JPWO2018123126A1 - 膜形成用液組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
〔混合液の調製〕
先ず、ケイ素アルコキシド(A)としてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランとエポキシ基含有シラン(B)と沸点が120℃未満の炭素数1〜4の範囲にあるアルコールと水とを混合して混合液を調製する。このケイ素アルコキシド(A)としては、具体的には、テトラメトキシシラン、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、硬度の高い膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
上記調製された混合液と有機酸、無機酸又はチタン化合物からなる触媒とを混合する。このとき液温を好ましくは30〜80℃の温度に保持して好ましくは1〜24時間撹拌する。これにより、ケイ素アルコキシド(A)とエポキシ基含有シラン(B)の第1加水分解物(C)が調製される。第1加水分解物は、ケイ素アルコキシドを2〜50質量%、エポキシ基含有シランを0.1〜30質量%、炭素数1〜4の範囲にあるアルコールを20〜98質量%、水を0.1〜40質量%、有機酸、無機酸又はチタン化合物を触媒として0.01〜5質量%の割合で混合してケイ素アルコキシド及びエポキシ基含有シランの加水分解反応を進行させることで得られる。
上記調製された第1加水分解物(C)を含む液に、フッ素含有シラン(D)と上述した炭素数1〜4のアルコール又は炭素数1〜4のアルコールと前記アルコール以外の有機溶媒との混合溶媒とを混合して、このフッ素含有シラン(D)を加水分解することにより第2加水分解物のシリカゾルゲル(E)を含む膜形成用液組成物を製造する。フッ素含有シラン(D)は第2加水分解物のシリカゾルゲル(E)100質量%に対して0.6〜12質量%含まれる。好ましい含有割合は1.0〜11質量%である。フッ素含有シラン(D)が下限値の0.6質量%未満では、形成した膜に撥水撥油性の防汚性及び離型性が生じにくく、上限値の12質量%を超えると、成膜性に劣り、防汚性及び離型性の機能を発現しにくい。
本実施の形態の膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、このシリカゾルゲルを100質量%とするときに、シリカゾルゲルが上記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基を0.5〜10質量%と炭素数2〜7のアルキル基を0.5〜20質量%含み、上記溶媒が、水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1〜4のアルコールと上記アルコール以外の有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする。
本実施の形態の防汚性膜及び離型性付与膜は、例えば、基材であるステンレス鋼(SUS)、鉄、アルミニウム等の金属板上、窓ガラス、鏡等のガラス上、タイル上、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック上、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム上に、上記液組成物を、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法等により塗布した後に、室温乾燥もしくは乾燥機等により室温〜130℃の温度で乾燥させることにより、形成される。
本発明の実施例1〜7及び比較例1〜4に用いられる7種類のシラン化合物の第1加水分解物を調製した。表1に7種類のシラン化合物の第1加水分解物を調製するための原料の種類と含有割合(質量%)を示す。なお、表1中、isoPGは2−イソプロポキシエタノールであり、EtOHはエタノールであり、DAAはジアセトンアルコールであり、NMPはN−メチルピロリドンであり、IPAは2−プロパノールであり、NPAは1−プロパノールであり、混合溶媒はエタノール85質量%と2−プロパノール5質量%と1−プロパノール10質量%の混合物である。第1加水分解物I〜Vは、ケイ素アルコキシド(A)とエポキシ基含有シラン(B)の合計質量に対するエポキシ基含有シラン(B)の含有割合が1〜40質量%の範囲にあって、第2の観点のB/(A+B)の要件を満たす。その一方、第1加水分解物VI及びVIIは上記要件を満たさない。
ケイ素アルコキシド(A)としてのテトラメトキシシラン(TMOS)の3〜5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)99.0gと、エポキシ基含有シラン(B)としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)1.0gにエタノール(EtOH)(沸点78.3℃)196.1gを有機溶媒として添加し、更にイオン交換水36.0gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒として濃度35質量%の塩酸1.1gを添加し、40℃で2時間撹拌した。これにより、上記シラン化合物の第1加水分解物Iを調製した。
第1加水分解物II〜VIIは、加水分解物Iと同様の手順で、表1に示す条件で調製した。第1加水分解物IIは、触媒として濃度60質量%の硝酸を用い、加水分解の重合条件である撹拌は40℃で2時間行った。第1加水分解物IIIは、触媒としてテトライソプロポキシチタンを用い、加水分解の重合条件である撹拌は40℃で2時間行った。第1加水分解物IVは、エポキシ基含有シラン(B)として3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBE−403)、触媒として酢酸を用い、加水分解の重合条件である撹拌は25℃で24時間行った。
表2に示すように、上記シラン化合物の第1加水分解物Iを生成した液10gに、式(22)で表わされるフッ素含有シラン(D)0.01gと、炭素数1〜4のアルコールとしての混合溶媒(エタノール85質量%と2−プロパノール5質量%と1−プロパノール10質量%の混合溶媒)74.6gと、アルコール以外の有機溶媒の第1溶媒としての2−イソプロポキシエタノール(isoPG)(沸点142℃)11.2gと、第2溶媒としてのジアセトンアルコール(DAA)(沸点169℃)1.6gを添加し、25℃で10分間撹拌した。これにより上記フッ素含有シラン(D)を加水分解し、第2加水分解物(シリカゾルゲル)(E)を含む液組成物を得た。この第2加水分解物(シリカゾルゲル)(E)を含む液組成物の各成分の割合を表3に示す。
表2に示す、フッ素含有シラン(D)、炭素数1〜4のアルコール、アルコール以外の有機溶媒(第1溶媒、第2溶媒)を用い、実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜4の液組成物を得た。実施例1〜7及び比較例1〜4の第2加水分解物(シリカゾルゲル)(E)を含む液組成物の各成分の割合を表3に示す。
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた11種類の液組成物を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.3)を用いて、厚さ2mm、たて150mm、よこ75mmのSUS基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが0.5〜1μmとなるように塗布し、11種類の塗膜を形成した。ここで、先ずバーコーターによる塗布時の成膜性を評価した。続いてすべての塗膜を室温にて、3時間乾燥して11種類の防汚性と離型性が付与された膜を得た。これらの膜について、膜表面の撥水性、撥油性、n−ヘキサデカンの転落性、膜の耐水性、膜の強度、膜の基材への密着性及び膜付き基材からの離型性を評価した。これらの結果を表4に示す。なお、表4では、n−ヘキサデカンを単に「HD」と表記している。
成膜性は、膜を目視にて評価した。膜全体に弾き、筋等の発生がなく、液組成物を均一に塗布できたものは「良好」とし、膜の一部に僅かに弾き、筋等が生じたものは「可」とし、膜全体に弾き、筋等が生じたものは「不良」とした。
膜を目視して、膜全体にわたって虹色の干渉縞の発生の有無を調べ、干渉縞が無いものは「無し」、有るものは「有り」とした。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の撥水性を評価した。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着したn−ヘキサデカンの接触角を測定した。静止状態でn−ヘキサデカンが膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値をn−ヘキサデカンの接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。膜の表面状態が凸凹になって荒れていると通常よりも高い値を示すため、接触角が高過ぎる場合には、成膜性が不良であるとの判断基準となる。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに25℃±1℃のn−ヘキサデカンを準備し、水平に置いたSUS基材上にシリンジからn−ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下し、基材を2度/分の速度で傾斜させ、n−ヘキサデカンの液滴が移動開始するときの基材の傾けた角度を測定した。(4)の接触角が低くてもこの転落角度が小さい方が防汚性が高いことを意味する。
評価する防汚性膜をSUS基材とともに5〜15℃の水道水が500mL/分の速度で流れている水中に、水平状態で24時間置き、室温にて乾燥した後、水とn−ヘキサデカンの接触角を測定し、浸漬前の接触角と15度未満の差である場合を「良好」とし、15度以上異なる場合は、「不良」とし、膜の耐水性を評価した。
水を含ませたスポンジで、膜を20回擦り、膜を目視にて評価した。膜に全く剥離が生じていない場合を「良好」とし、膜の一部に僅かに剥離が生じている場合を「可」とし、膜の大部分に剥離が生じている場合を「不良」とした。
75mm×150mm×厚さ2mmのSUS304基材上に塗膜を形成した。塗膜の上に、セロファンテープを貼り付けた後、テープを剥がしたときに、塗膜がテープ側に全く付かなかった場合を密着性が「良好」であるとし、塗膜の大部分がテープ側に貼り付き、SUS基材界面で塗膜が剥がれてしまった場合を密着性が「不良」であるとした。
本実施の形態の膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、このシリカゾルゲルを100質量%とするときに、シリカゾルゲルが上記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基を0.5〜10質量%と炭素数2〜7のアルキレン基を0.5〜20質量%含み、上記溶媒が、水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1〜4のアルコールと上記アルコール以外の有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする。
Claims (2)
- シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、
前記シリカゾルゲルを100質量%とするときに、前記シリカゾルゲルが下記の一般式(1)で示されるペルフルオロアミン構造のフッ素含有官能基成分(F)を0.5〜10質量%と炭素数2〜7のアルキル基成分(G)を0.5〜20質量%含み、
前記溶媒が、水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1〜4のアルコールと前記アルコール以外の有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする膜形成用液組成物。
- (a) ケイ素アルコキシド(A)としてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランとエポキシ基含有シラン(B)と沸点が120℃未満の第1溶媒と水とを混合して混合液を調製する工程と、
(b) 前記混合液と有機酸、無機酸又はチタン化合物からなる触媒とを混合して前記ケイ素アルコキシド(A)と前記エポキシ基含有シラン(B)とを加水分解することにより第1加水分解物(C)を含む液を調製する工程と、
(c) 前記第1加水分解物(C)を含む液に、下記の一般式(2)で示されるフッ素含有シラン(D)と炭素数1〜4のアルコール又は炭素数1〜4のアルコールと前記アルコール以外の有機溶媒との混合溶媒とを混合して、前記フッ素含有シラン(D)を加水分解することにより第2加水分解物のシリカゾルゲル(E)を含む膜形成用液組成物を製造する工程と
を含む方法であって、
前記工程(a)において前記エポキシ基含有シラン(B)を前記ケイ素アルコキシド(A)と前記エポキシ基含有シラン(B)の合計質量に対して1〜40質量%含むように混合し、
前記工程(c)において前記フッ素含有シラン(D)を前記シリカゾルゲル(E)に対して0.6〜12質量%の割合になるように混合する
ことを特徴とする膜形成用液組成物の製造方法。
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