JPWO2020138122A1 - 固体電解質組成物、固体電解質含有シート及び全固体二次電池、並びに、固体電解質含有シート及び全固体二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このような状況下、有機電解液に代えて、無機固体電解質を用いた全固体二次電池が注目されている。全固体二次電池は負極、電解質及び正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の安全性及び信頼性を大きく改善することができる。
例えば、特許文献1には、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質及び高分子バインダーを有する固体電解質組成物であって、この高分子バインダーが、ハードセグメントとソフトセグメントとを有するポリマーで構成された固体電解質組成物が記載されている。
<1>
周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記式(H−1)で表わされる構成成分を有する逐次重合系ポリマーを含むバインダーと、分散媒とを含む、固体電解質組成物。
<2>
上記逐次重合系ポリマーが、下記式(H−2)で表わされる部分構造を有する、<1>に記載の固体電解質組成物。
<3>
上記逐次重合系ポリマーが、下記式(H−3)で表わされる部分構造を有する、<1>又は<2>に記載の固体電解質組成物。
上記逐次重合系ポリマーが、下記式で表されるポリマーである、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
X1、X2及びL2は、それぞれ上記X11、上記X12及び上記L11と同義である。
X3及びX4は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、L3は炭化水素基を示す。
X5及びX6は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、L4はポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖又はポリアルキレンオキシド鎖を示す。
X7及びX8は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、L5は炭化水素ポリマー鎖を示す。
s1〜s5は、各構成成分の含有量(質量%)を示し、合計100質量%である。
上記逐次重合系ポリマーのウレア価が0より大きく0.5mmol/g以下である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<6>
上記バインダーが、平均粒径5nm以上10μm以下の粒子である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<7>
上記バインダーの含有量が、固体電解質組成物の全固形分中、0.001〜10質量%である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<8>
上記逐次重合系ポリマーが、下記官能基群(I)から選択される官能基を少なくとも1種有する、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<官能基群(I)>
カルボキシ基、スルホン酸基、ケトン基、リン酸基
<9>
上記逐次重合系ポリマーの質量平均分子量が10000〜90000である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<10>
導電助剤を含有する、<1>〜<9>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<11>
活物質を含む、<1>〜<10>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<12>
上記活物質がケイ素原子を含有する負極活物質である、<11>に記載の固体電解質組成物。
<13>
上記無機固体電解質が下記式(1)で表される硫化物系無機固体電解質である、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
式(1):La1MbPcSdAe
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示す。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。
<14>
上記分散媒が、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒及び脂肪族化合物溶媒のうちの少なくとも1種である、<1>〜<13>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物。
<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物で構成した層を有する、固体電解質含有シート。
<16>
正極活物質層と負極活物質層と固体電解質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
上記正極活物質層、上記負極活物質層及び上記固体電解質層の少なくともいずれかを<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物で構成した層である全固体二次電池。
<17>
<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を塗布する工程を含む、固体電解質含有シートの製造方法。
<18>
<1>〜<14>のいずれか1つに記載の固体電解質組成物を塗布する工程を含む、全固体二次電池の製造方法。
本明細書において、単に「アクリル」又は「(メタ)アクリル」と記載するときは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、所望の効果を奏する範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
本明細書において置換又は無置換を明記していない置換基、連結基等(以下、置換基等という。)については、その基に適宜の置換基を有していてもよい意味である。よって、本明細書において、単に、YYY基と記載されている場合であっても、このYYY基は、置換基を有しない態様に加えて、更に置換基を有する態様も包含する。これは置換又は無置換を明記していない化合物についても同義である。好ましい置換基としては、下記置換基Tが挙げられる。
本明細書において、特定の符号で示された置換基等が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記式(H−1)で表わされる構成成分を有する逐次重合系ポリマーを含むバインダーと、分散媒とを含む。
バインダーを構成するポリマーに極性の大きい構成成分を導入し、ポリマー同士を強く相互作用させることで、ポリマー同士を凝集させてポリマーの力学的強度を高めることができる。しかし、ポリマー同士の相互作用が強すぎると、ポリマーが凝集し、沈降してしまう。すなわち、上記ポリマーの力学的強度と、このポリマーを含有するスラリーの分散性とはトレードオフの関係にある。
本発明の固体電解質組成物は、バインダーを構成するポリマーが上記式(H−1)で表わされる構成成分を有することで、ポリマー同士がX11及びX12の一方で強く相互作用し、もう一方での相互作用が敢えて弱められていることにより、所望の凝集力(力学的強度)及び固体粒子に対する結着力をポリマーに付与することができ、さらには、スラリーにした場合にその分散性を向上できると考えられる。
このような本発明の固体電解質組成物から構成層を形成することで、本発明の固体電解質含有シート及び本発明の全固体二次電池は、その構成層中で、バインダーを構成するポリマーが密着した固体粒子が高い均一性で分散していることを一因として、上記シートのイオン伝導度、上記構成層中の固体粒子等の結着性及び全固体二次電池の電池性能に優れると考えられる。
本発明において、無機固体電解質とは、無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンが解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF6、LiBF4、LiFSI、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば特に制限されず電子伝導性を有さないものが一般的である。
本発明の全固体二次電池が全固体リチウムイオン二次電池である場合、無機固体電解質はリチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましく、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
式(1):La1Mb1Pc1Sd1Ae1
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(Li2S)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P2S5))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS2、SnS、GeS2)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されず、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
ハロゲン化物系無機固体電解質は、ハロゲン原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
ハロゲン化物系無機固体電解質としては、特に制限されず、例えば、LiCl、LiBr、LiI、ADVANCED MATERIALS,2018,30,1803075に記載のLi3YBr6、Li3YCl6等の化合物が挙げられる。中でも、Li3YBr6、Li3YCl6を好ましい。
水素化物系無機固体電解質は、水素原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
水素化物系無機固体電解質としては、特に制限されず、例えば、LiBH4、Li4(BH4)3I、3LiBH4−LiCl等が挙げられる。
無機固体電解質の、固体電解質組成物中の含有量は、特に制限されず、分散性、界面抵抗の低減及び結着性の点で、固形分100質量%において、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。上限としては、同様の観点から、99.99質量%以下であることが好ましく、99.95質量%以下であることがより好ましく、99.9質量%以下であることが特に好ましい。ただし、固体電解質組成物が後述する活物質を含有する場合、固体電解質組成物中の無機固体電解質の上記含有量は、無機固体電解質と活物質との合計含有量とする。
本発明において、固形分(固形成分)とは、固体電解質組成物を、1mmHgの気圧下、窒素雰囲気下150℃で6時間乾燥処理を行ったときに、揮発若しくは蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明の固体電解質組成物は、固体粒子を結着させるバインダーを含有する。
このバインダーは、後述する逐次重合系ポリマーで構成されており、分散媒に対して可溶であってもよく、特にイオン伝導性の点で、分散媒に対して不溶若しくは難溶(の粒子)であることが好ましい。
本発明において、分散媒に対して不溶若しくは難溶であるとは、バインダーを30℃の分散媒(使用量はバインダーの質量に対して10倍)に添加し、24時間静置しても、分散媒への溶解量が30質量%以下であることを意味し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。この溶解量は、分散媒に添加したバインダー質量に対する、24時間経過後に分散媒から中に溶解しているバインダー質量の割合とする。
なお、全固体二次電池の構成層における粒子状バインダーの平均粒径は、例えば、電池を分解して粒子状バインダーを含有する構成層を剥がした後、その構成層について測定を行い、予め測定していた粒子状バインダー以外の粒子の平均粒径の測定値を排除することにより、測定することができる。
粒子状バインダーの平均粒径は、例えば、バインダー分散液を調製する際に用いる分散媒の種類、バインダーを構成するポリマー中の構成成分の含有量等により、調整できる。
本発明の固体電解質組成物において、バインダーの質量に対する、無機固体電解質と活物質の合計質量(総量)の質量比[(無機固体電解質の質量+活物質の質量)/(バインダーの質量)]は、1,000〜1の範囲が好ましい。この比率は1000〜2がより好ましく、500〜10が更に好ましい。
本発明において、「逐次重合系ポリマー」とは、逐次重合により得られるポリマー鎖をセグメントとして主鎖又は側鎖(好ましくは主鎖)に含むポリマーをいう。逐次重合系ポリマーは、逐次重合により得られるポリマー鎖を2種以上含むコポリマーでもよく、逐次重合により得られるポリマー鎖以外のセグメントを含むコポリマーでもよい。
逐次重合の種類等は特に制限されず、逐次重合系ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリカーボネート等が挙げられ、分散性、電池性能等の点で、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が好ましい。
本発明において、ポリマーの主鎖とは、ポリマーを構成する、それ以外のすべての分子鎖が、主鎖に対して枝分れ鎖若しくはペンダント鎖とみなしうる線状分子鎖をいう。枝分れ鎖若しくはペンダント鎖とみなす分子鎖の質量平均分子量にもよるが、典型的には、ポリマーを構成する分子鎖のうち最長鎖が主鎖となる。ただし、ポリマー末端が有する官能基は主鎖に含まない。
また、ポリマーの側鎖とは、主鎖以外の分子鎖をいい、短分子鎖及び長分子鎖を含む。
本発明に用いられる逐次重合系ポリマーは、後述する式(H−1)で表される構成成分と、下記式(I−1)〜(I−4)のいずれかで表される構成成分(モノマー由来の構成成分)を2種以上(好ましくは2〜4種、より好ましくは2又は3種)組み合わせてなる主鎖、又は下記式(I−5)で表されるカルボン酸二無水物と下記式(I−6)で表される化合物とを逐次重合してなる主鎖を有するポリマー(下記式(I−5)で表されるカルボン酸二無水物(モノマー)由来の構成成分と下記式(I−6)で表される化合物(モノマー)由来の構成成分が結合してなる主鎖を有するポリマー)が好ましい。各構成成分の組み合わせは、ポリマー種に応じて適宜に選択される。構成成分の組み合わせにおける1種の構成成分とは、下記のいずれか1つの式で表される構成成分の種類数を意味し、1つの下記式で表される構成成分を2種有していても、2種の構成成分とは解釈しない。
RP1及びRP2としてとりうる上記分子鎖は、特に制限されず、炭化水素鎖、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖が好ましく、炭化水素鎖又はポリアルキレンオキシド鎖がより好ましく、炭化水素鎖、ポリエチレンオキシド鎖又はポリプロピレンオキシド鎖が更に好ましい。
低分子量の炭化水素鎖は、通常の(非重合性の)炭化水素基からなる鎖であり、この炭化水素基としては、例えば、脂肪族若しくは芳香族の炭化水素基が挙げられ、具体的には、アルキレン基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい)、アリーレン基(炭素数は6〜22が好ましく、6〜14が好ましく、6〜10がより好ましい)、又はこれらの組み合わせからなる基が好ましい。RP2としてとりうる低分子量の炭化水素鎖を形成する炭化水素基としては、アルキレン基がより好ましく、炭素数2〜6のアルキレン基が更に好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基が特に好ましい。この炭化水素鎖は置換基として重合鎖(例えば(メタ)アクリルポリマー)を有していてもよい。
芳香族の炭化水素基は、フェニレン基又は下記式(M2)で表される炭化水素基が好ましい。
RM2〜RM5は、それぞれ、水素原子又は置換基を示し、水素原子が好ましい。RM2〜RM5としてとりうる置換基としては、特に制限されず、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、−ORM6、―N(RM6)2、−SRM6(RM6は置換基を示し、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を示す。)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)が挙げられる。―N(RM6)2としては、アルキルアミノ基(炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい)又はアリールアミノ基(炭素数は、6〜40が好ましく、6〜20がより好ましい)が挙げられる。
RP1及びRP2としてとりうる炭化水素鎖は、置換基(例えば、後述の置換基T又は後述の官能基群<I>に記載の官能基)を有していてもよい。
末端反応性基を有する炭化水素ポリマーとしては、例えば、いずれも商品名で、NISSO−PBシリーズ(日本曹達社製)、クレイソールシリーズ(巴工業社製)、PolyVEST−HTシリーズ(エボニック社製)、poly−bdシリーズ(出光興産社製)、poly−ipシリーズ(出光興産社製)、EPOL(出光興産社製)及びポリテールシリーズ(三菱化学社製)等が好適に用いられる。
ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖としては、公知のポリカーボネート又はポリエステルからなる鎖が挙げられる。
ポリアルキレンオキシド鎖、ポリカーボネート鎖又はポリエステル鎖は、それぞれ、末端にアルキル基(炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい)を有することが好ましい。
組合せた基の分子量は、特に制限されず、6000以下が好ましく、1000以下がより好ましく、400以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。分子量の下限としては、好ましくは40以上であり、より好ましくは50以上である。
L11は置換基を有していてもよい。この置換基としては、特に制限されず、例えば、上記RP1が有していてもよい置換基と同義である。
X11及びX12は、それぞれ、上記原子及び−N(RN1)−から適宜に選択されるが、X11及びX12が互いに異なる原子又は−N(RN1)−が選択される。これにより、式(H−1)で表される構成成分が逐次重合系ポリマーに組み込まれた場合に生じる逐次重合系ポリマー同士に作用する上述の相互作用を、ポリマーの凝集を抑えつつも十分な機械的強度を実現できる。その結果、無機固体電解質組成物の分散性、更には全固体二次電池の電池性能を改善できる。X11及びX12の組み合わせは、特に制限されず、X11又はX12と他の構成成分との結合において、X11及びX12の一方は強い上記相互作用を示すものであり、X11及びX12の他方が弱い上記相互作用を示すものである。
X11又はX12と他の構成成分との結合において、相互作用の強い結合としては、例えば、チオウレア結合、ウレア結合等が挙げられ、相互作用の弱い結合としては、例えば、チオウレタン結合、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エステル結合等が挙げられ、この5つの結合の中での相互作用の強さは、チオウレタン≒ウレタン>アミド>カーボネート>エステルとなる。すなわち、チオウレタンとウレタンの相互作用の強さは同程度で、以降は順により弱い。
本発明においては、X11及びX12の一方が−N(RN1)−で、他方が硫黄原子又は酸素原子であることが好ましく、X11及びX12の一方が−N(RN1)−で、他方が酸素原子であることがより好ましく、X11及びX12の一方が−NH−で、他方が酸素原子であることが特に好ましい。
また、結合部は、水素原子が除去された原子であってもよく、この原子に結合する連結基であってもよい。連結基としては、特に制限されず、炭素数2〜12のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、酸素原子、硫黄原子、−N(RN1)−、シラン連結基若しくはイミン連結基又はこれらの基、原子若しくは連結基を組合せた基が挙げられる。この連結基の末端結合部は、酸素原子、硫黄原子又は−N(RN1)−であることが好ましく、酸素原子又は硫黄原子がより好ましく、X11又はX12と同一でも異なっていてもよい。
この構成成分を導く原料化合物は、特に制限されず、例えば、アミノアルコール化合物、アミノチオール化合物、ヒドロキシメルカプト化合物等が挙げられる。これらの化合物は、適宜に合成してもよく市販品を用いてもよい。
<官能基群(I)>
カルボキシ基、スルホン酸基(−SO3H)、ケトン基、リン酸基(ホスホ基、−OPO3H2)
逐次重合系ポリマーは、上記各式で表される構成成分のうち、式(H−1)で表される構成成分と、上記式(I−3)又は式(I−4)で表される構成成分とを有していることが好ましい。式(I−3)で表される構成成分としては、RP2が分子鎖として上記ポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖、ポリアルキレンオキシド鎖である構成成分(下記式(I−3B)で表される構成成分)を有していることが好ましく、更に、RP2が炭化水素基(好ましくは官能基群<I>に記載の官能基を少なくとも1種を有する基)である構成成分(下記式(I−3A)で表される構成成分)、及び、RP2が分子鎖として上記の炭化水素ポリマー鎖である構成成分(下記式(I−3C)で表される構成成分)の少なくとも一方を有していることが好ましい。
式(I−3A)において、RP2Aは炭化水素基を示し、好ましくは官能基群<I>に記載の官能基を少なくとも1種を有している。例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸等のビス(ヒドロキシメチル)酢酸化合物が挙げられる。式(I−3B)において、RP2Bはポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖又はポリアルキレンオキシド鎖を示す。式(I−3C)において、RP2Cは炭化水素ポリマー鎖を示す。RP2Aとしてとりうる炭化水素基、RP2Bとしてとりうるポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖、ポリアルキレンオキシド鎖及びRP2Cとしてとりうる炭化水素ポリマー鎖は、それぞれ、上記式(I−3)におけるRP2としてとりうる炭化水素基、ポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖、ポリアルキレンオキシド鎖及び炭化水素ポリマー鎖と同義であり、好ましいものも同じである。
式(H−1)において、L11、X11及びX12は上述の通りである。
式(I−1)で表される構成成分:ジフェニルメタンジイソシアネート化合物に由来する構成成分、ジシクロヘキシルメタン4,4'−ジイソシアナートに由来する構成成分
式(I−2)で表される構成成分:テレフタル酸ジクロリド化合物に由来する構成成分
式(I−3A)で表される構成成分:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸化合物に由来する構成成分、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸に由来する構成成分、プロピレングリコールに由来する構成成分、1,4−ブタンジオールに由来する構成成分
式(I−3B)で表される構成成分:ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールに由来する構成成分、ポリテトラメチレングリコールに由来する構成成分
式(I−3C)で表される構成成分:(水素化)ポリブタジエンに由来する構成成分、(水素化)ポリイソプレンに由来する構成成分
式(H−1)で表される構成成分:上記具体例、又は実施例で用いた化合物に由来する構成成分、アミノアルコールに由来する構成成分
逐次重合系ポリマー中の、上記各式で表される構成成分以外の構成成分の含有量は、特に限定されず、80質量%以下であることが好ましい。
逐次重合系ポリマーが上記式(I−1)〜式(I−6)のいずれかで表される構成成分を有する場合、その含有量は、特に制限されず、以下の範囲に設定できる。
すなわち、逐次重合系ポリマー中の、式(I−1)若しくは式(I−2)で表される構成成分、又は式(I−5)で表されるカルボン酸二無水物由来の構成成分の含有量は、特に制限されず、下限は0質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。上限は70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
逐次重合系ポリマー中の、式(I−3)、式(I−4)又は式(I−6)で表される構成成分の含有量は、特に制限されず、下限は0質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、35質量%であることが更に好ましい。上限は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、65質量%以下であることが更に好ましい。
式(I−3)又は式(I−4)で表される構成成分のうち、RP2が分子鎖として上記ポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖、ポリアルキレンオキシド鎖である構成成分(例えば上記式(I−3B)で表される構成成分)の、逐次重合系ポリマー中の含有量は、特に制限されないが、例えば、下限は0質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限は70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
式(I−3)又は式(I−4)で表される構成成分のうち、RP2が分子鎖として上記炭化水素ポリマー鎖である構成成分(例えば上記式(I−3C)で表される構成成分)の、逐次重合系ポリマー中の含有量は、特に制限されず、例えば、下限は0質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限は80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることが更に好ましい。
式(H−1)で表される構成成分を含む部分構造としては、式(H−1)で表される構成成分と結合する他の構成成分によって一義的に決定されず、本発明では、下記式(H−2)で表わされる部分構造が好ましく、下記式(H−3)で表わされる部分構造がより好ましい。
この部分構造は、式(H−1)で表される構成成分の一例と、この構成成分の両端に結合する他の構成成分(例えば、上記式(H−1)又は式(H−2)で表される構成成分)のカルボニル基とからなる部分構造である。この部分構造は、L21に結合する結合(−COO−結合及び−CONRN2−)は互いに異なっており、逐次重合系ポリマーにおいて、L21を挟んだ両結合のうち一方の結合が上述の強い相互作用を示し、他方の結合が弱い相互作用を示す。そのため、上記部分構造は、両結合によるポリマー同士の強固な相互作用(凝集)を抑えて、本発明に好適な相互作用を示すと考えられる。
この部分構造は、式(H−1)で表される構成成分の一例と、この構成成分の両端に結合する他の構成成分(上記式(H−1)で表される構成成分)の−NHCO−基とからなる部分構造である。この部分構造は、L31に結合するウレタン結合が上述の弱い相互作用を示し、ウレア結合が強い相互作用を示し、この部分構造により、ポリマーの力学的強度を維持しつつも、ポリマー同士の強固な相互作用(凝集力)の発現を抑えることができる。
X1、X2及びL2は、それぞれX11、X12及びL11と同義であり、好ましい範囲も同じである。
X3及びX4は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、酸素原子を示すことが好ましい。L3は、RP2Aと同義であり、好ましい範囲も同じである。
X5及びX6は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、酸素原子を示すことが好ましい。L4は、RP2Bと同義であり、好ましい範囲も同じである。
X7及びX8は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、酸素原子を示すことが好ましい。L5は、RP2Cと同義であり、好ましい範囲も同じである。
アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘプチル、1−エチルペンチル、ベンジル、2−エトキシエチル、1−カルボキシメチル等)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、オレイル等)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基、例えば、エチニル、ブタジイニル、フェニルエチニル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数2〜20のヘテロ環基で、好ましくは、少なくとも1つの酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有する5又は6員環のヘテロ環基である。ヘテロ環基には芳香族ヘテロ環基及び脂肪族ヘテロ環基を含む。例えば、テトラヒドロピラン環基、テトラヒドロフラン環基、2−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、ヘテロ環オキシ基(上記ヘテロ環基に−O−基が結合した基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、例えば、エトキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数6〜26のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、1−ナフチルオキシカルボニル、3−メチルフェノキシカルボニル、4−メトキシフェノキシカルボニル等)、アミノ基(好ましくは炭素数0〜20のアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基を含み、例えば、アミノ(−NH2)、N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N−エチルアミノ、アニリノ等)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、アシル基(アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、アルキニルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基を含み、好ましくは炭素数1〜20のアシル基、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、オクタノイル、ヘキサデカノイル、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、ベンゾイル、ナフトイル、ニコチノイル等)、アシルオキシ基(アルキルカルボニルオキシ基、アルケニルカルボニルオキシ基、アルキニルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基を含み、好ましくは炭素数1〜20のアシルオキシ基、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、オクタノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ、クロトノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシ、ニコチノイルオキシ等)、アリーロイルオキシ基(好ましくは炭素数7〜23のアリーロイルオキシ基、例えば、ベンゾイルオキシ等)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20のアシルアミノ基、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルチオ基、例えば、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、ベンジルチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜26のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、1−ナフチルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ等)、ヘテロ環チオ基(上記ヘテロ環基に−S−基が結合した基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル等)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜22のアリールスルホニル基、例えば、ベンゼンスルホニル等)、アルキルシリル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキルシリル基、例えば、モノメチルシリル、ジメチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル等)、アリールシリル基(好ましくは炭素数6〜42のアリールシリル基、例えば、トリフェニルシリル等)、ホスホリル基(好ましくは炭素数0〜20のリン酸基、例えば、−OP(=O)(RP)2)、ホスホニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスホニル基、例えば、−P(=O)(RP)2)、ホスフィニル基(好ましくは炭素数0〜20のホスフィニル基、例えば、−P(RP)2)、スルホ基(スルホン酸基)、カルボキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、シアノ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)が挙げられる。RPは、水素原子又は置換基(好ましくは置換基Tから選択される基)である。
また、これらの置換基Tで挙げた各基は、上記置換基Tが更に置換していてもよい。
本発明に用いられる逐次重合系ポリマーのウレア価は特に制限されず、固体電解質組成物スラリーの分散性、固体電解質含有シートのイオン伝導度及び構成層中の結着性、並びに、電池性能を向上させるため、0mmol/gを越えることが好ましく、0.03mmol/g以上がより好ましく、0.05mmol/g以上が更に好ましい。上限は、0.5mmol/g以下が好ましく、0.45mmol/g以下がより好ましく、0.35mmol/g以下がさらに好ましい。
ウレア価は、後記実施例の記載の測定方法により算出することができる。
逐次重合系ポリマーは、主鎖の種類に応じて、所定の構成成分を導く原料化合物を任意に組み合わせて、必要により触媒(例えば、有機錫触媒を含む。)の存在下、逐次重合させることにより、合成することができる。逐次重合させる方法及び条件は、特に限定されず、公知の方法及び条件を適宜に選択できる。逐次重合系ポリマーの各特性、物性は、逐次重合系ポリマーの種類、更には、構成成分(原料化合物)の種類若しくは含有量、ポリマーの分子量等により、調整できる。原料化合物は、逐次重合系ポリマーの種類に応じて適宜に公知の化合物が選択される。例えば、上述した原料化合物の他にも、特開2015−088480号公報に記載の、ウレタン結合を有するポリマー、ウレア結合を有するポリマー、アミド結合を有するポリマー(ポリアミド樹脂)、イミド結合を有するポリマー等を形成する各原料化合物が挙げられる。
逐次重合系ポリマーの分散液を調製する方法は、特に制限されず、上記逐次重合系ポリマーの合成(例えば乳化重合法)により調製することもでき、合成した逐次重合系ポリマーを適宜の分散媒に分散して調製することもできる。分散媒に逐次重合系ポリマーを分散させる方法としては、例えば、フローリアクターを用いる方法(逐次重合系ポリマーの一次粒子同士を衝突させる方法)、ホモジナイザーを用いて撹拌する方法、転相乳化法等が挙げられる。中でも、生産性の点、更には得られる逐次重合系ポリマーの特性、物性等の点で、合成した逐次重合系ポリマーを転相乳化する方法が好ましい。
本発明において、上記「強く撹拌」とは、ポリマー溶液に衝撃、せん断、ずり応力、摩擦、振動等の機械的エネルギーを加える限り特に制限されない。例えば、ホモジナイザー、ホモディスパー、しんとう機、ディゾルバー、タイテックミキサー、攪絆槽での攪絆羽、高圧噴射式分散機、超音波分散機、ボールミル、ビーズミル等の装置を用い、例えば、300〜1000rpmの回転数等の条件で撹拌する態様が挙げられる。また、「ゆっくりと滴下」とは、一括で添加しない限り特に制限されず、例えば、滴下する分散媒を10分以上かけて、逐次重合系ポリマー溶液に滴下混合する条件が挙げられる。
逐次重合系ポリマーを乳化分散し得る分散媒の常圧における沸点は、80℃以上が好ましく、70℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、分散媒(分散媒体)を含有する。
分散媒は、上記の各成分を分散又は溶解させるものであればよく、少なくともバインダーを溶解させずに分散させるものが好ましい。固体電解質組成物に含有される分散媒としては、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物、アミン化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル化合物等の各溶媒が挙げられ、その分散媒の具体例としては下記のものが挙げられる。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどが挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒としては、上記芳香族化合物、脂肪族化合物等が挙げられる。
固体電解質組成物は、分散媒を1種含有していても、2種以上を含有していてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、導電助剤を含有することもでき、特に負極活物質としてのケイ素原子含有活物質は導電助剤と併用されることが好ましい。
導電助剤としては、特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの炭素繊維類、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維でもよく、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体など導電性高分子を用いてもよい。
本発明において、活物質と導電助剤とを併用する場合、上記の導電助剤のうち、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものを導電助剤とする。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
導電助剤の、電極用組成物中の総含有量は、全固形分中、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属元素のイオンの挿入放出が可能な活物質を含有してもよい。
活物質としては、正極活物質及び負極活物質が挙げられ、正極活物質である遷移金属酸化物、又は、負極活物質である金属酸化物が好ましい。
本発明において、活物質(正極活物質及び負極活物質)を含有する固体電解質組成物を、電極用組成物(正極用組成物及び負極用組成物)ということがある。
本発明の固体電解質組成物が含有してもよい正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、有機物、硫黄などのLiと複合化できる元素、又は、硫黄と金属の複合物などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素Ma(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素Mb(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P又はBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Maの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Maのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn2O4(LMO)、LiCoMnO4、Li2FeMn3O8、Li2CuMn3O8、Li2CrMn3O8及びLi2NiMn3O8が挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO4及びLi3Fe2(PO4)3等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP2O7等のピロリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類並びにLi3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、Li2FePO4F等のフッ化リン酸鉄塩、Li2MnPO4F等のフッ化リン酸マンガン塩及びLi2CoPO4F等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4及びLi2CoSiO4等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO、LMO、NCA又はNMCがより好ましい。
正極活物質層を形成する場合、正極活物質層の単位面積(cm2)当たりの正極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、金属酸化物、金属複合酸化物、ケイ素系材料、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料、金属複合酸化物又はリチウム単体が信頼性の点から好ましく用いられる。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物、及び上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBiの1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga2O3、GeO、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb2O4、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O8Bi2O3、Sb2O8Si2O3、Sb2O5、Bi2O3、Bi2O4、GeS、PbS、PbS2、Sb2S3及びSb2S5が好ましく挙げられる。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(ケイ素原子含有活物質を含有するSi負極、スズ原子を有する活物質を含有するSn負極)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
ケイ素原子含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅若しくはランタンを含む合金(例えば、LaSi2、VSi2)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi2/Si)、他にも、SnSiO3、SnSiS3等のケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、全固体二次電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ原子を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO2、SnS、SnS2、更には上記ケイ素原子及びスズ原子を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、Li2SnO2を挙げることもできる。
負極活物質層を形成する場合、負極活物質層の単位面積(cm2)当たりの負極活物質の質量(mg)(目付量)は特に限定されるものではない。設計された電池容量に応じて、適宜に決めることができる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
本発明の固体電解質組成物は、上記各成分以外の他の成分として、所望により、リチウム塩、イオン液体、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。
本発明において、本発明の固体電解質組成物は、架橋剤及び重合開始剤を含有し、後述する構成層の形成に際して粒子状バインダー(を構成するポリマー)を架橋させる態様と、架橋剤及び重合開始剤を含有せず、構成層の形成に際して粒子状バインダー(を構成するポリマー)を架橋させない態様(粒子状バインダーが架橋ポリマーを含まない態様)との両態様を包含する。
本発明の固体電解質組成物は、無機固体電解質、バインダー、分散媒、更には他の成分を、例えば通常用いる各種の混合機で混合することにより、好ましくはスラリーとして、調製することができる。
混合方法は、特に制限されず、一括して混合してもよく、順次混合してもよい。粒子状のバインダーを用いる場合、通常、粒子状のバインダーの分散液として用いるが、これに限定されない。混合する環境は、特に制限されず、乾燥空気下又は不活性ガス下等が挙げられる。
本発明の固体電解質含有シートは、本発明の固体電解質組成物で構成した層を有し、全固体二次電池の構成層を形成しうるシート状成形体であって、その用途に応じて種々の態様を含む。例えば、固体電解質層に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用固体電解質シートともいう。)、電極、又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられるシート(全固体二次電池用電極シート)等が挙げられる。
本発明の全固体二次電池用固体電解質シートとして、例えば、基材上に、本発明の固体電解質組成物で構成した層、通常、固体電解質層と、必要により保護層とをこの順で有するシートが挙げられる。本発明の固体電解質組成物で形成される固体電解質層は、無機固体電解質と、上記特定の構成成分を有するポリマーを含むバインダーとを含有しており、結着性に優れる。固体電解質層は、後述する全固体二次電池における固体電解質層と同じであり、通常、活物質を含まない。全固体二次電池用固体電解質シートは、全固体二次電池の固体電解質層を構成する材料として好適に用いることができる。
電極シートの活物質層は、本発明の固体電解質組成物(電極用組成物)で形成されることが好ましい。この電極シートは、全固体二次電池の(負極又は正極)活物質層を構成する材料として好適に用いることができる。
本発明の固体電解質含有シートは、本発明の固体電解質組成物を用いて製造することができる。例えば、上述のようにして本発明の固体電解質組成物を調製し、得られた固体電解質組成物を基材上(他の層を介していてもよい。)に製膜(塗布乾燥)して、基材上に固体電解質層(塗布乾燥層)を形成する方法が挙げられる。これにより、必要により基材(集電体)と塗布乾燥層とを有する固体電解質含有シートを作製することができる。ここで、塗布乾燥層とは、本発明の固体電解質組成物を塗布し、分散媒を乾燥させることにより形成される層(すなわち、本発明の固体電解質組成物を用いてなり、本発明の固体電解質組成物から分散媒を除去した組成からなる層)をいう。活物質層及び塗布乾燥層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば分散媒が残存していてもよく、残存量としては、例えば、各層中、3質量%以下とすることができる。
上記製造方法において、本発明の固体電解質組成物はスラリーとして用いることが好ましく、所望により、公知の方法で本発明の固体電解質組成物をスラリー化することができる。本発明の固体電解質組成物の塗布、乾燥等の各工程については、下記全固体二次電池の製造方法において説明する。
また、本発明の固体電解質含有シートの製造方法においては、基材、保護層(特に剥離シート)等を剥離することもできる。
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。正極活物質層は、必要により正極集電体上に形成され、正極を構成する。負極活物質層は、必要により負極集電体上に形成され、負極を構成する。
負極活物質層、正極活物質層及び固体電解質層の少なくとも1つの層は、本発明の固体電解質組成物で形成され、全ての層が本発明の固体電解質組成物で形成されることが好ましい。本発明の固体電解質組成物で形成された活物質層又は固体電解質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、本発明の固体電解質組成物の固形分におけるものと同じである。なお、活物質層又は固体電解質層が本発明の固体電解質組成物で形成されない場合、公知の材料を用いることができる。
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に制限されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、固体電解質層とは反対側に集電体を備えていてもよい。
本発明の全固体二次電池においては、上述のように、固体電解質組成物又は活物質層は、本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートで形成することができる。形成される固体電解質層及び活物質層は、好ましくは、含有する各成分及びその含有量について、特段の断りがない限り、固体電解質組成物又は固体電解質含有シートの固形分におけるものと同じである。
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に限定されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層、固体電解質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよく、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金及びステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
本発明の固体電解質組成物は、固体電解質層、負極活物質層又は正極活物質層の成形材料として好ましく用いることができる。また、本発明の固体電解質含有シートは、固体電解質層、負極活物質層又は正極活物質層として好適である。
本明細書において、正極活物質層(以下、正極層とも称す。)と負極活物質層(以下、負極層とも称す。)をあわせて電極層又は活物質層と称することがある。
全固体二次電池10においては、固体電解質層及び活物質層のいずれか1つが本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートを用いて形成される。好ましい態様では全ての層が本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートを用いて形成され、好ましい別の態様では、固体電解質層及び正極活物質層が本発明の固体電解質組成物又は上記固体電解質含有シートを用いて形成される。負極活物質層は、本発明の固体電解質組成物又は上記電極シートを用いて形成する以外にも、負極活物質としての金属若しくは合金からなる層、負極活物質としての炭素質材料からなる層等を用いて、更には充電時に負極集電体等に周期律表第1族若しくは第2族に属する金属を析出させることにより、形成することもできる。
正極活物質層4、固体電解質層3及び負極活物質層2が含有する各成分は、それぞれ、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の厚みは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
本発明の全固体二次電池は、特に限定されず、本発明の固体電解質組成物の製造方法を介して(含んで)製造することができる。用いる原料に着目すると、本発明の固体電解質組成物を用いて製造することもできる。具体的には、全固体二次電池は、上述のようにして本発明の固体電解質組成物を調製し、得られた固体電解質組成物等を用いて、全固体二次電池の固体電解質層及び/又は活物質層を形成することにより、製造できる。これにより、電池容量の高い全固体二次電池を製造できる。本発明の固体電解質組成物の調製方法は上述の通りであるので省略する。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用組成物として本発明の固体電解質組成物(電極用組成物)を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための本発明の固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用組成物として本発明の固体電解質組成物(電極用組成物)を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。必要によりこれを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることができる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
全固体二次電池の製造に用いる組成物の塗布方法は、特に限定されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布及びバーコート塗布が挙げられる。
このとき、組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に限定されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態(塗布乾燥層)にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性を得ることができる。
また、塗布した組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては、特に限定されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒を予め乾燥させた状態で行ってもよいし、塗布溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布しても良いし、塗布乾燥プレスを同時及び/又は逐次行っても良い。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。固体電解質含有シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積や膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は、特に限定されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に制限はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、メモリーカードなどが挙げられる。その他民生用として、自動車(電気自動車等)、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
(ポリマーB−1の合成)
500mL3つ口フラスコに、ポリエチレングリコール(PEG200(商品名)、数平均分子量200、富士フイルム和光純薬社製)14.51gと、NISSO−PB GI−1000(商品名、日本曹達社製)26.28gとを加え、THF(テトラヒドロフラン)264gに溶解した。この溶液に、ジフェニルメタンジイソシアネート(富士フイルム和光純薬社製)24.78gを加えて60℃で撹拌し、均一に溶解させた。
得られた溶液に、ネオスタンU−600(商品名、日東化成社製)120mgを添加して60℃で5時間攪伴した。この溶液に4−アミノ−1−ブタノール(富士フイルム和光純薬社製)を0.53g加え60℃で30分撹拌し、粘性ポリマー溶液を得た。このポリマー溶液にメタノール1.9gを加えてポリマー末端を封止して、重合反応を停止し、ポリマーB−1の20質量%THF溶液(ポリマー溶液)を得た。
次に、上記で得られたポリマー溶液を350rpmで撹拌しながら、ヘプタン720gを1時間かけて滴下し、ポリマーB−1の乳化液を得た。窒素フローしながらこの乳化液を85℃で120分加熱した。得られた残留物に対してヘプタン150gを加えて更に85℃で60分加熱した。この操作を4回繰り返し、THFを除去した。こうして、ポリマーB−1からなるバインダーの10質量%ヘプタン分散液を得た。
上記ポリマーB−1の合成において、各構成成分を導く化合物として下記表1に記載の構成成分を導く若しくは形成する化合物を同表に記載の含有量となる使用量で用いたこと以外は、上記ポリマーB−1の合成と同様にして、ポリマーB−2〜B−11(ポリマー分散液若しくは溶液)をそれぞれ合成(調製)した。
温度計、攪拌器、窒素導入管を備えた500mLのフラスコ中にテレフタル酸ジクロリド(富士フイルム和光純薬社製)27.3gをテトラヒドロフラン(THF)200mLに溶解させて5℃に冷却した。これにトリエチルアミン30.3g加え、ドデシルジアミン(富士フイルム和光純薬社製)21.6g、3−アミノ−1プロパノール(富士フイルム和光純薬社製)1.1gを30分かけて分割添加した。室温で3時間攪拌してメタノールに再沈殿させた後にTHFに再溶解させることでバインダーB−12のTHF溶液を得た。
上記ポリマーB−1の合成において、各構成成分を導く化合物として下記表1に記載の構成成分を導く若しくは形成する化合物を同表に記載の含有量となる使用量で用いたこと以外は、上記ポリマーB−1の合成と同様にして、ポリマーB−13〜B−21(ポリマー分散液)をそれぞれ合成(調製)した。
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(富士フイルム和光純薬社製)2.5g、ジェファーミンD−2000(商品名、ハンツマン社製;ポリオキシプロピレンジアミン、平均分子量2,000)17.6gを200mLのフラスコに仕込み、メチルエチルケトン(MEK)52gに溶解させた。60℃に昇温させて30分間加熱攪拌した後、ネオスタンU−600(日東化成社製;ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート))51mgを加えて5時間60℃で加熱攪拌した。ブチルアミン1.7gを加え、さらに60℃で1時間加熱攪拌してポリマーBC−1からなるバインダーの30質量%ポリマー溶液を得た。
500mL3つ口フラスコ中にメチルエチルケトン20mLを仕込み、窒素気流下で75℃で加熱した。一方、500mLメスシリンダーにドデシルメタクリレート(アルキル部位の炭素数12、富士フイルム和光純薬社製)70gとメチルエチルケトン110gとを仕込み、良く撹拌した。これに連鎖移動剤としてチオグリセロール(富士フイルム和光純薬社製)2.9gとラジカル重合開始剤V−601(富士フイルム和光純薬社製)3.2gとを加え、さらに良く撹拌した。得られたモノマー溶液を2時間かけて500mL3つ口フラスコに滴下し、ラジカル重合を開始させた。さらに、滴下終了後、75℃で6時間加熱撹拌を続けた。得られた重合液を減圧濃縮させ、メチルエチルケトンを留去させた後、ヘプタンに溶解して、末端ジオール変性ポリメタクリル酸ドデシル(DOPMD)〔アルキル部位の炭素数12;末端ジオール親油性ポリマー〕の25質量%ヘプタン溶液292gを得た。得られたポリマーの質量平均分子量は、3200であった。
ポリウレアコロイド粒子(Aa−1)において、末端ジオール変性ポリメタクリル酸ドデシル由来の成分が有するドデシル基は、ヘプタン(炭化水素系溶媒)と溶媒和する構造部分であり、ポリウレア構造は、ヘプタンと溶媒和しない構造部分である。ポリウレアコロイド粒子(Aa−1)のポリウレアの質量平均分子量は、9600であった。
上記ポリマーB−1の合成において、各構成成分を導く化合物として下記表1に記載の構成成分を導く若しくは形成する化合物を同表に記載の含有量となる使用量で用いたこと以外は、上記ポリマーB−1の合成と同様にして、ポリマーBC−3(ポリマー分散液)を合成(調製)した。
また、ポリマー等の質量平均分子量は、上述の方法により、測定した。
得られた各粒子状ポリマー分散液について、ポリマーの分散状態(粒子状ポリマーの形成状態)を目視により、評価して、表1の「形状」欄に示した。ポリマーが分散媒に分散して粒子状ポリマーを形成している状態を「粒子」と称する。一方、ポリマーが分散媒に分散せずに沈殿している状態を「沈殿」と称し、溶解して粒子状ポリマーを形成せず溶液となっている状態を「溶液」と称する。
ウレア価は通常、ポリマー合成時に用いたアミノ基含有化合物量(mmol)と、(アミノ基含有化合物のアミノ基含有数(アミノ基含有化合物1分子が有するアミノ基の数)/アミノ基含有化合物全質量(g))とから算出できる。また、ポリマーのNMRを測定し、ウレア基のピークの積分比からウレア基の含有量を算出することもできる。本実施例では、合成に用いたアミノ基含有化合物から用いたウレア価と、ポリマーのNMRから求めたウレア価とはほぼ一致した。
構成成分M1:式(I−1)又は(I−2)で表される構成成分
構成成分M2:式(I−3B)で表される構成成分
構成成分M3:式(I−3C)で表される構成成分
構成成分M4:式(H−1)で表される構成成分
構成成分M5及びM6:式(I−3A)又は(I−4)で表される構成成分
なお、ポリマーBC−1〜BC−3の各構成成分は各構成成分欄に順に記載した。
PEG200:ポリエチレングリコール(数平均分子量:200 富士フイルム和光純薬社製)
GI1000:NISSO−PB GI−1000(商品名、日本曹達社製)
4A1B:4−アミノ−1−ブタノール(富士フイルム和光純薬社製)
DMBA:2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成工業社製)
3A1P:3−アミノ−1−プロパノール(富士フイルム和光純薬社製)
4ACE:4−アミノシクロヘキサンエタノール(東京化成工業社製)
Bis−A:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(富士フイルム和光純薬社製)
G3450J:Duranol G3450J(商品名、数平均分子量:800 旭化成社製)
PTMG250:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:250 SIGMA−Aldrich社製)
4AP:2−(4−アミノフェニル)エタノール(東京化成工業社製)
DEGA:ジエチレングリコールアミン(東京化成工業社製)
G1000:NISSO−PB G−1000(商品名、日本曹達社製)
D−2000:(商品名、ハンツマン社製、ポリオキシプロピレンジアミン、数平均分子量2,000)
BA:ブチルアミン
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(東京化成工業社製)
BD:1,4−ブタンジオール(富士フイルム和光純薬社製)
P−1020:クラレポリオールP−1020(商品名、クラレ社製)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(富士フイルム和光純薬社製)
IPDA:イソホロンジアミン(富士フイルム和光純薬社製)
TPDC:テレフタル酸ジクロリド(富士フイルム和光純薬社製)
DDA:ドデカンジアミン(富士フイルム和光純薬社製)
BDA:1,4−ブタンジアミン(富士フイルム和光純薬社製)
DOPMD:上記末端ジオール変性ポリメタクリル酸ドデシル
ポリマーB−2の分散液をガラスシャーレに入れて100℃で3時間乾燥して膜厚80μmの乾燥フィルムを得た。得られたフィルムを幅10mm長さ40mmに切りだし、フォースゲージ(IMADA社製)にチャック間距離が30mmになるようにセットした。速度10mm/minで引っ張り、変位量と応力を測定し、初期の傾きから弾性率を算出し、破断した変位量から破断伸びを算出した。同様に、ポリマーBC−4の分散液からフィルムを作製して、弾性率及び破断伸びを算出した。
ポリマーB−2から作製したフィルムの弾性率及び破断伸びは、ポリマーBC−4から作製したフィルムの弾性率及び破断伸びに対して、1.6倍、1.5倍であった。
(ポリマーB−2から作製したフィルムの弾性率/ポリマーBC−4から作製したフィルムの弾性率=1.6、ポリマーB−2から作製したフィルムの破断伸び/ポリマーBC−4から作製したフィルムの破断伸び=1.5)
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.HamGa,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス、LPS)6.20gを得た。体積平均粒子径は15μmであった。
固体電解質組成物及び固体電解質含有シートをそれぞれ製造して、この固体電解質組成物及び固体電解質含有シートについて下記特性を評価した。その結果を表2及び3に示す。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成したLPS4.85g、表2に示すポリマーの分散液若しくは溶液(固形分質量として0.15g)、及び表2に示す分散媒を16.0g投入した。その後に、この容器をフリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にセットし、温度25℃、回転数150rpmで10分間混合を続けて、固体電解質組成物C−1〜C−22及びBC−1〜BC−3をそれぞれ調製した。
上記で得られた各固体電解質組成物C−1〜C−22及びBC−1〜BC−3を厚み20μmのアルミニウム箔上に、アプリケーター(商品名:SA−201ベーカー式アプリケーター、テスター産業社製)により塗布し、80℃で2時間加熱し、固体電解質組成物を乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、120℃の温度及び600MPaの圧力で10秒間、乾燥させた固体電解質組成物を加熱及び加圧し、固体電解質含有シートS−1〜S−22及びBS−1〜BS−3をそれぞれ作製した。固体電解質層の膜厚は50μmであった。
固体電解質組成物を、直径10mm、高さ15cmのガラス試験管に高さ10cmまで加え、25℃で2時間静置した後に、分離した上澄みの高さを目視で確認して測定した。固体電解質組成物の全量(高さ10cm)に対する上澄みの高さの比:上澄みの高さ/全量の高さを求めた。この比が下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、固体電解質組成物の分散性(分散安定性)を評価した。上記比を算出するに際し、全量とはガラス試験管に投入した固体電解質組成物の全量(10cm)をいい、上澄みの高さとは固体電解質組成物の固形成分が沈降して生じた(固液分離した)上澄み液の量(cm)をいう。
本試験において、上記比が小さいほど、分散性に優れることを示し、評価ランク「4」以上が合格レベルである。
−評価ランク−
8: 上澄みの高さ/全量の高さ<0.1
7: 0.1≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.2
6: 0.2≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.3
5: 0.3≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.4
4: 0.4≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.5
3: 0.5≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.7
2: 0.7≦上澄みの高さ/全量の高さ<0.9
1: 0.9≦上澄みの高さ/全量の高さ
固体電解質含有シートを径の異なる棒に巻きつけ、固体電解質層の欠け、割れ若しくはヒビの有無、及び、固体電解質層のアルミニウム箔(集電体)からの剥がれの有無を確認した。これらの欠陥等の異常が発生することなく巻きつけられた棒の最小径が下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、結着性を評価した。
本発明において、棒の最小径が小さいほど、結着性が強固であることを示し、評価ランク「4」以上が合格である。
−結着性の評価ランク−
8: 最少径<2mm
7: 2mm≦最少径<4mm
6: 4mm≦最少径<6mm
5: 6mm≦最少径<10mm
4: 10mm≦最少径<14mm
3: 14mm≦最少径<20mm
2: 20mm≦最少径<32mm
1: 32mm≦最少径
上記で得られた固体電解質含有シートを直径14.5mmの円板状に切り出し、この固体電解質含有シートを図2に示す2032型コインケース11に入れた。具体的には、直径15mmの円板状に切り出したアルミニウム箔(図2に図示しない)を、固体電解質含有シートの固体電解質層と接触させてイオン伝導度測定用試料12(アルミニウム−固体電解質層−アルミニウムからなる積層体)を形成し、スペーサーとワッシャー(ともに図2において図示しない)を組み込んで、ステンレス製の2032型コインケース11に入れた。2032型コインケース11をかしめることで、イオン伝導度測定用試験体13を作製した。
イオン伝導度(mS/cm)=
1000×試料膜厚(cm)/{抵抗(Ω)×試料面積(cm2)}・・・式(1)
式(1)において、試料膜厚及び試料面積は、積層体12を2032型コインケース16に入れる前に測定し、アルミニウム箔の厚みを差し引いた値(すなわち、固体電解質層の膜厚及び面積)である。
本試験におけるイオン伝導度は評価ランク「4」以上が合格である。
−評価ランク−
8: 0.5mS/cm≦イオン伝導度
7: 0.4mS/cm≦イオン伝導度<0.5mS/cm
6: 0.3mS/cm≦イオン伝導度<0.4mS/cm
5: 0.2mS/cm≦イオン伝導度<0.3mS/cm
4: 0.1mS/cm≦イオン伝導度<0.2mS/cm
3: 0.05mS/cm≦イオン伝導度<0.1mS/cm
2: 0.01mS/cm≦イオン伝導度<0.05mS/cm
1: イオン伝導度<0.01mS/cm
これに対して、本発明の固体電解質組成物は分散性評価が合格であり、本発明の固体電解質組成物から作製した固体電解質含有シートは、結着性評価及びイオン伝導度評価が合格であった。また、固体電解質組成物C−8とC−21との比較及び固体電解質含有シートS−8とS−21との比較から、逐次重合系ポリマーのウレア価が0より大きく0.5mmol/g以下であることで、分散性評価及び結着性評価がより優れることが分かる。
全固体二次電池を製造して、下記特性を評価した。その結果を表3に示す。
<正極用組成物の調製>
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成したLPSを2.7g、KYNAR FLEX 2500−20KYNAR FLEX 2500−20(商品名、PVdF−HFP:ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン共重合体)を固形分質量として0.3g、及び酪酸ブチルを22g投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、25℃で、回転数300pmで60分間攪拌した。その後、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NMC)7.0gを投入し、同様にして、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、25℃、回転数100rpmで5分間混合を続け、正極用組成物を調製した。
上記で得られた正極用組成物を厚み20μmのアルミニウム箔(正極集電体)上に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA−201、テスター産業社製)により塗布し、100℃で2時間加熱し、正極用組成物を乾燥(分散媒を除去)した。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた正極用組成物を25℃で加圧(10MPa、1分)し、膜厚80μmの正極活物質層を有する全固体二次電池用正極シートを作製した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを180個投入し、上記合成したLPSを4.0g、表3に示すポリマーの分散液若しくは溶液(固形分質量として0.3g)、及び表に示す分散媒を22g投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)にこの容器をセットし、25℃で、回転数300pmで60分間攪拌した。その後、負極活物質としてケイ素(Si Aldrich社製)5.3g、アセチレンブラック(デンカ社製)0.4gを投入し、同様にして、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、25℃、回転数100rpmで10分間混合を続け、負極用組成物U−1〜U−24及びV−1〜V−3をそれぞれ調製した。
AB:アセチレンブラック(デンカ社製)
THF:テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬社製)
上記で得られた負極用組成物を厚み10μmのステンレス鋼箔(負極集電体)上に、ベーカー式アプリケーター(商品名:SA−201、テスター産業社製)により塗布し、100℃で2時間加熱し、負極用組成物を乾燥(分散媒を除去)した。その後、ヒートプレス機を用いて、乾燥させた負極用組成物を25℃で加圧(10MPa、1分)し、膜厚50μmの負極活物質層を有する全固体二次電池用負極シートを作製した。
作製した各全固体二次電池用負極シート(固体電解質含有シートのアルミニウム箔は剥離済み)を直径14.5mmの円板状に切り出し、図2に示すように、スペーサーとワッシャー(図2において図示せず)を組み込んだステンレス製の2032型コインケース11に入れて、固体電解質層上に直径14.0mmで打ち抜いた正極シート(正極活物質層)を重ねた。その上に更にステンレス鋼箔(負極集電体)を重ねて全固体二次電池用積層体12(アルミニウム−正極活物質層−固体電解質層−負極活物質層−ステンレス鋼からなる積層体)を形成した。その後、2032型コインケース11をかしめることで、図2に示す全固体二次電池201〜225及びc21〜c23をそれぞれ製造した。このようにして製造した全固体二次電池13は、図1に示す層構成を有する。
全固体二次電池201〜225及びc21〜c23の電池特性として、放電容量維持率を測定して、サイクル特性を評価した。
具体的には、各全固体二次電池の放電容量維持率を、充放電評価装置:TOSCAT−3000(商品名、東洋システム社製)により測定した。充電は、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が4.2Vに達するまで行った。放電は、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして1サイクル充放電を繰り返して、全固体二次電池を初期化した。初期化後の充放電1サイクル目の放電容量(初期放電容量)を100%としたときに、放電容量維持率(初期放電容量に対する放電容量)が80%に達した際の充放電サイクル数が、下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、サイクル特性を評価した。
本試験において、放電容量維持率は、評価ランク「4」以上が合格である。
なお、全固体二次電池201〜225の初期放電容量は、いずれも、全固体二次電池として機能するのに十分な値を示した。
−放電容量維持率の評価ランク−
8: 100サイクル≦充放電サイクル数
7: 50サイクル≦充放電サイクル数<100サイクル未満
6: 30サイクル≦充放電サイクル数<50サイクル未満
5: 20サイクル≦充放電サイクル数<30サイクル未満
4: 10サイクル≦充放電サイクル数<20サイクル未満
3: 5サイクル≦充放電サイクル数<10サイクル未満
2: 2サイクル≦充放電サイクル数<5サイクル未満
1: 充放電サイクル数<2サイクル未満
全固体二次電池201〜214及びc21〜c23の電池特性として、その抵抗を測定して、抵抗の高低を評価した。
各全固体二次電池の抵抗を、充放電評価装置:TOSCAT−3000(商品名、東洋システム社製)により評価した。充電は、電流密度0.1mA/cm2で電池電圧が4.2Vに達するまで行った。放電は、電流密度0.2mA/cm2で電池電圧が2.5Vに達するまで行った。この充電1回と放電1回とを充放電1サイクルとして繰り返して2サイクル充放電して、2サイクル目の5mAh/g(活物質質量1g当たりの電気量)放電後の電池電圧を読み取った。この電池電圧が下記評価ランクのいずれに含まれるかにより、全固体二次電池の抵抗を評価した。電池電圧が高いほど低抵抗であることを示す。本試験において、評価ランク「4」以上が合格である。
−抵抗の評価ランク−
8: 4.1V≦電池電圧
7: 4.0V≦電池電圧<4.1V
6: 3.9V≦電池電圧<4.0V
5: 3.7V≦電池電圧<3.9V
4: 3.5V≦電池電圧<3.7V
3: 3.2V≦電池電圧<3.5V
2: 2.5V≦電池電圧<3.2V
1: 充放電できず
全固体二次電池201〜224及びc21〜c23の電池特性として、活物質の理論容量を下記のようにして算出して評価した。容量が高いほどエネルギー密度が高いことを示す。
− 理論容量の算出 −
リチウムの挿入時の飽和組成から算出した。
黒鉛:黒鉛はC→LiC6となるため、黒鉛1gあたりのLi挿入量は1340(クーロン)となる([(1(g)/6(黒鉛1分子当たりのLi挿入量))/12(黒鉛分子量)]×96500(ファラデー定数))。
3.6クーロンが1mAhのため、黒鉛の理論容量は372(mAh/g)(1340/3.6)となる。
ケイ素:ケイ素はSi→Li4.4Siとなるため、ケイ素1gあたりのLi挿入量は15110(クーロン)となる([(1(g)×4.4(ケイ素1分子当たりのLi挿入量))/28.1(ケイ素分子量)]×96500(ファラデー定数))。
よって、ケイ素の理論容量は、4197(mAh/g)(15110/3.6)となる。
− 評価ランク −
5: 1500mAh/g≦活物質理論容量
4: 1200mAh/g≦活物質理論容量<1500mAh/g
3: 800mAh/g≦活物質理論容量<1200mAh/g
2: 400mAh/g≦活物質理論容量< 800mAh/g
1: 活物質理論容量≦ 400mAh/g
また、負極活物質としてケイ素を用いると高いエネルギー密度を示すことが分かる。
さらに、上記負極用組成物U−2において、LPSに代えて酸化物系無機固体電解質(Li7La3Zr2O12(豊島製作所社製))を用いたこと以外は、上記負極用組成物U−2と同様にして負極用組成物Aを調製した。全固体二次電池202において、上記負極用組成物U−2に代えて負極用組成物Aを用いたこと以外は、全固体二次電池202と同様にして全固体二次電池を作製した。この全固体二次電池について上記放電容量維持率及び抵抗を評価したところ良好な結果であった。
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池
11 2032型コインケース
12 イオン伝導度測定用試料又は全固体二次電池用積層体
13 イオン伝導度測定用試験体又は全固体二次電池
Claims (18)
- 周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有する無機固体電解質と、下記式(H−1)で表わされる構成成分を有する逐次重合系ポリマーを含むバインダーと、分散媒とを含む、固体電解質組成物。
- 前記逐次重合系ポリマーが、下記式で表されるポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
X1、X2及びL2は、それぞれ前記X11、前記X12及び前記L11と同義である。
X3及びX4は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、L3は炭化水素基を示す。
X5及びX6は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、L4はポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖又はポリアルキレンオキシド鎖を示す。
X7及びX8は、いずれも−NH−又は酸素原子を示し、L5は炭化水素ポリマー鎖を示す。
s1〜s5は、各構成成分の含有量を示し、合計100質量%である。 - 前記逐次重合系ポリマーのウレア価が0より大きく0.5mmol/g以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記バインダーが、平均粒径5nm以上10μm以下の粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記バインダーの含有量が、固体電解質組成物の全固形分中、0.001〜10質量%である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記逐次重合系ポリマーが、下記官能基群(I)から選択される官能基を少なくとも1種有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
<官能基群(I)>
カルボキシ基、スルホン酸基、ケトン基、リン酸基 - 前記逐次重合系ポリマーの質量平均分子量が10000〜90000である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 導電助剤を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 活物質を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 前記活物質がケイ素原子を含有する負極活物質である、請求項11に記載の固体電解質組成物。
- 前記無機固体電解質が下記式(1)で表される硫化物系無機固体電解質である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
式(1):La1MbPcSdAe
式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示す。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。 - 前記分散媒が、ケトン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒及び脂肪族化合物溶媒のうちの少なくとも1種である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の固体電解質組成物。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体電解質組成物で構成した層を有する、固体電解質含有シート。
- 正極活物質層と負極活物質層と固体電解質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記固体電解質層の少なくともいずれかを請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体電解質組成物で構成した層である全固体二次電池。 - 請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を塗布する工程を含む、固体電解質含有シートの製造方法。
- 請求項1〜14のいずれか1項に記載の固体電解質組成物を塗布する工程を含む、全固体二次電池の製造方法。
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