿素SCRシステムの材料として用いた場合、尿素SCRシステムにおける触媒を損傷させる場合があった。更に、尿素SCRシステムの材料として用いたフェライト系ステンレス鋼が耐尿素性に劣るものであった場合、そのような酸化皮膜の剥離は加速され、尿素による腐食が進行することになる。
一方、高温疲労強度、高温耐酸化性、耐水蒸気酸化性に対する特性を改善したフェライト系ステンレス鋼が特許文献4〜特許文献7に開示されている。
しかしながら、特許文献4では、Mo,Wが多く含まれており、合金コストが増加する。また、特許文献5には、Si含有量を下げて加工性を向上させるフェライト系ステンレスが開示されているが、Moを多く含み、かつ、Si含有量低下のため不動態皮膜の不安定性が懸念される。
また、特許文献6には、限定された雰囲気中で700℃〜1200℃の高温で加熱処理することで、高温雰囲気化でのCrの蒸発を抑止し、耐酸化性の低下を抑制する技術が開示されている。しかし、高温プロセスの採用により、エネルギーコストの上昇が懸念される。
更に、特許文献4〜特許文献7の鋼においては、当然ながら、耐尿素性に対する検討は行われていず、尿素SCRシステムに用いられるための条件は満足されていなかった。更に、Cr,Ni,Mo,Wが多量に含まれる鋼では、合金コストが著しく増加し、コスト面の課題があった。
また、特許文献8には、耐食性向上によってSUS430などSi含有ステンレス鋼において、不動態皮膜中のCr濃度の、Fe濃度に対する比を2以上にすることで、不動態皮膜をCr酸化物主体の組成にすることで耐食性を上げ、接触抵抗の上昇を抑える技術が開示されている。しかし、特許文献8は、技術目的が電子部品等の接点部分の接触電気抵抗の低下であるため、表面Cr濃度と耐酸化性や耐尿素性等は不明である。該開示技術は、一般的な材料なので尿素SCR等の材料としての充分な特性を得ることは困難であると推定される。
さらに、非特許文献1〜3には、Ti、Si、Mn、Mo等を含有するフェライト系ステンレス鋼を機械研磨し、長時間大気放置することによって表面層におけるCr濃度がFe濃度より高くなり、緻密なCr酸化膜が生成され、高温酸化耐性が向上することが開示されている。しかしながら、これら非特許文献において開示されている技術は、表面のCr濃化及び添加Moの高温耐酸化性に対する有効性であり、耐尿素性に関する調査は行っていない。
従って、高温耐酸化性を持つフェライト系ステンレス材においては、耐尿素性が不明であり、尿素SCR等の材料としての充分な特性を得ることは困難であると推定される。
また、特許文献9には、硝酸とふっ酸の混合溶液でフェライト系ステンレス熱延鋼板を酸洗し、表面のCr濃度のFe濃度に対する比を調整し、冷間圧延後の表面光沢を均一にする技術が開示されている。しかし、特許文献9では、耐酸化性及び耐尿素性については検討されていない。
更に、特許文献10,特許文献11には、硝酸、ふっ酸等を用いた処理によりフェライト系ステンレスの表面性状を調整したりスケールを除去したりする技術が開示されている。しかし、特許文献10および特許文献11では、表面のCrやFe濃度と耐酸化性及び耐尿素性に関する調査は行われていない。
また、特許文献12には、内燃機関における水/尿素混合物を配給する装置が開示されており、装置に用いられる金属シートに、熱伝達率の高いフェライト系ステンレスを用いる技術が開示されている。しかしながら、これは、局所的な温度低下を防ぐための技術開示であり、一般的なフェライト系ステンレスに言及しているのみであり、その組成について規定しておらず、耐高温酸化性及び耐尿素性については検討されていない。即ち、尿素SCRシステム用部品としての特性を得ることは困難であると推定される。
また、特許文献13には、内燃機関において尿素水を効率よくアンモニアに分解する脱硝装置が開示されているが、分解反応を起こすため充填物材料としてステンレスが開示されている。しかしながら、排気ガスや尿素水に接する配管等の金属部品の耐高温酸化性及び耐尿素性については言及されていない。即ち、液状あるいは、気体状の尿素混合物に、低温から高温まで種々の温度で接する部分からなる内燃機関用の尿素SCRシステム部品において、その耐食性、即ち、耐高温酸化性と耐尿素性に優れた低コストの部品の開示は無かった。
特開2008−280999号公報 特開2009−242933号公報 特開2003−301241号公報 特開2004−218013号公報 特開2007−247013号公報 特開2009−167443号公報 特開2009−197307号公報 特開2009−221513号公報 特開2002−256472号公報 特開昭64−42527号公報 特開平5−230681号公報 特開2008−280999号公報 特開平11−319483号公報
材料とプロセス Vol.5,No.3,942頁,1992年 日本冶金技報 No.3, 11頁〜19頁,1994年 材料と環境 Vol.43,No.11,640頁〜647頁,1994年
尿素SCRシステムで使用されるステンレス鋼板においては、高濃度の尿素環境においてステンレス鋼の構成元素であるFe,Cr、Niなどの元素の溶出を抑制する必要があり、優れた耐食性が要求される。更に、尿素SCRシステムで使用されるステンレス鋼板においては、水蒸気雰囲気下において高温の排気ガス雰囲気に曝されるため、優れた耐酸化性が要求される。
しかし、尿素SCRシステムを構成する材料には、これまで耐尿素性の観点から好適な材料が開示されてきたが、耐酸化性の観点から不十分である。一方、耐酸化性が好適な材料は、尿素SCRシステムを構成する材料としては耐尿素性の観点から不十分であり、不適切であった。即ち、耐酸化性及び耐尿素性を同時に満たす低コストでかつ信頼性の高い尿素SCR用フェライト系ステンレス鋼板が要望されていた。
本発明は、主にディーゼルエンジンを主体とする内燃機関において尿素水を用いて排気ガス中のNOxを低減する装置、特に自動車尿素SCRシステムなどの機器類に使用されるタンクや配管などの材料として好適に用いられ、排気ガスと尿素水に曝される環境下で優れた耐酸化性及び耐尿素性を有するフェライト系ステンレス鋼板及びそれを用いて製造される尿素SCRシステム部品を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、500℃程度の高温環境下で尿素水が吹きつけられる高温水蒸気環境下で、優れた耐酸化性を発現させるためには、鋼成分のみならず表面の不動態皮膜中の濃度分布が極めて重要であることを知見した。
従来、酸洗等によるフェライト系ステンレス鋼板の不動態皮膜中の元素濃度の調整方法や、不動態皮膜中の元素濃度と耐酸化性及び耐尿素性の関係についての詳細な技術は開示されておらず、不動態皮膜中の元素濃度を調整することで耐水蒸気酸化性と耐尿素性を同時に満足する技術は無かった。
なお、鋼表面にCrを濃化させることで耐食性を向上させることは、従来から知見されている。しかし、鋼表面にCrを濃化したフェライト系ステンレス鋼板であっても、尿素SCRシステムに用いる場合の様な500℃程度の高温の水蒸気環境下においては、腐食することが無くても、酸化スケールが剥離したり、極端には異常酸化を起こしたりする恐れがあった。
本発明者らは、10%以上Crを含有するフェライト系ステンレス鋼において、表面不動態皮膜中に濃化する元素としてCr以外のTi,Alの濃化度を制御することによって、健全な不動態皮膜を形成させ、良好な酸化特性が得られ、同時に良好な耐尿素性も得られることを見出した。
上記課題を解決する本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)質量%にて、C:0.010%以下、N:0.020%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Cr:10.0〜20.0%、Ti:0.05〜0.30%、Al:0.03〜0.5%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるとともに、表面から20nm以内におけるCr、Si、Al,Ti、MnおよびFeの濃度によって構成される濃度比の最大値が以下の式に示す関係を有し、耐高温酸化性および耐尿素性に優れることを特徴とする尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板。
(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)>0.35
上記式において、Cr、Ti、Al、Fe、Si、Mnは、それぞれ、Cr、Ti、Al、Fe、Si、Mnの含有量[質量%]である。
(2)質量%にて、Nb:0.5%以下、Cu:1.5%以下、Ni:3%以下、V:1%以下、Sn:0.5%以下、B:0.0020%以下の1種以上を含有し、耐高温酸化性および耐尿素性に優れることを特徴とする(1)記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板。
(3)(1)または(2)記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板を製造する方法であって、請求項1または2記載の組成を有するステンレス冷延鋼板を、硝酸濃度が50〜200g/Lで温度が50〜80℃の溶液に4秒以上浸漬して酸洗する工程を含むことを特徴とする尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
(4)(1)または(2)記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板からなることを特徴とする尿素SCRシステム部品。
(5)さらに質量%にて、Mo:1.5%以下を含有することを特徴とする(1)または(2)記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板。
本発明によれば、排気ガスと尿素水に曝される環境において優れた酸化特性を有するフェライト系ステンレス鋼を比較的低コストで提供できるので、主にディーゼルエンジンを主体とする内燃機関において尿素水を用いて排気ガス中のNOxを低減する装置、特に自動車尿素SCRシステムなどに使用される機器類に好適な材料を提供できる。本発明の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板を、タンク、パイプ、プレート、棒、スプリング等の尿素SCRシステム部品の材料として用いることで、尿素SCRシステムの簡素化、低コスト化に資することができる。
酸化試験後の試験片を示した外観写真であり、図1(a)は赤スケールの発生した試験片の一例を示し、図1(b)は赤スケールの発生しなかった試験片の一例を示している。 試験片の表面から20nm以内におけるCr、Si、Al,Ti、MnおよびFeの濃度によって構成される濃度比の最大値における(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値と、酸化試験後の試験片の酸化増量および赤スケール発生有無との関係を示すグラフである。
以下に、本発明で規定される尿素SCRに使用される耐酸化性に優れたフェライト系ステンレス鋼の化学成分、表面皮膜組成および製造方法について説明する。
Cは鋼板の成形性と耐食性を劣化させるため、その含有量は低く抑える必要があり、その含有量は0.010%以下とした。C含有量の過度の低減は精錬コストが増加するため、耐酸化性も考慮すると、0.002〜0.009%が望ましい。
NはCと同様、成形性と耐食性を劣化させるため、その含有量は少ないほど良く、0.020%以下とした。更に、N含有量の過度の低減は精錬コストが増加するため、耐酸化性も考慮すると、0.002〜0.015%が望ましい。
Siは、脱酸剤としても有用であるとともに、耐食性、高温強度および耐酸化性に対して有効な元素である。一方、Siは、加工性を劣化させる他、Tiとの複合添加の場合、長時間の酸化においてTi酸化物とSi酸化物の競合酸化によりスケール剥離が生じるため、0.5%以下とした。Si含有量の過度な低減は精錬コストが増加するため、下限は0.01%が望ましい。更に、耐酸化性も考慮するとSi含有量は0.01〜0.1%が望ましい。
Mnは、脱酸剤として添加される元素であるが、過剰に添加すると耐食性や耐酸化性が劣化する。特に、尿素SCR用の場合、スケールの外層側にMn酸化物が生成し、赤スケールが発生し易くなるため、Mn含有量を0.5%以下とした。更に、Mn含有量は、スケール剥離性を考慮すると0.1%以下が望ましい。
Crは、本願発明において、耐酸化性のために必須な元素で、高温でかつ尿素水が塗布される水蒸気環境において、良好な耐酸化性を確保するための元素である。製品の不動態皮膜中にCrを濃化させ、尿素SCRに使用した際に保護性の緻密な酸化スケールを形成させるためには、少なくとも10.0%以上Crを含有させることが必要であるため、下限を10.0%とした。一方、過度な添加は加工性を劣化させるため、Cr含有量の上限は20.0%とした。また、尿素水環境における耐食性や溶接性も考慮すると、Cr含有量は14〜18%が望ましい。
Tiは、C,N,Sと結合して耐食性、耐粒界腐食性、常温延性や深絞り性を向上させる元素である。この作用に加えて、本発明では、不動態皮膜の内層側および不動態皮膜と母地との界面にTiを酸化物で濃化させ、耐酸化性特にスケール剥離性を向上させる。この効果は0.05%以上のTiを含有させることにより発現するため、Ti含有量の下限を0.05%とした。また、一方、Tiを0.30%超で含有させると加工性が著しく劣化するため、Ti含有量の上限を0.30%とした。更に、耐酸化性や製造性を考慮すると、Ti含有量は0.07〜0.2%が望ましい。
Moは、耐食性を向上させる元素であるが、過剰な添加は加工性と耐酸化性を劣化させるとともに、合金コストアップにつながる。よって、Mo含有量は1.5%以下とした。更に、製造性、スケール密着性および合金コストを考慮すると、Mo含有量は0.3〜0.6%であることが望ましい。
Alは、脱酸元素として添加される他、鋼表層に濃化させることによって耐尿素性を向上させる元素であることが分かった。更に、Alは、耐酸化性を向上させる元素である。本願発明では、Alを不動態皮膜の内層側および不動態皮膜と母地との界面に酸化物として濃化させて、耐尿素性および水蒸気雰囲気における耐酸化性を向上させるため、Al含有量を0.03%以上とする。一方、過度な添加は加工性を劣化させるため、Al含有量の上限は0.5%とした。更に、製造性や溶接性の観点から、Al含有量は0.05〜0.15%が望ましい。
Nbは、耐粒界腐食性や高温強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加することが出来る。Nb含有量が0.5%超になると加工性が著しく劣化するため、上限は0.5%とする。更に、製造性、耐酸化性、合金コストを考慮すると、Nb含有量は0.005〜0.3%が望ましい。
Cuは、耐錆性や高温強度を向上させる元素であり、必要に応じて添加することが出来る。Cu含有量が1.5%超になると延性が著しく劣化するため、上限は1.5%とする。更に、製造性や耐酸化性を考慮すると、Cu含有量は0.3〜1.2%が望ましい。
Niは、耐錆性を向上させる元素であり、必要に応じて添加することが出来る。Ni含有量が3%超になるとオーステナイト相が生成し、耐酸化性が劣化する他、加工性が著しく劣化するため、上限は3%とする。更に、製造性、耐酸化性、合金コストを考慮すると、Ni含有量は0.5〜2%が望ましい。
Vは、耐食性を向上させる元素であるため、必要に応じて添加することが出来る。V含有量が1%超になると耐食性と加工性が著しく劣化するため、上限は1%とする。更に、製造性、耐酸化性、合金コストを考慮すると、V含有量は0.1〜0.5%が望ましい。
Snは、耐食性や高温強度を向上させる元素であるため必要に応じて添加することが出来る。Sn含有量が0.5%超になると製造性が著しく劣化するため、上限は0.5%とする。更に、加工性、耐酸化性、合金コストを考慮すると、Sn含有量は0.1〜0.3%が望ましい。
Bは、部品成形時の2次加工性を向上させる元素であり、必要に応じて添加することが出来る。B含有量が0.0020%超になると製造性や耐粒界腐食性が著しく劣化するため、上限は0.0020%とする。更に、加工性、耐酸化性、合金コストを考慮すると、B含有量は0.0003〜0.0010%が望ましい。
鋼組成は上記の様に限定されるが、本発明者らは鋼組成に加えて鋼板表面の不動態皮膜組成が水蒸気雰囲気における耐酸化性に大きく影響することを見出した。更に、該不動態皮膜が耐尿素性に影響することも見出した。
本発明において、鋼板の耐酸化性は、酸化に伴う酸化増量に加えて赤スケールと呼ばれるスケールが生じるか否かで判断する。図1は、酸化試験後の試験片を示した外観写真であり、図1(a)は赤スケールの発生した試験片の一例を示し、図1(b)は赤スケールの発生しなかった試験片の一例を示している。
図1(a)に示す赤スケールは、鋼板が水蒸気雰囲気の500℃程度の温度域で連続酸化された場合に酸化増量が増えて生じた厚い酸化スケールである。赤スケールの剥離(図1(a)に示す例においては、試験片の下部約1/3は、スケールが剥離している。)は、尿素SCRシステムにおけるNOx還元性能を劣化させる場合がある。
尿素SCR用フェライト系ステンレス鋼板は、鋳造−熱延−酸洗−冷延−焼鈍−酸洗工程を経て製品となる。本発明者らは鋼成分に加えて、冷延鋼板を酸洗する最終酸洗条件による不動態皮膜組成と下記酸化試験における酸化増量および赤スケール発生有無、耐尿素性を詳細に検討した。
酸化試験は、10%のOを含むアルゴンに加湿処理して20%水蒸気雰囲気とし、500℃で100時間連続して行なった。酸化試験の試験片には、縦20mm横20mmの大きさで、表面および裏面が最終酸洗ままであり、端面を#400研磨処理したものを用いた。
酸化試験の試験片を作成する際には、17.5%Cr−1.1%Mo−0.2%Ti−0.05%Si−0.12%Mn−0.07%Al−0.004%C−0.014%Nの組成を有する冷延・焼鈍板と、17.2%Cr−0.5%Mo−0.17%Ti−0.09%Si−0.07%Mn−0.09%Al−0.002%C−0.0009%Nの組成を有する冷延・焼鈍板とを、種々の酸洗法にて酸洗処理した鋼板を用いた。また、酸化試験の試験片に酸化試験を行う前に不動態皮膜中の組成を分析した。
本発明においては、不動態皮膜中の組成として、表面から深さ20nmまでの各元素濃度分布を測定して得られた、表面から20nm以内における各元素濃度によって構成される濃度比の最大値を用いた。表面から20nm以内における各元素濃度によって構成される濃度比の最大値を測定すれば、不動態皮膜の濃度測定は十分なされる。なぜなら、耐酸化性へ影響を及ぼす不動態皮膜はこの範囲の部位内にあるからである。各元素濃度分布の測定には、グロー放電発光分光分析装置(株式会社リガク製、GDA750)を用いた。
酸化試験の結果を図1および図2に示す。図2は、試験片の表面から20nm以内におけるCr、Si、Al,Ti、MnおよびFeの濃度によって構成される濃度比の最大値における(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値と、酸化試験後の試験片の酸化増量および赤スケール発生有無との関係を示すグラフである。なお、図2に示す(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)において、Cr、Ti、Al、Fe、Si、Mnは、それぞれ、Cr、Ti、Al、Fe、Si、Mnの含有量[質量%]である。また、図2に示す△は赤スケール無を示し、▲は赤スケール発生を示す。また、図1は、図2に酸化試験の結果を記載した複数の試験片のうちの一部の試験片の写真である。
図1および図2に示す様に、鋼板の不動態皮膜中の(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値は、酸化試験後の酸化増量および赤スケール発生有無に大きく影響する。図1および図2に示すように、鋼板の不動態皮膜中にCr、TiおよびAlを濃化させ、(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値を0.35以上にした場合、酸化増量が抑制され、赤スケールが生じない(図1(b)参照)。(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値が0.35以上になると、Cr、Ti、Alの保護性皮膜が生成し、水蒸気雰囲気で生成しやすく、保護性が小さいFeの酸化物(例えば、Fe,Fe)の生成が抑制されて、酸化増量が少なくなるとともに赤スケールが生成しなくなると推察される。
また、尿素SCRシステムにおいて、高濃度尿素に接する部分では当然ながら、耐尿素性が必要となる。
耐尿素性試験は、次のように行った。即ち、酸化試験において用いた試験片と同様の試験片を60℃、30%の尿素水溶液(尿素には、特級試薬を使用した。比液量は3.6ml・cm−2とした。)に144時間浸漬し、浸漬前後の試験片の重量変化より、腐食速度を求め、ICPSを用いて尿素水溶液中のFe,Cr,Ni,Cuの分析を行った。耐尿素性試験における腐食速度および尿素水溶液の分析結果が以下の条件(1)(2)をすべて満足した場合に耐尿素性を良好(○)と判断した。
(1)腐食速度が0.001g・m−2・h−1以下であること。
(2)Fe<0.5,Cr<0.2、Ni<0.2,Cu<0.2(以上、mg/kg)であること。
尚、上記条件(2)は、JIS K2247−1による「ディーゼル機関NOx還元添加材−AUS32−第一部:性状」(自動車規格JASO E502も同様の規格)において規定された不純物規格のうちのステンレスに関連した元素を抽出したものである。
酸化試験および耐尿素性試験の結果より、鋼板の不動態被膜中の(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値が0.35より大きく、かつ必要なAl量が存在した場合、高温酸化性と耐尿素性の両方を満足できることが分かった。以上の知見より、高温水蒸気雰囲気中で尿素水に曝される環境下で優れた耐酸化性および耐尿素性を有するフェライト系ステンレス鋼板を提供可能となる。
次に製造方法について説明する。
本発明の鋼板の製造方法は、製鋼−熱間圧延−酸洗−冷間圧延−焼鈍・酸洗の各工程よりなる。製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する組成を有する鋼を、転炉溶製し続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法(連続鋳造)に従ってスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。
熱間圧延された熱延鋼板は、必要に応じて酸洗される。また、熱延後の熱延板焼鈍は、生産性や材質を考慮して付与しても省略しても構わない。
冷間圧延条件について、ステンレス鋼板の冷間圧延は、通常ロール径が50〜100mm程度のゼンジミア圧延機でリバース圧延されるか、ロール径が400mm以上のタンデム式圧延機で一方向圧延されるかである。本発明ではいずれの冷間圧延方法を採用しても構わない。なお、タンデム式圧延はゼンジミア圧延に比べて生産性おいても優れている。また、加工性の指標であるr値を高くするために、ロール径が400mm以上のタンデム式圧延機で冷間圧延を施すことが好ましい。冷間圧延された冷延鋼板は、所定の条件で焼鈍される。
本発明では、焼鈍した後の冷延鋼板を酸洗する最終酸洗処理により所定の不動態皮膜組成を得る。フェライト系ステンレス鋼の酸洗条件としては、種々の酸洗方法がある。本発明者らは、Fe、Si、Mnを積極的に溶解してCr、Ti、Alを表面に濃化させることが重要であることを見出した。前記特許文献8〜11においては、フェライト系ステンレスの酸洗に関する技術が開示されている。しかしながら、特許文献8〜11には本願に記載される、Alを0.03〜0.5質量%、且つTiを0.05〜0.30質量%含有するフェライト系ステンレス鋼板は開示されていない。すなわち、耐高温酸化性及び耐尿素性を向上させる目的で、Cr、Ti、Alを表面に濃化させるために酸洗を行う技術は開示されていなかったのである。本発明者らは、このようなAl及びTi組成を有するフェライト系ステンレス冷延鋼板を、硝酸濃度が50〜200g/Lで温度が50〜80℃の溶液に4秒以上浸漬して酸洗することでCr,Ti,Alが表面に濃化し、表面20nm以内における濃度比(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)が0.35を超えることを見出した。更に、酸洗後に得られたフェライト系ステンレス鋼板及びそれを加工して製造されたタンク、パイプ、プレート、棒、スプリング等の内燃機関の尿素SCRシステム用部品が、耐高温酸化性と耐尿素性の両方を同時に満足することを見出した。
硝酸濃度が50g/Lに満たないと、酸洗による不動態皮膜の形成効果が充分に得られず、更にスケール残りが問題となる。また、硝酸濃度が200g/Lを超えると不動態皮膜の形成効果は飽和し、酸洗液コストが上昇してしまう。従って硝酸濃度は50〜200g/Lとした。
また、溶液温度が50℃に満たないと、鋼板表面の反応が不十分となり、目的とする不動態皮膜組成比を得ることが困難となる。更に、溶液温度が80℃を超えるとNOxの発生が問題となる。従って溶液温度は50〜80℃とした。
更に、浸漬時間は、あまり短いと不動態皮膜の組成比の調整が困難となり、スケール残りも問題となる。従って4秒以上とした。浸漬時間に上限は設けていないが、生産性に及ぼす影響を考えると100秒とするのが好ましい。更に好ましくは70秒である。
酸洗に用いる溶液には、弗酸を含有しても良く、酸洗において電解処理を施しても構わない。また、この酸洗の前処理として、NaOH+NaNOの溶融塩によるソルトバス法、NaSO、HSO、NaNO、NaSiFなどの溶液中で予備脱スケール処理する電解酸洗法を用いても良いが、デスケール処理性やCr、Ti,Alを不動態皮膜中に濃化させる観点から、ソルト処理を施すことが望ましい。
他工程の製造方法については特に規定しないが、熱延条件、熱延板厚、冷延鋼板の焼鈍温度、雰囲気などは適宜選択すれば良い。また、冷延・焼鈍後に調質圧延やテンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。
なお、上述した実施形態においては、上述した所定の組成を有するステンレス冷延鋼板を、硝酸濃度が50〜200g/Lで温度が50〜80℃の溶液に4秒以上浸漬して酸洗することにより、尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板を製造する方法や、尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板からなる尿素SCRシステム部品を例に挙げて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の尿素SCRシステム部品の製造方法は、酸洗前または酸洗後の上述した所定の組成を有するステンレス冷延鋼板を、部品形状に加工して尿素SCRシステム部材とし、その後、尿素SCRシステム部材を上記条件で酸洗して尿素SCRシステム部品とする方法であってもよい。この場合であっても、優れた耐酸化性及び耐尿素性を有する尿素SCRシステム部品が得られる。このような製造方法は、対象とする部品が強加工を必要とするものであって、ステンレス冷延鋼板として、酸洗により表層に不動態被膜が形成されている本発明のステンレス冷延鋼板を用いたとしても、部品形状に加工することによって不動態被膜が損傷を受けることが懸念され、そのために耐酸化性および耐尿素性が低下する懸念がある場合に、特に有効な方法である。
表1および表2に示す成分組成の鋼を溶製してスラブに鋳造し、スラブを熱間圧延後、熱延コイルを酸洗し、冷間圧延を行うことにより1.2mm厚の冷延鋼板とした。その後、焼鈍・酸洗を施して製品板とした。冷延鋼板の焼鈍温度は、850〜950℃とし、表3および表4に示す酸洗条件で酸洗、または酸洗および電解処理を行った。
製品板の表面から深さ20nmまでの各元素濃度分布を、グロー放電発光分光分析装置(株式会社リガク製、GDA750)を用いて測定し、表面から20nm以内における各元素濃度によって構成される濃度比の最大値における(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)の数値(不動態皮膜組成比(Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn))を算出した。その結果を表3および表4に示す。
このようにして得られた製品板から、前記の酸化試験と同様にして酸化試験の試験片を採取し、前記の酸化試験即ち、10%のOを含むアルゴンに加湿処理して20%水蒸気雰囲気とし、500℃で100時間連続して行う酸化試験を行ない、赤スケール発生有無を目視観察した。赤スケールの発生が見られたものを×とし、赤スケールの発生が見られなかったものを〇と評価した。
また、このようにして得られた製品板から、酸化試験において用いた試験片と同様の試験片を採取し、前記の耐尿素性試験と同様にして耐尿素性試験を行い、腐食速度および尿素水溶液の分析結果が上記の条件(1)(2)をすべて満足した場合、耐尿素性(○)とし、それ以外を(×)と判断した。
表3および表4から明らかなように、本発明で規定する成分組成および不動態皮膜組成比を有し、酸洗条件が本発明の範囲内であるNo.1〜No.13の鋼は、いずれも赤スケールの発生が無く、良好な酸化特性を示し、耐尿素性も〇となった。
これに対し、本発明の比較例であるNo.14〜No.29では、不動態皮膜組成比が低くなり、耐酸化性および耐尿素性が×となった。また、比較例であるNo.30では、耐尿素性が×となった。
比較例のNo.14、15の鋼は、それぞれCとNが上限外れで、不動態皮膜への特にCr濃化を阻害した結果、耐酸化性が劣る。No.16の鋼は、Siが上限外れで、不動態皮膜組成比が低くなり、スケール剥離が生じ易くなる。No.17の鋼は、Mnが上限外れで、Mnの酸化物が厚く発達することでスケール剥離が生じ易くなる。
No.18の鋼はCrが下限外れで、該環境では異常酸化が生じる。No.19の鋼はTi添加量が少なく、酸化スケール内層のTi酸化物が生成しないため、耐酸化性が劣化する。No.20の鋼はMoが上限外れで、コスト高になるとともに不動態皮膜中のCr等の元素濃化が抑制されて耐酸化性が悪くなる。No.21の鋼はAlが少なく、酸化スケール内層のAl酸化物が生成しないため、スケール剥離し易く耐酸化性が劣化する。
No.22の鋼はNbが上限外れでコスト高になり加工性が劣化するとともに表層にNbの濃化層が生じてCr,Ti,Alの拡散および濃化が抑制される。No.23の鋼はCuが上限外れで加工性が劣化するとともに、酸化スケールの最表層にCu酸化物が発達して耐酸化性が劣化する。No.24の鋼は、Niが上限外れで、コスト高になるとともに、オーステナイト相が生成しスケール剥離性が劣化する。No.25はVが上限外れで、コスト高になるとともに不動態皮膜中のCr等の元素濃化が抑制されて耐酸化性が悪くなる。
No.26の鋼はSnが上限外れで、コスト高や製造性が著しく劣化する他、長時間連続酸化で表層粒界にSnが粒界酸化してスケール剥離を伴う。No.27の鋼はBが上限外れで加工性が劣化する他、粒界にCr炭窒化物が生成し耐酸化特性を劣化させる。
No.28と29の鋼は、鋼成分は本発明範囲内であるが、酸洗条件が外れており、製品表面の不動態皮膜組成比が低くなって、赤スケールが発生する。
No.30の鋼は、Alをほとんど含まないが、Ti及びCr含有量が高いため、不動態組成皮膜比(Cr+Al+Ti)/(Fe+Si+Mn)の数値が本発明を満たす。従って耐酸化特性は良好だが、Alが欠乏しているため、耐尿素性において劣る。
本発明例において良好な耐酸化性及び耐尿素性を示した鋼板(製品板)は、尿素SCRシステム用のタンク,パイプ、プレート、棒、スプリング等の部品に簡便に加工することが可能であり、そのような部品及びそれを用いて製造した尿素SCRシステムは、耐酸化性及び耐尿素性に優れ、良好な性能を示すものである。
また、劣勢な特性を示した比較例の鋼板(製品板)を用いて製造した部品及びそれを用いて製造した尿素SCRシステムは、耐酸化性及び耐尿素性において劣勢である。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば高価な合金元素を多量に添加せずとも尿素SCRシステムに好適で耐酸化特性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供することが出来、特にディーゼル自動車の尿素SCRシステムに適用することにより、優れた尿素SCRシステム用部品を製造することができる。この部品を用いて尿素SCRシステムを製造することにより環境対策に大きく寄与することが可能となる。

Claims (5)

  1. 質量%にて、C:0.010%以下、N:0.020%以下、Si:0.5%以下、Mn:0.5%以下、Cr:10.0〜20.0%、Ti:0.05〜0.30%、Al:0.03〜0.5%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるとともに、表面から20nm以内におけるCr、Si、Al,Ti、MnおよびFeの濃度によって構成される濃度比の最大値が以下の式に示す関係を有し、耐高温酸化性および耐尿素性に優れることを特徴とする尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板。
    (Cr+Ti+Al)/(Fe+Si+Mn)>0.35
    上記式において、Cr、Ti、Al、Fe、Si、Mnは、それぞれ、Cr、Ti、Al、Fe、Si、Mnの含有量[質量%]である。
  2. 質量%にて、Nb:0.5%以下、Cu:1.5%以下、Ni:3%以下、V:1%以下、Sn:0.5%以下、B:0.0020%以下の1種以上を含有し、耐高温酸化性および耐尿素性に優れることを特徴とする請求項1記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 請求項1または2記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板を製造する方法であって、請求項1または2記載の組成を有するステンレス冷延鋼板を、硝酸濃度が50〜200g/Lで温度が50〜80℃の溶液に4秒以上浸漬して酸洗する工程を含むことを特徴とする尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  4. 請求項1または2記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板からなることを特徴とする尿素SCRシステム部品。
  5. さらに質量%にて、Mo:1.5%以下を含有することを特徴とする請求項1または2記載の尿素SCRシステム部品用フェライト系ステンレス鋼板。
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