JP5967604B2 - 撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、高硬度を有し、透明である撥水性アルミナ膜を形成するのに最適な撥水性アルミナゾル、この撥水性アルミナゾルにより形成されて成る撥水性アルミナ膜及び撥水性アルミナ膜の製造方法に関する。
傷がつきやすく、汚れやすい基材表面に、皮膜を形成させることで基材表面に耐摩耗性や防汚性等を付与することが知られている。耐摩耗性及び防汚性が要求されるものとしては、例えば、携帯電話やパソコン等の液晶画面、自動車の窓ガラス、自動車の塗装表面、台所設備、台所用品、台所設備に付設される排気装置、入浴設備、洗面設備、医療用施設、医療用機械器具、鏡、眼鏡、時計等、きわめて多岐に亘っている。
例えば、特許文献1には、アルミニウム表面に、第一層としてアルミナゾルと特定粒径のアルミナ微粉末とを特定の割合で混合して成る混合皮膜を設けた後に、その混合皮膜の上に、特定の水接触角以上である撥水性の皮膜を設けることを特徴とするアルミニウム表面処理法が記載されている(特許文献1の請求項1参照。)前記撥水性の皮膜は、フッ素系の塗料やパーフルオロアルキル基を有する撥水化剤などで形成される(特許文献1の段落番号0020参照。)。
この特許文献1に記載の皮膜は、最表面のみが撥水化されているので、皮膜の一部が損傷すると皮膜の内部が露わになり、撥水性が失われてしまう。
特許文献1には、パーフルオロアルキル基を有する撥水剤の具体例が開示されず、また、実施例もなく、また、アルミナゾル中のアルミナ又は特定粒径のアルミナ微粉末としてナノファイバー状のアルミナを採用することの記載も示唆もない。さらに特許文献1にはアルミナゾル中のアルミナとフルオロアルキルシランとを反応させることの記載も示唆もない。
また、アルミナゾルを含む溶液に撥水剤を添加して、それを基材に塗布することにより基材表面に皮膜を形成させる方法がある。
例えば、特許文献2には、特定のアミノアルキルアルコキシシランと特定量の金属酸化物ゾル、水、有機溶媒、酸及び機能性微粒子からなりpHが特定範囲内にある被覆用組成物が記載されている(特許文献2の請求項1参照。)。前記金属酸化物ゾルとして、アルミナゾルが例示され(特許文献2の請求項2、段落番号0012参照。)、機能性微粒子としてフッ素樹脂微粒子が好ましいとされている(特許文献2の請求項3、段落番号0021参照。)。
特許文献2には、アルミナゾル中のアルミナの形態としてナノファイバー状であることの記載も示唆もない。また、この特許文献2には、アミノアルキルアルコキシシランに代えてフルオロアルキルシランを使用することの記載も示唆もない。
特許文献3には、Si(OR)4と、CF3(CF2)CH2CH2Si(OR13と、RCHOHと、蓚酸とを特定割合で含有する反応混合物を加熱することにより生じたポリシロキサンの溶液を含有する塗布液を基材表面に塗布し、形成される塗膜を熱硬化させることにより特定の屈折率と特定の水接触角を示す被膜を基材表面に密着して形成させる方法が記載されている(特許文献3の請求項1参照。)。この特許文献6に記載の発明では、ポリシロキサンの溶液に添加物としてアルミナゾルを含有しても良いことが記載されている(特許文献3の段落番号0021参照。)。
特許文献3には、アルミナゾル中のアルミナの形態としてナノファイバー状であることの記載も示唆もない。また、アルミナとポリシロキサンとを反応させることの記載も示唆もない。
特許文献4には、パーフルオロシクロポリマーの溶液に、水素結合性溶媒分散剤及び高分子量分散剤を添加し、微粒子の水系分散剤を分散することを特徴とする撥水性被膜形成用組成物の製造方法が記載されている(特許文献4の請求項1参照。)。前記水素結合性溶媒分散剤は、水などの水素結合性溶媒を低表面張力の溶媒中に分散させる機能を有する添加剤であるとされ、フルオロアルキルシランが好適例として挙げられている(特許文献4の段落番号0012参照。)。前記高分子量分散剤は、分子量1000〜数万程度の鎖状構造の化合物で末端に水素結合性官能基を持つ分散剤であるとされ、パーフルオロポリエーテルが、好適例として挙げられている(特許文献4の段落番号0015参照。)。前記微粒子の水系分散剤としてアルミナゾルが、例示されている(特許文献4の段落番号0018参照。)。
特許文献4には、アルミナゾル中のアルミナの形態としてナノファイバー状であることの記載も示唆もなく、したがって、ナノファイバー状のアルミナとフルオロアルキルシランとを反応させることによりナノファイバー状のアルミナにフルオロアルキルシロキシ基を結合する技術的思想が全く開示されていない。
非特許文献1には、C17Si(OEt)を縮合反応によりセラミック膜例えばアルミナ膜にグラフトすることにより疎水性セラミック膜の形成されることが記載されている(非特許文献1のアブストラクト、第77頁左欄下から12行〜8行目)。この疎水性セラミック膜はパーベーパレーション分離法に使用される。
この非特許文献1にはアルミナゾル中のナノファイバー状のアルミナとパーフルオロアルキルシランと反応させることの記載がなく、パーフルオロアルキルシロキシ基を有するアルミナナノファイバーで形成された膜が、透明性、撥水性及び高硬度であることを窺わせる記載も示唆もない。
特開平6−306636号公報 特開平8−295844号公報 特開平9−208898号公報 特開2002−20697号公報
W.Kujawski, etal, Pervaporation properties of fluoroalkylsilane(FAS) grafted ceramic membranes, Desalination,205(2007)75-86
本発明は、鉛筆硬度が6H以上の高硬度を有し、透明で、撥水性を有することにより各種材料の防汚性保護膜として利用可能な撥水性透明アルミナ膜を提供すること、及びこの撥水性アルミナ膜を簡易な方法で製造することのできる撥水性アルミナ膜の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、アスペクト比がある特定の範囲にあり、フルオロアルキルシロキシ基が結合したアルミナナノファイバーが分散してなる撥水性アルミナゾルを用いることにより、鉛筆硬度が6H以上の高い硬度を有し、透明で、撥水性を有する撥水性アルミナ膜が得られることを見出し、この知見に基づいて、この発明を完成するに到った。
したがって、前記課題を解決するための手段は、
(1)アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750であり、フルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーを含有し、鉛筆硬度が6H以上であることを特徴とする撥水性透明アルミナ被膜である
前記(1)の好ましい態様として、次の態様を挙げることができる。
(2) 前記アルミナナノファイバーがA−O−Al結合により相互に結合され、光の透過率が70%以上である前記撥水性透明アルミナ被膜。
前記他の課題を解決するための手段は、
(3)基板上に塗布された、アスペクト比が100〜750であり、R −R −Si−O−(ただし、R は、炭素数1〜15個のパーフルオロアルキル基、R は、炭素数1〜15個のアルキレン基を表す。)で示されるフルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーを含有するアルミナゾルの塗布膜を硬化することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の撥水性透明アルミナ被膜の製造方法である。


本発明の撥水性アルミナゾルは、鉛筆硬度が6H以上の高い硬度を有し、透明で、撥水性を有する撥水性アルミナ膜を基板上に形成するための最適な材料として使用することができる。この撥水性アルミナゾルにより形成された撥水性アルミナ膜は、材料の表面が鉛筆硬度が6H以上の高い硬度を有し、透明で、撥水性を有することが要求される、例えば防汚性の保護膜として、利用することができる。また、この撥水性アルミナ膜の製造方法によると、基板上に塗布された前記撥水性アルミナゾルの塗布膜を硬化するだけで、容易に撥水性アルミナ膜を製造することができる。
本発明に係る撥水性アルミナゾルは、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750であり、フルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーを含有する。
本発明における撥水性アルミナゾルに含まれるアルミナナノファイバーは、後述するナノサイズを有するアルミナの繊維状結晶であり、具体的には、アルミナの無水和物で形成されたアルミナナノファイバー、水和物を含むアルミナで形成されたアルミナナノ水和物ファイバー等が挙げられる。
このアルミナナノファイバーは、後述する平均繊維幅に対する後述する平均繊維長の割合すなわちアスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750であり、300〜375であるのが好ましい。前記アスペクト比が100未満又は前記アスペクト比が750を超えると、この撥水性アルミナゾルにより形成される撥水性アルミナ膜の鉛筆硬度が6Hより小さくなる。
アルミナナノファイバーは、その平均繊維長が400〜7500nmであるのが好ましく、さらに600〜3000nmであるのが好ましい。アルミナナノファイバーが前記範囲の平均繊維長を有していると、鉛筆硬度が6H以上の撥水性アルミナ膜を形成することのできる撥水性アルミナゾルを提供することができる。アルミナナノファイバーは、その平均繊維幅が1〜10nmであるのが好ましく、2〜6nmであるのが特に好ましい。アルミナナノファイバーが前記範囲の平均繊維幅を有していると、アルミナナノファイバーが平行に配列し易くなり、鉛筆硬度が6H以上の撥水性アルミナ膜を形成することのできる撥水性アルミナゾルを提供することができる。このように、好適なアルミナナノファイバーは、アスペクト比が前記範囲内になるように、前記範囲内の平均繊維幅と前記範囲内の平均繊維長とを有している。
ここで、アルミナナノファイバーの平均繊維幅は、透過型電子顕微鏡(TEM、例えば、商品名「FEI−TECNAI−G20」、FEI社製)を用いて倍率71万倍でアルミナナノファイバーを観察したときの観察視野内におけるアルミナナノファイバーの最も太い部分を「アルミナナノファイバーの幅」として測定する。測定個数は300本とし、個数分布を作成して個数平均値を平均繊維幅とする。一方、アルミナナノファイバーの平均繊維長は、走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、商品名「S−4800」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率2500倍でアルミナナノファイバーを観察したときのアルミナナノファイバーの軸線長さを「アルミナナノファイバーの繊維長」として測定する。測定個数は300本とし、体積平均から算出した値を平均繊維長とする。アルミナナノファイバーのアスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)は、このようにして算出される平均繊維長を平均繊維幅で除して算出する。
この撥水性アルミナゾルに含まれるアルミナナノファイバーの結晶系には、ベーマイト及び擬ベーマイトがあるが、本発明において、アルミナナノファイバーが前記寸法を有し、撥水性アルミナ膜が6H以上の鉛筆硬度を有するには、アルミナナノファイバーは少なくともベーマイト結晶系のアルミナナノファイバー及び/又は擬ベーマイト結晶系のアルミナナノファイバーを含んでいるのが好ましく、すなわち、その結晶系はベーマイト及び/又は擬ベーマイトを主成分とし、他の結晶形を含む混合物であってもよい。本発明において、撥水性アルミナゾルに含まれるアルミナナノファイバーはベーマイト結晶系のアルミナナノファイバー及び/又は擬ベーマイト結晶系のアルミナナノファイバーであるのが特に好ましい。ここで、ベーマイトは組成式:Al・nHOで表わされるアルミナ水和物の結晶である。アルミナナノファイバーの結晶系は、例えば、後述する加水分解性アルミニウム化合物の種類、その加水分解条件又は解膠条件によって、調整できる。アルミナナノファイバーの結晶系はX線回折装置(例えば、商品名「Mac.Sci.MXP−18」、マックサイエンス社製)を用いて確認できる。
このアルミナナノファイバーは、フルオロアルキルシロキシ基が結合されてなる。フルオロアルキルシロキシ基としては、例えば、式:R−R−Si−O−(ただし、Rは、炭素数1〜15個のパーフルオロアルキル基、Rは、炭素数1〜15個のアルキレン基を表す。)で示される置換基を挙げることができる。
この発明の撥水性アルミナゾルは、フルオロアルキルシロキシ基が結合されてなるアルミナナノファイバーを含有するので、撥水性に関する耐久性に優れた撥水性アルミナ膜を形成することができる。さらに詳細に説明すると、アルミナ膜の上に撥水膜が形成されている従来の撥水性アルミナ膜は、その最上表面にある撥水膜が傷ついたり、一部剥離したりすると、アルミナ膜があらわになり、その部分の撥水性が失われてしまい、撥水性に関する耐久性に限界があった。しかし、この発明の撥水性アルミナゾルは、撥水性アルミナゾルに分散されてなるアルミナナノファイバーがAl−O−Al結合により相互に結合されるとともに、このAlにフルオロアルキルシロキシ基が結合し、Al−O−Si結合が形成されているので、この撥水性アルミナゾルにより形成される撥水性アルミナ膜の表面が傷ついても、撥水性を付与するフルオロアルキルシロキシ基のみが取り除かれてしまうことがない。したがって、この発明の撥水性アルミナゾルにより形成された撥水性アルミナ膜は、その表面が傷ついてもその傷部分の撥水性を失うことがなく、ゆえに撥水性に関する耐久性が大きい。
また、アルミナナノファイバーはAl−O−Al結合により相互に結合されるとともに、アルミナナノファイバーに結合するフルオロアルキルシロキシ基と他のアルミナナノファイバーに結合するフルオロアルキルシロキシ基とが疎水性基同士の吸引力によって相互に結合されている。したがって、撥水性アルミナ膜は、それを形成するアルミナナノファイバーが分離し難く、高い硬度を有する。
なお、アルミナナノファイバーにフルオロアルキルシロキシ基が結合していることは、フーリエ変換赤外分光(FT−IR)装置を用いて、撥水性アルミナゾルをロータリーエバポレーターで濃縮乾固して得られた撥水性アルミナゲル粉体のフーリエ変換赤外線吸収(FT−IR)スペクトルを測定し、950〜1100cm−1にAl−O−Si結合に起因する吸収スペクトルが観測されることにより、確認することができる。Al−O−Si結合に起因する吸収スペクトルが950〜1100cm−1に存在することは、文献:K. Roodenko, O. Seitz, Y. Gogte, J.-F. Veyan and Y. J. Chabal, J. Phys. Chem., C,114(2010)22566-22572に開示されている。
また、アルミナナノファイバーにフルオロアルキルシロキシ基が結合していることは、X線光電子分光分析(ESCA又はXPS)装置を用いて、X線光電子分光法により撥水性アルミナ膜の表面のXPSスペクトルを測定したときに、Al2pスペクトルの結合エネルギーのピークトップが74.2〜75.0eVに存在することによっても確認することができる。この結合エネルギーのピークはAl−O−Si結合によるものであり、Al−O−Si結合に起因する結合エネルギーのピークが74.2〜75.0eVに存在することは、文献:K. Roodenko, O. Seitz, Y. Gogte, J.-F. Veyan and Y. J. Chabal, J. Phys. Chem. C, 114(2010)22566-22572に開示されている。
この発明の撥水性アルミナゾルは透明であり、またこの撥水性アルミナゾルを基板に塗布することにより形成される撥水性アルミナ膜もまた透明である。本発明において撥水性アルミナゾル及び撥水性アルミナ膜が透明であるとは、本発明の撥水性アルミナゾル又は撥水性アルミナ膜を試料として、分光光度計(例えば、UV−2450、株式会社島津製作所製)を用いて、可視光線、例えば波長400〜800nmの光を試料に当てて光の透過率を求め、前記波長の範囲における光の透過率が70%以上であることをいう。
この発明の撥水性アルミナ膜は、前述した撥水性アルミナゾルを基板上に塗布し、得られた塗布膜を硬化処理することにより形成されてなる。この発明の撥水性アルミナ膜に含まれるアルミナナノファイバーは、複数のアルミナナノファイバーが一方向に平行に配列された状態、又は、凝集して不定形又は粒子状で存在するのが好ましく、このような形態を有することにより、撥水性アルミナ膜がより緻密になり、より一層高硬度の撥水性アルミナ膜を形成することができる。
この発明の撥水性アルミナ膜の表面を電界放射形走査電子顕微鏡(FE−SEM、例えば、商品名「JSM6500F」、日本電子株式会社製)を用いて倍率15万倍で観察すると、撥水性アルミナ膜の表面は緻密であり、空隙又は孔が観察されない。この発明の撥水性アルミナ膜はアルミナナノファイバーが緻密に、不定形、粒子状又は一方向に平行に配列して集積され、FE−SEMにより前記倍率で撥水性アルミナ膜の表面を観察したとき、アルミナナノファイバー同士の間に形成される空隙が観察されないほど、この発明の撥水性アルミナ膜の空隙は極めて小さい。
前述した撥水性アルミナゾルによって形成される撥水性アルミナ膜の鉛筆硬度は、JIS K 5600−5−4に準拠して測定することができる。
この発明の撥水性アルミナ膜は、撥水性を有する。撥水性は水をはじく性質のことであり、この撥水性の程度は、水に対する接触角で評価することができる。この発明の撥水性アルミナ膜の水接触角は、80°以上である。
水接触角は、室温で水平な試料台の上に載置された基板上に撥水性アルミナ膜が形成されてなる試料に2μLの水滴を滴下して、水滴における空気と撥水性アルミナ膜とに接する点から水滴の曲面に接線を引いたときのこの接線と撥水性アルミナ膜表面との角度αを、接触角計を用いて測定することにより求めることができる。
この発明の撥水性アルミナ膜の厚さは、用途に応じて適宜に設定することができ、通常、0.01μm以上1μm以下の範囲内である。
この発明の撥水性アルミナゾルの製造方法の一例を以下に説明する。
まず、フルオロアルキルシロキシ基が結合されていない、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750であるナノファイバー状アルミナが分散されてなるナノファイバー状アルミナゾルを調製する。その一例として、酸水溶液中で加水分解性アルミニウム化合物を加水分解し、次いで、解膠して調製する方法(以下において、ゾル調製方法と称することがある。)が挙げられる。このゾル調製方法において、加水分解の反応条件及び解膠の処理条件を後述する特定条件とすると、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750のナノファイバー状アルミナ、例えば、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750で平均繊維幅が1〜10nm、平均繊維長が400〜7500nmのナノファイバー状アルミナが溶液中に分散してなるナノファイバー状アルミナゾルを調製することができる。
このゾル調製方法に用いられる加水分解性アルミニウム化合物は、各種の無機アルミニウム化合物及び有機基を有するアルミニウム化合物が包含される。無機アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等の無機酸の塩、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩、水酸化アルミニウム等が挙げられる。有機基を有するアルミニウム化合物としては、例えば、炭酸アルミニウムアンモニウム塩、酢酸アルミニウム等のカルボン酸塩、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド、環状アルミニウムオリゴマー、ジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセタト)アルミニウム等のアルミニウムキレート、アルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物等が挙げられる。
ゾル調製方法における加水分解性アルミニウム化合物は、これらのうち、適度な加水分解性を有し、副生成物の除去が容易であること等から、アルミニウムアルコキシドが好ましく、炭素数2〜5のアルコキシ基を有するものが特に好ましい。
このゾル調製方法において、加水分解に使用する酸としては、塩酸、硝酸等の無機酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸等の一価の酸が好ましく、無機酸は焼成後もアルミナ中に残存してしまうため有機酸が好ましい。有機酸として、操作性、経済性の面で酢酸が特に好ましい。酸の使用量は、加水分解性アルミニウム化合物に対して0.2〜2.0モル倍であるのが好ましく、0.3〜1.8モル倍であるのが特に好ましい。酸の使用量が0.2モル未満であると得られるナノファイバー状アルミナのアスペクト比が小さくなる場合があり、酸の使用量が2.0モルを超えると水性ナノファイバー状アルミナゾルの経時安定性が低下し、更に経済性の面で好ましくない。
加水分解の条件は、100℃以下で0.1〜3時間が好ましい。加水分解温度が100℃を超えると突沸の恐れがあり、加水分解時間が0.1時間未満であると温度コントロールが困難であり、3時間を超えると工程時間が長くなる。
加水分解する加水分解性アルミニウム化合物の酸水溶液の固形分濃度は2〜15質量%が好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。この固形分濃度が2質量%未満であると得られるナノファイバー状アルミナのアスペクト比が小さくなることがあり、固形分濃度が15質量%を超えると解膠中に反応液の撹拌性が低下することがある。
このゾル調製方法においては、このようにして加水分解性アルミニウム化合物を加水分解して生成したアルコールを好ましくは留去した後に解膠処理を行う。解膠処理は、100〜200℃で0.1〜10時間加熱し、更に好ましくは110〜180℃で0.5〜5時間処理する。加熱温度が100℃未満であると反応に長時間必要とし、200℃を超えると高圧の容器等を必要とし、経済的に不利となることがある。加熱時間が0.1時間未満であるとナノファイバー状アルミナのサイズが小さく、保存安定性が低くなることがあり、10時間を超えると工程時間が長くなる。
次いで、このように調製されたナノファイバー状アルミナゾルにシリコン化合物を添加して反応させることにより、フルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーを含有する撥水性アルミナゾルを調製する。
シリコン化合物は、ナノファイバー状アルミナにフルオロアルキルシロキシ基を結合させることができる化合物であれば良く、例えば、式(1):R−R−SiX[ただし、Rは、炭素数1〜15のパーフルオロアルキル基、Rは、炭素数1〜15のアルキレン基、Xは、ハロゲン基又はOR基(Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、又はtert−ブチル基を表す。)を表す。]で示される化合物を挙げることができる。
式(1)で表されるシリコン化合物の具体例としては、例えば、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)メチルジクロロシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリメトキシシラン、(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)メチルジクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシランなどが例示される。
上述のようにして得られたナノファイバー状アルミナゾルと水とを混合して、ナノファイバー状アルミナゾル液とする。ナノファイバー状アルミナゾルと水との混合割合は、ナノファイバー状アルミナゾル1gに対して水0.1〜100gであるのが均一な膜形成の観点から好ましい。
一方、シリコン化合物を有機溶媒に溶解してシリコン化合物溶液とする。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類を挙げることができる。シリコン化合物と有機溶媒との混合割合は、任意で良い。
次いで、ナノファイバー状アルミナゾル液にシリコン化合物溶液を添加し、例えば三口フラスコ中で30〜80℃で0.5〜5時間加熱しつつ撹拌する。このとき、ナノファイバー状アルミナゾル液とシリコン化合物溶液との混合割合は、Al:シリコン化合物=1:0.01〜5(モル比)であるのが好ましい。ナノファイバー状アルミナゾル液とシリコン化合物溶液との混合割合を前記範囲内とすることにより、ナノファイバー状アルミナにフルオロアルキルシロキシ基を適度に結合させることができ、得られた撥水性アルミナゾルにより形成される撥水性アルミナ膜は、良好な撥水性を有する。
この発明の撥水性アルミナゾルは、撥水性アルミナゾルを塗布する基板の材質によって腐食等の影響を与えることがあるので、必要に応じてpH調整試薬を添加して、撥水性アルミナゾルのpHを中性又はアルカリ性に調整してもよい。撥水性アルミナゾルのpHを調整するpH調整試薬は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム若しくはアンモニア、又は、エチルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、尿素等の有機アミン類等が使用できる。これらの中でも、pH調整試薬は、この発明の撥水性アルミナ膜に残存しにくく、高純度の撥水性アルミナ膜を製造できる点で、有機アミン類が好ましい。
このようにして調製された撥水性アルミナゾルが高粘度である場合にはその中に気泡を含んでいることが多いため脱気処理をしてこれらの気泡を除去するのがよい。気泡を除去する方法として、例えば、減圧処理、遠心処理等の各種脱気処理方法が挙げられる。
このようにして撥水性アルミナゾルが得られる。このゾル調製方法において調製される撥水性アルミナゾルには、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750、好ましくは平均繊維幅が1〜10nmで平均繊維長が400〜7500nmであり、フルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーが溶液中に分散している。なお、このゾル調製方法において、加水分解性アルミニウム化合物の種類、加水分解及び/又は解膠条件を適宜選択すると、アルミナナノファイバーの結晶系をベーマイト又は擬ベーマイトにすることができる。例えば、解膠温度を高温又は解膠時間を長時間にするとアルミナナノファイバーの結晶系がベーマイト結晶系になる傾向があり、逆に解膠温度を低温又は解膠時間を短時間にするとアルミナナノファイバーの結晶系が擬ベーマイト結晶系になる傾向がある。
この発明において、撥水性アルミナゾルを塗布する基板は、特に制限はないが、防汚性及び耐摩耗性が要求される基板が好適に用いられ、例えば、ガラス、金属、セラミックス、プラスチック等を挙げることができる。前記ガラスとしては、例えば、石英ガラス、96%石英ガラス、ソーダ石灰ガラス、アルミノ硼珪酸ガラス、硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、鉛ガラス等のガラスを挙げることができる。前記プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等を挙げることができる。より具体的には、携帯電話やパソコンの液晶画面、自動車のフロントガラス、浴室や洗面所の鏡、眼鏡、望遠鏡、双眼鏡等を挙げることができる。
前記撥水性アルミナゾルは、基板表面に塗付する前に、適当量の水を加えることで粘度が調整され、塗布液が調製される。例えば、固形分の含有量が5質量%のアルミナゾル100gに対して水を10〜2000g加えることにより、後述する塗布方法に応じて適宜設定される粘度を有する塗布液を調製することができ、適度な粘度を有する塗布液により均一な所望の厚さの塗布膜を得ることができる。
この発明においては、前記塗布液を基板表面に塗布し、次いで、得られた塗布膜を硬化処理することにより撥水性アルミナ膜が形成される。塗布液を基板表面に塗付する前に、基板表面を清浄化することが好ましい。基板表面を清浄化することにより、はじきを生じることなく均一な塗布膜を形成することができる。
この清浄化の手段としては、例えば、基板がガラスの場合は、洗剤、特に中性洗剤を用いて洗浄処理する手段を挙げることができ、基板が金属の場合は、脱脂剤含有液に浸漬処理する手段を挙げることができる。
前記脱脂含有液における脱脂剤としては、塩基性の化合物を含有する脱脂剤が好ましく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、硼酸ナトリウム等を挙げることができる。
基板表面に塗布液を塗布する方法としては、例えば、塗布液を基板に浸漬した後、これを緩やかに引き上げるディップ法、固定された基板表面上に適宜の方法によって塗布液を流延する流延法、塗布液を貯留した槽の一端から塗布液中に基板を浸漬し、前記槽の他端から基板を取り出す連続法、回転する基板上に塗布液を滴下し、基板に作用する遠心力によって塗布液を基板上に流延するスピンナー法、基板の表面に塗布液を吹き付けるスプレー法等を挙げることができる。
塗布液の塗布量は、塗布液の粘度、その他の条件により一律ではない。1回の塗布では目的の厚さの塗布膜が得られない場合には、数回の塗布を繰り返すこともできる。
前記の各種方法によって基板表面に塗布液が塗布された塗布膜を、必要に応じて乾燥した後、硬化処理することにより、撥水性アルミナ膜が形成される。硬化処理としては、加熱処理及び光照射処理を挙げることができ、光照射処理としては紫外線照射処理が好ましい。
撥水性アルミナ膜を形成するための加熱処理(以下、焼成処理と称することがある。)の温度は、400℃以上であり、基板の耐熱温度を超えない温度以下とするのがよく、この温度範囲における適宜の温度が採用される。塗布膜が形成された基板を加熱する際には、直接に前記温度に加熱してもよく、比較的低温で予熱し、次いで前記温度に加熱してもよい。また、その時間は、10分間〜2時間の範囲内であるのが好ましい。塗布膜が形成された基板を加熱する方法は、特に限定されず、焼成炉、電気炉等の高温熱処理装置等を用いることができる。
撥水性アルミナ膜を形成するための紫外線照射処理の条件にも特別な制限はないが、50〜150℃下に紫外線照射することが好ましい。照射する紫外線の光源としては、高圧水銀灯または低圧水銀灯を使用することができ、これら水銀灯を使用すると、適切な強度の紫外線を廉価に照射することができる。照射時間は、1分〜1時間ときわめて短時間で十分である。また、照射する紫外線の強度は任意であるが、好ましくは、50〜200mJ/cm2である。照射する紫外線の強度が前記範囲内であると、例えば、プラスチックス基材が黄変したり、変質、変形したりすることがなく、特別に紫外線照射に耐え得る基材を選択しなければならないという問題を解消することができる。
このようにして、撥水性アルミナゾルを基材状に塗布し、加熱処理又は光照射処理により塗布膜を硬化するという簡便な工程で撥水性アルミナ膜を作製することができる。得られた撥水性アルミナ膜は、高硬度であり、透明であり、撥水性を有するという特性を有している。
この発明の撥水性アルミナ膜は、透明性及び撥水性に優れると共に高い硬度を有するので、各種材料の表面の透明性を損なうことなく、防汚性を有し、かつ傷を防止する保護膜として好適に使用することができる。より具体的には、携帯電話やパソコン等の液晶画面、タッチパネルのフィルム、自動車のドアミラーや窓ガラスや塗装表面、窓ガラス、外壁、台所設備や入浴設備等の住宅設備、眼鏡、望遠鏡、双眼鏡、時計等の各種ガラス製品、めっき製品等の防汚性及び撥水性の保護膜として使用することができる。
次に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、以下の実施例によって本発明はなんら限定されるものではない。
(実施例1)
フラスコに、イオン交換水300g、酢酸6.2g(0.1mol)を取り、撹拌しながら液温を75℃に上昇させた。これにアルミニウムイソポロポキシド68g(0.34mol)を滴下し、発生するイソプロピルアルコールを留出させたのち、反応液をオートクレーブに移し、120℃で3時間反応を行った。反応液を40℃以下に冷却し、反応を終了した。得られたアルミナゾルのアルミナ粒子(ナノファイバー状アルミナ)を前記のようにして透過型電子顕微鏡(TEM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、平均繊維長1400nm、平均繊維幅4nm、アスペクト比350のナノファイバー状アルミナが分散してなるアルミナゾルが得られた。
このようにして調製したアルミナゾル2.00g(Al換算で0.096g)を純水8.00gに添加し、よく撹拌してアルミナゾル液を調製した。このアルミナゾル液に、エタノールに対して1.43質量%の(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン(以下において、FAS−1と称することもある。)を含有する(FAS−1)エタノール溶液を5.05g添加し、三口フラスコ中で50℃で1時間加熱及び撹拌し、アルミナナノファイバーを含有する撥水性アルミナゾルを得た。このとき、Al:FAS−1=1:0.075(モル比)であった。
4インチ角の無アルカリガラス(ショット社製、AF−45、)を50mm×50mmに折り割って、これを中性洗剤でよく洗浄し、純粋でリンスした後、エアガンで水滴を除去して乾燥した。撥水性アルミナゾルをスピンナー法(株式会社共和理研製 K−359SD−1、5秒間500rpmで回転させた後30秒間2000rpm)で、前記無アルカリガラス上に塗布して、塗布膜を得た。
次いで、この塗布膜が表面に形成された無アルカリガラスに高圧水銀灯(東芝ライテック株式会社製、H1000L)を用いて紫外線(UV)を10分間照射し、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例2)
実施例1において1.5質量%(FAS−1)エタノール溶液に代えて、1.9質量%(FAS−1)エタノール溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例3)
実施例1において1.5質量%FASエタノール溶液に代えて、0.95質量%(FAS−1)エタノール溶液を用い、アルミナゾル液と(FAS−1)エタノール溶液とを60℃で2時間加熱及び撹拌したこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例4)
実施例1において平均繊維長を400nm、アスペクト比を100のアルミナナノファイバーを含むアルミナゾルにしたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例5)
実施例1において平均繊維長を1000nm、アスペクト比を250のアルミナナノファイバーを含むアルミナゾルにしたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例6)
実施例1において平均繊維長を3000nm、アスペクト比を750のアルミナナノファイバーを含むアルミナゾルにしたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例7)
実施例1において1.5質量%(FAS−1)エタノール溶液に代えて、エタノールに対して1.0質量%の3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン(以下においてFAS−2と称することがある。)を含有する(FAS−2)エタノール溶液5.38gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
(実施例8)
実施例5において1.5質量%(FAS−1)エタノール溶液に代えて、エタノールに対して1.0質量%の(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン(以下においてFAS−3と称することがある。)を含有する(FAS−3)エタノール溶液8.61gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、撥水性アルミナゾル、撥水性アルミナ膜を作製した。
以上のようにして得られた撥水性アルミナゾル及び撥水性アルミナ膜について、以下の評価項目について試験を行った。評価結果を表1に示す。
[水接触角の測定]
得られた撥水性アルミナ膜の水接触角は、接触角計(協和界面科学株式会社製、DM−501)を用いて前述したように測定した。
[鉛筆硬度の測定]
得られた撥水性アルミナ膜の鉛筆硬度は、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(株式会社東洋精機製作所製 P−TYPE)を用いて測定した。測定方法は、鉛筆硬度試験JIS K 5600−5−4に準じて測定した。6B〜9Hの硬さの鉛筆を撥水性アルミナ膜に対して角度45°、荷重750gで押し付けて、7mm以上の距離を3本走査した。肉眼で撥水性アルミナ膜の表面を検査し、少なくとも3mm以上の傷跡が2本生じるまで、硬度を上げて試験を繰り返した。傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を、その撥水性アルミナ膜の鉛筆硬度とした。
[撥水性アルミナゾル及び撥水性アルミナ膜の透過率の測定]
得られた撥水性アルミナゾル及び撥水性アルミナ膜について、分光光度計(株式会社島津製作所製、UV−2450)を用いて、波長400〜800nmの可視光線の透過率を測定した。
Figure 0005967604
[摩耗試験(1)]
実施例1において作製した、無アルカリガラスの表面に形成されて成る撥水性アルミナ膜にスチールウール(#0000(極細目))を置き、550gの荷重をかけて、50回一方向に動かし、摩耗試験を行った。試験終了後、ヘイズ値をヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて測定した。試験前のヘイズ値は0.18%であり、試験後のヘイズ値は0.18%であり、試験の前後でヘイズ値に変化はなかった。また、試験後の水に対する接触角を前述したように測定したところ、105°であり、試験の前後で水接触角に変化はなかった。
[摩耗試験(2)]
実施例2において作製した、無アルカリガラスの表面に形成されて成る撥水性アルミナ膜を、テーバー摩耗試験機、テーバー式アブレーションテスター(株式会社安田精機製作所製、No.101)を用いて、荷重500g、摩耗輪(CS−17)を用いて、100回回転摩耗した。試験前のヘイズ値は0.18%であり、試験後のヘイズ値は1.5%であった。また、試験後の水に対する接触角を前述したように測定したところ、98°であり、試験の前後で水接触角はほとんど変化がなかった。
[FT−IRスペクトルの測定]
実施例1において作製した撥水性アルミナゾルを、ロータリーエバポレータを用いて、60℃で30分間維持し、その後70℃で40分間維持し、その後80℃で60分間維持することにより濃縮乾固した。次いで、濃縮乾固した撥水性アルミナゾルを真空デシケータを用いて減圧乾燥し、撥水性アルミナゲル粉体を得た。得られた撥水性アルミナゲル粉体をフーリエ変換赤外分光(FT−IR)装置(パーキンエルマー社製、Spectrum One、)を用いて、フーリエ変換赤外線吸収(FT−IR)スペクトルを測定した。撥水性アルミナゲル粉体のFT−IRスペクトルには、Al−O−Si結合による吸収が980cm−1に観測された。また、FAS−1由来であるC−F結合、及びC−C結合の吸収が、それぞれ1140cm−1、1216cm−1に観測された。よって、FAS−1は、ナノファイバー状アルミナに結合していることが分った。
[XPSの測定]
実施例1において作製した撥水性アルミナ膜のXPSスペクトルを、複合型電子分光分析装置(アルバック・ファイ株式会社製、PHI ESCA−5800)を用いて、X線源Monochromated-Al-Kα線(1486.6eV)を用いて測定した。Al2pスペクトルの結合エネルギーのピークが75.0eVに観測された。この結合エネルギーのピークは、Al−O−Si結合に由来する。また、F1sスペクトルのピークが689.2eVに、Si2pスペクトルのピークが103.8eVに観測された。よって、撥水性アルミナ膜の表面にはAl−O−Si結合を有するFAS−1が存在していることが分った。

Claims (4)

  1. アスペクト比(平均繊維長/平均繊維幅)が100〜750であり、フルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーを含有し、鉛筆硬度が6H以上であることを特徴とする撥水性透明アルミナ被膜。
  2. 前記アルミナナノファイバーがA−O−Al結合により相互に結合され、また光の透過率が70%以上である前記請求項1に記載の撥水性透明アルミナ被膜。
  3. 前記フルオロアルキルシロキシ基がR−R−Si−O−(ただし、Rは、炭素数1〜15個のパーフルオロアルキル基、Rは、炭素数1〜15個のアルキレン基を表す。)で示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撥水性透明アルミナ被膜。
  4. 基板上に塗布された、アスペクト比が100〜750であり、R−R−Si−O−(ただし、Rは、炭素数1〜15個のパーフルオロアルキル基、Rは、炭素数1〜15個のアルキレン基を表す。)で示されるフルオロアルキルシロキシ基を結合するアルミナナノファイバーを含有するアルミナゾルの塗布膜を硬化することを特徴とする前記請求項1に記載の撥水性透明アルミナ被膜の製造方法。
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