JPWO2018190372A1 - 鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法 - Google Patents

鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法 Download PDF

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Abstract

咀嚼困難者であっても十分に咀嚼できる軟らかさを有するとともに、異味、異臭のない鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法を提供することを課題とし、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを有するとともに、異味、異臭のない鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品を提供するとともに、当該軟らか加熱調理品の製造方法であって、鶏肉又は豚肉を所定濃度に希釈したマイタケ抽出液に、所定の固液比で、規定された時間及び温度で浸漬する工程を含む製造方法を提供することよって上記の課題を解決する。

Description

本発明は、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法に関し、詳細には、高齢者などの咀嚼力が低下した人であっても容易に咀嚼できる程度に軟らかく、かつ、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を保持している鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法に関する。
近年、高齢者の数が急速に増加する中、適切な医療や介護の提供に加えて、高齢者の生活の質の維持向上が重要な課題として注目されつつある。中でも、毎日の食事は、それ自体が楽しみであるばかりでなく、食事によって自らの口から各種栄養を摂取することは高齢者の体力や免疫力の維持、認知機能の低下防止、骨折防止などにも有効であるといわれており、高齢者の生活の質を考える上で、毎日の食事を如何に美味しく楽しめるものとするかは極めて重要である。
ところが、加齢とともに咀嚼力や嚥下力が低下していくことも事実であり、十分な咀嚼力や嚥下力のある人には喫食に何らの支障のない食品であっても、高齢者にとっては食しづらいことがある。咀嚼や嚥下に困難を感じる機会が増えると、一日に摂取する食事の量も次第に少なくなり、食の楽しみが失われ、その結果、低栄養状態を招いてしまうことになりかねない。
このような不都合を解決するために、食品素材や食品原料に様々な処理を施すことによって、咀嚼力や嚥下力が低下した高齢者でも咀嚼かつ嚥下が可能な軟らかさや流動性を備えた食品や食品素材に加工することが種々提案されている。例えば、特許文献1には、魚介類や肉、野菜などの食品素材をペースト状に加工後、元の食品素材の形状に成型することによって、咀嚼困難者や嚥下障害者でも容易に喫食することができるようにした加工食品が提案されており、また、特許文献2には、ペースト状の食品原材料にマンナン等のゲル化剤を混合することでゼリー状に加工した介護食用の加工食品材料が提案されている。
しかし、これらの介護食用加工食品又は加工食品材料は、基本的に食品素材をペースト状又はゼリー状に加工したものであり、軟らかさや流動性の点では十分であるものの、その形状や色調などの外観は食品素材本来のものとは大きく掛け離れており、視覚を通じての食欲の喚起や、食品素材そのものを食べているという実感に欠け、食事を楽しむという点からは十分なものではない。
一方、本来の外観形状を保持したまま、食品素材を軟らかくする技術も提案されている。例えば、特許文献3及び特許文献4には、肉類や魚介類、穀物類などの食品素材を酵素処理することによって、食品素材固有の形状、外観等を保持した状態で軟らかくした咀嚼・嚥下困難者用の軟化食品が開示されており、これらの軟化食品は、軟らかい上に食品素材固有の形状、外観等が保持されているので、視覚を通じて十分に食欲を喚起できるとされている。
しかしながら、本発明者が独自に得た知見によれば、食品素材が魚介類や肉類である場合には、酵素処理して軟化させると、それを調味液又は煮付け液の存在下で加熱して得られる加熱調理品には、往々にして、強い異味、異臭が感じられることがあり、軟らかさや形状、外観等の見た目はともかく、鶏肉や豚肉の加熱調理品本来の味という観点からは、必ずしも満足のできるものではないという問題点がある。
このような状況に鑑み、本出願人は、先に、魚介類の軟らか加熱調理品とその製造方法を確立し、国際出願No.PCT/JP2016/084777(国際公開No.WO2017/090672)、国際出願No.PCT/JP2017/046485、国際出願No.PCT/JP2018/000884、国際出願No.PCT/JP2018/002488、及び国際出願No.PCT/JP2018/004666として出願した。しかし、鶏肉や豚肉などの肉類については、異味、異臭がなく、鶏肉や豚肉の加熱調理品本来の味を備えるとともに、咀嚼力や嚥下力が低下した人でも容易に咀嚼かつ嚥下が可能な軟らかさを備える軟らか加熱調理品は未だ提案されていない。
特開2012−175934号公報 特開2014−18129号公報 特開2015−23800号公報 特開2015−159753号公報
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みて為されたもので、咀嚼困難者であっても十分に咀嚼できる軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を備える、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究努力を重ねた結果、魚介類や肉類を酵素処理した後に調味液や煮付け液の存在下で加熱して得られる加熱調理品に、往々にして、異味、異臭が感じられることがあるのは、魚介類や肉類を酵素処理するに際し市販の酵素製剤を使用することに原因があるのではないかとの仮定の下、市販の酵素製剤に依らない酵素処理として、マイタケを用いる酵素処理に思い至った。マイタケは、サルノコシカケ科に属する茸の一種であり、複数の蛋白質分解酵素を含んでいることが知られており、マイタケ又はその抽出液を肉類を軟化させるための酵素処理に用いることには合理性がある。しかし、例えば特開2003−250481号公報に記載されているとおり、マイタケに含まれる蛋白質分解酵素は強力であり、人工栽培法が確立されているとはいえ自然の産物であるマイタケ又はその抽出液に、安定した一定の蛋白質分解酵素活性値を期待することは難しく、果たして、商品として大量に製造される鶏肉や豚肉などの肉類の軟化処理にマイタケ又はその抽出液を安定的に使用することができるのか否かは全く不明であった。
斯かる状況下、本発明者は、鋭意研究努力を重ねた結果、比較的安定した物性のマイタケ抽出液を安定的に得ることができるマイタケ抽出液の調製方法を確立した。さらに、本発明者は、斯かるマイタケ抽出液を用いて鶏肉や豚肉を軟化処理するにあたり、軟化処理に用いるマイタケ抽出液の濃度、浸漬時間、及び浸漬温度を所定の範囲内に規制することによって、軟化処理を経た鶏肉又は豚肉を調味液又は煮付け液の存在下で加熱して得られる加熱調理品が、咀嚼力の低下した人でも十分に咀嚼可能な軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を保持していることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、喫食時の温度条件下において、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを有するとともに、異味、異臭のない、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品を提供することによって上記課題を解決するものである。
本発明者の知見によれば、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重が350gf以下という軟らかさは、通常、「弱い力で噛める」程度の軟らかさであり、例えば、焼き豆腐又はそれ以上の軟らかさに相当する。したがって、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを有する本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、軟化処理を経ない通常の鶏肉又は豚肉の加熱調理品に比べて極めて軟らかく、高齢者などの咀嚼力が低下した人でも、十分に咀嚼することができる軟らかさを備えた軟らか加熱調理品である。
なお、「喫食時の温度条件下において」とは、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、通常、冷凍状態で流通、保存されることが想定されるところ、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品が、冷凍又は半解凍状態ではなく、実際の喫食時の温度、例えば、通常、常温以上100℃以下、より好ましくは常温以上80℃以下、さらに好ましくは常温以上60℃以下に加温された状態にあることを意味している。因みに、本明細書において、常温とは15℃をいうものとする。すなわち、上述した350gf以下という軟らかさは、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品が、例えば解凍又は加温されるなどして、その温度が喫食時の温度まで高められた状態での軟らかさであって、冷凍又は半解凍状態にあるときの軟らかさを意味しているのではない。
本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、マイタケ抽出液に浸漬する軟化処理を経ても尚、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を有している。加熱調理品に異味、異臭がないことは、パネラーを用いた官能試験によって確認することが可能であり、特に、異味に関していえば、例えば、人工脂質膜型味覚センサーを用いる味認識装置(株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製 味認識装置「TS−5000Z」)を用いて、対照品に対する相対値として定量的に確認することが可能である。
因みに、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、その好適な一例において、人工脂質膜型味覚センサーを用いる味認識装置によって測定される苦味雑味が、同装置で測定される対応する鶏肉又は豚肉の通常の加熱調理品の苦味雑味の値を基準値=0としたときの相対値として±2未満(すなわち、−2<測定値<+2)である。対応する鶏肉又は豚肉の通常の加熱調理品とは、同種の鶏肉又は豚肉を用いて、同じ加熱調理方法によって得られる加熱調理品であって、軟化処理を施していないものを意味している。
なお、上記味認識装置によって測定される味の相対値が−2以下又は+2以上である場合には、多くの人が対照品と比べて味に差を感じるといわれており、苦味雑味の相対値が±2未満ということは、対照品と比べて苦味雑味において差がないことを意味している。上記味認識装置によって測定される苦味雑味は一般に不快な苦味に相当する味とされており、その苦味雑味の相対値が±2未満、より好適には±1未満であるということは、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、対照品である対応する鶏肉又は豚肉の通常の加熱調理品と比べて苦味雑味において差がなく、異味がないということを意味している。
本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を保持していることに加えて、より好適には鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の外観形状も保持している。このため、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、外観上、軟化処理を経ない通常の鶏肉又は豚肉の加熱調理品と変わるところがなく、食卓に並んだときに、喫食者の食欲を十分に喚起することができるという利点を備えている。因みに、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の外観形状を保持しているとは、肉表面の溶けや剥離がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の色調を保持していることを意味している。
本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、好適には、鶏肉又は豚肉の角切り肉又はスライス肉の加熱調理品である。角切り肉又はスライス肉の大きさや厚さに特段の制限はないが、角切り肉の場合、余りに小さいと、挽肉のようになり、鶏肉又は豚肉を大きさのある肉として食しているという食感が損なわれる恐れがあるので、最も短い辺の長さが3mm以上であるのが好ましく、5mm以上あるのがより好ましい。一方、角切り肉の大きさが余りに大きいと、軟化液が中心部にまで浸透せず、十分な軟らかさが得られない恐れがあるので、最も長い辺の長さは20mm以下であるのが好ましく、15mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。
また、スライス肉の場合は、角切り肉とは違って、薄くても鶏肉又は豚肉のスライス肉を食しているという食感が得られるので、その厚みに特段の下限はないが、スライス肉としての形状を保持させるという観点からは、厚さは0.3mm以上であるのが好ましく、より好ましくは1mm以上、さらに好ましくは3mm以上である。一方、余りに厚いと、角切り肉の場合と同様に、軟化液が中心部にまで浸透せず、十分な軟らかさが得られない恐れがあるので、スライス肉の厚さは10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがさらに好ましい。
なお、上述した角切り肉及びスライス肉の大きさや厚さは、第一には、鶏肉又は豚肉を凍結状態又は半解凍状態でカットするときに設定される大きさや厚さをいうものである。すなわち、鶏肉や豚肉は、解凍工程や加熱調理工程を経ると、部位にもよるが、水分の吸排出や、調味液等の浸透等によって、形が変化する場合があり、特に角切り肉の場合には形状の変化が大きいので、最も短い辺の長さを特定するのが困難になる場合がある。したがって、喫食時にも、角切り肉が角切り肉の形状を維持している場合には、その大きさをもって、上述した角切り肉の大きさとするのが良いが、そうでない場合には、鶏肉又は豚肉を凍結状態又は半解凍状態でカットするときに設定される大きさをもって、上述した角切り肉の大きさとするのが良い。
一方、スライス肉の場合には、解凍工程や加熱調理工程を経ても厚さの変化は少ないが、湾曲して平板状でなくなる場合がある。したがって、喫食時にも、スライス肉がスライス肉としての形状を維持している場合には、その厚さをもって、上述したスライス肉の厚さとするのが良いが、鶏肉又は豚肉を凍結状態又は半解凍状態でカットするときに設定される大きさをもって、上述したスライス肉の厚さとするのが良い。
本発明が対象とする鶏肉とは、ニワトリの肉を意味しており、チャンキー種、コブ種、アーバーエーカー種など、通常市場で流通しているニワトリの肉であれば良く、特定の種のものに限られない。また、本発明が対象とする豚肉も、ヨークシャー種、バークシャー種、ランドレース種等、通常市場で流通している豚肉であれば良く、特定の種のものに限られない。
鶏肉の部位にも特段の制限はないが、ササ身、ムネ肉、又はモモ肉であるのが好ましく、豚肉は、ヒレ肉、モモ肉、ロース肉、肩ロース肉、又は肩肉であるのが好ましく、ヒレ肉又はモモ肉であるのがより好ましい。
本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、調味液や煮付け液の存在下又は非存在下で加熱処理して得られる加熱調理品全般を包含し、その味付けや調理法に特段の制限はない。代表的な加熱調理品としては、例えば、焼成品としては、塩焼、照焼、生姜焼、味噌焼等が挙げられ、煮付け品としては、甘タレ煮、トマト煮、味噌煮、カレー煮等が挙げられるが、これらに限られるものではない。
本発明は、また、加熱調理対象である鶏肉又は豚肉を、生のマイタケの絞り汁を水で30〜35質量%に希釈した軟化液に4〜10℃で40〜48時間浸漬する浸漬工程、及び、前記浸漬工程を経た前記鶏肉又は豚肉を加熱する工程を含む鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品の製造方法を提供することによって、上記課題を解決するものである。斯かる製造方法によれば、喫食時の温度条件下において、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味と外観形状を保持した、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品を安定して製造することができる。
また、より好適な一態様において、本発明の製造方法における浸漬工程は、鶏肉又は豚肉と当該鶏肉又は豚肉を浸漬する軟化液との質量比(以下、単に「固液比」という場合がある)が1:1.6以上、すなわち、鶏肉又は豚肉1質量部に対して軟化液1.6質量部以上であるのが好ましく、より好適には固液比が1:1.6〜1:2.2の範囲内で行われるのが好ましい。固液比が1:1.6を下回ると、所期の軟らかさを備えた鶏肉又は豚肉の加熱調理品が得られない場合があり、好ましくない。また、固液比が1:2.2を上回っても、得られる鶏肉又は豚肉の加熱調理品の軟らかさにそれ程の差異が見られず、軟化液が無駄になるので、やはり好ましくない。
好適な一態様において、前記マイタケの絞り汁は、生のマイタケを1mm角以下に切断した切断物を圧搾して得られる絞り汁である。生のマイタケには水分が含まれているので、これを適当な大きさに切断して絞ることによって、マイタケ切断物の絞り汁を得ることができ、この絞り汁を軟化処理用の浸漬液として用いることができる。圧搾して絞り汁を得るマイタケ切断物の大きさは特に1mm角以下に限られる訳ではないが、1mm角以下に切断した切断物からは、例えば3mm角程度にみじん切りにした切断物からよりも、比較的大量の絞り汁を安定的に得ることができるので好ましい。因みに、マイタケの1mm角以下の切断物は、例えば、サイレントカッターなどの市販の電動切断機を用いることによって容易に得ることができる。
本発明の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、弱い力で噛むことができる程度に軟らかいだけでなく、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を保持しているとともに、好適には、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の外観形状を保持しているので、見た目に美味しく食欲をそそり、咀嚼力の弱い人であっても、これを喫食して、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を楽しむことができるという優れた利点を有している。また、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品の製造方法は、薬剤等によるのではなく、自然の産物であるマイタケの抽出液を軟化液として用いているにもかかわらず、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品を大量かつ安定的に製造することができるという利点を有している。本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品及びその製造方法によれば、高齢者などの咀嚼力が低下した人に、見た目も味も良く、かつ、十分に軟らかい鶏肉又は豚肉の加熱調理品を提供し喫食してもらうことができ、高齢者の生活の質の維持向上を図ることができるという利点が得られる。
本発明に係る鶏ササミの甘タレ煮について味認識装置を用いて測定された各種の味の相対値を示すレーダチャートである。 本発明に係る鶏ムネ肉の甘タレ煮について味認識装置を用いて測定された各種の味の相対値を示すレーダチャートである。 本発明に係る豚モモ肉の甘タレ煮について味認識装置を用いて測定された各種の味の相対値を示すレーダチャートである。 本発明に係る豚ヒレ肉の甘タレ煮について味認識装置を用いて測定された各種の味の相対値を示すレーダチャートである。
以下、本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品とその製造方法について説明する。
<A:予備実験>
<予備実験A1−マイタケ絞り汁の調製−>
市販の生マイタケの各200gをサイレントカッターに掛けて約20秒間切断し、1mm角以下の切断物とし、その切断物を濾布で包んで圧搾機に掛けて絞り汁を回収する作業を生マイタケのロットを変えて2回行ったところ、いずれの検体からも約120gの絞り汁を回収することができた。絞り汁の回収率は、使用した生マイタケの質量に対し約60質量%の高率であった。また、得られた絞り汁のpHを測定したところ、pH5.51〜pH6.12の範囲に分布し、安定した物性値を備えていることが分かった。
一方、サイレントカッターに代えて、包丁を用いてみじん切りにして人力で3mm角の切断物を得た以外は上記と同様に処理したところ、約73〜75gの絞り汁が得られた。得られた絞り汁のpHを測定したところ、pH5.08〜pH5.15の範囲に分布し安定した物性値を備えてはいたが、絞り汁の回収率は、使用した生マイタケの質量に対し約37質量%〜38質量%にとどまり、使用したマイタケの量に比べて得られる絞り汁の量が十分なものとはいえなかった。
さらに、生マイタケ約35gを手でほぐして小分けしたものを、472gの水又は135gの水に2時間又は16時間浸漬後、濾過してマイタケを取り除いてマイタケの抽出液を得た。472gの水に2時間又は16時間浸漬したものからは、それぞれ455g及び449gの抽出液が、135gの水に2時間又は16時間浸漬したものからは、それぞれ123g及び116gの抽出液が得られたが、マイタケが水を吸収し、得られる抽出液の量が変化し不安定になることが避けられなかった。また、得られた抽出液のpHを測定したところ、pH4.97〜pH6.85と広範囲に分布し、安定した物性値が得られなかった。因みに、135gという水の量は、約35gの手でほぐしたマイタケがひたひたに浸かる量であり、472gという水の量は、約35gの手でほぐしたマイタケが十分な水に浸漬された状態になる量である。
予備実験A1の以上の結果から、マイタケを1mm角以下に切断した切断物を濾布で圧搾して得られる絞り汁は、原料マイタケに対して比較的高率で得られ、かつpHで示される物性値も安定しているので、これを軟化処理に用いるマイタケ抽出液として用いるのが良いとの結論に至った。以下、このマイタケ抽出液を用いて、鶏肉又は豚肉の軟化試験を行った。
<予備実験A2−生菌数・大腸菌数の測定>
一般に、肉類は魚介類に比べて生菌数が多いといわれており、鶏肉又は豚肉の生肉をマイタケ抽出液に浸漬して軟化処理すると、浸漬温度及び浸漬時間によっては、生菌数及び/又は大腸菌数が許容範囲を超えてしまう危険性がある。そこで、軟化試験を行うに先立って、生菌数の観点からみて、許容される浸漬温度及び浸漬時間を調べる実験を行った。概要は以下のとおりである。
鶏(アーバーエーカー種。以下、同じ。)のササミ又は豚(ヨークシャー種。以下、同じ。)のヒレ肉を、冷凍状態で、それぞれ一辺1cmの立方体に切断し、それら切断された角切り肉の2個ずつを、解凍後、それぞれ6℃、10℃、14℃、18℃、22℃、又は28℃に維持された軟化液に、12時間、24時間、36時間、40時間、又は48時間浸漬した。浸漬後、軟化液から角切り肉を取り出し、適宜すり潰した後、その1gを秤量し、9gの精製水と混合して検体とした。斯くして得られた検体中に含まれる生菌数及び大腸菌数を、商品名『ペトリフィルム』(スリーエムヘルスケア株式会社販売)の生菌数測定用ACプレート及び大腸菌群数測定用CCプレートを用いて、同商品に添付されている取扱説明書記載の検査方法に従い、検査した。
なお、軟化液としては、予備実験A1におけると同様の手順で、1mm角以下に切断した生マイタケの切断物を圧搾して得た絞り汁(pH6.04)を通常の水道水で35質量%(以下、本明細書においては、特段の断りがない限り、「質量%」を単に「%」と記載する)に希釈した希釈液を軟化液として用いた。また、これら軟化液のそれぞれに浸漬される鶏肉又は豚肉の角切り肉の質量と軟化液の質量との比(固液比)は、1:2とした。結果を表1及び表2に示す。なお、表中、「陰性」は大腸菌数が「0個/0.01g」以下であったことを示す。また、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年12月28日厚生省告示第370号)における「無加熱摂取冷凍食品」の項に規定された要件に基づき、生菌数が100,000個/g以下、かつ、大腸菌数が陰性の検体を「可」、それ以外の検体を「不可」と判定した。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表1に示すとおり、肉種が鶏ササミの場合、浸漬温度が6℃又は10℃では、48時間浸漬しても、一般生菌数は1gあたり100,000個以下、大腸菌数は陰性にとどまり、浸漬条件としては「可」と判定された。一方、浸漬温度が14℃になると、浸漬時間12時間では、一般生菌数は1gあたり100,000個以下、大腸菌数は陰性にとどまり、浸漬条件としては「可」と判定されたが、浸漬時間が24時間以上になると、大腸菌数は陰性にとどまったものの、一般生菌数が1gあたり100,000個を超え、浸漬条件としては「不可」と判定された。浸漬温度18℃、22℃においても、ほぼ同様の傾向となり、浸漬時間が12時間では、浸漬条件としては「可」と判定されたが、浸漬時間が24時間以上になると、一般生菌数が1gあたり100,000個を超え、浸漬条件としては「不可」と判定された。また、浸漬温度が28℃になると、最も短い12時間の浸漬時間でも、一般生菌数及び大腸菌数の双方が許容値を超え、浸漬条件としては「不可」と判定された。
他方、肉種が豚ヒレ肉の場合には、表2に示されるとおり、浸漬温度が6℃又は10℃の場合には、最長48時間の浸漬時間まで、一般生菌数は1gあたり100,000個以下、大腸菌数は陰性にとどまり、鶏ササミの場合と同様に、浸漬条件としては「可」と判定された。同様に、浸漬温度が14℃になると、浸漬時間12時間までは、一般生菌数は1gあたり100,000個以下、大腸菌数は陰性にとどまり、浸漬条件としては「可」と判定されたが、浸漬時間が24時間以上になると、一般生菌数及び大腸菌数の双方が許容値を超え、浸漬条件としては「不可」と判定された。また、浸漬温度が18℃、22℃、及び28℃の場合には、浸漬時間12時間においても、一般生菌数が許容値を超え、検査した全ての浸漬条件において「不可」と判定された。
鶏肉又は豚肉の部位が異なってもほぼ同様の結果が得られると推測されるので、以上の結果から、鶏肉及び豚肉共に、48時間までの間で浸漬時間を選ぶのであれば、一般生菌数及び大腸菌数を許容値内にとどめて安全かつ安心して軟化液に浸漬するには、浸漬温度は10℃以下が好ましいことが分かった。なお、浸漬時間の上限を48時間としたのは、浸漬時間が48時間超になると、浸漬工程に3日以上を要することとなり、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品を大量かつ安定的に製造する上で、好ましくないと判断されるからである。
<予備実験A3−軟化液の浸漬深さ−>
鶏肉又は豚肉を軟化液に浸漬して軟化処理する場合、軟化液が鶏肉又は豚肉の内部にまで浸透して、初めて鶏肉又は豚肉の内部まで軟化すると考えられるので、予備実験A2で得られた安全な浸漬温度及び浸漬時間の範囲内で、軟化液がどこまで浸透するかを調べる実験を行った。
鶏肉として鶏ササミ、鶏ムネ肉、又は鶏モモ肉を用い、また、豚肉として豚ヒレ肉又は豚モモ肉を用い、それらを冷凍状態で、一辺が2cmの角切りにし、解凍後、各角切り肉2個を、それぞれ、6℃又は10℃に維持された軟化液に24時間、36時間、40時間、又は48時間浸漬した。軟化液としては、予備実験A2で用いたと同じ希釈率が35%のマイタケ抽出液を用い、固液比は予備実験A2におけると同様に1:2とした。所定時間の浸漬後、角切り肉を軟化液から取り出して中心部で半分に切断し、切断面における軟化液の表面からの浸透距離(mm)を測定した。すなわち、軟化液が浸透すると鶏肉又は豚肉の色調が変化するので、その色調が変化している部分の表面からの長さを、同じ浸漬条件で得られた2個の角切り肉それぞれの切断面の4辺において測定し、計8個の測定値の中で最も小さい測定値を浸透距離とした。結果を表3(鶏肉)及び表4(豚肉)に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表3に示すとおり、鶏肉の場合、鶏ササミ及び鶏ムネ肉のいずれにおいても、6℃又は10℃の浸漬温度では、36時間の浸漬時間で軟化液の浸透距離は7mm又は8mmとなり、浸漬時間が40時間以上になると、角切り肉の色調が切断面の全域にわたって変化し、軟化液が角切り肉の中心部にまで浸透している様子が観察された。実験に用いた鶏ササミ及び鶏ムネ肉は、いずれも一辺が2cmの角切り肉であるので、軟化液が角切り肉の中心部にまで浸透している場合には、軟化液の浸透距離は10mm以上と考えられる。したがって、軟化液が角切り肉の中心部にまで浸透している場合、表中では、浸透距離を「≧10mm」と記載した。(鶏モモ肉、豚ヒレ肉、及び豚モモ肉についても同様である。)
鶏モモ肉についても、浸漬時間の増加とともに浸透距離が長くなる傾向が見られたが、浸透距離は、鶏ササミ及び鶏ムネ肉に比べて短かった。すなわち、鶏モモ肉の場合、浸漬時間36時間では、6℃及び10℃のいずれの浸漬温度におても、浸透距離は4mmにとどまり、40時間の浸漬時間でようやく5mmに達したが、浸漬時間48時間でも浸透距離は7mmであった。
一方、豚肉の場合には軟化液の浸透距離はさらに短く、豚ヒレ肉及び豚モモ肉のいずれにおいても、浸漬時間40時間で、浸透距離は5mmに達したが、浸漬時間48時間でも浸透距離は6mmであった。
以上の予備実験A1〜A3の結果に基づいて、以下の軟化試験を行った。
<B:鶏肉>
<軟化試験B1−鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮−>
鶏ササミを用い、通常の製造、流通、保管形態を想定し、以下のア〜シの工程で鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮を製造した。
ア 原料搬入(鶏ササミの冷凍品)
イ 冷凍状態で一辺1cmの立方体に角切り
ウ 定温解凍(5℃)
エ 軟化液浸漬(軟化処理)
オ 液切り
カ 煮付け液充填真空包装
キ 静置
ク 加熱殺菌(80℃、40時間)
ケ 放熱
コ 凍結
サ 梱包
シ 保管
エの軟化液浸漬工程においては、予備実験A1におけると同様の手順で、1mm角以下に切断した生マイタケの切断物を圧搾して得た絞り汁(pH6.04)を通常の水道水で25%、30%、35%、又は40%に希釈し、4℃、6℃、又は10℃に維持された希釈液を軟化液として用い、これら軟化液のぞれぞれを、鶏ササミの角切り肉(一辺1cmの立方体形状)2個一組の検体のそれぞれに対し、固液比が1:1.5、1:1.6、1:2.0、又は1:2.2となるように秤り取り、これら秤り取られた軟化液のそれぞれに、各検体を36時間、40時間、又は48時間浸漬した。
シの保管工程後、各検体を適宜のタイミングで解凍し、喫食時の温度に相当する常温まで戻した後に、梱包を開封して角切り肉を取り出し、市販の荷重測定器(アイコーエンジニアリング株式会社販売 デジタルフォースゲージ MODEL RZ−5)を用い、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重を測定した。測定は、2個一組の各検体から無作為に一つの角切り肉を取り出し、無作為に選んだ一面の左側、中央、右側の3箇所、及び反対側の面の左側、中央、右側の3箇所、計6箇所測定した。それぞれの軟化液浸漬条件について、それぞれ3検体ずつ製造、測定し、計18個の測定値の中で最も大きな荷重をもって硬さの測定値(gf)とした。結果を、軟化液の希釈率別に、それぞれ表5〜表8に示す。
また、比較のため、対照1として、同じ鶏ササミの角切り肉を用い、エの軟化液浸漬工程及びオの液切り工程を経ない点以外は同様に処理して、軟化処理を施さない鶏ササミの甘タレ煮を製造し、上記と同様にして、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表9に示す。なお、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)が350gf以下の数値には下線を引いて示した。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
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Figure 2018190372
Figure 2018190372
表5に見られるとおり、マイタケの絞り汁を水で25%に希釈した軟化液を用いて軟化処理をした場合、試験した全ての浸漬条件、すなわち、浸漬温度4℃〜10℃、浸漬時間36時間〜48時間、固液比1:1.5〜1:2.2という浸漬条件では、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)が350gf以下という軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮は得ることができなかった。得られた鶏ササミの甘タレ煮の硬さは、表5に示すとおり、368gf〜599gfの範囲に分布しており、この硬さは、表9に対照1として示す軟化処理を施さない鶏ササミの硬さ2015gfと比べると軟らかいものの、350gfを超えており、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさに相当するものではない。この結果は軟化液の希釈率が25%では、許容し得る浸漬温度の上限である10℃で、48時間浸漬しても、所期の軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮が得られないことを示している。
これに対し、表6及び表7に示すとおり、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした場合には、36時間の浸漬時間では、試験したいずれの浸漬温度においても、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重は350gfを超えたけれども、浸漬時間が40時間又は48時間になると、浸漬温度4℃、6℃、及び10℃のいずれにおいても、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重は350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する鶏ササミの甘タレ煮が得られた。この軟らかさは、表9に対照1として示す軟化処理を施さない鶏ササミの硬さ2015gfと比べると、著しく軟らかいものである。
予備実験A3に示すとおり、鶏ササミの場合、6℃及び10℃の浸漬温度では、浸漬時間36時間で軟化液の浸透距離は、それぞれ7mm及び8mm(表3参照)であるから、浸漬時間36時間では、軟化液は試験に用いた一辺1cmの角切り肉の中心部まで浸透していると考えられる。にもかかわらず、表6及び表7に示すとおり、希釈率30%又は35%の軟化液に36時間浸漬した場合でも、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを備えた甘タレ煮が得られなかったという上記の試験結果は、所期の軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮を得るには、希釈率30%又は35%の軟化液が検体の中心部にまで浸透した上で、さらに、所定時間以上(具体的には40時間以上)の浸漬が必要であることを示している。
また、固液比が1:1.5では所期の軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮が得られず、1:1.6以上で所期の軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮が得られたという上記の試験結果は、所期の軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮を得るには、軟化処理対象である鶏肉に対し、質量比で一定量以上の軟化液が必要であることを示している。
なお、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ササミの甘タレ煮を肉眼で観察したところ、軟化液の希釈率が30%又は35%のいずれの場合においても、浸漬温度4℃〜10℃、浸漬時間36時間〜48時間、固液比1:1.5〜1:2.2の条件下で軟化液に浸漬した場合には、鶏ササミの甘タレ煮本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、部分的な欠損は観察されず、見た目にも食欲をそそるものであった。
また、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ササミの甘タレ煮を試食したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理した鶏ササミの甘タレ煮は鶏ササミの甘タレ煮本来の味がし、軟化液浸漬による異味、異臭は全く感じられなかった。
一方、表8に示すとおり、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした場合には、浸漬温度4℃又は6℃においては、40時間又は48時間浸漬すると、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重は350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮が得られた。また、浸漬温度10℃においては、40時間又は48時間の浸漬で、固液比1:1.5〜1:2.2の条件下で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを備えた鶏ササミの甘タレ煮が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ササミの甘タレ煮を肉眼で観察したところ、希釈率が40%の軟化液を用いた場合には、表面に剥離や白斑状の変色や、表面がボロボロになる荒れが認められる検体が散見され、本来の外観形状を保持している鶏ササミの甘タレ煮を安定して得ることはできなかった。
また、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ササミの甘タレ煮を試食したところ、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理した鶏ササミの甘タレ煮からは軟化処理に用いた軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、鶏ササミの甘タレ煮本来の味が保たれているとはえいないものであった。
以上の結果は、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理をすることによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏ササミの甘タレ煮本来の味を備えるとともに、鶏ササミの甘タレ煮本来の外観形状を有する、鶏ササミの軟らか甘タレ煮を製造することができることを示している。
<官能検査B1−鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮−>
健康な計7名の男女をパネラーとし、軟化試験B1で製造された下記の鶏ササミ甘タレ煮について、官能検査を行った。
(対象とした鶏ササミ甘タレ煮)
・鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮(ア)(表6の#18の浸漬条件における固液比1:2.0のもの)
軟化液の希釈率:30%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 244gf
・鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮(イ)(表7の#27の浸漬条件における固液比1:2.0のもの)
軟化液の希釈率:35%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 240gf
・鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮(ウ)(表8の#36の浸漬条件における固液比1:2.0のもの)
軟化液の希釈率:40%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 220gf
(検査項目)
・外観形状(肉眼による)
・外観色調(肉眼による)(身肉の色目)
・異味(苦味、えぐみ)
・味(その他の味)
・異臭
・マイタケ臭(軟化液に起因するマイタケ臭)
評価は、軟化処理をしない同じ鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮の通常品と比較して、同等若しくはそれ以上に良い場合を「非常に良い=5」、ほぼ同等に良い場合を「良い=4」、やや悪いが許容できる場合を「普通=3」、悪い場合を「悪い=2」、非常に悪い場合を「非常に悪い=1」とする五段階で行い、各パネラーの評価点の平均値を評点とした。結果を表10〜表12に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表10及び表11に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした鶏ササミの角切り肉を甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(ア)及び(イ)は、検査した「外観形状」、「外観色調」、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、「マイタケ臭」のいずれの項目においても「5.0」又は「4.9」という高い評点を獲得し、鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮本来の外観形状、色調、味を有するとともに、異味、異臭がなく、マイタケ臭も感じられず、「軟らかい」とコメントされる優れた軟らか甘タレ煮であった。
これに対し、表12に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした鶏ササミの角切り肉を甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(ウ)は、外観形状や外観色調の評点は「3.6」となり、鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮本来の外観形状、色調をある程度は保持していると評価されたものの、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、及び「マイタケ臭」に関しては、評点は「2.4」〜「2.7」となり、苦味、えぐみなどの異味や異臭が感じられるとともに、変な味がする、マイタケ臭を感じると評価されるものであった。
これら官能検査の結果は、軟化試験B1において、実施者が各甘タレ煮の硬さ測定の際にその都度行った肉眼観察及び試食の結果と一致しており、軟化試験B1の実施者による肉眼観察及び試食による評価が客観性を備えた妥当なものであることを裏付けるものである。
<味認識装置による評価B1>
本発明に係る鶏ササミの角切り肉の甘タレ煮が異味、異臭のないものであることをより客観的に確認すべく、味認識装置による味分析を外部の検査機関(厚生労働省登録検査機関 株式会社キューサイ分析研究所)に依頼した。その詳細は以下のとおりである。
(味分析対象試料)
以下の比較対照品と試料1についての味分析を依頼した。
・比較対照品:通常の(軟化処理を経ない)鶏ササミの角切り肉(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮(株式会社新東京フード製)
・試料1:鶏ササミの角切り肉(一辺1cmの立方体)を希釈率35%の軟化液に、固液比1:2.0、10℃、48時間浸漬したものを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(表7における浸漬条件#27の固液比1:2.0のものに相当)
(使用機器)
インテリジェントセンサーテクノロジー株式会社販売 味認識装置「TS−5000Z」(人工脂質膜型味覚センサーを用いる味認識装置)
(味分析結果)
試料1についての「酸味」、「苦味雑味」、「渋味刺激」、「旨味」、「塩味」、「苦味」、「渋味」、「旨味コク」の8種類の味が、比較対照品である軟化処理をしていない通常の鶏ササミの甘タレ煮の測定値を基準値=0とした相対値で求められた。結果を表13に示す。また、結果をレーダチャートとして表したものを図1に示す。
Figure 2018190372
表13及び図1に示すとおり、本発明に係る軟らか加熱調理品に該当する試料1の味の測定値は、比較対照品である軟化処理をしていない通常の鶏ササミの甘タレ煮の各味を基準=0として、測定された8種類の味のうち、「酸味」を除く他の全ての味において、±2未満(−2<測定値<+2)の範囲内に収まっていた。味認識装置を用いる味分析において、比較対照品を0としたときの味の測定値が±2未満の場合には、これをヒトが食しても比較対照品との味の差としては認識されないといわれている。したがって、ヒトが食したときに「異味」として認識されると考えられる「苦味雑味」「渋味刺激」「苦味」「渋味」の測定値がいずれも±2未満に収まっていたという上記分析結果は、ヒトが試料1を食したときにも通常品である比較対照品と比べて異味があるとは感じられず、本発明品が異味を有さない加熱調理品であることを示している。特に異味として最も強く感じられるとされる「苦味雑味」についての試料1の測定値は、比較対照品と比べて±1以内にとどまっており、本発明の鶏ササミの角切り肉の軟らか甘タレ煮は、異味のない加熱調理品であるといえる。
このように味認識装置による味分析においても、本発明に係る鶏ササミの軟らか甘タレ煮が、軟化処理をしていない通常の鶏ササミの甘タレ煮と比べて異味がなく、鶏ササミの甘タレ煮本来の味を備えたものであることが確認された。
<軟化試験B2−鶏ムネ肉及びモモ肉角切りの甘タレ煮−>
鶏ササミを鶏ムネ肉又は鶏モモ肉に変え、浸漬温度を10℃、浸漬時間を48時間、固液比を1:2.0に固定した以外は、軟化試験B1におけると同様にして、上記ア〜シの工程に従って鶏ムネ肉角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮及び鶏モモ肉角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表14に示す。
また、比較のため、対照2又は対照3として、同じ鶏ムネ肉の角切り又は鶏モモ肉の角切りを用い、上記エの軟化液浸漬工程及び上記オの液切り工程を経ない点以外は同様に処理して、軟化処理を施さない鶏ムネ肉又はモモ肉の甘タレ煮を製造し、上記と同様にして、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表15及び表16に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表14に見られるとおり、鶏肉の部位がササミからムネ肉又はモモ肉に変わっても、マイタケの絞り汁を水で25%に希釈した軟化液を用いて軟化処理をした場合には、10℃、48時間の浸漬では、固液比が1:2.0の条件下でも、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重は350gf超となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する鶏ムネ肉又はモモ肉の甘タレ煮は得られなかった。これに対し、マイタケの絞り汁を水で30%、35%、又は40%に希釈した軟化液を用いて軟化処理をした場合には、10℃、48時間の浸漬で、固液比が1:2.0の条件下、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重は350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する鶏ムネ肉又はモモ肉の甘タレ煮を製造することができた。この結果は、先に軟化試験B1において、鶏ササミ角切り肉の甘タレ煮について得られた結果と整合する。
因みに、表15及び表16に示すとおり、軟化処理を施さない通常の鶏ムネ肉及び鶏モモ肉の角切りの甘タレ煮の硬さは、それぞれ、2512gf(対照2:鶏ムネ肉)及び1892gf(対照3:鶏モモ肉)であるから、350gf以下という硬さは極めて軟らかいものである。
上記のとおり、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)という観点からは、軟化液の希釈率が30%〜40%の範囲で350gf以下という良い結果が得られたが、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ムネ肉又はモモ肉の甘タレ煮を試食したところ、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理した鶏ムネ肉の甘タレ煮及び鶏モモ肉の甘タレ煮からは軟化処理に用いた軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、鶏ムネ肉又は鶏モモ肉の甘タレ煮本来の味が保たれているとはえいないものであった。
これに対し、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理した鶏ムネ肉の甘タレ煮及び鶏モモ肉の甘タレ煮は、それぞれ鶏ムネ肉及び鶏モモ肉の甘タレ煮本来の味がし、軟化液浸漬による異味、異臭は全く感じられなかった。
さらに、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ムネ肉又はモモ肉の甘タレ煮を肉眼で観察したところ、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理した甘タレ煮には、表面に剥離や、白斑状の色ムラや、検体によっては、表面がボロボロになる荒れが認められ、鶏ムネ肉又は鶏モモ肉の甘タレ煮本来の外観形状が保持されているとはいえなかった。これに対し、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理した甘タレ煮は、表面の剥離も白斑状の色ムラも荒れも認められず、鶏ムネ肉の甘タレ煮又は鶏モモ肉の甘タレ煮本来の外観形状が保持されていた。
軟化試験B2における上記の結果は、軟化試験B1の結果と軌を一にするものであり、鶏肉の部位がササミからムネ肉又はモモ肉に変わっても、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理をすることによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏ムネ肉又は鶏モモ肉の甘タレ煮本来の味を備えるとともに、鶏ムネ肉又は鶏モモ肉の甘タレ煮本来の外観形状を備える、軟らか加熱調理品を製造することができることを示している。
<官能検査B2−鶏ムネ肉及び鶏モモ肉角切りの甘タレ煮−>
健康な計7名の男女をパネラーとし、軟化試験B2で製造された下記の鶏ムネ肉及び鶏モモ肉の甘タレ煮について、官能検査B1と同様にして、官能検査を行った。
(対象とした鶏ムネ肉の甘タレ煮)
・鶏ムネ肉角切りの甘タレ煮(エ)(表14の#38の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:30%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 246gf
・鶏ムネ肉角切りの甘タレ煮(オ)(表14の#39の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:35%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 244gf
・鶏ムネ肉角切りの甘タレ煮(カ)(表14の#40の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:40%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 241gf
(対象とした鶏モモ肉の甘タレ煮)
・鶏モモ肉角切りの甘タレ煮(キ)(表14の#42の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:30%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 342gf
・鶏モモ肉角切りの甘タレ煮(ク)(表14の#43の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:35%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 315gf
・鶏モモ肉角切りの甘タレ煮(ケ)(表14の#44の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:40%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 277gf
評価は、軟化処理をしない同じ鶏ムネ肉又は鶏モモ肉の角切りの甘タレ煮の通常品を比較対照とした以外は、官能検査B1におけると同様に行った。結果を表17〜表22に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表17及び表18に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした鶏ムネ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(エ)及び(オ)は、検査した「外観形状」、「外観色調」、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、「マイタケ臭」のいずれの項目においても、「5.0」〜「4.6」という高い評点を獲得し、鶏ムネ肉の角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調、味を有するとともに、異味、異臭がなく、マイタケ臭も感じられず、「軟らかい」、「普通に美味しい」とコメントされる、優れた軟らか甘タレ煮であった。
これに対し、表19に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした鶏ムネ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(カ)は、外観形状や外観色調の評点は「3.7」となり、鶏ムネ肉の角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調をある程度は保持していると評価されたものの、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、及び「マイタケ臭」に関しては、評点は「2.7」〜「2.6」と低く、苦味、えぐみなどの異味や異臭が感じられるとともに、変な味がする、マイタケ臭を感じるなどと評価されるものであった。
同様に、表20及び表21に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした鶏モモ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(キ)及び(ク)は、検査した「外観形状」、「外観色調」、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、「マイタケ臭」のいずれの項目においても、「5.0」〜「4.7」という高い評点を獲得し、鶏モモ肉の角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調、味を有するとともに、異味、異臭がなく、マイタケ臭も感じられず、「軟らかい」、「普通に美味しい」とコメントされる、優れた軟らか甘タレ煮であった。
これに対し、表22に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした鶏モモ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(ケ)は、外観形状や外観色調の評点は「3.6」〜「3.4」となり、鶏モモ肉の角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調をある程度は保持していると評価されたものの、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、及び「マイタケ臭」に関しては、評点は「2.6」〜「2.3」と低く、苦味、えぐみなどの異味や異臭が感じられるとともに、変な味がする、マイタケ臭を感じるなどと評価されるものであった。
これら官能検査の結果は、軟化試験B2において、実施者が各甘タレ煮の硬さ測定の際にその都度行った肉眼観察及び試食の結果と一致しており、軟化試験B2の実施者による肉眼観察及び試食による評価が客観性を備えた妥当なものであることを裏付けるものである。
<味認識装置による評価B2>
本発明に係る鶏ムネ肉の角切りの甘タレ煮が異味、異臭のないものであることをより客観的に確認すべく、比較対照品及び試料1を下記の比較対照品及び試料2に変えた以外は味認識装置による評価B1におけると同様にして、味認識装置による味分析を外部の検査機関(厚生労働省登録検査機関 株式会社キューサイ分析研究所)に依頼した。
(味分析対象試料)
以下の比較対照品と試料2についての味分析を依頼した。
・比較対照品:通常の(軟化処理を経ない)鶏ムネ肉の角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮(株式会社新東京フード製)
・試料2:鶏ムネ肉の角切り(一辺1cmの立方体)を希釈率35%の軟化液に、固液比1:2.0、10℃、48時間浸漬したものを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(表14における浸漬条件#39のものに相当)
結果を表23に示す。また、結果をレーダチャートとして表したものを図2に示す。
Figure 2018190372
表23及び図2に示すとおり、本発明に係る軟らか加熱調理品に該当する試料2の味の測定値は、比較対照品である軟化処理をしていない通常の鶏ムネ肉の甘タレ煮の各味を基準=0として、測定された8種類の味のうち、「酸味」を除く他の全ての味において、±2未満(−2<測定値<+2)の範囲内に収まっていた。上述したとおり、味認識装置を用いる味分析において、比較対照品を0としたときの味の測定値が±2未満の場合には、これをヒトが食しても比較対照品との味の差としては認識されないといわれているので、特に異味として最も強く感じられるとされる「苦味雑味」の測定値を含めて、「渋味刺激」「苦味」「渋味」の測定値がいずれも±2未満に収まっていたという上記分析結果は、ヒトが試料2を食したときにも通常品である比較対照品と比べて異味があるとは感じられず、本発明品が異味を有さない加熱調理品であることを示している。
このように味認識装置による味分析においても、本発明に係る鶏ムネ肉の軟らか甘タレ煮が、軟化処理をしていない通常の鶏ムネ肉の甘タレ煮と比べて異味がなく、鶏ムネ肉の甘タレ煮本来の味を備えたものであることが確認された。
<軟化試験B3−鶏ササミスライスの生姜焼き−その1−>
鶏ササミを用い、通常の製造、流通、保管形態を想定し、製造工程ア〜シを以下のタ〜ラの工程に変え、軟化液の希釈率を30%、35%、又は40%、浸漬温度を10℃、浸漬時間を40時間又は48時間、固液比を1:2.0とした以外は軟化試験B1と同様にして、鶏ササミのスライス肉(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表24に示す。
タ 原料搬入(鶏ササミの冷凍品)
チ 冷凍状態で厚さ5mmにスライス
ツ 定温解凍(5℃)
テ 軟化液浸漬(軟化処理)
ト 液切り
ナ 調味液(生姜焼用)浸漬
ニ 液切り
ヌ 焼成
ネ 仕上げ液充填真空包装
ノ 殺菌
ハ 放熱
マ 凍結
ヤ 梱包
ラ 保管
Figure 2018190372
表24に示すとおり、鶏ササミスライスの生姜焼の場合でも、希釈率が30%、35%、40%の軟化液に、10℃で40時間又は48時間、固液比1:2.0で浸漬して軟化処理を施すことによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する鶏ササミスライスの生姜焼が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ササミの生姜焼を試食したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた鶏ササミのスライスの生姜焼は、異味、異臭がなく、鶏ササミの生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた鶏ササミのスライスの生姜焼は、軟らかくはあるものの、軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、鶏ササミの生姜焼本来の味が保たれているとはえいないものであった。
さらに、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ササミの生姜焼を肉眼観察したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた鶏ササミのスライスの生姜焼は、鶏ササミのスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた鶏ササミのスライスの生姜焼は、表面の変色や身崩れが認められ、鶏ササミスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれているとはいえないものであった。
<軟化試験B4−鶏ササミスライスの生姜焼き−その2−>
軟化液の希釈率を35%に固定し、浸漬温度を4℃、6℃、又は10℃とした以外は軟化試験B3と同様にして、鶏ササミのスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表25に示す(但し、10℃の硬さは表24から転記した)。
Figure 2018190372
表25に示すとおり、希釈率が35%の軟化液を用いて軟化処理した場合には、浸漬温度を6℃又は4℃と下げても、40時間又は48時間の浸漬で、350gfを下回る軟らかさを備えた鶏ササミスライスの生姜焼を得ることができた。この結果は、軟化試験B1において、鶏ササミの角切り肉の甘タレ煮について得られた結果と整合するものである。
なお、上記硬さの測定時に、6℃又は4℃の浸漬温度で得られた鶏ササミの生姜焼を肉眼観察したところ、鶏ササミのスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであった。また、これらを試食したところ、異味、異臭がなく、鶏ササミの生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であった。
<軟化試験B5−鶏ムネ肉スライスの生姜焼き−その1−>
鶏ササミのスライスを鶏ムネ肉のスライスに変えた以外は軟化試験B3と同様にして、鶏ムネ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表26に示す。
Figure 2018190372
表26に示すとおり、鶏ムネ肉のスライスの場合でも、希釈率が30%、35%、40%の軟化液に、10℃で40時間又は48時間、固液比1:2.0で浸漬して軟化処理を施すことによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する鶏ムネ肉のスライスの生姜焼が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ムネ肉の生姜焼を試食したところ、鶏ササミ肉の生姜焼の場合と同様に、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、異味、異臭がなく、鶏ムネ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、軟らかくはあるものの、軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、鶏ムネ肉の生姜焼本来の味が保たれているとはえいないものであった。
同様に、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏ムネ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、鶏ムネ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、表面の変色や部分的な身崩れが認められ、鶏ムネ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれているとはいえないものであった。
<軟化試験B6−鶏ムネ肉スライスの生姜焼き−その2−>
鶏ササミのスライスを鶏ムネ肉のスライスに変えた以外は軟化試験B4と同様にして、鶏ムネ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表27に示す(但し、10℃の硬さは表26から転記した)。
Figure 2018190372
表27に示すとおり、希釈率が35%の軟化液を用いて軟化処理した場合には、浸漬温度を6℃又は4℃と下げても、40時間又は48時間の浸漬で、350gfを下回る軟らかさを備えた鶏ムネ肉のスライスの生姜焼を得ることができた。この結果は、軟化試験B1において、鶏ササミの角切り肉の甘タレ煮について得られた結果と整合するものである。
なお、上記硬さの測定時に、6℃又は4℃の浸漬温度で得られた鶏ムネ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、鶏ムネ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであった。また、これらを試食したところ、異味、異臭がなく、鶏ムネ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であった。
<軟化試験B7−鶏モモ肉スライスの生姜焼き−その1−>
鶏ササミのスライスを鶏モモ肉のスライスに変えた以外は軟化試験B3と同様にして、鶏モモ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表28に示す。
Figure 2018190372
表28に示すとおり、鶏モモ肉のスライスの場合でも、希釈率が30%、35%、40%の軟化液に、10℃で40時間又は48時間、固液比1:2.0で浸漬して軟化処理を施すことによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する鶏モモ肉のスライスの生姜焼が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏モモ肉の生姜焼を試食したところ、鶏ササミ肉の生姜焼の場合と同様に、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、異味、異臭がなく、鶏モモ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、軟らかくはあるものの、軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、鶏モモ肉の生姜焼本来の味が保たれているとはえいないものであった。
同様に、上記硬さの測定時に、測定対象となる鶏モモ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、鶏モモ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、表面の変色や部分的な身崩れが認められ、鶏モモ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれているとはいえないものであった。
<軟化試験B8−鶏モモ肉スライスの生姜焼き−その2−>
鶏ササミのスライスを鶏モモ肉のスライスに変えた以外は軟化試験B4と同様にして、鶏モモ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表29に示す(但し、10℃の硬さは表28から転記した)。
Figure 2018190372
表29に示すとおり、希釈率が35%の軟化液を用いて軟化処理した場合には、浸漬温度を6℃又は4℃と下げても、40時間又は48時間の浸漬で、350gfを下回る軟らかさを備えた鶏モモ肉のスライスの生姜焼を得ることができた。この結果は、軟化試験B1において、鶏ササミの角切り肉の甘タレ煮について得られた結果と整合するものである。
なお、上記硬さの測定時に、6℃又は4℃の浸漬温度で得られた鶏モモ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、鶏モモ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであった。また、これらを試食したところ、異味、異臭がなく、鶏モモ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であった。
以上の結果は、鶏肉の場合、部位がササミ、ムネ肉、又はモモ肉と変わっても、また、加熱調理法が煮付け(甘タレ煮)から焼成(生姜焼)に変わっても、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理をすることによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏肉の加熱調理品本来の味を備えるとともに、鶏肉の加熱調理品本来の外観形状を有する、鶏肉の軟らか加熱調理品を製造することができることを示している。
<C:豚肉>
<軟化試験C1−豚モモ肉角切り甘タレ煮−>
鶏ササミを豚モモ肉に変え、浸漬時間を40時間又は48時間にした以外は軟化試験B1と同様にして、上記ア〜シの工程に従い、豚モモ肉角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を、軟化液の希釈率別に、それぞれ表30〜表33に示す。
また、比較のため、対照4として、同じ豚モモ肉の角切り肉を用い、エの軟化液浸漬工程及びオの液切り工程を経ない点以外は同様に処理して、軟化処理を施さない豚モモ肉の甘タレ煮を製造し、上記と同様にして、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表34に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表30に見られるとおり、マイタケの絞り汁を水で25%に希釈した軟化液を用いて軟化処理をした場合、試験した全ての浸漬条件、すなわち、浸漬温度4℃〜10℃、浸漬時間40時間〜48時間、固液比1:1.5〜1:2.2という浸漬条件では、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)が350gf以下という軟らかさを備えた豚モモ肉角切りの甘タレ煮は製造することができなかった。得られた豚モモ肉甘タレ煮の硬さは、表30に示すとおり、378gf〜656gfの範囲に分布しており、この硬さは、表34に対照4として示す軟化処理を施さない通常の豚モモの角切り肉の甘タレ煮の硬さ2339gfと比べると軟らかいものの、350gfを超えており、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさに相当するものではなかった。この結果は軟化液の希釈率が25%では、許容し得る浸漬温度の上限である10℃で、48時間浸漬しても、所期の軟らかさを備えた豚モモ肉の甘タレ煮が得られないことを示している。
これに対し、表31及び表32に示すとおり、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした場合には、40時間及び48時間の浸漬時間において、浸漬温度4℃、6℃、及び10℃のいずれにおいても、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する豚モモ肉角切りの甘タレ煮が得られ、10℃、40時間の浸漬では、固液比1:1.5でも、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを備えた豚モモ肉角切りの甘タレ煮を製造することができた。この軟らかさは、表34に対照4として示す軟化処理を施さない豚モモ肉の甘タレ煮の硬さ2339gfと比べると、著しく軟らかいものである。
予備実験A3に示すとおり、豚モモ肉の場合、6℃及び10℃の浸漬温度では、浸漬時間40時間で軟化液の浸透距離は5mm(表4参照)であるから、浸漬時間40時間では、軟化液は試験に用いた一辺1cmの角切り肉の中心部まで浸透していると考えられる。にもかかわらず、表30に示すとおり、希釈率25%の軟化液を用いた場合には、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを備えた甘タレ煮が得られなかったという上記の試験結果は、所期の軟らかさを備えた豚モモ肉角切りの甘タレ煮を得るには、軟化液が検体の中心部にまで浸透した上で、さらに、希釈率が30%以上の軟化液を用いる必要があることを示している。
また、10℃、40時間浸漬の場合を除いて、固液比が1:1.5では所期の軟らかさを備えた豚モモ肉の甘タレ煮が得られず、1:1.6以上で所期の軟らかさを備えた豚モモ肉の甘タレ煮が安定して得られたという上記の試験結果は、所期の軟らかさを備えた豚モモ肉の甘タレ煮を得るには、鶏肉の場合と同様に、軟化処理対象である豚肉に対し、質量比で一定量以上の軟化液が必要であることを示している。
なお、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚モモ肉の甘タレ煮を肉眼で観察したところ、軟化液の希釈率が30%又は35%のいずれの場合においても、浸漬温度4℃〜10℃、浸漬時間40時間〜48時間、固液比1:1.5〜1:2.2の条件下で軟化液に浸漬した場合には、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、部分的な欠損は観察されず、見た目にも食欲をそそるものであった。
また、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚モモ肉角切りの甘タレ煮を試食したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理した甘タレ煮は豚モモ肉の甘タレ煮本来の味がし、軟化液浸漬による異味、異臭は全く感じられなかった。
一方、表33に示すとおり、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした場合、浸漬温度4℃又は6℃においては、40時間又は48時間浸漬すると、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重は350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを備えた豚モモ肉の甘タレ煮が得られた。また、浸漬温度10℃においては、40時間又は48時間の浸漬で、固液比1:1.5〜1:2.2の条件下で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを備えた豚モモ肉の甘タレ煮が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚モモ肉角切りの甘タレ煮を肉眼で観察したところ、希釈率が40%の軟化液を用いた場合には、表面に剥離や白斑状の変色、表面の荒れが認められる検体が散見され、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状を保持している甘タレ煮を安定して得ることはできなかった。
また、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚モモ肉角切りの甘タレ煮を試食したところ、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理した甘タレ煮からは軟化処理に用いた軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の味が保たれているとはえいないものであった。
以上の結果は、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理をすることによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の味を備えるとともに、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状を有する、豚モモ肉の軟らか甘タレ煮を製造することができることを示しており、先に軟化試験B1に示した鶏肉の結果と一致するものである。
<官能検査C1−豚モモ肉角切りの甘タレ煮−>
健康な計7名の男女をパネラーとし、軟化試験C1で製造された下記の豚モモ肉角切りの甘タレ煮について、官能検査B1と同様にして、官能検査を行った。
(対象とした豚モモ肉の甘タレ煮)
・豚モモ肉角切りの甘タレ煮(コ)(表31の#86の浸漬条件における固液比1:2.0のもの)
軟化液の希釈率:30%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 316gf
・豚モモ肉角切りの甘タレ煮(タ)(表32の#92の浸漬条件における固液比1:2.0のもの)
軟化液の希釈率:35%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 308gf
・豚モモ肉角切りの甘タレ煮(チ)(表33の#98の浸漬条件における固液比1:2.0のもの)
軟化液の希釈率:40%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 304gf
評価は、軟化処理をしない同じ豚モモ肉の角切りの甘タレ煮の通常品を比較対照とした以外は、官能検査B1におけると同様に行った。結果を表35〜表37に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表35及び表36に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした豚モモ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(コ)及び(サ)は、検査した「外観形状」、「外観色調」、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、「マイタケ臭」のいずれの項目においても「5.0」又は「4.9」という高い評点を獲得し、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調、味を有するとともに、異味、異臭がなく、マイタケ臭も感じられず、「軟らかい」、「普通に美味しい」とコメントされる優れた軟らか甘タレ煮であった。
これに対し、表37に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした豚モモ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(シ)は、外観形状や外観色調の評点は「3.7」〜「3.6」となり、豚モモ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調をある程度は保持していると評価されたものの、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、及び「マイタケ臭」に関しては、評点は「2.7」〜「2.4」となり、苦味、えぐみなどの異味や異臭が感じられるとともに、変な味がする、マイタケ臭を感じると評価されるものであった。
これら官能検査の結果は、軟化試験C1において、実施者が各甘タレ煮の硬さ測定の際にその都度行った肉眼観察及び試食の結果と一致しており、軟化試験C1の実施者による肉眼観察及び試食による評価が客観性を備えた妥当なものであることを裏付けるものである。
<味認識装置による評価C1>
本発明に係る豚モモ肉角切りの甘タレ煮が異味、異臭のないものであることをより客観的に確認すべく、比較対照品及び試料1を下記の比較対照品及び試料3に変えた以外は味認識装置による評価B1におけると同様にして、味認識装置による味分析を外部の検査機関(厚生労働省登録検査機関 株式会社キューサイ分析研究所)に依頼した。
(味分析対象試料)
以下の比較対照品と試料3についての味分析を依頼した。
・比較対照品:通常の(軟化処理を経ない)豚モモ肉の角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮(株式会社新東京フード製)
・試料3:豚モモ肉の角切り(一辺1cmの立方体)を希釈率35%の軟化液に、固液比1:2.0、10℃、48時間浸漬したものを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(表32における浸漬条件#92の固液比1:2.0のものに相当)
結果を表38に示す。また、結果をレーダチャートとして表したものを図3に示す。
Figure 2018190372
表38及び図3に示すとおり、本発明に係る軟らか加熱調理品に該当する試料3の味の測定値は、比較対照品である軟化処理をしていない通常の豚モモ肉の甘タレ煮の各味を基準=0として、測定された8種類の味のうち、「酸味」を除く他の全ての味において、±2未満(−2<測定値<+2)の範囲内に収まっていた。味認識装置を用いる味分析において、比較対照品を0としたときの味の測定値が±2未満の場合には、これをヒトが食しても比較対照品との味の差としては認識されないといわれている。したがって、ヒトが食したときに「異味」として認識されると考えられる「苦味雑味」「渋味刺激」「苦味」「渋味」の測定値がいずれも±2未満に収まっていたという上記分析結果は、ヒトが試料3を食したときにも通常品である比較対照品と比べて異味があるとは感じられず、本発明品が異味を有さない加熱調理品であることを示している。特に異味として最も強く感じられるとされる「苦味雑味」についての試料3の測定値は、比較対照品と比べて±1以内にとどまっており、本発明の豚モモ肉角切りの軟らか甘タレ煮は、異味のない加熱調理品であるといえる。
このように味認識装置による味分析においても、本発明に係る豚モモ肉の軟らか甘タレ煮が、軟化処理をしていない通常の豚モモ肉の甘タレ煮と比べて異味がなく、豚モモ肉の甘タレ煮本来の味を備えたものであることが確認された。
<軟化試験C2−豚ヒレ肉角切り甘タレ煮−>
豚モモ肉を豚ヒレ肉に変え、浸漬温度を10℃、浸漬時間を48時間、固液比を1:2.0に固定した以外は軟化試験C1と同様にして、豚ヒレ肉角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表39に示す。
また、比較のため、対照5として、同じ豚ヒレ肉の角切り肉を用い、エの軟化液浸漬工程及びオの液切り工程を経ない点以外は同様に処理して、軟化処理を施さない豚ヒレ肉の甘タレ煮を製造し、上記と同様にして、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表40に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表39に見られるとおり、豚モモ肉が豚ヒレ肉に変わっても、マイタケの絞り汁を水で25%に希釈した軟化液を用いて軟化処理をした場合には、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間、固液比1:2.0という浸漬条件でも、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)が350gf以下という軟らかさを備えた豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮は製造することができなかった。これに対し、希釈率が30%、35%、又は40%の軟化液を用いて軟化処理をした場合には、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間、固液比1:2.0という浸漬条件で、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)が350gf以下という軟らかさを備え、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを備えた豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮を製造することができた。この結果は、先に軟化試験C1において、豚モモ肉の角切りの甘タレ煮について得られた結果と整合する。
因みに、表40に示すとおり、軟化処理を施さない通常の豚ヒレ肉の角切りの甘タレ煮の硬さは1937gf(対照5:豚ヒレ肉)であるから、350gf以下という硬さは極めて軟らかいものである。
なお、予備実験A3に示すとおり、豚ヒレ肉の場合、10℃の浸漬温度では、浸漬時間48時間で軟化液の浸透距離は6mm(表4参照)であるから、浸漬時間48時間では、軟化液は試験に用いた一辺1cmの角切り肉の中心部まで浸透していると考えられる。にもかかわらず、表39に示すとおり、希釈率25%の軟化液を用いた場合には、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを備えた甘タレ煮が得られなかったという上記の試験結果は、豚ヒレ肉の場合でも、所期の軟らかさを備えた豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮を得るには、軟化液が検体の中心部にまで浸透した上で、さらに、希釈率が30%以上の軟化液を用いる必要があることを示している。
上記のとおり、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)という観点からは、軟化液の希釈率が30%〜40%の範囲で350gf以下という良い結果が得られたが、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚ヒレ肉の甘タレ煮を試食したところ、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理した豚ヒレ肉の甘タレ煮からは軟化処理に用いた軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、豚ヒレ肉の甘タレ煮本来の味が保たれているとはえいないものであった。
これに対し、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理した豚ヒレ肉の甘タレ煮は、異味、異臭がなく、豚ヒレ肉の甘タレ煮本来の味がし、軟らかく、普通に美味しいと感じられるものであった。
さらに、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚ヒレ肉の甘タレ煮を肉眼で観察したところ、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理した甘タレ煮には、表面に剥離や、白斑状の色ムラが認められ、豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状が保持されているとはいえなかった。これに対し、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理した甘タレ煮は、表面の剥離も白斑状の色ムラも認められず、豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状が保持されていた。
軟化試験C2における上記の結果は、軟化試験C1の結果と軌を一にするものであり、豚肉の部位がモモ肉からヒレ肉に変わっても、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理をすることによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、豚肉の甘タレ煮本来の味を備えるとともに、豚肉の角切り肉の甘タレ煮本来の外観形状を備える、軟らか加熱調理品を製造することができることを示している。
<官能検査C2−豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮−>
健康な計7名の男女をパネラーとし、軟化試験C2で製造された下記の豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮について、官能検査B1と同様にして、官能検査を行った。
(対象とした豚ヒレ肉の甘タレ煮)
・豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮(ス)(表39の#100の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:30%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 299gf
・豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮(セ)(表39の#101の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:35%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 289gf
・豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮(ソ)(表39の#102の浸漬条件のもの)
軟化液の希釈率:40%
浸漬温度 10℃
浸漬時間 48時間
固液比 1:2.0
硬さ 257gf
評価は、軟化処理をしない同じ豚ヒレ肉の角切りの甘タレ煮の通常品を比較対照とした以外は、官能検査B1におけると同様に行った。結果を表41〜表43に示す。
Figure 2018190372
Figure 2018190372
Figure 2018190372
表41及び表42に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理をした豚ヒレ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(ス)及び(セ)は、検査した「外観形状」、「外観色調」、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、「マイタケ臭」のいずれの項目においても「5.0」〜「4.7」という高い評点を獲得し、豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調、味を有するとともに、異味、異臭がなく、マイタケ臭も感じられず、「軟らかい」、「普通に美味しい」とコメントされる優れた軟らか甘タレ煮であった。
これに対し、表43に示すとおり、マイタケ絞り汁の希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理をした豚ヒレ肉の角切りを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(ソ)は、外観形状や外観色調の評点は「3.3」〜「3.0」となり、豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮本来の外観形状、色調をある程度は保持していると評価されたものの、「異味(苦味、えぐみ)」、「味(その他の味)」、「異臭」、及び「マイタケ臭」に関しては、評点は「2.6」〜「2.3」となり、苦味、えぐみなどの異味や異臭が感じられるとともに、変な味がする、マイタケ臭を感じると評価されるものであった。
これら官能検査の結果は、軟化試験C2において、実施者が各甘タレ煮の硬さ測定の際にその都度行った肉眼観察及び試食の結果と一致しており、軟化試験C2の実施者による肉眼観察及び試食による評価が客観性を備えた妥当なものであることを裏付けるものである。
<味認識装置による評価C2>
本発明に係る豚ヒレ肉角切りの甘タレ煮が異味、異臭のないものであることをより客観的に確認すべく、比較対照品及び試料1を下記の比較対照品及び試料4に変えた以外は味認識装置による評価B1におけると同様にして、味認識装置による味分析を外部の検査機関(厚生労働省登録検査機関 株式会社キューサイ分析研究所)に依頼した。
(味分析対象試料)
以下の比較対照品と試料4についての味分析を依頼した。
・比較対照品:通常の(軟化処理を経ない)豚ヒレ肉の角切り(一辺1cmの立方体)の甘タレ煮(株式会社新東京フード製)
・試料4:豚ヒレ肉の角切り(一辺1cmの立方体)を希釈率35%の軟化液に、固液比1:2.0、10℃、48時間浸漬したものを甘タレ煮用の煮付け液の存在下で加熱して得られた甘タレ煮(表39における浸漬条件#101のものに相当)
結果を表44に示す。また、結果をレーダチャートとして表したものを図4に示す。
Figure 2018190372
表44及び図4に示すとおり、本発明に係る軟らか加熱調理品に該当する試料4の味の測定値は、比較対照品である軟化処理をしていない通常の豚ヒレ肉の甘タレ煮の各味を基準=0として、測定された8種類の味の全てにおいて、±2未満(−2<測定値<+2)の範囲内に収まっていた。味認識装置を用いる味分析において、比較対照品を0としたときの味の測定値が±2未満の場合には、これをヒトが食しても比較対照品との味の差としては認識されないといわれている。したがって、特に異味として最も強く感じられるとされる「苦味雑味」を含め、ヒトが食したときに「異味」として認識されると考えられる「渋味刺激」「苦味」「渋味」の測定値がいずれも±2未満に収まっていたという上記分析結果は、ヒトが試料4を食したときにも通常品である比較対照品と比べて異味があるとは感じられず、本発明品が異味を有さない加熱調理品であることを示している。
このように味認識装置による味分析においても、本発明に係る豚ヒレ肉の軟らか甘タレ煮が、軟化処理をしていない通常の豚ヒレ肉の甘タレ煮と比べて異味がなく、豚ヒレ肉の甘タレ煮本来の味を備えたものであることが確認された。
<軟化試験C3−豚モモ肉スライスの生姜焼き−その1−>
鶏ササミを豚モモ肉に変えた以外は軟化試験B3と同様にして、豚モモ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表45に示す。
Figure 2018190372
表45に示すとおり、豚モモ肉スライスの生姜焼の場合でも、希釈率が30%、35%、40%の軟化液に、10℃で40時間又は48時間、固液比1:2.0で浸漬して軟化処理を施すことによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する豚モモ肉のスライスの生姜焼が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚モモ肉の生姜焼を試食したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた豚モモ肉のスライスの生姜焼は、異味、異臭がなく、豚モモ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた豚モモ肉のスライスの生姜焼は、軟らかくはあるものの、軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、豚モモ肉の生姜焼本来の味が保たれているとはえいないものであった。
さらに、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚モモ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた豚モモ肉のスライスの生姜焼は、豚モモ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた豚モモ肉のスライスの生姜焼は、表面の変色や身崩れが認められ、豚モモ肉スライスの生姜焼本来の外観形状が保たれているとはいえないものであった。
<軟化試験C4−豚モモ肉スライスの生姜焼き−その2−>
軟化液の希釈率を35%に固定し、浸漬温度を4℃、6℃、又は10℃とした以外は軟化試験C3と同様にして、豚モモ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表46に示す(但し、10℃の硬さは表45から転記した)。
Figure 2018190372
表46に示すとおり、希釈率が35%の軟化液を用いて軟化処理した場合には、浸漬温度を6℃又は4℃と下げても、40時間又は48時間の浸漬で、350gfを下回る軟らかさを備えた豚モモ肉スライスの生姜焼を得ることができた。この結果は、軟化試験C1において、豚モモ肉の角切り肉の甘タレ煮について得られた結果と整合するものである。
なお、上記硬さの測定時に、6℃又は4℃の浸漬温度で得られた豚モモ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、豚モモ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであった。また、これらを試食したところ、異味、異臭がなく、豚モモ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であった。
<軟化試験C5−豚ヒレ肉スライスの生姜焼き−その1−>
鶏ササミを豚ヒレ肉に変えた以外は軟化試験B3と同様にして、豚ヒレ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表47に示す。
Figure 2018190372
表47に示すとおり、豚ヒレ肉のスライスの場合でも、希釈率が30%、35%、40%の軟化液に、10℃で40時間又は48時間、固液比1:2.0で浸漬して軟化処理を施すことによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下となり、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する豚ヒレ肉のスライスの生姜焼が得られた。
しかしながら、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚ヒレ肉の生姜焼を試食したところ、豚モモ肉の生姜焼の場合と同様に、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、異味、異臭がなく、豚ヒレ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、軟らかくはあるものの、軟化液に起因すると思われる苦味が強く感じられるとともに、マイタケ臭がし、到底、豚ヒレ肉の生姜焼本来の味が保たれているとはえいないものであった。
同様に、上記硬さの測定時に、測定対象となる豚ヒレ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、希釈率が30%又は35%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、豚ヒレ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであったのに対し、希釈率が40%の軟化液を用いて軟化処理して得られた生姜焼は、表面の変色や部分的な身崩れが認められ、豚ヒレ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれているとはいえないものであった。
<軟化試験C6−豚ヒレ肉スライスの生姜焼き−その2−>
鶏ササミのスライスを豚ヒレ肉のスライスに変えた以外は軟化試験B4と同様にして、豚ヒレ肉のスライス(厚さ5mm)の生姜焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重(硬さ)を測定した。結果を表48に示す(但し、10℃の硬さは表47から転記した)。
Figure 2018190372
表48に示すとおり、希釈率が35%の軟化液を用いて軟化処理した場合には、浸漬温度を6℃又は4℃と下げても、40時間又は48時間の浸漬で、350gfを下回る軟らかさを備えた豚ヒレ肉のスライスの生姜焼を得ることができた。この結果は、軟化試験C1において、豚モモ肉の角切り肉の甘タレ煮について得られた結果と整合するものである。
なお、上記硬さの測定時に、6℃又は4℃の浸漬温度で得られた豚ヒレ肉の生姜焼を肉眼観察したところ、豚ヒレ肉のスライスの生姜焼本来の外観形状が保たれており、表面の剥離や変色、身崩れもなく、見た目にも食欲をそそるものであった。また、これらを試食したところ、異味、異臭がなく、豚ヒレ肉の生姜焼本来の味がする、極めて軟らかくて美味しい生姜焼であった。
以上の結果は、鶏肉の場合と同様に、豚肉の場合においても、部位がモモ肉又はヒレ肉と変わっても、また、加熱調理法が煮付け(甘タレ煮)から焼成(生姜焼)に変わっても、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理をすることによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、豚肉の加熱調理品本来の味を備えるとともに、豚肉の加熱調理品本来の外観形状を有する、豚肉の軟らか加熱調理品を製造することができることを示している。
<D:その他の加熱調理品>
<軟化試験D1−味噌煮−>
軟化試験B1における上記「カ 煮付け液充填真空包装」工程で用いる煮付け液として、甘タレ煮用の煮付け液に代えて味噌煮用の煮付け液を用いるとともに、鶏ササミの角切りに加えて、鶏ムネ肉の角切り、鶏モモ肉の角切り、豚モモ肉の角切り、及び豚ヒレ肉の角切りを用い、軟化液の希釈率を35%、浸漬温度を10℃、浸漬時間を48時間、固液比を1:1.6又は1:2.0とした以外は、軟化試験B1におけると同様にして、鶏ササミの角切り、鶏ムネ肉の角切り、鶏モモ肉の角切り、豚モモ肉の角切り、及び豚ヒレ肉の角切りの味噌煮を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重を測定した。なお、角切りの大きさは、いずれの肉種においても、一辺が1cmの立方体とした。結果を表49に示す。
Figure 2018190372
表49に示すとおり、加熱調理法が味噌煮の場合においても、希釈率が35%の軟化液を用い、固液比1:1.6又は1:2.0、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間で軟化浸漬処理を施すと、鶏肉の部位又は豚肉の部位にかかわらず、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する角切りの味噌煮が得られた。得られた味噌煮を肉眼で観察するとともに試食したところ、いずれの味噌煮も極めて軟らかく、異味、異臭は感じられず、鶏肉又は豚肉の味噌煮本来の味を備えるとともに、鶏肉又は豚肉の角切り肉の味噌煮本来の外観形状を有していた。
<軟化試験D2−トマト煮−>
上記カの「煮付け液充填真空包装」工程で用いる煮付け液として、味噌煮用の煮付け液に代えてトマト煮用の煮付け液を用いた以外は、軟化試験D1におけると同様にして、鶏ササミの角切り、鶏ムネ肉の角切り、鶏モモ肉の角切り、豚モモ肉の角切り、及び豚ヒレ肉の角切りのトマト煮を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重を測定した。結果を表50に示す。
Figure 2018190372
表50に示すとおり、加熱調理法がトマト煮の場合においても、希釈率が35%の軟化液を用い、固液比1:1.6又は1:2.0、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間で軟化浸漬処理を施すと、鶏肉の部位又は豚肉の部位にかかわらず、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する角切りのトマト煮が得られた。得られたトマト煮を肉眼で観察するとともに試食したところ、いずれのトマト煮も極めて軟らかく、異味、異臭は感じられず、鶏肉又は豚肉のトマト煮本来の味を備えるとともに、鶏肉又は豚肉の角切り肉のトマト煮本来の外観形状を有していた。
<軟化試験D3−甘タレ煮−>
上記カの「煮付け液充填真空包装」工程で用いる煮付け液として、トマト煮用の煮付け液に代えて甘タレ煮用の煮付け液を用いるとともに、鶏肉又は豚肉の各部位の角切り肉に代えて、厚さ5mmのスライス肉を用いた以外は、軟化試験D2におけると同様にして、鶏ササミのスライス、鶏ムネ肉のスライス、鶏モモ肉のスライス、豚モモ肉のスライス、及び豚ヒレ肉のスライスの甘タレ煮を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重を測定した。結果を表51に示す。
Figure 2018190372
表51に示すとおり、加熱調理法が甘タレ煮の場合で鶏肉又は豚肉がスライス肉の場合においても、希釈率が35%の軟化液を用い、固液比1:1.6又は1:2.0、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間で軟化浸漬処理を施すと、鶏肉の部位又は豚肉の部位にかかわらず、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するスライス肉の甘タレ煮が得られた。得られた甘タレ煮を肉眼で観察するとともに試食したところ、いずれの甘タレ煮も極めて軟らかく、異味、異臭は感じられず、鶏肉又は豚肉の甘タレ煮本来の味を備えるとともに、鶏肉又は豚肉のスライス肉の甘タレ煮本来の外観形状を有していた。
<軟化試験D4−照焼−その1−>
上記軟化試験B3における「ナ 調味液浸漬」工程で用いる調味液として、生姜焼用の調味液に代えて照焼用の調味液を用いるとともに、鶏ササミの角切りに加えて、鶏ムネ肉の角切り、鶏モモ肉の角切り、豚モモ肉の角切り、及び豚ヒレ肉の角切りを用い、軟化液の希釈率を35%、浸漬温度を10℃、浸漬時間を48時間、固液比を1:1.6又は1:2.0とした以外は、軟化試験B3におけると同様にして、鶏ササミの角切り、鶏ムネ肉の角切り、鶏モモ肉の角切り、豚モモ肉の角切り、及び豚ヒレ肉の角切りの照焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重を測定した。なお、角切りの大きさは、いずれの肉種においても、一辺が1cmの立方体とした。結果を表52に示す。
Figure 2018190372
表52に示すとおり、加熱調理法が照焼の場合においても、希釈率が35%の軟化液を用い、固液比1:1.6又は1:2.0、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間で軟化浸漬処理を施すと、鶏肉の部位又は豚肉の部位にかかわらず、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有する角切りの照焼が得られた。得られた照焼を肉眼で観察するとともに試食したところ、いずれの照焼も極めて軟らかく、異味、異臭は感じられず、鶏肉又は豚肉の照焼本来の味を備えるとともに、鶏肉又は豚肉の角切り肉の照焼本来の外観形状を有していた。
<軟化試験D5−照焼−その2−>
鶏肉又は豚肉の各部位の角切りに代えて、各部位のスライス(厚さ5mm)を用いた以外は軟化試験D4と同様にして、鶏ササミのスライス、鶏ムネ肉のスライス、鶏モモ肉のスライス、豚モモ肉のスライス、及び豚ヒレ肉のスライスの照焼を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重を測定した。結果を表53に示す。
Figure 2018190372
表53に示すとおり、鶏肉又は豚肉の形態が角切りからスライスに変わっても、希釈率が35%の軟化液を用い、固液比1:1.6又は1:2.0、浸漬温度10℃、浸漬時間48時間で軟化浸漬処理を施すと、鶏肉の部位又は豚肉の部位にかかわらず、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するスライス肉の照焼が得られた。得られた照焼を肉眼で観察するとともに試食したところ、いずれの照焼も極めて軟らかく、異味、異臭は感じられず、鶏肉又は豚肉の照焼本来の味を備えるとともに、鶏肉又は豚肉のスライス肉の照焼本来の外観形状を有していた。
以上の結果は、加熱調理法や鶏肉又は豚肉の形態が変わっても、希釈率が30%〜35%の軟化液を用い、4℃〜10℃の浸漬温度で、40時間〜48時間、固液比1:1.6〜1:2.2の条件下で、軟化浸漬処理を施すことによって、直径15mmの金属球を3mm押し込むのに必要な荷重が350gf以下という、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を備えるとともに、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の外観形状を備える、軟らか加熱調理品を製造することができることを示している。
<E:比較試験>
<比較試験E1−鶏ササミ角切り甘タレ煮−>
上述したとおり、マイタケが複数の蛋白質分解酵素を含んでいることは本願出願前から知られている。そこで、マイタケを従来から知られているやり方で使用して、本発明と同様に軟らかい鶏肉の加熱調理品が得られるかどうかを鶏ササミの角切り肉の甘タレ煮について試験した。
マイタケを用いた食品素材の軟化処理に際し、従来から知られているやり方を想定して、以下の4つの軟化液を調製した。
・軟化液A:市販のマイタケを手で細かくほぐして小分けしたものを、室温の水65質量部に対しマイタケ35質量部の割合(マイタケ質量:35%)で30分浸漬した後、マイタケを取り出し、軟化液Aとした。
・軟化液B:市販のマイタケをほぐすことなく、室温の水65質量部に対しマイタケ35質量部の割合(マイタケ質量:35%)で30分浸漬した後、マイタケを取り出し、軟化液Bとした。
・軟化液C:軟化液Aの調製工程において、水に30分浸漬後、マイタケを取り出さずにそのままにして、軟化液Cとした。
・軟化液D:軟化液Bの調製工程において、水に30分浸漬後、マイタケを取り出さずにそのままにして、軟化液Dとした。
軟化試験B1における上記「エ 軟化液浸漬」工程を、軟化液A〜Dを10℃に維持し、そのそれぞれに軟化試験B1で使用したのと同じ鶏ササミの角切り(一辺1cmの立方体)を48時間浸漬する工程に代えた以外は軟化試験B1におけると同様にして、軟化液が異なる4種類の鶏ササミの角切りの甘タレ煮(各軟化液ごとにそれぞれ3検体)を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重を測定した。結果を表54に示す。
Figure 2018190372
表54に示すとおり、鶏ササミの角切り肉を軟化液A〜Dのいずれに浸漬した場合でも、10℃、48時間の軟化処理では、得られた鶏ササミの甘タレ煮の硬さは最少でも451gfにとどまり、軟化処理を施さないで製造された鶏ササミの甘タレ煮である対照1(先に表9に示したとおり、その硬さは2015gf)よりは若干軟らかくなったものの、本発明の軟らか加熱調理品が示す350gf以下という軟らかさには及ばないものであった。この結果は、従来から知られているやり方でマイタケを使用したのでは、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさに相当する硬さ350gf以下という軟らかさを備えた鶏肉の加熱調理品を得ることがができないことを示している。
<比較試験E2−豚モモ肉角切り甘タレ煮−>
鶏ササミの角切りを軟化試験C1で使用したのと同じ豚モモ肉の角切りに変えた以外は比較試験E1におけると同様にして、軟化液が異なる4種類の豚モモ肉の角切りの甘タレ煮(各軟化液ごとにそれぞれ3検体)を製造し、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重を測定した。結果を表55に示す。
Figure 2018190372
表55に示すとおり、豚モモ肉の角切り肉を軟化液A〜Dのいずれに浸漬した場合でも、10℃、48時間の軟化処理では、得られた豚モモ肉の甘タレ煮の硬さは最少でも500gfにとどまり、軟化処理を施さないで製造された豚モモ肉の甘タレ煮である対照4(先に表34に示したとおり、その硬さは2339gf)よりは若干軟らかくなったものの、本発明の軟らか加熱調理品が示す350gf以下という軟らかさには及ばないものであった。この結果は、従来から知られているやり方でマイタケを使用したのでは、「弱い力で噛める」程度若しくはそれ以上の軟らかさに相当する硬さ350gf以下という軟らかさを備えた豚肉の加熱調理品を得ることがができないことを示している。
以上説明したとおり、本発明の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品は、咀嚼力が低下した人でも容易に咀嚼できる軟らかさを有するとともに、異味、異臭がなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の味を保持している加熱調理品であり、実際に喫食して美味であるばかりでなく、鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の外観形状を保持しているので、見た目にも食欲をそそることができる優れた軟らか加熱調理品である。本発明に係る鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品及びその製造方法は、高齢者などの咀嚼力が低下した人にも、十分な咀嚼力を有する人と同様に、毎日の食事を楽しみ、自らの口を通じて栄養を摂取することを可能にするものであり、高齢者の生活の質の維持向上に貢献し、その産業上の利用可能性は多大である。

Claims (8)

  1. 喫食時の温度条件下において、直径15mmの金属球を3mm押し込むに必要な荷重が350gf以下という軟らかさを有するとともに、異味、異臭のない、鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品。
  2. 人工脂質膜型味覚センサーを用いる味認識装置によって測定される苦味雑味が、同装置で測定される対応する鶏肉又は豚肉の通常の加熱調理品の苦味雑味の値を基準値=0としたときの相対値として、±2未満である請求項1記載の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品。
  3. 鶏肉又は豚肉の加熱調理品本来の外観形状を保持している請求項1又は2記載の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品。
  4. 前記軟らか加熱調理品が鶏肉又は豚肉の角切り肉又はスライス肉の加熱調理品である請求項1〜3いずれかに記載の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品。
  5. 前記鶏肉が鶏のササ身、ムネ肉、又はモモ肉であるか、前記豚肉が豚のヒレ肉又はモモ肉である請求項1〜4のいずれかに記載の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品。
  6. 加熱調理対象である鶏肉又は豚肉を、生のマイタケの切断物の絞り汁を水で30〜35質量%に希釈した軟化液に4〜10℃で40〜48時間浸漬する浸漬工程、及び、前記浸漬工程を経た前記鶏肉又は豚肉を加熱する工程を含む請求項1〜5のいずれかに記載の鶏肉又は豚肉の軟らか加熱調理品の製造方法。
  7. 前記浸漬工程において、前記鶏肉又は豚肉と前記軟化液との質量比が鶏肉又は豚肉1質量部に対して軟化液が1.6質量部以上である請求項6記載の製造方法。
  8. 生のマイタケの前記切断物が1mm角以下に切断された切断物である請求項6又は7記載の製造方法。
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