JPWO2019212049A1 - 炭酸ストロンチウム粒子、光学フィルム及び画像表示装置 - Google Patents

炭酸ストロンチウム粒子、光学フィルム及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】位相差発現性の高い炭酸ストロンチウムを提供する。【解決手段】炭酸ストロンチウム粒子は、10〜100nmの範囲内の平均長径と、c軸方向において15nm以上の結晶子径と、を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、炭酸ストロンチウム粒子、炭酸ストロンチウム粒子を含む光学フィルム、及び当該光学フィルムを含む画像表示装置に関する。
例えば、液晶表示装置のような様々な装置に、光の位相差を制御するための光学フィルムが使用されている。光学フィルムの特性を調節するため、光学フィルムの位相差(面内位相差)及び複屈折(面内複屈折)を制御する試みが成されている。特許文献1〜5は、高分子樹脂からなる光学材料に、微粒子状の炭酸ストロンチウムを含有させることによって、複屈折を調節することを開示している。
特開2004−35347号 特開2005−156863号 特開2007−140011号 特開2008−15118号 特開2008−156479号
特許文献1〜5では、高分子樹脂からなる光学材料に、微粒子状の炭酸ストロンチウムを含有させることによって、複屈折を調節することが記載されているものの、炭酸ストロンチウム固有の位相差の発現性を高めることについては未だ改善の余地がある。
一態様に係る炭酸ストロンチウム粒子は、10〜100nmの範囲内の平均長径と、c軸方向において15nm以上の結晶子径と、を有する。
好ましい一態様によれば、前記平均長径が20〜70nmの範囲内であり、かつ前記c軸方向における結晶子径が20nm以上である。
好ましい一態様によれば、上記の結晶子径に対する上記の平均長径の比率が2.5以下である。
好ましい一態様によれば、炭酸ストロンチウム粒子は、表面に付着した界面活性剤を有する。
好ましい一態様によれば、前記界面活性剤は、フェニル基を有する。
好ましい一態様によれば、前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルである。
一態様に係る樹脂組成物は、上記の炭酸ストロンチウム粒子と、前記炭酸ストロンチウム粒子を含む樹脂と、を含む。
好ましい一態様によれば、前記樹脂組成物全体に対する前記炭酸ストロンチウム粒子の含有量が、0.1〜50質量%の範囲内である。
好ましい一態様によれば、前記樹脂組成物全体に対する前記炭酸ストロンチウム粒子の含有量が、1〜35質量%の範囲内である。
好ましい一態様によれば、前記樹脂が、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、セルロースエステル、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリフマル酸ジエステル、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、マレイミド系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタンからなる群より選択される1種類以上である。
好ましい一態様によれば、前記樹脂がポリイミドである。
一態様に係る樹脂組成物は、上記の炭酸ストロンチウム粒子と、ポリイミド前駆体と、を含む。
一態様に係る炭酸ストロンチウム含有ポリイミドフィルムは、上記の樹脂組成物から得られる。
一態様に係る光学フィルムは、上記の樹脂組成物、又は上記の炭酸ストロンチウム含有ポリイミドフィルムを含む。
一態様に係る画像表示装置は、上記の光学フィルムを備える。
上記態様によれば、位相差発現性の高い炭酸ストロンチウム、当該炭酸ストロンチウムを含む光学フィルム及び画像表示装置を提供することができる。
本願の発明者は、炭酸ストロンチウム粒子の結晶子径に着目することによって、炭酸ストロンチウム粒子固有の位相差の発現性を高めることができることを見出した。具体的には、発明者は、炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向における結晶子径を高めることによって、透過光の位相差をより発現させることができることを発見した。
より詳細には、本実施形態に係る炭酸ストロンチウム粒子は、10〜100nmの範囲内の平均長径と、c軸方向において15nm以上の結晶子径と、を有する。好ましくは、炭酸ストロンチウム粒子の平均長径は20〜70nmの範囲内であり、かつc軸方向における結晶子径は20nm以上である。また、c軸方向の結晶子径に対する平均長径の比率(平均長径/結晶子径)は、2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下である。ここで、c軸方向における結晶子径が15nm未満になると炭酸ストロンチウム固有の位相差発現性が低くなる。また、c軸方向における結晶子径が15nm以上を満たした上で、c軸方向の結晶子径に対する平均長径の比率が2.5を超えるとヘイズが悪くなる。
ここで、平均長径は、炭酸ストロンチウム粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を目視又は画像処理する方法で測定することができる。炭酸ストロンチウム粒子の長径は、例えば、炭酸ストロンチウム粒子を長方形とみなしたときの長手方向の長さ(長辺の長さ)として測定することができる。また、炭酸ストロンチウム粒子の短径は、炭酸ストロンチウム粒子を長方形と見立てたときの短手方向の長さ(短辺の長さ)として測定することができる。
具体的には、画像中で、炭酸ストロンチウム粒子に外接する、最少の面積を持つ長方形を算出し、その長方形の長辺と短辺の長さから長径と短径が求められる。さらに、「平均」とは、統計学上の信頼性のある個数(N数)の炭酸ストロンチウム粒子を測定して得られた平均値を意味する。その個数(N数)としては通常は300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上である。
また、炭酸ストロンチウム粒子の平均アスペクト比は、特に限定されないが、例えば、1.0〜10.0の範囲内であってよい。炭酸ストロンチウム粒子の平均アスペクト比は、2.0〜5.0の範囲にあることがより好ましい。
なお、ここでいうアスペクト比とは、粒子の「長径/短径」を意味する。また、平均アスペクト比とは、アスペクト比の平均値を意味する。すなわち、平均アスペクト比は、複数の粒子のアスペクト比を測定し、複数の粒子から得られたアスペクト比の平均値によって算出される。なお、平均値を算出するための粒子数(N数)は、上述したとおりである。また、樹脂組成物全体に対する炭酸ストロンチウム粒子の含有量が、0.1〜50質量%の範囲内であってもよい。なお、樹脂組成物全体に対する前記炭酸ストロンチウム粒子の含有量が、1〜35質量%の範囲内であることがより好ましい。ここで、樹脂組成物全体に対する炭酸ストロンチウム粒子の含有量が35質量%以下の範囲では、ヘイズ2%以下を満足することができ、樹脂組成物全体に対する炭酸ストロンチウム粒子の含有量が50質量%以下の範囲ではヘイズ5%以下を満足することができる。
上述した炭酸ストロンチウム粒子に界面活性剤が付着していることが好ましい。これにより、樹脂組成物中、又は樹脂組成物に混入する前の溶媒中での炭酸ストロンチウム粒子の分散性を向上させることができる。
特には限定されないが、親水性基と疎水性基とが結合し、親水性基と水中でアニオンを形成する基とが結合している界面活性剤であることが好ましい。アニオンを形成する基はカルボン酸基(−CO2H)、硫酸基(−OSO3H)又はリン酸基(−OPO32)であることが好ましい。これらの酸基の水素原子は、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属又はアンモニウムで置換されていてもよい。親水性基は炭素原子数が1〜4の範囲にあるオキシアルキレン基であることが好ましい。疎水性基は炭素原子数が3〜30の範囲にあるアルキル基、フェニル基又は炭素原子数が7〜30の範囲にあるアルキルフェニル基であることが好ましい。アニオンを形成する基がカルボン酸基である界面活性剤は、下記の式(I)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019212049
式(I)において、R1は炭素原子数が3〜30の範囲にあるアルキル基、フェニル基又は炭素原子数が7〜30の範囲にあるアルキルフェニル基を意味し、L1は炭素原子数が1〜4の範囲にあるアルキレン基を意味し、M1は水素、アルカリ金属又はアンモニウムを意味し、kは2〜10の範囲の数を意味する。R1は炭素原子が10〜18の範囲にあるアルキル基又はアルキルフェニル基であることが好ましい。L1はエチレン基であることが好ましい。アニオンを形成する基が硫酸基である界面活性剤は、下記の式(II)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019212049
式(II)において、R2は炭素原子数が3〜30の範囲にあるアルキル基、フェニル基又は炭素原子数が7〜30の範囲にあるアルキルフェニル基を意味し、L2は炭素原子数が1〜4の範囲にあるアルキレン基を意味し、M2は水素、アルカリ金属又はアンモニウムを意味し、mは2〜10の範囲の数を意味する。R2は炭素原子が12〜18の範囲にあるアルキル基又はアルキルフェニル基であることが好ましい。アニオンを形成する基がリン酸基である界面活性剤は、下記の式(III)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019212049
式(III)において、R3は炭素原子数が3〜30の範囲にあるアルキル基、フェニル基又は炭素原子数が7〜30の範囲にあるアルキルフェニル基を意味し、L3は炭素原子数が1〜4の範囲にあるアルキレン基を意味し、M3及びM4はそれぞれ独立して水素、アルカリ金属又はアンモニウムを意味し、nは2〜10の範囲の数を意味する。R3は炭素原子が12〜18の範囲にあるアルキル基又はアルキルフェニル基であることが好ましい。
上記の界面活性剤の中でも、界面活性剤は、フェニル基を有することが好ましい。より好ましくは、界面活性剤は、以下の化学式であらわされるポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルである。
Figure 2019212049
Figure 2019212049
フェニル基を有する界面活性剤は、耐熱性が高い。このため、フェニル基を有する界面活性剤で被覆された炭酸ストロンチウム粒子は、光学フィルム(樹脂組成物)の高温での成膜時に高い分散性を維持することができる。また、炭酸ストロンチウム粒子による透過光の遮断又は散乱が少なくなるため、光学フィルム(樹脂組成物)の透明性を確保することもできる。光学フィルムとしては、ヘイズ3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
炭酸ストロンチウムの粒状粒子の製造方法は、例えば、水酸化ストロンチウムの水溶液もしくは水性懸濁液を撹拌しながら、該水溶液もしくは水性懸濁液に二酸化炭素ガスを導入して、水酸化ストロンチウムを炭酸化させて炭酸ストロンチウムを生成させる反応工程を有する。水酸化ストロンチウムの水溶液もしくは水性懸濁液の濃度は、一般に1〜20質量%の範囲、好ましくは2〜15質量%の範囲、より好ましくは3〜8質量%の範囲である。二酸化炭素ガスの導入量は、水酸化ストロンチウムの水溶液もしくは水性懸濁液中の水酸化ストロンチウム1gに対して一般に0.5〜200mL/分の範囲、好ましくは0.5〜100mL/分の範囲、より好ましくは1〜50mL/分の範囲である。水酸化ストロンチウムを炭酸化させる際には、生成する炭酸ストロンチウム粒子の粒子成長抑制剤として、水酸基を有するカルボン酸を、水酸化ストロンチウムの水溶液もしくは水性懸濁液に溶解させることが好ましい。結晶成長抑制剤は、カルボキシル基の数が2個で、かつ水酸基とそれらの合計が3〜6個の有機酸であることが好ましい。結晶成長抑制剤の好ましい例としては、酒石酸、リンゴ酸及びタルトロン酸を挙げることができる。結晶成長抑制剤としては、カルボキシル基2個と水酸基とを有し、かつ合計で少なくとも3個有する有機酸を使用することができるが、製造した粒子の表面に付着して粒成長をコントロールして微細なまま分散性を高める点から、上述した分子内に水酸基を1つ以上含むジカルボン酸又はその無水物がより好ましく、DL−酒石酸が特に好ましい。結晶成長抑制剤の使用量は、水酸化ストロンチウム100質量部に対して一般に0.1〜20質量部の範囲、好ましくは1〜10質量部の範囲である。結晶成長抑制剤の別の例として、クエン酸やグルコン酸を挙げることもできる。
熟成工程は、反応工程で得られた球状炭酸ストロンチウム微粒子を含む水性スラリーを、所定の温度、時間で攪拌しながら熟成させて針状の炭酸ストロンチウム微粒子に粒成長させる工程である。熟成工程は、温水中にて行うことができる。熟成温度は、75〜115℃の範囲内であり、好ましくは80〜110℃の範囲内であり、特に好ましくは85〜105℃の範囲内である。熟成温度が75℃を下回ると、球状炭酸ストロンチウム微粒子の結晶成長が不十分で平均アスペクト比が低すぎる傾向があり、115℃を上回ると、球状炭酸ストロンチウム微粒子の短径の結晶成長が促進されてアスペクト比が低くなる傾向がある。また、熟成時間は、特に限定はないが、通常は1〜100時間の範囲内であり、好ましくは5〜50時間の範囲内であり、特に好ましくは10〜30時間の範囲内である。これにより、生成される炭酸ストロンチウム粒子の結晶子径を成長させ、かつバラつきを低減することができる。通常、攪拌は下記式で求めたレイノルズ数が10000以上、好ましくは50000以上、より好ましくは100000以上である。その後、室温まで放冷して、炭酸ストロンチウム微粒子の水性スラリーを製造する。
R(レイノルズ数)=d2×n×ρ/μ
d:翼径[m]、n:回転数[1/sec]、ρ:液密度[kg/m3]、μ:粘性係数[kg/(m・sec)]
表面処理時の溶媒は、特に限定されないが、上記の界面活性剤を用いて炭酸ストロンチウム粒子の表面を処理する方法としては、上記の水性懸濁液中で界面活性剤と炭酸ストロンチウム粒子とを接触させた後、炭酸ストロンチウム粒子を乾燥する方法を用いることができる。
表面処理工程で使用する分散液は、熟成工程を行う場合は熟成工程後の水性スラリーを使用することができる。表面処理工程は、せん断力を加えながら分散液に界面活性剤を添加することで行うことができる。水性スラリー中の炭酸ストロンチウム粒子の含有量は、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。水性スラリーへの界面活性剤の投入量は、界面活性剤の添加総量が一般に1〜60質量%の範囲内であり、10〜50質量%の範囲内が好ましく、20〜40質量%の範囲内がより好ましい。せん断力の付与は、撹拌羽根ミキサー、ホモミキサー、マグネチックスターラー、エアスターラー、超音波ホモジナイザー、クレアミックス、フィルミックス、湿式ジェットミルなど公知の撹拌装置を使用して行うことができる。
乾燥工程は、スプレードライヤ、ドラムドライヤ、ディスクドライヤなどの熱乾燥機を用いた公知の乾燥方法によって行なうことができる。
上記の炭酸ストロンチウム粒子は、有機溶媒のような樹脂への分散性が高い。炭酸ストロンチウム粒子は、樹脂に投入して撹拌処理あるいは超音波処理などの通常の分散処理を行なうことによって、一次粒子もしくはそれに近い微粒子として樹脂(有機溶媒)中に分散させることができる。有機溶媒の種類としては特に限定されず、樹脂の性質等に応じて適宜選択して用いることができる。炭酸ストロンチウム粒子を好適に分散させることができる有機溶媒の例としては、アルコール(例えば、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングルコール)、塩化メチレン、N−メチル−2−ピロリドン、ガンマブチルラクトン、ジメチルアセトアミド及びテトラヒドロフランを挙げることができる。これらの有機溶媒は、単体(1種)で使用されてもよく、複数組み合わせて使用されてもよい。
また、一実施形態に係る光学フィルムは、樹脂と、樹脂中に分散された炭酸ストロンチウム粒子と、を含む。樹脂中に分散された炭酸ストロンチウム粒子としては、前述したものが用いられる。
光学フィルムを構成する樹脂は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、セルロースエステル、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリフマル酸ジエステル、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、マレイミド系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタンからなる群より選択される1種類以上である。
好ましくは、光学フィルムを構成する樹脂は、ポリイミドである。ポリイミドは、その化学構造から、耐熱性が優れていることが知られている。また、ポリイミドの分子鎖の秩序構造により、耐屈曲性にも優れていることが知られている。しかしながら、耐屈曲性にも優れたポリイミドは、光学的に複屈折を生じる。ここで、前述した炭酸ストロンチウム粒子をポリイミドに分散させることによって、炭酸ストロンチウム固有の位相差により、光学フィルム全体として複屈折を制御可能である。これにより、耐熱性、耐屈曲性に優れ、複屈折を適切にコントロールした光学フィルムを提供することができる。ポリイミドフィルムの寸法収縮率としては、25℃/分から10℃/分で単調昇温した際に250℃以上400℃以下のいずれかで、少なくとも一方向における下記式で示される寸法収縮率が、0.05%以上、好ましくは0.08%以上である。
寸法収縮率(%)=[{(25℃の寸法)−(昇温後の寸法)]/(25℃の寸法)]×100
上記実施形態に係るポリイミド組成物は、ポリイミド前駆体(A1)と、光学異方性を有する微粒子(B)とを含む。ポリイミド前駆体(A1)は、例えば、以下の化学式で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むものである。
Figure 2019212049
(式中、X1,は芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、Yは芳香族環または脂環構造を有する2価の基であり、R,R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数3〜9のアルキルシリル基である。)
ただし、ポリイミド前駆体(A1)は、イミド化が一部進行した、イミド構造の繰り返し単位を含む、部分イミド化ポリアミド酸等であってもよい。
ポリイミド組成物は、ポリイミド(A2)と、光学異方性を有する炭酸ストロンチウム粒子(B)とを含む。ポリイミド(A2)は、例えば、下記化学式で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むものである。
Figure 2019212049
(式中、X2は芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、Y2は芳香族環または脂環構造を有する2価の基である。)
以下、ポリイミド前駆体組成物に用いるポリイミド前駆体(A1)、ポリイミド組成物に用いるポリイミド(A2)について詳細に説明する。
<ポリイミド前駆体(A1)>
ポリイミド前駆体(A1)は、例えば、上記の[化6]で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むものである。
特に限定されるわけではないが、得られるポリイミド組成物が耐熱性に優れるため、上記の[化6]中のX1が芳香族環を有する4価の基であり、Yが芳香族環を有する2価の基であることが好ましい。また、得られるポリイミド組成物が耐熱性に優れると同時に透明性に優れるため、X1が脂環構造を有する4価の基であり、Yが芳香族環を有する2価の基であることが好ましい。また、得られるポリイミド組成物が耐熱性に優れると同時に寸法安定性に優れるため、Xが芳香族環を有する4価の基であり、Yが脂環構造を有する2価の基であることが好ましい。
得られるポリイミド組成物の特性、例えば、透明性、機械的特性、または耐熱性等の点から、X1が脂環構造を有する4価の基であり、Yが脂環構造を有する2価の基である上記の[化6]で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下または30モル%未満、より好ましくは10モル%以下であることが好ましい。
一実施態様においては、ポリイミド前駆体(A1)は、X1が芳香族環を有する4価の基であり、Yが芳香族環を有する2価の基である上記[化6]の繰り返し単位の1種以上の含有量が、合計で、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%であることが好ましい。この実施態様において、特に高透明性のポリイミド組成物が求められる場合は、ポリイミド前駆体(A1)はフッ素原子を含有することが好ましい。すなわち、ポリイミド前駆体(A1)は、X1がフッ素原子を含有する芳香族環を有する4価の基である上記[化6]の繰り返し単位および/またはYがフッ素原子を含有する芳香族環を有する2価の基である上記[化6]の繰り返し単位の1種以上を含むことが好ましい。
一実施態様においては、ポリイミド前駆体(A1)は、X1が脂環構造を有する4価の基であり、Yが芳香族環を有する2価の基である上記[化6]の繰り返し単位の1種以上の含有量が、合計で、全繰り返し単位に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%であることが好ましい。
一実施態様においては、ポリイミド前駆体(A1)は、X1が芳香族環を有する4価の基であり、Yが脂環構造を有する2価の基である上記[化6]の繰り返し単位の1種以上の含有量が、合計で、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%であることが好ましい。
1の芳香族環を有する4価の基としては、炭素数が6〜40の芳香族環を有する4価の基が好ましい。
芳香族環を有する4価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 2019212049
(式中、Z1は直接結合、または、下記の2価の基:
Figure 2019212049
のいずれかである。ただし、式中のZ2は、2価の有機基である。)
2としては、具体的には、炭素数2〜24の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜24の芳香族炭化水素基が挙げられる。
芳香族環を有する4価の基としては、得られるポリイミド組成物の高耐熱性と高透明性を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
Figure 2019212049
(式中、Z1は直接結合、または、ヘキサフルオロイソプロピリデン結合である。)
ここで、得られるポリイミド組成物の高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、Z1は直接結合であることがより好ましい。
1が芳香族環を有する4価の基である上記[化6]の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、m−タ−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸、p−タ−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸や、これらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。X1がフッ素原子を含有する芳香族環を有する4価の基である上記[化6]の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや、これのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
1の脂環構造を有する4価の基としては、炭素数が4〜40の脂環構造を有する4価の基が好ましく、少なくとも一つの脂肪族4〜12員環、より好ましくは脂肪族4員環または脂肪族6員環を有することがより好ましい。
さらに、X1の脂環構造を有する4価の基としては、耐熱性と透明性を両立できることから、化学構造中に少なくとも一つの脂肪族6員環を有し、かつ、芳香族環を有さないことが好ましい。X1(脂環構造を有する4価の基)中の6員環は複数であってよく、複数の6員環が二つ以上の共通の炭素原子によって構成されていても構わない。また、6員環は、環を構成する(6員環の内部の)炭素原子同士が結合して更に環を形成した架橋環型であっても構わない。
1(脂環構造を有する4価の基)は、対称性が高い6員環構造を有するものが、高分子鎖の密なパッキングが可能となり、ポリイミドの耐溶剤性、耐熱性、機械強度に優れるため好ましい。さらに、X1(脂環構造を有する4価の基)においては、複数の6員環が二つ以上の共通の炭素原子によって構成されていること、及び6員環が環を構成する炭素原子同士が結合して更に環を形成していることが、ポリイミドの良好な耐熱性、耐溶剤性、低線膨張係数を達成し易いのでより好ましい。
好ましい脂肪族4員環または脂肪族6員環を有する4価の基としては、下記のものが挙げられる。
Figure 2019212049
(式中、R31〜R36は、それぞれ独立に直接結合、または、2価の有機基である。R41〜R47は、それぞれ独立に式:−CH2−、−CH=CH−、−CH2CH2−、−O−、−S−で表される基よりなる群から選択される1種を示す。)
31、R32、R33、R34、R35、R36としては、具体的には、直接結合または、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基、または、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、力ルボニル結合、エステル結合、アミド結合が挙げられる。
脂環構造を有する4価の基としては、得られるポリイミドの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
Figure 2019212049
1が脂環構造を有する4価の基である上記[化6]の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、イソフロピリデンジフェノキシビスフタル酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸、[1,1’−ビ(シクロヘキサン)]−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−オキシビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−チオビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−スルホニルビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、4,4’−(テトラフルオロフロパン−2,2−ジイル)ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン−1,3,4,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、6−(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3,5−トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ−7−エン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、9−オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸、ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α'−スピロ−2’,−ノルボルナン5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸(4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2c,3c,6c,7c−テトラカルボン酸、(4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2c,3c,6c,7c−テトラカルボン酸や、これらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
1の芳香族環を有する2価の基としては、炭素数が6〜40、更に好ましくは炭素数が6〜20の芳香族環を有する2価の基が好ましい。
芳香族環を有する2価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 2019212049
(式中、W1は直接結合、または、2価の有機基であり、n11〜n13は、それぞれ独立に0〜4の整数を表し、R51、R52、R53は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基である。)
1としては、具体的には、下記の化14で表される2価の基、下記の化15で表される2価の基が挙げられる。
Figure 2019212049
Figure 2019212049
(式R61〜R68は、それぞれ独立に上記式で表される2価の基のいずれかを表す。)
ここで、得られるポリイミドの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、W1は、直接結合、または式:−NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−で表される基よりなる群から選択される1種であることが特に好ましい。また、W1が、R61〜R68が直接結合、または式: −NHCO−、−CONH−、−COO−、−OCO−で表される基よりなる群から選択される1種である上記の[化14]で表される2価の基のいずれかであることも特に好ましい。
1が芳香族環を有する2価の基である上記の[化6]の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’−ジアミノービフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m−トリジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,4’−ジアミノベンズアニリド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−p−フェニレンビス(p−アミノベンズアミド)、4−アミノフェノキシ−4−ジアミノベンゾエート、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸ビス(4−アミノフェニル)エステル、p−フェニレンビス(p−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジカルボキシレート、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス(4−アミノベンゾエート)、4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、3,3’−オキシジアニリン、p−メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジンが挙げられる。Y1がフッ素原子を含有する芳香族環を有する2価の基である上記[化6]の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ペンジジン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。ジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
1の脂環構造を有する2価の基としては、炭素数が4〜40の脂環構造を有する2価の基が好ましく、少なくとも一つの脂肪族4〜12員環、より好ましくは脂肪族6員環を有することが更に好ましい。
脂環構造を有する2価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
Figure 2019212049
(式中、V1,V2は、それぞれ独立に直接結合、または、2価の有機基であり、n21〜m26は、それぞれ独立に0〜4の整数を表し、R81〜R86は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基であり、R91、R92、R93は、それぞれ独立に式:−CH2−、−CH=CH−、−CH2CH2−、−O−、−S−で表される基よりなる群から選択される1種である。)
1,V2としては、具体的には、上記の[化14]で表される2価の基が挙げられる。
脂環構造を有する2価の基としては、得られるポリイミドの高耐熱性、低線熱膨張係数を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
Figure 2019212049
脂環構造を有する2価の基としては、中でも、下記のものが好ましい。
Figure 2019212049
1が脂環構造を有する2価の基である上記[化6]の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−メチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−エチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−フロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソフロピルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−n−ブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−イソブチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−sec−フチルシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2−tert−ブチルシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロブタン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノビシクロへプタン、ジアミノメチルビシクロへプタン、ジアミノオキシビシクロへプタン、ジアミノメチルオキシビシクロへプタン、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデ力ン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンが挙げられる。ジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
上記[化6]で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むポリイミド前駆体(A1)は、前記[化6]で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位を含むことができる。
他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分およびジアミン成分としては、特に限定されず、他の公知の脂肪族テトラカルボン酸類、公知の脂肪族ジアミン類いずれも使用することができる。他のテトラカルボン酸成分も、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。他のジアミン成分も、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
前記[化6]で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは30モル%以下または30モル%未満、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体(A1)の前記[化6]において、R1,R2はそれたは炭素数3〜9のアルキルシリル基のいずれかである。R1,R2が水素である場合、ポリイミドの製造が容易である傾向がある。
1,R2は、後述する製造方法によって、その官能基の種類、及び、官能基の導入率を変化させることができる。
ポリイミド前駆体(A1)(前記[化6]で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むポリイミド前駆体)は、R1,R2が取る化学構造によって、
1)ポリアミド酸(R1,R2が水素)、
2)ポリアミド酸エステル(R1,R2の少なくとも一部がアルキル基)、
3) 4)ポリアミド酸シリルエステル(R1,R2の少なくとも一部がアルキルシリル基)、
に分類することができる。そして、ポリイミド前駆体(A1)は、この分類ごとに、以下の製造方法により容易に製造することができる。ただし、ポリイミド前駆体(A1)の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
1)ポリアミド酸
ポリイミド前駆体(A1)は、溶媒中でテトラカルボン酸成分としてのテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90〜1.10、より好ましくは0.95〜1.05の割合で、例えば1200℃以下の比較的低温度でイミド化を抑制しながら反応することによって、ポリイミド前駆体溶液組成物として好適に得ることができる。
限定するものではないが、より具体的には、有機溶剤または水にジアミンを溶解し、この溶液に撹拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間揖持することで、ポリイミド前駆体が得られる。800℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。上記製造方法でのジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序は、ポリイミド前駆体の分子量が上がりやすいため、好ましい。また、上記製造方法のジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序を逆にすることも可能であり、析出物が低減することから、好ましい。溶媒として水を使用する場合は1,2−ジメチルイミダゾール等のイミダゾール類、あるいはトリエチルアミン等の塩基を、生成するポリアミック酸(ポリイミド前駆体)のカルボキシル基に対して、好ましくは0.8倍当量以上の量で、添加することが好ましい。
2)ポリアミド酸エステル
テトラカルボン酸二無水物を任意のアルコールと反応させ、ジエステルジカルボン酸を得た後、塩素化試薬(チオニルクロライド、オキサリルクロライドなど)と反応させ、ジエステルジカルボン酸クロライドを得る。このジエステルジカルボン酸クロライドとジアミンを−20〜120℃、好ましくは−5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。800℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。また、ジエステルジカルボン酸とジアミンを、リン系縮合剤や、カルボジイミド縮合剤などを用いて脱水縮合することでも、簡便にポリイミド前駆体が得られる。
この方法で得られるポリイミド前駆体は、安定なため、水やアルコールなどの溶剤を加えて再沈殿などの精製を行うこともできる。
3)ポリアミド酸シリルエステル(間接法)
あらかじめ、ジアミンとシリル化剤を反応させ、シリル化されたジアミンを得る。必要に応じて、蒸留等により、シリル化されたジアミンの精製を行う。そして、脱水された溶剤中にシリル化されたジアミンを溶解させておき、撹拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。800℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。
4)ポリアミド酸シリルエステル(直接法)
上記の1)の方法で得られたポリアミド酸溶液とシリル化剤を混合し、0〜120℃、好ましくは5〜80℃の範囲で1〜72時間撹拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。800℃以上で反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し、また熱によりイミド化が進行することから、ポリイミド前駆体を安定して製造できなくなる可能性がある。
上記の3)の方法、及び4)の方法で用いるシリル化剤として、塩素を含有しないシリル化剤を用いることは、シリル化されたポリアミド酸、もしくは、得られたポリイミドを精製する必要がないため、好適である。塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,0−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,0−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。フッ素原子を含まず低コストであることからN,0−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
また、3)の方法のジアミンのシリル化反応には、反応を促進するために、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒を用いることができる。この触媒はポリイミド前駆体の重合触媒として、そのまま使用することができる。
ポリイミド前駆体(A1)を調製する際に使用する溶媒(C)は、水や、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好ましく、原料モノマー成分と生成するポリイミド前駆体が溶解すれば、どんな種類の溶媒であっても問題はなく使用できるので、特にその構造には限定されない。溶媒として、水やN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δバレロラクトン、γ−カブロラクトン、ε−カブロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネ一ト等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、フタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。なお、溶媒は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
ポリイミド前駆体(A1)の対数粘度は、特に限定されないが、300℃での濃度0.5g/dLのN,N−ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、より好ましくは0.3dL/g以上、特に好ましくは0.4dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、ポリイミド前駆体の分子量が高く、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
<ポリイミド(A2)>
ポリイミド(A2)は、特に限定されるわけではないが、ポリイミド前駆体(A1)から得られ、例えば、前記[化7]で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むものである。
上記[化7]は上記[化6]に対応するもので、X1はX2に対応し、Y1はY2に対応する。上記[化7]中のX2、Y2としては、上記[化6]中のX1、Y1と同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。
特に限定されるわけではないが、耐熱性に優れるため、ポリイミド(A2)の化学式(7)中のX2が芳香族環を有する4価の基であり、Y2が芳香族環を有する2価の基であることが好ましい。また、耐熱性に優れると同時に透明性に優れるため、X2が脂環構造を有する4価の基であり、Y2が芳香族環を有する2価の基であることが好ましい。また、耐熱性に優れると同時に寸法安定性に優れるため、X2が芳香族環を有する4価の基であり、Y2が脂環構造を有する2価の基であることが好ましい。
厚み方向及び面内方向の位相差が小さく、かつ、透明性、機械的特性、または耐熱性等の特性にも優れるポリイミド組成物を得るためには、ポリイミド(A2)は、好ましくはフッ素原子を含有する、芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミンとから得られるポリイミド、または、脂環式テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミンとから得られるポリイミド、または、芳香族テトラカルボン酸成分と脂環式ジアミンとから得られるポリイミドであることが好ましい。なお、テトラカルボン酸成分には、テトラカルボン酸と、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等のテトラカルボン酸誘導体が含まれる。
ポリイミド組成物の特性、例えば、透明性、機械的特性、または耐熱性等の点から、X2が脂環構造を有する4価の基であり、Y2が脂環構造を有する2価の基である上記[化7]で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下または30モル%未満、より好ましくは10モル%以下であることが好ましい。
一実施態様においては、ポリイミド(A2)は、X2が芳香族環を有する4価の基であり、Y2が芳香族環を有する2価の基である上記[化7]の繰り返し単位の1種以上の含有量が、合計で、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%であることが好ましい。この実施態様において、特に高透明性が求められる場合は、ポリイミド(A2)はフッ素原子を含有することが好ましい。すなわち、ポリイミド(A2)は、X2がフッ素原子を含有する芳香族環を有する4価の基である前記[化7]の繰り返し単位および/またはY2がフッ素原子を含有する芳香族環を有する2価の基である前記[化7]の繰り返し単位の1種以上を含むことが好ましい。
一実施態様においては、ポリイミド(A2)は、X2が脂環構造を有する4価の基であり、Y2が芳香族環を有する2価の基である前記[化7]の繰り返し単位の1種以上の含有量が、合計で、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%であることが好ましい。
一実施態様においては、ポリイミド(A2)は、X2が芳香族環を有する4価の基であり、Y2が脂環構造を有する2価の基である前記[化7]の繰り返し単位の1種以上の含有量が、合計で、全繰り返し単位に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは100モル%であることが好ましい。
上記[化7]で表される繰り返し単位の少なくとも1種を含むポリイミド(A2)は、上記[化7]で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位1種以上を含むことができる。
上記[化7]で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは30モル%以下または30モル%未満、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であることが好ましい。
ポリイミド(A2)は、ポリイミド前駆体(A1)をイミド化する(すなわち、ポリイミド前駆体(A1)を脱水閉環反応することで製造することができる。イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、または化学イミド化の方法を好適に適用することができる。
前述した炭酸ストロンチウム粒子を含む樹脂からなる光学フィルムでは、炭酸ストロンチウム粒子の平均長径が、10〜100nmの範囲と小さく、かつ炭酸ストロンチウム粒子の表面に界面活性剤が付着しているため、樹脂中への炭酸ストロンチウム粒子の分散性が高くなる。これにより、上記の光学フィルムのヘイズを小さくすることができる。
例えば、ヘイズが1%以下であり、かつ正の面外複屈折率を有する光学フィルムを提供することができる。また、ヘイズが1%以下であり、かつ面外複屈折率がゼロである光学フィルムを提供することも可能である。さらに、ヘイズが1%以下であり、かつ負の面外複屈折率を有する光学フィルムを提供することも可能である。
また、このような光学フィルムは、画像表示装置に好適に適用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではない。
1.実施例1
(1)炭酸ストロンチウム微粒子の製造
(a)反応工程
水温10℃の純水3Lに、DL−酒石酸(特級試薬、純度:99%以上)を加えて撹拌して水性懸濁液中に溶解させた。水酸化ストロンチウム八水和物(特級試薬、純度:96%以上)366gを投入し、混合して濃度5.6質量%の水酸化ストロンチウム水性懸濁液を調製した。この水酸化ストロンチウム水性懸濁液を10℃に維持しつつ、撹拌を続けながら、水性懸濁液に二酸化炭素ガスを0.5L/分の流量(水酸化ストロンチウム1gに対して22mL/分の流量)にて、水性懸濁液のpHが7になるまで吹き込み、炭酸ストロンチウム粒子を生成させた。その後、さらに30分間撹拌を続け、炭酸ストロンチウム粒子水性懸濁液を得た。
(b)熟成工程
得られた炭酸ストロンチウム粒子水性懸濁液を周速2.5m/secで攪拌しながら95℃の温度にて12時間加温処理して炭酸ストロンチウム粒子を針状に成長させた。その後、室温まで放冷して、炭酸ストロンチウム微粒子の水性スラリーを製造した。
(2)高分散性炭酸ストロンチウム粒子の製造
(a)表面処理工程
上記で作製した炭酸ストロンチウム微粒子の水性スラリー(固形濃度:6質量%)に、界面活性剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルを添加して溶解させ、スターラーで5分間撹拌した。ついでクレアミックスにてせん断力をかけて、分散処理を行った。これにより、高分散性炭酸ストロンチウム粒子の水スラリーを得た。
(b)乾燥工程(ドラムドライヤー)
撹拌混合後の水性スラリーを110〜120℃に加熱した回転式ドラムドライヤーに吹き付け、高分散性炭酸ストロンチウム微粉末を得た。得られた高分散性炭酸ストロンチウム微粉末を電子顕微鏡で観察した結果、針状粒子の微粉末であることが確認された。また、電子顕微観察結果の画像解析を行ったところ、炭酸ストロンチウム粒子の平均長径は35nmであった。
(3)結晶子径の測定
上記で得られた炭酸ストロンチウム微粒子のc軸方向の結晶子径を測定した。株式会社リガク製 RINT−TTRIII型 広角X線回折装置を用いて、下記条件にてX線回折パターンを測定し、(002)方向のX線回折パターンである回折角2θが29.6°のピークの半値幅を使い、Scherrerの式にてc軸方向の結晶子径を算出した。結晶子径の測定結果は以下の表1に示されている。
(条件)
X線源 ;CuKα線
管電圧−管電流;50kV−300mA
ステップ幅; 0.04deg
測定速度; 2sec/step
スリット系; 発散−受光−散乱
0.5deg−0.15mm−0.5deg
回折線湾曲結晶モノクロメーター
(SrCO3添加ドープ液の作製方法)
N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」)25gに対し、可溶性ポリイミド(以下、「PI」)6gを添加し、6時間攪拌し、PI−NMP溶液を作製した。次に、NMP10gに対し、前述した炭酸ストロンチウム微粉末を1.2g添加し、超音波バスに30秒入れ、そのまま孔径1μmのメンブレンフィルターで加圧せずにろ過し、分散液1を作成した。PC−塩化メチレン分散液と分散液1を混合し、超音波ホモジナイザーで分散処理を行い、SrCO3添加ドープ液A−1を得た。
(ポリイミドフィルム成膜方法)
SrCO3添加ドープ液A−1を、ベーカー式アプリケーターを用い、ガラス板上にウェット膜厚11milで塗布した。これをイナートオーブンにて窒素雰囲気化で30℃から3℃/minで昇温して350℃で10分間保持して乾燥した。PETフィルムからPIフィルムを剥離し、PIフィルムA−1を得た。
(透過率及びヘイズ測定)
分光光度計(日本分光社製)を用いて、PIフィルムA−1の可視光透過率及びヘイズ測定を行った。
(フィルムの位相差評価)
PIフィルムA−1の膜厚をマイクロメーターで測定した。その後、PIフィルムの面外位相差発現性(ΔP)を位相測定装置(王子計測機器株式会社製、KOBRA−WR)を用いて測定した。
具体的には、PIフィルムの面外位相差(厚み方向の位相差;厚み方向のレターデーション)Rthを測定した。上記の位相測定装置は、測定対象物(PIフィルム)に垂直入射した光によって測定した面内位相差(レターデーション)R0と、測定対象物に入射角θで入射した光によって測定した位相差(レターデーション)Rθと、測定対象物の厚みd(入力値)と、測定対象物の平均屈折率Navr(入力値)とから、面外位相差Rthを算出する。なお、入射角θは40°であり、光の波長は547.4nmである。
平均屈折率Navrは、互いに直交する3方向の屈折率の平均値を意味し、「Navr=(Nx+Ny+Nz)/3」によって定義される。ここで、Nx、Ny、Nzは、それぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の測定対象物の屈折率を意味する。本明細書において、X軸方向は、遅相軸の方向である。Y軸方向は、進相軸の方向である。Z軸方向は、測定対象物の厚み方向である。
一般に、面外位相差Rthは、次の式により定義される:Rth=(Nx+Ny)/2−Nz)×d。ここで、「d」は、測定対象物の厚みを意味する。測定された面外位相差Rthの値から面外複屈折値ΔPを算出した。面外複屈折値ΔPは、次の式によって算出される:ΔP=Rth/d。なお、測定対象物の厚みdは、マイクロメーターによって測定することができる。
2.実施例2
炭酸ストロンチウム微粒子製造の熟成工程において熟成時の温度を80℃にしたこと以外は実施例1と同様な方法にてPIフィルムA−2を作製し、位相差発現性を評価した。評価結果は表1に示す。
3.実施例3
炭酸ストロンチウム微粒子製造の熟成工程において熟成時の加温処理を24時間にしたこと以外は実施例1と同様な方法にてPIフィルムA−3を作製し、位相差発現性を評価した。評価結果は表1に示す。
4.比較例1
炭酸ストロンチウム微粒子製造の熟成工程において熟成時に攪拌せずに静置したこと以外は実施例1と同様の方法にてPIフィルムB−1を作製し、位相差発現性を評価した。評価結果は以下の表1に示す。
5.比較例2
炭酸ストロンチウム微粒子製造において、熟成工程を省略したこと以外は実施例1と同様の方法にてPIフィルムC−1を作製し、位相差発現性を評価した。評価結果は以下の表1に示す。
6.比較例3
ポリイミドフィルム製膜時に炭酸ストロンチウムを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法にてPIフィルムD−1を作製し、位相差発現性を評価した。評価結果は以下の表1に示す。
7.参考例
表面処理工程において、界面活性剤としてステアリン酸を用いたこと以外は実施例1と同様の方法にてPIフィルムE−1を作製し、分光光度計(日本分光社製)を用いて、PIフィルムE−1の可視光透過率及びヘイズ測定を行った。評価結果は以下の表1に示す。
8.比較例4
炭酸ストロンチウム微粒子製造の反応工程においてDL−酒石酸を加えなかったこと、反応温度を40℃にしたこと、及び熟成工程を省略したこと以外は実施例1と同様な方法にてPIフィルムF−1を作製し、位相差発現性を評価した。評価結果は表1に示す。
Figure 2019212049
表1を参照すると、実施例1、実施例2及び実施例3の炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向の結晶子径は、比較例1の炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向の結晶子径よりも大きい。さらに、比較例1の炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向の結晶子径は、比較例2の炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向の結晶子径よりも大きい。
比較例1では、炭酸ストロンチウムの結晶子径が12nmと小さいため、炭酸ストロンチウムの固有の位相差発現性が小さくなり、実施例2と比較してRthの値が2.3倍以上となっている。
比較例3は、炭酸ストロンチウム粒子を含んでいない。したがって、比較例3のポリイミドフィルム(光学フィルム)は、ポリイミド樹脂単体の面外位相差Rth及び面外複屈折値ΔPを示す。
炭酸ストロンチウム粒子は、「負」の位相差発現性を有することが知られている。したがって、炭酸ストロンチウム粒子の負の位相差の発現により、実施例1と比較例1,2のポリイミドフィルムの面外位相差Rth及び面外複屈折値ΔPは、比較例3よりも小さくなっている。
表1を参照すると、ポリイミドフィルムの面外位相差Rth及び面外複屈折値ΔPは、炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向の結晶子径が大きくなるほど小さくなっていることがわかる。これは、炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向の結晶子径が大きくなるほど、炭酸ストロンチウム粒子固有の位相差を発現しやすいからであると考えられる。
炭酸ストロンチウム粒子固有の面外複屈折値を十分に発現させるという観点から、表1に基づき考慮すると、10〜100nmの範囲内の平均長径を有する炭酸ストロンチウム粒子のc軸方向における結晶子径は、15nm以上、好ましくは20nm以上であることが好ましいことがわかる。結晶子径が15nm以下、又はc軸格子定数(0.513nm)の40倍以下の場合には、粒子の結晶性が低く、炭酸ストロンチウムが持つ本来の複屈折性を発現しにくい。そのため、結晶子径は20nm以上であることが好ましい。
また、実施例1と参考例を比較すると、界面活性剤としてステアリン酸を用いるよりも、フェニル系界面活性剤を用いた方が、光学フィルムのヘイズが高いことがわかる。これは、フェニル系界面活性剤の方が、炭酸ストロンチウム粒子の分散性が高くなるためと考えられる。
比較例4は、炭酸ストロンチウムの平均長径が200nmとかなり大きい。したがって、比較例4の光学フィルムはヘイズが高いことがわかる。これは粒子径が100nmを超えると光の散乱が大きくなるためと考えられる。
上述の実施形態及び実施例を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態及び実施例に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。

Claims (15)

  1. 10〜100nmの範囲内の平均長径と、c軸方向において15nm以上の結晶子径と、を有する、炭酸ストロンチウム粒子。
  2. 前記平均長径が20〜70nmの範囲内であり、かつ前記c軸方向における結晶子径が20nm以上である、請求項1に記載の炭酸ストロンチウム粒子。
  3. 前記結晶子径に対する前記平均長径の比率が2.5以下である、請求項1又は2に記載の炭酸ストロンチウム粒子。
  4. 表面に付着した界面活性剤を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム粒子。
  5. 前記界面活性剤は、フェニル基を有する、請求項4に記載の炭酸ストロンチウム粒子。
  6. 前記界面活性剤は、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルである、請求項5に記載の炭酸ストロンチウム粒子。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム粒子と、
    前記炭酸ストロンチウム粒子を含む樹脂と、を含む樹脂組成物。
  8. 前記樹脂組成物全体に対する前記炭酸ストロンチウム粒子の含有量が、0.1〜50質量%の範囲内である、請求項7に記載の樹脂組成物。
  9. 前記含有量が、1〜35質量%の範囲内である、請求項8に記載の樹脂組成物。
  10. 前記樹脂が、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、セルロースエステル、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリフマル酸ジエステル、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、マレイミド系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド及びポリウレタンからなる群より選択される1種類以上である、請求項7から9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記樹脂がポリイミドである、請求項7から10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 請求項1から6のいずれか1項に記載の炭酸ストロンチウム粒子と、ポリイミド前駆体と、を含む樹脂組成物。
  13. 請求項11又は12に記載の樹脂組成物から得られる炭酸ストロンチウム含有ポリイミドフィルム。
  14. 請求項7から12のいずれか1項に記載の樹脂組成物、又は請求項13に記載の炭酸ストロンチウム含有ポリイミドフィルムを含む、光学フィルム。
  15. 請求項14に記載の光学フィルムを備える、画像表示装置。
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