JP2004035721A - 熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物および熱伝導性熱可塑性エラストマーシート - Google Patents
熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物および熱伝導性熱可塑性エラストマーシート Download PDFInfo
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Abstract
【課題】各種電子・電気機器の放熱材料として、現在、シリコーンゴムなどの加硫ゴムに熱伝導性フィラーを配合したものが使用されているが、リサイクル性、低分子シロキサンの揮発による接点不良の問題があり、リサイクル可能な非シリコーン系の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物が熱望されている。
【解決手段】本発明は、前記問題点を解決するため、25℃以下のガラス転移温度を有し、かつ50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー(A)、および熱伝導性を有する無機系充填材(B)からなる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を提供するものである。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明は、前記問題点を解決するため、25℃以下のガラス転移温度を有し、かつ50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー(A)、および熱伝導性を有する無機系充填材(B)からなる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を提供するものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は各種の電子・電気機器に搭載される冷却が必要な電子部品等の冷却部に用いられる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物およびその熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター等に代表される各種電子・電気機器に搭載されている電子部品等の冷却の問題は、機器の高性能化や小型化にともない、近年重要課題として注目されている。従来よりゴム弾性を有する熱伝導性材料は、トランジスタやダイオード、ICなどの半導体をはじめ、各種のヒーター、温度センサなどの電子部品の放熱・伝熱スペーサーとして幅広く使用されている。このような熱伝導性材料としては、これまでシリコーンゴムやEPDMゴムなどの加硫ゴムに熱伝導性フィラーを配合したものが知られている。とくにシリコーンゴムを用いたものは最もよく知られており、特公平6−55891号公報、特公平6−38460号公報、および特公平7−91468号公報にシリコーンゴムと各種熱伝導性フィラーとの組み合わせが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、環境問題から各分野にてリサイクルの重要性が高まり、電気電子機器に使用される部品のリサイクル性も重要な課題となってきている。前記のシリコーンゴム等からなる熱伝導性ゴム組成物は、架橋ゴム組成物であり、リサイクル回収しても再度溶融成形加工して使用することはできず、リサイクル性に大きな課題があった。さらにシリコーンゴムは、低分子シロキサンの揮発による接点不良の問題があり、リサイクル可能な非シリコーン系の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物が熱望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記問題点を解決するため、良好な熱伝導性を有し、リサイクル性に優れる非シリコーン系の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物およびその熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるシートを提供すべく鋭意研究を行なった結果、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、(A)25℃以下のガラス転移温度、および50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー、ならびに(B)熱伝導性を有する無機系充填材からなる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0006】
前記熱可塑性エラストマー(A)が、(a)(メタ)アクリル系重合体ブロックと(b)(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と異なる(メタ)アクリル系重合体ブロックを有する(C)ブロック共重合体からなることが好ましい。
【0007】
前記ブロック共重合体(C)が、原子移動ラジカル重合により製造されてなることが好ましい。
【0008】
前記ブロック共重合体(C)が、トリブロック共重合体および/またはジブロック共重合体であることが好ましい。
【0009】
前記熱伝導性を有する無機系充填材(B)が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる熱伝導性熱可塑性エラストマーシートに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物は、(A)25℃以下のガラス転移温度、および50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー、ならびに(B)熱伝導性を有する無機系充填材からなる。熱可塑性エラストマー(A)と無機系充填材(B)の比率については、とくに制限はなく熱伝導性の必要度に応じて設定すればよい。熱伝導性、軟質性、リサイクル性の点から、好ましくは熱可塑性エラストマー(A)5〜90重量%、無機系充填材(B)10〜95重量%、さらに好ましくは熱可塑性エラストマー(A)10〜85重量%、無機系充填材(B)15〜90重量%、とくに好ましくは熱可塑性エラストマー(A)10〜80重量%、無機系充填材(B)20〜90重量%である。
【0012】
本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、25℃以下、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下のガラス転移温度を有する。25℃以下のガラス転移温度を有しない場合は、軟質性が低下する傾向がある。本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、とくに好ましくは110℃以上のガラス転移温度を有する。50℃以上のガラス転移温度を有しない場合は、耐熱性が低下する傾向がある。
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー(A)としては、ブロック共重合体(C)からなる重合体が挙げられる。耐熱性および軟質性の点から、熱可塑性エラストマー(A)中のブロック共重合体(C)の含有量は、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、とくに好ましくは40重量%以上である。
【0014】
ブロック共重合体(C)としては、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸メトキシエチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−(アクリル酸メトキシエチル/アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル)−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸ブロック共重合体、(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)−アクリル酸ブチル−(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)ブロック共重合体、メタクリル酸メチル−(アクリル酸ブチル/メタクリル酸)−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチルブロック共重合体等の(メタ)アクリル系ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンースチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、等のスチレン系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体、ポリウレタン系ブロック共重合体、ポリオレフィン系ブロック共重合体等の公知のブロック共重合体があげられる。これらのブロック体のなかで、耐熱性、軟質性およびリサイクル性の点から(メタ)アクリル系ブロック共重合体が好ましい。この(メタ)アクリル系ブロック共重合体のなかで、耐熱性、軟質性、経済性の点から、メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸ブロック共重合体、(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)―アクリル酸ブチル−(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)ブロック共重合体が好ましい。
【0015】
ブロック共重合体(C)以外の任意の重合体としては、公知の重合体があげられる。たとえば、アクリルゴム、シリコーン変性のアクリルゴム、ブチルゴム、シリコーン変性のブチルゴム等の架橋ゴム、アクリルゴム−g−メチルメタクリレート、MAS(アクリルゴム−g−メチルメタクリレート/スチレン)、MBS(ブタジエンゴム−g−メチルメタクリレート/スチレン)等のグラフト共重合体、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、PBT、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、MS、ABS、AS、PC、PPO等の重合体があげられる。軟質性およびリサイクル性の点から、ブロック共重合体(C)との相溶性に優れる重合体が好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマー(A)は、耐熱性の点から可塑剤の使用量を少なくするために、好ましくはJIS K6251規格のA硬度が90以下、さらに好ましくは70以下、とくに好ましくは50以下である。同様の点から熱可塑性エラストマー(A)は、好ましくはJIS K6253規格の引張伸びが150%以上、さらに好ましくは200%以上、とくに好ましくは250%以上である。
【0017】
本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、耐熱性、軟質性およびリサイクル性の点から、好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と異なる(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を有する(C)ブロック共重合体からなる。
【0018】
ブロック共重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は、強度および耐熱性の点から、メタクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸が、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは40〜100重量%、とくに好ましくは60〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体が好ましくは0〜80重量%、さらに好ましくは0〜60重量%、とくに好ましくは0〜40重量%とからなる。
【0019】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタクリル酸エステルとしては、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、経済性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸と共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸などのアクリル酸類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体のなかで、耐熱性、軟質性、および必要な加工性等に応じて、好ましいものを選択することができる。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、とくに好ましくは110℃以上である。ガラス転移温度が50℃より低いと、耐熱性が低くなる傾向がある。
【0022】
前記ブロック共重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、軟質性および成形性の点から、(メタ)アクリル酸エステルが、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%、とくに好ましくは80〜100重量%、およびこれと共重合可能なビニル系単量体が好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは0〜30重量%、とくに好ましくは0〜20重量%である。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、組成物の柔軟性および経済性の点から、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタクリル酸、アクリル酸などのアクリル酸類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、この(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度によって好ましいものを選択することができる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下である。ガラス転移温度が25℃より高いと、軟質性が低下する傾向がある。
【0025】
本発明に使用されるブロック共重合体(C)は、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体、(a−b)n型のマルチブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体である。これらの中でも、耐熱性および軟質性の点から、a−b−a型のトリブロック共重合体、(a−b)n型のマルチブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体がより好ましい。
【0026】
前記ブロック共重合体(C)の構造は、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であり、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、加工特性、機械特性などの必要特性に応じて使い分けられる。
【0027】
ブロック共重合体(C)の数平均分子量はとくに限定されないが、好ましくは10,000〜600,000、より好ましくは30,000〜500,000、さらに好ましくは、50,000〜400,000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定される。分子量はクロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0028】
前記ブロック共重合体(C)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)に関して、とくに限定はないが、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0、さらに好ましくは1.8以下である。Mw/Mnが2.5をこえると耐熱性、軟質性、リサイクル性および機械的特性が低下する傾向がある。
【0029】
ブロック共重合体(C)を製造する方法としてはとくに限定されないが、経済性の点から制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、ブロック共重合体の分子量、構造の制御、および経済性の点からリビングラジカル重合が好ましい。
【0030】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義には、末端が常に活性をもち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年さまざまなグループで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。本発明において、これらのうち、どの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0031】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(たとえば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0032】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。
【0033】
一官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H5−CH2X、
C6H5−C(H)(X)−CH3、
C6H5−C(X)(CH3)2、
R1−C(H)(X)−COOR2、
R1−C(CH3)(X)−COOR2、
R1−C(H)(X)−CO−R2、
R1−C(CH3)(X)−CO−R2、
R1−C6H4−SO2X、
(式中、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表わす。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。)で示される化合物などがあげられる。
【0034】
二官能性化合物としては、たとえば、式:
X−CH2−C6H4−CH2−X、
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X、
X−CH(COOR3)−(CH2)n−CH(COOR3)−X、
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2)n−C(CH3)(COOR3)−X、
X−CH(COR3)−(CH2)n−CH(COR3)−X、
X−C(CH3)(COR3)−(CH2)n−C(CH3)(COR3)−X、
X−CH2−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2−X、
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X、
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X、
X−CH2−CO−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X、
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X、
X−SO2−C6H4−SO2−X、
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。C6H5はフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表わす。)で示される化合物などがあげられる。
【0035】
多官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H3−(CH2−X)3、
C6H3−(CH(CH3)−X)3、
C6H3−(C(CH3)2−X)3、
C6H3−(OCO−CH2−X)3、
C6H3−(OCO−CH(CH3)−X)3、
C6H3−(OCO−C(CH3)2−X)3、
C6H3−(SO2−X)3、
(式中、C6H3は三置換フェニル基(置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい)を表わす。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表わす。)で示される化合物などがあげられる。
【0036】
また、重合を開始するもの以外に官能基をもつ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0037】
これらの開始剤として用いられ得る有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0038】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの、錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体がより好ましい。
【0039】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2’−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、とくに限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0040】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0041】
また、前記重合は、室温〜200℃の範囲で行なうことができ、好ましくは、50〜150℃の範囲である。
【0042】
前記重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0043】
本発明に使用されるブロック共重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の組成比はとくに制限はない。柔軟性、熱伝導性、機械特性等のバランスの点から、好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)5〜80重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)95〜20重量%であり、より好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)10〜70重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)90〜30重量%であり、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)15〜60重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)85〜40重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%未満では耐熱性が低下する傾向があり、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の割合が20重量%未満では柔軟性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明に使用されるブロック共重合体(C)は、強度、伸びなどの機械特性を改善する目的で、種々の官能基を有していてもよい。このような官能基は、官能性基を有するモノマーを共重合したり、エステル基などの保護された官能基を加水分解、熱分解に代表される方法で脱保護する、さらには、エステル交換反応などを用いて導入することが可能である。このような官能基はとくに制限されるものではなく、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基などがあげられる。さらに、これら官能基と反応する成分を作用させることも可能である。
【0045】
本発明の熱伝導性を有する無機系充填材(B)としては、公知の熱伝導性フィラーを用いることができるが、熱伝導性、柔軟性および機械特性の点から、好ましくは、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカからなる群から選ばれる1種以上である。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等が、金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が、金属炭化物としては炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等が、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が例示される。これらのなかでは、熱伝導性、機械特性の点から、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。無機系充填材(B)は、熱伝導性の点から、好ましくは熱伝導率が5W/mK以上、さらに好ましくは10W/mK以上、とくに好ましくは15W/mK以上である。この熱伝導率が、5W/mK未満である場合、放熱シートとしての冷却性能が不足する傾向がある。
【0046】
無機系充填材(B)は、分散性や界面接着性を良好にし、柔軟性、機械特性等を向上させるために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤や脂肪酸、樹脂酸およびその金属塩などにより表面が処理されたものであることが好ましい。無機系充填材(B)の充填率を高めるために、粒子径の異なる無機系充填材を2種以上併用することが好適である。とくに、粒子径が10μ以上の無機系充填材と、10μ未満の無機系充填材の併用が好ましい。また、これら熱伝導性フィラーは、同一種類のフィラーだけでなく種類の異なる2種以上を併用することもできる。
【0047】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、前記成分のほかに、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、難燃剤、そのほかの充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤、顔料、加硫剤等や本発明の組成物シートに接着性を付与するために接着性付与剤などを配合し得る。
【0048】
可塑剤は、本発明における組成物において、硬度を調整し、前記無機系充填材(B)を高充填するために、またシート成形上の点においても添加することが好ましい。可塑剤としては、公知のものが使用できる。可塑剤の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルのオリゴマー(分子量数百〜二万)、ポリエステルのオリゴマーなどのエステル系オリゴマー、ポリブテン、水添ポリブテン、水添アルファ−オレフィンオリゴマー、アタクチックポリプロピレンなどのポリビニル系オリゴマー、ビフェニル、トリフェニルなどの芳香族系オリゴマー、水添液状ポリブタジエンなどの水添ポリエン系オリゴマー、パラフィン油、塩化パラフィン油などのパラフィン系オリゴマー、ナフテン油などのシクロパラフィン系オリゴマー、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸エステル類、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジn−オクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバシケート、テトラヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシルなどの非芳香族2塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシルなどの芳香族系エステル類、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステルなどの脂肪酸エステル類、ジエチレングリコールベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートなどのポリアルキレングリコールのエステル類、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ系可塑剤等があげられる。これらの可塑剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。耐熱性および軟質性の点から、本発明に用いる熱可塑性エラストマー(A)の極性に応じて相溶性の良好な可塑剤を選択するのが好ましい。
【0049】
これら可塑剤の使用量は、柔軟性および耐熱性の点から、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して300重量部以下であることが好ましく、さらには200重量部以下であることがより好ましい。可塑材の使用量が、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して300重量部を超える場合、耐熱性、加工性が低下する傾向がある。
【0050】
安定剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系、スズ系、亜鉛系、金属石鹸系等の熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケル系等の光安定剤等の公知の安定剤があげられる。滑剤としては、炭化水素系、エステル系、金属石鹸系、ポリエチワックス等の公知の滑剤があげられる。難燃剤としては、リン系、ハロゲン系、アンチモン系、アルミ系、シリコーン系等の公知の難燃剤があげられる。そのほかの充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウム、クレイ、タルク等の公知の無機化合物があげられる。また、接着性付与剤として、エポキシ系、オレフィン系、メタクリル系、エステル系、3級アミン系のシランカップリング剤等の公知の接着性付与剤があげられる。
【0051】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を用いたシートは、熱可塑性エラストマー(A)、無機系充填材(B)、配合剤、および必要に応じて顔料を、ミル、バンバリミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー、スーパーフローター等の公知の方法にて均一に混合したのち、Tダイ、カレンダー等の押出成形、圧縮成形、射出成形等の公知の成形法にて成形できる。
【0052】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を用いたシートは、片面もしくは両面にアクリル系粘着剤等の公知の粘着剤を被覆して使用することができる。さらに本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を用いたシートは、片面もしくは両面にアルミニウム等の軟質性の金属層を組み合わせて使用することができる。
【0053】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中の略号BAはアクリル酸ブチルを、MMAはメタクリル酸メチルを、MAAはメタクリル酸を、EHAは2−エチルヘキシルアクリレートを、HEAは2−ヒドロキシエチルアクリレートを、IBはイソブチレンを、STはスチレンを表す。
【0054】
以下に実施例および比較例で用いた各種薬品をまとめて示す。
【0055】
<各種薬品の説明>
アクリルゴム(日本ゼオン(株)製)
シリコーンゴム(東芝−GEシリコーン(株)製)
無機系充填材(B1):パイロキスマ5301(協和化学工業(株)製の酸化マグネシウム(平均粒径2ミクロン)
無機系充填材(B2):アルミナ1(昭和電工(株)製、球状アルミナAS−10)
無機系充填材(B3):アルミナ2(昭和電工(株)製、球状アルミナAS−50)
可塑剤A:O−130P(旭電化工業(株)製)
可塑剤B:RS−107(旭電化工業(株)製)
安定剤:MARK AO−50(アデカアーガス(株)製)
加硫剤A:安息香酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製)
加硫剤B:TC−8(東芝−GEシリコーン(株)製)
【0056】
実施例1
(1)熱可塑性エラストマー(A1)の製造
5リットルのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅11.3g(78.5mモル)、アセトニトリル180mLを加えた。加熱昇温後、70℃で5分間攪拌した。室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.7mモル)、1段目単量体としてアクリル酸ブチル805g(6.28モル)を加えた。加熱昇温し、80℃で攪拌しながら、配位子ジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析により転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸ブチルの転化率が95%の時点で、2段目単量体としてメタクリル酸メチル129g(1.29モル)、メタクリル酸t−ブチル424g(2.99モル)、塩化銅7.8g(78.5mモル)、ジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)、トルエン1107.9mlを加えた。ガスクロマトグラム分析により転化率を決定し、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチルの転化率が85%の時点で、トルエン1500mlを加え、室温に冷却して反応を終了させた。反応中常に重合溶液は緑色であった。
【0057】
反応溶液を加温下で希塩酸で処理し、銅錯体を除去するとともに加水分解し、メタクリル酸t−ブチル単位をメタクリル酸に変換した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、熱可塑性エラストマー(A1)を得た。得られた重合体の分析方法および結果は以下のとおりである。
【0058】
(分子量・分子量分布)
クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行ない、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0059】
(ブロック共重合体の組成比(wt%))
1H−NMRにより、ブロック共重合体中の重量分率を確認した。
数平均分子量=115,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.50、BA/MMA/MAA=70/10/20
【0060】
(ガラス転移温度)
粘弾性スペクトルによりブロック共重合体のガラス転移温度を算出した。
【0061】
(2)熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物の製造
表2に従って、熱可塑性エラストマー(A1)100重量部(15g)、無機系充填材(B1)300重量部(45g)、可塑剤Aを130重量部(4.5g)、安定剤1重量部(0.15g)をプラストミル(東洋精機(株)製)にて200℃で混合し、脱泡を行なって本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を得た。さらに、本組成物から200℃、10分間の加熱プレス成形(神藤金属工業所(株)製卓上テストプレス機)により、本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物の厚さ20mmのシートを得た。厚さ20mmのシートを使用し、京都電子工業(株)製 迅速熱伝導率計「QTM−500」を用いて熱伝導率を、横河ヒューレットパッカード社製 「HIGH RESISTANCE METER 4329A」を用いて体積固有抵抗を測定した。またアスカーA硬度計により硬度を測定した。さらに厚さ1mmのシートについて耐熱性の評価を行なった。耐熱性は、80℃と120℃のオーブン中にシート一端を保持してつるし、96時間後のシートの破断の発生状況を目視で確認した。破断しなかった場合を○、破断した場合を×とした。
【0062】
リサイクル性の評価は、シートを粉砕し、再度プラストミル混合、加熱プレス成形して得た再生シートの熱伝導率と硬度を測定し、熱伝導率と硬度の保持率で判断した。80%以上の保持率を○とした。80%未満の保持率である場合、あるいはプラストミル混合や加熱プレスシート化ができない場合を×とした。
【0063】
耐熱性およびリサイクル性の結果を、表3に示した。
【0064】
実施例2〜実施例5
(1)熱可塑性エラストマー(A2)、(A3)、(A4)の製造
熱可塑性エラストマー(A2)は、1段目単量体をアクリル酸2−エチルヘキシル920g、2段目単量体をメタクリル酸メチル129g、メタクリル酸t−ブチル212gとして、熱可塑性エラストマー(A3)は、1段目単量体をアクリル酸2−エチルヘキシル805g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル115g、2段目単量体をメタクリル酸メチル194g、メタクリル酸t−ブチル212gとして、臭化銅、開始剤量をモル比で微調整し、熱可塑性エラストマー(A1)と同様の方法で合成した。熱可塑性エラストマー(A2)は、数平均分子量=105,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.55、EHA/MMA/MAA=80/10/10(wt%)、熱可塑性エラストマー(A3)は、数平均分子量=95,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.60、EHA/HEA/MMA/MAA=70/5/15/10であった。熱可塑性エラストマー(A4)は、数平均分子量=85,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.67、IB/ST=70/30であった。
【0065】
【表1】
【0066】
(2)熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物
熱可塑性エラストマー(A2)〜(A4)、無機系充填材(B1)〜(B3)ならびに可塑剤(A)または(B)を表2に示す比率にしたがって調整し、熱可塑性エラストマー(A1)と同様の方法で、熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物および熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物からなるシートを製造した。
【0067】
【表2】
【0068】
比較例1、2
アクリルゴム、シリコーンゴム、加硫剤、無機系充填材(B1)、および配合剤を表2に示す比率にしたがって調整し、実施例1と同様の方法で、熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物および熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物からなるシートを製造した。
【0069】
【表3】
【0070】
【発明の効果】
表3に示すように、本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物とその熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる熱伝導性熱可塑性エラストマーシートは、熱伝導性に優れ、かつ良好なリサイクル性を有するものであり、電気・電子用の放熱・伝熱スペーサーとして有効に利用できるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は各種の電子・電気機器に搭載される冷却が必要な電子部品等の冷却部に用いられる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物およびその熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター等に代表される各種電子・電気機器に搭載されている電子部品等の冷却の問題は、機器の高性能化や小型化にともない、近年重要課題として注目されている。従来よりゴム弾性を有する熱伝導性材料は、トランジスタやダイオード、ICなどの半導体をはじめ、各種のヒーター、温度センサなどの電子部品の放熱・伝熱スペーサーとして幅広く使用されている。このような熱伝導性材料としては、これまでシリコーンゴムやEPDMゴムなどの加硫ゴムに熱伝導性フィラーを配合したものが知られている。とくにシリコーンゴムを用いたものは最もよく知られており、特公平6−55891号公報、特公平6−38460号公報、および特公平7−91468号公報にシリコーンゴムと各種熱伝導性フィラーとの組み合わせが開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、環境問題から各分野にてリサイクルの重要性が高まり、電気電子機器に使用される部品のリサイクル性も重要な課題となってきている。前記のシリコーンゴム等からなる熱伝導性ゴム組成物は、架橋ゴム組成物であり、リサイクル回収しても再度溶融成形加工して使用することはできず、リサイクル性に大きな課題があった。さらにシリコーンゴムは、低分子シロキサンの揮発による接点不良の問題があり、リサイクル可能な非シリコーン系の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物が熱望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記問題点を解決するため、良好な熱伝導性を有し、リサイクル性に優れる非シリコーン系の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物およびその熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるシートを提供すべく鋭意研究を行なった結果、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、(A)25℃以下のガラス転移温度、および50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー、ならびに(B)熱伝導性を有する無機系充填材からなる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0006】
前記熱可塑性エラストマー(A)が、(a)(メタ)アクリル系重合体ブロックと(b)(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と異なる(メタ)アクリル系重合体ブロックを有する(C)ブロック共重合体からなることが好ましい。
【0007】
前記ブロック共重合体(C)が、原子移動ラジカル重合により製造されてなることが好ましい。
【0008】
前記ブロック共重合体(C)が、トリブロック共重合体および/またはジブロック共重合体であることが好ましい。
【0009】
前記熱伝導性を有する無機系充填材(B)が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる熱伝導性熱可塑性エラストマーシートに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物は、(A)25℃以下のガラス転移温度、および50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー、ならびに(B)熱伝導性を有する無機系充填材からなる。熱可塑性エラストマー(A)と無機系充填材(B)の比率については、とくに制限はなく熱伝導性の必要度に応じて設定すればよい。熱伝導性、軟質性、リサイクル性の点から、好ましくは熱可塑性エラストマー(A)5〜90重量%、無機系充填材(B)10〜95重量%、さらに好ましくは熱可塑性エラストマー(A)10〜85重量%、無機系充填材(B)15〜90重量%、とくに好ましくは熱可塑性エラストマー(A)10〜80重量%、無機系充填材(B)20〜90重量%である。
【0012】
本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、25℃以下、好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−10℃以下のガラス転移温度を有する。25℃以下のガラス転移温度を有しない場合は、軟質性が低下する傾向がある。本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、とくに好ましくは110℃以上のガラス転移温度を有する。50℃以上のガラス転移温度を有しない場合は、耐熱性が低下する傾向がある。
【0013】
本発明の熱可塑性エラストマー(A)としては、ブロック共重合体(C)からなる重合体が挙げられる。耐熱性および軟質性の点から、熱可塑性エラストマー(A)中のブロック共重合体(C)の含有量は、好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、とくに好ましくは40重量%以上である。
【0014】
ブロック共重合体(C)としては、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸メトキシエチル−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−(アクリル酸メトキシエチル/アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル)−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸ブロック共重合体、(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)−アクリル酸ブチル−(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)ブロック共重合体、メタクリル酸メチル−(アクリル酸ブチル/メタクリル酸)−メタクリル酸メチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸2−エチルヘキシル−メタクリル酸メチルブロック共重合体等の(メタ)アクリル系ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンースチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、等のスチレン系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体、ポリウレタン系ブロック共重合体、ポリオレフィン系ブロック共重合体等の公知のブロック共重合体があげられる。これらのブロック体のなかで、耐熱性、軟質性およびリサイクル性の点から(メタ)アクリル系ブロック共重合体が好ましい。この(メタ)アクリル系ブロック共重合体のなかで、耐熱性、軟質性、経済性の点から、メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸ブロック共重合体、(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)―アクリル酸ブチル−(メタクリル酸メチル/メタクリル酸)ブロック共重合体が好ましい。
【0015】
ブロック共重合体(C)以外の任意の重合体としては、公知の重合体があげられる。たとえば、アクリルゴム、シリコーン変性のアクリルゴム、ブチルゴム、シリコーン変性のブチルゴム等の架橋ゴム、アクリルゴム−g−メチルメタクリレート、MAS(アクリルゴム−g−メチルメタクリレート/スチレン)、MBS(ブタジエンゴム−g−メチルメタクリレート/スチレン)等のグラフト共重合体、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、PBT、PET、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、MS、ABS、AS、PC、PPO等の重合体があげられる。軟質性およびリサイクル性の点から、ブロック共重合体(C)との相溶性に優れる重合体が好ましい。
【0016】
熱可塑性エラストマー(A)は、耐熱性の点から可塑剤の使用量を少なくするために、好ましくはJIS K6251規格のA硬度が90以下、さらに好ましくは70以下、とくに好ましくは50以下である。同様の点から熱可塑性エラストマー(A)は、好ましくはJIS K6253規格の引張伸びが150%以上、さらに好ましくは200%以上、とくに好ましくは250%以上である。
【0017】
本発明の熱可塑性エラストマー(A)は、耐熱性、軟質性およびリサイクル性の点から、好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と異なる(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を有する(C)ブロック共重合体からなる。
【0018】
ブロック共重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)は、強度および耐熱性の点から、メタクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸が、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは40〜100重量%、とくに好ましくは60〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体が好ましくは0〜80重量%、さらに好ましくは0〜60重量%、とくに好ましくは0〜40重量%とからなる。
【0019】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタクリル酸エステルとしては、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、経済性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸と共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸などのアクリル酸類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体のなかで、耐熱性、軟質性、および必要な加工性等に応じて、好ましいものを選択することができる。
【0021】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、50℃以上、好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上、とくに好ましくは110℃以上である。ガラス転移温度が50℃より低いと、耐熱性が低くなる傾向がある。
【0022】
前記ブロック共重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)は、軟質性および成形性の点から、(メタ)アクリル酸エステルが、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは70〜100重量%、とくに好ましくは80〜100重量%、およびこれと共重合可能なビニル系単量体が好ましくは0〜50重量%、さらに好ましくは0〜30重量%、とくに好ましくは0〜20重量%である。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−tert−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリルなどがあげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、組成物の柔軟性および経済性の点から、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタクリル酸、アクリル酸などのアクリル酸類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−n−ヘプチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸トルイル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸−2−メトキシエチル、メタクリル酸−3−メトキシブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタクリル酸パーフルオロメチル、メタクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族アルケニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン含有不飽和化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有不飽和化合物;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどの不飽和ジカルボン酸化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル化合物;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系化合物などの各種ビニル系単量体があげられる。これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いられる。これらのビニル系単量体は、この(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度によって好ましいものを選択することができる。(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度は、好ましくは25℃以下であり、より好ましくは0℃以下であり、さらに好ましくは−10℃以下である。ガラス転移温度が25℃より高いと、軟質性が低下する傾向がある。
【0025】
本発明に使用されるブロック共重合体(C)は、a−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体、(a−b)n型のマルチブロック共重合体から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体である。これらの中でも、耐熱性および軟質性の点から、a−b−a型のトリブロック共重合体、(a−b)n型のマルチブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体がより好ましい。
【0026】
前記ブロック共重合体(C)の構造は、線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であり、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、加工特性、機械特性などの必要特性に応じて使い分けられる。
【0027】
ブロック共重合体(C)の数平均分子量はとくに限定されないが、好ましくは10,000〜600,000、より好ましくは30,000〜500,000、さらに好ましくは、50,000〜400,000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定される。分子量はクロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0028】
前記ブロック共重合体(C)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)に関して、とくに限定はないが、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0、さらに好ましくは1.8以下である。Mw/Mnが2.5をこえると耐熱性、軟質性、リサイクル性および機械的特性が低下する傾向がある。
【0029】
ブロック共重合体(C)を製造する方法としてはとくに限定されないが、経済性の点から制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、ブロック共重合体の分子量、構造の制御、および経済性の点からリビングラジカル重合が好ましい。
【0030】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義には、末端が常に活性をもち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年さまざまなグループで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。本発明において、これらのうち、どの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0031】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(たとえば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0032】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。
【0033】
一官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H5−CH2X、
C6H5−C(H)(X)−CH3、
C6H5−C(X)(CH3)2、
R1−C(H)(X)−COOR2、
R1−C(CH3)(X)−COOR2、
R1−C(H)(X)−CO−R2、
R1−C(CH3)(X)−CO−R2、
R1−C6H4−SO2X、
(式中、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表わす。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。)で示される化合物などがあげられる。
【0034】
二官能性化合物としては、たとえば、式:
X−CH2−C6H4−CH2−X、
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X、
X−CH(COOR3)−(CH2)n−CH(COOR3)−X、
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2)n−C(CH3)(COOR3)−X、
X−CH(COR3)−(CH2)n−CH(COR3)−X、
X−C(CH3)(COR3)−(CH2)n−C(CH3)(COR3)−X、
X−CH2−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2−X、
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X、
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X、
X−CH2−CO−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X、
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X、
X−SO2−C6H4−SO2−X、
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。C6H5はフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表わす。)で示される化合物などがあげられる。
【0035】
多官能性化合物としては、たとえば、式:
C6H3−(CH2−X)3、
C6H3−(CH(CH3)−X)3、
C6H3−(C(CH3)2−X)3、
C6H3−(OCO−CH2−X)3、
C6H3−(OCO−CH(CH3)−X)3、
C6H3−(OCO−C(CH3)2−X)3、
C6H3−(SO2−X)3、
(式中、C6H3は三置換フェニル基(置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい)を表わす。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表わす。)で示される化合物などがあげられる。
【0036】
また、重合を開始するもの以外に官能基をもつ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0037】
これらの開始剤として用いられ得る有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0038】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの、錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体がより好ましい。
【0039】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2’−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、とくに限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0040】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独または2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0041】
また、前記重合は、室温〜200℃の範囲で行なうことができ、好ましくは、50〜150℃の範囲である。
【0042】
前記重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0043】
本発明に使用されるブロック共重合体(C)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の組成比はとくに制限はない。柔軟性、熱伝導性、機械特性等のバランスの点から、好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)5〜80重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)95〜20重量%であり、より好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)10〜70重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)90〜30重量%であり、さらに好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)15〜60重量%、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)85〜40重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%未満では耐熱性が低下する傾向があり、(メタ)アクリル系重合体ブロック(b)の割合が20重量%未満では柔軟性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明に使用されるブロック共重合体(C)は、強度、伸びなどの機械特性を改善する目的で、種々の官能基を有していてもよい。このような官能基は、官能性基を有するモノマーを共重合したり、エステル基などの保護された官能基を加水分解、熱分解に代表される方法で脱保護する、さらには、エステル交換反応などを用いて導入することが可能である。このような官能基はとくに制限されるものではなく、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、メルカプト基、イソシアネート基、エポキシ基などがあげられる。さらに、これら官能基と反応する成分を作用させることも可能である。
【0045】
本発明の熱伝導性を有する無機系充填材(B)としては、公知の熱伝導性フィラーを用いることができるが、熱伝導性、柔軟性および機械特性の点から、好ましくは、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカからなる群から選ばれる1種以上である。金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等が、金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等が、金属炭化物としては炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化ケイ素等が、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が例示される。これらのなかでは、熱伝導性、機械特性の点から、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが好ましい。無機系充填材(B)は、熱伝導性の点から、好ましくは熱伝導率が5W/mK以上、さらに好ましくは10W/mK以上、とくに好ましくは15W/mK以上である。この熱伝導率が、5W/mK未満である場合、放熱シートとしての冷却性能が不足する傾向がある。
【0046】
無機系充填材(B)は、分散性や界面接着性を良好にし、柔軟性、機械特性等を向上させるために、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤や脂肪酸、樹脂酸およびその金属塩などにより表面が処理されたものであることが好ましい。無機系充填材(B)の充填率を高めるために、粒子径の異なる無機系充填材を2種以上併用することが好適である。とくに、粒子径が10μ以上の無機系充填材と、10μ未満の無機系充填材の併用が好ましい。また、これら熱伝導性フィラーは、同一種類のフィラーだけでなく種類の異なる2種以上を併用することもできる。
【0047】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、前記成分のほかに、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、難燃剤、そのほかの充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤、顔料、加硫剤等や本発明の組成物シートに接着性を付与するために接着性付与剤などを配合し得る。
【0048】
可塑剤は、本発明における組成物において、硬度を調整し、前記無機系充填材(B)を高充填するために、またシート成形上の点においても添加することが好ましい。可塑剤としては、公知のものが使用できる。可塑剤の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルのオリゴマー(分子量数百〜二万)、ポリエステルのオリゴマーなどのエステル系オリゴマー、ポリブテン、水添ポリブテン、水添アルファ−オレフィンオリゴマー、アタクチックポリプロピレンなどのポリビニル系オリゴマー、ビフェニル、トリフェニルなどの芳香族系オリゴマー、水添液状ポリブタジエンなどの水添ポリエン系オリゴマー、パラフィン油、塩化パラフィン油などのパラフィン系オリゴマー、ナフテン油などのシクロパラフィン系オリゴマー、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸エステル類、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジn−オクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)セバシケート、テトラヒドロフタル酸ジ2−エチルヘキシルなどの非芳香族2塩基酸エステル類、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソデシルなどの芳香族系エステル類、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステルなどの脂肪酸エステル類、ジエチレングリコールベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエートなどのポリアルキレングリコールのエステル類、トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェートなどのリン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ系可塑剤等があげられる。これらの可塑剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。耐熱性および軟質性の点から、本発明に用いる熱可塑性エラストマー(A)の極性に応じて相溶性の良好な可塑剤を選択するのが好ましい。
【0049】
これら可塑剤の使用量は、柔軟性および耐熱性の点から、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して300重量部以下であることが好ましく、さらには200重量部以下であることがより好ましい。可塑材の使用量が、熱可塑性エラストマー(A)100重量部に対して300重量部を超える場合、耐熱性、加工性が低下する傾向がある。
【0050】
安定剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、硫黄系、スズ系、亜鉛系、金属石鹸系等の熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ニッケル系等の光安定剤等の公知の安定剤があげられる。滑剤としては、炭化水素系、エステル系、金属石鹸系、ポリエチワックス等の公知の滑剤があげられる。難燃剤としては、リン系、ハロゲン系、アンチモン系、アルミ系、シリコーン系等の公知の難燃剤があげられる。そのほかの充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、酸化チタン、亜鉛華、硫酸バリウム、クレイ、タルク等の公知の無機化合物があげられる。また、接着性付与剤として、エポキシ系、オレフィン系、メタクリル系、エステル系、3級アミン系のシランカップリング剤等の公知の接着性付与剤があげられる。
【0051】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を用いたシートは、熱可塑性エラストマー(A)、無機系充填材(B)、配合剤、および必要に応じて顔料を、ミル、バンバリミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー、スーパーフローター等の公知の方法にて均一に混合したのち、Tダイ、カレンダー等の押出成形、圧縮成形、射出成形等の公知の成形法にて成形できる。
【0052】
本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を用いたシートは、片面もしくは両面にアクリル系粘着剤等の公知の粘着剤を被覆して使用することができる。さらに本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を用いたシートは、片面もしくは両面にアルミニウム等の軟質性の金属層を組み合わせて使用することができる。
【0053】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例中の略号BAはアクリル酸ブチルを、MMAはメタクリル酸メチルを、MAAはメタクリル酸を、EHAは2−エチルヘキシルアクリレートを、HEAは2−ヒドロキシエチルアクリレートを、IBはイソブチレンを、STはスチレンを表す。
【0054】
以下に実施例および比較例で用いた各種薬品をまとめて示す。
【0055】
<各種薬品の説明>
アクリルゴム(日本ゼオン(株)製)
シリコーンゴム(東芝−GEシリコーン(株)製)
無機系充填材(B1):パイロキスマ5301(協和化学工業(株)製の酸化マグネシウム(平均粒径2ミクロン)
無機系充填材(B2):アルミナ1(昭和電工(株)製、球状アルミナAS−10)
無機系充填材(B3):アルミナ2(昭和電工(株)製、球状アルミナAS−50)
可塑剤A:O−130P(旭電化工業(株)製)
可塑剤B:RS−107(旭電化工業(株)製)
安定剤:MARK AO−50(アデカアーガス(株)製)
加硫剤A:安息香酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製)
加硫剤B:TC−8(東芝−GEシリコーン(株)製)
【0056】
実施例1
(1)熱可塑性エラストマー(A1)の製造
5リットルのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅11.3g(78.5mモル)、アセトニトリル180mLを加えた。加熱昇温後、70℃で5分間攪拌した。室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.7mモル)、1段目単量体としてアクリル酸ブチル805g(6.28モル)を加えた。加熱昇温し、80℃で攪拌しながら、配位子ジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mlを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析により転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸ブチルの転化率が95%の時点で、2段目単量体としてメタクリル酸メチル129g(1.29モル)、メタクリル酸t−ブチル424g(2.99モル)、塩化銅7.8g(78.5mモル)、ジエチレントリアミン1.6ml(7.9mモル)、トルエン1107.9mlを加えた。ガスクロマトグラム分析により転化率を決定し、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチルの転化率が85%の時点で、トルエン1500mlを加え、室温に冷却して反応を終了させた。反応中常に重合溶液は緑色であった。
【0057】
反応溶液を加温下で希塩酸で処理し、銅錯体を除去するとともに加水分解し、メタクリル酸t−ブチル単位をメタクリル酸に変換した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより、熱可塑性エラストマー(A1)を得た。得られた重合体の分析方法および結果は以下のとおりである。
【0058】
(分子量・分子量分布)
クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行ない、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0059】
(ブロック共重合体の組成比(wt%))
1H−NMRにより、ブロック共重合体中の重量分率を確認した。
数平均分子量=115,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.50、BA/MMA/MAA=70/10/20
【0060】
(ガラス転移温度)
粘弾性スペクトルによりブロック共重合体のガラス転移温度を算出した。
【0061】
(2)熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物の製造
表2に従って、熱可塑性エラストマー(A1)100重量部(15g)、無機系充填材(B1)300重量部(45g)、可塑剤Aを130重量部(4.5g)、安定剤1重量部(0.15g)をプラストミル(東洋精機(株)製)にて200℃で混合し、脱泡を行なって本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を得た。さらに、本組成物から200℃、10分間の加熱プレス成形(神藤金属工業所(株)製卓上テストプレス機)により、本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物の厚さ20mmのシートを得た。厚さ20mmのシートを使用し、京都電子工業(株)製 迅速熱伝導率計「QTM−500」を用いて熱伝導率を、横河ヒューレットパッカード社製 「HIGH RESISTANCE METER 4329A」を用いて体積固有抵抗を測定した。またアスカーA硬度計により硬度を測定した。さらに厚さ1mmのシートについて耐熱性の評価を行なった。耐熱性は、80℃と120℃のオーブン中にシート一端を保持してつるし、96時間後のシートの破断の発生状況を目視で確認した。破断しなかった場合を○、破断した場合を×とした。
【0062】
リサイクル性の評価は、シートを粉砕し、再度プラストミル混合、加熱プレス成形して得た再生シートの熱伝導率と硬度を測定し、熱伝導率と硬度の保持率で判断した。80%以上の保持率を○とした。80%未満の保持率である場合、あるいはプラストミル混合や加熱プレスシート化ができない場合を×とした。
【0063】
耐熱性およびリサイクル性の結果を、表3に示した。
【0064】
実施例2〜実施例5
(1)熱可塑性エラストマー(A2)、(A3)、(A4)の製造
熱可塑性エラストマー(A2)は、1段目単量体をアクリル酸2−エチルヘキシル920g、2段目単量体をメタクリル酸メチル129g、メタクリル酸t−ブチル212gとして、熱可塑性エラストマー(A3)は、1段目単量体をアクリル酸2−エチルヘキシル805g、アクリル酸2−ヒドロキシエチル115g、2段目単量体をメタクリル酸メチル194g、メタクリル酸t−ブチル212gとして、臭化銅、開始剤量をモル比で微調整し、熱可塑性エラストマー(A1)と同様の方法で合成した。熱可塑性エラストマー(A2)は、数平均分子量=105,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.55、EHA/MMA/MAA=80/10/10(wt%)、熱可塑性エラストマー(A3)は、数平均分子量=95,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.60、EHA/HEA/MMA/MAA=70/5/15/10であった。熱可塑性エラストマー(A4)は、数平均分子量=85,000、重量平均分子量/数平均分子量=1.67、IB/ST=70/30であった。
【0065】
【表1】
【0066】
(2)熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物
熱可塑性エラストマー(A2)〜(A4)、無機系充填材(B1)〜(B3)ならびに可塑剤(A)または(B)を表2に示す比率にしたがって調整し、熱可塑性エラストマー(A1)と同様の方法で、熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物および熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物からなるシートを製造した。
【0067】
【表2】
【0068】
比較例1、2
アクリルゴム、シリコーンゴム、加硫剤、無機系充填材(B1)、および配合剤を表2に示す比率にしたがって調整し、実施例1と同様の方法で、熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物および熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物からなるシートを製造した。
【0069】
【表3】
【0070】
【発明の効果】
表3に示すように、本発明の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物とその熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる熱伝導性熱可塑性エラストマーシートは、熱伝導性に優れ、かつ良好なリサイクル性を有するものであり、電気・電子用の放熱・伝熱スペーサーとして有効に利用できるものである。
Claims (6)
- (A)25℃以下のガラス転移温度、および50℃以上のガラス転移温度を有する熱可塑性エラストマー、ならびに(B)熱伝導性を有する無機系充填材からなる熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物。
- 熱可塑性エラストマー(A)が、(a)(メタ)アクリル系重合体ブロックと(b)(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)と異なる(メタ)アクリル系重合体ブロックを有する(C)ブロック共重合体からなる請求項1記載の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物。
- ブロック共重合体(C)が原子移動ラジカル重合により製造されてなる請求項2記載の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物。
- ブロック共重合体(C)がトリブロック共重合体および/またはジブロック共重合体である請求項2または3記載の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物。
- 熱伝導性を有する無機系充填材(B)が、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、結晶性シリカからなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1、2、3、4または5記載の熱伝導性熱可塑性エラストマー組成物を成形してなる熱伝導性熱可塑性エラストマーシート。
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