JPWO2020241319A1 - はんだ合金、ソルダペースト、はんだボール、ソルダプリフォーム、およびはんだ継手 - Google Patents

はんだ合金、ソルダペースト、はんだボール、ソルダプリフォーム、およびはんだ継手 Download PDF

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Abstract

温度サイクル特性に優れ、黄色変化が抑制されるとともに優れた濡れ性が維持され、さらにはソルダペーストの経時的な粘度上昇を抑制することができるはんだ合金、このはんだ合金を用いたソルダペースト、はんだボール、およびはんだ継手を提供する。本発明のはんだ合金は、質量%で、Ag:1.0〜5.0%、Cu:0.5〜3.0%、Sb:0.5〜7.0%、As:0.0040〜0.025%、および残部がSnからなり、その表面に所定のAs濃化層を有するものである。

Description

本発明は、はんだ合金、ソルダペースト、はんだボール、ソルダプリフォーム、およびはんだ継手に関する。
電子機器の飛躍的発展に伴って各種接合技術、とりわけはんだ接合技術においても多くの技術革新が急速になされ、はんだ材料としても特定用途毎の高度の使い分けが行われるようになってきた。例えば、細線化あるいは細粒化に適する材料、高強度を有する材料、さらには高い耐食性を特定環境下で発揮する材料等、その都度要求される高度な仕様に応じて材料開発がなされてきた。特に、今日の電子機器は大型化の傾向があり、はんだ付けに対する信頼性への要求は特に厳しく、そのために材料開発にも高度の技術が求められるようになってきている。
高密度実装を必要とする電子機器は、宇宙環境(通信衛星、気象衛星、軍事衛星等の人工衛星)や自動車環境等の環境条件のように厳しい雰囲気下で使用され、かつ、故障発生が重大な事故につながる電子機器でも必要となってきている。特にプリント基板と電子部品とを接合するはんだ継手が一箇所でも剥離してしまうと、導通せずに電子機器の機能が全く果たせなくなるという重大な事故につながる。従って、これらの電子機器では、はんだ継手が剥離しにくいようなはんだ合金を用いなければならず、そのためはんだ付けにも高度の信頼性が求められる。
ところで、人工衛星が飛ぶ宇宙空間では熱媒体である空気が存在しないため、人工衛星は太陽の光が直接当たる時には例えば125℃というように、大変高温となり、一方、太陽の光が地球に遮られて当たらない時には例えば−40℃の低温となる。しかもこれは衛星の自転毎に繰り返される。
このように、人工衛星はその自転により高温と低温の環境に曝されるという熱疲労を受けるため、人工衛星に搭載する電子機器には、温度サイクル特性に優れたはんだを用いなければならない。はんだ継手が熱疲労を受けると、はんだ合金ばかりでなく、はんだ付けされた電子部品のリードやプリント基板等が熱膨張と熱収縮を繰り返す。温度サイクルに弱いはんだでは、はんだ自体にクラックが発生して、はんだ継手が剥離してしまう。
また、人工衛星が高温に曝されている時に、はんだ継手が安定した状態を保つように、人工衛星の電子機器に用いるはんだは、例えば150℃というような高温でも溶融せず、しかも接着強度が強いという高温特性をも備え持った高融点はんだ合金でなければならない。
従来よりSn主成分の高融点はんだ合金はいくつか提案されている。例えば特許文献1には、継手の接合用としてAg−Sb−Cu−Bi−Sn系高温はんだが開示されている。これはもっぱら従来のCd−Zn系の高融点はんだ合金の代替物として開発されている。しかし、はんだ自体の引張り強さを向上させるために0.5〜2.0%のBiの添加は必須である。
一方、前述のはんだ合金は、主成分がSnであるためにはんだ合金の表面が酸化すると酸化膜であるSnO被膜を形成して黄色に変化する。SnO被膜の膜厚が厚くなるほど、はんだ表面の黄色度は高くなる。はんだ合金の表面が黄色に変化していて金属光沢を失っていると、はんだ合金の画像認識の自動処理の際に、はんだ合金が検出されず、実際には存在しているはんだ合金が認識されないことがある。
従来の表面の黄色変化を抑制したはんだ材料としては、例えば特許文献2には、Sn含有量が40%質量以上の合金からなる金属材料またはSn含有量が100質量%である金属材料からなるはんだ層と、はんだ層の表面を被覆する被覆層を備えた直径が1〜1000μmの球体であり、被覆層は、はんだ層の外側にSnO膜が形成され、SnO膜の外側にSnO膜が形成され、被覆層の厚さは、0nmより大きく4.5nm以下であるはんだ材料が開示されている。このはんだ材料は、SnO膜を形成することにより、はんだ材料表面の黄色変化を抑制している。
特開昭49−38858号 特許第5807733号 特許第3027441号
しかし、特許文献1に記載のSn主成分の高融点はんだ合金は、高温で溶融しにくいことと耐高温強度だけが要求され、温度サイクル特性については何ら考慮されることはなかった。このため、特許文献1に記載のはんだ合金は、一般にはんだ合金を硬くて脆くするBiを含有する。現在の仕様の例としては、温度サイクル特性として、従来よりも更に過酷な条件として、−55℃〜135℃、500サイクル以上の特性を満足することが求められている。
また、温度サイクル特性に加えて、はんだ合金表面における黄色変化の抑制効果は、はんだ合金の画像認識の自動処理において重要な要素である。しかし、特許文献2に記載のはんだ材料は、SnO膜を形成するために、高エネルギー状態のプラズマ照射等が必要であり、製造工程が複雑となってしまう。また、従来、Snを主成分とするはんだ合金は、その表面の黄色変化を抑制するために、P、Ge、Gaなどの元素が添加されていた。これらの元素は、Snよりも酸化物生成自由エネルギーが小さく、非常に酸化されやすい。したがって、溶融はんだからはんだボールを形成する際に、SnではなくP、Ge、Gaなどの元素が酸化されて表面に濃化し、はんだ表面の黄色変化を抑制することができる。
ところが、一般的にはんだ合金には濡れ性が求められるところ、はんだ合金表面の黄色変化を抑制するためにこれらの元素の含有量を多くし濃化の度合いを向上させると、はんだ合金の濡れ性が低下してしまう。
さらに、電子機器の基板への電子部品の接合・組立てにおいては、ソルダペーストを使用したはんだ付けがコスト面及び信頼性の面で有利である。ソルダペーストの基板への塗布は、例えば、メタルマスクを用いたスクリーン印刷により行われる。ソルダペーストの印刷性を確保するために、ソルダペーストの粘度は適度である必要がある。
ここで、黄色変化が抑制されたはんだ粉末を用いた場合、濡れ性の劣化を補うため、ソルダペーストに用いる活性剤の含有量を増加したり高活性のものを使用することができる。しかし、活性剤などにより濡れ性を向上させようとすると、ソルダペーストの粘度が経時的に上昇してしまう。このため、温度サイクル特性、黄色変化の抑制効果に加えて、ソルダペーストに用いた際の増粘抑制効果をも同時に満たすことは、従来のはんだ合金では達成し得ず、更なる検討が必要であった。
本発明が解決しようとする課題は、温度サイクル特性に優れ、黄色変化が抑制されるとともに優れた濡れ性が維持され、さらにはソルダペーストの経時的な粘度上昇を抑制することができるはんだ合金、このはんだ合金を用いたソルダペースト、はんだボール、ソルダプリフォーム、およびはんだ継手を提供することである。
本発明者らは、はんだ合金の脆化を抑制して温度サイクル特性を向上させるため、特許文献1に記載のはんだ合金からBiを省いたSn−Ag−Cu−Sbはんだ合金に着目した。このはんだ合金は特許文献3に記載されており、所定量のAg、Cu、およびSbを添加すると、温度サイクル特性が著しく向上する優良な合金である。
ここで、特許文献3には、温度サイクル特性は他の金属が添加されると劣化するため、他の金属は不純物として混入されるもの以外は添加されないようにすることが記載されている。つまり、Sn−Ag−Cu−Sbはんだ合金は、温度サイクル特性を向上させるために他の元素を含有することができないとされてきた。
本発明者らは、黄色変化を抑制する元素として、Sn−Ag−Cu−Sbはんだ合金に、敢えて、種々の元素の中からAsを微量添加することを試みた。特許文献3の記載から、このはんだ合金にAsを添加すると温度サイクル特性が低下するとも思われる。また、Snを主成分とするはんだ合金では前述のようにSnO膜を形成することが知られており、また、Asを含有するはんだ合金は通常濡れ性が劣るとされているため、Asをはんだ合金に添加することは避けられていた。しかしながら、予想外にも、Asを含有するSn−Ag−Cu−Sb−As系はんだ合金は、優れた温度サイクル特性を示し、はんだ合金の表面にAs濃化層が形成されることで黄色変化が抑制されるとともに優れた増粘抑制効果が得られ、高い濡れ性が維持される知見が得られ、本発明は完成された。
これらの知見から得られた本発明は以下のとおりである。
(1)質量%で、Ag:1.0〜5.0%、Cu:0.5〜3.0%、Sb:0.5〜7.0%、As:0.0040〜0.025%、および残部がSnからなり、As濃化層を有し、As濃化層の存在は以下の判定基準により確認されるものであり、As濃化層は、はんだ合金の最表面からSiO換算の深さで2×D1(nm)までの領域であり、As濃化層のSiO換算の厚みが0.5〜8.0nmであることを特徴とするはんだ合金。
(判定基準)
5.0mm×5.0mmの大きさのサンプルにおいて、任意の700μm×300μmのエリアを選定し、イオンスパッタリングを併用したXPS分析を行う。サンプル1個につき1つのエリアを選定し、3つのサンプルについてそれぞれ1回ずつ、合計3回の分析を行う。全3回の分析の全てにおいてS1>S2となる場合、As濃化層が形成されていると判断する。
ここで、
S1:XPS分析のチャートにおいて、SiO換算の深さが0〜2×D1(nm)の領域におけるAsの検出強度の積分値
S2:XPS分析のチャートにおいて、SiO換算の深さが2×D1〜4×D1(nm)の領域におけるAsの検出強度の積分値
D1:XPS分析のチャートにおいて、O原子の検出強度が最大となったSiO換算の深さ(Do・max(nm))より深い部分において、O原子の検出強度が最大検出強度(Do・maxにおける強度)の1/2の強度となる最初のSiO換算の深さ(nm)。
(2)上記(1)に記載のはんだ合金からなるはんだ粉末とフラックスからなるソルダペースト。
(3)上記(1)に記載のはんだ合金からなるはんだボール。
(4)上記(1)に記載のはんだ合金からなるソルダプリフォーム。
(5)上記(1)に記載のはんだ合金から形成されたはんだ継手。
図1は、はんだボール表面のXPS分析のチャートである。 図2は、はんだボール表面のXPS分析のチャートである。 図3は、はんだボール表面のXPS分析のチャートである。
本発明を以下により詳しく説明する。本明細書において、はんだ合金組成に関する「%」は、特に指定しない限り「質量%」である。
1.はんだ合金
(1)Ag:1.0〜5.0%
Agは温度サイクル特性改善に著しく効果があるが、Ag含有量が1.0%以下であると温度サイクル特性を改善する効果が十分でない。Ag含有量の下限は1.0%以上であり、好ましくは1.2%以上であり、より好ましくは2.5%以上であり、さらに好ましくは3.0%以上である。
一方Ag含有量が5.0%を超えると液相線温度が高くなるため、高い温度ではんだ付けを行わなければならず、電子部品やプリント基板を熱損傷させてしまう。Ag含有量の上限は5.0%以下であり、好ましくは4.0%以下であり、より好ましくは3.9%以下であり、さらに好ましくは3.4%以下である。
(2)Cu:0.5〜3.0%
Agが少量添加されたSn主成分のはんだ合金に少量のCuを添加すると、Agとの相乗作用により、温度サイクル特性がさらに改善される。Cu含有量が0.5%より少ないと、その効果が現われない。Cu含有量の下限は0.5%以上であり、好ましくは0.6%以上である。
一方Cu含有量が3.0%を超えると液相線温度が急激に上昇し、Agの多量添加と同様、はんだ付け温度を高くして電子部品やプリント基板に熱損傷を与えることになるばかりでなく、Sn−Cuの金属間化合物が多量に発生してマトリックスが砂状となり、かえって温度サイクル特性が劣化する。Cu含有量の上限は3.0%以下であり、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.0%以下であり、さらに好ましくは0.7%以下である。
(3)Sb:0.5〜7.0%
本発明では、Sn主成分に少量のAgとCu、少量のSbを添加しただけで温度サイクル特性が顕著に改善できるものである。
Sb含有量は、0.5%より少ないと温度サイクル特性の向上に効果がない。Sb含有量の下限は0.5%以上であり、好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは2.0%以上である。一方、Sb含有量が7.0%より多いとはんだ合金の濡れ性が劣化する。Sb含有量の上限は7.0%以下であり、好ましくは6.0%以下であり、より好ましくは5.0%以下であり、さらに好ましくは4.0%以下であり、特に好ましくは3.0%以下である。
(4)As:0.0040〜0.025%
Asははんだ合金の表面にAs濃化層を形成するため、黄色変化を抑制する。また、ソルダペースト中に本発明に係るはんだ合金をはんだ粉末として添加すると増粘抑制効果を発揮することができる。As含有量の下限は、Asを含有する効果が十分に発揮するようにするため、0.0040%以上にする必要がある。一方、Asが0.025%を超えると濡れ性が劣ることがある。As含有量の上限は、0.025%以下であり、好ましくは0.020%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
本発明においてAsを含有することにより形成されるAs濃化層とは、As濃度が、はんだ材料中の平均As濃度(はんだ合金の質量に対するAsの質量の割合)より高い領域をいい、具体的にははんだ合金の最表面からSiO換算の深さで2×D1(nm)までの領域であり、後述の判定基準により存在を確認することができる。As濃化層は、はんだ合金の表面側の少なくとも一部に存在していることが好ましく、表面全体を覆っていることが好ましい。
本発明のようにAsを含有することによりAs濃化層が形成されると、黄色変化が抑制されるとともに高い濡れ性が維持され、ソルダペーストの粘度上昇が抑制できる理由は明らかでないが、以下のように推察される。粘度上昇は、SnやSn酸化物とソルダペースト(フラックス)に含まれる活性剤等の各種添加剤との間で生じる反応により、塩が形成されたり、はんだ粉末が凝集すること等によって引き起こされると考えられる。本発明に係るはんだ合金のように表面にAs濃化層が存在すると、はんだ粉末とフラックスの間にAs濃化層が介在することになり、上述のような反応が起こりにくくなるため、上記の効果が同時に発現すると推察される。
(4−1)As濃化層の判定基準
5.0mm×5.0mmの大きさのサンプル(はんだ材料が板状でない場合には、5.0mm×5.0mmの範囲にはんだ材料(はんだ粉末、はんだボール等)を隙間なく敷き詰めたもの)において、任意の700μm×300μmのエリアを選定し、イオンスパッタリングを併用したXPS分析を行う。サンプル1個につき1つのエリアを選定し、3つのサンプルについてそれぞれ1回ずつ、合計3回の分析を行った。全3回の分析の全てにおいてS1≧S2となる場合、As濃化層が形成されていると判断する。
ここで、S1、S2及びD1の定義は以下の通りである。
S1:上述のサンプルについて行ったXPS分析のチャートにおいて、SiO換算の深さが0〜2×D1(nm)の領域におけるAsの検出強度の積分値
S2:XPS分析のチャートにおいて、SiO換算の深さが2×D1〜4×D1(nm)の領域におけるAsの検出強度の積分値
D1:XPS分析のチャートにおいて、O原子の検出強度が最大となったSiO換算の深さ(Do・max(nm))より深い部分において、O原子の検出強度が最大検出強度(Do・maxにおける強度)の1/2の強度となる最初のSiO換算の深さ(nm)。
上記のAs濃化層の判定基準の詳細な条件は、実施例に記載したとおりである。本発明に係るはんだ合金のように、表面がAs濃化層を有することにより、はんだ合金の黄色変化を抑制するとともにソルダペーストの粘度上昇を抑制することができる。
(4−2)As濃化層の厚み
As濃化層の厚み(SiO換算)は、0.5〜8.0nmであり、0.5〜4.0nmがより好ましく、0.5〜2.0nmが最も好ましい。As濃化層の厚みが上記範囲内であれば、黄色変化が抑制され、濡れ性に優れたはんだ材料が得られる。
(4−3)黄色度
本発明において、はんだ合金のL*a*b*表色系における黄色度b*は、0〜10.0が好ましく、3.0〜5.7がより好ましく、3.0〜5.0が最も好ましい。はんだ材料のL*a*b*表色系における黄色度b*が上記範囲内であれば、黄色度が低く、はんだが金属光沢を有するため、はんだ継手の画像認識の自動処理の際に、はんだ継手が的確に検出される。
本発明において、黄色度b*は、CM−3500d2600d型分光測色計(コニカミノルタ社製)を使用して、D65光源、10度視野において、JIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」に準じて分光透過率を測定して、色彩値(L*、a*、b*)から求めることができる。
(5)残部:Sn
本発明に係るはんだ合金の残部はSnである。前述の元素の他に不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。また、後述するように、本発明では含有しない元素が不可避的不純物として含有されても前述の効果に影響することはない。
(6)Bi、Pb
本発明に係るはんだ合金では、Biははんだ合金を硬くて脆くする元素であるため、含有しない方がよい。Pbは、ヨーロッパでは、RoHS(Restriction of
Hazardous Substances)指令により、電子・電気機器に含まれる特定有害物質としてPbの使用量が制限されているため、含有しない方がよい。
2.ソルダペースト
本発明に係るソルダペーストはフラックスとはんだ粉末を含む。
(1)フラックスの成分
ソルダペーストに使用されるフラックスは、有機酸、アミン、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物、チキソ剤、ロジン、溶剤、界面活性剤、ベース剤、高分子化合物、シランカップリング剤、着色剤の何れか、または2つ以上の組み合わせで構成される。
有機酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、プロピオン酸、2,2−ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が挙げられる。
アミンとしては、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−ウンデシルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−エチル−4′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2′−メチルイミダゾリル−(1′)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、エポキシ−イミダゾールアダクト、2−メチルベンゾイミダゾール、2−オクチルベンゾイミダゾール、2−ペンチルベンゾイミダゾール、2−(1−エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2−ノニルベンゾイミダゾール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]、6−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−tert−オクチル−6′−tert−ブチル−4′−メチル−2,2′−メチレンビスフェノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2′−[[(メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1−(1′,2′−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1−[(2−エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6−ビス[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]−4−メチルフェノール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−フェニルテトラゾール等が挙げられる。
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素を反応させた化合物であり、アミンとしては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられ、ハロゲン化水素としては、塩素、臭素、ヨウ素の水素化物が挙げられる。
有機ハロゲン化合物としては、trans−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1−ブロモ−2−ブタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、3−ブロモ−1−プロパノール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、1,3−ジブロモ−2−プロパノール、2,3−ジブロモ−1−プロパノール、2,3−ジブロモ−1,4−ブタンジオール、2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール等が挙げられる。
チキソ剤としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としては、モノアマイド系チキソ剤、ビスアマイド系チキソ剤、ポリアマイド系チキソ剤が挙げられ、具体的には、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p−トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。ソルビトール系チキソ剤としては、ジベンジリデン−D−ソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール等が挙げられる。
ベース剤としてはノニオン系界面活性剤、弱カチオン系界面活性剤、ロジン等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、脂肪族アルコールポリオキシエチレン付加体、芳香族アルコールポリオキシエチレン付加体、多価アルコールポリオキシエチレン付加体等が挙げられる。
弱カチオン系界面活性剤としては、末端ジアミンポリエチレングリコール、末端ジアミンポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、脂肪族アミンポリオキシエチレン付加体、芳香族アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシエチレン付加体が挙げられる。
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びに該原料ロジンから得られる誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、精製ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物等が挙げられ、二種以上を使用することができる。また、ロジン 系樹脂に加えて、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、及び変性キシレン樹脂から選択される少なくとも一種以上の樹脂をさらに含むことができる。変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等を使用することができる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等を使用することができる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等を使用することができる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。アルコール系溶剤としてはイソプロピルアルコール、1,2−ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,2′−オキシビス(メチレン)ビス(2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2−トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール類、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド等が挙げられる。
(2)フラックスの含有量
フラックスの含有量は、ソルダペーストの全質量に対して5〜95%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。この範囲であると、はんだ粉末に起因する増粘抑制効果が十分に発揮される。
(3)はんだ粉末
本発明に係るソルダペーストで用いるはんだ粉末は、球状粉末であることが好ましい。球状粉末であることによりはんだ合金の流動性が向上する。
また、はんだ合金が球状粉末である場合、JIS Z 3284−1:2014における粉末サイズの分類(表2)において記号1〜8に該当するサイズ(粒度分布)を有していると、微細な部品へのはんだ付けが可能となる。粒子状はんだ材料のサイズは、記号4〜8に該当するサイズであることがさらに好ましく、記号5〜8に該当するサイズであることがより好ましい。真球度は0.90以上が好ましく、0.95以上がより好ましく、0.99以上が最も好ましい。
本発明において、球状粉末であるはんだ合金の球径及び真球度は、最小領域中心法(MZC法)を用いるCNC画像測定システム(ミツトヨ社製のウルトラクイックビジョンULTRA QV350−PRO測定装置)を使用して測定される。実施形態において、真球度とは真球からのずれを表し、例えば500個の各ボールの直径を長径で割った際に算出される算術平均値であり、値が上限である1.00に近いほど真球に近いことを表す。
(4)ソルダペーストの製造方法
本発明に係るソルダペーストは、当業界で一般的な方法により製造される。まず、はんだ粉末の製造は、溶融させたはんだ材料を滴下して粒子を得る滴下法や遠心噴霧する噴霧法、バルクのはんだ材料を粉砕する方法等、公知の方法を採用することができる。滴下法や噴霧法において、滴下や噴霧は、粒子状とするために不活性雰囲気や溶媒中で行うことが好ましい。そして、上記各成分を加熱混合してフラックスを調製し、フラックス中に上記はんだ粉末を導入し、攪拌、混合して製造することができる。
3.はんだボール
本発明に係るはんだ合金は、はんだボールとして使用することができる。はんだボールとして使用する場合は、本発明に係るはんだ合金を、当業界で一般的な方法である滴下法を用いてはんだボールを製造することができる。また、はんだボールを、フラックスを塗布した1つの電極上にはんだボールを1つ搭載して接合するなど、当業界で一般的な方法で加工することによりはんだ継手を製造することができる。はんだボールの粒径は、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上であり、特に好ましくは30μm以上である。はんだボールの粒径の上限は好ましくは3000μm以下であり、より好ましくは1000μm以下であり、さらに好ましくは600μm以下であり、特に好ましくは300μm以下である。
4.ソルダプリフォーム
本発明に係るはんだ合金は、プリフォームとして使用することができる。プリフォームの形状としては、ワッシャ、リング、ペレット、ディスク、リボン、ワイヤー等が挙げられる。
5.はんだ継手
本発明に係るはんだ合金は、2種以上の各種部材を接合する継手として使用することができる。接合部材に限定はなく、例えば、電子機器部材の継手としても有用である。すなわち、本発明に係るはんだ継手は電極の接続部をいい、一般的なはんだ付け条件を用いて形成することができる。
6.はんだ合金の形成方法
本発明に係るはんだ合金の製造方法に限定はなく、原料金属を溶融混合することにより製造することができる。
はんだ合金中にAs濃化層を形成する方法にも限定はない。As濃化層の形成方法の一例としては、はんだ材料を酸化雰囲気(空気や酸素雰囲気)中で加熱することが挙げられる。加熱温度に限定はないが、例えば、40〜200℃とすることができ、50〜80℃であってもよい。加熱時間にも限定はなく、例えば、数分〜数日間、好ましくは数分〜数時間とすることができる。十分な量のAs濃化層を形成するためには、加熱時間は10分以上、さらには20分以上とすることが好ましい。前述のはんだ粉末、はんだボール、ソルダプリフォームも例えばこの加熱処理を行うことによりAs濃化層が形成される。
本発明に係るはんだ合金は、その原材料として低α線材を使用することにより低α線合金を製造することができる。このような低α線合金は、メモリ周辺のはんだバンプの形成に用いられるとソフトエラーを抑制することが可能となる。
表1および表2のはんだ合金(質量%)からなるはんだ粉末と表3に示すフラックスとを、フラックスとはんだ粉末との質量比(フラックス:はんだ粉末)が11:89となるように加熱撹拌した後、冷却することによりソルダペーストを作製した。このソルダペーストを用いて、1.温度サイクル特性、2.As濃化の有無、および3.増粘抑制を評価した。また、表1および表2のはんだ合金からなるはんだボールを用いて、4.黄色変化、および5.はんだ濡れ性を評価した。
本実施例で使用したはんだ粉末は、平均粒径が21μmであり、JIS Z3284−1:2014の粉末サイズ分類(表2)の5に該当するものを用い、大気中において乾燥装置を用いて60℃で30分間加熱して得られた。比較例11〜比較例13のみ加熱処理を行わないはんだ粉末を用いた。
1.温度サイクル特性
前述のように作製したソルダペーストをプリント基板に塗布し、その上に各種電子部品を載置してからリフロー炉でプリント基板と電子部品のはんだ付けを行った。このようにしてはんだ付けされたプリント基板を−55℃と+130℃の環境の中に繰り返し30分間ずつ置くという熱衝撃試験を行った。クラックの発生数が10%以上となるサイクル数をカウントし、500サイクル以上となったものを〇とした。
2.As濃化層の有無
As濃化層の有無は、XPS(X線光電分光法:X−ray Photoelectron Spectroscopy)による深さ方向分析を用いて以下の様に評価した。
(分析条件)
・分析装置:微小領域X線光電子分光分析装置(クレイトス・アナリティカル社製AXIS Nova)
・分析条件:X線源 AlKα線、X線銃電圧 15kV、X線銃電流値 10mA、分析エリア 700μm×300μm
・スパッタ条件:イオン種 Ar+、加速電圧 2kV、スパッタリングレート 0.5nm/min(SiO換算)
・サンプル:カーボンテープを貼ったステージ上に、表1および表2に示す合金組成を有するはんだ粉末を隙間なく平坦に敷き詰めたものを3つ用意し、サンプルとした。ただし、サンプルの大きさは5.0mm×5.0mmとした。このはんだ粉末は、前述のソルダペーストを作製する際に用いたものである。
(評価手順)
5.0mm×5.0mmの大きさのサンプルの中から、任意の700μm×300μmのエリアを選定し、イオンスパッタリングを行いながらSn、O及びAsの各原子についてXPS分析を行い、XPS分析のチャートを得た。サンプル1個につき1つのエリアを選定し、3つのサンプルについてそれぞれ1回ずつ、合計3回の分析を行った。
XPS分析により得られたチャートの一例を図1〜3に示す。図1〜3は、同一のサンプルについて縦軸の検出強度(cps)のスケールを変更したものであり、横軸はスパッタ時間から算出したSiO換算の深さ(nm)である。XPS分析のチャートにおいては、縦軸は、検出強度(cps)であり、横軸は、スパッタ時間(min)又はスパッタ時間からSiO標準試料のスパッタエッチングレートを用いて算出したSiO換算の深さ(nm)のいずれかから選択できるが、図1〜3においては、XPS分析のチャートにおける横軸を、スパッタ時間からSiO標準試料のスパッタエッチングレートを用いて算出したSiO換算の深さ(nm)とした。
そして、各サンプルのXPS分析のチャートにおいて、O原子の検出強度が最大となったSiO換算の深さをDo・max(nm)とした(図2参照)。そして、Do・maxより深い部分において、O原子の検出強度が、最大検出強度(Do・maxにおける強度)の1/2の強度となる最初のSiO換算の深さをD1(nm)とした。
次いで、各サンプルのXPS分析のチャートにおいて、最表面から深さ2×D1までの領域(SiO換算の深さが0〜2×D1(nm)の領域)におけるAsの検出強度の積分値(S1)と、深さ2×D1からさらに2×D1だけ深い部分までの領域(SiO換算の深さが2×D1〜4×D1(nm)の領域)におけるAsの検出強度の積分値(S2)(図3参照)とを求め、その比較を行った。
そして、以下の基準に基づいて評価を行った。
・全3回の測定の全てにおいてS1>S2となる
:As濃化層が形成されている(○)
・全3回の測定のうちの2回以下の回数でS1>S2となる
:As濃化層が形成されていない(×)
3.増粘抑制
上記「1.温度サイクル特性」で用いたソルダペーストについて、JIS Z 3284−3:2014の「4.2 粘度特性試験」に記載された方法に従って、回転粘度計(PCU−205、株式会社マルコム製)を用い、回転数:10rpm、測定温度:25℃にて、粘度を12時間測定し続けた。そして、初期粘度(撹拌30分後の粘度)と12時間後の粘度とを比較し、以下の基準に基づいて増粘抑制効果の評価を行った。
12時間後の粘度 ≦ 初期粘度×1.2 :経時での粘度上昇が小さく良好(○)
12時間後の粘度 > 初期粘度×1.2 :経時での粘度上昇が大きく不良(×)
4.黄色変化
表1および表2に示す合金組成を有するはんだボール(球径0.3mm)を大気中において乾燥装置を用いて60℃で30分間加熱処理した後、空気雰囲気、200℃の恒温槽中で2時間加熱した。L*a*b*表色系における黄色度b*について、加熱前及び加熱後のはんだボールの測定を行い、加熱後のb*から加熱前のb*を引いた増加量(Δb*)を算出した。
黄色度b*は、CM−3500d2600d型分光測色計(コニカミノルタ社製)を使用して、D65光源、10度視野において、JIS Z 8722:2009「色の測定方法−反射及び透過物体色」に準じて分光透過率を測定して、色彩値(L*、a*、b*)から求めた。なお、色彩値(L*、a*、b*)は、JIS Z 8781−4:2013の規格に基づいている。
Δb*の値がΔb*(基準)の50%以下である :◎(非常に良好)
Δb*の値がΔb*(基準)の50%を超え70%以下である:○(良好)
Δb*の値がΔb*(基準)の70%より大きい :×(不可)
5.はんだ濡れ性
Bare−Cu(裸銅)の電極パッド(基板に設けた電極の開口径(Solder Resist Opening): 0.24mm)に、フラックスWF−6400(千住金属工業社製)を厚みが0.115mmとなるように印刷し、その上に「4.黄色変化」で用いたはんだボールをマウントした。はんだボールをマウントした電極パッドを、25℃から250℃まで昇温速度1℃/secで昇温し、その後N雰囲気下で280℃まで昇温速度3℃/secで昇温し、リフローした。リフロー後に、はんだボールをマウントした電極パッドを、蒸留水中に浸漬し、1分間超音波洗浄を行った。はんだ付けされずに洗浄工程でなくなってしまったバンプ数(ミッシングバンプ数)をカウントし、以下の基準に基づいて評価を行った。
100バンプ中のミッシングバンプが0個 :◎(非常に良好)
100バンプ中のミッシングバンプが1〜5個 :○(良好)
100バンプ中のミッシングバンプが6個以上 :×(不可)
6.総合評価
上記全ての試験が「〇」又は「◎」の場合に「〇」、いずれかの試験一つでも「×」があれば「×」とした。
結果を表1および表2に示す。
Figure 2020241319

Figure 2020241319
Figure 2020241319
表1および表2に示すように、実施例では、いずれも、温度サイクル特性に優れ、As濃化層を有し、ペーストの増粘や黄色変化が抑制され、さらには濡れ性にも優れることがわかった。一方、比較例1〜10は、いずれの合金組成においても本発明の要件の少なくとも1つを満たさないため、評価項目の少なくとも1種が劣った。比較例1〜3および比較例6はAsを含有しないため、As濃化層の有無の評価を行わなかった。また、比較例11〜13は加熱処理を行わなかったため、Asの表面濃化が確認できず、ソルダペーストの増粘が抑制されず、はんだ合金が黄色変化することがわかった。

Claims (5)

  1. 質量%で、Ag:1.0〜5.0%、Cu:0.5〜3.0%、Sb:0.5〜7.0%、As:0.0040〜0.025%、および残部がSnからなり、As濃化層を有し、前記As濃化層の存在は以下の判定基準により確認されるものであり、前記As濃化層は、はんだ合金の最表面からSiO換算の深さで2×D1(nm)までの領域であり、前記As濃化層のSiO換算の厚みが0.5〜8.0nmであることを特徴とするはんだ合金。
    (判定基準)
    5.0mm×5.0mmの大きさのサンプルにおいて、任意の700μm×300μmのエリアを選定し、イオンスパッタリングを併用したXPS分析を行う。サンプル1個につき1つのエリアを選定し、3つのサンプルについてそれぞれ1回ずつ、合計3回の分析を行う。全3回の分析の全てにおいてS1>S2となる場合、As濃化層が形成されていると判断する。
    ここで、
    S1:XPS分析のチャートにおいて、SiO換算の深さが0〜2×D1(nm)の領域におけるAsの検出強度の積分値
    S2:XPS分析のチャートにおいて、SiO換算の深さが2×D1〜4×D1(nm)の領域におけるAsの検出強度の積分値
    D1:XPS分析のチャートにおいて、O原子の検出強度が最大となったSiO換算の深さ(Do・max(nm))より深い部分において、O原子の検出強度が最大検出強度(Do・maxにおける強度)の1/2の強度となる最初のSiO換算の深さ(nm)。
  2. 請求項1に記載のはんだ合金からなるはんだ粉末とフラックスからなるソルダペー
    スト。
  3. 請求項1に記載のはんだ合金からなるはんだボール。
  4. 請求項1に記載のはんだ合金からなるソルダプリフォーム。
  5. 請求項1に記載のはんだ合金から形成されたはんだ継手。
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