JP2018144283A - 機能性フィルム積層体の製造方法 - Google Patents

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【課題】機能性フィルム積層体が適用されるデバイスの生産性の低下を抑制することが可能な、機能性フィルム積層体の製造方法の提供。【解決手段】基材21の第2面側に第1保護フィルム31を貼合する工程と、基材21の第1面側に、機能性層22を形成して機能性フィルムを作製する工程と、機能性層22上に第2保護フィルム36を貼合する工程と、機能性フィルム20、第1保護フィルム31、及び、第2保護フィルム36を含む機能性フィルム積層体10を巻き取る工程とを有し、機能性層22を形成して機能性フィルム20を作製する工程後から、機能性フィルム積層体10を巻き取る工程までの間に、機能性フィルム積層体10に発生する反りを調整する、機能性フィルム積層体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、機能性フィルムと保護フィルムとを備える機能性フィルム積層体の製造方法に係わる。
電子デバイス等に適用される機能性フィルムとして、基材上に機能性層を備える構成が知られている。機能性層を形成する工程では、加熱を伴う方法が多いため、基材に熱変形等のダメージが加わる懸念がある。このため、基材の裏面に剥離可能な保護フィルムを貼合した積層基材を用いることで、機能性層を形成する際のダメージによる基材の変形を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2011−184770号公報
しかしながら、基材の裏面に保護フィルムを貼合した構成の積層基材を用いた場合には、基材と保護フィルムとの熱的特性の違い(例えば、Tgや熱収縮率等)によって、機能性フィルム積層体に大きな反りが発生してしまう。
また、機能性フィルム積層体を用いて電子デバイス等の各種電子デバイスを作製する場合には、自動化された生産設備において、機能性フィルム積層体をシート化し、シート化した機能性フィルム積層体を各装置に搬送する。しかし、大きな反りが発生した機能性フィルム積層体では、シート化した機能性フィルム積層体が搬送装置や生産装置等のゲートに引っかかる等、種々の問題が生じるため、自動化された生産設備への適用が難しい。このため、反りが発生した機能性フィルム積層体では、この機能性フィルム積層体を用いた各種デバイスの生産性が低下する。従って、反りの発生を抑制することができ、各種デバイス等の生産性の低下を抑制することが可能な、機能性フィルム積層体を製造する方法が求められている。
上述した問題の解決のため、本発明においては、機能性フィルム積層体が適用されるデバイスの生産性の低下を抑制することが可能な、機能性フィルム積層体の製造方法を提供する。
本発明の機能性フィルム積層体の製造方法は、基材の第1面側に機能性層を有する機能性フィルムと、機能性フィルムの基材の第2面側に貼合された剥離可能な第1保護フィルムと、機能性層上に貼合された第2保護フィルムとを備える機能性フィルム積層体の製造方法である。基材の第2面側に第1保護フィルムを貼合する工程と、基材の第1面側に、機能性層を形成して機能性フィルムを作製する工程と、機能性層上に第2保護フィルムを貼合する工程と、機能性フィルム、第1保護フィルム、及び、第2保護フィルムを含む機能性フィルム積層体を巻き取る工程とを有する。そして、機能性層を形成して機能性フィルムを作製する工程後から、機能性フィルム積層体を巻き取る工程までの間に、機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する。
また、本発明の機能性フィルム積層体の製造方法は、基材の第1面側に機能性層を有する機能性フィルムと、機能性層上に貼合された剥離可能な第1保護フィルムとを備える機能性フィルム積層体の製造方法である。基材の第2面側に剥離可能な第2保護フィルムを貼合する工程と、基材の第1面側に、機能性層を形成して機能性フィルムを作製する工程と、第2保護フィルムを剥離する工程と、基材の第2面側に第1保護フィルムを貼合する工程と、機能性フィルム、及び、第1保護フィルムを含む機能性フィルム積層体を巻き取る工程とを有する。そして、機能性層を形成して機能性フィルムを作製する工程後から、機能性フィルム積層体を巻き取る工程までの間に、機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する。
本発明によれば、機能性フィルム積層体が適用されるデバイスの生産性の低下を抑制することが可能な、機能性フィルム積層体の製造方法を提供することができる。
第1実施形態で作製される機能性フィルム積層体の構成を示す図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 真空プラズマCVD装置の模式図である。 ローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。 第2実施形態で作製される機能性フィルム積層体の構成を示す図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 機能性フィルム積層体の製造方法を説明するための図である。 実施例の機能性フィルム積層体の反り評価の方法を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.機能性フィルム積層体の製造方法(第1実施形態)
2.機能性フィルム積層体の製造方法(第2実施形態)
〈1.機能性フィルム積層体の製造方法(第1実施形態)〉
[機能性フィルム積層体の構成]
機能性フィルム積層体の製造方法の具体的な実施の形態(第1実施形態)について説明する。
図1に、第1実施形態の機能性フィルム積層体の製造方法で製造される、機能性フィルム積層体の構成を示す。図1に示す機能性フィルム積層体10は、機能性フィルム20と、第1保護フィルム30と、第2保護フィルム35とを備える。
機能性フィルム20は、基材21と機能性層22とを有する。機能性層22は、基材21の一方の面(第1面、又は、表面)側を覆うように形成されている。また、第1保護フィルム30は、第1粘着層32と第1保護基材31とから構成される。第1粘着層32は、第1保護基材31の一方の面(第1面、又は、表面)側を覆うように形成されている。そして、機能性フィルム20の基材21の他方の面(第2面、又は、裏面)側に、第1粘着層32を介して第1保護基材31が貼合されている。
さらに、第2保護フィルム35は、第2粘着層37と第2保護基材36とから構成される。第2粘着層37は、第2保護基材36の一方の面(第1面、又は、表面)側を覆うように形成されている。そして、機能性フィルム20の機能性層22の表面(第1面)側に、第2粘着層37を介して第2保護基材36が貼合されている。
すなわち、図1に示す機能性フィルム積層体10は、第1保護フィルム30、機能性フィルム20、及び、第2保護フィルム35が積層した構成を有する。より具体的には、第1保護基材31、第1粘着層32、基材21、機能性層22、第2粘着層37、及び、第2保護基材36が、この順に積層された構成を有する。このため、機能性フィルム積層体10は、一方の面(表面)側に第2保護基材36が露出し、他方面(裏面)側に、第1保護基材31が露出する構成を有している。
また、第1保護フィルム30、及び、第2保護フィルム35は、機能性フィルム20から剥離可能なように貼合されている。このため、機能性フィルム積層体10は、機能性フィルム20の基材21と、第1保護フィルム30の第1粘着層32との間において、第1保護フィルム30と機能性フィルム20との剥離が可能である。さらに、機能性フィルム積層体10は、機能性フィルム20の機能性層22と、第2保護フィルム35の第2粘着層37との間において、第2保護フィルム35と機能性フィルム20との剥離が可能である。
[製造方法]
次に、上述の構成の機能性フィルム積層体10の製造方法について説明する。機能性フィルム積層体10の製造方法は、基材21の第2面側に剥離可能な第1保護フィルム30を貼合する工程と、基材21の第1面側に機能性層22を形成して機能性フィルム20を作製する工程と、機能性層22上に第2保護フィルム35を貼合する工程と、機能性フィルム20、第1保護フィルム30、及び、第2保護フィルム35を含む機能性フィルム積層体10を巻き取る工程とを有する。そして、機能性層22を形成して機能性フィルム20を作製する工程後から、機能性フィルム積層体10を巻き取る工程までの間に、機能性フィルム積層体10に発生する反り(カール)を調整する。
上記機能性フィルム積層体10の製造方法では、図2に示すように、基材21に第1保護フィルム30を貼合することにより、基材21と第1保護基材31とが第1粘着層32で貼合された基材積層体(第1積層体)25を形成する。
次に、図3に示すように、基材積層体25の基材21の表面側に機能性層22を形成する。これにより、基材21と機能性層22とからなる機能性フィルム20を作製する。また、このとき機能性フィルム20と第1保護フィルム30とからなる、第2積層体26が作製される。
次に、図4に示すように、機能性フィルム20と第1保護フィルム30とからなる第2積層体26に対して第2保護フィルム35を貼合する。これにより、機能性フィルム20、第1保護フィルム30、及び、第2保護フィルム35からなる、機能性フィルム積層体10を作製する。
上記機能性フィルム積層体10の製造方法においては、基材21、第1保護基材31、及び、第2保護基材36のような、複数の基材が積層された構成が形成される。このため、これらの複数の基材を有する積層体では、各基材の熱的特性や機械的特性の差によって、積層体に反りが発生する。例えば、機能性層22を形成する工程においては、基材21と第1保護基材31とが第1粘着層32で貼合された基材積層体(第1積層体)25が、成膜時の高温に曝されるため、基材21と第1保護基材31との熱的特性の差により、機能性層22を作製した積層体(第2積層体)26に反りが発生する。
また、基材21に第1保護フィルム30を貼合する際や、第2積層体26に第2保護フィルム35を貼合する際には、基材21と第1保護フィルム30、及び、第2積層体26と第2保護フィルム35とに、それぞれ所定の張力を印加した状態で行う。このため、各基材を構成する材料の機械的物性に対して、貼合時に印加する張力の均衡(釣り合い、バランス)が悪化すると、貼合後の各積層体に反りが発生する。
従って、機能性フィルム積層体10の製造工程中において、各積層体に発生する反りの調整を行うことにより、反りが抑制された機能性フィルム積層体10を製造することができる。反りの調整は、成膜時の熱により反りが発生しやすい機能性層22の形成よりも後に行う。また、第2積層体26に第2保護フィルム35を貼合して形成した機能性フィルム積層体10を、コア等に巻き取る前に行う。機能性層22の形成において熱による反りが発生するため、機能性層22の成膜前に反りを調整しても、機能性フィルム積層体10の反り抑制に効果が小さい。また、コア等に巻き取る前までに反りが調整されていれば、反りが抑制された機能性フィルム積層体10を作製することができる。
機能性フィルム積層体10に発生する反りを調整する方法としては、例えば、機能性フィルム積層体10を製造する工程において、上記積層体のいずれかを加熱する方法を適用することができる。機能性フィルム積層体10の加熱方法としては、例えば、反りが発生している機能性フィルム積層体10や、機能性層82を形成した後の第2積層体26に対して、特定の温度域を通過させる方法や、各積層体の一方の面側から加熱気体を吹き付ける等の方法を適用することができる。
また、機能性フィルム20の機能性層22上に第2保護フィルム35を貼合する工程において、貼合時の張力を調整することによって、機能性フィルム積層体10に発生する反りを調整する方法も適用できる。機能性フィルム20と第1保護フィルム30とからなる第2積層体26と、第2保護フィルム35との貼合は、第2積層体26と第2保護フィルム35とにそれぞれ所定の張力を印加した状態で行う。このため、貼合時に第2積層体26と第2保護フィルム35とに印加する張力をそれぞれ調整し、第2積層体26と第2保護フィルム35との張力のバランスを取ることにより、機能性フィルム積層体10の反りを調整することができる。
上述の機能性フィルム積層体の製造方法を用いることにより、反りの発生が抑制された機能性フィルム積層体を製造することができる。そして、このような反りの発生が抑制された機能性フィルム積層体を用いることにより、自動化された生産設備において電子デバイス等の各種電子デバイスを作製することが可能となる。従って、各種デバイス等の製造において生産性の低下を抑制することが可能な、機能性フィルム積層体を製造することができる。
なお、機能性フィルム積層体10の製造方法としては、生産性の高さからロールトゥロール(Roll to Roll)方式を用いて、基材21と第1保護フィルム30との貼合、第2保護フィルム35の貼合、及び、機能性層22の形成を行うことが好ましい。さらに、反りの調整もロールトゥロール方式の製造工程中で行うことが好ましい。
また、上記機能性フィルム積層体10に発生する反りを調整する工程は、予め同条件で作製した機能性フィルム積層体の反りを測定し、測定された反りの値をもとに、機能性フィルム積層体10の反りが小さくなるように、工程における加熱条件や張力条件を適宜選択する。機能性フィルム積層体10に発生する反りは、機能性フィルム積層体10の各構成の材料、厚さ、及び、各工程の製造条件によって機能性フィルム積層体10に発生する量が異なる。このため、反りを調整するための加熱温度や時間、及び、印加する張力については、発生する反り量と各構成とに応じて任意に設定する必要がある。
[張力による反り調整方法]
基材同士を貼合する際に、積層体に発生する反りを各基材に印加する張力によって調整する、機能性フィルム積層体10の製造方法について説明する。なお、各基材に印加する張力によって積層体に発生する反りを調整する方法においては、従来公知の貼合装置を用いることができる。
各基材に印加する張力によって積層体に発生する反りを調整する方法では、第2保護フィルム35を貼合する際に、機能性フィルム積層体10に発生する反りが小さくなるように、第2積層体26の張力と第2保護フィルム35の張力とを調整する。例えば、第2保護フィルム35を貼合する際に、第2積層体26に100〜300Nの張力を印加し、第2保護フィルム35に100〜300Nの張力を印加する。 これにより、第2積層体26に印加される張力と第2保護フィルム35とに印加される張力との差により、機能性フィルム積層体10の反りを調整することができる。このように、第2積層体26と第2保護フィルム35との貼合において反りを調整した後、機能性フィルム積層体10をコアに巻き取ることにより、反りが抑制された機能性フィルム積層体10を作製することができる。
[加熱による反り調整方法]
基材同士を貼合した後に、積層体に発生する反りを加熱して調整する、機能性フィルム積層体10の製造方法について説明する。積層体に発生する反りを加熱して調整する方法においては、従来公知の貼合装置に、機能性フィルム積層体10の加熱装置を組み合わせて用いることができる。
機能性フィルム積層体10の加熱装置としては、接触型加熱装置、及び、非接触型加熱装置のいずれも用いることができる。例えば、接触型加熱装置として、内部に加熱手段が設けられたローラーを用い、このローラーを機能性フィルム積層体10に接触させて加熱してもよい。また、接触型加熱装置としては、例えば、ヒーターを用いて機能性フィルム積層体10に温風をあてる抵抗加熱方法や、赤外線加熱方法、誘導加熱方法等を用いた加熱装置を挙げることができる。
機能性フィルム積層体10の加熱は、いずれの主面側から行ってもよく、両面に行ってもよい。好ましくは、機能性フィルム積層体10の基材側から加熱することが好ましい。
機能性フィルム積層体10の加熱は、第2保護フィルム35を貼合した後に、機能性フィルム積層体10に発生する反りが小さくなるように行う。機能性フィルム積層体10の加熱は、例えば、加熱処理中の機能性フィルム20の基材21の温度が、基材21のガラス転移温度(Tg)以上Tg+40℃以下となるように行う。好ましくは、加熱処理中の基材21の温度が、Tg+5℃以上Tg+35℃以下、より好ましくは、Tg+10℃以上Tg+30℃以下となるように行う。このように、加熱処理によって反りの調整した後、機能性フィルム積層体10をコアに巻き取ることで、反りが抑制された機能性フィルム積層体10を作製することができる。
[機能性フィルム積層体の構成]
以下、上述の図1に示す機能性フィルム積層体10の各構成について説明する。なお、以下で説明する各構成は、機能性フィルム積層体10の構成の一例であり、上述の製造方法が適用できれば、各構成は特に限定されない。
[機能性フィルム]
機能性フィルム20は、基材21と、基材21の一方の面(第1面、表面)側に形成された機能性層22とを備える。機能性フィルム20は、機能性層22が所望の機能を有し、基材21から第1保護フィルム30が剥離可能であり、且つ、機能性層22から第2保護フィルム35が剥離可能であれば、各構成に用いられる材料は特に限定されない。
[基材]
機能性フィルム積層体10の機能性フィルム20に用いられる基材21としては、例えば、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムは、バリア層等の機能性層を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。樹脂フィルムとしては、従来公知の樹脂フィルムを用いることができる。基材21は、複数の材料から形成されていてもよい。樹脂フィルムとしては、特開2013−226758号公報の段落[0124]〜[0136]、国際公開第2013/002026号の段落[0044]〜[0047]等に記載された樹脂フィルムを挙げることができる。
基材21として用いることができる樹脂フィルムのより好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COP)が挙げられる。
基材21は、樹脂フィルムが単独、又は、複数用いられていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。基材21は、枚葉形状及びロール形状に限定されないが、生産性の観点からロールトゥロール方式でも対応できるロール形状が好ましい。また、基材21の厚さは、特に制限されないが、5〜500μm程度が好ましい。
[機能性層]
機能性層22としては、例えば、バリア層、保護層、平滑層、ブリードアウト層、アンカーコート層、デシカント層等が挙げられる。これらの層は、基材21上に単層の機能性層22として形成されていてもよく、複数層からなる機能性層22として形成されていてもよい。
特に、機能性フィルム20は、機能性層22として、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下のバリア層を備えることが好ましい。
[バリア層]
機能性層22を構成するバリア層としては、バリア性を有する層であれば、特に限定されることなく、従来公知の構成を適用することができる。例えば、一般的な無機化合物の気相成膜により形成されたバリア層や、ケイ素化合物を含む塗布液を用いて湿式塗布法によって形成されたバリア層、遷移金属を含むバリア層等が挙げられる。
[バリア層;気相成膜]
無機化合物の気相製膜によって形成されたバリア層(以下、気相成膜バリア層ともいう)は、無機化合物を含む。当該無機化合物としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物または金属酸炭化物が挙げられる。無機化合物としては、ガスバリア性能の点で、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce及びTaから選ばれる1種以上の金属を含む、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物又は酸炭化物等が好ましい。好適な無機化合物として具体的には、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、及び、アルミニウムシリケート等の複合体が挙げられる。無機化合物を含むバリア層は、副次的な成分として、上記の無機化合物以外の元素を含有してもよい。
気相成膜バリア層のガスバリア性は、基材上に上記バリア層を形成した積層体において算出する水蒸気透過率(WVTR)が、0.1g/(m・day)以下であることが好ましい。
気相成膜バリア層の膜厚は、特に制限されないが、5〜1000nmであること好ましい。このような範囲であれば、高いガスバリア性能、折り曲げ耐性、断裁加工適性に優れる。また、気相成膜バリア層は2層以上から構成されてもよい。
気相成膜バリア層を形成するための気相製膜方法としては、特に限定されない。既存の薄膜堆積技術を利用することができる。例えば、従来公知の蒸着法、反応性蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、化学気相成長法等の気相製膜法を用いることができる。これらの気相成膜法によるバリア層は、公知の条件を適用して作製することができる。
例えば、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面又は気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマを発生させる方法等があり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマを励起源としたプラズマCVD法(PECVD法)である真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等の公知のCVD法が挙げられる。特に、PECVD法が好ましい方法である。以下、化学気相成長法の好ましい手法として、真空プラズマCVD法について詳しく説明する。
[真空プラズマCVD法]
真空プラズマCVD法は、プラズマ源を搭載した真空容器に材料ガスを流入させ、電源からプラズマ源に電力供給する事で真空容器内に放電プラズマを発生させ、プラズマで材料ガスを分解反応させ、生成された反応種を基材に堆積させる方法である。真空プラズマCVD法により得られる気相成膜バリア層は、原材料である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力等の条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できるため好ましい。
原材料の化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、及び、アルミニウム化合物等のケイ素を含む化合物及び金属を含む化合物を用いることが好ましい。これら原材料の化合物は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いてもよい。
これらの、ケイ素化合物、チタン化合物、及び、アルミニウム化合物として、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、公知の化合物としては特開2013−063658号公報の段落[0028]〜[0031]、特開2013−047002号公報の段落[0078]〜[0081]等に記載された化合物を挙げることができる。好ましくは、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、等が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、及び、水蒸気等が挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスと混合して用いてもよい。原材料の化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望の気相成膜バリア層を得ることができる。
(真空プラズマCVD装置)
以下、好適な形態である真空プラズマCVD法について具体的に説明する。図5に、真空プラズマCVD法に適用される、真空プラズマCVD装置の模式図の一例を示す。
図5に示す真空プラズマCVD装置40は、真空槽42を有しており、真空槽42の内部の底面側には、サセプタ44が配置されている。サセプタ44上には、アノード電極41が配置されている。また、真空槽42の内部の天井側には、サセプタ44と対向する位置にカソード電極43が配置されている。真空槽42の外部には、熱媒体循環系46と、真空排気系47と、ガス導入系48と、高周波電源49が配置されている。熱媒体循環系46内には熱媒体が配置されている。熱媒体循環系46には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置45が設けられている。
加熱冷却装置45は、熱媒体の温度を測定し、熱媒体を記憶された設定温度まで加熱または冷却し、サセプタ44に供給するように構成されている。図5に記載の真空プラズマCVD装置40の詳細は、国際公開第2012/090644号の段落[0080]〜[0098]等を参照することができる。
[真空プラズマCVD法:ロールトゥロール]
次に、真空プラズマCVD装置の別の形態として、ロールトゥロール(Roll to Roll)方式によるバリア層の成膜方法について説明する。ロールトゥロール方式によって成膜されるバリア層は、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、層厚方向に組成が連続的に変化し、下記要件(1)及び(2)を同時に満たすことが好ましい。
(1)バリア層において、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、当該バリア層の層厚方向におけるバリア層表面からの距離と、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する炭素原子の量の比率(炭素原子比率(at%))との関係を示す炭素分布曲線が、極値を有し、炭素分布曲線の炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)との差が3at%以上である。
(2)バリア層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)又は(B)で表される序列の大小関係を有する。
式(A):(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B):(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
なお、バリア層と基材との界面領域における測定精度は、基材の構成原子のノイズ等でやや精度が低下するため、上記要件(2)においては、バリア層の全層厚の90〜95%の範囲内の領域で下記式(A)又は式(B)で規定する関係を満たすことが好ましい。ここで、バリア層の膜厚の少なくとも90%以上とは、バリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で下記式(A)又は式(B)で規定する関係を満たしていればよい。
(X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定)
バリア層内における炭素原子の含有比率の平均値は、以下のXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。
バリア層の層厚方向におけるケイ素分布曲線、酸素分布曲線、及びケイ素分布曲線等は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定と、アルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間が、バリア層の層厚方向におけるバリア層の表面からの距離におおむね相関する。このため、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される、バリア層の表面からの距離を「バリア層の層厚方向におけるバリア層の表面からの距離」として採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、以下の測定条件とすることが好ましい。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):10nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe"
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポットおよびそのサイズ:800×400μmの楕円形
炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出されるバリア層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該バリア層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、[(dC/dx)≦0.5]で表される条件を満たすことをいう。
(バリア層における炭素元素プロファイル)
バリア層は、バリア層の構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含む。そして、層厚方向に組成が連続的に変化し、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、炭素分布曲線が、上記要件(1)を満たす。また、炭素原子比率がバリア層の特定の領域において、濃度勾配を有して連続的に変化する構成を有することが、ガスバリア性と屈曲性を両立する観点から好ましい。
このような炭素原子分布プロファイルを有するバリア層においては、層内における炭素分布曲線が少なくとも1つの極値を有し、更に、少なくとも2つの極値を有することがより好ましく、少なくとも3つの極値を有することが特に好ましい。炭素分布曲線が極値を有すると、得られるバリア層のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性が十分発揮できる。また、少なくとも2つ又は3つの極値を有する場合においては、炭素分布曲線が有する1つの極値とこれに隣接する極値との厚さ方向の距離の差の絶対値が200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。
なお、上記分布曲線の極値とは、バリア層の厚さ方向において、バリア層の表面からの距離に対する元素の原子比率の極大値又は極小値である。極大値とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる変曲点であり、且つ、その変曲点の位置から厚さ方向に4〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上減少する点のことをいう。また、極小値とは、バリア層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる変曲点であり、且つ、その変曲点の位置から厚さ方向に4〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、極大値及び極小値は、厚さ方向の位置を4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少又は増加する点である。
(バリア層における各元素プロファイル)
バリア層においては、構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有することを特徴とするが、それぞれの原子の比率と、最大値及び最小値についての好ましい態様を、以下に説明する。
(炭素原子比率の最大値と最小値の関係)
バリア層では、炭素分布曲線における炭素原子比率の最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)の差が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましい。炭素原子比率の最大値及び最小値の差を3at%以上とすることにより、作製したバリア層を屈曲させた際のガスバリア性が十分得られる。最大値及び最小値の差が5at%以上であれば、得られるバリア層のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリア性がより向上する。
(酸素原子比率の最大値と最小値の関係)
バリア層においては、酸素分布曲線における最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)の差の絶対値が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましい。
(ケイ素原子比率の最大値と最小値の関係)
バリア層においては、ケイ素分布曲線における最大の極値(極大値)と最小の極値(極小値)の差の絶対値が10at%未満であることが好ましく、5at%未満であることがより好ましい。極値(極大値)と最小の極値(極小値)の差が10at%未満であれば、得られるバリア層のガスバリア性及び機械的強度が得られる。
また、膜面全体の均一性やガスバリア性を向上させるためには、バリア層が膜面方向(バリア層の表面に平行な方向)で実質的に一様であることが好ましい。バリア層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりバリア層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について酸素分布曲線、炭素分布曲線、及び、酸素−炭素合計の分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか、又は、5at%以内の差であることをいう。
バリア層では、上記要件(1)及び(2)を同時に満たすバリア層を少なくとも1層備えることが好ましいが、そのような条件を満たす層を、2層以上を備えていてもよい。さらに、バリア層を2層以上備える場合には、複数のバリア層の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線及び炭素分布曲線において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対するケイ素原子比率は、19〜40at%の範囲であることが好ましく、30〜40at%の範囲であることがより好ましい。また、バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する酸素原子比率は、33〜67at%の範囲であることが好ましく、41〜62at%の範囲であることがより好ましい。さらに、バリア層中におけるケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量に対する炭素原子比率は、1〜19at%の範囲であることが好ましく、3〜19at%の範囲であることがより好ましい。
上記したバリア層のその他の構成については、国際公開第2012/046767号の段落[0025]〜[0047]、特開2014−000782号公報の段落[0029]〜[0040]等に記載された構成を適宜参照及び採用することができる。
(バリア層の厚さ)
バリア層の厚さは、5〜1000nmの範囲内であることが好ましく、10〜800nmの範囲内であることより好ましく、100〜500nmの範囲内であることが特に好ましい。バリア層の厚さが範囲内であれば、酸素ガスバリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性に優れ、屈曲された状態でも良好なガスバリア性が得られる。さらに、バリア層の厚さの合計値が範囲内であると、上記効果に加えて所望の平面性を実現することができる。
(バリア層の形成方法)
上記要件(1)及び(2)を同時に満たすバリア層を形成する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、例えば、国際公開第2012/046767号の段落[0049]〜[0069]等に記載の方法を参照することができる。
また、緻密に元素分布が制御させたバリア層を形成することができる観点からは、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成する方法が好ましい。
より詳しくは、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、基材を一対の成膜ローラーに巻き回し、この一対の成膜ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電する、プラズマ化学気相成長法でバリア層を形成することが好ましい。また、このように一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら放電する際には、一対の成膜ローラー間の極性を交互に反転させることが好ましい。このように、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を巻き回して、かかる一対の成膜ローラー間にプラズマ放電することにより、基材と成膜ローラーとの間の距離が変化し、プラズマ強度が異なることによって、炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化するようなバリア層を形成することが可能となる。
また、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、かつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基材の表面部分も同時に成膜することが可能となる。すなわち、成膜効率を倍にでき、且つ、同じ構造の膜が成膜されるため、炭素分布曲線の極値を倍増させることが可能となり、効率よく上記要件(1)及び(2)を同時に満たすバリア層を形成することが可能となる。
(ローラー間放電プラズマCVD装置)
上述のプラズマCVD法によりバリア層を製造する際に用いることができる成膜装置としては特に制限されないが、例えば、図6に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながら、ロールトゥロール方式でバリア層を製造することができる。以下、図6を参照しながら、バリア層の製造方法についてより詳細に説明する。なお、図6は、バリア層の製造において好適に利用することができる磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図6に示す磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、単にプラズマCVD装置ともいう。)50は、主には、繰り出しローラー51と、搬送ローラー52、搬送ローラー54、搬送ローラー55及び搬送ローラー57と、成膜ローラー53及び成膜ローラー56と、成膜ガス供給管59と、プラズマ発生用電源63と、成膜ローラー53,56の内部に設置された磁場発生装置61及び磁場発生装置62と、巻取りローラー58とを備えている。また、このようなプラズマCVD製造装置においては、少なくとも成膜ローラー53,56と、成膜ガス供給管59と、プラズマ発生用電源63と、磁場発生装置61,62とが、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。また、図6においては、成膜ローラー53,56にプラズマ発生用電源63に接続された電極ドラムが設置される。更に、このようなプラズマCVD製造装置において、真空チャンバー(不図示)は、真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー53と成膜ローラー56)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源63に接続されている。対の成膜ローラーに、プラズマ発生用電源63より電力を供給することにより、成膜ローラー53と成膜ローラー56との間の空間に放電し、プラズマを発生させることができる。このようなプラズマCVD製造装置においては、一対の成膜ローラー53,56は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー53,56を配置することにより、成膜レートを倍にでき、尚かつ、同じ構造の膜を成膜できる。
また、成膜ローラー53及び成膜ローラー56の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置61及び磁場発生装置62がそれぞれ設けられている。
さらに、成膜ローラー53及び成膜ローラー56としては、適宜公知のローラーを用いることができ、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このようなプラズマCVD製造装置に用いる繰り出しローラー51及び搬送ローラー52,54,55,57としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー58も、バリア層を形成した基材60を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
成膜ガス供給管59としては、原料ガス及び酸素ガスを所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源63としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源63としては、効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源63としては、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61,62としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
図6に示すプラズマCVD装置50を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバー内の圧力(減圧度)、成膜ローラーの直径、樹脂基材の搬送速度等を適宜調整することにより、所望のバリア層を製造することができる。
図6に示すプラズマCVD装置50において、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給し、一対の成膜ローラー53,56間に、磁場を発生させながらプラズマ放電を行うことにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー53が保持する基材60の表面上、及び、成膜ローラー56が保持する基材60の表面上に、バリア層が形成される。なお、このような成膜に際しては、基材60が繰り出しローラー51、搬送ローラー52,54,55,57、巻取りローラー58、及び、成膜ローラー53、56等で搬送されることにより、ロールトゥロール方式の連続的な成膜プロセスでバリア層を形成することができる。
(原料ガス)
プラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用い、その成膜ガス中の酸素ガスの含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
バリア層の作製に用いる成膜ガスを構成する原料ガスとしては、少なくともケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。バリア層の作製に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取り扱い及び得られるバリア層のガスバリア性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、成膜ガスは、原料ガスの他に反応ガスとして、酸素ガスを含有することができる。酸素ガスは、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスである。成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
このような成膜ガスが、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを含有する場合、原料ガスと酸素ガスの比率としては、原料ガスと酸素ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる酸素ガスの量の比率よりも、酸素ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。これについては、例えば、国際公開第2012/046767号等の記載を参照することができる。
(真空度)
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜100Paの範囲とすることが好ましい。
(ローラー成膜)
図6に示すプラズマCVD装置50を用いたプラズマCVD法においては、成膜ローラー53,56間に放電するために、プラズマ発生用電源63に接続された電極ドラムに印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。電極ドラムに印加する電力としては、例えば、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内であるため、成膜時の基材表面温度の上昇による、樹脂基材の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生もない。
プラズマCVD装置50において、基材60の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が範囲内であれば、樹脂基材の熱に起因する皺も発生し難く、形成されるバリア層の厚さも十分に制御可能となる。
[バリア層;湿式塗布]
ケイ素化合物を含む塗布液を用いて湿式塗布法によって形成されたバリア層としては、ポリシラザン化合物を含む塗布液を公知の湿式塗布法により塗布したのち、塗膜に改質処理を行って形成したバリア層が挙げられる。
(ポリシラザン化合物)
バリア層の形成に用いるポリシラザン化合物とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーで、酸窒化ケイ素の前駆体となるポリマーであり、下記一般式(1)の構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2018144283
式中、R、R、及びRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。
得られるバリア層の膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンを用いることが好ましい。その他、ポリシラザンの詳細については、特開2013−255910号公報の段落[0024]〜[0040]、特開2013−188942号公報の段落[0037]〜[0043]、特開2013−151123号公報の段落[0014]〜[0021]、特開2013−052569号公報の段落[0033]〜[0045]、特開2013−129557号公報の段落[0062]〜[0075]、特開2013−226758号公報の段落[0037]〜[0064]等を参照することができる。
ポリシラザンは、有機溶媒に溶解した溶液の状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20等が挙げられる。
(ポリシラザン化合物を用いたバリア層の形成方法)
ポリシラザン化合物を含有する溶液を用いた塗膜は、ポリシラザン化合物と添加元素化合物を含有する溶液を、基材の上等に塗布して形成することができる。塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な方法を採用できる。具体的には例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させることが好ましい。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去することができる。塗膜の形成方法については、特開2014−151571号公報の段落[0058]〜[0064]、特開2011−183773号公報の段落[0052]〜[0056]等を参照することができる。
(改質処理)
改質処理とは、ポリシラザン化合物の酸化ケイ素または酸化窒化珪素への転化反応をいう。改質処理は、ポリシラザン化合物の転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。改質処理は、低温で転化反応が可能な、プラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。プラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応は、従来公知の方法を用いることができる。改質処理は、ポリシラザン化合物含有液の塗膜に、波長200nm以下の真空紫外線(VUV)を照射して行うことが好ましい。
バリア層の厚さは、1〜500nmの範囲が好ましい、より好ましくは10〜300nmの範囲であるが、バリア層全体が改質層であってもよく、改質処理された改質層の厚さが1〜50nm、好ましくは1〜10nmであってもよい。
(真空紫外線光処理)
ポリシラザン化合物を含む塗膜にVUVを照射する工程では、ポリシラザンの少なくとも一部が酸窒化ケイ素へと改質されることが好ましい。VUV照射工程において、ポリシラザン化合物を含む塗膜が受ける塗膜面でのVUVの照度は30〜200mW/cmの範囲であることが好ましく、50〜160mW/cmの範囲であることがより好ましい。VUVの照度を30mW/cm以上とすることで、改質効率を十分に奏することができ、200mW/cm以下では、塗膜への損傷発生率を極めて抑え、基材への損傷も低減させることができる。
ポリシラザン化合物を含む塗膜の表面におけるVUVの照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cmの範囲であることが好ましく、500〜5000mJ/cmの範囲であることがより好ましい。VUVの照射エネルギー量を200mJ/cm以上とすることで、ポリシラザンの改質が十分に行われる。また、10000mJ/cm以下とすることにより、過剰改質を抑えてバリア層のクラックや、基材の熱変形の発生を極力抑えることができる。
真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
真空紫外線は、酸素による吸収があるため紫外線照射工程での効率が低下しやすいことから、VUVの照射は、可能な限り酸素濃度の低い状態で行うことが好ましい。すなわち、VUV照射時の酸素濃度は、10〜10000ppmの範囲とすることが好ましく、より好ましくは50〜5000ppmの範囲、さらに好ましく80〜4500ppmの範囲、最も好ましくは100〜1000ppmの範囲である。
また、VUV明射時に用いられる、照射雰囲気を満たすガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
これらの改質処理は、例えば、特開2012−086394号公報の段落[0055]〜[0091]、特開2012−006154号公報の段落[0049]〜[0085]、特開2011−251460号公報の段落[0046]〜[0074]等に記載の内容を参照することができる。
(中間層)
バリア層を積層する場合には、各バリア層の間に中間層を設けることが好ましい。中間層としては、ポリシロキサン改質層を適用することが好ましい。ポリシロキサン改質層は、ポリシロキサンを含有した塗布液を湿式塗布法によりバリア層上に塗布して乾燥した後、その乾燥した塗膜に真空紫外光を照射することによって形成することができる。
中間層形成用の塗布液の塗布方法としては、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、スプレー法などが挙げられる。真空紫外光としては、上述したポリシラザン化合物の改質処理に用いたVUV照射を用いることが好ましい。
中間層を形成するために用いる塗布液は、主には、ポリシロキサン及び有機溶媒を含有する。中間層の形成に適用可能なポリシロキサンとしては、特に制限はないが、下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサンが特に好ましい。
Figure 2018144283
上記一般式(2)において、R〜Rは、各々同一又は異なる炭素数1〜8の有機基を表す。ここで、R〜Rの少なくとも1つの基は、アルコキシ基及び水酸基のいずれかを含む。mは1以上の整数である。
上記一般式(2)において、mが1以上で、かつ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1000〜20000であるオルガノポリシロキサンが特に好ましい。オルガノポリシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量が、1000以上であれば、形成する中間層に亀裂が生じ難く、ガスバリア性を維持することができ、20000以下であれば、形成される中間層の硬化が充分となり、そのため得られる中間層として十分な硬度が得られる。
中間層の乾燥膜厚としては、100nm〜10μmの範囲が好ましく、50nm〜1μmであることがより好ましい。中間層の膜厚が100nm以上であれば、十分なガスバリア性を確保することができる。また、中間層の膜厚が10μm以下であれば、中間層形成時に安定した塗布性を得ることができる。
その他、ポリシロキサンの詳細については、特開2013−151123号公報の段落[0028]〜[0032]、特開2013−086501号公報の段落[0050]〜[0064]、特開2013−059927号公報の段落[0063]〜[0081]、特開2013−226673号公報の段落[0119]〜[0139]等を参照することができる。
[バリア層;遷移金属含有層]
また、バリア層としては、遷移金属(M2)含有層と、遷移金属以外の無機元素(M1)含有層との積層形態であることが好ましい。無機材料(M1)含有層としては、上記ケイ素化合物を含む塗布液を用いて湿式塗布法によって形成されたバリア層が好ましい。
遷移金属含有層と遷移金属以外の無機元素含有層との積層形態からなるバリア層は、少なくとも厚さ方向において、無機元素M1及び遷移金属M2を含有する混合領域を有し、混合領域における無機元素M1に対する遷移金属M2の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有することが好ましい。
さらに、上記バリア層において遷移金属含有層は、第3族〜第11族の遷移金属を主成分aとして含有するA領域と、第12族〜第14族の無機元素を主成分bとして含有するB領域との間に、主成分a及び主成分bに由来する化合物を含有する混合領域を有することが好ましい。
無機元素M1及び遷移金属M2を含有する混合領域では、遷移金属M2と無機元素M1に加えて酸素が含有されていることが好ましい。また、この混合領域は、遷移金属の酸化物と無機元素の酸化物との混合物、又は、遷移金属M2と無機元素M1との複合酸化物の少なくとも一方を含有することが好ましく、遷移金属M2と無機元素M1との複合酸化物を含有することがより好ましい。
(遷移金属(M2)含有層:A領域)
遷移金属(M2)含有層におけるA領域とは、金属として遷移金属M2を主成分aとして含有する領域をいう。
遷移金属M2としては、特に制限されず、任意の遷移金属を単独で又は組み合わせて用いることができる。ここで、遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuなどが挙げられる。
なかでも、良好なバリア性が得られる遷移金属M2としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらのなかでも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、バリア層に含有される無機元素M1に対する結合が生じやすい観点から、好ましく用いることができる。
特に、遷移金属M2が第5族元素(特に、Nb)であって、詳細は後述する無機元素M1がSiであると、著しいバリア性の向上効果を得ることができ、特に好ましい組み合わせである。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属M2は、透明性が良好な化合物が得られるNb、Taが特に好ましい。
A領域の厚さとしては、バリア性と光学特性との両立の観点から、2〜50nmの範囲であることが好ましく、4〜25nmの範囲であることがより好ましく、5〜15nmの範囲であることがさらに好ましい。
(無機元素(M1)含有層:B領域)
無機元素(M1)含有層におけるB領域とは、遷移金属以外の無機材料を主成分bとして含有する領域をいう。無機元素M1としては、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される無機元素が好ましい。無機元素M1としては、特に制限されず、第12族〜第14族の任意の金属を単独で又は組み合わせて用いることができるが、例えば、Si、Al、Zn、In及びSnなどが挙げられる。なかでも、無機元素M1として、Si、Sn又はZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
B領域の厚さとしては、バリア性と生産性との両立の観点から、10〜1000nmの範囲であることが好ましく、20〜500nmの範囲であることがより好ましく、50〜300nmの範囲であることがさらに好ましい。
(混合領域)
混合領域は、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される無機元素M1、及び、第3族元素から第11族の金属から選択される遷移金属M2が含有されている領域であって、無機元素M1に対する無機元素M1の原子数比の値(M2/M1)が、0.02〜49の範囲内にある混合領域を、厚さ方向に連続して5nm以上有する領域である。ここで、混合領域は、構成成分の化学組成が相互に異なる複数の領域として形成されていてもよく、また、構成成分の化学組成が連続して変化している領域として形成されていてもよい。
(酸素欠損組成)
上記混合領域において、一部の組成は、酸素が欠損した非化学量論的組成(酸素欠損組成)であることが好ましい。酸素欠損組成とは、混合領域の組成を下記化学組成式(1)で表したとき、下記関係式(2)で規定する条件を満たすことをいう。また、混合領域における酸素欠損程度を表す酸素欠損度指標としては、混合領域における[(2y+3z)/(a+bx)]を算出して得られる値の最小値を用いる。
化学組成式(1):(M1)(M2)
関係式(2):(2y+3z)/(a+bx)<1.0
なお、下記組成式(1)及び関係式(2)において、M1は無機元素、M2は遷移金属、Oは酸素、Nは窒素を表す。x、y、zは、それぞれ化学量論係数であり、aはM1の最大価数、bはM2の最大価数を表す。また、以降の説明では、特別の区別が必要ない場合、上記化学組成式(1)で表す組成を、単に複合領域の組成と言う。
上述したように、無機元素M1と遷移金属M2との複合領域の組成は、式(1)である(M1)(M2)で示される。この組成からも明らかなように、上記複合領域の組成は、一部窒化物の構造を含んでいてもよく、窒化物の構造を含んでいる方がバリア性の観点から好ましい。
ここでは、無機元素M1の最大価数をa、遷移金属M2の最大価数をb、Oの価数を2、Nの価数を3とする。そして、上記複合領域の組成(一部が窒化物となっていてもよい)が化学量論的組成になっている場合は、[(2y+3z)/(a+bx)=1.0]となる。この式は、無機元素M1及び遷移金属M2の結合手の合計と、O、Nの結合手の合計とが同数であることを意味し、この場合、無機元素M1及び遷移金属M2ともに、O及びNのいずれか一方と結合していることになる。なお、無機元素M1として2種以上が併用される場合や、遷移金属M2として2種以上が併用される場合には、各元素の最大価数を各元素の存在比率によって加重平均することにより算出される複合価数を、それぞれの「最大価数」のa及びbの値として採用する。
一方、混合領域において、関係式(2)で示す[(2y+3z)/(a+bx)<1.0]となる場合には、無機元素M1及び遷移金属M2の結合手の合計に対して、O、Nの結合手の合計が不足していることを意味し、この様な状態が上記の「酸素欠損」である。酸素欠損状態においては、無機元素M1及び遷移金属M2の余った結合手は互いに結合する可能性を有しており、無機元素M1や遷移金属M2の金属同士が直接結合すると、金属の間にOやNを介して結合した場合よりも緻密で高密度な構造が形成され、その結果として、バリア性が向上すると考えられる。
また、混合領域は、xの値が、[0.02≦x≦49(0<y、0≦z)]を満たす領域である。これは、遷移金属M2/無機元素M1の原子数比率の値が0.02〜49の範囲内にあり、厚さが5nm以上である領域と定義する、としたことと同一の定義である。
この領域では、無機元素M1及び遷移金属M2の双方が金属同士の直接結合に関与することから、この条件を満たす混合領域が所定値以上(5nm)の厚さで存在することで、バリア性の向上に寄与すると考えられる。なお、無機元素M1及び遷移金属M2の存在比率が近いほどバリア性の向上に寄与すると考えられることから、混合領域は、[0.1≦x≦10]を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが好ましく、[0.2≦x≦5]を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことがより好ましく、[0.3≦x≦4]を満たす領域を5nm以上の厚さで含むことが更に好ましい。
ここで、上述した混合領域の範囲内に、関係式(2)で示す[(2y+3z)/(a+bx)<1.0]の関係を満たす領域が存在すれば、バリア性の向上効果が発揮されることが確認されるが、混合領域は、その組成の少なくとも一部が[(2y+3z)/(a+bx)≦0.9]を満たすことが好ましく、[(2y+3z)/(a+bx)≦0.85]を満たすことがより好ましく、[(2y+3z)/(a+bx)≦0.8]を満たすことがさらに好ましい。ここで、混合領域における[(2y+3z)/(a+bx)]の値が小さくなるほど、バリア性の向上効果は高くなるが、可視光の吸収が大きくなる。従って、透明性が望まれる用途に使用するバリア層の場合には、[0.2≦(2y+3z)/(a+bx)]であることが好ましく、[0.3≦(2y+3z)/(a+bx)]であることがより好ましく、[0.4≦(2y+3z)/(a+bx)]であることがさらに好ましい。
なお、良好なバリア性が得られる混合領域の厚さは、後述するXPS分析法におけるSiO換算のスパッタ厚さとして、5nm以上であり、この厚さは、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。混合領域の厚さは、バリア性の観点からは特に上限はないが、光学特性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましい。
(XPSによる組成分析と混合領域の厚さの測定)
バリア層の混合領域や、A領域及びB領域における組成分布や各領域の厚さ等は、上述のX線光電分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、略称:XPS)を用いて測定することにより求めることができる。
[保護層]
機能性層22としては、バリア層等の上部(最表面部)に、有機化合物を含む保護層を設けてもよい。保護層に用いられる有機化合物としては、有機モノマー、オリゴマー、ポリマー等の有機樹脂、有機基を有するシロキサンやシルセスキオキサンのモノマー、オリゴマー、ポリマー等を用いた有機無機複合樹脂層を好ましく用いることができる。さらに、上記した中間層としてのポリシロキサン改質層を、保護層として用いることが特に好ましい。
保護層は、有機樹脂や無機材料に、必要に応じて他の成分を希釈溶剤に配合して塗布液を調製し、この塗布液を基材表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することが好ましい。
[平滑層]
機能性フィルム20は、基材21と機能性層22との間に平滑層(下地層、プライマー層)を有していてもよい。平滑層は突起等が存在する基材21の粗面を平坦化するために設けられる。このような平滑層を形成するための材料は限定されないが、硬化性樹脂を含むことが好ましい。
硬化性樹脂としては特に限定されず、紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂や、加熱により硬化する熱硬化性樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂は、単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂の材料としては、従来公知の材料を用いることができる。
平滑層の形成方法は、特に制限はないが、硬化性材料を含む塗布液をスピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法、グラビア印刷法等のウエットコーティング法、または蒸着法等のドライコーティング法により塗布し塗膜を形成した後、可視光線、赤外線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等の活性エネルギー線の照射、加熱等により、塗膜を硬化させて形成する方法が好ましい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001年で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いた極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が数十μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する粗さである。平滑層の厚さとしては、特に制限されないが、0.1〜10μmの範囲が好ましい。
平滑層の詳細については、特開2014−141056号公報の段落[0125]〜[0143]、特開2014−141055号公報の段落[0138]〜[0150]、特開2013−226757号公報の段落[0131]〜[0143]等を参照して採用することができる。
[ブリードアウト層]
機能性フィルム20は、ブリードアウト防止層を有していてもよい。ブリードアウト防止層は、樹脂フィルム上に上記平滑層を形成した場合に、加熱によって未反応のオリゴマー等が樹脂フィルムの表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材21の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に上記した平滑層と同じ構成を適用することができる。
[アンカーコート層]
機能性フィルム20は、基材21と機能性層22との接着性(密着性)の向上を目的として、基材21上にアンカーコート層を有していてもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレン・ビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及び、アルキルチタネート等を、1種又は2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。具体的には、シロキサン系UV硬化性ポリマー溶液として、信越化学工業社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液を用いることができる。
上記のアンカーコート層は、アンカーコート剤をロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により、基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することにより形成することができる。
[デシカント層]
機能性フィルム20は、デシカント層(水分吸着層)を有してもよい。デシカント層に用いられる材料としては、例えば、酸化カルシウムや有機金属酸化物等が挙げられる。酸化カルシウムは、バインダー樹脂等に分散させて用いることが好ましく、市販品としては、例えば、サエスゲッター社のAqvaDryシリーズ等が好ましい。また、有機金属酸化物としては、双葉電子工業社製のOleDry(登録商標)シリーズ等を用いることができる。
[第1保護フィルム]
第1保護フィルム30は、第1保護基材31と、第1保護基材31を機能性フィルム20の基材21の裏面側に貼り合わせるための第1粘着層32とを備える。第1保護フィルム30は、第1粘着層32において基材21からの剥離が可能であれば、第1保護基材31及び第1粘着層32に用いられる材料は特に限定されない。
また、第1保護フィルムとしては、自己粘着性の共押出延伸多層フィルムを用いることもできる。このような自己粘着性の共押出延伸多層フィルムとしては、例えば、フタムラ化学社製の自己粘着性OPPフィルムFSA−010M、FSA−020M、FSA−050M、FSA−100M、FSA−150M、FSA−300M、FSA−010B等を用いることができる。
[第1保護基材]
第1保護基材31としては、上述の機能性フィルム20の基材21と同じ樹脂フィルムを使用することができる。耐熱性や、光学的な特性から、第1保護基材31としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることが好ましい。
第1保護基材31は、樹脂フィルムが単独、又は、複数用いられていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。第1保護基材31は、枚葉形状及びロール形状に限定されないが、生産性の観点からロールトゥロール方式でも対応できるロール形状が好ましい。
第1保護基材31の厚さは、特に制限されないが、5〜500μm程度が好ましく、25μm〜150μmがより好ましい第1保護基材31の厚が5μm以上であれば、取り扱い易い十分な厚さとなる。また、第1保護基材31の厚が500μm以下であれば、十分な柔軟性を有し、搬送性やロールへの密着性が十分に得られる。
[第1粘着層]
第1粘着層32は、粘着剤を含んで構成される。第1粘着層32に用いられる粘着剤は、機能性フィルム積層体10に要求される粘着力を得ることができれば特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。第1粘着層32に使用する粘着剤としては、感圧粘着剤を用いることが好ましい。感圧粘着剤は、凝集力と弾性を有し、長時間にわたり安定した粘着性を維持できる。また、粘着層を形成する際に、熱や有機溶媒等の要件を必要とせず、圧力を加えるだけで第1保護フィルム30を機能性フィルム20に貼合することができる。
第1粘着層32を形成するための粘着剤としては、透明性に優れる材料が好ましい。第1粘着層32を形成するための粘着剤としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、及び、シリコン系樹脂等を含む粘着剤を挙げることができる。粘着剤の形態としては、例えば、溶剤型、エマルション型、及び、ホットメルト型等を用いることができる。
第1粘着層32を形成するための粘着剤としては、アクリル系粘着剤が、耐久性、透明性、粘着特性の調整の容易さなどの面から好ましい。アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに極性単量体成分を共重合したアクリル系ポリマーを用いたものである。上記アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。具体的には、東洋インキ社製BPS5978を使用できる。
アクリル系粘着剤の硬化剤としては、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アリジリン系硬化剤が利用できる。イソシアネート系硬化剤としては、長期保存後も安定した粘着力を得るため、及び、より硬い第1粘着層32を形成するために、トノレイレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のタイプを用いることが好ましい。具体的には、東洋インキ社製BXX5134を使用することができる。
硬化剤の添加量は、粘着剤に対して3質量%〜9質量%であることが好ましく、5質量%〜7質量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、粘着剤成分を十分に硬化させることができ、十分な接着力も確保することができるとともに、第1保護フィルム30を機能性フィルム20から剥離した後に、機能性フィルム20側に第1粘着層32が残存しにくい。
第1粘着層32を構成する粘着剤の重量平均分子量は、40万以上140万以下であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲内の値であれば、粘着力が過度になることが少なく、必要な範囲で粘着力を得ることができる。さらに、上記の重量平均分子量の範囲であれば、剥離後の機能性フィルム20側への第1粘着層32の残存を防止することができる。さらに、上記範囲の重量平均分子量であれば、プラズマCVD法等の熱やエネルギーがかかる方法を用いて機能性層22を形成する際に、粘着剤の転写や剥離が発生しにくくなり、第1保護フィルム30の剥離を抑制することができる。
また、粘着剤に含まれる上記樹脂類の他に、粘着層の物性向上の観点から、各種添加剤を用いることができる。例えば、ロジン等の天然樹脂、変性ロジン、ロジンおよび変性ロジンの誘導体、ポリテルペン系樹脂、テルペン変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂、アルキル−フェノール−アセチレン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体をはじめとする粘着付与剤、老化防止剤、安定剤、及び軟化剤等を必要に応じて用いることができる。これらは必要に応じて2種以上用いることもできる。また、耐光性を上げるために、粘着剤にベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系等の有機系紫外線吸収剤を添加することもできる。
第1粘着層32の厚さは、第1保護フィルム30の取扱い易さから10μm以上50μm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、第1保護フィルム30と機能性フィルム20とに十分な密着力を得ることができる。さらに、第1保護フィルム30を剥離する際にも、機能性フィルム20に対して過度な力をかける必要がなく、機能性層22の損傷を抑制することができる。
第1粘着層32を第1保護基材31の表面に形成(塗工)する方法は特に限定されない。例えば、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等を用いて、上記粘着剤を第1保護基材31上に塗布し、乾燥又は硬化することにより、第1粘着層32を形成することができる。
[第2保護フィルム]
第2保護フィルム35としては、上述の第1保護フィルム30と同様の構成とすることができる。また、第2保護フィルム35としては、市販の保護フィルムを用いることもできる。機能性フィルム積層体10に使用する第1保護フィルム30と第2保護フィルム35とは、それぞれ同じもよく、異なっていてもよい。
[第2保護基材]
第2保護基材36としては、上述の基材21や第1保護基材31と同様の樹脂フィルムを用いることができる。
[第2粘着層]
第2粘着層37は、上述の第1粘着層32と同様の構成が適用できる。第2粘着層37に用いられる粘着剤は、機能性フィルム20に対して、要求される粘着力を得ることができ、剥離可能であれば特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。
〈2.機能性フィルム積層体の製造方法(第2実施形態)〉
[機能性フィルム積層体の構成]
機能性フィルム積層体の製造方法の具体的な実施の形態(第2実施形態)について説明する。
図7に、第1実施形態の機能性フィルム積層体の製造方法で製造される、機能性フィルム積層体の構成を示す。図7に示す機能性フィルム積層体70は、機能性フィルム80と、第1保護フィルム90とを備える。
図7に示す機能性フィルム積層体70は、機能性フィルム80と、第1保護フィルム90とから構成される。具体的には、機能性フィルム80は、基材81と機能性層82とを有する。機能性層82は、基材81の一方の面(第1面、又は、表面)側を覆うように形成されている。また、第1保護フィルム90は、第1粘着層92と第1保護基材91とから構成される。第1粘着層92は、第1保護基材91の一方の面(第1面、又は、表面)側を覆うように形成されている。そして、機能性フィルム80の基材81の他方の面(第2面、又は、裏面)側に、第1粘着層92を介して第1保護基材91が貼合されている。すなわち、図7に示す機能性フィルム積層体70は、一方の面(表面)側に機能性層82が露出し、他方の面(裏面)側に第1保護基材91の第2面が露出している。
また、第1保護フィルム90は、機能性フィルム80の基材81から剥離可能なように貼合されている。このため、機能性フィルム積層体70は、機能性フィルム80の基材81と、第1保護フィルム90の第1粘着層92との間において、第1保護フィルム90と機能性フィルム80との剥離が可能である。
[製造方法]
次に、上述の構成の機能性フィルム積層体70の製造方法について説明する。機能性フィルム積層体70の製造方法は、基材81の第2面側に剥離可能な第2保護フィルムを貼合する工程と、基材81の第1面側に機能性層82を形成して機能性フィルム80を作製する工程と、機能性フィルム80から第2保護フィルムを剥離する工程と、機能性フィルム80の基材81の第2面側に第1保護フィルム90を貼合する工程とを有する。そして、機能性層82を形成して機能性フィルム80を作製する工程後から、機能性フィルム積層体70を巻き取る工程までの間に、機能性フィルム積層体70に発生する反り(カール)を調整する。
まず、図8に示すように、基材81に第2保護フィルム95を貼合する。機能性フィルム積層体70の製造方法において、基材21に貼合する剥離可能な第2保護フィルム95は、第2保護基材96と第2粘着層97とから構成される。第2粘着層97は、第2保護基材96の一方の面(第1面、又は、表面)側を覆うように形成されている。これにより、基材81と第2保護基材96とが第2粘着層97で貼合された基材積層体(第1積層体)85を形成する。
次に、図9に示すように、基材積層体85の基材81の表面側に機能性層82を形成する。これにより、基材81と機能性層82とからなる機能性フィルム80を作製する。また、このとき機能性フィルム80と第2保護フィルム95とからなる、第2積層体86が作製される。
次に、機能性層82を形成した後の第2積層体86において、機能性フィルム80から第2保護フィルム95を剥離する。このとき、図10に示すように、機能性フィルム80が単独で存在し、基材81の裏面と機能性層82の表面とが露出した状態となる。
次に、図11に示すように、第2保護フィルム95を剥離した基材81の第2面側に、第1粘着層92を介して第1保護基材91を貼合する。これにより、基材81に第1保護フィルム90を貼合して、機能性フィルム80と、第1保護フィルム90とからなる機能性フィルム積層体70を作製する。
上記機能性フィルム積層体70の製造方法においては、基材81と第2保護基材とが積層された基材積層体(第1積層体)85や、基材81と第1保護基材91とが積層された第2積層体86のような、複数の層が積層された構成が形成される。このため、これらの複数の基材を有する積層体では、各基材の熱的特性や機械的特性の差によって、積層体に反りが発生する。例えば、機能性層82を形成する工程においては、基材81と第2保護基材96とが第2粘着層97で貼合された基材積層体(第1積層体)85が、成膜時の高温に曝されるため、基材81と第2保護基材96との熱的特性の差により、機能性層82を作製した第2積層体86に反りが発生する。
また、機能性フィルム80から第2保護フィルム95を剥離する際や、基材81に第1保護フィルム90を貼合する際には、基材81、第2保護基材96、及び、第1保護基材91に、それぞれ所定の張力を印加した状態で行う。このため、各基材を構成する材料の機械的物性に対して、剥離時や貼合時に印加する張力の均衡(釣り合い、バランス)が悪化すると、剥離後又は貼合後に反りが発生する。
従って、機能性フィルム積層体70の製造工程中において、各積層体に発生する反りの調整を行うことにより、反りが抑制された機能性フィルム積層体70を製造することができる。反りの調整は、成膜時の熱により反りが発生しやすい機能性層82の形成よりも後に行う。また、機能性フィルム80に第1保護フィルム90を貼合して形成した機能性フィルム積層体70を、コア等に巻き取る前に行う。機能性層82の形成において熱による反りが発生するため、機能性層82の成膜前(例えば、第2保護フィルムの貼合時)に反りを調整しても、機能性フィルム積層体70の反り抑制に効果が小さい。また、コア等に巻き取る前までに反りが調整されていれば、反りが抑制された機能性フィルム積層体70を作製することができる。
機能性フィルム積層体70に発生する反りを調整する方法としては、例えば、機能性フィルム積層体70を製造する工程において、上記積層体のいずれかを加熱する方法を適用することができる。機能性フィルム積層体70の加熱方法としては、例えば、反りが発生している機能性フィルム積層体70に対して、特定の温度域を通過させる方法や、機能性フィルム積層体70の一方の面側から加熱気体を吹き付ける等の方法を適用することができる。
また、機能性フィルム80の機能性層82上に第1保護フィルム90を貼合する工程において、貼合時の張力を調整することによって、機能性フィルム積層体70に発生する反りを調整する方法も適用できる。機能性フィルム80と第1保護フィルム90との貼合は、機能性フィルム80と第1保護フィルム90とにそれぞれ所定の張力を印加した状態で行う。このため、貼合時に機能性フィルム80と第1保護フィルム90とに印加する張力をそれぞれ調整し、機能性フィルム80と第1保護フィルム90との張力のバランスを取ることにより、機能性フィルム積層体10の反りを調整することができる。
なお、機能性フィルム積層体70の製造方法としては、生産性の高さからロールトゥロール方式を用いて、基材81と第2保護フィルム95との貼合、第2保護フィルム95の剥離、機能性層82の形成、及び、第1保護フィルム90の貼合を行うことが好ましい。さらに、反りの調整もロールトゥロール方式の製造工程中で行うことが好ましい。
[張力による反り調整方法]
基材同士を貼合する際に、積層体に発生する反りを各基材に印加する張力によって調整する、機能性フィルム積層体70の製造方法について説明する。なお、各基材に印加する張力によって積層体に発生する反りを調整する方法においては、上述の第1実施形態と同様の方法で行うことができ、従来公知の貼合装置を用いることができる。
各基材に印加する張力によって積層体に発生する反りを調整する方法では、第1保護フィルム90を貼合する際に、機能性フィルム80に発生する反りが小さくなるように、機能性フィルム80の張力と第1保護フィルム90の張力とを調整する。例えば、第1保護フィルム90を貼合する際に、機能性フィルム80に100〜300Nの張力を印加し、第1保護フィルム90に100〜300Nの張力を印加する。これにより、機能性フィルム80に印加される張力と第1保護フィルム90とに印加される張力との差により、機能性フィルム積層体70の反りを調整することができる。このように、機能性フィルム80と第1保護フィルム90との貼合において反りを調整した後、機能性フィルム積層体70をコアに巻き取ることにより、反りが抑制された機能性フィルム積層体70を作製することができる。
[加熱による反り調整方法]
基材同士を貼合した後に、積層体に発生する反りを加熱して調整する、機能性フィルム積層体70の製造方法について説明する。積層体に発生する反りを加熱して調整する方法は、上述の第1実施形態と同様の方法で行うことができる。例えば、従来公知の貼合装置に、機能性フィルム積層体10の加熱装置を組み合わせて用いることができる。機能性フィルム積層体10の加熱は、いずれの主面側から行ってもよく、両面に行ってもよい。好ましくは、機能性フィルム積層体10の基材側から加熱することが好ましい。
機能性フィルム積層体70の加熱は、例えば、加熱処理中の機能性フィルム80の基材81の温度が、基材81のガラス転移温度(Tg)以上Tg+40℃以下となるように行う。好ましくは、加熱処理中の基材81の温度が、Tg+5℃以上Tg+35℃以下、より好ましくは、Tg+10℃以上Tg+30℃以下となるように行う。このように、加熱処理によって反りの調整した後、機能性フィルム積層体70をコアに巻き取ることで、反りが抑制された機能性フィルム積層体70を作製することができる。
[機能性フィルム積層体の構成]
機能性フィルム積層体70を構成する機能性フィルム80、及び、第1保護フィルム90、並びに、機能性フィルム積層体70の製造に用いる第2保護フィルム95は、上述の第1実施形態の機能性フィルム積層体に適用される、機能性フィルム、第1保護フィルム、及び、第2保護フィルムと同様の構成を適用することができる。
実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〈試料101の機能性フィルム積層体の作製〉
下記の方法で試料101の機能性フィルム積層体を作製した。
[基材積層体の作製]
機能性フィルムの基材として、厚さ50μmのポリシクロオレフィン(COP)基材(日本ゼオン社製、ゼオノア(登録商標)ZF14)を準備した。そして、このCOP基材の第2面側にアンチブロック機能を有するクリアハードコート層(BC層)を形成し、第1面側にクリアハードコート層(CHC層)を形成した。さらに、BC層を形成した基材の第2面側に、第1保護フィルムとして、藤森工業社製の光学用表面保護フィルム「マスタックTFB−X242」(ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に粘着剤が付与された保護フィルム)を貼合した。これにより、基材と第1保護フィルムとからなる基材積層体(第1積層体)を作製した。
(クリアハードコート層(BC層)の形成;第2面)
まず、基材の第2面に、コロナ処理を行った。コロナ処理は、コロナ放電処理装置(AGI−080、春日電機社)の放電用電極と基材との間隙を1mmに設定し、処理出力600mW/cmの条件で10秒間行った。
次に、基材のコロナ処理を施した面側に、UV硬化型樹脂(アイカ工業社製、品番:Z731)を乾燥層厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、空気下において高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行い、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層(BC層)を形成した。
(クリアハードコート層(CHC層)の形成;第1面)
上述の第2面側と同様に、基材の第1面側にクリアハードコート層を形成した。すなわち、基材の第1面側の表面にコロナ処理を行った後、この面に、UV硬化型樹脂(アイカ工業社製、品番:Z731−1)を乾燥層厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、空気下において高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行い、厚さ2μmのクリアハードコート層(CHC層)を形成した。
[機能性層の作製(機能性フィルム、第2積層体の作製)]
上記基材積層体の基材の表面側に機能性層としてバリア層を作製し、機能性フィルムを作製した。また、これにより機能性フィルムと第1保護フィルムとからなる第2積層体を作製した。バリア層の作製では、図6に示す製造装置を用いたプラズマCVD法により膜厚100nmのバリア層を作製した。バリア層の作製は、図3に示す製造装置を用いたプラズマCVD法により膜厚100nmの第1バリア層を作製した後、ポリシラザン含有液を乾燥膜厚が250nmとなるように塗布し、塗膜に改質エネルギー6.0J/cmの改質処理を行ってポリシラザン改質層からなる第2バリア層を作製した。
(バリア層;プラズマCVD条件)
原料ガス(HMDSO)供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
フィルムの搬送速度:2.0m/min
[第2保護フィルムの貼合]
機能性フィルムのバリア層上に、藤森工業社製の光学用表面保護フィルム「マスタックTFB−X242」(ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に粘着剤が付与された保護フィルム)を貼合し、機能性フィルム、第1保護フィルム、及び、第2保護フィルムからなる機能性フィルム積層体を作製した。
[加熱調製]
第2保護フィルムを貼合した後、機能性フィルム積層体の第1保護フィルム側から100℃の温風を風量2.5m/hで5秒供給して、機能性フィルム積層体の反りを調整した。
以上の工程により、試料101の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料102の機能性フィルム積層体の作製〉
反りの調整を、下記の方法で行った以外は、上述の試料101と同様の方法で試料102の機能性フィルム積層体を作製した。
[張力調製]
上述の第2保護フィルムの貼合の際に、第2積層体(機能性フィルム及び第2保護フィルム)に対して250N、第2保護フィルムに対して250Nの張力を印加して、第2積層体に第2保護フィルムを貼合した。
〈試料103〜106の機能性フィルム積層体の作製〉
基材の種類及び厚さを、下記表1に示すように変更した以外は、上述の試料101又は試料102と同様の方法で試料103〜106の機能性フィルム積層体を作製した。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材としては、東レ株社製のルミラー(登録商標)U403を用いた。
〈試料107の機能性フィルム積層体の作製〉
機能性層の作製を下記のように変更した以外は、上述の試料101と同様の方法で、試料107の機能性フィルム積層体を作製した。
[機能性層の作製]
上記基材積層体の基材の表面側に、機能性層としてバリア層を作製した。バリア層の作製は、図6に示す製造装置を用いたプラズマCVD法により膜厚100nmの第1バリア層を作製した後、ポリシラザン含有液を乾燥膜厚が200nmとなるように塗布し、塗膜に改質エネルギー6.0J/cmの改質処理を行ってポリシラザン改質層からなる第2バリア層を作製した。なお、第1バリア層は、上述の試料101のバリア層と同様の方法で作製した。
(第2バリア層;ポリシラザン改質層)
ポリシラザン含有塗布液として、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらにジブチルエーテルで固形分濃度が3質量%となるように希釈し、Siを含有する塗布液を調製した。塗布液の調製はグローブボックス内で行った。
上記プラズマCVD法で形成した第1バリア層上にポリシラザン含有塗布液を乾燥膜厚が200nmになるよう塗布し、80℃で1分間乾燥した。乾燥した塗膜に対して、下記の条件でエキシマ光照射処理を行い、第2バリア層を形成した。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
(エキシマ光照射処理条件)
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:5秒
〈試料108の機能性フィルム積層体の作製〉
反りの調整を上述の試料102と同様の方法で行った以外は、上述の試料107と同様の方法で試料108の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料109〜113の機能性フィルム積層体の作製〉
基材の種類及び厚さを、下記表1に示すように変更した以外は、上述の試料107又は試料108と同様の方法で、試料109〜113の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料114の機能性フィルム積層体の作製〉
機能性層の作製を下記のように変更した以外は、上述の試料108と同様の方法で、試料114の機能性フィルム積層体を作製した。
[機能性層の作製]
上記基材積層体の基材の表面側に、機能性層としてバリア層と保護層とを作製した。バリア層の作製は、図6に示す製造装置を用いたプラズマCVD法により膜厚100nmの第1バリア層を作製した後、ポリシラザン含有液を乾燥膜厚が250nmとなるように塗布し、塗膜に改質エネルギー6.0J/cmの改質処理を行ってポリシラザン改質層からなる第2バリア層を作製した。さらに、第2バリア層上にテサテープ社製のPET基材両面テープ「テサ4983」を貼合し、保護層を作製した。なお、第1バリア層及び第2バリア層は、上述の試料101のバリア層と同様の方法で作製した。
〈試料115の機能性フィルム積層体の作製〉
張力調整を行わなかったことを除き、上述の試料107と同様の方法で、試料115の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料116の機能性フィルム積層体の作製〉
第2保護フィルムとして、東レ社製の自己粘着性表面保護フィルム「トレテック7332」(ポリエチレン基材に粘着剤が付与された保護フィルム)を用いた以外は、上述の試料115と同様の方法で、試料116の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料117〜120の機能性フィルム積層体の作製〉
張力調整を行わなかったことを除き、上述の試料109、試料110、試料112又は試料114と同様の方法で、試料117〜120の機能性フィルム積層体を作製した。
〈評価方法〉
[機能性フィルム積層体の反り評価]
機能性フィルム積層体の反り評価は、図12に示すように、縦横15cmの正方形に切り出した機能性フィルム積層体を、機能性フィルム積層体の4つの角が台の上方にくる向きで平坦な台上に置く。そして、図12に示す状態の試料の持ち上がった四隅の角と台との間の距離h1、h2、h3、及び、h4を計測し、h1〜h4の4つの値から算出した平均値を機能性フィルム積層体の反り値として評価した。
上記試料101〜120の機能性フィルム積層体の主な構成、及び、各試料の機能性フィルム積層体の反り評価を表1に示す。
Figure 2018144283
表1に示すように、反り調整を行った試料101〜試料114の機能性フィルム積層体は、反りが発生していない。一方、上位試料のいずれかと同様の構成を有するが、反り調整を行っていない試料115〜120の機能性フィルム積層体は、反りが発生している。また、試料101〜試料114の機能性フィルム積層体において、反りを調整する方法は、機能性フィルム積層体に加熱を行う方法、及び、第2保護フィルムを貼合する際の張力を調整する方法のいずれの方法でも、反りの発生を抑制することができている。従って、機能性フィルム積層体の製造工程において、加熱又は張力の調整によって反りを調整することにより、機能性フィルム積層体に発生する反りを抑制することができる。
反りが発生した試料115〜119の機能性フィルム積層体では、基材が厚くなるほど、機能性フィルム積層体の反りが大きくなりやすい。また、試料120のように機能性層に保護層(PET基材両面テープ)を備える構成、すなわち、機能性フィルム積層体において、積層される基材の数が増えるほど、反りが大きくなりやすい。
これに対し、機能性フィルム積層体の製造工程において反りを調整することにより、試料101〜試料114のような機能性フィルム積層体の構成に係わらず、反りの発生を抑制できる。例えば、機能性層としてバリア層を単層で有する構成(試料101〜106)、バリア層を複数有する構成(試料107〜113)、さらに保護層を有する構成(試料114)であっても、機能性層の構成によらず反りの調整が可能である。
〈試料201の機能性フィルム積層体の作製〉
下記の方法で試料201の機能性フィルム積層体を作製した。
[基材積層体の作製]
機能性フィルムの基材として、厚さ50μmのポリシクロオレフィン(COP)基材を準備した。そして、このCOP基材の裏面側に第2保護フィルムとして、藤森工業社製の光学用表面保護フィルム「マスタックTFB−X242」(ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に粘着剤が付与された保護フィルム)を貼合した。これにより、基材と第2保護フィルムとからなる基材積層体(第1積層体)を作製した。
[機能性層の作製(機能性フィルム、第2積層体の作製)]
上記基材積層体の基材の表面側に機能性層として第1バリア層と第2バリア層を作製し、機能性フィルム、及び、機能性フィルムと第2保護フィルムとからなる第2積層体を作製した。第1バリア層の作製、及び、第2バリア層の作製は、上述の試料107と同様の方法で行った。
[第2保護フィルムの剥離]
機能性層を作製後、第2保護フィルムを機能性フィルムから剥離した。
[第1保護フィルムの貼合]
機能性フィルムの基材の裏面側に、第1保護フィルムとして、藤森工業社製の光学用表面保護フィルム「マスタックTFB−X242」(ポリエチレンテレフタレート(PET)基材に粘着剤が付与された保護フィルム)を貼合した。これにより、機能性フィルムと第1保護フィルムとからなる機能性フィルム積層体を作製した。
[加熱調製]
第2保護フィルムを貼合した後、機能性フィルム積層体の第1保護フィルム側から100℃の温風を風量2.5m/hで5秒供給して、機能性フィルム積層体の反りを調整した。
以上の工程により、試料201の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料202の機能性フィルム積層体の作製〉
反りの調整を、下記の方法で行った以外は、上述の試料201と同様の方法で試料202の機能性フィルム積層体を作製した。
[張力調製]
上述の第1保護フィルムの貼合の際に、機能性フィルムに対して250N、第1保護フィルムに対して250Nの張力を印加して、機能性フィルムに第1保護フィルムを貼合した。
〈試料203,204の機能性フィルム積層体の作製〉
第2保護フィルムとして、東レ社製の自己粘着性表面保護フィルム「トレテック7332」(ポリエチレン基材に粘着剤が付与された保護フィルム)を用いた以外は、上述の試料201,202と同様の方法で、試料203,204の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料205の機能性フィルム積層体の作製〉
基材として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材を用い、機能性層として第1バリア層のみを作製した以外は、上述の試料202と同様の方法で試料205の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料206,207の機能性フィルム積層体の作製〉
基材として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材を用いた以外は、上述の試料202,204と同様の方法で、試料206,207の機能性フィルム積層体を作製した。
〈試料208の機能性フィルム積層体の作製〉
機能性層の作製を下記のように変更した以外は、上述の試料202と同様の方法で、試料208の機能性フィルム積層体を作製した。
[機能性層の作製]
上記基材積層体の基材の表面側に、機能性層として第1バリア層、第2バリア層、及び、保護層とを作製した。第1バリア層の作製、及び、第2バリア層の作製は、上述の試料107と同様の方法で行った。また、保護層の作製は、上述の試料114と同様の方法で行った。
〈試料209〜212の機能性フィルム積層体の作製〉
張力調整を行わなかったことを除き、上述の試料201、試料203、試料205又は試料208と同様の方法で、試料209〜212の機能性フィルム積層体を作製した。
〈評価方法〉
[機能性フィルム積層体の反り評価]
作製した機能性フィルム積層体を、縦横15cmの正方形に切り出し、凸面を水平な台に置いた状態で、機能性フィルム積層体の4つの角の頂点と台との距離をそれぞれ測定し、各測定値の平均を算出して、機能性フィルム積層体の反りを評価した。
上記試料201〜212の機能性フィルム積層体の主な構成、及び、各試料の機能性フィルム積層体の反り評価を表2に示す。
Figure 2018144283
表2に示すように、反り調整を行った試料201〜試料208の機能性フィルム積層体は、反りが発生していない。一方、上位試料のいずれかと同様の構成を有するが、反り調整を行っていない試料209〜212の機能性フィルム積層体は、反りが発生している。
試料201〜試料208の機能性フィルム積層体の結果から、上述の実施例1と同様に、加熱を行う方法、及び、貼合時の張力を調整する方法のいずれの方法でも、反りの発生を抑制することができている。また、機能性フィルム積層体の層構成にかかわらず、加熱又は張力の調整によって反りを調整することにより、機能性フィルム積層体に発生する反りを抑制することができる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10,70 機能性フィルム積層体、20,80 機能性フィルム、21,60,81 基材、22,82 機能性層、25,85 基材積層体、26,86 第2積層体、30,90 第1保護フィルム、31,91 第1保護基材、32,92 第1粘着層、35,95 第2保護フィルム、36,96 第2保護基材、37,97 第2粘着層、40 真空プラズマCVD装置、41 アノード電極、42 真空槽、43 カソード電極、44 サセプタ、45 加熱冷却装置、46 熱媒体循環系、47 真空排気系、48 ガス導入系、49 高周波電源、50 プラズマCVD装置、51 繰り出しローラー、52,54,55,57 搬送ローラー、53,56 成膜ローラー、58 巻取りローラー、59 成膜ガス供給管、61 磁場発生装置、62 磁場発生装置、63 プラズマ発生用電源

Claims (6)

  1. 基材の第1面側に機能性層を有する機能性フィルムと、前記機能性フィルムの前記基材の第2面側に貼合された剥離可能な第1保護フィルムと、前記機能性層上に貼合された第2保護フィルムと、を備える機能性フィルム積層体の製造方法であって、
    前記基材の第2面側に前記第1保護フィルムを貼合する工程と、
    前記基材の第1面側に、前記機能性層を形成して前記機能性フィルムを作製する工程と、
    前記機能性層上に前記第2保護フィルムを貼合する工程と、
    前記機能性フィルム、前記第1保護フィルム、及び、前記第2保護フィルムを含む前記機能性フィルム積層体を巻き取る工程と、を有し、
    前記機能性層を形成して前記機能性フィルムを作製する工程後から、前記機能性フィルム積層体を巻き取る工程までの間に、前記機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する
    機能性フィルム積層体の製造方法。
  2. 前記機能性フィルム積層体を加熱して、前記機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する請求項1に記載の機能性フィルム積層体の製造方法。
  3. 前記第2保護フィルムを貼合する工程において、貼合時の張力調整によって、前記機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する請求項1に記載の機能性フィルム積層体の製造方法。
  4. 基材の第1面側に機能性層を有する機能性フィルムと、前記機能性層上に貼合された剥離可能な第1保護フィルムと、を備える機能性フィルム積層体の製造方法であって、
    前記基材の第2面側に剥離可能な第2保護フィルムを貼合する工程と、
    前記基材の第1面側に、機能性層を形成して前記機能性フィルムを作製する工程と、
    前記第2保護フィルムを剥離する工程と、
    前記基材の第2面側に第1保護フィルムを貼合する工程と、
    前記機能性フィルム、及び、前記第1保護フィルムを含む機能性フィルム積層体を巻き取る工程と、を有し
    前記機能性層を形成して前記機能性フィルムを作製する工程後から、前記機能性フィルム積層体を巻き取る工程までの間に、前記機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する
    機能性フィルム積層体の製造方法。
  5. 前記機能性フィルム積層体を加熱して、前記機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する請求項4に記載の機能性フィルム積層体の製造方法。
  6. 前記第1保護フィルムを貼合する工程において、貼合時の張力調整によって、前記機能性フィルム積層体に発生する反りを調整する請求項4に記載の機能性フィルム積層体の製造方法。
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