JP2004315608A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)を含有するブロック共重合体、(B)架橋性官能基を少なくとも1個有するビニル系重合体からなる熱可塑性エラストマーであって、(A):(B)=90:10〜10:90の重量比である熱可塑性エラストマー組成物である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関し、低硬度で柔軟性を有しながら、機械特性、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れる熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、弾性を有する高分子材料としては、天然ゴムまたは合成ゴムなどのゴム類に架橋剤や補強剤などを配合して高温高圧下で架橋したものが汎用されている。しかしながらこのようなゴム類では、高温高圧下で長時間にわたって架橋および成形を行う行程が必要であり、加工性に劣る。また架橋したゴムは熱可塑性を示さないため、熱可塑性樹脂のようにリサイクル成形が一般的に不可能である。そのため、通常の熱可塑性樹脂と同じように熱プレス成形、射出成形、および押出し成形などの汎用の溶融成形技術を利用して成形品を簡単に製造することのできる熱可塑性エラストマーが近年種々開発されている。このような熱可塑性エラストマーには、現在、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、スチレン系、塩化ビニル系などの種々の形式のポリマーが開発され、市販されている。
【0003】
さらに、近年、新規な熱可塑性エラストマーも開発されており、メタアクリルブロックとアクリルブロックを有するアクリル系ブロック体が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
アクリル系ブロック体は、耐候性、耐熱性および耐油性に優れるという特徴を有しており、また、ブロック体を構成する成分を適宜選択することで、スチレン系ブロック体などの他の熱可塑性エラストマーに比べて低硬度であり、かつ極めて柔軟なエラストマーを与えることが知れている。しかしながら、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)やスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)などのスチレン系熱可塑性エラストマーなどと同様、圧縮永久歪みが不充分であった。
【0005】
一方、適当なゴムを導入することにより、熱可塑性エラストマーの性能を向上させる手法が試みられている。ビニル芳香族化合物を単量体主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを単量体主成分とする重合体ブロックからなるブロック共重合体に、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどと、適当な架橋剤とを配合したのち、溶融混練しながら架橋反応を行なうこと、すなわち動的架橋により得られる成形性、圧縮永久歪に優れた熱可塑性樹脂組成物が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。アクリル系ブロック体においても、メタアクリル酸エステルを主成分とする重合体ブロックとアクリル酸エステルを主成分とする重合体ブロックからなるアクリル系ブロック共重合体に、ブチルゴムやアクリルゴムを導入することで成形性、圧縮永久歪に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることが開示されている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、いずれも、ゴム成分として、分子量が制御されていなかったり、架橋点がランダムに導入されているゴムを用いていることから、圧縮永久歪みの向上が不充分であったり、架橋が不均一なことから、低硬度化が困難であった。
【0006】
よって、低硬度でありながら、ゴム的性質(永久伸び、圧縮永久歪み、柔軟性など)や機械特性が優れ、耐油性、耐熱性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特許第2553134号公報
【特許文献2】
国際公開98/14518号パンフレット
【特許文献3】
特開2002−60584号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低硬度で柔軟性を有しながら、機械特性、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)を含有するブロック共重合体、(B)制御重合により得られることを特徴とする架橋性官能基を少なくとも1個有するビニル系重合体からなり、(A):(B)=90:10〜10:90の重量比である熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0010】
ブロック共重合体(A)が、一般式(a−b)n、一般式b−(a−b)n、一般式(a−b)n−aで表わされるアクリル系ブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の溶融混練時に架橋剤および/または架橋触媒を添加して、動的に架橋したものであることが好ましい。
【0012】
ビニル系重合体(B)の重量平均分子量/数平均分子量が1.8未満であることが好ましい。
【0013】
ビニル系重合体(B)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマーおよびケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来であることが好ましい。
【0014】
ビニル系重合体(B)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー由来であることが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリル系モノマーが、アクリル系モノマーであることが好ましい。
【0016】
アクリル系モノマーが、アクリル酸エステル系モノマーであることが好ましい。
【0017】
アクリル酸エステル系モノマーが、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチルおよびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0018】
ビニル系重合体(B)の架橋性官能基が、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合、エポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基であることが好ましい。
【0019】
ビニル系重合体(B)の架橋性官能基が、アルケニル基であることが好ましい。
【0020】
架橋剤がヒドロシリル基含有化合物であることが好ましい。
【0021】
架橋触媒として白金化合物を用いることが好ましい。
【0022】
ブロック共重合体(A)は、原子移動ラジカル重合により得られることが好ましい。
【0023】
ビニル系重合体(B)は、原子移動ラジカル重合により得られることが好ましい。
【0024】
原子移動ラジカル重合の触媒が、周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする遷移金属錯体より選ばれる錯体であることが好ましい。
【0025】
遷移金属錯体が銅、ニッケル、ルテニウムまたは鉄の錯体からなる群より選ばれる錯体であることが好ましい。
【0026】
遷移金属錯体が銅の錯体であることが好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明のブロック共重合体(A)の構造は線状ブロック共重合体または分岐状(星状)ブロック共重合体であることが好ましく、これらの混合物であってもよい。このようなブロック共重合体の構造は、必要とされるブロック共重合体(A)の物性、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)との組成物に必要とされる加工特性や機械特性などの必要に応じて使い分けられるが、コスト面や重合容易性の点から、線状ブロック共重合体が好ましい。
【0028】
線状ブロック共重合体は、組成物の物性の点から、(メタ)アクリル系重合体ブロックをa、アクリル系重合体ブロックをbと表現したとき、一般式(a−b)n、b−(a−b)n、(a−b)n−a(nは1以上の整数)で表わされるアクリル系ブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のアクリル系ブロック共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取り扱い容易性や、組成物の物性の点からa−b型のジブロック共重合体、a−b−a型のトリブロック共重合体、またはこれらの混合物が好ましい。
【0029】
本発明のブロック共重合体(A)は、得られる熱可塑性エラストマー組成物に、より高い耐熱性や凝集力が必要とされる場合や、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)との相溶性を改良することが必要とされる場合に、酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)を導入することができる。より高い耐熱性が必要とされる場合にはカルボキシル基(d)を導入することが好ましいが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性や、ブロック共重合体(A)の重合容易性の点で酸無水物基(c)を導入することがより好ましい。
【0030】
酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)は重合体ブロック当たり1つまたは2つ以上であることができ、2つ以上である場合には、その単量体が重合されている様式はランダム共重合またはブロック共重合であることができる。a−b−a型のトリブロック共重合体を例にとって表わすと、(a/z)−b−a型、(a/z)−b−(a/z)型、z−a−b−a型、z−a−b−a−z型、a−(b/z)−a型、a−b−z−a型、a−z−b−z−a型、(a/z)−(b/z)−(a/z)型、などのいずれであってもよい。ここでzとは酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)を含む単量体または重合体ブロックを表わし、(a/z)とは、ブロックaに酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)を含む単量体が共重合されていることを表わし、(b/z)とは、ブロックbに酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)を含む単量体が共重合されていることを表す。
【0031】
また、aあるいはb中でzの含有される部位と含有される様式は自由に設定してよく、目的に応じて使い分けることができる。
【0032】
本発明のブロック共重合体(A)の数平均分子量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよく、とくに限定はされないが、ブロック共重合体(A)の数平均分子量は、30000〜500000が好ましく、より好ましくは40000〜400000、さらに好ましくは50000〜300000である。分子量が30000未満では、エラストマーとして充分な機械特性を発現出来ず、逆に分子量が500000をこえると、加工特性が低下する場合がある。
【0033】
本発明のブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1〜1.8であることが好ましく、1〜1.5であることがより好ましい。Mw/Mnが1.8をこえるとブロック共重合体(A)の均一性が低下する場合がある。
【0034】
ブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、使用する用途において要求される物性、組成物の加工時に要求される成形性、および(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)にそれぞれ必要とされる分子量から決めればよい。組成比としては、とくに限定されないが、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が5〜80重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が95〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が10〜70重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が90〜30重量%であり、さらに好ましくは(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)が20〜60重量%、アクリル系重合体ブロック(b)が80〜40重量%である。(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の割合が5重量%未満であると、高温でのゴム弾性が低下する傾向にあり、80重量%をこえると、エラストマーとしての機械特性、特に破断伸びが低下したり、得られる熱可塑性樹脂組成物の柔軟性が低下したり、硬度が高くなる傾向にある。
【0035】
本発明のブロック共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)とアクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度の関係は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度をTga、アクリル系重合体ブロック(b)のそれをTgbとして、下式の関係を満たすことが好ましい。Tga>Tgb
【0036】
前記重合体のガラス転移温度(Tg)の設定は、概略、下記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。1/Tg=(W1/Tg1)+(W2 /Tg2)+…+(Wm/Tgm)
W1+W2+…+Wm=1
【0037】
式中、Tgは重合体部分のガラス転移温度を表わし、Tg1,Tg2,…,Tgmは各重合単量体のガラス転移温度を表わす。また、W1,W2,…,Wmは各重合単量体の重量比率を表わす。
【0038】
前記Fox式における各重合単量体のガラス転移温度は、たとえば、Polymer Handbook Third Edition(Wiley−Interscience,1989)記載の値を用いればよい。
【0039】
なお、前記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定することができる。
【0040】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体は、所望する物性のアクリル系ブロック共重合体を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、(メタ)アクリル酸エステル、およびこれと共重合可能な他のビニル系単量体からなることが好ましい。また、酸無水物基(c)、カルボキシル基(d)を有する単量体を(メタ)アクリル酸エステルとして含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステルの割合は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)全体中、50重量%以上であることが好ましく、75重量%以上であることがより好ましい。50重量%未満であると、(メタ)アクリル酸エステルの特徴である、耐候性、高いガラス転移点、樹脂との相溶性などが損なわれる傾向がある。共重合可能な他のビニル系単量体の割合は、0〜50重量%が好ましく、より好ましくは0〜25重量%である。
【0041】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に必要とされる分子量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に必要とされる凝集力と、その重合に必要な時間などから決めればよい。
【0042】
凝集力は、分子間の相互作用と絡み合いの度合いに依存するとされており、分子量を増やすほど絡み合い点が増加して凝集力を増加させる。すなわち、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に必要とされる分子量をMaとし、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成する重合体の絡み合い点間分子量をMcaとすると、凝集力が必要な場合には、Ma>Mcaが好ましく、さらなる凝集力が必要とされる場合には、Ma>2Mcaが好ましく、逆に、ある程度の凝集力とクリープ性を両立させたいときは、Mca<Ma<2Mcaが好ましい。絡み合い点間分子量は、Wuらの文献(ポリマーエンジニアリングアンドサイエンス(Polym.Eng.and Sci.)、1990年、30巻、753頁)などを参照すればよい。
【0043】
たとえば、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)がすべてメタアクリル酸メチルから構成されていれば、凝集力が必要とされる場合においては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の数平均分子量の範囲は、9200以上であることが好ましい。また、数平均分子量が大きいと重合時間が長くなる傾向があるため、必要とする生産性に応じて設定すればよいが、好ましくは200000以下、さらに好ましくは100000以下である。ただし、酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)を(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に含有させた場合、酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)による凝集力が付与されるので、分子量はこれより低く設定することができる。
【0044】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえばアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルなどがあげられ、これらは少なくとも1種用いることができる。これらの中でも、コストおよび入手しやすさの点や、得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械特性の点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0046】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえばアルキル)エステル;アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸脂環式炭化水素エステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイルなどのアクリル酸芳香族炭化水素エステル;アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸アラルキルエステル;アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチルなどのアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのアクリル酸フッ化アルキルエステルなどをあげることができる。
【0047】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0048】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0049】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0050】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0051】
不飽和カルボン酸化合物としては、たとえばメタアクリル酸、アクリル酸などをあげることができる。
【0052】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0053】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0054】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。これらは少なくとも1種用いることができる。これらのビニル系単量体は、ビニル系重合体(B)との相溶性によって好ましいものを選択することができる。
【0055】
また、メタアクリル酸メチルの重合体は熱分解によりほぼ定量的に解重合するが、それを抑えるために、アクリル酸エステル、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチルもしくはそれらの混合物、または、スチレンなどを共重合することができる。また、さらなる耐油性の向上を目的として、アクリロニトリルを共重合することができる。
【0056】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度(Tga)は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上である。ガラス転移温度が100℃未満では、高温でのゴム弾性が低下する傾向にある。
【0057】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)のTgaの設定は、前記のFox式に従い、各重合体部分の単量体の重量比率を設定することにより行なうことができる。
【0058】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成する単量体は、所望する物性の組成物を得やすい点、コストおよび入手しやすさの点から、アクリル酸エステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体からなることが好ましい。また、酸無水物基(c)および/またはカルボキシル基(d)を有する単量体を含んでもよい。
【0059】
アクリル酸エステルの割合は、アクリル系重合体ブロック(b)全体中、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。50重量%未満であると、アクリル酸エステルを用いる場合の特徴である組成物の物性、とくに耐衝撃性や柔軟性が損なわれる傾向がある。共重合可能な他のビニル系単量体の割合は、0〜50重量%が好ましく、より好ましくは0〜25重量%である。
【0060】
アクリル系重合体ブロック(b)に必要とされる分子量は、アクリル系重合体ブロック(b)に必要とされる弾性率とゴム弾性、その重合に必要な時間などから決めればよい。
【0061】
弾性率は、分子鎖の動き易さとその分子量に密接な関連があり、ある一定以上の分子量でないと本来の弾性率を示さない。ゴム弾性についても同様であるが、ゴム弾性の観点からは、分子量が大きい方が望ましい。すなわち、アクリル系重合体ブロック(b)の分子量Mbは、3000以上であることが好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましく、20000以上がとくに好ましく、40000以上が最も好ましい。ただし、数平均分子量が大きいと重合時間が長くなる傾向があるため、必要とする生産性に応じて設定すればよいが、好ましくは300000以下であり、さらに好ましくは200000以下である。
【0062】
アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体であるアクリル酸エステルと同様の具体例をあげることができる。これらは少なくとも1種用いることができる。
【0063】
これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、コスト、および入手しやすさの点で、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。また、組成物に耐油性が必要な場合は、アクリル酸エチルが好ましい。また、低温特性や柔軟性が必要な場合や、より低硬度な特性が必要とされる場合はアクリル酸−2−エチルヘキシルが好ましい。さらに、耐油性と低温特性を両立させたいときにはアクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチルの混合物が好ましい。アクリル系重合体ブロック(b)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0064】
メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、およびマレイミド系化合物の具体例としては、それぞれ(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)での具体例と同様のものをあげることができる。これらは少なくとも1種用いることが好ましい。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度、弾性率、極性、組成物に要求される物性、ビニル系重合体(B)との相溶性などによって好ましいものを選択することができる。
【0065】
アクリル系重合体ブロック(b)のガラス転移温度(Tgb)は、好ましくは50℃以下、より好ましくは0℃以下である。Tgbが50℃より高いと、ブロック共重合体(A)のゴム弾性が低下する場合がある。
【0066】
前記重合体(アクリル系重合体ブロック(b))のガラス転移温度(Tgb)の設定は、Tgaの場合と同様に、Fox式にしたがって計算したものとする。上記、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)のうち少なくとも一方の重合体ブロック主鎖中に(c)酸無水物基および/または(d)カルボキシル基を有することが、得られる熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性、機械特性、ゴム弾性の向上、低硬度化の点から、好ましい。
【0067】
酸無水物基(c)を有する単量体は、ガラス転移温度(Tg)が高いことから、ハードセグメントに導入した場合には、ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させる効果を有する。酸無水物基(c)を有する重合体のガラス転移温度は、たとえば、ポリメタアクリル酸無水物が159℃と高く、これらを構成する単位を導入することでブロック共重合体(A)の耐熱性を向上することができる。
【0068】
また、酸無水物基(c)は、ビニル系重合体(B)との相溶性改良部位などとして利用することもできる。酸無水物基(c)はアミノ基、水酸基などを有する化合物との反応性を有することから、重合体を変性して相溶性を改善することもできるし、熱可塑性を損なわない程度にビニル系重合体(B)と反応させて相溶性を改善することもできる。
酸無水物基(c)は、一般式(1):
【0069】
【化2】
【0070】
(式中、R1は水素またはメチル基で、互いに同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数、mは0または1の整数)で表される形で含有される。
【0071】
一般式(1)中のnは0〜3の整数であって、好ましくは0または1であり、より好ましくは1である。nが4以上の場合は、重合が煩雑になったり、酸無水物基の環化が困難になる傾向にある。
【0072】
一般式(1)中のmは0または1の整数であって、nが0の場合はmも0であり、nが1〜3の場合は、mは1であることが好ましい。
【0073】
前記酸無水物基(c)の導入方法としては、酸無水物基の前駆体となる形でブロック共重合体(A)に導入し、そののちに環化させることが好ましい。特に限定されないが、
一般式(2):
【0074】
【化3】
【0075】
(式中、R2は水素またはメチル基を表す。R3は水素、メチル基、またはフェニル基を表し、少なくともひとつのメチル基を含むこと以外は互いに同一でも異なっていてもよい。)で表わされる単位を少なくとも1つ有するブロック共重合体(A)を、溶融混練して環化導入することが好ましい。
【0076】
アクリル系ブロック共重合体への一般式(2)で表される単位の導入は、一般式(2)に由来するアクリル酸エステル、またはメタアクリル酸エステル単量体を共重合することによって行なうことができる。
【0077】
一般式(2)で表される単位は、高温下で隣接するエステルユニットと脱離、環化し、酸無水物基を生成する(たとえば、畑田(Hatada)ら、J.M.S.−PURE APPL.CHEM.,A30(9&10),PP.645−667(1993)参照)。これらによると、一般的に、エステルユニットが嵩高く、β−水素を有する重合体は、高温下でエステルユニットが分解し、それに引き続き、環化が起こり酸無水物基が生成する。これらの方法を利用することで、ブロック共重合体(A)中に、容易に酸無水物基を導入することができる。単量体としては、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸α,α−ジメチルベンジル、(メタ)アクリル酸α−メチルベンジルなどがあげられるが、これらに限定するものではない。これらのなかでも、入手性や重合容易性、酸無水物基生成容易性などの点から(メタ)アクリル酸−t−ブチルが好ましい。
【0078】
前記酸無水物基(c)の形成は、酸無水物基の前駆体を有するブロック共重合体(A)を高温下で加熱することが好ましく、180〜300℃で加熱することが好ましい。180℃より低いと酸無水物基の生成が不充分となる傾向があり、300℃より高くなると、酸無水物基の前駆体を有するブロック共重合体(A)自体が分解する傾向がある。
【0079】
酸無水物基の前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を高温下で加熱する方法としては、前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を重合体溶液の状態で加圧下で加熱してもよく、重合体溶液から溶剤を蒸発、除去しながら加熱してもよく、前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を直接、加熱溶融してもよいが、酸無水物基への反応性や、製造の簡便さなどの点で、前駆体を有するアクリル系ブロック共重合体を直接、加熱溶融することが好ましく、溶融混練することがより好ましい。
【0080】
カルボキシル基(d)は、強い凝集力をもち、カルボキシル基を有する単量体はガラス転移温度(Tg)が高く、ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させる効果を有する。ヒドロキシル基などの官能基も水素結合能を有するが、上記の官能基を有する単量体に比較するとTgも低く、耐熱性を向上させる効果は小さい。たとえば、ポリメタアクリル酸が228℃と高く、これらを構成する単量体を導入することでブロック共重合体(A)の耐熱性を向上できる。よって、ブロック共重合体(A)の耐熱性や凝集力のさらなる向上の点から、必要に応じてカルボキシル基(d)を導入してもよい。
【0081】
カルボキシル基(d)の導入方法は、カルボキシル基(d)を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基(d)の前駆体となる官能基の形でブロック共重合体(A)に導入し、そののちに公知の化学反応で官能基を生成させることができる。たとえば、特開2001−234147号公報、特開平10−298248号公報に開示されるように、メタアクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体(A)を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応によってカルボキシル基(d)を生成させる方法がある。また、その他の方法として前記の酸無水物基(c)をブロック共重合体(A)に導入する過程で、あるいは酸無水物基(c)を加水分解することによって生成することもできる。カルボキシル基(d)の導入方法については、特に限定されないが、カルボキシル基を有する単量体を重合条件下で直接重合して導入する場合には、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させてしまう場合があったり、コスト面で問題があったり、製造が煩雑になるなどの傾向があることから、酸無水物基(c)をブロック共重合体(A)に導入する過程で生成することが好ましく、カルボキシル基(d)の導入量の制御や導入が容易であることなどから酸無水物基(c)を加水分解することによって生成することがより好ましい。
【0082】
カルボキシル基(d)をブロック共重合体(A)への酸無水物基(c)の導入の過程で生成させる方法としては、以下に記載する方法があげられる。一般式(2)で示される単位を有するブロック共重合体(A)において、一般式(2)で示される単位は、高温下で隣接するエステルユニットと脱離、環化し、酸無水物基(c)を生成する。この際、エステルユニットが分解してカルボキシル基(d)を生成し、それに引き続き、環化が起こり酸無水物基が生成する経路を一部有する。これを利用して、一般式(2)で示される単位の種類や含有量に応じて、加熱温度や時間を適宜調整することでカルボキシル基(d)を導入することができる。この方法では、カルボキシル基(d)が高温下で隣接するエステルユニットと環化しやすい傾向があることから、カルボキシル基(d)を高含有量導入する場合には、酸無水物基(c)を加水分解することによって導入する方法が好ましい。カルボキシル基(d)をブロック共重合体(A)への酸無水物基(c)への導入の過程で生成させる場合、前記酸無水物基(c)の導入方法と同様に、酸無水物の前駆体を有するブロック共重合体(A)を重合体溶液の状態で加圧下で加熱してもよく、酸無水物基の前駆体を有するブロック共重合体(A)を直接、加熱、溶融してもよい。製造の簡便さなどの点で、酸無水物基の前駆体を有するブロック共重合体(A)を溶融混練することがより好ましい。
【0083】
カルボキシル基(d)を、酸無水物基(c)を加水分解して開環することにより好適に生成する場合、加水分解する方法は特に限定されず、酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を水と共に加圧下にて加熱してもよく、酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を水と共に溶融混練してもよい。製造の簡便性から酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を水とともに溶融混練することが好ましい。
【0084】
前記酸無水物基(c)およびカルボキシル基(d)を有する単量体の含有量は、酸無水物基(c)およびカルボキシル基(d)の凝集力、反応性、ブロック共重合体(A)の構造および組成、ブロック共重合体(A)を構成するブロックの数、ガラス転移温度、ならびに、酸無水物基(c)およびカルボキシル基(d)の含有される部位および様式によって変化する。そのため、必要に応じて設定すればよく、ブロック共重合体(A)には、それぞれ0.1〜99.9重量%の範囲で導入することができるが、ブロック共重合体(A)全体中の0.1重量%以上が好まく、0.5重量%以上がより好ましい。0.1重量%未満であると、ブロック共重合体(A)の耐熱性の向上や、相溶性を改善する場合には改善効果が充分でなくなる傾向がある。
【0085】
酸無水物基(c)およびカルボキシル基(d)は、それぞれ(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に導入してもよいし、アクリル系重合体ブロック(b)に導入してもよく、両方のブロックに導入してもよいが、ブロック共重合体(A)の耐熱性を向上させる場合には(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に導入することが好ましく、ビニル系重合体(B)との相溶性を改善する場合にはアクリル系重合体ブロック(b)に導入することが好ましい。
【0086】
(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)に導入する場合、添加量は、(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)の0.1〜99.9重量%であることが好ましく、0.5〜99.9重量%であることがより好ましい。0.1重量%未満であると、耐熱性の向上効果が充分でない傾向にある。酸無水物基(c)およびカルボキシル基(d)の導入量が多いほど耐熱性が向上するが、コスト面や、得られる熱可塑性エラストマーの物性などに応じて適宜設定すればよい。
【0087】
アクリル系重合体ブロック(b)に導入する場合、含有量は、アクリル系重合体ブロック(b)の0.1〜60重量%であることが好ましく、0.5〜50重量%がより好ましい。0.1重量%より少ない場合、ビニル系重合体(B)との相溶性向上効果が充分でない傾向があり、60重量%より多いと、ブロック(b)自体のガラス転移温度が高くなり、ブロック共重合体(A)の柔軟性やゴム弾性が低下する傾向にある。
【0088】
本発明のビニル系重合体(B)の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されないが、モノマーの入手性や重合容易性、耐油性や耐熱性の点から、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマーおよびケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0089】
これらの中でも、組み合わせるブロック共重合体(A)との相溶性、耐油性、耐熱性の点から、(メタ)アクリル系モノマーを重合して得られる(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
【0090】
(メタ)アクリル系モノマーの中でも、組み合わせるブロック共重合体(A)との相溶性や得られる熱可塑性エラストマーの硬度や耐油性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性の点から、アクリル酸エステル系モノマーであることがさらに好ましい。
【0091】
アクリル酸エステル系モノマーとしては、モノマーのコストや入手容易性、得られる熱可塑性エラストマーの硬度や、耐油性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性の点から、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
【0092】
ビニル系重合体(B)は、主として上記モノマーからなることが好ましい。ここで、「主として」とは、50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。上記モノマーが、50モル%未満では、得られる熱可塑性エラストマーの機械特性が低下したり、耐油性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性が不足する傾向にある。
【0093】
モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩などの芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレンなどのアルケン類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどがあげられる。これらは、少なくとも1種用いることができる。
【0094】
アクリル酸エステルモノマーの中でも、得られる熱可塑性エラストマー組成物の低温特性、コスト、および入手しやすさの点で、アクリル酸−n−ブチルが好ましく、組成物に耐油性が必要な場合は、アクリル酸エチルが好ましい。また、得られる熱可塑性エラストマー組成物に、より低温特性や柔軟性が必要とされる場合やより低硬度な特性が必要とされる場合は、アクリル酸−2−エチルヘキシルが好ましく、さらに、耐油性と低温特性を両立させたいときにはアクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチルの混合物が好ましい。
【0095】
本発明においては、モル比が前記範囲内であれば、上記モノマーを他のモノマーと共重合、さらにはブロック共重合させても構わない。
【0096】
本発明のビニル系重合体(B)の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、なお好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が、1.8以上であると得られる熱可塑性エラストマー組成物の硬度が高くなったり、圧縮永久歪みが悪化したり、機械特性が低下する傾向にある。
【0097】
本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量などはポリスチレン換算で求めることができる。
【0098】
本発明のビニル系重合体(B)の数平均分子量は、500〜1,000,000が好ましく、1,000〜100,000がより好ましく、5,000〜50,000がさらに好ましい。
【0099】
次に、ブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の製造方法について説明する。
【0100】
ビニル系重合体(B)の合成法としては、分子量の制御が容易であること、特定の官能基を分子末端などの特定の位置に導入できるために、制御重合を用いる。
【0101】
また、ブロック共重合体(A)を製造する方法としては、とくに限定されないが、重合体の分子量および構造の制御が容易である点から、制御重合を用いることが好ましい。
【0102】
一般的なラジカル重合法は簡便な方法であるが、この方法では特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使う必要があり、逆に少量使用ではこの特定の官能化率が低い重合体が得られるという問題点がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く粘度の高い重合体しか得られないという問題点もある。
【0103】
制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合、リビングラジカル重合があげられる。なかでも、ブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の重合の容易性や分子量および構造の制御の点から、リビングラジカル重合が好ましい。
【0104】
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは狭義においては、末端が常に活性をもち続ける重合のことを指すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。ここでの定義も後者である。リビングラジカル重合は、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
【0105】
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。
【0106】
本発明のブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の製造方法としては、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さの点などから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0107】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(たとえば、マティジャスツェウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)、1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、28巻、7901頁、サイエンス(Science)、1996年、272巻、866頁、または、澤本(Sawamoto)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報参照)。
【0108】
これらの方法によると、一般的に、非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭い(Mw/Mn=1.1〜1.5)重合体が得られ、分子量を単量体と開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0109】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、1官能性、2官能性、または、多官能性の化合物が使用できる。これらは目的に応じて使い分ければよく、ブロック共重合体(A)を製造する場合において、a−b型のジブロック共重合体を製造する場合は、開始剤の入手のしやすさの点から1官能性化合物が好ましく、a−b−a型、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から2官能性化合物を使用することが好ましく、分岐状ブロック共重合体を製造する場合は、反応工程数、時間の短縮の点から多官能性化合物を使用することが好ましい。また、ビニル系重合体(B)を製造する場合においては、必要とされる架橋性官能基の数や架橋性官能基の種類に応じて使い分ければ良い。
【0110】
また、前記開始剤として高分子開始剤を用いることも可能である。高分子開始剤とは、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物のうち、分子鎖末端にハロゲン原子の結合した重合体からなる化合物である。このような高分子開始剤は、リビングラジカル重合法以外の制御重合法でも製造することが可能であるため、異なる重合法で得られる重合体を結合したブロック共重合体が得られるという特徴がある。
【0111】
1官能性化合物としては、たとえば、
C6H5−CH2X、
C6H5−C(H)(X)−CH3、
C6H5−C(X)(CH3)2、
R4−C(H)(X)−COOR5、
R4−C(CH3)(X)−COOR5、
R4−C(H)(X)−CO−R5、
R4−C(CH3)(X)−CO−R5、
R4−C6H4−SO2X
で示される化合物などがあげられる。
【0112】
式中、C6H5はフェニル基、C6H4はフェニレン基(オルト置換、メタ置換、パラ置換のいずれでもよい)を表わす。R4は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または、炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは、塩素、臭素またはヨウ素を表わす。R5は炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
【0113】
R4で表わされる炭素数1〜20のアルキル基(脂環式炭化水素基を含む)の具体例としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、イソボルニル基などがあげられる。炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、たとえば、フェニル基、トリイル基、ナフチル基などがあげられる。炭素数7〜20のアラルキル基の具体例としては、たとえば、ベンジル基、フェネチル基などがあげられる。
【0114】
R5で表わされる炭素数1〜20の1価の有機基としては、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基などがあげられる。
【0115】
1官能性化合物の具体例としては、たとえば、臭化トシル、2−臭化プロピオン酸メチル、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチル、2−臭化イソ酪酸メチル、2−臭化イソ酪酸エチル、2−臭化イソ酪酸ブチルなどがあげられる。これらのうちでは、アクリル酸エステル単量体の構造と類似しているために重合を制御しやすい点から、2−臭化プロピオン酸エチル、2−臭化プロピオン酸ブチルが好ましい。
【0116】
2官能性化合物としては、たとえば、
X−CH2−C6H4−CH2−X、
X−CH(CH3)−C6H4−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−C6H4−C(CH3)2−X、
X−CH(COOR6)−(CH2)n−CH(COOR6)−X、
X−C(CH3)(COOR6)−(CH2)n−C(CH3)(COOR6)−X
X−CH(COR6)−(CH2)n−CH(COR6)−X、
X−C(CH3)(COR6)−(CH2)n−C(CH3)(COR6)−X、
X−CH2−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−C(CH3)2−X、
X−CH(C6H5)−CO−CH(C6H5)−X、
X−CH2−COO−(CH2)n−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−(CH2)n−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−(CH2)n−OCO−C(CH3)2−X、
X−CH2−CO−CO−CH2−X、
X−CH(CH3)−CO−CO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−CO−CO−C(CH3)2−X、
X−CH2−COO−C6H4−OCO−CH2−X、
X−CH(CH3)−COO−C6H4−OCO−CH(CH3)−X、
X−C(CH3)2−COO−C6H4−OCO−C(CH3)2−X、
X−SO2−C6H4−SO2−X
で示される化合物などがあげられる。
【0117】
式中、R6は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基、または、炭素数7〜20アラルキル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。C6H5、C6H4、Xは、前記と同様である。
【0118】
R6の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例は、R4の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基の具体例と同様である。
【0119】
2官能性化合物の具体例としては、たとえば、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモエチル)ベンゼン、ビス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼン、2,3−ジブロモコハク酸ジメチル、2,3−ジブロモコハク酸ジエチル、2,3−ジブロモコハク酸ジブチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジメチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジエチル、2,4−ジブロモグルタル酸ジブチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジブチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジメチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジブチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジメチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジエチル、2,7−ジブロモスベリン酸ジブチルなどがあげられる。これらのうちでは、原料の入手性の点から、ビス(ブロモメチル)ベンゼン、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモピメリン酸ジエチルが好ましい。
【0120】
多官能性化合物としては、たとえば、
C6H3−(CH2−X)3、
C6H3−(CH(CH3)−X)3、
C6H3−(C(CH3)2−X)3、
C6H3−(OCO−CH2−X)3、
C6H3−(OCO−CH(CH3)−X)3、
C6H3−(OCO−C(CH3)2−X)3、
C6H3−(SO2−X)3
で示される化合物などがあげられる。
【0121】
式中、C6H3は三価のフェニル基(3つの結合手の位置は1〜6位のいずれにある組み合わせでもよい)、Xは前記と同じである。
【0122】
多官能性化合物の具体例としては、たとえば、トリス(ブロモメチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモエチル)ベンゼン、トリス(1−ブロモイソプロピル)ベンゼンなどがあげられる。これらのうちでは、原料の入手性の点から、トリス(ブロモメチル)ベンゼンが好ましい。
【0123】
なお、重合を開始する基以外に、官能基をもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いると、容易に末端または分子内に重合を開始する基以外の官能基が導入された重合体が得られる。このような重合を開始する基以外の官能基としては、アルケニル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、架橋性シリル基などがあげられる。
【0124】
前記官能基をもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物の具体例は、たとえば、特開2003−82192号公報に記載されているものをあげることができる。
【0125】
前記開始剤として用いることができる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲン原子が結合している炭素がカルボニル基またはフェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。
【0126】
開始剤の量は、必要とするブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の分子量に合わせて、単量体とのモル比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の分子量を制御することができる。
【0127】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としては、遷移金属錯体の安定性や原子移動ラジカル重合の制御が容易であることより、周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする金属錯体が好ましい。その中でも、原子移動ラジカル重合の制御がより容易であることより、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄、ならびに、2価のニッケルの錯体が好ましく、さらには、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
【0128】
前記触媒の具体例としては、たとえば、特開2003−82192号公報に記載されているものをあげることができる。
【0129】
たとえば、アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−臭素結合をもつことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機臭化物または臭化スルホニル化合物であり、溶媒がアセトニトリルであることが好ましく、臭化銅、好ましくは臭化第一銅に含まれる銅を中心金属とする金属錯体触媒を用い、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子を用いることが好ましい。
【0130】
また、メタアクリル酸エステルなどのメタアクリル系単量体の重合には、高分子鎖の成長末端が炭素−塩素結合をもつことが重合の制御の点から好ましいことから、使用する開始剤が有機塩化物または塩化スルホニル化合物であり、溶媒がアセトニトリル、必要に応じてトルエンなどとの混合溶媒であることが好ましく、塩化銅、好ましくは塩化第一銅に含まれる銅を中心金属とする金属錯体触媒を用い、ペンタメチルジエチレントリアミンなどの配位子を用いることが好ましい。
【0131】
使用する触媒、配位子の量は、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から決定すればよい。たとえば、分子量の高い重合体を得ようとする場合には、分子量の低い重合体を得ようとする場合よりも、開始剤/単量体の比を小さくしなければならないが、そのような場合に、触媒、配位子を多くして、反応速度を増大させることができる。また、ガラス転移点が室温より高い重合体が生成する場合、系の粘度を下げて撹拌効率を上げるために適当な有機溶媒を添加した場合には、反応速度が低下する傾向があるが、そのような場合には、触媒、配位子を多くして、反応速度を増大させることができる。
【0132】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒中で(塊状重合)、または、各種の溶媒中で行なうことができる。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において、重合を途中で停止させることもできる。
【0133】
溶媒としては、たとえば、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。
【0134】
前記溶媒の具体例は、たとえば、特開2003−82192号公報に記載されているものをあげることができ、少なくとも1種用いることができる。
【0135】
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。また、塊状重合、各種の溶媒中で行なう重合において重合を途中で停止させる場合においても、反応を停止させる点での単量体の転化率は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率(すなわち、反応速度)の関係から適宜決定すればよい。
【0136】
前記重合は、室温〜200℃の範囲、好ましくは50〜150℃の範囲で行なうことができる。
【0137】
本発明の原子移動ラジカル重合には、いわゆるリバース原子移動ラジカル重合も含まれる。リバース原子移動ラジカル重合とは、通常の原子移動ラジカル重合触媒がラジカルを発生させた時の高酸化状態、例えば、Cu(I)を触媒として用いた時のCu(II’)に対し、過酸化物などの一般的なラジカル開始剤を作用させ、その結果として原子移動ラジカル重合と同様の平衡状態を生み出す方法である(Macromolecules 1999,32,2872参照)。
【0138】
ビニル系重合体(B)の架橋性官能基の数は、組成物の架橋性、および架橋物の物性の観点から、平均して1個以上有することが好ましく、より好ましくは1.1個以上4.0個以下、さらに好ましくは1.2個以上3.5個以下である。官能基の数が、平均して1個以上有することで、均一に架橋を行なうことができ、得られる熱可塑性エラストマーにゴム的性質が付与できる。
【0139】
本発明のビニル系重合体(B)を架橋して得られる架橋物にゴム的な性質が要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性官能基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性官能基を分子鎖末端に有するものである。
【0140】
上記架橋性官能基を分子末端に少なくとも1個有するビニル系重合体、中でも(メタ)アクリル系重合体を製造する方法は、特公平3−14068号公報、特公平4−55444号公報、特開平6−211922号公報などに開示されている。しかしながらこれらの方法は上記「連鎖移動剤法」を用いたフリーラジカル重合法であるので、得られる重合体は、架橋性官能基を比較的高い割合で分子鎖末端に有する一方で、Mw/Mnで表される分子量分布の値が一般に2以上と大きく、架橋が不均一になり、得られる熱可塑性エラストマー組成物の硬度が高くなったり、圧縮永久歪みが悪化するという問題を有している。従って、分子量分布が狭く、高い割合で分子鎖末端に架橋性官能基を有するビニル系重合体を得るためには、上記「リビングラジカル重合法」を用いることが好ましい。
【0141】
前記重合により、ブロック共重合体(A)を製造するには、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などがあげられる。これらの方法はいずれによってもよく、目的に応じて使い分ければよいが、製造工程の簡便性の点からは単量体の逐次添加による方法が好ましく、前のブロックの単量体が残存してつぎのブロックに共重合してしまうことを避けたい場合にはあらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法が好ましい。
【0142】
以下に、それぞれの方法について詳細に説明するが、本発明のブロック共重合体(A)の製造方法を限定するものではない。
【0143】
単量体の逐次添加による場合、先に重合させるべく仕込んだ単量体の転化率が80〜95%の時点で、つぎに重合させたい単量体を仕込むことが望ましい。転化率が95%をこえるまで重合を進行させた場合には、高分子鎖の成長反応が確率的におさえられる。また、高分子ラジカル同士が反応しやすくなるために、不均化、カップリング、連鎖移動などの副反応が起こりやすくなる傾向がある。転化率が80%未満の時点で、つぎに重合させたい単量体を仕込んだ場合には、先に重合させるために仕込んだ単量体がつぎに重合させたい単量体と混合して共重合してしまうことが問題となる場合がある。
【0144】
また、単量体の添加の順序としては、まずアクリル系単量体を仕込んで重合させたのちに(メタ)アクリル系単量体を仕込んで重合させる方法が、重合の制御の観点から好ましい。これは、アクリル系重合体ブロックの末端から(メタ)アクリル系重合体ブロックを成長させることが好ましいからである。
【0145】
あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法として、たとえば、1つ目のブロック体の重合度が所望の時点で、リビング状態で一旦温度を下げ、重合を止めて、1つ目のブロックの単量体を減圧留去などしたのち、2つ目のブロックの単量体を添加する方法があげられる。3つ目以降のブロックを重合させたい場合にも、2つ目のブロックの場合と同様に操作すればよい。この方法では、2つ目以降のブロックの重合時に、残存した前のブロックの単量体が共重合してしまうことを避けることができる。
【0146】
また、この場合、ブロックの重合の順序として、まずアクリル系ブロックを重合させたのちに(メタ)アクリル系ブロックを重合させる方法が重合の制御の観点から好ましい。これは、アクリル系重合体ブロックの末端から(メタ)アクリル系重合体ブロックを成長させることが好ましいからである。
【0147】
ここで、アクリル系単量体、(メタ)アクリル系単量体などの転化率の求め方について説明する。転化率を求めるのには、ガスクロマトグラフ(GC)法、重量法などが適用可能である。
【0148】
GC法は、重合系の反応液を反応開始前および反応途中で随時サンプリングしてGC測定し、単量体と重合系内にあらかじめ添加された内部標準物質との存在比から、単量体の消費率を求める方法である。この方法の利点は、複数の単量体が系内に存在している場合でも、それぞれの転化率を独立して求めることができることである。
【0149】
重量法は、重合系の反応液をサンプリングして、その乾燥前の重量と乾燥後の重量から固形分濃度を求め、単量体の全体しての転化率を求める方法である。この方法の利点は、簡単に転化率を求めることができることである。これらの方法のうち、複数の単量体が系内に存在する場合、たとえば、メタアクリル系単量体の共重合成分としてアクリル系単量体が含まれている場合などには、GC法が好ましい。
【0150】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、カルボキシル基、もしくは、スルホニル基を含有する有機酸を添加して金属錯体と金属塩を生成させ、生成した金属錯体を濾過などにより、固形分を除去し、引き続き、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体吸着処理により溶液中に残存する酸などの不純物を除去することで、アクリル系ブロック共重合体樹脂溶液を得ることができる。
【0151】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒および未反応モノマーを除去して、アクリル系ブロック共重合体を単離する。蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横型蒸発方式などを用いることができる。アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横型蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
【0152】
ビニル系重合体(B)に導入する架橋性官能基としては、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1個の官能基であることが好ましい。
【0153】
これらの中でも、触媒や架橋剤の添加により架橋が容易にできる点から、架橋性シリル基、アルケニル基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基が好ましく、均一かつ効率的な架橋反応ができる点、副反反応が生じにくい点で、アルケニル基がより好ましい。
【0154】
本発明の架橋性シリル基としては、一般式(3);
−[Si(R7)2−b(Y)bO]m−Si(R8)3−a(Y)a (3)
{式中、R7、R8は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R7またはR8が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
で表される基があげられる。
【0155】
加水分解性基としては、たとえば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱い易いという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。
【0156】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。とくに、一般式(4)
−Si(R8)3−a(Y)a (4)
(式中、R8、Y、aは前記と同じ)で表される架橋性シリル基が、入手が容易であるので好ましい。
【0157】
なお、特に限定はされないが、架橋性を考慮するとaは2個以上が好ましい。また、aが3個のもの(例えばトリメトキシ官能基)は2個のもの(例えばジメトキシ官能基)よりも架橋性が早いが、貯蔵安定性や力学物性(伸びなど)に関しては2個のものの方が優れている場合がある。架橋性と物性バランスをとるために、2個のもの(例えばジメトキシ官能基)と3個のもの(例えばトリメトキシ官能基)を併用してもよい。
【0158】
本発明におけるアルケニル基は、とくに限定はされないが、一般式(5)で表されるものであることが好ましい。
H2C=C(R9)− (5)
【0159】
式中、R9は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基であり、炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、
−(CH2)n−CH3、−CH(CH3)−(CH2)n−CH3、−CH(CH2CH3)−(CH2)n−CH3、−CH(CH2CH3)2、−C(CH3)2−(CH2)n−CH3、−C(CH3)(CH2CH3)−(CH2)n−CH3、−C6H5、−C6H4(CH3)、−C6H3(CH3)2、−(CH2)n−C6H5、−(CH2)n−C6H4(CH3)、−(CH2)n−C6H3(CH3)2
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
があげられる。R9としては、これらの中でも水素原子が好ましい。
【0160】
さらに、限定はされないが、重合体(B)のアルケニル基が、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
【0161】
アルケニル基と重合体の主鎖の結合形式は、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合などを介して結合されていることが好ましい。
【0162】
本発明におけるアミノ基としては、
−NR10 2
(R10は水素または炭素数1〜20の1価の有機基であり、2個のR10は互いに同一でもよく異なっていてもよく、また、他端において相互に連結し、環状構造を形成していてもよい。)
があげられるが、
−(NR10 3)+X−
(R10は上記と同じ。X−は対アニオン。)
に示されるアンモニウム塩であっても何ら問題はない。
【0163】
炭素数1〜20の1価の有機基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基などがあげられる。
【0164】
重合性の炭素−炭素二重結合を有する基は、好ましくは、一般式(6):
−OC(O)C(R11)=CH2 (6)
(式中、R11は水素、または、炭素数1〜20の一価の有機基を表す)
である。
【0165】
一般式(6)において、R11の具体例としては、特に限定されず、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CN
などがあげられるが、これらの中でも、−H、−CH3が好ましい。
【0166】
架橋性シリル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の合成方法としては、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体に架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を、ヒドロシリル化触媒存在下に付加させる方法(1)があげられるが、これに限定されるものではなく、特開2003−82192号公報に記載されている他の方法もあげることができる。
【0167】
また、アルケニル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、リビングラジカル重合によりビニル系重合体を合成する際に、重合反応の終期、あるいは所定のモノマーの反応終了後に、例えば1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンなどのような重合性の低いアルケニル基を少なくとも2個有する化合物を反応させる方法(2)が、あげれらるが、これに限定されるものではなく、特開2003−82192号公報に記載されている他の方法もあげることができる。
【0168】
前記方法の中でも、アルケニル基を導入する方法にハロゲンが直接関与しない場合には、リビングラジカル重合法を用いてビニル系重合体を合成することが好ましい。制御がより容易である点から方法(2)がより好ましい。
【0169】
方法(1)で、ヒドロシリル化をおこなう際の架橋剤としては、架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物を用いることができる。
【0170】
ヒドロシラン化合物としては、とくに限定されるものではないが、代表的なものを示すと、一般式(7)で示される化合物が例示される。
H−[Si(R7)2−b(Y)bO]m−Si(R8)3−a(Y)a (7)
{式中、R7、R8、Y、a、mは、上記に同じ}
【0171】
これらヒドロシラン化合物の中でも、特に一般式(8)
H−Si(R8)3−a(Y)a (8)
(式中、R8、Y、aは前記に同じ)
で示される化合物が入手容易な点から好ましい。
【0172】
上記の架橋性シリル基を有するヒドロシラン化合物をアルケニル基に付加させる際には、遷移金属触媒が通常用いられる。遷移金属触媒としては、例えば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体があげられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4などがあげられる。
【0173】
本発明のビニル系重合体(B)にアルケニル基を導入する方法としては、前記方法(2)があげられるが、これに限定されるものではなく、特開2003−82192号公報に記載されている他の方法もあげることができる。
【0174】
本発明のビニル系重合体(B)にエポキシ基を導入する方法、アミノ基および水酸基を導入する方法としては、とくに限定されるものではないが、たとえば特開2003−82192号公報に記載されている方法をあげることができる。
【0175】
本発明のビニル系重合体(B)に重合性の炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、下記の一般式(9)で表される末端構造を有するビニル系重合体と、下記の一般式(10)で示される化合物との反応による方法(3)が、あげられるが、これに限定させるものではなく、特開2003−82192号公報に記載されている他の方法もあげることができる。
【0176】
以下、方法(3)について説明する。
−CR12R13X (9)
(式中、R12、R13は、ビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基。Xは、塩素、臭素、または、ヨウ素を表す。)
M+−OC(O)C(R11)=CH2 (10)
(式中、R11は、上記と同じ。M+はアルカリ金属、または4級アンモニウムイオンを表す。)
【0177】
一般式(9)で表される末端構造を有するビニル系重合体は、上記有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する方法、あるいは、ハロゲン化合物を連鎖移動剤としてビニル系モノマーを重合する方法により製造されるが、好ましくは前者である。
【0178】
一般式(10)で表される化合物としては特に限定されないが、R11の具体例としては、上記と同様のものがあげられ、好ましくは−H、−CH3である。
【0179】
M+はオキシアニオンの対カチオンであり、アルカリ金属イオンまたは4級アンモニウムイオンを表す。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどがあげられ、好ましくは、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである。上記4級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、トリメチルベンジルアンモニウムイオン、トリメチルドデシルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、ジメチルピペリジニウムイオンなどがあげられるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンである。
【0180】
一般式(10)のオキシアニオンの使用量は、一般式(9)のハロゲン基に対して、好ましくは1〜5当量、さらに好ましくは1〜1.2当量である。
【0181】
この反応を実施する溶媒としては特に限定はされないが、求核置換反応であるため極性溶媒が好ましく、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリルなどが用いられる。反応を行なう温度は限定されないが、一般に0〜150℃で、重合性の末端基を保持するために好ましくは室温〜100℃で行なうことが好ましい。
【0182】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、各架橋性官能基に応じて、架橋触媒や架橋剤が必要になるものがある。また、目的とする物性に応じて、各種の配合剤を添加しても構わない。
【0183】
架橋性シリル基を有する重合体は、従来公知の各種縮合触媒の存在下、あるいは非存在下にシロキサン結合を形成することにより架橋、硬化する。
【0184】
このような縮合触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレートなどの4価のスズ化合物類;オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫などの2価のスズ化合物類;モノブチル錫トリスオクトエートやモノブチル錫トリイソプロポキシドなどのモノブチル錫化合物やモノオクチル錫化合物などのモノアルキル錫類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類;オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N−メチルモルホリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン系化合物、あるいはこれらのアミン系化合物のカルボン酸などとの塩;ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物あるいは混合物のようなアミン系化合物と有機錫化合物との反応物および混合物;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤;などのシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒などの公知のシラノール縮合触媒などが例示できる。これらの触媒は、少なくとも1種用いることができる。
【0185】
この縮合触媒の配合量は、ビニル系重合体100重量部に対して0.1〜20重量部程度が好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。シラノール縮合触媒の配合量がこの範囲を下回ると架橋速度が遅くなることがあり、また架橋反応が充分に進行し難くなる場合がある。一方、シラノール縮合触媒の配合量がこの範囲を上回ると架橋時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な架橋物が得られ難くなる。なお、特に限定はされないが、架橋性を制御するために錫系架橋触媒を用いるのが好ましい。
【0186】
本発明の組成物においては、縮合触媒の活性をより高めるために、一般式(11)
R14 aSi(OR15)4−a (11)
(式中、R14およびR15は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の置換あるいは非置換の炭化水素基である。さらに、aは0、1、2、3のいずれかである。)で示されるシラノール基をもたないケイ素化合物を添加してもかまわない。
【0187】
前記ケイ素化合物としては、限定はされないが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、トリフェニルメトキシシランなどの一般式(11)中のR14が、炭素数6〜20のアリール基であるものが、組成物の架橋反応を加速する効果が大きいために好ましい。特に、ジフェニルジメトキシシランやジフェニルジエトキシシランは、低コストであり、入手が容易であるために最も好ましい。
【0188】
このケイ素化合物の配合量は、ビニル系重合体100重量部に対して0.01〜20重量部程度が好ましく、0.1〜10重量部がさらに好ましい。ケイ素化合物の配合量がこの範囲を下回ると架橋反応を加速する効果が小さくなる場合がある。一方、ケイ素化合物の配合量がこの範囲を上回ると、架橋物の硬度や引張強度が低下し、それによって得られる熱可塑性エラストマー組成物の機械特性が低下することがある。
【0189】
アルケニル基を用いて架橋させる場合は、架橋方法は特に限定されず、ラジカル開始剤などの触媒を用いてラジカル架橋させたり、ヒドロシリル基含有化合物を架橋剤とし、ヒドロシリル化触媒を用いてヒドロシリル化反応により架橋させることができるが、均一かつ効率的な架橋反応ができる点から、ヒドロシリル化反応により架橋させることが好ましい。
【0190】
ヒドロシリル化反応の場合、ヒドロシリル基含有化合物としては、アルケニル基を有する重合体と架橋により硬化できるヒドロシリル基含有化合物であれば特に制限はなく、各種のものを用いることができる。例えば、一般式(12)または(13)で表される鎖状ポリシロキサン;
(式中、R16およびR17は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R18は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。aは0≦a≦100、bは2≦b≦100、cは0≦c≦100を満たす整数を示す。)
一般式(14)で表される環状シロキサン;
【0191】
【化4】
【0192】
(式中、R19およびR20は炭素数1〜6のアルキル基、または、フェニル基、R21は炭素数1〜10のアルキル基またはアラルキル基を示す。dは0≦d≦8、eは2≦e≦10、fは0≦f≦8の整数を表し、かつ3≦d+e+f≦10を満たす。)
などの化合物を用いることができる。
【0193】
これらは少なくとも1種用いることができる。これらのシロキサンの中でも(メタ)アクリル系重合体との相溶性の観点から、フェニル基を有する下記一般式(15)、(16)で表される鎖状シロキサンや、一般式(17)、(18)で表される環状シロキサンが好ましく、(16)で表される鎖状シロキサンがより好ましい。
(式中、R22は水素またはメチル基を示す。gは2≦g≦100、hは0≦h≦100の整数を示す。C6H5はフェニル基を示す。)
【0194】
【化5】
【0195】
(式中、R23は水素、またはメチル基を示す。iは2≦i≦10、jは0≦j≦8、かつ3≦i+j≦10を満たす整数を示す。C6H5はフェニル基を示す。)
【0196】
ヒドロシリル基含有化合物としてはさらに、分子中に2個以上のアルケニル基を有する低分子化合物に対し、一般式(12)から(18)に表されるヒドロシリル基含有化合物を、反応後にも一部のヒドロシリル基が残るようにして付加反応させて得られる化合物を用いることもできる。分子中に2個以上のアルケニル基を有する化合物としては、各種のものを用いることができる。例示するならば、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエンなどの炭化水素系化合物、o,o’−ジアリルビスフェノールA、3,3’−ジアリルビスフェノールAなどのエーテル系化合物、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテートなどのエステル系化合物、ジエチレングリコールジアリルカーボネートなどのカーボネート系化合物があげられる。
【0197】
上記一般式(12)から(18)に示した過剰量のヒドロシリル基含有化合物に対し、ヒドロシリル化触媒の存在下、前記アルケニル基含有化合物をゆっくり滴下することにより該化合物を得ることができる。このような化合物のうち、原料の入手容易性、過剰に用いたシロキサンの除去のしやすさ、さらにはビニル系重合体(B)成分の重合体への相溶性を考慮して、下記のものが好ましい。
【0198】
【化6】
【0199】
重合体と架橋剤は任意の割合で混合することができるが、架橋性の面から、アルケニル基とヒドロシリル基のモル比が5〜0.1の範囲にあることが好ましく、さらに、2.5〜0.2であることが特に好ましい。モル比が5以上になると架橋が不充分でべとつきのある強度の小さい架橋物しか得られず、また、0.1より小さいと、架橋後も架橋物中に活性なヒドロシリル基が大量に残るので、クラック、ボイドが発生し、均一で強度のある架橋物が得られない。
【0200】
重合体と架橋剤との架橋反応は、2成分を混合して加熱することにより進行するが、反応をより迅速に進めるために、ヒドロシリル化触媒を添加することができる。このようなヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、例えば、有機過酸化物やアゾ化合物などのラジカル開始剤、および遷移金属触媒があげられる。
【0201】
ラジカル開始剤としては特に限定されず、例えば、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)イソプロピルベンゼンのようなジアルキルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、m−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド、過安息香酸−t−ブチルのような過酸エステル、過ジ炭酸ジイソプロピル、過ジ炭酸ジ−2−エチルヘキシルのようなペルオキシジカーボネート、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのようなペルオキシケタールなどをあげることができる。これらのうち、臭気性、着色性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン‐3が好ましい。
【0202】
また、遷移金属触媒としては、とくに限定されないが、たとえば、白金単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に白金固体を分散させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体、白金(0)−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体があげられる。白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh3)3,RhCl3,RuCl3,IrCl3,FeCl3,AlCl3,PdCl2・H2O,NiCl2,TiCl4などがあげられる。これらの触媒は少なくとも1種用いることができる。
【0203】
これらのうち、相溶性、架橋効率、スコーチ安定性の点で、白金化合物が好ましく、白金ビニルシロキサンがより好ましい。
【0204】
触媒量としては特に制限はないが、ビニル系重合体(B)のアルケニル基1molに対し、10−1〜10−8molの範囲で用いるのがよく、好ましくは10−3〜10−6molの範囲で用いるのがよい。10−8molより少ないと架橋が充分に進行しない。またヒドロシリル化触媒は高価であるので10−1molをこえないのが好ましい。
【0205】
ラジカル架橋の場合、触媒としては有機過酸化物などのラジカル開始剤が触媒として用いられる。ラジカル開始剤としては特に限定されず、前記ラジカル開始剤を用いることができる。
【0206】
ラジカル開始剤の配合量は、ビニル系重合体(B)100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
【0207】
また、ラジカル開始剤による架橋処理に際し、架橋効率を向上させる点から、エチレン系不飽和基を有する架橋助剤を配合することが好ましい。エチレン系不飽和基とは、例えばジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多官能性ビニルモノマー、またはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマーなどである。これらは少なくとも1種用いることができる。このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0208】
その中でも特に、エチレングリコールジメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが取扱いやすく、パーオキサイド可溶化作用を有し、パーオキサイドの分散助剤として働くため、熱処理による架橋効果が均一かつ効果的で、硬さとゴム弾性のバランスのとれた架橋熱可塑性エラストマー組成物が得られるため好ましい。
【0209】
上記架橋助剤の添加量は、添加時におけるビニル系重合体(B)100重量部に対して0.5〜10.0重量部の範囲が好ましい。架橋助剤の添加量が0.5重量部を下回れば架橋助剤としての効果が得られず、10重量部を越えると架橋助剤の単独のゲル化がすすみ物性低下をもたらすおそれがあり、またコストが高価になものになる。
【0210】
本発明の水酸基を有する重合体は、水酸基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物を架橋剤として用いることにより、均一に架橋する。架橋剤の具体例としては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート化合物、メチロール化メラミンおよびそのアルキルエーテル化物または低縮合化物などのアミノプラスト樹脂、多官能カルボン酸およびそのハロゲン化物などがあげられる。これらの架橋剤を使用して架橋物を作製する際には、それぞれ適当な架橋触媒を使用することができる。
【0211】
本発明のアミノ基を有する重合体は、アミノ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物を架橋剤として用いることにより、均一に架橋する。架橋剤の具体例としては、例えば、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート化合物、メチロール化メラミンおよびそのアルキルエーテル化物または低縮合化物などのアミノプラスト樹脂、多官能カルボン酸およびそのハロゲン化物などがあげられる。これらの架橋剤を使用して硬化物を作製する際には、それぞれ適当な架橋触媒を使用することができる。
【0212】
本発明のエポキシ基を有する重合体の架橋剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン類、脂環族アミン類、芳香族アミン類;酸無水物;ポリアミド;イミダゾール類;アミンイミド;ユリア;メラミンとその誘導体;ポリアミンの塩;フェノール樹脂;ポリメルカプタン、ポリスルフィド;芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリルスルホニウム塩、トリアリルセレニウム塩などの光・紫外線硬化剤などが用いられる。
【0213】
重合性の炭素−炭素二重結合を有する重合体は、その重合性の炭素−炭素二重結合の重合反応により架橋させることができる。
【0214】
架橋の方法としては、活性エネルギー線で架橋するもの、あるいは、熱で架橋するものがあげられるが、熱で架橋するものが好ましい。熱で架橋するものにおいては、熱重合開始剤が、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸物、およびレドックス開始剤からなる群より選択されるものであるが好ましい。
【0215】
重合性の炭素−炭素二重結合を有する重合体を架橋させる場合には、その目的に応じて、重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーや各種添加剤を併用しても構わない。重合性のモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、ラジカル重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマー、あるいはアニオン重合性の基を持つモノマーおよび/またはオリゴマーが好ましい。ラジカル重合性の基としては、(メタ)アクリル基などのアクリル官能性基、スチレン基、アクリロニトリル基、ビニルエステル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基、塩化ビニル基などがあげられる。なかでも、本発明の重合体と類似する(メタ)アクリル基を持つものが好ましい。アニオン重合性の基としては、(メタ)アクリル基、スチレン基、アクリロニトリル基、N−ビニルピロリドン基、アクリルアミド基、共役ジエン基、ビニルケトン基などがあげられる。なかでも、アクリル官能性基を持つものが好ましい。
【0216】
上記のモノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート系モノマー、環状アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン系モノマー、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド系モノマー、共役ジエン系モノマー、ビニルケトン系モノマーなどがあげられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニルや下式の化合物などをあげることができる。
【0217】
【化7】
【0218】
【化8】
【0219】
【化9】
【0220】
【化10】
【0221】
【化11】
【0222】
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレンなどが、アクリルアミド系モノマーとしてはアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどが、共役ジエン系モノマーとしてはブタジエン、イソプレンなどが、ビニルケトン系モノマーとしてはメチルビニルケトンなどがあげられる。
【0223】
多官能モノマーとしては、ネオペンチルグリコールポリプロポキシジアクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリアクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジアクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジアクリレート、ジペンタエリスリトールポリヘキサノリドヘキサクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートポリヘキサノリドトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート2−(2−アクリロイルオキシ−1,1−ジメチル)−5−エチル−5−アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン、テトラブロモビスフェノールAジエトキシジアクリレート、4,4−ジメルカプトジフェニルサルファイドジメタクリレート、ポリテトラエチレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどがあげられる。
【0224】
オリゴマーとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂などのエポキシアクリレート系樹脂、COOH基変性エポキシアクリレート系樹脂、ポリオール(ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコールとアジピン酸のポリエステルジオール、ε−カプロラクトン変性ポリエステルジオール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端水添ポリイソプレン、水酸基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリイソブチレンなど)と有機イソシアネート(トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど)から得られたウレタン樹脂を水酸基含有(メタ)アクリレート{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなど}を反応させて得られたウレタンアクリレート系樹脂、上記ポリオールにエステル結合を介して(メタ)アクリル基を導入した樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂などがあげられる。
【0225】
これらのモノマーおよびオリゴマーは、用いられる開始剤および架橋条件により選択される。
【0226】
また、アクリル官能性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーの数平均分子量は、2000以下であることが好ましく、1000以下であることが、相溶性が良好であるという理由からさらに好ましい。
【0227】
本発明に用いられる熱重合開始剤としては特に制限はないが、アゾ系開始剤、過酸化物、過硫酸塩、およびレドックス開始剤が含まれる。
【0228】
適切なアゾ系開始剤としては、限定されるわけではないが、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO 33)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(VAZO 50)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(VAZO 52)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(VAZO 64)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(VAZO 67)、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO 88)(全てDuPont Chemicalから入手可能)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、および2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)(V−601)(和光純薬より入手可能)などがあげられる。
【0229】
適切な過酸化物開始剤としては、限定されるわけではないが、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(Perkadox 16S)(Akzo Nobelから入手可能)、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート(Lupersol 11)(Elf Atochemから入手可能)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox 21−C50)(Akzo Nobelから入手可能)、および過酸化ジクミルなどがあげられる。
【0230】
適切な過硫酸塩開始剤としては、限定されるわけではないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、および過硫酸アンモニウムがあげられる。
【0231】
適切なレドックス(酸化還元)開始剤としては、限定されるわけではないが、上記過硫酸塩開始剤のメタ亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムのような還元剤との組み合わせ;有機過酸化物と第3級アミンに基づく系、例えば過酸化ベンゾイルとジメチルアニリンに基づく系;並びに有機ヒドロパーオキシドと遷移金属に基づく系、例えばクメンヒドロパーオキシドとコバルトナフテートに基づく系などがあげられる。
【0232】
他の開始剤としては、限定されるわけではないが、1,1,2,2−テトラフェニルエタンジオールのようなピナコールなどがあげられる。
【0233】
好ましい熱重合開始剤としては、アゾ系開始剤および過酸化物系開始剤からなる群から選ばれる。さらに好ましいものは、2,2’−アゾビス(メチルイソブチレ−ト)、t−ブチルパーオキシピバレート、およびジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、並びにこれらの混合物である。
【0234】
本発明に用いられる熱重合開始剤は触媒的に有効な量で存在し、このような量は、限定はされないが、典型的には、本発明の少なくとも一つの末端にアクリル官能性基を有する重合体および他に添加されるモノマーおよびオリゴマー混合物の合計量を100重量部とした場合に約0.01〜5重量部、より好ましくは約0.025〜2重量部である。開始剤の混合物が使用される場合には、開始剤の混合物の合計量は、あたかもただ1種の開始剤が使用されるかのような量である。
【0235】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)を、(A):(B)=90:10〜10:90の重量比で含有し、ゴム弾性および成形性の観点からは80:20〜20:80の重量費で含有していることが好ましく、70:30〜30:70の重量比で含有していることがより好ましい。
【0236】
ブロック共重合体(A)の含有量が90重量%より多いと、エラストマー組成物の圧縮永久歪みが大きくなる傾向にあり、ゴム弾性の観点から不利である。ビニル系共重合体ゴム(B)の含有量が90重量%より多いと、(B)の架橋度が低い場合には成形時の粘着のために成形性が不良になり、(B)の架橋が充分にされている場合にはエラストマー組成物の溶融粘度が高くなるために成形性が不良になる。
【0237】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、ビニル系重合体(B)をあらかじめ製造してから(ゴムを予め架橋してから)ブロック共重合体(A)と混合する場合、およびブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)を共に溶解する溶媒を用いて混合あるいは溶融混練した後に架橋する場合、およびブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)とを溶融混合する際に同時にビニル系重合体(B)を架橋する、つまり溶融混練時に動的に架橋(動的架橋)する場合があるが、得られる熱可塑性エラストマーの成形性や機械強度の点から溶融混練時に動的に架橋したものが好ましい。動的架橋した場合、熱可塑性エラストマー組成物中のビニル系重合体(B)の架橋粒子径が小さくなる傾向があることから、成形性や機械強度が向上する傾向にある。
【0238】
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、その相形態(モルフォロジー)が、(l)ブロック共重合体(A)の連続相中にビニル系重合体(B)の架橋体が分散している相形態を有しているか、または(m)ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の架橋体が共連続相をなす相形態を有していることが、成形性および、機械特性の点で好ましい。
【0239】
そして、上記(l)の相形態は、一般にブロック共重合体(A)の比率が多い熱可塑性エラストマー組成物において形成され、一方上記(m)の相形態は、一般にビニル系重合体(B)の架橋体の比率が高い熱可塑性エラストマー組成物において形成されやすい。
【0240】
なお、ここでいう「ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の架橋体が共連続相をなす」とは、ブロック共重合体(A)の連続相中にビニル系重合体(B)の架橋体が島状に分散した状態(点在した状態)になっていたり、または逆にビニル系重合体(B)の架橋体の連続相中にブロック共重合体(A)が島状に分散した状態(点在した状態)になっておらずに、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の架橋体とが連続した境界(線)を形成して存在している相形態をいう。
【0241】
熱可塑性エラストマー組成物が、上記(l)または(m)の相形態を有していると、熱可塑性エラストマー組成物の成形性が良好になり、圧縮永久歪みおよび圧縮永久伸びの小さい成形品が製造できる。その際に、ビニル系重合体(B)の架橋体の粒子径が好ましくは20μm以下、より好ましくは0.1〜15μm、さらに好ましくは0.1〜10μmの場合に、特に優れた前記の諸特性を有する成形品を得ることができる。
【0242】
一方、上記(l)および(m)の相形態とは異なり、ビニル系重合体(B)の架橋体の連続相中にブロック共重合体(A)が分散しているような相形態の場合は熱可塑性エラストマー組成物の溶融流動性が低下して、溶融成形品により得られる成形品の表面性が悪化したり、物性の低下が生じ易い傾向にある。
【0243】
熱可塑性エラストマー組成物における相形態は、熱可塑性エラストマー組成物におけるブロック共重合体(A)、ビニル系重合体(B)、架橋剤、添加剤などの成分の含有量、熱可塑性エラストマー組成物を調製する際の溶融混合方法や溶融混合条件、ブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の溶融粘度などによって影響を受ける。
【0244】
特に、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)とを溶融混合する際に同時にビニル系重合体(B)を架橋する(すなわち溶融混練時に動的に架橋(動的架橋))する場合には、上記(l)の相形態は、ブロック共重合体(A)の溶融粘度がビニル系重合体(B)の溶融粘度よりも低い場合にも形成されやすく、一方上記(m)の相形態は、ブロック共重合体(A)の溶融粘度がビニル系重合体(B)の溶融粘度よりも高い場合にも形成されやすい。
【0245】
また、ビニル系重合体(B)の含有量の変化による相形態の変化は連続的に生じ、上記(l)の相形態から上記(m)の相形態への明確な転移点を見出すのはかなり困難な場合が多い。したがって、上記した点を種々調節して、上記した(l)または(m)のいずれかの相形態になるようにしてエラストマー組成物の調製を行うことが好ましい。
【0246】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、熱可塑性樹脂を添加してもよい。この熱可塑性樹脂を添加することにより、熱可塑性エラストマー組成物の機械強度などの向上を行うことができる。
【0247】
熱可塑性樹脂としては、たとえば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン共重合樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、およびポリアミドイミド樹脂などがあげられる。これらは少なくとも1種用いることができる。ただし、熱可塑性樹脂はこれらに限定されるものではなく、種々の熱可塑性樹脂を用いることができ、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アミド系エラストマーなども用いることができる。
【0248】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、各種柔軟性付与剤を添加してもよい。柔軟性付与剤を添加することにより、熱可塑性エラストマー組成物の低硬度化や伸びを大きくできる。また、後述する充填剤と併用して使用すると架橋物の伸びを大きくできたり、多量の充填剤を混合できたりするためにより有利となる。
【0249】
柔軟性付与剤としては、例えば、熱可塑性樹脂やゴムに通常配合される可塑剤;プロセスオイルなどの軟化剤;オリゴマー;動物油、植物油などの油分;灯油、重油、軽油、ナフサなどの石油留分などの化合物があげられるが、それらに限定されるものではない。軟化剤としては、プロセスオイルがあげられ、より具体的にはパラフィンオイル;ナフテン系プロセスオイル;芳香族系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイルなどがあげられる。
【0250】
可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸オクチルデシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸−β−ヒドロキシエチル−2−エチルヘキシルなどのフタル酸誘導体;ジメチルイソフタレートのようなイソフタル酸誘導体;ジ−(2−エチルヘキシル)テトラヒドロフタル酸のようなテトラヒドロフタル酸誘導体;アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチルジグリコールなどのアジピン酸誘導体;アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸誘導体;セバシン酸ジブチルなどのセバシン酸誘導体;ドデカン−2−酸誘導体;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのマレイン酸誘導体;フマル酸ジブチルなどのフマル酸誘導体;p−オキシ安息香酸−2−エチルヘキシルなどのp−オキシ安息香酸誘導体;トリメリト酸トリス−2−エチルヘキシルなどのトリメリト酸誘導体;ピロメリト酸誘導体;クエン酸アセチルトリブチルなどのクエン酸誘導体;イタコン酸誘導体;オレイン酸誘導体;リシノール酸誘導体;ステアリン酸誘導体;その他脂肪酸誘導体;スルホン酸誘導体;リン酸誘導体;グルタル酸誘導体;アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸などの二塩基酸とグリコールおよび一価アルコールなどとのポリマーであるポリエステル系可塑剤、グルコール誘導体、グリセリン誘導体、塩素化パラフィンなどのパラフィン誘導体、エポキシ誘導体ポリエステル系重合型可塑剤、ポリエーテル系重合型可塑剤、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート誘導体、N−ブチルベンゼンスルホンアミド、N−エチルトルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシルトルエンスルホンアミドなどのスルホンアミド誘導体;アクリル系可塑剤を始めとするビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体類などがあげられる。本発明において可塑剤はこれらに限定されることがなく、種々の可塑剤を用いることができ、ゴム用または熱可塑性樹脂用可塑剤として広く市販されているものも用いることができる。
【0251】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、各種充填材を必要に応じて用いてもよい。充填材としては、特に限定されないが、木粉、パルプ、木綿チップ、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、クルミ殻粉、もみ殻粉、グラファイト、ケイソウ土、白土、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、カーボンブラックのような補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、べんがら、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、亜鉛末、炭酸亜鉛およびシラスバルーンなどのような充填材;石綿、ガラス繊維およびガラスフィラメント、炭素繊維、ケブラー繊維、ポリエチレンファイバーなどのような繊維状充填材などがあげられる。
【0252】
これら充填材のうちでは沈降性シリカ、フュームドシリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルクなどが好ましい。
【0253】
また、シリカの場合は、その表面がオルガノシランやオルガノシラザン、ジオルガノポリシロキサンなどの有機ケイ素化合物で予め疎水処理されたシリカを用いてもよい。さらに、炭酸カルシウムは、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルなどの有機物や各種界面活性剤、および、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤などの各種カップリング剤などの表面処理剤を用いて表面処理を施してあるものを用いてもよい。
【0254】
充填材を用いる場合の添加量は、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の合計100重量部に対して、充填材を5〜1000重量部の範囲で使用するのが好ましく、20〜500重量部の範囲で使用するのがより好ましく、40〜300重量部の範囲で使用するのが特に好ましい。配合量が5重量部未満の場合には、架橋物の破断強度、破断伸び、接着性と耐候接着性の改善効果が充分でないことがあり、1000重量部を越えると該架橋性組成物の作業性が低下することがある。充填材は少なくとも1種用いることができる。
【0255】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性を有し低硬度であることから加工性の改善や樹脂表面の低摩擦化のために、各種滑剤を必要に応じて用いてもよい。
【0256】
滑剤としては、たとえば、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、モンタン酸系ワックスなどのワックス類、低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレンなどの低分子量ポリオレフィン、ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン、ククタデシルアミン、リン酸アルキル、脂肪酸エステル、エチレンビスステアリルアミドなどのアミド系滑剤、4フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂粉末、二硫化モリブデン粉末、シリコーン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、シリカなどがあげられる。これらは少なくとも1種用いることができる。なかでもコスト面や加工性に優れるステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0257】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、相溶化剤として種々のグラフトポリマーやブロックポリマーを添加してもよい。相溶化剤を添加することで、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)との相溶性を向上させ、機械特性を向上することができる。
【0258】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマーの緒物性の調整を目的として、必要に応じて、上記以外の各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤として安定剤、難燃剤、顔料、離型剤、帯電防止剤、抗菌抗カビ剤、発泡剤などを添加してもよい。
【0259】
このような添加物の具体例は、たとえば、特公平4−69659号公報、特公平7−108928号公報、特開昭63−254149号公報、特開昭64−22904号公報などに記載されている。これらの添加剤は、必要とされる物性や、使用される用途などに応じて、適宜最適なものを選択すればよい。
【0260】
上記の安定剤としては、トリフェニルホスファイト、ヒンダードフェノール、ジブチル錫マレエートなどの化合物があげられるが、それらに限定されない。これらは少なくとも1種用いることができる。
【0261】
前記の難燃剤としては、つぎの化合物があげられるが、それらに限定されない:トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、デカブロモビフェニル、デカブロモビフェニルエーテル、三酸化アンチモンなど。これらは少なくとも1種用いることができる。
【0262】
前記の顔料としては、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化亜鉛などがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらは少なくとも1種用いることができる。
【0263】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は特に限定されず、ブロック共重合体(A)、ビニル系重合体(B)および場合により用いられる前記の成分が均一に混合され得る方法であればいずれも採用できる。
【0264】
例えば、加熱と混練とを同時に行い得る種々の装置が使用可能であって、攪拌翼を備えた反応容器、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどのような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置、単軸押出機、二軸押出機などのように連続式の溶融混練装置が使用できる。
【0265】
ビニル系重合体(B)を予め架橋してからブロック共重合体(A)と混合し、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合において、前記の密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を用いる場合、あらかじめ架橋しておいたビニル系重合体(B)とブロック共重合体(A)を溶融混練してもよいし、装置内で、ビニル系重合体(B)を架橋させた後にブロック共重合体(A)を添加して溶融混練してもよい。前記の連続式溶融混練装置を用いる場合も同様に、予め架橋しておいたビニル系重合体(B)とブロック共重合体(A)を溶融混練してもよいし、ビニル系重合体(B)を架橋させた後にブロック共重合体(A)を添加して溶融混練してもよい。ビニル系重合体(B)を架橋させた後にブロック共重合体(A)を添加して溶融混練する場合には、押出機のシリンダーの途中から架橋剤を添加してさらに溶融混練し、ついで、別に設けた押出機のシリンダーの途中からブロック共重合体(A)を添加することが好ましい。
【0266】
ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)を共に溶解する溶剤を用いて混合あるいは溶融混練した後に架橋し、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合は、前記の密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を用いることが好ましい。
【0267】
ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の溶融混合時に、ビニル系重合体(B)を動的に架橋し、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合において、前記の密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を用いる場合、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)を予め混合し均一になるまで溶融混練し、ついでそれに架橋剤および/または架橋触媒を添加して架橋反応が充分に進行した後に溶融混練を停止する方法を採用することができる。
【0268】
また、連続式の溶融混練装置を用いて製造する場合は、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)をあらかじめ押出機などの溶融混練装置によって均一になるまで溶融混練した後ペレット化し、そのペレットに架橋剤および/または架橋触媒をドライブレンドした後、さらに押出機などの溶融混練装置で溶融混練して、組成物を動的に架橋して熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法、もしくは、ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)を押出機などの溶融混練装置によって溶融混練し、そこに押出機のシリンダーの途中から架橋剤および/または架橋触媒を添加してさらに溶融混練し、組成物を動的に架橋して熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法などを採用することができる。この際、軟化剤や充填剤などの添加剤を添加する場合は、架橋前に予め添加しておいてもよいし、架橋しながら添加してもよいし、架橋後に添加してもよく、生産性や得られる熱可塑性エラストマーの物性に応じて適宜決めればよい。
【0269】
前記組成物製造の混練温度は100〜300℃が好ましく、130〜250℃がより好ましい。100℃より低いと、ブロック共重合体(A)の溶融が不充分となり、ビニル系重合体(B)との混練が不均一になったり、架橋反応が充分に進行しない傾向がある。また300℃より高いと、ブロック共重合体(A)やビニル系重合体(B)自体が分解する傾向にある。
【0270】
本発明の熱可塑性エラストマーは柔軟性を有し、低硬度であることから、パウダー状やペレット状に製造する場合、ブロッキング防止するために種々の滑剤を塗布してもよい。滑剤の具体例としては前記の滑剤や炭酸カルシウム、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミ、アクリル系高分子微粒子などをあげることができる。これらの群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。コストの点から炭酸カルシウム、タルクが好ましく、特に(メタ)アクリル系ブロック共重合体におけるメタアクリレート重合体ブロックがメタアクリル酸メチルを主成分として用いた場合には、ポリメタアクリル酸メチル樹脂粉末を滑剤として用いたことで、滑剤添加による製品物性の影響がほとんど考えられないことから好ましい。
【0271】
本発明においてパウダーやペレットに滑剤を付与する方法としては、滑剤なしにパウダーやペレットを製造し、得られたパウダーやペレットに滑剤を塗布してもよいし、パウダーやペレット製造工程時に同時に塗布してもよい。
【0272】
滑剤なしにペレットを製造し、得られたペレットに滑剤を塗布する手法としては、滑剤を含有する溶剤中に重合体ペレットを分散させる方法や、ペレットに滑剤を含有する溶剤を噴霧する用法や、ペレットおよび滑剤を直接混合する方法などがあげられる。また、ペレット製造工程時に同時に塗布する方法としては、例えば、アンダーウォーターカット方式やストランドカット方式などがあげられる。アンダーウォーターカット方式によるペレット製造においては、ダイスおよびカッター近傍のペレットのブロッキングを防止することが必要な場合がある。この場合、重合体のカットが循環冷却水中で行われるため、この循環冷却水中に滑剤を1種または2種以上を添加することよりブロッキング性を改善できる。また、ストランドカット方式では、ダイスから払い出された樹脂は高温であり、ストランドを水相にて冷却し、樹脂を固化させた後カッティングする方法が一般的であるが、その水相中に予め滑剤を添加、分散させておき、ストランドを水相中に浸漬させることにより表面に滑剤を付着させることでペレットのブロッキング防止効果を発現することも可能である。
【0273】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂組成物に対して一般に採用される成形方法および成形装置を用いて成形でき、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、ブロー成形などによって溶融成形できる。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低硬度で柔軟性を有しながら、機械特性、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、CDダンパー、建築用ダンパー、自動車、車両、家電製品向け制振材などの制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、シート、フィルム材料、粘着剤のベースポリマー、樹脂改質剤、各種容器、文具部品などとして有効に使用することができる。
【0274】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0275】
なお、実施例におけるBA、EA、MEA、TBA、MMA、TBMAは、それぞれ、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸−t−ブチルを表わす。
【0276】
<試験方法>
(分子量)
本実施例に示すブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用したGPC測定を行ない、ポリスチレン換算の分子量を求めた。GPC測定はGPC分析装置(システム:ウォーターズ(Waters)社製のGPCシステム、カラム:昭和電工株式会社製のShodex K−804(ポリスチレンゲル))で測定した。
【0277】
(酸無水物基変換および酸変換分析)
ブロック共重合体の酸無水物基変換反応の確認は、赤外スペクトル(株式会社島津製作所製、FTIR−8100)、および核磁気共鳴(BRUKER社製AM400)を用いて行なった。
【0278】
核磁気共鳴分析用溶剤として、カルボン酸エステル構造のブロック体は、重クロロホルムを測定溶媒として分析を行ない、酸無水物型構造のブロック体およびカルボン酸型ブロック体は重アセトンを測定溶剤として分析を行なった。
【0279】
(硬度)
JIS K6253に準拠し、23℃における硬度(JIS A)を測定した。
【0280】
(機械強度)
JIS K7113に記載の方法に準用して、株式会社島津製作所製のオートグラフAG−10TB型を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)と伸び(%)の値の平均値を採用した。試験片は2(1/3)号形の形状にて、厚さが約2mm厚のものを用いた。試験は23℃にて500mm/分の試験速度で行なった。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%において48時間以上状態調節したものを用いた。
【0281】
(圧縮永久歪み)
JIS K6301に準拠し、円柱型成形体を圧縮率25%の条件で70℃あるいは100℃で22時間保持し、室温で30分放置したのち、成形体の厚みを測定し、歪みの残留度を計算する。すなわち圧縮永久歪み0%で歪みが全部回復し、圧縮永久歪み100%で歪みが全く回復しないことに相当する。
【0282】
(熱可塑性)
ラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)にて試験体を混練した後、190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、再び成形できるかどうかを判断した。成形できる場合を○、成形できない場合を×として示す。
【0283】
(実施例記載成分の内容)
架橋剤:(CH3)3SiO−[Si(H)(CH3)O]a−[Si(CH3){CH2C(H)(CH3)C6H5}O]b−Si(CH3)3
C6H5はフェニル基を示す。aが平均6で、bが平均1.5の鎖状ポリシロキサン
架橋触媒1:0価白金の1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジアルケニルジシロキサン錯体 3重量%キシレン溶液
架橋触媒2:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン(日本油脂株式会社製)
架橋触媒3:2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン(日本油脂株式会社製)
架橋触媒4:ジブチル錫ジアセチルアセトナート(ネオスタンU−220、日東化成株式会社製)
架橋助剤:トリアリルイソシアヌレート
irganox1010:安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)
【0284】
<アクリル系ブロック共重合体の製造>
製造例1
(MMA−BA−MMA(BA/MMA=70/30重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下、MBAMと略称する)の合成)
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅11.3g(78.5ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。5分間70℃で加熱攪拌したのち、再び室温に冷却し、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.7g(15.7ミリモル)、アクリル酸−n−ブチル804.6g(900.0mL)を加えた。80℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.6mL(7.9ミリモル)を加えて重合を開始した。重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりアクリル酸−n−ブチルの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。アクリル酸−n−ブチルの転化率が95%の時点で、メタアクリル酸メチル345.7g(369.3mL)、塩化銅7.8g(78.5ミリモル)、ジエチレントリアミン1.6mL(7.9ミリモル)、トルエン(モレキュラーシーブスで乾燥後窒素バブリングしたもの)1107.9mLを加えた。同様にして、メタアクリル酸メチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチルの転化率が85%、アクリル酸−n−ブチルの転化率が98%の時点で、トルエン1500mLを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。反応中常に重合溶液は緑色であった。
【0285】
反応溶液をトルエン4000mLで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物22.1gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いたのち、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SHを9.7g加えて室温でさらに3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のMBAMを得た。
【0286】
得られたMBAMのGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが119200、分子量分布Mw/Mnが1.51であった。またNMRによる組成分析を行なったところ、BA/MMA=72/28(重量%)であった。
【0287】
製造例2
(MMA−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−MMA((BA−co−EA−co−MEA)/MMA=70/30重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下M3AMと略称する)の合成)
500mLセパラブルフラスコを用い、臭化銅1.37g(9.5ミリモル)、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)20mL、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.69g(1.9ミリモル)、BA40.2mL(280ミリモル)、EA38.2mL(352ミリモル)およびMEA21.6mL(168ミリモル)を製造例1と同様の手順で加えたのち、配位子ジエチレントリアミン0.20mL(1.0ミリモル)を加えて重合を開始した。重合時に適宜トリアミンを加えることで重合速度を制御した。
【0288】
BAの転化率が95%、EAの転化率が95%およびMEAの転化率が96%の時点で、MMA42.8mL(400ミリモル)、塩化銅1.82g(18.5ミリモル)、ジエチレントリアミン0.20mL(1.0ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)128.5mLを加え、BAの転化率が97%、EAの転化率が97%、MEAの転化率が98%、MMAの転化率が82%の時点で、トルエン150mLを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0289】
反応溶液をトルエン400mLで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物2.21gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いたのち、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SHを0.97g加えて室温でさらに3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、目的のM3AMを得た。
【0290】
得られたアクリル系ブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113000、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。組成分析を行なったところ、EA/BA/MEA/MMA=24/33/15/28(重量%)であった。
【0291】
製造例3
(酸無水物基含有ブロック共重合体(以下50ANBA7と略称する)の合成)50ANBA7は、50ANBA7の前駆体である(MMA−co−TBMA)−b−BA−b−(MMA−co−TBMA)(MMA/TBMA=50/50mol%、BA/(MMA−co−TBMA)=70/30重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下50TBA7と記載する)を合成した後、酸無水物基に変換することにより得た。
【0292】
5Lのセパラブルフラスコの重合容器内を窒素置換したのち、臭化銅11.3g(78.5ミリモル)を量り取り、アセトニトリル(窒素バブリングしたもの)180mLを加えた。30分間70℃で加熱攪拌したのち、開始剤2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.65g(15.7ミリモル)およびBA900mL(6.28モル)を加えた。85℃で加熱攪拌し、配位子ジエチレントリアミン1.64mL(7.85ミリモル)を加えて重合を開始した。
【0293】
重合開始から一定時間ごとに、重合溶液からサンプリング用として重合溶液約0.2mLを抜き取り、サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析によりBAの転化率を決定した。トリアミンを随時加えることで重合速度を制御した。BAの転化率が95%の時点で、TBMA234mL(1.44モル)、MMA154mL(1.44モル)、塩化銅7.77g(78.5ミリモル)、ジエチレントリアミン1.64mL(7.85ミリモル)およびトルエン(窒素バブリングしたもの)1148mLを加えた。同様にして、TBMA、MMAの転化率を決定した。TBMAの転化率が89%、MMAの転化率が84%の時点で、トルエン1500mLを加え、水浴で反応器を冷却して反応を終了させた。
【0294】
反応溶液をトルエン4000Lで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物17.9gを加えて室温で3時間撹拌した。ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業株式会社製)を12.0g加えて室温でさらに3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、無色透明のポリマー溶液を得た。この溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、前駆体であるアクリル系ブロック共重合体50TBA7を得た。
【0295】
得られたアクリル系ブロック共重合体50TBA7のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが113600、分子量分布Mw/Mnが1.44であった。
【0296】
さらに、得られた50TBA7を45gとirganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)0.09gを240℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)を用いて100rpmで20分間溶融混練して、目的の酸無水物基含有アクリル系ブロック共重合体(50ANBA7)を得た。t−ブチルエステル部位の無水カルボン酸およびカルボン酸への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C(1H)−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm−1あたりに酸無水物基に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C(1H)−NMRでは、変換後には、t−ブチル基のメチン炭素由来の82ppmのシグナルとメチル炭素由来の28ppmシグナルが消失し、新たにカルボン酸のカルボキシル炭素由来の176〜179ppm(m)のシグナルと、カルボン酸無水物のカルボキシル炭素由来の172〜173ppm(m)のシグナルが出現することから確認できた。
【0297】
製造例4
(酸無水物基含有ブロック共重合体(以下20AN3A6と略称する)の合成)20AN3A6は、20AN3A6の前駆体である(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)(MMA/TBMA=80/20mol%、(BA−co−EA−co−MEA)/(MMA−co−TBMA)=60/40重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下20T3A6と記載する)を合成した後、酸無水物基に変換することにより得た。
【0298】
500L反応機に臭化第一銅851.5g(5.84モル)を仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル7056gおよびBA8046gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、68℃に昇温して30分間撹拌した。その後、BA14589g、EA22226.9g、MEA13789.9gおよび酢酸ブチル1111.3gの混合溶液、ならびに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル427.4gをアセトニトリル2826gに溶解させた溶液を仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間撹拌を行なった。ペンタメチルジエチレントリアミン102.9gを加えて、第一ブロックとなるBA/EA/MEAの共重合を開始した。転化率が95%に到達したところで、トルエン96202.9g、塩化第一銅587.7g、MMA30513.5g、TBMA10834.2gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン102.9gを加えて、第二ブロックとなるMMAとTBMAの共重合を開始した。転化率が60%に到達したところで、トルエン69280gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合対のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが107400、分子量分布Mw/Mnが1.28であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を24重量%になるよう調整し、およびp−トルエンスルホン酸を847g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行なって固形分を除去した。このブロック共重合対溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学工業株式会社製)827gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行なって吸着剤を除去した。
【0299】
前記重合体溶液をベントロ付き蒸発機に供給し溶媒および未反応モノマーの蒸発を行なうことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケットおよびスクリューはで180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして20T3A6のペレットを得た。
【0300】
得られたアクリル系ブロック共重合体20T3A6のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが108240、分子量分布Mw/Mnが1.49であった。
【0301】
得られた20T3A6のペレットを、TEX44押出機(スクリュー径44mm、L/D 42.25 日本製鋼所株式会社製)にて、すべてのブロックを240℃、スクリュー回転数を150rpm、吐出量を20kg/hrに設定し、押出し処理を行なうことで酸無水物基含有ブロック共重合体(以下20AN3A6)を得た。t−ブチルエステル部位の無水カルボン酸およびカルボン酸への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm−1あたりに酸無水物基に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C(1H)−NMRでは変換後にはt−ブチル基のメチン炭素由来の82ppmのシグナルと、メチル炭素由来の28ppmシグナルが消失し、新たにカルボン酸のカルボキシル炭素由来の176〜179ppm(m)のシグナルと、カルボン酸無水物のカルボキシル炭素由来の172〜173ppm(m)のシグナルが出現することから確認できた。
【0302】
酸無水物基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体は、得られたブロック共重合体中にそれぞれ、1重量%、7重量%であった。それぞれの含有量は13C(1H)−NMR分析により求めた。
【0303】
製造例5
(カルボキシル基含有ブロック共重合体(以下20C3A6と略称する)の合成)
製造例4で合成した20AN3A6を20gと水40gと共に耐圧容器に入れ、200℃にて2時間加熱し、目的のカルボキシル基含有アクリル系ブロック共重合体(得られたポリマーを以下20C3A6と記載する)を得た。
【0304】
酸無水物基のカルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C−NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm−1あたりに酸無水物基に由来する吸収スペクトルが消失することから確認できた。13C(1H)−NMRではカルボン酸無水物のカルボキシル炭素由来の172〜173ppm(m)のシグナルが消失することから確認できた。
【0305】
製造例6
(酸無水物基含有ブロック共重合体(以下50AN3A6と略称する)の合成)50AN3A6は、50AN3A6の前駆体である(MMA−co−TBMA)−b−(BA−co−EA−co−MEA)−b−(MMA−co−TBMA)(MMA/TBMA=50/50mol%、(BA−co−EA−co−MEA)/(MMA−co−TBMA)=60/40重量%)型アクリル系ブロック共重合体(以下50T3A6と記載する)を合成した後、酸無水物基に変換することにより得た。以下にその方法について記載する。
【0306】
500L反応機に臭化第一銅846.5gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル6272gおよびアクリル酸ブチル8940gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、68℃に昇温して30分間撹拌した。その後、BA11179.8g、EA19757.3g、MEA12257.7gおよび酢酸ブチル978.8gの混合溶液、ならびに2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル424.9gをアセトニトリル627.2gに溶解させた溶液を仕込み、85℃に昇温しつつさらに30分間撹拌を行なった。ペンタメチルジエチレントリアミン102.3gを加えて、第一ブロックとなるBA/EA/MEAの共重合を開始した。転化率が95%に到達したところで、トルエン124152.8g、塩化第一銅584.2g、MMA21516.7g、TAMA30559.2gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン51.2gを加えて、第二ブロックとなるMMAとTAMAの共重合を開始した。転化率が60%に到達したところで、トルエン69280gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合対のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが101200、分子量分布Mw/Mnが1.28であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を24重量%になるよう調整し、およびp−トルエンスルホン酸を842g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行なって固形分を除去した。このブロック共重合対溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学工業株式会社製)1655gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行なって吸着剤を除去した。
【0307】
前記重合体溶液をベントロ付き蒸発機に供給し溶媒および未反応モノマーの蒸発を行なうことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケットおよびスクリューはで180℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。このようにして50T3A6のペレットを得た。
【0308】
得られた50T3A6のペレットを、TEX44押出機(スクリュー径44mm、L/D 42.25 日本製鋼所株式会社製)にて、すべてのブロックを240℃、スクリュー回転数を150rpm、吐出量を20kg/hrに設定し、押出し処理を行なうことで酸無水物基含有ブロック共重合体(以下50AN3A6)を得た。t−ブチルエステル部位の無水カルボン酸およびカルボン酸への変換の確認は、製造例4と同様に行なった。
【0309】
酸無水物基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体は、得られたブロック共重合体中にそれぞれ、8重量%、7重量%であった。それぞれの含有量は13C(1H)−NMR分析により求めた。
【0310】
製造例7
(末端にアルケニル基を有するビニル系重合体−1(以下f−BAと略称する)の合成)
攪拌機、ジャケット付きの250L反応機に臭化銅1.09kgを仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル11.4kgを加え、ジャケットに温水を通水し65℃で15分間攪拌した。これにBA26.0kgおよび2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.28kgを加え、さらに65℃で35分間撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン(以下トリアミンという)22.0gを加えて反応を開始し、80℃で加熱攪拌を続けた。さらにトリアミン109.8gを3回に分けて追加した。反応開始30分後から断続的にBA104.0kgを120分かけて滴下した。反応開始から218分後、80℃で減圧下、加熱攪拌することにより未反応のモノマー、アセトニトリルを脱揮した。濃縮物にアセトニトリル45.7kg、1,7−オクタジエン14.0kg、トリアミン439gを添加し、引き続き80℃にて8時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌することによりアセトニトリル、未反応の1,7−オクタジエンを脱揮させ、濃縮した。濃縮物にトルエン120kgを加え、重合体を溶解させた。重合体混合物中の固体銅をバグフィルター(HAYWARD製、公称濾布孔径1μm)によりろ過した。ろ液にキョーワード500SH(協和化学工業株式会社製:共重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学工業株式会社製:共重合体100重量部に対して2重量部)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)で120℃、2時間加熱攪拌した。混合物中の不溶分をろ別した。ろ液を濃縮し、共重合体を得た。共重合体を180℃で12時間加熱脱揮(減圧度10torr以下)することにより共重合体中からBr基を脱離させた。
【0311】
共重合体にトルエン(共重合体100重量部に対して100重量部)、キョーワード500SH(協和化学工業株式会社製:共重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学工業株式会社製:重合体100重量部に対して2重量部)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(irganox1010;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 0.05部)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)で130℃、4時間加熱攪拌した。混合物中の不溶分をろ別した。ろ液を濃縮し、アルケニル基末端重合体f−BAを得た。
【0312】
f−BAの数平均分子量は23600、分子量分布は1.21であった。重合体1分子当たりに導入された平均のアルケニル基の数を1H−NMR分析により求めたところ、2.0個であった。
【0313】
製造例8
(末端にアルケニル基を有するビニル系重合体−2(以下f−3Aと略称する)の合成)
攪拌機、ジャケット付きの250L反応機に臭化銅1.11kgを仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル5.0kgを加え、ジャケットに温水を通水し70℃で15分間攪拌した。これにBA6.6kg、EA9.5kg、アクリル酸メトキシエチル7.8kgおよび2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル3.09kgとアセトニトリル5.0kgの混合物を加え、さらに70℃で30分程度撹拌した。これにトリアミンを加え、反応を開始した。反応途中トリアミンを適宜添加し、内温70から80℃程度で重合を行った。重合工程で使用したトリアミン総量は45gであった。反応開始から4時間後に80℃で減圧下、加熱攪拌することにより未反応のモノマー、アセトニトリルを脱揮した。濃縮物にアセトニトリル29.9kg、1,7−オクタジエン28.4kg、トリアミン446gを添加して6時間撹拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌することによりアセトニトリル、未反応の1,7−オクタジエンを脱揮させ、濃縮した。濃縮物にトルエン120kgを加え、重合体を溶解させた。重合体混合物中の固体銅をバグフィルター(HAYWARD製、公称濾布孔径1μm)によりろ過した。ろ液にキョーワード500SH(協和化学工業株式会社製:共重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学工業株式会社製:共重合体100重量部に対して2重量部)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)で120℃、2時間加熱攪拌した。混合物中の不溶分をろ別した。ろ液を濃縮し、共重合体を得た。共重合体を180℃で12時間加熱脱揮(減圧度10torr以下)することにより共重合体中からBr基を脱離させた。
【0314】
共重合体にトルエン(共重合体100重量部に対して100重量部)、キョーワード500SH(協和化学工業株式会社製:共重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学工業株式会社製:重合体100重量部に対して2重量部)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(irganox1010;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 0.05重量部)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)で130℃、4時間加熱攪拌した。混合物中の不溶分をろ別した。ろ液を濃縮し、アルケニル基末端共重合体f−3Aを得た。
【0315】
f−3Aの数平均分子量は18000、分子量分布は1.1であった。共重合体1分子当たりに導入された平均のアルケニル基の数を1H−NMR分析により求めたところ、1.9個であった。
【0316】
製造例9
(末端に炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体(以下f2−BAと略称する)の合成)
攪拌機付き反応槽に臭化銅4.2重量部、アセトニトリル44.0重量部を加え、窒素雰囲気下にて70℃で15分間攪拌した。これにBA100重量部、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル8.8重量部を添加し、よく攪拌混合した。トリアミン0.17重量部を添加し、重合を開始させた。80℃で加熱攪拌しながら、BA(400℃)を連続的に滴下した。BAの滴下途中にトリアミン0.68重量部を分割添加した。モノマー反応率が97%に達した時点で残モノマー、アセトニトリルを80℃で脱揮し、数平均分子量25600、分子量分布1.23の臭素基両末端ポリ(アクリル酸−n−ブチル)(以下、重合体Br・BAという)を得た。
【0317】
重合体Br・BA100重量部に対して、ろ過助剤1重量部(ラヂオライト900、昭和化学工業株式会社製)、吸着剤1重量部(キョーワード500SH 0.5重量部/キョーワード700SL 0.5重量部)、トルエン(100重量部)を加えて、希釈して固形分を濾別することにより、重合体Br・BAを含む溶液を得た。
【0318】
100重量部の重合体Br・BAに対して吸着剤4重量部(キョーワード500SH 2重量部/キョーワード700SL 2重量部)を重合体Br・BAのトルエン溶液に加え、酸素・窒素混合ガス雰囲気下にて100℃で加熱攪拌した。不溶分を除去し、重合体溶液を濃縮することで臭素基末端重合体(重合体Br・BA’)を得た。重合体Br・BA’の数平均分子量は24900、分子量分布は1.25であった。得られた重合体は[Br・BA’]100重量部をN,N−ジメチルアセトアミド100重量部に溶解し、アクリル酸カリウム1.80重量部、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルー1−オキシルーピペリジン0.01重量部を加え、70℃で8時間加熱攪拌した。反応終了時の重合体は数平均分子量26900、分子量分布は1.29であった。反応混合物を120℃にて8時間減圧下でN,N−ジメチルアセトアミドを留去して、アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸ブチル)の粗生成物を得た。アクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸ブチル)の数平均分子量は26400、分子量分布は1.30であった。この重合体100重量部に対して100重量部のトルエンで溶解させ不溶分を除去し、重合体溶液を100℃にて4時間減圧下溶媒を留去してアクリロイル基両末端ポリ(アクリル酸ブチル)(以下、重合体f2−BAという)を得た。精製後の重合体f2−BAの数平均分子量は27100、分子量分布は1.31であった。重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基の数を1H−NMR分析およびGPCにより求められた数平均分子量により算出したところ1.64であった。
【0319】
製造例10
(末端に架橋性シリル基を有するビニル系重合体(以下f3−BAと略称する)の合成)
攪拌機、ジャケット付きの250L反応機に臭化銅1.1kgを仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル11.4kgを加え、ジャケットに温水を通水し70℃で15分間攪拌した。これにBA130kgおよび2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル2.3kgの混合物を加え、さらに70℃で30分程度攪拌した。これにトリアミンを加え、反応を開始した。反応途中トリアミンを適宜添加し、内温70から80℃程度で重合を行なった。重合工程で使用したトリアミン総量は220gであった。反応開始から4時間後に80℃で減圧下、加熱攪拌することにより未反応のモノマー、アセトニトリルを脱揮した。濃縮物にアセトニトリル45.7kg、1,7−オクタジエン13.9kg、トリアミン439gを添加して6時間攪拌を続けた。混合物を80℃で減圧下、加熱攪拌することによりアセトニトリル、未反応1,7−オクタジエンを脱揮させ、濃縮した。濃縮物にトルエン130kgを加え重合体を溶解させた。重合体混合物中の固体銅をバグフィルター(HAYWARD製、公称濾布孔径1μm)によりろ過した。ろ液にキョーワード500SH(協和化学製:共重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学製:共重合体100重量部に対して2重量部)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素濃度6%)で120℃、2時間加熱攪拌した。混合物中の不溶分をろ別した。ろ液を濃縮し、重合体を得た。重合体を180℃で12時間加熱脱揮(減圧度10torr以下)することにより重合体中からBr基を脱離させた。
【0320】
重合体にトルエン(重合体100重量部に対して100重量部)、キョーワード500SH(協和化学製:共重合体100重量部に対して2重量部)、キョーワード700SL(協和化学製:共重合体100重量部に対して2重量部)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(irganox1010;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 0.05重量部)を添加し、酸素窒素混合ガス雰囲気下(酸素窒素6%)で150℃、4時間加熱攪拌した。混合物中の不溶分をろ別した。ろ液を濃縮し、アルケニル基末端重合体A−BAを得た。
【0321】
数平均分子量は23602、分子量分布は1.2であった。共重合体1分子当たりに導入された平均のアルケニル基の数を1H−NMR分析により求めたところ、1.9個であった。
【0322】
得られた重合体A−BAに、オルトギ酸メチル(アルケニル基に対して1モル当量)、白金触媒[ビス(1,3−ジビニルー1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のキシレン溶液](白金金属量として重合体1kgに対して10mg)、メチルジメトキシシラン(アルケニル基に対して2モル当量)を順に加え混合し、窒素雰囲気下、100℃で1時間加熱撹拌した。アルケニル基が反応により消失したことを1H−NMRで確認し、反応混合物を濃縮して目的とするメトキシシリル基含有重合体f3−BAを得た。数平均分子量は、24818、分子量分布は1.2であった。重合体1分子当たりに導入されたシリル基の数は1.8個であった。
【0323】
実施例1
製造例1で製造したMBAMおよび製造例7で製造したf−BA、irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を表1に示した割合で170℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)を用いて溶融混練した。さらにスクリュー回転数100rpmにて170℃で溶融混練しながら、表1に示した割合で、架橋助剤および架橋触媒2を添加し、トルクの値が最高値を示すまで溶融混練を行い、架橋反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度を測定した。
【0324】
実施例2
製造例1で製造したMBAMおよび製造例7で製造したf−BA、irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を表1に示した割合で170℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)を用いて溶融混練した。さらにスクリュー回転数100rpmにて170℃で溶融混練しながら、表1に示した割合で架橋剤を添加し、さらに架橋触媒1を添加して、トルクの値が最高値を示すまで溶融混練を行い、架橋反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度を測定した。
【0325】
実施例3〜5
MBAM、f−BA、架橋剤、架橋触媒1を表1に示した配合量にて実施例2と同様にしてサンプルを得た。
【0326】
実施例6
MBAMを製造例2で製造したM3AMに変更し、f−BAを製造例8で製造したf−3A変更し、表1に示した配合量にて実施例2と同様にしてサンプルを得た。
【0327】
実施例7
MBAMを製造例3で製造した50ANBA7に変更し、表1に示した配合量にて実施例2と同様にしてサンプルを得た。
【0328】
実施例8
MBAMを製造例4で製造した20AN3A6に変更し、f−BAを製造例8で製造したf−3A変更し、表1に示した配合量にて実施例2と同様にしてサンプルを得た。
【0329】
実施例9
MBAMを製造例5で製造した20C3A6に変更し、f−BAを製造例8で製造したf−3A変更し、表1に示した配合量にて実施例2と同様にしてサンプルを得た。
【0330】
実施例10
MBAMを製造例6で製造した50AN3A6に変更し、f−BAを製造例8で製造したf−3A変更し、表1に示した配合量にて実施例2と同様にしてサンプルを得た。
【0331】
実施例11
製造例1で製造したMBAMおよび製造例9で製造したf2−BA、irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を表1に示した割合で170℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)を用いて、溶融混練した。さらにスクリュー回転数100rpmにて170℃で溶融混練しながら、表1に示した割合で、架橋触媒3を添加し、トルクの値が最高値を示すまで溶融混練を行い、架橋反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に、設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度を測定した。
【0332】
実施例12
架橋触媒3を表1に示した量に変更した以外は、実施例11と同様にしてサンプルを得た。
【0333】
実施例13
製造例1で製造したMBAMおよび製造例10で製造したf3−BA、irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を表1に示した割合で、220℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)を用いて溶融混練した。さらにスクリュー回転数100rpmにて220℃で溶融混練しながら表1に示した割合で、架橋触媒4を添加し、トルクの値が最高値を示すまで溶融混練を行ない、架橋反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に、設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度を測定した。
【0334】
比較例1
製造例1で製造したMBAMおよびirganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)を表2に示した割合でスクリュー回転数50rpmにて190℃に設定したラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)を用いて溶融混練してサンプルを得た。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度を測定した。
【0335】
比較例2
MBAMをM3AMに変更した以外は比較例1と同様にしてサンプルを得た。
【0336】
比較例3
MBAMを50ANBA7に変更し、ラボプラストミル50C150(ブレード形状:ローラー形R60 東洋精機株式会社製)および熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)の設定温度を220℃に変更した以外は比較例1と同様にしてサンプルを得た。
【0337】
比較例4
50ANBA7を20AN3A6に変更した以外は比較例3と同様にしてサンプルを得た。
【0338】
比較例5
50ANBA7を20C3A6に変更した以外は比較例3と同様にしてサンプルを得た。
【0339】
比較例6
50ANBA7を50AN3A6に変更した以外は比較例3と同様にしてサンプルを得た。
【0340】
【表1】
【0341】
【表2】
【0342】
表1中の架橋助剤、架橋触媒1〜4および架橋剤の配合量は、ブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の添加量をgとして添加した場合のg量を示す。例えば、実施例2においては、MBAMを100g、f−BAを43g、架橋剤を3.9g、架橋触媒1を54μLの割合で配合することを示す。表2における安定剤も、ブロック共重合体(A)およびビニル系重合体(B)の添加量をgとして添加した場合のg量を示す。
【0343】
前記表1(実施例1〜13および比較例1〜6)から明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低硬度であり、ブロック体だけのものに比べて圧縮永久歪み特性が向上していることがわかる。また、非常に低硬度でありながらも、圧縮永久歪みが特性に優れているのがわかる。
【0344】
実施例14
製造例1で製造したMBAM 375gおよび製造例7で製造したf−BA 375g、irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)1.5gを170℃に設定したDS1−5MHB−E型ニーダー(株式会社モリヤマ製)を用いて溶融混練した。さらにスクリュー回転数107rpmにて170℃で溶融混練しながら、架橋剤7.72gおよび架橋触媒1を161μL添加し、20分間溶融混練を行い、架橋反応を進行させた(動的架橋)。得られたサンプルを設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、直径30mmおよび厚さ12mmの円筒状の成形体を得た。これらの成形体について、硬度、圧縮永久歪みを測定した。また、同様に設定温度190℃で熱プレス(株式会社神藤金属工業所製 圧縮成形機NSF−50)成形し、厚さ2mmのシート状の成形体を得た。これらのシートにて機械強度を測定した。硬度(JIS−A)6、圧縮永久歪み(70℃、22時間)34、破断強度2.37MPa、破断伸び325.8%、弾性率0.2MPaであった。
【0345】
さらに、得られた成形体を約0.5mm角に切断してペレット状にした後、3重量部のアルフローH−50ES(日本油脂株式会社製)を添加した純水中で攪拌した後、80℃で12時間真空乾燥した。さらに得られたペレット状物100重量部に対し、TALC LMR0.5重量部(富士タルク工業株式会社製)をドライブレンドした。得られたペレット状物は自着性がなく、ペレット状物同士でブロッキングすることがなかった。このペレット状物を射出成形機(名機製作所株式会社製M−32/37−SJ)を用いて2.5mm厚さ、11cm×5cmのシートを作製したところ、良好なシートが得られた。
【0346】
前記実施例14より、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、種々の成形機を用いて作製でき、ブロッキングを防止したペレットにより、良好に加工できることがわかる。
【0347】
以上の結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低硬度で柔軟性を有しながら、機械特性、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れた新規な熱可塑性エラストマーである。
【0348】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低硬度で柔軟性を有しながら、機械特性、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み特性に優れているため、パッキング材、シール材、ガスケット、栓体などの密封用材、CDダンパー、建築用ダンパー、自動車、車両、家電製品向け制振材などの制振材、防振材、自動車内装材、クッション材、日用品、電気部品、電子部品、スポーツ部材、グリップまたは緩衝材、電線被覆材、包装材、シート、フィルム材料、粘着剤のベースポリマー、樹脂改質剤、各種容器、文具部品などとして有効に使用することができる。
Claims (19)
- (A)(メタ)アクリル系重合体ブロック(a)およびアクリル系重合体ブロック(b)を含有するブロック共重合体、(B)制御重合により得られることを特徴とする架橋性官能基を少なくとも1個有するビニル系重合体からなり、(A):(B)=90:10〜10:90の重量比である熱可塑性エラストマー組成物。
- ブロック共重合体(A)が、一般式(a−b)n、一般式b−(a−b)n、一般式(a−b)n−aで表わされるアクリル系ブロック共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ブロック共重合体(A)とビニル系重合体(B)の溶融混練時に架橋剤および/または架橋触媒を添加して、動的に架橋したものである請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ビニル系重合体(B)の重量平均分子量/数平均分子量が1.8未満である請求項1、2または3記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ビニル系重合体(B)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマーおよびケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー由来である請求項1、2、3または4記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ビニル系重合体(B)の主鎖が、(メタ)アクリル系モノマー由来である請求項5記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- (メタ)アクリル系モノマーが、アクリル系モノマーである請求項6記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- アクリル系モノマーが、アクリル酸エステル系モノマーである請求項7記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- アクリル酸エステル系モノマーが、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチルおよびアクリル酸−2−エチルヘキシルからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマーである請求項8記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ビニル系重合体(B)の架橋性官能基が、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基である請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ビニル系重合体(B)の架橋性官能基が、アルケニル基である請求項10記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 架橋剤がヒドロシリル基含有化合物である請求項3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 架橋触媒として白金化合物を用いる請求項3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ブロック共重合体(A)が、原子移動ラジカル重合により得られることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- ビニル系重合体(B)が、原子移動ラジカル重合により得られることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 原子移動ラジカル重合の触媒が、周期律表第7族、8族、9族、10族または11族元素を中心金属とする遷移金属錯体より選ばれる錯体である請求項15または16記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 遷移金属錯体が銅、ニッケル、ルテニウムまたは鉄の錯体からなる群より選ばれる錯体である請求項17記載の熱可塑性エラストマー組成物。
- 遷移金属錯体が銅の錯体である請求項18記載の熱可塑性エラストマー組成物。
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