JP7266438B2 - 防汚性膜形成用液組成物 - Google Patents
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Description
本実施形態の防汚性膜形成用液組成物の製造方法を説明する。この製造方法では、防汚性膜形成用液組成物は、シラン化合物の加水分解物(シリカゾルゲル)を溶媒で希釈して製造される。先ず、ケイ素アルコキシドと、上述したフッ素含有官能基成分としてのフッ素含有シランと、炭素数2~7のアルキレン基含有成分としてのエポキシ基含有シランと、炭素数1~4の範囲にあるアルコールと、水とを混合して混合液を調製する。混合液を調製する際に、アルコールとともに、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素を加えて混合してもよい。次いでこの混合液と触媒とを混合してケイ素アルコキシドとエポキシ基含有シランとを加水分解することによりシリカゾルゲルである加水分解物を調製する。上記アルキレン基含有成分は、エポキシ基の開環反応によって得られるため、アルキレン基の元になるエポキシ基含有シランで混合する。
水の割合を上記範囲に限定したのは、下限値の0.1質量%未満では加水分解速度が遅くなるために、重合が進まず、塗布膜の密着性並びに成膜性が不十分になり、一方、上限値の40質量%を超えると加水分解反応中に反応液がゲル化し、水が多過ぎるためケイ素アルコキシド化合物がアルコール水溶液に溶解せず、分離する不具合を生じるからである。
触媒の割合を上記範囲に限定したのは、下限値の0.01質量%未満では反応性に乏しく重合が不十分になるため、膜が形成されず、一方、上限値の5質量%を超えても反応性に影響はないが、残留する酸による基材の腐食等の不具合を生じるからである。
本実施の形態の防汚性膜形成用液組成物は、上記製造方法で製造され、シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、このシリカゾルゲルを100質量%とするときに、シリカゾルゲルが上記の一般式(1)又は(2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基を0.5~10質量%と炭素数2~7のアルキレン基を0.5~20質量%含み、上記溶媒が、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1~4のアルコールと上記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする。
本実施の形態の防汚性膜は、例えば、基材であるステンレス鋼(SUS)、鉄、アルミニウム等の金属板上、窓ガラス、鏡等のガラス上、タイル上、ポリ塩化ビニル(PVC)等のプラスチック上、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム上に、上記液組成物を、スクリーン印刷法、バーコート法、ダイコート法、ドクターブレード、スピン法等により塗布した後に、室温乾燥もしくは乾燥機等により室温~130℃の温度で乾燥させることにより、形成される。
ケイ素アルコキシドとしてテトラメトキシシラン(TMOS)の3~5量体(三菱化学社製、商品名:MKCシリケートMS51)8.01gと、アルキレン基成分となるエポキシ基含有シランとして3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS:信越化学工業社製、商品名:KBM-403)0.55gと、フッ素含有官能基成分として式(19)で表わされるフッ素含有シラン(R:エチル基)0.09gと、有機溶媒としてエタノール(沸点78.3℃)19.0gとを混合し、更にイオン交換水2.37gを添加して、セパラブルフラスコ内で25℃の温度で5分間撹拌することにより混合液を調製した。またこの混合液に、触媒として濃度100質量%の酢酸0.03gを添加し、40℃で2時間撹拌した。これにより、シラン化合物のシリカゾルゲルの加水分解物Iを調製した。この調製内容を表1に示す。
実施例2~5及び比較例1~4について、表1及び表2に示すように、アルキレン基成分となるエポキシ基含有シラン、フッ素含有官能基成分となるフッ素含有シラン及び触媒の各種類を選定し、実施例1に示されるケイ素アルコキシド、エポキシ基含有シラン、フッ素含有シラン、エタノール及び水の各添加量をそれぞれ変更した。それ以外は実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~4のシラン化合物のシリカゾルゲルの加水分解物II~IXを調製した。なお、表1及び表2において、フッ素含有官能基成分として式(19)~式(27)で表わされるフッ素含有シランの式中のRはすべてエチル基である。また表1に示されるEDTAはエチレンジアミン四酢酸の略称である。これらのシリカゾルゲルの加水分解物II~IXに表3に示すように、実施例1と同一の工業用アルコール又はこの工業用アルコールとトルエンを質量比1対1で混合した溶媒をそれぞれ添加し、実施例1と同様にして、防汚性膜形成用液組成物を得た。
比較例5では、表1及び表2に示すように、フッ素含有シランとして、特許文献1に記載されたペルフルオロアミン構造を持つ含窒素フッ素系化合物の下記式(29)で示されるフッ素系化合物を準備した。このフッ素系化合物0.09gを用いた以外、実施例1と同様にして、シラン化合物のシリカゾルゲルの加水分解物Xを調製した。また表3に示すように、この加水分解物X(1.5g)を実施例1と同一の工業用アルコール6gに溶解し、防汚性膜形成用液組成物を得た。
実施例1~5及び比較例1~5で得られた10種類の防汚性膜形成用液組成物を、バーコーター(安田精機製作所製、型番No.3)を用いて、厚さ2mm、たて150mm、よこ75mmのSUS304基材上にそれぞれ乾燥後の厚さが0.1~1μmとなるように塗布し、10種類の塗膜を形成した。ここで、先ずバーコーターによる塗布時の成膜性を評価した。続いてすべての塗膜を室温にて、3時間乾燥して10種類の防汚性が付与された膜を得た。これらの膜について、虹色の干渉縞の有無、膜表面の撥水性、撥油性、n-ヘキサデカン(HD)の転落性、膜の強度、膜の基材への密着性及びカルキ付着防止性を評価した。これらの結果を表4に示す。
成膜性は、膜を目視にて評価した。膜全体に弾き、筋等の発生がなく、液組成物を均一に塗布できたものは「良好」とし、膜の一部に僅かに弾き、筋等が生じたものは「可」とし、膜全体に弾き、筋等が生じたものは「不良」とした。
膜を目視して、膜全体にわたって虹色の干渉縞の発生の有無を調べ、干渉縞が無いものは「無し」、有るものは「有り」とした。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS304基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、膜表面の撥水性を評価した。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn-ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS304基材上の防汚性膜をこの液滴に近づけて防汚性膜に液滴を付着させる。この付着した油の接触角を測定した。静止状態で油が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を油の接触角とし、膜表面の撥油性を評価した。膜の表面状態が凸凹になって荒れていると通常よりも高い値を示すため、接触角が高過ぎる場合には、成膜性が不良であるとの判断基準となる。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに25℃±1℃のn-ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、水平に置いたSUS304基材上にシリンジからn-ヘキサデカンを9μLの液滴を滴下し、基材を2度/分の速度で傾斜させ、n-ヘキサデカンの液滴が移動開始するときの基材の傾けた角度を測定した。(4)の接触角が低くてもこの角度が小さい方が防汚性が高いことを意味する。
水を含ませたスポンジで、膜を20回擦り、膜を目視にて評価した。膜に全く剥離が生じていない場合を「良好」とし、膜の一部に僅かに剥離が生じている場合を「可」とし、膜の大部分に剥離が生じている場合を「不良」とした。
75mm×150mm×厚さ2mmのSUS304基材上に塗膜を形成した。塗膜の上に、セロファンテープを貼り付けた後、テープを剥がしたときに、塗膜がテープ側に全く付かなかった場合を密着性が「良好」とし、塗膜の大部分がテープ側に貼り付き、SUS304基材界面で塗膜が剥がれてしまった場合を密着性が「不良」とした。
75mm×150mm×厚さ2mmのSUS304基材上に塗膜を形成した。純水に、35%塩酸を用いて、pH4に調整した水溶液を100g準備し、炭酸カルシウム1.5mgを添加し、撹拌、溶解した。得られた炭酸カルシウム水溶液100μLを、形成した塗膜上に滴下し、室温で5時間乾燥して滴下跡の状態を観察した。次亜塩素酸カルシウムからなるカルキの跡がほぼないものを「良好」とし、滴下した跡がカルキとして残っているものもしくは、白く変色しているものを「不良」とした。
Claims (3)
- シリカゾルゲルを主とする成分並びに溶媒を含み、
前記シリカゾルゲルを100質量%とするときに、前記シリカゾルゲルが下記の一般式(1)又は(2)で示されるペルフルオロエーテル構造のフッ素含有官能基を0.5~10質量%と、炭素数3~7のアルキレン基を0.5~20質量%とを含み、前記炭素数3~7のアルキレン基がエポキシ基含有シラン由来の基であり、
前記溶媒が、水と炭素数1~4のアルコールとの混合溶媒であるか、或いは水と炭素数1~4のアルコールと前記炭素数1~4のアルコール以外の有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする防汚性膜形成用液組成物。
- 前記エポキシ基含有シランが2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の防汚性膜形成用液組成物。
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