JPWO2018101027A1 - ガスバリア性フィルム、及び、ガスバリア性フィルムの成形加工方法 - Google Patents

ガスバリア性フィルム、及び、ガスバリア性フィルムの成形加工方法 Download PDF

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Abstract

ガスバリア性フィルムは、ガスバリア層の組成をSiOxCyで表した際に、y<0.20の組成を有する領域とy>1.40の組成を有する領域との合計が、厚さ方向に20nm未満である。さらに、ガスバリア性フィルムは、実質的に平坦な領域と、平坦な領域に囲まれた3次曲面を有する領域とを有し、3次曲面を有する領域と平板との間に平均0.5mm以上の間隙が形成される。

Description

本発明は、ガスバリア層を備えるガスバリア性フィルム、及び、ガスバリア性フィルムの成形加工方法に係わる。
ガラス基板を用いた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子の封止部材として、基板に対向する側が開放された箱型形状で、外側四辺に形成されたフランジを有し、曲面を有する金属封止缶が知られている(特許文献1参照)。このような封止缶は、空隙に乾燥剤を充填することが可能であり、素子の耐久性を向上させる設計がしやすい。一方で、金属であるために、重い、可撓性に乏しい、曲げた際に金属面が素子と接触し破損する等の欠点を有している。
また、曲率が大きい曲面において、クラックの発生を抑制することが可能なガスバリア層が提案されている(特許文献2参照)。このガスバリア層は、ケイ素、炭素、及び水素を含むプラズマ蒸着非晶質ガラス層が、蒸着法によってフィルム上に形成されている。
特開2003−272826号公報 特表2013−512257号公報
しかしながら、ガスバリア層としてプラズマ蒸着非晶質ガラス層を形成する方法では、ガスバリア層に有機成分が多く含有されるため、WVTRが数g程度と非常に大きい。このため、曲面を有する形状に成型できたとしても、高いバリア性が要求される電子デバイスの封止への適用には、バリア性が不十分である。
このように、高いバリア性を有し、かつ、曲面を有するガスバリア性フィルムが望まれている。
上述した問題の解決のため、本発明においては、高いバリア性を有し、曲面を有するガスバリア性フィルムを提供する。
本発明のガスバリア性フィルムは、基材と、基材上に形成されたガスバリア層とを備える。そして、ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、ガスバリア層の組成をSiOxCyで表した際に、y<0.20の組成を有する領域とy>1.40の組成を有する領域との合計が、厚さ方向に20nm未満である。さらに、ガスバリア性フィルムが、実質的に平坦な領域と、平坦な領域に囲まれた3次曲面を有する領域とを有し、平坦な領域を平板に接した際に、3次曲面を有する領域が平板と接触せず、3次曲面を有する領域と平板との間に平均0.5mm以上の間隙が形成される。
本発明によれば、高いバリア性を有し、曲面を有するガスバリア性フィルムを提供することができる。
ガスバリア性フィルムの構成を示す平面図である。 図1に示すガスバリア性フィルムのA−A線断面図である。 ガスバリア性フィルムの構成を示す断面図である。 ガスバリア層のケイ素、炭素、酸素の分布曲線を示すグラフである。 ガスバリア層のC/Si比、O/Si比の分布曲線を示すグラフである。 ガスバリア層のケイ素、炭素、酸素の分布曲線を示すグラフである。 ガスバリア層のC/Si比、O/Si比の分布曲線を示すグラフである。 ガスバリア層を構成するSiOxCyの組成を表す直交座標である。 ガスバリア層を構成するSiOxCyの組成を表す直交座標である。 ガスバリア層を構成するSiOxCyの組成を表す直交座標である。 ガスバリア層を構成するSiOxCyの組成を表す直交座標である。 ガスバリア層の三次元表面粗さ変換データの高さを表示した画像である。 ガスバリア層の三次元表面粗さ変換データの高さを表示した画像である。 ガスバリア層の三次元表面粗さ変換データの高さを表示した画像である。 ガスバリア性フィルムの構成を示す平面図である。 図1に示すガスバリア性フィルムのA−A線断面図である。 ローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。 ガスバリア性フィルムの成型加工に用いる基板の構成を示す図である。 実施例において水蒸気透過度(WVTR)を評価するための試料の構成を示す図である。 ガスバリア性フィルムの成型加工に用いる基板の構成を示す図である。 実施例における曲面領域の形状を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.ガスバリア性フィルムの第1実施形態
2.ガスバリア性フィルムの第2実施形態
3.ガスバリア性フィルムの構成要素
4.ガスバリア性フィルムの成形加工方法
〈1.ガスバリア性フィルムの第1実施形態〉
以下、ガスバリア性フィルムの具体的な実施の形態について説明する。
[ガスバリア性フィルムの構成]
図1及び図2に、ガスバリア性フィルムの構成を示す。図1は、ガスバリア性フィルムの平面図である。図2は、図1に示すガスバリア性フィルム10のA−A線断面図である。
図1及び図2に示すように、ガスバリア性フィルム10は、基材11と、基材11の一方の面に形成されたガスバリア層12とを備える。なお、基材11とガスバリア層12とを備えるガスバリア性フィルム10は、後述する各構成及び条件を満たしていれば、その他の構成については特に限定されない。
また、図1及び図2に示すように、ガスバリア性フィルム10は、実質的に平坦な領域(平坦領域)13と、平坦領域13に囲まれた3次曲面を有する領域(曲面領域)14とを備える。曲面領域は、ガスバリア性フィルム10の一方の面に凹部が形成され、他方の面に凸部が形成される。図2に示すガスバリア性フィルム10の曲面領域14では、ガスバリア層12側が凹部を有する面となり、基材11側が凸部を有する面である。
また、図2では、ガスバリア性フィルム10のガスバリア層12側(凹部を有する面側)において、ガスバリア性フィルム10に接する平板の表面の位置を破線20で示している。なお、この平板はガスバリア性フィルム10の形状を説明するために図示するものであり、ガスバリア性フィルム10の構成には含まれない。
平坦領域13は、ガスバリア性フィルム10において、周縁側に設けられている。ガスバリア性フィルム10の平坦領域13において、実質的に平坦とは、図2に示すように、ガスバリア性フィルム10のガスバリア層12側(凹部を有する面側)を、平板に接して際に、平坦領域13と平板の表面(破線20)との間隙15が0.1mm以下であることを示す。なお、平坦領域13は、ガスバリア性フィルム10を電子デバイス等に適用した際に、デバイス領域から電極を取り出す部分が形成される領域に該当する。このため、「実質的に平坦な領域」においても配線等に起因する0.1mm以下の僅かな凹凸が形成されている構成も含まれる。
曲面領域14は、ガスバリア性フィルム10において、中央側に設けられている。ガスバリア性フィルム10の曲面領域14において、一方の面側に形成される凹部と、ガスバリア性フィルム10に接する平板の表面(破線20)との間隙16は、平均0.5mm以上である。
ガスバリア性フィルム10は、曲面領域14において凹部が形成される面側(ガスバリア層12側)の形状で規定される。このため、凸部が形成される面側(基材11側)の形状については特に限定されない。一般的には、基材11の変形に追従して、ガスバリア層12の形状も変形するため、曲面領域14において凹部が形成される面側(ガスバリア層12側)の形状と、凸部が形成される面側(基材11側)の形状とは、厚さによるずれを除き、ほぼ一致する。
ガスバリア性フィルム10のような曲面領域14を有する形状を形成する方法としては、曲面領域14を有する基材11に直接ガスバリア層12を形成する方法、又は、平板のガスバリア性フィルム10を形成した後、曲面領域14を有する形状に成形加工する方法が考えられる。しかし、曲面領域14を有する基材11に直接ガスバリア層12を形成する方法では、曲面領域14における3次曲面へのガスバリア層12の被覆性に問題が有るため、3次曲面を有する領域においてガスバリア層12に成膜不良が発生しやすい。このため、曲面領域14を有する基材11に直接ガスバリア層12を形成する方法では、ガスバリア性フィルム10のガスバリア性の向上が困難である。
一方、平板のガスバリア性フィルム10を形成した後、曲面領域14を有する形状に成形加工する方法では、まず、平坦な基材11上にガスバリア層12を成膜して平坦な形状のガスバリア性フィルム10を作製する。そして、平坦な形状のガスバリア性フィルム10を、所定の表面形状を有する基板(金型)に押しつけた状態で、基材11の軟化温度以上、例えば80℃以上の熱を印加する。これにより、ガスバリア性フィルム10を、所定の形状に成形(塑性加工)する。このようなガスバリア性フィルム10を成形加工する方法では、上述の3次曲面を有する領域での成膜性の低下による、ガスバリア層12の成膜不良が発生しにくい。このため、曲面領域14において平均0.5mm以上の間隙が形成される形状においても、3次曲面部分のガスバリア性の低下を抑制可能な、ガスバリア性フィルム10を作製することができる。
特に、ガスバリア性フィルム10は、ガスバリア層12がケイ素、酸素、及び、炭素を含有する。このため、曲面領域14に平均0.5mm以上の間隙が形成される3次曲面を有する形状に成形加工される場合においても、ガスバリア層12での不良発生を抑制することができる。このため、ガスバリア性フィルム10は、上述の成形加工後においても、60℃、90%RH、2時間の条件で測定した水蒸気透過度(WVTR)において、0.1(g/m/day)以下を達成することができる。また、成形加工後のガスバリア性フィルム10において、好ましい水蒸気透過度(WVTR)として、1×10−2(g/m/day)以下を実現することができる。
また、ガスバリア性フィルム10において、基材11は、複数の基材の積層体であってもよい。例えば、図3に示すように、基材11は、第1基材17と第2基材18とが粘着剤層19で貼合された構成であってもよい。図3に示すガスバリア性フィルム10は、第1基材17の一方の面にガスバリア層12が設けられ、他方の面に粘着剤層19を介して、第2基材18が設けられている。なお、これ以外の構成は、上述の図1及び図2に記載のガスバリア性フィルム10と同様の構成である。
さらに、基材11において、第1基材17と第2基材18とは、粘着剤層19において剥離可能なように貼合されていることが好ましい。例えば、第1基材17から、粘着剤層19と第2基材18とが剥離可能なように、貼合されていることが好ましい。
粘着剤層19と第2基材18とが、第1基材17から剥離可能なように貼合されていることにより、第2基材18が第1基材17の保護フィルムとして機能する。ガスバリア性フィルム10の製造工程中や、ガスバリア性フィルム10を適用する電子デバイスの製造工程中において、最表面に配置される基材に傷等の損傷が発生すると、電子デバイス等の外観上の不良が発生してしまう。このため、上記各製造工程中において、基材の損傷を防ぐために、基材11の表面には剥離可能な保護フィルムを設けることが好ましい。
図3に示すガスバリア性フィルム10において、第1基材17から、粘着剤層19と第2基材18とが剥離されることにより、図1に示すガスバリア性フィルム10と同様の構成となる。このとき、図3に示す第1基材17が、図1に示す基材11に対応する。
また、図3に示すような基材11が第1基材17と第2基材18との積層体である場合には、第1基材17の厚さ[X]と、第2基材18の厚さ[Y]との合計が、50μm以上150μm以下であることが好ましい。さらに、[X]/[Y]が0.15以上0.90以下であることが好ましい。
第1基材17の厚さ[X]と第2基材18の厚さ[Y]との合計が、50μm以上であれば、ガスバリア層12の形成において、取り扱い易い十分な厚さとなる。また、第1基材17の厚さ[X]と第2基材18の厚さ[Y]との合計が、150μm以下であれば、基材11が十分な柔軟性を有し、成形加工における塑性加工を容易に行うことができる。
また、ガスバリア層12が形成される第1基材17よりも、保護フィルムとなる第2基材18の厚さが大きい方が好ましい。一般的に、第1基材17は、電子デバイス等に適用される際に、ガスバリア性フィルム10として残存するため、電子デバイス等の要求により設計自由度が制限される。一方、第2基材18を保護フィルムとして用いる場合には、ガスバリア性フィルム10が電子デバイス等に適用される際に第2基材18は剥離される。このため、第2基材18の方が第1基材17よりも設計自由度が高い。従って、ガスバリア層12を作製する際に基材11に要求される機械的強度は、第2基材18側で確保することが好ましい。従って、第1基材17の厚さ[X]と第2基材18の厚さ[Y]とにおいて、第2基材18の厚さ[Y]の方が大きいことが好ましく、[X]/[Y]が0.15以上0.90以下であることが好ましい。
[ガスバリア層の組成、及び、炭素分布曲線]
上述のガスバリア性フィルム10において、ガスバリア層12は、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有する。すなわち、ガスバリア層12は、SiOxCyの組成で表される。そして、SiOxCyにおけるxの値はケイ素に対する酸素の含有量(O/Si)として表され、yの値はケイ素に対する炭素の含有量(C/Si)として表される。
図4に、ガスバリア層12の厚さ方向のケイ素原子の含有量の分布を示す曲線(以下、ケイ素分布曲線)と、ガスバリア層12の厚さ方向の炭素原子の含有量の分布を示す曲線(以下、炭素分布曲線)と、ガスバリア層12の厚さ方向の酸素原子の含有量の分布を示す曲線(以下、酸素分布曲線)のグラフを示す。
また、図5に、ガスバリア層12の厚さ方向のケイ素に対する炭素の組成比(C/Si)の分布を示す曲線(以下、C/Si比分布曲線)と、ガスバリア層12の厚さ方向のケイ素に対する酸素の組成比(O/Si)の分布を示す曲線(以下、O/Si比分布曲線)のグラフを示す。また、図5に示すグラフでは、ケイ素の比率をSiOxCyの組成式に基づいて1に規定している。
なお、図4に示す、ガスバリア層12の厚さ方向の各元素の含有量、及び、この含有量を示す曲線や極大値については、後述するXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。また、図5に示す、ガスバリア層12の厚さ方向のケイ素原子に対する炭素原子の組成比(C/Si)、酸素原子の組成比(O/Si)、及び、この組成比を示す曲線や極大値については、図4におけるXPSデプスプロファイルの測定値から算出することができる。
図4に示すように、ガスバリア層12は、ケイ素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量が深さ方向に連続的に変化する。すなわち、図4に示すように、ガスバリア層12において、膜厚方向における層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量との関係を示す各分布曲線が、連続的に変化する。
また、図5に示すように、ガスバリア層12において、膜厚方向における層表面からの距離(L)とケイ素原子に対する炭素原子の比率とを示す、C/Si比分布曲線が、連続的に変化する。同様に、ケイ素原子に対する酸素原子の比率を示すO/Si比分布曲線が、連続的に変化する。
ガスバリア性フィルム10は、炭素分布曲線が、4個以上の極大値を有する(要件(1))。さらに、ガスバリア層12の[膜厚/極大値数]が25nm以下である(要件(2))。図4に示すグラフでは、約55nmの厚さのガスバリア層において、炭素分布曲線が図面に矢印で示す6個の極大値を有する。このため[膜厚/極大値数]は約9nmである。
極大値の数と、[膜厚/極大値数]は、後述する真空プラズマCVD法を用いた気相成膜ガスバリア層の成膜条件を変更することにより、任意に調整することができる。例えば、気相成膜ガスバリア層の成膜において基材の搬送速度を上げることにより、隣接する極大値間の距離を小さくすることができる。また、気相成膜ガスバリア層の成膜速度を上げることにより、同じ厚さのガスバリア層12において極大値の数が多くなりやすい。
ガスバリア層12の炭素分布曲線において、隣り合う極大値同士の間は、組成が連続して変化する1つの領域として考えられる。このため、ガスバリア層12は、極大値の数だけ、厚さ方向に組成が連続して変化する領域を有している。従って、炭素分布曲線が6個以上の極大値を有する構成は、ケイ素、酸素、及び、炭素の組成比の異なる領域を膜厚方向に複数有し、この複数の領域が膜厚方向に積層されていることを示す。さらに、ガスバリア層12の炭素分布曲線において、極大値の数が増えるほど、組成が連続して変化する1つの領域がガスバリア層12内に多く存在する。
また、ガスバリア層12において、炭素分布曲線の[膜厚/極大値数]が25nm以下の構成は、炭素分布曲線における極大値の発生確率を示している。例えば、[膜厚/極大値数]が25nmであれば、厚さ方向において、平均25nmあたりに1つの極大値を有することを示す。極大値が発生する割合を25nm以下と小さくすることにより、組成が連続して変化する1つの領域の厚さを、小さくすることができる。すなわち、ガスバリア層12をより薄い層が積層した状態と同様の構成とすることができる。
ガスバリア層12において、隣り合う極大値と極大値との平均間隔が25nm以下であり、かつ、組成が連続して変化する領域が厚さ方向に6層以上存在することにより、ガスバリア性フィルム10に3次曲面を形成する成形加工において、ガスバリア層に伸長が加わっても、ガスバリア性フィルム10の水蒸気透過度(WVTR)の悪化を抑制することができる。
ガスバリア層12が連続して組成が変化する複数の領域を有することにより、3次曲面の形成を伴う成形加工後においても、ガスバリア性フィルム10の水蒸気透過度(WVTR)の悪化を抑制することができる理由は、以下のように考えられる。なお、以下の説明は、ガスバリア層12の構成及び効果から導かれる、水蒸気透過度(WVTR)の悪化抑制のメカニズムに対する推測の1つであり、水蒸気透過度(WVTR)の悪化が抑制されるメカニズム等は以下の記載に限定されない。
例えば、ガスバリア層が単層構成である場合、ガスバリア性フィルムの成形加工において、ガスバリア層内の1箇所にクラックが発生すると、このクラックが厚さ方向に伝搬し、クラックがガスバリア層の厚さ方向に貫通しやすい。このように、クラックがガスバリア層の厚さ方向を貫通すると、このクラック内を水分等が容易に通過できるため、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度(WVTR)が悪化する。
しかし、ガスバリア層12が、連続して組成が変化する領域を複数有すことにより、ガスバリア層12内の1箇所(1つの領域)にクラックが発生し、発生した領域内の厚さ方向にクラックが貫通した場合にも、クラックが他の領域までの間で終端し、他の領域にはクラックが伝搬しにくい。さらに、ガスバリア層12は複数の領域が積層されているため、クラックが発生した領域は他の領域によって被覆される。このため、ガスバリア層12内に発生した微小なクラック、及び、このクラックが発生した領域は、他の領域によって遮蔽される。すなわち、ガスバリア層12内に光学顕微鏡観察で検出されない程度の微小なクラックが発生しても、この微小なクラックが、ガスバリア層12の全体を貫通するほど成長せず、クラックが他の領域によってガスバリア層12内に封じ込められる。従って、ガスバリア層12が、組成が連続して変化する領域を厚さ方向に複数有することにより、3次曲面の形成を伴う成形加工後のガスバリア性フィルムの水蒸気透過度(WVTR)の悪化を抑制することができる。
ガスバリア層12は、炭素分布曲線が4個以上の極大値を有する。一般的には、組成が連続して変化する領域の層数は、炭素分布曲線の極大値の数+1層となるため、炭素分布曲線が4個以上の極大値を有すると、組成が連続して変化する領域が5層以上設けられる。組成が連続して変化する領域が5層以上設けられることにより、微小なクラックが発生した領域を他の領域が被覆する作用が発現しやすく、ガスバリア層12全体でのクラックの貫通を防ぐ効果を発現しやすい。
また、炭素分布曲線の極大値の数が多いほど、組成が連続して変化する領域の積層数が増加する。ガスバリア層12は、多くの領域が積層された状態の方が、クラックが発生した領域を他の領域が被覆する作用が発現しやすい。このため、炭素分布曲線の極大値の数は、多いほど好ましく、炭素分布曲線の極大値の数は、6個以上が好ましく、8個以上がより好ましく、12個以上が特に好ましい。
図6及び図7に、炭素分布曲線の極大値が12個の場合のガスバリア層における、各分布曲線を示す。なお、図6及び図7に示すグラフは、上述の図4及び図5に対応し、グラフの詳細については、図4及び図5と同様である。
図6は、ガスバリア層12のケイ素分布曲線と、炭素分布曲線と、酸素分布曲線とを示すグラフである。また、図7は、ガスバリア層12のC/Si比分布曲線と、O/Si比分布曲線とを示すグラフである。図7に示すグラフでは、SiOxCyの組成式に基づいてケイ素の比率を1に規定している。
図6及び図7に示す例のガスバリア性フィルム10は、約105nmの厚さのガスバリア層において、炭素分布曲線が図面に矢印で示す12個の極大値を有する。このため、図4に示すグラフでは、[膜厚/極大値数]は約9nmとなる。従って、図6及び図7に示す例も、上述の図4及び図5に示す例と同様に、ガスバリア性フィルム10に要求される、ガスバリア層12の[膜厚/極大値数]が25nm以下の規定を満たす。
さらに、ガスバリア層12の厚さが一定の条件では、組成が連続して変化する領域の厚さが小さいほど、より多くの領域が積層された状態となる。すなわち、ガスバリア層12全体の厚さを、炭素分布曲線の極大値の数で割った値[膜厚/極大値数]が小さくなるほど、組成が連続して変化する各領域の厚さが小さくなる。従って、ガスバリア層12の厚さが一定の条件においては、[膜厚/極大値数]が小さくなるほど、多くの領域を積層させることが可能となり、微小なクラックが発生した領域を他の領域が被覆する作用を発現しやすくなる。このため、ガスバリア層12の[膜厚/極大値数]は、15nm以下であることがより好ましい。
[ガスバリア層の組成式SiOxCy]
ガスバリア層12は、上述のように、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、SiOxCyの組成で表される。そして、SiOxCyにおけるxの値はケイ素に対する酸素の含有量(O/Si)として表され、yの値はケイ素に対する炭素の含有量(C/Si)として表される。
ガスバリア性フィルム10においてガスバリア層12は、ガスバリア層12の組成をSiOxCyで表した際に、y<0.20の組成を有する領域の厚さと、y>1.40の組成を有する領域の厚さとの合計が、20nm未満である。
y<0.20の組成は、炭素比率が少なく酸素比率が多い領域である。すなわちガスバリア層12が、SiOに近い組成となる。SiOに近い組成を有する領域は、伸長処理でクラックが入りやすく、y<0.20の組成を有する領域を厚さ方向に20nmを超えて有すると、この領域に生じるクラックが、クラックを生じにくい他の異なる組成の領域にまでも伝播しやすい。このため、ガスバリア層12のバリア性が劣化しやすい。
また、y>1.40の組成は、酸素比率が少なく炭素比率が多い領域である。すなわち、ガスバリア層12が、SiCに近い組成となる。この組成についても、上述のSiOに近い組成を有する領域と同様に、伸長処理でクラックが入りやすく、他の異なる組成の領域にクラックが伝播しやすくなるため、ガスバリア層12のバリア性が劣化しやすい。
また、図8〜11に、ガスバリア層12を構成するSiOxCyの組成において、横軸をx、縦軸をyとした直交座標を示す。図8及び図9は、上述の図5に示すC/Si比分布曲線、及び、O/Si比分布曲線を有するガスバリア層12における、厚さ毎のSiOxCyで表される組成の(x,y)の座標を示す。また、図10及び図11は、上述の図7に示すC/Si比分布曲線、及び、O/Si比分布曲線を有するガスバリア層12における、厚さ毎のSiOxCyで表される組成の(x,y)の座標を示す。なお、図8〜11に示す各(x,y)は、図5及び図7のC/Si比分布曲線、及び、O/Si比分布曲線において、白抜きの三角形で示す点における厚さでの組成を表している。
ガスバリア性フィルム10は、図8及び図10に示すように、SiOxCyで表した組成において厚さ毎の(x,y)の分布において、下記ABCDの4点の範囲内となる組成を、ガスバリア層12の厚さ方向に40nm以上200nm以下有していることが好ましい。
A(x=0.70、y=1.10)
B(x=0.9、y=1.40)
C(x=2.0、y=0.20)
D(x=1.8、y=0.20)
さらに、ガスバリア性フィルム10は、図9及び図11に示すように、SiOxCyで表した組成において厚さ毎の(x,y)の分布において、下記ABEFの4点の範囲内となる組成を、ガスバリア層12の厚さ方向に40nm以上200nm以下有していることが、より好ましい。
A(x=0.70、y=1.10)
B(x=0.9、y=1.40)
E(x=1.8、y=0.40)
F(x=1.6、y=0.40)
さらに、ガスバリア層12の全てが、上記ABCDの4点の範囲内となる組成であることが好ましく、上記ABEFの4点の範囲内となる組成であることが特に好ましい。ガスバリア層12を構成するSiOxCyの組成は、図8〜11に示す、SiC−SiO理論線に沿って分布しやすい傾向にある。また、SiOxCyの組成は、全体的に、SiC−SiO理論線よりも炭素の原子比が多い領域に分布しやすい傾向にある。そして、SiC−SiO理論線近傍の上記ABCDの4点で囲まれた狭い範囲内が、ガスバリア層12としてガスバリア性、物理的特性、及び、光学特性において好ましい組成である。さらに、ABEFの4点で囲まれたより狭い範囲内が、ガスバリア層12としてガスバリア性、物理的特性、及び、光学特性において特に好ましい組成である。
また、ガスバリア層12は、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域の両方を有することが好ましい。さらに、ガスバリア層12は、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域の両方を有し、且つ、ガスバリア層12の70%以上の領域が、C/Siが0.95以上、又は、C/Siが0.7以下のいずれかの領域に含まれることが好ましく、ガスバリア層12の全ての領域が、C/Siが0.95以上、又は、C/Siが0.7以下のいずれかの領域に含まれることが好ましい。
さらに、図4〜7に示す炭素分布曲線のように、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域とが、厚さ方向において積層されていることが好ましい。特に、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域とが、交互に4つ以上積層されていることが好ましく、図6及び図7に示す炭素分布曲線のように、各領域が交互に6つ以上積層されていることがより好ましい。
ガスバリア層12を構成するSiOxCyの組成において、組成が異なる領域では、それぞれ物理的な特性が異なるため、各領域におけるクラックが発生しやすい条件も異なる。例えば、ガスバリア層12を構成するSiOxCyの組成においては、炭素の原子比が小さく、酸素の原子比が大きくなると、ガスバリア層12の組成がSiOの組成に近づき、ガスバリア層12の物理的な特性がガラスのように脆く、割れやすくなりやすい。このため、炭素の原子比が大きい、C/Siが0.95以上の組成をガスバリア層12が含むことにより、ガスバリア層12にクラックを発生し難くすることができる。
また、C/Siが0.95以上となる組成の領域ととともに、C/Siが小さい組成の領域、C/Siが0.70以下の組成の領域を含むことにより、異なる耐クラック性を有する領域が積層された構成となり、C/Siが0.95以上となる組成の領域と、C/Siが0.70以下の組成の領域とのいずれか一方の領域にクラックが発生しやすい条件においても、他方の領域にはクラックが発生しにくい。このため、ガスバリア層12に、大きく組成の異なる領域が2以上存在すると、異なる耐クラック性を有する領域が積層された構成となり、一度にガスバリア層12の厚さ方向を貫通するような大きなクラックの発生が抑制できる。従って、ガスバリア層12において、全ての領域が一度に破損することが無くなるため、上述のクラックが発生した領域が他の領域によって被覆され、クラックが他の領域によって遮蔽されてガスバリア層12内に封じ込められる効果がより得られやすい。
[突起]
ガスバリア層12は、内部にパーティクル等の異物の混入が少ない方が好ましい。ガスバリア層12の内部に異物、例えば、成膜時に混入するパーティクル等が存在する場合、ガスバリア性フィルム10に3次曲面を形成する成形加工を行い、ガスバリア層に伸長が加わると、異物周囲に応力が集中して、クラックが発生する起点になると考えられる。従って、ガスバリア層12の単位面積あたりの異物数が少ない方が、ガスバリア性フィルム10に3次曲面の形成を伴う成形加工後のクラックの発生が抑制されると考えられる。
しかしながら、ガスバリア層12の内部のパーティクル等の異物を直に観察、測定することは非常に難しい。しかし、ガスバリア層12の成膜時にパーティクル等の異物が取り込まれた場合、ガスバリア層12の膜厚よりも小さい異物であっても、その部分の成膜レートが高くなるため、ガスバリア層12の表面に微小な突起として検出されるようになる。すなわち、ガスバリア層12において、パーティクル等の異物が内部に封じ込められている箇所は、この異物に起因した突起が発生する。このため、ガスバリア層12の表面の突起を観察することにより、ガスバリア層12の内部のパーティクル等の異物の混入の様子を観察することができる。従って、ガスバリア層12の単位面積あたりの異物起因の突起数が少ない方が、ガスバリア性フィルム10を伸長した場合のクラックの発生が抑制されやすいと考えられる。
ガスバリア層12では、表面において観測される、高さが10nm以上の突起数が100個/mm以下であることが好ましい。突起数が100個/mm以下であれば、ガスバリア層12の耐クラック性が低下せず、ガスバリア性フィルム10のガスバリア性が低下しにくい。
ガスバリア層12において、10nm程度の微小な突起は表面粗さのうねり成分(波長の長い凹凸)の影響で、分離検出することが困難である。このため、ガスバリア層12における10nm以上の微小な突起数は、下記の方法で検出及び計数される値で規定する。
まず、ガスバリア層12の表面を、光干渉方式の三次元表面粗さ測定装置(Veeco社製 WYKO NT9300)を用いて計測する。そして、この計測により、ガスバリア層12の三次元表面粗さデータを取得する。
次に、取得した三次元表面粗さデータに対して波長10μmのハイパスフィルターをかけて粗さうねり成分を除去する処理を行う。この処理により得られるうねり成分が除去された三次元表面粗さ変換データにおいて、データをヒストグラム表示した際の最大のピーク位置を0としたときに、高さが10nm以上となる突起を計数する。そして、計数した突起数をmm当たりの個数として算出する。より具体的には、測定解像度約250nmの条件で、159.2μm×119.3μmの範囲6視野(面積として0.114mm)を測定及び計数し、1mm当たりの個数として算出する。
ガスバリア層12の表面状態について、上記方法で処理して得られた三次元表面粗さ変換データをヒストグラム表示した画像(159.2μm×119.3μm)を、図12〜14に示す。図12〜14では、ガスバリア層12の表面の基準となる位置から高さが大きくなる位置ほど、色が白く表示される。
図12は、突起数が10個/mm未満のガスバリア層12について、上記処理により得られた表面の画像である。図13は、突起数が50個/mm以上100個/mm未満のガスバリア層12について、上記処理により得られた表面の画像である。図14は、突起数が200個/mm以上のガスバリア層12について、上記処理により得られた表面の画像である。
図12に示すように、突起数が10個/mm未満のガスバリア層12では、画像中に白点で表示される高さ10nmを超える突起が少ない。そして、図13及び図14に示すように、突起数が50個/mm以上100個/mm未満、及び、突起数が200個/mm以上と、高さ10nmを超える突起数が増える毎に、画像中に表示される白点の数が増えている。従って、上記方法で検出及び計数することにより、ガスバリア層12の表面の10nm程度の微小な突起数を規定することができる。
〈2.ガスバリア性フィルムの第2実施形態〉
以下、ガスバリア性フィルムの第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態のガスバリア性フィルムは、3次曲面の加工形状が異なることを除き、上述の第1実施形態のガスバリア性フィルムと同様の構成である。このため、以下の説明では、上述の第1実施形態のガスバリア性フィルムと同様の構成については説明を省略する。
[ガスバリア性フィルムの構成]
図15及び図16に、ガスバリア性フィルムの構成を示す。図15は、ガスバリア性フィルムの平面図である。図16は、図15に示すガスバリア性フィルム70のA−A線断面図である。
図15及び図16に示すように、ガスバリア性フィルム70は、基材11と、基材11の基材11の一方の面に形成されたガスバリア層12とを備える。なお、基材11とガスバリア層12とからなるガスバリア性フィルム70が後述する各構成及び条件を満たしていれば、その他の構成については特に限定されない。
また、図15及び図16に示すように、ガスバリア性フィルム70は、3次元的な曲面が形成された3次曲面部76と、この3次曲面部76の外側に配置された実質的に平坦な領域からなる平坦領域74とを備える。また、ガスバリア性フィルム70は、3次曲面部76内に配置された平坦領域74を備え、この3次曲面部76内に配置された平坦領域74と、3次曲面部76とから、曲面領域14が形成されている。ガスバリア性フィルム70において、実質的に平坦な領域からなる平坦領域74とは、平板に対して面として実質的に間隙なく接する領域である。これに対し、ガスバリア性フィルム70において、3次元的な曲面を有する3次曲面部76は、平板に対して線又は点で接する領域である。本形態においてガスバリア性フィルム70は、一方の面が凹面状となり、他方の面が凸面状となる。図16に示すガスバリア性フィルム70の曲面領域14では、ガスバリア層12側が凹部を有する面となり、基材11側が凸部を有する面である。
また、図16では、ガスバリア性フィルム70のガスバリア層12側(凹部を有する面側)において、ガスバリア性フィルム70に接する平板の表面の位置を破線20で示している。さらに、図16では、ガスバリア性フィルム70の基材11側(凸部を有する面側)において、ガスバリア性フィルム70に接する平板の表面の位置を破線21で示している。なお、この平板はガスバリア性フィルム70の形状を説明するために図示するものであり、ガスバリア性フィルム70の構成には含まれない。
平坦領域74は、ガスバリア性フィルム70において、周縁側と中央部とに設けられている。図15及び図16に示すガスバリア性フィルム70では、ガスバリア性フィルム70の中央に設けられた円錐台形状の凸部の周囲の平坦部が、周縁側の平坦領域74である。また、円錐台形状の凸部において、円錐台の上底となる部分の平坦部が、ガスバリア性フィルム70の中央部の平坦領域74である。ガスバリア性フィルム70の平坦領域74において、実質的に平坦、及び、実質的に間隙なく接するとは、図16に示すように、ガスバリア性フィルム70のガスバリア層12側(凹部を有する面側)を平板に接した際に、平板の表面(破線20)との間隙15が0.1mm以下であること、及び、ガスバリア性フィルム70の基材11側(凸部を有する面側)を平板に接した際に、平板の表面(破線21)との間隙22が0.1mm以下であること、のいずれかを満たす。
なお、ガスバリア性フィルム70の周縁側の平坦領域74は、ガスバリア性フィルム70を電子デバイス等に適用した際に、デバイス領域から電極を取り出す部分が形成される領域に該当する。このため、「実質的に平坦な領域」においても配線等に起因する0.1mm以下の僅かな凹凸が形成されている構成も含まれる。
また、ガスバリア性フィルム70において、3次曲面部76の中央側に設けられている平坦領域74は、ガスバリア性フィルム70の一方の面側に形成される凹部と、ガスバリア性フィルム70に接する平板の表面(破線20)との間隙16が、平均0.5mm以上である。
ガスバリア性フィルム70において、3次曲面部76は、周縁側の平坦領域74と中央部の平坦領域74との間に設けられている。図15及び図16に示すガスバリア性フィルム70では、円錐台形状の凸部において、円錐台側面の斜辺となる部分がガスバリア性フィルム70の3次曲面部76である。ガスバリア性フィルム70の3次曲面部76は、周縁側の平坦領域74と3次曲面部76と中央部の平坦領域74とを合わせた全領域の投影面積の9%以上11%以下で設けられている。
なお、上記規定において、平坦領域74及び3次曲面部76の投影面積は、ガスバリア性フィルム70全体の投影面積ではなく、ガスバリア性フィルム70においてガスバリア性を測定するための特定の面積で規定される測定領域73である。この測定領域73は、測定装置において測定可能な範囲の面積であり、上記平坦領域74と3次曲面部76との面積比率から求められる面積に合わせて規定される。すなわち、3次曲面部76の投影面積が測定領域73の投影面積の9%以上11%以下となるように、測定領域73の面積が規定される。
また、ガスバリア性フィルム70は、3次曲面部76の実測面積が、上述の3次曲面部76の投影面積よりも5%以上大きくなるように、3次元的な曲面が成形加工されている。なお、実測面積とは曲面を有する加工面を平面上に伸ばし置いた状態と仮定した面積である。
ガスバリア性フィルム70において、平坦領域74及び3次曲面部76は、凹部が形成される面側(ガスバリア層12側)、又は、凸部が形成される面側(基材11側)のいずれかの形状で規定される。一般的には、基材11の変形に追従して、ガスバリア層12の形状も変形するため、平坦領域74及び3次曲面部76の形状は厚さによるずれを除き、凹部が形成される面側(ガスバリア層12側)の形状と、凸部が形成される面側(基材11側)の形状とがほぼ一致する。このため、一方の面の形状を規定することにより、他方の面の形状についても規定される。
[成形加工前後の水蒸気透過度]
ガスバリア性フィルム70のような3次曲面部76を有する形状を形成する方法としては、上述の第1実施形態と同様に、ガスバリア性の低下を抑制するために、平板のガスバリア性フィルム70を形成した後、3次曲面部76を有する形状に成形加工する。この方法では、3次曲面部76のガスバリア層12の成膜不良が発生しにくいため、3次曲面部76の実測面積が投影面積よりも5%以上大きくなる形状に加工した場合にも、ガスバリア性の低下を抑制したガスバリア性フィルム70を作製することができる。
特に、ガスバリア性フィルム70は、ガスバリア層12がケイ素、酸素、及び、炭素を含有する。このため、実測面積が投影面積よりも5%以上大きくなる曲面を有する形状に成形加工する場合にも、ガスバリア層12の不良発生を抑制することができる。
ガスバリア性フィルム70は、曲面加工を形成する前の状態の平坦なガスバリア性フィルム[A]と、成形加工により平坦領域74と3次曲面部76とを形成したガスバリア性フィルム[B]とがともに、測定領域73において38℃、100%RH、2時間の条件で測定した水蒸気透過度(WVTR)が、0.1(g/m/day)以下である。
さらに、上記条件における曲面加工を形成する前の状態の平坦なガスバリア性フィルム[A]の測定領域73における水蒸気透過度(WVTR)と、3次曲面部76を成形加工後のガスバリア性フィルム[B]の測定領域73における水蒸気透過度(WVTR)との関係が、「([B]の水蒸気透過度(WVTR)/[A]の水蒸気透過度(WVTR))<5」を満たす。
成形加工前のガスバリア性フィルム[A]と、成形加工後のガスバリア性フィルム[B]とが共に、水蒸気透過度(WVTR)0.1(g/m/day)以下を満たすことにより、曲面加工を形成する成形加工前後においてガスバリア性フィルム70が共に十分なガスバリア性を備える。このため、この条件を満たすガスバリア性フィルム70は、十分なガスバリア性を有していることになる。
また、成形加工後のガスバリア性フィルム[B]は、3次曲面部76の曲面加工に伴うガスバリア層12の伸長処理により水蒸気透過度(WVTR)が僅かに悪化する。しかし、成形加工後のガスバリア性フィルム[B]の水蒸気透過度(WVTR)が、成形加工前のガスバリア性フィルム[A]の水蒸気透過度(WVTR)の5倍以下であれば、十分なガスバリア性を有している。このため、ガスバリア性フィルム70が、「([B]の水蒸気透過度(WVTR)/[A]の水蒸気透過度(WVTR))<5」を満たすことにより、曲面加工を施された後においても、十分なガスバリア性を有していることになる。
〈3.ガスバリア性フィルムの構成要素〉
以下、上述の図1〜3に示すガスバリア性フィルム10、及び、図15〜16に示すガスバリア性フィルム70の各構成について説明する。なお、以下の説明は、ガスバリア性フィルムの一例であり、ガスバリア性フィルムの構成はこれらに限定されない。また、ガスバリア性フィルムは、これら以外の構成を有していてもよい。
[ガスバリア性フィルム]
ガスバリア性フィルム10,70は、基材11とガスバリア層12とを有し、ガスバリア層がケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、実質的に平坦な領域と、この平坦な領域に囲まれた、3次元的な曲面が形成された3次曲面部を有する領域(曲面領域)を有していれば、その他の構成は限定されない。
[基材]
ガスバリア性フィルム10,70に用いられる基材11としては、例えば、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムは、ガスバリア層を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。樹脂フィルムとしては、従来公知の樹脂フィルムを用いることができる。基材11は、複数の材料から形成されていてもよい。樹脂フィルムとしては、特開2013−226758号公報の段落[0124]〜[0136]、国際公開第2013/002026号の段落[0044]〜[0047]等に記載された樹脂フィルムを挙げることができる。
基材11として用いることができる樹脂フィルムのより好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COP)が挙げられる。
基材11は、光の吸収が少なく、ヘイズが小さいことが好ましい。このため、基材11は、一般的に光学フィルムに適用される樹脂フィルムから、適宜選択して用いることができる。
また、基材11は、樹脂フィルムが単独、又は、複数用いられていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。例えば、図3に示すように、第1基材17と、第2基材18とが、粘着剤層19により貼合された構成であってもよい。第1基材17及び第2基材18としては、上記樹脂フィルムを用いることができる。また、粘着剤層19としては、後述する保護フィルムの粘着剤層と同様の構成を適用することができる。
基材11は、枚葉形状及びロール形状に限定されないが、生産性の観点からロールトゥロール方式でも対応できるロール形状が好ましい。また、基材11の厚さは、特に制限されないが、5〜500μm程度が好ましい。
[ハードコート層]
また、基材11は、両面にハードコート層が設けられた構成であってもよい。
基材11が表面にハードコート層を有することにより、ガスバリア性フィルム10,70の耐久性や平滑性が向上する。ハードコート層は、硬化型樹脂から形成されていることが好ましい。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化型樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。
また、ハードコート層には、耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機化合物の微粒子、又は、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリ弗化エチレン系樹脂粉末等の紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。また、ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。更にハードコート層は、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエーテル化合物、フッ素−シロキサングラフトポリマーを含有してもよい。
ハードコート層を形成するための塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、またはこれらを混合して利用できる。また、塗布液に含有される硬化型樹脂含量は、例えば、5〜80質量%である。
ハードコート層は、上記塗布液を用いて、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の湿式塗布方法で塗設することができる。塗布液の層厚としては、例えば0.1〜30μmである。また、基材11に塗布液を塗布する前に、あらかじめ基材11に真空紫外線照射等の表面処理を行うことが好ましい。
塗布液を塗布して形成した塗膜には、紫外線等の活性エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる。これにより、ハードコート層を形成する。硬化に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。照射条件は、例えば50〜2000mJ/cmの範囲内が好ましい。
[ガスバリア層]
ガスバリア性フィルム10,70を構成するガスバリア層12は、バリア性を有する層であり、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、ガスバリア層の厚さ方向の炭素の含有量を示す曲線が4個以上の極大値を有し、上述のガスバリア層の組成、及び、炭素分布曲線の規定を満たす。ガスバリア層12は、後述する、ロールトゥロール方式の適用が可能な、無機化合物の気相成膜により形成されることが好ましい。
[ガスバリア層;気相成膜]
無機化合物の気相製膜によって形成されるガスバリア層12(以下、気相成膜ガスバリア層ともいう)は、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有する無機化合物を含む。無機化合物を含む気相成膜ガスバリア層は、副次的な成分として、上記の無機化合物以外の元素を含有してもよい。
気相成膜ガスバリア層のガスバリア性は、水蒸気透過率(WVTR)が、1×10−1(g/m/day)以下であることが好ましく、1×10−2(g/m/day)以下であることがより好ましい。また、成形加工後のガスバリア性フィルムにおいて、水蒸気透過度(WVTR)が、1×10−2(g/m/day)以下であることが好ましい。気相成膜ガスバリア層の膜厚は、特に制限されないが、5〜1000nmであること好ましい。このような範囲であれば、高いガスバリア性能、折り曲げ耐性、断裁加工性に優れる。また、気相成膜ガスバリア層は2層以上で構成されてもよい。
気相成膜ガスバリア層を形成するための気相製膜方法は、特に限定されない。気相成膜ガスバリア層の形成には、既存の薄膜堆積技術を利用することができる。例えば、従来公知の蒸着法、反応性蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、化学気相成長法等の気相製膜法を用いることができる。これらの気相成膜法によるガスバリア層は、公知の条件を適用して作製することができる。
例えば、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面又は気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマを発生させる方法等があり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマを励起源としたプラズマCVD法(PECVD法)である真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等の公知のCVD法が挙げられる。特に、PECVD法が好ましい方法である。以下、化学気相成長法の好ましい手法として、真空プラズマCVD法について詳しく説明する。
[真空プラズマCVD法]
真空プラズマCVD法は、プラズマ源を搭載した真空容器に材料ガスを流入させ、電源からプラズマ源に電力供給することで真空容器内に放電プラズマを発生させ、プラズマで材料ガスを分解反応させ、生成された反応種を基材に堆積させる方法である。真空プラズマCVD法により得られる気相成膜ガスバリア層は、原材料である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力等の条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できる。
原材料の化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、及び、アルミニウム化合物等のケイ素を含む化合物及び金属を含む化合物を用いることが好ましい。これら原材料の化合物は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの、ケイ素化合物、チタン化合物、及び、アルミニウム化合物として、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、公知の化合物としては特開2013−063658号公報の段落[0028]〜[0031]、特開2013−047002号公報の段落[0078]〜[0081]等に記載された化合物を挙げることができる。好ましくは、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、等が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、及び、水蒸気等が挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスと混合して用いてもよい。原材料の化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望の気相成膜ガスバリア層を得ることができる。
(真空プラズマCVD装置)
以下、好適な形態である真空プラズマCVD法について具体的に説明する。図17に、真空プラズマCVD法に適用される、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式を用いたローラー間放電プラズマCVD装置の模式図の一例を示す。
上述のプラズマCVD法により気相成膜ガスバリア層を製造する際に用いる成膜装置として、図17に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながら、ロールトゥロール方式で気相成膜ガスバリア層を製造することができる。以下、図17を参照しながら、気相成膜ガスバリア層の製造方法についてより詳細に説明する。なお、図17は、気相成膜ガスバリア層の製造において好適に利用することができる磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図17に示す磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、単にプラズマCVD装置ともいう)50は、繰り出しローラー51と、搬送ローラー52、搬送ローラー54、搬送ローラー55及び搬送ローラー57と、成膜ローラー53及び成膜ローラー56と、成膜ガス供給管59と、プラズマ発生用電源63と、成膜ローラー53,56の内部に設置された磁場発生装置61及び磁場発生装置62と、巻取りローラー58とを備えている。また、このようなプラズマCVD製造装置においては、少なくとも成膜ローラー53,56と、成膜ガス供給管59と、プラズマ発生用電源63と、磁場発生装置61,62とが、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。また、図17においては、成膜ローラー53,56にプラズマ発生用電源63に接続された電極ドラムが設置される。更に、このようなプラズマCVD製造装置において、真空チャンバー(不図示)は、真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー53と成膜ローラー56)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源63に接続されている。対の成膜ローラーに、プラズマ発生用電源63から電力を供給することにより、成膜ローラー53と成膜ローラー56との間の空間に放電し、プラズマを発生させることができる。このようなプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー53,56は、その中心軸が同一平面上において略平行となるように配置することが好ましい。このように一対の成膜ローラー53,56を配置することにより、成膜レートを倍にでき、かつ、同じ構造の膜を成膜できる。
また、成膜ローラー53及び成膜ローラー56の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないように固定された、磁場発生装置61及び磁場発生装置62がそれぞれ設けられている。
さらに、成膜ローラー53及び成膜ローラー56としては、適宜公知のローラーを用いることができ、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このようなプラズマCVD製造装置に用いる繰り出しローラー51及び搬送ローラー52,54,55,57としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー58も、気相成膜ガスバリア層を形成した基材60を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
成膜ガス供給管59としては、原料ガス及び酸素ガスを所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源63としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源63としては、効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源63としては、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61,62としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
図17に示すプラズマCVD装置50を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバー内の圧力(減圧度)、成膜ローラーの直径、樹脂基材の搬送速度等を適宜調整することにより、所望のガスバリア層を製造することができる。
図17に示すプラズマCVD装置50において、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給し、一対の成膜ローラー53,56間に、磁場を発生させながらプラズマ放電を行うことにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー53が保持する基材60の表面上、及び、成膜ローラー56が保持する基材60の表面上に、気相成膜ガスバリア層が形成される。なお、このような成膜に際しては、基材60が繰り出しローラー51、搬送ローラー52,54,55,57、巻取りローラー58、及び、成膜ローラー53,56等で搬送されることにより、ロールトゥロール方式の連続的な成膜プロセスで気相成膜ガスバリア層を形成することができる。
(成膜ガス)
プラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用い、その成膜ガス中の酸素ガスの含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するために必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
気相成膜ガスバリア層の作製に用いる成膜ガスを構成する原料ガスとしては、少なくともケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。気相成膜ガスバリア層の作製に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取り扱い、及び、得られる気相成膜ガスバリア層のガスバリア性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、成膜ガスは、原料ガスの他に反応ガスとして、酸素ガスを含有することができる。酸素ガスは、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスである。成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
このような成膜ガスが、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを含有する場合、原料ガスと酸素ガスの比率としては、原料ガスと酸素ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる酸素ガスの量の比率よりも、酸素ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。これについては、例えば、国際公開第2012/046767号等の記載を参照することができる。
(真空度)
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜100Paの範囲とすることが好ましい。
(ローラー成膜)
図17に示すプラズマCVD装置50を用いたプラズマCVD法においては、成膜ローラー53,56間に放電するために、プラズマ発生用電源63に接続された電極ドラムに印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。電極ドラムに印加する電力としては、例えば、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内であるため、成膜時の基材表面温度の上昇による樹脂基材の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生を抑制することができる。
プラズマCVD装置50において、基材60の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が範囲内であれば、樹脂基材の熱に起因する皺も発生し難く、形成される気相成膜ガスバリア層の厚さも十分に制御可能となる。
[X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定]
ガスバリア層内における炭素原子の含有比率の平均値は、以下のXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。
ガスバリア層の層厚方向におけるケイ素分布曲線、酸素分布曲線、及び、ケイ素分布曲線等は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定と、アルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面の組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間が、ガスバリア層の層厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離におおむね相関する。このため、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される、ガスバリア層の表面からの距離を「ガスバリア層の層厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離」として採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、以下の測定条件とすることが好ましい。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):3nm以下
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe"
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形
ガスバリア層において、炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出されるガスバリア層のうちの少なくとも1層の膜厚方向におけるガスバリア層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係が、[(dC/dx)≦0.5]で表される条件を満たすことをいう。
(ガスバリア層における炭素元素プロファイル)
ガスバリア層は、ガスバリア層の構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含む。そして、層厚方向に組成が連続的に変化し、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、炭素分布曲線が、上記要件(1)を満たす。また、ガスバリア性と屈曲性とを両立させる観点から、ガスバリア層は、特定の領域において、炭素原子比率が濃度勾配を有して連続的に変化する構成を有することが好ましい。
このような炭素原子分布プロファイルを有するガスバリア層は、層内における炭素分布曲線が複数の極値を有する。炭素分布曲線が複数の極値を有すると、ガスバリア層を屈曲させた場合にも、十分なガスバリア性が得られる。
なお、上記分布曲線の極値とは、ガスバリア層の厚さ方向において、ガスバリア層の表面からの距離に対する元素の原子比率の極大値又は極小値である。極大値とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる変曲点であり、且つ、その変曲点の位置から厚さ方向に2〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が1at%以上減少する点のことをいう。また、極小値とは、ガスバリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる変曲点であり、且つ、その変曲点の位置から厚さ方向に2〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が1at%以上増加する点のことをいう。すなわち、極大値及び極小値は、厚さ方向の位置を2〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が1at%以上減少又は増加する点である。
(ガスバリア層における各元素プロファイル)
ガスバリア層においては、構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有することを特徴とするが、それぞれの原子の比率と、最大値及び最小値についての好ましい態様を、以下に説明する。
(炭素原子比率の最大値と最小値の関係)
ガスバリア層では、炭素分布曲線における炭素原子比率の最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましい。炭素原子比率の最大値及び最小値の差を3at%以上とすることにより、作製したガスバリア層を屈曲させた際のガスバリア性が十分得られる。最大値及び最小値の差が5at%以上であれば、ガスバリア層を屈曲させた場合にも、十分なガスバリア性が得られる。
(酸素原子比率の最大値と最小値の関係)
ガスバリア層においては、酸素分布曲線における最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差の絶対値が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましい。
(ケイ素原子比率の最大値と最小値の関係)
ガスバリア層においては、ケイ素分布曲線における最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差の絶対値が10at%未満であることが好ましく、5at%未満であることがより好ましい。最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差が10at%未満であれば、ガスバリア層のガスバリア性及び機械的強度が得られる。
また、膜面全体の均一性やガスバリア性を向上させるためには、ガスバリア層が膜面方向(ガスバリア層の表面に平行な方向)で実質的に一様であることが好ましい。ガスバリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について酸素分布曲線、炭素分布曲線、及び、酸素−炭素合計の分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか、又は、5at%以内の差であることをいう。
上記したガスバリア層のその他の構成については、国際公開第2012/046767号の段落[0025]〜[0047]、特開2014−000782号公報の段落[0029]〜[0040]等に記載された構成を適宜参照及び採用することができる。
(ガスバリア層の厚さ)
ガスバリア層の厚さは、5〜1000nmの範囲内であることが好ましく、20〜500nmの範囲内であることより好ましく、40〜300nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリア層の厚さが範囲内であれば、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性に優れ、屈曲された状態でも良好なガスバリア性が得られる。さらに、ガスバリア層の厚さの合計値が範囲内であると、上記効果に加えて所望の平面性を実現することができる。
(ガスバリア層の形成方法)
上記要件(1)及び(2)を同時に満たすガスバリア層を形成する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。緻密に元素分布が制御させたガスバリア層を形成することができる観点からは、上述の図17に示すローラー間放電プラズマCVD装置を用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法を用いることが好ましい。また、例えば、国際公開第2012/046767号の段落[0049]〜[0069]等に記載の方法を参照することができる。
より詳しくは、図17に示すローラー間放電プラズマCVD装置において、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、基材を一対の成膜ローラーに巻き回し、この一対の成膜ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電する、プラズマ化学気相成長法でガスバリア層を形成することが好ましい。また、このように一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら放電する際には、一対の成膜ローラー間の極性を交互に反転させることが好ましい。このように、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を巻き回して、かかる一対の成膜ローラー間にプラズマ放電することにより、基材と成膜ローラーとの間の距離が変化し、プラズマ強度が変わることにより、炭素原子比率が、濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化するガスバリア層を形成することが可能となる。
また、成膜時に、一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、かつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となる。すなわち、成膜効率を倍にでき、且つ、同じ構造の膜が成膜されるため、炭素分布曲線の極値を倍増させることが可能となり、効率よく上記要件(1)及び(2)を同時に満たすガスバリア層を形成することが可能となる。
〈4.ガスバリア性フィルムの成形加工方法〉
次に、上述のガスバリア性フィルム10,70の成形加工方法について説明する。なお、以下の成型加工方法の説明では、図1〜3に示すガスバリア性フィルム10,70の各構成及び符号を使用する。
[ガスバリア性フィルムの準備]
次に、上述のガスバリア性フィルム10の成形加工方法について説明する。なお、以下の成型加工方法の説明では、図1〜3、及び、図15〜16に示すガスバリア性フィルム10,70の各構成及び符号を使用する。
ガスバリア性フィルム10,70の成形加工においては、まず、平坦な基材11とガスバリア層12とからなる、平坦な形状のガスバリア性フィルム10,70を準備する。以下、平坦な形状のガスバリア性フィルム10を準備する一例について説明する。
まず、平坦な形状のガスバリア性フィルム10,70を作製するための基材11を準備する。基材11としては、上記規定を満たすことが可能な市販の樹脂フィルムを準備する。或いは、第1基材17に、粘着剤層19を用いて第2基材18を貼り合わせ、積層構造の基材11を作製する。基材11、第1基材17、第2基材18、及び、粘着剤層19としては、上述の材料や従来公知の材料を適用することができる。
また、第1基材17と粘着剤層19と第2基材18とからなる積層構造の基材11を作製する場合には、第2基材18を準備した後、この第2基材18の一方の面に粘着剤層19を形成する。また、第2基材18と粘着剤層19とが一体化した市販の粘着剤層付きの保護フィルムを準備してもよい。そして、第1基材17の裏面側に粘着剤層19を介して第2基材18を貼合する。第1基材17への第2基材18の貼合方法は特に限定されず、従来公知の方法を適用することができる。好ましくは、第2基材18の貼合と連続して後述するガスバリア層12の形成を行うオンライン方式を用いることが好ましい。また、第1基材17に第2基材18を貼合し、巻き取り軸で第1基材17と粘着剤層19と第2基材18とからなる積層構造の基材11を巻き取った後、別工程で積層構造の基材11を巻き出して、第1基材17の表面側にガスバリア層12の形成を行うオフライン方式であってもよい。
上述の方法で基材11を準備した後、基材11上にガスバリア層12を作製する。ガスバリア層12の作製は、上述の組成を満たす膜を形成できればよく、ガスバリア層12の成膜方法は、上述の従来公知の方法を適用できる。好ましくは、図17に示す構成の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置を用いてガスバリア層12を作製する。
[ガスバリア性フィルムの成形加工(1)]
次に、ガスバリア性フィルム10の成型加工に用いるための、所定の表面形状を有する基板(金型)を準備する。図18に、ガスバリア性フィルム10の成形加工に用いる、基板の概略構成を示す斜視図を示す。
図18に示す基板30は、周縁側に設けられる実質的に平坦な部分(平坦部)31と、平坦部31に囲まれた中央側に設けられている凸部32とを備える。ガスバリア性フィルム10の成形加工では、基板30の平坦部31が当接する部分が、ガスバリア性フィルム10の平坦領域13となる。また、凸部32が当接する部分が、ガスバリア性フィルム10の曲面領域14となる。このため、基板30は、ガスバリア性フィルム10の曲面領域14に対応する凸部32を有している必要がある。
図18に示す基板30において凸部32は、平坦部31から所定の高さを有して設けられた、四角錐台の形状を有する。基板30において、凸部32の高さが、ガスバリア性フィルム10の曲面領域14における平板の表面(破線20)との間隙16となる。このため、基板30における凸部32の高さは、平坦部31から平均0.5mm以上高いことが好ましい。
また、基板30において、凸部32は、四角錐台の側面を形成する斜面の角度が、平坦部31に対して15°以上45°以下であることが好ましく、15°以上30°以下であることがより好ましい。また、四角錐台の上面周囲の角部が曲率半径0.5mm以上2mm以下程度で丸められていることが好ましい。四角錐台の側面及び上面周囲の角部により、ガスバリア性フィルム10の曲面領域14が3次曲面を有する形状に成形加工される。このため、四角錐台の側面及び上面周囲の角部を上記規定内の形状とすることにより、3次曲面を有する形状の曲面領域14に平均0.5mm以上の間隙を形成しても、ガスバリア性フィルム10の成形加工による、3次曲面部分のガスバリア性の低下を抑制することができる。
次に、準備した基板30に、平坦な形状のガスバリア性フィルム10を押しつけた状態で、ガスバリア性フィルム10に熱を印加する。このとき、ガスバリア性フィルム10のガスバリア層12側を基板30に対面させ、ガスバリア層12側と基板30とを当接させることが好ましい。
また、ガスバリア性フィルム10のガスバリア層12側を、基板30に対面させて配置し、ガスバリア層12と基板30との間に、緩衝層を介在させることが好ましい。緩衝層としては、保護フィルムや、粘着剤層、接着剤層等であることが好ましい。緩衝層を設けることにより、成形加工時のガスバリア層12の損傷、例えば傷の発生を抑制することができる。これにより、ガスバリア層12の損傷に起因するガスバリア性の低下を抑制することができる。
基板30に対して、平坦な形状のガスバリア性フィルム10を押しつける方法としては、例えば真空ラミネート装置を用いた真空成形や、基板30の形状に対応する凹部を有する金型による加圧成形等が挙げられる。また、ガスバリア性フィルム10に対する熱の印加は、基材11の軟化温度以上とすることが好ましく、基材11の融点未満とすることが好ましい。加熱温度を、軟化温度以上とすることにより、ガスバリア性フィルム10の成形加工を速やかに行うことができる。ガスバリア性フィルム10の成形加工時間は特に限定されず、数秒から60分程度の間で任意に設定することができる。
以上の工程により、ガスバリア性フィルム10の成形加工が可能となる。なお、基板の形状等については、ガスバリア性フィルム10に要求される形状等に応じて、適宜選択すればよく、上記の形状には限定されない。また、ガスバリア性フィルム10の成形加工条件も、ガスバリア性フィルム10の構成に応じて任意に調整できる。
[ガスバリア性フィルムの成形加工(2)]
次に、ガスバリア性フィルム70に、3次曲面部76及びこの3次曲面部76内に配置された平坦領域74とからなる曲面領域14、並びに、3次曲面部76の外側に配置された平坦領域74を形成するための成型加工方法について説明する。まず、ガスバリア性フィルム70の成型加工に用いるための、所定の表面形状を有する基板(金型)を準備する。図19に、ガスバリア性フィルム70の成形加工に用いる、基板の概略構成を示す斜視図を示す。
図19に示す基板80は、基板80の中央に配置された円錐台形状の凸部の周囲、及び、円錐台の上底の部分に設けられる実質的に平坦な部分(平坦部)81と、周縁側の平坦部81と中央部の平坦部81との間で円錐台の斜辺となる部分に設けられる曲面加工部82とを備える。ガスバリア性フィルム70の成形加工では、基板80の平坦部81が当接する部分が、ガスバリア性フィルム70の平坦領域74となる。また、曲面加工部82が当接する部分が、ガスバリア性フィルム70の3次曲面部76となる。このため、基板80の曲面加工部82は、ガスバリア性フィルム70の3次曲面部76に対応する形状を有している必要がある。
図19に示す基板80において曲面加工部82は、周縁側の平坦部81から所定の高さを有して設けられた円錐台の側面であり、円錐台(曲面加工部82)の高さが、ガスバリア性フィルム70の凸部における平板の表面(破線20)との間隙となる。基板80における円錐台形状の凸部の高さは、平坦部81から平均0.5mm以上高いことが好ましい。また、円錐台(曲面加工部82)の幅が、3次曲面部76の幅となる。基板80における円錐台形状の斜辺の幅は、3次曲面部76の面積に応じて任意に設定される。
また、基板80において、曲面加工部82は、円錐台の側面を形成する斜面の角度が、円錐台形状の凸部の周囲の平坦部81に対して15°以上45°以下であることが好ましく、15°以上30°以下であることがより好ましい。また、円錐台の上底周囲及び側面底部の角部が曲率半径0.5mm以上2mm以下程度で丸められていることが好ましい。円錐台の上底周囲及び側面底部の角部により、ガスバリア性フィルム70の3次曲面部76が曲面を有する形状に成形加工される。このため、円錐台の上底周囲及び側面底部の角部を上記規定内の形状とすることにより、曲面を有する形状の3次曲面部76を形成しても、ガスバリア性フィルム70の成形加工による、3次曲面部分のガスバリア性の低下を抑制することができる。
次に、上述のガスバリア性フィルムの成形加工(1)と同じ方法で、準備した基板80に、平坦な形状のガスバリア性フィルム70を押しつけた状態で、ガスバリア性フィルム70に熱を印加する。このとき、ガスバリア性フィルム70のガスバリア層12側を基板80に対面させ、ガスバリア層12側と基板80とを当接させることが好ましい。
また、ガスバリア性フィルム70のガスバリア層12側を、基板80に対面させて配置し、ガスバリア層12と基板80との間に、緩衝層を介在させることが好ましい。緩衝層としては、保護フィルムや、粘着剤層、接着剤層等であることが好ましい。緩衝層を設けることにより、成形加工時のガスバリア層12の損傷、例えば傷の発生を抑制することができる。これにより、ガスバリア層12の損傷に起因するガスバリア性の低下を抑制することができる。
基板80に対して、平坦な形状のガスバリア性フィルム70を押しつける方法としては、例えば真空ラミネート装置を用いた真空成形や、基板80の形状に対応する凹部を有する金型による加圧成形等が挙げられる。また、ガスバリア性フィルム70に対する熱の印加は、基材11の軟化温度以上とすることが好ましく、基材11の融点未満とすることが好ましい。加熱温度を、軟化温度以上とすることにより、ガスバリア性フィルム70の成形加工を速やかに行うことができる。ガスバリア性フィルム70の成形加工時間は特に限定されず、数秒から60分程度の間で任意に設定することができる。
以上の工程により、ガスバリア性フィルム70の成形加工が可能となる。なお、基板の形状等については、ガスバリア性フィルム70に要求される形状等に応じて、適宜選択すればよく、上記の形状には限定されない。また、ガスバリア性フィルム70の成形加工条件も、ガスバリア性フィルム70の構成に応じて任意に調整できる。
[保護フィルム]
保護フィルムは、保護基材と、保護基材をガスバリア性フィルム10,70のガスバリア層12上に貼合するための粘着剤層とを備える。保護フィルムは、粘着剤層においてガスバリア性フィルム10,70からの剥離が可能であれば、保護基材及び粘着剤層に用いられる材料は特に限定されない。
また、保護フィルムは、ガスバリア性フィルム10,70のガスバリア層12上だけでなく、ガスバリア性フィルム10,70の基材11側にも設けられていてもよい。ガスバリア性フィルム10,70の基材11側に保護フィルムを設けることにより、基材11の表面を保護することができる。
また、保護フィルムとしては、自己粘着性の共押出延伸多層フィルムを用いることもできる。このような自己粘着性の共押出延伸多層フィルムとしては、例えば、フタムラ化学社製の自己粘着性OPPフィルムFSA−010M、FSA−020M、FSA−050M、FSA−100M、FSA−150M、FSA−300M、FSA−010B等を用いることができる。
[保護基材]
保護基材としては、上述のガスバリア性フィルム10,70の基材11と同じ樹脂フィルムを使用することができる。耐熱性や、光学的な特性から、保護基材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることが好ましい。
保護基材は、樹脂フィルムが単独、又は、複数用いられていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。保護基材は、枚葉形状及びロール形状に限定されないが、生産性の観点からロールトゥロール方式でも対応できるロール形状が好ましい。
保護基材の厚さは、特に制限されないが、5〜500μm程度が好ましく、25μm〜150μmがより好ましい。保護基材の厚さが5μm以上であれば、取り扱い易い十分な厚さとなる。また、保護基材の厚さが500μm以下であれば、十分な柔軟性を有し、搬送性やロールへの密着性が十分に得られる。
[粘着剤層]
粘着剤層は、粘着剤を含んで構成される。粘着剤層に用いられる粘着剤は、保護フィルムに要求される粘着力を得ることができれば特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。粘着剤層に使用される粘着剤としては、感圧粘着剤が好ましい。感圧粘着剤は、凝集力と弾性を有し、長時間にわたり安定した粘着性を維持できる。また、粘着剤層を形成する際に、熱や有機溶媒等の要件を必要とせず、圧力を加えるだけで保護フィルムをガスバリア性フィルム10,70に貼合することができる。
粘着剤層を形成するための粘着剤としては、透明性に優れる材料が好ましい。粘着剤層を形成するための粘着剤としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、及び、シリコン系樹脂等を含む粘着剤が挙げられる。粘着剤の形態としては、例えば、溶剤型、エマルション型、及び、ホットメルト型等を用いることができる。
粘着剤層を形成するための粘着剤としては、アクリル系粘着剤が、耐久性、透明性、粘着特性の調整の容易さなどの面から好ましい。アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに極性単量体成分を共重合したアクリル系ポリマーを加えたものである。上記アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。具体的には、東洋インキ社製BPS5978を使用できる。
アクリル系粘着剤の硬化剤としては、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アリジリン系硬化剤が利用できる。イソシアネート系硬化剤としては、長期保存後も安定した粘着力を得るため、及び、より硬い粘着剤層を形成するために、トルイレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系を用いることが好ましい。具体的には、東洋インキ社製BXX5134を使用することができる。
硬化剤の添加量は、粘着剤に対して3質量%〜9質量%であることが好ましく、5質量%〜7質量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、粘着剤成分を十分に硬化させることができ、十分な接着力も確保することができるとともに、保護フィルムをガスバリア性フィルム10,70から剥離した後に、ガスバリア性フィルム10,70側に粘着剤層が残存しにくい。
粘着剤層を構成する粘着剤の重量平均分子量は、40万以上140万以下であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲内の値であれば、粘着力が過度になることが少なく、必要な範囲で粘着力を得ることができる。さらに、上記の重量平均分子量の範囲であれば、剥離後のガスバリア性フィルム10,70側への粘着剤層の残存を防止することができる。
また、粘着剤に含まれる上記樹脂類の他に、粘着剤層の物性向上の観点から、各種添加剤を用いることができる。例えば、ロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジン及び変性ロジンの誘導体、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキル−フェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体をはじめとする粘着付与剤、老化防止剤、安定剤、及び軟化剤等を必要に応じて用いることができる。これらは必要に応じて2種以上用いることもできる。また、耐光性を上げるために、粘着剤にベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の有機系紫外線吸収剤を添加することもできる。
粘着剤層の厚さは、保護フィルムの取扱い易さから10μm以上50μm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、保護フィルムとガスバリア性フィルム10,70とに十分な密着力を得ることができる。さらに、保護フィルムを剥離する際にも、ガスバリア性フィルム10,70に対して過度な力をかける必要がなく、ガスバリア性フィルム10,70の損傷を抑制することができる。
粘着剤層を保護基材の表面に形成(塗工)する方法は特に限定されない。例えば、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等を用いて、上記粘着剤を保護基材上に塗布し、乾燥又は硬化することにより、粘着剤層を形成することができる。
[接着剤層]
接着剤層は、上述の保護フィルムや粘着剤層と同様に、ガスバリア性フィルム10,70のガスバリア層12の表面を保護するための層である。接着剤層として用いられる接着剤は、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使ってよいし、スクリーン印刷によって行ってもよい。
接着剤層としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマー等の反応性ビニル基を有する光硬化型又は熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型接着剤、エポキシ系等の熱硬化型又は化学硬化型(二液混合)接着剤、ホットメルト型のポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等の接着剤、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等が挙げられる。
実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[基材1の作製]
下記の方法で支持体の両面にハードコート層が形成された基材1を作製した。
(支持体)
帝人デュポンフィルム社製、両面に易接着層を有する厚さ[X]が50μmのPETフィルム、KFL12W#50(第1基材)を準備した。
(ハードコート塗布液HC1の作製)
下記の材料を混合した、ハードコート塗布液HC1を調整した。
重合性バインダ:サートマー社製SR368 12.0質量部
重合性バインダ:荒川化学社製ビームセット575 22.0質量部
重合開始剤:BASF社製イルガキュア651 1.0質量部
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 65.0質量部
(基材の作製)
ロールトゥロール方式の塗布装置を用い、HC1を支持体(PETフィルム)の片面に乾燥膜厚が4μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線を500mJ/cmの条件で照射して硬化させて、巻き取った。次に、支持体(PETフィルム)の反対面に、上記と同様の方法で厚さ4μmのハードコート層を形成し、さらに、厚さ[Y]が50μmのPETフィルム(第2基材)に微粘着層を設けた保護フィルムを、反対面側のハードコート層上にインラインで貼合した後、巻き取った。
[基材2の作製]
支持体として、帝人デュポンフィルム社製、両面に易接着層を有する23μm厚さのPETフィルム、KFL12W#23を準備し、ハードコート塗布液としてHC2を用いた以外は上述の基材1と同様の方法で基材2を作製した。
(ハードコート塗布液HC2の作製)
重合性バインダ:新中村化学社製U−6LPA 20.0質量部
重合性バインダ:新中村化学社製A−9550 10.0質量部
反応型紫外線吸収剤:大塚化学社製RUVA−93 3.0質量部
重合開始剤:BASF社製イルガキュア184 2.0質量部
溶媒:メチルエチルケトン 20.0質量部
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 45.0質量部
[基材3の作製]
支持体として、東レ社製、両面に易接着層を有する100μm厚さのPETフィルム、ルミラーU34を準備した以外は、上述の基材1と同様の方法で基材3を作製した。
[ガスバリア層の成膜条件]
ガスバリア層は、上述の図17に示すロールトゥロール(Roll to Roll)方式を用いたローラー間放電プラズマCVD装置において、2つの成膜部(第1成膜部、第2成膜部)が連続で配置された装置(特開2015−131473号公報の図2参照)を用いて作製した。
第1成膜部、及び、第2成膜部における成膜条件を、下記表1に示すC1〜C14の条件のいずれかに設定した。そして、各成膜部において、C1〜C14の条件のいずれかの条件を適用することにより、ガスバリア層を作製した。また、C1〜C14に共通の条件として、成膜有効幅1000mm換算とし、電源周波数を80kHz、成膜ロールの温度を10℃とした。
なお、ガスバリア層の成膜では、2つの成膜部(第1成膜部、第2成膜部)を有する装置を用いることにより、基材を成膜装置に1回通すごとに、2層のガスバリア層が成膜される。ガスバリア層の作製において、1回目の成膜は、第1成膜部から第2成膜部に向けて基材を搬送し(順方向)、2回目の成膜は、第2成膜部から第1成膜部に向けて基材を搬送した(逆方向)。同様に、奇数回目の成膜では、第1成膜部から第2成膜部に向けて基材を搬送し(順方向)、偶数回目の成膜では、第2成膜部から第1成膜部に向けて基材を搬送した(逆方向)。
〈試料101〜122のガスバリア性フィルムの作製〉
上記基材1〜3と、上記成膜条件C1〜C14及び成膜回数を、下記表2に示す組み合わせで選択し、試料101〜122のガスバリア性フィルムを作製し、さらに、下記の方法で成型加工した。なお、試料118〜122のガスバリア性フィルムでは、ガスバリア層として、ロールトゥロール方式のスパッタ製膜装置を用いて、常法により、SiOを作製した。スパッタ製膜では、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、酸素を導入して、組成がSiOとなるように調整した。また、スパッタレートと搬送速度を調整することで、膜厚を調整した。
[ガスバリア性フィルムの成形加工]
まず、図18に示す、平坦部31と、平坦部31の中央に設けられた四角錐台形状の凸部32とを有する金属製の基板30を準備した。基板30は、四角錐台の凸部32の上面が概略24×24mmであり、平坦部31に対する四角錐台の各斜辺の角度が20度である。四角錐台の凸部32は、上面周囲の角部を半径0.5mmで丸められている。また、金属製の基板30として、凸部32の高さが、0.2mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、又は、1.2mmでそれぞれ異なる5種類の基板30を準備した。
次に、ガスバリア性フィルムの両面に、保護フィルムとしてフタムラ化学社製のFSA−020Mを用いて貼合し、ガスバリア性フィルム積層体を作製した。そして、ガスバリア性フィルムのガスバリア層が基板30側となるように、ガスバリア性フィルム積層体を基板に対面させ、真空ラミネート装置を用いて、基板30を100℃に加熱し、成型加工時間を10分間として、ガスバリア性フィルムを成型加工した。
〈評価〉
作製した試料101〜122のガスバリア性フィルムに対し、下記の評価を行った。
[ガスバリア層の膜厚]
作製した試料101〜122のガスバリア性フィルムにおいて、以下の集束イオンビーム(FIB)加工装置を用いて薄片を作製した後、切片の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)で観察し、ガスバリア層の厚さを計測した。
(FIB加工)
・装置:SII製SMI2050
・加工イオン:(Ga 30kV)
・試料厚み:100nm〜200nm
(TEM観察)
・装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
[XPS分析]
作製した試料101〜117のガスバリア性フィルムのガスバリア層の厚さ方向の組成分布を、下記の光電子分光法(XPS)分析を用いて測定した。
(XPS分析条件)
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返す。1回の測定は、SiO換算で、約2.8nmの厚さ分となるようにスパッタ時間を調整した。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
なお、XPS分析は厚さ方向に2.8nm間隔で測定した。また、ガスバリア層を構成するSiOxCyの組成の判定において、ガスバリア層の表層の測定点は、表面吸着物の影響があることから除外した。また、ガスバリア層において、上述のABCD及びABEFの範囲内の組成となる厚さについては、連続製膜していることから表層直下の組成と表層から2点目の測定点の組成とが近いと判断し、表層から2点目の測定点の組成が表面位置まで連続して形成されているものとして厚さを計測した。
[ガスバリア層の表面突起数]
作製した試料101〜122のガスバリア性フィルムのガスバリア層について、下記の方法でガスバリア層の表面の突起を検出、計数した。
まず、光干渉方式の三次元表面粗さ測定装置(Veeco社製 WYKO NT9300)を用いてガスバリア層の表面を計測し、三次元表面粗さデータを取得した。次に、取得した三次元表面粗さデータに波長10μmのハイパスフィルターをかけて得られた、三次元表面粗さ変換データ(粗さうねり成分を除去)において、データをヒストグラム表示した際の最大のピークの高さ位置を0としたときの、高さが10nm以上となる突起を計数し、mm当たりの個数として算出した。具体的には、測定解像度を約250nmとし、159.2μm×119.3μmの範囲6視野(面積として0.114mm)を測定・計数し、1mm当たりの個数として算出した。
得られたガスバリア層の突起数を、下記の基準(ランク)で評価した。
5:10個/mm未満
4:10個/mm以上、50個/mm未満
3:50個/mm以上、100個/mm未満
2:100個/mm以上、200個/mm未満
1:200個/mm以上
[水蒸気透過度(WVTR)評価]
作製した試料101〜122のガスバリア性フィルムについて、下記のCa法評価を用いて、水蒸気透過度(WVTR)を求めた。なお、各試料の評価において、2時間保管時点でCaが完全に腐食した場合は、水蒸気透過度(WVTR)を1.5(g/m/d)以上とした。
(Ca法評価)
図20に形状を示す、平坦部41の中央に四角錐台形状の凸部42が形成されたガラス基板40を準備した。四角錐台形状の凸部42の形状は、上述のガスバリア性フィルムの成形加工に用いた基板の形状と同様の形状とする。すなわち、凸部42の高さがそれぞれ0.2mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、又は、1.2mmの5種類のガラス基板40を準備した。
そして、ガラス基板40の凸部42の中央に、20mm×20mmの面積で、日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400を用いてカルシウム(Ca:腐食性金属)を蒸着し、厚さ80nmのCa層43を作製した。
次に、成型加工したガスバリア性フィルムから、ガスバリア層側の保護フィルムを剥離した後、UV洗浄装置を用いて6J/cmの条件でガスバリア層表面を洗浄した。さらに、ガスバリア性フィルムを、グローブボックス中で乾燥した。
次に、接着剤(スリーボンド製1655)を用いて、Ca層43を形成したガラス基板40上にガスバリア性フィルムを貼合して封止し、Ca法評価試料を作製した。なお、接着剤を貼合したガスバリアーフィルムは接着剤の水分及びガスバリアーフィルム表面の吸着水を除去するため1昼夜グローブボックス(GB)内に放置した。
グローブボックス中で、封止接着剤としてスリーボンド社製のTB3124(20μmギャップ剤入り)を、ディスペンサーを用いてガラス基板40の平坦部41に塗布した。封止接着剤の塗布位置、及び、塗布量は、成型加工したガスバリア性フィルムの周囲平坦部を接着し、押し付けて接着剤厚さを20μmに押しのばした際に、Ca蒸着部に乗り上げず、かつ、周囲からはみ出さないように調整した。
次に、ガスバリア性フィルム側から紫外線を照射した後、ホットプレート上で100℃60分間加熱して、接着剤を硬化させた。硬化後、ガスバリア層の反対面側の保護フィルムを剥離除去し、Ca法評価試料を作製した。成型加工したガスバリア性フィルムの成型部は、Ca蒸着面とは接触せず、平均間隙は成型加工時に設定した間隙を維持していた。
Ca法評価試料を40℃、90%RHの環境に保管し、一定時間ごとにCa腐食の状態を透過条件で画像撮影した。Ca蒸着部の濃度変化から、Ca腐食量を算出し、評価面積を20mm×20mmとした条件で、WVTRを算出した。
上記試料101〜122のガスバリア性フィルムの各評価結果を下記表3に示す。
表3に示すように、試料101〜113のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、SiOxCyで表した際のy<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さとの合計が20nm未満である。このため、屈曲領域に0.5mm以上の間隙を有する形状に成形加工されていても、水蒸気透過度(WVTR)が十分に低い。
なかでも、炭素分布曲線の極大値の数が12個以上の試料104〜108、及び、試料113のガスバリア性フィルムでは、水蒸気透過度(WVTR)が、1×10−2(g/m/day)以下であり、ガスバリア性が特に良好である。これは、炭素分布曲線の極大値の数が多いと、ガスバリア層において組成が連続して変化する領域の積層数が多くなるため、成形加工の際に発生する伸長処理によって、1つの領域に発生した微細なクラックが他の領域によって被覆され易くなり、微細なクラックがガスバリア層を貫通しにくくなったためと考えられる。
また、試料101〜113のガスバリア性フィルムは、SiOxCyで表した組成における厚さ毎の(x,y)の分布において、上述ABCDの4点の範囲内となる組成が、ガスバリア層の厚さ方向に40nm以上200nm以下有している。なお、試料101〜113のガスバリア性フィルムにおいては、上述のABEFの4点の範囲内となる組成の厚さも、ABCDの4点の範囲内となる組成の厚さと同じであった。
炭素分布曲線の極大値の数が12個以上の試料104〜108、及び、試料113のガスバリア性フィルムのように、ガスバリア層が上述のABCDの4点の範囲内となる組成を有す厚さが大きいと、試料111のように、炭素分布曲線の極大値の数が12個であっても、ABCDの4点の範囲内となる組成の厚さが小さいガスバリア性フィルムよりも、水蒸気透過度(WVTR)が良好になる。
一方、試料114〜117のガスバリア性フィルムは、SiOxCyの組成において、y<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さの合計が20nmを超えて、110nm以上である。このように、酸素比率又は炭素比率が極端に多い領域の厚さが大きいと、クラックが発生しやすく、また、クラックがガスバリア層全体に伝搬しやすいため、伸長処理によって水蒸気透過度が大きく低下したと考えられる。
さらに、スパッタ成膜によって形成されたSiO組成のガスバリア層を有する試料118〜122のガスバリア性フィルムは、水蒸気透過度(WVTR)が1×10−1(g/m/day)以上である。特に、屈曲領域の間隙が0.2mmと小さい試料118のガスバリア性フィルムにおいても、水蒸気透過度(WVTR)が0.15(g/m/day)であり、上記試料101〜113のガスバリア性フィルムよりも水蒸気透過度(WVTR)が悪い。
〈試料201〜211のガスバリア性フィルムの作製〉
上記基材1〜3と、上記成膜条件C1〜C14及び成膜回数を、下記表4に示す組み合わせで選択し、試料201〜211のガスバリア性フィルムを作製した。なお、試料209〜211のガスバリア性フィルムでは、ガスバリア層として、ロールトゥロール方式のスパッタ製膜装置を用いて、常法により、SiOを作製した。スパッタ製膜では、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、酸素を導入して、組成がSiOとなるように調整した。また、スパッタレートと搬送速度を調整することで、膜厚を調整した。
〈評価〉
作製した試料201〜211のガスバリア性フィルムに対し、上記実施例1と同様の評価を行った。上記試料201〜211のガスバリア性フィルムの各評価結果を下記表5に示す。
表5に示すように、試料201〜206のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、SiOxCyで表した際のy<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さとの合計が20nm未満である。また、試料201〜206のガスバリア性フィルムは、SiOxCyで表した組成における厚さ毎の(x,y)の分布において、上述ABCDの4点の範囲内となる組成が、ガスバリア層の厚さ方向に40nm以上200nm以下有している。なお、試料201〜206のガスバリア性フィルムにおいては、上述のABEFの4点の範囲内となる組成の厚さも、ABCDの4点の範囲内となる組成の厚さと同じであった。このため、屈曲領域に0.5mm以上の間隙を有する形状に成形加工されていても、水蒸気透過度(WVTR)が十分に低い。
これに対し、試料207及び試料208のガスバリア性フィルムは、SiOxCyの組成において、y<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さの合計が20nmを超えて、122nm以上である。このように、酸素比率又は炭素比率が極端に多い領域の厚さが大きいと、クラックが発生しやすく、また、クラックがガスバリア層全体に伝搬しやすいため、伸長処理によって水蒸気透過度が大きく低下したと考えられる。
さらに、スパッタ成膜によって形成されたSiO組成のガスバリア層を有する試料209〜211のガスバリア性フィルムは、水蒸気透過度(WVTR)が1×10−1(g/m/day)以上である。特に、屈曲領域の間隙が0.2mmと小さい試料209のガスバリア性フィルムにおいても、水蒸気透過度(WVTR)が0.14(g/m/day)であり、上記試料201〜206のガスバリア性フィルムよりも水蒸気透過度(WVTR)が悪い。
上述の実施例1と同様の方法で、基材1、及び、基材2を作製した。さらに、上述の実施例1と同様に、ガスバリア層の作製条件として、上述の図15に示すロールトゥロール(Roll to Roll)方式を用いたローラー間放電プラズマCVD装置において、上記表1に示すC1〜C14の条件を設定した。
〈試料301〜316のガスバリア性フィルムの作製〉
上記基材1〜2、上記成膜条件C1〜C14、及び、成膜回数を、下記表6に示す組み合わせで選択し、試料301〜316のガスバリア性フィルムを作製し、さらに、下記の方法で成型加工した。なお、試料314〜316のガスバリア性フィルムでは、ガスバリア層として、ロールトゥロール方式のスパッタ製膜装置を用いて、常法により、SiOを作製した。スパッタ製膜では、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、酸素を導入して、組成がSiOとなるように調整した。また、スパッタレートと搬送速度を調整することで、膜厚を調整した。
[ガスバリア性フィルムの成形加工]
まず、図19に示す、中央に円錐台形状の凸部が形成された金属製の基板80を準備した。基板80において、円錐台の凸部の形状は、下底面の半径が56mmであり、上底面の半径が50mmである。さらに、図21に示すように、円錐台の高さが1mm、円錐台の側面となる斜辺の幅が3mmである。さらに、平坦部81と曲面加工部82との間の角部が曲率半径0.5mmで丸められている。この円錐台の側面は、角部が丸められていない状態として、投影面積が499.5mmとなる。これは、後述する水蒸気透過度(WVTR)評価に用いるアクアトランMODEL1(モコン社製)の測定面積である5000mmのほぼ10%に相当する。また同様に、この円錐台の側面は、投影面積/実測面積の比が1.054となる。角部が丸められても、これら数値はほぼ同じである。従って、この基板80を用いて成型加工を行うと、曲面領域の実測面積が投影面積よりも5%以上大きくなる。
次に、ガスバリア性フィルムの両面に、保護フィルムとしてフタムラ化学社製のFSA−020Mを用いて貼合し、ガスバリア性フィルム積層体を作製した。そして、ガスバリア性フィルムのガスバリア層が基板80側となるように、ガスバリア性フィルム積層体を基板に対面させ、真空ラミネート装置を用いて、基板80を100℃に加熱し、成型加工時間を10分間として、ガスバリア性フィルムを成型加工した。
〈評価〉
作製した試料301〜316のガスバリア性フィルムに対し、下記の評価を行った。
[ガスバリア層の膜厚]
作製した試料301〜316のガスバリア性フィルムにおいて、上述の実施例1と同様の方法で、薄片を作製し、切片の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)で観察し、ガスバリア層の厚さを計測した。
[XPS分析]
作製した試料301〜316のガスバリア性フィルムのガスバリア層の厚さ方向の組成分布を、上述の実施例1と同様の方法の光電子分光法(XPS)分析を用いて測定した。
[ガスバリア層の表面突起数]
作製した試料301〜316のガスバリア性フィルムのガスバリア層について、上述の実施例1と同様の方法で、ガスバリア層の表面の突起を検出、計数し、突起数を基準(ランク)で評価した。
[水蒸気透過度(WVTR)評価]
作製した試料301〜316のガスバリア性フィルムにおいて、上述の成形加工後のガスバリア性フィルム[B]と、上述の成形加工を行う前の平坦なガスバリア性フィルムの試料[A]とについて、水蒸気透過度(WVTR)、及び、「[B]の水蒸気透過度(WVTR)/[A]の水蒸気透過度(WVTR)」を求めた。
(水蒸気透過度の測定)
ガスバリア性フィルムから、表面保護フィルム、及び、裏面保護フィルムを剥離した。そして、各ガスバリア性フィルムを、ガスバリア層を形成した面が装置の検出側となるように、水蒸気透過度測定装置(商品名:アクアトランMODEL1 モコン社製)の測定チャンバーにセットした。また、ガスバリア性フィルムは、三次曲面加工を施した部位が、測定チャンバーの略中央となるようにセットした。そして、38℃、100%RHの雰囲気下で、ガスバリア性フィルムの水蒸気透過度(WVTR)を測定した。なお、水蒸気透過度(WVTR)が2(g/m/day)を超えた場合は、2以上と評価した。
上記試料301〜316のガスバリア性フィルムの各評価結果を下記表7に示す。
表7に示すように、試料301〜309のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、ガスバリア層の表面の突起数が100個/mm以下である。このため、ガスバリア性フィルムの投影面積の10%の領域において、実測面積が投影面積よりも5%以上大きくなる曲面領域を形成する成形加工が行われた後も、水蒸気透過度(WVTR)が十分に低い。
なかでも、ガスバリア層の厚さが100nm以上であり、炭素分布曲線の極大値の数が12個以上の試料304、試料305、及び、試料309のガスバリア性フィルムでは、[A]及び[B]の水蒸気透過度(WVTR)が、共に1×10−2(g/m/day)以下であり、ガスバリア性が特に良好である。
また、試料301〜309のガスバリア性フィルムは、SiOxCyで表した組成における厚さ毎の(x,y)の分布において、上述ABCDの4点の範囲内となる組成が、ガスバリア層の厚さ方向に40nm以上200nm以下有している。なお、試料301〜309のガスバリア性フィルムにおいては、上述のABEFの4点の範囲内となる組成の厚さも、ABCDの4点の範囲内となる組成の厚さと同じであった。
一方、試料302や試料307のガスバリア性フィルムでは、[A]の水蒸気透過度(WVTR)が、1×10−2(g/m/day)以下であるものの、[B]の水蒸気透過度(WVTR)が、0.02(g/m/day)となるため、「[B]の水蒸気透過度/[A]の水蒸気透過度」が2.0又は2.2となる。これは、「[B]の水蒸気透過度/[A]の水蒸気透過度<5」を満たすものの、膜厚やABCD組成領域の厚さが近く、極大値の数が多い試料304の0.1よりも悪化している。
これは、炭素分布曲線の極大値の数が多くなるほど、ガスバリア層において組成が連続して変化する領域の積層数が多くなるため、曲面を形成する成形加工の際に発生する伸長処理によって1つの領域に発生した微細なクラックが、他の領域によって被覆され易くなり、微細なクラックがガスバリア層を貫通しにくくなったためと考えられる。
また、試料308のガスバリア性フィルムは、水蒸気透過度(WVTR)が0.1(g/m/day)以下の十分なガスバリア性を有しているものの、試料301や試料302等に比べると、厚さに対するガスバリア性が低い。これは、試料301や試料302等のガスバリア性フィルムは、C/Siが0.95以上又は0.7以下の組成となる領域が90%以上であるため、C/Siが0.95以上又は0.7以下の組成となる領域が80%未満である試料308よりもガスバリア性が向上しやすいためと考えられる。
一方、ガスバリア層の表面突起数の評価が低い試料310〜313のガスバリア性フィルム、及び、スパッタ成膜で形成したSiO組成のガスバリア層を有する試料314〜316のガスバリア性フィルムは、[B]の水蒸気透過度(WVTR)が2(g/m/day)以上である。そして、「[B]の水蒸気透過度/[A]の水蒸気透過度」が5以上である。このように、突起数が多いガスバリア層や、SiO組成の単層のガスバリア層では、曲面を形成する成形加工の際に発生する伸長処理によって、ガスバリア層を貫通するクラックが容易に発生してしまうため、成形加工後のガスバリア性フィルムの水蒸気透過度が大きく悪化する。
さらに、試料301〜309のガスバリア性フィルムは、SiOxCyで表した際のy<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さとの合計が20nm未満である。これに対し、試料310〜313のガスバリア性フィルムは、SiOxCyの組成において、y<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さの合計が20nmを超えて、110nm以上である。このように、酸素比率又は炭素比率が極端に多い領域の厚さが大きいと、クラックが発生しやすく、また、クラックがガスバリア層全体に伝搬しやすいため、伸長処理によって水蒸気透過度が大きく低下したと考えられる。
従って、ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、表面の突起数が少ないことにより、投影面積の9〜11%の領域において実測面積が投影面積よりも5%以上大きくなる曲面加工を行った場合にも、水蒸気透過度の悪化が少ないガスバリア性フィルムを実現することができる。さらに、ガスバリア層をSiOxCyで表した際のy<0.20又はy>1.40の組成を有する領域の厚さの合計が20nm未満であることにより、水蒸気透過度の悪化が少ないガスバリア性フィルムを実現することができる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10,70・・・ガスバリア性フィルム、11,60・・・基材、12・・・ガスバリア層、13,74・・・平坦領域、14・・・曲面領域、15,16,22・・・間隙、17・・・第1基材、18・・・第2基材、19・・・粘着剤層、20,21・・・破線、30,80・・・基板、31,41,81・・・平坦部、32,42・・・凸部、40・・・ガラス基板、43・・・Ca層、50・・・プラズマCVD装置、51・・・繰り出しローラー、52,54,55,57・・・搬送ローラー、53,56・・・成膜ローラー、58・・・巻取りローラー、59・・・成膜ガス供給管、61,62・・・磁場発生装置、63・・・プラズマ発生用電源、73・・・測定領域、76・・・3次曲面部、82・・・曲面加工部

Claims (16)

  1. 基材と、前記基材上に形成されたガスバリア層とを備えるガスバリア性フィルムであって、
    前記ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、
    前記ガスバリア層の組成をSiOxCyで表した際に、y<0.20の組成を有する領域とy>1.40の組成を有する領域との合計が、厚さ方向に20nm未満であり、
    前記ガスバリア性フィルムが、実質的に平坦な領域と、前記平坦な領域に囲まれた3次曲面を有する領域と、を有し、
    前記平坦な領域を平板に接した際に、前記3次曲面を有する領域が前記平板と接触せず、前記3次曲面を有する領域と前記平板との間に平均0.5mm以上の間隙が形成される
    ガスバリア性フィルム。
  2. 前記3次曲面を形成した前記ガスバリア性フィルム[B]と、前記ガスバリア性フィルム[B]に前記3次曲面を形成する前の状態の平坦なガスバリア性フィルム[A]とが、下記(1)と(2)の規定を全て満たす
    (1)[A]の水蒸気透過度(WVTR)、及び、[B]の水蒸気透過度(WVTR)が、0.1(g/m/day)以下である
    (2)([B]の水蒸気透過度(WVTR)/[A]の水蒸気透過度(WVTR))<5を満たす
    請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記3次曲面は、前記3次曲面の実測面積が投影面積よりも5%以上大きい請求項2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記基材が、第1基材と第2基材との積層体であり、前記第1基材の前記ガスバリア層が形成された面と反対側の面に、剥離可能な状態で前記第2基材が貼合されている請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記第1基材の厚さ[X]と前記第2基材の厚さ[Y]との合計が50μm以上150μm以下であり、[X]/[Y]が0.15以上0.90以下である請求項4に記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記ガスバリア層が気相成膜層である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  7. 前記ガスバリア層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、前記ガスバリア層の厚さ方向の炭素の含有量を示す曲線が、4個以上の極大値を有し、前記ガスバリア層の[膜厚/極大値数]が25nm以下であり請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  8. 前記ガスバリア層の組成をSiOxCyで表した際に、横軸をx、縦軸をyとした座標上で、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた範囲内の組成を、厚さ方向に40nm以上200nm以下の範囲で有する
    請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  9. 前記ガスバリア層が、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域の両方を有し、且つ、前記ガスバリア層に70%以上が、前記C/Siが0.95以上の組成となる領域、又は、前記C/Siが0.7以下の組成となる領域である請求項8に記載のガスバリア性フィルム。
  10. 前記ガスバリア層において、厚さ方向の炭素の含有量を示す曲線が、極大値を有し、かつ、極大値の数が6個以上である請求項8に記載のガスバリア性フィルム。
  11. 前記ガスバリア層の[膜厚/極大値数]が15nm以下である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  12. 前記ガスバリア層の表面において、高さが10nm以上の突起数が、100個/mm以下である請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  13. 実質的に平坦な領域と、凹凸又は段差を有する領域とを有する基板に、ガスバリア性フィルムを押し付けて、
    前記基板に前記ガスバリア性フィルムを押しつけた状態で、前記ガスバリア性フィルムに80℃以上の熱を印加し、
    前記ガスバリア性フィルムに、実質的に平坦な領域と、前記平坦な領域を平板に接した際に前記平板との間に平均0.5mm以上の間隙が形成される、前記平坦な領域に囲まれた3次曲面を有する領域と、を形成する
    ガスバリア性フィルムの成形加工方法。
  14. 前記ガスバリア性フィルムのガスバリア層を前記基板側に対面させて、前記ガスバリア性フィルムを前記基板に押し付ける請求項13に記載のガスバリア性フィルムの成形加工方法。
  15. 前記基板と、前記ガスバリア性フィルムとの間に、緩衝層を介在させる請求項13に記載のガスバリア性フィルムの成形加工方法。
  16. 前記緩衝層が、粘着剤層、又は、接着剤層である請求項15に記載のガスバリア性フィルムの成形加工方法。
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