JP2023072761A - 硬化性樹脂組成物及びシーリング材組成物 - Google Patents

硬化性樹脂組成物及びシーリング材組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】塗工性に優れるとともに、引張特性及び耐候性に優れる硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供すること。さらに、前記硬化性樹脂組成物を含有するシーリング材組成物を提供すること。【解決手段】数平均分子量が30,000以上80,000以下、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.2以下であり、1分子中の架橋性シリル基の平均個数が1.8個以上である、(メタ)アクリル系重合体(I)、及び、重量平均分子量が10,000以上50,000以下であり、1分子中に架橋性シリル基の平均個数が0.50個以上1.8個未満である、(メタ)アクリル系重合体(II)を含有する、硬化性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本明細書は、硬化性樹脂組成物及びシーリング材組成物に関する。
工業用途に使用される硬化性樹脂としては、ラジカル重合により得られた架橋性官能基を有するビニル系共重合体がよく知られている。こうしたビニル系共重合体は、硬化性樹脂組成物として用いられ、例えば、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤、成形材料、ゴムシート等の硬化物の分野において広く使用されている。
このような硬化性樹脂組成物として、特許文献1には、架橋性シリル基を少なくとも1個有し、主鎖がリビングラジカル重合法により製造され、分子量分布が1.8未満であるビニル系重合体(I)、及び、架橋性シリル基を有し、主鎖がフリーラジカル重合法により製造されたビニル系重合体(II)を含有し、ビニル系重合体(I)とビニル系重合体(II)との比率が、重量比で10:90~90:10である組成物が開示されている。
さらに、同文献の実施例には、前記ビニル系重合体(I)の数平均分子量は18,000~約20,000の範囲、分子量分布は1.2~1.3の範囲、重合体1分子当たりに導入された架橋性シリル基の個数が1.8~2.0個の範囲(製造例1及び3)であって、前記ビニル系重合体(II)の数平均分子量は約2,100、重合体1分子当たりに導入された架橋性シリル基の個数が1.27個(製造例2に基づく計算値)であり、ビニル系重合体(I)及びビニル系重合体(II)を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物は、引張特性に優れることが具体的に記載されている。
国際公開第2004/074381号
近年、特に、シーリング材用途においては、引張特性及び耐候性が高いレベルで要求されている。
しかしながら、特許文献1の実施例には、硬化物の耐候性の実験結果について何ら具体的な記載がなく、耐候性が不充分で問題となることがあり、耐候性と塗工性の両立も求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗工性に優れるとともに、引張特性及び耐候性に優れる硬化物を得ることができる硬化性樹脂組成物を提供することである。さらに、前記硬化性樹脂組成物を含有するシーリング材組成物を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、2種類の(メタ)アクリル系重合体を含有し、一方の重合体の数平均分子量、分子量分布及び1分子中の架橋性シリル基の平均個数を特定の範囲とし、かつ、もう一方の重合体の重量平均分子量及び1分子中の架橋性シリル基の平均個数を特定の範囲とした硬化性樹脂組成物は、その硬化物の引張特性及び耐候性に優れることを見出した。
本発明は以下の通りである。
〔1〕数平均分子量が30,000以上80,000以下、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.2以下であり、1分子中の架橋性シリル基の平均個数が1.8個以上である、(メタ)アクリル系重合体(I)、及び、重量平均分子量が10,000以上50,000以下であり、1分子中に架橋性シリル基の平均個数が0.50個以上1.8個未満である、(メタ)アクリル系重合体(II)を含有する、硬化性樹脂組成物。
〔2〕前記(メタ)アクリル系重合体(I)は、ブロック共重合体である、〔1〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔3〕前記ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる構造単位を有する、〔2〕に記載のブロック共重合体。
〔4〕前記(メタ)アクリル系重合体(I)は、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の硬化性組樹脂組成物。
〔5〕前記(メタ)アクリル系重合体(II)は、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の硬化性組樹脂組成物。
〔6〕前記(メタ)アクリル系重合体(I)及び前記(メタ)アクリル系重合体(II)の合計を100質量%とした場合に、前記(メタ)アクリル系重合体(I)の含有割合が25~80質量%であり、前記(メタ)アクリル系重合体(II)の含有割合が20~75質量%である、〔1〕~〔5〕のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
〔7〕さらに、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(III)を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
〔8〕25℃における粘度が100~400Pa・sである、〔1〕~〔7〕のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物。
〔9〕〔1〕~〔8〕のいずれか一に記載の硬化性樹脂組成物を含有する、シーリング材組成物。
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、塗工性に優れるとともに、引張特性(特に破断伸び)及び耐候性に優れる硬化物を得ることができる。
以下、本明細書に開示される技術の各種実施形態を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を意味する。
以下、(メタ)アクリル系重合体(I)、(メタ)アクリル系重合体(II)、硬化性樹脂組成物、及びブロック共重合体の製造方法について説明する。
1.(メタ)アクリル系重合体(I)
本発明の(メタ)アクリル系重合体(I)は、数平均分子量が30,000以上80,000以下、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.2以下であり、1分子中の架橋性シリル基の平均個数が1.8個以上である。
尚、「架橋性シリル基」とは、加水分解、縮合により、例えば、シロキサン結合に基づく架橋構造を形成し得る基を意味する。具体的には、ケイ素原子にヒドロキシ基又は加水分解性基(アルコキシ基等)が結合されてなる基である。
(メタ)アクリル系重合体(I)1分子中に架橋性シリル基を1.8個以上有することで、(メタ)アクリル系重合体(I)同士の架橋構造、あるいは、(メタ)アクリル系重合体(I)と(メタ)アクリル系重合体(II)の架橋構造を形成でき、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐候性を優れたものとすることができる。
(メタ)アクリル系重合体(I)の数平均分子量(Mn)は、引張特性(破断伸び及び破断強度等)の観点から、前記の通り、30,000以上80,000以下であり、Mnが30,000以上であれば、硬化物の耐候性を優れたものとすることができる。また、80,000以下であれば、良好な流動性及び塗工性を確保することができる。硬化物の破断強度及び流動性等の観点から、(メタ)アクリル系重合体(I)のMnは、より好ましくは33,000以上70,000以下の範囲であり、さらに好ましくは35,000以上60,000以下の範囲であり、なお好ましくは,38,0000以上50,000以下の範囲であり、一層好ましくは40,000以上47,000以下の範囲である。
(メタ)アクリル系重合体(I)の重量平均分子量(Mw)の値を上記数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、引張特性(破断伸び及び破断強度等)の観点から、前記の通り、2.2以下である。架橋性シリル基を含む(メタ)アクリル系重合体(I)が、均一な架橋構造を形成して前記引張特性(破断伸び及び破断強度等)を確保する観点から、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.85以下であり、なお好ましくは1.5以下であり、一層好ましくは1.35以下であり、より一層好ましくは1.25以下である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、1.05以上であることが好ましく、1.10以上であってもよく、1.20以上であってもよい。
尚、上記Mn及びMw/Mnは、実施例に記載の方法により測定することができる。
(メタ)アクリル系重合体(I)の1分子中の架橋性シリル基の平均個数は、硬化物の耐候性を向上できる点で、1.8個以上である。好ましくは2.5個以上であり、より好ましくは3.8個以上であり、さらに好ましくは4.0個以上であり、一層好ましくは5.0個以上である。また、破断伸びに優れる点で、好ましくは8.0個以下含有し、より好ましくは5.5個以下であり、さらに好ましくは5.2個以下である。
尚、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(I)に含まれる架橋性シリル基の平均個数は、H-NMR測定及びGPC測定により算出することができる。即ち、重合体を構成する構造単位を同定し、使用された単量体を決定した後、H-NMRスペクトルにおいて、3.5ppm付近に見られる、アルコキシシシランの炭素原子に結合した水素原子に由来するシグナルの積分値から、重合体組成及び架橋性シリル基含有単量体のモル分率を計算し、次いで、このモル分率に、GPC測定により得られた数平均分子量(Mn)を乗ずることによって、1分子中の架橋性シリル基の平均個数を算出することができる。
(メタ)アクリル系重合体(I)の25℃における粘度は、150Pa・s以上650Pa・s以下が好ましく、250Pa・s以上400Pa・s以下がより好ましい。当該粘度が150Pa・s以上であると、硬化性樹脂組成物のたれを防止することができ、650Pa・s以下であると、硬化性樹脂組成物の良好な流動性及び塗工性を確保することができる。
尚、上記粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(メタ)アクリル系重合体(I)は、例えば、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系単量体は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する単量体であり、後記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、後記の一般式(1)で表される化合物、後記の他の単量体等が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体の使用量は、(メタ)アクリル系重合体(I)の全構成単量体に対し、好ましくは10~100質量%の範囲であり、より好ましくは30~100質量%の範囲であり、さらに好ましくは50~100質量%の範囲である。
ここで、(メタ)アクリル系重合体(I)としては、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれでもよく、後記の加水分解性シリル基含有ビニル化合物に由来する構造単位を有する重合体であることが好ましい。
硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐候性に優れる点で、ブロック共重合体(以下、「本ブロック共重合体」ともいう。)であることが好ましく、少なくとも2個以上の重合体ブロックからなるブロック共重合体であることがより好ましい。
前記重合体ブロックとしては、以下に示す重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)が挙げられる。
1-1.重合体ブロック(A)
重合体ブロック(A)を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、下記一般式(1)で表される化合物、後記の他の単量体等を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。
CH=CR-C(=O)O(RO)-R (1)
(式中、Rは水素又はメチル基を表し、Rは炭素数2~6の直鎖状又は分岐状アルキレン基を表し、Rは水素、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を表す。nは1~100の整数を表す。)
前記単量体の中でも、Tgが低く、流動性に優れるブロック共重合体を得やすい点においては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、上記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
<(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物>
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル及び(メタ)アクリル酸ドデシル等の(メタ)アクリル酸等の直鎖状又は分岐状(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等のアクリル酸の脂肪族環式エステル化合物などが挙げられる。
これらの中でも、特に、Tgが低く、流動性に優れるブロック共重合体を得やすいことから、炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物が好ましい。炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体(I)の全構成単量体に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、上限値は100質量%であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
また、上記の内、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用すると、オキシアルキレン系重合体との良好な相溶性が確保され、引張特性及び耐候性が良好となる点で好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは10~20であり、より好ましくは12~20である。炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体(I)の全構成単量体に対し、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。なお、上限は100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく50質量%以下であってもよい。
重合体ブロック(A)の全構成単位に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物に由来する構成単位が、50質量%以上100質量%以下とすることができる。50質量%以上であれば、耐候性の点でも有利だからである。かかる構成単位は、例えば60質量%以上であり、また例えば70質量%以上であり、また例えば80質量%以上である。また例えば、98質量%以下であり、また例えば95質量%以下であり、また例えば90質量%以下であり、また例えば85質量%以下である。
<一般式(1)で表される化合物>
上記一般式(1)で表される化合物は、式中nが1のとき、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖及びオキシブチレン鎖等のオキシアルキレン構造を有する。具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチルなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物としては、Tgが低く、流動性に優れるブロック共重合体を得やすいことから、炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、炭素数2~6のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルがより好ましい。
また、式中nが2以上のとき、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖及びポリオキシブチレン鎖等のポリオキシアルキレン構造を有する。nが2以上のとき、Rは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。したがって、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロック構造のように、一分子中に異なる種類のポリオキシアルキレン構造を有していてもよい。具体的な化合物としては、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン(メタ)アクリレート及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、末端に炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を有するものとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
<他の単量体>
(メタ)アクリル系重合体(I)は、上記の単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。
上記の他の単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の官能基含有単量体;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2-パーフルオロヘキサデシルエチル、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族単量体;
無水マレイン酸;マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸、並びに、これらのモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;
エチレン、プロピレン等のアルケン類;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられるが、これらに限らない。他の単量体としては、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
<架橋性シリル基>
重合体ブロック(A)は、硬化物の破断強度が向上できる点で、当該各ブロック中の架橋性シリル基の平均個数は好ましくは1.8個以上であり、より好ましくは2.5個以上であり、さらに好ましくは3.8個以上である。また、破断伸びに優れる点で、好ましくは8.0個以下であり、より好ましくは6.5個以下であり、さらに好ましくは5.2個以下である。
架橋性シリル基の導入方法には特段の制限はないが、例えば、加水分解性シリル基含有ビニル化合物を共重合することにより導入することができる。この場合、重合体ブロック(A)は、加水分解性シリル基含有ビニル化合物に由来する構成単位(以下、単に、「架橋性構成単位」ともいう。)を有する。
加水分解性シリル基含有ビニル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のアルコキシシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のアルコキシシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。かかるビニル化合物は、加水分解性シリル基同士が脱水縮合することができる。このため、ブロック共重合体を製造する重合反応及びその後の上記架橋反応を効率的に行うことができる点において好適である。
なお、加水分解性シリル基は全体として一個の反応点と捉えられるため、本発明では、加水分解性シリル基全体を一つの架橋性シリル基とする。すなわち、メトキシシリル基を分子内に3個有するビニルトリメトキシシラン、同じく2個有するビニルメチルジメトキシシランともに、共重合することにより架橋性シリル基を1個導入するものとする。
架橋シリル官能基を導入する別の方法としては、
1)重合体ブロック(A)の構成単量体である不飽和カルボン酸のカルボキシル基と加水分解性シリル基含有エポキシ化合物との付加反応が挙げられる。本不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸及びイタコン酸からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、2)重合体ブロック(A)の構成単量体であるエポキシ基含有ビニル化合物のエポキシ基と加水分解性シリル基含有アミン化合物との付加反応等も挙げられる。本エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
さらに、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する多官能重合性単量体を共重合することにより、重合体ブロック(A)に架橋性官能基として重合性不飽和基を導入してもよい。上記多官能重合性単量体としては、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基等の重合性官能基を分子内に2つ以上有する化合物であり、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能アルケニル化合物、(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物等が挙げられる。例えば、ヘキサンジオールジアクリレート、などのアルキレンジオールジアクリレートの他、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸イソプロペニル、(メタ)アクリル酸ブテニル、(メタ)アクリル酸ペンテニル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル等の分子内に(メタ)アクリロイル基及びアルケニル基の両方を有する化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性不飽和基は、分子内に官能基を有する重合体を製造した後、当該官能基と反応可能な官能基及び重合性不飽和基を有する化合物を反応させることによっても導入し得る。例えば、ヒドロキシ基を有する重合体を製造後、イソシアネート基及び重合性不飽和基の双方を有する化合物を反応させることにより当該重合体に重合性不飽和基を導入することができる。また例えば、カルボキシ基を有する重合体に、エポキシ基及び重合性不飽和基の双方を有する化合物を反応させてもよい。
(数平均分子量)
重合体ブロック(A)の数平均分子量は、特に限定するものではないが、2,500以上7,500以下が好ましい。
尚、本ブロック共重合体が重合体ブロック(A)を複数有する場合には、重合体ブロック(A)の数平均分子量は、全ての重合体ブロック(A)の数平均分子量の和を意味する。本ブロック共重合体にあっては、重合体ブロック(A)の数平均分子量が、2,500以上であれば、硬化物において十分な破断強度や耐候性を発揮することができる。また、7,500以下であれば、良好な流動性及び塗工性を確保することができる。硬化物の強度及び流動性等の観点から、重合体ブロック(A)の数平均分子量は、より好ましくは3,000以上6,500以下の範囲であり、さらに好ましくは3,500以上6,000以下の範囲であり、なお好ましく4,000以上5,800以下の範囲であり、一層好ましくは4,500以上5,500以下の範囲である。
1-2.重合体ブロック(B)
重合体ブロック(B)を構成する単量体としては、重合体ブロック(A)と同様の態様で(但し、重合体ブロック(A)とは異なる。)、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、上記一般式(1)で表される化合物等を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。
重合体ブロック(B)においては、上記単量体の中でも、柔軟性に優れたブロック共重合体が得られる点でアクリル酸アルキルエステルを主たる構成単位とすることが好ましい。さらに、これらの内でも、炭素数4~12のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物が好ましい。また、ブロック共重合体の流動性の観点を加味した場合、上記アクリル系化合物は、炭素数4~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル化合物を含むものであることがより好ましい。
重合体ブロック(B)において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物に由来する構成単位が、50質量%以上100質量%以下とすることができる。より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、一層好ましくは80質量%以上100質量%以下である。上記構成単位が上記範囲にある場合は、引張特性の点で良好なブロック共重合体が得られる傾向にある。
重合体ブロック(B)は、さらに、前記の架橋性シリル基を有するビニル系単量体に由来する架橋性構成単位を含むことができる。
重合体ブロック(B)における架橋性構成単位は、重合体ブロック(A)の架橋性構成単位に加えて、必要に応じて備えるようにすることが好ましい。特に限定するものではないが、架橋性構成単位は、重合体ブロック(B)の全構成単位に対して、例えば0.01モル%以上、また例えば0.1モル%以上、また例えば0.5モル%以上とすることができる。架橋性構成単位の導入量が0.01モル%以上であれば、破断強度の高いブロック共重合体を得易くなる。一方、柔軟性の観点から、架橋性構成単位の上限は、例えば、20モル%以下であり、また例えば10モル%以下であり、また例えば5モル%以下である。尚、均一な架橋構造の形成等の観点から、重合体ブロック(A)に架橋点を集約することが好ましく、重合体ブロック(B)の全構成単位に対する架橋性構成単位の割合は、重合体ブロック(A)の全構成単位に対する架橋性構成単位の割合を超えないことが好適である。
(数平均分子量)
重合体ブロック(B)の数平均分子量(Mn)は、特に限定するものではないが、22,500以上77,500以下が好ましい。
尚、本ブロック共重合体が複数個の重合体ブロック(B)を有する場合には、重合体ブロック(B)の数平均分子量は、全ての重合体ブロック(B)の数平均分子量の和を意味する。本ブロック共重合体にあっては、重合体ブロック(B)の数平均分子量が、22,500以上であれば、硬化物において十分な破断強度や耐候性を発揮することができる。また、77,500以下であれば、良好な流動性及び塗工性を確保することができる。本ブロック共重合体は、均一な架橋構造を形成できるため、架橋点間距離に対応する本ブロック共重合体の分子量を確保することができる。硬化物の破断強度及び流動性等の観点から、重合体ブロック(B)は、より好ましくは、23,500以上77,000以下の範囲であり、さらに好ましくは、24,000以上76,500以下の範囲であり、なお好ましくは、24,200以上76,000以下の範囲であり、一層好ましくは、24,500以上75,500以下の範囲である。
1-3.本ブロック共重合体
本ブロック共重合体は、少なくとも2個以上の重合体ブロックからなるブロック共重合体であって、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を各々1つ以上有することが好ましい。本ブロック共重合体は重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる構造単位(ABA)を有してもよいし、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(C)からなる構造単位(ABC)を有してもよいが、硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の耐候性に優れる点で、構造単位(ABA)を有することがより好ましい。
重合体ブロック(C)を構成する単量体としては、重合体ブロック(A)及び(B)と同様の態様で(但し、重合体ブロック(A)及び(B)とは異なる。)、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、上記一般式(1)で表される化合物、スチレン類、マレイミド化合物及びアミド基含有ビニル化合物等を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。
ここで、本ブロック共重合体は、A-(BA)(ただし、nは1以上の整数を表す。)構造を有する場合には、硬化物の破断強度の観点から、重合体ブロック(A)が架橋性構成単位を含むことが好ましい。かかる構造であると、架橋性構成単位を含む重合体ブロック(A)は架橋セグメントとして作用するため、架橋点間の分子量を確保しつつ、均一な架橋構造を得ることができるため、硬化物の破断伸び及び破断強度等の引張特性に優れた性能を発揮することができる。
本ブロック共重合体における重合体ブロック(A)及び(B)の合計量100質量部に対して前記重合体ブロック(A)の含有割合は、特に限定するものではないが、60質量部以下である事が好ましく、より好ましくは2質量部以上60質量部以下の範囲であり、さらに好ましくは4質量部以上50質量部以下の範囲であり、なお好ましくは6質量部以上40質量部以下の範囲であり、一層好ましくは8質量部以上30質量部以下の範囲であり、より一層好ましくは10質量部以上20質量部以下の範囲である。本ブロック共重合体が架橋性構成単位を含む場合には、こうした範囲であると、架橋点となって架橋セグメントを構成する重合体ブロック(A)と、非架橋セグメントとなりうる重合体ブロック(B)から良好な引張特性の硬化物が得られ易くなる。
なお、本ブロック共重合体のMn及びMw/Mnの好ましい範囲としては、(メタ)アクリル系重合体(I)のMn及びMw/Mnの好ましい範囲の通りである。
1-4.本ブロック共重合体の製造方法
本ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)を有するブロック共重合体を得る限りにおいて特段の制限を受けるものではなく、公知の製造方法を採用することができる。例えば、リビングラジカル重合及びリビングアニオン重合等の各種制御重合法を利用する方法や、官能基を有する重合体同士をカップリングする方法等を挙げることができる。これらの中でも、操作が簡便であり、広い範囲の単量体に対して適用することができ、高温時の耐久性に影響を及ぼす可能性のある金属成分の含有量を低減できて耐熱性に優れる硬化物を得られる観点から、リビングラジカル重合法が好ましい。
前記リビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、管式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式は、溶剤を用いないバルク重合、溶剤系の溶液重合、水系の乳化重合、ミニエマルション重合又は懸濁重合等の各種態様に適用することができる。
リビングラジカル重合法の種類についても特段の制限はなく、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合方法を採用することができ、これらの中でも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法が好ましい。
少なくとも2個以上の重合体ブロックからなるブロック共重合体の製造方法としては、生産性の観点から、RAFT法により、少なくとも3個以上の重合体ブロックからなり、ブロック共重合体の中央の重合体ブロックに、一般式(2)で表されるトリチオカーボネート基を有するブロック共重合体(P1)を製造する工程と、当該ブロック共重合体(P1)のトリチオカーボネート基に対して求核剤を反応させて、少なくとも2個以上の重合体ブロックからなるブロック共重合体(P2)を製造する工程を含むことが好ましい。
Figure 2023072761000001
1-4-1.ブロック共重合体(P1)の製造工程
RAFT法では、特定の重合制御剤(RAFT剤)及び一般的なフリーラジカル重合開始剤の存在下、可逆的な連鎖移動反応を介して制御された重合が進行する。RAFT剤としては、上記一般式(2)で表されるトリチオカーボネート基を有する化合物を使用することができる。また、RAFT剤の使用量は、目標とするMn、用いる単量体及びRAFT剤の種類等により適宜調整される。
上記一般式(2)で表されるトリチオカーボネート基を有する化合物としては、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、ビス[4-(2,3―ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、ビス[4-(2―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート等が挙げられる。
RAFT法による重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができるが、安全上取り扱い易く、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点からアゾ化合物が好ましい。上記アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤は1種類のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用割合は特に制限されないが、分子量分布がより小さい重合体を得る点から、上記RAFT剤1molに対する上記ラジカル重合開始剤の使用量を0.5mol以下とすることが好ましく、0.3mol以下とするのがより好ましい。また、重合反応を安定的に行う観点から、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量の下限は、0.001molである。よって、RAFT剤1molに対するラジカル重合開始剤の使用量は、0.001mol以上0.5mol以下の範囲が好ましく、0.005mol以上0.3mol以下の範囲がより好ましい。
RAFT法による重合反応の際の反応温度は、好ましくは30℃以上120℃以下であり、より好ましくは40℃以上110℃以下であり、さらに好ましくは50℃以上100℃以下である。反応温度が30℃以上であれば、重合反応を円滑に進めることができる。一方、反応温度が120℃以下であれば、副反応が抑制できるとともに、使用できる開始剤や溶剤に関する制限が緩和される。
RAFT剤として、上記一般式(2)で表されるトリチオカーボネート基を有する化合物を使用することで、リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)からなる、A-(BA)n型構造体を得ることができる。
この場合、まず、第一重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を用いて重合体ブロック(A)を得る。次いで、第二重合工程として、重合体ブロック(B)の構成単量体を用いて重合体ブロック(B)を得ることにより、ABAトリブロック共重合体を得ることができる。さらに、第三重合工程として、重合体ブロック(A)の構成単量体を用いて重合体ブロック(A)を得ることにより、ABABAペンタブロック共重合体等のより高次のブロック共重合体を得ることができる。
本開示では、ブロック共重合体の重合は、その重合方法によらず、必要に応じて連鎖移動剤の存在下で実施してもよい。連鎖移動剤は公知のものを使用することができ、具体的には、エタンチオール、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、1-ブタンチオール、2-ブタンチオール、1-ヘキサンチオール、2-ヘキサンチオール、2-メチルヘプタン-2-チオール、2-ブチルブタン-1-チオール、1,1-ジメチル-1-ペンタンチオール、1-オクタンチオール、2-オクタンチオール、1-デカンチオール、3-デカンチオール、1-ウンデカンチオール、1-ドデカンチオール、2-ドデカンチオール、1-トリデカンチオール、1-テトラデカンチオール、3-メチル-3-ウンデカンチオール、5-エチル-5-デカンチオール、tert-テトラデカンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘプタデカンチオール及び1-オクタデカンチオール等の炭素数2~20のアルキル基を有するアルキルチオール化合物の他、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトエタノール等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
本開示では、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用いることができる。具体的には、オルト酢酸トリメチル及びオルト酢酸トリエチル等のオルトエステル化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン化合物;ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アルコール、水等が挙げられる。また、重合溶媒を使用せず、塊状重合等の態様で行ってもよい。
1-4-2.ブロック共重合体(P2)の製造工程
本発明の重合体の製造方法は、前記ブロック共重合体(P1)中のトリチオカーボネート基に対して求核剤を反応させて、ブロック共重合体(P2)を得る工程を含む。
例えば、ブロック重合体(P1)がトリブロック共重合体である場合には、ブロック重合体(P2)をジブロック共重合体として得る事ができ、ブロック重合体(P1)がペンタブロック共重合体である場合には、ブロック重合体(P2)をトリブロック共重合体として得る事ができる。
前記求核剤としては、アンモニア類、1級及び/又は2級アミン化合物、アルカリ金属アルコキシド、水酸化物及びチオール類等が挙げられ、これらは公知の化合物を用いる事ができる。チオカルボニルチオ基に対して求核剤を反応させることにより、チオカルボニルチオ基がチオール基に変換され、当該チオール基と残存アクリレート化合物とのマイケル付加反応の結果、得られるブロック共重合体の臭気が低減すると推定される。これらの中でも、反応性の点から、1級及び/又は2級アミン化合物が好ましい。
求核剤のチオカルボニルチオ基に対するモル当量としては、2~90モル当量である。
反応効率の点から、3モル当量以上が好ましく、下限値は4モル当量以上でも、5モル当量以上でも、10モル当量以上でも、15モル当量以上でもよい。また、未反応の求核剤による臭気の影響が小さい点から、75モル当量以下が好ましく、60モル当量以下がさらに好ましく、50モル当量以下が特に好ましい。
求核剤の分子量としては、未反応の求核剤を除去し易い点から、150以下が好ましく、110以下がさらに好ましく、60以下が特に好ましい。
反応器としては、バッチ式反応器、管型反応器等の公知の反応器を使用することができるが、管型反応器では問題となる閉塞の恐れがない点から、バッチ式反応器が好ましい。
反応温度としては、反応効率の点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がさらに好ましく、25℃以上が特に好ましい。また、ポリマー主鎖への求核反応等の副反応が生じ難い点から、80℃以下が好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下が特に好ましい。
反応時間としては、反応効率の点から、1時間以上が好ましく、2時間以上がさらに好ましく、3時間以上が特に好ましい。また、ポリマー主鎖への求核反応等の副反応が生じ難い点から、48時間以下が好ましく、36時間以下がさらに好ましく、24時間以下が特に好ましい。
反応圧力としては、通常常圧でよいが、必要に応じて加圧又は減圧してもよい。
ここで、上記一般式(2)で表されるトリチオカーボネート基を有する化合物が、置換基として、一般式(3)又はチオール基で表される構造を有しない場合には、前記ブロック共重合体(P2)の片末端の構造が一般式(3)又はチオール基で表される構造となる。一方、上記一般式(2)で表されるトリチオカーボネート基を有する化合物が、置換基として、一般式(3)又はチオール基で表される構造を有する場合には、前記ブロック共重合体(P2)の両末端の構造が一般式(3)又はチオール基で表される構造となる。
Figure 2023072761000002
(式中、Rは、前記ブロック重合体(P2)を構成する単量体に含まれるアクリル酸エステル化合物からアクリロイルオキシ基を取り除いた残基を表す。)
また、前記ブロック共重合体(P2)の少なくとも1個の重合体ブロックが、(メタ)アクリル酸エステル化合物を主な構成単量体とし、前記ブロック共重合体(P2)の少なくとも一つの末端構造が、上記一般式(3)又はチオール基で表される構造であり、前記ブロック共重合体(P2)中の硫黄濃度(質量%)をx、前記ブロック共重合体(P2)の数平均分子量をyとした場合の(x/100)とyの積が、60以下であることによって、硬化物の臭気が大幅に低減されるという効果を奏する。(x/100)とyの積は、57.5以下が好ましく、55.0以下がより好ましく、52.5以下がさらに好ましく、50.0以下がより一層好ましい。
上記効果の点において、ブロック重合体(P1)を再沈殿等の精製することなく、当該ブロック重合体(P1)中のトリチオカーボネート基に対して求核剤を反応させて、ブロック重合体(P2)を得ることが好ましい。
2.(メタ)アクリル系重合体(II)
本発明の(メタ)アクリル系重合体(II)は、重量平均分子量が10,000以上50,000以下であり、1分子中の架橋性シリル基の平均個数が0.50個以上1.8個未満である。
(メタ)アクリル系重合体(II)1分子中に架橋性シリル基を0.50個以上1.8個未満有することで、(メタ)アクリル系重合体(II)同士の架橋構造、あるいは、(メタ)アクリル系重合体(II)と(メタ)アクリル系重合体(I)の架橋構造を形成でき、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐候性を優れたものとすることができる。
(メタ)アクリル系重合体(II)の重量平均分子量(Mw)は、引張特性(破断伸び及び破断強度等)の観点から、前記の通り、10,000以上50,000以下であり、Mnが10,000以上であれば、硬化物の耐候性を優れたものとすることができる。また、50,000以下であれば、良好な流動性及び塗工性を確保することができる。硬化物の耐候性及び流動性等の観点から、(メタ)アクリル系重合体(I)のMnは、より好ましくは15,000以上40,000以下の範囲であり、さらに好ましくは25,000以上32,000以下の範囲であり、なお好ましくは、26,000以上30,000以下の範囲であり、一層好ましくは27,000以上30,000以下の範囲である。
(メタ)アクリル系重合体(II)の上記重量平均分子量(Mw)の値を上記数平均分子量(Mn)の値で除して得られる分子量分布(Mw/Mn)は、引張特性(破断伸び及び破断強度等)の観点から、7.8以下であることが好ましく、より好ましくは6.0以下であり、さらに好ましくは5.6以下であり、なお好ましくは5.2以下であり、一層好ましくは5.0以下であり、より一層好ましくは4.6以下である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、1.05以上であることが好ましく、1.10以上であってもよく、1.30以上であってもよい。
尚、上記Mw、Mn及びMw/Mnは、実施例に記載の方法により測定することができる。
(メタ)アクリル系重合体(II)の1分子中の架橋性シリル基の平均個数は、硬化物の耐候性を向上できる点で、前記の通り、0.50個以上1.8個未満である。好ましくは0.60個以上であり、より好ましくは0.70個以上であり、さらに好ましくは0.75個以上であり、一層好ましくは0.78個以上である。また、破断伸びに優れる点で、好ましくは1.3個以下含有し、より好ましくは0.90個以下であり、さらに好ましくは0.85個以下である。
尚、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(II)に含まれる架橋性シリル基の平均個数は、H-NMR測定及びGPC測定により算出することができる。即ち、重合体を構成する構造単位を同定し、使用された単量体を決定した後、H-NMRスペクトルにおいて、3.5ppm付近に見られる、アルコキシシシランの炭素原子に結合した水素原子に由来するシグナルの積分値から、重合体組成及び架橋性シリル基含有単量体のモル分率を計算し、次いで、このモル分率に、GPC測定により得られた数平均分子量(Mn)を乗ずることによって、1分子中の架橋性シリル基の平均個数を算出することができる。
ここで、架橋性シリル基の導入方法には特段の制限はないが、例えば、加水分解性シリル基含有ビニル化合物を共重合することにより導入することができ、加水分解性シリル基含有ビニル化合物としては、前記した化合物が挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体(II)の25℃における粘度は、20Pa・s以上70Pa・s以下が好ましく、35Pa・s以上50Pa・s以下がより好ましい。当該粘度が20Pa・s以上であると、硬化性樹脂組成物のたれを防止することができ、70Pa・s以下であると、硬化性樹脂組成物の良好な流動性及び塗工性を確保することができる。
尚、上記粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
(メタ)アクリル系重合体(II)は、ランダム共重合体及びブロック共重合体のいずれでもよく、前記の加水分解性シリル基含有ビニル化合物に由来する構造単位を有する重合体であることが好ましい。
また、(メタ)アクリル系重合体(I)との相溶性に優れ、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐候性に優れる観点から、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有する重合体であることが好ましい。
(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有する(メタ)アクリル系重合体(II)は、例えば、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系単量体は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する単量体であり、(メタ)アクリル酸、前記した(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物及び前記した一般式(1)で表される化合物等が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体の使用量は、(メタ)アクリル系重合体(II)の全構成単量体に対し、好ましくは10~100質量%の範囲であり、より好ましくは30~100質量%の範囲であり、さらに好ましくは50~100質量%の範囲である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、前記した化合物等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、硬化物の引張特性の観点から炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体(II)の全構成単量体に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、上限値は100質量%であり、90質量%であってもよく、80質量%であってもよく50質量%であってもよい。
また、上記の内、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを使用すると、オキシアルキレン系重合体との良好な相溶性が確保され、引張特性及び耐候性が良好となる点で好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは10~20であり、より好ましくは12~20である。炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体(II)の全構成単量体に対し、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上である。なお、上限は100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
一般式(1)で表される化合物としては、前記した化合物等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、硬化物の引張特性の観点から炭素数2~8のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが好ましく、炭素数2~4のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル系重合体(II)の全構成単量体に対し、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお、上限は100質量%以下であり、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよい。
(メタ)アクリル系重合体(II)は、上記の単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。
上記の他の単量体としては、(メタ)アクリル系重合体(I)における他の単量体が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
2-1.(メタ)アクリル系重合体(II)の製造方法
(メタ)アクリル系重合体(II)は、通常のラジカル重合によって製造することができる。溶液重合、塊状重合、分散重合いずれの方法を採用してもよく、また、リビングラジカル重合法を利用してもよい。反応プロセスは、バッチ式、セミバッチ式、連続重合のいずれの方法でもよい。これらの中でも、100~350℃の高温連続重合方法が好ましい。
重合体中に均一に架橋性シリル基が導入された場合、当該重合体を含む硬化性樹脂組成物の硬化性、及び得られる硬化物の耐候性等の物性が良好となる。この点、反応器に撹拌槽型反応器を用いた場合、組成分布(架橋性官能基の分布)や分子量分布の比較的狭い(メタ)アクリル系重合体(II)を得ることができるため好ましい。また、連続撹拌槽型反応器を用いるプロセスが組成分布、分子量分布を狭くする点でより好ましい。
高温連続重合法としては、特開昭57-502171号公報、特開昭59-6207号公報、特開昭60-215007号公報等に開示された公知の方法に従えばよい。例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。また、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100質量部に対して0.001~2質量部であることが好ましい。圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。単量体混合物の滞留時間は、1~60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が十分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2~40分である。
さらに、分子量制御に多量の開始剤や連鎖移動剤等の不純物を含まず容易に製造することが可能となる。メルカプタン等の連鎖移動剤は耐候性の低下につながるため、使用しないことが好ましい。一方、分解反応による重合液の着色や分子量低下等の虞がなくなる点から、重合温度の上限は350℃以下とすることが好ましい。上記の温度範囲で重合することにより、適度な分子量を有し、粘度が低く、無着色で夾雑物の少ない共重合体を効率よく製造することができる。すなわち、当該重合方法によれば、極微量の重合開始剤を使用すればよく、メルカプタンのような連鎖移動剤や、重合溶剤を使用する必要がなく、純度の高い共重合体を得ることができる。
また、(メタ)アクリル酸系重合体(II)の製造を高温条件下で行うことによって、
二重結合を導入することができる。例えば、100℃以上の重合温度であれば、高温重合のために高分子鎖からの水素引き抜き反応に始まる切断反応が起こるため、分子末端に下記一般式(4)で表されるエチレン性不飽和結合を有する重合体が得られる。重合温度は好ましくは120℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。重合温度は高い方が重合体中の二重結合濃度が高くなる傾向がある。上記方法によれば、簡便かつ生産性良く、二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体(II)を得ることができる。
Figure 2023072761000003
(式中、Mは単量体単位を表し、nは重合度を表す自然数である。Rは一価の有機基を表す。)
上記一般式(4)におけるRとしては、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基、その他の置換基を有していてもよいアルキル基、フェニル基、ベンジル基、ポリアルキレングリコール基、ジアルキルアミノアルキル基、トリアルコキシシリルアルキル基、アルキルジアルコキシシリルアルキル基又は水素原子である。
(メタ)アクリル系重合体(II)を得るために用いる重合開始剤の例としては、所定の反応温度でラジカルを発生する開始剤であれば何でもよい。具体的には、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等の有機過酸化物、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)などのアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤はこれらの内の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤として水素引き抜き能が高いものを使用した場合、得られる重合体の二重結合濃度が高くなる傾向がある。例えば、アゾ系化合物よりも有機過酸化物を使用した方が、二重結合濃度の高い重合体が得られる傾向がある。
重合開始剤の使用量は、重合開始剤及び単量体の種類、所望する分子量、重合条件等により適宜調整することができるが、一般的には、使用する単量体100質量部に対して0.001~10質量部である。同じ分子量の重合体を得る場合、重合開始剤の使用量が少ないほど、得られる重合体中の二重結合濃度は高くなる傾向がある。
(メタ)アクリル系重合体(II)の製造に有機溶媒を用いる場合、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種または2種以上を用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル共重合体をよく溶解しない溶剤では、反応器の壁にスケールが成長しやすく洗浄工程等で生産上の問題がおきやすい。また、例えばイソプロパノール等の連鎖移動能の高い有機溶媒を使用した場合、得られる重合体中の二重結合濃度は低くなる傾向がある。
溶媒の使用量は、全ビニル単量体100質量部に対して、80質量部以下とすることが好ましい。80質量部以下とすることにより、短時間で高い転化率が得られる。より好ましくは、1~50質量部である。また、オルト酢酸トリメチル、オルト蟻酸トリメチル等の脱水剤を添加することもできる。
(メタ)アクリル系重合体(II)の製造には、公知の連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用した場合、得られる重合体中の二重結合濃度は低くなる傾向がある。また、一般に、連鎖移動剤の使用量を増加することにより二重結合濃度は低下する。
反応器から抜き出された反応液は、そのまま次の工程に進むか、あるいは蒸留等により未反応単量体、溶剤、および低分子量オリゴマー等の揮発性成分を留去することによって重合体を単離することができる。反応液から留去した未反応単量体、溶剤、および低分子量オリゴマーなどの揮発性成分の一部を原料タンクに戻すかまたは直接反応器に戻し、再度重合反応に利用することもできる。
このように未反応単量体および溶剤をリサイクルする方法は経済性の面から好ましい方法である。リサイクルする場合には、反応器内で望ましい単量体比と望ましい溶剤量を維持するように新たに供給する単量体混合物の混合比を決定する必要がある。
(メタ)アクリル酸系重合体(II)に導入された二重結合の濃度は、必要に応じて、(メタ)アクリル系重合体(II)の製造の後処理として、ラジカル発生剤を添加して加熱条件下にて処理することによりその量を低減することができる。
ラジカル発生剤の添加量は、重合体100質量部に対して0.1~10質量部程度であるが、当該添加量が多いほど、二重結合濃度の低減効果は大きい。
加熱処理の際の加熱温度は50~130℃程度であるが、温度が低いほど二重結合濃度の低減効果は大きい。加熱温度は、好ましくは50~110℃の範囲であり、より好ましくは50~100℃の範囲である。
加熱処理時間は特に制限されるものではないが、残存するラジカル発生剤量が、重合体に対して1質量%未満となるよう設定することが好ましい。当業者であれば、当該残存するラジカルを、使用するラジカル発生剤の活性化エネルギー、頻度因子及び反応温度から計算することができる。
また、(メタ)アクリル酸系重合体(II)に導入された二重結合の濃度は、必要に応じて、(メタ)アクリル系重合体(II)の製造の後処理として、水素付加を行うことによっても低減することができる。
水素付加は、従来公知の方法を採用することができる。
即ち、重合体反応液に均一系触媒または不均一系触媒を添加した後、系内を水素雰囲気にし、圧力を常圧~10MPa、温度を20~180℃程度に加熱し、2~20時間ほど反応させる。均一系触媒の具体例としては、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等のロジウム錯体、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等のルテニウム錯体、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金等の白金錯体、カルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム等のイリジウム錯体等が挙げられる。一方、不均一系触媒としては、ニッケル、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、白金等の遷移金属をカーボン、シリカ、アルミナ、繊維、有機ゲル状物等に担持させた固体触媒が挙げられる。不均一系触媒の方が、ろ過等により容易に触媒が除去できるため、品質が安定する、高価な触媒が再利用できるといった点で好ましい。添加する触媒量としては、均一系触媒の場合、ビニル重合体に対して、10~1,000ppm程度である。不均一系触媒の場合、1,000~10,000ppm程度である。
3.硬化性樹脂組成物
本硬化性樹脂組成物は、前記(メタ)アクリル系重合体(I)及び前記(メタ)アクリル系重合体(II)を含む。
それぞれの含有量は、(メタ)アクリル系重合体(I)及び(メタ)アクリル系重合体(II)の合計を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル系重合体(I)の含有割合としては25~80質量%であることが好ましく、35~60質量%であることがより好ましく、また、(メタ)アクリル系重合体(II)の含有割合としては20~75質量%であることが好ましく、40~65質量%であることがより好ましい。
(メタ)アクリル系重合体(I)の含有量が25質量%以上であると、硬化物の耐候性に優れ、80質量%以下であると、良好な流動性及び塗工性を確保することができる。また、(メタ)アクリル系重合体(II)の含有量が20質量%以上であると、硬化物の破断伸びを向上させることができ、75質量%以下であると、硬化物の耐候性に優れる。
本硬化性樹脂組成物は、単独でも、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤、成形材料、ゴムシート等等として適用することが可能であるが、必要に応じて、架橋性シリル基を有するその他の重合体、硬化促進剤、公知の添加剤等を配合した硬化性樹脂組成物の態様としてもよい。
3-1.架橋性シリル基を有するその他の重合体
架橋性シリル基を有するその他の重合体としては、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体、架橋性シリル基を有する(メタ)アクリル系重合体(但し、(メタ)アクリル系重合体(I)及び(メタ)アクリル系重合体(II)とは異なる。)、架橋性シリル基を有するポリエステル系重合体、架橋性シリル基を有するポリウレタン系重合体、架橋性シリル基を有するポリブタジエン系重合体、架橋性シリル基を有する水添ポリブタジエン系重合体及び架橋性シリル基を有するポリイソブチレン系重合体等等が挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体(I)及び(メタ)アクリル系重合体(II)がそれぞれ(メタ)アクリル酸エステル化合物を主な構成単量体である場合には、相溶性に優れる観点、硬化物の引張特性に優れる観点、及び、耐候性に優れる観点から、架橋性シリル基を有するポリオキシアルキレン系重合体(III)が好ましい。
架橋性官能基を有するポリオキシアルキレン系重合体(III)は、下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含むものであれば、特に限定されない。
-O-R- (5)
(式中、Rは、2価の炭化水素基である。)
上記一般式(5)におけるRとしては、以下のものが例示される。
・(CH (nは1~10の整数)
・CH(CH)CH
・CH(C)CH
・C(CHCH
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)は、上記繰り返し単位を1種又は2種以上を組み合わせて含んでもよい。これらの中でも、作業性に優れる点で、CH(CH)CHが好ましい。
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)に含まれる架橋性シリル基としては、特に限定されず、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基、シラノール基等が挙げられるが、反応性を制御し易い点からアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば対応するエポキシ化合物又はジオールを原料として、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒による重合法、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、フォスファゼンを用いた重合法等が挙げられる。
また、上記ポリオキシアルキレン系重合体は、直鎖状重合体又は分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)1分子に含まれる架橋性シリル基の数の平均値は、硬化物の引張特性及び接着性等の観点から、好ましくは1~4個の範囲であり、より好ましくは1.5~3個の範囲である。
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)に含まれる架橋性シリル基の位置は、特に限定されるものではなく、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
また、上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)は、直鎖状重合体及び分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)の数平均分子量(Mn)は、引張特性の観点から好ましくは5,000以上であり、より好ましくは10,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。Mnは、18,000以上であってもよく、22,000以上であってもよく、25,000以上であってもよい。Mnの上限値は硬化性樹脂組成物の塗工時の作業性(粘度)の観点から好ましくは60,000以下であり、より好ましくは50,000以下であり、さらに好ましくは40,000以下である。Mnの範囲は、上記の上限値及び下限値を組み合せて設定することができるが、例えば、5,000以上60,000以下であり、15,000以上60,000以下であってもよく、18,000以上50,000以下であってもよく、22,000以上50,000以下であってもよい。
上記ポリオキシアルキレン系重合体(III)として市販品を使用してもよい。具体例としては、カネカ社製「MSポリマーS203」、「MSポリマーS303」、「MSポリマーS810」、「サイリルSAT200」、「サイリルSAT350」、「サイリルEST280」及び「サイリルSAT30」、並びに、AGC社製「エクセスターES-S2410」、「エクセスターES-S2420」及び「エクセスターES-S3430」(いずれも商品名)が例示される。
3-2.硬化促進剤
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて硬化物を製造するために、通常、硬化促進剤(湿気硬化反応を促進する成分)が配合される。
硬化促進剤としては、有機錫化合物;有機チタン化合物;有機アルミニウム化合物;有機ジルコニウム化合物;有機鉄化合物;有機バナジウム化合物;アミン化合物;酸性リン酸エステル;酸性リン酸エステルとアミン化合物との反応物;飽和又は不飽和の多価カルボン酸及びその酸無水物;カルボン酸化合物とアミン化合物との反応物(塩等)等が挙げられる。これらの内、有機錫化合物が好ましい。尚、本発明の硬化性樹脂組成物に含まれる硬化促進剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
有機錫化合物としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)等のジブチル錫ジカルボキシレート;オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、バーサチック酸錫等の2価錫カルボン酸塩;ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド等のジアルキル錫のアルコキシド誘導体;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート等のジアルキル錫の分子内配位性誘導体(キレート化合物);ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応生成物、等のジブチル錫オキサイド及びエステル化合物による反応生成物;ジブチル錫オキサイド及びシリケート化合物による反応生成物等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ(2-エチルヘキシルチタネート)等のチタンアルコキシド;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート等のキレート化合物;トリエタノールアミンチタネート等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、アルミニウムイソプロピレート、モノsec-ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート等のアルミニウムアルコキシド;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のキレート化合物等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトライソプロポキサイド、ジルコニウムテトラブトキサイド等のジルコニウムアルコキシド;ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート等のキレート化合物等が挙げられる。
有機鉄化合物としては、2-エチルヘキサン酸鉄(2価)、2-エチルヘキサン酸鉄(3価)、ネオデカン酸鉄(2価)、ネオデカン酸鉄(3価)、オレイン酸鉄(2価)、オレイン酸鉄(3価)、ナフテン酸鉄(2価)、ナフテン酸鉄(3価)等のカルボン酸鉄塩が挙げられる。
アミン化合物としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジブチルアミン-2-エチルヘキソエート、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物に含有される硬化促進剤の含有割合は、特に限定されない。(メタ)アクリル系重合体(I)及び(メタ)アクリル系重合体(II)の合計を100質量部とした場合の硬化促進剤の含有割合は、好ましくは0.25~2.5質量部、より好ましくは0.5~1.5質量部である。
また、(メタ)アクリル系重合体(I)、(メタ)アクリル系重合体(II)及び架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(III)の合計を100質量部とした場合の硬化促進剤の含有割合は、好ましくは0.16~1.6質量部、より好ましくは0.3~1.0質量部である。
3-3.添加剤
本発明の硬化性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、従来、公知の添加剤を含有することができる。添加剤としては、充填材、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、難燃剤、消泡剤、滑剤、耐候安定剤、粘着付与剤、垂れ防止剤、タック防止剤、脱水剤、導電性付与剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料等)、蛍光増白剤等が挙げられる。
充填材としては、軽質炭酸カルシウム(平均粒径0.02~2.0μm程度)、重質炭酸カルシウム(平均粒径1.0~5.0μm程度)、酸化チタン、カーボンブラック、合成ケイ酸、タルク、ゼオライト、マイカ、シリカ、焼成クレー、カオリン、ベントナイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラスバルーン、シリカバルーン、ポリメタクリル酸メチルバルーン等が挙げられる。
可塑剤としては、液状ポリウレタン樹脂、ジカルボン酸とジオールとから得られたポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのエーテル化物あるいはエステル化物;スクロース等の糖類多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合した後、エーテル化又はエステル化して得られた糖類系ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤;ポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン系可塑剤;架橋性官能基を有さないポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、架橋性官能基を有さないポリ(メタ)アクリレートが硬化物の耐候性等の耐久性の点で好ましい。これらの中でも、Mwが1,000~7,000の範囲であり、且つ、ガラス転移温度が-30℃以下のものがより好ましい。可塑剤の使用量は、(メタ)アクリル系重合体(I)及び(メタ)アクリル系重合体(II)の合計量100質量部に対して、好ましくは0~100質量部の範囲であり、0~80質量部の範囲であってもよく、0~50質量部の範囲であってもよい。
充填材としては、平均粒径0.02~2.0μm程度の軽質炭酸カルシウム、平均粒径1.0~5.0μm程度の重質炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、合成ケイ酸、タルク、ゼオライト、マイカ、シリカ、焼成クレー、カオリン、ベントナイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラスバルーン、シリカバルーン、ポリメタクリル酸メチルバルーンが例示される。これら充填材により、硬化物の機械的な性質が改善され、破断強度や破断伸びを向上させることができる。
これらの中でも、物性改善の効果が高い、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び酸化チタンが好ましく、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとの混合物がより好ましい。充填材の添加量は、ポリオキシアルキレン系重合体及び本ブロック共重合体の合計量100質量部に対して、20~300質量部が好ましく、より好ましくは、50~200質量部である。上記のように軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合物とする場合には、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウムの質量割合が90/10~50/50の範囲であることが好ましい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、置換トリル系化合物、金属キレート系化合物等が挙げられる。
光安定剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
本発明においては、酸化防止剤と、紫外線吸収剤と、光安定剤又は熱安定剤とを、適宜、組み合わせて、老化防止剤として用いることができる。
接着性付与剤としては、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(N-トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1,1-ジメトキシ-2-トリメチルシリル-1-シラ-2-アザシクロペンタン等の、アミノ基又は置換アミノ基を有するアルコキシシラン等が挙げられる。
上記アルコキシシラとして市販品を使用してもよい。具体例としては、信越シリコーン社製の商品名「KBM602」、「KBM603」、「KBE602」、「KBE603」、「KBM902」、「KBM903」などのアミノシラン類等(いずれも商品名)が例示される。
脱水剤としては、オルト蟻酸メチル、オルト酢酸メチル、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。
本硬化性樹脂組成物の性能又は塗工性、加工性等を調整する目的で、他の熱可塑性樹脂等を添加してもよい。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレンのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。また、公知のエラストマーを添加混合してもよい。
3-4.硬化性樹脂組成物の使用態様
硬化物の形成に用いる本硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は、好ましくは10~400Pa・sであり、より好ましくは10~250Pa・sであり、さらに好ましくは15~200Pa・sであり、なお好ましくは20~160Pa・sである。
尚、上記粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本硬化性樹脂組成物は、室温(25℃)で良好な流動性を示すため、各種の塗工のほか、押出成形、射出成形、及び鋳込み成形等の各種方法による成形加工に適用することができる。
本発明において、硬化促進剤を併存させた硬化性樹脂組成物を、大気中の水分等により、十分な速度で、容易に硬化させることができる。そして、3次元架橋構造を形成し、ゴム状弾性を有する硬化物を得ることができる。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、建築分野、土木分野、電気・電子分野、車両分野等において、このような硬化物を形成する接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤、成形材料、ゴムシート等として有用である。
本発明の硬化性樹脂組成物を、そのまま硬化物の形成に用いる場合、予め、全成分が配合密封保存され、使用の際に開封、施工後、大気中の水分を吸収することにより硬化する1成分型とするか、あるいは、(メタ)アクリル系重合体(I)、(メタ)アクリル系重合体(II)及び架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(III)とは別に、硬化促進剤等を含む硬化剤組成物を準備しておき、使用の際に、全成分を混合する2成分型として、利用することができる。
本発明のシーリング材組成物は、上記本発明の硬化性樹脂組成物の構成を有するものとすることができ、例えば、1の被着体(以下、「第1被着体」ともいう)と、この第1被着体との間に隙間を設けて隣り合って載置された他の被着体(以下、「第2被着体」ともいう)との間に充填する方法等に適用することができる。
第1被着体及び第2被着体の構成材料は、互いに同一であっても、異なってもよく、例えば、セラミックス、金属、コンクリート、ガラス等とすることができる。本発明により得られる硬化物は、耐候性に優れるため、屋外で長期に渡って曝される用途に好適である。
以下、実施例に基づいて本開示を具体的に説明する。尚、本開示は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
合成例、比較合成例、製造例及び比較製造例で得られた(メタ)アクリル系重合体の分析方法について以下に記載する。
<分子量測定>
得られた(メタ)アクリル系重合体について、以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
装置:東ソー社製型式名「HLC-8320」
カラム:東ソー社製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
検出器:RI
流速:600μL/min
<ガスクロマトグラフィー(GC)測定>
○測定条件
カラム:キャピラリーカラムAgilent社製CP-Wax52CB(60m×0.32mmID、df=0.5μm)及びAgilent社製DB-1(30m×0.32mmID、df=1.0μm)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:50℃(5分)、7℃/分、230℃(5分)
<粘度測定>
TVE-20H型粘度計(円錐/平板方式、東機産業社製)を用いて、下記の条件下でE型粘度を測定した。
○測定条件
・コーン形状
No.1:角度1°34′、半径24mm(10,000mPa・s未満)
No.7:角度3°、半径7.7mm(10,000mPa・s以上)
・温度:25℃±0.5℃
・回転速度:
No.1:1.0rpm
No.7:粘度が100,000mPa・s以上の場合は、1.5rpm
粘度が100,000mPa・s以下の場合は、10rpm
<(メタ)アクリル系重合体1分子中の架橋性シリル基の平均個数>
架橋性シリル基(アルコキシシリル基)の平均個数(以下、「f(Si)」ともいう。)は、全構成単量体を100質量部とした場合の架橋性シリル基を有する単量体の質量部から、下記式を用いて算出した。
f(Si)={架橋性シリル基含有単量体の質量部/(架橋性シリル基含有単量体の分子量×100/Mn)}
<実施例及び比較例における硬化性樹脂組成物の調製及び評価方法>
下記表1に示す配合割合に従って各成分を配合して、常法に従い、硬化性樹脂組成物を調製した。
Figure 2023072761000004
尚、表1における化合物の略号は下記を意味する。
・ポリオキシアルキレン系重合体:分岐型変成シリコーン エクセスターES-S3430(AGC社製)
・UP-1110:アクリル系可塑剤、ARUFON(登録商標)UP-1110(東亞合成社製)
・軽質炭酸カルシウム:白艶華CCR(白石カルシウム社製)
・重質炭酸カルシウム:スーパーSS(丸尾カルシウム社製)
・R820:酸化チタンR-820(石原産業社製)
・B75:老化防止剤、チヌビンB75(チバスペシャリティー社製)
・SH6020:3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、SH6020(東レ・ダウコーニング社製)
・S340:N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)プロパンアミン、サイラエース S340(JNC社製)
・SZ6300:ビニルトリメトキシシラン、SZ6300(東レ・ダウコーニング社製)
・U-220H:スズ触媒(ジブチル錫ジアセチルアセトナート)、ネオスタンU-220H(日東化成社製)
また、表1における略号Wx及びWyは、それぞれトリブロック共重合体X及び共重合体Yの配合部数を意味する。
<引張試験>
各硬化性樹脂組成物を厚さ2mmでテフロン(登録商標)のシートに室温(25℃)で塗布し、23℃、50%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作製した。
得られた硬化シートから、引張試験用ダンベル(JIS K 6251 3号型)で試験片を打ち抜き、引張試験機(オートグラフAGS-J、島津製作所社製)を用いて、破断強度(MPa)及び破断伸び(%)を測定した。測定は、温度23℃、湿度50%の環境において引張速度200mm/分で行った。
<耐候性試験>
各硬化性樹脂組成物を厚さ2mmでテフロン(登録商標)のシートに室温(25℃)で塗布し、23℃、50%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作製した。
得られた硬化シートをメタリングウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス社製「DAIPLA METAL WEATHER KU-R5NCI-A」)に入れ、促進耐候試験を行った。条件は照射63℃、70%RH、照度80mW/cmとし、2時間に1回2分間のシャワーで試験を実施した。
外観にクラック、ブリード等の異常が生じ始めた時間を記録し、耐候性を評価した。
≪(メタ)アクリル系重合体(表1におけるトリブロック共重合体X)の製造≫
≪重合体ブロック(A)の製造≫
(合成例1:重合体a-1の製造)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート(以下、「DBTTC」ともいう。)(6.4部)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(以下、「V-65」ともいう。)(0.28部)、アクリル酸n-ブチル(以下、「nBA」ともいう。)(56部)、アクリル酸エチル(以下、「EA」ともいう。)(4.0部)、アクリル酸テトラデシル(以下、「TDA」ともいう。)(15部)、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート(25部)、酢酸エチル(85部)及びオルト酢酸トリメチル(以下、「MOA」ともいう。)(21部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、58℃に昇温して重合を開始した。2時間後、1時間かけて70℃まで昇温し、さらに4時間、70℃で反応させた。その後、室温まで冷却して反応を停止し、重合体a-1を含む溶液を得た。
得られた重合体a-1の分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定(ポリスチレン換算)より、Mn4,600、Mw6,800、Mw/Mn1.48であった。また、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した各モノマーの反応率は、nBA:80%、EA:89%、TDA:83%、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート:100%であった。
(合成例2~10及び比較合成例1~3:重合体a-2~a-10及びa′-1~a′-3の製造)
仕込み原料を表2に記載の通り用いた以外は合成例1と同様の操作を行い、重合体a-2~a-10及びa′-1~a′-3を得た。各重合体の分子量及び各モノマーの反応率を測定し、、表2に示した。
Figure 2023072761000005
尚、表2における、合成例1記載以外の略号は下記の化合物を意味する。
・MMA:メタクリル酸メチル
≪トリブロック共重合体の製造≫
(合成例11:トリブロック共重合体b-1の製造)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、合成例1で得られた重合体a-1を含む溶液(8.7部)、nBA(68.3部)、EA(4.6部)、TDA(18.4部)、ABN-E(0.21部)、酢酸エチル(42部)及びMOA(11部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。重合開始から6時間後、室温まで冷却して反応を停止し、トリブロック共重合体b-1を含む溶液を得た。
得られたトリブロック共重合体b-1の分子量は、Mn45,000、Mw51,000、Mw/Mn1.13であった。また、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した各モノマーの反応率は、nBA:91%、EA:90%、TDA:88%であった。
(合成例12、15~20及び比較合成例4~5:トリブロック重合体b-2、b-5~b-10、b′-1及びb′-2の製造)
仕込み原料を表3に記載の通り用いた以外は合成例11と同様の操作を行い、トリブロック共重合体b-2~b-10及びb′-1、b′-2を得た。各重合体の分子量及び各モノマーの反応率を測定し、表3に示した。
(合成例13:トリブロック共重合体b-3の製造)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、合成例3で得られた重合体a-3を含む溶液(2.8部)、nBA(22.2部)、MMA(1.47部)、TDA(5.89部)、ABN-E(0.064部)、酢酸エチル(14部)及びMOA(3.58部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。nBA(44.4部)、MMA(2.93部)及びTDA(11.8部)を撹拌して混合することにより得た単量体混合物溶液、及び合成例3で得られた重合体a-3(8.5部)を重合開始から30分後、フラスコへ240分かけてそれぞれ連続供給した。連続供給終了後、ABN-E(0.056部)及び酢酸エチル(1.0部)の混合溶液を供給し、内温を30分かけて60℃にした。重合開始から7時間後、室温まで冷却して反応を停止し、トリブロック共重合体b-3を含む溶液を得た。
得られたトリブロック共重合体b-3の分子量は、Mn61,000、Mw88,000、Mw/Mn1.44であった。また、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した各モノマーの反応率は、nBA:92%、MMA:100%、TDA:93%であった。
(合成例14:トリブロック重合体b-4の製造)
仕込み原料を表3に記載の通り用いた以外は合成例13と同様の操作を行い、トリブロック共重合体b-4を得た。各重合体の分子量及び各モノマーの反応率を測定し、表3に示した。
(比較合成例6:トリブロック共重合体b′-3の製造)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、合成例3で得られた重合体a′-3を含む溶液(2.8部)、nBA(22.2部)、MMA(1.47部)、TDA(5.83部)、ABN-E(0.064部)、酢酸エチル(14部)及びMOA(3.58部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、70℃の恒温槽で重合を開始した。nBA(44.6部)、MMA(2.93部)及びTDA(11.7部)を撹拌して混合することにより得た単量体混合物溶液、及び合成例3で得られた重合体a′-3(8.5部)を重合開始から30分後、フラスコへ480分かけてそれぞれ連続供給した。連続供給終了後、ABN-E(0.056部)及び酢酸エチル(1.0部)の混合溶液を供給し、内温を30分かけて60℃にした。重合開始から11時間後、室温まで冷却して反応を停止し、トリブロック共重合体b′-3を含む溶液を得た。
得られたトリブロック共重合体b′-3の分子量は、Mn76,000、Mw174,000、Mw/Mn2.29であった。また、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した各モノマーの反応率は、nBA:83%、MMA:99%、TDA:86%であった。
Figure 2023072761000006
尚、表3における、合成例1記載以外の略号は下記の化合物を意味する。
・MMA:メタクリル酸メチル
≪ペンタブロック共重合体の製造≫
(合成例21:ペンタブロック共重合体c-1の製造)
合成例11で得られたトリブロック共重合体b-1を含む溶液(98.9部)に、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート(1.1部)、ABN-E(0.038部)及びMOA(0.21部)を仕込み、窒素バブリングで十分脱気し、60℃に昇温することで重合を開始した。7時間後、室温まで冷却して反応を停止し、ペンタブロック共重合体c-1を含む溶液を得た。ペンタブロック共重合体c-1の分子量は、Mn50,000、Mw60,000、Mw/Mn1.20であった。また、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した各モノマーの反応率は、nBA:81%、EA:89%、TDA:86%、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート:99%であった。
得られたペンタブロック共重合体c-1は、nBA、EA、TDA及びメチルジメトキシシリルプロピルメタクリレートからなる重合体ブロック(A)、並びに、nBA、EA及びTDAからなる重合体ブロック(B)を有し、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)のブロック構造を有するペンタブロック共重合体である。重合率から重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の組成比は(A)/(B)/(A)/(B)/(A)=1.7/43.6/9.4/43.6/1.7(wt%)であり、まとめると(A)/(B)≒13/87(wt%)であった。
(合成例22~30及び比較合成例7~9:ペンタブロック共重合体c-2~c-10、c′-1~c′-3の製造)
仕込み原料を表3に記載のとおり用いた以外は合成例21と同様の操作を行い、ペンタブロック共重合体c-2~c-10及びc′-1~c′-3を得た。各重合体の分子量を測定し、表4に示した。また、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の組成比を計算し、表4に示した。
Figure 2023072761000007
≪ペンタブロック共重合体c-1~c-10及びc’-1~c’-3の後処理工程≫
(製造例1:トリブロック共重合体d-1の製造)
合成例21で得たブロック共重合体c-1を含む溶液に対して、窒素バブリングで十分脱気した後、n-プロピルアミン(ブロック共重合体c-1のチオカルボニルチオ基に対して5モル当量)を仕込み、40℃の恒温槽でチオカルボニル基の分解反応を開始した。5時間後、室温まで冷却して反応を停止し、ブロック共重合体d-1を含む溶液を得た。
前記溶液を、20kPaに減圧し、120℃に保った薄膜蒸発器で、連続的に未反応の単量体や溶剤などの揮発性成分を留去し、不揮発性成分であるブロック共重合体d-1を回収した。
(メタ)アクリル系重合体(I)として得られたブロック共重合体d-1は、重合体ブロック(A)-アクリル酸n-ブチル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸エチルおよびメチルジメトキシシリルプロピルメタクリレートの共重合体ブロックと(B)-アクリル酸n-ブチル、アクリル酸テトラデシルおよびアクリル酸エチルの共重合体ブロックからなる、(A)-(B)-(A)の構造を有するトリブロック共重合体であり、ブロック共重合体c-1のチオカルボニルチオ基がアミンによって分解されてできたチオールと、ブロック共重合体c-1に含まれる残存アクリレート化合物とのマイケル付加体である。
1H-NMR測定から、ブロック共重合体c-1で見られたチオカルボニルチオ基に隣接する炭素に結合する水素のピーク(4.8ppm)が、ブロック共重合体d-1では消失し、残存アクリレート化合物とのマイケル付加体(前記一般式(3)で表される末端分子構造)に由来するピーク(3.3ppm、2.9ppm)が現れたことを確認した。
また、ブロック共重合体d-1の分子量は、Mn32,000、Mw40,000、Mw/Mn1.25であった。また、RAFT剤1個当たりのジメトキシシリルプロピルメタクリレートの導入量から、ブロック(A)に含まれる1分子当たりの架橋性シリル基の平均個数を求めた結果、平均5.0個と算出された。
さらに、E型粘度は190Pa・sであった。
(製造例2~10及び比較例1~3:トリブロック共重合体d-2~d-10及びd′-1~d′-3の製造)
仕込み原料を表5に記載の通り用いるとともに、脱溶温度を適宜調節した以外は製造例1と同様の操作を行い、ブロック共重合体d-2~d-10、d′-1~d′-3を得た。
各ブロック共重合体の分子量及びポリマー組成、ブロック(A)に含まれる1分子当たりの架橋性シリル基の平均個数、並びに、E型粘度を表5に示した。
Figure 2023072761000008
尚、表5に示された化合物の略号は下記の化合物を意味する。
・PAm:n-プロピルアミン
≪(メタ)アクリル系重合体(表1における共重合体Y)の製造≫
(製造例11:共重合体Y-1の製造)
オイルジャケットを備えた容量1000mLの加圧式攪拌槽型反応器の温度を192℃に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、nBAを75.8部、TDAを20部、ビニルジメトキシシラン(以下「VDMS」ともいう。)を4.2部、イソプロピルアルコール(以下、「IPA」ともいう)を3.0部、MOAを3.0部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)を4.0部、重合開始剤としてジ-t-ヘキシルパーオキサイド(日油製、商品名「パーヘキシルD」、以下、「DTHP」ともいう)を0.02部からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケットの温度を制御することにより、反応温度を191~193℃に保持した。
単量体混合物の供給開始から温度が安定した時点を、反応液の採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、(メタ)アクリル系重合体(II)として、共重合体Y-1を得た。
<共重合体Yの組成の算出>
上記の揮発成分のガスクロマトグラフィー(GC)測定し、各成分の含有量を算出した。各成分の供給量から揮発成分の量を差し引くことにより、共重合体Yの組成を決定した。
(製造例12~19及び比較製造例4~7)
仕込み原料を表6に記載の通り用いるとともに、反応器内温を適宜調節した以外は、製造例11と同様の方法により合成した。各重合体の分子量及びポリマー組成、1分子あたりの架橋性シリル基の平均個数及びE型粘度を表6に示した。
Figure 2023072761000009
≪硬化性樹脂組成物の調製及び評価≫
(実施例1~22及び比較例1~9)
ベース樹脂として、製造例1~10及び比較製造例1~3で得られたトリブロック共重合体X、並びに、製造例11~19及び比較製造例1~3で得られた共重合体Yを使用し、前掲の配合表(表1)及び表7~9に従って、硬化性樹脂脂組成物を調製し、それぞれ硬化シートを作製した。
各硬化性樹脂脂組成物から得られた硬化シートについて、引張試験及び耐候性試験を行い、その結果を表7~9に示した。
Figure 2023072761000010
Figure 2023072761000011
Figure 2023072761000012
≪評価結果≫
実施例1~22の結果から明らかなように、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、塗工性に優れ、かつ、硬化物の破断伸びが高く、引張特性に優れるとともに、耐候性に優れるものであった。
これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体(I)の含有量に着目すると、当該含有量が多いほど、硬化物の耐候性に優れた(実施例3、11~14)。また、(メタ)アクリル系重合体(II)の含有量に着目すると、当該含有量が多いほど、硬化物の破断伸びが高く、より一層引張特性に優れた(実施例3、11~14)。
これらに対して、(メタ)アクリル系重合体(II)を含まない場合(比較例1)、及び、(メタ)アクリル系重合体(II)の1分子あたりの架橋性シリル基数の平均個数が1.8個以上の場合(比較例9)には、破断伸びが低い結果であった。
また、(メタ)アクリル系重合体(I)を含まない場合(比較例2)、(メタ)アクリル系重合体(I)の1分子あたりの架橋性シリル基数の平均個数が1.8個未満の場合(比較例3)、(メタ)アクリル系重合体(I)の数平均分子量が30,000未満の場合(比較例4)、(メタ)アクリル系重合体(II)の重量平均分子量が10,000未満の場合(比較例6)、(メタ)アクリル系重合体(II)の1分子あたりの架橋性シリル基数の平均個数が0.50個未満の場合(比較例8)には、耐候性が著しく劣る結果であり、実用に耐え難いものであった。
さらにまた、(メタ)アクリル系重合体(II)を含まない場合(比較例1)、(メタ)アクリル系重合体(I)の分子量分布が2.2以上の場合(比較例5)、及び、(メタ)アクリル系重合体(II)の重量平均分子量が50,000超の場合(比較例7)には、組成物の粘度が400Pa・s超となり、塗工性に劣る結果であった。
本発明の硬化性樹脂組成物は、塗工性に優れ、硬化物の破断伸びが高く、引張特性に優れるとともに、耐候性に優れた硬化物を得ることができる。このため、接着剤、シーリング材、塗料、コーティング剤、成形材料、ゴムシート等として適用することが可能であり、耐候性にも優れるため、特に、シーリング材用として好適である。

Claims (9)

  1. 数平均分子量が30,000以上80,000以下、かつ、分子量分布(Mw/Mn)が2.2以下であり、1分子中の架橋性シリル基の平均個数が1.8個以上である、(メタ)アクリル系重合体(I)、及び、重量平均分子量が10,000以上50,000以下であり、1分子中に架橋性シリル基の平均個数が0.50個以上1.8個未満である、(メタ)アクリル系重合体(II)を含有する、硬化性樹脂組成物。
  2. 前記(メタ)アクリル系重合体(I)は、ブロック共重合体である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. 前記ブロック共重合体は、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる構造単位を有する、請求項2に記載のブロック共重合体。
  4. 前記(メタ)アクリル系重合体(I)は、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性組樹脂組成物。
  5. 前記(メタ)アクリル系重合体(II)は、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性組樹脂組成物。
  6. 前記(メタ)アクリル系重合体(I)及び前記(メタ)アクリル系重合体(II)の合計を100質量%とした場合に、前記(メタ)アクリル系重合体(I)の含有割合が25~80質量%であり、前記(メタ)アクリル系重合体(II)の含有割合が20~75質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
  7. さらに、架橋性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体(III)を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 25℃における粘度が100~400Pa・sである、請求項1~7のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
  9. 請求項1~8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を含有する、シーリング材組成物。
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