JPWO2018179838A1 - 導電性ペースト - Google Patents

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Abstract

小径スルーホール上に形成した導電性被膜層においても、良好な電気伝導性を有する導電性ペーストを提供する。本発明の一実施形態に係る導電性ペーストは、銅粉末と、フェノール樹脂と、キレート形成物質と、多価アルコールとを有する。

Description

本発明は、例えばプリント配線基板のスルーホール導通形成に好適に利用できる、導電性ペーストに関する。
プリント配線基板のスルーホールの導通を図る手段として、スルーホール部にスクリーン印刷を用いて導電性ペーストを塗布して加熱硬化させることにより、導電性被膜層を形成する方法がある。
例えば、特許文献1には、銅粉などの導電性フィラーと、キレート形成物質と、フェノール樹脂と、変性エポキシ樹脂と、印刷向上剤とを含む導電性ペーストが開示されている。
国際公開第2016/121668号
近年、高性能電子機器の市場拡大に伴い、プリント配線板や電子部品の小型化、薄型化が急速に進んでいる。スルーホールを小径化すると、導電性被膜層を形成するためのスクリーン印刷の際にスルーホールに充填される導電性ペーストの量が少なくなる。導電性ペーストの量が少なくなると加熱硬化中の導電性被膜層が薄膜化するため、導電性フィラーが酸化されやすくなる。そのため、結果として得られる導電性被膜層の電気抵抗値が悪化する(高くなる)という問題点があった。
本発明は、上記の点に鑑み提案されたものであり、その目的として、一つの側面では、小径スルーホール上に形成した導電性被膜層においても、良好な電気伝導性を有する導電性ペーストを提供することにある。
本発明の一実施形態に係る導電性ペーストは、銅粉末と、フェノール樹脂と、キレート形成物質と、多価アルコールとを有する。
本発明の実施形態によれば、一つの側面では、小径スルーホール上に形成した導電性被膜層においても、良好な電気伝導性を有する導電性ペーストを提供することができる。
本実施形態に係る導電性ペーストは、例えば、電子部品を搭載するための導体パターンが形成されたプリント配線板に使用することができる。特に、プリント配線基板のスルーホールの導通を図る手段として、スルーホール部にスクリーン印刷を用いて導電性ペーストを塗布し、加熱硬化させることにより、導電性被膜層を形成し、導通を確保することができる。なお、本実施形態に係る導電性ペーストは、プリント配線基板のスルーホールの導通のための導電性被膜層以外の用途にも応用できるため、以後、本実施形態に係る導電性ペーストを加熱硬化させたものを、単にペースト硬化物と呼ぶことがある。
本実施形態に係る導電性ペーストは、少なくとも、銅粉末、フェノール樹脂、キレート形成物質、及び多価アルコールを含む。また、本実施形態に係る導電性ペーストは、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分とは、例えば、変性エポキシ樹脂や印刷性向上剤などが挙げられる。以下、各々の成分について、詳細に説明する。
〔銅粉末〕
銅は、金属の中でも電気抵抗率が低く、得られるペースト硬化物の良好な導電性を得ることができるため、導電性ペースト用の導電性フィラーとして、好適に使用できる。また、銅は、比較的安価で、かつ安定的に調達することができる。
通常入手できる銅粉末は、その表面が酸化被膜で覆われている。この場合、銅粉末の粒子同士を接触させただけでは良好な導電性を得ることが難しい場合がある。
しかしながら、本実施形態に係る導電性ペーストにおいては、多価アルコールを用いて調製している。一般的に、第一級アルコールは、酸化剤の存在下において酸化され、アルデヒド(非酸性雰囲気下:例えば非プロトン性有機溶媒中)又はカルボン酸(酸性雰囲気下:例えば水性溶媒中)になる。また、第二級アルコールは、酸化剤の存在下において酸化され、ケトンになる。アルコールの酸化反応によって、銅粉末の表面の酸化被膜は銅へと還元されるため、良好な導電性を有するペースト硬化物を得ることができる。
本実施形態に係る導電性ペーストにおいては更に、1価アルコールではなく多価アルコールを用いて調製している。多価アルコールは、一分子中に二個以上の水酸基が存在するため、多価アルコールを使用することで、多価アルコールの酸化に伴う銅粉末表面の還元作用が向上されると推察される。また、多価アルコール又はその酸化物は、一分子内で銅イオンと環状キレート化合物を安定形成し、銅イオンの拡散による樹脂劣化を抑制する働きがあると考えられる。さらに、多価アルコールは、分子間の水素結合数が多いため蒸気圧が低く、1価アルコールと比較して、導電性ペーストの加熱硬化過程における蒸発速度が遅い。そのため、導電性ペーストの加熱硬化過程に生じる銅粉末の酸化を抑制し、更に蒸発した多価アルコールによってスルーホール径内に微小な還元空間が形成されると考えられる。以上の理由から、多価アルコールを用いて調製した本実施形態に係る導電性ペーストは、良好な導電性を有すると推察される。
また、本実施形態に係る導電性ペーストは、硬化時の収縮率が高いフェノール樹脂を用いて調製しているため、銅粉末の粒子同士を強く圧着させることができる。結果として、本実施形態に係る導電性ペーストを用いることにより、優れた導電性を有するペースト硬化物を得ることができる。
本実施形態に係る銅粉末の平均粒子径は、1μm〜15μmの範囲内とすることが好ましく、3μm〜10μmとすることがより好ましい。使用する銅粉末の粒子径が1μmを下回る場合、銅粉末同士の接触抵抗の増大と、銅粉末の比表面積の増加に伴う酸化の影響が大きくなり抵抗値が悪化することがある。また、平均粒子径が15μmを超える場合、小径スルーホールに均一な硬化膜層を形成することが困難になる場合がある。
〔フェノール樹脂〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、樹脂として少なくともフェノール樹脂を含む。なお、本実施形態に係る導電性ペーストは、樹脂成分としてフェノール樹脂だけを含んでいてもよいが、フェノール樹脂に加えてその他の樹脂を含んでいてもよい。
フェノール樹脂は、硬化時の収縮率が高いため、銅粉末の粒子同士を強く圧着させることができ、結果、得られるペースト硬化物の導電性も高くなる。また、フェノール樹脂は、プリント配線基板の基板材料や銅箔などとの密着性も高い。
フェノール樹脂としては、レゾール型フェノール樹脂を使用することが好ましい。レゾール型フェノール樹脂は、自己反応性の官能基を有するため、加熱するだけで硬化させることができるという利点を有する。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノールもしくはフェノール誘導体を、アルカリ触媒下でホルムアルデヒドと反応させて得ることができる。
上記フェノール誘導体としては、クレゾール、キシレノール、t−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール、さらには、フェニルフェノール、レゾルシノール等が挙げられる。
フェノール樹脂としては、例えば、群栄化学工業株式会社製のレヂトップPL−4348(商品名)を用いることができる。
〔他の樹脂:変性エポキシ樹脂〕
上述したように、本実施形態に係る導電性ペーストは、樹脂成分としてフェノール樹脂に加えてその他の樹脂を含んでいてもよい。用いることが好ましいその他の樹脂としては、例えば、変性エポキシ樹脂が挙げられる。上述したフェノール樹脂に加えて変性エポキシ樹脂を用いることによって、導電性ペースト硬化物の弾性率を調整する(特には低下させる)ことができる。したがって、導電性ペーストを用いてスルーホール部に導電性被膜層を形成した場合、導電性被膜層が熱膨張差(基板と被膜層との間の熱膨張差)を吸収することができるので、温度変化に起因するクラックや剥離の発生を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態に係る導電性ペーストにおいて、変性エポキシ樹脂とは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、各種性能を持たせるために変性を行ったエポキシ樹脂を指す。各種変性を持たせるために変性を行ったエポキシ樹脂とは、例えば、エポキシ樹脂に異なる成分を重合させて主鎖の構造を一部変更したもの、官能基を導入させたものなどをいう。本実施形態に係る導電性ペーストにおいて好適に使用できる変性エポキシ樹脂は、柔軟性を有する変性エポキシ樹脂であり、具体的には、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エチレンオキサイド変性エポキシ樹脂、プロピレンオキサイド変性エポキシ樹脂、脂肪酸変性エポキシ樹脂、ウレタンゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、変性エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が186を超える変性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
また、本実施形態に係る導電性ペーストは、高反応性エポキシ樹脂を含んでいてもよい。なお、本実施形態において、高反応性エポキシ樹脂とは、エポキシ当量が186以下であって、且つ1分子中にエポキシ基が2つ以上有する多官能のエポキシ樹脂を指す。フェノール樹脂及び変性エポキシ樹脂に加え、高反応性エポキシ樹脂を用いることによって、導電性ペーストの導電性被膜層と、基板との間の好適な固着強度を得ることができる。
高反応性エポキシ樹脂の具体例としては、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールシリーズ(商品名EX212L、EX214L、EX216L、EX321LおよびEX850L)、株式会社ADEKA製の商品名ED−503GおよびED−523G、三菱化学株式会社製の商品名jER630、jER604およびjER152、三菱ガス化学株式会社製の商品名テトラッドXおよびテトラッドC、ならびに日本化薬株式会社製の商品名EPPN−501H、EPPN−5010HYおよびEPPN502などが挙げられる。
〔他の樹脂〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、上記フェノール樹脂、変性エポキシ樹脂及び高反応性エポキシ樹脂に加え、その他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、公知の導電性ペーストに使用される樹脂、特にはプリント配線基板のスルーホールの導通を図るために使用される公知の導電性ペーストに使用される樹脂であれば、特に問題なく適宜使用することができる。その他の樹脂の好適な例としては、硬化収縮を伴う樹脂、即ち熱硬化性樹脂が挙げられ、具体的には変性エポキシ樹脂及び高反応性エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂や、シリコーン樹脂などが挙げられる。
〔多価アルコール〕
本実施形態において、多価アルコールは、自身の酸化反応によって、銅粉末の表面の酸化被膜を銅へと還元する役割を果たす。
使用する多価アルコールは、その沸点が182℃以上のものを使用することが好ましい。スルーホール部にスクリーン印刷を用いて導電性ペーストを塗布する場合、導電性ペーストには好ましい粘度の値が存在する。多価アルコールの沸点が182℃を下回る場合、導電性ペーストの粘度が低くなり、スクリーン印刷を用いた塗布が困難になる場合がある。
多価アルコールの具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。
上記多価アルコールの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを使用することが好ましい。2−エチル−1,3−ヘキサンジオールは、沸点244度の高沸点ジオール溶剤であり、上記フェノール樹脂、変性エポキシ樹脂と相溶性があることから、導電性ペースト、特に小径スルーホールの硬化過程で使用する場合に好適である。
〔キレート形成物質〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、キレート形成物質を含む。なお、本実施形態においてキレート形成物質とは、導電性フィラーである銅粉末に対してキレート結合が可能な配位子化合物のことを指す。キレート形成物質は、導電性ペーストの調整に際して銅粉末に作用させる工程において、有機溶媒中に溶解可能なものを使用することが好ましい。
キレート形成物質の具体例としては、アミン類のキレート形成物質、例えば、エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、チオジエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、エチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン四酢酸など、芳香環窒素とアミノ窒素を利用する二座配位子、例えば、2−アミノメチルピリジン、プリン、アデニン、ヒスタミンなど、さらには、アセチルアセトナト型の二座配位子を生成する1,3−ジオン類とその類似化合物、例えば、アセチルアセトン、4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、オキシン、2−メチルオキシン、オキシン−5−スルホン酸、ジメチルグリオキシム、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。なお、上述したアセチルアセトナト型の二座配位子を生成する1,3−ジオン類とその類似化合物においては、ケト体自体はキレート化剤ではないものの、ケト・エノール互変異性を有し、エノール体は酸として機能する結果、プロトンを放出し生成するアニオン種はアセチルアセトナト型の二座配位子として機能することが可能となる。
キレート形成物質を使用する場合、下記式I(式中、nは2以上8以下の整数を示す)で示されるピリジン誘導体及び1,10−フェナントロリンからなる含窒素複素芳香環化合物の群から選択される一種もしくは複数種の多座配位子化合物を使用することが好ましい。式Iで表されるピリジン誘導体や1,10−フェナントロリンは、銅イオンなどの金属イオンを効率的にキレート化でき、生成したキレート錯体も室温近くでは、比較的安定である
式Iで表されるポリピリジンの合成方法の一例を以下に示す。出発原料をアジ化ナトリウムと加熱混合することによりピリジン骨格の窒素に対しオルソの位置をアジ化する。続いて、これを臭化酸素酸中、亜硝酸ナトリウムで処理して臭化ジアゾニウムとし、引き続きこれに臭素を加えることによりブロモ化する。このブロモ化ピリジンを、例えば、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中、60℃で、0価ニッケル錯体により脱ハロゲン化縮重合させると、黄から黄橙色の沈澱を得る。沈澱を熱トルエン、水、熱トルエンの順に洗浄し、乾燥することにより目的のポリピリジンを得る。重合度nの調整は、出発原料の選択、含まれるブロモ化ピリジンのブロモ化の度合いによって調整する。なお、0価ニッケル錯体については、ニッケル−1,5−オクタジエン錯体と1,5−オクタジエンおよびトリアリルホスフィンの等モル混合物を用いる。なお、nが、2または3のものは、試薬として、精製された単体の化合物が市販されている。nが4以上の化合物については、このnが、2または3のものを出発原料として合成することも可能である。
一般的に、上述の方法で合成された式Iで表されるポリピリジンは、再結晶程度の精製では、そのピリジン骨格の繰り返し数nは、若干の分布を有しており、nの値は、分子量分布から求めた平均値を示す。ただし、通常の合成方法においては、n=1のピリジン自体が得られる沈澱中に混入することはまれであり、nが2以上のポリピリジンのみを含有することになる。nが2以上のときに、十分なキレート形成能を発揮する一方で、nが増すにつれ、溶媒への溶解性は低下して、nが8を超えると溶媒への溶解性が乏しくなり、所望のキレート形成に要する溶液の調製が次第に困難となる傾向がある。したがって、本実施形態に係る導電性ペーストに添加されるキレート形成物質として、式Iで表されるポリピリジンを用いる場合には、ピリジン骨格の繰り返し数nは、2〜8の範囲に選択することが好ましく、より好ましくは、nが2〜3の範囲のものを利用する。
〔その他の成分〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、上記説明した成分に加え、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分とは、例えば、印刷性向上剤、ホウ素化合物、カップリング剤、溶媒などが挙げられる。
〔印刷性向上剤〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、印刷性向上剤を含んでいてもよい。印刷性向上剤としては、増粘剤、レベリング改善剤及びレオロジーコントロール剤などが挙げられる。増粘剤は、導電性ペーストの粘度を高める添加剤であり、レベリング改善剤は、導電性ペーストの表面張力を低下させる添加剤であり、レオロジーコントロール剤は、導電性ペーストにチキソトロピック性を付与させ、かつ、貯蔵時の沈降防止に効果のある添加剤である。
本実施形態に係る導電性ペーストに上述した印刷性向上剤を添加することにより、特にプリント配線基板のスルーホール部に導電性ペーストを塗布する際にスルーホール部への導電性ペーストの印刷量を調整することができる。したがって、印刷性向上剤を添加した導電性ペーストを用いてスルーホール部に導電性被膜層を形成した場合、硬化後の導電性被膜の形状が良好となり、特にはスルーホールの角部(スルーホールが基板表面に開口する部)における導電性被膜層の厚さが良好となる。
上述した印刷向上剤の中でも、特にレオロジーコントロール剤を添加することが好ましい。好適なレオロジーコントロール剤としては、酸化ポリエチレン系レオロジーコントロール剤、シリカ系レオロジーコントロール剤、界面活性剤系レオロジーコントロール剤、金属石鹸系レオロジーコントロール剤、カーボンブラック系レオロジーコントロール剤、微粒炭酸カルシウム系レオロジーコントロール剤および有機ベントナイト系レオロジーコントロール剤、などが挙げられる。レオロジーコントロール剤の具体例としては、例えば、HDK(「HDK」は登録商標。以下において同じ。)シリーズ(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、HDK H15、HDK H18、HDK H20、HDK H30)、トーカブラック(東海カーボン株式会社製、トーカブラック#8500/F、#8300/F、#7550SB/F、#7400、#7360SB、#7350/F)などが挙げられる。
〔ホウ素化合物〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、ホウ素化合物を含んでいてもよい。導電性ペーストに対して、上記成分に加えホウ素化合物を添加することにより、潜在性硬化剤を添加することなく導電性ペーストの保管安定性を向上させることが可能である。そのため、本実施形態に係る導電性ペーストにホウ素化合物を添加する場合、導電性ペーストが潜在性硬化剤ではないキレート形成剤、例えば、ピリジン誘導体(例えば式Iで表される化合物)や1,10−フェナントロリンなどのアミン類を含んでいても、保管安定性に優れるという特長を有する。ただし、本実施形態に係る導電性ペーストは、ホウ素化合物を含んでいなくてもよい。
ホウ素化合物を添加する場合、添加するホウ素化合物は、ホウ酸エステル化合物又はホウ酸トリエステル化合物であることが好ましい。ホウ酸トリエステル化合物の炭素数は、入手容易性及び/又は製造容易性の観点から、好ましくは3〜54、より好ましくは6〜30、さらに好ましくは6〜12である。
ホウ酸エステル化合物としては、ホウ酸のアルキルまたはアリールエステルが挙げられ、具体的にはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリデシル、ホウ酸トリオクタデシル、ホウ酸トリフェニルなどが挙げられる。
炭素数6〜12のホウ酸トリエステル化合物の具体例としては、ホウ酸トリエチル、2−メトキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−イソプロポキシ−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸イソプロピル、トリス(トリメチルシリル)ボラート、ホウ酸トリブチルなどが挙げられる。
〔カップリング剤〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、カップリング剤を含んでいてもよい。導電性ペーストに対してカップリング剤を添加することにより、容易に好適な固着強度(導電性ペーストの硬化被膜層と、基板との間の固着強度)を得ることができる。
好ましいカップリング剤としては、銅粉末である導電性フィラーに対して有効なカップリング剤、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、及び/又は、アルミニウム系カップリング剤などが挙げられる。
好ましいカップリング剤の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド、などが挙げられる。上述したカップリング剤は、揮発性が低く、樹脂(特には熱硬化性樹脂)との反応性が低い。
〔溶媒〕
本実施形態に係る導電性ペーストは、粘度を調整するための溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、樹脂(特には熱硬化樹脂)とは反応せず、また、キレート形成物質を使用する場合に、キレート形成物質を溶解可能な溶媒であれば、特に限定されない。溶媒の具体例としては、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルカルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどが挙げられる。
また、本実施形態に係る導電性ペーストは、上述した成分以外にも、必要に応じて消泡剤、沈降防止剤、分散剤、酸化防止剤としての亜鉛粉末、樹脂の硬化剤などを含んでいてもよい。
〔各成分の好ましい含有量〕
次に、本実施形態に係る導電性ペーストを調製する際の、銅粉末量に対する各成分の好ましい含有量について、説明する。
・樹脂成分の総量
銅粉末100質量部に対する樹脂成分の量(導電性ペーストに含まれる全ての樹脂の総量)は11質量部〜43質量部の範囲内とすることが好ましく、15質量部〜30質量部の範囲内とすることがより好ましい。樹脂成分が11質量部以上43質量部以下の場合、ペースト全体に対する樹脂成分の収縮性が良好となり、良好な銅粉末同士の接触率を得ることができる。そのため、導電性ペーストを用いて得られたペースト硬化物は、良好な電気伝導性を有することとなる。
また、樹脂成分が15質量部以上の場合、樹脂による硬化収縮力によって、ペースト硬化物のより優れた導電性を得ることができる。樹脂成分が15質量部以上の場合、30質量部以下の場合、銅粒子間の接触面積を確保することが更に容易であり、ペースト硬化物のより優れた導電性を得ることができる。
・樹脂成分中のフェノール樹脂の割合
樹脂成分中のフェノール樹脂の含有量は、ペースト硬化物の導電性に大きく影響を及ぼす。具体的には、銅粉末100質量部に対するフェノール樹脂の量の、好ましい範囲は18質量%〜20.5質量%の範囲内である。前述したように、フェノール樹脂は、他の樹脂と比較して硬化時の収縮率が高く、銅粉末100質量部に対するフェノール樹脂の量が18質量%〜20.5質量%の範囲内の場合に、得られるペースト硬化物の導電性が最適となる。
より一般的には、全樹脂成分中のフェノール樹脂の割合は、66.0質量%〜99.0質量%の範囲内とすることが好ましく、全樹脂成分中のフェノール樹脂の割合が66.0質量%以上の場合、樹脂による硬化収縮力によって、ペースト硬化物のより優れた導電性を得ることができる。全樹脂成分中のフェノール樹脂の割合が99.0質量%以下の場合、銅粒子間の接触面積を確保することが容易であるため、ペースト硬化物のより優れた導電性を得ることができる。
・樹脂成分中の変性エポキシ樹脂の割合
全樹脂成分中の変性エポキシ樹脂の割合は、1.0質量%〜34.0質量%の範囲内とすることが好ましい。全樹脂成分中の変性エポキシ樹脂の量が1.0質量%〜34.0質量%の範囲内の場合、ペースト硬化物の弾性率を低下させることができ、ペースト硬化物の温度変化に対する耐性を良好にすることができる。また、好適な固着強度(導電性ペーストの導電性被膜層と基板との間の固着強度)を得ることができる。
・樹脂成分中の高反応性エポキシ樹脂の割合
高反応性エポキシ樹脂を用いる場合、全樹脂成分中の高反応性エポキシ樹脂の割合は、0.2質量%〜5.2質量%の範囲内とすることが好ましい。全樹脂成分中の高反応性エポキシ樹脂の量が0.2質量%〜5.2質量%の範囲内の場合、更に好適な固着強度(導電性ペーストの導電性被膜層と基板との間の固着強度)を得ることができる。
・多価アルコールの量
銅粉末100質量部に対する多価アルコールの量は、0.05質量部〜20質量部の範囲内とすることが好ましい。多価アルコールの量が0.05質量部を下回る場合、多価アルコールによる銅粉末表面の酸化被膜の還元効果が発現しない場合があり、多価アルコールの量が20質量部を超える場合、導電性フィラーの分散性が低下することがあり、また、加熱硬化後に多価アルコールがペースト硬化物中に残存し、抵抗値とスルーホール形状が悪化する場合がある。
・キレート形成物質の量
キレート形成物質を用いる場合、銅粉末100質量部に対するキレート形成物質の量は、0.1質量部〜2.0質量部の範囲内とすることが好ましい。キレート形成物質の量が0.1質量部以上の場合、ペースト硬化物をスルーホールへと適用した際に良好なスルーホール抵抗値を得ることができる。また、キレート形成物質の量が2.0質量部以下の場合、導電性ペーストの保管安定性が向上する。
・印刷性向上剤の量
印刷性向上剤を用いる場合、銅粉末100質量部に対する印刷性向上剤の量は、0.5質量部〜4.0質量部の範囲内とすることが好ましい。印刷向上剤の量を0.5質量部〜4.0質量部の範囲内とした場合、導電性ペーストの印刷性(スクリーン印刷をしたときのスルーホール部への導電性ペーストの印刷量)を良好にし、硬化被膜層の形状、特にはスルーホール角部における硬化被膜層の厚さを良好にすることができる。結果として、ペースト硬化物の良好なスルーホール抵抗値を得ることができる。また、銅粒子同士の接触を良好にして良好な導電性を得るためにも、印刷性向上剤の量を4.0質量部以下であることが好ましい。
・ホウ素化合物の量
ホウ素化合物を用いる場合、銅粉末100質量部に対するホウ素化合物の量は、導電性ペーストの保管安定性の観点から、0.02質量部以上とすることが好ましく、0.05質量部以上とすることがより好ましい。また、スルーホールの導通を図るために使用した際のスルーホール抵抗値の観点から、ホウ素化合物の量は、10.0質量部以下とすることが好ましく、3.0質量部以下とすることがより好ましい。
・カップリング剤の量
カップリング剤を用いる場合、銅粉末100質量部に対するカップリング剤は、0.1〜10.0質量部の範囲内とすることが好ましい。カップリング剤の量を0.1〜10.0質量部の範囲内の場合、好適な固着強度(導電性ペーストの導電性被膜層と基板との間の固着強度)を得ることができる。
〔導電性ペーストの使用〕
本実施形態に係る導電性ペーストの硬化物は、良好な電気伝導性を有しており、この硬化物によってスルーホールが導通されたプリント配線基板は、各種電子機器に好適に利用できる。特に近年、プリント配線板の小型に伴い、スルーホール径も300μm以下と小径化している。スルーホールを小径化すると、スルーホールに充填される導電性ペーストの量が少なくなり導電性被膜層が薄膜化するため、導電性フィラーが酸化されやすくなる。そのため、結果として得られる導電性被膜層の電気抵抗値が悪化するが、本実施形態に係る導電性ペーストは、そのような場合であっても十分に低い電気抵抗値を有する。
なお、上述のプリント配線基板を得るために、導電性ペーストを用いてプリント配線基板のスルーホールを導通させる公知の方法、特にはスクリーン印刷法によって導電性ペーストを基板に印刷した後、導電性ペーストを硬化させる、公知の方法を利用することができる。このような方法によって、スルーホールに導電性ペーストの硬化物が埋め込まれ、表面と裏面との間が導通された基板が得られる。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。表1に、各実施例及び比較例1における、各成分の配合量とスルーホール抵抗値の評価結果について示す。なお、表中、各成分の配合量の単位は質量部である。また、表において、例えば「実1」は実施例1を意味し、「比1」は比較例1を意味する
各実施例及び比較例1で使用した材料は以下のとおりである。
・銅粉末
銅粉(三井金属鉱業株式会社製、商品名:T−22)、
・フェノール樹脂
フェノールとホルムアルデヒドをアルカリ触媒下で反応して得られる重量平均分子量約20000のレゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業株式会社製、商品名:レヂトップPL−4348)、
・変性エポキシ樹脂
ウレタン変性エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、商品名:EPU−78−13S、エポキシ当量:210、分子中のエポキシ基:2つ)、
ゴム変性エポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、商品名:EPR−21、エポキシ当量:200、分子中のエポキシ基:2つ)、
・多価アルコール
1,2−ブタンジオール(和光純薬株式会社製:実施例2〜4,7〜8)
1,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社製:実施例1,5)
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(協和発酵工業株式会社製:実施例6)
2,3−ブタンジオール(東京化成工業株式会社製:実施例9)
1,2,6−ヘキサントリオール(東京化成工業株式会社製:実施例10)
・印刷性向上剤
シリカ系レオロジーコントロール剤(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名:HDK H15)、
・キレート形成物質
2,2’−ビピリジル(n=2の式Iの化合物)、
・溶媒
ブチルセロソルブ
なお、ブチルセロソルブは、1価アルコールである。
〔導電性ペーストの調製方法〕
各実施例及び比較例1において、表1に示される配合(質量部)に基づき、導電性ペーストを調製した。具体的にはまず、銅粉末及び印刷向上剤以外の材料を容器に投入し、自転−公転攪拌機(倉敷紡績株式会社製)を用いて撹拌を行い、均一な液状樹脂組成物を調製した。次いで、調製された樹脂組成物に銅粉末を添加し、自転−公転攪拌機(倉敷紡績株式会社製)を用いて撹拌を行った。次いで、調製された銅粉分散体に印刷向上剤を添加し、自転−公転攪拌機(倉敷紡績株式会社製)を用いて撹拌を行い、導電性ペーストを得た。
なお、実施例1,5では、多価アルコールとして1,3−ブタンジオールを使用し、実施例2〜4、7〜8では、多価アルコールとして1,2−ブタンジオールを使用し、実施例6では、多価アルコールとして2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを使用し、実施例9では、多価アルコールとして2,3−ブタンジオールを使用し、実施例10では、多価アルコールとして1,2,6−ヘキサントリオールを使用した。
また、比較例1では、多価アルコールを使用していない。しかしながら、比較例1の導電性ペーストは、溶剤としてブチルセロソルブを使用しているので、1価アルコールを使用して調製された導電性ペーストである。
上記の各実施例及び比較例1の導電性ペーストについて、スルーホール抵抗値についての評価試験を行った。その結果についても表1に示す。
〔スルーホール抵抗値評価〕
1.6mm厚のスルーホール対応基材に、ドリル加工により、0.2mmφ(直径)の孔を100穴あけ、スクリーン印刷により、導電性ペーストの埋め込みを行った。50℃、2時間の予備加熱を行った後、150℃、1時間の硬化を行った。なお、この基板には、100穴のスルーホールが、基板表裏の回路により直列に結線されており、末端スルーホール間の導通抵抗を測定することにより、100穴の直列のスルーホール抵抗の測定が可能である。この100穴スルーホールの抵抗値を1穴あたりに換算したものをスルーホール抵抗として表1に示した。
表1からわかるように、各実施例で得られた導電性ペーストは、アルコール成分以外の成分が同量で配合された比較例1で得られた導電性ペーストと比較して、多価アルコールの種類に関わらずスルーホール抵抗値が低く、良好な電気伝導性を有することがわかる。
具体的には、実施例1〜10で得られた導電性ペーストは、多価アルコールの種類、各成分の配合量によってスルーホール抵抗値が変動したが、いずれの導電性ペーストも、比較例1で得られた導電性ペーストと比較して、スルーホール抵抗値が低い。各実施例で得られた導電性ペーストは、多価アルコールを用いて調製しており、比較例で得られた導電性ペーストは、1価アルコールを用いて調製している。1価アルコールは、多価アルコールと比較して、銅粉末表面の酸化被膜の還元作用が劣り、また、加熱硬化過程の初期に蒸発して系外へと霧散してしまう。そのため、比較例で得られた導電性ペーストは、銅粉末表面の再酸化が生じ、結果としてスルーホール抵抗値が高くなっていると考えられる。
また、各実施例同士の比較において、多価アルコールとして1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールを使用して調製した導電性ペーストと比較して、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールを使用して調製した導電性ペーストは、スルーホール抵抗値が低い。これは、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールと比較して、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオールは揮発性が低く、加熱硬化過程において長時間に渡って銅粉末の還元作用が働くためと考えられる。
以上、本実施形態に係る導電性ペーストは、銅粉末と、フェノール樹脂と、キレート形成物質と、多価アルコールとを含み、小径スルーホール上に形成した導電性被膜層においても、良好な電気伝導性を有する。

Claims (4)

  1. 銅粉末と、フェノール樹脂と、キレート形成物質と、多価アルコールとを含む、導電性ペースト。
  2. 前記銅粉末100質量部に対する前記多価アルコールの量は、0.05質量部〜20質量部の範囲内である、請求項1に記載の導電性ペースト。
  3. 前記銅粉末の平均粒子径は、1μm〜15μmの範囲内である、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
  4. 前記銅粉末100質量部に対する前記フェノール樹脂の量は、11質量部〜43質量部の範囲内である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の導電性ペースト。

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