JPWO2020036153A1 - 積層体の製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
このような積層体の製造方法では、固形分濃度が最も低い塗布直後の塗膜の乾燥は、通常、外乱の影響を受けにくくするために穏やかに行われる(即ち、塗膜の増粘速度の上昇は緩やかである)。
しかしながら、塗布直後の塗膜に対し穏やかな乾燥を行っていても、風ムラの発生を抑制するには不十分であった。
ここで、「風ムラ」とは、塗工層表面において基材の搬送方向と略平行な方向に形成されるスジ状、斑点状等の模様のことである。スジ状の模様の場合、例えば、最大幅が1mm〜20mmで、長さが30cm以上の大きさを有し、また、斑点状の模様の場合、例えば、最大径が1mm〜10mmの大きさを有する。
塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる工程bと、
を少なくとも有し、
工程aにおける基材と塗布液との接触時の基材上雰囲気圧をPAとし、工程bにおける気体の吸気時の基材上雰囲気圧をPBとした場合、PA及びPBが以下の条件1及び2を満たす、積層体の製造方法。
条件1: PA>PB
条件2: PB≦大気圧−100Pa
<3> 工程aにおける基材と塗布液との接触点から、工程bにおける塗膜上の気体の吸気が開始される点までの距離が、100mm以下である、<1>又は<2>に記載の積層体の製造方法。
<4> 工程bにて、塗膜の固形分濃度が70質量%に到達するまで塗膜上の気体を吸気する、<1>〜<3>のいずれか1に記載の積層体の製造方法。
バックアップロール上に巻き掛けられた基材上に有機溶剤を含む塗布液を塗布し、塗膜を形成するダイコータと、
ダイコータに隣接して設置され、塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる減圧室と、
を少なくとも備え、
バックアップロール上の基材とダイコータにより塗布された塗布液との接触時の基材上雰囲気圧をPAとし、減圧室における気体の吸気時の基材上雰囲気圧をPBとした場合、PA及びPBが以下の条件1及び2を満たす、積層体の製造装置。
条件1: PA>PB
条件2: PB≦大気圧−100Pa
<7> 減圧室に気体を供給する手段を更に有する、<5>又は<6>に記載の積層体の製造装置。
<8> バックアップロール上の基材とダイコータにより塗布された塗布液との接触点から、減圧室にて塗膜上の気体の吸気が開始される点までの距離が、100mm以下である、<5>〜<7>のいずれか1に記載の積層体の製造装置。
<10> 減圧室の正面の先端面とバックアップロールとの距離が、減圧室の側面の先端面とバックアップロールとの距離よりも大きい<9>に記載の積層体の製造装置。
<11> 減圧室が、給気スリットと排気スリットとを有する本体部及び側板を含んで構成される、<5>〜<10>のいずれか1に記載の積層体の製造装置。
本開示において、「工程」の語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
なお、複数の図面に記載されている符号が同一である場合、同一の対象を指す。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
このような積層体の製造方法では、通常、固形分濃度が最も低い塗布直後の塗膜の乾燥が穏やかに行われるが、風ムラの発生を抑制するには不十分であった。
そこで、風ムラの発生を抑制する技術について検討を行ったところ、従来の手法から一線を画し、固形分濃度が最も低い塗布直後の塗膜に対し、塗膜上の空気を吸気することで有機溶剤を除去して、乾燥を早め(即ち、塗膜を増粘させ)ることで、風ムラの発生を抑制することができるといった知見を得た。
即ち、本開示の積層体の製造方法は、連続搬送される基材をバックアップロールに巻き掛け、バックアップロール上の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し、塗膜を形成する工程aと、塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる工程bと、を少なくとも有し、工程aにおける基材と塗布液との接触時の基材上雰囲気圧をPAとし、工程bにおける気体の吸気時の基材上雰囲気圧をPBとした場合、PA及びPBが以下の条件1及び2を満たす、積層体の製造方法である。
条件1: PA>PB
条件2: PB≦大気圧−100Pa
そして、条件2は、工程bにおける気体の吸気時の基材上雰囲気圧PBが、大気圧−100pa以下であり、減圧状態であることを示している。
ここで、「基材上雰囲気圧PA」は、基材と塗布液との接触時の雰囲気圧(即ち静圧)を指す(例えば、バックアップロール110、ダイコータ120、及び減圧室130に囲まれた、図1における点aでの気圧をいう)。
また、「基材上雰囲気圧PB」は、塗膜上の気体を吸気している間の、基材の上部(基材から1mm〜10mm上部、例えば、5mm上部)での雰囲気圧(即ち静圧)を指す(例えば、図1における点bでの気圧をいう)。
更に、本開示における「大気圧」とは、本開示の積層体の製造方法を行う製造装置が置かれる室内環境での気圧をいう。
大気圧、基材上雰囲気圧PA及びPBは、圧力計、具体的には、例えば、一般真空計A型(東洋計器工業製)によって測定される。
その結果、本開示の積層体の製造方法では、基材上に風ムラの発生が抑制された塗工層が形成される。
また、特開2014−188450号公報及び特開2011−36803号公報には、塗布直後の塗膜から、塗膜上の気体を吸気すること有機溶剤を除去することについても記載されておらず、この方法による風ムラの発生の抑制についても勿論検討されていない。
即ち、本開示の積層体の製造装置は、連続搬送される基材が巻き掛けられるバックアップロールと、バックアップロール上に巻き掛けられた基材上に有機溶剤を含む塗布液を塗布し、塗膜を形成するダイコータと、ダイコータに隣接して設置され、塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる減圧室と、を少なくとも備え、
バックアップロール上の基材とダイコータにより塗布された塗布液との接触時の基材上雰囲気圧をPAとし、減圧室における気体の吸気時の基材上雰囲気圧をPBとした場合、PA及びPBが以下の条件1及び2を満たす、積層体の製造装置である。
条件1: PA>PB
条件2: PB≦大気圧−100Pa
本開示の積層体の製造装置では、減圧室を備えており、この減圧室を用いることで、上記の条件1及び2を満たすことができる。
工程aでは、連続搬送される基材をバックアップロールに巻き掛け、バックアップロール上の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し、塗膜を形成する。
工程aの一例について、図1及び図2を参照して、説明する。
ここで、図1は、工程a及び工程bを行う積層体の製造装置の一例を示す概略側面図である。
ここで、工程aにおける基材上雰囲気圧PAは、大気圧−100Pa〜大気圧の範囲であることが好ましく、大気圧であることがより好ましい。
基材上雰囲気圧PAが、上記の範囲であることで、良好な塗布性が得られ、膜厚均一性の高い塗膜を形成しやすくなる。
バックアップロール110は、回転自在に構成されており、基材を巻き掛けて連続搬送することができる部材であって、基材140の搬送速度と同速度で回転駆動する。
バックアップロール110は、特に制限無く、公知のものを用いることができる。
バックアップロール110としては、例えば、表面が、ハードクロムメッキされたものを好ましく用いることができる。
メッキの厚みは、導電性と強度とを確保する観点から40μm〜60μmが好ましい。
また、バックアップロールの表面粗さは、基材140とバックアップロール110との摩擦力のバラツキを低減させる点から、表面粗さRaにて0.1μm以下が好ましい。
バックアップロール110の表面温度は、塗膜の組成、塗膜の硬化性能、基材140の耐熱性等に応じて決定されればよく、例えば、40℃〜120℃が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。
バックアップロール110の温度制御手段には、加熱手段及び冷却手段がある。加熱手段としては、誘導加熱、水加熱、油加熱等が用いられ、冷却手段としては、冷却水による冷却が用いられる。
なお、ラップ角とは、基材140がバックアップロール110に接触する際の基材140の搬送方向と、バックアップロール110から基材140が離間する際の基材140の搬送方向と、からなる角度をいう。
ダイコータ120は、塗布液150を、ダイブロック本体122に形成されたマニホールド124とマニホールド124に連通するスリット126とを介して、基材140上に塗布する塗布装置をいう。
ダイコータ120は、バックアップロール110の表面に対し、その先端及び吐出口が対向するように配置されている。
マニホールド124は、ダイコータ120の幅方向に沿って伸びる空間であり、ダイコータ120に供給された塗布液150を塗布幅方向(即ち、ダイコータ120の幅方向)に拡流し、塗布液150を一時的に貯留している。
スリット126は、マニホールド124に連通し、ダイコータ120の幅方向に沿って、マニホールド124からダイコータ120の先端方向に伸びる空間である。スリット126は、ダイコータ120の先端で外部に開放され、塗布液150を吐出するための吐出口となる。
なお、距離D1は、ダイコータ120の先端とバックアップロール110との間の最短距離を指す。
距離D1は、テーパーゲージにて測定することができる。
基材140としては、連続搬送しうる長尺の基材であれば特に制限はなく、積層体の用途に応じて、適宜、決定されればよい。
バックアップロールへの巻き掛け易さを考慮すると、基材140にはポリマーフィルムが好ましく用いられる。
基材140の具体例としては、後述する各種のポリマーフィルムが挙げられる。
塗布液150としては、有機溶剤を含む塗布液であり、目的とする塗工層を形成しうるものであれば、制限なく用いられる。
例えば、塗布液150としては、重合性又は架橋性化合物を含む硬化性塗布液であってもよいし、非硬化性塗布液であってもよい。
本開示の積層体の製造方法及び製造装置では、風ムラの発生が抑制された塗工層が形成できる。そのため、塗布液150として、例えば、5μm以下の薄層である、光学フィルムにおける、ハードコート層、液晶層、屈折率調整層等を形成するための塗布液を適用することもできる。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応又は重合反応により形成されることが好ましい。つまり、ハードコート層形成用塗布液としては、例えば、モノマー、オリゴマー等の重合性化合物、重合開始剤、及び溶媒を含むことが好ましい。
重合性化合物としては、光、電子線、放射線等の活性エネルギー線にて重合性を示す化合物が好ましく、中でも、光重合性を示す化合物が好ましい。
光重合性を示す化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和二重結合を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
不飽和二重結合を有する化合物としては、モノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられ、中でも、不飽和二重結合を2つ以上(好ましくは3つ以上)有する多官能モノマーであることが好ましい。
ハードコート層形成用塗布液中の不飽和二重結合を有する化合物の含有率は、十分な重合率を与えて硬度などを付与する観点から、ハードコート層形成用塗布液中の全固形分に対して、40質量%〜98質量%が好ましく、60質量%〜95質量%がより好ましい。
ハードコート層形成用塗布液は、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本開示においても同様に好適に用いることができる。
また、重合開始剤としては、「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており、これらを用いることもできる
ハードコート層用組成物中の重合開始剤の含有率は、ハードコート層用組成物に含まれる重合性化合物を重合させるのに十分多く、かつ、開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという観点から、ハードコート層用組成物中の全固形分に対して、0.5質量%〜8質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。
ハードコート層形成用塗布液は、溶媒として種々の有機溶剤を含有してもよい。
有機溶剤としては、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒等を用いることができる。
具体的には、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,5−トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール、メチルエチルケトン(MEKともいう)、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン(アノンともいう)、メチルシクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−オクタノン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジアセトンアルコール、ジメチルカーボーネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルn−プロピルカーボネート、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−メトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸メチル、2−エトキシ酢酸エチル、アセトン、1,2−ジアセトキシアセトン、アセチルアセトン、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート等が挙げられる。
ハードコート層形成用塗布液中の溶剤は、ハードコート層形成用塗布液の固形分含有率が20質量%〜80質量%の範囲となるように用いるのが好ましい。即ち、ハードコート層形成用塗布液中の溶剤の含有率は、ハードコート層形成用塗布液の全質量に対して20質量%〜80質量%が好ましく、25質量%〜70質量%がより好ましく、30質量%〜60質量%が更に好ましい。
ハードコート層形成用塗布液は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、特に制限はないが、フッ素系界面活性剤、又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、低分子化合物よりも高分子化合物であることが好ましい。
界面活性剤の含有率は、ハードコート層形成用塗布液の全固形分に対し、0.01質量%〜0.5質量%であることが好ましく、0.01質量%〜0.3質量%であることがより好ましい。
ハードコート層形成用塗布液は、無機粒子、樹脂粒子、屈折率調整用のモノマー、導電性化合物等のその他の成分を含んでいてもよい。
工程bでは、塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる。
工程bの一例について、図1〜図3を参照して、説明する。
ここで、工程bにおける基材上雰囲気圧PBは、条件1に示すように、基材上雰囲気圧PAよりも小さく、且つ、条件2に示すように、大気圧−100Pa以下である。
これらの条件を満たすことで、風ムラの発生が抑制された塗膜が形成され、結果として、風ムラの発生が抑制された塗工層が形成される。
基材上雰囲気圧PBの下限値としては、減圧室130の装置限界、基材140のバックアップロール110からの浮き等の抑制等から決定されればよく、例えば、大気圧−50000Paに設定することができる。
図1に示す通り、減圧室130は、ダイコータ120に対し、基材の搬送方向下流側に隣接して配置されている。
減圧室130とダイコータ120とを離間して配置することで、基材上雰囲気圧PAを前述の好ましい範囲に調整することができる。
例えば、図2に示すように、ダイコータ120と減圧室130Aとの離間距離D2としては、1mm〜5mmの範囲に設定することができる。
なお、距離D2は、ダイコータ120の側面と減圧室130Aの側面との間の最短距離を指す。
ここで、工程aにおける基材と塗布液との接触点は、図1における基材140上の点cであり、工程bにおける塗膜上の気体の吸気が開始される点は、図1における、減圧室130の基材の搬送方向の上流側端部から最短距離にある基材140上の点dである。
点cと点dとの距離としては、50mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。
点cと点dとの距離の下限値としては、装置の設計上、1mm程度と考えられる。
つまり、工程bにおける気体の吸気は、バックアップロール上の塗膜に対して行われるが、バックアップロールから離れた基材上の塗膜に対してまで継続して行ってもよい。
但し、減圧室130が大型化してしまう観点等から、図1における点d(減圧室にて塗膜上の気体の吸気が開始される点)から図1における点e(減圧室にて塗膜上の気体の吸気が終了する点)までに距離を100mm〜500mm(より好ましくは100mm〜200mm)の範囲とすることが好ましい。
ここで、点eは、減圧室130の基材の搬送方向の下流側端部から最短距離にある基材上の点である。
点dと点eとの距離を上記の範囲とするためには、減圧室130の基材140の搬送方向における長さを調節すればよい。つまり、減圧室130の基材140の搬送方向における長さは、100mm〜500mmとすればよい。
即ち、工程bにて、塗膜の固形分濃度が60質量%(好ましくは、70質量%)に到達するまで塗膜上の気体を吸気することが好ましい。
そのため、例えば、上記した点eにおいて、塗膜の固形分濃度が60質量%(好ましくは、70質量%)以上となるように、減圧室130の基材140の搬送方向における長さを設定すればよい。具体的には、減圧室130による塗膜上の気体の吸気時間と、塗膜の固形分濃度の変化と、の関係を予め求めておき、塗膜の固形分濃度が60質量%(好ましくは、70質量%)となる位置以降に点eが来るよう、減圧室130の基材140の搬送方向における長さを設定すればよい。
具体的には、まず、塗布した時点から乾膜になるまでの膜の光学厚みを計測する。次いで、接触式厚み計で乾燥後の膜(即ち、乾膜)の厚みを計測する。接触式厚み計で計測した乾膜の厚みを光学厚みで除算して補正する。補正された値をもとに、光学厚みから湿潤膜(塗膜)の厚みを算出する。そして、測定点における湿潤膜(塗膜)の厚みから溶剤量を得る。そして、得られた溶剤量から溶剤質量を求め、測定点における固形分濃度の値を得る。
本開示においては、図2及び図3を参照して減圧室130の更なる詳細に説明するが、この構成に限定されるものではない。
ここで、図2は、第1態様の減圧室の構成を説明するための概略側面図であり、図3は、第2態様の減圧室の構成を説明するための概略側面図である。
減圧室本体131の側面(即ち、基材の搬送方向に平行な面)は、図2に示すように、側面視した場合に、バックアップロール110の曲率に合わせた円弧状となる先端面131Aを有する。
ここで、円弧状とは、厳密に円周の一部形状である必要はなく、円周の一部形状に類似する形状であればよい。
また、基材140との接触、塗膜152との接触等を抑制する観点から、距離D3の下限値は、0.1mmとすることが好ましい。
ここで、距離D3は、円弧状の先端面131Aとバックアップロール110との間の最短距離を指す。
なお、円弧状の先端面131Aとバックアップロール110との間の距離は、距離D1と同様の方法で測定することができる。
そして、減圧室130A(減圧室本体131)の内部の減圧度を調整することで、減圧室130Aにおける気体の吸気時の基材上雰囲気圧PBが大気圧−100Pa以下になるようにする。
ここで、減圧室本体131のバックアップロール110表面に対向した面(円弧状の先端面131Aの他、減圧室の背面の先端面及び減圧室の正面の先端面)の外周には、減圧室130Aへの気体流出入を制御する機構を設けてもよい。具体的には、例えば、ラビリンスのような隙間を設けて圧力損失を調整する機構が挙げられる。ラビリンスは多段でもよく、各段毎に隙間の大きさを変えてもよい。
この気体流入の抑制機構を備えることで、減圧室130A(減圧室本体131)の内部の減圧度を高め易くなる。
そして、減圧室本体133は、減圧室130Bに気体を供給する手段である給気スリット134と、減圧室130Bから気体を排気する手段である排気スリット135と、を有する。
減圧室130B内における塗膜上の気体の風速は、0.5m/s〜100m/sの範囲であることが好ましく、上記の気体の対流が加わることで、1m/s〜100m/sの範囲とすることができ、10m/s〜100m/sが更に好ましい範囲となる。
塗膜上の気体の風速は、塗膜表面から1mm上部における風速を、無指向性の風速計、具体的には、例えば、アネモマスター(アネモマスター風速計MODEL−611シリーズ、KANOMAX社)にて測定した値である。
そして、減圧室130Bの空間内の減圧度を調整することで、減圧室130Bにおける気体の吸気時の基材上雰囲気圧PBが大気圧−100Pa以下になるようにする。
なお、給気スリット134及び排気スリット135は、それぞれ、例えば、0.1mm〜5mmの隙間を有しており、この隙間を通じて、気体の給気及び排気が行われる。
側板136は、図3に示すように、側面視した場合に、バックアップロール110の曲率に合わせた円弧状となる先端面(減圧室の側面の先端面の一例)136Aを有する。
円弧状の先端面136Aとバックアップロール110との距離D3としては、減圧室130Aにおける円弧状の先端面136Aとバックアップロール110との距離D3と同様であり、好ましい態様及び測定方法も同様である。
また、正面板138は、減圧室本体133の正面(即ち、基材の搬送方向に垂直な面であって、基材の搬送方向上流側の面)に接触配置された板状部材である。
背面板137及び正面板138は、それぞれ、バックアップロールの表面と対向する先端面137A及び先端面138Aを有する。
また、基材140との接触、塗膜152との接触等を抑制する観点から、距離D4の下限値は、0.1mmとすることが好ましい。
ここで、距離D4は、背面板137の先端面137Aとバックアップロール110との間の最短距離をいう。
なお、背面板137の先端面137Aとバックアップロール110との間の距離は、距離D1と同様の方法で測定することができる。
また、基材140との接触、塗膜152との接触等を抑制する観点から、距離D5の下限値は、0.1mmとすることが好ましい。
ここで、距離D5は、正面板138の先端面138Aとバックアップロール110との間の最短距離をいう。
なお、正面板138の先端面138Aとバックアップロール110との間の距離は、距離D1と同様の方法で測定することができる。
この気体流入の抑制機構を備えることで、減圧室130Bの内部の減圧度を高め易くなる。
乾燥工程では、重層塗布工程で形成された塗膜から溶媒を減少させる。
乾燥工程で用いる乾燥手段としては、特に制限はなく、例えば、オーブン、温風機、赤外線(IR)ヒーター等を用いる方法が挙げられる。
温風機による乾燥においては、基材の塗膜形成面とは反対の面から温風を当てる構成でもよく、塗膜が温風にて流動しないよう、拡散板を設置した構成としてもよい。
乾燥条件は、形成された塗膜の種類、塗布量、搬送速度等に応じて決定されればよく、例えば、30℃〜140℃の範囲で、10秒〜10分間行うことが好ましい。
硬化工程は、乾燥工程後の塗膜に対して活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させる。
硬化工程で用いる活性エネルギー線の照射手段としては、照射する塗膜中に活性種を発生させうるエネルギーを付与する手段であれば、特に制限はない。
活性エネルギー線として、具体的には、例えば、α線、γ線、X線、紫外線、赤外線、可視光線、電子線等が挙げられる。これらのうち、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から、活性エネルギー線としては、紫外線が好ましく用いられる。
紫外線の光源から発せられる紫外線のピーク波長は、200nm〜400nmが好ましい。
また、紫外線の露光エネルギー量としては、例えば、100mJ/cm2〜500mJ/cm2が好ましい。
本開示の積層体の製造方法で得られた積層体は、基材と、塗布液から形成された目的とする塗工層と、を有する。
基材としては、積層体の用途に応じて、適宜選択することができ、例えば、ポリマーフィルムが挙げられる。
光学フィルム用途であれば、基材の光透過率は、80%以上であることが好ましい。
光学フィルム用途であれば、基材としてポリマーフィルムを用いる場合には、光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。
基材としては、例えば、ポリエステル系基材(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルム若しくはシート)、セルロース系基材(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のフィルム若しくはシート)、ポリカーボネート系基材、ポリ(メタ)アクリル系基材(ポリメチルメタクリレート等のフィルム若しくはシート)、ポリスチレン系基材(ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン共重合体等のフィルム若しくはシート)、オレフィン系基材(ポリエチレン、ポリプロピレン、環状若しくはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレンプロピレン共重合体等のフィルム若しくはシート)、ポリアミド系基材(ポリ塩化ビニル、ナイロン、芳香族ポリアミド等のフィルム若しくはシート)、ポリイミド系基材、ポリスルホン系基材、ポリエーテルスルホン系基材、ポリエーテルエーテルケトン系基材、ポリフェニレンスルフィド系基材、ビニルアルコール系基材、ポリ塩化ビニリデン系基材、ポリビニルブチラール系基材、ポリ(メタ)アクリレート系基材、ポリオキシメチレン系基材、エポキシ樹脂系基材等の透明基材、又は上記のポリマー材料をブレンドしたブレンドポリマーからなる基材等が挙げられる。
予め形成される層としては、接着層、水、酸素等に対するバリア層、屈折率調整層等が挙げられる。
塗布液から形成される目的とする塗工層としては、特に制限はなく、光学フィルム用途であれば、ハードコート層、液晶層、屈折率調整層等が挙げられる。
塗布液から形成される層の厚さとしては、用途に応じて異なるが、本開示の積層体の製造方法を採用することで、例えば、5μm以下、より好ましくは0.1μm〜100μmの範囲とすることができる。
塗布液から形成される層上には、更に、用途に応じて、その他の層を有していてもよい。
基材として、厚み60μm、幅1340mmの長尺状のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(TD40UL、富士フイルム(株)、屈折率1.48)を用意した。
以下に記載の各成分の混合物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、ハードコート層形成用塗布液(固形分含有率50質量%、粘度2.9mPa・s)を調製した。
・重合性化合物:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)NKエステル) : 48.4質量%
・光重合開始剤:Omnirad 184(IGM Resins B.V.社) : 1.5質量%
・界面活性剤:以下に示されるフッ素系界面活性剤 : 0.1質量%
・有機溶剤:メチルエチルケトン : 50質量%
以下に記載の各成分の混合物をミキシングタンクに投入し、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、ハードコート層形成用塗布液(固形分含有率50質量%、粘度3.6mPa・s)を調製した。
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)) : 48.5質量%
・光重合開始剤:Omnirad 907(IGM Resins B.V.社) : 1.5質量%
・有機溶剤:メチルエチルケトン : 35質量%
・有機溶剤:シクロヘキサノン : 15質量%
(工程a)
ダイコータを用いて、TACフィルム上にハードコート層形成用塗布液の塗布を行った。
具体的には、表面温度60℃、外径300mmのバックアップロール上に、基材を搬送し、バックアップロール上の基材に対し、ダイコータを用い、ハードコート層形成用塗布液の塗布を行った。このとき、基材のラップ角は150°であった。
このときの、基材上雰囲気圧PAは表1に記載の通りであった。また、距離D1及び点cと点dとの距離も、表1に記載の通りであった。
また、工程aにおいて、塗布液の吐出時の温度は23℃、塗布幅は1300mm、塗布速度(即ち、基材の搬送速度)は10m/minであった。
続いて、図2又は図3に記載の減圧室を用いて、塗膜上の気体の吸気を行った。なお、ダイコータ120と減圧室130A又は減圧室130Bとの離間距離D2は、20mmであった。
また、比較例1では、図2に示す減圧室を備えているものの、排気口132から気体を吸気せず、減圧室130A(減圧室本体131)の内部を減圧させなかった。
このときの、基材上雰囲気圧PBは表1に記載の通りであった。
また、距離D3、距離D4、距離D5、点dと点eとの距離、点eにおける塗膜の固形分濃度、塗膜上の気体の風速は、表1に記載の通りであった。
続いて、塗膜を60℃1分間で乾燥した後、紫外線を露光エネルギー200mJ/cm2にて照射して塗膜の硬化を行った。
その結果、厚み5μmのハードコート層が形成された。
ハードコート層が形成されたTACフィルムはロール状に巻き取られた。
なお、工程a及び工程bにおける各物性(雰囲気圧、距離、及び風速)は、前述の方法にて測定した値である。
上記で製造した積層体の、末端(巻き終わり側の端部)から1m〜10mまで間のハードコート層について、その表面を目視にて観察し、風ムラを評価した。
評価指標は以下の通りである。
1:風ムラがみられない。
2:弱いスジ状の風ムラが1本〜2本見られた。
3:強いスジ状の風ムラが見られた。
4:スジ状及び班点状の風ムラが全面に見られた。
特に、図3に示す減圧室のように、給気及び排気を行い、塗膜上の気体の風速を速めると、風ムラは更に抑制できることがわかる。
110 バックアップロール
120 ダイコータ
122 ダイブロック本体
124 マニホールド
126 スリット
130、130A、130B 減圧室
131 減圧室本体
131A 円弧状の先端面
132 排気口
133 減圧室本体
136 側板
136A 側板の先端面
137 背面板
138 正面板
140 基材
150 塗布液
152 塗膜
a 基材上雰囲気圧PAを測定する位置
b 基材上雰囲気圧PBを測定する位置
c 基材と塗布液との接触点
d 塗膜上の気体の吸気が開始される点
e 塗膜上の気体の吸気が終了する点
D1 ダイコータの先端とバックアップロールとの距離
D2 ダイコータと減圧室との離間距離
D3 減圧室の側面の先端面とバックアップロールとの距離
D4 減圧室の背面の先端面とバックアップロールとの距離
D5 減圧室の正面の先端面とバックアップロールとの距離
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (12)
- 連続搬送される基材をバックアップロールに巻き掛け、バックアップロール上の基材に有機溶剤を含む塗布液を塗布し、塗膜を形成する工程aと、
塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる工程bと、
を少なくとも有し、
工程aにおける基材と塗布液との接触時の基材上雰囲気圧をPAとし、工程bにおける気体の吸気時の基材上雰囲気圧をPBとした場合、PA及びPBが以下の条件1及び2を満たす、積層体の製造方法。
条件1: PA>PB
条件2: PB≦大気圧−100Pa - 工程bにおける塗膜上の気体の風速が1m/s〜100m/sである、請求項1に記載の積層体の製造方法。
- 工程aにおける基材と塗布液との接触点から、工程bにおける塗膜上の気体の吸気が開始される点までの距離が、100mm以下である、請求項1又は請求項2に記載の積層体の製造方法。
- 工程bにて、塗膜の固形分濃度が70質量%に到達するまで塗膜上の気体を吸気する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
- 連続搬送される基材が巻き掛けられるバックアップロールと、
バックアップロール上に巻き掛けられた基材上に有機溶剤を含む塗布液を塗布し、塗膜を形成するダイコータと、
ダイコータに隣接して設置され、塗膜上の気体を吸気することで、バックアップロール上の塗膜から有機溶剤を減少させる減圧室と、
を少なくとも備え、
バックアップロール上の基材とダイコータにより塗布された塗布液との接触時の基材上雰囲気圧をPAとし、減圧室における気体の吸気時の基材上雰囲気圧をPBとした場合、PA及びPBが以下の条件1及び2を満たす、積層体の製造装置。
条件1: PA>PB
条件2: PB≦大気圧−100Pa - 減圧室内における塗膜上の気体の風速が1m/s〜100m/sである、請求項5に記載の積層体の製造装置。
- 減圧室に気体を供給する手段を更に有する、請求項5又は請求項6に記載の積層体の製造装置。
- バックアップロール上の基材とダイコータにより塗布された塗布液との接触点から、減圧室にて塗膜上の気体の吸気が開始される点までの距離が、100mm以下である、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の積層体の製造装置。
- 減圧室の側面の先端面とバックアップロールとの距離が0.5mm以下である、請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の積層体の製造装置。
- 減圧室の正面の先端面とバックアップロールとの距離が、減圧室の側面の先端面とバックアップロールとの距離よりも大きい請求項9に記載の積層体の製造装置。
- 減圧室が、給気スリットと排気スリットとを有する本体部及び側板を含んで構成される、請求項5〜請求項10のいずれか1項に記載の積層体の製造装置。
- バックアップロールの表面温度が40℃〜120℃である、請求項5〜請求項11のいずれか1項に記載の積層体の製造装置。
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