JP6874775B2 - 電子デバイス - Google Patents

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    • Y02E10/50Photovoltaic [PV] energy
    • Y02E10/549Organic PV cells

Description

本発明は、電子デバイスに関する。より詳しくは、本発明は、耐屈曲性に優れ、かつ高温・高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスに関する。
IoT(Internet of Things)分野の発展に伴い、あらゆる機器のセンサーがインターネットのネットワーク上に接続された、いわゆるトリリオンセンサー時代に向けた電子デバイスが求められている。これらの電子デバイスは、様々な環境条件下において、長期にわたって機能を維持する必要があり、耐久性の高い封止手段によって封止されることが求められている。
また、様々な場所にこれらの電子デバイスを設置するためには、電子デバイスが、小型で、かつフレキシブル性を有していることが好ましい。しかし、従来の電子デバイスにおいては、湾曲時にデバイス中に封止された機能構成部(例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子部(有機EL素子部)や有機光電変換素子部など)の配置や立体形状により、機能構成部同士が接触・干渉することで、封止層の劣化や、剥離が生じることがあるという問題があった。
また、サイズの異なる電子デバイスの機能構成部を、接着材を介して一対のバリアー性基板で封止する場合、各機能構成部を封止した箇所には段差が生じるため、封止時において段差の部分に局所的に高い温度と圧力がかり、劣化しやすい箇所が生じるという問題があった。
従来の電子デバイスの機能構成部の封止方法としては、例えば、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子を所定の割合で含有するガスバリアー層を備えた一対の基板と、当該一対の基板間の外周部に設けられた封止部によって、機能素子を封止した電子デバイスが知られている(特許文献1参照)。この方法では、機能素子を密封することができるが、機能素子の周囲には、空間部を有することになるため、電子デバイス自体が厚くなり、フレキシブル性に欠ける、すなわち耐屈曲性が低くなるという問題があった。
また、他の封止方法としては、例えば、電子デバイスの複数の機能構成部を、ガスバリアー層を用いて個別に封止することが知られている(特許文献2参照)。しかし、この方法では封止プロセスが複雑となり生産性が悪いという問題があった。
また、他の封止方法としては、太陽電池とその配線部が設けられた領域を、他の領域よりも厚くなるように保護部材で封止することによって、太陽電池モジュールの信頼性(耐久性)を向上させることが知られている(特許文献3参照)。しかし、この方法では、電子デバイス自体が厚くなるため、フレキシブル性に欠ける、すなわち耐屈曲性が低いという問題があった。
特開2016−189355号公報 特開2009−37798号公報 国際公開2014/030225号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐屈曲性に優れ、かつ高温・高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、電子デバイスを、封止する複数の機能構成部のうち二つを第1構成部及び第2構成部としたときに、当該第1構成部及び第2構成部上の封止層の高さと、当該第1構成部及び第2構成部間の最短距離を所定の条件を満たすように構成することにより、耐屈曲性に優れ、かつ高温・高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスを提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.基板上に配置された複数の機能構成部をガスバリアー性の封止層によって封止した電子デバイスであって、
前記基板上において前記複数の機能構成部が配置されていない領域に前記封止層を積層したときの前記封止層の最表面を基準面とし、前記複数の機能構成部のうち無作為に抽出した隣り合う二つを第1構成部及び第2構成部としたとき、
前記第1構成部及び前記第2構成部を含む無作為に抽出した前記基準面に垂直な断面の形状が、下記条件(1)及び下記条件(2)を満たす電子デバイス。
条件(1):前記基準面に対する前記第1構成部上に設けられた前記封止層の最大高さ、及び前記基準面に対する前記第2構成部上に設けられた前記封止層の最大高さが、それぞれ、0.2〜3.0mmの範囲内である。
条件(2):前記第1構成部と前記第2構成部との間の最短距離が、1〜100mmの範囲内である。
2.前記第1構成部及び前記第2構成部から引き出される配線部の全てが、前記基板上に前記封止層によって封止されている第1項に記載の電子デバイス。
3.前記基板の前記封止層側とは反対側の表面から前記基準面までの層厚が、30〜130μmの範囲内である第1項又は第2項に記載の電子デバイス。
4.前記封止層が、ガスバリアー層と、当該ガスバリアー層の支持層とを備え、
前記ガスバリアー層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、前記ガスバリアー層の元素組成をSiOで表したとき、横軸x・縦軸yとする直交座標系で、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域を、厚さ方向に40〜200nmの範囲内で有する第1項から第3項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
5.前記封止層が、光透過性を有する第1項から第4項までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
本発明の上記手段により、耐屈曲性に優れ、かつ高温・高湿環境での耐久性に優れた電子デバイスを提供することができる。
本発明で規定する構成からなる電子デバイスの技術的特徴とその効果の発現機構は、以下のとおりであると推察している。
本発明の電子デバイスは、封止する複数の機能構成部を、所定の高さの封止層で、当該複数の機能構成部間の距離が所定の距離になるように配置して封止されている。これにより、電子デバイスを屈曲したときに、当該複数の機能構成部同士が接触して封止部分が破壊されることがなくなったため、耐屈曲性及び耐久性に優れた電子デバイスとすることができたと考えられる。
電子デバイスの一例を示す平面図 電子デバイスを図1のII-II部で切断した際の断面図 電子デバイスの他の一例を示す平面図 ガスバリアー層のケイ素、炭素、酸素の分布曲線の一例を示すグラフ ガスバリアー層のC/Si比、O/Si比の分布曲線の一例を示すグラフ ガスバリアー層のケイ素、炭素、酸素の分布曲線の他の一例を示すグラフ ガスバリアー層のC/Si比、O/Si比の分布曲線の他の一例を示すグラフ ガスバリアー層を構成するSiOの組成の一例を表す直交座標 ガスバリアー層を構成するSiOの組成の他の一例を表す直交座標 ガスバリアー層を構成するSiOの組成の一例を表す直交座標 ガスバリアー層を構成するSiOの組成の他の一例を表す直交座標 突起数が10個/mm未満のガスバリアー層の三次元表面粗さ変換データの高さを表示した画像 突起数が50個/mm以上100個/mm未満のガスバリアー層の三次元表面粗さ変換データの高さを表示した画像 突起数が200個/mm以上のガスバリアー層の三次元表面粗さ変換データの高さを表示した画像 ローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図 封止層上の有機EL素子部、有機光電変換素子部及び回路基板の位置関係を示す平面図 内側に180°屈曲させた電子デバイスを示す模式図 外側に180°屈曲させた電子デバイスを示す模式図
本発明の電子デバイスは、基板上に配置された複数の機能構成部をガスバリアー性の封止層によって封止した電子デバイスであって、前記基板上において前記複数の機能構成部が配置されていない領域に前記封止層を積層したときの前記封止層の最表面を基準面とし、前記複数の機能構成部のうち無作為に抽出した隣り合う二つを第1構成部及び第2構成部としたとき、前記第1構成部及び前記第2構成部を含む無作為に抽出した前記基準面に垂直な断面の形状が、上記条件(1)及び上記条件(2)を満たすことを特徴とする。この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記第1構成部及び前記第2構成部から引き出される配線部の全てが、前記基板上に前記封止層によって封止されていることが好ましい。配線部で外部に露出している部分がある場合、その部分から劣化が生じやすく、封止領域内に酸素や水蒸気が侵入しやすい。したがって、配線部の全てを封止することで耐久性を向上させ、かつバリアー性能をより効果的に得ることができる。
本発明の実施態様としては、前記基板の前記封止層側とは反対側の表面から前記基準面までの層厚が、30〜130μmの範囲内であることが好ましい。層厚を30μm以上とすることで、取扱い時に断線などの不具合が生じにくくなる。また、層厚を130μm以下とすることで、電子デバイスの柔軟性を高め、電子デバイスの設置箇所への追従性を向上させることができる。
本発明の実施態様としては、優れたガスバリアー性を得る観点から、前記封止層が、ガスバリアー層と、当該ガスバリアー層の支持層とを備え、前記ガスバリアー層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、前記ガスバリアー層の元素組成をSiOで表したとき、横軸x・縦軸yとする直交座標系で、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域を、厚さ方向に40〜200nmの範囲内で有することが好ましい。
本発明の実施態様としては、前記封止層が、光透過性を有することが好ましい。このような実施態様の電子デバイスは、機能構成部として、例えば、表示部又は発光部を用いる際に特に有用である。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。以下の説明では、本発明を実施するための好ましい形態の具体例を用いて説明するが、以下の例に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
[電子デバイス]
本発明の電子デバイスは、基板上に配置された複数の機能構成部をガスバリアー性の封止層によって封止した電子デバイスであって、前記基板上において前記複数の機能構成部が配置されていない領域に前記封止層を積層したときの前記封止層の最表面を基準面とし、前記複数の機能構成部のうち無作為に抽出した隣り合う二つを第1構成部及び第2構成部としたとき、前記第1構成部及び前記第2構成部を含む無作為に抽出した前記基準面に垂直な断面の形状が、下記条件(1)及び下記条件(2)を満たす構成である。
条件(1):前記基準面に対する前記第1構成部上に設けられた前記封止層の最大高さ、及び前記基準面に対する前記第2構成部上に設けられた前記封止層の最大高さが、それぞれ、0.2〜3.0mmの範囲内である。
条件(2):前記第1構成部と前記第2構成部との間の最短距離が、1〜100mmの範囲内である。
本発明でいう「ガスバリアー性」とは、基板上にガスバリアー性を有する層が積層形成された積層体について、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3mL/m・24h・atm以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%)が、1×10−3g/m・24h以下の高バリアー性であることを意味する。
電子デバイスを構成する機能構成部としては、特に限られないが、(1)有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、有機光電変換素子、液晶表示素子などの各種機能素子、(2)有機光電変換素子で発生した電力を蓄積するための二次電池、(3)熱、光、振動、圧力、気圧、歪み、電磁波等のエネルギー、大気中の湿度、有機若しくは無機のガス、又は液体若しくは気体の流量等を感知する感知センサー、(3)表示部、(4)記憶部、(5)通信ネットワークを介して外部機器との通信を行う通信部、(6)他の機能構成部の動作を統括的に制御する制御回路部などが挙げられる。なお、本発明でいう機能構成部には、機能構成部を配置する基板、機能構成部間に設けられた配線部、基板上に設けられた封止層などは含まれない。
本発明の電子デバイス10は、これらの電子デバイスの機能構成部を少なくとも二つ以上備えている。なお、電子デバイス10は、同種の機能構成部を二つ以上備えていても良い。
以下の説明では、本発明の好ましい形態の一例として、機能構成部として、有機EL素子部、有機光電変換素子部及び制御回路部を備えた電子デバイスを、具体例に挙げて説明する。
電子デバイス10は、図1に示すように、基板20上に、第1構成部としての有機EL素子部11、第2構成部としての有機光電変換素子部12、及び制御回路部13を備えている。また、有機EL素子部11と制御回路部13との間、有機光電変換素子部12と制御回路部13との間は、それぞれ、配線部14,15によって接続されている。
電子デバイス10は、図2に断面図を示すように、基板上40上に配置された電子デバイス10の各機能構成部(有機EL素子部11、有機光電変換素子部12、及び制御回路部13)が封止層40によって封止されている。また、封止層40は、例えば、接着剤層30を介して基板20に接着されている。また、図1において、封止層40によって封止された封止領域43を破線で示している。
なお、説明の都合上、図1及び図2に示すように、電子デバイス10の厚さ方向を上下方向とし、当該上下方向に垂直な方向を、図1に示すように前後方向及び左右方向として説明する。
また、図1では、電子デバイス10の位置関係を示しており、説明の都合上、接着剤層30及び封止層40の記載を省略している。
また、図2には、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12を含む電子デバイス10の断面図のみを示したが、制御回路部13も同様に封止層40によって封止されている。
また、本発明の電子デバイス10は、基板20上において複数の機能構成部が配置されていない領域に封止層40を積層したときの封止層40の最表面を基準面44とし、基板20上に設けられた機能構成部のうち無作為に抽出した隣り合う二つを有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12としたとき、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12を含む無作為に抽出した基準面44に垂直な断面において、下記条件(1)及び下記条件(2)を満たす(図2参照)。
条件(1):基準面44に対する有機EL素子部11上に設けられた封止層40の最大高さh1max及び基準面44に対する有機光電変換素子部12上に設けられた封止層40の最大高さh2maxが、それぞれ、0.2〜3.0mmの範囲内である。
条件(2):有機EL素子部11と有機光電変換素子部12との間の最短距離dminが、1〜100mmの範囲内である。
本発明でいう「基準面44」とは、基板20上において電子デバイス10の機能構成部が設けられていない領域に封止層40を積層したときの封止層40の最表面の位置のことをいう。ここで、基準面44は、基板20を平坦な面に置いた状態で封止層40を積層したときの最表面である。
本発明でいう「最大高さh1max」とは、より詳細には、基準面44に対して、第1構成部(有機EL素子部11)上に設けられた封止層40の最表面部分において、基準面44からの層厚方向の高さが最大となる位置の高さをいう。ここで、第1構成部(有機EL素子部11)上とは、厚さ方向(図2中の上下方向)のみをさし、厚さ方向に平行な方向(図2中の左右方向)は含まない。
本発明でいう「最大高さh2max」とは、より詳細には、基準面44に対して、第2構成部(有機光電変換素子部12)上に設けられた封止層40の最表面部分において、基準面44からの層厚方向の高さが最大となる位置の高さをいう。ここで、第2構成部(有機光電変換素子部12)上とは、厚さ方向(例えば、図2中の上下方向)のみをさし、厚さ方向に平行な方向(例えば、図2中の左右方向)は含まない。
本発明でいう「最短距離dmin」とは、より詳細には、第1構成部(有機EL素子部11)及び第2構成部(有機光電変換素子部12)における、基準面44に垂直な断面における構成部間の距離のうち、最も近くなる位置での距離をいう。
また、図2は、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12を含む、無作為に抽出した基準面44に垂直な断面の一例を示している。図2には断面の一例を示したのみであるが、本発明の電子デバイス10は、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12を含む基準面44に垂直な他のあらゆる断面においても、上記条件(1)及び上記条件(2)を満たしている。
本発明の電子デバイス10は、上記条件(1)及び上記条件(2)を満たすように、機能構成部を所定の高さ、かつ所定の距離で封止することによって、電子デバイス10を屈曲したときに、機能構成部同士が接触して封止部分が破壊されることがなくなったため、耐屈曲性及び耐久性に優れた電子デバイス10にすることができたと考えられる。
また、最大高さh1max及び最大高さh2maxは、電子デバイス10の機能構成部自体の厚さや、封止層40の厚さなどによって、調整することができる。また、基板40と各機能構成部との間に、所定の厚さの基板を挿入することによっても、調整することができる。
また、最短距離dminは、基板20上への電子デバイス10の機能構成部自体の配置位置によって調整することができる。
また、基板20上に設けられた電子デバイス10の複数の機能構成部のうち、隣り合う二つの機能構成部の全てが上記条件(1)及び上記条件(2)を満たすように構成されていてもよいが、隣り合う二つの機能構成部のうち少なくとも二つが上記条件(1)及び上記条件(2)を満たすように構成されたものであればよい。
また、図1には、基板20上に設けられた電子デバイス10の三つの機能構成部の全てが封止領域43内となるように封止した例を示したが、例えば、図3に示すように、基板20上に設けられた電子デバイス10の三つの機能構成部のうち二つ(有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12)のみが封止領域43内となるように封止してもよい。
ただし、図3に示す例では、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12から引き出されている配線部14,15が封止領域43の外部に露出することとなるため、その部分から劣化が生じやすく、封止領域43内に酸素や水蒸気が侵入しやすい。したがって、耐久性を向上させ、かつバリアー性能をより効果的に得る観点からは、図1に示すように、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12から引き出される配線部14,15の全てが、基板20上に封止層40によって封止されていることが好ましい。
また、基板20の封止層40側とは反対側の表面20bから基準面44までの層厚Dが、30〜130μmの範囲内であることが好ましい。層厚Dを30μm以上とすることで、取扱い時に断線などの不具合が生じにくくなる。また、層厚Dを130μm以下とすることで、電子デバイス10の柔軟性を高め、電子デバイス10の設置箇所への追従性を向上させることができる。
また、封止層40が、光透過性を有することが好ましい。封止層40が光透過性である場合の電子デバイス10は、機能構成部として、例えば、表示部又は発光部を用いる際に特に有用である。
ここで、本発明でいう光透過性とは、JIS K 7361−1:1997(プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法)に準拠した方法で測定した全光線透過率が、70%以上であることをいう。
以下、電子デバイス10の各構成の詳細を説明する。
<基板>
基板20は、電子デバイス10の機能構成部の劣化を防ぐため、ガスバリアー性を有することが好ましい。
また、基板20は、電子デバイス10の設置箇所への追従性を向上させる観点から、フレキシブル性を有することが好ましい。本発明でいう「フレキシブル性を有する」とは、基板を曲率半径rが10mmで180°屈曲させた際に(図17A参照)、目視確認にて基板に割れ・欠けの損傷がないことをいう。
ガスバリアー性を備える基板20としては、特に限定されず、例えば板状、フィルム状のガラス、金属等を用いることができる。
ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラス等を用いることができる。
金属としては、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、チタン(Ti)、これらの合金等を用いることができる。
また、基板20は、樹脂フィルム上にガスバリアー層を備えて構成されていてもよい。樹脂フィルムは、ガスバリアー層を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。ガスバリアー層としては、封止層40で説明するガスバリアー層を用いることができる。
樹脂フィルムとしては、従来公知の樹脂フィルムを用いることができる。基板20は、複数の材料から形成されていてもよい。樹脂フィルムとしては、特開2013−226758号公報の段落[0124]〜[0136]、国際公開第2013/002026号の段落[0044]〜[0047]等に記載された樹脂フィルムを挙げることができる。
基板20として用いることができる樹脂フィルムのより好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COP)等のフィルムが挙げられる。
基板20は、光の吸収が少なく、ヘイズが小さいことが好ましい。このため、基板20は、一般的に光学フィルムに適用される樹脂フィルムから、適宜選択して用いることができる。
また、基板20は、樹脂フィルムが単独、又は、複数用いられていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。例えば、樹脂フィルムを支持基板とし、この支持基板の両面にハードコート層が設けられた構成であってもよい。
また、基板20の厚さは、特に制限されないが、10〜120μm程度が好ましい。
(ハードコート層)
本発明に係る基板20は、耐久性や平滑性が向上させる観点から、基板表面にハードコート層が積層されていることが好ましい(図示省略)。ハードコート層は、硬化型樹脂から形成されていることが好ましい。硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の熱硬化型樹脂、紫外線硬化型ウレタンアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシ樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂が挙げられる。
また、ハードコート層には、耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機化合物の微粒子、又は、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコーン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。また、ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。更にハードコート層は、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエーテル化合物、フッ素−シロキサングラフトポリマーを含有してもよい。
ハードコート層を形成するための塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル等)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、又はこれらを混合し利用できる。また、塗布液に含有される硬化型樹脂含量は、例えば、5〜80質量%の範囲内である。
ハードコート層は、上記塗布液を用いて、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の湿式塗布方法で塗設することができる。塗布液の層厚としては、例えば0.1〜30μmの範囲内である。また、基板20に塗布液を塗布する前に、あらかじめ基板20に真空紫外線照射等の表面処理を行うことが好ましい。
塗布液を塗布して形成した塗膜には、紫外線等の活性エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる。これにより、ハードコート層を形成する。硬化に用いる光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。照射条件は、例えば50〜2000mJ/cmの範囲内が好ましい。
<接着剤層>
接着剤層30に用いることができる接着剤としては、具体的には、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、後述する封止層40の基板20側に配置する表面が、粘着性を有する層である場合には、接着剤層30が必要でない場合もある。
<封止層>
封止層40は、ガスバリアー層41と、当該ガスバリアー層41を支持する支持層42とを備えて構成されていることが好ましい。
<支持層>
支持層42としては、上述の基板20と同じ樹脂フィルムを使用することができる。耐熱性や、光学的な特性からは、支持層42としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR),ポリイミド(PI)、環状ポリオレフィン(COP)、三酢酸セルロース(TAC)等のフィルムを用いることが好ましい。
支持層42は、樹脂フィルムが単独又は複数用いられていてもよく、複数の層から形成されていてもよい。
支持層42の厚さは、特に制限されないが、10〜120μmの範囲内が好ましく、25〜150μmの範囲内がより好ましい。支持層の厚さが10μm以上であれば、取り扱い易い十分な厚さとなる。また、支持層の厚さが120μm以下であれば、十分な柔軟性を有し、搬送性やロールへの密着性が十分に得られる。
支持層42は、例えば、粘着剤層を介してガスバリアー層41に密着していることが好ましい。粘着剤層に用いられる粘着剤は、保護フィルムに要求される粘着力を得ることができれば特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。粘着剤層に使用する粘着剤としては、感圧粘着剤を用いることが好ましい。感圧粘着剤は、凝集力と弾性を有し、長時間にわたり安定した粘着性を維持できる。
粘着剤層を形成するための粘着剤としては、透明性に優れる材料が好ましい。粘着剤層を形成するための粘着剤としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、及び、シリコーン系樹脂等を含む粘着剤を挙げることができる。粘着剤の形態としては、例えば、溶剤型、エマルション型、及び、ホットメルト型等を用いることができる。
<ガスバリアー層>
本発明に係るガスバリアー層41は、ケイ素、酸素、及び炭素を含有し、ガスバリアー層41の組成をSiOで表した際に、横軸x・縦軸yとする直交座標系で、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域を、厚さ方向に40〜200nmの範囲内で有することが好ましい。
ここで、上記SiOにおけるxの値はケイ素に対する酸素の含有量(O/Si)(at%)として表し、yの値はケイ素に対する炭素の含有量(C/Si)(at%)として表している。
本発明において、上記元素領域における「領域」とは、ガスバリアー層の厚さ方向に対して略垂直な面(すなわち当該ガスバリアー層の最表面に平行な面)で当該ガスバリアー層を一定又は任意の厚さで分割したときに形成される対向する二つの面の間の三次元的範囲内(領域)をいい、当該領域内の構成成分の組成は、厚さ方向において一定であっても、徐々に変化するものであっても良い。
以下、本発明に係るガスバリアー層41の好ましい形態について詳細に説明する。
図4に、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素原子の含有量を示す曲線(以下、ケイ素分布曲線)と、ガスバリアー層41の厚さ方向の炭素原子の含有量を示す曲線(以下、炭素分布曲線)と、ガスバリアー層41の厚さ方向の酸素原子の含有量を示す曲線(以下、酸素分布曲線)とのグラフを示す。
また、図5に、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素に対する炭素の組成比(C/Si)を示す曲線(以下、C/Si比分布曲線)と、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素に対する酸素の組成比(O/Si)を示す曲線(以下、O/Si比分布曲線)とのグラフを示す。また、図5に示すグラフでは、ケイ素の比率をSiOの組成式に基づいて「1」と規定している。
なお、図4に示す、ガスバリアー層41の厚さ方向の各元素の含有量、及び、この含有量を示す曲線や極大値については、後述するXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。また、図5に示す、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素原子に対する炭素原子の組成比(C/Si)、酸素原子の組成比(O/Si)、及び、この組成比を示す曲線や極大値については、図4におけるXPSデプスプロファイルの測定値から算出することができる。
図4に示すように、ガスバリアー層41は、ケイ素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量が厚さ方向に連続的に変化することが好ましい。すなわち、図4に示すように、ガスバリアー層41において、層厚方向における層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、炭素原子、及び、酸素原子の含有量との関係を示す各分布曲線が、連続的に変化することが好ましい。
また、図5に示すように、ガスバリアー層41において、層厚方向における層表面からの距離(L)と、ケイ素原子に対する炭素原子の比率を示すC/Si比分布曲線が、連続的に変化することが好ましい。同様に、ケイ素原子に対する酸素原子の比率を示すO/Si比分布曲線が、連続的に変化することが好ましい。
ガスバリアー層41は、炭素分布曲線が、6個以上の極大値を有し、かつ、ガスバリアー層41の層厚を極大値の数で割った値[層厚/極大値数]が25nm以下であることが好ましい。図4に示すグラフでは、約55nmの厚さのガスバリアー層において、炭素分布曲線が図面に矢印で示す6個の極大値を有する。このため[層厚/極大値数]は約9nmとなる。
ここで、本発明において「極大値」とは、ガスバリアー層41の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる変曲点であり、かつ、その変曲点の位置から厚さ方向に2〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が1at%以上減少する点のことをいう。
極大値の数と、[層厚/極大値数]は、後述する真空プラズマCVD法を用いた気相成膜ガスバリアー層の成膜条件を変更することにより、任意に調整することができる。例えば、気相成膜ガスバリアー層の成膜において基材の搬送速度を上げることにより、隣接する極大値間の距離を小さくすることができる。また、気相成膜ガスバリアー層の成膜速度を上げることにより、同じ厚さのガスバリアー層41において極大値の数が多くなりやすい。
ガスバリアー層41の炭素分布曲線において、隣り合う極大値同士の間は、組成が連続して変化する一つの領域として考えられる。このため、ガスバリアー層41は、極大値の数だけ、厚さ方向に組成が連続して変化する領域を有している。したがって、炭素分布曲線が6個以上の極大値を有する構成は、ケイ素、酸素、及び、炭素の組成比の異なる領域を層厚方向に複数有し、この複数の領域が層厚方向に積層されていることを示す。さらに、ガスバリアー層41の炭素分布曲線において、極大値の数が増えるほど、組成が連続して変化する一つの領域がガスバリアー層41内に多く存在する。
また、ガスバリアー層41において、炭素分布曲線の[層厚/極大値数]が25nm以下の構成は、炭素分布曲線における極大値の発生確率を示している。例えば、[層厚/極大値数]が25nmであれば、厚さ方向において、平均25nmあたりに一つの極大値を有することを示す。極大値が発生する割合を25nm以下と小さくすることにより、組成が連続して変化する一つの領域の厚さを、小さくすることができる。すなわち、ガスバリアー層41をより薄い層が積層した状態と同様の構成とすることができる。
ところで、支持層42(支持基板)にロールtoロール(Roll to Roll)方式でガスバリアー層41を形成する場合、張力と熱とが加えられた状態で支持層42が搬送される工程で、支持層42の弾性率が低下するため、支持層42の耐熱性や膜厚等の条件の差によって程度は異なるが、支持層42とガスバリアー層41の積層体である封止層40が1〜2%伸長する。
ガスバリアー層41において、隣り合う極大値と極大値との平均間隔が25nm以下であり、かつ、組成が連続して変化する領域が厚さ方向に6層以上存在することにより、上述した封止層40の伸長に対し、封止層40の水蒸気透過度(WVTR)の劣化を抑制することができる。
ガスバリアー層41が、組成が連続して変化する複数の領域を有することにより、伸長後の封止層40の水蒸気透過度(WVTR)の劣化を抑制することができる理由は、以下のように考えられる。なお、以下の説明は、ガスバリアー層41の構成及び効果から導かれる、水蒸気透過度(WVTR)の劣化抑制のメカニズムに対する推測の一つであり、水蒸気透過度(WVTR)の劣化が抑制されるメカニズム等は以下の記載に限定されない。
例えば、ガスバリアー層41が単層構成である場合、上述した封止層40の伸長において、ガスバリアー層41内の1箇所にクラックが発生すると、このクラックが厚さ方向に伝搬し、クラックがガスバリアー層41の厚さ方向に貫通しやすい。このように、クラックがガスバリアー層41の厚さ方向を貫通すると、このクラック内を水分等が容易に通過できるため、封止層40の水蒸気透過度(WVTR)が劣化する。
しかし、ガスバリアー層41が、連続して組成が変化する領域を複数有すことにより、ガスバリアー層41内の1か所(一つの領域)にクラックが発生し、クラックが発生した領域内を厚さ方向に貫通した場合にも、クラックが他の領域までの間で終端し、他の領域にはクラックが伝搬しにくい。さらに、ガスバリアー層41は複数の領域が積層されているため、クラックが発生した領域は他の領域によって被覆される。このため、ガスバリアー層41内に発生した微小なクラック、及び、このクラックが発生した領域は、他の領域によって遮蔽される。すなわち、ガスバリアー層41内に光学顕微鏡観察で検出されない程度の微小なクラックが発生しても、この微小なクラックが、ガスバリアー層41全体を貫通するほど成長せず、クラックが他の領域によってガスバリアー層41内に封じ込められる。したがって、ガスバリアー層41が、組成が連続して変化する領域を厚さ方向に複数有することにより、伸長後の封止層40の水蒸気透過度(WVTR)の劣化を抑制することができる。
ガスバリアー層41において、炭素分布曲線が6個以上の極大値を有することが好ましい。一般的には、組成が連続して変化する領域の層数は、炭素分布曲線の極大値の数+1層となるため、炭素分布曲線が6個以上の極大値を有すると、組成が連続して変化する領域が7層以上設けられる。組成が連続して変化する領域が7層以上設けられることにより、微小なクラックが発生した領域を他の領域が被覆する作用が発現しやすく、ガスバリアー層41全体でのクラックの貫通を防ぐ効果を発現しやすい。
+1層となる。
また、炭素分布曲線の極大値の数が多いほど、組成が連続して変化する領域の積層数が増加する。ガスバリアー層41により多くの領域が積層された状態の方が、クラックが発生した領域を他の領域が被覆する作用が発現しやすい。このため、炭素分布曲線の極大値の数は、多いほど好ましく、炭素分布曲線の極大値の数は、8個以上であることが好ましく、12個以上であることがより好ましい。
図6及び図7に、炭素分布曲線の極大値が12個の場合のガスバリアー層における、各分布曲線を示す。なお、図6及び図7に示すグラフは、上述の図4及び図5に対応し、グラフの詳細については、図4及び図5と同様である。
図6は、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素原子の含有量を示す曲線(以下、ケイ素分布曲線)と、ガスバリアー層41の厚さ方向の炭素原子の含有量を示す曲線(以下、炭素分布曲線)と、ガスバリアー層41の厚さ方向の酸素原子の含有量を示す曲線(以下、酸素分布曲線)とを示すグラフである。
また、図7は、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素に対する炭素の組成比(C/Si)を示す曲線(以下、C/Si比分布曲線)と、ガスバリアー層41の厚さ方向のケイ素に対する酸素の組成比(O/Si)を示す曲線(以下、O/Si比分布曲線)とを示すグラフである。図7に示すグラフでは、SiOの組成式に基づいてケイ素の比率を1に規定している。
図6及び図7に示す例のガスバリアー層41は、約105nmの厚さのガスバリアー層において、炭素分布曲線が図面に矢印で示す12個の極大値を有する。このため、図6に示すグラフでは、[層厚/極大値数]は約9nmとなる。従って、図6及び図7に示す例も、上述の図4及び図5に示す例と同様に、ガスバリアー層41に要求される、ガスバリアー層41の[層厚/極大値数]が25nm以下の規定を満たす。
さらに、ガスバリアー層41の厚さが一定の条件では、組成が連続して変化する領域の厚さが小さい方が、より多くの領域が積層された状態となる。すなわち、ガスバリアー層41全体の厚さを、炭素分布曲線の極大値の数で割った値[層厚/極大値数]が小さくなるほど、組成が連続して変化する各領域の厚さが小さくなる。したがって、ガスバリアー層41の厚さが一定の条件においては、[層厚/極大値数]が小さくなるほど、多くの領域を積層させることが可能となり、微小なクラックが発生した領域を他の領域が被覆する作用を発現しやすくなる。このため、ガスバリアー層41の[層厚/極大値数]が15nm以下であることがより好ましい。
(伸長処理前後の水蒸気透過度)
また、支持層42とガスバリアー層41とが積層された封止層40が2%伸長されるとき、伸長前の封止層[A]と、伸長後の封止層[B]とが、下記(A1)から(A3)の要件を全て満たすことが好ましい。
(A1)封止層[A]の水蒸気透過度(WVTR)の平均値、及び、封止層[B]の水蒸気透過度(WVTR)の平均値が、それぞれ、0.2(g/m/day)以下である。
(A2)(封止層[B]の水蒸気透過度(WVTR)の平均値/封止層[A]の水蒸気透過度(WVTR)の平均値)≦2を満たす。
(A3)封止層[A]の水蒸気透過度(WVTR)の標準偏差(σ)、及び、封止層[B]の水蒸気透過度(WVTR)の標準偏差(σ)が、それぞれ、[σ<0.30]を満たす。
なお、封止層40の水蒸気透過度(WVTR)は、60℃、90%RH、2時間の測定値とする。また、封止層40の水蒸気透過度の測定は、下記のa〜eの方法によって行う。
a.水蒸気透過度評価セルの作製
水分不透過基板上に、水分と反応して腐食する腐食性金属層と、評価する封止層40とをこの順に積層し、水蒸気透過度評価セルを作製する。
b.光学的特性の測定
水蒸気に曝す前の水蒸気透過度評価セルに対し、一方の面側から光を入射して腐食性金属層の光学的特性を測定する。その後、水蒸気透過度評価セルを60℃、90%RHの環境下に2時間保持し、水蒸気に曝す。その後、水蒸気に曝した水蒸気透過度評価セルの一方の面側から光を入射して腐食性金属層の光学的特性を測定する。
c.光学的特性の変化量の測定
水蒸気に曝す前後の水蒸気透過度評価セルに対して、腐食性金属層の指定した範囲を、一定の単位面積で、10等分以上の一定の分割数に分割する。そして、水蒸気に曝す前後の試料において、分割した各領域内において、相互に対応する部分の光学的特性の変化量を測定する。
d.水蒸気透過度の算出
上記cで得た光学的特性の変化量から、分割した領域毎に、腐食性金属層における腐食部分の体積を算出する。そして、この腐食部分の体積から水蒸気透過量を求め、分割した領域毎に、封止層40の水蒸気透過度を算出する。
e.平均値と標準偏差の算出
上記dで得られた分割した領域毎の水蒸気透過度から、分割した各領域の平均値と標準偏差を算出し、封止層40の水蒸気透過度(WVTR)の平均値、及び、水蒸気透過度(WVTR)の標準偏差(σ)を求める。
伸長処理前の封止層[A]と、伸長処理を施した封止層[B]とが共に、水蒸気透過度(WVTR)の平均値0.2(g/m/day)以下を満たすことにより、封止層40は、伸長前後において共に十分なガスバリアー性を備える。このため、この条件を満たす封止層40は、十分なガスバリアー性を有していることになる。
伸長処理を施した封止層[B]は、伸長処理により水蒸気透過度(WVTR)が僅かに劣化する。しかし、伸長処理前の封止層[A]の水蒸気透過度(WVTR)の2倍以下であれば、十分なガスバリアー性を有している。このため、封止層40が、[(封止層[B]の水蒸気透過度(WVTR)の平均値/封止層[A]の水蒸気透過度(WVTR)の平均値)≦2]を満たすことにより、伸長された後においても、十分なガスバリアー性を有していることになる。
水蒸気透過度(WVTR)の測定では、一定の単位面積で分割した各領域内において、ガスバリアー層41に不良があると、不良が存在する領域において、水蒸気透過度(WVTR)が劣化する。例えば、封止層40の伸長により発生したガスバリアー層41におけるクラックが、ガスバリアー層41を貫通していると、このクラックが発生したら領域内の水蒸気透過度(WVTR)が劣化する。
このため、分割した各領域の水蒸気透過度(WVTR)の標準偏差(σ)を算出すると、水蒸気透過度(WVTR)が劣化した領域が存在しない場合には、標準偏差(σ)は、0.30未満となる。すなわち、ガスバリアー層41内に微小なクラックが発生しても、この微小なクラックが、ガスバリアー層41全体を貫通するほど成長せず、発生したクラックが全てガスバリアー層41内に封じ込められている場合には、一定の単位面積で分割した全ての領域内においてガスバリアー層41のガスバリアー性が低下せず、水蒸気透過度(WVTR)の標準偏差(σ)が小さいままとなる。
これに対し、ガスバリアー層41内に発生した微小なクラックがガスバリアー層41全体を貫通するほど成長し、発生したクラックをガスバリアー層41内で封じ込められていない場合には、クラックが存在する領域内においてガスバリアー層41のガスバリアー性が低下し、この領域において、水蒸気透過度(WVTR)が劣化する。このような、水蒸気透過度(WVTR)が劣化した領域が存在する場合には、この劣化した領域と、他の水蒸気透過度(WVTR)が劣化していない領域とが同時に存在するため、水蒸気透過度(WVTR)標準偏差(σ)が急激に大きくなり、0.30を容易に超える。封止層40において、上記標準偏差(σ)が0.30未満であれば、発生した微小なクラックがガスバリアー層41内に十分に封じ込められていると考えられる。
(ガスバリアー層の組成式SiO
ガスバリアー層41は、上述のように、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、SiOの組成で表される。そして、SiOにおけるxの値はケイ素に対する酸素の含有量(O/Si)として表され、yの値はケイ素に対する炭素の含有量(C/Si)として表される。
ガスバリアー層41は、ガスバリアー層41の組成をSiOで表した際に、y<0.20の組成を有する領域の厚さと、y>1.40の組成を有する領域の厚さとの合計が、20nm未満であることが好ましい。
y<0.20の組成は、炭素比率が少なく酸素比率が多い領域である。すなわちガスバリアー層41が、SiOに近い組成となる。SiOに近い組成を有する領域は、伸長処理でクラックが入りやすく、y<0.20の組成を有する領域を厚さ方向に20nmを超えて有すると、この領域に生じるクラックが、クラックを生じにくい他の異なる組成の領域にまでも伝播しやすい。このため、ガスバリアー層41のバリアー性が劣化しやすい。
また、y>1.40の組成は、酸素比率が少なく炭素比率が多い領域である。すなわちガスバリアー層41が、SiCに近い組成となる。この組成についても、上述のSiOに近い組成を有する領域と同様に、伸長処理でクラックが入りやすく、他のる組成の領域にクラックが伝播しやすくなるため、ガスバリアー層41のバリアー性が劣化しやすい。
また、図8〜11に、ガスバリアー層41を構成するSiOの組成において、横軸をx、縦軸をyとした直交座標を示す。図8及び図9は、上述の図5に示すC/Si比分布曲線、及び、O/Si比分布曲線を有するガスバリアー層41における、厚さ毎のSiOで表される組成の(x,y)の座標を示す。また、図10及び図11は、上述の図7に示すC/Si比分布曲線、及び、O/Si比分布曲線を有するガスバリアー層41における、厚さ毎のSiOで表される組成の(x,y)の座標を示す。なお、図8〜11に示す各(x,y)は、図5及び図7のC/Si比分布曲線、及び、O/Si比分布曲線において、白抜きの三角形で示す点における厚さでの組成を表している。
ガスバリアー層41は、図8及び図10に示すように、SiOで表した際に、横軸x縦軸yとする直交座標系で、下記ABCDの4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域を、ガスバリアー層41の厚さ方向に40〜200nmの範囲内で有していることが好ましい。
A(x=0.70、y=1.10)
B(x=0.9、y=1.40)
C(x=2.0、y=0.20)
D(x=1.8、y=0.20)
さらに、ガスバリアー層41は、図9及び図11に示すように、SiOで表した組成において厚さ毎の(x,y)の分布において、下記ABEFの4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域を、ガスバリアー層41の厚さ方向に40〜200nmの範囲内で有していることが、より好ましい。
A(x=0.70、y=1.10)
B(x=0.9、y=1.40)
E(x=1.8、y=0.40)
F(x=1.6、y=0.40)
さらに、ガスバリアー層41の全てが、上位ABCDの4点で囲まれた領域内に存在する元素組成であることが好ましく、上位ABEFの4点で囲まれた領域内に存在する元素組成であることが特に好ましい。ガスバリアー層41を構成するSiOの組成は、図8〜11に示す、SiC−SiO理論線に沿って分布しやすい傾向にある。そして、全体的に、SiC−SiO理論線よりも炭素の原子比が多く領域に分布しやすい傾向にある。そして、SiC−SiO理論線近傍の上記上位ABCDの4点で囲まれた狭い範囲内が、ガスバリアー層41としてガスバリアー性、物理的特性、及び、光学特性において好ましい組成である。さらに、ABEFの4点で囲まれたより狭い範囲内が、ガスバリアー層41としてガスバリアー性、物理的特性、及び、光学特性において特に好ましい組成である。
また、ガスバリアー層41は、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域の両方を有することが好ましい。さらに、ガスバリアー層41は、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域の両方を有し、かつ、ガスバリアー層41の70%以上の領域が、C/Siが0.95以上、又は、C/Siが0.7以下のいずれかの領域に含まれることが好ましく、ガスバリアー層41の70%以上の領域、若しくは、全ての領域が、C/Siが0.95以上、又は、C/Siが0.7以下のいずれかの領域に含まれることが好ましい。
さらに、図4〜7に示す炭素分布曲線のように、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域とが、厚さ方向において交互に積層されていることが好ましい。特に、炭素分布曲線のように、C/Siが0.95以上の組成となる領域と、C/Siが0.7以下の組成となる領域とが、交互に四つ以上積層されていることが好ましく、図6及び図7に示すように、各領域が六つ以上積層されていることがより好ましい。
ガスバリアー層41を構成するSiOの組成において、組成が異なる領域では、それぞれ物理的な特性が異なるため、各領域におけるクラックが発生しやすい条件も異なる。例えば、ガスバリアー層41を構成するSiOの組成においては、炭素の原子比が小さく、酸素の原子比が大きくなると、ガスバリアー層41の組成がSiOの組成に近づき、ガスバリアー層41の物理的な特性がガラスのように脆く、割れやすくなりやすい。このため、炭素の原子比が大きい、C/Siが0.95以上の組成をガスバリアー層41が含むことにより、ガスバリアー層41にクラックが発生し難くすることができる。
また、C/Siが0.95以上となる組成の領域ととともに、C/Siが小さい組成の領域、C/Siが0.70以下の組成の領域とを含むことにより、異なる耐クラック性を有する領域が積層された構成となり、C/Siを0.95以上となる組成の領域と、C/Siが0.70以下の組成の領域とのいずれか一方の領域にクラックが発生しやすい条件においても、他方の領域にはクラックが発生しにくい。このため、ガスバリアー層41に、大きく組成の異なる領域が2以上存在すると、異なる耐クラック性を有する領域が積層された構成となり、一度にガスバリアー層41の厚さ方向を貫通するような大きなクラックの発生が抑制できる。したがって、ガスバリアー層41において、全ての領域が一度に破損することが無くなるため、上述のクラックが発生した領域が他の領域によって被覆され、クラックが他の領域によって遮蔽されてガスバリアー層41内に封じ込められる効果がより得られやすい。
(ガスバリアー層の突起数)
ガスバリアー層41は、内部にパーティクル等の異物の混入が少ない方が好ましい。ガスバリアー層41の内部に異物、例えば、成膜時に混入するパーティクル等が存在する場合、ガスバリアー性フィルムに伸長処理を施すと、異物周囲に応力が集中して、クラックが発生する起点になると考えられる。したがって、ガスバリアー層41の単位面積あたりの異物数が少ない方が、ガスバリアー性フィルムを伸長した場合のクラックの発生が抑制されると考えられる。
しかしながら、ガスバリアー層41の内部のパーティクル等の異物を直に観察、測定することは非常に難しい。しかし、ガスバリアー層41の成膜時にパーティクル等の異物が取り込まれた場合、ガスバリアー層41の層厚よりも小さい異物であっても、その部分の成膜レートが高くなるため、ガスバリアー層41の表面に微小な突起として検出されるようになる。すなわち、ガスバリアー層41において、パーティクル等の異物が内部に封じ込められている箇所は、この異物に起因した突起が発生する。このため、ガスバリアー層41の表面の突起を観察することにより、ガスバリアー層41の内部のパーティクル等の異物の混入の様子を観察することができる。したがって、ガスバリアー層41の単位面積あたりの異物起因の突起数が少ない方が、ガスバリアー性フィルムを伸長した場合のクラックの発生が抑制されやすいと考えられる。
ガスバリアー層41では、表面において観測される、高さが10nm以上の突起数が100個/mm以下であることが好ましい。突起数が100個/mm以下であれば、ガスバリアー層41の耐クラック性が低下せず、ガスバリアー性フィルムのガスバリアー性が低下しにくい。
ガスバリアー層41において、10nm程度の微小な突起は表面粗さのうねり成分(波長の長い凹凸)の影響で、分離検出することが困難である。このため、ガスバリアー層41における10nm以上の微小な突起数は、下記の方法で検出及び計数される値で規定する。
まず、ガスバリアー層41の表面を、光干渉方式の三次元表面粗さ測定装置(Veeco社製 WYKO NT9300)を用いて計測する。そして、この計測により、ガスバリアー層41の三次元表面粗さデータを取得する。
次に、取得した三次元表面粗さデータに対して波長10μmのハイパスフィルターをかけて粗さうねり成分を除去する処理を行う。この処理により得られるうねり成分が除去された三次元表面粗さ変換データにおいて、データをヒストグラム表示した際の最大のピーク位置を0としたときに、高さが10nm以上となる突起を計数する。そして、計数した突起数をmm当たりの個数として算出する。より具体的には、測定解像度約250nmの条件で、159.2μm×119.3μmの範囲6視野(面積として0.114mm)を測定及び計数し、mm当たりの個数として算出する。
ガスバリアー層41の表面状態について、上記方法で処理して得られた三次元表面粗さ変換データの高さをグレースケールで表示した画像(159.2μm×119.3μm)を、図12〜14に示す。図12〜14では、ガスバリアー層41の表面の基準となる位置から高さが大きくなる位置ほど、色が白く表示される。
図12は、突起数が10個/mm未満のガスバリアー層41について、上記処理により得られた表面の画像である。図13は、突起数が50個/mm以上100個/mm未満のガスバリアー層41について、上記処理により得られた表面の画像である。図14は、突起数が200個/mm以上のガスバリアー層41について、上記処理により得られた表面の画像である。
図12に示すように、突起数が10個/mm未満のガスバリアー層41では、画像中に白点で表示される高さ10nmを超える突起が少ない。そして、図13及び図14に示すように、突起数が50個/mm以上100個/mm未満、及び、突起数が200個/mm以上と、高さ10nmを超える突起数が増える毎に、画像中に表示される白点の数が増えている。したがって、上記方法で検出及び計数することにより、ガスバリアー層41の表面の10nm程度の微小な突起数を規定することができる。
<ガスバリアー層の形成方法>
封止層40を構成するガスバリアー層41としては、ロールtoロール方式の適用が可能な、無機化合物の気相成膜により形成されることが好ましい。
(ガスバリアー層;気相成膜)
無機化合物の気相成膜によって形成されたガスバリアー層41(以下、気相成膜ガスバリアー層ともいう)は、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有する無機化合物を含む。無機化合物を含む気相成膜ガスバリアー層は、副次的な成分として、上記の無機化合物以外の元素を含有してもよい。
気相成膜ガスバリアー層のガスバリアー性は、水蒸気透過率(WVTR)が、0.2(g/m/day)以下であることが好ましく、1×10−2(g/m/day)以下であることがより好ましい。気相成膜ガスバリアー層の層厚は、特に制限されないが、5〜1000nmの範囲内であること好ましい。このような範囲内であれば、ガスバリアー性能、折り曲げ耐性及び断裁加工適性に優れる。また、気相成膜ガスバリアー層は2層以上から構成されてもよい。
気相成膜ガスバリアー層を形成するための気相成膜方法としては、特に限定されない。既存の薄膜堆積技術を利用することができる。例えば、従来公知の蒸着法、反応性蒸着法、スパッタ法、反応性スパッタ法、化学気相成長法等の気相成膜法を用いることができる。これらの気相成膜法によるガスバリアー層は、公知の条件を適用して作製することができる。
例えば、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)は、基材上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基材表面又は気相での化学反応により膜を堆積する方法である。また、化学反応を活性化する目的で、プラズマを発生させる方法等があり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマを励起源としたプラズマCVD法(PECVD法)である真空プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法等の公知のCVD法が挙げられる。特に、PECVD法が好ましい方法である。以下、化学気相成長法の好ましい手法として、真空プラズマCVD法について詳しく説明する。
(真空プラズマCVD法)
真空プラズマCVD法は、プラズマ源を搭載した真空容器に材料ガスを流入させ、電源からプラズマ源に電力供給することで真空容器内に放電プラズマを発生させ、プラズマで材料ガスを分解反応させ、生成された反応種を基材に堆積させる方法である。真空プラズマCVD法により得られる気相成膜ガスバリアー層は、原材料である金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力等の条件を選ぶことで、目的の化合物を製造できるため好ましい。
原材料の化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、及び、アルミニウム化合物等のケイ素を含む化合物及び金属を含む化合物を用いることが好ましい。これら原材料の化合物は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いてもよい。
これらの、ケイ素化合物、チタン化合物、及び、アルミニウム化合物として、従来公知の化合物を用いることができる。例えば、公知の化合物としては特開2013−063658号公報の段落[0028]〜[0031]、特開2013−047002号公報の段落[0078]〜[0081]等に記載された化合物を挙げることができる。好ましくは、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、等が挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、及び、水蒸気等が挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスと混合して用いてもよい。原材料の化合物を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで所望の気相成膜ガスバリアー層を得ることができる。
(真空プラズマCVD装置)
以下、好適な形態である真空プラズマCVD法について具体的に説明する。図15に、真空プラズマCVD法に適用される、ロールtoロール方式を用いたローラー間放電プラズマCVD装置の模式図の一例を示す。
上述のプラズマCVD法により気相成膜ガスバリアー層を製造する際に用いることができる成膜装置としては、例えば、図15に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながら、ロールtoロール方式で気相成膜ガスバリアー層を製造することができる。以下、図15を参照しながら、気相成膜ガスバリアー層の製造方法についてより詳細に説明する。なお、図15は、気相成膜ガスバリアー層の製造において好適に利用することができる磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図15に示す磁場を印加したローラー間放電プラズマCVD装置(以下、単にプラズマCVD装置ともいう。)50は、主には、繰り出しローラー51と、搬送ローラー52、搬送ローラー54、搬送ローラー55及び搬送ローラー57と、成膜ローラー53及び成膜ローラー56と、成膜ガス供給管59と、プラズマ発生用電源63と、成膜ローラー53及び56の内部に設置された磁場発生装置61及び磁場発生装置62と、巻取りローラー58とを備えている。また、このようなプラズマCVD装置50においては、少なくとも成膜ローラー53及び56と、成膜ガス供給管59と、プラズマ発生用電源63と、磁場発生装置61,62とが、図示を省略した真空チャンバー内に配置されている。また、図15においては、成膜ローラー53及び56にプラズマ発生用電源63に接続された電極ドラムが設置される。更に、このようなプラズマCVD装置50において、真空チャンバー(不図示)は、真空ポンプ(不図示)に接続されており、この真空ポンプにより真空チャンバー内の圧力を適宜調整することが可能となっている。
このようなプラズマCVD装置50においては、一対の成膜ローラー(成膜ローラー53と成膜ローラー56)を一対の対向電極として機能させることが可能となるように、各成膜ローラーがそれぞれプラズマ発生用電源63に接続されている。対の成膜ローラーに、プラズマ発生用電源63より電力を供給することにより、成膜ローラー53と成膜ローラー56との間の空間に放電し、プラズマを発生させることができる。このようなプラズマCVD装置50においては、一対の成膜ローラー53及び56は、その中心軸が同一平面上において略平行となるようにして配置することが好ましい。このようにして、一対の成膜ローラー53及び56を配置することにより、成膜レートを倍にでき、なおかつ、同じ構造の膜を成膜できる。
また、成膜ローラー53及び成膜ローラー56の内部には、成膜ローラーが回転しても回転しないようにして固定された磁場発生装置61及び磁場発生装置62がそれぞれ設けられている。
さらに、成膜ローラー53及び成膜ローラー56としては、適宜公知のローラーを用いることができ、より効率よく薄膜を形成することができる観点から、直径が同一のものを使うことが好ましい。また、このようなプラズマCVD装置50に用いる繰り出しローラー51及び搬送ローラー52,54,55,57としては、公知のローラーを適宜選択して用いることができる。また、巻取りローラー58も、気相成膜ガスバリアー層を形成した基材60を巻き取ることが可能なものであればよく、特に制限されず、適宜公知のローラーを用いることができる。
成膜ガス供給管59としては、原料ガス及び酸素ガスを所定の速度で供給又は排出することが可能なものを適宜用いることができる。さらに、プラズマ発生用電源63としては、従来公知のプラズマ発生装置の電源を用いることができる。このようなプラズマ発生用電源63としては、効率よくプラズマCVD法を実施することが可能となることから、一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが可能なもの(交流電源など)を利用することが好ましい。また、このようなプラズマ発生用電源63としては、印加電力を100W〜10kWの範囲とすることができ、かつ交流の周波数を50Hz〜500kHzの範囲とすることが可能なものであることがより好ましい。また、磁場発生装置61,62としては、適宜公知の磁場発生装置を用いることができる。
図15に示すプラズマCVD装置50を用いて、例えば、原料ガスの種類、プラズマ発生装置の電極ドラムの電力、磁場発生装置の強度、真空チャンバー内の圧力(減圧度)、成膜ローラーの直径、樹脂基材の搬送速度等を適宜調整することにより、所望のガスバリアー層を製造することができる。
図15に示すプラズマCVD装置50において、成膜ガス(原料ガス等)を真空チャンバー内に供給し、一対の成膜ローラー53及び56間に、磁場を発生させながらプラズマ放電を行うことにより、成膜ガス(原料ガス等)がプラズマによって分解され、成膜ローラー53が保持する基材60の表面上、及び、成膜ローラー56が保持する基材60の表面上に、気相成膜ガスバリアー層が形成される。なお、このような成膜に際しては、基材60が繰り出しローラー51、搬送ローラー52,54,55,57、巻取りローラー58、及び、成膜ローラー53及び56等で搬送されることにより、ロールtoロール方式の連続的な成膜プロセスで気相成膜ガスバリアー層を形成することができる。
(原料ガス)
プラズマ化学気相成長法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスとを用い、その成膜ガス中の酸素ガスの含有量は、成膜ガス中の有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量以下であることが好ましい。
気相成膜ガスバリアー層の作製に用いる成膜ガスを構成する原料ガスとしては、少なくともケイ素を含有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。気相成膜ガスバリアー層の作製に適用可能な有機ケイ素化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。これらの有機ケイ素化合物の中でも、成膜での取り扱い及び得られる気相成膜ガスバリアー層のガスバリアー性等の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンが好ましい。また、これらの有機ケイ素化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、成膜ガスは、原料ガスの他に反応ガスとして、酸素ガスを含有することができる。酸素ガスは、原料ガスと反応して酸化物等の無機化合物となるガスである。成膜ガスとしては、原料ガスを真空チャンバー内に供給するために、必要に応じて、キャリアガスを用いてもよい。さらに、成膜ガスとしては、プラズマ放電を発生させるために、必要に応じて、放電用ガスを用いてもよい。このようなキャリアガス及び放電用ガスとしては、適宜公知のものを使用することができ、例えば、ヘリウム、アルゴン、ネオン、キセノン等の希ガスや水素ガスを用いることができる。
このような成膜ガスが、ケイ素を含有する有機ケイ素化合物を含む原料ガスと酸素ガスを含有する場合、原料ガスと酸素ガスの比率としては、原料ガスと酸素ガスとを完全に反応させるために理論上必要となる酸素ガスの量の比率よりも、酸素ガスの比率を過剰にし過ぎないことが好ましい。これについては、例えば、国際公開第2012/046767号等の記載を参照することができる。
(真空度)
真空チャンバー内の圧力(真空度)は、原料ガスの種類等に応じて適宜調整することができるが、0.5〜100Paの範囲とすることが好ましい。
(ローラー成膜)
図15に示すプラズマCVD装置50を用いたプラズマCVD法においては、成膜ローラー53及び56間に放電するために、プラズマ発生用電源63に接続された電極ドラムに印加する電力は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができる。電極ドラムに印加する電力としては、例えば、0.1〜10kWの範囲内とすることが好ましい。このような範囲の印加電力であれば、パーティクル(不正粒子)の発生も見られず、成膜時に発生する熱量も制御範囲内であるため、成膜時の基材表面温度の上昇による、樹脂基材の熱変形、熱による性能劣化や成膜時の皺の発生もない。
プラズマCVD装置50において、基材60の搬送速度(ライン速度)は、原料ガスの種類や真空チャンバー内の圧力等に応じて適宜調整することができるが、0.25〜100m/minの範囲内とすることが好ましく、0.5〜20m/minの範囲内とすることがより好ましい。ライン速度が範囲内であれば、樹脂基材の熱に起因する皺も発生し難く、形成される気相成膜ガスバリアー層の厚さも十分に制御可能となる。
(X線光電子分光法による厚さ方向の元素分布測定)
ガスバリアー層内における炭素原子の含有比率の平均値は、以下のXPSデプスプロファイルの測定によって求めることができる。
ガスバリアー層の層厚方向における炭素素分布曲線、酸素分布曲線、及びケイ素分布曲線等は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定と、ア
ルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間が、ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離におおむね相関する。このため、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される、ガスバリアー層の表面からの距離を「ガスバリアー層の層厚方向におけるガスバリアー層の表面からの距離」として採用することができる。また、このようなXPSデプスプロファイル測定に際して採用するスパッタ法としては、以下の測定条件とすることが好ましい。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec
エッチング間隔(SiO換算値):3nm以下
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名"VG Theta Probe"
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形
炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出されるガスバリアー層のうちの少なくとも1層の層厚方向における該ガスバリアー層の表面からの距離(L、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、[(dC/dL)≦0.5]で表される条件を満たすことをいう。
(ガスバリアー層における炭素元素プロファイル)
ガスバリアー層は、ガスバリアー層の構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含む。そして、層厚方向に組成が連続的に変化することが好ましい。また、炭素原子比率がガスバリアー層の特定の領域において、濃度勾配を有して連続的に変化する構成を有することが、ガスバリアー性と屈曲性を両立する観点から好ましい。
このような炭素原子分布プロファイルを有するガスバリアー層においては、層内における炭素分布曲線が複数の極値を有する。炭素分布曲線が複数の極値を有すると、得られるガスバリアー層のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性が十分発揮できる。
なお、上記分布曲線の極値とは、ガスバリアー層の厚さ方向において、ガスバリアー層の表面からの距離に対する元素の原子比率の極大値又は極小値である。極大値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比率の値が増加から減少に変わる変曲点であり、かつ、その変曲点の位置から厚さ方向に2〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が1at%以上減少する点のことをいう。また、極小値とは、ガスバリアー層の表面からの距離を変化させた場合に元素の原子比の値が減少から増加に変わる変曲点であり、かつ、その変曲点の位置から厚さ方向に2〜20nm変化させた位置の元素の原子比率の値が1at%以上増加する点のことをいう。すなわち、極大値及び極小値は、厚さ方向の位置を2〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が1at%以上減少又は増加する点である。
(ガスバリアー層における各元素プロファイル)
ガスバリアー層においては、構成元素として炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有するが、それぞれの原子の比率と、最大値及び最小値についての好ましい態様を、以下に説明する。
(炭素原子比率の最大値と最小値の関係)
ガスバリアー層では、炭素分布曲線における炭素原子比率の最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましい。炭素原子比率の最大値及び最小値の差を3at%以上とすることにより、作製したガスバリアー層を屈曲させた際のガスバリアー性が十分得られる。最大値及び最小値の差が5at%以上であれば、得られるガスバリアー層のフィルムを屈曲させた場合におけるガスバリアー性がより向上する。
(酸素原子比率の最大値と最小値の関係)
ガスバリアー層においては、酸素分布曲線における最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差の絶対値が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましい。
(ケイ素原子比率の最大値と最小値の関係)
ガスバリアー層においては、ケイ素分布曲線における最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差の絶対値が10at%未満であることが好ましく、5at%未満であることがより好ましい。最大の極値(最大値)と最小の極値(最小値)の差が10at%未満であれば、得られるガスバリアー層のガスバリアー性及び機械的強度が得られる。
また、膜面全体の均一性やガスバリアー性を向上させるためには、ガスバリアー層が膜面方向(ガスバリアー層の表面に平行な方向)で実質的に一様であることが好ましい。ガスバリアー層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定によりガスバリアー層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について酸素分布曲線、炭素分布曲線、及び、酸素−炭素合計の分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比率の最大値及び最小値の差の絶対値が、互いに同じであるか、又は、5at%以内の差であることをいう。
上記したガスバリアー層のその他の構成については、国際公開第2012/046767号の段落[0025]〜[0047]、特開2014−000782号公報の段落[0029]〜[0040]等に記載された構成を適宜参照及び採用することができる。
(ガスバリアー層の厚さ)
ガスバリアー層の厚さは、5〜1000nmの範囲内であることが好ましく、20〜500nmの範囲内であることより好ましく、40〜300nmの範囲内であることが特に好ましい。ガスバリアー層の厚さが範囲内であれば、酸素ガスバリアー性、水蒸気バリアー性等のガスバリアー性に優れ、屈曲された状態でも良好なガスバリアー性が得られる。さらに、ガスバリアー層の厚さの合計値が範囲内であると、上記効果に加えて所望の平面性を実現することができる。
(ガスバリアー層の形成方法のまとめ)
上述した本発明に係るガスバリアー層を形成する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができるが、緻密に元素分布が制御させたガスバリアー層を形成することができる観点からは、上述の図15に示すローラー間放電プラズマCVD装置を用いて、磁場を印加したローラー間に放電空間を有する放電プラズマ化学気相成長法により形成する方法が好ましい。また、例えば、国際公開第2012/046767号の段落[0049]〜[0069]等に記載の方法を参照することができる。
より詳しくは、図15に示すローラー間放電プラズマCVD装置において、磁場を印加したローラー間放電プラズマ処理装置を用い、基材を一対の成膜ローラーに巻き回し、この一対の成膜ローラー間に成膜ガスを供給しながらプラズマ放電する、プラズマ化学気相成長法でガスバリアー層を形成することが好ましい。また、このように一対の成膜ローラー間に磁場を印加しながら放電する際には、一対の成膜ローラー間の極性を交互に反転させることが好ましい。このように、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を巻き回して、かかる一対の成膜ローラー間にプラズマ放電することにより、基材と成膜ローラーとの間の距離が変化し、プラズマ強度が異なることによって、炭素原子比率が濃度勾配を有し、かつ層内で連続的に変化するようなガスバリアー層を形成することが可能となる。
また、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、かつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する樹脂基材の表面部分も同時に成膜することが可能となる。すなわち、成膜効率を倍にでき、かつ、同じ構造の膜が成膜されるため、炭素分布曲線の極値を倍増させることが可能となり、効率よく本発明に係るガスバリアー層を形成することが可能となる。
<有機EL素子部>
本実施形態で示す電子デバイス10には、有機EL素子部11が封止されている。有機EL素子部11は、例えば、一対の電極間に少なくとも発光層を備えた有機機能層を備えている。
有機機能層は、発光層に加えて、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層等を備えている。
発光層は発光性の有機化合物を含有し、発光層内において、陽極から直接注入されるか又は陽極から正孔輸送層等を介して注入される正孔と、陰極から直接注入されるか又は電子輸送層等を介して注入される電子とが、再結合して発光する。
また、以下に有機EL素子部の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/(電子阻止層/)発光層/(正孔阻止層/)電子輸送層/電子注入層/陰極
上述した陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層及び陰極は、それぞれ特に制限はなく、例えば、特開2012−183823号公報、特開2014−120334号公報、特開2013−89608号公報等に記載の公知の化合物を用いて、公知の製造方法により作製することができる。
<有機光電変換素子部>
本実施形態で示す電子デバイス10には、太陽電池などに用いられる有機光電変換素子部12が封止されている。
有機光電変換素子12としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクへテロジャンクション層、i層ともいう)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
有機光電変換素子の層構成(太陽電池の好ましい層構成も同様である)の好ましい具体例を以下に示す。
(1)陽極/発電層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(3)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極
発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを作製していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクへテロジャンクションを作製してもよいが、バルクへテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。
また、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔及び電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((2)、(3))の方が好ましい。
また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(4)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成ともいう)であってもよい。
また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((5)の構成)であってもよい。
上述した、陽極、正孔輸送層、p型半導体層、発電層、n型半導体層、電子輸送層、中間電極、陰極は、それぞれ特に制限はなく、例えば、特開2011−222212号公報等に記載の公知の化合物を用いて、公知の製造方法により作製することができる。
<制御回路部>
本実施形態で示す電子デバイス10には、制御回路部13が封止されている。
制御回路部13は、配線部14,15によって、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12に接続されている。制御回路部13は、光照射されることによって有機光電変換素子部12で発生した電流を受け取り、当該電流を有機EL素子部11に電流を供給する制御を行う。
また、図示はされていないが、有機EL素子部11の発光が一定になるように、有機EL素子部11及び有機光電変換素子部12に接続されている配線14,15の途中に薄膜シート状の二次電池を設け、有機EL素子部11に供給する電力を安定化するように構成してもよい。
実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<支持基板1の作製>
支持基板(支持層)として、両面に易接着層を有する厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、帝人デュポンフィルム社製、KFL12W#50)を準備した。
次に、下記の材料を混合し、ハードコート塗布液1を調製した。
重合性バインダー:サートマー社製SR368 12.0質量部
重合性バインダー:荒川化学社製ビームセット575 22.0質量部
重合開始剤:BASF社製イルガキュア651 1.0質量部
溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル 65.0質量部
次に、ロールtoロール方式の塗布装置を用い、上記ハードコート塗布液1を上記支持基板(PETフィルム)の一方の面に乾燥層厚が3μmとなるように塗布し、乾燥させた後、紫外線を500mJ/cmの条件で照射して硬化させて、巻き取った。次に、上記支持基板(PETフィルム)の他方の面に、上記と同様の方法で厚さ3μmのハードコート層を形成した。これを支持基板1とした。
<ガスバリアー層の形成条件>
ガスバリアー層は、上述の図15に示すロールtoロール方式を用いたローラー間放電プラズマCVD装置において、二つの成膜部(第1成膜部、第2成膜部)が連続で配置された装置(特開2015−131473号公報の図2参照)を用いて形成した。
第1成膜部、及び、第2成膜部における成膜条件を、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を用い、酸化ガスとして酸素(O2)を用い、下記表Iに示すC1〜C6の条件のいずれかに設定した。そして、各成膜部において、C1〜C6の条件のいずれかの条件を適用することにより、ガスバリアー層を形成した。また、C1〜C6に共通の条件として、成膜有効幅1000mm換算とし、電源周波数を80kHz、成膜ロールの温度を10℃とした。
なお、ガスバリアー層の成膜では、二つの成膜部(第1成膜部、第2成膜部)を有する装置を用いることにより、基材を成膜装置に1回通すごとに、2層のガスバリアー層が成膜される。ガスバリアー層の作製において、1回目の成膜は、第1成膜部から第2成膜部に向けて基材を搬送し(順方向)、2回目の成膜は、第2成膜部から第1成膜部に向けて基材を搬送した(逆方向)。同様に、奇数回目の成膜では、第1成膜部から第2成膜部に向けて基材を搬送し(順方向)、偶数回目の成膜では、第2成膜部から第1成膜部に向けて基材を搬送した(逆方向)。
Figure 0006874775
<封止層1の作製>
支持基板1に対し、1回目、3回目及び5回目の成膜条件には表IのC1を用い、2回目、4回目及び6回目の成膜条件に表IのC2を用いて、計6回の成膜を行うことにより支持基板1にガスバリアー層を形成し、封止層1を得た。
<ガスバリアー層の元素組成分布の測定>
封止層1について、ガスバリアー層の厚さ方向の元素組成分布を、下記の光電子分光法(XPS)分析を用いて測定した。
(XPS分析条件)
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・測定領域:Si2p、C1s、O1s
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:一定時間スパッタ後、測定を繰り返した。1回の測定は、SiO換算で、約2.8nmの厚さ分となるようにスパッタ時間を調整した。
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
なお、XPS分析は厚さ方向に2.8nm間隔で測定した。また、ガスバリアー層を構成するSiOxCyの組成の判定において、ガスバリアー層の表層の測定点は、表面吸着物の影響があることから除外した。また、ガスバリアー層において、上述のABCDの範囲内の組成となる厚さについては、連続成膜していることから表層直下の組成と表層から2点目の測定点の組成とが近いと判断し、表層から2点目の測定点の組成が表面位置まで連続して形成されているものとして厚さを計測した。
<ガスバリアー層の層厚の測定>
封止層1について、以下の集束イオンビーム(FIB)加工装置を用いて薄片を作製した後、切片の断面を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)で観察し、ガスバリアー層の層厚を計測した。
(FIB加工)
・装置:SII製SMI2050
・加工イオン:(Ga 30kV)
・試料厚み:100〜200nm
(TEM観察)
・装置:日本電子製JEM2000FX(加速電圧:200kV)
元素組成分布及び層厚の測定により、ガスバリアー層の層厚(nm)、ガスバリアー層の元素組成をSiOで表したときのy<0.2又はy>1.4となる領域の層厚(nm)、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域の層厚(nm)の結果について、表IIに示す。
なお、後述する各封止層のガスバリアー層についても同様に測定した。
Figure 0006874775
<封止層2の作製>
封止層1の作製方法において、支持基板として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ株式会社製、ルミラーS10)を用いハードコート層の厚さを3μmから0.5μmに変更した以外は同様にして封止層2を作製した。
<封止層3の作製>
封止層1の作製方法において、支持基板として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東レ株式会社製、ルミラーS10)を用いハードコート層の厚さを3μmから1.5μmに変更した以外は同様にして封止層3を作製した。
<封止層4の作製>
封止層1の作製方法において、支持基板として、厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、東洋紡社製、コスモシャイン A4300)を用い、ハードコートの厚さを3μmから2μmに変更した以外は同様にして封止層4を作製した。
<封止層5の作製>
封止層1の作製方法において、ハードコートの厚さを3μmから5μmに変更した以外は同様にして封止層5を作製した。
<封止層6の作製>
封止層1の作製方法において、ハードコートの厚さを3μmから7.5μmに変更した以外は同様にして封止層6を作製した。
<封止層7〜14の作製>
封止層1の作製方法において、表Iに記載の成膜条件C1〜C6を組み合わせて、成膜条件及び成膜回数を適宜変更することにより、表IIに記載のガスバリアー層の層厚(nm)、ガスバリアー層の元素組成をSiOで表したときのy<0.2又はy>1.4となる領域の層厚(nm)、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域の層厚(nm)となるように調整してガスバリアー層を形成し、封止層7〜14を作製した。
<封止層15の作製>
支持基板1にガスバリアー層をスパッタ法により形成し、封止層15を作製した。
封止層15のガスバリアー層としては、ロールtoロール方式のスパッタ成膜装置を用いて、常法により、SiO層を形成した。スパッタ成膜では、ターゲットとして多結晶Siターゲットを用い、酸素を導入して、組成がSiOとなるように調整した。また、スパッタレートと搬送速度を調整することで、層厚を30nmとなるように調整した。
<有機EL素子部の作製>
以下に、有機EL素子部の作製で使用する化合物の化学構造式を示す。
Figure 0006874775
特開2015−131473号公報の[0243]〜[0289]段落に記載された試料No.3((基材)/領域(A)/領域(C)/領域(D))と同様の方法で、基材上にガスバリアー層を形成し、基板2とした。
基板2のガスバリアー層を形成した面側に対して、蒸着により、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィー技術と湿式エッチングとを用いてパターニングし陽極を形成した。この陽極を有する基板2をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥した。
この基板2を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、一方、モリブデン製抵抗加熱ボートに上記化合物(α−NPD)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにホスト化合物として上記化合物(CBP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートにバソキュプロイン(BCP)を200mg入れ、別のモリブデン製抵抗加熱ボートに上記化合物(Ir−1)を100mg入れ、更に別のモリブデン製抵抗加熱ボートに上記化合物(Alq)を200mg入れ、真空蒸着装置に取り付けた。
次いで、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、上記化合物(α−NPD)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で基板2の中央に位置する様に55mm×95mmの面積で蒸着し、正孔輸送層を設けた。更にバソキュプロイン(BCPと上記化合物(Ir−1)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、それぞれ蒸着速度0.2nm/秒、0.012nm/秒で前記正孔輸送層上に共蒸着して発光層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。更に、バソキュプロイン(BCP)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記発光層の上に蒸着して層厚10nmの正孔阻止層を設けた。その上に、更に、上記化合物(Alq)の入った前記加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で前記正孔阻止層の上に蒸着して、更に、層厚40nmの電子輸送層を設けた。なお、蒸着時の基板温度は室温であった。
引き続き、フッ化リチウム0.5nm及びアルミニウム110nmを蒸着して陰極を形成した。以上により、最終的な素子の平面視したときの形状が縦60mm×横100mmの長方形となるように、有機EL素子部を作製した。
<有機光電変換素子部の作製>
有機EL素子部の作製方法と同様に、特開2015−131473号公報の[0243]〜[0289]段落に記載された試料No.3((基材)/領域(A)/領域(C)/領域(D))と同様の方法で、基材上にガスバリアー層を形成した基板3を準備した。
基板3のガスバリアー層を形成した面側に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/sq.)を、通常のフォトリソグラフィー技術と湿式エッチングとを用いてパターニングし第1の電極を形成した。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック
社製)を層厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を成膜した。これ以降は、上記基板を窒素チャンバー中に入れ、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルターで濾過しながら層厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を成膜した。
次に、上記一連の機能層を成膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、さらに続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直交させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。以上により、最終的な素子の平面視したときの形状が縦55mm×横95mmの長方形となるように、有機光電変換素子部を作製した。
<制御回路部>
制御回路部としては、配線部によって、有機EL素子部及び有機光電変換素子部にそれぞれ接続した際に、有機光電変換素子部で発生した電流を受け取り、当該電流を有機EL素子部に電流を供給する制御を行うことが可能な制御回路部を用意した。また、制御回路部の平面視したときの形状は、縦40mm×横40mmの正方形であった。
[電子デバイス1の作製]
有機EL素子部及び有機光電変換素子部の作製方法と同様に、特開2015−131473号公報の[0243]〜[0289]段落に記載された試料No.3((基材)/領域(A)/領域(C)/領域(D))と同様の方法で、基材上にガスバリアー層を形成した基板4を準備した。
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、基板4のガスバリアー層を形成した面側に、株式会社ダイセル製接着剤(商品名:セルビーナスH)を塗布した。
次に、上記で作製した封止層1(縦200mm×横200mm)のガスバリアー層側に、上記で作製・準備した有機EL素子部11、有機光電変換素子部12、及び回路基板13をそれぞれ配置した(図16参照)。また、有機EL素子部及び有機光電変換素子部の電極は、それぞれ、回路基板に配線部14,15を介して接続させた。また、有機EL素子部11と有機光電変換素子部12とは、封止層1の横の中心線CLに対して対称な位置となるように配置した。
次に、基板4の接着剤を塗布した面と、封止層1の有機EL素子、有機光電変換素子及び回路基板を配置した面とを対面させるようにして、気泡が入らないように接着させて封止し、電子デバイス1を得た。
(最大高さh1max、最大高さh2max及び構成部間の最短距離dminの調整)
基板上に封止層を積層したときの封止層の最表面を基準面とし、有機EL素子部及び有機光電変換素子部を含む無作為に抽出した当該基準面に垂直な断面において、有機EL素子部上に設けられた封止層の当該基準面に対する最大高さh1max、有機光電変換素子部上に設けられた封止層の当該基準面に対する封止層の最大高さh2max、及び有機EL素子部と有機光電変換素子部との間の最短距離dminを、それぞれ表IIIに記載の値
となるように調整して、基板上に有機EL素子部及び有機光電変換素子部を封止した。
上記最大高さh1max及び上記最大高さh2maxの調整では、真空低湿環境下で水分を十分に除去した25μm、50μm、100μm又は188μmの厚さの異なるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、基板と有機EL素子部との間や、基板と有機光電変換素子との間に積層することで表IIIの高さの値になるように調整した。
また、構成部間の最短距離dminの調整では、封止層1に配置する際に有機EL素子部及び有機光電変換素子部間の距離を調整することによって、表IIIの距離の値となるよ
うに調整した。
[電子デバイス2〜15の作製]
電子デバイス1の作製において、最大高さh1max、最大高さh2max及び構成部間の最短距離dminを表IIIに記載の値となるように調整した以外は同様にして、電子
デバイス2〜15を作製した。
[電子デバイス16の作製]
電子デバイス1の作製において、最大高さh1max、最大高さh2max及び構成部間の最短距離dminを表IIIに記載の値となるように調整し、図3に示すように、封止
領域43を有機EL素子部及び有機光電変換素子部の周囲のみとし、有機EL素子部及び有機光電変換素子部からの電極配線が露出するようにした以外は同様にして、電子デバイス16を作製した。
[電子デバイス17〜30の作製]
電子デバイス1の作製において、最大高さh1max、最大高さh2max及び構成部間の最短距離dminを表IIIに記載の値となるように調整し、封止層を表IIIに記載した種類に変更した以外は同様にして、電子デバイス17〜30を作製した。
<評価>
上記で作製した各電子デバイスについて、下記評価を行った。
(1.耐屈曲性評価)
各電子デバイスを平坦な面に置き、各電子デバイスの各有機光電変換素子部にソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルター)を用いて、100mW/cmの強度の光を照射した。また、当該光の照射時に、各電子デバイスの各有機EL素子部からの発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
次に、各電子デバイスを、平坦な状態から、内側(図17A)及び外側(図17B)を連続して曲率半径rが10mmで180°屈曲する工程を、100回(内側50回及び外側50回の計100回)を繰り返した。ここで、当該屈曲する工程では、各電子デバイスの折り曲げ中心が、有機EL素子部及び有機光電変換素子部間の中心線に一致するように屈曲させた。
次に、100回屈曲させた各電子デバイスを平坦な面に置き、各電子デバイスの各有機光電変換素子部にソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルター)を用いて、100mW/cmの強度の光を照射した。また、当該光の照射時に、各電子デバイスの各有機EL素子部からの発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
そして、100回屈曲後における電子デバイスからの発光輝度が、初期状態(100回屈曲前)の電子デバイスからの発光輝度の98%以上であった電子デバイスの割合(%)を下記基準で評価した。また、本評価では、各電子デバイスをそれぞれ200個ずつ作製して評価し、上記電子デバイスの割合(%)が、90%以上(下記ランク3以上)を合格とした。
(評価基準)
5:100%(200個全部)
4:99.0%以上100%未満(198〜199個)
3:90.0%以上99.0%未満(180〜197個)
2:70.0%以上90.0%未満(140〜179個)
1:70.0%未満(139個以下)
(2.高温・高湿環境での耐久性の評価)
各電子デバイスを平坦な面に置き、各電子デバイスの各有機光電変換素子部にソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルター)を用いて、100mW/cmの強度の光を照射した。また、当該光の照射時に、各電子デバイスの各有機EL素子部からの発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
次に、高温・高湿環境(温度85℃、相対湿度85%RH)で、各電子デバイスを500時間保存した。次に、各電子デバイスを、平坦な状態から、内側(図17A)及び外側(図17B)を連続して曲率半径rが10mmで180°屈曲する工程を、50回(内側25回及び外側25回の計50回)を繰り返した。ここで、当該屈曲する工程では、各電子デバイスの折り曲げ中心が、有機EL素子部及び有機光電変換素子部間の中心線に一致するように屈曲させた。
次に、高温・高湿環境に保存後50回屈曲させた各電子デバイスを平坦な面に置き、各電子デバイスの各有機光電変換素子部にソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルター)を用いて、100mW/cmの強度の光を照射した。また、当該光の照射時に、各電子デバイスの各有機EL素子部からの発光輝度を、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。
そして、高温・高湿環境に保存後50回屈曲させた電子デバイスからの発光輝度が、初期状態の電子デバイスからの発光輝度の98%以上であった電子デバイスの割合(%)を下記基準で評価した。また、本評価では、各電子デバイスをそれぞれ200個ずつ作製して評価し、上記電子デバイスの割合(%)が、90%以上(下記ランク3以上)を合格とした。
5:100%(200個全部)
4:99.0%以上100%未満(198〜199個)
3:90.0%以上99.0%未満(180〜197個)
2:70.0%以上90.0%未満(140〜179個)
1:70.0%未満(139個以下)
Figure 0006874775
表IIIの結果より、本発明の電子デバイスは、耐屈曲性に優れ、かつ高温・高湿環境で
の耐久性に優れていることが分かった。これに対し、比較例の電子デバイスは、いずれかの項目について劣るものであった。
本発明の電子デバイスは、電子デバイスを構成する機能構成部を少なくとも二つ以上備えたデバイスに利用できる。電子デバイスを構成する機能構成部としては、例えば、(1)有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、有機光電変換素子、液晶表示素子などの各種機能素子、(2)有機光電変換素子で発生した電力を蓄積するための二次電池、(3)熱、光、振動、圧力、気圧、歪み、電磁波等のエネルギー、大気中の湿度、有機若しくは無機のガス、又は液体若しくは気体の流量等を感知する感知センサー、(3)表示部、(4)記憶部、(5)通信ネットワークを介して外部機器との通信を行う通信部、(6)他の機能構成部の動作を統括的に制御する制御回路部などが挙げられる。
10 電子デバイス
11 有機EL素子部(第1構成部)
12 有機光電変換素子部(第2構成部)
13 制御回路部
14 配線
15 配線
20 基板
30 接着剤層
40 封止層
41 ガスバリアー層
42 支持層
43 封止領域
44 基準面
50 プラズマCVD装置
51 繰り出しローラー
52,54,55,57 搬送ローラー
53,56 成膜ローラー
58 巻取りローラー
59 成膜ガス供給管
61,62 磁場発生装置
63 プラズマ発生用電源

Claims (5)

  1. 基板上に配置された複数の機能構成部をガスバリアー性の封止層によって封止した電子デバイスであって、
    前記基板上において前記複数の機能構成部が配置されていない領域に前記封止層を積層したときの前記封止層の最表面を基準面とし、前記複数の機能構成部のうち無作為に抽出した隣り合う二つを第1構成部及び第2構成部としたとき、
    前記第1構成部及び前記第2構成部を含む無作為に抽出した前記基準面に垂直な断面の形状が、下記条件(1)及び下記条件(2)を満たす電子デバイス。
    条件(1):前記基準面に対する前記第1構成部上に設けられた前記封止層の最大高さ、及び前記基準面に対する前記第2構成部上に設けられた前記封止層の最大高さが、それぞれ、0.2〜3.0mmの範囲内である。
    条件(2):前記第1構成部と前記第2構成部との間の最短距離が、1〜100mmの範囲内である。
  2. 前記第1構成部及び前記第2構成部から引き出される配線部の全てが、前記基板上に前記封止層によって封止されている請求項1に記載の電子デバイス。
  3. 前記基板の前記封止層側とは反対側の表面から前記基準面までの層厚が、30〜130μmの範囲内である請求項1又は請求項2に記載の電子デバイス。
  4. 前記封止層が、ガスバリアー層と、当該ガスバリアー層の支持層とを備え、
    前記ガスバリアー層が、ケイ素、酸素、及び、炭素を含有し、前記ガスバリアー層の元素組成をSiOで表したとき、横軸x・縦軸yとする直交座標系で、A(x=0.70、y=1.10)、B(x=0.9、y=1.40)、C(x=2.0、y=0.20)、D(x=1.8、y=0.20)の4点で囲まれた領域内に存在する元素組成領域を、厚さ方向に40〜200nmの範囲内で有する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
  5. 前記封止層が、光透過性を有する請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子デバイス。
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