JP2023038692A - 撥水撥油性黒色膜形成用液組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】形成した膜が黒色であってかつ撥水性、撥油性、膜の強度及び膜の密着性が高い。【解決手段】式(1)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物(B)が結合した比表面積径10nm~45nmの酸窒化ジルコニウム粒子(C)と、シリカゾルゲル(D)と、溶媒(E)とを含む撥水撥油性黒色膜形成用液組成物である。液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、フッ素系官能基成分(A)とカルボン酸化合物(B)と酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が、40質量%~80質量%であり、酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)が0.01~0.50の範囲にある。TIFF2023038692000013.tif17170【選択図】図1
Description
本発明は、撥水性と撥油性を有し、黒色である膜を形成するための液組成物及びその製造方法に関する。更に詳しくは、酸窒化ジルコニウム粒子を含む撥水撥油性黒色膜形成用液組成物及びその製造方法に関するものである。
これまで、撥水性と撥油性を有する膜形成用液組成物として、本出願人は、後述する一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素含有官能基成分が結合した金属酸化物粒子と、シリカゾルゲルと、溶媒とを含み、液組成物を100質量%とするとき、フッ素系官能基成分を1質量%~30質量%含む撥水撥油性膜形成用液組成物を提案した(特許文献1(請求項1、請求項4,段落[0024]、段落[0083]、段落[0087]、段落[0100])参照。)。この液組成物はエアフィルタを製造するために用いられる。
この撥水撥油性膜形成用液組成物の製造方法では、先ず、金属酸化物粒子と有機溶媒を混合して金属酸化物粒子の分散液を調製し、この分散液に上記フッ素系官能基成分を含むフッ素系化合物を混合し、更に水と触媒を混合してフッ素含有金属酸化物粒子の分散液を調製する。一方、ケイ素アルコキシドとアルコールと水と、必要に応じてアルキレン基成分を混合し、この混合液に触媒を加えることにより、シリカゾルゲル液を調製する。そしてこのシリカゾルゲル液に溶媒を混合し、この混合液と上記フッ素含有金属酸化物粒子の分散液とを混合することにより、撥水撥油性膜形成用液組成物が製造される。上記金属酸化物粒子は、Si,Al、Mg、Ca、Ti、Zn及びZrからなる群より選ばれた1種又は2種の金属の酸化物粒子であって、SiO2、TiO2、ZrO2等が例示される。
一方、耐湿性に優れた硬化膜を作製できる、遮光性樹脂組成物が開示されている(特許文献2(請求項1、請求項9、段落[0006]、段落[0017])参照。)。この遮光性樹脂組成物は、原子Aを含有する金属窒化物含有粒子、及び、原子Aを含有する金属酸窒化物含有粒子からなる群から選択される1種以上である遮光顔料であって、 前記遮光顔料は、3~7族の遷移金属のうち、電気陰性度が1.22~1.80である遷移金属の、窒化物及び酸窒化物の少なくとも一方を含有し、 前記原子Aは、ハフニウム及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種であって、前記遷移金属とは異なる原子である、遮光顔料と、 樹脂と、を含有する。
特許文献2に示される遮光顔料は、酸窒化ジルコニウム、及び、窒化ジルコニウムからなる群から選択される1種以上を含有する。この遮光顔料が、所定の範囲の電気陰性度である3~7族の遷移金属の窒化物及び酸窒化物の少なくとも一方と、原子A(ハフニウム及びタングステンからなる群から選択される少なくとも1種)とを含有するため、組成物から得られる硬化膜の耐湿性が改善する旨が特許文献2に記載されている。
特許文献2に開示された遮光性樹脂組成物を用いて黒色膜を形成した場合、黒色膜は耐湿性に優れるけれども、遮光性樹脂組成物をデザイン性が求められるインテリア製品や、車両内装部材の美観を高めるために、それらの表面に塗布した場合に、塗布された黒色膜に汚れ防止機能が乏しく、改善が求められていた。
このため、形成した膜が黒色であってかつ撥水性、撥油性を有する特性を有する液組成物を得るために、特許文献1に示される金属酸化物粒子として、特許文献2に示される金属酸窒化物含有粒子、即ち酸窒化ジルコニウム粒子を用いることが考えられる。
しかし、酸窒化ジルコニウム粒子の分散液を調製するために、特許文献1の製造方法にように、酸窒化ジルコニウム粒子と有機溶媒を混合しても、或いは酸窒化ジルコニウム粒子と水を混合しても、単独の酸化物でなく、酸化物が含まれる窒化物であるため、酸窒化ジルコニウム粒子が有機溶媒又は水に分散しにくい課題があった。
本発明の目的は、形成した膜が黒色であってかつ撥水性、撥油性、膜の強度及び膜の密着性が高い撥水撥油性黒色膜形成用液組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、カルボン酸化合物を分散剤として用いて、酸窒化ジルコニウム粒子とカルボン酸化合物の水溶液を混合すると、少量のカルボン酸化合物により、酸窒化ジルコニウム粒子が均一にこの水溶液に分散し、その後に、この分散液とシリカゾルゲル液を混合しても、この分散液が中性に近いために、酸窒化ジルコニウム粒子が凝集しないことを知見し、本発明に到達した。
本発明の第1の観点は、下記の一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物(B)が結合した比表面積径10nm~45nmの酸窒化ジルコニウム粒子(C)と、シリカゾルゲル(D)と、溶媒(E)とを含み、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、前記フッ素系官能基成分(A)と前記カルボン酸化合物(B)と、前記酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が、40質量%~80質量%であり、 前記酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対する前記フッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)が0.01~0.50の範囲にあることを特徴とする撥水撥油性黒色膜形成用液組成物である。
上記式(1)及び式(2)中、p、q及びrは、それぞれ同一又は互いに異なる1~6の整数であって、炭素骨格は、直鎖状又は分岐状であってもよい。また上記式(1)及び式(2)中、Xは、炭素数2~10の炭化水素基であって、エーテル結合、CO-NH結合、O-CO-NH結合及びスルホンアミド結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよい。更に上記式(1)及び式(2)中、Yはシランの加水分解体又はシリカゾルゲルの主成分である。
このYについて更に述べると、Yは、酸窒化ジルコニウム粒子(C)と結合する部位である。具体例としては、後述する式(3)又は式(4)において、Yとして、Z部分が加水分解した構造が挙げられる。また、Yとして、式(3)又は式(4)のシラン化合物と、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のケイ素アルコキシドとを混合し、加水分解重合したシリカゾルゲルの主成分等も挙げられる。更に、Yとして、式(3)又は式(4)のシラン化合物と、テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等のケイ素アルコキシドと、エポキシ基やビニル基、エーテル基を含有したシラン等とを混合し、加水分解重合したシリカゾルゲルの主成分等も挙げられる。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、この塗膜の波長380nm~780nmの範囲における最大の光透過率が25%以下である撥水撥油性黒色膜形成用液組成物である。ここで波長範囲を380nm~780nmとしたのは、人間の目で見える波長域、即ち可視光線域で評価するためであり、最大の光透過率を25%以下としたのは、25%を超えると、評価する塗膜が装飾性のある塗膜として光遮蔽性に劣り、膜によって隠蔽できなくなるためである。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、前記溶媒(E)が、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1~4のアルコールと前記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒である撥水撥油性黒色膜形成用液組成物である。
本発明の第4の観点は、図1に示すように、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液と、シリカゾルゲル液と、溶媒とを混合して撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を製造する方法である。
本発明の第5の観点は、第4の観点に基づく発明であって、前記フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液が、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液にフッ素系化合物を添加混合して調製される撥水撥油性黒色膜形成用液組成物である。
本発明の第6の観点は、第4の観点に基づく発明であって、図1に示すように、前記シリカゾルゲル液が、ケイ素アルコキシドとアルコールと水の混合液に触媒を添加混合して調製される撥水撥油性黒色膜形成用液組成物の製造方法である。
本発明の第1の観点の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物(以下、単に液組成物ということもある。)は、前述した式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物(B)が結合した比表面積径10nm~45nmの酸窒化ジルコニウム粒子(C)と、シリカゾルゲル(D)と、溶媒(E)とを含み、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、前記フッ素系官能基成分(A)と前記カルボン酸化合物(B)と前記酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が、40質量%~80質量%であり、前記酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対する前記フッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)が0.01~0.50の範囲にある。この液組成物は、成膜したときに、フッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物が結合した酸窒化ジルコニウム粒子(C)を含むため、形成した膜が黒色であって、撥水性と撥油性が高い。また成膜したときに、比表面積径10nm~45nmの酸窒化ジルコニウム粒子(C)同士がシリカゾルゲル(D)により、膜中で結合するため、膜の強度と膜の密着性を向上させることができる。形成した膜の表面が平滑でないため、膜表面に指紋を付着させた後に、膜表面に指紋が目立ちにくい。
本発明の第2の観点の液組成物では、膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、波長380nm~780nmの範囲における最大の光透過率が25%以下であるため、所望の黒色度が得られる。
本発明の第3の観点の液組成物では、溶媒が、沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるメタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノールなどのアルコールが好ましい。乾燥時の蒸発速度を制御できるため、膜の外観を良好に形成することができる。
本発明の第4の観点の液組成物の製造方法では、図1に示すように、フッ素含
有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液と、シリカゾルゲル液と、溶媒とを混合して撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を製造する。これにより、粒子表面が撥水撥油性である酸窒化ジルコニウム粒子がシリカゾルゲル中に存在し、液組成物を成膜したときに、膜が黒色になるとともに膜に撥水撥油性が保持される。
有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液と、シリカゾルゲル液と、溶媒とを混合して撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を製造する。これにより、粒子表面が撥水撥油性である酸窒化ジルコニウム粒子がシリカゾルゲル中に存在し、液組成物を成膜したときに、膜が黒色になるとともに膜に撥水撥油性が保持される。
本発明の第5の観点の液組成物の製造方法では、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液にフッ素系化合物を添加混合するため、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子が均一に分散した水分散液が得られる。
本発明の第6の観点の液組成物の製造方法では、ケイ素アルコキシドとアルコールと水の混合液に触媒を添加混合して調製されたシリカゾルゲル液が、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子のバインダとして作用する。
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
〔撥水撥油性黒色膜形成用液組成物の製造方法〕
撥水撥油性黒色膜形成用液組成物は次の方法により、概略製造される。
図1に示すように、酸窒化ジルコニウム粒子11にカルボン酸化合物水溶液12を混合して酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液13を調製する。この水分散液13にフッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物14を混合してフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液15を調製する。一方、ケイ素アルコキシド21とアルコール22と水23とを混合し、この混合液に触媒24を添加混合してシリカゾルゲル液25を調製する。このシリカゾルゲル液25に溶媒26を混合して得られた希釈液27に、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液15を混合することにより、撥水撥油性黒色膜形成用液組成物30を製造する。以下、工程毎に詳しく述べる。
撥水撥油性黒色膜形成用液組成物は次の方法により、概略製造される。
図1に示すように、酸窒化ジルコニウム粒子11にカルボン酸化合物水溶液12を混合して酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液13を調製する。この水分散液13にフッ素系官能基成分(A)を含むフッ素系化合物14を混合してフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液15を調製する。一方、ケイ素アルコキシド21とアルコール22と水23とを混合し、この混合液に触媒24を添加混合してシリカゾルゲル液25を調製する。このシリカゾルゲル液25に溶媒26を混合して得られた希釈液27に、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液15を混合することにより、撥水撥油性黒色膜形成用液組成物30を製造する。以下、工程毎に詳しく述べる。
〔酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液の調製〕
先ず、酸窒化ジルコニウム(ZrON)粒子をカルボン酸化合物の水溶液に分散させて酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を調製する。酸窒化ジルコニウム粒子は、10nm~45nm、好ましくは12nm~40nmの比表面積径を有する。比表面積径が10nm未満では、酸窒化ジルコニウム粒子の凝集が起こりやすくなり、媒体中に分散しにくくなる。45nmを超えると、液組成物を成膜したときに、酸窒化ジルコニウム粒子が撥水撥油性膜から脱落する。
なお、本明細書において、酸窒化ジルコニウム粒子の比表面積径とは、BET法により測定した比表面積をSとし、酸窒化ジルコニウム粒子の密度をρとするとき、以下の式(A)から算出したものである。
比表面積径 = 6/ρS (A)
先ず、酸窒化ジルコニウム(ZrON)粒子をカルボン酸化合物の水溶液に分散させて酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を調製する。酸窒化ジルコニウム粒子は、10nm~45nm、好ましくは12nm~40nmの比表面積径を有する。比表面積径が10nm未満では、酸窒化ジルコニウム粒子の凝集が起こりやすくなり、媒体中に分散しにくくなる。45nmを超えると、液組成物を成膜したときに、酸窒化ジルコニウム粒子が撥水撥油性膜から脱落する。
なお、本明細書において、酸窒化ジルコニウム粒子の比表面積径とは、BET法により測定した比表面積をSとし、酸窒化ジルコニウム粒子の密度をρとするとき、以下の式(A)から算出したものである。
比表面積径 = 6/ρS (A)
本実施形態のカルボン酸化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸である。モノカルボン酸としては、ギ酸、乳酸、グルコン酸等が挙げられ、ジカルボン酸としては、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸等が挙げられ、トリカルボン酸としては、クエン酸、アコニット酸等が挙げられる。本実施形態では、これらの酸のアンモニア塩、ナトリウム塩、カリウム塩も用いられる。具体的には、クエン酸水素二アンモニウム、酒石酸カリウムナトリウム、グルコン酸ナトリウム等が例示できる。酸窒化ジルコニウム粒子とカルボン酸化合物の水溶液を混合すると、カルボン酸化合物が少量であっても分散剤として作用し、酸窒化ジルコニウム粒子が均一にこの水溶液に分散する。
〔フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液の調製〕
次に、調製された酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液中に、上述した式(1)又は式(2)で表されるフッ素系官能基成分を含むフッ素系化合物を添加して、酸窒化ジルコニウム粒子とフッ素系官能基成分とカルボン酸化合物とがナノコンポジット化された複合材料を合成する。これにより、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液が調製される。カルボン酸化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸の各COOH基の水素が外れた状態で、酸窒化ジルコニウム粒子に結合する。
次に、調製された酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液中に、上述した式(1)又は式(2)で表されるフッ素系官能基成分を含むフッ素系化合物を添加して、酸窒化ジルコニウム粒子とフッ素系官能基成分とカルボン酸化合物とがナノコンポジット化された複合材料を合成する。これにより、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液が調製される。カルボン酸化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸の各COOH基の水素が外れた状態で、酸窒化ジルコニウム粒子に結合する。
フッ素系官能基成分を含むフッ素系化合物は、下記一般式(3)又は式(4)で示される。これらの式(3)又は式(4)中のペルフルオロエーテル基としては、より具体的には、下記式(5)~(13)で示されるペルフルオロエーテル構造を挙げることができる。
また、上記式(3)及び式(4)中のXとしては、下記式(14)~(18)で示される構造を挙げることができる。なお、下記式(14)はエーテル結合、下記式(15)はエステル結合、下記式(16)はアミド結合、下記式(17)はウレタン結合、下記式(18)はスルホンアミド結合を含む例を示している。
ここで、上記式(14)~(18)中、R2及びR3は炭素数が0から10の炭化水素基、R4は水素原子又は炭素数1から6の炭化水素基である。R2及びR3の炭化水素基の例とは、メチレン基、エチレン基等のアルキレン基が挙げられ、R4の炭化水素基の例とは、メチル基、エチル基等のアルキル基の他、フェニル基等も挙げられる。
また、上記式(3)及び式(4)中、R1は、メチル基、エチル基等が挙げられる。
また、上記式(3)及び式(4)中、Zは、加水分解されてSi-O-Si結合を形成可能な加水分解性基であれば特に限定されるものではない。このような加水分解性基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基などのアリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのアラルキルオキシ基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、エトキシ基を適用することが好ましい。
ここで、上記式(3)又は式(4)で表されるペルフルオロエーテル構造を有するフッ素系官能基成分を含むフッ素系化合物の具体例としては、例えば、下記式(19)~(27)で表される構造が挙げられる。なお、下記式(19)~(27)中、Rはメチル基又はエチル基である。
上述したように、本実施形態の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物に含まれるフッ素系化合物は、分子内に酸素原子に炭素数が6以下の短鎖長のペルフルオロアルキル基とペルフルオロアルキレン基が複数結合したペルフルオロエーテル基を有しており、分子内のフッ素含有率が高いため、形成した膜に優れた撥水撥油性を付与することができる。
〔シリカゾルゲル液の調製〕
先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるアルコールと、水とを混合して混合液を調製する。このケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、耐久性の高い撥水撥油性膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
先ず、ケイ素アルコキシドとしてのテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランと、沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるアルコールと、水とを混合して混合液を調製する。このケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、そのオリゴマー又はテトラエトキシシラン、そのオリゴマーが挙げられる。例えば、耐久性の高い撥水撥油性膜を得る目的には、テトラメトキシシランを用いることが好ましく、一方、加水分解時に発生するメタノールを避ける場合は、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
沸点が120℃未満の炭素数1~4の範囲にあるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノールなどのアルコールが挙げられる。特にメタノール又はエタノールが好ましい。これらのアルコールは、ケイ素アルコキドとの混合がしやすいためである。上記水としては、不純物の混入防止のため、イオン交換水や純水等を使用するのが望ましい。ケイ素アルコキシドに、炭素数1~4の範囲にあるアルコールと水を添加して、好ましくは10℃~30℃の温度で5分~20分間撹拌することにより混合液を調製する。
上記調製された混合液に触媒を添加混合する。この触媒としては、有機酸、無機酸又はチタン化合物が例示される。このとき液温を好ましくは30℃~80℃の温度に保持して、好ましくは1時間~24時間撹拌する。これにより、シリカゾルゲル液が調製される。次の工程のために、シリカゾルゲル液に溶媒を添加混合して希釈液にする。溶媒としては、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒、或いは水と炭素数1~4のアルコールと前記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
上記溶媒が添加混合されたシリカゾルゲル液は、ケイ素アルコキシドを2質量%~50質量%、炭素数1~4の範囲にあるアルコールを20質量%~98質量%、水を0.1質量%~40質量%、触媒として0.01質量%~5質量%の割合で含有することが好ましい。
炭素数1~4の範囲にあるアルコールの割合を上記範囲に限定したのは、アルコールの割合が下限値未満では、ケイ素アルコキシドが、溶液中に溶解せず分離してしまうこと、ケイ素アルコキシドの加水分解反応中に反応液がゲル化しやすく、一方、上限値を超えると、加水分解に必要な水、触媒量が相対的に少なくなるために、加水分解の反応性が低下して、重合が進まず、膜の密着性が低下し易くなるためである。水の割合を上記範囲に限定したのは、下限値未満では加水分解速度が遅くなり易く、重合が進まず、撥水撥油性膜の密着性が不十分になり易い。一方、上限値を超えると加水分解反応中に反応液がゲル化し、水が多過ぎるためケイ素アルコキシド化合物がアルコール水溶液に溶解せず、分離する不具合を生じ易いからである。
シリカゾルゲル中のSiO2濃度(SiO2分)は1質量%~40質量%であるものが好ましい。このSiO2濃度が下限値未満では、重合が不十分であり、膜の密着性の低下やクラックの発生が起こり易く、上限値を超えると、相対的に水の割合が高くなりケイ素アルコキシドが溶解せず、反応液がゲル化する不具合を生じる。
有機酸、無機酸又はチタン化合物は加水分解反応を促進させるための触媒として機能する。有機酸としてはギ酸、シュウ酸が例示され、無機酸としては塩酸、硝酸、リン酸が例示され、チタン化合物としてはテトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、乳酸チタン等が例示される。触媒は上記のものに限定されない。上記触媒の割合を上記範囲に限定したのは、下限値未満では反応性に乏しく重合が不十分になり易く、膜が形成されにくい。一方、上限値を超えても反応性に影響はないが、残留する酸による不織布の繊維の腐食等の不具合を生じ易い。
上述したシリカゾルゲル液に溶媒を添加混合して調製された希釈液に、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を混合することにより、撥水撥油性黒色膜形成用液組成物が製造される。
〔撥水撥油性黒色膜形成用液組成物〕
本実施形態の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、前述したフッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物(B)が結合した酸窒化ジルコニウム粒子(C)と、シリカゾルゲル(D)と、溶媒(E)とを含む。このフッ素系官能基成分(A)は、上記の一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を有し、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、液組成物中、1質量%~15質量%含まれる。フッ素系官能基成分が1質量%未満では形成した膜に撥油性を付与できず、15質量%を超えると膜の弾き等が発生し成膜性に劣る。好ましいフッ素系官能基成分の含有割合は1.5質量%~12質量%である。
本実施形態の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、前述したフッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物(B)が結合した酸窒化ジルコニウム粒子(C)と、シリカゾルゲル(D)と、溶媒(E)とを含む。このフッ素系官能基成分(A)は、上記の一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を有し、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、液組成物中、1質量%~15質量%含まれる。フッ素系官能基成分が1質量%未満では形成した膜に撥油性を付与できず、15質量%を超えると膜の弾き等が発生し成膜性に劣る。好ましいフッ素系官能基成分の含有割合は1.5質量%~12質量%である。
またシリカゾルゲル(D)は、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、液組成物中、20質量%~95質量%含まれる。シリカゾルゲルが20質量%未満では、形成される膜の基材への密着性や強度に劣り、95質量%を超えると膜に撥油性を付与できない。更にフッ素系官能基成分(A)とカルボン酸化合物(B)と酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合は、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、液組成物中、40質量%~80質量%、好ましくは50質量%~70質量%である。更に酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)が0.01~0.50、好ましくは0.02~0.40の範囲にある。
液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、成分(A)と化合物(B)と粒子(C)が合計して、40質量%未満では、撥水撥油性膜の撥水撥油性能及び膜の黒色度が低下する。また合計して80質量%を超えると、シリカゾルゲル(D)の含有量が相対的に低くなり、液組成物を基材に成膜したときに、撥水撥油性膜が基材表面に堅牢に結着しなくなる。また質量比(A/C)が0.01未満では、撥水撥油性膜が撥水撥油性に劣り、0.50を超えると、撥水撥油性膜の基材表面への密着性が低下する。上記溶媒(E)は、上述したように、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒、或いは水と炭素数1~4のアルコールと前記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒である。例えば、水又はエタノールの含有割合が40質量%以下の水である。エタノールの含有割合を40質量%以下とするのは取扱い上の安全性のためである。また水とエタノールとを混合した混合溶媒にすることにより、乾燥速度が向上し、成膜性が改善される。
ペルフルオロエーテル構造の具体例としては、上述した式(19)~(27)で示される構造を挙げることができる。
本実施形態の液組成物がシリカゾルゲルを主成分として含むため、基材表面に成膜したときに、撥水撥油性膜の基材表面への密着性に優れ、剥離しにくい高い強度の撥水撥油性膜が得られる。また液組成物が上記一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素系官能基成分を含むため、形成した膜に撥水性と撥油性の効果がある。更に酸窒化ジルコニウム粒子を含むため、形成した膜が黒色になる。
〔撥水撥油性膜の基材表面への形成方法〕
本実施形態の撥水撥油性膜を基材表面に形成するには、撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を基材上に塗布した後に、大気中で室温乾燥させて上記液組成物を硬化することにより形成される。この基材としては、特に限定されないが、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、鉄等の金属板、窓ガラス、鏡等のガラス、タイル、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム等が挙げられる。上記液組成物の塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法、刷毛塗り法等が挙げられる。
本実施形態の撥水撥油性膜を基材表面に形成するには、撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を基材上に塗布した後に、大気中で室温乾燥させて上記液組成物を硬化することにより形成される。この基材としては、特に限定されないが、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、鉄等の金属板、窓ガラス、鏡等のガラス、タイル、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム等が挙げられる。上記液組成物の塗布方法としては、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法、刷毛塗り法等が挙げられる。
図2に示すように、基材1の表面に形成された撥水撥油性黒色膜2は、粒子表面がフッ素系官能基成分に覆われた多数のフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子3がバインダとしてのシリカゾルゲル4で結着して構成される。撥水撥油性黒色膜2はフッ素系官能基成分が結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子3を含むため、膜の撥油性能が保持される。また比表面積径10nm~45nmのフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子3同士がシリカゾルゲル4により、膜2中で結合するため、膜2の強度と膜2の密着性を向上させることができる。またフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子3の存在により、膜が黒色になるとともに、膜表面が凹凸になり、膜2表面に指紋を付着させた後に、膜表面に指紋が目立ちにくい利点もある。膜厚及び膜の黒色度は、酸窒化ジルコニウム粒子の粒子径と膜成分中の酸窒化ジルコニウム粒子の含有割合を変えることにより制御することができる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。先ず、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を調製する合成例1~5及び比較合成例1~4を説明し、次いでこれらの合成例及び比較合成例を用いた撥水撥油性黒色膜形成用液組成物の製造に関する実施例1~5及び比較例1~6を説明する。
〔フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を調製するための合成例1~5、比較合成例1~4〕
<合成例1>
二酸化ジルコニウム粉末を金属マグネシウムと混合し、窒素ガス中で還元して得られた比表面積径が12nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、ビーズミル装置(浅田鉄工社製、型式:ピコミルPCM-LR)により混合して濃度30質量%の酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(19)で表されるフッ素系化合物を7.50g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.50であった。
<合成例1>
二酸化ジルコニウム粉末を金属マグネシウムと混合し、窒素ガス中で還元して得られた比表面積径が12nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、ビーズミル装置(浅田鉄工社製、型式:ピコミルPCM-LR)により混合して濃度30質量%の酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(19)で表されるフッ素系化合物を7.50g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.50であった。
<合成例2>
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのフマル酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(20)で表されるフッ素系化合物を0.75g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とフマル酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.05であった。
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのフマル酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(20)で表されるフッ素系化合物を0.75g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とフマル酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.05であった。
<合成例3>
比表面積径が40nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としての酒石酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(21)で表されるフッ素系化合物を0.23g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物と酒石酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.015であった。
比表面積径が40nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としての酒石酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(21)で表されるフッ素系化合物を0.23g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物と酒石酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.015であった。
<合成例4>
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのマレイン酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(22)で表されるフッ素系化合物を2.70g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とマレイン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.18であった。
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのマレイン酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(22)で表されるフッ素系化合物を2.70g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とマレイン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.18であった。
<合成例5>
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのグルコン酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を1.50g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とグルコン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.10であった。
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのグルコン酸を溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を1.50g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とグルコン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.10であった。
<比較合成例1>
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を0.075g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.005であった。
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を0.075g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.005であった。
<比較合成例2>
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を9.00g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.60であった。
比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を9.00g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.60であった。
<比較合成例3>
比表面積径が80nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を2.25g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.15であった。
比表面積径が80nmの酸窒化ジルコニウム粒子を、カルボン酸化合物としてのクエン酸水素二アンモニウムを溶解した水と混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するカルボン酸化合物の割合は1質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を2.25g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物とクエン酸が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.15であった。
<比較合成例4>
カルボン酸化合物以外の高分子分散剤としてソルスパース20000(日本ルーブリゾール株式会社製)を用いた。この高分子分散剤と水と工業用アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)と比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するソルスパース20000の割合は10質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を2.25g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物と高分子分散剤が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.15であった。
カルボン酸化合物以外の高分子分散剤としてソルスパース20000(日本ルーブリゾール株式会社製)を用いた。この高分子分散剤と水と工業用アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)と比表面積径が20nmの酸窒化ジルコニウム粒子を混合し、合成例1と同様にして、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液(濃度30質量%)を調製した。酸窒化ジルコニウム粒子に対するソルスパース20000の割合は10質量%であった。得られた酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液50gをビーカーに入れ、そこに、上述した式(27)で表されるフッ素系化合物を2.25g添加し混合し、40℃で2時間撹拌し、フッ素系化合物と高分子分散剤が酸窒化ジルコニウム粒子に結合したフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液を得た。酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)は0.15であった。
以下の表1に、合成例1~5及び比較合成例1~4のフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液の内容を示す。なお、表1において、フッ素系化合物として式(19)~式(22)及び式(27)で表わされるフッ素含有シランの式中のRはすべてエチル基である。
〔撥水撥油性黒色膜形成用液組成物の製造のための実施例1~5、比較例1~6〕
<実施例1>
ケイ素アルコキシドとしてテトラメトキシシラン(TMOS)の3量体~5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)14.7gと、有機溶媒としてエタノール(EtOH)(沸点78.3℃)29.4gとを混合し、更にイオン交換水5.6gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒としてテトライソプロポキシチタン0.2gを添加し、40℃で2時間撹拌してシリカゾルゲル液を得た。得られたシリカゾルゲル液5.0gに水8.2gと工業アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)2.0gを添加し混合して希釈液を調製した。この希釈液に、合成例1で得られたフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液1.51gを添加し混合し、撥水撥油性の黒色膜形成用液組成物を得た。この内容を以下の表2に示す。
<実施例1>
ケイ素アルコキシドとしてテトラメトキシシラン(TMOS)の3量体~5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)14.7gと、有機溶媒としてエタノール(EtOH)(沸点78.3℃)29.4gとを混合し、更にイオン交換水5.6gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒としてテトライソプロポキシチタン0.2gを添加し、40℃で2時間撹拌してシリカゾルゲル液を得た。得られたシリカゾルゲル液5.0gに水8.2gと工業アルコール(AP-7、日本アルコール産業社製)2.0gを添加し混合して希釈液を調製した。この希釈液に、合成例1で得られたフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液1.51gを添加し混合し、撥水撥油性の黒色膜形成用液組成物を得た。この内容を以下の表2に示す。
表2において、『溶媒を除く液組成物中の含有割合』は、液組成物中の不揮発分又は固形分の含有割合の意味である。『(A)』、『(D)』及び『(A)+(B)+(C)』の各含有割合を示す。
<実施例2~5及び比較例1~6>
表2に示すように、実施例2~5では、表1に示す合成例2~5で得られたフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液をそれぞれ用い、それぞれの秤量を決定した。比較例1~6では、表1に示す合成例1、3及び比較合成例1~4で得られたフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液をそれぞれ用い、それぞれの秤量を決定した。このようにして、実施例2~5及び比較例1~6の各撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を調製した。
表2に示すように、実施例2~5では、表1に示す合成例2~5で得られたフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液をそれぞれ用い、それぞれの秤量を決定した。比較例1~6では、表1に示す合成例1、3及び比較合成例1~4で得られたフッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液をそれぞれ用い、それぞれの秤量を決定した。このようにして、実施例2~5及び比較例1~6の各撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を調製した。
<比較試験及び評価>
実施例1~5及び比較例1~6で得られた11種類の液組成物を、刷毛(末松刷子製ナイロン刷毛マイスター)を用いて、厚さ1.1mm、たて100mm、よこ100mmのガラス基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが1.0μmとなるように塗布し、11種類の塗膜を形成した。すべての塗膜を室温の大気雰囲気中にて3時間静置し、塗膜を乾燥させて上記ガラス基材上に11種類の膜を得た。これらの膜について、膜表面の水濡れ性(撥水性)、撥油性及び膜の外観を評価し、膜のセロテープ(登録商標)剥離試験(以下、密着性試験という。)を行った。また塗膜の光透過率を評価した。これらの結果を以下の表3に示す。
実施例1~5及び比較例1~6で得られた11種類の液組成物を、刷毛(末松刷子製ナイロン刷毛マイスター)を用いて、厚さ1.1mm、たて100mm、よこ100mmのガラス基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが1.0μmとなるように塗布し、11種類の塗膜を形成した。すべての塗膜を室温の大気雰囲気中にて3時間静置し、塗膜を乾燥させて上記ガラス基材上に11種類の膜を得た。これらの膜について、膜表面の水濡れ性(撥水性)、撥油性及び膜の外観を評価し、膜のセロテープ(登録商標)剥離試験(以下、密着性試験という。)を行った。また塗膜の光透過率を評価した。これらの結果を以下の表3に示す。
(1) 膜表面の撥水性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するガラス基材上の膜をこの液滴に近づけて膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の水濡れ性(撥水性)を評価した。水の接触角が90度以上を撥水性が『良好』であるとし、90度未満を撥水性が『不良』であるとした。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するガラス基材上の膜をこの液滴に近づけて膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の水濡れ性(撥水性)を評価した。水の接触角が90度以上を撥水性が『良好』であるとし、90度未満を撥水性が『不良』であるとした。
(2) 膜表面の撥油性(接触角)
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn-ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するガラス基材上の膜をこの液滴に近づけて膜に液滴を付着させる。この付着した油の接触角を測定した。静止状態で油が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を油の接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。油の接触角が50度以上を撥油性が『良好』であるとし、50度未満を撥油性が『不良』であるとした。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn-ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するガラス基材上の膜をこの液滴に近づけて膜に液滴を付着させる。この付着した油の接触角を測定した。静止状態で油が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を油の接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。油の接触角が50度以上を撥油性が『良好』であるとし、50度未満を撥油性が『不良』であるとした。
(3) 膜の外観
評価するガラス基材上の膜を目視で観察して、膜が透明であるか否か、また膜中で粒子が凝集しているか否かを調べた。膜が透明であるものを、その程度に応じて、『やや良好』又は『良好』とし、膜中で粒子が凝集しているものは、『不良』とした。
評価するガラス基材上の膜を目視で観察して、膜が透明であるか否か、また膜中で粒子が凝集しているか否かを調べた。膜が透明であるものを、その程度に応じて、『やや良好』又は『良好』とし、膜中で粒子が凝集しているものは、『不良』とした。
(4) 膜の密着性試験
評価するガラス基材上の膜に碁盤目状に1mm幅のクロスカットを施し、その碁盤目状にクロスカットされた膜に粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を貼り、JISK5600-5-6(クロスカット法)の碁盤目テープ法に準拠してセロテープ(登録商標)剥離試験(密着性試験)を行った。クロスカットを施したマス目100個を分母で表し、剥離試験後に基材上に残存するマス目の数を分子で表した。100/100である場合を『合格』とし、剥離箇所が生じた場合を『不合格』とした。
評価するガラス基材上の膜に碁盤目状に1mm幅のクロスカットを施し、その碁盤目状にクロスカットされた膜に粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」)を貼り、JISK5600-5-6(クロスカット法)の碁盤目テープ法に準拠してセロテープ(登録商標)剥離試験(密着性試験)を行った。クロスカットを施したマス目100個を分母で表し、剥離試験後に基材上に残存するマス目の数を分子で表した。100/100である場合を『合格』とし、剥離箇所が生じた場合を『不合格』とした。
(5) 膜の光透過率評価試験
評価するガラス基材上の塗膜について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U-4150)を用いて、塗膜を形成した基材にてベースラインを測定した後、波長380nm~780nmの可視光線域における光透過率を測定し、最大の光透過率(%)を求めた。
評価するガラス基材上の塗膜について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、U-4150)を用いて、塗膜を形成した基材にてベースラインを測定した後、波長380nm~780nmの可視光線域における光透過率を測定し、最大の光透過率(%)を求めた。
表3から明らかなように、比較例1では、酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の比率が0.005と低過ぎたため、膜の外観は良好で、膜の剥離試験は合格したけれども、水及びn-ヘキサデカンの接触角は悪く、膜の撥水撥油性能に劣っていた。380nm~780nmの波長範囲における塗膜の最大の光透過率は20.1%と極めて低く、黒色の膜が得られた。
比較例2では、酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対するフッ素系官能基成分(A)の比率が0.60と高過ぎたため、膜中の粒子が凝集しており、膜の外観が不良であった。また膜のセロテープ(登録商標)剥離試験も不合格であり、水及びn-ヘキサデカンの接触角は悪く、膜の撥水撥油性能も劣っていた。380nm~780nmの波長範囲における塗膜の最大の光透過率は23.5%と低く、黒色の膜が得られた。
比較例3では、酸窒化ジルコニウム粒子の比表面積径が80nmと大き過ぎたため、膜の外観は良好であったが、膜の剥離試験は不合格であった。また水及びn-ヘキサデカンの接触角は悪く、膜の撥水撥油性能も劣っていた。380nm~780nmの波長範囲における塗膜の最大の光透過率は28.6%と高く、黒色の膜が得られなかった。これは酸窒化ジルコニウム粒子の比表面積径が大き過ぎることから、膜の隠蔽力が低いためと考えられた。
比較例4では、酸窒化ジルコニウム粒子の分散剤に、カルボン酸化合物以外の高分子分散剤(ソルスパース20000)を用いたため、フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液とシリカゾルゲル液の希釈液とを混ぜた時点で、粒子の凝集が発生し、膜を形成することができなかった。そのため、水及びn-ヘキサデカンの接触角、膜の外観、膜の剥離試験及び膜の最大の光透過率の評価をすることができなかった。
比較例5では、フッ素系官能基成分(A)とカルボン酸化合物(B)と酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が35質量%と低過ぎ、相対的にシリカゾルゲル(D)の含有割合が増えたため、液組成物が寒天状になり、膜を形成することができなかった。そのため、水及びn-ヘキサデカンの接触角、膜の外観、膜の剥離試験及び膜の最大の光透過率の評価をすることができなかった。
比較例6では、フッ素系官能基成分(A)とカルボン酸化合物(B)と酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が82質量%と高過ぎ、相対的にシリカゾルゲル(D)の含有割合が減ったため、膜の最大の光透過率が19.7%であって、黒色の膜が得られたが、水及びn-ヘキサデカンの接触角は悪く、膜の撥水撥油性能に劣っていた。また膜の外観も不良で、膜の剥離試験も不合格であった。
それらに対して、実施例1~5では、酸窒化ジルコニウム粒子の比表面積径が10nm~45nmの範囲にあり、液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするときのフッ素系官能基成分(A)とカルボン酸化合物(B)と酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が40質量%~80質量%であり、『(A)/(C)』が0.01~0.50の範囲にあって、第1の観点の発明の範囲を満たしていることから、水及びn-ヘキサデカンの接触角及び膜の外観は、いずれも良好であり、膜の密着性試験はいずれも合格していた。また380nm~780nmの波長範囲における塗膜の最大の光透過率は4.2%~24.2%であって、25%以下であり、いずれも黒色の膜が得られた。特に、実施例3では、液組成物中の酸窒化ジルコニウム粒子の含有割合が高かったため、最大の光透過率が4.2%と非常に低かった。
本発明の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物は、デザイン性が求められる台所、洗面所等のインテリア製品や、車両のインストルメントパネル、エアコン、カーナビ、オーディオ等の車両内装部材等において、汚れを防止する分野に用いられる。
1 基材
2 撥水撥油性黒色膜
3 フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子
4 シリカゾルゲル
2 撥水撥油性黒色膜
3 フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子
4 シリカゾルゲル
Claims (6)
- 下記の一般式(1)又は式(2)で示されるペルフルオロエーテル構造を含むフッ素系官能基成分(A)及びカルボン酸化合物(B)が結合した比表面積径10nm~45nmの酸窒化ジルコニウム粒子(C)と、シリカゾルゲル(D)と、溶媒(E)とを含み、
液組成物の不揮発分の全量を100質量%とするとき、前記フッ素系官能基成分(A)とカルボン酸化合物(B)と前記酸窒化ジルコニウム粒子(C)とを合計した含有割合が、40質量%~80質量%であり、
前記酸窒化ジルコニウム粒子(C)に対する前記フッ素系官能基成分(A)の質量比(A/C)が0.01~0.50の範囲にあることを特徴とする撥水撥油性黒色膜形成用液組成物。
- 膜厚1.0μmとなる条件で塗膜を形成したときに、この塗膜の波長380nm~780nmの範囲における最大の光透過率が25%以下である請求項1記載の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物。
- 前記溶媒(E)が、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1~4のアルコールと前記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒である請求項1又は2記載の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物。
- フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液と、シリカゾルゲル液と、溶媒とを混合して撥水撥油性黒色膜形成用液組成物を製造する方法。
- 前記フッ素含有酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液が、酸窒化ジルコニウム粒子の水分散液にフッ素系化合物を添加混合して調製される請求項4記載の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物の製造方法。
- 前記シリカゾルゲル液が、ケイ素アルコキシドとアルコールと水の混合液に触媒を添加混合して調製される請求項4記載の撥水撥油性黒色膜形成用液組成物の製造方法。
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