JP2005036064A - ブロック共重合体およびブロック共重合体の組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】特に耐油性に優れ、低温特性を有するメタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体を提供すること。
【解決手段】メタアクリル酸メチルを主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(A1)、および、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを主成分とするアクリル系重合体ブロック(A2)を含有し、アクリル系重合体ブロック(A2)全体中、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%であり、(A1)35〜90重量%および(A2)65〜10重量%からなることを特徴とするブロック共重合体およびその組成物により解決される。
【選択図】 なし。
【解決手段】メタアクリル酸メチルを主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(A1)、および、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを主成分とするアクリル系重合体ブロック(A2)を含有し、アクリル系重合体ブロック(A2)全体中、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%であり、(A1)35〜90重量%および(A2)65〜10重量%からなることを特徴とするブロック共重合体およびその組成物により解決される。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐油性を有し、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、樹脂とゴムとの中間の弾性率を有するコンパウンド材料の配合剤、塗料、接着剤あるいは粘着剤として利用できるブロック共重合体に関する。さらに詳しくは、特定の構造を有し、物性のバランスに優れたメタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体としては、特許文献1に開示されたポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸ブチル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−BA−b−MMA)、ポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸2エチルヘキシル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−2EHA−b−MMA)などが知られている。このようなアクリル系ブロック共重合体でもまだ耐油性が不足する場合があり、その改善のためには、特許文献2に開示されているように、Tgの低いブロックとして、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルをある比率で共重合させることで、耐油性と低温特性を両立できることが分かっている。
【0003】
しかしながら、さらなる耐油性が求められる場合には、これらのブロック共重合体といえども、耐油性が不足することが問題となる場合があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第2553134号
【0005】
【特許文献2】
特開2002−338646号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有し、特に耐油性に優れ、さらに低温特性を有するブロック共重合体を提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、メタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体において、Tgの低いブロックとして、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルを特定の比率で共重合させ、かつ、メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックの比率を一定範囲とすることで、特に耐油性に優れ、低温特性を有する、アクリル系ブロック共重合体となることを見いだし、発明を完結するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1は、x−y型、およびx−y−x型の(A)ブロック共重合体であって、メタアクリル酸メチル単位を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(A1)、および、一般式(1)で表わされるランダム共重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(A2)からなり、(A1)35〜90重量%および(A2)65〜10重量%からなることを特徴とするブロック共重合体、に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、アクリル系重合体ブロック(A2)が、一般式(1)で表されるランダム共重合体のみからなり、アクリル系重合体ブロック(A2)全体中、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%である上記記載のブロック共重合体に関する。より好ましくは、ブロック共重合体(A)が、x−y−x型のトリブロック体であることを特徴とする、上記記載のブロック共重合体、更に好ましくは、ブロック共重合体のプレス成型体の引張弾性率が2.0MPa以上であることを特徴とする、上記記載のブロック共重合体、に関する。本発明の第2は、上記記載のブロック共重合体を含有する組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体であってもよく、分岐状(星状)ブロック共重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。ブロック共重合体(A)の構造は、ブロック共重合体組成物に必要とされる加工特性や機械特性などに応じて使いわければよいが、コスト面や重合の容易性から、線状ブロック共重合体であるのが好ましい。
【0011】
アクリル系ブロック共重合体(A)が線状ブロック共重合体であった場合、いずれのブロック構造であってもかまわないが、アクリル系ブロック共重合体(A)が2種の重合体ブロック(x)、(y)から構成される場合、加工時の取扱いの容易さや、組成物にした場合の物性の点から、一般式:(x−y)n、一般式:x−(x−y)n、一般式:(x−y)n−a(nは1以上、たとえば1〜3の整数)で表わされるブロック共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱いの容易さや、組成物にした場合の物理的性質の点から、x−y型のジブロック共重合体、y−x−y型のトリブロック共重合体またはこれらの混合物がより好ましい。
【0012】
アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは30000〜500000、さらに好ましくは50000〜400000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定される。
【0013】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
【0014】
アクリル系ブロック共重合体(A)全体中のメタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が35〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が65〜10重量%が好ましい。耐油性と弾性率の観点から、さらに好ましい範囲は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が35〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が65〜30重量%であり、特に好ましくは、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が40〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が60〜40重量%である。(A)の組成が上記の範囲にあると、(A)の機械物性、耐油性などの物性が所望の性質となる。具体的には、プレス成型体を150℃のIRM903オイルに浸漬しても形状変化が抑えられるなどの顕著な物性の向上が見られる。メタアクリル系重合体ブロック(A1)の割合が35重量%より少ないと耐油性に劣る場合があり、アクリル系重合体ブロック(A2)の割合が10重量%より少ないと弾性率が低下する場合がある。
【0015】
また、本発明のブロック共重合体のプレス成型体の引張弾性率が2.0MPa以上であれば、耐油性と、熱安定性を好ましく両立できるメリットがあり好ましい。
【0016】
また、メタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、任意成分として、
一般式(2):
【0017】
【化2】
(式中、R1は水素原子またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい、sは0または1の整数、tは0〜3の整数)で表わされる酸無水物基(a1)及び/又はカルボキシル基(a2)を含有する単位が含まれていても良い。これらを含有する効果として、凝集力および極性が向上することで、耐熱性、耐油性、機械物性が改善されることが期待される。これらを含有させる場合にはアクリル系ブロック共重合体(A)全体中、酸無水物基(a1)、カルボキシル基(a2)の基を有する単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの単位を0.1〜50重量%含有することが好ましく、0.5〜50重量%含有することがさらに好ましい。その理由として、0.1重量%より少ない場合は、これらを含有させる効果が乏しく、また、この範囲を越えると、アクリル系ブロック体の本来有する物性、たとえば柔軟性などのエラストマー的性質が損なわれる場合があるためである。
【0018】
また、(a1)及び(a2)が、メタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に含まれる場合にあっては、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に含まれていることが好ましい。これは、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に含まれた場合のほうが、耐熱性、耐油性、機械物性が改善される程度が大きいためである。
【0019】
<メタアクリル系重合体ブロック(A1)>
メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、メタアクリル酸メチル単位を主成分とする重合体ブロックであり、メタアクリル系重合体ブロック(A1)全体中、メタアクリル酸メチル(a)50〜100重量%、及び、これと共重合可能なビニル系単量体(a3)、および/または、酸無水物基(a1)及び/又はカルボキシル基(a2)を含有する単量体からなる単量体(b)50〜0重量%とからなることが好ましく、単量体(a)75〜100重量%および単量体(b)25〜0重量%であることがさらに好ましい。単量体(a)と単量体(b)の成分比が上記範囲にあれば、メタアクリル酸メチル重合体の性質を損なわない。
【0020】
(b)のうちビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
【0021】
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0022】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0023】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0024】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0025】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0026】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0027】
ケイ素含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0028】
不飽和時カルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0029】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0030】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0031】
また、(b)のうち、酸無水物基(a1)及び/又はカルボキシル基(a2)を含有する単量体としては、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸があげられる。
【0032】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(A2)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。
【0033】
メタアクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。メタアクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる傾向がある。
【0034】
<アクリル系重合体ブロック(A2)>
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する単量体は、所望する物性のブロック共重合体を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを主成分とする。すなわち、アクリル系重合体ブロック(A2)は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルの合計50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%、ならびに、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%、好ましくは0〜25重量%とからなる。前記アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルの含有量が50重量%より少ないと、耐油性、低温特性などが損なわれる場合がある。また、ゴム弾性、粘度および加工性の観点から、p,q,rの合計が30〜6000であることが必要である。p、q、rの合計が30に満たない場合は、ポリマー鎖の絡み合いが十分ではなく、ゴム弾性が損なわれる場合がある。また、p,q,rの合計が6000を超える場合は、加工時の粘度が高すぎて加工性を損なう場合がある。
【0035】
アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを特定の比率で共重合させることで、Tgの低いブロックに耐油性と低温特性を付与する事ができる。ここで、それら単量体の役割を述べると、アクリル酸エチルは主に耐油性を、アクリル酸ブチルは低温特性を、アクリル酸2−メトキシエチルは耐油性と低温特性を付与する効果がある。それらの比率は、要求される耐油性、低温特性とコストとのバランスで決めればよい。
【0036】
アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルの組成は、それらの合計を100重量%として、それらの比率の範囲を示すと、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%であり、好ましくは、アクリル酸エチルが20〜70重量%、アクリル酸ブチルが20〜70重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが10〜60重量%であり、さらに好ましくは、アクリル酸エチルが30〜55重量%、アクリル酸ブチルが30〜55重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが15〜40重量%である。アクリル酸2−メトキシエチルが5重量%未満の場合には耐油性と低温特性を両立させることができない場合があり、アクリル酸ブチルが10重量%未満の場合には低温特性とコストを両立させることが出来ない場合があり、アクリル酸エチルが10重量%未満の場合には耐油性、低温特性とコストのバランスが問題になる場合がある。
【0037】
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する3種類のアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、(A1)を構成するビニル系単量体(b)におけるアクリル酸エステルのうちアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを除いたもの、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0038】
メタアクリル酸エステルとしては、(A1)を構成する単量体(b)におけるメタアクリル酸エステルと同じもの、およびメタアクリル酸メチルが例示できる。
【0039】
芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物に関しては、ビニル系単量体(a3)におけるそれぞれの構成材料と同じものが例示できる。
【0040】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(A2)に要求されるガラス転移温度および耐油性、重合体ブロック(A1)との相容性などのバランスの観点から、好ましいものを選択することができる。
【0041】
アクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。重合体ブロック(A2)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いとゴム弾性が発現されにくいので不利である。
【0042】
<ブロック共重合体(A)の製造方法>
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合をあげることができる。リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
【0043】
リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれ、本発明におけるリビングラジカル重合は、重合末端が活性化されたものと不活性化されたものが平衡状態で維持されるラジカル重合であり、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
【0044】
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(Journal of American Chemical Society,1994,116,7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules,1994,27,7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0045】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(例えば、Matyjaszewskiら, Journal of American Chemical Society,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866、またはSawamotoら, Macromolecules,1995,28,1721)。
【0046】
これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み時の比率によって自由にコントロールすることができる。
【0047】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物を使用できる。これらは目的に応じて使い分けることができる。ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましい。x−y−x型のトリブロック共重合体、y−x−y型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用することが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用することが好ましい。
【0048】
一官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
C6H5−CH2X
C6H5−CHX−CH3
C6H5−C(CH3)2X
R1−CHX−COOR2
R1−C(CH3)X−COOR2
R1−CHX−CO−R2
R1−C(CH3)X−CO−R2
R1−C6H4−SO2X
式中、C6H4はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
【0049】
二官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
X−CH2−C6H4−CH2−X
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X
X−CH(COOR3)−(CH2)n−CH(COOR3)−X
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2)n−C(CH3)(COOR3)−X
X−CH(COR3)−(CH2)n−CH(COR3)−X
X−C(CH3)(COR3)−(CH2)n−C(CH3)(COR3)−X
X−CH2−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2X
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X
X−CH2−CO−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X
X−SO2−C6H4−SO2−X
式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。C6H4はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。C6H5はフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
【0050】
多官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
C6H3(CH2X)3
C6H3(CH(CH3)−X)3
C6H3(C(CH3)2−X)3
C6H3(OCO−CH2X)3
C6H3(OCO−CH(CH3)−X)3
C6H3(OCO−C(CH3)2−X)3
C6H3(SO2X)3
式中、C6H3は三置換フェニル基を表わす。三置換フェニル基は、置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
【0051】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基、フェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
【0052】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体をあげることができる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
【0053】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などをあげることができる。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加することもできる。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として使用する事ができる。
【0054】
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することもできる。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も触媒として使用できる。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定することができる。
【0055】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などをあげることができ、これらは少なくとも1種を混合して用いることができる。また、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする反応速度(即ち、撹拌効率)の関係から適宜決定することができる。
【0056】
また、前記原子移動ラジカル重合は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜150℃の範囲で行なわせることができる。前記原子移動ラジカル重合温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなる場合があるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。
【0057】
前記原子移動ラジカル重合により、ブロック共重合体を製造する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などをあげることができる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができる。製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0058】
さらに、重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができる。
【0059】
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、特に限定はないが、例えば、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、たとえば特開平10−298248号公報、および特開2001−234146号公報などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。また、下に示す方法により誘導した酸無水物基を加水分解してカルボキシル基を生成させる方法もある。
【0060】
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、上記のように加熱により脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
【0061】
この方法により誘導した酸無水物基を有するブロック共重合体は、たとえばオートクレーブ中で精製水と加熱することで加水分解することができ、酸無水物基をカルボキシル基に変換することができる。加水分解の条件は特に制限されないが、200℃で2時間加熱する事などがあげられる。
【0062】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、有機酸を添加して金属錯体を除去する。引き続き、吸着処理により不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体(A)を含んでなるアクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
【0063】
使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有することが好ましい。
【0064】
使用することができる有機カルボン酸、すなわちカルボン酸基を含有する有機物としては、特に限定されないが、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、4−メチル吉草酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、イコサン酸などの飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などのハロゲンを含有する飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、アセトキシコハク酸、アセト酢酸、エトキシ酢酸、4−オキソ吉草酸、グリコール酸、グリシド酸、グリセリン酸、2−オキソ酪酸、グルタル酸などの置換基を含有する飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、プロピオル酸、アクリル酸、クロトン酸、4−ペンテン酸、アリルマロン酸、イタコン酸、オキサロ酢酸などの脂肪族不飽和の一官能性のカルボン酸、安息香酸、アセチル安息香酸、アセチルサリチル酸、アトロパ酸、アニス酸、ケイ皮酸、サリチル酸などの芳香環あるいは不飽和結合のα位にカルボン酸の炭素が結合した一官能性のカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、3−オキソグルタル酸、アゼライン酸、エチルマロン酸、4−オキソヘプタン2酸、3−オキソグルタル酸などの飽和脂肪族の二官能性のカルボン酸、アセチレンジカルボン酸などの不飽和脂肪族の二官能性のカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族の二官能性のカルボン酸、アニコット酸、イソカンホロン酸などのトリカルボン酸、アミノ酪酸、アラニンなどのアミノ酸、などがあげられる。これらの2種以上を併用してもかまわない。これらの中では、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、シュウ酸が好ましい。
【0065】
本発明で使用することができる有機スルホン酸、すなわちスルホン酸基を含有する有機物としては、特に限定されないが、たとえば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの飽和脂肪族の一官能性のスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、1,3−プロパンスルホン酸、1,4−ブタンスルホン酸、1,5−ペンタンスルホン酸などの飽和脂肪族の二官能性のスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸、アミノフェノールスルホン酸などの芳香族の一官能性のスルホン酸、などがあげられる。これらの内、2種以上を併用してもかまわない。これらの中では、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
【0066】
好適に使用可能な有機酸の選定に当たり、条件を詳細に説明する。第一に、その有機酸が、除去したい銅を中心とする金属錯体と、金属塩を生成することである。第二に、生成した金属塩が、重合体の溶液あるいは融液から分離可能であることである。第三に、有機酸が、重合体に致命的な影響を与えないことである。有機酸はそれ自体が液体あるいは固体の場合があるが、上の条件を満たせば何れであってもかまわない。
【0067】
これらの条件をさらに詳細に説明する。第一に、有機酸が、除去したい銅を中心とする金属錯体と金属塩を生成するためには、有機酸が、ある程度以上の酸性度を有する必要がある。酸性度の指標として有機化合物の水溶液中の解離定数を用いるならば、第1解離段の酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が、6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。この解離定数については、たとえば、化学便覧(改訂3版、日本化学会編、1984、基礎編II、339ページの表10.11)などを参考にすることが出来る。たとえば、酢酸のpKaは4.56、安息香酸のpKaは4.20、シュウ酸のpKaは1.04(第1段)、3.82(第2段)である。上表にはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の値が記載されていないが、いずれも水に可溶であり、ベンゼンスルホン酸のpKaは−2.7(有機化合物辞典942ページ、有機合成化学協会編、1985)、また、p−トルエンスルホン酸は塩酸や硫酸と同程度の強酸であるとされていることから(有機化合物辞典645ページ、有機合成化学協会編、1985)そのpKaは大きくとも2程度であるとすることができる。水に溶けない有機酸の場合は、その誘導体で水溶性の有機酸や、他の酸との強弱関係から類推することができる。
【0068】
第二に、生成した金属塩が、重合体の溶液あるいは融液から分離可能であるためには、生成した金属塩の溶媒に対する溶解度が小さいことが好ましく、難溶であることがさらに好ましく、不溶であることが最も好ましい。金属塩の溶解度を事前に予測することは難しいが、金属錯体の溶媒に対する溶解度、用いる有機酸の溶媒に対する溶解度を参考にすることが出来る。
【0069】
第三に、有機酸が、重合体に致命的な影響を与えないためには、重合体の主鎖や側鎖が酸によって分解されない構造であること、重合体に酸と反応する官能基がないことが好ましい。好ましい場合に該当しない場合は、反応させる有機酸の量や濃度、反応温度、反応時間、溶媒などを調整する必要がある。ただし、重合体の官能基を酸と反応させることで所望の官能基に変換させる場合や、官能基が酸と反応しても化学的手段などで元の状態に戻せる場合などは除く。
【0070】
有機酸の作用により金属錯体の一部が分解してしまう場合を想定して、遊離した配位子をも除去できることが好ましい。すなわち、遊離した配位子が溶媒に不溶であるか、配位子と有機酸との反応により溶媒に不溶な有機塩が生成することが好ましい。この塩の溶解度を事前に予測することは難しいが、配位子の溶媒に対する溶解度、用いる有機酸の溶媒に対する溶解度を参考にすることが出来る。有機酸をそのまま使用するか、水溶液として使用するか、有機溶媒の溶液として使用するかについては、特に制限はないが、上の条件を満たせば何れであってもかまわない。
【0071】
除去する金属錯体は、特に制限されないが、ハロゲン化銅と、窒素を含有する配位子との反応により生成したものである金属錯体であってもかまわない。また、ここであげる窒素を含有する配位子が、2以上の配位座を有するキレート配位子であってもかまわない。これは、前記原子移動ラジカル重合の触媒として好ましく用いられる金属錯体は、1価の銅を中心金属とする金属錯体であり、1価の銅化合物としては、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅などのハロゲン化銅があげられ、さらに、触媒活性を高めるために窒素を含有する配位子、たとえば、2,2′−ビピリジル、その誘導体(4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルが例示できる)などの2,2′−ビピリジル系化合物、1,10−フェナントロリン、その誘導体(4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンが例示できる)などの1,10−フェナントロリン系化合物、テトラメチルジエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンが例示できるが、2以上の配位座を有するキレート配位子が添加される場合があるためである。もちろん、本発明で除去することが可能な金属錯体は、前記原子移動ラジカル重合の触媒に限定されず、触媒機能を持たない金属錯体であってもかまわない。
【0072】
本発明で使用する有機酸の量は、銅を中心とする金属錯体に含有される銅1mol当たり、有機酸1mol以上であることが好ましい。また、配位子の配位座1mol当たり、使用する有機酸の量は0.5mol以上であることが好ましく、1.0mol以上であることが更に好ましい。但し、有機酸の量を増やす程反応時間は短縮されるものの、コストの観点、余剰の有機酸を除く必要の観点などを考慮すると、反応時間を勘案した必要量に抑えることが望ましい。
【0073】
本発明の、有機酸の添加による反応は、無溶媒(ポリマーの融液)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率、および反応速度の関係から適宜決定すればよい。前記反応は、0℃〜200℃の範囲で行う事ができ、室温〜150℃の範囲が好ましい。前記反応温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度遅くなるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。
【0075】
反応の結果生成した金属塩を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。また必要に応じて、金属塩を除去せずに、次の中和工程に進むことも可能である場合がある。しかしこの場合でも、中和工程終了後には金属塩を除去しなければならない。金属塩が固体状(メタ)アクリル系ブロック共重合体に残存した場合は、減圧押出機による揮発成分除去中に重合体劣化を起こしていたり、成形体の着色や、機械物性低下などの悪影響を及ぼす恐れがある。
【0076】
重合体と、銅を中心金属とする金属錯体を含有する混合物に、有機酸を添加することで金属錯体を除去した後、系が酸性側に寄ることがあり、それが問題になる場合がある。その場合は、系を中和させる工程が必要になる。系を中和させる方法としては既知の方法を使用することができ、特に制限はないが、たとえば、塩基性の固体を使用する方法があげられる。塩基性の固体の例としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などをあげることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などをあげることができる。固体無機酸としては、Na2O、K2O、MgO、CaOなどをあげることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などをあげることができる。
【0077】
上記中和工程時に添加した吸着剤を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。
【0078】
本発明における溶液状アクリル系ブロック共重合体とは、アクリル系ブロック共重合体が有機溶媒に溶解した溶液を含むものであれば特に限定はされず、公知の溶液重合法や上記の種々の制御重合法により合成された重合体溶液の他に、重合中に固体状重合体が一部析出したものであってもよいし、重合が終了した溶液に沈殿剤を添加して一部重合体を沈殿させたものであってもよい。その中でも、重合後の反応液を処理することによって得られたものが好ましく、この場合には、アクリル系ブロック共重合体を溶解させた有機溶媒は、重合反応に用いられた反応溶媒及び重合反応における未反応の残存モノマーからなる。
【0079】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去してアクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
【0080】
蒸発操作により溶剤を除去した重合体は、引き続き、押出し機に供給されペレット化される。押出し機出口は直径2mm〜8mm程度の単一または複数の孔をもつダイスで構成し、押出された樹脂はストランド状で冷却され、その後カットすることにより円柱状のペレットとなる。もしくはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式に代表されるように、ダイス表面を高速回転するカッターを併用して球状ペレットを製造することも可能である。粒度のそろったペレットを安定して製造するにあたってはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式が好ましい。
【0081】
<組成物>
ブロック共重合体(A)は単独で使用することも可能であるが、製造、加工、成形、流通、製品としての使用、廃棄あるいはリサイクルの過程で必要な性能を満たすために、各種の添加剤を配合することが必要になる。ブロック共重合体(A)の成形加工時の熱安定性、成形加工時ならびに長期使用時の耐酸化劣化性などを考えて、安定剤を配合することが望ましい。
【0082】
<添加剤>
安定剤としては、熱劣化防止剤、一次酸化安定剤、二次酸化安定剤を組み合わせて用いることが望ましい。ただし、熱劣化防止剤および/または一次酸化安定剤に限った使用も可能である。
【0083】
熱劣化防止剤としては、フェノールアクリレート系があげられる。たとえば、スミライザGM、スミライザGS(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
【0084】
一次酸化安定剤としては、フェノール系、アミン系があげられる。たとえば、フェノール系としては、スミライザBHT、スミライザMDP−S、スミライザGA−80(以上、住友化学工業(株)製)、イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)、また、アミン系としては、スミライザ9A(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
【0085】
二次酸化安定剤としては、イオウ系、リン系があげられる。たとえば、イオウ系としては、スミライザTPS、スミライザTP−D(以上、住友化学工業(株)製)、また、リン系としては、Sandstab P−EPQ、Hostanox par24(以上、クラリアントジャパン(株)製)が例示できる。
【0086】
また、必要に応じて次のような添加剤を配合してもよい。添加剤としては、ブロック共重合体(A)以外の他の重合体、可塑剤、柔軟性付与剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0087】
上記の他の重合体としては、特に限定されないが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマーなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0088】
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザーO−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。これら以外の高分子量の可塑剤としては、アクリル系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリテトラヒドロフラン系重合体、ポリイソブチレン系重合体などがあげられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱による減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、などが好ましい。
【0089】
上記の柔軟性付与剤としては、特に限定はなく、プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分などが挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、トール油等が例示でき、これらの柔軟性付与剤は少なくとも1種用いることができる。
【0090】
上記の滑剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス、ステアリン酸などの有機脂肪酸、ステアリン酸アミドなどの有機酸アミド、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムなど有機酸金属塩などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0091】
上記の難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0092】
上記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0093】
上記の充填剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、無定形フィラー、板状フィラー、針状フィラー、球状フィラー、機能性フィラー、繊維状フィラー、金属粉末などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0094】
無定形フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムなど、板状フィラーとして、タルク、マイカ、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイトなど、針状フィラーとして、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムなど、球状フィラーとして、ガラスビーズ、シリカビーズ、ガラス(シリカ)バルーンなど、機能性フィラーとして金属系導電性フィラー、非金属系導電性フィラー、カーボン系導電性フィラー、磁性フィラー、圧電、焦電フィラー、摺動性フィラーなど、また、繊維状フィラーとしてガラス繊維、金属繊維、アスベスト、ミルドファイバーなどの有機、無機、金属の各種ファイバーなどが例示できる。この中で、合成ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムを用いた場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)および他の成分に由来する酸成分を中和することができるため、これら成分から出る酸成分がさびを引き起こすことが問題となる使用用途において有用である。
【0095】
<組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法には特に制限はなく、公知の混練装置を使用することができるが、例えばバッチ式混練装置としてはミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーが使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するアクリル系ブロック共重合体(A)、またそれら以外の配合剤を使用する場合にあってはそれらの溶融温度、またそれらの溶融粘度などに応じて調整するのがよく、例えば、室温〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
【0096】
本発明の組成物の成型方法としては、射出成型、射出ブロー成型、ブロー成型、押出ブロー成型、押出成型、カレンダー成型、真空成型、プレス成型などがあげられる。何れの成型方法を選択するかは成型体の形状、重合体の性状、所望の生産性から決めればよい。
【0097】
<成型体の用途および使用方法>
得られた成型体は、表皮材料、触感材料、外観材料、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として、形状としてはシート、平板、フィルム、小型成型品、大型成型品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。
【0098】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、EA、BA、MEA、MMAは、それぞれ、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メチルメタアクリレートを意味する。
【0099】
<試験方法>
(分子量)
ブロック共重合体の分子量は、GPC分析装置(システム:Waters社製のGPCシステム、カラム:昭和電工(株)製のShodex K−804(ポリスチレンゲル))で測定した。クロロホルムを移動相として測定し、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0100】
(ガラス転移温度)
ブロック共重合体のガラス転移温度は、JIS K7121に従い、DSC(示差走査熱量測定)を用い、20℃/分の昇温速度で測定した。
【0101】
(ブロック化率)
ブロック共重合体のブロック化率は、以下に示す方法で測定した。エタノールを用いて、可溶分と不溶分に分離し、可溶分をホモポリアクリル酸エステルとして除いた。つぎに、クロロホルム/エタノール=15/85(重量%)混合溶液を用いて、可溶分と不溶分に分離し、不溶分をホモポリメタアクリル酸メチルとして除いた。残った可溶分をブロック共重合体として、その重量分率をブロック化率とした。
【0102】
(組成分析)
1H−NMRにより、ブロック共重合体中のポリアクリル酸エステルとポリメタアクリル酸メチルの重量分率を確認した。
【0103】
(引張特性)
組成物の引張破断強度および引張破断伸びは、JIS K6251に従い、25℃における引張伸びを測定した。
【0104】
(硬度)
組成物のJIS A硬度を測定した。
【0105】
(圧縮永久歪み)
組成物の圧縮永久歪みは、JIS K6301に従い、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で70℃で22時間保持し、室温で30分放置したのち、成形体の厚みを測定し、歪みの残留度を計算した。すなわち、圧縮永久歪み0%は、歪みが全部回復したことに、圧縮永久歪み100%は、歪みが全く回復しないことに相当する。
【0106】
(耐熱性・耐油性評価)
組成物の耐熱性・耐油性の評価は、ASTM−D2000に従って行なったが、耐油性評価には代替オイルに指定されているIRM903を使用した。但し、耐油性評価における形状評価は目視で行い、明らかに変形が認められれば、「変形」と評価した。
【0107】
<共重合体の製造>
(製造例1) MMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−MMA型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=7/3、3A0T7と略称する)の合成
500mLのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅1.37g(9.5ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)20mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.69g(1.9ミリモル)、BA 40.2ml(280ミリモル)、EA 38.2ml(352ミリモル)およびMEA 21.6ml(168ミリモル)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EAおよびMEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0108】
BAの転化率が94%、EAの転化率が93%、MEAの転化率が95%の時点で、MMA 42.8ml(400ミリモル)、塩化銅1.82g(18.5ミリモル)、ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)およびトルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)128.5mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が82%の時点で、トルエン150mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0109】
反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。
【0110】
得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113000、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=24/33/15/28(重量%)であった。
【0111】
(製造例2) 3A0T7型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=7/3)の合成
製造例1をスケールアップして、次のように3A0T7型ブロック共重合体を製造した。50L反応機に臭化第一銅123.10gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル627.44gおよびアクリル酸ブチル1072.8gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル61.79gをアクリル酸ブチル2160.7g、アクリル酸エチル3175.3g、アクリル酸2−メトキシエチル1970.0gおよび酢酸ブチル158.76gに溶解させた溶液、並びにアセトニトリル784.30gを仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第一ブロックとなるアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチルの共重合を開始した。転化率が96%に到達したところで、トルエン14948g、塩化第一銅84.95g、メタクリル酸メチル5385.5gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第二ブロックとなるメタクリル酸メチルの重合を開始した。転化率が58%に到達したところで、トルエン8660gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが111800、分子量分布Mw/Mnが1.48であった。また、NMRによる組成分析を行ったところ、MMA/BA/EA/MEA=28/28/27/17(重量%)であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を14.6wt%とし、及びp−トルエンスルホン酸を196g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学製)150gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。
【0112】
(製造例3) 3A0T8型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=8/2)の合成
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅10.3g(72ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.2g(14.4ミリモル)、BA 323.4g(2.522モル)、EA317.5g(3.171モル)、MEA197.0g(1.513モル)、酢酸ブチル18mLを加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.5ml(7.2ミリモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EAおよびMEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0113】
BAの転化率が96%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点(反応開始後207分)で、MMA312.4g(3.119モル)、塩化銅7.1g(72ミリモル)、ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)983.1mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が58%の時点(反応開始後265分)で、トルエン1000mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0114】
p−トルエンスルホン酸を16.5g加え、室温で3時間撹拌して、溶液が無色透明になっていることを確認した。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。この溶液に対し、キョーワード500SH9.2gを加え、室温で3時間撹拌した。溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。溶液から溶媒を揮発させ、目的とするブロック共重合体を得た。
【0115】
得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが120700、分子量分布Mw/Mnが1.44であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=30/31/19/20(重量%)であった。
【0116】
(製造例4) 3A0T6型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=6/4)の合成
製造例3において、アクリル酸エステルの重合(1段目)を臭化銅14.4g(100ミリモル)、アセトニトリル180mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル7.2g(20ミリモル)、BA323.4g(2.522モル)、EA317.5g(3.171モル)、MEA197.0g(1.513モル)、酢酸ブチル18mLとし、メタクリル酸エステルの重合(2段目)をMMA837.7g(8.410モル)、塩化銅9.9g(100ミリモル)、トルエン1781ml、1回に添加するジエチレントリアミンを2.1ml(10ミリモル)とした。1段目の重合において、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点(反応開始後174分)で2段目の重合を開始し、BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が60%の時点(反応開始後265分)で反応を停止させた。
【0117】
また、銅錯体除去工程において、p−トルエンスルホン酸を22.9g、キョーワード500SHを12.8gとした。
【0118】
それ以外は製造例3と同様に製造した。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113600、分子量分布Mw/Mnが1.54であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=23/24/15/38(重量%)であった。
【0119】
(製造例5) 3A0T6型ブロック共重合体の合成
製造例4をスケールアップして、次のように3A0T6型ブロック共重合体を製造した。500L反応機に臭化第一銅718.1gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル4704gおよびアクリル酸ブチル10728gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、アクリル酸ブチル16167.7g、アクリル酸エチル15876.4g、アクリル酸2−メトキシエチル9849.9gおよび酢酸ブチル793.8gの混合溶液、ならびに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル360.4gをアセトニトリル7058.7gに溶解させた溶液を仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン86.7gを加えて、第一ブロックとなるアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチルの共重合を開始した。転化率が96%に到達したところで、トルエン96106.8g、塩化第一銅495.6g、メタクリル酸メチル41887.0gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン86.7gを加えて、第二ブロックとなるメタクリル酸メチルの重合を開始した。転化率が61%に到達したところで、トルエン60620gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが104200、分子量分布Mw/Mnが1.36であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を23wt%になるよう調整し、及びp−トルエンスルホン酸を856.9g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)652.9gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。上記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機に供給し溶媒及び未反応モノマーの蒸発を行うことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケット及びスクリューは熱媒で180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして標記ブロック共重合体のペレットを作成した。このようにして標記ブロック共重合体のペレットを作成した。
【0120】
(製造例6) 3A0T5型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=5/5)の合成
製造例3において、アクリル酸エステルの重合(1段目)を臭化銅4.8g(33ミリモル)、アセトニトリル50mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.4g(6.7ミリモル)、BA89.8g(701ミリモル)、EA88.2g(881ミリモル)、MEA54.7g(420ミリモル)とし、メタクリル酸エステルの重合(2段目)をMMA467.7g(4.672モル)、塩化銅3.3g(33ミリモル)、トルエン500ml、1回に添加するジエチレントリアミンを0.7ml(3.3ミリモル)とした。1段目の重合において、BAの転化率が96%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が97%の時点(反応開始後112分)で2段目の重合を開始し、BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が52%の時点(反応開始後161分)で反応を停止させた。
【0121】
また、銅錯体除去工程において、p−トルエンスルホン酸を5.8g、キョーワード500SHを1.6gとした。
【0122】
それ以外は製造例3と同様に製造した。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが102700、分子量分布Mw/Mnが1.59であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=19/18/11/52(重量%)であった。
【0123】
(製造例7) 3A0T4型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=4/6)の合成
製造例3において、アクリル酸エステルの重合(1段目)を臭化銅4.6g(32ミリモル)、アセトニトリル40mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.3g(6.4ミリモル)、BA71.8g(561ミリモル)、EA70.6g(705ミリモル)、MEA43.8g(336ミリモル)とし、メタクリル酸エステルの重合(2段目)をMMA564.5g(5.638モル)、塩化銅3.2g(32ミリモル)、トルエン600ml、1回に添加するジエチレントリアミンを0.7ml(3.2ミリモル)とした。1段目の重合において、BAの転化率が97%、EAの転化率が94%、MEAの転化率が95%の時点(反応開始後125分)で2段目の重合を開始し、BAの転化率が97%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が96%、MMAの転化率が51%の時点(反応開始後193分)で反応を停止させた。
【0124】
また、銅錯体除去工程において、p−トルエンスルホン酸を5.5g、キョーワード500SHを1.4gとした。 それ以外は製造例3と同様に製造した。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113200、分子量分布Mw/Mnが1.59であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=15/15/9/61(重量%)であった。
【0125】
<組成物の製造>
(実施例1)
製造例4で製造したブロック共重合体3A0T6 100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加し、190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用の成形体と、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。これらの成形体について、引張破断強度、引張破断伸び、硬度、圧縮永久歪み、および、耐熱性・耐油性を測定した。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
(実施例2、3)
それぞれ、製造例6,7で製造したブロック共重合体を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0128】
(比較例1、2)
それぞれ、製造例1,3で製造したブロック共重合体を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
本発明の組成物である実施例2は、エラストマーらしい挙動を示しながら、比較例1および2より充分な耐熱性と高い耐油性を有していることがわかる。実施例2,3は、実施例1よりも硬度が高く、プラストマーらしい物性を示し、なおかつ耐油性が優れていることがわかる。比較例1では、硬度が低くエラストマーらしい物性を示すが、耐熱性と耐油性が劣るために、150℃オイル試験で変形する。また、比較例2でも同様に、柔軟性はあるものの、耐熱性と耐油性が劣ることがわかる。
【0130】
【発明の効果】
本発明のブロック共重合体によれば、低温特性を損なうことなく、耐熱性と耐油性を改善することができる。前記ブロック共重合体を含有する本発明の組成物は、熱可塑性エラストマーとして、包装材料、医療用材料、食品用材料、自動車用材料、制振材料、シール材料などのゴム材料として有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐油性を有し、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、樹脂とゴムとの中間の弾性率を有するコンパウンド材料の配合剤、塗料、接着剤あるいは粘着剤として利用できるブロック共重合体に関する。さらに詳しくは、特定の構造を有し、物性のバランスに優れたメタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体としては、特許文献1に開示されたポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸ブチル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−BA−b−MMA)、ポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸2エチルヘキシル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−2EHA−b−MMA)などが知られている。このようなアクリル系ブロック共重合体でもまだ耐油性が不足する場合があり、その改善のためには、特許文献2に開示されているように、Tgの低いブロックとして、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルをある比率で共重合させることで、耐油性と低温特性を両立できることが分かっている。
【0003】
しかしながら、さらなる耐油性が求められる場合には、これらのブロック共重合体といえども、耐油性が不足することが問題となる場合があった。
【0004】
【特許文献1】
特許第2553134号
【0005】
【特許文献2】
特開2002−338646号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有し、特に耐油性に優れ、さらに低温特性を有するブロック共重合体を提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、メタアクリル系重合体ブロックおよびアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体において、Tgの低いブロックとして、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸2−メトキシエチルを特定の比率で共重合させ、かつ、メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックの比率を一定範囲とすることで、特に耐油性に優れ、低温特性を有する、アクリル系ブロック共重合体となることを見いだし、発明を完結するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1は、x−y型、およびx−y−x型の(A)ブロック共重合体であって、メタアクリル酸メチル単位を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(A1)、および、一般式(1)で表わされるランダム共重合体を主成分とするアクリル系重合体ブロック(A2)からなり、(A1)35〜90重量%および(A2)65〜10重量%からなることを特徴とするブロック共重合体、に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、アクリル系重合体ブロック(A2)が、一般式(1)で表されるランダム共重合体のみからなり、アクリル系重合体ブロック(A2)全体中、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%である上記記載のブロック共重合体に関する。より好ましくは、ブロック共重合体(A)が、x−y−x型のトリブロック体であることを特徴とする、上記記載のブロック共重合体、更に好ましくは、ブロック共重合体のプレス成型体の引張弾性率が2.0MPa以上であることを特徴とする、上記記載のブロック共重合体、に関する。本発明の第2は、上記記載のブロック共重合体を含有する組成物に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。アクリル系ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体であってもよく、分岐状(星状)ブロック共重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。ブロック共重合体(A)の構造は、ブロック共重合体組成物に必要とされる加工特性や機械特性などに応じて使いわければよいが、コスト面や重合の容易性から、線状ブロック共重合体であるのが好ましい。
【0011】
アクリル系ブロック共重合体(A)が線状ブロック共重合体であった場合、いずれのブロック構造であってもかまわないが、アクリル系ブロック共重合体(A)が2種の重合体ブロック(x)、(y)から構成される場合、加工時の取扱いの容易さや、組成物にした場合の物性の点から、一般式:(x−y)n、一般式:x−(x−y)n、一般式:(x−y)n−a(nは1以上、たとえば1〜3の整数)で表わされるブロック共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱いの容易さや、組成物にした場合の物理的性質の点から、x−y型のジブロック共重合体、y−x−y型のトリブロック共重合体またはこれらの混合物がより好ましい。
【0012】
アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは30000〜500000、さらに好ましくは50000〜400000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定される。
【0013】
アクリル系ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
【0014】
アクリル系ブロック共重合体(A)全体中のメタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が35〜90重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が65〜10重量%が好ましい。耐油性と弾性率の観点から、さらに好ましい範囲は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が35〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が65〜30重量%であり、特に好ましくは、メタアクリル系重合体ブロック(A1)が40〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(A2)が60〜40重量%である。(A)の組成が上記の範囲にあると、(A)の機械物性、耐油性などの物性が所望の性質となる。具体的には、プレス成型体を150℃のIRM903オイルに浸漬しても形状変化が抑えられるなどの顕著な物性の向上が見られる。メタアクリル系重合体ブロック(A1)の割合が35重量%より少ないと耐油性に劣る場合があり、アクリル系重合体ブロック(A2)の割合が10重量%より少ないと弾性率が低下する場合がある。
【0015】
また、本発明のブロック共重合体のプレス成型体の引張弾性率が2.0MPa以上であれば、耐油性と、熱安定性を好ましく両立できるメリットがあり好ましい。
【0016】
また、メタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に、任意成分として、
一般式(2):
【0017】
【化2】
(式中、R1は水素原子またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい、sは0または1の整数、tは0〜3の整数)で表わされる酸無水物基(a1)及び/又はカルボキシル基(a2)を含有する単位が含まれていても良い。これらを含有する効果として、凝集力および極性が向上することで、耐熱性、耐油性、機械物性が改善されることが期待される。これらを含有させる場合にはアクリル系ブロック共重合体(A)全体中、酸無水物基(a1)、カルボキシル基(a2)の基を有する単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの単位を0.1〜50重量%含有することが好ましく、0.5〜50重量%含有することがさらに好ましい。その理由として、0.1重量%より少ない場合は、これらを含有させる効果が乏しく、また、この範囲を越えると、アクリル系ブロック体の本来有する物性、たとえば柔軟性などのエラストマー的性質が損なわれる場合があるためである。
【0018】
また、(a1)及び(a2)が、メタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の少なくとも一方の重合体ブロックの主鎖中に含まれる場合にあっては、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に含まれていることが好ましい。これは、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に含まれた場合のほうが、耐熱性、耐油性、機械物性が改善される程度が大きいためである。
【0019】
<メタアクリル系重合体ブロック(A1)>
メタアクリル系重合体ブロック(A1)は、メタアクリル酸メチル単位を主成分とする重合体ブロックであり、メタアクリル系重合体ブロック(A1)全体中、メタアクリル酸メチル(a)50〜100重量%、及び、これと共重合可能なビニル系単量体(a3)、および/または、酸無水物基(a1)及び/又はカルボキシル基(a2)を含有する単量体からなる単量体(b)50〜0重量%とからなることが好ましく、単量体(a)75〜100重量%および単量体(b)25〜0重量%であることがさらに好ましい。単量体(a)と単量体(b)の成分比が上記範囲にあれば、メタアクリル酸メチル重合体の性質を損なわない。
【0020】
(b)のうちビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
【0021】
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0022】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0023】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0024】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0025】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0026】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0027】
ケイ素含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0028】
不飽和時カルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0029】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0030】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0031】
また、(b)のうち、酸無水物基(a1)及び/又はカルボキシル基(a2)を含有する単量体としては、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸があげられる。
【0032】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(A1)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(A2)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。
【0033】
メタアクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。メタアクリル系重合体ブロック(A1)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる傾向がある。
【0034】
<アクリル系重合体ブロック(A2)>
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する単量体は、所望する物性のブロック共重合体を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを主成分とする。すなわち、アクリル系重合体ブロック(A2)は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルの合計50〜100重量%、好ましくは75〜100重量%、ならびに、これと共重合可能なビニル系単量体0〜50重量%、好ましくは0〜25重量%とからなる。前記アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルの含有量が50重量%より少ないと、耐油性、低温特性などが損なわれる場合がある。また、ゴム弾性、粘度および加工性の観点から、p,q,rの合計が30〜6000であることが必要である。p、q、rの合計が30に満たない場合は、ポリマー鎖の絡み合いが十分ではなく、ゴム弾性が損なわれる場合がある。また、p,q,rの合計が6000を超える場合は、加工時の粘度が高すぎて加工性を損なう場合がある。
【0035】
アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを特定の比率で共重合させることで、Tgの低いブロックに耐油性と低温特性を付与する事ができる。ここで、それら単量体の役割を述べると、アクリル酸エチルは主に耐油性を、アクリル酸ブチルは低温特性を、アクリル酸2−メトキシエチルは耐油性と低温特性を付与する効果がある。それらの比率は、要求される耐油性、低温特性とコストとのバランスで決めればよい。
【0036】
アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルの組成は、それらの合計を100重量%として、それらの比率の範囲を示すと、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%であり、好ましくは、アクリル酸エチルが20〜70重量%、アクリル酸ブチルが20〜70重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが10〜60重量%であり、さらに好ましくは、アクリル酸エチルが30〜55重量%、アクリル酸ブチルが30〜55重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが15〜40重量%である。アクリル酸2−メトキシエチルが5重量%未満の場合には耐油性と低温特性を両立させることができない場合があり、アクリル酸ブチルが10重量%未満の場合には低温特性とコストを両立させることが出来ない場合があり、アクリル酸エチルが10重量%未満の場合には耐油性、低温特性とコストのバランスが問題になる場合がある。
【0037】
アクリル系重合体ブロック(A2)を構成する3種類のアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、(A1)を構成するビニル系単量体(b)におけるアクリル酸エステルのうちアクリル酸エチル、アクリル酸ブチルおよびアクリル酸2−メトキシエチルを除いたもの、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0038】
メタアクリル酸エステルとしては、(A1)を構成する単量体(b)におけるメタアクリル酸エステルと同じもの、およびメタアクリル酸メチルが例示できる。
【0039】
芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物に関しては、ビニル系単量体(a3)におけるそれぞれの構成材料と同じものが例示できる。
【0040】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(A2)に要求されるガラス転移温度および耐油性、重合体ブロック(A1)との相容性などのバランスの観点から、好ましいものを選択することができる。
【0041】
アクリル系重合体ブロック(A2)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。重合体ブロック(A2)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いとゴム弾性が発現されにくいので不利である。
【0042】
<ブロック共重合体(A)の製造方法>
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合をあげることができる。リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
【0043】
リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれ、本発明におけるリビングラジカル重合は、重合末端が活性化されたものと不活性化されたものが平衡状態で維持されるラジカル重合であり、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
【0044】
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(Journal of American Chemical Society,1994,116,7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules,1994,27,7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0045】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(例えば、Matyjaszewskiら, Journal of American Chemical Society,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866、またはSawamotoら, Macromolecules,1995,28,1721)。
【0046】
これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み時の比率によって自由にコントロールすることができる。
【0047】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物を使用できる。これらは目的に応じて使い分けることができる。ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましい。x−y−x型のトリブロック共重合体、y−x−y型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用することが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用することが好ましい。
【0048】
一官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
C6H5−CH2X
C6H5−CHX−CH3
C6H5−C(CH3)2X
R1−CHX−COOR2
R1−C(CH3)X−COOR2
R1−CHX−CO−R2
R1−C(CH3)X−CO−R2
R1−C6H4−SO2X
式中、C6H4はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
【0049】
二官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
X−CH2−C6H4−CH2−X
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X
X−CH(COOR3)−(CH2)n−CH(COOR3)−X
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2)n−C(CH3)(COOR3)−X
X−CH(COR3)−(CH2)n−CH(COR3)−X
X−C(CH3)(COR3)−(CH2)n−C(CH3)(COR3)−X
X−CH2−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2X
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X
X−CH2−CO−CO−CH2−X
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X
X−SO2−C6H4−SO2−X
式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。C6H4はフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。C6H5はフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
【0050】
多官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
C6H3(CH2X)3
C6H3(CH(CH3)−X)3
C6H3(C(CH3)2−X)3
C6H3(OCO−CH2X)3
C6H3(OCO−CH(CH3)−X)3
C6H3(OCO−C(CH3)2−X)3
C6H3(SO2X)3
式中、C6H3は三置換フェニル基を表わす。三置換フェニル基は、置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
【0051】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基、フェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
【0052】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体をあげることができる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
【0053】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などをあげることができる。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加することもできる。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として使用する事ができる。
【0054】
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することもできる。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も触媒として使用できる。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定することができる。
【0055】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などをあげることができ、これらは少なくとも1種を混合して用いることができる。また、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする反応速度(即ち、撹拌効率)の関係から適宜決定することができる。
【0056】
また、前記原子移動ラジカル重合は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜150℃の範囲で行なわせることができる。前記原子移動ラジカル重合温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなる場合があるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。
【0057】
前記原子移動ラジカル重合により、ブロック共重合体を製造する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などをあげることができる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができる。製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0058】
さらに、重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができる。
【0059】
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、特に限定はないが、例えば、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、たとえば特開平10−298248号公報、および特開2001−234146号公報などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。また、下に示す方法により誘導した酸無水物基を加水分解してカルボキシル基を生成させる方法もある。
【0060】
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、上記のように加熱により脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
【0061】
この方法により誘導した酸無水物基を有するブロック共重合体は、たとえばオートクレーブ中で精製水と加熱することで加水分解することができ、酸無水物基をカルボキシル基に変換することができる。加水分解の条件は特に制限されないが、200℃で2時間加熱する事などがあげられる。
【0062】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、有機酸を添加して金属錯体を除去する。引き続き、吸着処理により不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体(A)を含んでなるアクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
【0063】
使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有することが好ましい。
【0064】
使用することができる有機カルボン酸、すなわちカルボン酸基を含有する有機物としては、特に限定されないが、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、4−メチル吉草酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、イコサン酸などの飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などのハロゲンを含有する飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、アセトキシコハク酸、アセト酢酸、エトキシ酢酸、4−オキソ吉草酸、グリコール酸、グリシド酸、グリセリン酸、2−オキソ酪酸、グルタル酸などの置換基を含有する飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、プロピオル酸、アクリル酸、クロトン酸、4−ペンテン酸、アリルマロン酸、イタコン酸、オキサロ酢酸などの脂肪族不飽和の一官能性のカルボン酸、安息香酸、アセチル安息香酸、アセチルサリチル酸、アトロパ酸、アニス酸、ケイ皮酸、サリチル酸などの芳香環あるいは不飽和結合のα位にカルボン酸の炭素が結合した一官能性のカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、3−オキソグルタル酸、アゼライン酸、エチルマロン酸、4−オキソヘプタン2酸、3−オキソグルタル酸などの飽和脂肪族の二官能性のカルボン酸、アセチレンジカルボン酸などの不飽和脂肪族の二官能性のカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族の二官能性のカルボン酸、アニコット酸、イソカンホロン酸などのトリカルボン酸、アミノ酪酸、アラニンなどのアミノ酸、などがあげられる。これらの2種以上を併用してもかまわない。これらの中では、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、シュウ酸が好ましい。
【0065】
本発明で使用することができる有機スルホン酸、すなわちスルホン酸基を含有する有機物としては、特に限定されないが、たとえば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの飽和脂肪族の一官能性のスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、1,3−プロパンスルホン酸、1,4−ブタンスルホン酸、1,5−ペンタンスルホン酸などの飽和脂肪族の二官能性のスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸、アミノフェノールスルホン酸などの芳香族の一官能性のスルホン酸、などがあげられる。これらの内、2種以上を併用してもかまわない。これらの中では、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
【0066】
好適に使用可能な有機酸の選定に当たり、条件を詳細に説明する。第一に、その有機酸が、除去したい銅を中心とする金属錯体と、金属塩を生成することである。第二に、生成した金属塩が、重合体の溶液あるいは融液から分離可能であることである。第三に、有機酸が、重合体に致命的な影響を与えないことである。有機酸はそれ自体が液体あるいは固体の場合があるが、上の条件を満たせば何れであってもかまわない。
【0067】
これらの条件をさらに詳細に説明する。第一に、有機酸が、除去したい銅を中心とする金属錯体と金属塩を生成するためには、有機酸が、ある程度以上の酸性度を有する必要がある。酸性度の指標として有機化合物の水溶液中の解離定数を用いるならば、第1解離段の酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が、6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。この解離定数については、たとえば、化学便覧(改訂3版、日本化学会編、1984、基礎編II、339ページの表10.11)などを参考にすることが出来る。たとえば、酢酸のpKaは4.56、安息香酸のpKaは4.20、シュウ酸のpKaは1.04(第1段)、3.82(第2段)である。上表にはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の値が記載されていないが、いずれも水に可溶であり、ベンゼンスルホン酸のpKaは−2.7(有機化合物辞典942ページ、有機合成化学協会編、1985)、また、p−トルエンスルホン酸は塩酸や硫酸と同程度の強酸であるとされていることから(有機化合物辞典645ページ、有機合成化学協会編、1985)そのpKaは大きくとも2程度であるとすることができる。水に溶けない有機酸の場合は、その誘導体で水溶性の有機酸や、他の酸との強弱関係から類推することができる。
【0068】
第二に、生成した金属塩が、重合体の溶液あるいは融液から分離可能であるためには、生成した金属塩の溶媒に対する溶解度が小さいことが好ましく、難溶であることがさらに好ましく、不溶であることが最も好ましい。金属塩の溶解度を事前に予測することは難しいが、金属錯体の溶媒に対する溶解度、用いる有機酸の溶媒に対する溶解度を参考にすることが出来る。
【0069】
第三に、有機酸が、重合体に致命的な影響を与えないためには、重合体の主鎖や側鎖が酸によって分解されない構造であること、重合体に酸と反応する官能基がないことが好ましい。好ましい場合に該当しない場合は、反応させる有機酸の量や濃度、反応温度、反応時間、溶媒などを調整する必要がある。ただし、重合体の官能基を酸と反応させることで所望の官能基に変換させる場合や、官能基が酸と反応しても化学的手段などで元の状態に戻せる場合などは除く。
【0070】
有機酸の作用により金属錯体の一部が分解してしまう場合を想定して、遊離した配位子をも除去できることが好ましい。すなわち、遊離した配位子が溶媒に不溶であるか、配位子と有機酸との反応により溶媒に不溶な有機塩が生成することが好ましい。この塩の溶解度を事前に予測することは難しいが、配位子の溶媒に対する溶解度、用いる有機酸の溶媒に対する溶解度を参考にすることが出来る。有機酸をそのまま使用するか、水溶液として使用するか、有機溶媒の溶液として使用するかについては、特に制限はないが、上の条件を満たせば何れであってもかまわない。
【0071】
除去する金属錯体は、特に制限されないが、ハロゲン化銅と、窒素を含有する配位子との反応により生成したものである金属錯体であってもかまわない。また、ここであげる窒素を含有する配位子が、2以上の配位座を有するキレート配位子であってもかまわない。これは、前記原子移動ラジカル重合の触媒として好ましく用いられる金属錯体は、1価の銅を中心金属とする金属錯体であり、1価の銅化合物としては、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅などのハロゲン化銅があげられ、さらに、触媒活性を高めるために窒素を含有する配位子、たとえば、2,2′−ビピリジル、その誘導体(4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルが例示できる)などの2,2′−ビピリジル系化合物、1,10−フェナントロリン、その誘導体(4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンが例示できる)などの1,10−フェナントロリン系化合物、テトラメチルジエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンが例示できるが、2以上の配位座を有するキレート配位子が添加される場合があるためである。もちろん、本発明で除去することが可能な金属錯体は、前記原子移動ラジカル重合の触媒に限定されず、触媒機能を持たない金属錯体であってもかまわない。
【0072】
本発明で使用する有機酸の量は、銅を中心とする金属錯体に含有される銅1mol当たり、有機酸1mol以上であることが好ましい。また、配位子の配位座1mol当たり、使用する有機酸の量は0.5mol以上であることが好ましく、1.0mol以上であることが更に好ましい。但し、有機酸の量を増やす程反応時間は短縮されるものの、コストの観点、余剰の有機酸を除く必要の観点などを考慮すると、反応時間を勘案した必要量に抑えることが望ましい。
【0073】
本発明の、有機酸の添加による反応は、無溶媒(ポリマーの融液)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率、および反応速度の関係から適宜決定すればよい。前記反応は、0℃〜200℃の範囲で行う事ができ、室温〜150℃の範囲が好ましい。前記反応温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度遅くなるし、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない場合がある。
【0075】
反応の結果生成した金属塩を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。また必要に応じて、金属塩を除去せずに、次の中和工程に進むことも可能である場合がある。しかしこの場合でも、中和工程終了後には金属塩を除去しなければならない。金属塩が固体状(メタ)アクリル系ブロック共重合体に残存した場合は、減圧押出機による揮発成分除去中に重合体劣化を起こしていたり、成形体の着色や、機械物性低下などの悪影響を及ぼす恐れがある。
【0076】
重合体と、銅を中心金属とする金属錯体を含有する混合物に、有機酸を添加することで金属錯体を除去した後、系が酸性側に寄ることがあり、それが問題になる場合がある。その場合は、系を中和させる工程が必要になる。系を中和させる方法としては既知の方法を使用することができ、特に制限はないが、たとえば、塩基性の固体を使用する方法があげられる。塩基性の固体の例としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などをあげることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などをあげることができる。固体無機酸としては、Na2O、K2O、MgO、CaOなどをあげることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などをあげることができる。
【0077】
上記中和工程時に添加した吸着剤を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。
【0078】
本発明における溶液状アクリル系ブロック共重合体とは、アクリル系ブロック共重合体が有機溶媒に溶解した溶液を含むものであれば特に限定はされず、公知の溶液重合法や上記の種々の制御重合法により合成された重合体溶液の他に、重合中に固体状重合体が一部析出したものであってもよいし、重合が終了した溶液に沈殿剤を添加して一部重合体を沈殿させたものであってもよい。その中でも、重合後の反応液を処理することによって得られたものが好ましく、この場合には、アクリル系ブロック共重合体を溶解させた有機溶媒は、重合反応に用いられた反応溶媒及び重合反応における未反応の残存モノマーからなる。
【0079】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去してアクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
【0080】
蒸発操作により溶剤を除去した重合体は、引き続き、押出し機に供給されペレット化される。押出し機出口は直径2mm〜8mm程度の単一または複数の孔をもつダイスで構成し、押出された樹脂はストランド状で冷却され、その後カットすることにより円柱状のペレットとなる。もしくはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式に代表されるように、ダイス表面を高速回転するカッターを併用して球状ペレットを製造することも可能である。粒度のそろったペレットを安定して製造するにあたってはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式が好ましい。
【0081】
<組成物>
ブロック共重合体(A)は単独で使用することも可能であるが、製造、加工、成形、流通、製品としての使用、廃棄あるいはリサイクルの過程で必要な性能を満たすために、各種の添加剤を配合することが必要になる。ブロック共重合体(A)の成形加工時の熱安定性、成形加工時ならびに長期使用時の耐酸化劣化性などを考えて、安定剤を配合することが望ましい。
【0082】
<添加剤>
安定剤としては、熱劣化防止剤、一次酸化安定剤、二次酸化安定剤を組み合わせて用いることが望ましい。ただし、熱劣化防止剤および/または一次酸化安定剤に限った使用も可能である。
【0083】
熱劣化防止剤としては、フェノールアクリレート系があげられる。たとえば、スミライザGM、スミライザGS(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
【0084】
一次酸化安定剤としては、フェノール系、アミン系があげられる。たとえば、フェノール系としては、スミライザBHT、スミライザMDP−S、スミライザGA−80(以上、住友化学工業(株)製)、イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)、また、アミン系としては、スミライザ9A(以上、住友化学工業(株)製)が例示できる。
【0085】
二次酸化安定剤としては、イオウ系、リン系があげられる。たとえば、イオウ系としては、スミライザTPS、スミライザTP−D(以上、住友化学工業(株)製)、また、リン系としては、Sandstab P−EPQ、Hostanox par24(以上、クラリアントジャパン(株)製)が例示できる。
【0086】
また、必要に応じて次のような添加剤を配合してもよい。添加剤としては、ブロック共重合体(A)以外の他の重合体、可塑剤、柔軟性付与剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0087】
上記の他の重合体としては、特に限定されないが、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマーなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0088】
上記の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコール等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。これらの化合物は、ブロック共重合体(A)の粘度を低くすることが期待できる。市販されている可塑剤としては、チオコールTP(モートン社製)、アデカサイザーO−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。これら以外の高分子量の可塑剤としては、アクリル系重合体、ポリプロピレングリコール系重合体、ポリテトラヒドロフラン系重合体、ポリイソブチレン系重合体などがあげられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱による減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、などが好ましい。
【0089】
上記の柔軟性付与剤としては、特に限定はなく、プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分などが挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、パインオイル、トール油等が例示でき、これらの柔軟性付与剤は少なくとも1種用いることができる。
【0090】
上記の滑剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックス、ステアリン酸などの有機脂肪酸、ステアリン酸アミドなどの有機酸アミド、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウムなど有機酸金属塩などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0091】
上記の難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなどが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0092】
上記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、カーボンブラック、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0093】
上記の充填剤としては、次の化合物が挙げられるが、特に限定はなく、無定形フィラー、板状フィラー、針状フィラー、球状フィラー、機能性フィラー、繊維状フィラー、金属粉末などが例示でき、これらは単独で用いてもよく、複数を組合せて用いてもよい。
【0094】
無定形フィラーとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムなど、板状フィラーとして、タルク、マイカ、ガラスフレーク、合成ハイドロタルサイトなど、針状フィラーとして、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムなど、球状フィラーとして、ガラスビーズ、シリカビーズ、ガラス(シリカ)バルーンなど、機能性フィラーとして金属系導電性フィラー、非金属系導電性フィラー、カーボン系導電性フィラー、磁性フィラー、圧電、焦電フィラー、摺動性フィラーなど、また、繊維状フィラーとしてガラス繊維、金属繊維、アスベスト、ミルドファイバーなどの有機、無機、金属の各種ファイバーなどが例示できる。この中で、合成ハイドロタルサイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムを用いた場合には、アクリル系ブロック共重合体(A)および他の成分に由来する酸成分を中和することができるため、これら成分から出る酸成分がさびを引き起こすことが問題となる使用用途において有用である。
【0095】
<組成物の製造方法>
本発明の組成物の製造方法には特に制限はなく、公知の混練装置を使用することができるが、例えばバッチ式混練装置としてはミキシングロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、高剪断型ミキサーが使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するアクリル系ブロック共重合体(A)、またそれら以外の配合剤を使用する場合にあってはそれらの溶融温度、またそれらの溶融粘度などに応じて調整するのがよく、例えば、室温〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
【0096】
本発明の組成物の成型方法としては、射出成型、射出ブロー成型、ブロー成型、押出ブロー成型、押出成型、カレンダー成型、真空成型、プレス成型などがあげられる。何れの成型方法を選択するかは成型体の形状、重合体の性状、所望の生産性から決めればよい。
【0097】
<成型体の用途および使用方法>
得られた成型体は、表皮材料、触感材料、外観材料、耐磨耗性材料、耐油性材料、制振材料、粘着材料のような目的を有する材料として、形状としてはシート、平板、フィルム、小型成型品、大型成型品その他任意の形状として、またパネル類、ハンドル類、グリップ類、スイッチ類のような部品として、さらにそれ以外にもシーリング部材として用いることができる。用途としては、特に制限されないが、自動車用、家庭用電気製品用、または事務用電気製品用が例示される。たとえば、自動車用表皮材料、自動車用触感材料、自動車用外観材料、自動車用パネル類、自動車用ハンドル類、自動車用グリップ類、自動車用スイッチ類として、また、家庭用または事務用電気製品用パネル類、家庭用または事務用電気製品用スイッチ類などを例示することができる。
【0098】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、EA、BA、MEA、MMAは、それぞれ、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メチルメタアクリレートを意味する。
【0099】
<試験方法>
(分子量)
ブロック共重合体の分子量は、GPC分析装置(システム:Waters社製のGPCシステム、カラム:昭和電工(株)製のShodex K−804(ポリスチレンゲル))で測定した。クロロホルムを移動相として測定し、ポリスチレン換算の分子量を求めた。
【0100】
(ガラス転移温度)
ブロック共重合体のガラス転移温度は、JIS K7121に従い、DSC(示差走査熱量測定)を用い、20℃/分の昇温速度で測定した。
【0101】
(ブロック化率)
ブロック共重合体のブロック化率は、以下に示す方法で測定した。エタノールを用いて、可溶分と不溶分に分離し、可溶分をホモポリアクリル酸エステルとして除いた。つぎに、クロロホルム/エタノール=15/85(重量%)混合溶液を用いて、可溶分と不溶分に分離し、不溶分をホモポリメタアクリル酸メチルとして除いた。残った可溶分をブロック共重合体として、その重量分率をブロック化率とした。
【0102】
(組成分析)
1H−NMRにより、ブロック共重合体中のポリアクリル酸エステルとポリメタアクリル酸メチルの重量分率を確認した。
【0103】
(引張特性)
組成物の引張破断強度および引張破断伸びは、JIS K6251に従い、25℃における引張伸びを測定した。
【0104】
(硬度)
組成物のJIS A硬度を測定した。
【0105】
(圧縮永久歪み)
組成物の圧縮永久歪みは、JIS K6301に従い、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で70℃で22時間保持し、室温で30分放置したのち、成形体の厚みを測定し、歪みの残留度を計算した。すなわち、圧縮永久歪み0%は、歪みが全部回復したことに、圧縮永久歪み100%は、歪みが全く回復しないことに相当する。
【0106】
(耐熱性・耐油性評価)
組成物の耐熱性・耐油性の評価は、ASTM−D2000に従って行なったが、耐油性評価には代替オイルに指定されているIRM903を使用した。但し、耐油性評価における形状評価は目視で行い、明らかに変形が認められれば、「変形」と評価した。
【0107】
<共重合体の製造>
(製造例1) MMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−MMA型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=7/3、3A0T7と略称する)の合成
500mLのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅1.37g(9.5ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)20mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.69g(1.9ミリモル)、BA 40.2ml(280ミリモル)、EA 38.2ml(352ミリモル)およびMEA 21.6ml(168ミリモル)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EAおよびMEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0108】
BAの転化率が94%、EAの転化率が93%、MEAの転化率が95%の時点で、MMA 42.8ml(400ミリモル)、塩化銅1.82g(18.5ミリモル)、ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)およびトルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)128.5mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が82%の時点で、トルエン150mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0109】
反応溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。得られた濾液を多量のメタノールに加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することにより目的のブロック共重合体を得た。
【0110】
得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113000、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=24/33/15/28(重量%)であった。
【0111】
(製造例2) 3A0T7型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=7/3)の合成
製造例1をスケールアップして、次のように3A0T7型ブロック共重合体を製造した。50L反応機に臭化第一銅123.10gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル627.44gおよびアクリル酸ブチル1072.8gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル61.79gをアクリル酸ブチル2160.7g、アクリル酸エチル3175.3g、アクリル酸2−メトキシエチル1970.0gおよび酢酸ブチル158.76gに溶解させた溶液、並びにアセトニトリル784.30gを仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第一ブロックとなるアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチルの共重合を開始した。転化率が96%に到達したところで、トルエン14948g、塩化第一銅84.95g、メタクリル酸メチル5385.5gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第二ブロックとなるメタクリル酸メチルの重合を開始した。転化率が58%に到達したところで、トルエン8660gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが111800、分子量分布Mw/Mnが1.48であった。また、NMRによる組成分析を行ったところ、MMA/BA/EA/MEA=28/28/27/17(重量%)であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を14.6wt%とし、及びp−トルエンスルホン酸を196g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学製)150gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。
【0112】
(製造例3) 3A0T8型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=8/2)の合成
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅10.3g(72ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.2g(14.4ミリモル)、BA 323.4g(2.522モル)、EA317.5g(3.171モル)、MEA197.0g(1.513モル)、酢酸ブチル18mLを加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.5ml(7.2ミリモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EAおよびMEAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。
【0113】
BAの転化率が96%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点(反応開始後207分)で、MMA312.4g(3.119モル)、塩化銅7.1g(72ミリモル)、ジエチレントリアミン0.20ml(1.0ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)983.1mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が58%の時点(反応開始後265分)で、トルエン1000mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0114】
p−トルエンスルホン酸を16.5g加え、室温で3時間撹拌して、溶液が無色透明になっていることを確認した。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。この溶液に対し、キョーワード500SH9.2gを加え、室温で3時間撹拌した。溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。溶液から溶媒を揮発させ、目的とするブロック共重合体を得た。
【0115】
得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが120700、分子量分布Mw/Mnが1.44であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=30/31/19/20(重量%)であった。
【0116】
(製造例4) 3A0T6型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=6/4)の合成
製造例3において、アクリル酸エステルの重合(1段目)を臭化銅14.4g(100ミリモル)、アセトニトリル180mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル7.2g(20ミリモル)、BA323.4g(2.522モル)、EA317.5g(3.171モル)、MEA197.0g(1.513モル)、酢酸ブチル18mLとし、メタクリル酸エステルの重合(2段目)をMMA837.7g(8.410モル)、塩化銅9.9g(100ミリモル)、トルエン1781ml、1回に添加するジエチレントリアミンを2.1ml(10ミリモル)とした。1段目の重合において、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点(反応開始後174分)で2段目の重合を開始し、BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が60%の時点(反応開始後265分)で反応を停止させた。
【0117】
また、銅錯体除去工程において、p−トルエンスルホン酸を22.9g、キョーワード500SHを12.8gとした。
【0118】
それ以外は製造例3と同様に製造した。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113600、分子量分布Mw/Mnが1.54であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=23/24/15/38(重量%)であった。
【0119】
(製造例5) 3A0T6型ブロック共重合体の合成
製造例4をスケールアップして、次のように3A0T6型ブロック共重合体を製造した。500L反応機に臭化第一銅718.1gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル4704gおよびアクリル酸ブチル10728gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、アクリル酸ブチル16167.7g、アクリル酸エチル15876.4g、アクリル酸2−メトキシエチル9849.9gおよび酢酸ブチル793.8gの混合溶液、ならびに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル360.4gをアセトニトリル7058.7gに溶解させた溶液を仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン86.7gを加えて、第一ブロックとなるアクリル酸ブチル/アクリル酸エチル/アクリル酸2−メトキシエチルの共重合を開始した。転化率が96%に到達したところで、トルエン96106.8g、塩化第一銅495.6g、メタクリル酸メチル41887.0gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン86.7gを加えて、第二ブロックとなるメタクリル酸メチルの重合を開始した。転化率が61%に到達したところで、トルエン60620gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが104200、分子量分布Mw/Mnが1.36であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を23wt%になるよう調整し、及びp−トルエンスルホン酸を856.9g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)652.9gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。上記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機に供給し溶媒及び未反応モノマーの蒸発を行うことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケット及びスクリューは熱媒で180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして標記ブロック共重合体のペレットを作成した。このようにして標記ブロック共重合体のペレットを作成した。
【0120】
(製造例6) 3A0T5型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=5/5)の合成
製造例3において、アクリル酸エステルの重合(1段目)を臭化銅4.8g(33ミリモル)、アセトニトリル50mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.4g(6.7ミリモル)、BA89.8g(701ミリモル)、EA88.2g(881ミリモル)、MEA54.7g(420ミリモル)とし、メタクリル酸エステルの重合(2段目)をMMA467.7g(4.672モル)、塩化銅3.3g(33ミリモル)、トルエン500ml、1回に添加するジエチレントリアミンを0.7ml(3.3ミリモル)とした。1段目の重合において、BAの転化率が96%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が97%の時点(反応開始後112分)で2段目の重合を開始し、BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が52%の時点(反応開始後161分)で反応を停止させた。
【0121】
また、銅錯体除去工程において、p−トルエンスルホン酸を5.8g、キョーワード500SHを1.6gとした。
【0122】
それ以外は製造例3と同様に製造した。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが102700、分子量分布Mw/Mnが1.59であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=19/18/11/52(重量%)であった。
【0123】
(製造例7) 3A0T4型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=4/6)の合成
製造例3において、アクリル酸エステルの重合(1段目)を臭化銅4.6g(32ミリモル)、アセトニトリル40mL、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.3g(6.4ミリモル)、BA71.8g(561ミリモル)、EA70.6g(705ミリモル)、MEA43.8g(336ミリモル)とし、メタクリル酸エステルの重合(2段目)をMMA564.5g(5.638モル)、塩化銅3.2g(32ミリモル)、トルエン600ml、1回に添加するジエチレントリアミンを0.7ml(3.2ミリモル)とした。1段目の重合において、BAの転化率が97%、EAの転化率が94%、MEAの転化率が95%の時点(反応開始後125分)で2段目の重合を開始し、BAの転化率が97%、EAの転化率が96%、MEAの転化率が96%、MMAの転化率が51%の時点(反応開始後193分)で反応を停止させた。
【0124】
また、銅錯体除去工程において、p−トルエンスルホン酸を5.5g、キョーワード500SHを1.4gとした。 それ以外は製造例3と同様に製造した。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113200、分子量分布Mw/Mnが1.59であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=15/15/9/61(重量%)であった。
【0125】
<組成物の製造>
(実施例1)
製造例4で製造したブロック共重合体3A0T6 100重量部に、安定剤として0.5重量部のイルガノックス1010を添加し、190℃に設定したラボプラストミル(東洋精機(株)製)を用いて溶融混練し、ブロック状サンプルを得た。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmの物性評価用の成形体と、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の圧縮永久歪み評価用の成形体を得た。これらの成形体について、引張破断強度、引張破断伸び、硬度、圧縮永久歪み、および、耐熱性・耐油性を測定した。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
(実施例2、3)
それぞれ、製造例6,7で製造したブロック共重合体を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0128】
(比較例1、2)
それぞれ、製造例1,3で製造したブロック共重合体を使用したほかは、実施例1と同様にして成形体を作製し、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0129】
本発明の組成物である実施例2は、エラストマーらしい挙動を示しながら、比較例1および2より充分な耐熱性と高い耐油性を有していることがわかる。実施例2,3は、実施例1よりも硬度が高く、プラストマーらしい物性を示し、なおかつ耐油性が優れていることがわかる。比較例1では、硬度が低くエラストマーらしい物性を示すが、耐熱性と耐油性が劣るために、150℃オイル試験で変形する。また、比較例2でも同様に、柔軟性はあるものの、耐熱性と耐油性が劣ることがわかる。
【0130】
【発明の効果】
本発明のブロック共重合体によれば、低温特性を損なうことなく、耐熱性と耐油性を改善することができる。前記ブロック共重合体を含有する本発明の組成物は、熱可塑性エラストマーとして、包装材料、医療用材料、食品用材料、自動車用材料、制振材料、シール材料などのゴム材料として有用である。
Claims (5)
- アクリル系重合体ブロック(A2)が、一般式(1)で表されるランダム共重合体のみからなり、アクリル系重合体ブロック(A2)全体中、アクリル酸エチルが10〜85重量%、アクリル酸ブチルが10〜85重量%、アクリル酸2−メトキシエチルが5〜80重量%である請求項1記載のブロック共重合体。
- ブロック共重合体(A)が、x−y−x型のトリブロック体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のブロック共重合体。
- ブロック共重合体のプレス成型体の引張弾性率が2.0MPa以上であることを特徴とする、請求項1〜3何れかに記載のブロック共重合体。
- 請求項1〜4何れかにに記載のブロック共重合体を含有する組成物。
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