JP4813013B2 - ディスプレイ用光学フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも1種類以上の光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなり、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、それと垂直方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムおよびそれからなる表示素子に関し、特に特殊な延伸方法を必要せず簡便な製造プロセスで製造できる位相差フィルムおよびそれからなる表示素子に関するものである。
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話からコンピューター用モニター、ノートパソコン、テレビまで幅広く使用されている。液晶ディスプレイには、表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられている。
特に位相差フィルムは、色調の補償、視野角の補償など大きな役割を果たしている。従来の位相差フィルムとしては、ポリカーボネートや環状ポリオレフィン、マレイミド系共重合体が用いられているが、これらの高分子はいずれも正の複屈折を有する高分子である。
ここで、複屈折の正負は下記に示すように定義される。
延伸等で分子配向した高分子フィルムの光学異方性は、図1に示す屈折率楕円体で表すことが出来る。ここでは、フィルム面内の遅相軸方向(延伸方向)をx軸、それと垂直方向をy軸、フィルム厚み方向をz軸、それぞれの屈折率をnx、ny、nzと示す。
例えばポリカーボネートの3次元の屈折率は、延伸方向については相対的に大きく、延伸方向と垂直な方向については相対的に小さい。このように、延伸方向の屈折率が、相対的に大きくなる場合を正、それとは反対に小さくなる場合を負とする。
一般に正の複屈折性を有する高分子を一軸延伸すると3次元屈折率は、nx>ny=nzとなり、二軸延伸ではnx≧ny>nzとなる。ここで、一軸延伸の場合、nxは延伸方向(x方向:遅相軸)の屈折率、nyは延伸方向と垂直な方向(y方向)の屈折率、nzはフィルム厚み方向(z方向)の屈折率である。二軸延伸では、延伸比率がx軸>y軸となるアンバランス二軸延伸の場合、3次元屈折率の関係はnx>ny>nzとなり、延伸比率がx軸=y軸となる二軸延伸の場合、3次元屈折率はnx=ny>nzとなる。
一方、負の複屈折性を有する高分子の一軸延伸において3次元屈折率は、nz=ny>nxとなり、二軸延伸ではnz>ny≧nxとなる。ここで、一軸延伸の場合、nxは延伸方向(x方向)の屈折率、nyは延伸方向と垂直な方向(y方向)の屈折率、nzはフィルム厚み方向(z方向)の屈折率である。二軸延伸では、延伸比率がx軸>y軸のアンバランス二軸延伸の場合、3次元屈折率の関係はnz>ny>nxとなり、延伸比率がx軸=y軸の二軸延伸の場合、3次元屈折率の関係はnz>ny=nxとなる。
このように、高分子の複屈折性の正負、3次元屈折率の関係は、延伸方法によりある程度制御することが可能である。しかし、一般の延伸方法では3次元屈折率の関係がnx>nz>nyというようにz軸方向の屈折率が中間にくるフィルムを得ることはできない。
そして、このようなnx>nz>nyという3次元屈折率の関係を有する位相差フィルムが、視野角によらずレターデーションが一定になるという特性を有することが提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。また、偏光フィルムの視野角補償に有効であることが提案されている(例えば非特許文献1参照。)。
しかしながら、上記で述べたように一軸延伸や二軸延伸など通常の延伸方法では、3次元屈折率の関係としてnx>nz>nyを有する位相差フィルムは得られないため、ポリマーフィルムの片面または両面に熱収縮性フィルムを接着し、その積層体を加熱延伸処理して、ポリマーフィルムの延伸方向と直交する方向(z軸方向)に収縮力をかける処理方法が提案されている(例えば特許文献3,4,5参照。)。該方法においては、熱収縮フィルムが収縮する際に、ポリマー鎖のx軸方向、y軸方向の成分が少なくなり、その分z軸方向の成分が増えることで、nzがnyよりも大きくなる。同時にx軸方向に延伸することでnxを大きくしている。また、ポリマーフィルムに電場を印加しながら面内に一軸延伸する方法が提案されている(例えば特許文献6参照。)。該方法では、電場を印加することで、ポリマー鎖の電場と平行な成分が増加することで、nzを大きくすることができる。
さらに光学異方性微粒子を用いた光学フィルムや光学接着剤などの光学材料が提案されている(例えば特許文献7、非特許文献2参照。)。
特開平02−160204号公報
特開2001−091743号公報 Jpn.J.Appl.Phys.Vol.41、p4553(2002) 特許2818983号公報 特開平05−297223号公報 特開平05−323120号公報 特開平06−088909号公報 特開平11−293116号公報 高分子学会予行集、2003年、Vol.52、No.4、748頁
しかし、特許文献3〜6において提案された方法は、非常に複雑な製造工程を必要とする、等の多くの課題を抱えている。また、特許文献7、非特許文献2に提案されたものは、実質的にゼロ複屈折(非複屈折)材料に関するものであり、位相差フィルムに代表される位相差を積極的に利用した用途等については言及されていない。
そこで、本発明は、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、それと垂直方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>nz>nyの関係を満たす位相差フィルムおよびそれからなる表示素子、さらには特殊な延伸方法を必要せず簡便な製造プロセスで製造できる該位相差フィルムおよびそれからなる表示素子を提供することを目的とするものである。
本発明者は上記課題に関し、鋭意検討した結果、光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなり、3次元複屈折の特異的な関係を有する位相差フィルムを見いだし、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、少なくとも一種類以上の光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなり、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、それと垂直方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>nz>nyの関係を満たすことを特徴とする位相差フィルムおよびそれからなる表示素子に関するものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の位相差フィルムは、少なくとも一種類以上の光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなり、3次元屈折率の関係がnx>nz>nyを満たす位相差フィルムであり、特に単層フィルムからなる位相差フィルムであることが好ましい。ここで、nxとはフィルム面内の遅相軸(x軸)方向(配向方法)の屈折率を示し、nyとはそれと垂直(y軸)方向の屈折率を示し、nzとはフィルムの厚み(z軸)方向の屈折率を示す。
本発明の位相差フィルムは、正の複屈折性を有する成分と負の複屈折性を有する成分とからなり、位相差フィルムとしては正の複屈折性(nx>nz)を有する(延伸方向の屈折率が最も高くなる。)ものではあるが、負の複屈折性を有する成分の正常光屈折率と異常光屈折率の屈折率差(以下、△nと称する。)が、正の複屈折性を有する成分の実質的な△nに比べ非常に大きいものとなり、3次元屈折率の関係がnx>nz>nyを満たすものである。
本発明の位相差フィルムを構成する光学異方性を有する炭酸ストロンチウムとしては、光学異方性を有する炭酸ストロンチウムの範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、その中でも負の光学異方性を有する微粒子であることが好ましく、特に大きな△nを有する負の光学異方性を有する炭酸ストロンチウムが好ましく、特に延伸等の一般的な配向操作により3次元屈折率の関係がnx>nz>nyを満たす位相差フィルムが容易に得られることから、アスペクト比(軸方向の長さと軸方向に垂直な長さの比)が1.5以上であることが好ましく、2以上、特に3以上であることが好ましい。また、該炭酸ストロンチウムの粒子径は、高光線透過率を有し透明性に優れた位相差フィルムとなることから1μm以下であることが好ましく、500nm以下、特に200nm、更に100nm以下であることが好ましい。
また、該炭酸ストロンチウムは透明性高分子に効率的に分散し光線透過率に優れた位相差フィルムとなることから、透明性高分子に対する分散性の高いバインダーで予め表面処理をされたものであることが好ましい。その際の表面処理としては、脂肪酸処理、アルキルアンモニウム処理、エポキシ樹脂処理、シラン処理、ウレタン処理などが挙げられる。
本発明の位相差フィルムを構成する透明性高分子としては、透明性高分子の範疇に属するものであれば如何なるものでもよく、例えばポリカーボネート;ポリアリレート;ポリスルフォン;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;アクリル系樹脂;ポリノルボルネン、ノルボルネン誘導体の開環重合体の水添物、ポリシクロヘキサンなどの環状ポリオレフィン系樹脂;マレイミド系樹脂;フルオレン系ポリエステル樹脂;フルオレン系ポリカーボネートなどが挙げられ、その中でも耐熱性に優れる位相差フィルムとなることからガラス転移温度100℃以上の透明性高分子が好ましく、特にガラス転移温度120℃以上の透明性高分子が好ましく、さらにガラス転移温度130℃以上の透明性高分子が好ましい。また、光学特性に優れることからポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、マレイミド系樹脂が好ましい。
本発明の位相差フィルムは、液晶ディスプレイに使用した際の輝度が高くなることから光線透過率が70%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましく、更に85%以上であることが好ましい。
また、本発明の位相差フィルムは3次元屈折率の関係がnx>nz>nyであることから、位相差フィルム自体としては正の光学異方性(複屈折性)を有するものであり、基本的には正の光学異方性を有する成分と負の光学異方性を有する成分を組み合わせることにより上記特性を満足させるものであり、その組み合わせとしては光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと正の光学異方性を有する透明性高分子、光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと負の光学異方性を有する透明性高分子、というそれぞれの組み合わせがあり、その中でもそれぞれの成分の入手がより容易であることからの光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと正の光学異方性を有する透明性高分子とからなる位相差フィルムであることが好ましい。なお、正の光学異方性を有する透明性高分子としては、例えばポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、マレイミド系樹脂が挙げられる。また、本発明の位相差フィルムにおいては、負の光学異方性を有する成分の△nが、正の光学異方性を有する成分の実質的な△nより大きくなることから3次元屈折率の関係nx>nz>nyが達成されるものである。
本発明の位相差フィルムを製造する際には、複屈折性を十分に発現し安定性を有し、フィルム自体は正の光学異方性を有する位相差フィルムが得られることから、負の光学異方性を有する炭酸ストロンチウム:正の光学異方性を有する透明性高分子=0.1〜50重量%:99.9〜50重量%となることが好ましく、特に1〜30重量%:99〜70重量%からなることが好ましく、さらに3〜20重量%:97〜80重量%、最も5〜15重量:95〜85重量%からなる位相差フィルム用樹脂組成物より得ることが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、例えば光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなる位相差フィルム用樹脂組成物を溶液キャスティング、溶融キャスティング等の方法によりフィルム化し、必要に応じて該フィルムを二軸延伸、好ましくはアンバランス二軸延伸(x方向とy方向の延伸倍率が異なる)することにより製造することが出来る。
光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなる位相差フィルム用樹脂組成物の製造方法としては、例えば光学異方性を有する炭酸ストロンチウムの分散溶液に透明性高分子を溶解し均一化する方法;光学異方性を有する炭酸ストロンチウムの分散溶液に透明性高分子を溶解し均一化した後に溶媒を除去しペレット化、顆粒化、粉体化する方法;光学異方性を有する炭酸ストロンチウムを透明性高分子の原料モノマーに分散し重合することにより複合化する方法;光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子を押出機、ロール等で溶融混練する方法;などが挙げられる。
フィルム化の際の溶液キャスティングとしては、例えば光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなる位相差フィルム用樹脂組成物を溶媒に溶解した溶液(以下、ドープと称する。)を支持基板上に流延した後、加熱等を行い溶媒を除去しフィルムを得る方法を挙げることができる。なお、その際ドープを支持基板上に流延する方法としては、例えばTダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法等が用いられる。さらに、工業的にはダイからドープをベルト状又はドラム状の支持基板に連続的に押し出す方法が最も一般的である。用いられる支持基板としては、例えばガラス基板;ステンレスやフェロタイプ等の金属基板;ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板などがある。高度に表面性、光学均質性の優れたフィルムを工業的に連続製膜するには、表面を鏡面仕上げした金属基板が好ましく用いられる。溶液キャスト法において、高い透明性を有し、且つ厚み精度、表面平滑性に優れたフィルムを製膜する際には、ドープの溶液粘度は極めて重要な因子であり、700〜30000cpsが好ましく、特に1000〜10000cpsであることが好ましい。また、溶液キャスト法によりフィルム化した際のフィルムの厚みは、機械特性、生産性に優れることから10〜500μmが好ましく、特に40〜300μmの範囲であることが好ましい。
また、フィルム化の際の溶融キャスティングとしては、例えば光学異方性を有する炭酸ストロンチウムと透明性高分子からなる位相差フィルム用樹脂組成物を押出機内で溶融し、Tダイのスリットからフィルム状に押出した後、ロールやエアーなどで冷却しつつ引き取る成形法(以下、Tダイ溶融押出法と称する。)を挙げることができる。この際、溶融樹脂はTダイ内で幅広のフィルムに賦形されるため、フィルムの寸法は主にTダイよって決定される。Tダイ内の流路は、溶融樹脂の粘弾性特性に合わせて最適化すればよく、ダイスとしては一般的にストレートマニホールド型、コートハンガー型、フィッシュテール型、コートハンガーマニホールド型等が挙げられ、その中でも得られるフィルムの厚み精度を重視する場合、マニホールド型のダイスを用いることが好ましい。また、溶融樹脂の出口部分であるリップの隙間調整は、フィルムの厚み精度を決定する重要な因子の一つである。本発明の位相差フィルムは、厚み精度の要求が非常に厳しく、その理由の一つとして、位相差は光が透過する媒体の複屈折と光路長の積で定義されるため、仮に複屈折が均質であっても、位相差フィルムの厚みが不均質であると、位相差は不均質となりフィルムの光学等方性が乏しくなるのである。しかし、リップの精密な厚み調整作業には熟練者を要しても時間が掛かるため、近年ではコンピューターを駆使した自動厚み制御システムが導入され、フィルム厚み精度の向上のみならず、歩留まりの向上に大きく寄与している。そして、そのような方法として、オンラインでフィルムの厚みを計測し、その結果をもとに自動でリップの隙間調整やギアポンプの速度調製を行う方法が挙げられ、例えば特開平10−58518号公報、特開2000−127226号公報などに提案され、自動でリップを調整する方法としては、例えばヒートボルト方式、ロボット方式、リップヒータ方式、圧電素子方式などが挙げられ、本発明においてもこれら方法を付加的に用いることもできる。
また、Tダイのリップは、溶融樹脂の出口部分であるため、溶融樹脂と接触するリップ部に凹凸がある場合、フィルム表面に凹凸が転写されてしまい、冷却ロールにより形状が固化され、いわゆるダイラインなどになる。よって、特に溶融樹脂と接触するリップ部は、電解研磨などの方法によって表面粗さを小さくすることが望ましい。さらにリップ部の表面粗さが小さくても、熱分解した樹脂がリップ部に付着していわゆる目やにとなると、リップの表面に凹凸が生じることになりダイラインが発生する原因となる。目やに防止のためには、溶融樹脂がリップに付着し難くすることが重要であり、本発明の製造方法においてはクロムやセラミックでコートしたリップを好適に用いることができる。また、溶融樹脂と接触するリップのエッジ部分には樹脂が滞留し易いため、リップのエッジはできる限り鋭くすることが好ましく、特に0.1mmR以下であることが好ましい。
Tダイ溶融押出法ではTダイのスリットより押出された溶融樹脂(溶融フィルム)を冷却ロールに密着させて冷却する。このような冷却ロール、複数個ある場合の第一冷却ロールは一般的にキャストロールやキャスティングロールと呼ばれる。そして、溶融フィルムが接触する第一冷却ロールの表面は、Tダイのリップと同様の理由により、表面粗さが小さいことが望まれる。さらに、冷却ロールが複数個ある場合、第一冷却ロールとその他の冷却ロールは、ロールの回転速度を一定に保つことが重要であり、回転速度にムラがあると、フィルム表面に幅方向のスジが発生する場合がある。
そして、得られるフィルムをより効率的に冷却するためには、第一冷却ロールに巻き付かせたフィルムを第一冷却ロールの反対面から冷却する方法を用いることが好ましく、そのような方法としては、例えばエアーチャンバー法、タッチロール法、エアーナイフ法、ラバーロール法、冷却ドラム法、耳押えロール法、静電ピーニング法が挙げられる。また、タッチロール法として、例えば特開2002−36332号公報、WO97/28950号公報、特開平11−235747号公報に弾性変形が可能なタッチロールが提案されており、これらの場合、高剛性のタッチロールを用いるよりも薄いフィルムが成形可能であり、本発明にもこれら方法を採用することができる。また、タッチロールでフィルムを第一冷却ロールの反対面から抑えることにより、表面粗さを平坦化させたり、引取り方向の分子配向を起こり難くさせる効果があるため、これらタッチロールは好ましく用いることができる。無論、第一冷却ロールの反対面からの冷却は特に行わず、放冷としてもよい。
冷却ロールの表面温度は、得られるフィルムの外観に大きく影響するため、冷却ロールの表面温度は0.1℃の精度で制御することが望ましく、その際は透明性高分子のガラス転移温度−40℃〜+20℃に設定することが好ましく、その際、加圧水やオイルがロール温調の媒体として使用される。なお、温度制御の精度に優れることからオイル温調が好ましい。
得られるフィルムの両端部を切断するためのスリッターを設置してもよく、その際のスリッターに制限はない。その中でも、得られるフィルムが硬質であるためフィルムの破断面に微細なクラックが発生し易い場合は、回転刃をフィルムの両面から押さえつけて切断するシェアカッターと呼ばれるスリッターを用いクラックの発生を抑制することが好ましい。得られたフィルムを巻取る為の巻取り機に特に制限はなく、その中でも引き取り速度と巻き取り速度のバランス調整を行うためのアキュムレーター設備を用いることが好ましい。
そして、得られたフィルムを二軸延伸、好ましくはアンバランス二軸延伸(x方向とy方向の延伸倍率が異なる)することにより3次元屈折率の関係がnx>nz>nyを満足する位相差フィルムを得ることが出来る。その際の延伸加工工程はTダイ溶融押出工程内で連続して行う工程;光学フィルムを一旦巻き取った後、該フィルムを延伸加工装置に供して延伸加工する工程;等がある。ニ軸延伸方法としてはテンターにより延伸する方法、チューブ状に膨らませて延伸する方法などがあり同時又は逐次に二軸延伸することも可能である。その延伸条件としては、位相差フィルムに厚みむらが発生し難く、得られる位相差フィルムが機械的特性、光学的特性に優れることから透明性高分子のガラス転移温度に対して−20℃〜+40℃の温度範囲の延伸温度条件のもと、延伸倍率1.1〜3倍の範囲に延伸することが好ましく、x方向とy方向の延伸比率は、1〜100の範囲であることが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、その目的とする用途に応じその位相差を調整することができる。視角補償のための位相差フィルムとしてはフィルム面内位相差が20nm以上であることが好ましく、特に50nm以上、さらに100nm以上であることが好ましい。偏光板の視角補償のための位相差フィルムとしてはフィルム面内位相差が100〜500nmの範囲であることが好ましく、円偏光フィルムのための位相差フィルムとしてはフィルム面内位相差が100〜200nmの範囲であることが好ましく、1/2波長フィルムのための位相差フィルムとしてはフィルム面内位相差が200〜400nmの範囲が好ましく、STN−LCD向け視角補償のための位相差フィルムとしてはフィルム面内位相差が50〜1000nmの範囲が好ましく、VAモードやIPSモードの液晶ディスプレイの補償のための位相差フィルムとしてはフィルム面内位相差が50〜100nmの範囲が好ましく、特に100〜400nmの範囲が好ましい。なお、本発明の位相差フィルムの位相差は測定波長590nmで測定されたものであり、該位相差としては、面内位相差=(ny−nx)・d(dはフィルム厚みを示す。)、面外位相差=(nz−nx)・dとして表される。
本発明の位相差フィルムは、偏光板と積層し一体化することにより楕円偏光板として用いることができ、さらに1/4波長の位相差フィルムとの貼合では、円偏光板として用いることもできる。また、本発明の位相差フィルム同士、正又は負の複屈折性を有する位相差フィルムと積層し用いることもできる。さらに、ポリビニルアルコール/沃素からなる偏光子の保護フィルムとして少なくとも片側に本発明の位相差フィルムを積層し一体化されてなる偏光板とすることも出来る。そして、本発明の位相差フィルムをプラスチック基板とした液晶素子とすることも可能である。これら積層化の際には接着層を介し、積層することも可能であり、その際の接着剤としては、公知の水溶性又は油溶性接着剤を用いることが出来る。
本発明の位相差フィルムは、フィルム成形時又は位相差フィルム自体の熱安定性を高めるために酸化防止剤が配合されていることが好ましい。該酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独又は併用して用いても良い。そして、相乗的に酸化防止作用が向上することからヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用して用いることが好ましく、その際には例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤100重量部に対してリン系酸化防止剤を100〜500重量部で混合して使用することが特に好ましい。また、酸化防止剤の添加量としては、本発明の位相差フィルムを構成する位相差フィルム用樹脂組成物100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、特に0.5〜1重量部の範囲であることが好ましい。
該ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、チオジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド)、ジエチル((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)ホスフェート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート)、ヘキサメチレン−ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス((4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。
該リン系酸化防止剤としては、例えばトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト、テトラキス(2,4−t−ブチルフェニル)(1,1−ビフェニル)−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、ジ−t−ブチル−m−クレジル−ホスフォナイトなどが挙げられる。
また、ヒンダードアミン系光安定剤が用いられていてもよく、ヒンダードアミン系光安定剤としては、熱着色抑制効果に優れることから分子量が1,000以上のものが好ましく、特に1,500以上であることが好ましい。さらに、ヒンダードアミン系光安定剤の添加量は、熱着色防止効果および光安定化効果に優れることから位相差フィルム用樹脂組成物100重量部に対して0.01重量部〜1.5重量部を用いることが好ましく、特に0.05重量部〜1重量部が好ましく、さらに0.1重量部〜0.5重量部であることが好ましい。
該ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えばポリ((6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(分子量1,600)、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5―トリアジン−2、4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(分子量2,000〜3,100)、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物(分子量2,600〜3,400)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス( N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(分子量2,000以上)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物(分子量3,100〜4,000)などが挙げられ、これらは一種類以上で用いることができる。
さらに、紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を必要に応じて配合していてもよい。
本発明の位相差フィルムは、発明の主旨を越えない範囲で、その他ポリマー、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等が配合されたものであってもよい。
本発明の位相差フィルムは、少なくとも1種類以上の光学異方性を有する微粒子と透明性高分子からなり、3次元屈折率の関係がnx>nz>nyを満たす位相差フィルムであり、該位相差フィルムは、簡単な延伸操作により製造可能である。また、該位相差フィルムは、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモード、OCBモードなど様々な液晶ディスプレイの視角特性の補償に有用である。また、反射防止膜としての利用も可能であるなど幅広く用いることが出来る。
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
実施例において行った評価測定方法を以下に示す。
〜透明性高分子のガラス転移温度の測定〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
〜位相差フィルムの全光線透過率の測定〜
JIS−K−7105に準拠し測定した。
〜位相差フィルムの位相差および3次元屈折率の評価〜
全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)を用い、測定波長590nmの条件で測定した。
実施例1
ポリカーボネート(帝人化成製、商品名パンライト;ガラス転移温度148℃)89.8重量%とエポキシ剤で表面処理された炭酸ストロンチウム微粒子(平均粒子径120nm、平均アスペクト比6.0;△n=−1.5)10.2重量%からなる混合物100重量部を塩化メチレン400重量部に分散し、撹拌機(特殊機化工業製、商品名Robin Mics)で強制攪拌し均一の塩化メチレン溶液を得た。
得られた塩化メチレン溶液を鏡面ロール上に流延し、乾燥することにより厚さ210μmのフィルムを作成した。
得られたフィルムを二軸延伸装置(井元製作所製、型式16A1)により、154℃でx軸方向2倍、y軸方向1.6倍にアンバランス二軸延伸し位相差フィルムを作成した。得られた位相差フィルムの3次元屈折率は、nx=1.5838、ny=1.5820、nz=1.5825であり、nx>nz>nyを満足するものであり、全光線透過率は88.5%であった。また、フィルム面内位相差は118nmであった。
比較例1
ポリカーボネート(帝人化成製、商品名パンライト;ガラス転移温度148℃)100重量部を400重量部の塩化メチレンに分散し均一の塩化メチレン溶液を得た。
得られた塩化メチレン溶液を実施例1と同様に鏡面ロール上に流延、乾燥することにより、200μmのフィルムを作成した。
得られたフィルムを二軸延伸装置(井元製作所製、型式16A1)により、153℃でx軸方向2倍、y軸方向に1.6倍にアンバランス二軸延伸し位相差フィルムを作成した。得られた位相差フィルムの3次元屈折率は、nx=1.5907、ny=1.5774、nz=1.5737であり、nx>ny>nzであった。全光線透過率は88.4%であった。
正の光学異方性(複屈折性)を示す位相差フィルムの屈折率楕円体を示す図である。
符号の説明
nx;遅相軸(延伸方向;x軸)方向の屈折率を示す。
ny;延伸方向と垂直方向(y軸)の屈折率を示す。
nz;位相差フィルムの厚み方向の屈折率を示す。

Claims (10)

  1. 負の光学異方性を有する炭酸ストロンチウム微粒子正の光学異方性を有する透明性高分子からなり、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率をnx、それと垂直方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした場合、nx>nz>nyの関係を満たすことを特徴とする延伸位相差フィルム。
  2. 単層フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の延伸位相差フィルム。
  3. 測定波長590nmにて測定したフィルム面内位相差が20nm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の延伸位相差フィルム。
  4. 負の光学異方性を有する炭酸ストロンチウム微粒子のアスペクト比が1.5以上、平均粒子径が500nm以下であることを特徴とする請求項1〜に記載の延伸位相差フィルム。
  5. 正の光学異方性を有する透明性高分子がガラス転移温度100℃以上の透明性高分子であり、フィルムとした際の全光線透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1〜に記載の延伸位相差フィルム。
  6. 正の光学異方性を有する透明性高分子が、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、マレイミド系共重合体、フマル酸エステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の透明高分子であることを特徴とする請求項1〜に記載の延伸位相差フィルム。
  7. 負の光学異方性を有する炭酸ストロンチウム微粒子正の光学異方性を有する透明性高分子からなるフィルムをアンバランス二軸に延伸することを特徴とする請求項1〜に記載の延伸位相差フィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜に記載の延伸位相差フィルムと偏光板を積層し一体化されてなることを特徴とする円又は楕円偏光板。
  9. 請求項1〜に記載の延伸位相差フィルムと偏光子を積層し一体化されてなることを特徴とする偏光板。
  10. 液晶素子において、請求項1〜に記載の延伸位相差フィルムをプラスチック基板とすることを特徴とする液晶素子。
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