JP6584124B2 - 被膜形成用組成物及びその製造方法、並びに被膜 - Google Patents

被膜形成用組成物及びその製造方法、並びに被膜 Download PDF

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Description

本発明は、被膜形成用組成物及びその製造方法、並びに被膜に関するものである。
透明性を有する材料(例えば、ガラス、プラスチック等)は、光学特性、軽量性や加工性に優れるため、液晶関連部材等の光学関連市場やフィルム市場において多くの需要が存在する。特に、液晶ディスプレイ等の表示画面では、主要材料として用いられている。
一方、液晶ディスプレイ等の表示画面には、反射防止効果や防汚効果等の各種機能を有することが望まれている。そのため、ディスプレイ等に用いる材料として、各種機能を有した膜を組み合わせて基材上に積層したものが知られている。
ところで、従来から、各種基材表面に汚れが付着し難く、かつ水洗にて簡単に汚れを落とせるようにするために、表面に親水撥油性を付与する技術、材料が多く提案されている。
例えば、特許文献1には、フッ素系化合物とシランカップリング剤とを含み、撥水・撥油効果や親水・撥油効果に優れ、高い防汚効果を示す添加剤やコーティング剤等が開示されている。
特許第3342170号公報
ところで、従来から、フルオロアルキル基含有のフッ素系化合物は、撥油性等の付与剤として様々な分野で使用され、とくに炭素数が8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を含有するものが利用されてきた。
ところが、近年、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)やペルフルオロクタン酸(PFOA)は、安定な構造をしているために環境中で分解されにくく(難分解性)、毒性および環境・生体蓄積性が高いことが明らかとなった。そのため、炭素数が8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を有する化合物は、その使用が制限されつつあるという課題があった。したがって、市場では、PFOSやPFOA構造を有しない、炭素数が6以下で可能な限り短鎖長のペルフルオロアルキル基を有する構造の材料が望まれているのが実情であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となる炭素数8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を含有することなく、高い親水性及び撥油性と、優れた防汚性及び透明性とを有する被膜を形成することが可能な被膜形成用組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記被膜形成用組成物を簡便かつ安全に調製することが可能な被膜形成用組成物の製造方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、高い親水性及び撥油性と、優れた防汚性及び透明性とを有する被膜を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、
ケイ素アルコキシドの加水分解物と、
有機溶媒と、を含み、
前記含窒素フッ素系化合物、前記酸化物微粒子及び前記ケイ素アルコキシドの加水分解物中に含まれる全固形成分中における、
前記含窒素フッ素系化合物の組成比が6〜40質量%であり、
前記酸化物微粒子の組成比が、40〜90質量%であり、
前記ケイ素アルコキシドの加水分解物の組成比が、4〜40質量%である、被膜形成用組成物。
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上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
上記式(3)及び(4)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基又はCF基である。
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基である。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
[2] 前記ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量が、1×10以上2×10以下である、前項1に記載の被膜形成用組成物。
[3] 前記酸化物微粒子が、シリカ、ITO、及び、In、Sn、Zn、Ti又はWの酸化物から選ばれた群のうち、1種又は2種以上の混合物である、前項1又は2に記載の被膜形成用組成物。
[4] 前項1乃至3のいずれか一項に記載の被膜形成用組成物の製造方法であって、
前記ケイ素アルコキシドから当該ケイ素アルコキシドの加水分解物を生成した後、前記有機溶媒に、前記含窒素フッ素系化合物と、前記酸化物微粒子と、生成した前記ケイ素アルコキシドの加水分解物と、を添加して混合する、被膜形成用組成物の製造方法。
[5] 前項1乃至3のいずれか一項に記載の被膜形成用組成物の製造方法であって、
前記有機溶媒に、前記ケイ素アルコキシドと、前記含窒素フッ素系化合物と、前記酸化物微粒子と、を同時に添加して混合する、被膜形成用組成物の製造方法。
[6] 前項1乃至3のいずれか一項に記載の被膜形成用組成物を用いて形成された、被膜。
本発明の被膜形成用組成物は、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となる炭素数8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を含有することなく、高い親水性及び撥油性と、優れた防汚性とを有する被膜を形成することが可能である。
また、本発明の被膜形成用組成物を用いて形成された被膜は、ヘイズ値が低く、優れた透明性有する。
本発明の被膜形成用組成物の製造方法は、上記被膜形成用組成物を簡便かつ安全に調製することが可能である。
本発明の被膜は、高い親水性及び撥油性と、優れた防汚性とを有する。
以下、本発明を適用した一実施形態である被膜形成用組成物について、その製造方法及びこれを用いて形成した被膜ともに詳細に説明する。
<被膜形成用組成物>
先ず、本実施形態の被膜形成用組成物(以下、単に、「組成物」ということもある)の構成について説明する。
本実施形態の組成物は、(A)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(以下、単に、「含窒素フッ素系化合物」又は「成分(A)」、あるいは「親水撥油剤」ということもある)と、(B)平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子(以下、「成分(B)」又は「酸化物ナノ粒子」ということもある)と、(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(以下、「成分(C)」ということもある)と、(D)有機溶媒(以下、「成分(D)」ということもある)と、を含んで概略構成されている。
(A)含窒素フッ素系化合物
本実施形態の組成物に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物としては、分子中に撥油性付与基と親水性付与基とを含む親水撥油剤であれば、特に限定されるものではない。このような含窒素フッ素系化合物としては、具体的には、下記一般式(1)〜(4)で表すことができる。
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ここで、上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。
Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、上記式(3)及び(4)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基又はCF基である。また、Zが窒素原子又は炭素原子の場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基であり、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性付与基である。
また、本実施形態の組成物は、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上を含む混合物を、(A)含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)として用いてもよい。
以下、(A)含窒素フッ素系化合物について、詳細に説明する。
「直鎖状の含窒素フッ素系化合物」
上記式(1)又は上記式(2)に示す、直鎖状(又は分岐状)の含窒素フッ素系化合物では、RfとRfからなる含窒素ペルフルオロアルキル基およびRfからなる含窒素ペルフルオロアルキレン基が、撥油性付与基を構成する。
また、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性付与基であるRf〜Rf中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
上記式(1)又は上記式(2)中の上記撥油性付与基の構造の具体例としては、例えば、下記式(5)〜(22)の構造が挙げられる。
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ここで、上記式(2)中、Rは、分子鎖中において撥油性付与基と親水性付与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、直鎖状又は分岐状の、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
具体的には、例えば、連結基Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であってもよいし、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。
また、連結基Rは、分子鎖中に、二元共重合体又は三元共重合体以上のポリマーを有していてもよい。
ここで、上記式(2)において、連結基Rの分子鎖中に三元共重合体を有する場合の一例について、下記一般式(23)に示す。
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上記一般式(23)中、R10は、水素原子又はメチル基である。また、o,p,qは、それぞれ独立した1以上の整数である。X、Xは、互いに異なる親水性付与基である。さらに、R11は、共重合体の主鎖と撥油性付与基とを繋ぐ2価の有機基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含む。更にまた、共重合体の主鎖と親水性付与基とを繋ぐ2価の有機基である、R12、R13があってもよいし、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
なお、連結基Rは、親水撥油剤に付与したい特性に応じて、適宜選択して導入することが好ましい。具体的には、例えば、溶媒への溶解性を調整したい場合、表面被覆材と基材との密着性を改善して耐久性を向上させたい場合、親水撥油剤と樹脂成分等との相溶性を向上させたい場合等が挙げられる。その方法としては、分子間相互作用に影響を及ぼす極性基の有無や種類を調整する、直鎖状又は分岐構造とした炭化水素基の鎖長を調整する、基材や樹脂成分に含まれる化学構造の一部と類似の構造を導入する、などがある。
また、上記式(1)又は上記式(2)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性付与基である。
以下、親水性付与基Xを場合分けして、親水撥油剤の構造を説明する。
[アニオン型]
親水性付与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO」、「−SO」、「−OSO」、「−OP(OH)O」、「−OPO 」又は「=OPO」(Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R;R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
また、第4級アンモニウム塩(R)としては、R〜Rが水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。より具体的には、Rが全て同じ化合物としては、例えば、(CH、(C、(C、(C、(C11、(C13、(C15、(C17、(C19、(C1021等が挙げられる。また、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが(C)、(C13)、(C17)、(C19)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。さらに、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C17)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。更にまた、Rがメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C)、(C17)等の化合物が挙げられる。
ところで、水と接触させて使用するような用途においては、水に対する耐久性や親水撥油効果の持続性を有することが望まれる。上記観点から、本実施形態の親水撥油剤は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、本実施形態の親水撥油剤は、親水性付与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記Mが、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
ここで、親水性付与基Xがアニオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される含窒素フッ素系化合物の構造の具体例(但し、対イオンであるMの構造を除く)としては、例えば、下記式(24)〜(80)の構造が挙げられる。
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[カチオン型]
親水性付与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N・Cl」、「−N・Br」、「−N・I」、「−N・CHSO 」、「−N・NO 」、「(−NCO 2−」又は「(−NSO 2−」(R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
ここで、親水性付与基Xがカチオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(81)〜(109)の構造が挙げられる。
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[両性型]
親水性付与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N(CHCO 」、スルホベタイン型の「−N(CHSO 」又はアミンオキシド型の「−N」(nは1〜5の整数、R、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
ここで、親水性付与基Xが両性型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(110)〜(121)の構造が挙げられる。
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なお、本発明に用いる親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した含窒素フッ素系化合物の構造の具体例においては、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性付与基として、式(1)及び式(2)中に示すRf及びRfが対称である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、非対称であってもよい。
次に、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物の製造方法について説明する。
上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物の製造方法は、下記式(122)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(1)及び上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。
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ここで、上記式(122)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基、Rfは、炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。
Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、Yは、CO又はSOである。
さらに、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
なお、当該含窒素フッ素系化合物の製造方法は、上記式(1)及び上記式(2)中に示すXの種類により異なる製造方法となる。以下に、場合分けして説明する。
[アニオン型の場合]
先ず、上記式(1)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
上記式(122)に示す原料のうち、YがCOの場合(カルボン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3)へ、YがSOの場合(スルホン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,R,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3、R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)へ、それぞれ滴下して中和反応させた後に乾固し、目的物が可溶かつ副生するM(A)、M(A)またはM(A)が不溶の溶媒を用いて乾固して得た個体から目的物を抽出し、さらにこの抽出溶媒を乾固することにより、目的物を得ることができる。必要に応じて、この塩を硫酸等の酸を用いてカルボン酸またはスルホン酸に変換し、蒸留した後に再度M(OH)で所望の塩にすることで、高純度化することも可能である。
次に、上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
具体的には、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、アミド結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、アミノアルキルカルボン酸やアミノフェニルスルホン酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、アミド結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、エステル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、ヒドロキシフェニル有機酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、エステル結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、エーテル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で還元して、含窒素ペルフルオロアルキル基を持つアルコールを生成する。次いで、t−ブトキシカリウム等でカリウムアルコラートにしてから、ハロゲン化有機酸の金属塩と反応させることにより、エーテル結合を持つカルボン酸のアルカリ金属塩が得られる。
[カチオン型の場合]
具体的には、例えば、上記式(122)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、上記式(122)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとをエーテル結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
[両性型の場合]
具体的には、例えば、カルボキシベタインタイプの場合、先ず、上記式(122)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて、または、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとエーテル結合させて、末端第3級アミンにした後、モノクロル酢酸ナトリウムと反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、スルホベタインタイプの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、1,3−プロパンスルトン等に代表される環状スルホン酸エステル化合物と反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、アミンオキシドタイプの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、過酸化水素と反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
「環状の含窒素フッ素系化合物」
上記式(3)又は上記式(4)に示す、環状の含窒素フッ素系化合物では、Rf、RfおよびRfからなる含窒素ペルフルオロアルキレン基、さらにはZが、撥油性付与基を構成する。
また、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性付与基であるRf〜Rf及びZ中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
上記式(3)又は上記式(4)中の上記撥油性付与基の構造の具体例としては、例えば、下記式(123)〜(141)の構造が挙げられる。
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ここで、上記式(4)中、Rは、分子鎖中において撥油性付与基と親水性付与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、直鎖状又は分岐状の、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
具体的には、例えば、連結基Rは、炭素数1〜20の炭化水素基であってもよいし、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。
また、連結基Rは、分子鎖中に、二元共重合体又は三元共重合体以上のポリマーを有していてもよい。
ここで、上記式(4)において、連結基Rの分子鎖中に三元共重合体を有する場合の一例について、下記式(142)に示す。
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上記式(142)中、R10は、水素原子又はメチル基である。また、o,p,qは、それぞれ独立した1以上の整数である。X、Xは、互いに異なる親水性付与基である。さらに、R11は、共重合体の主鎖と撥油性付与基とを繋ぐ2価の有機基であり、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含む。更にまた、共重合体の主鎖と親水性付与基とを繋ぐ2価の有機基である、R12、R13があってもよいし、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
なお、連結基Rは、親水撥油剤に付与したい特性に応じて、適宜選択して導入することが好ましい。具体的には、例えば、溶媒への溶解性を調整したい場合、表面被覆材と基材との密着性を改善して耐久性を向上させたい場合、親水撥油剤と樹脂成分等との相溶性を向上させたい場合等が挙げられる。その方法としては、分子間相互作用に影響を及ぼす極性基の有無や種類を調整する、直鎖状又は分岐構造とした炭化水素基の鎖長を調整する、基材や樹脂成分に含まれる化学構造の一部と類似の構造を導入する、などがある。
また、上記式(3)又は上記式(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性付与基である。
以下、親水性付与基Xを場合分けして、親水撥油剤の構造を説明する。
[アニオン型]
親水性付与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO」、「−SO」、「−OSO」、「−OP(OH)O」、「−OPO 」又は「=OPO」(Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R;R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
また、第4級アンモニウム塩(R)としては、R〜Rが水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。より具体的には、Rが全て同じ化合物としては、例えば、(CH、(C、(C、(C、(C11、(C13、(C15、(C17、(C19、(C1021等が挙げられる。また、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが(C)、(C13)、(C17)、(C19)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。さらに、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C17)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。更にまた、Rがメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C)、(C17)等の化合物が挙げられる。
ところで、水と接触させて使用するような用途においては、水に対する耐久性や親水撥油効果の持続性を有することが望まれる。上記観点から、本実施形態の親水撥油剤は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、本実施形態の親水撥油剤は、親水性付与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記Mが、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
ここで、親水性付与基Xがアニオン型である場合、上記式(3)又は上記式(4)で示される含窒素フッ素系化合物の構造の具体例(但し、対イオンであるMの構造を除く)としては、例えば、下記式(143)〜(196)の構造が挙げられる。
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[カチオン型]
親水性付与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N・Cl」、「−N・Br」、「−N・I」、「−N・CHSO 」、「−N・NO 」、「(−NCO 2−」又は「(−NSO 2−」(R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。
ここで、親水性付与基Xがカチオン型である場合、上記式(3)又は上記式(4)で示される含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(197)〜(219)の構造が挙げられる。
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[両性型]
親水性付与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N(CHCO 」、スルホベタイン型の「−N(CHSO 」又はアミンオキシド型の「−N」(nは1〜5の整数、R、Rは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)を有する。
ここで、親水性付与基Xが両性型である場合、上記式(3)又は上記式(4)で示される含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(220)〜(242)の構造が挙げられる。
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なお、本発明に用いる親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した含窒素フッ素系化合物の構造の具体例においては、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性付与基として、式(3)及び式(4)中に示すRf及びRfがZを挟んで対称である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、非対称であってもよい。
次に、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物の製造方法について説明する。
上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物の製造方法は、下記式(243)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。
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ここで、上記式(243)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であって、直鎖状又は分岐状であってもよい。
Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分枝状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
Zは、酸素原子、窒素原子、CF基又はCF基である。また、Zが窒素原子又は炭素原子の場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
また、Yは、CO又はSOである。
さらに、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
なお、当該含窒素フッ素系化合物の製造方法は、上記式(3)及び上記式(4)中に示すXの種類により異なる製造方法となる。以下に、場合分けして説明する。
[アニオン型の場合]
先ず、上記式(3)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
上記式(243)に示す原料のうち、YがCOの場合(カルボン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3)へ、YがSOの場合(スルホン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,R,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3、R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)へ、それぞれ滴下して中和反応させた後に乾固し、目的物が可溶かつ副生するM(A)、M(A)またはM(A)が不溶の溶媒を用いて乾固して得た個体から目的物を抽出し、さらにこの抽出溶媒を乾固することにより、目的物を得ることができる。必要に応じて、この塩を硫酸等の酸を用いてカルボン酸またはスルホン酸に変換し、蒸留した後に再度M(OH)で所望の塩にすることで、高純度化することも可能である。
次に、上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
具体的には、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、アミド結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、アミノアルキルカルボン酸やアミノフェニルスルホン酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、アミド結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、エステル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、ヒドロキシフェニル有機酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、エステル結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性付与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性付与基との間に、エーテル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で還元して、含窒素ペルフルオロアルキル基を持つアルコールを生成する。次いで、t−ブトキシカリウム等でカリウムアルコラートにしてから、ハロゲン化有機酸の金属塩と反応させることにより、エーテル結合を持つカルボン酸のアルカリ金属塩が得られる。
[カチオン型の場合]
具体的には、例えば、上記式(243)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、上記式(243)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとをエーテル結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
[両性型の場合]
具体的には、例えば、カルボキシベタインタイプの場合、先ず、上記式(243)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて、または、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとエーテル結合させて、末端第3級アミンにした後、モノクロル酢酸ナトリウムと反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、スルホベタインタイプの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、1,3−プロパンスルトン等に代表される環状スルホン酸エステル化合物と反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、アミンオキシドタイプの場合、上述したように末端第3級アミンにした後、過酸化水素と反応させることにより、両性型の親水性付与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
なお、本実施形態の濾材に用いる、上述した親水撥油剤の構造の具体例は一例であって、本発明の技術範囲は上記具体例に限定されるものではない。すなわち、本実施形態で用いる親水撥油剤は、各種の撥油性付与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性付与基と、を分子中に少なくともそれぞれ1以上有していればよい。
また、上述した親水撥油剤は、夫々単独で親水撥油性を充分発揮するが、実用環境は、酸、アルカリ、油等を含み千差万別であり、実用的な耐久性を加味した場合、親水撥油剤を適宜組み合わせて、実際環境に対する耐久性を高めることが、望ましい。
なお、上述した親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態の親水撥油剤は、分子中に同一又は異なる撥油性付与基を2以上有していてもよい。さらに、分子中に撥油性付与基を2以上有する場合、分子鎖の末端に設けられていてもよいし、分子鎖中に設けられていてもよい。
また、親水撥油剤は、分子中に同一又は異なる親水性付与基を2以上有していてもよい。
さらに、親水撥油剤は、連結基中に同一又は異なる結合を2以上有していてもよい。さらに、連結基がポリマー型である場合、ユニットの繰り返し数や結合順序は特に限定されない。
(B)酸化物微粒子
本実施形態の組成物に適用可能な(B)酸化物微粒子としては、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子(酸化物ナノ粒子)であれば、特に限定されるものではない。このような酸化物微粒子としては、具体的には、例えば、シリカ、ITO(Indium Tin Oxide)、及び、In、Sn、Zn、Ti又はWの酸化物等が挙げられる。より具体的には、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO,SnO,SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化タングステン(WO)等が挙げられる。
ここで、例えば、酸化物微粒子として、シリカを用いた場合、本実施形態の組成物を用いて形成した被膜は、塗膜の硬さや透明性が高く、膜が低屈折率となり光の透過性が向上する。
また、チタニアを用いた場合、本実施形態の組成物を用いて形成した被膜は、光触媒機能によるセルフクリーニング機能を有し、高屈折率の膜となる。
また、ITOを用いた場合、本実施形態の組成物を用いて形成した被膜に、導電性による帯電防止機能を付与することができる。
なお、本明細書において、酸化物微粒子の平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)で観察した粒子形状の内、200点の粒子サイズを画像解析により測定したものの平均値をいう。
また、酸化物微粒子の形状は、球状、異方性のある扁平形状、数珠状に繋がった形状、球状粒子が不定型に繋がった形状等であってもよい。その際、酸化物微粒子の平均一次粒子径は、上述したTEM観察の際の画像解析により、球状に近似した際の大きさをいうものとする。
酸化物微粒子の平均一次粒子径は、2〜50nmの範囲が好ましく、5〜35nmの範囲がより好ましい。酸化物微粒子の平均一次粒子径が2nm以上であると、安定に存在する酸化物微粒子を入手することができるために好ましい。また、酸化物微粒子の平均一次粒子径が50nm以下であると、組成物を成膜した際の膜の透明性が高くなるために好ましい。
これに対して、酸化物微粒子の平均一次粒子径が50nmを超えると、凝集粒子が出来た際の二次粒子径が容易に200nmを超えてしまうため、可視光領域のサイズに入り、曇りとして観察されるために好ましくない。
また、酸化物微粒子としては、上述に列挙された群から選ばれる一種又は二種以上を含む混合物を、(B)酸化物微粒子(酸化物ナノ粒子)として用いてもよい。
(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物
本実施形態の組成物に適用可能な(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物としては、被膜形成用組成物を用いた膜形成の際の反応性の速さと、得られる被膜の硬度を保持することができるものであれば、特に限定されるものではない。このようなケイ素アルコキシドの加水分解物としては、具体的には、下記一般式(244)に示すケイ素アルコキシドの加水分解(縮合)によって生成したものが挙げられる。なお、下記式(244)中、R14は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。
Si(OR14 ・・・(244)
ここで、本実施形態の組成物において、(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物を用いる理由は、上述したように膜形成時の反応性の速さと、この組成物から得られる被膜の硬度を保持するためである。例えば、炭素原子数が6以上のアルキル基を有するケイ素アルコキシドの加水分解物では、加水分解反応が遅く、製造に時間がかかり、また得られた組成物を塗布して得られる膜の硬度が下がる場合があるため、好ましくない。
上記式(244)に示すケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、被膜を形成した際に、硬度が高い膜が得られることから、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
また、本実施形態の組成物においては、(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量が、1×10以上2×10以下であることが好ましい。ここで、上記平均分子量が1×10未満であると、当該組成物を用いて基材の表面に被膜を形成する際に膜厚が得られにくく、基材との密着力が得られないために好ましくない。一方、上記平均分子量が2×10を超えると、当該組成物が高い粘度となり、塗膜形成の用途に適さないために好ましくない。これに対して、ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量が上記範囲内であると、被膜の膜厚の調整が容易であり、基材と被膜との間に十分な密着力が得られるとともに、塗布性に優れ、塗膜形成の際に取扱いが容易となるために好ましい。
なお、ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)によって分子量を測定することにより、確認することができる。具体的には、LC10AD(島津製作所社製)を用い、測定カラムには、ガードカラム及び、LF804(昭和電工社製)を利用するとともに、測定温度は40℃、移動相にはTHF、分子量測定の標準物質にはポリスチレン(PS)の各分子量(5.0×10、1.99×10、5.97×10、9.11×10、3.79×10、9.64×10)を使用して、分子量を測定する。
「ケイ素アルコキシドの加水分解物の製造方法」
次に、上述した(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の製造方法の一例について説明する。上記式(244)に示すケイ素アルコキシドの加水分解物を生成させるには、有機溶媒中において、これらを加水分解(縮合)させる。具体的には、ケイ素アルコキシドの加水分解物の場合、ケイ素アルコキシド1質量部に対して、好ましくは水を0.5〜2.0質量部、無機酸又は有機酸を0.005〜0.5質量部、有機溶媒を1.0〜5.0質量部の割合で混合し、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を進行させることで得られる。
ここで、水の割合を上記範囲とすることが好ましい理由は、水の割合が下限値未満では加水分解反応が十分に進行しにくい場合があり、被膜の硬度が下がるためである。一方、上限値を超えると、加水分解反応中に反応液がゲル化する等の不具合が生じる場合があるためである。また、基板との密着性が低下する場合がある。このうち、水の割合は、0.8〜3.0質量部とすることが特に好ましい。また、水としては、不純物の混入防止のため、イオン交換水や純水等を使用することが望ましい。
無機酸又は有機酸は、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を促進させるための酸性触媒として機能する。無機酸又は有機酸としては、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸又は酢酸等の有機酸が挙げられる。このうち、無機酸としては硝酸を、有機酸としてはギ酸を使用することが特に好ましい。
硝酸は、塩酸や硫酸等の他の無機酸とは異なり、鉱酸の中では塩素や硫黄成分等の電子部品に対する悪影響となる可能性がある成分が少ないために好ましい。触媒として硝酸を用いた場合、少量での反応性の高さゆえに、透明性に優れた膜を形成し易いという効果が得られる。
ギ酸を触媒として用いることによって、透明性に優れた膜を形成しやすいために好ましい。また、触媒としてギ酸を用いた場合、他の触媒を使用した用いた場合に比べて、成膜後の膜中において不均一なゲル化の促進を防止する効果がより高い。
また、無機酸又は有機酸の割合を上記範囲とすることが好ましい理由は、無機酸又は有機酸の割合が下限値未満では反応性に乏しいために、硬度の高い膜が形成されにくく、一方、上限値を超えても反応性に影響はないが、残留する酸による塗布基材の腐食等の不具合が生じる場合があるからである。このうち、無機酸又は有機酸の割合は、0.008〜0.2質量部とすることが特に好ましい。
有機溶媒としては、アルコール、グリコールエーテル、又はグリコールエーテルアセテートを使用することが好ましい。有機溶媒として、これらのアルコール、グリコールエーテル又はグリコールエーテルアセテートを使用することが好ましい理由は、組成物の塗布性向上のためであり、また、例えばケイ素アルコキドとの混合がしやすいためである。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。また、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。また、グリコールエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
これらのうち、加水分解反応の制御がしやすく、また膜形成時に良好な塗布性が得られることから、エタノール、IPA、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が、特に好ましい。
有機溶媒の割合を上記範囲とすることが好ましい理由は、有機溶媒の割合が下限値未満では加水分解反応中に反応液がゲル化する不具合が生じやすく、透明性に優れた膜が得られにくいためである。また、基板との密着性も低下する場合がある。一方、上限値を超えると加水分解の反応性が低下する等の不具合が生じることで、十分な硬度の膜が得られないためである。このうち、有機溶媒の割合は、1.5〜3.5質量部とすることが特に好ましい。
なお、ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量は、ケイ素アルコキシドの量(すなわち、SiOの固形分)、水の量、硝酸量、エタノール等の溶媒の量、第1液と第2液を混合した後の温度、高温での保持時間等の条件を適宜選択することにより、制御することができる。
(D)有機溶媒
本実施形態の組成物は、塗布にふさわしい粘度への調整のため、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子の分散状態を維持するため、並びに(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の加水分解反応を抑制するために、(D)有機溶媒を含んで構成されている。なお、被膜形成用組成物中に(D)有機溶媒が含まれない系では、ケイ素アルコキシドの加水分解速度が速く、直ぐにゲル化による固形物が生成してしまう。また、当該被膜形成用組成物を用いて被膜を形成した際、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子が良好な分散状態とならないおそれがある。
本実施形態の組成物に適用する(D)有機溶媒としては、(A)成分〜(C)成分との相溶性が高く、被膜形成用の組成物として取扱がし易いため、上述した(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物を作製する際に使用する有機溶媒と同じもの、または、(B)酸化物微粒子の分散液を作成する際に使用する有機溶媒と同じもの、あるいは、上記列記した有機溶媒を用いることが好ましい。
上述した有機溶媒の中でも、エタノール、IPA、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が特に好ましい。
ここで、本実施形態の組成物において、被膜形成成分である(A)含窒素フッ素系化合物、(B)酸化物微粒子及び(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の各固形成分比は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の固形成分の全量(全固形成分)に対して、それぞれ所要の範囲であることが好ましい。換言すると、本実施形態の組成物を用いて被膜を形成した際に、当該被膜(全固形成分)中の成分(A)〜(C)の含有量がそれぞれ所要の範囲となることが好ましい。
全固形成分中の(A)含窒素フッ素系化合物の固形成分比は、下限値が6質量%以上であればよく、10質量%以上であってもよい。
ところで、被膜形成成分中に(A)成分を含まない場合(すなわち、被膜形成成分中に(B)成分及び(C)成分のみを含む場合)、形成された被膜は親水親油性であり、水、油(n−ヘキサデカン)の接触角はいずれも5°以下となる。
ここで、(A)成分の固形成分比が固形成分の全量に対して6質量%以上であると、被膜に対して親水撥油性を付与することができるために好ましい。また、10質量%以上であると、形成した被膜に対する油(n−ヘキサデカン)の接触角が70°以上となり、親水性を保ちつつ、高い撥油性を付与することができるために好ましい。
一方、(A)成分の固形成分比は、上限値が40質量%以下であればよく、30質量%以下であってもよい。ここで、(A)成分の固形成分比が40質量%以下であると被膜の膜強度や基材との密着性が充分に得られるために好ましい。また、30質量%以下であると、成膜時のムラがなく、透明性の高い膜とすることができるために好ましい。
また、固形成分中の(B)酸化物微粒子の固形成分比は、固形成分の全量に対して40質量%以上であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。ここで、(B)成分の固形成分比が40質量%以上であると、撥油性がより向上するために好ましい。一方、B成分の固形成分比が90質量%以下であると、被膜の膜強度や基材との密着性が十分に得られるために好ましい。
また、固形成分中の(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の固形成分比は、固形成分の全量に対して4質量%以上であることが好ましく、40質量%以下であることが好ましい。ここで、(C)成分の固形成分比が1質量%以上であると、被膜の膜強度や基材との密着が向上するために好ましい。一方、(C)成分の固形成分比が40質量%以下であると、被膜の撥油性がより向上するために好ましい。これに対して、(C)成分の固形成分比が40質量%を超えると、(B)成分の粒子凹凸効果(すなわち、親水性を示す膜はより親水性に、撥油性を示す膜はより撥油性になる効果)を低下させてしまうために好ましくない。
なお、固形成分中の(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の固形成分比は、ケイ素アルコキシドの質量によって決定される。また、固形成分中の(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物の固形分濃度を確認する方法としては、昇温試験等が挙げられる。具体的には、例えば、ケイ素アルコキシドの加水分解物を650℃にて2時間焼成した後の重量を、焼成炉投入前のケイ素アルコキシドの加水分解物の重量で割った値で確認する。
また、本実施形態の組成物において、(D)有機溶媒中の全固形成分(すなわち、成分(A)+成分(B)+成分(C))の濃度は、特に限定されるものではなく、基材への塗布方法によって適宜選択することができる。上記全固形成分の濃度としては、具体的には、例えば、1〜50質量%であればよく、2〜20質量%の範囲とすることが好ましい。
<被膜形成用組成物の製造方法>
次に、本実施形態の被膜形成用組成物の製造方法について、以下に詳細に説明する。
本実施形態の被膜形成用組成物の製造方法の一例として、ケイ素アルコキシドから(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物を生成した後、(D)有機溶媒に、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子と、生成した(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物と、を添加して混合する方法(第1の方法)が挙げられる。
「第1の方法」
具体的には、上記第1の方法は、ケイ素アルコキシドと有機溶媒とを混合して、第1液を調製する工程(第1工程)と、ケイ素アルコキシドと、水と、無機酸と、を混合して、第2液を調製する工程(第2工程)と、所要の温度に保持された上記第1液に上記第2液を添加し、温度を保持しながら混合して、ケイ素アルコキシドの加水分解物を得る工程(第3工程)と、有機溶媒に含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を添加した後、得られた上記ケイ素アルコキシドの加水分解物を添加する工程(第4工程)と、を含んで、概略構成されている。
(第1工程)
先ず、第1工程では、ケイ素アルコキシドと有機溶媒とを混合して、第1液を調製する。具体的には、反応容器にケイ素アルコキシドを投入し、このケイ素アルコキシドの1とした際に、1質量部に対して1.0質量部となる量の有機溶媒を添加する。そして、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第1液を調製する。
(第2工程)
次に、第2工程では、ケイ素アルコキシドと、水と、無機酸と、を混合して、第2液を調製する。具体的には、先ず、ケイ素アルコキシド1質量部に対して1.0質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の無機酸と、を容器内に投入して混合する。次いで、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第2液を調製する。
(第3工程)
次に、第3工程では、所要の温度に保持された上記第1液に上記第2液を添加し、温度を保持しながら混合して、ケイ素アルコキシドの加水分解物を得る。具体的には、第1工程にて調製した第1液を、恒温液槽(ウォーターバス)等を用いて、例えば、約55℃の温度に保持した後、この第1液に上述した第2液を添加し、上記温度を保持した状態で約60分間撹拌する。これにより、ケイ素アルコキシドの加水分解物が得られる。
(第4工程)
次に、第4工程では、有機溶媒に含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を添加した後、第3工程にて得られたケイ素アルコキシドの加水分解物を添加する。具体的には、所要量の有機溶媒を準備し、この有機溶媒中に所要量のペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を添加する。次いで、この有機溶媒中に、第3工程にて事前に調製したケイ素アルコキシドの加水分解物を所要量添加する。これにより、本実施形態の被膜形成用組成物が得られる。なお、酸化物微粒子を溶媒に分散させた酸化物微粒子の分散液を事前に調整し、この分散液中に所要量のペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物を添加しても良い。
また、本実施形態の被膜形成用組成物の製造方法の他の例として、(D)有機溶媒に、ケイ素アルコキシドと、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子と、を同時に添加して混合する方法(第2の方法)が挙げられる。
ここで、上述した第1の方法が(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物を事前に調整する方法であるのに対して、第2の方法は、ケイ素アルコキシドの加水分解と同時にペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を混合して、被膜形成用組成物を得る方法である。
「第2の方法」
具体的には、上記第2の方法は、ケイ素アルコキシドと、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子と、(D)有機溶媒と、を混合して、第1’液を調製する工程(第1’工程)と、水と無機酸とを混合して、第2’液を調製する工程(第2’工程)と、所要の温度に保持された第1’液に第2’液を添加し、上記温度を保持しながら混合する工程(第3’工程)と、を含んで、概略構成されている。
(第1’工程)
先ず、第1’工程では、ケイ素アルコキシドと、ペルフルオロアルキルアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子と、有機溶媒と、を混合して、第1’液を調製する。具体的には、先ず、反応容器にケイ素アルコキシドを投入し、このケイ素アルコキシドの質量を1とした際に、0.4質量部となる有機溶媒を添加する。さらに、先に投入したケイ素アルコキシド1質量部に対して、例えば0.2〜1質量部となるように上記含窒素フッ素系化合物と、例えば0.2〜5質量部となるように上記酸化物微粒子と、をそれぞれ添加し、そして、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第1’液を調製する。
(第2’工程)
次に、第2’工程では、水と無機酸とを混合して、第2’液を調製する。具体的には、先ず、ケイ素アルコキシド1質量部に対して0.85質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の無機酸と、を容器内に投入して混合する。次いで、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第2’液を調製する。
(第3’工程)
次に、第3’工程では、所要の温度に保持された第1’液に第2’液を添加し、上記温度を保持しながら混合する。具体的には、第1’工程にて調製した第1’液を、恒温液槽(ウォーターバス)等を用いて、例えば、約60℃の温度に保持した後、この第1’液に第2’液を添加し、上記温度を保持した状態で約60分間撹拌する。これにより、有機溶媒中にペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物、酸化物微粒子及びケイ素アルコキシドの加水分解物を含む、本実施形態の被膜形成用組成物が得られる。
<被膜形成用組成物の使用方法>
次に、本実施形態の被膜形成用組成物の使用方法、すなわち、被膜の形成方法について説明する。本実施形態の被膜形成用組成物は、そのまま、基材等の被処理物上に塗布することが可能である。
被膜の形成方法としては、具体的には、例えば、基材の表面に本実施形態の被膜形成用組成物を塗布した後、焼成して硬化することにより、基材の表面に被膜を形成することができる。
基材としては、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの構造体、積層体等を用いることができる。
塗布工程において、基材の表面への塗布方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、被膜形成用組成物中に基材を浸漬する浸漬法、スプレー、スピンコート、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法などが挙げられる。
焼成条件としては、被膜形成用組成物に含まれる有機溶媒の種類や含有量などによって適宜選択することができる。焼成温度としては、例えば、60〜200℃とすることができる。また、焼成時間としては、例えば、5〜60分とすることができる。なお、焼成条件の選択の際、焼成温度が低温では長時間、高温では短時間とすることで、同程度の硬度の膜を得ることができる。
<被膜>
本実施形態の被膜は、上述した被膜形成用組成物を用いて形成されたものである。具体的には、上述したように、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物、酸化物微粒子、ケイ素アルコキシドの加水分解物及び有機溶媒を含有した塗布液を基板に塗布した後に、焼成して硬化させることにより得られる。
本実施形態の被膜は、環境負荷の小さいフッ素材料であるペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物、酸化物微粒子、ケイ素アルコキシドの加水分解物及び有機溶媒を含む組成物を塗布し、焼成して硬化させて得られたものであり、当該被膜の表面には酸化物微粒子の凹凸形状が現れることとなる。そして、本実施形態の被膜は、当該被膜表面の酸化物微粒子の表面に、含窒素フッ素系化合物が付着しているものである。
ところで、平均一次粒子径が100nm以下の、表面が親水性を有する微粒子を用いて形成された被膜は、一般的に表面が親水性且つ親油性を示すことが知られている。
これに対して、本実施形態の被膜は、平均一次粒子径が2〜50nm程度であって、表面が親水性を有する酸化物微粒子と、親水撥油剤であるペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物との相乗効果によって、当該含窒素フッ素系化合物単体から得られる被膜よりも低い水接触角を示す。すなわち、本実施形態の被膜は、高い親水性を有する。
さらに、本実施形態の被膜の表面には、親水撥油剤である含窒素フッ素系材料が酸化物微粒子に付着するため、高い撥油性も同時に発現される。したがって、本実施形態の被膜は、基材の表面に汚れが付着することを防止するともに、付着した場合であっても容易に拭き取ることが可能な、優れた防汚性を有する。
また、本実施形態の被膜は、成分中に硬化に寄与するケイ素アルコキシドの加水分解物が含まれるため、高い耐擦傷性、高い硬度を有するとともに、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物単体から得られた被膜よりも基材との密着性、耐久性に優れる。
さらに、本実施形態の被膜は、原料のケイ素アルコキシドとしてTEOSを用い、酸性触媒として硝酸又はギ酸を用いた加水分解物の硬化膜である場合に、透過率が95〜98%、ヘイズ0.1以下となり、優れた透明性を有する。したがって、透明な基材に被膜を形成した場合であっても、視認性を維持したまま、優れた防汚性を付与することが出来る。
なお、本実施形態の被膜の親水性及び撥油性は、水の接触角及び油の接触角によって評価することができる。接触角は、市販の測定装置(例えば、協和界面科学社製、「Drop Master DM−700」)を用いて測定することができる。具体的には、シリンジにイオン交換水を準備し、静止状態で水が膜表面に触れた後の1000msec後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とすることができる。また、シリンジにn−ヘキサデカンを準備し、接触角を測定し、同様に解析した値を油の接触角とすることができる。
本実施形態の被膜の防汚性は、例えば、油性ペンのはじき性によって評価することができる。具体的には、被膜形成用組成物を用いて基材上に被膜を形成し、油性ペンを用いて被膜の表面に長さ1cmの直線を書き、そのはじきやすさを所定の基準に従って目視により評価することができる。
また、油性ペンを用いて被膜の表面に書いた線を、水で流すことにより落とせるかを確認することで易洗浄性を確認した。
本実施形態の被膜の透過率は、ガラス基材上に形成した被膜について、市販の測定装置(例えば、日立ハイテク社製、分光光度計「U−4100」)を用いて測定することができる。具体的には、ガラス基材を含む被膜の透過率を240〜2600nmの範囲で測定する。透過率については、可視光範囲である550nmでの値を確認する。
本実施形態の被膜のヘイズは、ガラス基材上に形成した被膜について、市販の測定装置(例えば、スガ試験機社製、ヘイズメーター「HZ−2」)を用いて測定することができる。なお、ヘイズとは、膜の拡散透過率/全光線透過率×100であらわされる数値であり、膜が曇っている程、ヘイズ値が高くなる。
以上説明したように、本実施形態の被膜形成用組成物によれば、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となる炭素数8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を含有することなく、高い親水撥油性及び優れた防汚性を有する被膜を形成することが可能である。
特に、本実施形態の被膜形成用組成物には、含窒素ペルフルオロアルキル基として、窒素原子上で分枝する複数の短鎖長構造のペルフルオロアルキル基、つまりペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物が含まれている。このペルフルオロアミン構造は嵩高いため、短鎖長構造のペルフルオロアルキル基しか有しないにもかかわらず、炭素数が8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル構造を有する含窒素フッ素系化合物と同様に、高い撥油性などの上述したフッ素基に起因する高い特性を付与することが可能となる。
本実施形態の被膜形成用組成物の製造方法によれば、上記被膜形成用組成物を簡便かつ安全に調製することが可能である。
本実施形態の被膜は、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物単体から得られた被膜よりも高い親水撥油性及び優れた防汚性を有する。また、優れた透明性、基材との密着性および耐久性も備える。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。具体的には、上述した実施形態では、被膜形成用組成物中に、含窒素フッ素系化合物、酸化物微粒子およびケイ素アルコキシドとして、それぞれ一種類のみ含まれる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、被膜形成用組成物中に、それぞれが2種以上含まれていてもよい。
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
<含窒素フッ素系化合物>
(合成例1)
「2−[3−[ペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノプロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド20gを、ジメチルアミノプロピルアミン4gをIPE溶媒50mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去したところ、粗生成物として、(CNCCONHCN(CHを14g得た(収率60%)。
次いで、得られた(CNCCONHCN(CH3gを、エタノール中で撹拌下モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させて、下記一般式(245)に示すカルボキシベタイン体を3g得た(収率92%)。
Figure 0006584124
(合成例2)
「2−[3−[ペルフルオロ(3−ジブチルアミノ−2−メチルプロパノイル)]アミノプロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
3−ジブチルアミノ−2−メチルプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−ジブチルアミノ−2−メチルプロピオン酸)フルオリド160gを、ジメチルアミノプロピルアミン50gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去したところ、粗生成物として、(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを94g得た(収率52%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CH66gを、エタノール中で撹拌下モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させて、上記式(36)に示すカルボキシベタイン体を65g得た(収率91%)。
(合成例3)
「2−[3−[ペルフルオロ(3−ジブチルアミノ−2−メチルプロパノイル)]アミノプロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
3−ジブチルアミノ−2−メチルプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(3−ジブチルアミノ−2−メチルプロピオン酸)フルオリド160gを、ジメチルアミノプロピルアミン50gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去したところ、粗生成物として、(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを94g得た(収率52%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CH66gを、エタノール中で撹拌下モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させて、上記式(119)に示すアミンオキシド体を65g得た(収率91%)。
<酸化物微粒子、酸化物微粒子の分散液>
酸化物微粒子の一例として、下記(1)〜(5)を酸化物微粒子又は酸化物微粒子の分散液を用いた。
(1)平均一次粒子径が約15nmのシリカ粒子
(2)平均一次粒子径が約12nmのコロイダルシリカ粒子がIPA溶媒中に分散された分散液
(3)平均一次粒子径が約10nmのコロイダルシリカ粒子がプロピレングリコールモノメチルエーテル溶媒中に分散された分散液
(4)平均一次粒子径が約20nmのジルコニア粒子がエタノール中に分散された分散液
(5)平均一次粒子径が10nmのチタニア粒子が固形分10質量%で含まれるエタノール分散液
<ケイ素アルコキシドの加水分解物>
被膜形成用組成物のうち、ケイ素アルコキシドの加水分解物を下記に示す方法によって調整した。
具体的には、先ず、ケイ素アルコキシドとして、テトラエトキシシラン(TEOS)を用意し、セパラブルフラスコに投入した。このケイ素アルコキシドの質量を1とした際に、1質量部に対して、1.0質量部となる量のエタノールを有機溶媒として添加し、30℃の温度で15分撹拌することにより、第1液を調製した。
また、この第1液とは別に、ケイ素アルコキシド1質量部に対して1.0質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の硝酸とを無機酸としてビーカー内に投入して混合し、30℃の温度で15分間撹拌することにより第2液を調製した。
次に、調製した上記第1液を、ウォーターバスにて55℃の温度に保持し、この第1液に上記第2液を添加し、上記温度を保持した状態で60分間撹拌した。これにより、SiO換算で固形分10質量%の、ケイ素アルコキシドの加水分解物(B)(平均分子量:4×10)を得た。
また、同様にして、SiO換算で固形分10質量%の、異なる平均分子量のケイ素アルコキシドの加水分解物(B)(平均分子量:1×10,2×10)をそれぞれ調整した。
(実施例1)
有機溶媒として、エタノールを46.9g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す化合物を0.1g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を1.8gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(実施例2)
有機溶媒として、IPAを33.0g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述の合成例1に記載した一般式(245)に示す化合物を0.3g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が10nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液を10.0gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を6.7g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(実施例3)
有機溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルを37.9g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上記一般式(36)に示す化合物を0.4g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が20nmのジルコニア粒子が固形分40質量%で含まれるプロピレングリコールモノメチルエーテル分散液を3.2gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を8.5g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(実施例4)
有機溶媒として、エタノールを44.4g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す化合物を0.2g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が10nmのチタニア粒子が固形分10質量%で含まれるエタノール分散液を3.6gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.8g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(実施例5)
まず、ケイ素アルコキシドとして、テトラエトキシシラン(TEOS)を用意し、セパラブルフラスコに投入する。このケイ素アルコキシドの質量を1とした際に、1質量部に対して、含窒素フッ素系化合物(A)として、上記一般式(119)に示す化合物を0.5質量部となるように添加し、さらに1.1質量部となる量のエタノールを有機溶媒として添加し、30℃の温度で15分撹拌することにより、第1液を調製した。さらに、このケイ素アルコキシドの質量を1とした際に、4質量部となる量の酸化物微粒子(平均一次粒子径が約15nmのシリカ粒子)を添加した。表1に成分組成を示す。
また、この第1液とは別に、ケイ素アルコキシド1質量部に対して0.85質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の硝酸を無機酸としてビーカー内に投入して混合し、30℃の温度で15分間撹拌することにより第2液を調製した。次に、上記調製した第1液を、ウォーターバスにて60℃の温度に保持してから、この第1液に第2液を添加し、上記温度を保持した状態で60分間撹拌した。これにより、上記式(119)に示すペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)を含む、ケイ素アルコキシドの加水分解物(C)を得た。
次に、有機溶媒として、エタノールを40g準備し、上記式(119)に示す含窒素フッ素系化合物(A)を含むケイ素アルコキシドの加水分解物(C)を10g秤量添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(実施例6)
上記実施例5と同様にして、
有機溶媒として、IPAを45g準備し、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物(A)と、平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子(B)とを含むケイ素アルコキシドの加水分解物(C)を5g秤量添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例1)
有機溶媒として、エタノールを47g準備し、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を1.8gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例2)
有機溶媒として、エタノールを46.9g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.1g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が100nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるエタノール分散液を1.8gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例3)
有機溶媒として、エタノールを48g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を2g添加し、調製した被膜形成用組成物を比較例3とした。表1に成分組成を示す。
(比較例4)
有機溶媒として、エタノールを46.8g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.012g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるエタノール分散液を2.0gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例5)
有機溶媒として、エタノールを48.0g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.185g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるエタノール分散液を1.3gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を0.55g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例6)
有機溶媒として、IPAを47.4g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.13g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が10nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を1.0gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:3×10)を1.5g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例7)
有機溶媒として、IPAを47.2g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.02g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が10nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を2.7gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:3×10)を0.15g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例8)
有機溶媒として、エタノールを47.5g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.08g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるエタノール分散液を2.3gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を0.05g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
(比較例9)
有機溶媒として、エタノールを46.7g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(A)として、上述した合成例1に記載の一般式(245)に示す含窒素フッ素系化合物を0.045g秤量添加する。その後、(B)酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるエタノール分散液を1.3gと、事前に調製した上記(C)ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.95g添加し、被膜形成用組成物を調製した。表1に成分組成を示す。
Figure 0006584124
<評価方法>
(被膜の親水撥油性評価)
上記実施例1〜6及び上記比較例1〜9において調製した被膜形成用組成物を用いた被膜について、水及びn−ヘキサデカンを付着させた際の接触角測定を行い、親水性及び撥油性をそれぞれ評価した。なお、被処理物(基材)にはスライドガラスを用い、上記被膜形成用組成物をスピンコート法により塗布し、得られた膜を120℃で30分焼成させることにより、評価用部材を得た。また、接触角測定は、協和界面科学社製、CA−700型接触角計を用い、水及びn−ヘキサデカンの液滴量は2μlとし、表面処理部材上の任意5点で接触角を測定し、その平均値を算出した。評価結果を表2に表わす。
(被膜の透明性評価)
上記実施例1〜6及び上記比較例1〜9において調製した被膜形成用組成物を用いた被膜について、透過率及びヘイズの測定を行い、透明性を評価した。
「透過率」
評価部材を上記親水撥油性評価部材と同様にして調整し、日立ハイテク社製の分光光度計U−4100を用いて、評価部材(基材を含む被膜)の透過率を240〜2600nmの範囲で測定した。透過率については、可視光範囲である550nmでの値を確認した。評価結果を下記表2に示す。
「ヘイズ」
評価部材を上記親水撥油性評価部材と同様にして調整し、スガ試験機社製のヘイズメーターHZ−2を用いて、評価部材(基材を含む被膜)のヘイズ測定を行った。評価結果を下記表2に示す。なお、ヘイズは、膜の拡散透過率/全光線透過率×100であらわされる数値である。
(被膜の防汚性評価)
「油性ペンのはじき性評価」
上記実施例1〜6及び上記比較例1〜9において調製した被膜形成用組成物を用いた被膜について、油性ペン(内田洋行社製、「マジックインキ」)を付着させた際のはじき性の評価(油性ペンのはじき性評価)を行い、被膜の防汚性を評価した。なお、評価部材は上記親水撥油性評価部材と同様にして調整し、油性ペンを用いて部材表面に長さ1cmの直線を書き、そのはじきやすさを以下の基準に従って目視により評価した。評価結果を下記表2に示す。
○:はじきが見られる
△:部分的にはじく
×:全くはじかない
「易洗浄性評価」
上記油性ペンを用いて書いた直線を、せん瓶に入れたイオン交換水を基材上に直接かけることにより、その易洗浄性を以下の基準に従って目視に評価した。評価結果を下記の表2に示す。
○:全て洗浄により取り除かれる
△:部分的に取り除かれる
×:全く洗浄により取り除かれない
Figure 0006584124
表2に示すように、本発明の被膜形成用組成物(実施例1〜6)を用いて形成した被膜は、高い親水性、高い撥油性および油性ペンのはじき性(評価:○)を示している。すなわち、本発明の被膜形成用組成物によれば、炭素数8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を含有しない含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子とを含むことにより、高い親水撥油性及び優れた防汚性を有する被膜を形成できることがわかった。
また、本発明の被膜形成用組成物(実施例1〜6)を用いて形成した被膜は、被膜形成用組成物中に、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、ケイ素アルコキシドの加水分解物とを含んでいるため、優れた透明性(低いヘイズ)を有していることがわかった。
なお、実施例1,2,5及び6では、(B)成分である酸化物微粒子としてシリカ粒子を用いており、粒子の屈折率効果で低屈折率になる。このため、表2に示すように、基材のガラス(透過率92%)よりも低屈となり、透過率が上昇する効果が得られた。
また、実施例3及び4では、(B)成分である酸化物微粒子として高屈折率のジルコニア粒子及びチタニア粒子をガラス基材上に塗布することとなり、元の基材であるガラスよりも屈折率が上昇し、反射率が向上してしまう。このため、表2に示すように、基材のガラス(透過率92%)よりもやや透過率が下がることを確認した。
以上説明したように、本発明の被膜形成用組成物は、(B)成分である酸化物微粒子として低屈材料を用いた場合には、形成した被膜の透過率が1〜4%程度上昇させる作用が得られる一方で、高屈材料を用いた場合には逆に数%程度低下させる作用が得られることを確認した。
これに対して、比較例1の被膜形成用組成物は、(A)成分を含まないため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、高い親水性を示すが、撥油性が低い。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性及び易洗浄性の評価がいずれも「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。
また、比較例2の被膜形成用組成物は、(B)成分である酸化物微粒子の粒径が50nmを超えているため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、親水性及び撥油性のいずれも中程度であった。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性が「△」、易洗浄性の評価が「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。また、透明性の評価においても、「透過率」が低く、同時に「ヘイズ」が高いため、透明性が十分でないことがかわった。
また、比較例3の被膜形成用組成物は、(B)成分及び(C)成分を含まないため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、高い親水性及び撥油性が得られなかった。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性及び易洗浄性の評価がいずれも「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。また、透明性の評価においても、ヘイズ値が0.28であり、透明性が十分でないことがかわった。
また、比較例4の被膜形成用組成物は、全固形成分中における(A)成分の組成比が6質量%未満であるため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、撥油性が不十分であった。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性が「×」、易洗浄性の評価が「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。
また、比較例5の被膜形成用組成物は、全固形成分中における(A)成分の組成比が40質量%を超えるため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、「透過率」が低く、同時に「ヘイズ」が高いため、透明性が十分でないことがかわった。
また、比較例6の被膜形成用組成物は、全固形成分中における(B)成分の組成比が40質量%未満であるため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、撥油性が不十分であった。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性が「△」、易洗浄性の評価が「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。
また、比較例7の被膜形成用組成物は、全固形成分中における(B)成分の組成比が90質量%を超えるとともに、(A)成分の組成比が6質量%未満且つ(C)成分の組成比が4質量%未満であった。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性が「×」、易洗浄性の評価が「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。
また、比較例8の被膜形成用組成物は、全固形成分中における(C)成分の組成比が4質量%未満であった。このため、ケイ素アルコキシドの加水分解物が少なく、密着性がないために、油性ペンでの記載時に、膜が剥がれてしまい、評価が出来なかった。
また、比較例9の被膜形成用組成物は、全固形成分中における(C)成分の組成比が40質量%超であるため、形成した被膜の評価において、表2に示すように、撥油性が不十分であった。このため、形成した被膜の防汚性の評価において、油性ペンのはじき性が「△」、易洗浄性の評価が「×」となり、防汚性が十分でないことがわかった。また、透明性の評価においても、ヘイズ値が0.24であり、透明性が十分でないことがかわった。
本発明の被膜形成用組成物は、防汚膜として、特に建築物の外壁や屋根、航空機、船舶、自動車等のボディー、ガラス、ホイール等、乗用車のサイドミラー、エアコンの熱交換器、電線、アンテナ等への利用可能性を有する。また、視認性が要求されるようなディスプレイ表面への防汚膜としての利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. 下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
    シリカ、ITO、及び、In、Sn、Zn、Ti又はWの酸化物から選ばれた群のうち、1種又は2種以上の混合物であり、平均一次粒子径が5〜35nmの酸化物微粒子と、
    平均分子量が、1×10 以上2×10 以下である、ケイ素アルコキシドの加水分解物と、
    有機溶媒と、を含み、
    前記含窒素フッ素系化合物、前記酸化物微粒子及び前記ケイ素アルコキシドの加水分解物中に含まれる全固形成分中における、
    前記含窒素フッ素系化合物の組成比が6〜40質量%であり、
    前記酸化物微粒子の組成比が、40〜90質量%であり、
    前記ケイ素アルコキシドの加水分解物の組成比が、4〜40質量%である、被膜形成用組成物。
    Figure 0006584124
    Figure 0006584124
    Figure 0006584124
    Figure 0006584124
    上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭
    素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
    上記式(3)及び(4)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基又はCF基である。
    また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基であって、直鎖状又は分岐状の連結基である。
    また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
  2. 請求項1に記載の被膜形成用組成物の製造方法であって、
    前記ケイ素アルコキシドから当該ケイ素アルコキシドの加水分解物を生成した後、前記有機溶媒に、前記含窒素フッ素系化合物と、前記酸化物微粒子と、生成した前記ケイ素アルコキシドの加水分解物と、を添加して混合する、被膜形成用組成物の製造方法。
  3. 請求項1に記載の被膜形成用組成物の製造方法であって、
    前記有機溶媒に、前記ケイ素アルコキシドと、前記含窒素フッ素系化合物と、前記酸化物微粒子と、を同時に添加して混合する、被膜形成用組成物の製造方法。
  4. 請求項1に記載の被膜形成用組成物を用いて形成された、被膜。
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