JP6694718B2 - 親水撥油性回復剤及び親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法、並びに親水撥油性被膜 - Google Patents

親水撥油性回復剤及び親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法、並びに親水撥油性被膜 Download PDF

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Description

本発明は、親水撥油性回復剤及び親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法、並びに親水撥油性被膜に関するものである。
建築物の外壁や屋根、航空機、船舶、自動車等のボディー、ガラス、ホイール等、乗用車のサイドミラー、エアコンの熱交換器、電線、アンテナ等では、表面に汚れが付着し難く、かつ付着した汚れを簡単に落とせるような優れた防汚性や易洗浄性を有することが望まれている。
ここで、防汚性を示す材料としては、表面が撥油性を有するものが知られている。一方、易洗浄性を示す材料としては、表面が親水性を有するものが知られている。基材の表面が高い親水性を有することにより、表面に付着した汚れを水で洗い流すことが可能となる。
耐汚れ性に優れた材料として、特許文献1には樹脂被覆金属材が開示されている。具体的には、外面に設けられたフッ素樹脂にプラズマ表面処理や火炎処理、オゾン処理などを施すことにより、表面を親水化した材料が提案されている。
しかしながら、使用環境や洗浄頻度等によって基材表面の撥油性や親水性が初期の値よりも低下してしまうため、防汚性や易洗浄性が損なわれてしまうという問題があった。
特開平05−177766号公報
ところで、特許文献1の材料では、基材表面のフッ素樹脂層に再びプラズマ表面処理や火炎処理、オゾン処理などを施すことにより、表面の親水性を回復する方法が考えられる。しかしながら、屋外に設置された場合や、他の材料と組み合わされている場合では、上述した表面処理を実施することが困難であるのが実状であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便な方法によって高い防汚特性を繰り返し回復させることが可能な親水撥油性回復剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
有機溶媒と、
水と、を含む、親水撥油性回復剤。
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上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
上記式(3)及び(4)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
[2] 上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
アルコキシドの加水分解物と、
有機溶媒と、
水と、を含む、親水撥油性回復剤。
[3] 基材上に形成された、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、親水撥油性の被膜に塗布したあとに、経時変化によって親水撥油性が低下した前記被膜の親水撥油性を回復させる回復剤であって、
上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
有機溶媒と、
水と、を含む、親水撥油性回復剤。
[4] 基材上に形成された、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、親水撥油性の被膜に塗布したあとに、経時変化によって親水撥油性が低下した前記被膜の親水撥油性を回復させる回復剤であって、
上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
ケイ素アルコキシドの加水分解物と、
有機溶媒と、
水と、を含む、親水撥油性回復剤。
[5] 当該親水撥油性回復剤における前記含窒素フッ素系化合物の割合が、0.1〜10.0質量%である、前項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤。
[6] 当該親水撥油性回復剤における前記有機溶媒の割合が30〜90質量%であり、前記水の割合が10〜60質量%である、前項1乃至5のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤。
[7] 前記有機溶媒が、水との親和性の高い極性溶媒である、前項1乃至6のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤。
[8] 基材上に形成された、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、親水撥油性の被膜の表面に、前項1乃至7のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤を塗布した後、溶媒成分を除去する、親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法。
[9] 基材上に形成された、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、被膜と、
上記含窒素フッ素系化合物と、上記ケイ素アルコキシドの加水分解物とを含む被覆層と、を備え、
前記被膜上に1以上の前記被覆層が積層されている、親水撥油性被膜。
なお、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物は、下記式(5)又は(6)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として製造することができる。
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上記式(5)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
上記式(6)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。
また、上記式(5)及び(6)中、Yは、CO又はSOである。
さらに、上記式(5)及び(6)中、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
本発明の親水撥油性回復剤は、親水撥油性が低下した基材の表面の親水撥油性を回復させることができるため、高い防汚特性を繰り返し回復させることが可能である。
本発明の親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法は、簡便な方法によって親水撥油性が低下した基材の表面の親水撥油性を回復させることが可能である。
本発明の親水撥油性被膜は、優れた親水撥油性を有する。
以下、本発明を適用した一実施形態である親水撥油性回復剤について、その使用方法(すなわち、親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法)ともに詳細に説明する。
本発明を適用した一実施形態である親水撥油性回復剤(以下、単に「リペア液」ということもある)は、親水撥油性を有する所定の被膜が経時変化によって親水撥油性能が低下した際に、当該被膜の親水撥油性を回復させるために使用するものである。
また、本実施形態のリペア液を用いて親水撥油性を回復させる対象となる被膜は、後述するように、(A)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(以下、単に、「含窒素フッ素系化合物」又は「成分(A)」、あるいは「親水撥油剤」ということもある)と、(B)平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子(以下、「成分(B)」又は「酸化物ナノ粒子」ということもある)と、(C)バインダ成分(以下、「成分(C)」ということもある)と、を含んで概略構成されている。
より具体的には、上述した(A)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物、(B)酸化物微粒子、(C)バインダ成分及び(D)有機溶媒(以下、「成分(D)」ということもある)を含有した塗布液(被膜形成用の組成物)を基板に塗布した後に、焼成して硬化させることにより得られるものである。
<被膜形成用の組成物>
そこで、先ず、上述した被膜形成用の組成物(以下、単に、「組成物」ということもある)の構成について説明する。
組成物は、(A)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物と、(B)平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、(C)バインダ成分と、(D)有機溶媒と、を含んで概略構成されている。
(A)含窒素フッ素系化合物
本実施形態に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物としては、分子中に撥油性賦与基と親水性賦与基とを含み、親水性及び撥油性を同時に発現する(すなわち、親水撥油特性を有する)化合物であれば、特に限定されるものではない。このような含窒素フッ素系化合物としては、具体的には、下記一般式(1)〜(4)で表すことができる。
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ここで、上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、上記式(3)及び(4)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。また、Zが窒素原子又はCF基を含む場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。ここで、前記Rは、直鎖状又は分岐状の有機基であってもよい。また、前記Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
また、組成物は、上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物、もしくは上記式(1)〜(4)で示される含窒素フッ素系化合物からなる群から選ばれる2種以上の含窒素フッ素系化合物を含む混合物を、(A)含窒素フッ素系化合物として用いてもよい。
以下、(A)含窒素フッ素系化合物について、詳細に説明する。
(直鎖状の含窒素フッ素系化合物)
上記式(1)又は上記式(2)に示す、直鎖状(又は分岐状)の含窒素フッ素系化合物では、RfとRfからなる含窒素ペルフルオロアルキル基およびRfからなる含窒素ペルフルオロアルキレン基が、撥油性賦与基を構成する。
また、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性賦与基であるRf〜Rf中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
上記式(1)又は上記式(2)中の上記撥油性賦与基の構造の具体例としては、例えば、下記式(7)〜(24)の構造が挙げられる。
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(環状の含窒素フッ素系化合物)
上記式(3)又は上記式(4)に示す、環状の含窒素フッ素系化合物では、Rf、RfおよびRfからなる含窒素ペルフルオロアルキレン基、さらにはZが、撥油性賦与基を構成する。
また、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物では、上記撥油性賦与基であるRf〜Rf及びZ中の、フッ素が結合した炭素数の合計が4〜18個の範囲であることが好ましく、5〜12個の範囲にあることがより好ましい。フッ素が結合した炭素数が4未満であると、撥油効果が不十分であるために好ましくない。
上記式(3)又は上記式(4)中の上記撥油性賦与基の構造の具体例としては、例えば、下記式(25)〜(49)の構造が挙げられる。
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ここで、上記式(2)及び上記式(4)中、Rは、分子鎖中において撥油性賦与基と親水性賦与基とを繋ぐ連結基である。連結基Rの構造は、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。連結基Rとしては、具体的には、例えば、酸素原子[−O−]、カルボニル基[−C(=O)−]、イミノ基[−NH−]、スルホニル基[−S(=O)−]、−OP(=O)(O)O−基、炭素数1〜20の炭化水素基及びこれらの組合せを挙げることができる。また、連結基Rは、ポリオキシアルキレン基及びエポキシ基から選択される1種以上を含んでいてもよい。炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよいし不飽和炭化水素基であってもよい。また、炭化水素基は鎖状炭化水素基であってもよいし、環状炭化水素基であってもよい。鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよいし分岐状であってもよい。炭化水素基の例としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を挙げることができる。イミノ基及び炭化水素基は置換基を有していてもよい。
また、連結基Rは、分子鎖中にエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合から選択される1種以上の結合を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。アミド結合は、カルボン酸アミド結合及びスルホンアミド結合を含む。エステル結合は、カルボン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合及びリン酸エステル結合を含む。
なお、連結基Rは、含窒素フッ素系化合物に付与したい特性に応じて、適宜選択して導入することが好ましい。具体的には、例えば、溶媒への溶解性を調整したい場合、基材との密着性を改善して耐久性を向上させたい場合、樹脂成分等との相溶性を向上させたい場合等が挙げられる。その方法としては、分子間相互作用に影響を及ぼす極性基の有無や種類を調整する、直鎖状又は分岐構造とした炭化水素基の鎖長を調整する、基材や樹脂成分に含まれる化学構造の一部と類似の構造を導入する、などがある。
また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
以下、親水性賦与基Xを場合分けして、(A)含窒素フッ素系化合物の構造を説明する。
(アニオン型)
親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記Xは、末端に「−CO」、「−SO」、「−OSO」、「−OP(OH)O」、「−OPO 」、「=OPO」又は「−PO(OH)(OM2−y」(Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Al、R;R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20まで、好ましくは炭素数1〜10までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基、yは0〜2の整数)を有する。なお、上述した末端の構造例は、上記Mが1価の場合を示したものである。また、上記Mが2価の場合、上記Mに同一のアニオンが2個結合していてもよいし、異なる2種のアニオンが結合していてもよい。
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)が挙げられる。また、アルカリ土類金属しては、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)が挙げられる。
また、第4級アンモニウム塩(R)としては、R〜Rが水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20まで、好ましくは炭素数1〜10までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基であれば、特に限定されるものではない。ここで、上記アルキル基の炭素数が20以下であれば、親水撥油性を損なうことがないために好ましい。より具体的には、Rが全て同じ化合物としては、例えば、(CH、(C、(C、(C、(C11、(C13、(C15、(C17、(C19、(C1021等が挙げられる。また、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが(C)、(C13)、(C17)、(C19)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。さらに、Rが全てメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C17)、(C1021)、(C1225)、(C1429)、(C1633)、(C1837)等の化合物が挙げられる。更にまた、Rがメチル基の場合としては、例えば、Rが全て(C)、(C17)等の化合物が挙げられる。
ところで、水と接触させて使用するような用途においては、水に対する耐久性や親水撥油効果の持続性を有することが望まれる。上記観点から、上述した組成物において、(A)含窒素フッ素系化合物は、水への溶解性が低い難溶性化合物であることが望ましい。すなわち、(A)含窒素フッ素系化合物は、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、対イオンである上記Mが、アルカリ土類金属やMg、Alであることが好ましく、特にCa、Ba、Mgが親水撥油性に優れ、水への溶解度が低いことから好ましい。
ここで、親水性賦与基Xがアニオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される直鎖状の含窒素フッ素系化合物の構造の具体例(但し、対イオンであるMの構造を除く)としては、例えば、下記式(50)〜(117)の構造が挙げられる。
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これに対して、上記式(3)又は上記式(4)で示される、環状の含窒素フッ素系化合物の構造の具体例(但し、対イオンであるMの構造を除く)としては、例えば、下記式(118)〜(189)の構造が挙げられる。
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(カチオン型)
親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記Xは、末端に「−N・Cl」、「−N・Br」、「−N・I」、「−N・CHSO 」、「−N・RSO 」、「−N・NO 」、「(−NCO 2−」又は「(−NSO 2−」(R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20まで、好ましくは炭素数1〜10までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)を有する。ここで、炭素数が20以下であれば、親水撥油性を損なうことがないために好ましい。
ここで、親水性賦与基Xがカチオン型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される、直鎖状の含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(190)〜(223)の構造が挙げられる。
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これに対して、上記式(3)又は上記式(4)で示される、環状の含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(224)〜(258)の構造が挙げられる。
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(両性型)
親水性賦与基Xが両性型である場合、上記Xは、末端に、カルボキシベタイン型の「−N(CHCO 」、スルホベタイン型の「−N(CHSO 」、アミンオキシド型の「−N」又はホスホベタイン型の「−OPO (CH10」(nは1〜5の整数、R及びRは水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R10は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルキレン基)を有する。ここで、炭素数が10以下であれば、親水撥油性を損なうことがないために好ましい。
ここで、親水性賦与基Xが両性型である場合、上記式(1)又は上記式(2)で示される、直鎖状の含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(259)〜(309)の構造が挙げられる。
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これに対して、上記式(3)又は上記式(4)で示される、環状の含窒素フッ素系化合物の構造の具体例としては、例えば、下記式(310)〜(375)の構造が挙げられる。
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なお、上述した組成物に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物の構造の具体例は一例であって、本発明の技術範囲は上記具体例に限定されるものではない。すなわち、本実施形態に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物は、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基と、アニオン型、カチオン型及び両性型のいずれかの親水性賦与基と、を分子中に少なくともそれぞれ1以上有していればよい。
また、上述した(A)含窒素フッ素系化合物は、夫々単独で親水撥油性を充分発揮するが、実用環境は、酸、アルカリ、油等を含み千差万別であり、実用的な耐久性を加味した場合、含窒素フッ素系化合物を適宜組み合わせて、実際環境に対する耐久性を高めることが、望ましい。
なお、本発明に用いる親水撥油剤は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した本実施形態に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物の構造の具体例においては、含窒素ペルフルオロアルキル基からなる撥油性賦与基として、式(1)及び式(2)中に示すRf及びRfが対称である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、非対称であってもよい。
また、上記(A)含窒素フッ素系化合物は、分子中に同一又は異なる撥油性賦与基を2以上有していてもよい。さらに、分子中に撥油性賦与基を2以上有する場合、分子の両末端に設けられていてもよいし、分子鎖中に設けられていてもよい。
また、上記(A)含窒素フッ素系化合物は、分子中に同一又は異なる親水性賦与基を2以上有していてもよい。
また、上記(A)含窒素フッ素系化合物は、連結基中に同一又は異なる結合を2以上有していてもよい。さらに、連結基がポリマー型である場合、ユニットの繰り返し数や結合順序は特に限定されない。
次に、本実施形態に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物の製造方法について説明する。
本実施形態に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物の製造方法は、下記式(5)又は(6)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(1)〜(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。より具体的には、下記式(5)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(1)又は上記式(2)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。また、下記式(6)で示される含窒素ペルフルオロアルキル基を有するカルボン酸ハロゲン化物又はスルホン酸ハロゲン化物を原料として、上記式(3)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する。
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ここで、上記式(5)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、炭素数1〜4であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、上記式(6)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜4であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。
また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。また、Zが窒素原子又はCF基を含む場合、Zから分岐したペルフルオロアルキル基が当該Zに結合していてもよい。
また、上記式(5)及び(6)中、Yは、CO又はSOである。
さらに、上記式(5)及び(6)中、Aは、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選択されるいずれか1のハロゲン原子である。
なお、本実施形態に適用可能な(A)含窒素フッ素系化合物の製造方法は、上記式(1)〜(4)中に示すXの種類により異なる製造方法となる。以下に、場合分けして説明する。
(アニオン型の場合)
先ず、上記式(1)又は上記式(3)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、YがCOの場合(カルボン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3)へ、YがSOの場合(スルホン酸系の場合)は水溶液化したM(OH)(MはLi,Na,K,R,Ca,Mg,Al等、mは、Li,Na,K等1価カチオンの場合は1、Ca,Mg等2価カチオンの場合は2、Al等3価カチオンの場合は3、R〜Rは水素原子またはそれぞれ独立した炭素数1〜20までの直鎖もしくは分岐状のアルキル基)へ、それぞれ滴下して中和反応させた後に乾固し、目的物が可溶かつ副生するM(A)、M(A)またはM(A)が不溶の溶媒を用いて乾固して得た個体から目的物を抽出し、さらにこの抽出溶媒を乾固することにより、目的物を得ることができる。必要に応じて、この塩を硫酸等の酸を用いてカルボン酸またはスルホン酸に変換し、蒸留した後に再度M(OH)で所望の塩にすることで、高純度化することも可能である。
次に、上記式(2)又は上記式(4)に示す含窒素フッ素系化合物を製造する場合について説明する。
具体的には、例えば、撥油性賦与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、アミド結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、アミノアルキルカルボン酸やアミノフェニルスルホン酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、アミド結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性賦与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、エステル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、ヒドロキシフェニル有機酸とを反応させて、次に、水酸化アルカリと反応させることにより、エステル結合を有するカルボン酸又はスルホン酸のアルカリ金属塩が得られる。
また、例えば、撥油性賦与基(含窒素ペルフルオロアルキル基)とアニオン型の親水性賦与基との間に、エーテル結合を有する連結基Rを導入する場合、先ず、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)や水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)で還元して、含窒素ペルフルオロアルキル基を持つアルコールを生成する。次いで、t−ブトキシカリウム等でカリウムアルコラートにしてから、ハロゲン化有機酸の金属塩と反応させることにより、エーテル結合を持つカルボン酸のアルカリ金属塩が得られる。
(カチオン型の場合)
具体的には、例えば、上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性賦与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとをエーテル結合させて末端第3級アミンにした後、ヨウ化メチル(CHI)や臭化メチル(CHBr)、ジメチル硫酸((CHSO)等のアルキル化剤によって第4級化することにより、カチオン型の親水性賦与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
(両性型の場合)
具体的には、例えば、カルボキシベタイン型の場合、先ず、上記式(5)又は上記式(6)に示す原料のうち、含窒素ペルフルオロアルキルカルボニルフルオリド又はスルホニルフルオリドと、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアミンとをアミド結合させて、または、N,N−ジアルキルアミノアルキレンアルコールとエーテル結合させて、末端第3級アミンにした後、モノクロル酢酸ナトリウムと反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、スルホベタイン型の場合、上述したように末端第3級アミンにした後、1,3−プロパンスルトン等に代表される環状スルホン酸エステル化合物と反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、アミンオキシド型の場合、上述したように末端第3級アミンにした後、過酸化水素と反応させることにより、両性型の親水性賦与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
また、例えば、ホスホベタイン型の場合、含窒素ペルフルオロカルボニルフルオリドを還元してアルコール体にしたもの、又は、含窒素ペルフルオロアルキルスルホニルフルオリドをアミノアルコールでスルホンアミド化して末端に水酸基を導入したものを、例えばトリメチルアミン等の塩基の存在下でオキシ塩化リンと反応させて、含窒素ペルフルオロアルキル基を有するジクロロリン酸エステルを得る。次に、得られた含窒素ペルフルオロアルキル基を有するジクロロリン酸エステルをブロモエタノールと反応させ、次いで炭酸銀触媒下でトリメチルアミンを反応させて四級アンモニウム塩とし、最後に加水分解することにより、両性型の親水性賦与基を有する含窒素フッ素系化合物が得られる。
(B)酸化物微粒子
(B)酸化物微粒子としては、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子(酸化物ナノ粒子)であれば、特に限定されるものではない。このような酸化物微粒子としては、具体的には、例えば、シリカ、ITO(Indium Tin Oxide)、及び、In、Sn、Zn、Ti又はWの酸化物等が挙げられる。より具体的には、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO,SnO,SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化タングステン(WO)等が挙げられる。
ここで、例えば、酸化物微粒子として、シリカを用いた場合、当該組成物を用いて形成した被膜は、塗膜の硬さや透明性が高く、膜が低屈折率となり光の透過性が向上する。
また、チタニアを用いた場合、当該組成物を用いて形成した被膜は、光触媒機能によるセルフクリーニング機能を有し、高屈折率の膜となる。
また、ITOを用いた場合、当該組成物を用いて形成した被膜に、導電性による帯電防止機能を付与することができる。
なお、本明細書において、酸化物微粒子の平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)で観察した粒子形状の内、200点の粒子サイズを画像解析により測定したものの平均値をいう。
また、酸化物微粒子の形状は、球状、異方性のある扁平形状、数珠状に繋がった形状、球状粒子が不定型に繋がった形状等であってもよい。その際、酸化物微粒子の平均一次粒子径は、上述したTEM観察の際の画像解析により、球状に近似した際の大きさをいうものとする。
酸化物微粒子の平均一次粒子径は、2〜50nmの範囲が好ましく、5〜35nmの範囲がより好ましい。酸化物微粒子の平均一次粒子径が2nm以上であると、安定に存在する酸化物微粒子を入手することができるために好ましい。また、酸化物微粒子の平均一次粒子径が50nm以下であると、組成物を成膜した際の膜の透明性が高くなるために好ましい。
これに対して、酸化物微粒子の平均一次粒子径が50nmを超えると、凝集粒子が出来た際の二次粒子径が容易に200nmを超えてしまうため、可視光領域のサイズに入り、曇りとして観察されるために好ましくない。
また、酸化物微粒子としては、上述に列挙された群から選ばれる一種又は二種以上を含む混合物を、(B)酸化物微粒子(酸化物ナノ粒子)として用いてもよい。
(C)バインダ成分
(C)バインダ成分としては、被膜形成用の組成物を用いた膜形成の際に一般的に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。バインダ成分(結合剤ともいう)としては、具体的には、例えば、樹脂や無機ガラスが挙げられる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等があり、具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、シリコーン樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、アクリルポリオール系樹脂、ポリエステルポリオール系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂や熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。また、無機ガラスとしては、ケイ素アルコキシドの加水分解物が挙げられる。さらに、(C)バインダ成分として、有機バインダとケイ素アルコキシドモノマーまたは加水分解物との混合物や、反応物である有機無機ハイブリッドポリマー等を用いてもよい。
ケイ素アルコキシドの加水分解物としては、被膜形成用の組成物を用いた膜形成の際の反応性の速さと、得られる被膜の硬度を保持することができるものであれば、特に限定されるものではない。このようなケイ素アルコキシドの加水分解物としては、具体的には、下記一般式(376)に示すケイ素アルコキシドの加水分解(縮合)によって生成したものが挙げられる。なお、下記式(376)中、R14は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。
Si(OR14 ・・・(376)
ここで、上述した組成物において、(C)バインダ成分として上記一般式(376)に示すケイ素アルコキシドの加水分解物を用いる場合、膜形成時の反応性の速さと、この組成物から得られる被膜の硬度を保持することができる。例えば、炭素原子数が6以上のアルキル基を有するケイ素アルコキシドの加水分解物では、加水分解反応が遅く、製造に時間がかかり、また得られた組成物を塗布して得られる膜の硬度が下がる場合があるため、好ましくない。
上記式(376)に示すケイ素アルコキシドとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのうち、被膜を形成した際に、硬度が高い膜が得られることから、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランが好ましい。
また、上述した組成物においては、(C)バインダ成分として、ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量が、1×10以上2×10以下であることが好ましい。ここで、上記平均分子量が1×10未満であると、当該組成物を用いて基材の表面に被膜を形成する際に膜厚が得られにくく、基材との密着力が得られないために好ましくない。一方、上記平均分子量が2×10を超えると、当該組成物が高い粘度となり、塗膜形成の用途に適さないために好ましくない。これに対して、ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量が上記範囲内であると、被膜の膜厚の調整が容易であり、基材と被膜との間に十分な密着力が得られるとともに、塗布性に優れ、塗膜形成の際に取扱いが容易となるために好ましい。
なお、ケイ素アルコキシドの加水分解物の平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)によって分子量を測定することにより、確認することができる。具体的には、LC10AD(島津製作所社製)を用い、測定カラムには、ガードカラム及び、LF804(昭和電工社製)を利用するとともに、測定温度は40℃、移動相にはTHF、分子量測定の標準物質にはポリスチレン(PS)の各分子量(5.0×10、1.99×10、5.97×10、9.11×10、3.79×10、9.64×10)を使用して、分子量を測定する。
「ケイ素アルコキシドの加水分解物の製造方法」
次に、上述した(C)バインダ成分であるケイ素アルコキシドの加水分解物の製造方法の一例について説明する。上記式(376)に示すケイ素アルコキシドの加水分解物を生成させるには、有機溶媒中において、これらを加水分解(縮合)させる。具体的には、ケイ素アルコキシドの加水分解物の場合、ケイ素アルコキシド1質量部に対して、好ましくは水を0.5〜2.0質量部、無機酸又は有機酸を0.005〜0.5質量部、有機溶媒を1.0〜5.0質量部の割合で混合し、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を進行させることで得られる。
ここで、水の割合を上記範囲とすることが好ましい理由は、水の割合が下限値未満では加水分解反応が十分に進行しにくい場合があり、被膜の硬度が下がるためである。一方、上限値を超えると、加水分解反応中に反応液がゲル化する等の不具合が生じる場合があるためである。また、基板との密着性が低下する場合がある。このうち、水の割合は、0.8〜3.0質量部とすることが特に好ましい。また、水としては、不純物の混入防止のため、イオン交換水や純水等を使用することが望ましい。
無機酸又は有機酸は、ケイ素アルコキシドの加水分解反応を促進させるための酸性触媒として機能する。無機酸又は有機酸としては、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、ギ酸、シュウ酸又は酢酸等の有機酸が挙げられる。このうち、無機酸としては硝酸を、有機酸としてはギ酸を使用することが特に好ましい。
硝酸は、塩酸や硫酸等の他の無機酸とは異なり、鉱酸の中では塩素や硫黄成分等の電子部品に対する悪影響となる可能性がある成分が少ないために好ましい。触媒として硝酸を用いた場合、少量での反応性の高さゆえに、透明性に優れた膜を形成し易いという効果が得られる。
ギ酸を触媒として用いることによって、透明性に優れた膜を形成しやすいために好ましい。また、触媒としてギ酸を用いた場合、他の触媒を使用した用いた場合に比べて、成膜後の膜中において不均一なゲル化の促進を防止する効果がより高い。
また、無機酸又は有機酸の割合を上記範囲とすることが好ましい理由は、無機酸又は有機酸の割合が下限値未満では反応性に乏しいために、硬度の高い膜が形成されにくく、一方、上限値を超えても反応性に影響はないが、残留する酸による塗布基材の腐食等の不具合が生じる場合があるからである。このうち、無機酸又は有機酸の割合は、0.008〜0.2質量部とすることが特に好ましい。
有機溶媒としては、アルコール、グリコールエーテル、又はグリコールエーテルアセテートを使用することが好ましい。有機溶媒として、これらのアルコール、グリコールエーテル又はグリコールエーテルアセテートを使用することが好ましい理由は、組成物の塗布性向上のためであり、また、例えばケイ素アルコキドとの混合がしやすいためである。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)等が挙げられる。また、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。また、グリコールエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
これらのうち、加水分解反応の制御がしやすく、また膜形成時に良好な塗布性が得られることから、エタノール、IPA、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が、特に好ましい。
有機溶媒の割合を上記範囲とすることが好ましい理由は、有機溶媒の割合が下限値未満では加水分解反応中に反応液がゲル化する不具合が生じやすく、透明性に優れた膜が得られにくいためである。また、基板との密着性も低下する場合がある。一方、上限値を超えると加水分解の反応性が低下する等の不具合が生じることで、十分な硬度の膜が得られないためである。このうち、有機溶媒の割合は、1.5〜3.5質量部とすることが特に好ましい。
(D)有機溶媒
上述した組成物は、塗布にふさわしい粘度への調整のため、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子の分散状態を維持するために、(D)有機溶媒を含んで構成されている。なお、被膜形成用の組成物中に(D)有機溶媒が含まれない系では、(C)バインダ成分であるケイ素アルコキシドの加水分解速度が速く、直ぐにゲル化による固形物が生成してしまう。また、当該被膜形成用の組成物を用いて被膜を形成した際、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子が良好な分散状態とならないおそれがある。
上述した組成物に適用する(D)有機溶媒としては、(A)成分〜(C)成分との相溶性が高く、被膜形成用の組成物として取扱がし易いため、上述した(C)バインダ成分としてケイ素アルコキシドの加水分解物を作製する際に使用する有機溶媒と同じもの、または、(B)酸化物微粒子の分散液を作成する際に使用する有機溶媒と同じもの、あるいは、上記列記した有機溶媒を用いることが好ましい。
上述した有機溶媒の中でも、エタノール、IPA、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が特に好ましい。
ここで、上述した被膜形成用の組成物において、被膜形成成分である(A)含窒素フッ素系化合物、(B)酸化物微粒子及び(C)バインダ成分の各固形成分比は、固形成分の全量(成分(A)+成分(B)+成分(C))に対して、それぞれ所要の範囲であることが好ましい。換言すると、当該組成物を用いて被膜を形成した際に、当該被膜中の成分(A)〜(C)の含有量がそれぞれ所要の範囲となることが好ましい。
固形成分中の(A)含窒素フッ素系化合物の固形成分比は、下限値が1質量%以上であればよく、10質量%以上であってもよい。
ところで、被膜形成成分中に(A)成分を含まない場合(すなわち、被膜形成成分中に(B)成分及び(C)成分のみを含む場合)、形成された被膜は親水親油性であり、水、油(n−ヘキサデカン)の静的接触角はいずれも5°以下となる。
ここで、(A)成分の固形成分比が固形成分の全量に対して1質量%以上であると、被膜に対して親水撥油性を付与することができるために好ましい。また、10質量%以上であると、形成した被膜に対する油(n−ヘキサデカン)の静的接触角が70°以上となり、親水性を保ちつつ、高い撥油性を付与することができるために好ましい。
一方、(A)成分の固形成分比は、上限値が40質量%以下であればよく、5質量%以下であってもよい。ここで、(A)成分の固形成分比が質量%以下であると被膜の膜強度や基材との密着性が充分に得られるために好ましい。また、5質量%以下であると、形成した被膜に対する水の静的接触角が10°以下となり、高い親水性(超親水性)を被膜に対して付与することができるとともに、防曇性を付与することができるために好ましい。さらに、硬い被膜が得られる。
また、固形成分中の(B)酸化物微粒子の固形成分比は、固形成分の全量に対して20質量%以上であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましい。ここで、(B)成分の固形成分比が20質量%以上であると、撥油性がより向上するために好ましい。一方、B成分の固形成分比が90質量%以下であると、被膜の膜強度や基材との密着性が十分に得られるために好ましい。
また、固形成分中の(C)バインダ成分の固形成分比は、固形成分の全量に対して1質量%以上であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましい。ここで、(C)成分の固形成分比が1質量%以上であると、被膜の膜強度や基材との密着が向上するために好ましい。一方、(C)成分の固形成分比が70質量%以下であると、被膜の撥油性がより向上するために好ましい。これに対して、(C)成分の固形成分比が70質量%を超えると、(B)成分の粒子凹凸効果(すなわち、親水性を示す膜はより親水性に、撥油性を示す膜はより撥油性になる効果)を低下させてしまうために好ましくない。
また、上述した組成物において、(D)有機溶媒中の全固形成分(すなわち、成分(A)+成分(B)+成分(C))の濃度は、特に限定されるものではなく、基材への塗布方法によって適宜選択することができる。上記全固形成分の濃度としては、具体的には、例えば、1〜50質量%であればよく、2〜20質量%の範囲とすることが好ましい。
<被膜形成用の組成物の製造方法>
次に、上述した被膜形成用の組成物の製造方法について、以下に詳細に説明する。
被膜形成用の組成物の製造方法の一例として、(C)バインダ成分として、ケイ素アルコキシドからケイ素アルコキシドの加水分解物を生成した後、(D)有機溶媒に、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子と、生成した(C)バインダ成分(ケイ素アルコキシドの加水分解物)と、を添加して混合する方法(第1の方法)が挙げられる。
「第1の方法」
具体的には、上記第1の方法は、ケイ素アルコキシドと有機溶媒とを混合して、第1液を調製する工程(第1工程)と、ケイ素アルコキシドと、水と、無機酸と、を混合して、第2液を調製する工程(第2工程)と、所要の温度に保持された上記第1液に上記第2液を添加し、温度を保持しながら混合して、ケイ素アルコキシドの加水分解物を得る工程(第3工程)と、有機溶媒に含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を添加した後、得られた上記ケイ素アルコキシドの加水分解物を添加する工程(第4工程)と、を含んで、概略構成されている。
(第1工程)
先ず、第1工程では、ケイ素アルコキシドと有機溶媒とを混合して、第1液を調製する。具体的には、反応容器にケイ素アルコキシドを投入し、このケイ素アルコキシドの1とした際に、1質量部に対して1.0質量部となる量の有機溶媒を添加する。そして、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第1液を調製する。
(第2工程)
次に、第2工程では、ケイ素アルコキシドと、水と、無機酸と、を混合して、第2液を調製する。具体的には、先ず、ケイ素アルコキシド1質量部に対して1.0質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の無機酸と、を容器内に投入して混合する。次いで、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第2液を調製する。
(第3工程)
次に、第3工程では、所要の温度に保持された上記第1液に上記第2液を添加し、温度を保持しながら混合して、ケイ素アルコキシドの加水分解物を得る。具体的には、第1工程にて調製した第1液を、恒温液槽(ウォーターバス)等を用いて、例えば、約55℃の温度に保持した後、この第1液に上述した第2液を添加し、上記温度を保持した状態で約60分間撹拌する。これにより、ケイ素アルコキシドの加水分解物が得られる。
(第4工程)
次に、第4工程では、有機溶媒に含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を添加した後、第3工程にて得られたケイ素アルコキシドの加水分解物を添加する。具体的には、所要量の有機溶媒を準備し、この有機溶媒中に所要量のペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を添加する。次いで、この有機溶媒中に、第3工程にて事前に調製したケイ素アルコキシドの加水分解物を所要量添加する。これにより、上述した被膜形成用の組成物が得られる。なお、酸化物微粒子を溶媒に分散させた酸化物微粒子の分散液を事前に調整し、この分散液中に所要量のペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物を添加しても良い。
また、被膜形成用の組成物の製造方法の他の例として、(D)有機溶媒に、ケイ素アルコキシドと、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子と、を同時に添加して混合する方法(第2の方法)が挙げられる。
ここで、上述した第1の方法が(C)バインダ成分としてケイ素アルコキシドの加水分解物を事前に調整する方法であるのに対して、第2の方法は、(C)バインダ成分としてケイ素アルコキシドの加水分解と同時にペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子を混合して、被膜形成用組成物を得る方法である。
「第2の方法」
具体的には、上記第2の方法は、ケイ素アルコキシドと、(A)含窒素フッ素系化合物及び(B)酸化物微粒子と、(D)有機溶媒と、を混合して、第1’液を調製する工程(第1’工程)と、水と無機酸とを混合して、第2’液を調製する工程(第2’工程)と、所要の温度に保持された第1’液に第2’液を添加し、上記温度を保持しながら混合する工程(第3’工程)と、を含んで、概略構成されている。
(第1’工程)
先ず、第1’工程では、ケイ素アルコキシドと、ペルフルオロアルキルアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物及び酸化物微粒子と、有機溶媒と、を混合して、第1’液を調製する。具体的には、先ず、反応容器にケイ素アルコキシドを投入し、このケイ素アルコキシドの質量を1とした際に、0.4質量部となる有機溶媒を添加する。さらに、先に投入したケイ素アルコキシド1質量部に対して、例えば0.2〜1質量部となるように上記含窒素フッ素系化合物と、例えば0.2〜5質量部となるように上記酸化物微粒子と、をそれぞれ添加し、そして、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第1’液を調製する。
(第2’工程)
次に、第2’工程では、水と無機酸とを混合して、第2’液を調製する。具体的には、先ず、ケイ素アルコキシド1質量部に対して0.85質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の無機酸と、を容器内に投入して混合する。次いで、例えば、約30℃の温度で、約15分間撹拌することによって、第2’液を調製する。
(第3’工程)
次に、第3’工程では、所要の温度に保持された第1’液に第2’液を添加し、上記温度を保持しながら混合する。具体的には、第1’工程にて調製した第1’液を、恒温液槽(ウォーターバス)等を用いて、例えば、約60℃の温度に保持した後、この第1’液に第2’液を添加し、上記温度を保持した状態で約60分間撹拌する。これにより、有機溶媒中にペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物、酸化物微粒子及びケイ素アルコキシドの加水分解物を含む、被膜形成用の組成物が得られる。
<被膜の形成方法>
次に、上述した被膜形成用の組成物の使用方法、すなわち、被膜の形成方法について説明する。上述した被膜形成用の組成物は、そのまま、基材等の被処理物上に塗布することが可能である。
基材としては、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、ステンレス、アルミニウム、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの構造体、積層体等を用いることができる。
被膜の形成方法としては、具体的には、例えば、基材の表面に上述した被膜形成用の組成物を塗布した後、焼成して硬化することにより、基材の表面に被膜を形成することができる。
塗布工程において、基材の表面への塗布方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、被膜形成用の組成物中に基材を浸漬する浸漬法、スプレー、スピンコート、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法などが挙げられる。
焼成条件としては、被膜形成用の組成物に含まれる有機溶媒の種類や含有量などによって適宜選択することができる。焼成温度としては、例えば、60〜200℃とすることができる。また、焼成時間としては、例えば、5〜60分とすることができる。なお、焼成条件の選択の際、焼成温度が低温では長時間、高温では短時間とすることで、同程度の硬度の膜を得ることができる。
<被膜>
次に、本実施形態のリペア液を用いる対象(すなわち、親水撥油性を回復させる対象)となる、親水撥油性の被膜の構成について説明する。
本実施形態のリペア液を用いて親水撥油性を回復させる対象となる被膜は、上述した(A)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物と、(B)酸化物ナノ粒子と、(C)バインダ成分と、を含んで概略構成されている。
そして、上述した塗布液(被膜形成用の組成物)を基板に塗布した後に、焼成して硬化させることによって得たものである。
上述した方法によって形成された、本実施形態のリペア液を用いる対象(すなわち、親水撥油性を回復させる対象)となる親水撥油性の被膜の表面には、酸化物微粒子の凹凸形状が現れることとなる。そして、リペア処理対象となる被膜は、当該被膜表面の酸化物微粒子の表面に、含窒素フッ素系化合物が付着しているものである。
当該被膜は、平均一次粒子径が2〜50nm程度であって、表面が親水性を有する酸化物微粒子と、親水撥油剤であるペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物との相乗効果によって、当該含窒素フッ素系化合物単体から得られる被膜よりも低い水接触角を示す。すなわち、被膜は、高い親水性(例えば、被膜形成後の初期値において、水の静的接触角が5〜30度程度)を有する。
また、処理対象となる被膜の表面には、親水撥油剤である含窒素フッ素系材料が酸化物微粒子に付着するため、高い撥油性(例えば、被膜形成後の初期値において、油の静的接触角が70〜90度程度)も同時に発現される。したがって、処理対象となる被膜は、基材の表面に汚れが付着することを防止するともに、付着した場合であっても容易に拭き取ることが可能な、優れた防汚性を有するものである。
さらに、処理対象となる被膜は、原料のケイ素アルコキシドとしてTEOSを用い、酸性触媒として硝酸又はギ酸を用いた加水分解物の硬化膜である場合に、透過率が95〜98%、ヘイズ0.1以下となり、優れた透明性を有する。したがって、透明な基材に被膜を形成した場合には、視認性を維持したまま、優れた防汚性を有する。
なお、処理対象となる被膜の親水性及び撥油性は、水の静的接触角及び油の静的接触角によって評価することができる。静的接触角は、市販の測定装置(例えば、協和界面科学社製、「Drop Master DM−700」)を用いて測定することができる。具体的には、シリンジにイオン交換水を準備し、静止状態で水が膜表面に触れた後の1000msec後の接触角をθ/2法により解析した値を水の静的接触角とすることができる。また、シリンジにn−ヘキサデカンを準備し、接触角を測定し、同様に解析した値を油の静的接触角とすることができる。
処理対象となる被膜の防汚性は、例えば、油性ペンのはじき性によって評価することができる。具体的には、被膜形成用の組成物を用いて基材上に被膜を形成し、油性ペンを用いて被膜の表面に長さ1cmの直線を書き、そのはじきやすさを所定の基準に従って目視により評価することができる。
また、油性ペンを用いて被膜の表面に書いた線を、水で流すことにより落とせるかを確認することで易洗浄性を確認した。
処理対象となる被膜の透過率は、ガラス基材上に形成した被膜について、市販の測定装置(例えば、日立ハイテク社製、分光光度計「U−4100」)を用いて測定することができる。具体的には、ガラス基材を含む被膜の透過率を240〜2600nmの範囲で測定する。透過率については、可視光範囲である550nmでの値を確認する。
処理対象となる被膜のヘイズは、ガラス基材上に形成した被膜について、市販の測定装置(例えば、スガ試験機社製、ヘイズメーター「HZ−2」)を用いて測定することができる。なお、ヘイズとは、膜の拡散透過率/全光線透過率×100であらわされる数値であり、膜が曇っている程、ヘイズ値が高くなる。
<親水撥油性回復剤>
次に、本実施形態の親水撥油性回復剤(リペア液)の構成について、説明する。
本実施形態のリペア液の処理対象は、親水撥油性を有する被膜である。当該被膜は、上述したように親水撥油性を有することから、優れた防汚性を有している。具体的には、撥油性によって油分等の汚れが表面に付着しにくく、親水性によって基材を水洗することで被膜の表面に付着した汚れを簡単に除去することができる。
しかしながら、上述した親水撥油性を有する被膜は、水洗の繰り返しや経時変化等によって被膜表面の親水撥油剤が減少してしまうため、親水撥油性能が徐々に低下してしまう。そこで、本実施形態のリペア液は、親水撥油性能が低下した被膜の当該親水撥油性能を簡便な方法によって回復させるために使用するものである。
本実施形態のリペア液は、(A’)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)と、(D’)有機溶媒と、(E)水と、を含んで概略構成されている。
(A’)親水撥油剤としては、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物を用いることができる。ここで、本実施形態のリペア液における(A’)含窒素フッ素系化合物と、処理対象となる被膜における(A)含窒素フッ素系化合物とは、同一の組成比あっても良いし、同一の組成比でなくてもよい。
(D’)有機溶媒としては、水との親和性が高い極性溶媒であれば、特に限定されるものではない。上記極性溶媒としては、上述した(D)有機溶媒で挙げた群の中から選択してもよい。
より具体的には、(D’)有機溶媒として、アルコール、グリコール、ケトン、グリコールエーテル、又はグリコールエーテルアセテートを使用することが好ましい。これらのアルコール、グリコール、ケトン、グリコールエーテル又はグリコールエーテルアセテートは、例えば、親水撥油剤(ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物)が溶解しやすく、また、水との親和性が高いため、リペア液の塗布性を向上することができるために好ましい。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
ケトンとしては、1,2−ジメトキシエタン、アセトン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
また、グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
また、グリコールエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。
これらのうち、リペア液中の組成物である(A’)親水撥油剤あるいは(E)水との親和性が高く、また膜形成時に良好な塗布性が得られることから、エタノール、IPA、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が、特に好ましい。
なお、(D’)有機溶媒としては、上述した群のうち、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
ところで、本実施形態のリペア液の処理対象は、上述したように親水撥油性を有する被膜である。したがって、リペア液の溶媒として、疎水性の溶媒のみを用いた場合や、(E)水を含まない場合には、下地となる被膜の親水面に対して、濡れが悪く、はじきがあって拡がらないため、リペア液中の組成物が一様な塗膜とならないという問題が生じる。
これに対して、本実施形態のリペア液は、組成物中に水との親和性が高い(D’)有機溶媒と、(E)水とを含む。このような水を含む(より水との親和性が高い)溶媒系は、親水撥油性を示す(A’)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)との馴染みが良く、さらに、下地となる被膜の親水面に対して濡れ性が良い。すなわち、本実施形態のリペア液は、親水性を有する被膜の表面に対して、はじくことなく拡がるため、リペア液中の組成物が均一な塗膜が得られる。
本実施形態のリペア液における、(A’)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)の含有量は、0.1〜10.0質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5.0質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜3.0質量%の範囲であることがさらに好ましい。上記好ましい範囲内であれば、被膜の親水撥油性を充分に回復させることができる。
また、本実施形態のリペア液における、(D’)有機溶媒の含有量は、30〜90質量%の範囲であることが好ましく、45〜80質量%の範囲であることがより好ましく、50〜70質量%の範囲であることがさらに好ましい。
さらに、本実施形態のリペア液における、(E)水の含有量は、10〜60質量%の範囲であることが好ましく、20〜55質量%の範囲であることがより好ましく、30〜50質量%の範囲であることがさらに好ましい。
(D’)有機溶媒及び(E)水の含有量がそれぞれ上記好ましい範囲内であれば、(A’)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物(親水撥油剤)との馴染みが良く、さらに、下地となる被膜の親水面に対して濡れ性に優れるために好ましい。
<親水撥油性回復方法>
次に、本実施形態の親水撥油性回復剤(リペア液)の使用方法、すなわち、親水撥油性が低下した被膜の親水撥油性を回復させる方法(以下、単に「親水撥油性回復方法」という)について、説明する。
本実施形態の親水撥油性回復方法としては、具体的には、例えば、親水撥油性を有する被膜において特に撥油性が低下した場合、当該被膜の表面に上述した親水撥油性回復剤(リペア液)を塗布した後、乾燥して硬化する。
被膜の表面へのリペア液の塗布方法としては、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、リペア液中に被膜が形成された基材を浸漬する浸漬法、スプレー、スピンコート、刷毛、ローラなど塗布手段を使用する、あるいは印刷手法を用いる方法などが挙げられる。
また、リペア液の塗布量は、特に限定されるものではなく、塗布対象となる基材の形状やサイズによって適宜選択することが好ましい。具体的には、例えば、溶媒を含んだ状態で基材上に数μm程度の厚さで被膜が形成されることが好ましい。
乾燥条件としては、リペア液に含まれる水及び有機溶媒の種類や含有量などによって適宜選択することができる。乾燥温度としては、例えば、20〜200℃とすることが好ましい。また、乾燥時間としては、例えば、5〜60分とすることが好ましい。
本実施形態の親水撥油性回復方法によれば、親水撥油性を有する被膜において撥油特性が低下した際に、リペア液の再塗布という簡便な手法によって再度撥油性を発現させることが出来る。また、被膜の親水撥油性は、被膜形成時と同等程度まで回復させることが出来る。さらに、本実施形態の親水撥油性回復方法は、被膜に対して繰り返し行うことができる。
また、本実施形態の親水撥油性回復方法によれば、処理対象となる被膜が透明性を有している場合であっても、透明性を損なうことなく親水撥油性を回復させることができる。したがって、リペア後の被膜も、初期の被膜と同様に高い透過率を維持することができるため、視認性を維持したまま、高い防汚特性を再度付与することが出来る。
以上説明したように、本実施形態の親水撥油性回復剤(リペア液)によれば、親水撥油性(特に、撥油特性)が低下した基材の表面の親水撥油性を回復させることができるため、高い防汚特性を繰り返し回復させることが可能である。
特に、本実施形態の親水撥油性回復剤には、含窒素ペルフルオロアルキル基として、窒素原子上で分岐する複数の短鎖長構造のペルフルオロアルキル基、つまりペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物が含まれている。このペルフルオロアミン構造は嵩高いため、短鎖長構造のペルフルオロアルキル基しか有しないにもかかわらず、炭素数が8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル構造を有する含窒素フッ素系化合物と同様に、高い撥油性などの上述したフッ素基に起因する高い特性を付与することが可能となる。
本実施形態の親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法によれば、生体蓄積性や環境適応性の点で問題となる炭素数8以上の直鎖状ペルフルオロアルキル基を含有しないリペア液を用いるため、簡便な方法によって被膜の親水撥油性及び優れた防汚性を被膜形成時と同等程度まで回復させることが可能である。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。具体的には、処理対象となる被膜は、少なくとも(A)ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物を含んでいるものであればよい。
また、上述した実施形態では、親水撥油性回復剤(リペア液)中に、含窒素フッ素系化合物、有機溶媒及び水が含まれる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、リペア液中に、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含まれていてもよい。リペア液中に、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物を含むと、リペアの際の反応性を向上させることができる。
(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物としては、特に限定されるものではなく、上述した(C)バインダ成分においてケイ素アルコキシドの加水分解物で挙げた群から適宜選択することができる。また、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物と(C)バインダ成分としてのケイ素アルコキシドの加水分解物とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
親水撥油性回復剤(リペア液)中の、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物の含有量としては、0.1〜3質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜2質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜1.5質量%の範囲であることがさらに好ましい。上記好ましい範囲内であれば、リペアの際の反応性を向上させることができる。なお、親水撥油性回復剤(リペア液)中に(C’)成分を含む場合、(A’)成分については、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜5質量%の範囲であることがより好ましく、0.1〜3質量%の範囲であることがさらに好ましい。また、(D’)成分については、30〜90質量%程度、(E)成分については、10〜60質量%程度が好ましい。
<親水撥油性被膜>
上述した実施形態のリペア液と同様に、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物を含むリペア液を用いても、親水撥油性(特に、撥油特性)が低下した基材の表面の親水撥油性を回復させることができる。
また、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物を含むリペア液を用いて被膜の親水撥油性を回復した際に、新たな親水撥油性被膜が形成されるとも考えられる。
ここで、(C’)ケイ素アルコキシドの加水分解物を含むリペア液を用いて被膜の親水撥油性を回復した際に形成される、新たな親水撥油性被膜は、基材上に形成された元の被膜(すなわち、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む被膜)上に、リペア液の固形分である(A’)成分及び(C’)成分を含む被覆層が積層されて構成されたものである。また、被覆層は、リペア回数に応じて2層3層と積層される。
なお、新たな親水撥油性被膜は、(透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM))によって被覆層を確認することで、特定することができる。
新たな親水撥油性被膜は、上述した実施形態の親水撥油性回復剤(リペア液)によって親水撥油性を回復させた被膜と同様に、高い親水撥油性及び優れた防汚性を有する。
以下、実施例によって本発明の効果をさらに詳細に説明する。なお、本発明は実施例によって、なんら限定されるものではない。
(含窒素フッ素系化合物)
「2−[3−[[ペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロパノイル)]アミノ]プロピル−ジメチル−アンモニウム]アセテートの合成」
2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸メチルの電解フッ素化により得られたペルフルオロ(2−メチル−3−ジブチルアミノプロピオン酸)フルオリド120gを、ジメチルアミノプロピルアミン39gをIPE溶媒500mlに溶解した溶液に、氷浴下滴下した。室温で2時間撹拌した後にろ過を行い、ろ液のIPE層をNaHCO水溶液と、NaCl水溶液とで洗浄処理し、分液した後に水洗を行った。その後、IPEを留去し、さらに蒸留して、粗生成物として、(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを64g得た(収率47%)。
次いで、得られた(CNCFCF(CF)CONHCN(CHを8g、エタノール中での撹拌下、モノクロル酢酸ナトリウムと一晩還流させ、ろ過、濃縮後、下記式(377)に示すジメチルベタイン体を8.5g得た(収率99%)。
Figure 0006694718
(酸化物微粒子の分散液)
酸化物微粒子の一例として、平均一次粒子径が約12nmのコロイダルシリカ粒子がIPA溶媒中に分散された分散液を用いた。
(ケイ素アルコキシドの加水分解物)
被膜形成用組成物のうち、ケイ素アルコキシドの加水分解物を下記に示す方法によって調整した。
具体的には、先ず、ケイ素アルコキシドとして、テトラエトキシシラン(TEOS)を用意し、セパラブルフラスコに投入した。このケイ素アルコキシドの質量を1とした際に、1質量部に対して、1.0質量部となる量のエタノールを有機溶媒として添加し、30℃の温度で15分撹拌することにより、第1液を調製した。
また、この第1液とは別に、ケイ素アルコキシド1質量部に対して1.0質量部となる量のイオン交換水と、0.01質量部となる量の硝酸とを無機酸としてビーカー内に投入して混合し、30℃の温度で15分間撹拌することにより第2液を調製した。
次に、調製した上記第1液を、ウォーターバスにて55℃の温度に保持し、この第1液に上記第2液を添加し、上記温度を保持した状態で60分間撹拌した。これにより、SiO換算で固形分10質量%の、ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を得た。
(被膜形成用組成物1)
有機溶媒として、エタノールを46.9g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物として、上述した一般式(377)に示す化合物を0.11g秤量添加する。その後、酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を1.8gと、事前に調製した上記ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物1を調製した。
(被膜形成用組成物2)
有機溶媒として、エタノールを46.9g準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物として、上述した一般式(377)に示す化合物を0.07g秤量添加する。その後、酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を1.8gと、事前に調製した上記ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物2を調製した。
(被膜形成用組成物3)
有機溶媒として、エタノールを46.9g準備し、酸化物微粒子として平均一次粒子径が12nmのシリカ粒子が固形分15質量%で含まれるIPA分散液を1.8gと、事前に調製した上記ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)を1.2g添加し、被膜形成用組成物3を調製した。
(処理対象被膜1)
50mm角のガラス上に、上述した被膜形成用組成物1をスピンコート法により塗布し、約100〜200nm膜厚となるように成膜した後、100〜200℃で15〜30分程度焼成することにより、処理対象被膜1を形成した。
(処理対象被膜2)
被膜形成用組成物1に代えて被膜形成用組成物2を用いた以外は同様にして、処理対象被膜2を形成した。
(処理対象被膜3)
被膜形成用組成物1に代えて被膜形成用組成物3を用いた以外は同様にして、処理対象被膜3を形成した。
(リペア液1)
有機溶媒としてIPA29.9gを準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物として、上述した一般式(377)に示す化合物0.1gを秤量して添加した。その後、水20.0gを添加して、リペア液1を調製した。
(リペア液2)
有機溶媒としてエタノール39.0gを準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物として、上述した一般式(377)に示す化合物0.25gを秤量して添加した。その後、事前に調製した上記ケイ素アルコキシドの加水分解物(平均分子量:4×10)3.25gと水7.5gを添加して、リペア液2を調製した。
(リペア液3)
有機溶媒としてエタノール49.8gを準備し、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物として、上述した一般式(377)に示す化合物0.2gを秤量して添加して、リペア液3を調製した。
<検証試験1>
上記処理対象被膜(以下、単に「被膜」と示す)1〜3について、被膜形成後(すなわち、初期)の特性評価を行った。具体的には、被膜の特性評価は、親水撥油性、防汚性、易洗浄性、透明性の各項目について以下に示す評価基準によって行った。
(親水撥油性評価)
形成した上記被膜1〜3について、水及びn−ヘキサデカンを付着させた際の静的接触角測定を行い、親水性及び撥油性をそれぞれ評価した。なお、静的接触角測定は、協和界面科学社製、DM−700型接触角計を用い、水及びn−ヘキサデカンの液滴量は2μlとし、表面処理部材上の任意5点で静的接触角を測定し、その平均値を算出した。評価結果を表1に示す。
(防汚性評価)
「油性ペンのはじき性評価」
上記被膜1〜3について、油性ペン(内田洋行社製、「マジックインキ」)を付着させた際のはじき性の評価(油性ペンのはじき性評価)を行い、被膜の防汚性を評価した。具体的には、油性ペンを用いて上記被膜1〜3の表面に長さ1cmの直線を書き、そのはじきやすさを以下の基準に従って目視により評価した。評価結果を下記表1に示す。
○:はじきが見られる
△:部分的にはじく
×:全くはじかない
(易洗浄性評価)
「油性ペンの拭き取り性評価」
上記油性ペンを用いて書いた直線を、せん瓶に入れたイオン交換水を上記被膜1〜3上に直接かけることにより、その易洗浄性を以下の基準に従って目視に評価した。評価結果を下記の表1に示す。
○:全て洗浄により取り除かれる
△:部分的に取り除かれる。
×:全く洗浄により取り除かれない。
(被膜の透明性評価)
上記被膜1〜3膜について、透過率及びヘイズの測定を行い、透明性を評価した。
「透過率」
日立ハイテク社製の分光光度計U−4100を用いて、被膜1〜3(ガラスを含む被膜)の透過率を240〜2600nmの範囲で測定した。透過率については、可視光範囲である550nmでの値を確認した。評価結果を下記表1に示す。
「ヘイズ」
スガ試験機社製のヘイズメーターHZ−2を用いて、被膜1〜3(ガラスを含む被膜)のヘイズ測定を行った。評価結果を下記表1に示す。なお、ヘイズは、膜の拡散透過率/全光線透過率×100であらわされる数値である。
Figure 0006694718
表1に示すように、試験例1及び試験例2では、ペルフルオロアミン構造を有する含窒素フッ素系化合物を含む被膜形成用組成物1及び2を用いて形成した被膜1及び被膜2であるため、水の静的接触角が20°以下、油の静的接触角が80°以上という、親水撥油性を示した。また、高い撥油性に起因して、防汚性及び易洗浄性に優れるともに、高い透明性を示すことを確認した。
これに対して、試験例3では、含窒素フッ素系化合物を含まない被膜形成用組成物3を用いて形成した被膜3であるため、親水親油性を示した。また、防汚性及び易洗浄性に劣るが、高い透明性を示すことを確認した。
<検証試験2>
次に、上記被膜1〜3について、水洗処理を行った後、特性評価を行った。ここで、水洗処理は、具体的には、被膜1〜3が形成されたガラス板を100mlの水の中に浸漬し、1時間放置して全体を均一に水に浸漬させた。その後、上記検証試験1と同様にして、被膜の特性評価を行った。水洗処理後の被膜の評価結果を下記表2に示す。
Figure 0006694718
表2に示すように、試験例4及び試験例5では、親水撥油性を示す被膜1(試験例1)及び被膜2(試験例2)が、水洗処理によって親水性が僅かに低下し、撥油性が大きく低下することを確認した。また、撥油性の低下に起因して、防汚性及び易洗浄性が低下した。一方、透過率及びヘイズ(透明性)は、ほとんど変化しなかった。
これに対して、試験例6では、親水親油性を示す被膜3(試験例3)が、水洗処理によって親水性及び親油性にほとんど変化しないことを確認した。また、防汚性、易洗浄性及び透明性(透過率、ヘイズ)もほとんど変化しないことを確認した。
<検証試験3>
次に、上記水洗処理後の被膜について、リペア液による処理を行った後、特性評価を行った。ここで、リペア液による処理(リペア処理)は、具体的には、先ず、水洗処理後の被膜を乾燥(エアブロー又は60℃程度のオーブンで30分乾燥)させた後、リペア液を被膜形成時と同様にスピンコート法によって塗布した。リペア液の塗布後、100〜200℃で15〜30分程度焼成した。その後、上記検証試験1と同様にして、被膜の特性評価を行った。なお、リペア液と被膜との組み合わせ、及びリペア処理後の被膜の評価結果を下記表3に示す。
Figure 0006694718
表3に示すように、試験例7〜10では、水洗処理によって低下した親水性と、大きく低下した撥油性が、被膜形成後(初期)程度まで回復することを確認した。また、撥油性の回復に起因して、防汚性及び易洗浄性が向上した。一方、透過率及びヘイズ(透明性)には、ほとんど変化が確認できなかった。
これに対して、試験例11では、水を含まないリペア液3を用いたため、リペア処理による親水性の回復が充分ではなかった。
また、試験例12では、親水親油性を示す被膜3(試験例6)に対してリペア処理をすることにより、親水性が低下し、撥油性を発現することを確認した。
<検証試験4>
次に、上記リペア処理後の被膜について、再び水洗処理を行った後、特性評価を行った。ここで、水洗処理は、上記検証試験2と同様にして行った。その後、上記検証試験1と同様にして、被膜の特性評価を行った。なお、再水洗処理後の被膜の評価結果を下記表4に示す。
Figure 0006694718
表4に示すように、試験例13及び試験例14では、上記リペア処理によってふたたび親水撥油性を示した被膜1(試験例7)及び被膜2(試験例8)が、上記検証試験2と同様に、水洗処理によって親水性が僅かに低下し、撥油性が大きく低下することを確認した。また、撥油性の低下に起因して、防汚性及び易洗浄性が低下した。一方、透過率及びヘイズ(透明性)は、ほとんど変化しなかった。
これに対して、試験例15では、上記リペア処理によって撥油性が回復した被膜1(試験例11)が、水洗処理によって再び撥油性が大きく低下することを確認した。また、撥油性の低下に起因して、防汚性及び易洗浄性が低下した。一方、透過率及びヘイズ(透明性)は、ほとんど変化しなかった。
<検証試験5>
次に、上記再水洗処理後の被膜について、再びリペア処理を行った後、特性評価を行った。ここでリペア処理は、上記検証試験3と同様にして行った。その後、上記検証試験1と同様にして、被膜の特性評価を行った。なお、リペア液と被膜との組み合わせ、及び再リペア処理後の被膜の評価結果を下記表5に示す。
Figure 0006694718
表5に示すように、試験例16及び試験例17では、水洗処理によって低下した親水性と、大きく低下した撥油性が、被膜形成後(初期)程度まで再び回復することを確認した。また、撥油性の回復に起因して、防汚性及び易洗浄性も回復した。一方、透過率及びヘイズ(透明性)には、ほとんど変化が確認できなかった。
これに対して、試験例18では、水を含まないリペア液3を用いたため、再リペア処理による親水性の回復が充分ではなかった。
本発明の親水撥油性回復剤は、防汚膜として、特に建築物の外壁や屋根、航空機、船舶、自動車等のボディー、ガラス、ホイール等、乗用車のサイドミラー、エアコンの熱交換器、電線、アンテナ等に対して利用可能性を有する。また、視認性が要求されるようなディスプレイ表面への防汚膜に対しても利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. 下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、
    有機溶媒と、
    水と、を含む、親水撥油性回復剤。
    Figure 0006694718
    Figure 0006694718
    Figure 0006694718
    Figure 0006694718
    上記式(1)及び(2)中、Rf、Rfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rfは、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
    上記式(3)及び(4)中、Rf、Rf及びRfは、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF基及びCF基のいずれかを含む。
    また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。
    また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
  2. さらに、ケイ素アルコキシドの加水分解物を含む、請求項1に記載の親水撥油性回復剤。
  3. 基材上に形成された、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、親水撥油性の被膜に塗布したあとに、経時変化によって親水撥油性が低下した前記被膜の親水撥油性を回復させる回復剤である、請求項1に記載の親水撥油性回復剤。
  4. さらに、ケイ素アルコキシドの加水分解物を含む、請求項3に記載の親水撥油性回復剤。
  5. 当該親水撥油性回復剤における前記含窒素フッ素系化合物の割合が、0.1〜10.0質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤。
  6. 当該親水撥油性回復剤における前記有機溶媒の割合が30〜90質量%であり、前記水の割合が10〜60質量%である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤。
  7. 前記有機溶媒が、水との親和性の高い極性溶媒である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤。
  8. 基材上に形成された、上記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、親水撥油性の被膜の表面に、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の親水撥油性回復剤を塗布した後、溶媒成分を除去する、親水撥油性被膜の親水撥油性の回復方法。
  9. 基材上に形成された、下記式(1)〜(4)で示される、一種又は二種以上の含窒素フッ素系化合物と、平均一次粒子径が2〜50nmの酸化物微粒子と、バインダ成分と、を含む、被膜と、
    前記含窒素フッ素系化合物と、前記ケイ素アルコキシドの加水分解物とを含む被覆層と、を備え、
    前記被膜上に1以上の前記被覆層が積層されている、親水撥油性被膜
    Figure 0006694718
    Figure 0006694718
    Figure 0006694718
    Figure 0006694718
    上記式(1)及び(2)中、Rf 、Rf は、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキル基である。また、Rf は、炭素数1〜6であって、直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。
    上記式(3)及び(4)中、Rf 、Rf 及びRf は、それぞれ同一または互いに異なる、炭素数1〜6であって直鎖状又は分岐状のペルフルオロアルキレン基である。また、Zは、酸素原子、窒素原子、CF 基及びCF基のいずれかを含む。
    また、上記式(2)及び(4)中、Rは、2価の有機基である連結基である。
    また、上記式(1)〜(4)中、Xは、アニオン型、カチオン型及び両性型からなる群から選択されるいずれか1の親水性賦与基である。
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