JP2015206096A - ガスバリアーフィルム及びその製造方法 - Google Patents

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和喜 田地
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Abstract

【課題】本発明の課題は、高温高湿度環境下においても密着性及びガスバリアー性能の劣化を抑制するガスバリアーフィルムを提供することである。【解決手段】本発明のガスバリアーフィルム(1)は、ガスバリアー層(3)のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、炭素分布曲線が、少なくとも六つの極大値を有し、ガスバリアー層(3)の層厚に対し、基材(2)とは反対側のガスバリアー層(3)表面から1/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、1/3から2/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、及び2/3から基材(2)までの領域に存在する任意の二つの極大値におけるそれぞれの炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが、0.03〜0.70の範囲内であることを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリアーフィルム及びその製造方法に関する。より詳しくは、高温高湿度環境下においても密着性及びガスバリアー性能の劣化を抑制するガスバリアーフィルム及びその製造方法に関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリアー層)を形成したガスバリアーフィルムは、食品、医薬品等の分野で物品を包装する用途に用いられている。ガスバリアーフィルムを用いることによって、水蒸気や酸素等のガスによる物品の変質を防止することができる。
近年、このような水蒸気や酸素等の透過を防ぐガスバリアーフィルムについて、有機エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)素子、液晶表示(Liquid Crystal Display:LCD)素子等の電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。これらの電子デバイスにおいては、フレキシブル性が要求されており、更なる基材の薄膜化が求められている。しかしながら、基材厚が薄くなると、基材の屈曲により成膜した薄膜と基材との間で密着不良による剥離が生じ、薄膜にクラックが発生するという問題があった。
これに対し、特許文献1には、高ガスバリアー性でありながら、屈曲性のよいガスバリアーフィルムが開示されている。当該特許文献1では、炭素原子比率を3〜33at%の範囲内で極値を有するように連続的に変えることにより、薄膜の応力を緩和して、密着性の良好なガスバリアーフィルムを形成している。しかしながら、炭素を多く含む薄膜では、高温高湿度環境下に曝されると原子間結合が切断されやすく、屈曲時に薄膜が剥離し、クラックが発生することによって、ガスバリアー性能が著しく劣化するという問題があった。
他方で、高温高湿度環境下での劣化を抑制する手段として、化学的に安定な二酸化ケイ素の薄膜とする方法もあるが、二酸化ケイ素はダイヤモンド構造のため、単位格子内の原子の充填率が小さく、ガスバリアー性能が悪化してしまう。
特開2011−73430号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高温高湿度環境下においても密着性及びガスバリアー性能の劣化を抑制するガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層の層厚方向における基材とは反対側のガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、層厚方向の位置変化に対し、連続的に極大値と極小値とを示しながら変化し、かつ、少なくとも六つの極大値を有し、ガスバリアー層の層厚に対し、基材とは反対側のガスバリアー層表面から1/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、1/3から2/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、及び2/3から基材までの領域に存在する任意の二つの極大値におけるそれぞれの炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが、特定の数値範囲内であるガスバリアーフィルムが、高温高湿度環境下においても密着性及びガスバリアー性能の劣化を抑制できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基材上に、酸化炭化ケイ素を含有するとともに、その組成が層厚方向において変化するガスバリアー層を有するガスバリアーフィルムであって、
前記ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、前記ガスバリアー層の層厚方向における前記基材側とは反対側の前記ガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、層厚方向の位置変化に対し、連続的に極大値と極小値とを示しながら変化し、かつ、少なくとも六つの極大値を有し、
前記ガスバリアー層の層厚に対し、前記基材とは反対側の前記ガスバリアー層表面から1/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、1/3から2/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、及び2/3から基材までの領域に存在する任意の二つの極大値におけるそれぞれの炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが、0.03〜0.70の範囲内であることを特徴とするガスバリアーフィルム。
2.最小二乗法により導出された1次関数式y=ax+bの切片bが、−10〜20at%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載のガスバリアーフィルム。
3.前記炭素分布曲線において極大値を示す位置のうち、前記基材に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が25〜45at%の範囲内であり、かつ、前記基材と反対側の前記ガスバリアー層表面に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が1〜20at%の範囲内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載のガスバリアーフィルム。
4.前記ガスバリアー層中、前記基材側の前記ガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も大きく、前記基材とは反対側の前記ガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も小さいことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
5.前記ガスバリアー層の層厚が、80〜250nmの範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
前記基材を対向するローラー電極間に複数回搬送して、プラズマCVD法により、層厚方向に炭素原子比率の異なる前記ガスバリアー層を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、高温高湿度環境下においても密着性及びガスバリアー性能の劣化を抑制したガスバリアーフィルム及びその製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明者らは、種々検討を行った結果、酸化炭化ケイ素を含有する薄膜の、極値を有する炭素分布曲線において、基材近傍の炭素原子比率の極大値と基材とは反対側のガスバリアー層表面近傍の炭素原子比率の極大値が以下の不等式で表される大小関係を有するとき、高温高湿度環境下においても、ガスバリアー性能が劣化せず、屈曲時における密着性が良好なガスバリアーフィルムを提供できることを見出したものである。
基材近傍の炭素原子比率の極大値
>基材とは反対側のガスバリアー層表面近傍の炭素原子比率の極大値
すなわち、基材とは反対側のガスバリアー層表面近傍の炭素原子比率を小さくして、当該ガスバリアー層表面近傍を化学的に安定な領域とすることにより、高温高湿度環境下においても、基材近傍の原子間結合の切断を抑制することができる。
また、層厚方向に対する炭素原子比率の傾斜を適切な値に制御することにより、原子間結合の切断の進行を抑制することが可能となり、十分な高温高湿度環境に対する耐性を得ることができるものと推察される。
本発明のガスバリアーフィルムの一例を示す断面図 本発明に係るガスバリアー層の形成に用いられる製造装置の一例を示す模式図 本発明のガスバリアーフィルムを封止フィルムとして用いた電子デバイスである有機ELパネルの一例を示す断面図 比較例に係るガスバリアー層の炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線の一例を示すグラフ 本発明に係るガスバリアー層の炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線の一例を示すグラフ
本発明のガスバリアーフィルムは、ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層の層厚方向における基材とは反対側のガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、層厚方向の位置変化に対し、連続的に極大値と極小値とを示しながら変化し、かつ、少なくとも六つの極大値を有し、ガスバリアー層の層厚に対し、基材とは反対側のガスバリアー層表面から1/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、1/3から2/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、及び2/3から基材までの領域に存在する任意の二つの極大値におけるそれぞれの炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが、特定の数値範囲内であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、高温高湿度環境下におけるガスバリアー性能の劣化抑制の観点から、最小二乗法により導出された1次関数式y=ax+bの切片bが、−10〜20at%の範囲内であることが好ましい。
また、層厚方向に対する炭素原子比率の傾斜を適切な値に制御する観点から、炭素分布曲線において極大値を示す位置のうち、基材に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が25〜45at%の範囲内であり、かつ、基材とは反対側のガスバリアー層表面に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が1〜20at%の範囲内であることが好ましく、更には、ガスバリアー層中、基材側のガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も大きく、基材とは反対側のガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も小さいことが好ましい。
また、薄膜化及びガスバリアー性能の両立の観点から、ガスバリアー層の層厚が、80〜250nmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明のガスバリアーフィルムの製造方法としては、基材を対向するローラー電極間に複数回搬送して、プラズマCVD法により、層厚方向に炭素原子比率の異なるガスバリアー層を形成する態様の製造方法であることが、本発明のガスバリアーフィルムを製造する方法として好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
≪ガスバリアーフィルムの構成≫
図1に示すとおり、本発明のガスバリアーフィルム1は、基材2上に、ガスバリアー層3が積層されて構成されている。
ガスバリアー層2は、酸化炭化ケイ素(SiOC)を含有するとともに、その組成が層厚方向において変化している。
≪ガスバリアー層≫
本発明に係るガスバリアー層は、X線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、ガスバリアー層の層厚方向における基材とは反対側のガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、層厚方向の位置変化に対し、連続的に極大値と極小値とを示しながら変化し、かつ、少なくとも六つの極大値を有し、ガスバリアー層の層厚に対し、基材とは反対側のガスバリアー層表面から1/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、1/3から2/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、及び2/3から基材までの領域に存在する任意の二つの極大値におけるそれぞれの炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが、0.03〜0.70の範囲内であることを特徴とする。
傾きaが0.03より小さい場合には、高温高湿度環境下において表面側から次々と膜中の炭素−ケイ素結合が切断され、ガスバリアー性能が著しく劣化してしまい、0.70より大きい場合には、炭素原子比率の変化が大きいため結晶構造に大きな歪が生じ、薄膜中で剥離が発生する。
本発明に係るガスバリアー層の炭素分布曲線は、上記したように少なくとも六つの極大値を有しているが、特にこれに限定されるものでなく、炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが上記特定数値範囲内であれば、ガスバリアー層の各領域に三つ以上の極大値を有していてもよい。
なお、ガスバリアー層における炭素分布曲線の極大値から最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの相関係数Rの二乗である決定係数R値は、0.6〜1.0の範囲内が好ましく、0.8〜1.0の範囲内であることがより好ましい。
また、炭素分布曲線における炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの切片bは、−10〜20at%の範囲内であることが好ましい。切片bが−10at%以上であれば、十分なガスバリアー性能が得られ、20at%以下であれば、高温高湿度環境下で表面からの水分の侵入をブロックし、ガスバリアー性能の劣化を抑制できる。
また、本発明に係るガスバリアー層は、炭素分布曲線において極大値を示す位置のうち、基材に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が25〜45at%の範囲内であり、かつ、基材とは反対側のガスバリアー層表面に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が1〜20at%の範囲内であることが好ましい。
また、ガスバリアー層中、基材側のガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も大きく、基材とは反対側のガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も小さいことが好ましい。
これにより、層厚方向に対する炭素原子比率の傾斜を適切な値に制御し、原子間結合の切断の進行を抑制することが可能となり、十分な高温高湿度環境に対する耐性を得ることができるものと推察される。
≪X線光電子分光法≫
炭素分布曲線(ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層表面からの距離(L)と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す曲線)、ケイ素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対するケイ素原子数の比率(ケイ素原子比率)との関係を示す曲線)及び酸素分布曲線(距離Lと、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する酸素原子数の比率(酸素原子比率)との関係を示す曲線)は、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。
このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比率(at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線において、エッチング時間は層厚方向におけるガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)に概ね相関することから、「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離(すなわち、SiO換算層厚(nm)=(エッチング時間(sec)×エッチング速度(nm/sec))を採用することができる。
≪ガスバリアー層の層厚≫
本発明に係るガスバリアー層の層厚は、薄膜化及びガスバリアー性能の両立の観点から、80〜250nmの範囲内であることが好ましい。
≪ガスバリアー層の水蒸気透過度≫
ガスバリアー層は、ガスバリアー性を有することが好ましい。ここで、ガスバリアー性を有するとは、基材上にガスバリアー層のみを積層させ、MOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置Aquatranを用いて測定された水蒸気透過度(38℃、相対湿度90%RH)が、0.1g/(m・day)以下であることを指し、0.01g/(m・day)以下であることが好ましい。
≪ガスバリアー層の形成方法≫
本発明に係るガスバリアー層は、プラズマ化学気相成長法(プラズマCVD、PECVD(plasma−enhanced chemical vapor deposition)、以下、単に「プラズマCVD法」とも称する。)により形成することができる。
プラズマCVD法としては、特に限定されないが、国際公開第2006/033233号に記載の大気圧又は大気圧近傍でのプラズマCVD法、対向ローラー電極を持つプラズマCVD装置を用いたプラズマCVD法が挙げられる。プラズマCVD法は、ペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であってもよい。
中でも、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する(ロール to ロール(roll to roll)方式の)放電プラズマ化学気相成長法により形成することが好ましい。上述したように、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、極値を有し、かつ、各領域における炭素原子比率が一定範囲内に制御されたガスバリアー層を容易に作製可能であり、層内の応力バランスが適切なガスバリアーフィルムを作製することができる。さらに、放電プラズマ化学気相成長法を用いることにより、ガスバリアー層が緻密化し、ガスバリアー性能を向上させることができる。
以下、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により、本発明に係るガスバリアー層を形成する方法について説明する。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに基材(ここでいう基材には、基材が処理された形態も含む。)を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。
このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できる。加えて、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。
また、本発明のガスバリアーフィルムは、生産性の観点から、ロール to ロール方式で基材の表面上にガスバリアー層を形成させることが好ましい。また、このようなプラズマCVD法によりガスバリアー層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図2に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロール to ロール方式で製造することも可能となる。
以下、図2を参照しながら、本発明に係るガスバリアー層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図2は、本発明に係るガスバリアー層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示す製造装置10は、送出しローラー12と、搬送ローラー13〜18と、成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、成膜ローラー19及び20の内部にそれぞれ設置された磁場発生装置23及び24と、巻取りローラー25を備えている。また、このような製造装置10においては、少なくとも成膜ローラー19及び20と、ガス供給管21と、プラズマ発生用電源22と、磁場発生装置23及び24とが成膜(真空)チャンバー28内に配置されている。さらに、このような製造装置10において、成膜チャンバー28は図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより成膜チャンバー28内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
送出しローラー12及び搬送ローラー13は、搬送系チャンバー27内に配置され、巻取りローラー25及び搬送ローラー18は、搬送系チャンバー29内に配置されている。搬送系チャンバー27及び29と成膜チャンバー28とは、それぞれ連結部30及び31を介して接続されている。例えば、連結部30及び31に真空ゲートバルブを設けて成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離してもよい。真空ゲートバルブを用いることによって、例えば、成膜チャンバー28内のみを真空系とし、搬送系チャンバー27及び29内は大気下とすることができる。また、成膜チャンバー28と搬送系チャンバー27及び29とを物理的に隔離することにより、成膜チャンバー28内で発生したパーティクルによって搬送系チャンバー27及び29が汚染されることを抑制することができる。
このような製造装置においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラー19及び20がそれぞれプラズマ発生用電源22に接続されている。そのため、このような製造装置10においては、プラズマ発生用電源22により電力を供給することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間に放電することが可能であり、これにより成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の空間にプラズマを発生させることができる。なお、このように、成膜ローラー19と成膜ローラー20とを電極としても利用する場合には、電極としても利用可能なようにその材質や設計を適宜変更すればよい。
また、このような製造装置10においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)を配置することにより、ローラーを使用しない通常のプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にできる。
このような製造装置10によれば、CVD法により基材2(ここでいう、基材には、基材が処理された形態も含む。)の表面上にガスバリアー層3を形成することが可能であり、成膜ローラー19上において基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させつつ、更に成膜ローラー20上においても基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させることもできるため、基材2の表面上にガスバリアー層を効率よく形成することができる。
成膜ローラー19及び20の内部には、成膜ローラー19及び20が回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置23及び24がそれぞれ設けられている。
成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、一方の成膜ローラー19に設けられた磁場発生装置23と他方の成膜ローラー20に設けられた磁場発生装置24との間で磁力線がまたがらず、それぞれの磁場発生装置23及び24がほぼ閉じた磁気回路を形成するように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、各成膜ローラー19及び20の対向側表面付近に磁力線が膨らんだ磁場の形成を促進することができ、その膨出部にプラズマが収束されやすくなるため、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
また、成膜ローラー19及び20にそれぞれ設けられた磁場発生装置23及び24は、それぞれローラー軸方向に長いレーストラック状の磁極を備え、一方の磁場発生装置23と他方の磁場発生装置24とは向かい合う磁極が同一極性となるように磁極を配置することが好ましい。このような磁場発生装置23及び24を設けることにより、それぞれの磁場発生装置23及び24について、磁力線が対向するローラー側の磁場発生装置にまたがることなく、ローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場を容易に形成することができ、その磁場にプラズマを収束させることができため、ローラー幅方向に沿って巻き掛けられた幅広の基材2を用いて効率的に蒸着膜であるガスバリアー層3を形成することができる点で優れている。
各成膜ローラー19及び20における基材2への張力は、全て同じであってもよいが、成膜ローラー19又は成膜ローラー20における張力のみ高くして成膜してもよい。成膜ローラー19及び20における基材2への張力を高くすることによって、基材2と成膜ローラー19及び20との密着性が向上し、熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
成膜ローラー19及び20としては、適宜公知のローラーを用いることができる。このような成膜ローラー19及び20としては、より効率よく薄膜を形成させるという観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このような成膜ローラー19及び20の直径としては、放電条件、チャンバーのスペース等の観点から、直径が300〜1000mmφの範囲内、特に300〜700mmφの範囲内が好ましい。成膜ローラーの直径が300mmφ以上であれば、プラズマ放電空間が小さくなることがないため生産性の劣化もなく、短時間でプラズマ放電の全熱量が基材2にかかることを回避できることから、基材2へのダメージを軽減でき好ましい。一方、成膜ローラーの直径が1000mmφ以下であれば、プラズマ放電空間の均一性等も含めて装置設計上、実用性を保持することができるため好ましい。各成膜ローラー19及び20は、ニップロールを備えていてもよく、ニップロールを備えることで、基材2の成膜ローラー19及び20への密着性が向上する。これにより、基材2と成膜ローラー19及び20との間で熱交換が効率的に行われ、膜均一性が向上し、また、熱シワも抑制されるという利点がある。
このような製造装置10においては、基材2の表面がそれぞれ対向するように、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)上に、基材2が配置されている。このようにして基材2を配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に放電を行ってプラズマを発生させる際に、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に存在する基材2のそれぞれの表面を同時に成膜することが可能となる。すなわち、このような製造装置10によれば、プラズマCVD法により、成膜ローラー19上にて基材2の表面上にガスバリアー層成分を堆積させ、更に成膜ローラー20上にてガスバリアー層成分を堆積させることができるため、基材2の表面上にガスバリアー層を効率よく形成することが可能となる。
基材2の基材幅は、成膜ローラー幅より広くてもよいし、狭くてもよいし、同一であってもよい。基材幅を成膜ローラー幅より広くすることによって、成膜ローラー19及び20が露出しないため、成膜ローラー19及び20がパーティクルによって汚染されることを抑制でき、メンテナンス性が向上し、性能が安定化するという利点がある。また、基材幅が成膜ローラー幅より狭いことによって、成膜される膜の有効幅が広がるという利点がある。同様に、膜形成の有効幅を考慮し、成膜ローラー19及び20上の放電幅(成膜空間)と、基材端部との位置は基材幅を適宜選択することによって適宜調整することができる。
また、基材2は、成膜チャンバー28に搬送される前に加熱されてもよい。加熱温度としては、基材のガラス転移温度以上であることが好ましい。基材を加熱して、予め基材を収縮させることによって、成膜中の基材収縮を抑制することができる。
基材2の成膜時の基材温度は、特に限定されるものではないが、30〜150℃の範囲内であることが好ましい。このような基材温度は、放電空間の温度及び成膜ローラー19及び20の温度に依存する。成膜ローラー19及び20の温度としては、−30〜100℃の範囲内であることが好ましく、このようなローラー温度に調整するために、成膜ローラー19及び20を適宜加熱、冷却すればよい。
製造装置10に用いる送出しローラー12及び搬送ローラー13〜18としては、適宜公知のローラーを用いることができる。また、巻取りローラー25としても、基材2上にガスバリアー層3を形成したガスバリアーフィルム1を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。搬送ローラー13〜18としては、段付きローラーを用いてもよい。段付きローラーとは、ローラーの両端部のみが基材2と接触する搬送ローラーであり、例えば、特開2009−256709号公報の図2に記載の段付きローラーなどを用いることができる。段付きローラーを使用することによって、ガスバリアー層表面に非接触で搬送することができ、接触によるフィルムの劣化を抑制することができる。また、送出しローラー12や巻取りローラー25は、ターレット式であってもよい。ターレットは、2軸以上の多軸であってもよく、そのうち一部の軸のみを大気開放できる構造であってもよい。
また、ガス供給管21及び真空ポンプとしては、原料ガス等を所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。
また、ガス供給手段であるガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間(放電領域、成膜ゾーン)の一方に設けることが好ましく、真空排気手段である真空ポンプ(図示せず。)は、対向空間の他方に設けることが好ましい。このようにガス供給手段であるガス供給管21と、真空排気手段である真空ポンプを配置することにより、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の対向空間に効率よく成膜ガスを供給することができ、成膜効率を向上させることができる点で優れている。
なお、図2においては、ガス供給管21は、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線上に設けられているが、これに限定されず、例えば、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線から、どちらか一方側にずれていてもよい(左右方向に中心線からずらしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラー19と成膜ローラー20との間の中心線からずらすことによって、片方の成膜ローラーに近く、もう片方の成膜ローラーからは遠くなるため、原料ガスの供給が成膜ローラー19上で形成される膜組成と成膜ローラー20上で形成させる膜組成とが異なるようになり、膜質を変えたいときなどに適宜ガス供給管21の位置をずらせばよい。また、ガス供給管21は、適宜中心線上で成膜ローラーから離したり近づけたりしてもよい(上下方向に中心線上で配置位置を動かしてもよい。)。ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で遠ざけ、放電空間からガス供給管21を離すことによって、ガス供給管21にパーティクルが付着することを抑制できるなどの利点があり、ガス供給管21を成膜ローラーの中心軸上で放電空間に近づけることによって成膜レートを向上させることができるなどの利点がある。
図2において、ガス供給管21は一つであるが、ガス供給管21は複数あってもよく、各ノズルから異なる供給ガスを放出する形態であってもよい。
さらに、プラズマ発生用電源22としては、適宜公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源22は、これに接続された成膜ローラー19と成膜ローラー20とに電力を供給して、これらを放電のための対向電極として利用することを可能とする。このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。
また、このようなプラズマ発生用電源22としては、より効率よくプラズマCVDを実施することが可能となることから、印加電力を100W〜20kWの範囲内とすることが好ましく、100W〜10kWの範囲内とすることがより好ましく、かつ交流の周波数を50Hz〜13.56MHzの範囲内とすることが好ましく、50Hz〜500kHzの範囲内とすることがより好ましい。
また、プラズマプロセス安定化の点から、高周波電流波及び電圧波がどちらも正弦波となるような高周波電源を用いてもよい。
図2においては、一つのプラズマ発生用電源22で成膜ローラー19及び20の双方に給電している(両成膜ローラー給電)が、このような形態に限定されるものではなく、一方の成膜ローラーに給電し(片側成膜ローラー給電)、他方の成膜ローラーをアースする形態であってもよい。
また、成膜ローラーへの給電方法としては、ローラー端の一方のみから給電するローラー片端給電でもよいし、ローラーの両端から給電するローラー両端給電であってもよい。高周波帯を供給する場合には、均一な供給が可能となることから、ローラー両端給電であってもよい。
また、給電方法としては、異なる周波数を印加する2周波給電を行ってもよく、一方の成膜ローラーに異なる2周波を印加する形態であっても、一方の成膜ローラーと他方の成膜ローラーとで異なる周波数を印加する形態であってもよい。このような2周波給電により、プラズマ密度が上がり、成膜速度を向上させることができる。
また、図2には図示していないが、放電空間のプラズマ発光強度を外部からモニタリングし、所望の発光強度でない場合には、磁場間距離(対向ローラー間距離)、磁場強度、電源の印加電力、電源周波数、供給ガス量などを調整して所望のプラズマ発光強度とするフィードバック回路を有していてもよい。このようなフィードバック回路を有することによって、成膜/生産を安定にすることができる。
また、磁場発生装置23及び24としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。さらに、基材2としては、本発明で用いられる基材の他に、ガスバリアー層3をあらかじめ形成させたものを用いることができる。このように、基材2としてガスバリアー層3をあらかじめ形成させたものを用いることにより、ガスバリアー層3の層厚を厚くすることも可能である。
このような図2に示す製造装置10を用いて、例えば、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含むガスバリアー層を形成することができる。この際、ガスバリアー層の炭素原子の含有量の原子比率を制御する方法は特に限定されるものではないが、用いられる原料の比率(酸素と後述するHMDSOとの供給比率)、電力、圧力などを制御することにより、炭素原子の含有量の原子比率を制御することができる。
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができ、0.5〜50Pa程度であることが好ましく、0.5〜10Paの範囲内とすることがより好ましい。
また、このようなプラズマCVD法において、成膜ローラー19と成膜ローラー20との間に放電するために、プラズマ発生用電源22に接続された電極ドラム(本実施形態においては、成膜ローラー19及び20に設置されている。)に印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるものであり一概にいえるものでないが、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。印加電力が0.1kW(100W)以上であれば、パーティクルが発生するのを十分に抑制することができ、他方、10kW以下であれば、成膜時に発生する熱量を抑えることができ、成膜時の基材表面の温度が上昇するのを抑制できる。そのため、基材が熱負けすることなく、成膜時にシワが発生するのを防止できる点で優れている。
基材2の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜100m/minの範囲内とすることがより好ましい。
ガス供給管21から対向空間に供給される成膜ガス(原料ガス等)としては、原料ガス、反応ガス、キャリアガス、放電ガスを単独又は2種以上を混合して用いることができる。ガスバリアー層3の形成に用いる成膜ガス中の原料ガスとしては、形成するガスバリアー層3の材質に応じて適宜選択して使用することができる。このような原料ガスとしては、例えば、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物や炭素を含有する有機化合物ガスを用いることができる。このような有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ヘキサメチルジシラン(HMDS)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、化合物の取り扱い性及び得られるガスバリアー層のガスバリアー性等の特性の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。これらの有機ケイ素化合物は、単独でも、又は2種以上を組み合わせても使用することができる。また、炭素を含有する有機化合物ガスとしては、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレンを例示することができる。中でも、本実施形態の膜組成に容易に調整できることから、原料ガスとして有機ケイ素化合物を含むことが好ましい。
また、成膜ガスとしては、原料ガスの他に反応ガスを用いてもよい。このような反応ガスとしては、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスを適宜選択して使用することができる。本実施形態のガスバリアー層3は、酸素を含むことから、反応ガスとしては、例えば、酸素、オゾンを用いることができ、簡便性の観点から酸素を用いることが好ましい。また、その他、窒化物を形成するための反応ガスを用いてもよく、例えば、窒素、アンモニアを用いることができる。これらの反応ガスは、単独でも、又は2種以上を組み合わせても使用することができ、例えば、酸窒化物を形成する場合には、酸化物を形成するための反応ガスと窒化物を形成するための反応ガスとを組み合わせて使用することができる。
成膜ガスとしては、原料ガスを成膜チャンバー28内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガス、水素及び窒素を用いることができる。
このような成膜ガスが原料ガスと反応ガスを含有する場合、原料ガスと反応ガスとの比率としては、原料ガスと反応ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる反応ガスの量の比率よりも、反応ガスの比率を過剰にしすぎないことが好ましい。反応ガスの比率を過剰にしすぎないことで、形成されるガスバリアー層3によって、優れたガスバリアー性や耐屈曲性を得ることができる点で優れている。また、成膜ガスが有機ケイ素化合物と酸素とを含有するものである場合には、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
以下、成膜ガスとして、原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(有機ポリシラザン、HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)とを含有するものを用い、ケイ素−酸素系の薄膜を形成する場合を例に挙げて、成膜ガス中の原料ガスと反応ガスとの好適な比率等について、より詳細に説明する。
原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO、(CHSiO)と、反応ガスとしての酸素(O)と、を含有する成膜ガスをプラズマCVDにより反応させてケイ素−酸素系の薄膜を作製する場合、その成膜ガスにより下記反応式(1)で表されるような反応が起こり、二酸化ケイ素が生成する。
Figure 2015206096
このような反応においては、ヘキサメチルジシロキサン1モルを完全酸化するのに必要な酸素量は12モルである。そのため、成膜ガス中に、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素を12モル以上含有させて完全に反応させた場合には、均一な二酸化ケイ素膜が形成されてしまう(炭素分布曲線が存在しない。)ため、炭素を含有するガスバリアー層3を形成することができなくなってしまう。そのため、本発明に係るガスバリアー層を形成する際には、上記反応式(1)の反応が完全に進行してしまわないように、ヘキサメチルジシロキサン1モルに対して酸素量を化学量論比の12モルより少なくすることが好ましい。
なお、実際のプラズマCVDチャンバー内の反応では、原料のヘキサメチルジシロキサンと反応ガスの酸素とは、ガス供給部から成膜領域へ供給されて成膜されるので、反応ガスの酸素のモル量(流量)が原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の12倍のモル量(流量)であったとしても、現実には完全に反応を進行させることはできず、酸素の含有量を化学量論比に比して大過剰に供給して初めて反応が完結すると考えられる(例えば、CVDにより完全酸化させて酸化ケイ素を得るために、酸素のモル量(流量)を原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の20倍以上程度とする場合もある。)。
そのため、原料のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、化学量論比である12倍以下、より好ましくは10倍以下の量であることが好ましい。
このような比でヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含有させることにより、完全に酸化されなかったヘキサメチルジシロキサン中の炭素原子や水素原子がバリア層中に取り込まれる。なお、有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とする電子デバイス用のフレキシブル基板への利用の観点から、成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)の下限は、ヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)の0.1倍より多い量とすることが好ましく、0.5倍より多い量とすることがより好ましい。
なお、本実施形態では、ガスバリアー層の基材近傍領域における炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数に対する酸素原子の含有量の最大原子比率を、30〜45at%の範囲内と比較的低い値に制御することで、相対的に炭素原子の組成比を高めて緻密な領域を形成することに特徴がある。
このため、成膜ガスを成膜する際の成膜ガス中のヘキサメチルジシロキサンのモル量(流量)に対する酸素のモル量(流量)は、等倍〜10倍の範囲内であることが好ましく、等倍〜6倍の範囲内であることがより好ましく、等倍〜3倍の範囲内であることが更に好ましい。
図2に示す製造装置10を用いて、成膜ガス(原料ガス等)を成膜チャンバー28内に供給しつつ、一対の成膜ローラー(成膜ローラー19及び20)間に放電を発生させることにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー19上の基材2の表面上及び成膜ローラー20上の基材2の表面上に、第1回目の成膜層がプラズマCVD法により形成される。この際、成膜ローラー19及び20のローラー軸の長さ方向に沿って対向空間(放電領域)に面したローラー表面付近にレーストラック状の磁場が形成されて、磁場にプラズマを収束させる。このプロセスを前述の条件の一つ又は複数を変化させた第2回目の成膜層、第3回目の成膜層と繰り返すことによって、層厚方向に各構成原子の組成が連続的に変化することとなる。
具体的には、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線において、基材2が成膜ローラー19のA地点及び成膜ローラー20のB地点を通過する際に、炭素分布曲線の極大値と酸素分布曲線の極小値とが形成される。これに対して、基材2が成膜ローラー19のC1及びC2地点、並びに成膜ローラー20のC3及びC4地点を通過する際に、炭素分布曲線の極小値と酸素分布曲線の極大値とが形成される。
このような極値の存在は、膜内の炭素原子及び酸素原子の存在比が均一ではない層であることを示すものであり、部分的に炭素原子が少ない緻密性の低い部分が存在することで、層全体がフレキシブルな構造となり、屈曲に対する耐久性が向上する。
また、ガスバリアー層の極値間の距離(炭素/酸素分布曲線の有する一つの極値及び該極値に隣接する極値におけるガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離(L)の差の絶対値)は、成膜ローラー19及び20の回転速度(基材2の搬送速度)によって調節できる。なお、このような成膜に際しては、基材2が送出しローラー12や成膜ローラー19等によってそれぞれ搬送されることにより、ロール to ロール方式の連続的な成膜プロセスにより基材2の表面上にガスバリアー層3が形成される。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、本発明に係るガスバリアー層を、図2に示す対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロール to ロール方式)を用いたプラズマCVD法によって、好ましくは条件を変更しながら複数回成膜することを特徴とするものである。これは、対向ローラー電極を有するプラズマCVD装置(ロール to ロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、高温高湿下でのガスバリアー性能が高く、機械的強度、特にロール to ロールでの搬送時の耐久性、ガスバリアー性を低下させる欠陥が少ないガスバリアー層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリアーフィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
≪基材≫
本発明のガスバリアーフィルムの基材としては、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、ガスバリアー層を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。
プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
ガスバリアーフィルムを有機EL素子等の電子デバイスの基板として使用する場合は、基材は耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15〜100ppm/Kの範囲内で、かつガラス転移温度Tgが100〜300℃の範囲内の樹脂基材が使用される。該基材は、電子部品用途、ディスプレイ用積層フィルムとしての必要条件を満たしている。
すなわち、これらの用途にガスバリアーフィルムを用いる場合、ガスバリアーフィルムは、150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリアーフィルムにおける基材の線膨張係数が15〜100ppm/Kの範囲内であることで、熱耐性に強く、またフレキシビリティがよいものとなる。基材の線膨張係数やTgは、添加剤などによって調整することができる。
基材として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば、三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(なお、括弧内の数値は、Tgを示す。)。特に、透明性を求める場合には、脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
ガスバリアーフィルムは、有機EL素子等の電子デバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
光線透過率は、JIS K 7105:1981に記載された方法、すなわち、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、ガスバリアーフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
ガスバリアーフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚さは、用途によって適宜選択されるため特に制限はないが、典型的には1〜800μmの範囲内であり、好ましくは10〜200μmの範囲内である。これらのプラスチックフィルムは、従来のガスバリアーフィルムに用いられている公知の透明導電層や平滑層等の機能層を有していてもよい。機能層については、上述したもののほか、特開2006−289627号公報の段落0036〜0038に記載されているものを好ましく採用できる。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材を製造することができる。また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基材の流れ(縦軸)方向、又は基材の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲内が好ましい。
基材の両面、少なくともガスバリアー層を設ける側には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理、平滑層の積層等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
≪アンカーコート層≫
本発明に係る基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。アンカーコート層の構成材料、形成方法等は、特開2013−52561号公報の段落0229〜0232に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪平滑層≫
本発明のガスバリアーフィルムは、基材のガスバリアー層を有する面に平滑層を有していてもよい。平滑層は、突起等が存在する基材の粗面を平坦化するために、あるいは、樹脂基材に存在する突起により、ガスバリアー層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。平滑層の構成材料、形成方法、表面粗さ、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落0233〜0248に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪ブリードアウト防止層≫
本発明のガスバリアーフィルムは、ブリードアウト防止層を更に有することができる。ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、樹脂基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染する現象を抑制する目的で、平滑層を有する基材の反対面に設けられる。ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば、基本的に平滑層と同じ構成をとっても構わない。ブリードアウト防止層の構成材料、形成方法、層厚等は、特開2013−52561号公報の段落0249〜0262に開示される材料、方法等が適宜採用される。
≪電子デバイス≫
上記したような本発明のガスバリアーフィルムは、優れたガスバリアー性、透明性、屈曲性を有する。このため、本発明のガスバリアーフィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機EL素子、液晶表示素子等の電子デバイスに用いられるガスバリアーフィルム及びこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
≪電子素子本体≫
電子素子本体は電子デバイスの本体であり、本発明のガスバリアーフィルム側に配置される。電子素子本体としては、ガスバリアーフィルムによる封止が適用されうる公知の電子デバイスの本体が使用できる。例えば、有機EL素子、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等が挙げられる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子又は太陽電池であることが好ましい。これらの電子素子本体の構成についても、特に制限はなく、従来公知の構成を有しうる。
以下、具体的な電子素子本体の一例として、有機EL素子及びこれを用いた有機ELパネルについて説明する。
≪有機ELパネル≫
本発明のガスバリアーフィルム1を封止フィルムとして用いた電子機器である有機ELパネルの一例を図3に示す。
図3に示すように、有機ELパネル9は、ガスバリアーフィルム1と、ガスバリアーフィルム1上に形成されたITOなどの透明電極4と、透明電極4を介してガスバリアーフィルム1上に形成された有機EL素子5と、その有機EL素子5を覆うように接着剤層6を介して配設された対向フィルム7等を備えている。なお、透明電極4は、有機EL素子5の一部を成すともいえる。
このガスバリアーフィルム1におけるガスバリアー層3が形成された面に、透明電極4と有機EL素子5が形成されるようになっている。また、対向フィルム7は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明のガスバリアーフィルムを用いてもよい。対向フィルム7にガスバリアーフィルムを用いる場合、ガスバリアー層が形成された面を有機EL素子5に向けて、接着剤層6によって貼付するようにすればよい。
以下に、有機EL素子5(陽極としての透明電極4を含む。)の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔注入層(陽極バッファー層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層(陰極バッファー層)/陰極
≪陽極≫
有機EL素子5における陽極(透明電極4)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましい。
また、陽極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
また、陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nmの範囲内、好ましくは10〜200nmの範囲内で選ばれる。
≪陰極≫
有機EL素子5における陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する。)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物や、アルミニウム等が陰極として好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。
また、陰極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。
また、陰極の膜厚は通常10nm〜5μmの範囲内、好ましくは50〜200nmの範囲内で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子5の陽極又は陰極のいずれか一方が透明又は半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極の説明で挙げた上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明又は半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極との両方が透過性を有する素子を作製することができる。
≪注入層:電子注入層、正孔注入層≫
注入層には、電子注入層(陰極バッファー層)と正孔注入層(陽極バッファー層)とがあり、電子注入層と正孔注入層とを必要に応じて設けられ、陽極と発光層又は正孔輸送層との間、及び陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
正孔注入層(陽極バッファー層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
電子注入層(陰極バッファー層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。
注入層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その層厚は0.1nm〜5μmの範囲内が好ましい。
≪発光層≫
有機EL素子5における発光層は、電極(陰極、陽極)又は電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機EL素子5の発光層には、以下に示すドーパント(発光ドーパント)とホスト化合物とが含有されていることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
(発光ドーパント)
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
リン光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。発光ドーパントは、複数種の化合物を混合して用いてもよい。
(ホスト化合物)
ホスト化合物(単にホストともいう。)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント」という。例えば、発光層を化合物A及び化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパントであり、化合物Bがホスト化合物である。さらに、発光層を化合物A、化合物B及び化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A及び化合物Bがドーパントであり、化合物Cがホスト化合物である。
ホスト化合物としては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、又はカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。中でも、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
そして、発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。
発光層としての層厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
この発光層は、ドーパントやホスト化合物が1種又は2種以上からなる1層構造であってもよいし、あるいは同一組成又は異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。
正孔輸送層は、単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物又は無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。この正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
≪電子輸送層≫
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。
電子輸送層は、単層又は複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
電子輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
≪有機EL素子の作製方法≫
有機EL素子5(陽極としての透明電極4を含む。)の作製方法について説明する。
ここでは有機EL素子5の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製方法について説明する。
まず、ガスバリアーフィルム上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲内の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD等の方法により形成させ、陽極を作製する。
次に、その上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。この有機化合物薄膜の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲内の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
この有機EL素子の作製は、1回の真空引きで一貫して陽極、正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子を備える多色の表示装置(有機ELパネル)に、直流電圧を印加する場合には、陽極をプラス(+)、陰極をマイナス(−)の極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪ガスバリアーフィルム1〜8の作製≫
(樹脂基材の準備)
シートロール状の樹脂基材として、熱可塑性樹脂支持体であって、両面に易接着加工された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA4300、以下、PETと略記する。)を用いた。
(アンカーコート層の形成)
上記樹脂基材の片方の易接着面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標) Z7501を用い、乾燥後の層厚が3μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件として、80℃で3分間の乾燥を行った。次いで、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを使用し、硬化条件;1.0J/cmで硬化を行い、アンカーコート層を形成した。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記樹脂基材のもう一方の易接着面側に、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材 OPSTAR(登録商標) Z7535を、乾燥後の層厚が3μmとなるようにワイヤーバーで塗布した後、80℃、3分で乾燥した後、空気雰囲気下で高圧水銀ランプを用い、硬化条件:1.0J/cmで硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。このブリードアウト防止層を形成後、圧力5Paの減圧下、温度35℃の環境下で96時間保管して調湿した樹脂基材として用いた。
(ガスバリアー層の形成:ローラーCVD法)
図2に記載の磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、この方法をローラーCVD法と称す。)を用い、樹脂基材のブリードアウト防止層を形成した面が成膜ローラーと接触するようにして、樹脂基材を装置に装着し、下記の成膜条件(プラズマCVD条件)のうち、原料ガス、酸素ガス、真空チャンバー内の真空度、及びプラズマ発生用電源からの印加電力を下記に記載の範囲内で変化させて炭素原子比率が異なるようにして、複数回組み合わせることにより、アンカーコート層上に表1に記載のとおりの層厚となるように成膜し、これをガスバリアー層とした。本実施例においては、4回成膜を繰り返して、層厚方向に炭素原子比率の異なるガスバリアー層を形成した。
炭素原子比率を高くするため、主として全供給ガス中のHMDSOの供給量を増やす、あるいは酸素ガスの供給量を減らすことで調整を行い、層厚の調整のために真空チャンバー内の真空度を増減した。
なお、ガスバリアー層の層厚は、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出されるガスバリアー層の表面からの距離を採用した。
〈プラズマCVD条件〉
原料ガス(ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO))の供給量:100〜400sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:400〜2500sccm
真空チャンバー内の真空度:1.5〜3.0Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.0〜4.0kW
プラズマ発生用電源の周波数:70kHz
樹脂基材の搬送速度:12m/min
(元素分布プロファイルの測定)
上記形成したガスバリアー層について、下記条件にてXPSデプスプロファイル測定を行い、層厚方向の薄膜層の表面からの距離に対する、炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を得た。
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチングレート(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):0.8nm
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名「VG Theta Probe」
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800μm×400μmの楕円形
以上のようにして測定した全層領域における炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線より、各元素組成における連続変化領域の有無、極値の有無を観察した。
その結果、ガスバリアー層中の炭素原子比率が複数の極値を有しながら深さ方向に連続的に変化していることが確認された。
図4は、本発明のガスバリアーフィルム1におけるガスバリアー層の炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を示すグラフであり、図5は、比較例のガスバリアーフィルム7におけるガスバリアー層の炭素分布曲線、ケイ素分布曲線及び酸素分布曲線を示すグラフである。なお、図4及び5中、符号Aは炭素分布曲線、符号Bはケイ素分布曲線、符号Cは酸素分布曲線を示している。
≪ガスバリアーフィルムの評価≫
作製した各ガスバリアーフィルムを、温度85℃、相対湿度85%RHの高温高湿度環境下、恒温恒湿オーブンYamato Humidic Chamber IG47M内に設置し、48時間連続で保存した。
<密着性の評価>
高温高湿度環境試験後に、下記の評価ランクに従って、密着性を評価した。
評価結果を表1に示す。
◎:評価面積のうち、剥がれた面積が1%以下
○:評価面積のうち、剥がれた面積が1%より大きく5%以下の範囲内
△:評価面積のうち、剥がれた面積が5%より大きく50%以下の範囲内
×:評価面積のうち、剥がれた面積が50%より大きい
<ガスバリアー性変化率の測定>
作製した各ガスバリアーフィルムについて、高温高湿度環境試験前後の水蒸気透過度をMOCON社製のMOCON水蒸気透過率測定装置Aquatranを用いて測定し、下記の評価ランクに従って評価した。測定条件は、温度40℃、相対湿度90%RHとした。
評価結果を表1に示す。
◎:ガスバリアー性の変化率が、5%以下
○:ガスバリアー性の変化率が、5%より大きく10%以下の範囲内
△:ガスバリアー性の変化率が、10%より大きく50%以下の範囲内
×:ガスバリアー性の変化率が、50%より大きい
なお、表1中、「表面」とはガスバリアー層における基材とは反対側の面を指す。
Figure 2015206096
上記結果より、本発明のガスバリアーフィルムは、比較例のガスバリアーフィルムと比較して、密着性が良好で、ガスバリアー性能の劣化が抑制されていることがわかる。
1 ガスバリアーフィルム
2 基材
3 ガスバリアー層
4 透明電極
5 有機EL素子
6 接着剤層
7 対向フィルム
9 有機ELパネル
10 製造装置
12 送出しローラー
13〜18 搬送ローラー
19、20 成膜ローラー
21 ガス供給管
22 プラズマ発生用電源
23、24 磁場発生装置
25 巻取りローラー、
27、29 搬送系チャンバー
28 成膜チャンバー
30、31 連結部
A 炭素分布曲線
B ケイ素分布曲線
C 酸素分布曲線

Claims (6)

  1. 基材上に、酸化炭化ケイ素を含有するとともに、その組成が層厚方向において変化するガスバリアー層を有するガスバリアーフィルムであって、
    前記ガスバリアー層のX線光電子分光法による深さ方向の元素分布測定に基づく各構成元素の分布曲線のうち、前記ガスバリアー層の層厚方向における前記基材とは反対側の前記ガスバリアー層の表面からの距離と、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する炭素原子数の比率(炭素原子比率)との関係を示す炭素分布曲線が、層厚方向の位置変化に対し、連続的に極大値と極小値とを示しながら変化し、かつ、少なくとも六つの極大値を有し、
    前記ガスバリアー層の層厚に対し、前記基材とは反対側の前記ガスバリアー層表面から1/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、1/3から2/3までの領域に存在する任意の二つの極大値、及び2/3から前記基材までの領域に存在する任意の二つの極大値におけるそれぞれの炭素原子比率(y)と表面からの距離(x)とから最小二乗法により導出される1次関数式y=ax+bの傾きaが、0.03〜0.70の範囲内であることを特徴とするガスバリアーフィルム。
  2. 最小二乗法により導出された1次関数式y=ax+bの切片bが、−10〜20at%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアーフィルム。
  3. 前記炭素分布曲線において極大値を示す位置のうち、前記基材に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が25〜45at%の範囲内であり、かつ、前記基材とは反対側の前記ガスバリアー層表面に最も近い位置の炭素原子比率の極大値が1〜20at%の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスバリアーフィルム。
  4. 前記ガスバリアー層中、前記基材側の前記ガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も大きく、前記基材とは反対側の前記ガスバリアー層表面から35nmの範囲内にある炭素原子比率の極大値が、全ての極大値の中で最も小さいことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
  5. 前記ガスバリアー層の層厚が、80〜250nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルム。
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスバリアーフィルムを製造するガスバリアーフィルムの製造方法であって、
    前記基材を対向するローラー電極間に複数回搬送して、プラズマCVD法により、層厚方向に炭素原子比率の異なる前記ガスバリアー層を形成することを特徴とするガスバリアーフィルムの製造方法。
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