JP6767709B2 - プリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板およびプリント配線板 - Google Patents
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Description
本発明は、プリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板およびプリント配線板に関する。
プリント配線板は、電子機器、通信機器、計算機など、各種の分野において広く使用されている。近年、特に携帯通信端末やノート型PC等の小型携帯機器では、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、多機能化、高性能化、薄型化・小型化が急速に進んでおり、このような機器に搭載される半導体パッケージ等の電子部品も薄型化・小型化が進んでいる。これに伴い、これら電子部品を実装するのに用いられるプリント配線板等の絶縁材料には、信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電率及び誘電正接が低いことが求められる。さらに、プリント配線板も配線パターンの微細化や多層化、薄型化、機械特性等の高性能化が要求されている。
特許文献1には、ポリフェニレンエーテルの有する優れた誘電特性を維持したまま、優れたガラス転移温度(Tg)を実現するために、ポリフェニレンエーテルの水酸基の少なくとも一部をエポキシ化合物のエポキシ基で予め反応させた反応生成物と、シアネートエステル化合物と、有機金属塩とを含有する樹脂組成物の発明が記載されている。
一方、特許文献2には、ドリル加工性に優れ、良好な電気絶縁性及び低熱膨張性を実現することを目的として、熱硬化性樹脂と、シリカと、モリブデン化合物とを含み、シリカの含有量が20体積%以上60体積%以下である熱硬化性樹脂組成物の発明が記載されている。
ポリフェニレンエーテルの水酸基の少なくとも一部をエポキシ化合物のエポキシ基で予め反応させた反応生成物およびシアネートエステル化合物に、シリカおよびモリブデン化合物をさらに添加して得られた樹脂組成物では、その硬化物のガラス転移温度、誘電正接が大幅に低下することがあった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れ、かつ良好なドリル加工性および成形性を実現することができるプリント配線板用樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層板およびプリント配線板を提供することを目的とする。
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次の知見を得た。すなわち、新品のシリカ粒子(乾燥状態のシリカ粒子)を用いた場合には、硬化物のガラス転移温度および誘電正接は優れる。一方で、シリカ粒子の保管状態によって、吸湿したシリカ粒子を用いた場合には、硬化物のガラス転移温度および誘電特性が経時的に低下する。かかる知見から、本発明を完成するに至った。
本発明に係るプリント配線板用樹脂組成物は、
(a)ポリフェニレンエーテルとエポキシ基を持つエポキシ化合物とを反応させることにより得られた予備反応物、及び
(b)シアネートエステル化合物を含む樹脂成分と、
(c)比表面積が0.1m2/g以上15m2/g以下の破砕シリカに、β−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びジメチルジクロロシランからなる群より選ばれた少なくとも1種のシランカップリング剤で表面処理が施された疎水性シリカ粒子、及び
(d)モリブデン化合物以外の材料からなる担体の表面に前記モリブデン化合物が担持又は被覆されたモリブデン化合物粒子を含む無機充填材と、を配合して得られ、
前記モリブデン化合物粒子(d)の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。
(a)ポリフェニレンエーテルとエポキシ基を持つエポキシ化合物とを反応させることにより得られた予備反応物、及び
(b)シアネートエステル化合物を含む樹脂成分と、
(c)比表面積が0.1m2/g以上15m2/g以下の破砕シリカに、β−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びジメチルジクロロシランからなる群より選ばれた少なくとも1種のシランカップリング剤で表面処理が施された疎水性シリカ粒子、及び
(d)モリブデン化合物以外の材料からなる担体の表面に前記モリブデン化合物が担持又は被覆されたモリブデン化合物粒子を含む無機充填材と、を配合して得られ、
前記モリブデン化合物粒子(d)の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である。
また、前記プリント配線板用樹脂組成物において、前記モリブデン化合物が、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム及びモリブデン酸マグネシウムからなる群から選ばれた1種以上のものであることが好ましい。
また、前記プリント配線板用樹脂組成物において、前記モリブデン化合物以外の材料がタルクであることが好ましい。
また、前記プリント配線板用樹脂組成物において、前記疎水性シリカ粒子の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましい。
また、前記プリント配線板用樹脂組成物において、前記破砕シリカの含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して10質量部以上150質量部以下であることが好ましい。
本発明に係るプリプレグは、前記プリント配線板用樹脂組成物を基材に含浸し半硬化させることで得られる。
本発明に係る金属張積層板は、前記プリプレグに金属箔を重ね、加熱加圧成形して一体化することで得られる。
本発明に係るプリント配線板は、前記金属張積層板の前記金属箔の一部を除去して導体パターンを形成することで得られる。
本発明によれば、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れ、かつ良好なドリル加工性および成形性を実現することができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係るプリント配線板用樹脂組成物(以下、樹脂組成物)は、下記(a)および(b)を含む樹脂成分、下記(c)および(d)を含む無機充填材を配合して得られたものである。
(a)ポリフェニレンエーテルとエポキシ基を持つエポキシ化合物とを反応させることにより得られた予備反応物
(b)シアネートエステル化合物
(c)シリカ粒子に表面処理が施された疎水性シリカ粒子
(d)モリブデン化合物を少なくとも表層部分に有するモリブデン化合物粒子
すなわち、樹脂組成物は、はじめにエポキシ化合物を配合して、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物とを反応させることにより予備反応物(a)を形成した後、さらにシアネートエステル化合物(b)、疎水性シリカ粒子(c)およびモリブデン化合物粒子(d)を配合して得られる。このように、予め、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物を反応させて予備反応物(a)を形成しておくことにより、予備反応物を形成しないで得られた樹脂組成物よりも樹脂組成物の硬化物(以下、硬化物)のガラス転移温度を高くすることができる。さらに、硬化物は上記樹脂成分をベース樹脂とするので、誘電率や誘電正接等の誘電特性に優れる。
(b)シアネートエステル化合物
(c)シリカ粒子に表面処理が施された疎水性シリカ粒子
(d)モリブデン化合物を少なくとも表層部分に有するモリブデン化合物粒子
すなわち、樹脂組成物は、はじめにエポキシ化合物を配合して、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物とを反応させることにより予備反応物(a)を形成した後、さらにシアネートエステル化合物(b)、疎水性シリカ粒子(c)およびモリブデン化合物粒子(d)を配合して得られる。このように、予め、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物を反応させて予備反応物(a)を形成しておくことにより、予備反応物を形成しないで得られた樹脂組成物よりも樹脂組成物の硬化物(以下、硬化物)のガラス転移温度を高くすることができる。さらに、硬化物は上記樹脂成分をベース樹脂とするので、誘電率や誘電正接等の誘電特性に優れる。
樹脂組成物中に持込まれる水分量は、樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.07質量%以下である。樹脂組成物中に持込まれる水分量が上記範囲内であると、樹脂組成物のワニスゲルタイムが短くなりにくくなる。ワニスゲルタイムが短いと、樹脂組成物を硬化させる際、樹脂組成物に熱を十分にかけられず、硬化物中に揮発成分が多く残存する。そのため、硬化物のガラス転移温度が大きく低下するおそれがある。なお、シリカ粒子に表面処理が施されていない場合、樹脂組成物中に持込まれる水分量は、主に、表面処理が施されていないシリカ粒子が吸湿した水分に起因する。ここで、樹脂組成物中に持込まれる水分量とは、実施例に記載の方法と同様にして得られる値である。
樹脂組成物中に持込まれる水分量によって樹脂組成分のワニスゲルタイムが大幅に短くなるのは、予備反応物(a)、シアネートエステル化合物(b)、疎水性シリカ粒子(c)およびモリブデン化合物粒子(d)を含む樹脂組成物に特有である。これは、例えば、予備反応物(a)を用いずに、ポリフェニレンエーテル、エポキシ化合物、シアネートエステル化合物(b)、疎水性シリカ粒子(c)およびモリブデン化合物粒子(d)を重合させて得られる樹脂組成物には見られない。
樹脂組成物中に持込まれる水分量が多いとワニスゲルタイムが短くなるのは、シアネートエステル化合物(b)に起因するシアネートエステルの三量化反応が促進されるためと推測される。すなわち、樹脂組成物中に持込まれる水分量が多いと、シアネートエステル化合物(b)と水とが反応しやすくなり、カルバメートが生成しやすくなる。このカルバメート中の活性水素がモリブデン化合物とともに、シアネートエステル化合物(b)に起因するシアネートエステルの三量化反応を大きく促進させ、トリアジン環を生成する。このトリアジン環が硬化剤として機能し、樹脂組成物はゲル化しやすくなると推測される。
樹脂組成物のワニスゲルタイムは、120秒以上であり、好ましくは120〜240秒、より好ましくは150〜210秒である。ここで、ワニスゲルタイムとは、実施例に記載の方法と同様にして測定した値である。
〔樹脂成分〕
樹脂成分は、予備反応物(a)、シアネートエステル化合物(b)が含まれる。
樹脂成分は、予備反応物(a)、シアネートエステル化合物(b)が含まれる。
(予備反応物(a))
予備反応物(a)は、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ基を持つエポキシ化合物(a−2)とを反応させることにより得られたものである。
予備反応物(a)は、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ基を持つエポキシ化合物(a−2)とを反応させることにより得られたものである。
ポリフェニレンエーテル(a−1)は、1分子中に平均1.5〜2個の水酸基を有するのが好ましい。1分子中に平均1.5〜2個の水酸基を有するとは、1分子当たりの水酸基の平均個数(平均水酸基数)が1.5〜2個であることを意味する。平均水酸基数が1.5個以上であれば、エポキシ化合物(a−2)のエポキシ基と反応することによって3次元架橋されるため、硬化時の密着性を向上させることができる。また、平均水酸基数が2個以下であることによって、予備反応時にゲル化する恐れもなくなると考えられる。
ポリフェニレンエーテル(a−1)の平均水酸基数は、使用するポリフェニレンエーテルの製品の規格値からわかる。ポリフェニレンエーテル(a−1)の平均水酸基数は、例えば、ポリフェニレンエーテル1モル中に存在する全てのポリフェニレンエーテルの1分子あたりの水酸基の平均値等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル(a−1)の数平均分子量(Mn)は、800以上2000以下であるのが好ましい。数平均分子量が800以上であれば、誘電特性、耐熱性、高ガラス転移温度を確保することができる。数平均分子量が2000以下であれば、低エポキシ基数エポキシ樹脂と反応させた予備反応物を含有させた場合でも、樹脂流れや相分離を起こしたり、成型性が悪くなったりすることを抑制することができる。
数平均分子量が800以上2000以下のポリフェニレンエーテルは、例えば、重合反応により直接得られたものであってもよいし、数平均分子量が2000以上のポリフェニレンエーテルを、溶媒中でフェノール系化合物とラジカル開始剤との存在下で再分配反応させて得られたものであってもよい。
ポリフェニレンエーテル(a−1)の数平均分子量(Mn)は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
ポリフェニレンエーテル(a−1)としては、例えば、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルやポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等のポリフェニレンエーテルを主成分とするもの等が挙げられる。この中でも、2,6−ジメチルフェノールと2官能フェノール及び3官能フェノールの少なくともいずれか一方とからなるポリフェニレンエーテルが好ましい。また、2官能フェノールとしては、例えば、テトラメチルビスフェノールA等が挙げられる。
エポキシ化合物(a−2)は、1分子中に平均2〜2.3個のエポキシ基を有するのが好ましい。平均エポキシ基数がこの範囲であれば、硬化物の耐熱性を維持したまま、ポリフェニレンエーテル(a−1)との予備反応物を良好に生成することができる。
エポキシ化合物(a−2)としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、誘電特性を向上させる観点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が、ポリフェニレンエーテルとの相溶性が良い点から好ましく用いられる。なお、樹脂組成物には、耐熱性の観点からハロゲン化エポキシ樹脂を含有しないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて配合してもよい。
エポキシ化合物(a−2)の平均エポキシ基数は、使用するエポキシ樹脂の製品の規格値からわかる。エポキシ樹脂のエポキシ基数としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂1モル中に存在する全てのエポキシ樹脂の1分子あたりのエポキシ基の平均値等が挙げられる。
エポキシ化合物(a−2)は、トルエンに対する溶解度が25℃において10質量%以上であるのが好ましい。これにより、ポリフェニレンエーテル(a−1)の有する優れた誘電特性を阻害することなく、硬化物の耐熱性が充分に高められる。これは、ポリフェニレンエーテル(a−1)との相溶性が比較的高く、よって、ポリフェニレンエーテル(a−1)と均一に反応しやすいためであると考えられる。
予備反応物(a)は、例えば、以下のように反応させることによって得られる。まず、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)とが所定の比率となるように、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)とを、10〜60分間程度、固形分濃度50〜70%程度の有機溶媒中で攪拌して混合させる。そして、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)とを混合した後、80〜110℃で2〜12時間加熱させることによって、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)とを反応させる。これにより、予備反応物(a)が得られる。有機溶媒としては、ポリフェニレンエーテル(a−1)及びエポキシ化合物(a−2)等を溶解させ、これらの反応を阻害しないものであれば、特に限定されず、例えば、トルエン等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)との比率は、ポリフェニレンエーテル(a−1)の水酸基とエポキシ化合物(a−2)のエポキシ基とのモル比として、エポキシ基/水酸基が好ましくは3〜6であり、より好ましくは3.5〜5.5程度である。モル比が上記範囲にあれば、ポリフェニレンエーテル(a−1)の両端を効率よくキャッピングできる。さらに、予備反応物(a)の粘度が下がることによって、後述する樹脂ワニスやプリプレグの粘度を低下させることができ、製造性が向上すると考えられる。
ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)とを反応させる際、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)との混合物に、触媒を混合してもよい。触媒としては、ポリフェニレンエーテル(a−1)の水酸基とエポキシ化合物(a−2)のエポキシ基との反応を促進することができるものであれば、特に制限されず、例えば、オクタン酸、ステアリン酸、アセチルアセトネート、ナフテン酸、及びサリチル酸等の有機酸のZn、Cu、及びFe等の有機金属塩;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチルアミン、及びトリエタノールアミン等の3級アミン;2−エチル−4−イミダゾール(2E4MZ)、及び4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン(TPP)、トリブチルホスフィン、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン類等が挙げられる。これらは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、イミダゾール類、特に2−エチル−4−イミダゾールが、反応時間を短くすることができ、さらに、エポキシ樹脂同士の重合(エポキシ樹脂の自重合)を抑制できる点から、特に好ましく用いられる。また、触媒の含有量は、ポリフェニレンエーテル(a−1)とエポキシ化合物(a−2)との合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜1質量部である。触媒の含有量が上記範囲内であれば、ポリフェニレンエーテル(a−1)の水酸基とエポキシ化合物(a−2)のエポキシ基との反応に時間がかからず、また、反応の制御がしやすく、ゲル化しにくい。
反応時の固形分濃度は、反応効率や粘度(製造性)を考慮すると、50〜70%程度であることが好ましい。
(シアネートエステル化合物(b))
シアネートエステル化合物(b)は、1分子当たりのシアネート基の平均個数(平均シアネート基数)が2個以上である化合物であるのが好ましい。これにより、硬化物の耐熱性を向上させることができる。ここで、平均シアネート基数とは、シアネート樹脂1モル中に存在する全てのシアネート樹脂の1分子あたりのシアネート基の平均値である。平均シアネート基数は、使用するシアネート樹脂の製品の規格値からわかる。
シアネートエステル化合物(b)は、1分子当たりのシアネート基の平均個数(平均シアネート基数)が2個以上である化合物であるのが好ましい。これにより、硬化物の耐熱性を向上させることができる。ここで、平均シアネート基数とは、シアネート樹脂1モル中に存在する全てのシアネート樹脂の1分子あたりのシアネート基の平均値である。平均シアネート基数は、使用するシアネート樹脂の製品の規格値からわかる。
シアネートエステル化合物(b)としては、例えば、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ビスフェノールA型シアネート樹脂)、ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)エタン等またはこれらの誘導体等の芳香族系シアネートエステル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、エポキシ化合物(e)をさらに含有するのが好ましい。エポキシ化合物(e)は、エポキシ化合物(a−2)と同様に、1分子中に平均2〜2.3個のエポキシ基を有するのが好ましい。エポキシ化合物(e)としては、例えば、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この場合、エポキシ化合物(e)は、エポキシ化合物(a−2)と同じであっても、異なっていてもかまわない。誘電特性を向上させる観点から、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。そのほか、エポキシ化合物(e)としては、1分子中に平均2〜2.3個のエポキシ基を有するエポキシ化合物以外に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型(1分子中に平均2.3個より多くエポキシ基を有するもの)エポキシ化合物を用いることもできる。
エポキシ化合物(a−2)および/又はエポキシ化合物(e)としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含む場合、エポキシ化合物(a−2)およびエポキシ化合物(e)の総質量に対して、ジシクロペンタジエン型のエポキシ化合物が50質量%以上となるように含有することが好ましい。これにより、誘電特性により優れた絶縁材料を得ることができる。
樹脂成分の配合割合は、例えば、ポリフェニレンエーテル(a−1)、エポキシ化合物(a−2)、シアネートエステル化合物(b)およびエポキシ化合物(e)を合わせて100質量部とした場合(前記エポキシ化合物(e)の配合が0の場合を含む)に、ポリフェニレンエーテル(a−1)を10〜40質量部、エポキシ化合物(a−2)とエポキシ化合物(e)を合わせて20〜60質量部(エポキシ化合物(e)の配合が0の場合、エポキシ化合物(a−2)を20〜60質量部)、シアネートエステル化合物(b)を20〜40質量部であるのが好ましい。これにより、優れた誘電特性、耐熱性および密着性(接着性)を両立させることができると考えられる。
樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤や非ハロゲン系難燃剤をさらに含有してもよい。これにより、難燃性を高めることができる。ハロゲン系難燃剤を使用する場合、難燃性を付与でき、かつ硬化物のガラス転移温度が低下しにくく、耐熱性の大幅な低下が起こりにくい。ハロゲン系難燃剤を使用すると、難燃性を付与しにくいジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂を使用した場合でも、容易に難燃性を付与することができる。
ハロゲン系難燃剤は、後述の樹脂ワニス中では溶解せず分散するものが好ましい。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、融点が300℃以上のエチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンなどが挙げられる。このようなハロゲン系難燃剤を使用することにより、高温時におけるハロゲンの脱離が抑制でき、耐熱性の低下を抑制できると考えられる。
ハロゲン系難燃剤の配合割合は、全量の樹脂成分中にハロゲン濃度が5〜30質量%程度になるような割合で含有させることが、難燃性や耐熱性の観点から好ましい。
<無機充填材>
(疎水性シリカ粒子(c))
疎水性シリカ粒子(c)は、シリカ粒子に表面処理が施されたものである。これにより、シリカ粒子は高温または多湿環境下においても吸湿しにくくなる。そのため、長期間室温で放置(保管)された疎水性シリカ粒子を樹脂組成物の材料に用いても、樹脂組成物中に水分が持込まれにくくなり、乾燥状態のシリカ粒子と同等のワニスゲルタイムを維持することができる。その結果、シリカ粒子の保管状態によって、硬化物のガラス転移温度および誘電特性が経時的に低下しにくく、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れる。ここで、乾燥状態のシリカ粒子とは、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1%未満であるシリカ粒子をいう。
(疎水性シリカ粒子(c))
疎水性シリカ粒子(c)は、シリカ粒子に表面処理が施されたものである。これにより、シリカ粒子は高温または多湿環境下においても吸湿しにくくなる。そのため、長期間室温で放置(保管)された疎水性シリカ粒子を樹脂組成物の材料に用いても、樹脂組成物中に水分が持込まれにくくなり、乾燥状態のシリカ粒子と同等のワニスゲルタイムを維持することができる。その結果、シリカ粒子の保管状態によって、硬化物のガラス転移温度および誘電特性が経時的に低下しにくく、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れる。ここで、乾燥状態のシリカ粒子とは、カールフィッシャー法で測定した水分量が0.1%未満であるシリカ粒子をいう。
疎水性シリカ粒子(c)に施す表面処理の処理剤としては、例えば、β−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン等のシランカップリング剤や、シリコーンオイルなどの公知の処理剤を用いることができる。表面処理が施された疎水性シリカ粒子は市販品として入手可能であり、シベルコ・ジャパン(株)製の「Megasil 525RCS」等が挙げられる。
疎水性シリカ粒子(c)を構成するシリカ粒子としては、例えば、球状シリカ、破砕シリカなどが挙げられる。なかでも、硬化物のドリル加工性をより向上させる点で、球状シリカ、または比表面積が0.1m2/g以上15m2/g以下の破砕シリカが好ましく、経済的な点で比表面積が0.1m2/g以上15m2/g以下の破砕シリカがより好ましい。なお、比表面積はBET法により測定することができる。
破砕シリカは、例えば溶融シリカの粉砕や鉱石として採掘された結晶質シリカを粉砕して得られたものである。破砕シリカの比表面積が0.1m2/g以上であることで、樹脂組成物を用いて金属張積層板等の積層板を製造したとき、積層板のドリル加工性を良好なものとすることができる。すなわち、一般に破砕シリカを使用すると球状シリカを用いた場合に比べて積層板等にドリルにより穴あけをする際にドリル刃が摩耗しやすくなるなどドリル加工性が著しく低下すると従来から考えられているが、比表面積が0.1m2/g以上の破砕シリカをモリブデン化合物粒子(d)と共に使用することで、ドリル刃の摩耗は大きく改善される。一方、破砕シリカは比表面積が15m2/g以下であることで、樹脂組成物のワニスの増粘が抑制され、また加熱成形時の溶融粘度の増大も抑制され好適な範囲の樹脂流動性となって積層板を製造する際の成形性が良好なものとなる。これにより、プリプレグの製造が困難となったり、積層板の絶縁層にボイド(空洞)が残存したりすることが防止される。
疎水性シリカ粒子(c)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上200質量部以下、より好ましくは10質量部以上150質量部以下、さらに好ましくは30質量部以上100質量部以下である。疎水性シリカ粒子(c)の含有量が上記範囲内であれば、硬化物の熱線膨張率を低減することができる。
疎水性シリカ粒子(c)を構成するシリカ粒子が破砕シリカである場合には、疎水性シリカ粒子(c)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上150質量部以下、より好ましくは20質量部以上100質量部以下である。破砕シリカの含有量が上記範囲内であれば、破砕シリカが低熱線膨張率化に寄与する度合いが小さくなりすぎ、十分な低熱線膨張率化を図るためには球状シリカ等の他の無機充填材を多量に添加する必要性が生じ、破砕シリカを含有させる意義が実質的に失われない。ドリル加工性を十分改善するためにモリブデン化合物粒子(d)を多量に使用する必要性がなく、耐熱性を低下させる懸念がなく、ドリル加工性を十分に改善できる。
破砕シリカの比表面積及び含有量は前記範囲内であればその組み合わせは限定されないが、特に破砕シリカの比表面積が9〜15m2/gである場合は、破砕シリカの含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜100質量部であることが好ましい。すなわち、破砕シリカの比表面積が大きくなると成形時における樹脂組成物の溶融粘土を増大させる傾向があるため、破砕シリカの含有量を抑制することで樹脂組成物の流動性を確保し、良好な成形性が得られるからである。
(モリブデン化合物粒子(d))
モリブデン化合物粒子(d)は、その表層部分にモリブデン化合物を少なくとも有する無機粒子である。モリブデン化合物粒子(d)を破砕シリカと共に用いると、モリブデン化合物が潤滑剤として機能することによって、破砕シリカによるドリルの摩耗が抑制され、ドリル加工性を向上させることができる。モリブデン化合物粒子(d)は、モリブデン化合物によって粒子全体が構成されたものであっても、他の材料からなる無機充填材を担体としてその表面にモリブデン化合物を担持又は被覆させた形態の粒子であってもよい。なお、モリブデン化合物粒子(d)の表層部分に存在するモリブデン化合物が、ドリルの摩耗の抑制に主として作用するものと考えられる。よって、少ないモリブデン化合物の量でドリル加工性の改善効果を得るために、後者のように、他の材料からなる無機充填材の表面にモリブデン化合物を有する粒子の形態で用いることが好ましい。また、一般にモリブデン化合物は比重がシリカ等の無機充填材と比べて大きく、樹脂成分との比重差が大きいものとなる。したがって、樹脂組成物中における分散性の観点からも、後者のように、他の材料からなる無機充填材の表面にモリブデン化合物を有する粒子の形態で用いることが好ましい。担体として用いる無機充填材としては、積層板の無機充填材として通常用いられる、タルク、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、シリカ等を好適に用いることができる。担体の平均粒径は0.05μm以上であることが好ましい。このようなモリブデン化合物粒子は市販品として入手可能であり、シャーウィン・ウィリアムズ社製のケムカード等が挙げられる。
モリブデン化合物粒子(d)は、その表層部分にモリブデン化合物を少なくとも有する無機粒子である。モリブデン化合物粒子(d)を破砕シリカと共に用いると、モリブデン化合物が潤滑剤として機能することによって、破砕シリカによるドリルの摩耗が抑制され、ドリル加工性を向上させることができる。モリブデン化合物粒子(d)は、モリブデン化合物によって粒子全体が構成されたものであっても、他の材料からなる無機充填材を担体としてその表面にモリブデン化合物を担持又は被覆させた形態の粒子であってもよい。なお、モリブデン化合物粒子(d)の表層部分に存在するモリブデン化合物が、ドリルの摩耗の抑制に主として作用するものと考えられる。よって、少ないモリブデン化合物の量でドリル加工性の改善効果を得るために、後者のように、他の材料からなる無機充填材の表面にモリブデン化合物を有する粒子の形態で用いることが好ましい。また、一般にモリブデン化合物は比重がシリカ等の無機充填材と比べて大きく、樹脂成分との比重差が大きいものとなる。したがって、樹脂組成物中における分散性の観点からも、後者のように、他の材料からなる無機充填材の表面にモリブデン化合物を有する粒子の形態で用いることが好ましい。担体として用いる無機充填材としては、積層板の無機充填材として通常用いられる、タルク、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、シリカ等を好適に用いることができる。担体の平均粒径は0.05μm以上であることが好ましい。このようなモリブデン化合物粒子は市販品として入手可能であり、シャーウィン・ウィリアムズ社製のケムカード等が挙げられる。
モリブデン化合物粒子(d)を構成するモリブデン化合物としては、例えば、三酸化モリブデンなどのモリブデン酸化物;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン酸化合物;ホウ化モリブデン、二ケイ化モリブデン、窒化モリブデン、炭化モリブデンなどのモリブデンの化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、化学安定性や耐湿性、絶縁性の観点から、モリブデン酸亜鉛(ZnMoO4)、モリブデン酸カルシウム(CaMoO4)及びモリブデン酸マグネシウム(MgMoO4)からなる群より選ばれた1種以上のものが好ましい。これらのうちの1種のみを用いてもよいし、2種を組み合わせて用いてもよいし、3種すべてを用いてもよい。
モリブデン化合物粒子(d)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上7質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。モリブデン化合物粒子(d)の含有量が上記範囲内であれば、潤滑剤として十分に機能し、積層板のドリル加工性を向上させることができる。さらに、積層板の耐熱性や銅箔ピール強度への影響を抑制することができる。また、モリブデン化合物は吸油性が低いため、成形時等における樹脂流動性に実用上の悪影響を及ぼさない。
モリブデン化合物粒子(d)中にはモリブデン化合物は含まれる。モリブデン化合物の物質としての樹脂組成物中における総含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.05〜5質量部の範囲内であることが好ましい。樹脂組成物中におけるモリブデン化合物の含有量が上記範囲内であれば、十分なドリル加工性の改善効果が得られる。さらに、積層板の耐熱性を維持できる。
樹脂組成物は、触媒をさらに含有してもよい。これにより、予備反応物(a)とシアネートエステル化合物(b)との硬化反応(架橋反応)を促進させることができる。すなわち、触媒は硬化促進剤として作用する。そのため、硬化物の高いガラス転移温度や耐熱性、密着性を確保することができる。
触媒としては、例えば、一般的に金属石鹸と呼ばれるものを用いることができ、例えば、オクチル酸、ナフテン酸、ステアリン酸、ラウリン酸及びリシノール酸、アセチルアセテート等の有機酸と、亜鉛、銅、コバルト、リチウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム等の金属とからなる有機金属塩等が挙げられる。中でも、ナフテン酸銅は、シアネートエステルの三量化反応の活性が低いため、ワニスやプリプレグのポットライフが比較的良い(しかも、耐熱性は維持しつつ)ため好ましく使用できる。触媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒の配合量は、予備反応物(a)とシアネートエステル化合物(b)との合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部である。触媒の配合量が前記範囲内であれば、硬化促進効果を高めて、硬化物の高い耐熱性やガラス転移温度を確保することができ、さらに成型性に問題のないプリプレグが作製しやすくなる。
無機充填材は、疎水性シリカ粒子(c)及びモリブデン化合物粒子(d)以外に、これらとは異なる他の充填材を含んでいてもよい。すなわち、他の充填材の添加により、疎水性シリカ粒子(c)による低熱線膨張率化効果に加えて、更なる低熱線膨張率化を図ることが可能であり、また疎水性シリカ粒子(c)のみでは十分に得られない難燃性や熱伝導性等の特性を付与することが可能である。他の充填材としては、目的に応じて適宜公知の充填材から選択可能であって制限されるものではないが、ドリル加工性を低下させにくい比較的硬度の低いものが好ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、タルク、クレー、マイカ等が挙げられる。
樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤等の添加剤をさらに配合してもよい。
樹脂組成物は、前述した各種成分の所定量を溶媒中で混合することでワニス状(樹脂ワニス)に調製して用いることができる。溶媒としては、予備反応物(a)、及びシアネートエステル化合物(b)、エポキシ化合物(e)等の樹脂成分を溶解可能であり、硬化反応を阻害しないものであれば、特に限定されず、例えば、トルエン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶媒が挙げられる。
この樹脂ワニスを調製するにあたっては、固形成分の溶解/分散を促進させる等の目的で、必要に応じて、樹脂成分が硬化反応を起こさない温度範囲で加熱してもよい。さらに、必要に応じて無機充填材やハロゲン系難燃剤を添加した場合、ボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、良好な分散状態になるまでワニスを攪拌してもよい。
本発明の実施の形態に係るプリプレグについて説明する。プリプレグは、上記のようにして得られた樹脂ワニスをガラスクロス等の基材に含浸し、これを110〜140℃で加熱乾燥し、樹脂ワニス中の溶媒を除去して、樹脂組成物を半硬化させることによって製造することができる。このとき、プリプレグのレジンコンテント(樹脂組成物の含有量)は、プリプレグ全量に対して30〜80質量%の範囲で調製するとよい。
本発明の実施の形態に係る金属張積層板について説明する。金属張積層板は、上記のようにして得られたプリプレグに銅箔等の金属箔を重ねて加熱加圧成形することによって製造することができる。例えば、1枚のプリプレグ又は複数枚重ねたプリプレグの片面又は両面に銅箔等の金属箔を重ね、これを加熱加圧して積層成形することによって、銅張積層板等の金属張積層板を製造することができる。金属張積層板においてプリプレグの硬化物は絶縁層を形成する。加熱加圧の条件は、例えば、140〜200℃、0.5〜5.0MPa、40〜240分間である。
本発明の実施の形態に係るプリント配線板について説明する。プリント配線板は、サブトラクティブ法等を使用して、上記のようにして得られた金属張積層板の金属箔の一部をエッチングにより除去して導体パターンを形成することによって製造することができる。この場合、導体パターンが形成される異なる層間を接続するためのスルーホール又はブラインドバイアホールを形成するためにドリル加工により穴あけを行う。このとき穴があけられる絶縁層は、プリプレグ(樹脂組成物)の硬化物であるため、ドリル加工性が良好であり、ドリルの摩耗を抑制することができる。しかも金属張積層板及びこれを加工して得られるプリント配線板は、プリプレグの硬化物で絶縁層が形成されているので、成形性が良好でカスレが生じにくく、耐熱性も高い上に、低い熱線膨張率も有している。
コア材(内層材)としてプリント配線板を準備し、その上にプリプレグを用いて積層成形することで、多層プリント配線板を製造することができる。すなわち、コア材の導体パターン(内層パターン)を黒色酸化処理等で粗面化処理した後、このコア材の表面にプリプレグを介して金属箔を重ね、これを加熱加圧して積層成形する。このときの加熱加圧の条件も、例えば、140〜200℃、0.5〜5.0MPa、40〜240分間である。コア材がプリプレグを用いて製造されたものであってもよい。次に、ドリル加工による穴あけ及びデスミア処理を行う。その後、サブトラクティブ法を使用して導体パターン(外層パターン)を形成すると共に穴の内壁にめっき処理を行ってスルーホール又はブラインドバイアホールを形成することによって、多層プリント配線板を製造することができる。なお、プリント配線板の層数は特に限定されない。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
[予備反応物(a)の調製]
予備反応物(a)を調製するための各材料として、次のものを用いた。
予備反応物(a)を調製するための各材料として、次のものを用いた。
(ポリフェニレンエーテル)
PPE:SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA90」(数平均分子量:1500、水酸基:1.9個)
(エポキシ化合物)
DCPD型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「HP7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、1分子中の平均官能基2.3個)
(プリアクト時の触媒)
イミダゾール:四国化成工業(株)製の「2E4MZ」(2−エチル−4−イミダゾール)
表1に記載の配合割合となるように、各成分をトルエンに添加した後、100℃で6時間攪拌させた。すなわち、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂とを予め反応(プレリアクト)させて、予備反応物(a)を調製した。得られた予備反応物(a)の固形分濃度が60%となるように調製した。
PPE:SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA90」(数平均分子量:1500、水酸基:1.9個)
(エポキシ化合物)
DCPD型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「HP7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、1分子中の平均官能基2.3個)
(プリアクト時の触媒)
イミダゾール:四国化成工業(株)製の「2E4MZ」(2−エチル−4−イミダゾール)
表1に記載の配合割合となるように、各成分をトルエンに添加した後、100℃で6時間攪拌させた。すなわち、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂とを予め反応(プレリアクト)させて、予備反応物(a)を調製した。得られた予備反応物(a)の固形分濃度が60%となるように調製した。
<実施例1〜6,8,比較例1〜9,16,17>
樹脂組成物を調製するための各材料として、次のものを用いた。
樹脂組成物を調製するための各材料として、次のものを用いた。
(樹脂成分)
・予備反応PPE(a):上記で調製した予備反応物(a)
・シアネートエステル化合物(b):2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製の「BADCy」)
(触媒)
・金属石鹸:DIC(株)製のオクタン酸亜鉛(Zn−OCTOATE)
(シリカ粒子)
・破砕シリカ1(c):シベルコ・ジャパン(株)製の「Megasil 525RCS」(溶融破砕シリカ粒子、平均粒径1.6μm、エポキシシラン表面処理)
・破砕シリカ2(c):破砕シリカ1を35℃90%の環境下で7日(168時間)放置する処理(吸湿処理)を施した破砕シリカ粒子
・破砕シリカ3:シベルコ・ジャパン(株)製の「Megasil 525」(溶融破砕シリカ粒子、平均粒径:1.6μm)
・破砕シリカ4:破砕シリカ3に上記吸湿処理を施した破砕シリカ粒子
・球状シリカ1(c):(株)アドマテックス製の「SC2500−SEJ」(球状シリカ粒子、平均粒径:0.8μm、比重:2.2g/cm3、エポキシシラン表面処理)
・球状シリカ2(c):球状シリカ1に上記吸湿処理を施した破砕シリカ粒子
・球状シリカ3:(株)アドマテックス製の「SO−25R」(球状シリカ粒子、平均粒径:0.6μm)
・球状シリカ4:球状シリカ3に上記吸湿処理を施した破砕シリカ粒子
(モリブデン化合物粒子)
・モリブデン酸カルシウム(d):シャーウィン・ウィリアムズ(株)製の「KEMGARD 911A」(モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸量:10質量%、比重:3.0g/cm3、平均粒径:2.7μm)
・モリブデン酸亜鉛(d)(タルク担体):シャーウィン・ウィリアムズ(株)製の「KEMGARD 911C」(モリブデン酸亜鉛処理タルク、モリブデン酸亜鉛量:17質量%、比重:2.8g/cm3、平均粒径:3.0μm)
表4に記載の配合割合となるように、予備反応PPE(a)の溶液を30〜35℃になるまで加熱し、そこに、シアネートエステル化合物(b)及び触媒を添加した。その後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
・予備反応PPE(a):上記で調製した予備反応物(a)
・シアネートエステル化合物(b):2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製の「BADCy」)
(触媒)
・金属石鹸:DIC(株)製のオクタン酸亜鉛(Zn−OCTOATE)
(シリカ粒子)
・破砕シリカ1(c):シベルコ・ジャパン(株)製の「Megasil 525RCS」(溶融破砕シリカ粒子、平均粒径1.6μm、エポキシシラン表面処理)
・破砕シリカ2(c):破砕シリカ1を35℃90%の環境下で7日(168時間)放置する処理(吸湿処理)を施した破砕シリカ粒子
・破砕シリカ3:シベルコ・ジャパン(株)製の「Megasil 525」(溶融破砕シリカ粒子、平均粒径:1.6μm)
・破砕シリカ4:破砕シリカ3に上記吸湿処理を施した破砕シリカ粒子
・球状シリカ1(c):(株)アドマテックス製の「SC2500−SEJ」(球状シリカ粒子、平均粒径:0.8μm、比重:2.2g/cm3、エポキシシラン表面処理)
・球状シリカ2(c):球状シリカ1に上記吸湿処理を施した破砕シリカ粒子
・球状シリカ3:(株)アドマテックス製の「SO−25R」(球状シリカ粒子、平均粒径:0.6μm)
・球状シリカ4:球状シリカ3に上記吸湿処理を施した破砕シリカ粒子
(モリブデン化合物粒子)
・モリブデン酸カルシウム(d):シャーウィン・ウィリアムズ(株)製の「KEMGARD 911A」(モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸量:10質量%、比重:3.0g/cm3、平均粒径:2.7μm)
・モリブデン酸亜鉛(d)(タルク担体):シャーウィン・ウィリアムズ(株)製の「KEMGARD 911C」(モリブデン酸亜鉛処理タルク、モリブデン酸亜鉛量:17質量%、比重:2.8g/cm3、平均粒径:3.0μm)
表4に記載の配合割合となるように、予備反応PPE(a)の溶液を30〜35℃になるまで加熱し、そこに、シアネートエステル化合物(b)及び触媒を添加した。その後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
<実施例7、比較例10,11>
樹脂組成物を調製するための樹脂成分として、下記材料を用いた他は実施例1と同様の材料を用いた。
樹脂組成物を調製するための樹脂成分として、下記材料を用いた他は実施例1と同様の材料を用いた。
(樹脂成分)
・予備反応PPE:上記で調製した予備反応物
・シアネートエステル化合物:2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製の「BADCy」)
・DCPD型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「EPICRON HP7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、1分子中の平均官能基2.3個)
表4に記載の配合割合となるように、予備反応PPE(a)の溶液を30〜35℃になるまで加熱し、そこに、DCPD型エポキシ樹脂、シアネートエステル化合物(b)及び触媒を添加した他は実施例1と同様にしてワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
・予備反応PPE:上記で調製した予備反応物
・シアネートエステル化合物:2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製の「BADCy」)
・DCPD型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「EPICRON HP7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、1分子中の平均官能基2.3個)
表4に記載の配合割合となるように、予備反応PPE(a)の溶液を30〜35℃になるまで加熱し、そこに、DCPD型エポキシ樹脂、シアネートエステル化合物(b)及び触媒を添加した他は実施例1と同様にしてワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
<比較例12〜15>
樹脂組成物を調製するための樹脂成分、触媒として、下記材料を用いた他は実施例1と同様の材料を用いた。
樹脂組成物を調製するための樹脂成分、触媒として、下記材料を用いた他は実施例1と同様の材料を用いた。
(樹脂成分)
・PPE:SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA90」(数平均分子量1500、水酸基:1.9個)
・シアネートエステル化合物(b):2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製の「BADCy」)
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「EPICRON HP7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、1分子中の平均官能基2.3個)
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「EPICRON N−770」
・フェノールノボラック:DIC(株)製の「TD−2090」(ノボラック型フェノール樹脂)
(触媒)
・イミダゾール:四国化成工業(株)製の「2E4MZ」(2−エチル−4−イミダゾール)
・金属石鹸:DIC(株)製のオクタン酸亜鉛(Zn−OCTOATE)
表4に記載の配合割合となるように、各成分をトルエンに添加した後、30〜35℃で60分間攪拌させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
・PPE:SABICイノベーティブプラスチックス社製の「SA90」(数平均分子量1500、水酸基:1.9個)
・シアネートエステル化合物(b):2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン(ロンザジャパン社製の「BADCy」)
・ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「EPICRON HP7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、1分子中の平均官能基2.3個)
・フェノールノボラック型エポキシ樹脂:DIC(株)製の「EPICRON N−770」
・フェノールノボラック:DIC(株)製の「TD−2090」(ノボラック型フェノール樹脂)
(触媒)
・イミダゾール:四国化成工業(株)製の「2E4MZ」(2−エチル−4−イミダゾール)
・金属石鹸:DIC(株)製のオクタン酸亜鉛(Zn−OCTOATE)
表4に記載の配合割合となるように、各成分をトルエンに添加した後、30〜35℃で60分間攪拌させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
<実施例9,10、比較例18,19>
ワニス状の樹脂組成物を調製するための各材料として、実施例7と同じものを用いた。表2および表6に記載の配合割合となるように、予備反応PPE(a)の溶液を30〜35℃になるまで加熱し、そこに、シアネートエステル化合物(b)、DCPD型エポキシ樹脂、PPEおよび金属石鹸を添加した。その後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
ワニス状の樹脂組成物を調製するための各材料として、実施例7と同じものを用いた。表2および表6に記載の配合割合となるように、予備反応PPE(a)の溶液を30〜35℃になるまで加熱し、そこに、シアネートエステル化合物(b)、DCPD型エポキシ樹脂、PPEおよび金属石鹸を添加した。その後、30分間攪拌することによって、完全に溶解させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
<比較例20>
表3および表6に記載の配合割合となるように、表3に示す各成分をトルエンに添加した後、30〜35℃で60分間攪拌させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
表3および表6に記載の配合割合となるように、表3に示す各成分をトルエンに添加した後、30〜35℃で60分間攪拌させた。そして、さらに、シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を添加して、ビーズミルで分散させることによって、ワニス状の樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
(プリプレグ)
基材として日東紡績(株)製のもの(番手:WEA116ES136、厚み:0.1μm)を用いた。この基材に得られた樹脂ワニスを室温で含浸させた後、150〜160℃で加熱乾燥した。これにより、樹脂ワニス中の溶媒を除去し、樹脂組成物を半硬化させることによって、プリプレグを製造した。プリプレグのレジンコンテント(樹脂量)は57質量%であった。
基材として日東紡績(株)製のもの(番手:WEA116ES136、厚み:0.1μm)を用いた。この基材に得られた樹脂ワニスを室温で含浸させた後、150〜160℃で加熱乾燥した。これにより、樹脂ワニス中の溶媒を除去し、樹脂組成物を半硬化させることによって、プリプレグを製造した。プリプレグのレジンコンテント(樹脂量)は57質量%であった。
(積層板)
前記プリプレグ(300mm×450mm)を6枚重ね、さらにこの両側に金属箔として銅箔(三井金属鉱業(株)製、厚み:35μm)を重ねて、200℃、3MPaの条件で90分間、加熱加圧成形することによって、評価用の積層板(厚み:0.8mm)を製造した。
前記プリプレグ(300mm×450mm)を6枚重ね、さらにこの両側に金属箔として銅箔(三井金属鉱業(株)製、厚み:35μm)を重ねて、200℃、3MPaの条件で90分間、加熱加圧成形することによって、評価用の積層板(厚み:0.8mm)を製造した。
(ガラス転移温度)
評価用の積層板のガラス転移温度を、DSC測定方法により、IPC−TM−650−2.4.25に基づいて、昇温スピード20℃/分の条件で測定した。
評価用の積層板のガラス転移温度を、DSC測定方法により、IPC−TM−650−2.4.25に基づいて、昇温スピード20℃/分の条件で測定した。
(誘電正接)
1GHzにおける評価用の積層板の誘電正接を、IPC−TM−650−2.5.5.9に準拠の方法で測定した。具体的には、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製のRFインピーダンスアナライザHP4291B)を用い、1GHzにおける評価用の積層板の誘電正接を測定した。
1GHzにおける評価用の積層板の誘電正接を、IPC−TM−650−2.5.5.9に準拠の方法で測定した。具体的には、インピーダンスアナライザ(アジレント・テクノロジー(株)製のRFインピーダンスアナライザHP4291B)を用い、1GHzにおける評価用の積層板の誘電正接を測定した。
(ドリル摩耗率)
厚さ0.8mmの積層板を4枚重ね合わせ、エントリーボードに0.15mmのアルミニウム板、バックアップボードに0.15mmのベーク板を用い、φ0.3mmのドリルにて5000hit穴あけ加工して、貫通孔を形成した。穴あけ加工後のドリル摩耗率を測定した。ドリルとしては、ユニオンツール(株)製「NHU L020W」を用いた。穴あけ時のドリルの回転数は160000rpm/min、ドリルの送り速度は3.2m/minとした。
厚さ0.8mmの積層板を4枚重ね合わせ、エントリーボードに0.15mmのアルミニウム板、バックアップボードに0.15mmのベーク板を用い、φ0.3mmのドリルにて5000hit穴あけ加工して、貫通孔を形成した。穴あけ加工後のドリル摩耗率を測定した。ドリルとしては、ユニオンツール(株)製「NHU L020W」を用いた。穴あけ時のドリルの回転数は160000rpm/min、ドリルの送り速度は3.2m/minとした。
(ワニスゲルタイム)
ワニスゲルタイムは、得られた樹脂組成物(樹脂ワニス)2.5mlが200℃のキュアープレート上でゲル化するまでの時間を測定した値である。
ワニスゲルタイムは、得られた樹脂組成物(樹脂ワニス)2.5mlが200℃のキュアープレート上でゲル化するまでの時間を測定した値である。
(シリカ粒子の吸着水分量)
シリカ粒子の吸着水分量は、カールフィッシャー法(JIS K0113:2005、電量滴定方法)により測定した。
シリカ粒子の吸着水分量は、カールフィッシャー法(JIS K0113:2005、電量滴定方法)により測定した。
(樹脂組成物中に持込まれる水分量)
樹脂組成物中に持込まれる水分量は、以下の計算式によって算出した。
樹脂組成物中に持込まれる水分量=(シリカ中に含まれる水分量(カールフィッシャー測定値%)×シリカ添加量/樹脂組成物の総量)×100
樹脂組成物中に持込まれる水分量は、以下の計算式によって算出した。
樹脂組成物中に持込まれる水分量=(シリカ中に含まれる水分量(カールフィッシャー測定値%)×シリカ添加量/樹脂組成物の総量)×100
実施例1〜10では、シリカ粒子に表面処理が施された疎水性シリカ粒子を用いたので、ガラス転移温度は高く、誘電正接は低かった。さらに、実施例1(吸湿処理無)と実施例2(吸湿処理済)、実施例5(吸湿処理無)と実施例6(吸湿処理済)をそれぞれ比較すると、ガラス転移温度および誘電正接はそれぞれ同等であった。すなわち、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れることが確認された。さらに、樹脂組成物は、疎水性シリカ粒子およびモリブデン化合物粒子を含有するので、ドリル摩耗率は低かった。すなわちドリル加工性および成形性が良好であることが確認された。
これに対して、比較例1〜17では、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物との予備反応物(a)、シアネートエステル化合物(b)、疎水性シリカ粒子(c)およびモリブデン化合物粒子(d)を配合して得られた樹脂組成物ではないため、新品のシリカ粒子(乾燥状態のシリカ粒子)を用いた比較例1,4,16を除き、ガラス転移温度および誘電特性が優れ、かつ良好なドリル加工性および成形性を実現できなかった。
比較例1(吸湿処理無)と比較例2(吸湿処理済)、比較例4(吸湿処理無)と比較例5(吸湿処理済)、比較例16(吸湿処理無)と比較例17(吸湿処理済)をそれぞれ比較すると、吸湿処理を施していないシリカ粒子を用いた場合に対して、吸湿処理を施したシリカ粒子を用いた場合は、ガラス転移温度が低下し、誘電正接が上昇し、ワニスゲルタイムが大幅に短くなった。すなわち、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れないことが確認された。樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量を少なくしても同様であった(比較例3)。
比較例6〜10では、モリブデン化合物粒子を配合していないため、ドリル摩耗率が高かった。すなわち、ドリル加工性および成形性が良好でないことが確認された。さらに、比較例6(吸湿処理無)と比較例7(吸湿処理済)、比較例8(吸湿処理無)と比較例9(吸湿処理済)をそれぞれ比較すると、ワニスゲルタイムは実施例と同等であった。この結果と、比較例4,5の結果から、モリブデン化合物粒子が、ワニスゲルタイムが短くなることを促進させると推測される。
比較例12,13では、予備反応PPE(a)を用いなかったので、ガラス転移温度が低かった。比較例12(吸湿処理無)と比較例13(吸湿処理済)とを比較すると、ワニスゲルタイムは同等であり、実施例よりも長かった。
比較例14,15では、ベース樹脂にポリフェニレンエーテルを含有していないので、ガラス転移温度が低く、誘電正接が高かった。一方で、比較例14(吸湿処理無)と比較例15(吸湿処理済)とを比較すると、ワニスゲルタイムは同等であり、実施例より長かった。この結果と、比較例12,13の結果から、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物との予備反応物(a)、シアネートエステル化合物(b)およびモリブデン化合物粒子(d)を含む樹脂組成物に吸湿したシリカ粒子を用いた場合には、ワニスゲルタイムが異常に短くなることが確認された。
実施例9,10では、シリカ粒子に表面処理が施された疎水性シリカ粒子を用いたので、ガラス転移温度が高く、誘電正接は低かった。さらに、実施例9(吸湿処理無)と実施例10(吸湿処理済)を比較すると、ガラス転移温度および誘電正接は同等であった。すなわち、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れることが確認された。
これに対して比較例18〜20では、ポリフェニレンエーテルとエポキシ化合物との予備反応物(a)、シアネートエステル化合物(b)、疎水性シリカ粒子(c)およびデン化合物粒子(d)を配合して得られた樹脂組成物ではないため、優れたガラス転移温度および誘電特性を実現できなかった。
比較例18(吸湿処理無)では、比較例1,4,16と異なり、新品のシリカ粒子を用いていないため、すなわちシリカ粒子の吸着水分量が高いシリカ粒子を用いているため、ワニスゲルタイムが短かった。
比較例18(吸湿処理無)と比較例19(吸湿処理済)を比較すると、吸湿処理を施していないシリカ粒子を用いた場合に対して、吸湿処理を施したシリカ粒子を用いた場合は、ガラス転移温度が低下し、誘電正接が上昇し、ワニスゲルタイムが大幅に短くなった。すなわち、ガラス転移温度および誘電特性が安定して優れないことが確認された。
比較例20(吸湿処理無)では、予備反応PPEを用いなかったので、ガラス転移温度が低かった。
Claims (8)
- (a)ポリフェニレンエーテルとエポキシ基を持つエポキシ化合物とを反応させることにより得られた予備反応物、及び
(b)シアネートエステル化合物を含む樹脂成分と、
(c)比表面積が0.1m2/g以上15m2/g以下の破砕シリカに、β−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びジメチルジクロロシランからなる群より選ばれた少なくとも1種のシランカップリング剤で表面処理が施された疎水性シリカ粒子、及び
(d)モリブデン化合物以外の材料からなる担体の表面に前記モリブデン化合物が担持又は被覆されたモリブデン化合物粒子を含む無機充填材と、を配合して得られ、
前記モリブデン化合物粒子(d)の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である
プリント配線板用樹脂組成物。 - 前記モリブデン化合物が、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム及びモリブデン酸マグネシウムからなる群から選ばれた1種以上のものである
請求項1に記載のプリント配線板用樹脂組成物。 - 前記モリブデン化合物以外の材料がタルクである
請求項1または2に記載のプリント配線板用樹脂組成物。 - 前記疎水性シリカ粒子の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。 - 前記疎水性シリカ粒子の含有量が、前記樹脂成分100質量部に対して10質量部以上150質量部以下である
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプリント配線板用樹脂組成物を基材に含浸し半硬化させたプリプレグ。
- 請求項6に記載のプリプレグに金属箔を重ね、加熱加圧成形して一体化した金属張積層板。
- 請求項7に記載の金属張積層板の前記金属箔の一部を除去して導体パターンが形成されたプリント配線板。
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