JP4434694B2 - アクリル系ブロック共重合体 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性に優れ、弾性率の高い、アクリル系ブロック共重合体に関する。
加硫ゴムは、優れた柔軟性とゴム弾性を備えているが、成形時、ゴムに添加剤を配合し、加硫する必要があるため、成形サイクル時間が長く、かつ工程が煩雑であり、成形性に問題がある。また、加硫ゴムはいったん成形加硫したのちは再加熱しても溶融しないため、接合するなどの後加工ができない、使用後にリサイクルする事が困難という問題もある。
このような点から近年、熱可塑性エラストマーが加硫ゴムに代わって使用されるようになってきている。たとえば、自動車の車両においては、ガラスランチャンネル、ウェザーストリップ、各種ブーツ、水切りモールなど様々なシール部品が使用されている。そのうちの大部分は加硫型のゴムが用いられているが、燃費向上、環境問題の観点から、近年そのシール部品の一部に軽量でリサイクル可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられ始めている。
一般に熱可塑性エラストマーはエントロピー弾性を発揮するゴム成分(ソフトセグメント)と、高温では流動するが、常温では塑性変形を防止してゴム成分に補強効果を与える拘束成分(ハードセグメント)からなるアロイ構造を取っている。たとえば、スチレン系エラストマーではスチレンブロックが凝集してハードセグメントとして働き、ブタジエン系ブロックまたはイソプレン系ブロックがマトリクスとなりソフトセグメントとして働く。また、オレフィン系エラストマーでは、EPDMなどのゴムがポリプロピレンなどの樹脂中に分散する構造を取るアロイ構造を取っている。いずれもハードセグメントが高温では流動することにより、射出成形など熱可塑性の加工が可能である。しかしながら、従来のスチレン系あるいはオレフィン系熱可塑性エラストマーは、加硫ゴムに比べてゴム弾性や耐熱性(この場合の耐熱性は高温における圧縮永久歪み特性などを意味する)が充分でない上に、耐油性が悪いといった欠点を有している。一方、耐油性に優れる熱可塑性エラストマーとして、近年、特許文献1に開示されるようにメタアクリルブロックとアクリルブロックを有するアクリル系ブロック体が開示されているが、これらもスチレン系エラストマー同様、成形加工性は非常に良好であるが、耐熱性に劣るといった欠点を有する。
そこで、耐熱性に優れる熱可塑性エラストマーの開発が望まれていた。
特許第2553134号公報
本発明は、熱可塑性エラストマーとしての良好な成形加工性を維持したまま、優れた耐熱性、高い弾性率を示すアクリル系ブロック共重合体に関する。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、下記のアクリル系ブロック共重合体(A)と金属化合物を反応することにより得られるカルボン酸金属塩を官能基として有することを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)10〜90重量%、とアクリル系重合体ブロック(A2)90〜10重量%からなるブロック共重合体であり、
メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、一般式(1):
Figure 0004434694
(式中、pは30〜3000の整数を、qは10〜3000の整数を、rは0〜3000の整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックであり、
アクリル系重合体ブロック(A2)は、一般式(2):
(−CH2−CH(CO21)−)n (2)
(式中、R1はエチル基、n−ブチル基、2−メトキシエチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつの官能基を、nは30〜6000である整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックである。
好ましい実施態様としては、金属化合物が、周期律表の第1族元素、第2族元素、及び第12族元素からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を含有することを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、金属化合物が、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を含有することを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、金属化合物が、酸化物、水酸化物、炭酸塩、及び酢酸塩からなる群より選ばれる少なくともひとつであることを特徴とするブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(A1)−アクリル系重合体ブロック(A2)型のジブロック共重合体、あるいはメタアクリル系重合体ブロック(A1)−アクリル系重合体ブロック(A2)−メタアクリル系重合体ブロック(A1)型のトリブロック共重合体であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したアクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量が30,000〜500,000であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したアクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8以下であることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)が、制御ラジカル重合により製造されたブロック共重合体から誘導されることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
好ましい実施態様としては、アクリル系ブロック共重合体(A)と金属化合物とを、溶融混練により反応させることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体に関する。
本発明により得られるアクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとしての良好な成形加工性を維持したまま優れた耐熱性、及び高い弾性率を示す。
本発明は、下記のアクリル系ブロック共重合体(A)と金属化合物を反応することにより得られるカルボン酸金属塩を官能基として有することを特徴とするアクリル系ブロック共重合体である。
アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)10〜90重量%、とアクリル系重合体ブロック(A2)90〜10重量%からなるブロック共重合体である。
メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、一般式(1):
Figure 0004434694
(式中、pは30〜3000の整数を、qは10〜3000の整数を、rは0〜3000の整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックである。
アクリル系重合体ブロック(A2)は、一般式(2):
(−CH2−CH(CO21)−)n (2)
(式中、R1はエチル基、n−ブチル基、2−メトキシエチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつの官能基を、nは30〜6000である整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)と、アクリル系重合体ブロック(A2)からなるブロック共重合体である。
アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体であるが、分枝状(星状)ブロック共重合体との混合物であってもよい。メタアクリル系重合体ブロック(A1)−アクリル系重合体ブロック(A2)型のジブロック共重合体、あるいはメタアクリル系重合体ブロック(A1)−アクリル系重合体ブロック(A2)−メタアクリル系重合体ブロック(A1)型のトリブロック共重合体であることが、加工時の取扱いの容易さや、組成物にした場合の物性の点から好ましく、特にトリブロック共重合体が好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくはゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量で、30,000〜500,000、さらに好ましくは50,000〜400,000である。数平均分子量が30,000より小さいと粘度が低く、また、500,000より大きいと粘度が高くなりすぎ加工が難しくなる。
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
上記アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定は、THFなどの極性溶媒を用いることで測定することが出来るが、より簡便には、後述する重合後のカルボン酸基を含有しないブロック共重合体により測定することができる。このカルボン酸基を含有しないブロック共重合体を官能基変換することにより、分子量、及び分子量分布がほとんど同じアクリル系ブロック共重合体(A)を得ることができる。
アクリル系ブロック共重合体(A)全体中のメタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が10〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が90〜10重量%が好ましい。耐油性と弾性率の観点から、さらに好ましい範囲は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が15〜80重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が85〜20重量%であり、特に好ましくは、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が20〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が80〜30重量%である。(A)の組成が上記の範囲にあると、(A)の弾性率、耐熱性などの物性の向上が見られる。メタアクリル系重合体ブロック(A1)の割合が10重量%より少ないと弾性率が低下する場合があり、アクリル系重合体ブロック(A2)の割合が10重量%より少ないと加工性に劣る場合がある。
<メタアクリル系重合体ブロック(A1)>
メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、一般式(1):
Figure 0004434694
(式中、pは30〜3000の整数を、qは10〜3000の整数を、rは0〜3000の整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックである。
さらに説明すると、上記一般式(1)であらわされる重合体は、メタアクリル酸メチルおよびメタアクリル酸を必須成分とし、メタアクリル酸無水物を任意成分とする。メタアクリル系重合体ブロック(A1)全体中、上記一般式(1)を構成する単量体(a)50〜100重量%、及び、これと共重合可能なビニル系単量体(b)50〜0重量%とからなる。単量体(a)75〜100重量%および単量体(b)25〜0重量%であることが好ましい。単量体(a)と単量体(b)の成分比が上記範囲にあれば、メタアクリル系重合体ブロックの性質を損なわない。
一般式(1)中、耐熱性、弾性率および加工性の観点から、pが30〜3000、qが10〜3000であることが必要である。pが30またはqが10に満たない場合は、ポリマー鎖の絡み合いが十分ではなく、耐熱性が損なわれる場合がある。また、pまたはqが3000を超える場合は、加工時の粘度が高すぎて加工性を損なう場合がある。さらに、メタアクリル酸無水物を含む場合にあっては、rは3000以下であることが必要である。rが3000を超える場合は、加工時の粘度が高すぎて加工性を損なう場合がある。
単量体(b)のビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
ケイ素含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(A2)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。
メタアクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上である。メタアクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる傾向がある。
<アクリル系重合体ブロック(A2)>
アクリル系重合体ブロック(A2)は、一般式(2):
(−CH2−CH(CO21)−)n (2)
(式中、R1はエチル基、n−ブチル基、2−メトキシエチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつの官能基を、nは30〜6000である整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックである。
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する単量体は、所望する物性のブロック共重合体を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの単量体の合計が、50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%からなり、これと共重合可能なビニル系単量体が、0〜50重量%、好ましくは0〜25重量%とからなる。前記アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルからなる群より選ばれる少なくとも一つの単量体の含有量が50重量%より少ないと、耐油性、低温特性などが損なわれる場合がある。また、ゴム弾性、粘度および加工性の観点から、一般式(2)のnが30〜6000であることが必要である。nが30に満たない場合は、ポリマー鎖の絡み合いが十分ではなく、ゴム弾性が損なわれる場合がある。また、nが6000を超える場合は、加工時の粘度が高すぎて加工性を損なう場合がある。
アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルを特定の比率で共重合させることで、Tgの低いブロックに耐油性と低温特性を付与する事ができる。ここで、それら単量体の役割を述べると、アクリル酸エチルは主に耐油性を、アクリル酸n−ブチルは低温特性を、アクリル酸2−メトキシエチルは耐油性と低温特性を付与する効果がある。それらの比率は、要求される耐油性、低温特性とコストとのバランスで決めればよい。
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する、一般式(2)のアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、(A1)を構成するビニル系単量体(b)におけるアクリル酸エステルのうちアクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルを除いたもの、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
メタアクリル酸エステルとしては、(A1)を構成する単量体(b)におけるメタアクリル酸エステルと同じもの、およびメタアクリル酸メチルが例示できる。
芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物に関しては、(A1)を構成する単量体(b)におけるそれぞれの構成材料と同じものが例示できる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(A2)に要求されるガラス転移温度および耐油性、重合体ブロック(A1)との相容性などのバランスの観点から、好ましいものを選択することができる。
アクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。重合体ブロック(A2)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いとゴム弾性が発現されにくいので不利である。
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製法>
(重合)
製造方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合をあげることができる。リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれ、本発明におけるリビングラジカル重合は、重合末端が活性化されたものと不活性化されたものが平衡状態で維持されるラジカル重合であり、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(Journal of American Chemical Society,1994,116,7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules,1994,27,7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(例えば、Matyjaszewskiら, Journal of American Chemical Society,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866、またはSawamotoら, Macromolecules,1995,28,1721)。
これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み時の比率によって自由にコントロールすることができる。
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物を使用できる。これらは目的に応じて使い分けることができる。ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましい。x−y−x型のトリブロック共重合体、y−x−y型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用することが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用することが好ましい。
一官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
65−CH2
65−CHX−CH3
65−C(CH32
1−CHX−COOR2
1−C(CH3)X−COOR2
1−CHX−CO−R2
1−C(CH3)X−CO−R2
1−C64−SO2
式中、C64はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
二官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
X−CH2−C64−CH2−X
X−CH(CH3)−C64−CH(CH3)−X
X−C(CH32−C64−C(CH32−X
X−CH(COOR3)−(CH2n−CH(COOR3)−X
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2n−C(CH3)(COOR3)−X
X−CH(COR3)−(CH2n−CH(COR3)−X
X−C(CH3)(COR3)−(CH2n−C(CH3)(COR3)−X
X−CH2−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−CO−C(CH32
X−CH(C65)−CO−CH(C65)−X
X−CH2−COO−(CH2n−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−(CH2n−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−COO−(CH2n−OCO−C(CH32−X
X−CH2−CO−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−CO−CO−C(CH32−X
X−CH2−COO−C64−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−C64−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH32−COO−C64−OCO−C(CH32−X
X−SO2−C64−SO2−X
式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。C64はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。C65はフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
多官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
63(CH2X)3
63(CH(CH3)−X)3
63(C(CH32−X)3
63(OCO−CH2X)3
63(OCO−CH(CH3)−X)3
63(OCO−C(CH32−X)3
63(SO2X)3
式中、C63は三置換フェニル基を表わす。三置換フェニル基は、置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基、フェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体をあげることができる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などをあげることができる。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加することもできる。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh33)も触媒として使用する事ができる。
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することもできる。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh32)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh32)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu32)も触媒として使用できる。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定することができる。
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などをあげることができ、これらは少なくとも1種を混合して用いることができる。また、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする反応速度(即ち、撹拌効率)の関係から適宜決定することができる。
また、前記原子移動ラジカル重合は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜150℃の範囲で行なわせることができる。前記原子移動ラジカル重合温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなる場合があるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。
前記原子移動ラジカル重合により、ブロック共重合体を製造する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などをあげることができる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができる。製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
(重合触媒などの除去)
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、有機酸を添加して金属錯体を除去する。引き続き、吸着処理により不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体(A)の前駆体となるアクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有することが好ましい。
その中でも、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
本発明で使用する有機酸の量は、銅を中心とする金属錯体に含有される銅1mol当たり、有機酸1mol以上であることが好ましい。また、配位子の配位座1mol当たり、使用する有機酸の量は0.5mol以上であることが好ましく、1.0mol以上であることが更に好ましい。但し、有機酸の量を増やす程反応時間は短縮されるものの、コストの観点、余剰の有機酸を除く必要の観点などを考慮すると、反応時間を勘案した必要量に抑えることが望ましい。
本発明の、有機酸の添加による反応は、無溶媒(ポリマーの融液)または各種の溶媒中で行うことができる。
反応の結果生成した金属塩を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。また必要に応じて、金属塩を除去せずに、次の中和工程に進むことも可能である場合がある。しかしこの場合でも、中和工程終了後には金属塩を除去しなければならない。金属塩が固体状アクリル系ブロック共重合体に残存した場合は、減圧押出機による揮発成分除去中に重合体劣化を起こしていたり、成形体の着色や、機械物性低下などの悪影響を及ぼす恐れがある。
重合体と、銅を中心金属とする金属錯体を含有する混合物に、有機酸を添加することで金属錯体を除去した後、系が酸性側に寄ることがあり、それが問題になる場合がある。その場合は、系を中和させる工程が必要になる。系を中和させる方法としては既知の方法を使用することができ、特に制限はないが、たとえば、塩基性の固体を使用する方法があげられる。塩基性の固体の例としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などをあげることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などをあげることができる。固体無機酸としては、Na2O、K2O、MgO、CaOなどをあげることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などをあげることができる。
上記中和工程時に添加した吸着剤を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去してアクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
(官能基変換)
重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができ、メタアクリル系重合体ブロック(A1)部分を含有するアクリル系ブロック共重合体(A)を製造することができる。
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、特に限定はないが、例えば、メタアクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、たとえば特開平10−298248号公報、および特開2001−234146号公報などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。また、下に示す方法により誘導した酸無水物基を加水分解してカルボキシル基を生成させる方法もある。
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタアクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、上記のように加熱により脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
この方法により誘導した酸無水物基を有するブロック共重合体は、たとえばオートクレーブ中で精製水と加熱することで加水分解することができ、酸無水物基をカルボキシル基に変換することができる。加水分解の条件は特に制限されないが、200℃で2時間加熱する事などがあげられる。
本発明の場合は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)中のt−ブチル基が上記記載
方法により、カルボン酸基、またはカルボン酸基と酸無水物基の両方に変換され、アクリル系ブロック共重合体(A)を製造することができる。
<金属化合物との反応>
本発明は、アクリル系ブロック共重合体(A)と金属化合物を反応することにより、カルボン酸金属塩を官能基として有するアクリル系ブロック共重合体とすることで、発明の目的を達成することが出来るものである。本発明のカルボン酸金属塩を官能基として有するアクリル系ブロック共重合体は、イオン性ポリマーであり、通常アイオノマーと呼ばれる。
反応の形式は、特に制限されないが、溶液反応、もしくは、溶融混練が好ましい。
溶液反応は、アクリル系ブロック共重合体(A)と、金属化合物を、適当な溶媒に添加し、溶液中にて反応させ、溶媒を揮発により回収する方法である。前記溶媒としては、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒;水などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その使用量は、アクリル系ブロック共重合体(A)および金属化合物の溶解度、系全体の粘度と必要とする撹拌効率、および反応速度の関係から適宜決定すればよい。前記反応は、0℃〜200℃の範囲で行う事ができ、室温〜150℃の範囲が好ましい。前記反応温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。また、溶媒を揮発により回収する方法としては、エバポレーターなど通常の手法のほか、薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式なども用いることができる。
溶融混練は、アクリル系ブロック共重合体(A)と、金属化合物を、適当な混練装置に投入し、アクリル系ブロック共重合体(A)および/または金属化合物を溶融状態にて反応させ、副生成物を揮発により回収する方法である。混練装置には特に制限はなく、公知の混練装置を使用することができるが、例えばバッチ式混練装置としてはミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーが使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、アクリル系ブロック共重合体(A)、金属化合物、またそれら以外の配合剤を使用する場合にあってはそれらの溶融温度、またそれらの溶融粘度などに応じて調整するのがよく、例えば、室温〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
この中では、溶融混練が、コスト、生産性の面から好ましい。
金属化合物としては、周期律表の第1族元素、第2族元素、及び第12族元素からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を含有することが好ましい。すなわち、第1族としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムを、第2族としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムを、第12族としては亜鉛、カドミウム、水銀をさす。第1族元素は1価のイオンを生成し、1つのカルボン酸と反応するが、第2族および第12族は2価のイオンを生成することができることから、2つのカルボン酸と反応する場合もある。この場合、2つのカルボン酸は、同一分子鎖上の隣り合うカルボン酸、または同一分子鎖上の離れた場所に位置するカルボン酸の場合もあり、また他の分子鎖上のカルボン酸の場合もある。
この中でもコスト、取り扱いやすさ、イオン化エネルギーなどの観点から、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属であることが好ましく、ナトリウム、亜鉛のいずれかであることが特に好ましい。
また、金属化合物の種類としては、コスト、取り扱いやすさ、反応性、反応時の副生成物の観点から、酸化物、水酸化物、炭酸塩、及び酢酸塩からなる群より選ばれる少なくともひとつであることが好ましく、水酸化物、酢酸塩のいずれかであることがさらに好ましい。
本発明のカルボン酸金属塩を官能基として有するアクリル系ブロック共重合体の構造例として、下記一般式(3)、及び(4)が例示できる。
Figure 0004434694
Figure 0004434694
(式中、R1はメチル基または水素原子を、Mは、周期率表の第1族元素、第二族元素、及び第12族元素からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を、pは30〜3000の整数を、qは10〜3000の整数を、rは0〜3000の整数を表す)
上記反応によって得られたカルボン酸金属塩を官能基として有するアクリル系ブロック共重合体は、押出し機に供給されペレット化することができる。例えば押出し機出口は直径2mm〜8mm程度の単一または複数の孔をもつダイスで構成し、押出された樹脂はストランド状で冷却され、その後カットすることにより円柱状のペレットととすることができる。ホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式に代表されるように、ダイス表面を高速回転するカッターを併用して球状ペレットを製造することも可能である。粒度のそろったペレットを安定して製造するにあたってはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式が好ましい。
<組成物>
本発明のカルボン酸金属塩を官能基として有するアクリル系ブロック共重合体は、単独で使用することも可能であるが、製造、加工、成形、流通、製品としての使用、廃棄あるいはリサイクルの過程で必要な性能を満たすために、各種の添加剤を配合することが必要になる。
成形加工時の熱安定性、成形加工時ならびに長期使用時の耐酸化劣化性などを考えて、安定剤を配合することが望ましい。
安定剤としては、熱劣化防止剤、一次酸化安定剤、二次酸化安定剤を組み合わせて用いることが望ましい。ただし、熱劣化防止剤および/または一次酸化安定剤に限った使用も可能である。
熱劣化防止剤としては、フェノールアクリレート系があげられる。たとえば、スミライザGM、スミライザGS(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
一次酸化安定剤としては、フェノール系、アミン系があげられる。たとえば、フェノール系としては、スミライザBHT、スミライザMDP−S、スミライザGA−80(以上、住友化学工業(株)製)、イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)、また、アミン系としては、スミライザ9A(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
二次酸化安定剤としては、イオウ系、リン系があげられる。たとえば、イオウ系としては、スミライザTPS、スミライザTP−D(以上、住友化学工業(株)製)、また、リン系としては、Sandstab P−EPQ、Hostanox par24(以上、クラリアントジャパン(株)製)が例示できる。
また、必要に応じて次のような添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、各種重合体、可塑剤、柔軟性付与剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
上記の重合体としては、特に限定されないが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマーなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザーO−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。これら以外の高分子量の可塑剤としては、アクリル系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリテトラヒドロフラン系重合体、ポリイソブチレン系重合体などがあげられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱による減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、などが好ましい。
上記の柔軟性付与剤としては、特に限定はなく、プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分などが挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、トール油等が例示でき、これらの柔軟性付与剤は少なくとも1種用いることができる。
上記の滑剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス、ステアリン酸などの有機脂肪酸、ステアリン酸アミドなどの有機酸アミド、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムなど有機酸金属塩などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
上記の充填剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、無定形フィラー、板状フィラー、針状フィラー、球状フィラー、機能性フィラー、繊維状フィラー、金属粉末などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
無定形フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムなど、板状フィラーとして、タルク、マイカ、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイトなど、針状フィラーとして、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムなど、球状フィラーとして、ガラスビーズ、シリカビーズ、ガラス(シリカ)バルーンなど、機能性フィラーとして金属系導電性フィラー、非金属系導電性フィラー、カーボン系導電性フィラー、磁性フィラー、圧電、焦電フィラー、摺動性フィラーなど、また、繊維状フィラーとしてガラス繊維、金属繊維、アスベスト、ミルドファイバーなどの有機、無機、金属の各種ファイバーなどが例示できる。この中で、合成ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムを用いた場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)および他の成分に由来する酸成分を中和することができるため、これら成分から出る酸成分がさびを引き起こすことが問題となる使用用途において有用である。
<組成物の製造方法>
本発明のアクリル系ブロック共重合体の組成物を製造する方法には特に制限はなく、公知の混練装置を使用することができるが、例えばバッチ式混練装置としてはミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーが使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するアクリル系ブロック共重合体、またそれら以外の配合剤を使用する場合にあってはそれらの溶融温度、またそれらの溶融粘度などに応じて調整するのがよく、例えば、室温〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
組成物の成型方法としては、射出成型、射出ブロー成型、ブロー成型、押出ブロー成型、押出成型、カレンダー成型、真空成型、プレス成型などがあげられる。何れの成型方法を選択するかは成型体の形状、重合体の性状、所望の生産性から決めればよい。
<成型体の用途および使用方法>
本発明のアクリル系ブロック共重合体、及びその組成物から得られた成型体は、表皮材料、触感材料、外観材料、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として、形状としてはシート、平板、フィルム、小型成型品、大型成型品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例におけるBA、EA、MEA、MMA、TBMAは、それぞれ、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸t−ブチル、を表わす。
<試験方法>
(分子量)
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行ない、ポリスチレン換算の分子量を求めた。GPC測定はGPC分析装置(システム:ワッカー(Waters)社製のGPCシステム、カラム:昭和電工(株)製のShodex K−804(ポリスチレンゲル))で測定した。クロロホルムを移動相とし、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
(硬度)
JIS K6301に準拠し、23℃における硬度(JIS AもしくはJIS D)を測定した。
(機械強度)
JIS K7113に記載の方法に準用して、(株)島津製作所製のオートグラフAG−10TB形を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)と伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行なった。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
(圧縮永久歪み)
JIS K6301に準拠し、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で70℃あるいは100℃で22時間保持し、室温で30分放置したのち、成形体の厚みを測定し、歪みの残留度を計算する。すなわち圧縮永久歪み0%で歪みが全部回復し、圧縮永久歪み100%で歪みが全く回復しないことに相当する。
(耐油性)
ASTM D638に準拠し、組成物の成形体を150℃に保持したASTMオイルNo.3中に72時間浸し、重量変化率(重量%)を求めた。
(耐熱性)
流動開始温度を比較することにより行なった。流動開始温度は島津製作所製の高化式フローテスターCFT−500C型を用いて5℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重60Kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出したときに、フローテスターの樹脂押出ピストンが明らかに降下し始める温度(本測定器においてはTfbと表示される)とした。
(官能基分析)
アクリル系ブロック共重合体の酸無水物基変換反応の確認は、赤外スペクトル((株)島津製作所製、FTIR−8100)、および核磁気共鳴(BRUKER社製AM400)を用いて行なった。
核磁気共鳴分析用溶剤として、カルボン酸エステル構造のブロック体は、酸無水物型構造のブロック体共に、重クロロホルムを測定溶剤として分析を行なった。
(製造例1)
(MMA/TBMA)−(BA/EA/MEA)−(MMA/TBMA)トリブロック共重合体:MMA/TBMA=80/20mol%、(BA/EA/MEA)/(MMA/TBMA)=68/32重量%
500L反応機に臭化第一銅851.5gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル4941.1gおよびアクリル酸n−ブチル11317.4gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、アクリル酸n−ブチル11317.4g、アクリル酸エチル22226.9g、アクリル酸2−メトキシエチル13789.8gおよび酢酸ブチル1111.3gの混合溶液、ならびに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル427.4gをアセトニトリル4941.1gに溶解させた溶液を仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン102.9gを加えて、第一ブロックとなるアクリル酸n−ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチルの共重合を開始した。転化率が95%に到達したところで、トルエン96202.9g、塩化第一銅587.6g、メタアクリル酸メチル30513.5g、およびメタアクリル酸t−ブチル10384.2gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン102.9gを加えて、第二ブロックとなるメタアクリル酸メチル/メタアクリル酸t−ブチルの重合を開始した。転化率が60%に到達したところで、トルエン69280gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが107,400、分子量分布Mw/Mnが1.28であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を23wt%になるよう調整し、p−トルエンスルホン酸を846.9g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、塩基性吸着剤としてキョーワード500SH(協和化学工業(株)製)827.2gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。上記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機に供給し溶媒及び未反応モノマーの蒸発を行うことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケット及びスクリューは熱媒で180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして標記ブロック共重合体のペレットを作成した。このようにして標記ブロック共重合体のペレットを作成した。
(製造例2)
製造例1で得られた重合体100重量部に対して、イルガノックス1010(チバガイギー(株)製)0.2重量部を配合し、ベント付二軸押出機(44mm、L/D=42.25)(日本製鋼所(株)製)を用い、50rpmの回転数、設定温度240℃で押出混練して、カルボン酸・酸無水物基含有アクリル系ブロック共重合体を得た。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm-1あたりに酸無水物基に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C−NMRでは、変換後にはt−ブチル基のメチン炭素由来の82ppmのシグナルと、メチル炭素由来の28ppmのシグナルが消失することから確認できた。
さらに、13C−NMRより、ハードセグメントの官能基の定量を行ったところ、メタアクリル酸メチル:メタアクリル酸:酸無水物(無水物基1molを便宜上2molとカウント)=73:22:5(mol比)であった。
(実施例1)
製造例2で得られた重合体100重量部に対して、酢酸亜鉛水和物(和光純薬(株)製)1.93重量部を配合し、ベント付二軸押出機(32mm、L/D=25.5)(日本製鋼所(株)製)を用い、100rpmの回転数、設定温度240℃で押出混練して、目的のカルボン酸金属塩を官能基として有するアクリル系ブロック共重合体を得た。ベントの臭気から、酢酸が脱離していることを確認した。
得られたブロック共重合体100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加し、220℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度220℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用の成形体を得た。これらの成形体について、引張破断強度、引張破断伸び、硬度、および、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。
また、押出し機にて製造できることから、製造プロセスが簡便な溶融混練が適用できることがわかる。
(比較例1)
製造例2で製造したブロック共重合体100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加したほかは、実施例1と同様にして、引張破断強度、引張破断伸び、硬度、および、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。
実施例1と比較例1を比べると、反応前のポリマーに比べて、弾性率と耐熱性が向上していることがわかる。
(製造例3)
製造例1で得られた重合体65gを、80℃にてトルエン800mlに溶解し、これにp−トルエンスルホン酸0.7gを添加して110℃で攪拌した。この後に、アセトン800ml及びメタノール200mlを加え、吸着剤として酸化マグネシウム10g添加して室温で3時間攪拌し、濾過にて固形分を除去した。得られた溶液を減圧乾燥することで、アクリル系ブロック共重合体を得た。
t−ブチルエステル部位のカルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には3400cm-1あたりにカルボキシル基に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C−NMRでは、変換後にはt−ブチル基のメチン炭素由来の82ppmのシグナルと、メチル炭素由来の28ppmのシグナルが消失することから確認できた。
(実施例2)
製造例3で得た重合体を10g、および炭酸水素ナトリウム(和光純薬(株)製)6.0g(0.07モル)を、アセトン50mLおよびメタノール50mlの混合溶液に溶解し、室温で攪拌させて反応を行った。4時間後、溶液ガラスにキャストし、乾燥させることでフィルム状の成形体(膜厚0、2mm)を得た。
フィルムから、試験片を打ち抜いて、物性を測定した。
(比較例2)
製造例3で製造したブロック共重合体100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加したほかは、実施例1と同様にして、引張破断強度、引張破断伸び、硬度、および、耐熱性を測定した。結果を表1に示す。
実施例2は、比較例2と比べると、弾性率と耐熱性が向上していることがわかる。
Figure 0004434694

Claims (10)

  1. 下記のアクリル系ブロック共重合体(A)と金属化合物を反応することにより得られるカルボン酸金属塩を官能基として有することを特徴とするアイオノマーであるアクリル系ブロック共重合体であって、
    金属化合物は、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を含有する金属化合物であり、
    アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)10〜90重量%、とアクリル系重合体ブロック(A2)90〜10重量%からなるブロック共重合体であり、
    メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、一般式(1):
    〔化1〕
    Figure 0004434694

    (式中、pは30〜3000の整数を、qは10〜3000の整数を、rは0〜3000の整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックであり、
    アクリル系重合体ブロック(A2)は、一般式(2):
    (−CH−CH(CO)−)n (2)
    (式中、Rはエチル基、n−ブチル基、2−メトキシエチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつの官能基を、nは30〜6000である整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックである、
    ことを特徴とするアクリル系ブロック共重合体。
  2. 金属化合物が、ナトリウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を含有することを特徴とする請求項1記載のアクリル系ブロック共重合体。
  3. 金属化合物が、酸化物、水酸化物、炭酸塩、及び酢酸塩からなる群より選ばれる少なくともひとつであることを特徴とする請求項1または2に記載のアクリル系ブロック共重合体。
  4. 金属化合物が、炭酸塩または酢酸塩であることを特徴とする請求項3記載のアクリル系ブロック共重合体。
  5. アクリル系ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(A1)−アクリル系重合体ブロック(A2)型のジブロック共重合体、あるいはメタアクリル系重合体ブロック(A1)−アクリル系重合体ブロック(A2)−メタアクリル系重合体ブロック(A1)型のトリブロック共重合体であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアクリル系ブロック共重合体。
  6. ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したアクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量が30,000〜500,000であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアクリル系ブロック共重合体。
  7. ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したアクリル系ブロック共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.8 以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアクリル系ブロック共重合体。
  8. アクリル系ブロック共重合体(A)が、制御ラジカル重合により製造されたブロック共重合体から誘導されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のアクリル系ブロック共重合体。
  9. アクリル系ブロック共重合体(A)と金属化合物とを、溶融混練により反応させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のアクリル系ブロック共重合体。
  10. 一般式(3)または(4):
    〔化2〕
    Figure 0004434694

    Figure 0004434694

    (式中、Rはメチル基または水素原子を、Mは、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくともひとつの金属を、pは30〜3000の整数を、qは10〜3000の整数を、rは0〜3000の整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックと、
    一般式(2):
    (−CH −CH(CO )−)n (2)
    (式中、R はエチル基、n−ブチル基、2−メトキシエチル基からなる群より選ばれる少なくともひとつの官能基を、nは30〜6000である整数を表わす。)で表わされる重合体を主成分とする重合体ブロックからなることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体。
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