JPWO2019111354A1 - 信号伝送システム - Google Patents

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Abstract

送信部(10)は、デジタル信号源(11)とパルス生成回路(14)を備える。デジタル信号源(11)は矩形波信号を発生する。パルス生成回路(14)はショートスタブ(141)とオープンスタブ(142)とからなり、矩形波信号に対応したパルス信号を生成する。受信部(30)では、送信部(10)からのパルス信号を損失性伝送路(20)を介して受信する。ヒステリシス機能を有した比較回路(32)は、受信したパルス信号を矩形波信号に変換する。

Description

この発明は、メタル線といった損失性伝送路を用いた信号伝送システムに関し、特に、その通信特性を改善するようにしたものである。
ケーブルやプリント基板配線など損失性の伝送路を用いた信号伝送では、高周波数領域の伝送路損失が顕著となるため、受信端における波形振幅が減少する、あるいは受信波形が歪むなどの特性劣化が課題となる。このような問題が発生した場合、送信されたデータの1/0(例えば電圧のHighレベル/Lowレベル)を受信側で判定する際に、伝送路の損失の影響を受けて受信端で判別できなくなるか、判別誤り(ビットエラー)が起きることにより信号伝送の信頼性が低下する。
伝送路の表皮効果及び誘電損失は伝送信号の周波数に依存した損失量を持つため、受信端での波形歪みとジッタ(時間軸誤差)の増加を招き、通信品質劣化の要因となる。表皮効果は周波数が比較的高い交流電流が導体を流れるときに、電流密度が導体の表面で高く、表面から内部に向かって低くなる現象のことであり、周波数が高くなるほど表皮効果の影響は増加し、導体損の一因である。また、誘電損失とは誘電体に交流電場を加えたとき、誘電体の中で電気エネルギが熱エネルギとして失われる現象のことであり、高周波領域で大きくなる傾向をもつ。こうした周波数依存の損失に伴うジッタは、通信に用いられるデジタル信号のビット列に依存するため、データ依存ジッタ(DDJ:Data Dependent Jitter)と称される。
こうしたデータ依存ジッタを抑制するために用いられる従来技術として、受信部に配置されるイコライザや送信部に配置されるプリエンファシスが知られている。イコライザ(equalizer)とは、データ伝送で使われるシグナルコンディショニング(信号調整)技術の一つであり、伝送信号の周波数特性を最適化するため、フィルタ回路などを使ってその特性を調整する補償回路である(例えば、特許文献1参照)。また、プリエンファシス(pre―emphasis)とは、こちらもシグナルコンディショニング技術の一つであり、伝送路固有の高周波数における減衰特性に応じて、伝送信号の高周波領域側を増幅して送信側から送出し、受信側で受ける信号の周波数特性を改善する変調回路である。いずれの従来技術も、伝送路損失の周波数特性に対して、逆特性(高域通過フィルタと等価)の波形補償の処理を施して周波数特性の平坦化を得ることで、振幅の減少やジッタを抑制するものである。
特表平9−507978号公報
しかしながら、従来のイコライザやプリエンファシスを用いたシステムでは、波形補償のための追加回路が必要となり、回路規模やコストが増加するという問題があった。また、伝送路の周波数特性に対し正確な逆特性を得られない場合は、データ依存ジッタの抑制効果が低く、通信性能が改善されないという問題があった。
この発明は、かかる問題を解決するためになされたもので、伝送路損失の周波数特性に強く依存することなく、データ依存ジッタを抑制することのできる信号伝送システムを提供することを目的とする。
この発明に係る信号伝送システムは、信号を送出する送信部と、送信部からの信号を損失性伝送路を介して受信する受信部とを有し、送信部は、矩形波信号を発生する信号源と、伝搬時間が矩形波信号の遷移時間の1/4に相当するショートスタブとオープンスタブとからなり、矩形波信号に対応したパルス信号を生成して損失性伝送路に出力するパルス生成回路とを備え、受信部は、ヒステリシス機能を有し、損失性伝送路を介して受信したパルス信号を矩形波信号に変換する比較器を備えたものである。
この発明に係る信号伝送システムは、伝搬時間が矩形波信号の遷移時間の1/4に相当するショートスタブとオープンスタブとからなり、矩形波信号に対応したパルス信号を生成して損失性伝送路に出力するパルス生成回路を備えたので、伝送路損失の周波数特性に強く依存することなく、データ依存ジッタを抑制することができる。
この発明の実施の形態1の信号伝送システムの構成図である。 この発明の実施の形態1の信号伝送システムにおける矩形波信号とパルス信号とを示す説明図である。 図3Aは、この発明の実施の形態1の信号伝送システムにおける送信部の出力波形、図3Bは受信部の入力信号と波形再生信号を示す説明図である。 この発明の実施の形態2の信号伝送システムを示す構成図である。 この発明の実施の形態3の信号伝送システムにおけるパルス生成回路を示す斜視図である。 この発明の実施の形態4の信号伝送システムにおけるパルス生成回路を示す断面図である。 この発明の実施の形態5の信号伝送システムを示す構成図である。
以下、この発明をより詳細に説明するために、この発明を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
実施の形態1.
図1は、本実施の形態による信号伝送システムを示す構成図である。
図示の信号伝送システムは、送信部10、損失性伝送路20、受信部30を備える。送信部10はデジタル信号を送出し、このデジタル信号が損失性伝送路20を介して受信部30で受信されるよう構成されている。送信部10は、デジタル信号源11、バッファ回路12、出力抵抗13、パルス生成回路14、主線路15を備えている。デジタル信号源11はデジタル信号に対応した矩形波信号を発生するものである。バッファ回路12は、デジタル信号源11からの矩形波信号を必要に応じて増幅しバッファリングするための回路である。出力抵抗13はバッファ回路12の出力側の抵抗であり、パルス生成回路14の入力側の線路の抵抗に相当する。パルス生成回路14はショートスタブ141とオープンスタブ142からなり、接続点140で主線路15に接続されている。これらショートスタブ141及びオープンスタブ142は、伝搬時間がパルス生成回路14に入力される矩形波信号の遷移時間の1/4となるよう構成され、矩形波信号に対応したパルス信号を生成し、主線路15を介して損失性伝送路20に送出する。主線路15はバッファ回路12の出力からパルス生成回路14を介して送信部10の出力までの線路を構成する線路である。
損失性伝送路20は、送信部10と受信部30間でデータ通信を行うためのメタル線等からなる伝送路である。また、受信部30は、終端抵抗31、比較回路32、増幅器33からなる。終端抵抗31は、一端が損失性伝送路20と比較回路32の入力端子との間に接続され、他端が接地された抵抗であり、損失性伝送路20の特性インピーダンスと同じ値を有し、受信部30における終端処理を行うための抵抗である。比較回路32はヒステリシス機能を有し、受信したパルス信号からデジタル矩形波信号を生成する回路である。増幅器33は、比較回路32で変換された矩形波信号を増幅する回路である。
次に、実施の形態1の信号伝送システムの動作について説明する。
図2は、デジタル信号源11から出力され、パルス生成回路14に入力される矩形波信号とパルス生成回路14から出力されるパルス信号を示す説明図である。
デジタル信号源11は、デジタル信号に対応した矩形波信号を発生し、この矩形波信号はバッファ回路12を介してパルス生成回路14に入力される。これを図2では入力信号101として示す。図2に示す入力信号101は、デジタル値:101001…に対応した矩形波信号である。パルス生成回路14は、入力される矩形波信号に対し、矩形波信号が立ち上がる際には正極の狭パルス信号を出力し、入力される矩形波信号が立ち下がる際には負極の狭パルス信号を出力する。これを図2ではパルス信号102として示す。その後、このパルス信号102は主線路15から損失性伝送路20へ出力される。
パルス生成回路14の具体的な動作についてさらに説明する。
ここでは矩形波信号の遷移LowからHighへ立ち上がるときについて記載する。パルス生成回路14は、図2で示される入力信号101が、ショートスタブ141とオープンスタブ142の接続点140にて、主線路15とショートスタブ141とオープンスタブ142に3方向に分岐されて伝搬する。この際、配線が3分岐されているため、並列抵抗の原理から、ショートスタブ141とオープンスタブ142と主線路15に向かう信号電圧はその分下がる。ショートスタブ141とオープンスタブ142は同じ長さで伝搬時間が矩形波信号の立ち上がり時間(遷移時間)Trの1/4である。矩形波信号が接続点140に到達し矩形信号が3方向に分岐する時刻を0とした場合、時刻Tr/4に、両スタブの先端に到達する。このときショートスタブ141の先端では、スタブがグラウンドに接続されているため、ショートスタブ141の特性インピーダンスをZ1[Ω]とした場合、反射係数Γ=(0−Z1)/(0+Z1)=−1の、負の反射(逆相反射)波が発生する。一方、オープンスタブ142の先端では、オープンスタブの特性インピーダンスをショートスタブと同じくZ1[Ω]とした場合、反射係数Γ=(∞−Z1)/∞+Z1)≒+1の正の反射(同相の反射)波が発生する。
時刻Tr/4*2になると、両スタブからの反射波が接続点140に戻って来る。このとき接続点140では、主線路15とスタブ2個が付与されていることによりインピーダンス不整合による反射と透過が発生する。但し、オープンスタブ142からの正の反射波と、ショートスタブ141からの負の反射波が同時刻に接続点140へ到来するため、両スタブ先端からの反射はお互いキャンセルされることにより、接続点140の電圧は時刻0からTr/2までの立ち上がり方を継続する。
時刻Tr/2以降は、最初に両スタブ先端で発生した反射波は接続点140を通過して反対側のスタブへと伝搬し、時刻Tr/4*3のときに、反対側のスタブ先端に到達する。このとき、最初にオープンスタブ142先端で反射した信号が接続点140を通過してショートスタブ141先端に到達し、一方、最初にショートスタブ141先端で反射した信号が接続点140を通過してオープンスタブ142先端に到達することとなる。
時刻Tr/4*4のとき、つまりデジタル信号源11からの矩形波が立ち上がりきった時刻Trのときに、オープンスタブ142先端→ショートスタブ141先端の経路を伝搬してきた信号と、ショートスタブ141先端→オープンスタブ142先端の経路を伝搬してきた信号が接続点140に2回目で戻ることで、2経路を伝搬してきた信号それぞれが負の反射と正の反射の影響を受けているため、パルス生成回路14からの出力信号はこの時刻から立ち下がり始める。つまり、パルス生成回路14から出力される狭パルス信号は時刻Trのときが電圧のピークとなり、パルス生成回路14から出力される狭パルス信号の立ち上がり時間も同じTrとなる。この際、立ち下がる際の電圧降下の傾きは、立ち上がり際の電圧上昇の傾きと逆符号ではあるが角度(電圧変化量/時間)の絶対量は同じである。
なお、時刻2Trのときに、両スタブの特性インピーダンスと、出力抵抗13と損失性伝送路20の特性インピーダンスが等しくない場合は、接続点140にて不整合による反射と透過が再び発生するため、時刻2Trでパルス生成回路14からの出力される狭パルス信号は0Vに収束せず、両スタブ先端への往復を繰り返して次第に0Vに収束する。両スタブの特性インピーダンスが出力抵抗13と損失性伝送路20の特性インピーダンスと同じ場合は、実施の形態2にて後述する。
また、矩形波信号が立ち下がる場合も原理は同様であり、前述の立ち上がり時との違いは、パルス生成回路14の出力が負極(負の電圧ピーク)になることである。なお、通常、矩形波信号の遷移時間、すなわち、立ち上がり時間Trと立ち下がり時間Tfの関係はTr=Tfである。その後は、矩形波信号が次の遷移を行うまで、パルス生成回路14の出力電圧は0Vである。
ショートスタブ141とオープンスタブ142を用いた本実施の形態のパルス生成回路14は、1/4λ(λは基本周波数f0=伝送レートの半分の周波数に対応する波長)スタブを用いたBPF(Band Pass Filter:帯域通過フィルタ)やBSF(Band Stop Filter:帯域除去フィルタ)による周波数領域を考慮したフィルタ設計手法とは異なる。本実施の形態における設計パラメータは、矩形波信号の遷移時間に従属するため、伝送レートの速度には依存しない。つまり、λが設計パラメータにはならない。たとえ矩形波信号の伝送レートがどんなに低くても(f0が低い、またはλが長くなっても)、矩形波信号の遷移時間(立ち上がり/立ち下がり)時間が伝送レートと比較して短い場合、本実施の形態で用いるショートスタブ141とオープンスタブ142の長さもそれに応じて短くなる。
また、本実施の形態は、マイクロ波の世界で用いられるような目的のフィルタではなく、キャパシタを直列に接続した微分回路でもないため、パルス生成回路14の出力信号は微分波形にはならない。つまり微分回路に必要なR素子やC素子が不要である。もし矩形波信号の立ち上がり/立ち下がり時の電圧遷移が線形ならば、パルス生成回路14の出力波形のLow→High及びHigh→Lowへの電圧遷移も線形である。
次に、信号伝送システムにおける受信部30の動作について説明する。受信部30は、送信部10から出力された狭パルス信号を受信し、ヒステリシスが付与された比較回路32によって矩形のデジタル信号を成形する。比較回路とは、入力される二つの電圧(または電流)を比較し、その結果によって出力が切り替わる回路のことである。ヒステリシスの付与とは、例えば電圧に関してHigh側とLow側に閾値を設定することである。つまり、入力信号がHigh側の閾値を上回ればHigh判定として設定した電圧を出力し、Low側の閾値を下回ればLow判定として設定した電圧を出力する。この機能はデジタル波形の成形に一般的に用いられる。なお、受信部30には、損失性伝送路20の特性インピーダンスと同じ値となる終端抵抗31が接続されているため、受信端における信号反射は発生しない。
図3Aは送信部10からの出力波形、図3Bは受信部30における比較回路32の入力信号と出力信号を示す説明図である。
受信部30における比較回路32は、図3Aに示す狭パルス信号が送信部10から出力された場合、損失性伝送路20を介して伝送された狭パルス信号301を受信し、その信号の電圧レベルが予め設定されたHigh側の電圧閾値VTHを上回ればVを出力し続け、Low側の電圧閾値VTLを下回ればVを出力する(出力信号302参照)。
すなわち、パルス生成回路14から出力される狭パルス信号は正極パルスまたは負極パルスとなるため、受信部30では、正極パルスまたは負極のパルスの電圧が比較回路32のコンパレータ閾値を越えたら、パルス信号の受信を認識する。
これにより、送信部10における元信号の伝送レートを再現した矩形デジタル信号が受信部30の比較回路32から出力される。
以上のような構成を用いたことにより、実施の形態1では次のような効果が得られる。すなわち、従来の伝送システムでは、矩形デジタル信号を送信するため、ケーブル伝送系などの損失性伝送路に接続された際に隣接ビットからの影響を受けやすく、伝送レートが高くなるほど周波数帯域も広くなり、さらに使用周波数上限も高くなるため、ジッタが増加してしまうという問題点を有していた。これに対し、本実施の形態では、送信部10にパルス生成回路14を備え、損失性伝送路20に出力される送信波形を狭パルス信号とすることにより、損失性伝送路20に起因した伝送損失に周波数特性があっても、隣接ビットからの影響を受けない。この理由は、隣接する狭パルス信号に時間的な間隔ができることになるからである。結果として、受信端での波形歪みが生じず、データ配列に依存したジッタの劣化を抑えられる狭パルス信号生成が、二つのスタブ構造によりもたらされる。
また、パルス生成回路14から出力される狭パルス信号は矩形波信号の伝送レートに依存せず、矩形波信号の遷移時間(TrまたはTf)のみにしか依存しない。
さらに、パルス生成回路14内において、ショートスタブ141とオープンスタブ142を有する構造であるため、遅延素子や符号反転素子などの部品を用いない。よって、回路規模やコストの増加、また素子毎の特性ばらつきなどの問題をも解消することができる。
また、パルス生成回路14内において、バッファ回路12から出力された信号はショートスタブ141にてグラウンドに接続されているため、DC(直流)的には、または集中定数的にはグラウンド短絡されていることになる。このため、信号伝送路にてDCオフセットが生じないことから、受信部30の入口に直列にDCカット用コンデンサを備える必要も無いという効果がある。
以上説明したように、実施の形態1の信号伝送システムによれば、信号を送出する送信部と、送信部からの信号を損失性伝送路を介して受信する受信部とを有し、送信部は、矩形波信号を発生する信号源と、伝搬時間が矩形波信号の遷移時間の1/4に相当するショートスタブとオープンスタブとからなり、矩形波信号に対応したパルス信号を生成して損失性伝送路に出力するパルス生成回路とを備え、受信部は、ヒステリシス機能を有し、損失性伝送路を介して受信したパルス信号を矩形波信号に変換する比較器を備えたので、伝送路損失の周波数特性に強く依存することなく、データ依存ジッタを抑制することができる。
実施の形態2.
実施の形態2は、ショートスタブとオープンスタブの特性インピーダンスを、出力抵抗の抵抗値と損失性伝送路の特性インピーダンスと同じ値とするようにしたものである。
図4は、実施の形態2の信号伝送システムの構成図である。
図示の信号伝送システムは、送信部10aと受信部30とが損失性伝送路20を介して接続されている。実施の形態2の送信部10aではパルス生成回路14aを構成するショートスタブ141aとオープンスタブ142aの特性インピーダンスが、出力抵抗13の抵抗値(Z0)と損失性伝送路20の特性インピーダンス(Z0)と等しくなるよう構成されている。その他の構成は図1に示した実施の形態1と同様であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
次に、実施の形態2におけるパルス生成回路14aの動作について説明する。
実施の形態2のパルス生成回路14aでは、ショートスタブ141aとオープンスタブ142aの先端にて発生する反射波は、接続点140にそれぞれが戻った時に(時刻Tr/2)、出力抵抗13方向、損失性伝送路20方向、反対側のスタブ方向の3方向へ分岐することに起因するインピーダンス不整合による反射が生じる。すなわち、反射係数Γ=(Z0/3−Z0)/(Z0/3+Z0)=−0.5の反射が生じる。その際、半分は今まで伝搬してきたスタブの先端へ戻る反射成分であり、残りの半分は前記の3方向へ透過する。ここで、実施の形態1とは異なるのは、接続点140での反射係数Γが−0.5という点であり、透過する量と反射で戻る量が同じであるため、ショートスタブ141a先端に起因する負の反射とオープンスタブ142a先端に起因する正の反射が同じであり、接続点140ではちょうど相殺され、接続点140の電圧は時刻0からTr/2までの立ち上がり方そのまま時刻Trまで継続する。
時刻Tr/2以降は、最初に両スタブ先端で発生した反射波は接続点140を通過して反対側のスタブへと伝搬し、時刻Tr/4*3に反対側のスタブ先端に到達する。このとき、最初にオープンスタブ142aの先端で反射した信号が接続点140を通過してショートスタブ141aの先端に到達し、一方、最初にショートスタブ141aの先端で反射した信号が接続点140を通過してオープンスタブ142aの先端に到達することとなる。
時刻Tr/4*4のとき、つまりデジタル信号源11からの矩形波信号が立ち上がりきった時刻Trのときに、オープンスタブ142a先端→接続点140地点通過→ショートスタブ141a先端の経路を伝搬してきた信号と、ショートスタブ141a先端→接続点140地点→オープンスタブ142a先端の経路を伝搬してきた信号が接続点140地点に2回目で戻ることで、2経路を伝搬してきた信号それぞれが負の反射と正の反射の影響を受けているため、パルス生成回路14aからの出力信号はこの時刻から時間Trをかけて立ち下がり始める。つまり、パルス生成回路14aから出力される狭パルス信号は時刻Trのときが電圧のピークとなり、パルス生成回路14aから出力される狭パルス信号の立ち上がり時間も同じTrとなる。
ここで、実施の形態2では、両スタブの特性インピーダンス=出力抵抗13の抵抗値=損失性伝送路20の特性インピーダンスであるため、前述したように、反射係数Γ=−0.5となり、狭パルス信号の立ち下がりはTrで0Vとなる。よって、パルス生成回路14aからの狭パルス出力時間は、立ち上がり時間Tr+立下り時間Tr=2Trとなる特徴がある。このとき、パルス生成回路14から出力される狭パルス信号は、パルス生成回路14aへの入力信号の立ち上がり/立下り時の傾きが直線の場合、パルス生成回路14aの出力信号の立ち上がり/立下り時の傾きも直線となり、二等辺三角形のようにピーク電圧時刻を境に線対称のような波形となる。なお、矩形波信号が立ち下がる場合も原理は同様であり、前述の立ち上がり時との違いは、パルス生成回路14aの出力が負極(負の電圧ピーク)になることである。
このように、実施の形態2では、パルス生成回路14aからの出力される狭パルス信号の時間幅は、矩形波信号の伝送レートにかかわらず、矩形波信号の遷移時間(TrまたはTf)の2倍で済み、それ以降は入力信号における次の遷移までは0Vとなる。これにより、パルス信号に時間的な間隔が生まれる。矩形波信号のTrTfと、パルス生成回路14aから出力される狭パルス信号のピーク値までの遷移時間もTrTfとなるため、本狭パルス信号の周波数成分が矩形波信号よりも高くなることはない。つまり、狭パルス信号を生成するために、より高速かつ広帯域な矩形デジタル信号源や受動素子を用意する必要が無いという効果がある。
以上説明したように、実施の形態2の信号伝送システムによれば、ショートスタブとオープンスタブの特性インピーダンスを、ショートスタブとオープンスタブの接続点と信号源との間の抵抗値と損失性伝送路の特性インピーダンスと同じ値としたので、実施の形態1の効果に加えて、高速かつ広帯域な矩形デジタル信号源や受動素子を必要とせず、低コスト化を図ることができる。
実施の形態3.
実施の形態3は、パルス生成回路のショートスタブ141とオープンスタブ142を基板内のマイクロストリップライン(MSL:Micro Strip Line)やストリップライン(SL:Strip Line)で構成したものである。
図5は、実施の形態3の信号伝送システムにおけるパルス生成回路を示す斜視図である。図示のパルス生成回路は、基板40の表面に主線路15とショートスタブ141とオープンスタブ142とグラウンド領域41が設けられている。また、主線路15は、基板40の両端にて、例えば同軸コネクタ42が実装され、出力抵抗13と損失性伝送路20とを接続する。実施の形態3では、実施の形態1と同様にパルス生成回路内にショートスタブ141とオープンスタブ142とを備え、ショートスタブ141とオープンスタブ142は、例えば、MSL(Micro Strip Line)やSL(Strip Line)のような基板配線で実現できるため、高価な遅延素子や遅延回路が不要であり、低コスト化を図ることができる。
なお、実施の形態3のパルス生成回路を構成するショートスタブ141とオープンスタブ142は、同軸ケーブルを用いても実現することができる。例えば、同軸ケーブルの伝搬遅延時間が5ns/mであるとした場合、矩形波信号の遷移時間が20nsの場合、その1/4スタブに相当する同軸ケーブル長は1m=100cmとなる。同様に、矩形波信号の遷移時間が30nsの場合の同軸ケーブル長は150cm、矩形波信号の遷移時間が50nsの場合の同軸ケーブル長は250cmとなる。また、ショートスタブ141に該当する同軸ケーブルの先端に、例えばGND短絡端子を接続すれば良い。オープンスタブ142に該当する同軸ケーブルの先端は、そのままにしておいて何も接続しなければ先端開放になる。
なお、上記例では実施の形態1のパルス生成回路14に適用した例を説明したが、実施の形態2のパルス生成回路14aに適用してもよい。
以上説明したように、実施の形態3の信号伝送システムによれば、パルス生成回路は、ショートスタブ及びオープンスタブのうち、少なくともいずれかを、基板内の配線、マイクロストリップライン、ストリップラインのうちのいずれかで構成するようにしたので、高価な遅延素子や遅延回路が不要なため、低コスト化を図ることができる。
実施の形態4.
実施の形態4は、パルス生成回路のショートスタブとオープンスタブを基板内のビア(スルーホール)で構成したものである。
図6は実施の形態4の信号伝送システムにおけるパルス生成回路を示す断面図である。
実施の形態4では、ショートスタブ51aとオープンスタブ51bとを基板50のビア(スルーホール)を利用して構成する。ショートスタブ51aは主線路15を構成する信号線とグラウンド領域52とを接続するビアで実現され、オープンスタブ51bは主線路15を構成する信号線に接続され、かつ、グラウンド領域52とは接続されないビアで実現される。なお、スタブ長が基板50の厚さよりも短い場合はバックドリルなどを行えば実現可能である。
以上説明したように、実施の形態4の信号伝送システムによれば、パルス生成回路は、 ショートスタブ及びオープンスタブのうち、少なくともいずれかを、基板のビアで構成するようにしたので、スタブ配線の実装面積を削減することができる。
実施の形態5.
実施の形態5は、矩形波信号の遷移時間を調整するための遷移時間調整用バッファを設けたものである。
図7は、実施の形態5の信号伝送システムの構成図である。
実施の形態5の信号伝送システムでは、送信部10bに遷移時間調整用バッファ16を備えている。この遷移時間調整用バッファ16はバッファ回路12と出力抵抗13との間に接続されており、矩形波信号の遷移時間すなわち立ち上がり時間と立ち下がり時間とを変化させる機能を有している。これ以外の構成は図1に示した実施の形態1の構成と同様であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
実施の形態5では、例えば、デジタル信号源11から送出される矩形波信号の立ち上がり/立ち下がり時間がショートスタブ141やオープンスタブ142の長さよりも短い(非常に高速な立ち上がり/立ち下がりである)場合、遷移時間調整用バッファ16によって、その立ち上がり/立ち下がり時間を長くするよう調整する。あるいは、ショートスタブ141とオープンスタブ142の長さに合わせた遷移時間調整用バッファ16を選定する。その他の動作については実施の形態1と同様である。
なお、上記例では実施の形態1の信号伝送システムに適用した例を説明したが、実施の形態2の信号伝送システムに適用してもよい。
以上説明したように、実施の形態5の信号伝送システムによれば、送信部は、信号源とパルス生成回路との間に、矩形波信号の遷移時間を変化させる遷移時間調整用バッファを設けたので、例えば矩形波信号の遷移時間が非常に短い場合でもパルス生成回路から出力されるパルス信号の電圧が小さくなることを避けることができる。または、ショートスタブとオープンスタブの長さに合わせた遷移時間調整用バッファを選定することにより、パルス幅や振幅の調整が可能になる。
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
以上のように、この発明に係る信号伝送システムは、矩形波信号をパルス信号に変換して損失性伝送路に送出し、受信部でパルス信+号を矩形波信号に変換する構成に関するものであり、ケーブルやプリント基板配線などの損失性伝送路を用いた信号伝送における通信特性を改善するのに適している。
10,10a,10b 送信部、11 デジタル信号源、12 バッファ回路、13 出力抵抗、14,14a パルス生成回路、15 主線路、16 遷移時間調整用バッファ、20 損失性伝送路、30 受信部、31 終端抵抗、32 比較回路、33 増幅器、40,50 基板、41,52 グラウンド領域、42 同軸コネクタ、140 接続点、51a,141,141a ショートスタブ、51b,142,142a オープンスタブ。

Claims (5)

  1. 信号を送出する送信部と、当該送信部からの信号を損失性伝送路を介して受信する受信部とを有し、
    前記送信部は、
    矩形波信号を発生する信号源と、
    伝搬時間が前記矩形波信号の遷移時間の1/4に相当するショートスタブとオープンスタブとからなり、前記矩形波信号に対応したパルス信号を生成して前記損失性伝送路に出力するパルス生成回路とを備え、
    前記受信部は、
    ヒステリシス機能を有し、前記損失性伝送路を介して受信したパルス信号を前記矩形波信号に変換する比較器を備えたことを特徴とする信号伝送システム。
  2. 前記ショートスタブと前記オープンスタブの特性インピーダンスは、当該ショートスタブとオープンスタブの接続点と前記信号源との間の抵抗値と前記損失性伝送路の特性インピーダンスと同じ値であることを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
  3. 前記パルス生成回路は、
    前記ショートスタブ及び前記オープンスタブのうち、少なくともいずれかを、基板内の配線、マイクロストリップライン、ストリップラインのうちのいずれかで構成することを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
  4. 前記パルス生成回路は、
    前記ショートスタブ及び前記オープンスタブのうち、少なくともいずれかを、基板のビアで構成することを特徴とする請求項1記載の信号伝送システム。
  5. 前記送信部は、
    前記信号源と前記パルス生成回路との間に、前記矩形波信号の遷移時間を変化させる遷移時間調整用バッファを設けたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の信号伝送システム。
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