JP2004143340A - 制振材料用組成物および成型品 - Google Patents
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Abstract
【課題】制振性に優れ、かつ制振性を示す温度領域が広く、高温でのへたり(圧縮永久歪み)特性、機械的物性に優れる制振材料を提供する。
【解決手段】メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体と、制振性付与剤からなる制振材料用組成物とすることで、制振性の指標であるtanδのピ−ク値を高め、有用なtanδ値を示す温度領域を広め、高温でのへたり(圧縮永久歪み)特性、機械的物性に優れる。
【選択図】 なし
【解決手段】メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体と、制振性付与剤からなる制振材料用組成物とすることで、制振性の指標であるtanδのピ−ク値を高め、有用なtanδ値を示す温度領域を広め、高温でのへたり(圧縮永久歪み)特性、機械的物性に優れる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な制振材料用樹脂に関する。詳しくは、船舶、車両、自動車部品、OA機器、電気・電子機器、精密機器、建築材料、音響機器などにおいて、制振性および耐熱性が要求される分野に用いられる制振材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記の分野では、従来から、構造部材の振動を防止し、それに伴う騒音を防止する目的で、弾性率と内部損失を高めるために、制振材料を構造部材表面や内部に塗布したり、貼付することが行われてきた。
【0003】
制振材料とは外部から加えられた力学的エネルギ−を内部で減衰しやすい材料のことであり、従来より、ゴム、アスファルト、各種の高分子ラテックスあるいは高分子材料、さらにこれらにグラファイト、カ−ボンブラック、マイカ、タルク等の粉体あるいは繊維を配合した組成物が用いられてきた。特に、比重が軽く成形加工が容易な高分子制振材料には大きな期待と高い関心が寄せられている。
【0004】
減衰性能の目安として、損失係数(以下、tanδと記す)があり、バネ力を表す貯蔵弾性率(以下、G′と記す)と、粘性力を表す損失弾性率(以下、G″と記す)から求めることができ、tanδ=G″/G′の関係がある。一般に、高分子材料の損失係数はガラス転移点において極大を示す。
【0005】
しかしながら、従来の制振性材料の多くは、常温付近では制振性を示していても、制振性を示す温度領域が極めて狭く、高温下での機械的物性が極端に低下するために、使用範囲が限定される欠点を有していた。
【0006】
これを改善するために、特定の組成を持ち、特定のガラス転移温度を有するA−Bジブロック共重合体が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、前記A−Bジブロック共重合体は、制振性を示す温度領域の拡大の効果は有するものの、高温下での機械的物性の低下抑制には未だ充分ではなく、高温下でのへたり(圧縮永久歪み)特性の著しい低下が認められ、最近の機器の高密度化、高出力化による高温下でも使用できる制振材料への要求に応えるものが得られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−287253号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、制振性に優れ、かつ制振性を示す温度領域が広く、耐熱性(高温下での機械的物性、へたり(圧縮永久歪み)特性)に優れる制振性材料を提供することである。
【0009】
【発明が解決しようとする手段】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の繰り返し単位を有するメタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するトリブロック共重合体に、特定の制振性付与剤を特定量配合したすることにより、制振性に優れ、かつ制振性を示す温度領域が広く、耐熱性(高温下での機械的物性、へたり(圧縮永久歪み)特性)に優れる制振性材料できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)を含有するブロック共重合体(A)と、制振性付与剤(K)からなる、制振材料用樹脂組成物(請求項1)、
ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)5〜60重量%とアクリル系重合体ブロック(b)95〜40重量%[(a)と(b)合わせて100重量%]からなるアクリル系ブロック共重合体である、請求項1記載の制振材料用樹脂組成物(請求項2)、
ブロック共重合体(A)が、a−b−aトリブロック共重合体である、請求項1または2に記載の制振性材料用樹脂組成物(請求項3)、
ブロック共重合体(A)中の、メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合してなる重合体および/またはそれから誘導される官能基を有する重合体を含む重合体ブロックであり、かつ、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合してなる重合体ブロックである、請求項1〜3のいずれかに記載の制振性材料用樹脂組成物(請求項4)、
ブロック共重合体(A)中の、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、またはメタクリル酸無水物、およびメタクリル酸アイオノマ−に由来する繰り返し単位からなる群から選ばれた繰り返し単位を少なくとも1つ有する成分(a1)50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のメタアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体に由来する繰り返し単位からなる成分(a2)0〜50重量%とからなる重合体ブロックであり、かつ、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチル、又はアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b1)50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b2)0〜50重量%からなる重合体ブロックである、請求項1〜4のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項5)、
ブロック共重合体(A)が原子移動ラジカル重合により製造される、請求項1〜5のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項6)、
制振性付与剤(K)が、粘着付与剤、フェノ−ル系化合物、可塑剤、高分子可塑剤のいずれか1種もしくは2種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項7)、
アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、制振性付与剤(K)10〜300重量部を配合してなる、請求項1〜7のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項8)および
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して成る、家庭用電気製品および事務用電気製品用途の制振材料用成形品(請求項9)
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
<ブロック共重合体(A)>
本発明に用いる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(a)とアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(b)を、一方は少なくとも1つ、他方は少なくとも2つ含有するブロック共重合体である。前記ブロック共重合体は、線状ブロック共重合体(A1)および分岐状(星状)ブロック共重合体(A2)からなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体である。
【0012】
線状ブロック共重合体(A1)は、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体、(−a−b−)n型のマルチブロック共重合体である。分岐状(星状)ブロック共重合体(A2)は、前記の線状ブロック共重合体(A1)を基本構造とする分岐状(星状)ブロック共重合体である。
【0013】
これらのブロック共重合体の構造は、目的とする制振性、機械物性などの必要特性に応じて使い分けられる。中でも、機械物性、成形性から好ましくはa−b−a型のトリブロック共重合体、(−a−b−)n型のマルチブロック共重合体、または好ましくはこれらの混合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体がより好ましい。
【0014】
ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、30000〜500000が好ましく、更に好ましくは、50000〜400000である。数平均分子量(Mn)が小さいと溶融粘度が低く、また、数平均分子量(Mn)が大きいと溶融粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定される。分子量は、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0015】
前記ブロック共重合体(A)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定がないが、1.8以下であることが好ましい。
【0016】
ブロック共重合体(A)中のメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、ブロック(a)5〜90重量%、ブロック(b)95〜10重量%である。成型時の形状の保持、制振性および機械物性の観点から、組成比の好ましい範囲は、(a)10〜80重量%、(b)90〜20重量%であり、さらに好ましくは、(a)20〜50重量%、(b)80〜50重量%である。(a)の割合が5重量%より少ないと成形時に形状が保持されにくい傾向があり、(b)の割合が10重量%より少ないと制振性が低下する傾向がある。
【0017】
組成物の硬度の観点からは、(a)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、(a)の割合が多いと硬度が高くなる傾向があるため、エラストマ−組成物の必要とされる硬度に応じて設定することができる。また加工の観点からは、(a)の割合が少ないと粘度が低く、また、(a)の割合が多いと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定することができる。
【0018】
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
本発明のメタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなる重合体および/またはそれらから誘導される官能基を有する重合体を含む重合体ブロックである。詳しくは、メタアクリル酸エステル、メタアクリル酸、そのエステル部位が隣接したメタアクリル酸系単量体と無水物を形成したメタアクリル酸誘導体(以下メタアクリル酸無水物と呼称する)、およびメタアクリル酸のアイオノマ−に由来する繰り返し単位からなる群から選ばれた繰り返し単位を少なくとも1つ有する成分(a1)と、これと共重合可能なビニル系単量体に由来する繰り返し単位を有する成分(a2)とからなる重合体ブロックである。その(a1)と(a2)の比率は、好ましくは(a1)50〜100重量%、(a2)0〜50重量%[(a1)と(a2)合わせて100重量%]であり、より好ましくは、(a1)75〜100重量%および(a2)0〜25重量%である。(a1)と(a2)の比率がこの範囲を外れると、凝集力、耐熱性が損なわれるため好ましくない。
【0019】
(a)を構成するメタアクリル系成分(a1)としては、メタアクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、およびメタアクリル酸のアイオノマ−をあげることができる。
【0020】
メタアクリル酸エステルとしては、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチル、メタアクリル酸パ−フルオロメチル、メタアクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0021】
メタアクリル酸無水物とは、そのエステル部位が隣接したメタアクリル酸系単量体と無水物を形成したメタアクリル酸誘導体であり、以下に重合体中でのその2量体の構造を示す。2量体はグルタル酸無水物類似の6員環([化1]参照)、もしくはコハク酸無水物類似の5員環構造([化2]参照)を形成している。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
メタアクリル酸のアイオノマ−としては、メタアクリル酸と各種の金属塩を反応させて得られるものであれば特に制限されない。金属塩としては、例えば、1〜2価の金属イオンの、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩などを挙げることができる。1〜2価の金属イオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの典型金属などのイオンをあげることができる。
【0025】
メタアクリル酸エステルから、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸のアイオノマ−を誘導する方法については後述する。
【0026】
これらは単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。耐熱性が必要な場合はメタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、およびそれらの併用が好ましい。加工性、コストと耐熱性のバランスが必要な場合は、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの併用、メタアクリル酸無水物とメタアクリル酸メチルの併用、メタアクリル酸とメタアクリル酸無水物とメタアクリル酸メチルの3成分の併用が好ましい。またさらなる耐熱性が必要な場合はメタアクリル酸を金属イオンで一部もしくは全部中和させたアイオノマ−が好ましい。
所望の耐熱性、凝集力を持たせるためには、これらのメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸のアイオノマ−に由来する繰り返し単位の比率を適宜調整すればよい。また、メタアクリル酸イソボルニルなどを共重合させることによってもガラス転移点を高くすることができる。
【0027】
(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体(a2)としては、例えば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
【0028】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロエチル、アクリル酸パ−フルオロメチル、アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0029】
芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0030】
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0031】
共役ジエン系化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0032】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パ−フルオロエチレン、パ−フルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0033】
ケイ素含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0034】
不飽和時カルボン酸化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0035】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0036】
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0037】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
これらのアクリル系成分(a1)とビニル系単量体(a2)は、ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(b)との相容性、後述する制振性付与剤(K)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。
【0039】
具体的には、(a)と(b)が完全に相溶しないこと、(a)と(K)が完全に相溶しないことが、組成物の耐熱性の観点から好ましい。完全に相溶しているかどうかは、動的粘弾性のtanδピ−ク、もしくは示差走査熱量測定(DSC)のTgによって判定することができ、非相溶の場合では(a)(b)成分に由来する2つのピ−クが独立に存在するのに対して、相溶が進行するに従って両ピ−クが接近し、なだらかになる。
【0040】
また、(a)のガラス転移温度は、組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。(a)のガラス転移温度が組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる傾向がある。
【0041】
<アクリル系重合体ブロック(b)>
前記ブロック共重合体(A)を構成するアクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。詳しくは、アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位からなる成分(b1)およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b2)重合体ブロックである。その(b1)と(b2)の比率は、好ましくは(b1)50〜100重量%、(b2)0〜50重量%[(b1)と(b2)合わせて100重量%]であり、より好ましくは(b1)75〜100重量%、(b2)0〜25重量%である。(b1)と(b2)の比率がこの範囲を外れると、制振性の発現や耐候性が損なわれるため好ましくない。
【0042】
(b1)を構成するアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロエチル、アクリル酸パ−フルオロメチル、アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。
【0043】
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体の選定の視点については後述する。
【0044】
ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体(b2)としては、例えば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0045】
メタアクリル酸エステルとしては、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチル、メタアクリル酸パ−フルオロメチル、メタアクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0046】
芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0047】
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0048】
共役ジエン系化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0049】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パ−フルオロエチレン、パ−フルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0050】
ケイ素含有不飽和化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0051】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0052】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0053】
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0054】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらの(b1)および(b2)は、ブロック(b)に要求されるガラス転移温度、メタクリル系重合体ブロック(a)との相容性、後述する制振性付与剤(K)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。具体的には、(b)と(a)は完全に相溶しないことが、組成物の耐熱性の観点から好ましい。完全に相溶しているかどうかは、動的粘弾性のtanδピ−ク、もしくは示差走査熱量測定(DSC)のTgによって判定することができる。
【0056】
制振性の発現(tanδのピ−ク値の増大)には、ブロック(b)のガラス転移点を使用温度付近に存在させることが重要であるが、さらに、広い温度領域で制振性を付与したい場合には、コスト、機械物性などとのバランスをとる為に制振性付与剤(K)の選定が重要となる。制振性付与剤(K)との組合せを考えた場合、(b1)としては、ガラス転移温度、極性、コストの観点から、コストとガラス転移点とのバランスを重視する場合には、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。これを基準として、(b1)としては、ガラス転移点が低いことが好ましい場合にはアクリル酸−2−エチルヘキシル、ガラス転移点が高いことが好ましい場合にはアクリル酸−n−エチル、さらにガラス転移点が高いことが好ましい場合にはアクリル酸−n−メチルが好ましい。それらではバランスがとりにくい場合には、それらの共重合体、例えばアクリル酸−n−エチルとアクリル酸−n−ブチルとアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせ、もしくはアクリル酸−n−ブチルとアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせが好ましい。
【0057】
<ブロック共重合体(A)を製造する方法>
ブロック共重合体(A)を製造する方法としては特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
【0058】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグル−プで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などが挙げられる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0059】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマ−と開始剤の仕込み比によって自由にコントロ−ルすることができる。
【0060】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。
【0061】
一官能性化合物としては、例えば、式:
C6H5−CH2X、
C6H5−C(H)(X)−CH3、
C6H5−C(X)(CH3)2、
R1−C(H)(X)−COOR2、
R1−C(CH3)(X)−COOR2、
R1−C(H)(X)−CO−R2、
R1−C(CH3)(X)−CO−R2、
R1−C6H4−SO2X、
(式中、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0062】
二官能性化合物としては、例えば、式:
X−CH2−C6H4−CH2−X、
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X、
X−CH(COOR3)−(CH2)n−CH(COOR3)−X、
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2)n−C(CH3)(COOR3)−X、X−CH(COR3)−(CH2)n−CH(COR3)−X、
X−C(CH3)(COR3)−(CH2)n−C(CH3)(COR3)−X、
X−CH2−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2−X、
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X、
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X、
X−CH2−CO−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X、
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X、
X−SO2−C6H4−SO2−X、
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリ−ル基、または炭素数7〜20アラルキル基を表す。C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。C6H5はフェニル基を表す。nは0〜20の整数を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0063】
多官能性化合物としては、例えば、式:
C6H3−(CH2−X)3、
C6H3−(CH(CH3)−X)3、
C6H3−(C(CH3)2−X)3、
C6H3−(OCO−CH2−X)3、
C6H3−(OCO−CH(CH3)−X)3、
C6H3−(OCO−C(CH3)2−X)3、
C6H3−(SO2−X)3、
(式中、C6H3は三置換フェニル基(置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい)を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0064】
これら開始剤のうち、本発明で用いられる開始剤は、トリブロック共重合体を得ることができる二官能性化合物が好ましい。
【0065】
また、重合を開始するもの以外に官能基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0066】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0067】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体がより好ましい。
【0068】
1価の銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0069】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、t−ブタノ−ルなどのアルコ−ル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−トなどのカ−ボネ−ト系溶媒などがあげられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。また、前記重合は、室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、50〜150℃の範囲である。
【0070】
前記重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、予め合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0071】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有する有機酸を添加して金属錯体と金属塩を生成させ、生成した金属錯体を濾過等により、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロ−ス陰イオン交換体吸着処理により溶液中に残存する酸等の不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体樹脂溶液を得ることができる。
【0072】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマ−を除去して、ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリュ−を備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、前記蒸発方式の中でも押出しスクリュ−を備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
【0073】
さらに、重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができる。このようなブロック共重合体を得る方法としては、前記の重合において、メタクリル酸等のカルボン酸型単量体を共重合する方法、容易にカルボン酸に変換可能な単量体を前記重合方法にて共重合し、重合の後に、カルボン酸に変換する方法などが挙げられる。
【0074】
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、例えば、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物などのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、例えば特開平10−298248、および特開2001−234146などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。くわしくは、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有するブロック共重合体を溶剤で希釈し、酸触媒の存在下、加熱する方法が好ましく用いられる。その際、水の存在しない反応系で酸分解反応を、水を添加することで加水分解反応をおこなうことができる。これらは、反応の簡便さや副生成物などを考慮して選択することができる。
【0075】
この反応に用いられる溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、エ−テル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコ−ル系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カ−ボネ−ト系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。エ−テル系溶媒としては、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどをあげることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどをあげることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどをあげることができる。アルコ−ル系溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、t−ブタノ−ルなどをあげることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどをあげることができる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどをあげることができる。
カ−ボネ−ト系溶媒としては、エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−トなどをあげることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
また、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸、およびスルホン酸型などのH+型イオン交換樹脂交換樹脂などを用いることができる。加える酸触媒の量は、ブロック共重合体100重量部あたり、有機酸および無機酸を用いる場合は、0.1〜20重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。H+型イオン交換樹脂交換樹脂を用いる場合は、0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0077】
酸触媒の存在下での加熱温度は、50℃以上が好ましく、希釈溶剤の還流温度に応じて設定することができるが、あまり高温になるとカルボキシル基の前駆体である部位以外の(メタ)アクリル酸エステル部位が分解するおそれがあるため、160℃以下とするのが好ましく、140℃以下がより好ましく、80〜140℃の範囲がさらに好ましい。
【0078】
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコ−ル反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、前記のように加熱により脱アルコ−ル反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
【0079】
<制振性付与剤(K)>
アクリル系共重合体(A)は単量体とそれらを共重合させる組成の選択によりガラス転移点の制御がある程度可能であるが、特定の制振性付与剤(K)を添加することで優れた制振性を有し、かつ、制振性を示す温度領域が拡大される。
【0080】
本発明で使用する特定の制振性付与剤とは粘着付与剤、フェノ−ル系化合物、可塑剤、高分子可塑剤である。
【0081】
本発明の制振性付与剤(K)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、10〜300部であり、好ましくは10〜250部であり、より好ましくは20〜200部である。制振性付与剤(K)の配合量が10重量部よりも少ない場合、制振性の付与効果が少ないため好ましくなく、300重量部を超えると高温での形状保持が困難であるため好ましくない。
【0082】
制振性の発現(tanδのピ−ク値の増大)と制振性を示す温度領域の拡大には、ブロック(b)の単量体と制振性付与剤(K)の選定が重要である。すなわち、(b)のガラス転移温度が制振材料の使用温度よりも低い場合には、ガラス転移点を高くシフトさせる制振性付与剤(K)を、逆に(b)のガラス転移温度が制振材料の使用温度よりも高い場合には、ガラス転移点を低くシフトさせる制振性付与剤(K)を選定することがポイントとなる。
【0083】
粘着付与剤は、一般に室温より高いガラス転移点を有するものが多い。すなわち、ブロック(b)と相溶性が良い粘着付与剤を選択することによりガラス転移点を高くする方向に作用し、制振性を示す温度領域を高温側に移動し、拡大することができる。粘着付与剤の例としては、ロジン、変性ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、テルペンフェノ−ル樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、シクロペンタジエン樹脂、フェノ−ル系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、ス−パ−エステル(荒川化学製)、PICCOTAC(HERCULES社製)、アルコン(荒川化学製)などが挙げられる。これらの粘着付与剤は分子量が100〜3000程度の範囲にあり、可塑化効果を示す。従来であれば軽量物を対象にした制振材料は低硬度化のために可塑剤や軟化剤を多量に添加する必要があったが、前記のようなオリゴマ−の範疇に入る樹脂状物を使用すれば高温下での圧縮永久歪特性の劣化やブリ−ドの問題なく低硬度化を達成できる。
【0084】
フェノ−ル系化合物はガラス転移点を高くする方向に作用し、制振性を示す温度領域を高温側に移動し、拡大することができる。フェノ−ル系化合物としては、多官能フェノ−ル系化合物、ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物が好ましく、多官能ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物がさらに好ましい。例えば、アデカスタブAO−60、AO−80(旭電化製)、スミライザ−GM、GA−80、GS(住友化学製)、NaugardXL−1(Uniroyal製)、Irganox1520(チガバイギ−製)などがあげられる。
【0085】
可塑剤および高分子可塑剤は、ブロック(b)のガラス転移点を低くする方向に作用し、制振性を示す温度領域を低温側に移動し、拡大することができる。可塑剤および高分子可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレ−トのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコ−ル等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノ−ル酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコ−ルおよび一価アルコ−ルなどとのポリマ−であるポリエステル系可塑剤、グルコ−ル誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエ−テル系重合型可塑剤、エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト等のカ−ボネ−ト誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。市販されている可塑剤としては、チオコ−ルTP(モ−トン社製)、アデカサイザ−O−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエ−テル系重合型可塑剤などが好適に使用される。
【0086】
高分子可塑剤としてはそのほかに、アクリル系オリゴマ−、ポリプロピレングリコ−ル系オリゴマ−、ポリテトラヒドロフラン系オリゴマ−、ポリイソブチレン系オリゴマ−などがあげられる。
【0087】
<熱可塑性樹脂(B)>
本発明の制振材料用樹脂組成物の機械強度、硬度、耐熱性等の性質を改善する目的で、熱可塑性樹脂(B)を含有してもよい。
【0088】
熱可塑性樹脂(B)としては次のものが例示できる。例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%とこれらのビニル系単量体と共重合可能な例えばエチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体および/またはブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体など0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエ−テル樹脂、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエ−テル樹脂の混合物、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂とポリエステル樹脂の混合物、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエ−テルイミド樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、ポリエ−テルエ−テルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリアリレ−ト樹脂などをあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。本発明において、熱可塑性樹脂はこれらに限定されることがなく、種々の熱可塑性樹脂を広く用いることができる。
【0089】
これらのうち、本発明で使用するブロック共重合体(A)との相溶性、耐衝撃性、機械特性に優れる点で、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレ−ト−スチレン共重合体、ポリカ−ボネ−ト、ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる樹脂が好ましく、さらに、耐油性、機械的特性に優れるという点でポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂がより好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレ−トなどが挙げられ、またポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン12など挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明の組成物に熱可塑性樹脂(B)を含有させる方法としては特に制限されないが、以下の3つを例示できる。
【0091】
第一に、ブロック共重合体(A)と制振性付与剤(K)に熱可塑性樹脂(B)を添加し、ブロック共重合体(A)の機械特性、硬度等の物性を改善する方法である。一般的に、制振性を保持したまま、弾性率、モジュラス、硬度を大きくすることができる。各成分の比重、粘度、極性などにも左右されるが、(A)および(K)を多量成分、(B)を少量成分とすると、(B)が海島構造の島となり目的を達成しやすい。
【0092】
第二に、熱可塑性樹脂(B)にブロック共重合体(A)と制振性付与剤(K)を軟質化剤として添加し、熱可塑性樹脂(B)の機械強度は維持しつつ、硬度を改善する方法である。一般的に、熱可塑性樹脂(B)の性質を有しながら、制振性能を付与することができる。各成分の比重、粘度、極性などにも左右されるが、(A)および(K)を少量成分、(B)を多量成分とすると、(B)が海島構造の海となり目的を達成しやすい。
【0093】
第三に、ブロック共重合体(A)、制振性付与剤(K)および熱可塑性樹脂(B)を単純に混合するのではなく、これら成分を混練中に動的に処理(動的架橋)して組成物を得、組成物の高温における物性、特に圧縮永久歪み特性を改善する方法である。この場合には、(B)が海島構造の海、(A)および(K)が島となる場合が、前記物性の付与の観点から好ましい。
【0094】
動的架橋とは、Uniroyal社のW.M.Fischerらや、Monsanto社のA.Y.Coranらにより開発された手法であり、熱可塑性樹脂のマトリックス中にゴムをブレンドし、架橋剤とともに架橋剤が架橋する温度以上で混練しながらゴムを高度に架橋させ、しかもそのゴムを微細に分散させるプロセスのことである。
【0095】
前記動的架橋により得られた組成物は、連続相となる熱可塑性樹脂に不連続相となる架橋ゴム相が微細に分散した状態となるため架橋ゴムと同様の物性を示し、かつ成形加工に際しては熱可塑性樹脂に準じた加工が可能となる。
【0096】
本発明においては、動的架橋の方法については制限はないが、エステル交換を利用した方法や分子内の不飽和二重結合を利用した方法が適用できる。例えば、エステル交換反応を利用した動的架橋を行うことができる。すなわち、水酸基を有するブロック共重合体(A)および前記熱可塑性樹脂(B)を配合し、エステル交換触媒を使用し、動的に熱処理することでブロック共重合体(A)を架橋することができる。また、水酸基を有さないブロック共重合体(A)を用いる場合は、2価以上のヒドロキシル基含有化合物を架橋剤として用いることで、動的架橋を行うことができ、ブロック共重合体(A)が架橋した組成物を得ることができる。
【0097】
エステル交換反応に適するブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、エステル交換反応の反応性等の点で、アクリル酸−t−ブチル、水酸基を有するアクリル酸−2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0098】
エステル交換触媒としては、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、不飽和ポリエステルなどのポリエステルを製造する場合に当業界で通常用いられる重合触媒やエステル交換触媒を用いることができる。これらの触媒としては、特に限定されるものではないが、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ度類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、NaO−Ar−ONa(Arはアリ−ル基)などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリ−ロキシド類;酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニルなどのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリ−ルケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシドなどのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレ−ト、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基またはアリ−ルオキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛及び有機鉛のアルコキシドまたはアリ−ルオキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウムの化合物類などの触媒を挙げることができる。これらの触媒は単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、反応性の点から、チタン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物が好ましく、反応性の制御等の点で、チタン化合物がよりこの好ましい。
【0099】
2価以上のヒドロキシル基含有化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、トリエチレングリコ−ル等の2価のヒドロキシル基含有化合物、1,2,6−トリヘキサントリオ−ル、グリセリン、等の三価のヒドロキシル基含有化合物、ペンタエリスト−ル、ジグリセリン等の四価のヒドロキシル基含有化合物、ソルビト−ル、ポリグリセリン、ポリビニルアルコ−ル等の多価のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。これらは、単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。用いるヒドロキシル基の価数は、得られる組成物の硬度と機械特性のバランスの観点から、適宜選択すればよい。
【0100】
本発明の組成物の動的架橋による製造においては、エステル交換触媒と併せてリン化合物を用いることが、得られる組成物の耐熱性がより向上し、さらにはエステル交換反応に用いた触媒を不活性化し、得られる熱可塑性エラストマ−の圧縮永久歪みを良好にするために好ましい。このようなリン化合物としては特に限定されないが、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステル及び亜リン酸エステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのリン系化合物のうち、得られる熱可塑性エラストマ−の耐熱性の点で、亜リン酸エステルが好ましい。
【0101】
リン化合物はエステル交換反応に用いた触媒を不活性にする目的で添加し、任意の段階で添加することができるが、エステル交換反応が実質的に完結した段階か、それより以降の任意の時期に添加することが好ましい。
【0102】
分子内の不飽和二重結合を利用する動的架橋の方法では、分子内に不飽和二重結合を有するブロック共重合体(A)および前記熱可塑性樹脂(B)を配合し、一般的なゴム架橋剤を使用し、動的に熱処理することでブロック共重合体(A)を架橋することができる。この場合、ブロック共重合体(A)は主鎖、または側鎖に不飽和二重結合を有している必要がある。ブロック共重合体(A)への導入は特に限定されないが、重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも一つのアルケニル基を併せ持つ化合物をブロック共重合体(A)を重合する際に共重合することや、ブロック共重合体(A)を不飽和二重結合を有する化合物へ変性することにより行うことができる。
【0103】
重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも一つのアルケニル基を併せ持つ化合物としては特に制限されないが、例えば下記一般式(1)や一般式(2)に示される化合物が例示される。
H2C=C(R1)−R2−R3−C(R1)=CH2 (1)
(式中、R1は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい、R2は−C(O)O−(エステル基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R3は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエ−テル結合を含んでいてもよい)で示される化合物が挙げられる。一般式1におけるR3としては、メチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;o−,m−,p−フェニレン基;ベンジル基等のアラルキル基;−CH2CH2−O−CH2−や−O−CH2−等のエ−テル結合を含むアルキレン基等が例示される。
H2C=C(R4)−R5−C(R4)=CH2 (2)
(式中、R4は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい、R5は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエ−テル結合を含んでいてもよい)
式1や式2の化合物の中でも、入手や重合の制御が容易であるという点から、
H2C=C(H)C(O)O(CH2)n−CH=CH2、H2C=C(CH3)C(O)O(CH2)n−CH=CH2(前記の各式において、nは0〜20の整数)H2C=C(H)C(O)O(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2、H2C=C(CH3)C(O)O(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2(前記の各式において、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o−,m−,p−ジビニルベンゼン、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−CH2−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−CH2CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−OCH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−OCH2−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−OCH2CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−CH2C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−CH2CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−OCH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−OCH2−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−OCH2CH2CH=CH2(ただし、前記式中、C2H4はフェニレン基を示す。)が好ましく、H2C=C(H)C(O)O(CH2)n−CH=CH2、H2C=C(CH3)C(O)O(CH2)n−CH=CH2(前記の各式において、nは0〜20の整数)がより好ましい。
【0104】
不飽和二重結合を有する化合物によりブロック共重合体(A)を変性する方法としては特に限定されないが、例えば、アリルアルコ−ル等の不飽和二重結合とヒドロキシル基を分子内に有する化合物を、ブロック共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換反応により導入することで行うことができる。
【0105】
不飽和二重結合はメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の両方に含まれていても良いし、どちらか一方の重合体ブロックに含まれていても良いが、(a)または(b)のどちらか一方に含まれる方が、熱可塑性樹脂(B)との相溶性や、得られる組成物の物性等の点で好ましい。
【0106】
架橋剤としては、一般的なゴム架橋剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系架橋剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノ−ルジサルファイド等を用いればよい。また、有機過酸化物系架橋剤としては、ベンゾイルパ−オキサイド、t−ブチルヒドロパ−オキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパ−オキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パ−オキシルベンゾエ−ト)等を用いればよい。
【0107】
有機過酸化物系架橋剤を使用する場合には、必要に応じて、ジビニルベンゼンのような多官能性ビニルモノマ−、又はエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−トのような多官能性メタクリレ−トモノマ−を架橋助剤として添加しても良い。このような架橋助剤により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0108】
また、必要に応じて、架橋促進剤を添加してもよい。架橋促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾ−ル系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な架橋促進剤を用いればよい。架橋促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等を用いればよい。
【0109】
本発明の組成物の動的架橋による製造において、必要な架橋剤等は、動的な架橋条件(温度、時間)や、製造される組成物の物性に応じて適宜選択すればよいが、製造される組成物に耐熱性が要求される場合等では有機過酸化物系架橋剤を用いることが好ましい。
【0110】
前記動的架橋プロセスにおいて、制振性付与剤(K)を添加する時期は特に制限されず、所望の制振性能、物性および相構造が得られるように選択すればよい。例えば、(A)と(K)を予め混合しておいて(B)中で動的架橋させる場合、(A)を(B)中で動的架橋させている途中で(K)を添加する場合、(A)を(B)中で動的架橋させた後に(K)を添加する場合が挙げられる。ただし、(K)が動的架橋の反応を阻害、あるいは望ましくない副反応を起こす性質を有する場合には、(A)を(B)中で動的架橋させた後に(K)を添加することが望ましい。
【0111】
<添加剤>
また、必要に応じて、次のような添加剤を配合してもよい。
【0112】
添加剤としては、制振性付与剤(K)および熱可塑性樹脂(B)以外の他の重合体、安定剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0113】
前記の他の重合体としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコ−ンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマ−(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマ−(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマ−(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ−(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマ−、塩ビ系熱可塑性エラストマ−(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマ−等。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
前記安定剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:トリフェニルホスファイト、ヒンダ−ドフェノ−ル、ジブチル錫マレエ−トなど。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
前記柔軟性付与剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分など。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パ−ム油、やし油、落花生油、パインオイル、ト−ル油等が挙げられる。以上の柔軟性付与剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
前記滑剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
前記難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:トリフェニルホスフェ−ト、トリクレジルホスフェ−ト、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエ−テル、三酸化アンチモンなど。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
前記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
前記の充填剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:無定形フィラ−、板状フィラ−、針状フィラ−、球状フィラ−、機能性フィラ−、繊維状フィラ−、カ−ボンブラック、金属粉末などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
これらの例をあげるなら、無定形フィラ−として、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレ−、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムであり、板状フィラ−として、タルク、マイカ、ガラスフレ−ク、合成ハイドロタルサイトであり、針状フィラ−として、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムであり、球状フィラ−として、ガラスビ−ズ、シリカビ−ズ、ガラス(シリカ)バル−ンであり、機能性フィラ−として金属系導電性フィラ−、非金属系導電性フィラ−、カ−ボン系導電性フィラ−、磁性フィラ−、圧電、焦電フィラ−、摺動性フィラ−であり、また、繊維状フィラ−としてガラス繊維、金属繊維、アスベスト、ミルドファイバ−などの有機、無機、金属の各種ファイバ−である。
【0121】
これらの材料の配合・混練方法についても特に制限はない。例えば、バッチ式混練装置としてはミキシングロ−ル、バンバリ−ミキサ−、加圧ニ−ダ−、高剪断型ミキサ−が使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するブロック共重合体(A)の溶融温度などに応じて調整するのがよく、例えば、130〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
【0122】
組成物の成形方法についても特に制限はない。例えば、前記組成物を、押出成形、圧縮成形、ブロ−成形、カレンダ−成形、真空成形、射出成形などの任意の成形加工法によって成形加工することができるが、成形加工の簡便性などの点から押出成形、射出成形法により成形するのが好ましく、均一な厚みの成型品を得ることができる。
【0123】
本発明の制振材は幅広い分野における機器の制振材料として広く使用することが可能である。すなわち、自動車、OA機器、電気・電子機器、精密機器、医療、スポ−ツ、建築、船舶、鉄道、産業機械、航空宇宙分野等である。
【0124】
本発明の制振材料を使用する様態についても特に制限されないが、請求項7に示す成型品としては、例えば、単体で成型されたシ−ト、鋼板と組み合わせた拘束型制振鋼板および非拘束型制振鋼板、各種のマウント、制振塗料としての塗布物などがあげられる。制振鋼板における制振材料の厚み、塗布方法、鋼板の種類および厚み、制振鋼板の形状は特に制限されない。マウントの種類については特に制限されず、従来からゴムを制振材料として使用する際に用いられている各種マウント、吊り下げ型マウント、ウルトラブッシュ、ストッパ−、ステッピングモ−タ−マウントなどがあげられる。塗料として用いる際の溶剤についても特に制限されず、また、無溶剤で直接塗布もしくはホットメルト塗布としてもかまわない。
【0125】
これらの制振部材の適用部位についても特に制限されないが、例えば、自動車においてはオイルパン、フロントカバ−、ロッカ−カバ−などのエンジンまわり、ダッシュ、フロア、ドア、ル−フ・パネル、ホイルハウスなどの車体、トランスミッション、パ−キングブレ−キカバ−、シ−トバックなどのその他部位があげられる。事務機器においては、複写機、電算機、プリンタ、レジスタ、キャビネットなどがあげられる。家電機器においては、食器洗い機、乾燥機ドラム、洗濯機、ファンヒ−タ−、ミシン、自動販売機、スピ−カ−フレ−ム、BSアンテナ、VTRカバ−などがあげられる。建築においては、ル−フ、フロア−、シャッタ−、カ−テンレ−ル、ダクト、階段、ドア−などがあげられる。産業機械においては、シュ−タ−、エレベ−タ−、エスカレ−タ−、コンベア、トラクタ、ブルド−ザ−、発電機、コンプレッサ−、コンテナ、ホッパ−、防音ボックス、草刈り機のモ−タ−カバ−などがあげられる。鉄道においては、車両のル−フ、側板、ドア−、アンダ−フロア−、各種機器カバ−、そして橋梁などがあげられる。その他、船舶、航空機、ロケット、宇宙構造物などがあげられる。
【0126】
以上、本発明を実施した態様について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではなく様々な態様で実施しうる。
【0127】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
なお、以下において、EA、BA、MEA、MMA、TBMAは、それぞれ、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸−tert−ブチルを意味する。
【0129】
<試験方法>
(引張特性)
本実施例に示す試料の破断強度(MPa)はJIS K 7113にに準拠し、島津製作所製オ−トグラフAG−10TB形を用いて測定した。測定はn=3にて行い、試験片が破断したときの強度(MPa)と伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行った。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃および相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
【0130】
(硬度)
本実施例に示す組成物の硬度は、JIS K 6253に準拠し、23℃における硬度(直後、JIS A)を測定した。
【0131】
(圧縮永久歪み)
本実施例に示す試料の圧縮永久歪は、JIS K 6301に準拠し、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で70℃で22時間保持し、室温で30分放置した後、成形体の厚みを測定し、歪みの残留度を計算した。すなわち圧縮永久歪0%で歪みが全部回復し、圧縮永久歪100%で歪みが全く回復しないことに相当する。
【0132】
(動的粘弾性)
本実施例に示す動的粘弾性のデ−タは、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティ−計測制御(株)製)により、測定条件を、下限弾性率103Pa、下限動ちから0.0049N、昇温速度4℃/min、デ−タ取り込み間隔1℃、周波数0.5Hz、歪み率0.05%として、−50〜150℃の範囲でtanδの温度依存性を測定した。
【0133】
(重合転化率の測定)
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EA、MEA、MMAおよびTBMAの重合転化率を決定した。
【0134】
<共重合体の製造>
(製造例1) MMA−(BA−EA−MEA)−MMA型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=7/3)の合成(以下、M3AM73と略称する)
50L反応機に触媒である臭化第一銅123.10gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル627.44gおよびBA1072.8gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、二官能性開始剤である2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル61.79gをBA2160.7g、EA3175.3g、MEA1970.0gおよび酢酸ブチル158.76gに溶解させた溶液、並びにアセトニトリル784.30gを仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。触媒活性化剤であるペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第一ブロックとなるBA/EA/MEAの共重合を開始した。3つの平均転化率が96%に到達したところで、トルエン14948g、塩化第一銅84.95g、MMA5385.5gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第二ブロックとなるMMAの重合を開始した。MMAの転化率が58%に到達したところで、トルエン8660gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが111800、分子量分布Mw/Mnが1.48であった。また、NMRによる組成分析を行ったところ、MMA/BA/EA/MEA=28/28/27/17(重量%)であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を14.6wt%とし、さらにp−トルエンスルホン酸を196g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後、溶液を払い出し固液分離を行って固形分を除去した。
このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョ−ワ−ド500SH(協和化学株式会社製)150gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後、溶液を払い出し固液分離を行って吸着剤を除去した。溶液から溶媒を揮発させ、目的とするブロック共重合体を得た。
【0135】
(製造例2) M3AM型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=6/4)の合成(以下、M3AM64と略称する)
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅14.4g(100ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル7.2g(20ミリモル)、BA323.4g(2.522モル)、EA317.5g(3.171モル)、MEA197.0g(1.513モル)、酢酸ブチル18mLを加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン2.1ml(10ミリモル)を加えて重合を開始した。BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点で、MMA837.7g(8.410モル)、塩化銅9.9g(100ミリモル)、ジエチレントリアミン2.1ml(10ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)1781mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が60%の時点で、トルエン1000mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。p−トルエンスルホン酸を22.9g加え、室温で3時間撹拌して、溶液が無色透明になっていることを確認した。
その後、溶液を払い出し固液分離を行って固形分を除去した。この溶液に対し、キョ−ワ−ド500SH12.8gを加え、室温で3時間撹拌した。溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。溶液から溶媒を揮発させ、目的とするブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113600、分子量分布Mw/Mnが1.54であった。また、NMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=23/24/15/38(重量%)であった。
【0136】
(製造例3) カルボキシル基含有M3AM64ブロック共重合体の合成(以下、COOH−M3AM64と略称する)
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.89g(16.4ミリモル)、BA362ml(2.52モル)、EA344ml(3.17モル)、MEA195ml(1.51モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点でTBMA106ml(0.66モル)、MMA280ml(2.62モル)を添加した。TBMAの転化率が64%、MMAの転化率が59%の時点で反応を終了させた。反応溶液をトルエン2.0Lで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物7.16gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いた後、ポリマ−溶液に吸着剤キョ−ワ−ド500SH(協和化学製)を4.50g加えて室温で更に3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマ−を除き、(MMA−TBMA)−(BA−EA−MEA)−(MMA−TBMA)型ブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが111000、分子量分布Mw/Mnが1.47であった。
【0137】
さらに、得られたブロック共重合体45gと、Irganox1010(チバガイギ−製)0.2gを設定温度240℃、回転数100回/分で20分間プラストミルで混練し、酸無水物型ブロック共重合体を得た。t−ブチルエステル部位の無水カルボン酸への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm−1付近に酸無水物に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C−NMRでは変換後にt−ブチル基のメチレン炭素由来の82ppmシグナルと、メチル炭素由来の28ppmシグナルが消失することから確認できた。さらに、得られたブロック共重合体20gと、精製水40mLをオ−トクレ−ブに投入し、200℃の油浴で2時間加熱し、酸無水物基をカルボキシル基に変換した。反応終了後、過剰の水を除き、80℃で真空乾燥させて目的のCOOH−M3AMを得た。カルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、1800cm−1付近に酸無水物に由来する吸収スペクトルが変換後に消失することから確認できた。
【0138】
<組成物の製造>
(実施例1〜4)
製造例1〜3で製造したブロック共重合体および制振性付与剤を表1に示したように配合し、実施例1〜3では170℃、実施例4では200℃に設定したラボプラストミル50C−150(東洋精機株式会社製)を用いて溶融混練した。
得られたサンプルをそれぞれ、プラストミルでの設定温度と同じ温度で熱プレス成形し、厚さ2mmのシ−ト状成型体、および直径30mm×厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。なお、使用した制振性付与剤は、フェノ−ル系化合物である旭電化製AO−80および粘着付与剤である荒川化学製ス−パ−エステルA100である。これらの成形体について、引張破断強度、硬度および耐熱性(圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
(比較例1〜3)
制振性付与剤を加えないこと以外は実施例1〜4と同様にして、サンプルを作成して評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
【発明の効果】
本発明の組成物である実施例に示すとおり、本発明で得られた制振性組成物は、制振性の指標であるtanδのピ−ク値が高く、そのピ−クを示す温度領域を制御可能である。
【0142】
実施例1においては、比較例1に比べて、tanδのピ−ク値が2倍程度と大きくなり、tanδのピ−クを示す温度が高温側にシフトしていることから、制振性が増大し、かつ適用できる温度を制御していることが判る。さらに、実施例2から明らかなように、カルボキシル基を導入することにより、tanδのピ−ク値がさらに大きくなり、制振性が増大される。
【0143】
実施例3および4においては、制振性付与剤の配合量を加減することで、tanδのピ−クを示す温度を制御可能であることと、幅広い温度領域にわたって制振性(tanδが0.5以上となる)が示すことが判る。具体的には、tanδが0.5以上となる温度領域は、実施例3において−13℃〜97℃、また、実施例4において−6℃以上であるのに対して、比較例2において−23℃〜26℃となることから、実施例の優位性が示される。
【0144】
また、圧縮永久歪みの増大が抑えられていることが判る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な制振材料用樹脂に関する。詳しくは、船舶、車両、自動車部品、OA機器、電気・電子機器、精密機器、建築材料、音響機器などにおいて、制振性および耐熱性が要求される分野に用いられる制振材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
前記の分野では、従来から、構造部材の振動を防止し、それに伴う騒音を防止する目的で、弾性率と内部損失を高めるために、制振材料を構造部材表面や内部に塗布したり、貼付することが行われてきた。
【0003】
制振材料とは外部から加えられた力学的エネルギ−を内部で減衰しやすい材料のことであり、従来より、ゴム、アスファルト、各種の高分子ラテックスあるいは高分子材料、さらにこれらにグラファイト、カ−ボンブラック、マイカ、タルク等の粉体あるいは繊維を配合した組成物が用いられてきた。特に、比重が軽く成形加工が容易な高分子制振材料には大きな期待と高い関心が寄せられている。
【0004】
減衰性能の目安として、損失係数(以下、tanδと記す)があり、バネ力を表す貯蔵弾性率(以下、G′と記す)と、粘性力を表す損失弾性率(以下、G″と記す)から求めることができ、tanδ=G″/G′の関係がある。一般に、高分子材料の損失係数はガラス転移点において極大を示す。
【0005】
しかしながら、従来の制振性材料の多くは、常温付近では制振性を示していても、制振性を示す温度領域が極めて狭く、高温下での機械的物性が極端に低下するために、使用範囲が限定される欠点を有していた。
【0006】
これを改善するために、特定の組成を持ち、特定のガラス転移温度を有するA−Bジブロック共重合体が提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、前記A−Bジブロック共重合体は、制振性を示す温度領域の拡大の効果は有するものの、高温下での機械的物性の低下抑制には未だ充分ではなく、高温下でのへたり(圧縮永久歪み)特性の著しい低下が認められ、最近の機器の高密度化、高出力化による高温下でも使用できる制振材料への要求に応えるものが得られていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−287253号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、制振性に優れ、かつ制振性を示す温度領域が広く、耐熱性(高温下での機械的物性、へたり(圧縮永久歪み)特性)に優れる制振性材料を提供することである。
【0009】
【発明が解決しようとする手段】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、特定の繰り返し単位を有するメタクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するトリブロック共重合体に、特定の制振性付与剤を特定量配合したすることにより、制振性に優れ、かつ制振性を示す温度領域が広く、耐熱性(高温下での機械的物性、へたり(圧縮永久歪み)特性)に優れる制振性材料できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)を含有するブロック共重合体(A)と、制振性付与剤(K)からなる、制振材料用樹脂組成物(請求項1)、
ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)5〜60重量%とアクリル系重合体ブロック(b)95〜40重量%[(a)と(b)合わせて100重量%]からなるアクリル系ブロック共重合体である、請求項1記載の制振材料用樹脂組成物(請求項2)、
ブロック共重合体(A)が、a−b−aトリブロック共重合体である、請求項1または2に記載の制振性材料用樹脂組成物(請求項3)、
ブロック共重合体(A)中の、メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合してなる重合体および/またはそれから誘導される官能基を有する重合体を含む重合体ブロックであり、かつ、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合してなる重合体ブロックである、請求項1〜3のいずれかに記載の制振性材料用樹脂組成物(請求項4)、
ブロック共重合体(A)中の、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、またはメタクリル酸無水物、およびメタクリル酸アイオノマ−に由来する繰り返し単位からなる群から選ばれた繰り返し単位を少なくとも1つ有する成分(a1)50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のメタアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体に由来する繰り返し単位からなる成分(a2)0〜50重量%とからなる重合体ブロックであり、かつ、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチル、又はアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b1)50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b2)0〜50重量%からなる重合体ブロックである、請求項1〜4のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項5)、
ブロック共重合体(A)が原子移動ラジカル重合により製造される、請求項1〜5のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項6)、
制振性付与剤(K)が、粘着付与剤、フェノ−ル系化合物、可塑剤、高分子可塑剤のいずれか1種もしくは2種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項7)、
アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、制振性付与剤(K)10〜300重量部を配合してなる、請求項1〜7のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物(請求項8)および
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して成る、家庭用電気製品および事務用電気製品用途の制振材料用成形品(請求項9)
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
<ブロック共重合体(A)>
本発明に用いる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(a)とアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(b)を、一方は少なくとも1つ、他方は少なくとも2つ含有するブロック共重合体である。前記ブロック共重合体は、線状ブロック共重合体(A1)および分岐状(星状)ブロック共重合体(A2)からなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体である。
【0012】
線状ブロック共重合体(A1)は、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体、(−a−b−)n型のマルチブロック共重合体である。分岐状(星状)ブロック共重合体(A2)は、前記の線状ブロック共重合体(A1)を基本構造とする分岐状(星状)ブロック共重合体である。
【0013】
これらのブロック共重合体の構造は、目的とする制振性、機械物性などの必要特性に応じて使い分けられる。中でも、機械物性、成形性から好ましくはa−b−a型のトリブロック共重合体、(−a−b−)n型のマルチブロック共重合体、または好ましくはこれらの混合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体がより好ましい。
【0014】
ブロック共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、30000〜500000が好ましく、更に好ましくは、50000〜400000である。数平均分子量(Mn)が小さいと溶融粘度が低く、また、数平均分子量(Mn)が大きいと溶融粘度が高くなる傾向があるため、必要とする加工特性に応じて設定される。分子量は、クロロホルムを移動相とし、ポリスチレンゲルカラムを使用したゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)法によりポリスチレン換算によって測定される。
【0015】
前記ブロック共重合体(A)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定がないが、1.8以下であることが好ましい。
【0016】
ブロック共重合体(A)中のメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、ブロック(a)5〜90重量%、ブロック(b)95〜10重量%である。成型時の形状の保持、制振性および機械物性の観点から、組成比の好ましい範囲は、(a)10〜80重量%、(b)90〜20重量%であり、さらに好ましくは、(a)20〜50重量%、(b)80〜50重量%である。(a)の割合が5重量%より少ないと成形時に形状が保持されにくい傾向があり、(b)の割合が10重量%より少ないと制振性が低下する傾向がある。
【0017】
組成物の硬度の観点からは、(a)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、(a)の割合が多いと硬度が高くなる傾向があるため、エラストマ−組成物の必要とされる硬度に応じて設定することができる。また加工の観点からは、(a)の割合が少ないと粘度が低く、また、(a)の割合が多いと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定することができる。
【0018】
<メタアクリル系重合体ブロック(a)>
本発明のメタアクリル系重合体ブロック(a)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなる重合体および/またはそれらから誘導される官能基を有する重合体を含む重合体ブロックである。詳しくは、メタアクリル酸エステル、メタアクリル酸、そのエステル部位が隣接したメタアクリル酸系単量体と無水物を形成したメタアクリル酸誘導体(以下メタアクリル酸無水物と呼称する)、およびメタアクリル酸のアイオノマ−に由来する繰り返し単位からなる群から選ばれた繰り返し単位を少なくとも1つ有する成分(a1)と、これと共重合可能なビニル系単量体に由来する繰り返し単位を有する成分(a2)とからなる重合体ブロックである。その(a1)と(a2)の比率は、好ましくは(a1)50〜100重量%、(a2)0〜50重量%[(a1)と(a2)合わせて100重量%]であり、より好ましくは、(a1)75〜100重量%および(a2)0〜25重量%である。(a1)と(a2)の比率がこの範囲を外れると、凝集力、耐熱性が損なわれるため好ましくない。
【0019】
(a)を構成するメタアクリル系成分(a1)としては、メタアクリル酸エステル、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、およびメタアクリル酸のアイオノマ−をあげることができる。
【0020】
メタアクリル酸エステルとしては、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチル、メタアクリル酸パ−フルオロメチル、メタアクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0021】
メタアクリル酸無水物とは、そのエステル部位が隣接したメタアクリル酸系単量体と無水物を形成したメタアクリル酸誘導体であり、以下に重合体中でのその2量体の構造を示す。2量体はグルタル酸無水物類似の6員環([化1]参照)、もしくはコハク酸無水物類似の5員環構造([化2]参照)を形成している。
【0022】
【化1】
【0023】
【化2】
【0024】
メタアクリル酸のアイオノマ−としては、メタアクリル酸と各種の金属塩を反応させて得られるものであれば特に制限されない。金属塩としては、例えば、1〜2価の金属イオンの、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩などを挙げることができる。1〜2価の金属イオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの典型金属などのイオンをあげることができる。
【0025】
メタアクリル酸エステルから、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸のアイオノマ−を誘導する方法については後述する。
【0026】
これらは単独、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。耐熱性が必要な場合はメタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、およびそれらの併用が好ましい。加工性、コストと耐熱性のバランスが必要な場合は、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの併用、メタアクリル酸無水物とメタアクリル酸メチルの併用、メタアクリル酸とメタアクリル酸無水物とメタアクリル酸メチルの3成分の併用が好ましい。またさらなる耐熱性が必要な場合はメタアクリル酸を金属イオンで一部もしくは全部中和させたアイオノマ−が好ましい。
所望の耐熱性、凝集力を持たせるためには、これらのメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸のアイオノマ−に由来する繰り返し単位の比率を適宜調整すればよい。また、メタアクリル酸イソボルニルなどを共重合させることによってもガラス転移点を高くすることができる。
【0027】
(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体(a2)としては、例えば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
【0028】
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロエチル、アクリル酸パ−フルオロメチル、アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0029】
芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0030】
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0031】
共役ジエン系化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0032】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パ−フルオロエチレン、パ−フルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0033】
ケイ素含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0034】
不飽和時カルボン酸化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0035】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0036】
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0037】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
これらのアクリル系成分(a1)とビニル系単量体(a2)は、ブロック(a)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(b)との相容性、後述する制振性付与剤(K)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。
【0039】
具体的には、(a)と(b)が完全に相溶しないこと、(a)と(K)が完全に相溶しないことが、組成物の耐熱性の観点から好ましい。完全に相溶しているかどうかは、動的粘弾性のtanδピ−ク、もしくは示差走査熱量測定(DSC)のTgによって判定することができ、非相溶の場合では(a)(b)成分に由来する2つのピ−クが独立に存在するのに対して、相溶が進行するに従って両ピ−クが接近し、なだらかになる。
【0040】
また、(a)のガラス転移温度は、組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。(a)のガラス転移温度が組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる傾向がある。
【0041】
<アクリル系重合体ブロック(b)>
前記ブロック共重合体(A)を構成するアクリル系重合体ブロック(b)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックである。詳しくは、アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位からなる成分(b1)およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b2)重合体ブロックである。その(b1)と(b2)の比率は、好ましくは(b1)50〜100重量%、(b2)0〜50重量%[(b1)と(b2)合わせて100重量%]であり、より好ましくは(b1)75〜100重量%、(b2)0〜25重量%である。(b1)と(b2)の比率がこの範囲を外れると、制振性の発現や耐候性が損なわれるため好ましくない。
【0042】
(b1)を構成するアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、アクリル酸2−パ−フルオロエチル、アクリル酸パ−フルオロメチル、アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどがあげられる。
【0043】
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。単量体の選定の視点については後述する。
【0044】
ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体(b2)としては、例えば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0045】
メタアクリル酸エステルとしては、例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロエチル、メタアクリル酸パ−フルオロメチル、メタアクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロメチル−2−パ−フルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パ−フルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0046】
芳香族アルケニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0047】
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0048】
共役ジエン系化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0049】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パ−フルオロエチレン、パ−フルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0050】
ケイ素含有不飽和化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0051】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0052】
ビニルエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0053】
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0054】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらの(b1)および(b2)は、ブロック(b)に要求されるガラス転移温度、メタクリル系重合体ブロック(a)との相容性、後述する制振性付与剤(K)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。具体的には、(b)と(a)は完全に相溶しないことが、組成物の耐熱性の観点から好ましい。完全に相溶しているかどうかは、動的粘弾性のtanδピ−ク、もしくは示差走査熱量測定(DSC)のTgによって判定することができる。
【0056】
制振性の発現(tanδのピ−ク値の増大)には、ブロック(b)のガラス転移点を使用温度付近に存在させることが重要であるが、さらに、広い温度領域で制振性を付与したい場合には、コスト、機械物性などとのバランスをとる為に制振性付与剤(K)の選定が重要となる。制振性付与剤(K)との組合せを考えた場合、(b1)としては、ガラス転移温度、極性、コストの観点から、コストとガラス転移点とのバランスを重視する場合には、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。これを基準として、(b1)としては、ガラス転移点が低いことが好ましい場合にはアクリル酸−2−エチルヘキシル、ガラス転移点が高いことが好ましい場合にはアクリル酸−n−エチル、さらにガラス転移点が高いことが好ましい場合にはアクリル酸−n−メチルが好ましい。それらではバランスがとりにくい場合には、それらの共重合体、例えばアクリル酸−n−エチルとアクリル酸−n−ブチルとアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせ、もしくはアクリル酸−n−ブチルとアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせが好ましい。
【0057】
<ブロック共重合体(A)を製造する方法>
ブロック共重合体(A)を製造する方法としては特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合や連鎖移動剤を用いるラジカル重合、近年開発されたリビングラジカル重合があげられ、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造の制御の点から好ましい。
【0058】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグル−プで積極的に研究がなされている。その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.1994、116、7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules、1994、27、7228)、有機ハロゲン化物等を開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などが挙げられる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0059】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される。(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721)。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマ−と開始剤の仕込み比によって自由にコントロ−ルすることができる。
【0060】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよいが、ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましく、a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用するのが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用するのが好ましい。
【0061】
一官能性化合物としては、例えば、式:
C6H5−CH2X、
C6H5−C(H)(X)−CH3、
C6H5−C(X)(CH3)2、
R1−C(H)(X)−COOR2、
R1−C(CH3)(X)−COOR2、
R1−C(H)(X)−CO−R2、
R1−C(CH3)(X)−CO−R2、
R1−C6H4−SO2X、
(式中、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。R1は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリ−ル基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。R2は炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0062】
二官能性化合物としては、例えば、式:
X−CH2−C6H4−CH2−X、
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X、
X−CH(COOR3)−(CH2)n−CH(COOR3)−X、
X−C(CH3)(COOR3)−(CH2)n−C(CH3)(COOR3)−X、X−CH(COR3)−(CH2)n−CH(COR3)−X、
X−C(CH3)(COR3)−(CH2)n−C(CH3)(COR3)−X、
X−CH2−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2−X、
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X、
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X、
X−CH2−CO−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X、
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X、
X−SO2−C6H4−SO2−X、
(式中、R3は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリ−ル基、または炭素数7〜20アラルキル基を表す。C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表す。C6H5はフェニル基を表す。nは0〜20の整数を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0063】
多官能性化合物としては、例えば、式:
C6H3−(CH2−X)3、
C6H3−(CH(CH3)−X)3、
C6H3−(C(CH3)2−X)3、
C6H3−(OCO−CH2−X)3、
C6H3−(OCO−CH(CH3)−X)3、
C6H3−(OCO−C(CH3)2−X)3、
C6H3−(SO2−X)3、
(式中、C6H3は三置換フェニル基(置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい)を表す。Xは塩素、臭素、またはヨウ素を表す。)で示される化合物などがあげられる。
【0064】
これら開始剤のうち、本発明で用いられる開始剤は、トリブロック共重合体を得ることができる二官能性化合物が好ましい。
【0065】
また、重合を開始するもの以外に官能基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端に官能基が導入された重合体が得られる。このような官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シリル基などがあげられる。
【0066】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基あるいはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御できる。
【0067】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体があげられる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体がより好ましい。
【0068】
1価の銅化合物としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。銅化合物をもちいる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加してもよい。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)も触媒として好ましい。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加してもよい。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)2)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2(PPh3)2)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2(PBu3)2)も、触媒として好ましい。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定すればよい。
【0069】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、t−ブタノ−ルなどのアルコ−ル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−トなどのカ−ボネ−ト系溶媒などがあげられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。前述したように、無溶媒で実施する場合は塊状重合となる。一方、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。また、前記重合は、室温〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、50〜150℃の範囲である。
【0070】
前記重合により、ブロック共重合体を製造するには、単量体を逐次添加する方法、予め合成した重合体を高分子開始剤として次のブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法は目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0071】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有する有機酸を添加して金属錯体と金属塩を生成させ、生成した金属錯体を濾過等により、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロ−ス陰イオン交換体吸着処理により溶液中に残存する酸等の不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体樹脂溶液を得ることができる。
【0072】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマ−を除去して、ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリュ−を備えた横形蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、前記蒸発方式の中でも押出しスクリュ−を備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
【0073】
さらに、重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができる。このようなブロック共重合体を得る方法としては、前記の重合において、メタクリル酸等のカルボン酸型単量体を共重合する方法、容易にカルボン酸に変換可能な単量体を前記重合方法にて共重合し、重合の後に、カルボン酸に変換する方法などが挙げられる。
【0074】
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、例えば、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリル、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物などのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、例えば特開平10−298248、および特開2001−234146などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。くわしくは、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有するブロック共重合体を溶剤で希釈し、酸触媒の存在下、加熱する方法が好ましく用いられる。その際、水の存在しない反応系で酸分解反応を、水を添加することで加水分解反応をおこなうことができる。これらは、反応の簡便さや副生成物などを考慮して選択することができる。
【0075】
この反応に用いられる溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、エ−テル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコ−ル系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カ−ボネ−ト系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどをあげることができる。エ−テル系溶媒としては、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどをあげることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどをあげることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどをあげることができる。アルコ−ル系溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、イソプロパノ−ル、n−ブタノ−ル、t−ブタノ−ルなどをあげることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどをあげることができる。
エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどをあげることができる。
カ−ボネ−ト系溶媒としては、エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−トなどをあげることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
また、酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸、およびスルホン酸型などのH+型イオン交換樹脂交換樹脂などを用いることができる。加える酸触媒の量は、ブロック共重合体100重量部あたり、有機酸および無機酸を用いる場合は、0.1〜20重量部が好ましく、1〜5重量部がより好ましい。H+型イオン交換樹脂交換樹脂を用いる場合は、0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましい。
【0077】
酸触媒の存在下での加熱温度は、50℃以上が好ましく、希釈溶剤の還流温度に応じて設定することができるが、あまり高温になるとカルボキシル基の前駆体である部位以外の(メタ)アクリル酸エステル部位が分解するおそれがあるため、160℃以下とするのが好ましく、140℃以下がより好ましく、80〜140℃の範囲がさらに好ましい。
【0078】
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコ−ル反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、前記のように加熱により脱アルコ−ル反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
【0079】
<制振性付与剤(K)>
アクリル系共重合体(A)は単量体とそれらを共重合させる組成の選択によりガラス転移点の制御がある程度可能であるが、特定の制振性付与剤(K)を添加することで優れた制振性を有し、かつ、制振性を示す温度領域が拡大される。
【0080】
本発明で使用する特定の制振性付与剤とは粘着付与剤、フェノ−ル系化合物、可塑剤、高分子可塑剤である。
【0081】
本発明の制振性付与剤(K)の配合量は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、10〜300部であり、好ましくは10〜250部であり、より好ましくは20〜200部である。制振性付与剤(K)の配合量が10重量部よりも少ない場合、制振性の付与効果が少ないため好ましくなく、300重量部を超えると高温での形状保持が困難であるため好ましくない。
【0082】
制振性の発現(tanδのピ−ク値の増大)と制振性を示す温度領域の拡大には、ブロック(b)の単量体と制振性付与剤(K)の選定が重要である。すなわち、(b)のガラス転移温度が制振材料の使用温度よりも低い場合には、ガラス転移点を高くシフトさせる制振性付与剤(K)を、逆に(b)のガラス転移温度が制振材料の使用温度よりも高い場合には、ガラス転移点を低くシフトさせる制振性付与剤(K)を選定することがポイントとなる。
【0083】
粘着付与剤は、一般に室温より高いガラス転移点を有するものが多い。すなわち、ブロック(b)と相溶性が良い粘着付与剤を選択することによりガラス転移点を高くする方向に作用し、制振性を示す温度領域を高温側に移動し、拡大することができる。粘着付与剤の例としては、ロジン、変性ロジン、ロジンエステル、テルペン樹脂、テルペンフェノ−ル樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、シクロペンタジエン樹脂、フェノ−ル系樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、ス−パ−エステル(荒川化学製)、PICCOTAC(HERCULES社製)、アルコン(荒川化学製)などが挙げられる。これらの粘着付与剤は分子量が100〜3000程度の範囲にあり、可塑化効果を示す。従来であれば軽量物を対象にした制振材料は低硬度化のために可塑剤や軟化剤を多量に添加する必要があったが、前記のようなオリゴマ−の範疇に入る樹脂状物を使用すれば高温下での圧縮永久歪特性の劣化やブリ−ドの問題なく低硬度化を達成できる。
【0084】
フェノ−ル系化合物はガラス転移点を高くする方向に作用し、制振性を示す温度領域を高温側に移動し、拡大することができる。フェノ−ル系化合物としては、多官能フェノ−ル系化合物、ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物が好ましく、多官能ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物がさらに好ましい。例えば、アデカスタブAO−60、AO−80(旭電化製)、スミライザ−GM、GA−80、GS(住友化学製)、NaugardXL−1(Uniroyal製)、Irganox1520(チガバイギ−製)などがあげられる。
【0085】
可塑剤および高分子可塑剤は、ブロック(b)のガラス転移点を低くする方向に作用し、制振性を示す温度領域を低温側に移動し、拡大することができる。可塑剤および高分子可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレ−トのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコ−ル等のアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル等のアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチル等のセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル等のマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチル等のフマル酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシル等のトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノ−ル酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコ−ルおよび一価アルコ−ルなどとのポリマ−であるポリエステル系可塑剤、グルコ−ル誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィン等のパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエ−テル系重合型可塑剤、エチレンカ−ボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト等のカ−ボネ−ト誘導体等が挙げられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されるいことがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。市販されている可塑剤としては、チオコ−ルTP(モ−トン社製)、アデカサイザ−O−130P、C−79、UL−100、P−200、RS−735(旭電化社製)などが挙げられる。特に限定されないが、このなかでも低揮発性で加熱減量の少ない可塑剤であるアジピン酸誘導体、フタル酸誘導体、グルタル酸誘導体、トリメリト酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、ポリエステル系可塑剤、グリセリン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエ−テル系重合型可塑剤などが好適に使用される。
【0086】
高分子可塑剤としてはそのほかに、アクリル系オリゴマ−、ポリプロピレングリコ−ル系オリゴマ−、ポリテトラヒドロフラン系オリゴマ−、ポリイソブチレン系オリゴマ−などがあげられる。
【0087】
<熱可塑性樹脂(B)>
本発明の制振材料用樹脂組成物の機械強度、硬度、耐熱性等の性質を改善する目的で、熱可塑性樹脂(B)を含有してもよい。
【0088】
熱可塑性樹脂(B)としては次のものが例示できる。例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル系単量体70〜100重量%とこれらのビニル系単量体と共重合可能な例えばエチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどの他のビニル系単量体および/またはブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体など0〜30重量%とを重合して得られる単独重合体または共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエ−テル樹脂、ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエ−テル樹脂の混合物、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂とポリエステル樹脂の混合物、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエ−テルイミド樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、ポリエ−テルエ−テルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリアリレ−ト樹脂などをあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。本発明において、熱可塑性樹脂はこれらに限定されることがなく、種々の熱可塑性樹脂を広く用いることができる。
【0089】
これらのうち、本発明で使用するブロック共重合体(A)との相溶性、耐衝撃性、機械特性に優れる点で、ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、メチルメタクリレ−ト−スチレン共重合体、ポリカ−ボネ−ト、ポリエステル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれる樹脂が好ましく、さらに、耐油性、機械的特性に優れるという点でポリエステル系樹脂およびポリアミド系樹脂がより好ましい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレ−トなどが挙げられ、またポリアミド系樹脂としてはナイロン6、ナイロン12など挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明の組成物に熱可塑性樹脂(B)を含有させる方法としては特に制限されないが、以下の3つを例示できる。
【0091】
第一に、ブロック共重合体(A)と制振性付与剤(K)に熱可塑性樹脂(B)を添加し、ブロック共重合体(A)の機械特性、硬度等の物性を改善する方法である。一般的に、制振性を保持したまま、弾性率、モジュラス、硬度を大きくすることができる。各成分の比重、粘度、極性などにも左右されるが、(A)および(K)を多量成分、(B)を少量成分とすると、(B)が海島構造の島となり目的を達成しやすい。
【0092】
第二に、熱可塑性樹脂(B)にブロック共重合体(A)と制振性付与剤(K)を軟質化剤として添加し、熱可塑性樹脂(B)の機械強度は維持しつつ、硬度を改善する方法である。一般的に、熱可塑性樹脂(B)の性質を有しながら、制振性能を付与することができる。各成分の比重、粘度、極性などにも左右されるが、(A)および(K)を少量成分、(B)を多量成分とすると、(B)が海島構造の海となり目的を達成しやすい。
【0093】
第三に、ブロック共重合体(A)、制振性付与剤(K)および熱可塑性樹脂(B)を単純に混合するのではなく、これら成分を混練中に動的に処理(動的架橋)して組成物を得、組成物の高温における物性、特に圧縮永久歪み特性を改善する方法である。この場合には、(B)が海島構造の海、(A)および(K)が島となる場合が、前記物性の付与の観点から好ましい。
【0094】
動的架橋とは、Uniroyal社のW.M.Fischerらや、Monsanto社のA.Y.Coranらにより開発された手法であり、熱可塑性樹脂のマトリックス中にゴムをブレンドし、架橋剤とともに架橋剤が架橋する温度以上で混練しながらゴムを高度に架橋させ、しかもそのゴムを微細に分散させるプロセスのことである。
【0095】
前記動的架橋により得られた組成物は、連続相となる熱可塑性樹脂に不連続相となる架橋ゴム相が微細に分散した状態となるため架橋ゴムと同様の物性を示し、かつ成形加工に際しては熱可塑性樹脂に準じた加工が可能となる。
【0096】
本発明においては、動的架橋の方法については制限はないが、エステル交換を利用した方法や分子内の不飽和二重結合を利用した方法が適用できる。例えば、エステル交換反応を利用した動的架橋を行うことができる。すなわち、水酸基を有するブロック共重合体(A)および前記熱可塑性樹脂(B)を配合し、エステル交換触媒を使用し、動的に熱処理することでブロック共重合体(A)を架橋することができる。また、水酸基を有さないブロック共重合体(A)を用いる場合は、2価以上のヒドロキシル基含有化合物を架橋剤として用いることで、動的架橋を行うことができ、ブロック共重合体(A)が架橋した組成物を得ることができる。
【0097】
エステル交換反応に適するブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、エステル交換反応の反応性等の点で、アクリル酸−t−ブチル、水酸基を有するアクリル酸−2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0098】
エステル交換触媒としては、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、不飽和ポリエステルなどのポリエステルを製造する場合に当業界で通常用いられる重合触媒やエステル交換触媒を用いることができる。これらの触媒としては、特に限定されるものではないが、水酸化リチウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ度類金属の水酸化物類;水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素テトラメチルアンモニウムなどのホウ素やアルミニウムの水素化物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第四級アンモニウム塩類;水素化リチウム、水素化カルシウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水素化合物類;リチウムメトキシド、カルシウムメトキシドなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド類;リチウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、NaO−Ar−ONa(Arはアリ−ル基)などのアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアリ−ロキシド類;酢酸カルシウム、安息香酸ナトリウムなどのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩類;酸化亜鉛、亜鉛フェノキシドなどの亜鉛化合物類;酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニルなどのホウ素の化合物類;酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム、テトラアルキルケイ素、テトラアリ−ルケイ素などのケイ素の化合物類;酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムエトキシドなどのゲルマニウムの化合物類;酸化スズ、ジアルキルスズオキシド、ジアルキルスズカルボキシレ−ト、エチルスズトリブトキシドなどのアルコキシ基またはアリ−ルオキシ基と結合したスズ化合物、有機スズ化合物などのスズの化合物類;酸化鉛、酢酸鉛、炭酸鉛、塩基性炭酸塩、鉛及び有機鉛のアルコキシドまたはアリ−ルオキシドなどの鉛の化合物;第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩などのオニウム化合物類;酸化アンチモンなどのアンチモンの化合物類;酢酸マンガンなどのマンガンの化合物類;酸化チタン、チタンのアルコキシドなどのチタンの化合物類;酢酸ジルコニウム、ジルコニウムのアルコキシド、ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウムの化合物類などの触媒を挙げることができる。これらの触媒は単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、反応性の点から、チタン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物が好ましく、反応性の制御等の点で、チタン化合物がよりこの好ましい。
【0099】
2価以上のヒドロキシル基含有化合物としては、特に限定されないが、エチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、トリエチレングリコ−ル等の2価のヒドロキシル基含有化合物、1,2,6−トリヘキサントリオ−ル、グリセリン、等の三価のヒドロキシル基含有化合物、ペンタエリスト−ル、ジグリセリン等の四価のヒドロキシル基含有化合物、ソルビト−ル、ポリグリセリン、ポリビニルアルコ−ル等の多価のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。これらは、単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。用いるヒドロキシル基の価数は、得られる組成物の硬度と機械特性のバランスの観点から、適宜選択すればよい。
【0100】
本発明の組成物の動的架橋による製造においては、エステル交換触媒と併せてリン化合物を用いることが、得られる組成物の耐熱性がより向上し、さらにはエステル交換反応に用いた触媒を不活性化し、得られる熱可塑性エラストマ−の圧縮永久歪みを良好にするために好ましい。このようなリン化合物としては特に限定されないが、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リン酸エステル及び亜リン酸エステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのリン系化合物のうち、得られる熱可塑性エラストマ−の耐熱性の点で、亜リン酸エステルが好ましい。
【0101】
リン化合物はエステル交換反応に用いた触媒を不活性にする目的で添加し、任意の段階で添加することができるが、エステル交換反応が実質的に完結した段階か、それより以降の任意の時期に添加することが好ましい。
【0102】
分子内の不飽和二重結合を利用する動的架橋の方法では、分子内に不飽和二重結合を有するブロック共重合体(A)および前記熱可塑性樹脂(B)を配合し、一般的なゴム架橋剤を使用し、動的に熱処理することでブロック共重合体(A)を架橋することができる。この場合、ブロック共重合体(A)は主鎖、または側鎖に不飽和二重結合を有している必要がある。ブロック共重合体(A)への導入は特に限定されないが、重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも一つのアルケニル基を併せ持つ化合物をブロック共重合体(A)を重合する際に共重合することや、ブロック共重合体(A)を不飽和二重結合を有する化合物へ変性することにより行うことができる。
【0103】
重合性のアルケニル基とそれ以外の少なくとも一つのアルケニル基を併せ持つ化合物としては特に制限されないが、例えば下記一般式(1)や一般式(2)に示される化合物が例示される。
H2C=C(R1)−R2−R3−C(R1)=CH2 (1)
(式中、R1は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい、R2は−C(O)O−(エステル基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R3は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエ−テル結合を含んでいてもよい)で示される化合物が挙げられる。一般式1におけるR3としては、メチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;o−,m−,p−フェニレン基;ベンジル基等のアラルキル基;−CH2CH2−O−CH2−や−O−CH2−等のエ−テル結合を含むアルキレン基等が例示される。
H2C=C(R4)−R5−C(R4)=CH2 (2)
(式中、R4は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい、R5は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエ−テル結合を含んでいてもよい)
式1や式2の化合物の中でも、入手や重合の制御が容易であるという点から、
H2C=C(H)C(O)O(CH2)n−CH=CH2、H2C=C(CH3)C(O)O(CH2)n−CH=CH2(前記の各式において、nは0〜20の整数)H2C=C(H)C(O)O(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2、H2C=C(CH3)C(O)O(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2(前記の各式において、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o−,m−,p−ジビニルベンゼン、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−CH2−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−CH2CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−OCH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−OCH2−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=CH−C6H4−OCH2CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−CH2C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−CH2CH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−OCH2CH=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−OCH2−C(CH3)=CH2、o−,m−,p−H2C=C(CH3)−C6H4−OCH2CH2CH=CH2(ただし、前記式中、C2H4はフェニレン基を示す。)が好ましく、H2C=C(H)C(O)O(CH2)n−CH=CH2、H2C=C(CH3)C(O)O(CH2)n−CH=CH2(前記の各式において、nは0〜20の整数)がより好ましい。
【0104】
不飽和二重結合を有する化合物によりブロック共重合体(A)を変性する方法としては特に限定されないが、例えば、アリルアルコ−ル等の不飽和二重結合とヒドロキシル基を分子内に有する化合物を、ブロック共重合体(A)中の(メタ)アクリル酸エステルとエステル交換反応により導入することで行うことができる。
【0105】
不飽和二重結合はメタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の両方に含まれていても良いし、どちらか一方の重合体ブロックに含まれていても良いが、(a)または(b)のどちらか一方に含まれる方が、熱可塑性樹脂(B)との相溶性や、得られる組成物の物性等の点で好ましい。
【0106】
架橋剤としては、一般的なゴム架橋剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系架橋剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノ−ルジサルファイド等を用いればよい。また、有機過酸化物系架橋剤としては、ベンゾイルパ−オキサイド、t−ブチルヒドロパ−オキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパ−オキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パ−オキシルベンゾエ−ト)等を用いればよい。
【0107】
有機過酸化物系架橋剤を使用する場合には、必要に応じて、ジビニルベンゼンのような多官能性ビニルモノマ−、又はエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−トのような多官能性メタクリレ−トモノマ−を架橋助剤として添加しても良い。このような架橋助剤により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0108】
また、必要に応じて、架橋促進剤を添加してもよい。架橋促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾ−ル系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な架橋促進剤を用いればよい。架橋促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華、ステアリン酸やオレイン酸およびこれらのZn塩等を用いればよい。
【0109】
本発明の組成物の動的架橋による製造において、必要な架橋剤等は、動的な架橋条件(温度、時間)や、製造される組成物の物性に応じて適宜選択すればよいが、製造される組成物に耐熱性が要求される場合等では有機過酸化物系架橋剤を用いることが好ましい。
【0110】
前記動的架橋プロセスにおいて、制振性付与剤(K)を添加する時期は特に制限されず、所望の制振性能、物性および相構造が得られるように選択すればよい。例えば、(A)と(K)を予め混合しておいて(B)中で動的架橋させる場合、(A)を(B)中で動的架橋させている途中で(K)を添加する場合、(A)を(B)中で動的架橋させた後に(K)を添加する場合が挙げられる。ただし、(K)が動的架橋の反応を阻害、あるいは望ましくない副反応を起こす性質を有する場合には、(A)を(B)中で動的架橋させた後に(K)を添加することが望ましい。
【0111】
<添加剤>
また、必要に応じて、次のような添加剤を配合してもよい。
【0112】
添加剤としては、制振性付与剤(K)および熱可塑性樹脂(B)以外の他の重合体、安定剤、滑剤、難燃剤、顔料、充填剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤などが挙げられる。これらの添加剤は、組成物が使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0113】
前記の他の重合体としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ウレタンゴム、シリコ−ンゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−プロピレン−フッ化ビニリデンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム(CO)、エチレン−アクリルゴム、ノルボルネンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマ−(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマ−(TPO)、ウレタン系熱可塑性エラストマ−(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマ−(TPEE)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ−(TPAE)、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマ−、塩ビ系熱可塑性エラストマ−(TPVC)、およびフッ素系熱可塑性エラストマ−等。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
前記安定剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:トリフェニルホスファイト、ヒンダ−ドフェノ−ル、ジブチル錫マレエ−トなど。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
前記柔軟性付与剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:プロセスオイル等の軟化剤;動物油、植物油等の油分;灯油、軽油、重油、ナフサ等の石油留分など。軟化剤としては、プロセスオイルが挙げられ、より具体的には、パラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイル等の石油系プロセスオイル等が挙げられる。植物油としては、例えばひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パ−ム油、やし油、落花生油、パインオイル、ト−ル油等が挙げられる。以上の柔軟性付与剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
前記滑剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
前記難燃剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:トリフェニルホスフェ−ト、トリクレジルホスフェ−ト、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエ−テル、三酸化アンチモンなど。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
前記の顔料としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
前記の充填剤としては、次の化合物が挙げられるが、それらに限定されない:無定形フィラ−、板状フィラ−、針状フィラ−、球状フィラ−、機能性フィラ−、繊維状フィラ−、カ−ボンブラック、金属粉末などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
これらの例をあげるなら、無定形フィラ−として、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレ−、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛(亜鉛華)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化マグネシウムであり、板状フィラ−として、タルク、マイカ、ガラスフレ−ク、合成ハイドロタルサイトであり、針状フィラ−として、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウムであり、球状フィラ−として、ガラスビ−ズ、シリカビ−ズ、ガラス(シリカ)バル−ンであり、機能性フィラ−として金属系導電性フィラ−、非金属系導電性フィラ−、カ−ボン系導電性フィラ−、磁性フィラ−、圧電、焦電フィラ−、摺動性フィラ−であり、また、繊維状フィラ−としてガラス繊維、金属繊維、アスベスト、ミルドファイバ−などの有機、無機、金属の各種ファイバ−である。
【0121】
これらの材料の配合・混練方法についても特に制限はない。例えば、バッチ式混練装置としてはミキシングロ−ル、バンバリ−ミキサ−、加圧ニ−ダ−、高剪断型ミキサ−が使用でき、連続混練装置としては単軸押出機、二軸押出機、KCK押出混練機などを用いても良い。さらに、機械的に混合しペレット状に賦形する方法などの既存の方法を用いることができる。混練時の温度は、使用するブロック共重合体(A)の溶融温度などに応じて調整するのがよく、例えば、130〜300℃で溶融混練することにより製造できる。
【0122】
組成物の成形方法についても特に制限はない。例えば、前記組成物を、押出成形、圧縮成形、ブロ−成形、カレンダ−成形、真空成形、射出成形などの任意の成形加工法によって成形加工することができるが、成形加工の簡便性などの点から押出成形、射出成形法により成形するのが好ましく、均一な厚みの成型品を得ることができる。
【0123】
本発明の制振材は幅広い分野における機器の制振材料として広く使用することが可能である。すなわち、自動車、OA機器、電気・電子機器、精密機器、医療、スポ−ツ、建築、船舶、鉄道、産業機械、航空宇宙分野等である。
【0124】
本発明の制振材料を使用する様態についても特に制限されないが、請求項7に示す成型品としては、例えば、単体で成型されたシ−ト、鋼板と組み合わせた拘束型制振鋼板および非拘束型制振鋼板、各種のマウント、制振塗料としての塗布物などがあげられる。制振鋼板における制振材料の厚み、塗布方法、鋼板の種類および厚み、制振鋼板の形状は特に制限されない。マウントの種類については特に制限されず、従来からゴムを制振材料として使用する際に用いられている各種マウント、吊り下げ型マウント、ウルトラブッシュ、ストッパ−、ステッピングモ−タ−マウントなどがあげられる。塗料として用いる際の溶剤についても特に制限されず、また、無溶剤で直接塗布もしくはホットメルト塗布としてもかまわない。
【0125】
これらの制振部材の適用部位についても特に制限されないが、例えば、自動車においてはオイルパン、フロントカバ−、ロッカ−カバ−などのエンジンまわり、ダッシュ、フロア、ドア、ル−フ・パネル、ホイルハウスなどの車体、トランスミッション、パ−キングブレ−キカバ−、シ−トバックなどのその他部位があげられる。事務機器においては、複写機、電算機、プリンタ、レジスタ、キャビネットなどがあげられる。家電機器においては、食器洗い機、乾燥機ドラム、洗濯機、ファンヒ−タ−、ミシン、自動販売機、スピ−カ−フレ−ム、BSアンテナ、VTRカバ−などがあげられる。建築においては、ル−フ、フロア−、シャッタ−、カ−テンレ−ル、ダクト、階段、ドア−などがあげられる。産業機械においては、シュ−タ−、エレベ−タ−、エスカレ−タ−、コンベア、トラクタ、ブルド−ザ−、発電機、コンプレッサ−、コンテナ、ホッパ−、防音ボックス、草刈り機のモ−タ−カバ−などがあげられる。鉄道においては、車両のル−フ、側板、ドア−、アンダ−フロア−、各種機器カバ−、そして橋梁などがあげられる。その他、船舶、航空機、ロケット、宇宙構造物などがあげられる。
【0126】
以上、本発明を実施した態様について説明してきたが、本発明はこれらの実施例に何等限定されるものではなく様々な態様で実施しうる。
【0127】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
なお、以下において、EA、BA、MEA、MMA、TBMAは、それぞれ、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸−tert−ブチルを意味する。
【0129】
<試験方法>
(引張特性)
本実施例に示す試料の破断強度(MPa)はJIS K 7113にに準拠し、島津製作所製オ−トグラフAG−10TB形を用いて測定した。測定はn=3にて行い、試験片が破断したときの強度(MPa)と伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行った。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃および相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
【0130】
(硬度)
本実施例に示す組成物の硬度は、JIS K 6253に準拠し、23℃における硬度(直後、JIS A)を測定した。
【0131】
(圧縮永久歪み)
本実施例に示す試料の圧縮永久歪は、JIS K 6301に準拠し、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で70℃で22時間保持し、室温で30分放置した後、成形体の厚みを測定し、歪みの残留度を計算した。すなわち圧縮永久歪0%で歪みが全部回復し、圧縮永久歪100%で歪みが全く回復しないことに相当する。
【0132】
(動的粘弾性)
本実施例に示す動的粘弾性のデ−タは、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティ−計測制御(株)製)により、測定条件を、下限弾性率103Pa、下限動ちから0.0049N、昇温速度4℃/min、デ−タ取り込み間隔1℃、周波数0.5Hz、歪み率0.05%として、−50〜150℃の範囲でtanδの温度依存性を測定した。
【0133】
(重合転化率の測定)
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBA、EA、MEA、MMAおよびTBMAの重合転化率を決定した。
【0134】
<共重合体の製造>
(製造例1) MMA−(BA−EA−MEA)−MMA型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=7/3)の合成(以下、M3AM73と略称する)
50L反応機に触媒である臭化第一銅123.10gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル627.44gおよびBA1072.8gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、二官能性開始剤である2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル61.79gをBA2160.7g、EA3175.3g、MEA1970.0gおよび酢酸ブチル158.76gに溶解させた溶液、並びにアセトニトリル784.30gを仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間攪拌を行った。触媒活性化剤であるペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第一ブロックとなるBA/EA/MEAの共重合を開始した。3つの平均転化率が96%に到達したところで、トルエン14948g、塩化第一銅84.95g、MMA5385.5gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン18mlを加えて、第二ブロックとなるMMAの重合を開始した。MMAの転化率が58%に到達したところで、トルエン8660gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが111800、分子量分布Mw/Mnが1.48であった。また、NMRによる組成分析を行ったところ、MMA/BA/EA/MEA=28/28/27/17(重量%)であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を14.6wt%とし、さらにp−トルエンスルホン酸を196g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後、溶液を払い出し固液分離を行って固形分を除去した。
このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョ−ワ−ド500SH(協和化学株式会社製)150gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後、溶液を払い出し固液分離を行って吸着剤を除去した。溶液から溶媒を揮発させ、目的とするブロック共重合体を得た。
【0135】
(製造例2) M3AM型ブロック共重合体(組成比MMA/(BA/EA/MEA)=6/4)の合成(以下、M3AM64と略称する)
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅14.4g(100ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル7.2g(20ミリモル)、BA323.4g(2.522モル)、EA317.5g(3.171モル)、MEA197.0g(1.513モル)、酢酸ブチル18mLを加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン2.1ml(10ミリモル)を加えて重合を開始した。BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点で、MMA837.7g(8.410モル)、塩化銅9.9g(100ミリモル)、ジエチレントリアミン2.1ml(10ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)1781mlを加えた。同様にして、MMAの転化率を決定した。BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が60%の時点で、トルエン1000mlを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。p−トルエンスルホン酸を22.9g加え、室温で3時間撹拌して、溶液が無色透明になっていることを確認した。
その後、溶液を払い出し固液分離を行って固形分を除去した。この溶液に対し、キョ−ワ−ド500SH12.8gを加え、室温で3時間撹拌した。溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。溶液から溶媒を揮発させ、目的とするブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体についてGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113600、分子量分布Mw/Mnが1.54であった。また、NMRによる組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=23/24/15/38(重量%)であった。
【0136】
(製造例3) カルボキシル基含有M3AM64ブロック共重合体の合成(以下、COOH−M3AM64と略称する)
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.89g(16.4ミリモル)、BA362ml(2.52モル)、EA344ml(3.17モル)、MEA195ml(1.51モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点でTBMA106ml(0.66モル)、MMA280ml(2.62モル)を添加した。TBMAの転化率が64%、MMAの転化率が59%の時点で反応を終了させた。反応溶液をトルエン2.0Lで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物7.16gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いた後、ポリマ−溶液に吸着剤キョ−ワ−ド500SH(協和化学製)を4.50g加えて室温で更に3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマ−を除き、(MMA−TBMA)−(BA−EA−MEA)−(MMA−TBMA)型ブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが111000、分子量分布Mw/Mnが1.47であった。
【0137】
さらに、得られたブロック共重合体45gと、Irganox1010(チバガイギ−製)0.2gを設定温度240℃、回転数100回/分で20分間プラストミルで混練し、酸無水物型ブロック共重合体を得た。t−ブチルエステル部位の無水カルボン酸への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm−1付近に酸無水物に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C−NMRでは変換後にt−ブチル基のメチレン炭素由来の82ppmシグナルと、メチル炭素由来の28ppmシグナルが消失することから確認できた。さらに、得られたブロック共重合体20gと、精製水40mLをオ−トクレ−ブに投入し、200℃の油浴で2時間加熱し、酸無水物基をカルボキシル基に変換した。反応終了後、過剰の水を除き、80℃で真空乾燥させて目的のCOOH−M3AMを得た。カルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、1800cm−1付近に酸無水物に由来する吸収スペクトルが変換後に消失することから確認できた。
【0138】
<組成物の製造>
(実施例1〜4)
製造例1〜3で製造したブロック共重合体および制振性付与剤を表1に示したように配合し、実施例1〜3では170℃、実施例4では200℃に設定したラボプラストミル50C−150(東洋精機株式会社製)を用いて溶融混練した。
得られたサンプルをそれぞれ、プラストミルでの設定温度と同じ温度で熱プレス成形し、厚さ2mmのシ−ト状成型体、および直径30mm×厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。なお、使用した制振性付与剤は、フェノ−ル系化合物である旭電化製AO−80および粘着付与剤である荒川化学製ス−パ−エステルA100である。これらの成形体について、引張破断強度、硬度および耐熱性(圧縮永久歪み)を測定した。結果を表1に示す。
【0139】
(比較例1〜3)
制振性付与剤を加えないこと以外は実施例1〜4と同様にして、サンプルを作成して評価を行った。結果を表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
【発明の効果】
本発明の組成物である実施例に示すとおり、本発明で得られた制振性組成物は、制振性の指標であるtanδのピ−ク値が高く、そのピ−クを示す温度領域を制御可能である。
【0142】
実施例1においては、比較例1に比べて、tanδのピ−ク値が2倍程度と大きくなり、tanδのピ−クを示す温度が高温側にシフトしていることから、制振性が増大し、かつ適用できる温度を制御していることが判る。さらに、実施例2から明らかなように、カルボキシル基を導入することにより、tanδのピ−ク値がさらに大きくなり、制振性が増大される。
【0143】
実施例3および4においては、制振性付与剤の配合量を加減することで、tanδのピ−クを示す温度を制御可能であることと、幅広い温度領域にわたって制振性(tanδが0.5以上となる)が示すことが判る。具体的には、tanδが0.5以上となる温度領域は、実施例3において−13℃〜97℃、また、実施例4において−6℃以上であるのに対して、比較例2において−23℃〜26℃となることから、実施例の優位性が示される。
【0144】
また、圧縮永久歪みの増大が抑えられていることが判る。
Claims (9)
- メタアクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)を含有するブロック共重合体(A)と、制振性付与剤(K)からなる、制振材料用樹脂組成物。
- ブロック共重合体(A)が、メタアクリル系重合体ブロック(a)5〜60重量%とアクリル系重合体ブロック(b)95〜40重量%[(a)と(b)合わせて100重量%]からなるアクリル系ブロック共重合体である、請求項1記載の制振材料用樹脂組成物。
- ブロック共重合体(A)が、a−b−aトリブロック共重合体である、請求項1または2に記載の制振性材料用樹脂組成物。
- ブロック共重合体(A)中の、メタアクリル系重合体ブロック(a)がメタクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合してなる重合体および/またはそれから誘導される官能基を有する重合体を含む重合体ブロックであり、かつ、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸エステルを主成分とする単量体混合物を重合してなる重合体ブロックである、請求項1〜3のいずれかに記載の制振性材料用樹脂組成物。
- ブロック共重合体(A)中の、メタアクリル系重合体ブロック(a)が、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸、またはメタクリル酸無水物、およびメタクリル酸アイオノマ−に由来する繰り返し単位からなる群から選ばれた繰り返し単位を少なくとも1つ有する成分(a1)50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のメタアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体に由来する繰り返し単位からなる成分(a2)0〜50重量%とからなる重合体ブロックであり、かつ、アクリル系重合体ブロック(b)がアクリル酸ブチル、又はアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸−2−メトキシエチルからなる単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b1)50〜100重量%およびこれと共重合可能な他のアクリル酸エステルおよび/または他のビニル系単量体混合物に由来する繰り返し単位からなる成分(b2)0〜50重量%からなる重合体ブロックである、請求項1〜4のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物。
- ブロック共重合体(A)が原子移動ラジカル重合により製造される、請求項1〜5のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物。
- 制振性付与剤(K)が、粘着付与剤、フェノ−ル系化合物、可塑剤、高分子可塑剤のいずれか1種もしくは2種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物。
- アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、制振性付与剤(K)10〜300重量部を配合してなる、請求項1〜7のいずれかに記載の制振材料用樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して成る、家庭用電気製品および事務用電気製品用途の制振材料用成形品。
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