JP2002356650A - 光触媒性塗膜形成組成物およびそれを成膜した光触媒性部材 - Google Patents

光触媒性塗膜形成組成物およびそれを成膜した光触媒性部材

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JP2002356650A
JP2002356650A JP2001131078A JP2001131078A JP2002356650A JP 2002356650 A JP2002356650 A JP 2002356650A JP 2001131078 A JP2001131078 A JP 2001131078A JP 2001131078 A JP2001131078 A JP 2001131078A JP 2002356650 A JP2002356650 A JP 2002356650A
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titanium oxide
photocatalytic
coating film
silicon
forming composition
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JP2001131078A
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Masahiro Shibato
雅博 柴戸
Yumiko Katsukawa
由美子 勝川
Mitsuhide Shimobukikoshi
光秀 下吹越
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Toto Ltd
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Toto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低コストの湿式法で、基材表面に優れた硬
度、耐摩耗性を有する光触媒性膜を形成できる光触媒性
塗膜形成組成物、およびそれを成膜し乾燥させた塗膜を
有する光触媒性部材を提供すること。 【解決手段】 カルボン酸類に属する少なくとも1種以
上の物質を用いて予め表面修飾した酸化チタンと、シリ
コン系バインダーと、溶媒とからなる、pHが2〜5で
ある光触媒性塗膜形成組成物。特に酸化チタンは結晶性
酸化チタン粒子であり、その平均粒径が1〜100nm
であることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒として使用
される酸化チタン含有塗膜を形成できる組成物、及びこ
れをガラス、金属、セメント、壁紙、石膏ボード、石
材、セラミックス、もしくは樹脂等の表面に設けた部材
に関する。
【0002】
【従来の技術】光触媒部材は、防曇、降雨によるセルフ
クリーニング、有害物質の分解などの機能を有するた
め、環境に優しい機能性塗膜被覆材料として活発に研究
開発が行われている。このような光触媒性部材の製造で
は、その部材本来の特性を損なわないために基材の上に
光触媒機能塗膜を形成させる手法を取ることが主流とな
っている。
【0003】この光触媒機能塗膜を形成させる方法とし
ては、乾式法、湿式法があるが、十分な光触媒活性を維
持しながら、広汎な使用条件に耐えるような優れた硬
度、耐摩耗性を有する光触媒膜を形成させるためには、
各々の方法で問題がある。スパッタ法、CVD法、プラ
ズマ法などで代表される乾式法では、コストが高くな
り、また基材の材質、形状によっては製膜出来ないとい
う問題点がある。
【0004】一方、コストが低く、多くの基材に適用可
能なゾルゲル法等の湿式法では、各種分散剤を添加した
酸化チタンゾルを利用する方法、酸化チタン前駆体を利
用する方法、酸化チタンゾルと結合剤(以下、バインダ
ー成分)を混合させたものを利用する方法など、これま
で様々な塗膜形成組成物が提案されているが、いずれも
優れた硬度、耐摩耗性を有する光触媒塗膜を形成すると
は言いきれない。
【0005】具体的には、各種添加剤を添加した酸化チ
タンゾルを利用する方法である、特開2000−119
019号によれば、酸性酸化チタンゾル、溶液中のTi
4+イオンの膠状水酸化チタン化により酸化チタン粒子
同士が結合し酸化チタンが凝集することを防ぐために添
加される錯化剤、pH調整のために添加されるアルカリ
成分からなるpHが5〜10である酸化チタンゾルがあ
るが、80℃で焼成した塗膜の硬度は鉛筆硬度で2H以
下程度である。
【0006】また、酸化チタンゾルとバインダー成分を
混合させたもの主成分として利用する方法では、特開2
000−273355号によれば、気相法で合成された
微粒子酸化チタンにβージケトン、Ti系又はAl系カ
ップリング剤、Tiアルコキシドバインダーを組み合わ
せた光触媒塗料があるが、125℃で焼成した塗膜の鉛
筆硬度は3H程度である。また、特開平11−3231
90号、特開平11−323257号によれば、微粒子
酸化チタンにβージケトン、Ti系又はAl系カップリ
ング剤、アルコキシシランオリゴマーバインダーを組み
合わせた光触媒塗料があるが、150℃で焼成した塗膜
の鉛筆硬度は3H〜6H程度である。また、特開平11
−323191号によれば、微粒子酸化チタンにβージ
ケトン、Ti系又はAl系カップリング剤、フッ素系界
面活性剤含有エチルシリケート加水分解物バインダーを
組み合わせた光触媒塗料があるが、150℃で焼成した
塗膜の鉛筆硬度は3H〜6H程度である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、低コスト
の湿式法で、基材表面に優れた硬度、耐摩耗性を有する
光触媒膜を形成できる光触媒性塗膜形成組成物、および
それを成膜し乾燥させた塗膜を有する光触媒性部材を提
供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記問題を
解決すべく、(A)カルボン酸類に属する少なくとも1
種以上の物質を用いて予め表面修飾した (B)酸化チタン、又はTi−O結合を有する酸化チタ
ンの前駆体であり、少なくとも塗膜形成後に光触媒性酸
化チタンとなる材料と、(C)シリコン系バインダー
と、(D)溶媒とからなる、(E)pHが2〜5である
光触媒性塗膜形成組成物を提供する。尚、以下、特別に
明記しない限り、(B)を酸化チタン、(A)で表面修
飾された(B)酸化チタンを表面修飾酸化チタンと呼ぶ
ことにする。
【0009】上記光触媒性塗膜形成組成物を基材に成膜
し乾燥させると、鉛筆硬度7H以上の非常に高い表面硬
度を有する光触媒被膜となる。本発明の組成物を製膜し
た塗膜が鉛筆硬度7H以上を実現した要因は、酸化チタ
ンと基材、及び酸化チタン同士を強固に結合させる働き
をするシリコン系バインダーと、酸化チタンの表面修飾
に使われる物質カルボン酸の相互作用にあることが考え
られる。カルボン酸にはその化学構造から、塗膜の乾燥
硬化時に表面修飾したカルボン酸の残留水酸基(−O
H)がシリコン系バインダーの反応性官能基に作用し、
酸化チタンをカルボン酸を介してバインダーのネットワ
ーク架橋の一部として積極的に取り入れる作用があると
考えられる。そして、カルボン酸の有機構造が内部欠
陥、形状損壊を抑止する作用があると考えられる。これ
ら作用によって、より欠陥が少なく、高度な緻密化、架
橋化が達成された塗膜が実現できたと考えられる。
【0010】本発明の好ましい態様については、前記
(B)酸化チタンが、平均粒径1〜100nmであるよ
うにする。酸化チタンの平均粒径は、塗膜の光触媒活性
と機械的強度のバランスを考慮して決める。酸化チタン
は微粉状であり、その粒径は光触媒活性が強いこと及び
塗膜形成時に高充填され硬度、耐摩耗性が向上すること
から、平均粒径1〜100nm程度の微細なものが好ま
しい。この程度の大きさになると、可視光に散乱効果が
小さくなり透明性も高くなる。また、セラミックス、ガ
ラスなど特に硬度、耐摩耗性が要求される部材に対して
は、光触媒活性とのバランスを考えて粒径30nm以下
にすることが好ましい。さらに高硬度、高耐摩耗性を実
現したいときは、10nm以下にすることが好ましい。
【0011】本発明の好ましい態様については、前記
(B)酸化チタンの表面を修飾する前記(A)カルボン
酸1重量部に対して、前記(B)酸化チタンが二酸化チ
タン換算で1〜1000重量部であるようにする。酸化
チタンとカルボン酸の割合は、本発明の組成物における
分散、粘性などの液の特性、塗膜の硬度、耐摩耗性など
の機械的強度とのバランスを考慮して決める。その割合
は、カルボン酸1重量部に対して、酸化チタンが二酸化
チタン換算で1〜1000重量部であることが好まし
い。カルボン酸の量が少なすぎると、表面修飾酸化チタ
ンとシリコン系バインダーの混合液を塗膜にした場合、
硬度、耐摩耗性の向上効果は小さくなりやすい。また、
多すぎると表面修飾酸化チタン単独液、表面修飾酸化チ
タンとシリコン系バインダーの製造、調整、混合液に増
粘効果が起こりやすくなり、塗膜にした場合、塗膜面の
外観不良、硬度、耐摩耗性の低下などの課題が生じやす
くなる。
【0012】本発明の好ましい態様については、二酸化
チタン換算が100重量部となる前記(B)酸化チタン
の重量部に対して、前記(C)シリコン系バインダーを
二酸化ケイ素換算で10〜400重量部含有するように
する。酸化チタンとシリコン系バインダーの重量割合
は、塗膜の表面構造、内部構造に影響を与えることから
光触媒活性と塗膜硬度、耐摩耗性などの機械的強度のバ
ランスを考慮して決める。その割合は、二酸化チタン換
算が100重量部となる酸化チタンの重量部に対して、
シリコン系バインダーを二酸化ケイ素換算で10〜40
0重量部含有することが好ましい。シリコン系バインダ
ーの割合が二酸化ケイ素換算で400重量部を超える
と、シリコン系バインダーが酸化チタンを覆うため光触
媒機能が小さくなり、シリコン系バインダーの割合が二
酸化ケイ素換算で10重量部以下であると基材、および
酸化チタンとの接着強度が弱くなり、いずれにおいても
実用性が乏しい。
【0013】本発明の好ましい態様については、前記
(B)酸化チタンの二酸化チタン換算、および前記
(C)シリコン系バインダーの二酸化ケイ素換算の合計
固形分濃度が20重量%以下であるようにする。合計固
形分濃度とは、全体組成分中に含まれる酸化チタンを二
酸化チタンに、シリコン系バインダーを二酸化ケイ素に
換算した値の合計であるが、それは液の安定性、成膜方
法、成膜体の特性などのバランスを考慮して決める。そ
の合計固形分濃度は、酸化チタンの二酸化チタン換算、
およびシリコン系バインダーの二酸化ケイ素換算の合計
固形分濃度を20重量%以下にすることが好ましい。合
計固形分濃度が20重量%以下の場合、各種仕様(膜
厚、成膜方法など)に合うように設定して良いが、20
重量%を超えると組成物中の固形物の分散性が悪くな
り、組成物の安定性が著しく低下しゲル化が生じ易くな
る。また、高濃度になると成膜性、組成物の成膜体と基
材との密着性が著しく低下するようになるので好ましく
ない。
【0014】本発明では、上記光触媒性塗膜形成組成物
を基材の表面に塗布し、乾燥、硬化させた光触媒性塗膜
を設けた光触媒性部材を提供する。本発明によれば、本
発明の組成物を基材に成膜し乾燥させて塗膜を基材上に
形成させることができる。本発明の組成物を塗布する基
材としては、ガラス、金属、セメント、壁紙、石膏ボー
ド、石材、セラミックス、もしくは樹脂等の様々な形状
を有する部材、複合成形体が考えられる。これら基材に
塗布する際には、組成物、基材に合わせて、必要に応じ
て前処理を行ってもよい。
【0015】本発明の好ましい態様については、乾燥硬
化させて得た塗膜が鉛筆硬度7H以上の表面硬度を有す
る光触媒性塗膜を設けた光触媒性部材であるようにす
る。本発明によれば、本発明の組成物を基材に成膜し乾
燥させた塗膜は鉛筆硬度7H以上の表面硬度を有するた
め、表面硬度を必要とされる部材に適用できる。本発明
の組成物を塗布する基材としては、ガラス、金属、セメ
ント、壁紙、石膏ボード、石材、セラミックス、もしく
は樹脂等の様々な形状を有する部材、複合成形体が考え
られる。これら基材に塗布する際には、組成物、基材に
合わせて、必要に応じて前処理を行ってもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について順次説明
する。
【0017】前記(A)カルボン酸類としては、マレイ
ン酸、マロン酸、フマル酸、しゅう酸、コハク酸などの
1分子の構造中にカルボニル基を2個以上有するカルボ
ン酸、またはリンゴ酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、
クエン酸、グルコン酸などのヒドロキシカルボン酸から
選択される化学物質であることが好ましい。前記化学物
資には、1分子構造中に水酸基が2個以上存在する。水
酸基が2個以上存在しなければ、酸化チタン表面に修飾
したカルボン酸の残留水酸基が少なくシリコン系バイン
ダーとの作用が小さくなるため、塗膜の高度な緻密化、
架橋化が達成されにくくなると考えられる。また、水酸
基が多すぎれば、表面修飾酸化チタン単独液、表面修飾
酸化チタンとシリコン系バインダーの製造、調整、混合
液に凝集、増粘などの課題が生じると考えられる。
【0018】前記組成物の(B)光触媒作用を有する酸
化チタンについては、特定値(約3.2eV)以上のエ
ネルギーを持つ光を照射することで、励起された電子と
電子が飛び出して生じた正孔により、それぞれ有機物の
酸化分解作用、水分子の吸着による親水作用を示す酸化
チタンであり、例えば、結晶性酸化チタン粒子、アモル
ファス酸化チタン粒子、その他Ti−O結合を有する酸
化チタン前駆体があるが、好ましくは結晶性二酸化チタ
ン粒子である。結晶性二酸化チタン粒子については、ア
ナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型があるが、特に
好ましくはアナターゼ型、ブルッカイト型である。ま
た、それらが混合されたものであってもかまわない。ま
た、アモルファス酸化チタン粒子については、加熱する
ことにより結晶化が進み光触媒作用が向上するものが好
ましい。また、酸化チタン前駆体については、ヒドロキ
シチタネート、有機チタネートなどのように加熱するこ
とにより縮重合され結晶性酸化チタンに変移するものが
好ましい。
【0019】表面修飾酸化チタンの製造では、結晶性或
いはアモルファスの酸化チタン粒子を分散媒に分散させ
たゾルを利用するか、分散溶媒中にチタンアルコキシ
ド、硫酸チタニル、四塩化チタンなどの酸化チタンの前
駆体を混入させ中和、加水分解、脱酸処理、脱アルカリ
処理などの処理を行うことでゾルを形成するという方法
が好適に用いられる。例えば、出発原料として硫酸チタ
ニルを用いる場合、まず常温よりも高温で加水分解して
濾過洗浄したゾルを溶媒に再分散させる、あるいは加水
分解時に発生する陰イオンをイオン交換樹脂により処理
するなどして、カルボン酸、必要に応じて無機酸などの
酸を加えるという方法、また結晶性を向上させるために
さらに水熱処理を行うという方法が好適に用いられる。
また、出発原料として四塩化チタンを用いる場合、常温
よりも高温で加水分解した後、または加水分解しながら
発生した塩素イオンを電気透析、イオン交換樹脂、電気
分解などの脱塩素処理により処理し塩素イオン濃度、p
Hを制御しカルボン酸、必要に応じて無機酸などの酸を
加えるという方法、カルボン酸を用いて前記加水分解、
脱塩素処理により塩素イオン濃度、pHを制御するとい
う方法などが好適に用いられる。また、酸化チタンゾル
にカルボン酸を添加するという方法も好適に用いられ
る。
【0020】前記組成物の(C)シリコン系バインダー
は、塗膜硬化において酸化チタンと基材、かつ酸化チタ
ン同士を強固に結合させ、かつ酸化チタンの光触媒活性
を半永久的に発揮させる働きをする。また、表面修飾酸
化チタンと安定に調合できるpH値を有するバインダー
である。本発明のバインダーは、酸化チタンと基材を、
かつ酸化チタン同士を強固に結合させ、かつ酸化チタン
の光触媒活性を半永久的に発揮させる役割を持ち、表面
修飾酸化チタンゾルと安定に調合できるpH値に調合さ
れた未硬化シロキサンポリマーであることが好ましい。
その未硬化シロキサンポリマーは、 一般式 R1(n1)SiX(4−n1)…(1) (式中、n1は0または1の整数。R1は炭素数1〜18
の一価の有機基であり、その中における一つの炭素原子
はケイ素原子と結合している。Xは塩素、臭素、又は炭
素数1〜4のアルコキシ基である。以下同様)で表される
加水分解性3官能シリコン化合物と加水分解性4官能シ
リコン化合物の混合物、または加水分解性4官能シリコ
ン化合物を酸性下で加水分解・縮重合させたものが好ま
しい。より好ましくは加水分解性4官能シリコン化合物
の加水分解・縮重合させた未硬化シロキサンポリマーで
ある。 また、好ましくは一般式 Si(n2)O(n2−1)OR2(2n2+2)… (2) (式中、n2は2から6の整数。R2は炭素数1〜4のア
ルコキシ基である。以下同様)で表される加水分解性4
官能シリコン化合物の縮重合物を酸性下で加水分解・縮
重合させた未硬化シロキサンポリマーである。 また、一般式 M(n3)O・(n4)SiO2 …(3) (式中、Mはアルカリ金属類に属する元素。n3はMの
価数によって決まる数値。n4は1〜8の数値。以下同
様)で表される、MがFr、Cs、Rb、K、Na、L
iなど少なくとも1種類以上のアルカリ金属類に属する
元素を含むシリコン化合物、ケイ酸アルカリ金属塩溶液
(以下、アルカリシリケートと呼ぶ)を、中和したり、
電気透析、イオン交換樹脂、電気分解などで脱アルカリ
処理したりするなど好適に用いられる方法を施して得ら
れる酸性の未硬化シロキサンポリマーであってもかまわ
ない。また、前記未硬化シロキサンポリマーにシリカ微
粒子を加えたもの、また一般式(1)、または一般式
(2)、または一般式(3)で表されるシリコン化合物
とシリカ微粒子を反応させたものを用いてもかまわな
い。
【0021】一般式(1)で表されるシリコン化合物で
は、加水分解性3官能シリコン化合物としては、メチル
トリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルト
リメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチル
トリイソプロポキシラン、メチルトリt−ブトキシシラ
ン、エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラ
ン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシ
ラン、エチルトリイソプロポキシラン、ビニルトリクロ
ルシシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメト
キシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリクロルヒ
ドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒ
ドロシラン、トリエトキシヒドロシランを挙げることが
できる。加水分解性4官能シリコン化合物には、テトラ
クロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシ
ラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、
ジメトキシジエトキシシランがある。好ましくは、入手
し易く乾燥時に高硬度体を得やすいテトラメトキシシラ
ン、テトラエトキシシランである。また、一般式(2)
で表されるシリコン化合物としては、入手し易く乾燥時
に高硬度体を得やすいテトラメトキシシランの平均3量
体縮重合物であるメチルシリケート51、テトラエトキ
シシランの平均5量体縮重合物であるエチルシリケート
40が好ましい。また、一般式(3)で表されるシリコ
ン化合物としては、1号ケイ酸ナトリウム水溶液、2号
ケイ酸ナトリウム水溶液、3号ケイ酸ナトリウム水溶
液、4号ケイ酸ナトリウム水溶液、1Kケイ酸カリウム
水溶液、Bケイ酸カリウム水溶液、各種ケイ酸リチウム
水溶液などがある。また、それ以外のアルカリシリケー
トとして、アルカリ金属を極力少なくし、有機アミン類
(ホルムアルデヒド、エチルアミン、エタノールアミン
などの短鎖アミン)で安定化させたアンモニウムシリケ
ートなども挙げられる。
【0022】本発明の(C)シリコン系バインダーは、
一般式(1)で表される加水分解性4官能シリコン化合
物、または一般式(2)で表される加水分解性4官能シ
リコン化合物の縮重合物を酸性下で加水分解・縮重合さ
せた未硬化シロキサンポリマーであることがより好まし
い。
【0023】加水分解性シリコン化合物の加水分解で
は、触媒として酸、アルカリのいずれもが利用できる
が、加水分解したバインダー成分、表面処理酸化チタン
ゾル、およびこれら混合物の安定性を考えると、水と接
触すると(E)pHが2〜5である酸性を示すものであ
ることが望ましい。特に酸性のハロゲン化水素、カルボ
ン酸、スルホン酸、酸性あるいは弱酸性の無機塩、イオ
ン交換樹脂などの固体酸などが好ましい。好適な例とし
ては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸;酢酸、マレイン
酸に代表される有機酸;メチルスルホン酸、表面にスル
ホン酸基、又はカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂
などが挙げられる。加水分解触媒の量は、ケイ素原子上
の加水分解性基1モルに対して0.001〜5モルの範
囲内であることが好ましい。なお、pH2以下の強酸性
側、またはpH5以上の中性側であると、加水分解した
バインダー成分は不安定になりゲル化しやすくなる。
【0024】加水分解に使用する水の量は、塗膜の硬化
性、得られた塗膜の機械的強度、外観、表面処理酸化チ
タンゾルとの混合など液の安定性等から考慮すると、ケ
イ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001〜
500モル、好ましくは0.05〜100モルの範囲内
であることが好ましい。加水分解反応には、アルコー
ル、ケトン、エステル等の極性溶剤、或いはトルエン、
ヘキサン等の非極性溶剤を溶媒として用いるのが好まし
い。これら溶剤は、本発明の(D)溶媒に用いてもかま
わない。なお、ハロゲノシランを原料として使用する場
合、加水分解後、十分水洗してハロゲン成分を除去する
必要がある。
【0025】このようにして加水分解性シリコン化合物
モノマーを部分的に加水分解・縮重合させることにより
形成された未硬化のシロキサンポリマーからなるシロキ
サン化合物の分子量は、塗膜物性に影響を与える。分子
量が小さすぎる場合、乾燥硬化の際に欠陥、形状損壊が
生じやすくなり、塗膜硬度、耐摩耗性が低下することが
考えられる。分子量が大きい方が透明性、光沢、平滑性
の良好な被膜を形成することができる。シロキサン化合
物はポリスチレンを標準物質としたGPC(ゲル濾過クロ
マトグラフィー)測定により求めた数平均分子量が80
〜20000であるものが好ましい。
【0026】表面修飾酸化チタンとシリコン系バインダ
ーとの混合は、適宜に出来るが、一例を示すと酸性下に
ある所定量の表面修飾酸化チタン水性分散液を10〜5
0℃の液温に保持し、これに秤量したシリコン系バイン
ダーを一定時間かけて滴下添加する。滴下終了後、1〜
5時間撹拌下に反応させて組成物液を調製する。シリコ
ン系バインダーは、事前に前記加水分解性シリコン化合
物をpH調整下で加水分解・縮重合させた未硬化シロキ
サンポリマーであることが好ましく、これを表面修飾酸
化チタンゾルに撹拌下に混合して本発明の組成物を得る
ことができる。また、加水分解性シリコン化合物と加水
分解触媒を表面修飾酸化チタンゾルに同時に加えるとい
う方法、また表面修飾酸化チタン分散液中に存在する酸
分を利用して加水分解を進めるという方法が好適に用い
られる。また、アルカリシリケートを利用する場合、前
記した方法で事前にpH調整したもので調合するという
方法が好適に用いられる。
【0027】前記組成物の(D)溶媒は、塗膜形成要素
である表面修飾酸化チタン、シリコン系バインダーを均
質に分散させることが可能な物質である。例えば、水あ
るい低級アルコールであるメタノール、エタノール、イ
ソプロピルアルコール、n−プロパノール、n−ブタノ
ール、イソブタノール、あるいはケトン類であるメチル
エチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(M
IBK)がある。好ましくは、水あるいは前記低級アル
コール類である。また、組成物を希釈する希釈剤には、
水、及び有機溶剤を使用することができる。有機溶剤と
してはアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル
類が適する。
【0028】前記組成物の(E)pHは2〜5である。
そのpH領域であることが、塗膜形成要素各成分を製
造、調合した際の安定性の向上に有利に働く。pH2以
下の強酸性側、またはpH5以上の中性側であると、シ
リコン系バインダーは不安定になる。
【0029】本発明では、(A)カルボン酸類に属する
少なくとも1種以上の物質を用いて予め表面修飾した
(B)光触媒作用を有する酸化チタンと(C)シリコン
系バインダーの塗膜構成組成物を乾燥硬化させること
で、優れた硬度、耐摩耗性を有する光触媒性塗膜を実現
できた。本発明の光触媒性塗膜形成組成物によって得た
塗膜が高硬度、高耐摩耗性となるメカニズムは必ずしも
詳らかでない。しかし、高硬度、高耐摩耗性を実現して
いる作用としては、乾燥時に従来の無機強酸分散酸化チ
タンゾルとバインダーを混合した湿式法において弱点で
あった酸化チタンとバインダーの結合界面の弱さを強化
する作用、それに加えて光触媒性塗膜形成組成物の乾燥
時に内部欠陥、形状損壊を少なくさせる作用が、カルボ
ン酸の化学構造から期待できるためであると考えられ
る。また、酸化チタン単独、またはバインダー成分との
混合、製造においても、酸化チタンの凝集・沈殿を低減
させる、分散剤としての効果もあると思われる。
【0030】前記、酸化チタンとバインダーの結合界面
の弱さを強化する作用としては、塗膜の乾燥硬化時に酸
化チタン粒子の表面を被覆したカルボン酸の残留水酸基
(−OH)がシリコン系バインダーの反応性官能基に作
用することで、酸化チタンをカルボン酸を介してバイン
ダーのネットワーク架橋の一部として積極的に取り入れ
る作用が考えられる。そのために、低温乾燥で処理した
塗膜であっても高度な緻密化、架橋化が達成されたと考
えられる。
【0031】また、前記、本発明の組成物の乾燥時に、
内部欠陥、形状損壊を少なくさせるような作用として
は、有機構造を持つカルボン酸が存在することで組成物
に可撓性が付与され、乾燥硬化時に無理なく、かつ欠陥
が少なく塗膜を形成させるような一種の成形助剤として
の作用が考えられる。そのため、より欠陥が少なく高度
に緻密化された塗膜が実現したと考えられる。
【0032】また、前記分散剤としての作用は、酸化チ
タンの凝集・沈殿などが原因で生じる、塗膜形成時の成
膜ムラ、それに起因する機械的強度不良、外観不良など
を低減させる作用が考えられる。これらの挙げた効果が
期待できない、表面修飾を施していない酸化チタンとシ
リコン系バインダーから成る光触媒性塗膜では、高硬
度、高耐摩耗性は実現できない。
【0033】本発明では、これまで説明してきた各種特
徴を有するものであることがより好ましい。また、所望
により各種添加剤を適宜加えても良い。具体的には、硬
化触媒、各種界面活性剤、増粘剤、分散剤、発砲剤、シ
ラン或いはチタンカップリング剤、染料などである。
【0034】本発明では、組成物を基材に塗布し、乾
燥、場合によっては加熱焼成して塗膜化される。加熱温
度については限定されるものではないが、100℃〜8
00℃が好ましい。また、塗布方法は塗布すべき基材の
形状と寸法に適した方法が適宜使用される。例えば、ハ
ケ塗り、スプレー法、バーコーター法、アプリケーター
法、スピンコーティング法、ディッピング法、カーテン
ウォール法などがある。一般的に基材への付着量が多い
成膜法ほど、組成物の固形分濃度は低く設定する方が好
ましいが、成膜体の仕様によって適宜変更しても良い。
【0035】本発明の成膜では、塗膜硬度、耐摩耗性、
光触媒活性、外観をバランス良く発現させるためには、
前述した二酸化チタンおよび二酸化珪素の酸化物換算値
の重量比だけではなく、塗膜厚さも重要な因子となる。
本発明の組成物では、膜厚は10〜1000nmが好ま
しい。透明性も重視する仕様では、10〜300nmが
好ましい膜厚である。
【0036】本発明では、低温焼成であっても同じ焼成
条件で形成された従来の酸やアルカリで邂逅した酸化チ
タンよりも優れた、鉛筆硬度7H以上の表面硬度、耐摩
耗性を有する光触媒性塗膜を形成することができる。そ
のため、塗膜の硬化性を促進させたり、または塗膜の硬
化時間を短縮する目的でより高温側で加熱処理する場合
に常に懸念される項目、例えば基材特性が損なわれる、
コストなどの不具合を低減できる。また高温における加
熱処理が不可能な建造物等の部材にも、硬度、耐摩耗性
に優れた光触媒性塗膜を形成することができる。
【0037】上記方法で部材表面に薄膜を形成すると、
部材表面は光半導体である酸化チタンの光励起に応じて
親水性、分解性を呈するようになる。ここで、光半導体
の光励起により、基材表面が高度に親水化されるために
は、励起光の照度は0.001mW/cm2以上あれば
よいが、0.01mW/cm2以上だと好ましく、0.
1mW/cm2以上だとより好ましい。光源としては、
太陽光、室内照明、蛍光灯、水銀灯、白熱電灯、キセノ
ンランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドラン
プ、BLBランプ、殺菌灯等が好適に利用できる。但し
膜厚100nm以下の薄膜にした場合には、薄膜におい
ても吸収性のよい250〜350nm程度(好ましくは
300〜350nm程度)の短波長光が多く含まれるの
が好ましい。
【0038】本発明の組成物を塗布する基材としては、
ガラス、金属、セメント、壁紙、石膏ボード、石材、セ
ラミックス、もしくは樹脂等の様々な形状を有する部
材、複合成形体が考えられる。これら基材に塗布する際
には、組成物はもちろん基材に合わせた前処理を行うこ
とが必要となる。
【0039】本発明が適用可能な基材としては、防曇、
防滴効果を期待する場合には透明な部材であり、その材
質はガラス、プラスチック等が好適に利用できる。適用
可能な基材を用途でいえば、車両用後方確認ミラ−、浴
室用鏡、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼
鏡レンズ、光学レンズ、照明用レンズ、半導体用レン
ズ、複写機用レンズ、車両用後方確認カメラレンズのよ
うなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;自動
車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロ−プ
ウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような
乗物の窓ガラス;自動車、オ−トバイ、鉄道車両、航空
機、船舶、潜水艇、雪上車、スノ−モ−ビル、ロ−プウ
エイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、宇宙船のような乗
物の風防ガラス;防護用ゴ−グル、スポ−ツ用ゴ−グ
ル、防護用マスクのシ−ルド、スポ−ツ用マスクのシ−
ルド、ヘルメットのシ−ルド、冷凍食品陳列ケ−スのガ
ラス、中華饅頭等の保温食品の陳列ケ−スのガラス;計
測機器のカバ−、車両用後方確認カメラレンズのカバ
−、レ−ザ−歯科治療器等の集束レンズ、車間距離セン
サ−等のレ−ザ−光検知用センサ−のカバ−、赤外線セ
ンサ−のカバ−;カメラ用フィルタ−、及び上記物品表
面に貼着させるためのフィルム、シ−ト、シ−ル、ワッ
ペン等が挙げられる。
【0040】本発明が適用可能な基材としては、表面清
浄化効果を期待する場合にはその材質は、例えば、金
属、セラミック、ガラス、プラスチック、木、石、セメ
ント、コンクリ−ト、繊維、布帛、それらの組合せ、そ
れらの積層体が好適に利用できる。適用可能な基材を用
途でいえば、建材、建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラ
ス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の
外装、防塵カバ−及び塗装、交通標識、各種表示装置、
広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガ−ドレ
−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太
陽電池カバ−、太陽熱温水器集熱カバ−、ビニ−ルハウ
ス、車両用照明灯のカバ−、住宅設備、便器、浴槽、洗
面台、照明器具、照明カバ−、台所用品、食器、食器洗
浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフ−
ド、換気扇、及び上記物品表面に貼着させるためのフィ
ルム、シ−ト、シ−ル、ワッペン等が挙げられる。
【0041】本発明が適用可能な基材としては、乾燥促
進効果を期待する場合には、その材質は、例えば、金
属、セラミック、ガラス、プラスチック、木、石、セメ
ント、コンクリ−ト、繊維、布帛、それらの組合せ、そ
れらの積層体が好適に利用できる。適用可能な基材を用
途でいえば、自動車車体、窓、舗道及び上記物品表面に
貼着させるためのフィルム、シ−ト、シ−ル、ワッペン
等が挙げられる。
【0042】本発明が適用可能な基材としては、脱臭、
殺菌効果を期待する場合には、その材質は、例えば、金
属、セラミック、ガラス、プラスチック、木、石、セメ
ント、コンクリ−ト、繊維、布帛、それらの組合せ、そ
れらの積層体が好適に利用できる。適用可能な基材を用
途でいえば、タイル、壁紙、床材などの内装建材、外装
建材、日用雑貨全般、老人ホームや病院等で使用する器
具や衣服、およびその表面に接着するフィルム、シ−
ト、シ−ル、ワッペン等が挙げられる。
【0043】
【実施例】以下に実施例によって本発明をより具体的に
説明する。尚、本発明の実施の形態はこれらに限定され
るものではない。
【0044】[実施例1]エタノール29.75g、エ
チルシリケート40(エチルシリケート5量体、コルコ
ート(株)社製)3.75g、2重量%硝酸水溶液5.8
0gを蓋付き容器に入れ、30℃の湯浴中で攪拌しなが
ら5時間加水分解を行ない、シリコン系バインダーを得
た。
【0045】リンゴ酸を1〜1.5重量%、酸化チタン
単独固形分濃度を6重量%含有する平均粒径6nmの酸
化チタンゾルM−6(多木化学(株)社製)17.5
g、上記シリコン系バインダー11.25g、希釈溶媒
として蒸留水21.25gを加えて攪拌し、チクソ性が
ある光触媒性酸化チタン塗膜形成組成物を得た。この組
成物は、酸化チタンを二酸化チタン、シリコン系バイン
ダーを二酸化ケイ素の重量にそれぞれ換算した重量比が
71:29であり、全組成物中の合計固形分濃度が3重
量%、pHは2.54であった。
【0046】この組成物を、回転条件500rpm×2
0秒、1000rpm×20秒で速やかにガラス基板上
にスピンコートし、120℃で1時間保持して硬化させ
てサンプルを得た。このサンプル基材上に形成された光
触媒性塗膜の膜厚は、SEM電子顕微鏡((株)島津製
作所製)観察で70〜80nmであった。このサンプル
を実施例1とした。
【0047】実施例1で得られた塗膜の親水性、光触媒
活性に関する特性を調べた。
【0048】(親水性)親水性の評価では、ブラックラ
イトブルーランプ(以下、BLBと呼ぶ)を照射し水接
触角の測定を行った。この評価では、紫外線強度を屋外
と同程度の強度、0.5mW/cm2とした。そして、照
射0時間、照射24時間後の水との接触角値を測定し
た。なお、装置については、自動接触角計CA−Z(協
和界面科学社製)を用いた。
【0049】親水性評価では、BLB照射0時間におけ
る水接触角は40°であったが、BLB照射24時間後
には15°まで下がった。BLB照射によって親水性を
示すことから、光触媒活性による親水性能を有する塗膜
であることを確認した。
【0050】(光触媒活性)光触媒活性の評価では、硝
酸銀呈色試験を行なった。1mW/cm2の紫外線を24時
間照射しあらかじめ親水化させたサンプルの表面に2重
量%の硝酸銀水溶液を刷毛で塗布し、1.2mW/cm2の
紫外線を10分間照射した後、サンプル表面の色差ΔE
*を測定した。
【0051】光触媒活性の評価では、ΔE*が3.9に
なった。BLB照射によって硝酸銀呈色反応を示すこと
から、光触媒活性を有する塗膜であることを確認した。
【0052】以上から、本発明の組成物から得られた塗
膜が、光触媒活性、親水性能を有することが分かったの
で、次に表面硬度、耐摩耗性を評価した。なお、この評
価では、公知の光触媒性塗膜形成組成物を製膜したサン
プル比較例1と比較した。
【0053】[比較例1]無機強酸解膠酸化チタンゾル
にエチルシリケート縮合物の酸性加水分解物を混合した
コート剤の代表として、ST−K03(石原産業(株)
社製)を用いた。製膜では、希釈溶媒をエタノールとし
た以外は、なるべく同じ程度の膜厚となるように固形分
濃度を調整して実施例1と同様な成膜方法、焼成条件を
用いて塗膜を形成させた。なお、得られた塗膜の膜厚は
100〜130nmであり、このサンプルを比較例1と
した。
【0054】(初期外観)初期外観の評価では、目視観
測、及びヘイズ率の測定を行った。目視観測では、無色
透明である場合「問題なし」、また変色、膜切れなどの
不具合がある外観を、「悪い」と2段階に分けて評価し
た。また、ヘイズ率の測定には、ヘイズメーターhaze-G
uard PLUS (BYK-Gardner社製)を用いた。
【0055】実施例1の外観は、ヘイズ率値が0.2で
あり目視外観でも特に問題が無く透明性が高い外観であ
った。また、比較例1と比較してもほとんど変わらない
外観であった。
【0056】(表面硬度)表面硬度の評価では、JIS
K5400による鉛筆硬度の測定を行った。なお、測定
には、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機型式P((株)東洋精機製
作所製)を用いた。
【0057】鉛筆硬度の評価では、比較例1で4H、特
開2000−119019公報に記載の実施例1で提示
されたリンゴ酸系酸化チタンゾルのコート剤で2Hであ
るのに対して、実施例1は9Hであった。本発明の塗膜
が、明らかに優れた鉛筆硬度を有することを確認した。
【0058】(耐摩耗性)耐摩耗性の評価では、テーバ
ー摩耗試験前後のサンプル外観の目視観測、ヘイズ率の
測定を行った。具体的には、摩耗装置ロータリーアブレ
ージョンテスタ5130ABRAZER((株)東洋精機製作所
製)を用いて、摩耗輪CS-17、荷重250g、100回
転の条件で摩耗試験を行ない、試験前後のサンプル外観
を目視観測、ヘイズ率の変化を上記ヘイズメーターで測
定した。目視観測では、キズの付き具合で「キズが少な
い」、「キズが多い」と2段階に分けて評価した。ま
た、ヘイズ率では、試験前後のヘイズ率の差をヘイズ変
化ΔHとして表し、耐摩耗性の示標とした。
【0059】テーパー摩耗の評価では、ΔH値が比較例
1で+5.0であるのに対して、実施例1は+1.2で
あり、ヘイズ率の変化が少なかった。また、目視観察に
おいても、実施例1のキズの付き具合は比較例1よりも
少なかった。本発明の塗膜が明らかに優れた耐摩耗性を
有することを確認した。
【0060】このように評価した結果を表1に示す。表
1から、本発明が硬度、耐摩耗性に優れた光触媒性塗膜
であることが分かる。
【0061】
【表1】
【0062】[酸化チタンゾルの分析]従来の光触媒性
形成組成物では得られないほどの優れた塗膜硬度、耐摩
耗性を実現した原因を調べるため、リンゴ酸を1〜1.
5重量%含み、酸化チタン単独固形分濃度が6重量%で
ある酸化チタンゾルM−6(多木化学(株)社製)の分
析を行った。
【0063】[酸化チタン表面に吸着したリンゴ酸の絶
対量の分析]リンゴ酸が酸化チタン表面に吸着している
ことを確認するために分析を行った。今回使用した酸化
チタンゾルの液中には全体で1〜1.5重量%のリンゴ
酸が含まれ、その状態は酸化チタン粒子表面に吸着し固
定されている状態のリンゴ酸(以下、吸着リンゴ酸とす
る)、吸着せず溶媒中に溶解し自由に移動している状態
のリンゴ酸(以下、遊離リンゴ酸とする)の2種類で存
在することが予想された。そのため、遊離リンゴ酸の定
量化にはそのままのゾルを、吸着リンゴ酸の定量化には
アルカリ処理したゾルを、それぞれ限外濾過し採取した
ろ液をキャピラリー電気泳動法で分析した。
【0064】遊離リンゴ酸を定量評価するため、酸化チ
タンゾルを超純水で100倍に希釈し、酸化チタンがろ
液に混入せず、吸着リンゴ酸が酸化チタン表面から外れ
ない程度の条件で分画分子量50,000の限外濾過フ
ィルターUFV2 BQK40(日本ミリポア(株)
製)を用いて限外濾過し、酸化チタン粒子が存在せず、
遊離リンゴ酸のみが含まれるろ液を得た。
【0065】吸着リンゴ酸を定量評価するため、酸化チ
タンゾルを0.1N水酸化ナトリウム水溶液で10倍に
希釈したサンプルを密閉ガラス瓶中で60℃×4日加熱
後、さらに超純水で10倍に希釈し、遊離リンゴ酸のろ
液を得たときと同様な濾過条件で限外濾過し、酸化チタ
ン粒子表面から外れた吸着リンゴ酸と遊離リンゴ酸の両
方が含まれるろ液を得た。
【0066】得られたろ液をキャピラリー電気泳動法に
より分析した。具体的には、内径50μm×長さ104
cmのキャピラリーと有機酸分析用バッファ(pH5.
6、Agilent Technologies(株)社製)を用い、泳動
電圧25kV(Negative)、検出波長(Signal 350n
m、reference 200nm)で測定した。その結果、ゾルに
は吸着リンゴ酸が0.7重量%、遊離リンゴ酸が0.3
重量%であることが分り、酸化チタン粒子表面にはリン
ゴ酸が吸着していることを確認した。
【0067】[酸化チタン表面に吸着したリンゴ酸の結
合形態分析]酸化チタンゾル表面に吸着したリンゴ酸の
結合形態を分析するために、DL-リンゴ酸、表面処理酸
化チタンゾル、表面処理酸化チタンゾルにDL-リンゴ酸
を添加した3種類をSpectrum 2000 FTIR(PERKIN EL
MER社製)を用いて、高速フーリエ変換型赤外吸収スペ
クトル分析した。その結果、表面処理酸化チタンゾルに
おいて、DL-リンゴ酸の構造内に存在する炭素と酸素の
二重結合C=Oに由来する1720cm-1の吸収ピークに
ずれが生じる現象が観測された。文献S.Doeuff et a
l.、「Hydrolysis of titanium alkoxides:modifica
tion of themolecular percursor by acetic aci
d 」(p206〜216、89、1987、Journal
of Non-Crystalline Solids)によれば酢酸とチタン
アルコキシドの結合形態の一つに酢酸の構造内に存在す
るC=Oに由来する1720cm-1の吸収ピークにずれを
生じさせるモノデンテート(Monodentate)型が存在す
ることを示唆しているが、この分析結果からリンゴ酸と
酸化チタンゾル表面の結合形態はモノデンテート(Mono
dentate)型と類似した形態をしていると考えられる。
【0068】
【本発明の効果】本発明によれば、低コストの湿式法
で、基材表面に優れた硬度、耐摩耗性を有する光触媒膜
を形成できる光触媒性塗膜形成組成物を提供することが
可能となった。また、それを成膜し乾燥させた塗膜を有
する光触媒性部材を提供することも可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 勝川 由美子 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 下吹越 光秀 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 Fターム(参考) 4G069 AA03 BA02A BA02B BA04A BA04B BA13A BA14A BA14B BA16A BA17 BA22A BA29A BA48A CA01 CA11 CA17 CD10 ED02 ED03 ED10 4J038 DL011 DL021 DL031 HA15 HA21 JA19 JA33 JA39 MA06 NA06 NA11 PA18 PA19 PC02 PC03 PC04 PC08 PC10

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)カルボン酸類に属する少なくとも1
    種以上の物質を用いて予め表面修飾した (B)酸化チタン又はTi−O結合を有する酸化チタン
    の前駆体であり、少なくとも塗膜形成後に光触媒性酸化
    チタンとなる材料と、(C)シリコン系バインダーと、
    (D)溶媒とからなる、(E)pHが2〜5である光触
    媒性塗膜形成組成物。
  2. 【請求項2】 前記(B)の材料は、結晶性酸化チタン
    粒子であり、その平均粒径が1〜100nmであること
    を特徴とする請求項1に記載の光触媒性塗膜形成組成
    物。
  3. 【請求項3】 前記(B)酸化チタンの表面を修飾する
    前記(A)カルボン酸1重量部に対して、前記(B)酸
    化チタンが二酸化チタン換算で1〜1000重量部であ
    ることを特徴とする請求項1〜2に記載の光触媒性塗膜
    形成組成物。
  4. 【請求項4】 二酸化チタン換算が100重量部となる
    前記(B)酸化チタンの重量部に対して、前記(C)シ
    リコン系バインダーを二酸化ケイ素換算で10〜400
    重量部含有することを特徴とする、請求項1〜3に記載
    の光触媒性塗膜形成組成物。
  5. 【請求項5】 前記(B)酸化チタンの二酸化チタン換
    算、および前記(C)シリコン系バインダーの二酸化ケ
    イ素換算の合計固形分濃度が20重量%以下であること
    を特徴とする、請求項1〜4に記載の光触媒性塗膜形成
    組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の光触媒
    性形成組成物を基材の表面に塗布し、乾燥、硬化させた
    光触媒性塗膜を設けた光触媒性部材。
  7. 【請求項7】 前記乾燥硬化させて得た塗膜が鉛筆硬度
    7H以上の表面硬度を有する請求項6に記載の光触媒性
    部材。
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