JPWO2018066149A1 - ブロック共重合体及びその製造方法、並びに、その利用 - Google Patents

ブロック共重合体及びその製造方法、並びに、その利用 Download PDF

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Abstract

スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体であって、重合体ブロック(A)は、マレイミド化合物に由来する構造単位を30質量%以上99質量%以下有し、且つ、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の重合体であり、アクリル系重合体ブロック(B)は、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上、且つ、Tgが20℃以下の重合体である。

Description

本明細書は、ブロック共重合体及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、耐熱性、耐油性及び成形性に優れるエラストマーとして有用なブロック共重合体、並びにその製造方法に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年10月6日に出願された国際特許出願であるPCT/JP2016/079852に基づく優先権を主張するものであり、これらの全内容は、参照により本出願に組み込まれるものとする。また、本出願は、上記PCT出願ほか、2015年10月27日に出願された日本国特許出願である特願2015−210708及び2016年5月31日に出願された日本国特許出願である特願2016−108516に関連し、これらの全内容は、参照により本出願に組み込まれるものとする。
工業的に広く使用されるシール材料として、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム及び四フッ化エチレン樹脂(PTFE)等の各種エラストマーが挙げられる。これらの内でもアクリルゴムは、アクリル酸エステルを主体とするゴム状弾性体であり、耐熱性及び耐油性に優れることから、自動車用のパッキン、シール材をはじめ、各種ホース材、接着剤、コーティング材等の材料として広く用いられている。
一方、特に自動車用途においては、エンジン出力の増大、静粛性を目的とした防音材の設置等に起因してエンジンルーム内が高温化する傾向にあり、エラストマーに対する耐熱性及び耐油性向上の要求が高まっている。
このような背景の下、耐熱性、耐油性の高いエラストマー組成物が幾つか提案されている。特許文献1には、エポキシ基含有アクリルゴム(成分(A))、熱可塑性ポリエステル樹脂(成分(B))、並びに、オレフィン系重合体セグメント及びビニル系共重合体セグメントとからなる特定のグラフト共重合体又はその前駆体(成分(C))からなる組成物であって、上記(A)成分を架橋して得られる熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。また、特許文献2には、カルボキシル基含有アクリルゴムに、充填材と、箔状充填材とをそれぞれ少なくとも1種類混合してなるアクリルゴム組成物が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の組成物であっても、高度な耐熱性及び耐油性が要求されるような用途に対しては十分満足できるものではなかった。さらに、流動性及び成形性の点でも懸念されるものであった。
流動性及び成形性に優れるエラストマー組成物として、ブロック共重合体を含むエラストマー組成物が知られている。特許文献3には、(A)(メタ)アクリル系共重合体、(B)エステル交換触媒、(C)熱可塑性樹脂を必須成分とし、上記(メタ)アクリル系共重合体が、(a)メタアクリル系重合体ブロックと(b)アクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体(E)からなる熱可塑性エラストマー組成物が開示されている。
また、特許文献4には、メタクリル系共重合体ブロック(A)とアクリル系共重合体ブロック(B)とをそれぞれ1つ以上含有するブロック共重合体であり、かつ、メタクリル系共重合体(A)が、メタクリレート単量体由来の繰返し単位と、2種類のN−置換マレイミド単量体由来の繰り返し単位とを含有するランダム共重合体ブロックであり、アクリル系共重合体ブロック(B)が、アクリル酸エステル単量体由来の繰り返し単位を含有する、アクリル系熱可塑性樹脂が開示されている。
特開2007−45885号公報 特開2011−144364号公報 特開2003−261733号公報 特開2014−12782号公報
しかし、特許文献3に記載された熱可塑性エラストマー組成物は、用途によっては、耐熱性及び耐油性の点で十分満足されない場合があり、さらなる性能の向上が要求されるものであった。特許文献4に記載された熱可塑性樹脂は、良好な耐熱性及び耐油性を発揮するものであり、耐熱・耐油の観点から厳しい条件下における用途にも耐え得るものであった。しかしながら、流動性及び成形性の点では、尚も改良の余地が見られるものであった。
このように、高度な耐熱性及び耐油性を示すとともに、成形性にも優れるエラストマー組成物については、未だ示されてはいない。さらに、Oリングやガスケット等の部材には、長期間に渡り力を加えて変形させた後に力を解放した際に変形が回復する性質が強く要求されており、いわゆる圧縮永久歪が小さい材料が求められている。
本明細書に開示する技術は、このような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、優れた耐熱性及び耐油性を有するとともに、良好な流動性を示し、成形性にも優れるエラストマー材料、並びに、その製造方法を提供することを課題とするものである。さらに、本明細書に開示される技術の別の課題は、圧縮永久歪の小さいエラストマー材料を提供することである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロックをハードセグメントとするブロック共重合体が、上記の各種性能に優れるという知見を得た。また、リビングラジカル重合法を利用することにより、上記ブロック共重合体を効率良く得ることが可能であることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成したものである。
本発明は以下の通りである。
〔1〕スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体であって、
前記重合体ブロック(A)は、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対してマレイミド化合物に由来する構造単位を30質量%以上99質量%以下有し、且つ、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の重合体であり、
前記アクリル系重合体ブロック(B)は、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上、且つ、Tgが20℃以下の重合体である、ブロック共重合体。
〔2〕前記重合体ブロック(A)の溶解パラメータ(SP値)が10.0以上である前記〔1〕に記載のブロック共重合体。
〔3〕前記重合体ブロック(A)が、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対して前記スチレン類に由来する構造単位を1質量%以上70質量%以下有する前記〔1〕又は〔2〕に記載のブロック共重合体。
〔4〕前記マレイミド化合物が、一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載のブロック共重合体。
Figure 2018066149
〔式中、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基又はPhRを表す。ただし、Phはフェニル基を表し、Rは水素、ヒドロキシ基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲンを表す。〕
〔5〕前記重合体ブロック(A)が、さらに、アミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位を有する前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一に記載のブロック共重合体。
〔6〕前記重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかに架橋性官能基を有する前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一に記載のブロック共重合体。
〔7〕前記架橋性官能基が架橋性単量体に由来するものであり、前記重合体ブロック(A)の全構造単位に対して前記架橋性単量体に由来する構造単位を0.01モル%以上60モル%以下有する前記〔6〕に記載のブロック共重合体。
〔8〕数平均分子量が、10000以上500000以下である前記〔1〕〜〔7〕のいずれか一に記載のブロック共重合体。
〔9〕スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を、リビングラジカル重合法により製造する方法であって、
前記重合体ブロック(A)は、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対してマレイミド化合物に由来する構造単位を30質量%以上99質量%以下有し、且つ、Tgが150℃以上の重合体であり、
前記アクリル系重合体ブロック(B)は、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上、且つ、Tgが20℃以下の重合体である、
方法。
〔10〕第一重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して前記ブロック(A)を得る工程、
次いで、第二重合工程として、アクリル系単量体を重合して前記重合体ブロック(B)を得る工程、
さらに第三重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して前記ブロック(A)を得る工程を含む、
前記〔9〕に記載のブロック共重合体の製造方法。
〔11〕第一重合工程として、アクリル系単量体を重合して前記ブロック(B)を得る工程、並びに、
第二重合工程として、前記スチレン類1質量%以上70質量%以下、及び前記マレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して前記重合体ブロック(A)を得る工程を含む、
前記〔9〕に記載のブロック共重合体の製造方法。
〔12〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載のブロック共重合体を含むエラストマー。
〔13〕前記〔1〕〜〔8〕のいずれか一に記載のブロック共重合体を含む自動車用エラストマー。
本明細書に開示されるブロック共重合体によれば、極めて高い耐熱性及び耐油性を発揮するエラストマー材料を得ることができる。また、良好な流動性を有することから成形加工性にも優れ、高品質の成形体を提供することが可能となる。さらに、圧縮永久歪の小さなエラストマー材料を得ることが可能となる。
さらに、本明細書に開示される製造方法によれば、上記ブロック共重合体を、簡便に効率良く得ることができる。
以下、本開示の代表的かつ非限定的な具体例について、適宜図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本開示の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに開示は、さらに改善されたブロック共重合体及びその製造方法を提供するために、他の特徴や開示とは別に、又は共に用いることができる。
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本開示を実施する際に必須のものではなく、特に本開示の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記及び下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立及び従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本開示の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
本明細書及び/又はクレームに記載された全ての特徴は、実施例及び/又はクレームに記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
以下、本明細書に開示される技術の各種実施形態を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を意味する。
本明細書に開示されるブロック共重合体は、スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アクリル系重合体ブロック(B)を各々1つ以上有する。ブロック共重合体が、上記重合体ブロック(A)及び/又はアクリル系重合体ブロック(B)を2以上有する場合、各ブロックの構造は同一であっても異なっていてもよい。
<重合体ブロック(A)>
上記の通り、重合体ブロック(A)はスチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を有する。
上記スチレン類には、スチレン及びその誘導体が含まれる。具体的な化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。スチレン類を含む単量体を重合することにより、重合体ブロック(A)にスチレン類に由来する構造単位を導入することができる。
上記の内でも、重合性の観点から、スチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンが好ましい。また、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルナフタレンは、重合体ブロック(A)のTgを高めることができ、耐熱性に優れるブロックポリマーを得ることができる点において好ましい。
重合体ブロック(A)において、上記スチレン類に由来する構造単位が占める割合は、重合体ブロック(A)の全構造単位に対して1質量%以上70質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上70質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、一層好ましくは20質量%以上60質量%以下である。また、例えば、20質量%以上40質量%以下であってもよい。
スチレン類に由来する構造単位が1質量%以上であれば、成形性に優れるブロック共重合体が得られる。一方、70質量%以下であれば、後述するマレイミド化合物由来の構造単位の必要量を確保することが可能となるため、耐熱性及び耐油性に優れるブロック共重合体を得ることができる。
上記マレイミド化合物には、マレイミド及びN−置換マレイミド化合物が含まれる。N−置換マレイミド化合物としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ヘプチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキル置換マレイミド化合物;N−フェニルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(4−メトキシフェニル)マレイミド、N−(4−エトキシフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−ブロモフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−アリール置換マレイミド化合物などが挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。マレイミド化合物を含む単量体を重合することにより、重合体ブロック(A)にマレイミド化合物に由来する構造単位を導入することができる。
上記の内でも、得られるブロック共重合体の耐油性がより優れるものとなる点で、以下の一般式(1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018066149
〔式中、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基又はPhRを表す。ただし、Phはフェニル基を表し、Rは水素、ヒドロキシ基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲンを表す。〕
重合体ブロック(A)において、上記マレイミド化合物に由来する構造単位が占める割合は、重合体ブロック(A)の全構造単位に対して30質量%以上99質量%以下である。好ましくは30質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以上80質量%以下である。また例えば、50質量%以上であってもよく、さらに例えば、60質量%以上であってもよい。また例えば、75質量%以下であってもよく、さらに例えば、70質量%以下であってもよい。また例えば、50質量%以上75質量%以下であってもよく、60質量%以上70質量%以下であってもよい。
マレイミド化合物に由来する構造単位が30質量%未満の場合、得られるブロック共重合体の耐熱性及び耐油性が十分でないときがある。一方、99質量%を超えると、上記スチレン類に由来する構造単位が不足する結果、流動性及び成形性が不十分となる場合がある。
また、重合体ブロック(A)が架橋性官能基を含む場合は、圧縮永久歪の値が小さいブロック共重合体を得易い点で好ましい。上記架橋性官能基の導入は、例えばヒドロキシ基等の官能基を有するスチレン類及び/又はマレイミド化合物を用いてもよいし、架橋性官能基を有するビニル化合物を共重合することによっても導入することができる。架橋性官能基を有するビニル化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、更には、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、並びに、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
反応性ケイ素基含有化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記の外にも、オキサゾリン基含有単量体又はイソシアネート基含有単量体を共重合することにより、架橋性官能基としてオキサゾリン基又はイソシアネート基を導入することができる。
さらに、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体を共重合することにより、重合体ブロック(A)に架橋性官能基として重合性不飽和基を導入し得る。上記多官能重合性単量体としては、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。これらの内でも、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル等の分子内に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物を用いた場合、重合性不飽和基の反応性に差異があることから重合体ブロック(A)に効果的に重合性不飽和基を導入し得る点で好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性不飽和基は、分子内に官能基を有する重合体を製造した後、当該官能基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有する化合物を反応させることによっても導入し得る。例えば、ヒドロキシ基を有する重合体を製造後、イソシアネート基及び重合性不飽和基の双方を有する化合物を反応させることにより当該重合体に重合性不飽和基を導入することができる。また例えば、カルボキシ基を有する重合体に、エポキシ基及び重合性不飽和基の双方を有する化合物を反応させてもよい。
重合体ブロック(A)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(A)の全構造単位に基づいて好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは1.0モル%以上であり、特に好ましくは2.0モル%以上である。架橋性官能基の導入量が0.01モル%以上であれば、圧縮永久歪の値の小さなブロック共重合体を得易くなる。一方、架橋反応の制御性の観点から、架橋性官能基導入量の上限は好ましくは60モル%以下であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは20モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以下である。架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(A)の全構造単位に基づいて0.01モル%以上60モル%以下の範囲とすることができ、好ましくは0.1モル%以上40モル%以下の範囲であり、より好ましくは1.0モル%以上20モル%以下の範囲である。
重合体ブロック(A)は、本開示が奏する効果を損なわない範囲において、上記の単量体単位以外に、これらと共重合可能な他の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。他の単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物、アミド基含有ビニル化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの内でも、より耐油性に優れるブロック共重合体を得ることができる点から、アミド基含有ビニル化合物が好ましい。
重合体ブロック(A)において、上記の他の単量体に由来する構造単位が占める割合は、重合体ブロック(A)の全構造単位に対して0質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは5質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸の直鎖状又は分岐状アルキルエステル化合物;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシブチルなどが挙げられる。
アミド基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリルアミド、並びに、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド誘導体;並びに、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド及びN−ビニルイソブチルアミド等のN−ビニルアミド系単量体などが挙げられる。
上記以外の他の単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本開示において、重合体ブロック(A)を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)は150℃以上であることが好ましい。Tgは、耐熱性に貢献できるため、例えば、170℃以上であってもよく、180℃以上であってもよく、190℃以上であってもよく、200℃以上であってもよい。さらにまた、210℃以上であってもよく、220℃以上であってもよく、230℃以上であってもよい。Tgが150℃未満の場合、得られるブロック共重合体の耐熱性及び耐油性が不十分となる場合がある。使用可能な構成単量体単位の制限から、Tgの上限は350℃である。Tgは、また例えば、280℃以下であってもよく、270℃以下であってもよく、さらに例えば、260℃以下であってもよい。
尚、Tgの値は、後述する実施例において記載する通り、示差走査熱量測定(DSC)により得ることができる。また、重合体ブロックを構成する単量体単位から計算により求めることもできる。
重合体ブロック(A)の溶解パラメータ(SP値)が10.0以上である場合、ブロック共重合体の耐油性がより良好なものとなる点で好ましい。SP値は、より好ましくは11.0以上であり、さらに好ましくは12.0以上であり、なお好ましくは13.0以上である。
重合体ブロック(A)のSP値の上限については特に制限されないが、通常は30以下である。また例えば、SP値は、20.0以下であってもよく、また例えば、18.0以下であってもよい。
上記のSP値については、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、算出することができる。具体的には、式(1)に示す計算方法による。
Figure 2018066149
δ :SP値((cal/cm1/2
ΔEvap :各原子団のモル蒸発熱(cal/mol)
V :各原子団のモル体積(cm/mol)
<アクリル系重合体ブロック(B)>
アクリル系重合体ブロック(B)は、アクリル系単量体を含む単量体を重合することにより得ることができる。アクリル系単量体とは、アクリル酸及びアクリル酸エステル化合物等のアクリロイル基を有する不飽和化合物を指す。アクリル酸エステル化合物しては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル等のアクリル酸アルキルエステル化合物;
アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸メチルシクロヘキシル、アクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロドデシル等のアクリル酸の脂肪族環式エステル化合物;
アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸n−プロポキシエチル、アクリル酸n−ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸n−プロポキシプロピル、アクリル酸n−ブトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシブチル、アクリル酸n−プロポキシブチル、アクリル酸n−ブトキシブチル等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物などが挙げられる。この他にも、アミド基、アミノ基、カルボキシ基及びヒドロキシ基等の官能基を有するアクリル酸エステル化合物を用いてもよい。
これらの内でも、柔軟性に優れたブロック共重合体が得られる点で炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数2〜8のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐油性の観点を加味した場合、上記アクリル系単量体は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数2〜3のアルコキシアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物を含むものであることがより好ましい。
アクリル系重合体ブロック(B)において、アクリル系単量体に由来する構造単位が占める割合は、アクリル系重合体ブロック(B)の全構造単位に対して20質量%以上100質量%以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、一層好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
アクリル系重合体ブロック(B)において、アクリル系単量体に由来する構造単位が上記範囲にある場合は、機械的物性の点で良好なブロック共重合体が得られる傾向にある。
本開示により奏される効果を妨げない限りにおいて、アクリル系重合体ブロック(B)は、上記アクリル系単量体以外の単量体を構成単量体単位として使用することができる。アクリル系単量体以外の単量体としては、アクリロイル基以外の不飽和基を有する単量体を用いることができ、メタクリル酸エステル等のメタクリロイル基含有化合物、並びに、アルキルビニルエステル、アルキルビニルエーテル及びスチレン類等の脂肪族または芳香族ビニル化合物などが挙げられる。
本開示では、アクリル系重合体ブロック(B)を構成する重合体のTgは20℃以下であることが好ましい。また例えば、10℃以下であってもよい。Tgは0℃以下が好ましく、−10℃以下がより好ましい。Tgが20℃を超える場合、得られるブロック共重合体の柔軟性が不十分となる場合がある。使用可能な構成単量体単位の制限から、Tgの下限は−80℃である。
また、Tgが−20℃以下の場合には、低温環境下でも柔軟性が確保される点で好ましい。耐寒性を加味した場合、より好ましくは−30℃以下であり、さらに好ましくは−40℃以下である。
また、アクリル系重合体ブロック(B)のSP値が9.9以上である場合、ブロック共重合体の耐油性がより良好なものとなる点で好ましい。SP値は、より好ましくは10.0以上であり、さらに好ましくは10.1以上であり、特に好ましくは10.2以上である。
アクリル系重合体ブロック(B)のSP値の上限については特に制限されないが、通常は20以下である。
また、重合体ブロック(B)が架橋性官能基を含んでいても良く、耐油性の高いブロック共重合体を得易い点で好ましい。上記架橋性官能基の導入は、例えば架橋性官能基を有するビニル化合物を共重合することによって導入することができる。架橋性官能基を有するビニル化合物としては、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物、反応性ケイ素基含有化合物等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(B)が架橋性官能基を有する場合、当該架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(B)の全構造単位に基づいて好ましくは0.01モル%以上であり、より好ましくは0.1モル%以上であり、さらに好ましくは0.5モル%以上である。架橋性官能基の導入量が0.01モル%以上であれば、耐油性の高いブロック共重合体を得易くなる。一方、柔軟性の観点から、架橋性官能基導入量の上限は好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下であり、さらに好ましくは5モル%以下である。架橋性官能基の導入量は、重合体ブロック(B)の全構造単位に基づいて0.01モル%以上20モル%以下の範囲とすることができ、好ましくは0.1モル%以上10モル%以下の範囲であり、より好ましくは0.5モル%以上5モル%以下の範囲である。
<ブロック共重合体>
本開示のブロック共重合体は、上記重合体ブロック(A)及び上記アクリル系重合体ブロック(B)を各々1つ以上有する。ブロック共重合体が、重合体ブロック(A)及び/又はアクリル系重合体ブロック(B)を2以上有する場合、各ブロックの構造は同一であっても異なっていてもよい。
ブロック共重合体の構造についても特に制限はなく、AB型ジブロックポリマー、又は、ABA型及びABC型トリブロックポリマー等、各種の線状又は分岐状のブロック共重合体を用いることができる。エラストマー材料として良好な性能が得られる点では、重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体等のA−(BA)n型構造を有するものが好ましい。
ブロック共重合体において、重合体ブロック(A)はハードセグメントとして作用し、アクリル系重合体ブロック(B)はソフトセグメントとして作用する。この結果、本開示のブロック共重合体は、破断伸び及び破断強度等の機械的物性に優れた性能を発揮し、エラストマーとして有用な材料となる。
ブロック共重合体における重合体ブロック(A)の割合は、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。
ブロック共重合体におけるアクリル系重合体ブロック(B)の割合は、40質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。
本開示のブロック共重合体をエラストマー材料として用いる場合、上記重合体ブロック(A)のSP値及びアクリル系重合体ブロック(B)のSP値は、0.1以上の差異を有することが好ましい。SP値が0.1以上異なる場合、ブロック共重合体において両者が適度に相分離するため機械的強度に優れた性能を発揮することが可能となる。上記SP値の差異は、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが一層好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。また、製造上の観点等から、SP値の差異は10以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。
また、重合体ブロック(A)が架橋性官能基を有する場合、これを利用して架橋することにより圧縮永久歪の値がより小さいエラストマー材料を得ることができる。上記架橋は重合体ブロック(A)に導入した架橋性官能基同士の反応によるものであってもよいし、後述する通り、当該架橋性官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤を添加して行ってもよい。重合体ブロック(A)に導入した架橋性官能基同士の反応による場合、当該架橋性官能基として反応性ケイ素基を用いると、ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の上記架橋反応を効率的に行うことができる。
本開示のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、10000以上500000以下の範囲であることが好ましい。数平均分子量が10000以上あれば、エラストマー材料として十分な強度を発揮することができる。また、500000以下であれば、良好な成形性を確保することができる。数平均分子量は、より好ましくは20000以上400000以下の範囲であり、さらに好ましくは50000以上200000以下の範囲である。
また、ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の値を上記数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、成形性の点で1.5以下であることが好ましい。より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下であり、一層好ましくは1.2以下である。分子量分布の下限値は1.0である。
<ブロック共重合体の製造方法>
本開示のブロック共重合体は、上記重合体ブロック(A)及び上記アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を得る限りにおいて特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができる点でリビングラジカル重合法が好ましい。
リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加−開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができる。これらの内でも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法、NMP法及びATRP法が好ましい。
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。
RAFT剤は活性点を1箇所のみ有する一官能のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。上記A−(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能型のRAFT剤を用いることが好ましい。
また、RAFT剤の使用量は、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。
上記アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより小さい重合体を得る点から、上記RAFT剤1molに対する上記ラジカル重合開始剤の使用量を0.5mol以下とすることが好ましく、0.2mol以下とするのがより好ましい。また、重合反応を安定的に行う観点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量の下限は、0.01molである。よって、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量は、0.01mol以上0.5mol以下の範囲が好ましく、0.05mol以上0.2mol以下の範囲がより好ましい。
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは40℃以上100℃以下であり、より好ましくは45℃以上90℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。反応温度が40℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が100℃以下であれば、副反応が抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
NMP法では、ニトロキシドを有する特定のアルコキシアミン化合物等をリビングラジカル重合開始剤として用い、これに由来するニトロキシドラジカルを介して重合が進行する。本開示では、用いるニトロキシドラジカルの種類に特に制限はないが、アクリレートを含む単量体を重合する際の重合制御性の観点から、ニトロキシド化合物として一般式(2)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2018066149
{式中、Rは炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子であり、Rは炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基であり、Rは−(CH)m−、mは0〜2であり、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。}
上記一般式(2)で表されるニトロキシド化合物は、70〜80℃程度の加熱により一次解離し、ビニル系単量体と付加反応を起こす。この際、2以上のビニル基を有するビニル系単量体にニトロキシド化合物を付加することにより多官能性の重合前駆体を得ることが可能である。次いで、上記重合前駆体を加熱下で二次解離することにより、ビニル系単量体をリビング重合することができる。
この場合、重合前駆体は分子内に2以上の活性点を有するため、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。上記A−(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい観点から、分子内に活性点を2つ有する二官能型の重合前駆体を用いることが好ましい。
また、ニトロキシド化合物の使用量は、用いる単量体及びニトロキシド化合物の種類等により適宜調整される。
本開示のブロック共重合体をNMP法により製造する場合、上記一般式(2)で表されるニトロキシド化合物1molに対し、一般式(3)で表されるニトロキシドラジカルを0.001〜0.2molの範囲で添加して重合を行ってもよい。
Figure 2018066149
{式中、R、Rは炭素数1〜4のアルキル基である。}
上記一般式(3)で表されるニトロキシドラジカルを0.001mol以上添加することにより、ニトロキシドラジカルの濃度が定常状態に達する時間が短縮される。これにより、重合をより高度に制御することが可能となり、より分子量分布の狭い重合体を得ることができる。一方、上記ニトロキシドラジカルの添加量が多すぎると重合が進行しない場合がある。上記ニトロキシド化合物1molに対する上記ニトロキシドラジカルのより好ましい添加量は0.01〜0.5molの範囲であり、さらに好ましい添加量は0.05〜0.2molの範囲である。
NMP法における反応温度は、好ましくは50℃以上140℃以下であり、より好ましくは60℃以上130℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上120℃以下であり、特に好ましくは80℃以上120℃以下である。反応温度が50℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が140℃以下であれば、ラジカル連鎖移動等の副反応が抑制される傾向がある。
ATRP法では、一般に有機ハロゲン化物を開始剤とし、触媒に遷移金属錯体を用いて重合反応が行われる。開始剤である有機ハロゲン化物は、一官能性のものを用いてもよいし、二官能以上のものを用いてもよい。上記A−(BA)n型構造のブロック共重合体を効率的に得やすい点では、二官能性の化合物を用いることが好ましい。また、ハロゲンの種類としては臭化物及び塩化物が好ましい。
ATRP法における反応温度は、好ましくは20℃以上200℃以下であり、より好ましくは50℃以上150℃以下である。反応温度20℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。
リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体等のA−(BA)n型構造体を得る場合、例えば、各ブロックを順次重合することにより目的とするブロック共重合体を得てもよい。この場合、まず、第一重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して重合体ブロック(A)を得る。次いで、第二重合工程として、アクリル系単量体を重合してアクリル系重合体ブロック(B)を得る。さらに、第三重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合することによりABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、上記した一官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。上記の第二重合工程及び第三重合工程を繰り返すことにより、テトラブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
また、以下に示す二段階の重合工程を含む方法により製造した場合は、より効率的に目的物が得られることから好ましい。すなわち、第一重合工程として、アクリル系単量体を重合してアクリル系重合体ブロック(B)を得た後、第二重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して重合体ブロック(A)を得る。これにより、重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)からなる、ABAトリブロック共重合体を得ることができる。この場合、重合開始剤は、二官能性の重合開始剤又は重合前駆体を用いることが好ましい。この方法によれば、各ブロックを順次重合して製造する場合に比較して工程を簡略化することができる。また、上記の第一重合工程及び第二重合工程を繰り返すことにより、テトラブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
本開示では、ブロック共重合体の重合は、その重合方法によらず、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施しても良い。
連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−ヘキサンチオール、2−ヘキサンチオール、2−メチルヘプタン−2−チオール、2−ブチルブタン−1−チオール、1,1−ジメチル−1−ペンタンチオール、1−オクタンチオール、2−オクタンチオール、1−デカンチオール、3−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、2−ドデカンチオール、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、3−メチル−3−ウンデカンチオール、5−エチル−5−デカンチオール、tert−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール及び1−オクタデカンチオール等の炭素数2〜20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
本開示では、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
<エラストマー組成物>
本開示のブロック共重合体は、単独でもエラストマー材料として適用することが可能であるが、必要に応じて公知の添加剤等を配合した組成物の態様としてもよい。特に、本開示のブロック共重合体が重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかに架橋性官能基を含む場合、当該官能基と反応可能な架橋剤及び架橋促進剤等を配合し、必要に応じて加熱処理等を施すことにより圧縮永久歪の値が小さいエラストマーを得ることができる点で好ましい。
本開示のブロック共重合体が、カルボキシル基を有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、多価アミン、多官能イソシアネート等が好ましく用いられる。
多価アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン化合物;4,4′−メチレンビスシクロヘキシルアミンカーバメート等の脂環式ジアミン化合物;4,4′−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2′−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4′−ジアミノベンズアニリド、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチル等の芳香族ジアミン化合物等が挙げられる。
また、多官能イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジメチルジフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
多価アミンを用いる場合、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン等のグアニジン化合物;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物;リン酸、炭酸、重炭酸、ステアリン酸、ラウリル酸等の酸のアルカリ金属塩(Li、Na、K)等の、弱酸の塩;トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン;トリフェニルホスフィン、トリ(メチル)フェニルホスフィン等の第3級ホスフィン化合物;テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリn−ブチルアンモニウムブロマイド等の第4級オニウム塩等の架橋助剤を併用することが好ましい。
本開示のブロック共重合体が、エポキシ基を有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、有機カルボン酸アンモニウム塩、ジチオカルバミン酸塩、多価カルボン酸又は無水物と、第4級アンモニウム塩又はホスホニウム塩との組合せ等が好ましく用いられる。
有機カルボン酸アンモニウム塩としては、安息香酸アンモニウム等が挙げられる。
ジチオカルバミン酸塩としては、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸等の亜鉛塩、鉄塩、テルル塩等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸等が挙げられる。第4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンンモニウムブロマイド等が挙げられる。また、ホスホニウム塩としては、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムアイオダイド、トリエチルベンジルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
本開示のブロック共重合体が、ヒドロキシル基を有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、多官能イソシアネート等が好ましく用いられる。
本開示のブロック共重合体が、1級又は2級アミノ基有する架橋性単量体に由来する構造単位を含む場合、架橋剤としては、多官能イソシアネート及び多官能グリシジル化合物等が好ましく用いられる。
本開示のブロック共重合体が、重合性不飽和基を含む場合、1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンチオール、1,10−デカンチオール、1,4−ベンゼンチオール等のジチオール化合物、又はエタン−1,1,1−トリチオール、1,3,5−ベンゼントリチオール等のトリチオール化合物等の多価チオールとのエン・チオール反応を利用することができる。
本開示のブロック共重合体の架橋性基が反応性ケイ素基である場合、湿気により架橋反応を生じるため、架橋剤等を添加する必要はない。
その他、上記の添加剤としては、例えば、可塑剤、オイル、老化防止剤、無機フィラー、顔料、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等が挙げられる。添加剤の配合量は、ブロック共重合体に対して、好ましくは0質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%以上2質量%以下である。
本開示のブロック共重合体を含むエラストマー組成物の性能又は加工性等を調整する目的で、熱可塑性樹脂を添加してもよい。熱活性樹脂の具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレンのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。また、他のエラストマーを添加混合してもよい。
本開示のブロック共重合体を含むエラストマー組成物は、200℃以上250℃以下程度に加熱することにより良好な流動性を示す。このため、押出成形、射出成形、及び鋳込み成形等の各種方法による成形加工に適用することができる。
以下、実施例に基づいて本開示を具体的に説明する。尚、本開示は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
製造例、実施例及び比較例で得られた重合体の分析方法について以下に記載する。
<分子量測定>
得られた重合体について、以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ−M×4本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検出器:RI
流速:600μL/min
<重合体の組成比>
得られた重合体の組成比はH−NMR測定より同定・算出した。
<ガラス転移温度(Tg)>
得られた重合体のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計を用いて得られた熱流束曲線のベースラインと変曲点での接線の交点から決定した。熱流束曲線は試料約10mgを−50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで300℃まで昇温し、引き続き−50℃まで冷却し、5分間保持した後、10℃/minで350℃まで昇温する条件で得た。
測定機器:エスアイアイ・ナノテクノロジー社製DSC6220
測定雰囲気:窒素雰囲気下
尚、実施例及び比較例において得られたブロック共重合体の示差走査熱量測定を行うことにより、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)に対応する変曲点が得られ、これらから各重合体ブロックのTgを求めることができる。
次に、実施例及び比較例におけるエラストマーの評価方法について以下に記載する。
<初期引張物性>
ブロック共重合体100部及び酸化防止剤であるIrganox1010(BASF社製)0.3部をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、重合体濃度10%の溶液を調整した。これを型枠に流し込み、THFを乾燥留去することにより、厚さ約1mmのキャストフィルムを作成した。
上記で得られたフィルムを試料とし、JIS K 6251に準拠し、常態(25℃)における引張破断強度及び破断伸びを測定した。
<耐熱老化性>
試料には、初期引張物性と同じフィルムを用いた。
ダンベル型に打ち抜いた試料を150℃の防爆型乾燥機に投入し、1000時間経過後試料を取り出した。次いで、JIS K 6251に準拠し、常態(25℃)における引張破断強度及び破断伸びを測定した。初期の測定値に対する破断伸び、破断強度の保持率を算出することにより、耐熱老化性を評価した。
<耐油性>
試料には、初期引張物性と同じフィルムを用いた。
ダンベル型に打ち抜いた試料をエンジンオイル(日産純正 エンジンオイル「モーターオイル エクストラセーブX 10W−30 SJ」)に浸漬後、150℃に加熱し、1000時間経過後試料を取り出した。次いで、取り出した試料を放冷し、軽く拭いた後の重量変化率から膨潤率を評価した。また、同じ試料について、JIS K 6251に準拠し、常態(25℃)における引張破断強度及び破断伸びを測定した。初期の測定値に対する破断伸び、破断強度の保持率を算出した。
<成形性>
以下の各項目について成形性の評価を行った。
(1)流動性
試料には、初期引張物性と同じフィルムを用いた。
ASTM D 1239に準拠し測定したメルトフローレート(MFR)が0.1g/10min以上の値が得られた時の加熱温度及び荷重の条件により評価した。低温、低荷重条件下で上記メルトフローレートが得られるものほど、良好な流動性を有すると判断した。
(2)樹脂の変質
上記のMFR測定前後における試料の分子量を測定してその変化率を算出し、以下の基準に基づいて評価した。
○:変化率10%未満
×:変化率10%以上
(3)外観
以下の条件で125mm×125mm×厚さ2mmの成形体を射出成形し、得られた成形体について、以下の基準に基づき目視による外観評価を行った。
○:表面にシワ、凹凸又はササクレ等の不具合が観察されない
×:表面にシワ、凹凸又はササクレ等の不具合が認められる
射出成形機:100MSIII−10E(商品名、三菱重工業株式会社製)
射出成形温度:240℃
射出圧力:30%
射出時間:3sec
金型温度:40℃
<圧縮永久歪の測定>
表11に示す配合により得られた各組成物について以下の手順に従い測定した。
上記初期引張物性における試料作成手順に準じて厚さ2mmのフィルム試料を作成し、直径29mmの円盤状に切断したものを7枚重ねて作製した円盤状成形体を200℃で熱プレスして厚さを12.5mm±0.5mmに調整したものを試験片として用い、JIS K 6262に規定される圧縮永久ひずみ試験によって測定した。
具体的には、標準温度(23.2±2℃)において、試験片の直径及び厚さがそれぞれ、29.0±0.5mm(直径)、12.5mm±0.5mm(厚さ)であることを確認し、厚さ9.3〜9.4mmのスペーサを備えた圧縮板に試験片を挟んだ。試験片を圧縮する割合が25体積%となる条件で、70℃で24時間保持した後、23℃で圧縮板を外して30分間放置した後の試験片中央部の厚さを測定した。
測定結果を下記の圧縮永久歪算出式にあてはめて、圧縮永久歪(%)の数値を算出した。
圧縮永久歪(%)=(t−t)/(t−t)×100
(式中、tは試験片の元の厚さ(mm)、tはスペーサの厚さ(mm)、tは圧縮装置から取り外してから30分後の試験片の厚さ(mm)を示す)
圧縮解放後、試験片が完全に圧縮前の寸法形状に戻ったときの圧縮永久歪の値は0%であり、圧縮から開放しても圧縮されたままの形状で寸法形状が元に戻らない場合の圧縮永久歪の値は100%であるから、圧縮永久歪の値は0%から100%の間で小さいほど回復が優れていることを意味する。
<D硬さ>
上記圧縮永久歪と同様の手順で作成した厚さ2mmのフィルムを恒温恒湿室(温度23℃、相対湿度50%)に24時間以上静置し、状態を安定させた後、シートを3枚重ね、JIS K 7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験法」に準じてD硬さを測定した。
≪RAFT剤の合成≫
合成例1
(1,4−ビス(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼンの合成)
ナス型フラスコに1−ドデカンチオール(42.2g)、20%KOH水溶液(63.8g)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(1.5g)を加えて氷浴で冷却し、二硫化炭素(15.9g)、テトラヒドロフラン(以下「THF」ともいう)(38ml)を加え20分攪拌した。α、α’−ジクロロ−p−キシレン(16.6g)のTHF溶液(170ml)を30分かけて滴下した。室温で1時間反応させた後、クロロホルムから抽出し、純水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥、ロータリーエバポレータで濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した後、酢酸エチルから再結晶することにより、以下の式(4)で表される1,4−ビス(n−ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン(以下「DLBTTC」ともいう)を収率80%で得た。H−NMR測定より7.2ppm、4.6ppm、3.4ppmに目的物のピークを確認した。
Figure 2018066149
≪アクリル系重合体ブロック(B)の製造≫
製造例1
(重合体Aの製造)
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに合成例1で得られたRAFT剤(DLBTTC)(4.28g)、2,2´−アゾビス2−メチルブチロニトリル(以下「ABN−E」ともいう)(0.25g)、アクリル酸エチル(651g)およびアニソール(287g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃の恒温槽で重合を開始した。3時間30分後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、ヘキサンから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Aを得た。得られた重合体Aの分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定(ポリスチレン換算)より、Mn69200、Mw75500、Mw/Mn1.09であった。
製造例2、6、7
(重合体B、F、Gの製造)
DLBTTC、ABN−E及びアニソールの使用量を表1に記載の通りとするとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体B、F、Gを得た。各重合体の分子量を測定し、表1に示した。
製造例3
(重合体Cの製造)
アクリル酸エチルに代えてアクリル酸メチルを用い、表1に記載の通り仕込み量を変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体Cを得た。重合体Cの分子量を測定し、表1に示した。
製造例4
(重合体Dの製造)
アクリル酸エチルに加え、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−メトキシエチルを用い、表1に記載の通り仕込み量を変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体Dを得た。重合体Dの分子量を測定し、表1に示した。また、H−NMR測定から重合体中のアクリル酸エチルとアクリル酸n−ブチルとアクリル酸2−メトキシエチルの組成比を決定したところ、アクリル酸エチル/アクリル酸n−ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル=49/25/26wt%であった。
製造例5
(重合体Eの製造)
アクリル酸エチルに加えて、アクリル酸n−ブチルを用い、表1に記載の通り仕込み量を変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体Jを得た。重合体Jの分子量を測定し、表1に示した。また、H−NMR測定から重合体中のアクリル酸エチルとアクリル酸n−ブチルの組成比を決定したところ、アクリル酸エチル/アクリル酸n−ブチル=25/75wt%であった。
製造例8
(重合体Hの製造)
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに2−メチル−2−[N−tert−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)−N−オキシル]プロピオン酸(2.48g)、ヘキサンジオールジアクリレート(0.72g)およびイソプロピルアルコール(20g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、100℃の恒温槽で反応を開始した。1時間後、室温まで冷却した後、溶媒を減圧留去した。残渣にN−tert−ブチル−1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル ニトロキシド(0.03g)、アクリル酸エチル(651g)およびアニソール(289g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、112℃の恒温槽で重合を開始した。8時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、ヘキサンから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Hを得た。得られた重合体Hの分子量を測定し、表1に示した。
製造例9
(重合体Iの製造)
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに臭化銅(I)(4.28g)、ペンタメチルジエチレントリアミン(7.90g)、アクリル酸エチル(651g)およびアニソール(280g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気した。エチレンビス(2−ブロモイソブチラート)(1.27g)を添加した後、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、ヘキサンから再沈殿精製、真空乾燥することで重合体Iを得た。得られた重合体Iの分子量を測定し、表1に示した。
製造例10
(重合体Jの製造)
アクリル酸エチルに代えて、アクリル酸n−ブチルを用い、表1に記載の通り仕込み量を変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体Jを得た。重合体Jの分子量を測定し、表1に示した。
Figure 2018066149
表1に示された化合物の詳細は以下の通り。
MA:アクリル酸メチル
EA:アクリル酸エチル
C−1:アクリル酸2−メトキシエチル
nBA:アクリル酸n−ブチル
SG1−MAA:2−メチル−2−[N−tert−ブチル−N−(1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル)−N−オキシル]プロピオン酸(Arkema社製ニトロキシド化合物)
SG1:N−tert−ブチル−1−ジエチルホスフォノ−2,2−ジメチルプロピル ニトロキシド(Arkema社製ニトロキシドラジカル)
ABN−E:2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)
≪ブロック共重合体の製造≫
実施例1
(ブロック共重合体1の製造)
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに製造例1で得られた重合体A(87.0g)、ABN−E(0.10g)、N−フェニルマレイミド(14.6g)、スチレン(49.8g)およびアニソール(342g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃の恒温槽で重合を開始した。3時間後、室温まで冷却し反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することでブロック共重合体1を得た。得られたブロック共重合体1の分子量を測定した結果、Mn98500、Mw109000、Mw/Mnは1.11であった。
ブロック共重合体1は重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)の構造を有するトリブロック共重合体である。H−NMR測定から重合体ブロック(A)中のN−フェニルマレイミドとスチレンの組成比を決定したところ、N−フェニルマレイミド/スチレン=32/68wt%であり、重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の組成比は(A)/(B)=30/70wt%であった。ブロック共重合体1についてエラストマーとしての評価を行い、結果を表8に示した。
実施例2〜24及び比較例1〜4
フラスコに仕込む原料の種類及び仕込み量を表2〜表4に記載の通り変更するとともに、反応時間を適宜調整した以外は実施例1と同様の操作を行い、ブロック共重合体2〜24及び26〜29を得た。各ブロック共重合体の分子量、並びに、H−NMR測定による重合体ブロック(A)の組成比、及びブロック共重合体における重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の組成比について表5〜表7に記載した。
なお、重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)のSP値を、H−NMR測定による重合体ブロック(A)の組成比及びアクリル系重合体ブロック(B)の組成比を用いて、既述の計算式(数1)から算出して、表5〜7に記載した。また、ブロック共重合体1〜24及び26〜29の示差走査熱量測定に基づいて、重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)のTgを求め、表5〜7に記載した。
実施例25
攪拌機、温度計を装着した1Lフラスコに2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸(0.80g)、ABN−E(0.12g)、N−フェニルマレイミド(27.3g)、スチレン(16.4g)およびアニソール(89.4g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。2時間後、室温まで冷却し反応を停止した後、アクリル酸エチル(220.8g)およびアニソール(34.4g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。6時間後、室温まで冷却し反応を停止した後、N−フェニルマレイミド(27.3g)、スチレン(16.4g)およびアニソール(159.3g)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。8時間後、アニソール(195.9g)を仕込み、室温まで冷却することで反応を停止した。上記重合溶液を、メタノールから再沈殿精製、真空乾燥することでブロック共重合体25を得た。得られたブロック共重合体25の分子量を測定した結果、Mn86500、Mw124000、Mw/Mnは1.43であった。
上記2−{[(2−カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸は一官能性のRAFT剤であり、得られた重合体は重合体ブロック(A)−アクリル系重合体ブロック(B)−重合体ブロック(A)の構造を有するトリブロック共重合体である。H−NMR測定から重合体ブロック(A)中のN−フェニルマレイミドとスチレンの組成比を決定したところ、N−フェニルマレイミド/スチレン=62/38wt%であり、重合体ブロック(A)とアクリル系重合体ブロック(B)の組成比は(A)/(B)=31/69wt%であった。また、重合体ブロック(A)のSP値は13.0、Tgは210℃であり、アクリル系重合体ブロック(B)のSP値は10.2、Tgは−20℃であった。
Figure 2018066149
Figure 2018066149
Figure 2018066149
Figure 2018066149
Figure 2018066149
Figure 2018066149
表2〜表7に示された化合物の詳細は以下の通り。
PhMI:N−フェニルマレイミド
MI:(N−無置換)マレイミド
EtMI:N−エチルマレイミド
BuMI:N−n−ブチルマレイミド
St:スチレン
αMeSt:α−メチルスチレン
ACMO:アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
MMA:メタクリル酸メチル
MAh:無水マレイン酸
AA:アクリル酸
GMA:メタクリル酸グリシジル
KBM−503:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名)
各ブロック共重合体について、初期並びに耐熱性及び耐油性試験後の機械物性を評価した。耐油性試験後の膨潤率及び成形性とともに、結果を表8〜表10に示した。
Figure 2018066149
Figure 2018066149
Figure 2018066149
実施例1〜25は、本開示のブロック共重合体に該当するものであり、いずれも、初期の破断伸び及び破断強度ともに良好な値を示した。また、150℃、1000時間という厳しい条件下であっても、優れた耐熱性及び耐油性を示すことが確認された。中でも、マレイミド化合物として(無置換の)マレイミド及びN−エチルマレイミドを用いた実施例9及び10、並びに、重合体ブロック(A)にアミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位を有する実施例13及び14は、膨潤率が極めて低く優れた耐油性を示した。
一方、比較例1は耐熱性及び耐油性の点で十分ではなく、比較例2は重合体ブロック(A)中のマレイミド化合物に由来する構造単位が少ないことから耐油性の点で不十分であった。比較例3は、重合体ブロック(A)にスチレン類に由来する構造単位を有さないものである。流動性が十分ではなく、成形性に劣るものであった。
実験例1〜6
各原料を表11に示す通り配合し、エラストマー組成物を得た。ただし、実験例1〜4については、架橋反応をさせる目的で、170℃に加熱されたバッチ式ニーダー「プラストグラフEC50型」(ブラベンダー社製)に各原料成分を投入し、100rpm/分の回転数で混合物を10分間溶融混練した。溶融状態の混練物を全量取り出し、室温で冷却して、エラストマー組成物を得た。
エラストマー組成物の配合には、ユニマテックス社製ヘキサメチレンジアミンカーバメート「ケミノックスAC−6」(商品名)、大内新興化学社製ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛「ノクセラーPZ」(商品名)及びジメチルジチオカルバミン酸第二鉄「ノクセラーTTFE」(商品名)を用いた。
重合体ブロック(A)に架橋性官能基を有するブロック共重合体を用いた実験例1〜5は、表11に記載の条件により架橋反応を行った後、得られた硬化物について圧縮永久歪を評価した。一方、重合体ブロック(A)に架橋性官能基を持たないブロック共重合体を用いた実験例6については、加熱等の特段の処理を行わずに圧縮永久歪を評価した。結果を表11に示す。
Figure 2018066149
表11から明らかな通り、重合体ブロック(A)に架橋性官能基を有するブロック共重合体に架橋を施した実験例1〜5は、架橋性官能基を有さないブロック重合体3を用いた実験例6に比較して、圧縮永久歪に優れる結果が認められた。
本開示のブロック共重合体は、良好なゴム弾性を発揮するとともに成形性にも優れる。このため、自動車部品、電化製品及び医療関連製品等のパッキンやガスケット又はホース材等をはじめ、接着剤原料、建築・土木用部材、日用雑貨品等に分野おいて広く適用することができる。
また、本開示のブロック共重合体によれば、極めて高い耐熱性及び耐油性を発揮するエラストマー材料を得ることができる。よって、上記の内でも例えば自動車用途では、特にエンジンルーム内の部品として、シール材やパッキン、チューブ、ホース、エンジンカバー、タンクキャップ等に好適に用いられる。電気材料としてはオーブン、トースター、IHヒーター、電熱器、温風ヒーター等の発熱家電等にも好適に用いられる。
本開示のブロック共重合体を含むエラストマー組成物は、所望の形状に成形・加工することにより、自動車部品、家電・OA機器部品、医療用機器部品、包装用資材、土木建築用資材、電線、雑貨等の広汎な分野の資材として好適に用いることができる。

Claims (13)

  1. スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体であって、
    前記重合体ブロック(A)は、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対してマレイミド化合物に由来する構造単位を30質量%以上99質量%以下有し、且つ、ガラス転移温度(Tg)が150℃以上の重合体であり、
    前記アクリル系重合体ブロック(B)は、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上、且つ、Tgが20℃以下の重合体である、ブロック共重合体。
  2. 前記重合体ブロック(A)の溶解パラメータ(SP値)が10.0以上である請求項1に記載のブロック共重合体。
  3. 前記重合体ブロック(A)が、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対してスチレン類に由来する構造単位を1質量%以上70質量%以下有する請求項1又は2に記載のブロック共重合体。
  4. 前記マレイミド化合物が、一般式(1)で表される化合物を少なくとも1種含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
    Figure 2018066149
    〔式中、Rは水素、炭素数1〜3のアルキル基又はPhRを表す。ただし、Phはフェニル基を表し、Rは水素、ヒドロキシ基、炭素数1〜2のアルコキシ基、アセチル基又はハロゲンを表す。〕
  5. 前記重合体ブロック(A)が、さらに、アミド基含有ビニル化合物に由来する構造単位を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
  6. 前記重合体ブロック(A)及びアクリル系重合体ブロック(B)の少なくともいずれかに架橋性官能基を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
  7. 前記架橋性官能基が架橋性単量体に由来するものであり、前記重合体ブロック(A)の全構造単位に対して前記架橋性単量体に由来する構造単位を0.01モル%以上60モル%以下有する請求項6に記載のブロック共重合体。
  8. 数平均分子量が、10000以上500000以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
  9. スチレン類及びマレイミド化合物に由来する構造単位を含む重合体ブロック(A)、並びに、アクリル系重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を、リビングラジカル重合法により製造する方法であって、
    前記重合体ブロック(A)は、該重合体ブロック(A)の全構造単位に対してマレイミド化合物に由来する構造単位を30質量%以上99質量%以下有し、且つ、Tgが150℃以上の重合体であり、
    前記アクリル系重合体ブロック(B)は、溶解パラメータ(SP値)が9.9以上、且つ、Tgが20℃以下の重合体である、
    方法。
  10. 第一重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して前記ブロック(A)を得る工程、
    次いで、第二重合工程として、アクリル系単量体を重合して前記重合体ブロック(B)を得る工程、
    さらに第三重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して前記ブロック(A)を得る工程を含む、
    請求項9に記載のブロック共重合体の製造方法。
  11. 第一重合工程として、アクリル系単量体を重合して前記ブロック(B)を得る工程、並びに、
    第二重合工程として、スチレン類1質量%以上70質量%以下、及びマレイミド化合物30質量%以上99質量%以下を含む単量体を重合して前記重合体ブロック(A)を得る工程を含む、
    請求項9に記載のブロック共重合体の製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のブロック共重合体を含むエラストマー。
  13. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のブロック共重合体を含む自動車用エラストマー。
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