JPWO2019008743A1 - 電気伝導度検出器及び位相調整値を求めるための方法 - Google Patents

電気伝導度検出器及び位相調整値を求めるための方法 Download PDF

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Abstract

電気伝導度検出器は、セル、一対の電極、電圧印加部、増幅回路、位相調整値保持部及び信号処理回路を備えている。増幅回路は、複数のゲインをもち、前記一対の電極間を流れる電流をいずれかのゲインを用いて増幅して増幅信号を得るように構成されている。位相調整値保持部は、増幅回路の各ゲインを用いて得られる増幅信号の互いの位相差を解消するための各ゲインについて予め求められた位相調整値を保持するように構成されている。信号処理回路は、増幅回路により増幅して得られた増幅信号とその増幅信号を得るために用いられたゲインについての位相調整値を用いて、セルを流れる液の電気伝導度を求めるように構成されている。

Description

本発明は、例えばイオンクロマトグラフィーにおける試料成分の検出などに用いられる電気伝導度検出器と、その電気伝導度検出器において位相の調整に用いられる位相調整値を求めるための方法に関するものである。
電気伝導度検出器(導電率計、導電率センサともいう。)は、セルを流れる試料液に一対の電極を浸漬させ、それらの電極間に電圧を印加し、電極間を流れる電流の大きさの変化を試料液の電気伝導度の変化として検出する。
電気伝導度検出器では、電極間を流れる電流値を増幅回路によって増幅した増幅信号を用いて電気伝導度を求める。増幅回路のゲイン(増幅率)が大きいとそれだけ小さい電流の変化も高感度に検出することができるため分解能が向上する一方で、検出可能な電気伝導度の上限が低くなり、検出範囲が狭くなる。反対に、増幅回路のゲインが小さいと検出感度は低くなるが、検出可能な電気伝導度の上限も高くなり、検出範囲が広くなる。
このように、検出感度(又は分解能)と検出範囲とはトレードオフの関係にある。したがって、試料液の電気伝導度の変動の幅が大きい場合に、増幅回路で1つのゲインのみを用いて電流を増幅し電気伝導度の検出を行なうと、試料液の電気伝導度が検出可能な電気伝導度の上限を超えてしまったり、検出感度が不足してしまったりするという問題がある。
そのため、増幅回路のゲインが1つのみでは、電気伝導度を広範囲にわたって測定することと高分解能で検出することの両立を図ることは不可能である。このような問題に鑑み、必要に応じて増幅回路のゲインを変更することが従来から行われている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平11−281687号公報
測定中に増幅回路のゲインを変更すると、ゲインの切替えの前後で電気伝導度の波形が乱れて不連続になる場合があった。
本発明は、電気伝導度検出器において増幅回路のゲインの切替えに起因した波形の乱れを抑制することを目的とするものである。
本発明者は、増幅回路のゲインの切替えの前後で電気伝導度の波形が乱れる原因は、増幅回路の各ゲインを構成する回路で発生する位相の遅れ量が互いに異なっているために、あるゲインを用いて増幅された電流の位相と別のゲインを用いて増幅された電流の位相とがずれることにあるとの知見を得た。そして、本発明者は、増幅回路の各ゲインを構成する回路で発生する位相の遅れ量を予め調べておけば、その遅れ量を用いて各ゲインを用いて増幅された電流の位相が互いに同じになるように調整することができるとの発想に至った。本発明は、このような発想に基づいてなされたものである。
本発明に係る電気伝導度検出器は、セル、一対の電極、電圧印加部、増幅回路、位相調整値保持部及び信号処理回路を備えている。セルには試料液が流れる。一対の電極は、セルを流れる液に浸漬されるものであり、電圧印加部によってそれら一対の電極間に所定の電圧が印加される。増幅回路は、複数のゲインをもち、前記一対の電極間を流れる電流をいずれかのゲインを用いて増幅して増幅信号を得るように構成されている。位相調整値保持部は、増幅回路の各ゲインを用いて得られる増幅信号の互いの位相差を解消するための各ゲインについて予め求められた位相調整値を保持するように構成されている。位相調整値とは、例えば、増幅回路の各ゲイン回路を含む回路で発生する位相の遅れ量である。なお、位相調整値は、後述する本発明の方法を用いて調べることができる。信号処理回路は、増幅回路により増幅して得られた増幅信号とその増幅信号を得るために用いられたゲインについての位相調整値を用いて、セルを流れる液の電気伝導度を求めるように構成されている。
好ましい実施形態では、前記信号処理回路は、前記電気伝導度を求めるために前記増幅回路で得られた増幅回路に乗算されるリファレンス信号の位相を、その増幅信号を得るのに用いられたゲインについての前記位相調整値を用いて調整するように構成されている。
本発明に係る電気伝導度検出器では、前記一対の電極間を流れる電流の大きさに応じて前記増幅回路のゲインを自動的に調整するように構成されたゲイン調整部をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、一対の電極間を流れる電流の大きさに応じて増幅回路のゲインが自動的に切り替わるので、ユーザが手動でゲインを調整することなく、広範囲での検出と高分解能の検出を行なうことができる。
本発明に係る方法は、試料水の流れるセル、そのセルを流れる試料水に浸漬される一対の電極、前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加部、複数のゲインのうちのいずれかのゲインを用いて前記一対の電極間を流れる電流を増幅して増幅信号を得るように構成された増幅回路、及び前記増幅回路によって得られた増幅信号を用いて試料水の電気伝導度を求める信号処理回路を少なくとも備えた電気伝導度検出器の前記増幅回路の各ゲインを用いて得られた前記増幅信号の互いの位相差を解消するための位相調整値を求めるための方法である。当該方法は、
前記一対の電極の間を、静電容量が無視できる抵抗値の抵抗によって導通させるステップと、
前記一対の電極間を流れる電流に基づく前記増幅信号の1周期分の増幅信号波形を、前記増幅回路の前記ゲインごとに取得するステップと、
前記ゲインごとの前記増幅信号波形のうち最大値又は最小値となる時刻とリファレンス信号の1周期分の波形のうち最大値又は最小値となる時刻との差分から前記各増幅信号と前記リファレンス信号との位相差を求め、その位相差を各ゲインについての位相調整値として求めるステップと、をその順に備えている。
本発明に係る電気伝導度検出器では、増幅回路の各ゲインを用いて得られる増幅信号の互いの位相差を解消するための各ゲインについて予め求められた位相調整値を、増幅回路により増幅して得られた増幅信号とともに用いて、試料液の電気伝導度を求めるように構成されているので、増幅回路のゲインの切替えに起因した電気伝導度波形の乱れが抑制され、連続した形状の電気伝導度波形を得ることができる。
本発明に係る方法によれば、上記の電気伝導度検出器において用いられる位相調整値を取得することができる。
電気伝導度検出器の一実施例を概略的に示す構成図である。 同実施例の電気伝導度測定の原理を説明するための原理図である。 同実施例の電気伝導度検出器に用いる位相差調整値を調べるための構成の原理図である。 各ゲインについての位相差調整値を取得する方法の一例を示すフローチャートである。 リファレンス信号の位相を調整しない場合の電気伝導度波形の一例を示す図である。 リファレンス信号の位相を調整した場合の電気伝導度波形の一例を示す図である。
以下に、本発明に係る電気伝導度検出器とその電気伝導度検出器に用いられる位相調整値の取得方法のそれぞれの一実施例について、図面を用いて説明する。
まず、図1を用いて、電気伝導度検出器の一実施例の構成について説明する。
この電気伝導度検出器は、セル2、一対の電極4a,4b、電圧印加部6、増幅回路8、ゲイン調整部10、信号処理回路12及び位相調整値保持部14を備えている。
試料液はセル2を流れ、一対の電極4a,4bはセル2を流れる試料液に浸漬される。電圧印加部6は電極4a,4b間に所定の電圧を印加するように構成されている。増幅回路8は、電圧印加部6によって所定の電圧が印加されたときに電極4a,4b間を流れる電流を増幅して増幅信号を生成するように構成されている。増幅回路8は複数のゲインをもち、いずれか1つのゲインを用いて電極4a,4b間を流れる電流を増幅する。
ゲイン調整部10は、電極4a,4b間を流れる電流レベルとその電流を増幅するために用いるゲインとが予め対応付けられており、電極4a,4b間を流れる電流の大きさを読み取り、その大きさに応じたゲインを選択するように構成されている。これにより、セル2を流れる試料液の電気伝導度がある一定の値を超えると増幅回路8のゲインが自動的に切り替わり、電流の増幅率が小さくなる。ゲイン調整部10は、ハードウェア的に又はソフトウェア的に実現される機能である。
増幅回路8により生成された増幅信号は信号処理回路12に取り込まれる。信号処理回路12は、増幅回路8からの増幅信号を用いて、セル2を流れる試料水の電気伝導度を求めるように構成されている。信号処理回路12は、増幅信号を用いて電気伝導度を求める際に、その増幅信号の生成に用いられたゲインについての位相調整値を用いて、ゲイン特有の位相遅れによる影響を除去するように構成されている。ゲインごとの位相調整値は位相調整値保持部14に保持されている。位相調整値保持部14は、記憶装置の一部の領域によって実現されるものである。
図2を用いて電気伝導度検出器の測定原理について説明する。以下の説明では、便宜上、電極4a,4b間に印加する電圧(入力電圧)Vinをsinθとして説明する。
図に示されているように、セル2は、電極4a,4b間の静電容量Ccellと抵抗値Rcellの並列回路で近似することができる。電極4a,4b間の静電容量Ccellと抵抗値Rcellは試料液の電気伝導度によって値が変化する変数である。
増幅回路8は、オペアンプの抵抗値を変化させることによってゲインを変更するようになっている。ここでは、増幅回路8が2つの抵抗値RgainH、RgainMによって実現される2つのゲイン(高と中)を有するものとして説明するが、増幅回路8が3つ以上のゲインを有していてもよい。各ゲインを用いて電極4a,4b間を流れる電流を増幅することにより得られる増幅信号SgainH、SgainMは、それぞれ次式(1)、(2)によって表される。式(1)、(2)のαH、αMは、それぞれのゲインを含む回路で生じる位相の遅れ量であり、ωは角周波数である。
Figure 2019008743
Figure 2019008743
信号処理回路12は増幅信号SgainH、SgainMにリファレンス信号を乗算する乗算器と、その乗算値を1周期分積算するフィルタを備えている。リファレンス信号は入力信号と同じsinθである。実施例の電気伝導度検出器では、位相調整値保持部14に保持されている位相調整値を用いてこのリファレンス信号の位相を調整するように構成されているが、ここではリファレンス信号をsinθとして説明を続ける。
増幅信号SgainH、SgainMにリファレンス信号sinθを乗算し、それを1周期分積算し、さらにその積算値を抵抗値RgainH、RgainMで除算したものは、次式(3)、(4)によって表される。
Figure 2019008743
Figure 2019008743
上記(3)、(4)式をそれぞれπで除算すると電気伝導度GH、GMが得られる。すなわち、GH、GMはそれぞれ次式(5)、(6)によって表される。
Figure 2019008743
Figure 2019008743
上記の式(5)、(6)より、計算により求められる電気伝導度GH、GMは試料水の実際の電気伝導度に依存して変化するRcellとCcellに依存するだけでなく、各回路で生じる位相の遅れ量αH、αMにも依存することがわかる。遅れ量αH、αMは各ゲインを含む回路がもつ特有の値であるため、αH≠αMである。したがって、GH≠GMとなり、図5Aに示されているように、ゲインの切り替わりの前後で電気伝導度の波形が連続しないこととなる。
ここで、αH、αMは増幅信号SgainH、SgainMに乗算するリファンレンス信号との位相差であるから、増幅信号SgainH、SgainMとそれに乗算するリファレンス信号との位相差を0にすれば、すなわち、増幅信号SgainH、SgainMに乗算するリファレンス信号をそれぞれ、sin(θ−αH)、sin(θ−αM)にすれば、上記式(5)、(6)のαH、αMがそれぞれ0となり、
Figure 2019008743
となる。これにより、図5Bに示されているように、増幅回路8のゲインの切り替わりの前後で電気伝導度の波形が連続する。位相調整値保持部14(図1参照)には、増幅回路8の各ゲインを含む回路で生じる位相の遅れ量αH、αMが位相調整値として保持されている。
位相調整値αH、αMを取得する方法について、図3の原理図と図4のフローチャートを用いて説明する。
位相調整値αH、αMを取得する際は、図3に示されているように、セル2に代えて、静電容量が無視できる程度に小さい抵抗器(抵抗値R)を電極4a,4b間に取り付ける(ステップS1)。この状態で増幅回路8のいずれか1つのゲインを選択し(ステップS2)、電極4a,4b間に電圧sinθを印加して抵抗器を流れる電流をそのゲインを用いて増幅して得られた増幅信号とリファレンス信号sinθを、例えばCPUなどによって実現される演算処理部16でそれぞれ1周期分読み取る(ステップS3)。
電極4a,4bを流れる電流を増幅回路8で各ゲインを用いて増幅して得られる増幅信号SgainH、SgainMは以下のようになる。
Figure 2019008743
Figure 2019008743
演算処理部16により、上記の増幅信号とリファレンス信号sinθのそれぞれで最大値(又は最小値)となる時刻を求め、それらの差分から増幅信号とリファレンス信号の位相差αH、αMを求める(ステップS4)。そして、求めた位相差を位相調整値として位相調整値保持部14に記憶させる(ステップS5)。この操作を増幅回路8に設けられているすべてのゲインについて行なうことで、各ゲインについての位相調整値を求めることができる。
2 セル
4a,4b 電極
6 電圧印加部
8 増幅回路
10 ゲイン調整部
12 信号処理回路
14 位相調整値保持部

Claims (4)

  1. 試料液が流れるセルと、
    前記セルを流れる液に浸漬される一対の電極と、
    前記一対の電極間に所定の電圧を印加するように構成された電圧印加部と、
    複数のゲインをもち、前記一対の電極間を流れる電流をいずれかのゲインを用いて増幅して増幅信号を得るように構成された増幅回路と、
    前記増幅回路の各ゲインを用いて得られる増幅信号の互いの位相差を解消するための前記各ゲインについて予め求められた位相調整値を保持するように構成された位相調整値保持部と、
    前記増幅回路により増幅して得られた増幅信号とその増幅信号を得るために用いられたゲインについて前記位相調整値保持部に保持された前記位相調整値を用いて、前記セルを流れる液の電気伝導度を求めるように構成された信号処理回路と、を備えた電気伝導度検出器。
  2. 前記信号処理回路は、前記電気伝導度を求めるために前記増幅回路で得られた増幅回路に乗算されるリファレンス信号の位相を、その増幅信号を得るのに用いられたゲインについての前記位相調整値を用いて調整するように構成されている、請求項1に記載の電気伝導度検出器。
  3. 前記一対の電極間を流れる電流の大きさに応じて前記増幅回路のゲインを自動的に調整するように構成されたゲイン調整部をさらに備えている請求項1又は2に記載の電気伝導度検出器。
  4. 試料水の流れるセル、そのセルを流れる試料水に浸漬される一対の電極、前記一対の電極間に電圧を印加する電圧印加部、複数のゲインのうちのいずれかのゲインを用いて前記一対の電極間を流れる電流を増幅して増幅信号を得るように構成された増幅回路、及び前記増幅回路によって得られた増幅信号を用いて試料水の電気伝導度を求める信号処理回路を少なくとも備えた電気伝導度検出器の前記増幅回路の各ゲインを用いて得られた前記増幅信号の互いの位相差を解消するための位相調整値を求めるための方法であって、
    前記一対の電極の間を、静電容量が無視できる抵抗値の抵抗によって導通させるステップと、
    前記一対の電極間を流れる電流に基づく前記増幅信号の1周期分の増幅信号波形を、前記増幅回路の前記ゲインごとに取得するステップと、
    前記ゲインごとの前記増幅信号波形のうち最大値又は最小値となる時刻とリファレンス信号の1周期分の波形のうち最大値又は最小値となる時刻との差分から前記各増幅信号と前記リファレンス信号との位相差を求め、その位相差を各ゲインについての位相調整値として求めるステップと、をその順に備えた方法。
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