JPWO2018021325A1 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

車両の自動運転中、ドライバーによるハンドル操作(操舵)が介入したとき、介入した操作を十分に反映し、尚かつ、同操作が介入したときにドライバーが覚えることがある違和感、不快感を低減する。これを実現するべく、電動パワーステアリング装置のECUは、舵角指令値が入力され、ステアリングの舵角を制御する舵角制御部200と、アシストマップ徐変ゲインが入力され、アシスト制御出力徐変ゲインを出力するアシスト制御部147と、舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて舵角制御部200による舵角制御モードとアシスト制御部147によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部145と、を有している。舵角制御部200は、位置制御部208と、舵角速度制御部212と、操舵介入補償兼ハンドル制振手段220と、を有する。

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関する。
従来、自動車用操舵系において、電動式のパワーステアリング装置(EPS:Electric Power Steering)が提案され、実用化されている。現在においては、ステアリングホイールに付加された操舵トルクに応じて、電動モータで補助操舵トルクを発生し、この補助操舵トルクをステアリング軸に伝達する電動パワーステアリング装置の開発が進められている。このような電動パワーステアリング装置では、モータが減速機構を介してステアリング軸に接続され、モータの回転は、減速機構により減速された後、ステアリング軸に伝達される。
また、近年においては、車両を自動操舵する自動運転技術が着目されており、様々な技術が開発されている。電動パワーステアリング装置において自動操舵を実現する場合、舵角制御(ステアリングの舵角を所望の角度に追従させるためのモータ電流指令値を演算・制御すること)とアシスト制御(ステアリング機構にモータの回転力で操舵補助力(アシスト)を付与するためのモータ電流指令値を演算・制御すること)を独立して保有し、これらの出力を切り換える構成などが採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許第3912279号公報 特許第3917008号公報 特開2004−017881号公報
しかしながら、自動運転中、ドライバーによるハンドル操作(ステアリング操舵)が介入したとき、介入した操作が十分に反映されない場合がある。また、同操作が介入したとき、ドライバーが違和感、不快感を覚えることがある。以上について詳述すれば以下のとおりである。
<課題1(自動運転中のドライバー介入時の違和感、舵角制御とアシスト制御の両立)>
舵角制御には、舵角指令に対する応答性、路面反力などに対する外乱抑圧性で優れた性能を持つ位置速度制御が用いられており、例えば、位置制御部にはP制御(比例制御)、速度制御部にはPI制御(比例積分制御)が用いられている。舵角制御とアシスト制御のそれぞれの出力である指令値を切り換える際、例えばドライバーによるスイッチ入力によって急な切換が生じると、指令値が急変動し、ハンドル挙動が不自然になるため、ドライバーへ違和感を与える。このため、舵角制御指令値とアシスト制御指令値にそれぞれの徐変ゲイン(徐々に変化するゲイン)を乗じ、徐々に出力を切り換えることによって、電流指令値の急変動を抑制する手法が用いられている(特許文献3等参照)。
しかし、この手法では、切換中は舵角制御指令値が徐変ゲインで制限され、電流指令値へ出力されるため、舵角制御指令値に対し、電流指令値の出力が、制限されたぶん小さくなってしまう。この制限により、舵角速度指令値に対し、モータの実速度が遅くなるため、舵角速度指令値と実速度との間に偏差が発生し、速度制御内のI制御(積分制御)の積分値が蓄積してしまうことで、速度制御から更に大きな舵角制御指令値が出力されてしまう。この結果、アシスト制御指令値に対する徐変ゲインが徐々に大きくなっていく状態では、徐変ゲインによる制限が緩和されていくため、徐変ゲインが大きくなるに従って舵角制御指令値が過剰な値となり、ハンドルが舵角速度指令値に対して過剰に応答し、引っ掛かり感といった形でドライバーに違和感と不快感を与える。
<課題2>
そもそも、上記課題1を含む先行技術(例えば特許文献3参照)に係る方法では、舵角偏差にP制御、速度制御にPI制御を行っており、舵角制御中にドライバーによる手入力の介入があった場合に、当然、舵角制御が舵角指令値に追従するよう動作し、舵角制御からアシスト制御への「切換動作」が行われるまで、手動による舵を切ることは困難である。また、「手入力検出」「切換動作」により、時間的な遅れが発生し、ドライバーによる操舵介入動作が十分に行えないことがある。
本発明は、車両の自動運転中、ドライバーによるハンドル操作(操舵)が介入したとき、介入した操作を十分に反映することができ、尚かつ、同操作が介入したときにドライバーが覚えることがある違和感、不快感を低減することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するべく、本発明は、
車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
を有しており、
前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
前記ECUは、
前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
アシストマップ徐変ゲインが入力され、アシスト制御出力徐変ゲインを出力するアシスト制御部と、
前記舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
を有しており、
前記舵角制御部は、
前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、擬似積分を用いたPI制御により算出する舵角速度制御部と、
ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
を有する、というものである。
上述のごとき構成の電動パワーステアリング装置によれば、車両の自動運転中において「手入力検出」「切換動作」が無くとも、違和感の無い操舵介入を実現することができる。また、操舵介入時の引っ掛かり感等の違和感を軽減し、さらに舵角制御からアシスト制御への違和感を抑えた切換動作も実現できる。
電動パワーステアリング装置において、前記舵角制御部は、ハンドル振動周波数成分を低減するフィルタ、または位相遅れ補償により振動周波数成分を低減させるハンドル振動除去手段をさらに有していることが好ましい。
従来の一般的な技術(例えば、特許文献2参照)では、位置制御部にP制御、速度制御部に速度PI制御を用いた舵角追従制御を行っていた。車両において舵角制御を行う場合、走行車速、摩擦や路面反力の変化などで外乱や負荷状況が大きく変化するため、それらに対して耐性のある制御構成でなければならない。ところが、従来の制御技術における構成のみでは、例えば路面反力が変化した場合や、また、目標舵角が素早く変化した場合に、ステアリングホイールのバネと慣性系により振動が発生し、それをドライバーが違和感や不快感として感じる可能性が十分にある(課題3)。これに対し、上述のごとき電動パワーステアリング装置によれば、ハンドル振動除去手段と操舵介入補償兼ハンドル制振手段を用いることで、自動操舵中のハンドルの振動抑制を実現することができる。
また、前記舵角制御部は、前記徐変完了まで前記舵角速度指令値ωrefをリミッタで制限する上下限可変リミッタをさらに有していることが好ましい。
従来の一般的な技術(例えば、特許文献1参照)では、舵角制御開始時に徐々に舵角速度を増加させるよう制御し、開始時のハンドル急変動によるドライバーへの違和感を低減する手法が提案されている。ところが、この手法では、徐変が始まると舵角速度上限値に達するまで増加し続けるため、I制御の積分値が過剰に蓄積してしまう。この結果、徐変ゲインが大きくなるに従って舵角制御指令値が過剰な値となり、ハンドルが舵角速度指令値に対して過剰に応答し、ドライバーへ違和感を与えてしまう(課題4)。これに対し、上述のごとき電動パワーステアリング装置によれば、上下限可変リミッタ、さらに舵角制御出力徐変ゲイン、速度指令徐変ゲイン、速度指令徐変ゲインにより、上記のようなドライバーへの違和感を低減する。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度制御徐変ゲインを、前記舵角速度制御部の中の信号に乗じるものであってもよい。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度指令徐変ゲインを、前記舵角速度指令値ωrefに乗じるものであってもよい。
前記舵角制御部は、前記舵角指令値をレートリミット処理し、該舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避ける可変レートリミッタをさらに有するものであってもよい。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した舵角指令徐変ゲインを、前記可変レートリミッタからの舵角指令値に対して乗じるものであってもよい。
電動パワーステアリング装置において、前記ECUは、アシストマップ徐変ゲインが入力されてアシスト制御出力を出力するアシスト制御部をさらに有しており、かつ、前記アシスト制御部の出力にアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を乗じるようになっていてもよい。
かかる課題を解決するべく、本発明は、
車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
を有しており、
前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
前記ECUは、
前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
前記舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
を有しており、
前記舵角制御部は、
前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、比例ゲインKvと位相遅れ補償を用いた制御により算出する舵角速度制御部と、
ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
を有する、というものである。
上述のごとき構成の電動パワーステアリング装置によれば、車両の自動運転中において「手入力検出」「切換動作」が無くとも、違和感の無い操舵介入を実現することができる。また、操舵介入時の引っ掛かり感等の違和感を軽減し、さらに舵角制御からアシスト制御への違和感を抑えた切換動作も実現できる。
電動パワーステアリング装置において、前記舵角制御部は、ハンドル振動周波数成分を低減するフィルタ、または位相遅れ補償により振動周波数成分を低減させるハンドル振動除去手段をさらに有していることが好ましい。
従来の一般的な技術(例えば、特許文献2参照)では、位置制御部にP制御、速度制御部に速度PI制御を用いた舵角追従制御を行っていた。車両において舵角制御を行う場合、走行車速、摩擦や路面反力の変化などで外乱や負荷状況が大きく変化するため、それらに対して耐性のある制御構成でなければならない。ところが、従来の制御技術における構成のみでは、例えば路面反力が変化した場合や、また、目標舵角が素早く変化した場合に、ステアリングホイールのバネと慣性系により振動が発生し、それをドライバーが違和感や不快感として感じる可能性が十分にある(課題3)。これに対し、上述のごとき電動パワーステアリング装置によれば、ハンドル振動除去手段と操舵介入補償兼ハンドル制振手段を用いることで、自動操舵中のハンドルの振動抑制を実現することができる。
また、前記舵角制御部は、前記徐変完了まで前記舵角速度指令値ωrefをリミッタで制限する上下限可変リミッタをさらに有していることが好ましい。
従来の一般的な技術(例えば、特許文献1参照)では、舵角制御開始時に徐々に舵角速度を増加させるよう制御し、開始時のハンドル急変動によるドライバーへの違和感を低減する手法が提案されている。ところが、この手法では、徐変が始まると舵角速度上限値に達するまで増加し続けるため、I制御の積分値が過剰に蓄積してしまう。この結果、徐変ゲインが大きくなるに従って舵角制御指令値が過剰な値となり、ハンドルが舵角速度指令値に対して過剰に応答し、ドライバーへ違和感を与えてしまう(課題4)。これに対し、上述のごとき電動パワーステアリング装置によれば、上下限可変リミッタ、さらに舵角制御出力徐変ゲイン、速度指令徐変ゲイン、速度指令徐変ゲインにより、上記のようなドライバーへの違和感を低減する。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度制御徐変ゲインを、前記舵角速度制御部の中の信号に乗じるものであってもよい。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度指令徐変ゲインを、前記舵角速度指令値ωrefに乗じるものであってもよい。
前記舵角制御部は、前記舵角指令値をレートリミット処理し、該舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避ける可変レートリミッタをさらに有するものであってもよい。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した舵角指令徐変ゲインを、前記可変レートリミッタからの舵角指令値に対して乗じるものであってもよい。
電動パワーステアリング装置において、前記ECUは、アシストマップ徐変ゲインが入力されてアシスト制御出力を出力するアシスト制御部をさらに有しており、かつ、前記アシスト制御部の出力にアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を乗じるようになっていてもよい。
かかる課題を解決するべく、本発明は、
車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
を有しており、
前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
前記ECUは、
前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
前記舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
を有しており、
前記舵角制御部は、
前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、比例制御により算出する舵角速度制御部と、
ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
を有する、というものである。
上述のごとき構成の電動パワーステアリング装置によれば、車両の自動運転中において「手入力検出」「切換動作」が無くとも、違和感の無い操舵介入を実現することができる。また、操舵介入時の引っ掛かり感等の違和感を軽減し、さらに舵角制御からアシスト制御への違和感を抑えた切換動作も実現できる。
電動パワーステアリング装置において、前記舵角制御部は、ハンドル振動周波数成分を低減するフィルタ、または位相遅れ補償により振動周波数成分を低減させるハンドル振動除去手段をさらに有していることが好ましい。
従来の一般的な技術(例えば、特許文献2参照)では、位置制御部にP制御、速度制御部に速度PI制御を用いた舵角追従制御を行っていた。車両において舵角制御を行う場合、走行車速、摩擦や路面反力の変化などで外乱や負荷状況が大きく変化するため、それらに対して耐性のある制御構成でなければならない。ところが、従来の制御技術における構成のみでは、例えば路面反力が変化した場合や、また、目標舵角が素早く変化した場合に、ステアリングホイールのバネと慣性系により振動が発生し、それをドライバーが違和感や不快感として感じる可能性が十分にある(課題3)。これに対し、上述のごとき電動パワーステアリング装置によれば、ハンドル振動除去手段と操舵介入補償兼ハンドル制振手段を用いることで、自動操舵中のハンドルの振動抑制を実現することができる。
また、前記舵角制御部は、前記徐変完了まで前記舵角速度指令値ωrefをリミッタで制限する上下限可変リミッタをさらに有していることが好ましい。
従来の一般的な技術(例えば、特許文献1参照)では、舵角制御開始時に徐々に舵角速度を増加させるよう制御し、開始時のハンドル急変動によるドライバーへの違和感を低減する手法が提案されている。ところが、この手法では、徐変が始まると舵角速度上限値に達するまで増加し続けるため、I制御の積分値が過剰に蓄積してしまう。この結果、徐変ゲインが大きくなるに従って舵角制御指令値が過剰な値となり、ハンドルが舵角速度指令値に対して過剰に応答し、ドライバーへ違和感を与えてしまう(課題4)。これに対し、上述のごとき電動パワーステアリング装置によれば、上下限可変リミッタ、さらに舵角制御出力徐変ゲイン、速度指令徐変ゲイン、速度指令徐変ゲインにより、上記のようなドライバーへの違和感を低減する。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度制御徐変ゲインを、前記舵角速度制御部の中の信号に乗じるものであってもよい。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度指令徐変ゲインを、前記舵角速度指令値ωrefに乗じるものであってもよい。
前記舵角制御部は、前記舵角指令値をレートリミット処理し、該舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避ける可変レートリミッタをさらに有するものであってもよい。
前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した舵角指令徐変ゲインを、前記可変レートリミッタからの舵角指令値に対して乗じるものであってもよい。
電動パワーステアリング装置において、前記ECUは、アシストマップ徐変ゲインが入力されてアシスト制御出力を出力するアシスト制御部をさらに有しており、かつ、前記アシスト制御部の出力にアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を乗じるようになっていてもよい。
本発明によれば、車両の自動運転中、ドライバーによるハンドル操作(操舵)が介入したとき、介入した操作を十分に反映することができ、尚かつ、同操作が介入したときにドライバーが覚えることがある違和感、不快感を低減することができる。
電動パワーステアリング装置の概要を示す構成図である。 電動パワーステアリング装置の制御系の構成例を、アシストマップ出力電流の一例とともに示すブロック図である。 自動操舵制御モード及び手動操舵制御モードの切換機能を有する電動パワーステアリング装置の一例を示すブロック図である。 自動操舵制御モード及び手動操舵制御モードの切換機能を有する電動パワーステアリング装置の概略動作例を示すフローチャートである。 車両システム全体の構成例を示すブロック図である。 EPS側ECU内の舵角制御部の一例を示すブロック図である。 各徐変ゲインの、手入力判定後のアシスト制御への遷移について説明するグラフである。 舵角制御の第1の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第2の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第3の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第4の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第5の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第6の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第6の形態の別例を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第7の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 舵角制御の第8の形態を示す舵角制御部のブロック図である。 違和感の無い操舵介入が実現されたことの根拠を示す、角度(目標角度、ハンドル舵角)および操舵トルクの経時変化を表す、擬似積分の場合のグラフである。 違和感の無い操舵介入が実現されたことの根拠を示す、角度(目標角度、ハンドル舵角)および操舵トルクの経時変化を表す、P制御の場合のグラフである。 実施例1における、舵角速度制御の積分方式の違いによるハンドル舵角と操舵トルクとの関係を表すグラフである(舵角速度制御部で擬似積分を行う場合)。 実施例1における、舵角速度制御の違いによるハンドル舵角と操舵トルクとの関係を表すグラフである(舵角速度制御部でP制御を行う場合)。 舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させたときの舵角時間応答を示すグラフである。 P制御の場合に舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させたときの舵角時間応答を示すグラフである。 舵角指令値に対して舵角制御をした際の、トーションバートルクの時間応答を示すグラフである。 実施例2−1において舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させたときの舵角時間応答を示すグラフである。 実施例2−1において舵角指令値に対して舵角制御をした際の、トーションバートルクの時間応答を示すグラフである。 目標操舵角θtから実操舵角θrへの伝達関数Gθ(周波数応答)を示す図である。 周波数応答のゲインを2次フィルタでフィッティングした結果を示すボード線図である。 実施例3において舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させたときの舵角時間応答を示すグラフである。 実施例4における(A)目標舵角速度ωt、(B)舵角制御出力徐変ゲインGFA1、(C)アシスト制御出力徐変ゲインGFT1、(D)舵角速度指令値上下限可変リミッタ値のそれぞれを示すグラフである。 舵角制御徐変ゲインが100%になったときに、リミッタ値を切り替えた場合の(A)目標舵角速度ωt、(B)舵角制御出力徐変ゲインGFA1、(C)アシスト制御出力徐変ゲインGFT1、(D)舵角速度指令値上下限可変リミッタ値のそれぞれを示すグラフである。 ドライバーの操舵モデルを考慮したシミュレーションに用いたプラントモデルを示す図である。 ドライバーの操舵モデルの一例を示す図である。 アシストマップの一例(速度0km/h)を示すグラフである。 アシストマップの一例(速度20km/h)を示すグラフである。 アシストマップの一例(速度60km/h)を示すグラフである。
以下、図面を参照しつつ本発明に係る電動パワーステアリング装置の好適な実施形態について詳細に説明する(図1等参照)。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
電動パワーステアリング装置100の一般的な構成を図に示して説明する(図1参照)。ハンドル(ステアリングホイール)1のコラム軸(ステアリングシャフト)2は減速ギア3、ユニバーサルジョイント4a,4b、ピニオンラック機構5、タイロッド6a,6bを経て、さらにハブユニット7a,7bを介して操向車輪8L,8Rに連結されている。コラム軸2と同一軸上に、トーションバーとハンドル軸が配置されている。
また、コラム軸2には、ハンドル1の操舵角θrを検出する舵角センサ14および操舵トルクTtを検出するトルクセンサ10が設けられており、ハンドル1の操舵力を補助するモータ20が減速ギア3を介してコラム軸2に連結されている。
電動パワーステアリング装置100を制御するコントロールユニット(ECU)30には、バッテリー13から電力が供給されるとともに、イグニッションキー11を経てイグニッションキー信号IGが入力される。コントロールユニット30は、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTtと車速センサ12で検出された車速Vsとに基づいてアシスト制御の電流指令値の演算を行い、電流指令値に補償等を施した電圧制御指令値Vrefによってモータ20に供給する電流を制御する。なお、舵角センサ14からは操舵角θrが検出されるが、モータ20に連結された回転センサから得ることもできる。
コントロールユニット30には、車両の各種情報を授受するCAN(Controller Area Network)40が接続されており、車速VsはCAN40から受信することも可能である。また、コントロールユニット30には、CAN40以外の通信、アナログ/デジタル信号、電波等を授受する非CAN41も接続可能である。
コントロールユニット30は主としてCPU(MPUやMCUも含む)で構成されるが、そのCPU内部においてプログラムで実行される一般的な機能を示すと図2のようになる。
図2を参照してコントロールユニット30の機能及び動作を説明すると、トルクセンサ10で検出された操舵トルクTt及び車速センサ12で検出された(若しくはCAN40からの)車速Vsは、電流指令値Iref1を演算する電流指令値演算部31に入力される。電流指令値演算部31は、入力された操舵トルクTt及び車連vsに基づいてアシストマップ等を用いて、モータ20に供給する電流の制御目標値である電流指令値lreflを演算する。
アシストマップとは、操舵トルクと操舵補助指令値(電流値)との対応関係を示す情報であり、図28〜図30に示すグラフ中の「電流指令値」が該アシストマップに該当するものである。アシストマップは、例えば、低速、中速、及び高速の各速度域における、操舵トルク及び操舵補助指令値の対応関係を示す情報を含む。対応関係を示す情報は、複数の一次関数のパラメータにより表される場合もあれば、高次多項式で表される場合もある。
電流指令値Ireflは加算部32Aを経て電流制限部33に入力され、過熱保護条件で最大電流を制限された電流指令値Iref3が減算部32Bに入力され、フィードバックされているモータ電流値Imとの偏差Iref4(=Iref3−Im)が演算され、その偏差Iref4が操舵動作の特性改善のためのPI制御部35に入力される。PI制御部35で特性改善された電圧制御指令値VrefがPWM制御部36に入力され、更に駆動部としてのインバータ37を介してモータ20がPWM駆動される。モータ20の電流値Imはモータ電流検出器38で検出され、減算部32Bにフィードバックされる。
また、モータ20にはレゾルバ等の回転センサ21が接続されており、実操舵角θsが検出される。加算部32Aには補償部34からの補償信号CMが加算されており、補償信号CMの加算によってシステム系の補償を行い、収れん性や慣性特性等を改善するようになっている。補償部34は、セルフアライニングトルク(SAT)343と慣性342を加算部344で加算し、その加算結果に更に収れん性341を加算部345で加算し、加算部345の加算結果を補償信号CMとしている。
近年、車両に搭載されているカメラ、レーザレーダ等を利用して、自動的にブレーキをかけて安全に止まることとか、自動運転支援をさせることなどの取り組みが行われている。自動運転支援としては、例えば、運転者がハンドル又はその他の装置でトルクを入力することで、電動パワーステアリング装置はトルクセンサで操舵トルクを検出し、その情報を車両や電動パワーステアリング装置内の制御の切換に利用し、自動運転支援を解除して通常のアシスト制御(手動操舵制御)に戻ることなどが行われている。
まず本発明の前提となる電動パワーステアリング装置、つまり自動操舵制御モード及び手動操舵制御モードの機能を具備し、操舵制御モードを切り換える機能を有する一般的な電動パワーステアリング装置100について、図3を参照して説明する。
モータ150にはモータ回転角θsを検出するためのレゾルバ等の回転センサ151が接続されており、モータ150は車両側ECU130及びEPS(電動パワーステアリング装置)側ECU140を介して駆動制御される。車両側ECU130は、運転者の意思を示すボタン、スイッチ等に基づいて、自動操舵制御又は手動操舵制御の切換指令SWを出力する切換指令部131と、カメラ(画像)やレーザレーダなどの信号に基づいて目標操舵角θtを生成する目標操舵角生成部132とを具備している。また、コラム軸(ステアリングシャフト、ハンドル軸)に設けられた舵角センサ14で検出された実操舵角θrは、車両側ECU130を経てEPS側ECU140内の舵角制御部200に入力される。
切換指令部131は、自動操舵制御に入ることを識別する信号、例えば運転者の意思をダッシュボードやハンドル周辺に設けたボタンやスイッチ、或いはシフトに設けた駐車モードなどによる車両状態の信号を基に切換指令SWを出力し、切換指令SWをEPS側ECU140内の切換部142に入力する。また、目標操舵角生成部132は、カメラ(画像)、レーザレーダなどのデータを基に公知の手法で目標操舵角θtを生成し、生成した目標操舵角θtをEPS側ECU140内の舵角制御部200に入力する。
EPS側ECU140は、操舵トルクTt及び車速Vsに基づいて演算されたモータ電流指令値Itrefを出力するトルク制御部141と、目標操舵角θt、実操舵角θr、モータ角速度ω及び操舵トルクTtに基づいて舵角自動制御のためのモータ電流指令値Imrefを演算して出力する舵角制御部200と、切換指令SWによってモータ電流指令値Itref及びImrefを切り換える切換部142と、切換部142からのモータ電流指令値Iref(=Itref又はImref)に基づいてモータ150を駆動制御する電流制御/駆動部143と、回転センサ151からのモータ回転角θsに基づいてモータ角速度ωを演算するモータ角速度演算部144と、を具備している。切換部142は、車両側ECU130の切換指令部131からの切換指令SWに基づいて、トルク制御部141によるトルク制御モード(手動操舵制御)と、舵角制御部200による位置/速度制御モード(自動操舵制御)とを切り換え、手動操舵制御ではモータ電流指令値Itrefを出力し、自動操舵制御ではモータ電流指令値Imrefを出力する。また、電流制御/駆動部143は、PI電流制御部、PWM制御部、インバータ等で構成されている。
このような構成における概略動作例を、フローチャートを参照しながら以下に説明する(図4参照)。
操舵系の動作がスタートすると、先ずトルク制御部141によるトルク制御(手動操舵制御モード)が実施され(ステップSP1)、モータ電流指令値Itrefを用いて電流制御/駆動部143によりモータ150が駆動される(ステップSP2)。上記手動操舵の動作は切換指令部131より、自動操舵制御への切換指令SWが出力されるまで繰り返される(ステップSP3)。
自動操舵制御モードとなり、切換指令部131より切換指令SWが出力されると、目標操舵角生成部132から目標操舵角θtが入力され(ステップSP4)、舵角センサ14から実操舵角θrが入力され(ステップSP5)、トルクセンサ154から操舵トルクTtが入力され(ステップSP6)、モータ角速度演算部144からモータ角速度ωが入力され(ステップSP7)、舵角制御部200でモータ電流指令値Imrefが生成される(ステップSP10)。なお、目標操舵角θt、実操舵角θr、操舵トルクTt、モータ角速度ωの入力順番は適宜変更可能である。
その後、切換部142が切換指令部131からの切換指令SWにより切り換えられ(ステップSP11)、舵角制御部200からのモータ電流指令値Imrefを用いて電流制御/駆動部143によりモータ150を駆動し(ステップSP12)、上記ステップSP3にリターンする。モータ電流指令値Imrefによる駆動制御(自動操舵制御)は、切換指令部131から切換指令SWが変更されるまで繰り返される。
本実施形態では、上述したごとき一般的な構成の電動パワーステアリング装置100を備えた車両において、自動運転中、ドライバーによるハンドル操作(操舵)が介入したとき、介入した操作を十分に反映させ、尚かつ、同操作が介入したときのドライバーへの違和感や不快感を低減させた構成としている。以下、本実施形態の電動パワーステアリング装置100における各構成について説明する(図5等参照)。
本実施形態の電動パワーステアリング装置100に関する車両側ECU130、EPS側ECU140、プラント160の構成を示す(図5参照)。なお、図5中における二重線は複数の信号が送信ないし受信されることを意味する。
車両側ECU130は、車両状態量検出器130a、切換指令部131、目標軌道演算部134、車両運動制御部135を備える。
車両状態量検出器130aは、車両に搭載されたカメラ、距離センサ、角速度センサ、加速度センサなどで検出される各データに基づき車両状態量を検出し、該車両状態量を切換指令部131、目標軌道演算部134、車両運動制御部135に送信する。
切換指令部131は、上記の車両状態量、およびボタンやスイッチ等からの信号に基づき、EPS側ECU140(の切換判定/徐変ゲイン生成部145)に切換指令SWを出力する。
目標軌道演算部134は、車両状態量に基づいて目標軌道データを演算子し、車両運動制御部135に出力する。
車両運動制御部135は、車両状態量に基づき、舵角指令値生成部135aによって舵角指令値θrefを生成し、EPS側ECU140の舵角制御部200に該舵角指令値θrefを出力する。
EPS側ECU140は、切換部142、電流制御/駆動部143、切換判定/徐変ゲイン生成部145、EPS状態量検出器146、アシスト制御部147、舵角制御部200を備える(図5参照)。
EPS状態量検出器146は、プラント160から出力されるハンドル舵角θh、さらに、車両に搭載された角度センサ(ハンドル側、コラム側)、モータ角度センサ、トルクセンサなどで検出された各種データに基づいてEPS状態量を検出する。EPS状態量検出器146によって検出されたEPS状態量(ハンドル舵角θh、コラム舵角(トーションバー下側の舵角)、ハンドル舵角(トーションバー上側の舵角)、モータ角度、操舵トルク、その他)は、切換判定/徐変ゲイン生成部145、アシスト制御部147のそれぞれへと出力される。なお、図5に例示する車両システムにおいてはハンドル舵角θhをEPS側ECU140で検出するが、代わりに車両側ECU130側で検出してもよい。
切換判定/徐変ゲイン生成部145は、車両側ECU130の切換指令部131からの(アシスト制御と舵角制御との)切換指令SWと、操舵トルクTtに基づき切換判定を行い、各徐変ゲインを管理し、各機能へ出力する。本実施形態の切換判定/徐変ゲイン生成部145は、舵角制御部200へ、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3および舵角指令徐変ゲインGFA4を出力し、アシスト制御部147へアシストマップ徐変ゲインGFT2を出力し、切換部142へ舵角制御出力徐変ゲインGFA1およびアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を出力する。
アシスト制御部147は、操舵トルクTtおよびアシストマップ徐変ゲインGFT2に基づいて、舵角制御電流指令値IrefP1を切換部142に出力して、モータ20の回転力で操舵補助力(アシスト)を付与する。
舵角制御部200は、舵角指令値θref、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3、舵角指令徐変ゲインGFA4、EPS状態量に基づいて舵角制御電流指令値IrefP1を算出し、切換部142に出力する。切換部142は、舵角制御部200からの舵角制御電流指令値IrefP1とアシスト制御部147からの電流指令値IrefT1を、切換判定/徐変ゲイン生成部145からの舵角制御出力徐変ゲインGFA1およびアシスト制御出力徐変ゲインGFT1に応じて切り換える。電流制御/駆動部143は、電流検出値がモータ電流指令値Irefに追従するようにフィードバック制御する。これにより、モータ150の駆動トルクを制御できる。電流制御/駆動部143は、一般に用いられるモータ制御のシステムに係る構成でよい。
プラント160は、電流制御/駆動部143からのモータ駆動制御信号(モータ電流)に従うメカ伝達特性(EPSおよび車両に関する)と、ドライバーによる操舵手入力に従うドライバー操舵伝達特性とを備え、あるいは発揮する(図5参照)。なお、本明細書でいう「プラント」とは、車両と電動パワーステアリング装置100のメカ特性、ドライバーの特性など、要は制御対象を総称したものを指している。
続いて、EPS側ECU140における舵角制御部200の概略と各構成について説明する(図6参照)。
実舵角速度の算出は、図示しない実舵角速度演算部で一般的に用いられている演算をすることによって行っている。具体的には、例えばモータ角度センサの差分演算とギア比から実舵角速度を算出してもよいし、ハンドル舵角もしくはコラム舵角の差分演算から実舵角速度を算出してもよい。高周波のノイズを低減するために、演算システムの最終段に図示しないLPF(ローパスフィルタ)が挿入されている。
なお、本実施形態では、ハンドル舵角(トーションバーの上側の角度)を実舵角として扱うが、コラム舵角を実舵角として扱っても実現可能である。
<上下限可変リミッタ202>
車両側ECU130から受信した自動運転などのための舵角指令値θrefに対して、通信エラー等による異常な値、過剰な値が舵角制御に入力されるのを防止するため上下限可変リミッタ(舵角指令値上下限可変リミッタとも呼ぶ)202で制限する。舵角制御とアシスト制御の切換動作に伴い、舵角指令徐変ゲインGFA4に応じて、上下限リミッタ値が逐次適切な値に可変となっている。
<可変レートリミッタ204>
可変レートリミッタ204は、舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避けるため、舵角指令値θrefをレートリミット処理する。可変レートリミッタ204によるこのような処理は、急なハンドル挙動によるドライバーへの安全性向上にもつながる。本実施形態の可変レートリミッタ204においては、舵角制御とアシスト制御の切換動作に伴い、舵角指令徐変ゲインGFA4に応じて、レートリミッタ値が逐次適切な値に可変となっている。
<ハンドル振動除去手段206>
自動操舵中、舵角指令が変化しているときに、舵角指令値θref3に、トーションバーのバネ性とステアリングホイールの慣性モーメントによる振動を励起する周波数(約10Hz前後)成分が発生する。舵角指令値上下限可変リミッタ202、可変レートリミッタ204、舵角指令徐変の後の舵角指令値θref3に含まれるハンドル振動周波数成分を低減するためにローパスフィルタ、ノッチフィルタ(ハンドル振動除去手段206にはこれらのフィルタが用いられる)、または、位相遅れ補償により、振動周波数成分を低減させることができる。
<位置制御部208>
位置制御部208は、目標操舵角θtと実操舵角θrの偏差に比例ゲインを乗じて舵角速度指令値ωrefを算出する。この機能により、目標操舵角θtに対し実操舵角(舵角)θrを近づけるための舵角速度指令値を生成することができる。また、位置制御部208は、後述するFFフィルタ230によれば、目標操舵角θtへの追従性が向上する。なお、本明細書でいう位置制御とは、周方向における舵角の位置を制御することであり、別言すれば、「ハンドル舵角の角度制御」と表現することもできる。
<速度指令値上下限可変リミッタ210>
徐変ゲイン乗算後の舵角速度指令値ωref1に対し、速度指令値上下限可変リミッタ210による処理を行い、目標舵角速度ωtを出力する。この速度指令値上下限可変リミッタ210は制限値を、速度指令徐変ゲインGFA3により、逐次適値に変更可能で、上下限リミッタ値を徐変ゲインGFA3がある閾値未満では小さくし、それ以上で大きくすることにより、舵角速度指令値が制限される。
<舵角速度制御部212>
本実施形態の舵角制御部200では、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrを舵角速度制御部212に入力し、実舵角速度ωrが目標舵角速度ωtに追従するような電流指令値を算出する。
<舵角制御出力上下限リミッタ214>
舵角制御の電流指令値に対して過出力防止のため、舵角制御出力上下限リミッタ214で制限する。
<操舵介入補償兼ハンドル制振手段220>
操舵介入補償兼ハンドル制振手段220は、トルクセンサが検出したトルク信号に基づくハンドル制振手段として機能する。これによれば、自動操舵中のハンドル振動の制振効果がハンドル振動除去手段206のみを用いた場合と比べてさらに向上する。本実施形態の操舵介入補償兼ハンドル制振手段220は、ゲインと位相補償によりハンドル制振機能を実現する。例えば、位相補償は1次フィルタで構成してもよい。これによりトーションバーの捩れを解消する方向に電流指令値が出力される。また、操舵介入補償兼ハンドル制振手段220は、捩れ角を低減する方向に働き、ドライバーによる手入力の介入時の引っ掛かりの違和感を低減する効果も兼ねている。
<FFフィルタ230>
FF(フィードフォワード)フィルタ230は位置制御部208内に設定可能なオプションの構成である(図7等に示す後述の実施形態等参照)。FFフィルタ230によれば、目標操舵角θtへの追従性が向上する。FFフィルタ230は例えば1次の位相進みフィルタであるという効果を奏するものであるが、それ以外の位相補償をするものでもよいし、擬似微分、HPF(ハイパスフィルタ)を利用したものでもよい。
なお、ここで、本実施形態における各種徐変ゲインについて説明しておくと以下のとおりである(図5、図6参照)。
<舵角制御出力徐変ゲインGFA1>
舵角制御出力徐変ゲインGFA1は、舵角制御出力上下限リミッタ214の出力の電流指令値に対して乗じられる。舵角制御出力徐変ゲインGFA1は、アシスト制御と舵角制御の切換動作を円滑に行い、ドライバーへの違和感、安全性、等を実現するために用いられる。
<速度制御徐変ゲインGFA2>
速度制御徐変ゲインGFA2は、舵角速度制御部212の中の信号に乗じられ、円滑な切換を実現するために用いられる。主に切換時の舵角速度制御内の積分値の蓄積の影響を緩和するために用いられる。
<速度指令徐変ゲインGFA3>
速度指令徐変ゲインGFA3は、主にアシスト制御から舵角制御への切換時に円滑な切換を実現するために用いられる。位置制御出力の舵角速度指令値ωrefに対し、速度指令徐変ゲインGFA3が乗じられる。
<舵角指令徐変ゲインGFA4>
舵角指令徐変ゲインGFA4は、可変レートリミッタ204からの舵角指令値に対して乗じられる。
<アシスト制御出力徐変ゲインGFT1>
アシスト制御出力徐変ゲインGFT1は、アシスト制御部147からの出力である電流指令値に対して乗じられる。アシスト制御出力徐変ゲインGFT1は、舵角制御とアシスト制御の切換動作を円滑にするのと、自動運転中のドライバーによる操舵介入を実現するために用いられる。
<アシストマップ徐変ゲインGFT2>
アシストマップ徐変ゲインGFT2は、アシスト制御内のアシストマップ出力電流(アシストマップ出力電流の一例が記載されている図2のグラフ(縦軸は電流指令値、横軸は操舵トルクTtを表す)参照)に対して乗じられる。アシストマップ徐変ゲインGFT2は、舵角制御とアシスト制御の切換動作を円滑にするのと、自動運転中のドライバーによる操舵介入を実現するために用いられる。
<手入力判定後のアシスト制御への遷移>
ここで、手入力判定後のアシスト制御への遷移について説明しておく(図6B参照)。以下、自動運転状態(舵角制御とアシスト制御の両方が介在している状態)中に、ドライバーによる手入力の検知後の各徐変ゲインについて説明する。
徐変ゲインGFA1〜4(舵角制御出力徐変ゲインGFA1、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3、舵角指令徐変ゲインGFA4)については、手入力判定後、100%から逐次減少していき、0%に遷移する本実施形態では、直線的に変化させている。なお、切換動作をより円滑にするために、S字カーブに沿うように遷移させてもよいし、直線的に変化する信号に対しLPF(ローパスフィルタ)を通した値を各徐変ゲインとしてもよい(例えば、1次LPF、カットオフ周波数2[Hz])。ただし、徐変ゲインGFA1〜4は同じ遷移として連動させる必要はなく、それぞれ、調整要素として独立させた遷移にしてもよい。
(舵角指令徐変ゲインGFA4)
舵角指令値の可変レートリミッタの変化率設定値を0にする。つまり、θref2を一定値にする。これに関しフローチャートなどの図示は割愛するが舵角指令徐変ゲインGFA4が100%の状態から0%側に変化した際に変化率設定値を変更すれば実現できる。すなわち、切換状態に入ったらθref2を一定値にし、一定値に舵角指令徐変ゲインGFA4を乗じることでθref3と目標操舵角θtが0に近づく。また、θref2に対して、舵角指令徐変ゲインGFA4を乗じることで、切換中の目標操舵角θtを0[deg]に近づけ、舵角制御を中立状態に作用させる。また、舵角指令徐変ゲインGFA4の乗算をハンドル振動除去手段206の手前で行うことで、舵角指令徐変ゲインGFA4の乗算により発生するハンドル振動周波数成分を取り除かせる。
(アシストマップ徐変ゲインGFT2)
車両の自動運転状態においては、このアシストマップ徐変ゲインGFT2を100%以上に設定してもよい(なお、図6Bに示す例では300%に設定している)。これにより、ドライバーによる操作介入時に、舵角制御の干渉による引っ掛かり感、違和感を低減することができる。なお、切換動作をより円滑にするために、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1、アシストマップ徐変ゲインGFT2を、S字カーブに沿うように遷移させてもよいし、直線的に変化する信号に対しLPF(ローパスフィルタ)を通した値を各徐変ゲインとしてもよい。
(アシスト制御出力徐変ゲインGFT1)
自動運転状態、手動アシスト状態においては、このアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を常に100%以上に設定してもよいが、図6Bに示すようにしてもよい。
自動運転状態において、アシストマップ徐変ゲインGFT2を100%以上に上げることにより、システムの安定性が不安定側に影響することで、振動が発生する場合がある。安定性を確保するために、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1を調整要素として、例えば、120%に設定することで、振動の発生を抑えることが可能となる。
続いて、舵角制御の実施形態を示す(図7等参照)。なお、図7等においては、ハンドル振動除去手段206(図6参照)の後段の目標操舵角θtおよびそれ以降の構成を図示している。
<舵角制御の第1の形態>
図7に示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、舵角速度制御にPI制御を行い、I制御には擬似積分を行う。より具体的には、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差ωeにKviを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、さらに、擬似積分によるI制御をする(図7参照)。図中の記号Ir1は擬似積分後、Ir2は比例ゲインKvp後、Ir3は加算後の信号をそれぞれ表す(他の実施形態においても同様)。舵角制御の第1の形態では、加算後の信号Ir3に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じ、信号IrefWとして舵角速度制御部212から出力される。前述したように、速度制御徐変ゲインGFA2は、舵角速度制御部212の中の信号に乗じられ、円滑な切換を実現するために用いられる。なお、舵角速度制御部212における擬似積分は、例えば1次遅れの伝達関数とゲインで [1/(Ts+1)]×T として構成することができる。
<舵角制御の第2の形態>
図8に示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、舵角速度制御にPI制御を行い、I制御には擬似積分を行う。より具体的には、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差にKviを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、さらに、擬似積分によるI制御をする(図8参照)。舵角制御の第2の形態では、上述した第1の形態と同様、加算後の信号Ir3に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じ、信号IrefWとして舵角速度制御部212から出力される。
<舵角制御の第3の形態>
図9に示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、舵角速度制御にPI制御を行い、I制御には擬似積分を行う。舵角制御の第3の形態では、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じて信号ωe1を生成し、この信号ωe1にKviを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、さらに、擬似積分によるI制御をする(図9参照)。
<舵角制御の第4の形態>
図10に示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、位相遅れ補償を行う。舵角制御の第4の形態では、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差にKvpを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、さらに、位相遅れ補償を行った後の信号Ir4に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じ、信号IrefWとして舵角速度制御部212から出力される(図10参照)。
<舵角制御の第5の形態>
図11に示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、位相遅れ補償を行う。舵角制御の第5の形態では、上述した第4の形態と同様、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差にKvpを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、さらに、位相遅れ補償を行った後の信号Ir4に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じ、信号IrefWとして舵角速度制御部212から出力される(図11参照)。擬似積分のPI制御は、等価的に位相遅れ補償とゲインに置き換えられる。
<舵角制御の第6の形態>
図12、図13Aに示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、比例制御(P制御)を行う。舵角制御の第6の形態では、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差にKvpを乗じて偏差の大きさに比例した操作量の信号Ir1に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じ、信号IrefWとして舵角速度制御部212から出力される(図12、図13A参照)。
<舵角制御の第7の形態>
図13Bに示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、比例ゲインと位相遅れ補償を用いた制御により電流指令値を算出する。より具体的には、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差ωeにゲインKvを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、さらに、位相遅れ補償をした後の信号Ir4に速度制御徐変ゲインGFA2を乗じて、電流指令値IrefWを算出する。
<舵角制御の第8の形態>
図13Cに示す舵角制御部200の舵角速度制御部212は、比例ゲインと位相遅れ補償を用いた制御により電流指令値を算出する。より具体的には、目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとの偏差ωeにゲインKvを乗じて偏差の大きさに比例した操作量D1とし、該操作量D1と速度制御徐変ゲインGFA2とから操作量D2を求め、位相遅れ補償をして電流指令値IrefWを算出する。
上述した舵角制御の第1〜第8の各形態によれば、車両の自動運転中において「手入力検出」、「切換動作」が無くとも、引っ掛かり感等の違和感の無い操舵介入を実現することができる。以下、その根拠となる結果等を実施例1として説明する(図14A〜図20参照)。
<実施例1>
(課題1および課題2の解決の根拠)
ドライバーの操舵モデルを考慮したシミュレーションにより、自動運転中(ただし、舵角指令値θrefは0[deg]固定とする。)に、ドライバー目標角度θarm(図中の太線参照)に対して、実操舵角(以下、ハンドル舵角とも呼び、記号θhで表す。細線参照)、操舵トルクTt(破線参照)の時間応答を一例として図14A等に示す。
ここで、シミュレーションに用いたプラントモデルについて説明して置く(図26、図27参照)。
図26に、シミュレーションに用いたプラントモデル(メカモデル)を示す。このプラントモデルでは、電流指令値に対するモータ電流値の追従性は十分に早いものとし、電流制御部の詳細説明は割愛し、電流指令値=モータ電流 とし、信号名 Iref として扱っている。車速Vは一定としている。コラム慣性モーメント Jc は、モータ慣性モーメント、シャフト、ラック&ピニオン、タイヤの慣性モーメントをコラム軸に換算した合計としている。モータ角度θm と コラム角度θc は、ウォーム減速比の関係とする。コラム角θc と タイヤ転舵角δはオーバーオールレイシオ Nover の比の関係とする。トーションバートルクと操舵トルクは同じ信号で、Ttとする。コラムからタイヤに掛けて、一つのコラム慣性としてモデル化した。
Jc : コラム慣性[kgm^2]
Dc : コラム減衰係数[Nm/(rad/s)]
Jh : ハンドル慣性[kgm^2]
Dh : ハンドル減衰係数[Nm/(rad/s)]
Ks : トーションバーバネ定数[Nm/rad]
Ds : トーションバー減衰定数[Nm/(rad/s)]
Kt : モータトルク定数[Nm/A]
減速比 : ng
Tc : モータ発生トルクのコラム軸換算[Nm]
ただし、モータ発生トルクはコラム軸のトルクに換算(減速機分考慮)。また、電流指令値Irefに対し実際のモータ電流は一致しているものとして扱っているため、電流制御は省略している。
Th : ハンドル手入力トルク[Nm]
Tt : トーションバートルク[Nm]
Iref : 電流指令値[A]
θh : ハンドル舵角[rad]
θc : コラム舵角[rad]
V : 車速[m/s]
Yveh : 車両重心での横方向移動距離[m]
δ : タイヤ転舵角[rad]
Fd : 車両重心に働く横方向外力[N]
Tsat : Tsat ' のコラム軸換算[Nm]
Tsat ' : 路面反力によりキングピン周りに働くモーメント[Nm]
車両運動モデルについて説明しておく。車両の微分方程式は数式1、数式2のようになる。
ラプラス変換後の横滑り角βとヨーレートγを数式3に示す。
キングピン周りに働く、タイヤが路面から受けるモーメントを数式4に示す。
近似条件下での車両重心での横方向加速度を数式5に示す。
車両重心での横方向移動距離を数式6に示す。
なお、車両運動モデルは、タイヤ転舵角δから、路面反力によりキングピン周りに働くモーメントTsat ' への伝達特性を考慮したものならばよい。なお、シミュレーションに用いる車両モデルと操舵モデルについては、上記に限らず、一般の文献等を参照してもよい。また、車両モデルの関係式である、数式1、数式2、数式4、数式5については、例えば、東京電機大学出版局、「自動車の運動と制御」(安部正人著)に示されている。操舵モデルについては、例えば、三重大学修士論文、「腕の筋骨格特性を考慮した車のステアリング操舵感評価に関する研究」(横井大介著)に示されている。
図27に、ドライバーの操舵モデルの一例を示す。ドライバーによる操舵をシミュレーションする際、図27に示す操舵モデルを用い、メカモデル(図26参照)から出力されるハンドル舵角θh を操舵モデルへ入力し、操舵モデルから出力される手入力トルクTh をメカモデルへ出力した。ここでは、目標角度(ドライバーの操舵目標角度)をθarm としている。
一例として示した条件は、以下に説明する「擬似積分、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=3倍」「ただし、舵角制御出力徐変ゲインGFA1、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3および舵角指令徐変ゲインGFA4は1倍」とした。
図14Aに示したドライバー目標角度θarmを入力した際のそれぞれの条件でのハンドル舵角θhと操舵トルク Tt(=トーションバートルク)を比較した(図14A〜図16参照)。
太線・・・擬似積分(図16ではP制御)、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=1倍
細線・・・擬似積分(図16ではP制御)、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=3倍
破線・・・純積分(図16ではPI制御)、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=1倍
ただし、舵角制御出力徐変ゲインGFA1、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3および舵角指令徐変ゲインGFA4は1倍とした。
太線と破線から、速度制御のPI制御を「擬似積分」で行った方が(図16の場合は、P制御で行った方が)、操舵できていることがわかる。その理由としては以下を挙げることができる。
すなわち、破線は、7.5[deg] までハンドル舵角θhを切れているが、速度制御PIの純積分の影響により、速度偏差(舵角速度指令値と実舵角速度の偏差)が蓄積され続けることで、最終的に舵角指令値θref(=0[deg])まで強制的に戻されてしまい、さらに、非常に大きな操舵トルクが発生してしまい、よって、ドライバーによる操舵は困難となる(0[deg]で15[Nm]以上の操舵トルク発生)。ただし、従来技術においては、切換前の舵角制御中において、アシスト制御指令値は 0[deg] であるが、破線よりも操舵が困難であるため割愛している。また、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置との比較のために、GFT1=1倍、GFT2=1倍として、積分方式の違いを見ることにした。
これに対して、太線では、約14[deg]まで操舵できており、舵角指令値0[deg]に引き戻されることもない。これは、擬似積分(図16ではP制御)を用いることにより、速度偏差の蓄積が限定されること(図16では、積分による速度偏差の蓄積が無いこと)に起因する。さらに、細線(アシストマップ徐変ゲインGFT2=3倍)では、太線よりも軽い操舵が実現できることが確認できる。アシストマップ徐変ゲインGFT2を大きくすることでドライバーによる操舵介入が軽い操舵で実現できるのが分かる。
また、図14Bに示したドライバー目標角度θarmを入力した際のそれぞれの条件でのハンドル舵角θhと操舵トルク Tt(=トーションバートルク)を比較した(図14B〜図16参照)。
太線・・・P制御、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=1倍
細線・・・P制御、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=3倍
破線・・・PI制御、アシスト制御出力徐変ゲインGFT1=1倍、アシストマップ徐変ゲインGFT2=1倍
ただし、舵角制御出力徐変ゲインGFA1、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3および舵角指令徐変ゲインGFA4は1倍とした。
太線と破線から、速度制御をP制御で行った方が(図14B、図16参照)、操舵できていることがわかる。その理由としては以下を挙げることができる。
すなわち、破線は、7.5[deg] までハンドル舵角θhを切れているが、速度制御PIの純積分の影響により、速度偏差(舵角速度指令値と実舵角速度の偏差)が蓄積され続けることで、最終的に舵角指令値θref(=0[deg])まで強制的に戻されてしまい、さらに、非常に大きな操舵トルクが発生してしまい、よって、ドライバーによる操舵は困難となる(0[deg]で15[Nm]以上の操舵トルク発生)。ただし、従来技術においては、切換前の舵角制御中において、アシスト制御指令値は 0[deg] であるが、破線よりも操舵が困難であるため割愛している。また、本実施形態に係る電動パワーステアリング装置との比較のために、GFT1=1倍、GFT2=1倍として、積分方式の違いを見ることにした。
これに対して、太線では、約14[deg]まで操舵できており、舵角指令値0[deg]に引き戻されることもない。これは、比例制御を用いることにより、積分による速度偏差の蓄積が無いことに起因する。さらに、細線(アシストマップ徐変ゲインGFT2=3倍)では、太線よりも軽い操舵が実現できることが確認できる。アシストマップ徐変ゲインGFT2を大きくすることでドライバーによる操舵介入が軽い操舵で実現できるのが分かる。
また、上述した舵角制御の第1〜第5の各形態によれば、ハンドル振動除去手段206と操舵介入補償兼ハンドル制振手段220を用いることで、自動操舵中のハンドルの振動抑制を実現することができる。これについて検証するため、ドライバーによる操舵介入が無く(ハンドル手入力トルクTh=0[Nm])、舵角制御のみ実行し、自動運転での舵角制御中のハンドル振動の優劣を比較した。以下、実施例2として説明する(図17、図18参照)。(なお、ハンドル手入力トルクTh=0、 舵角制御のみ実行に関し、図19〜図23も同様。)
<実施例2−1>
(課題3の解決の根拠)
まず、図17Aは、舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させた時間応答を示す。一例として、舵角指令値(破線)に対して、ハンドル振動除去手段206の後段の目標操舵角(細線)、実操舵角(太線)のそれぞれの応答の様子を示す。
ここで、P制御であるが故に舵角指令値と実操舵角の間に定常偏差が発生しているが、システムの安定性を保つ範囲で(ハンドル制振手段の位相補償とゲインを組み合わせて検証し)、比例ゲインKvpを大きめに調整し、なおかつ、車両運動制御部の舵角指令値生成部にて定常偏差分を補正するので問題ない(図17B参照)。
次に、図18は、上記と同じ舵角指令値に対して舵角制御をした際の、トーションバートルクの時間応答を示す。
破線・・・ハンドル振動除去手段なし、ハンドル制振手段なし
細線・・・ハンドル振動除去手段あり、ハンドル制振手段なし
太線・・・ハンドル振動除去手段あり、ハンドル制振手段あり
ただし、ハンドル振動除去手段206には、1次LPFカットオフ周波数2Hz、操舵介入補償兼ハンドル制振手段220には、ゲイン(トーションバートルク1Nmに対してコラム軸換算トルク5Nm相当)と1次位相補償(分子カットオフ周波数2Hz、分母カットオフ周波数5Hz)の位相進みを用いた。
このグラフから、ハンドル振動除去手段206と操舵介入補償兼ハンドル制振手段220の効果が分かり、両方ある方がハンドルの振動が抑制されていることが分かる(図18参照)。
<実施例2−2>
(課題3の解決の根拠)
(舵角指令に対する追従性)
図19は、舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させた時間応答を示す。一例として、舵角指令値(破線)に対して、ハンドル振動除去手段206の後段の目標操舵角(細線)、FFありの場合の実操舵角(太線)、FF無しの場合の実操舵角(一点鎖線)のそれぞれの応答の様子を示す。ただし、FFフィルタ230として、分子のカットオフ周波数が0.2Hz、分母が5Hzの1次の位相進みフィルタ、ゲインKpf=0.2 のものを用いた。FF無しと比較してFFありのほうが目標操舵角への追従性が向上した。
(ハンドル振動の低減効果)
次に、図20は、上記と同じ舵角指令値に対して舵角制御をした際の、トーションバートルクの時間応答を示す。
破線・・・ハンドル振動除去手段なし、ハンドル制振手段なし
細線・・・ハンドル振動除去手段あり、ハンドル制振手段なし
太線・・・ハンドル振動除去手段あり、ハンドル制振手段あり
ただし、ハンドル振動除去手段206には、1次LPFカットオフ周波数2Hz、操舵介入補償兼ハンドル制振手段220には、ゲイン(トーションバートルク1Nmに対してコラム軸換算トルク5Nm相当)と1次位相補償(分子カットオフ周波数2Hz、分母カットオフ周波数5Hz)の位相進みを用いた。
このグラフから、ハンドル振動除去手段206と操舵介入補償兼ハンドル制振手段220の効果が分かり、両方ある方がハンドルの振動が抑制されていることが分かる(図20参照)。
<実施例3>
図8において、FFフィルタ230がスルーの状態(ゲイン=1の状態)での、目標操舵角θtから実操舵角θrへの伝達関数Gθ(周波数応答)について考慮した(図21参照)。太線:ゲイン、細線:位相とする。伝達関数Gθは、プラントモデルの数式から求めてもよいし、実験の周波数応答法などの一般的な同定方法を用いて求めてもよい。
本実施例3のFFフィルタ230には、制御理論において一般的に用いられている方法では、この伝達関数Gθの逆伝達関数をFFフィルタ230にすれば舵角制御追従性は目標操舵角θtと実舵角θrが一致する。
上記伝達関数Gθのゲインをフィッティングした結果のボード線図を図22に示す(細線:Gθ、太線:フィッティング結果)。ただし、フィッティング結果は、以下の5次の伝達関数で表される。

[ b5 , b4 , b3 , b2 , b1 , b0 ] =
1.0e+06 * [ 0.000000001711022 0.000000365522821 0.000039448300246 0.002478609805019 0.090668013717508 1.67554097535588 ]
[ a5 , a4 , a3 , a2 , a1 , a0 ] =
1.0e+06 * [ 0.000000026525824 0.000003320000000 0.000208645315616 0.007649590856893 0.162938496592083 1.76372734247987 ]
(舵角指令に対する追従性)
FFフィルタ230に上記GFITの逆伝達関数(分母と分子を入れ換える)を適用したシミュレーション結果を示す(図23参照)。
図23は、舵角指令値を0[deg]から100[deg]までランプ状に変化させた時間応答を示す。例として、舵角指令値(破線)に対して、ハンドル振動除去手段206の後段の目標操舵角(細線)、FF有りの実操舵角(太線)、FF無しの実操舵角(一点鎖線)の応答の様子を示す。ただし、ハンドル振動除去手段206には、1次LPF(カットオフ周波数2[Hz]を適用した。FF無しと比較してFFありのほうがより目標操舵角に追従できており、FFフィルタの有効性が示せた。
<実施例4>
(課題4の解決の根拠)
舵角制御開始時(アシスト制御からの切換時)は、位置制御部出力の舵角速度指令値ωrefに対し、徐変ゲインGFA3を乗じる。この徐変ゲインGFA3は、舵角制御電流指令値IrefP1に乗じる徐変ゲインGFA1と同期している。加えて、徐変ゲインGFA3乗算後の舵角速度指令値ωref1に対し、上下限可変リミッタを設ける。このリミッタは舵角速度指令値の制限値を逐次切換可能で、この制限値を徐変ゲインGFA3が設定閾値未満では小さい値で固定し、閾値以上で徐々に大きくすることにより、舵角速度指令値が制限され、目標舵角速度ωtとして舵角速度制御部に出力される。さらに、速度制御器内の信号に徐変ゲインGFAを乗じる。
結果的に、速度制御内の積分値の過剰な蓄積を抑制し(比例と擬似積分によるPI制御の場合、または、位相遅れ補償とゲインによるPI制御の場合)、あるいは、速度制御から出力される過剰な電流指令値の発生を抑制し(比例制御の場合)、ドライバーへの違和感を生じさせる舵角制御出力としての電流指令値を低減する。また、徐変完了後は、徐変ゲインGFA3と上下限可変リミッタにより舵角速度指令値が制限されず、徐変ゲインGFA2により速度制御内の信号が制限されないため、通常の舵角制御にシフトすることができる(ただし、本実施形態では、速度制御徐変ゲインGFA2、速度指令徐変ゲインGFA3は図24には表示せず、舵角制御出力徐変ゲインGFA1と一致させている)。これにより、アシスト制御から舵角制御への切換も、ドライバーへの違和感を生じさせず円滑に行うことができる。
また、上述の実施例4において、舵角制御徐変ゲインが100%になったときに、リミッタ値を切り替えた場合の結果を図25に示す。
ここまで説明した本実施形態に係る電動パワーステアリング装置100は、車両の自動運転での高性能なヒューマン・マシン・インターフェースを実現する。すなわち、自動運転中のドライバーによる操舵の介入時に、「手入力検出」「切換動作」が無い状態においても手動操舵を実現し、ドライバーによる緊急操舵時の高い安全性を確保して、舵角制御とアシスト制御を両立する制御方法を実現する。また、舵角制御からアシスト制御への切換時も、引っ掛かり感等のドライバーの違和感、不快感を低減する。また、アシスト制御から舵角制御への切換も違和感なく円滑に実施される。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態ではハンドル振動除去手段206にLPFを用いているがこれは好適な一例にすぎず、この他、例えばハンドル振動周波数(約10Hz前後)に合わせたノッチフィルタにより、成分を低減してもよい。
また、上述した実施形態では操舵介入補償兼ハンドル制振手段220に1次の位相進み補償を用いているが、2次以上の位相補償フィルタを利用してもよい。
本発明は、電動パワーステアリングに適用して好適である。
1…ハンドル(ステアリングホイール)
2…コラム軸(トーションバー)
3…減速ギア
4a,4b…ユニバーサルジョイント
5…ピニオンラック機構
6a,6b…タイロッド
7a,7b…ハブユニット
8L,8R…操向車輪
10…トルクセンサ
12…車速センサ
14…舵角センサ
20…モータ
21…回転センサ
30…コントロールユニット
31…電流指令値演算部
32A…加算部
32B…減算部
33…電流制限部
34…補償部
35…PI制御部
36…PWM制御部
37…インバータ
38…モータ電流検出器
40…CAN
100…電動パワーステアリング装置
130…車両側ECU
130a…車両状態量検出器
131…切換指令部
132…目標操舵角生成部
134…目標軌道演算部
135…車両運動制御部
135a…舵角指令値生成部
140…EPS(電動パワーステアリング装置)側ECU
141…トルク制御部
142…切換部
143…電流制御/駆動部
144…モータ角速度演算部
145…切換判定/徐変ゲイン生成部
146…EPS状態量検出器
147…アシスト制御部
150…モータ
151…回転センサ
154…トルクセンサ
160…プラント
200…舵角制御部
202…上下限可変リミッタ
204…可変レートリミッタ
206…ハンドル振動除去手段
208…位置制御部
210…速度指令値上下限可変リミッタ
212…舵角速度制御部
214…舵角制御出力上下限リミッタ
220…操舵介入補償兼ハンドル制振手段
230…FFフィルタ
341…収れん性
342…慣性
343…セルフアライニングトルク(SAT)
344…加算部
345…加算部
CM…補償信号
GFA1…舵角制御出力徐変ゲイン
GFA2…速度制御徐変ゲイン
GFA3…速度指令徐変ゲイン
GFA4…舵角指令徐変ゲイン
GFT1…アシスト制御出力徐変ゲイン
GFT2…アシストマップ徐変ゲイン
IrefP1…舵角制御電流指令値
Th…操舵トルク
Vs…車速
θr…実操舵角
θref…舵角指令値
θs…モータ回転角
θt…目標操舵角
ωref…舵角速度指令値

かかる課題を解決するべく、本発明は、
車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
を有しており、
前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
前記ECUは、
前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
アシストマップ徐変ゲインが入力され、アシスト制御出力徐変ゲインを出力するアシスト制御部と、
前記舵角制御部の出力と前記アシスト制御部の出力に乗じる徐変ゲインを生成し、切換指令と操舵トルクに基づき、前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
を有しており、
前記舵角制御部は、
前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、擬似積分を用いたPI制御により算出する舵角速度制御部と、
ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
を有する、というものである。
かかる課題を解決するべく、本発明は、
車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
を有しており、
前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
前記ECUは、
前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
前記舵角制御部の出力と前記アシスト制御部の出力に乗じる徐変ゲインを生成し、切換指令と操舵トルクに基づき、前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
を有しており、
前記舵角制御部は、
前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、比例ゲインKvと位相遅れ補償を用いた制御により算出する舵角速度制御部と、
ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
を有する、というものである。
かかる課題を解決するべく、本発明は、
車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
を有しており、
前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
前記ECUは、
前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
前記舵角制御部の出力と前記アシスト制御部の出力に乗じる徐変ゲインを生成し、切換指令と操舵トルクに基づき、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
を有しており、
前記舵角制御部は、
前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、比例制御により算出する舵角速度制御部と、
ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
を有する、というものである。

Claims (24)

  1. 車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
    前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
    を有しており、
    前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
    前記ECUは、
    前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
    前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
    前記舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
    を有しており、
    前記舵角制御部は、
    前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
    入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、擬似積分を用いたPI制御により算出する舵角速度制御部と、
    ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
    を有する、電動パワーステアリング装置。
  2. 前記舵角制御部は、ハンドル振動周波数成分を低減するフィルタ、または位相遅れ補償により振動周波数成分を低減させるハンドル振動除去手段をさらに有している、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記舵角制御部は、前記徐変完了まで前記舵角速度指令値ωrefをリミッタで制限する上下限可変リミッタをさらに有している、請求項1または2に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度制御徐変ゲインを、前記舵角速度制御部の中の信号に乗じる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度指令徐変ゲインを、前記舵角速度指令値ωrefに乗じる、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記舵角制御部は、前記舵角指令値をレートリミット処理し、該舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避ける可変レートリミッタをさらに有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した舵角指令徐変ゲインを、前記可変レートリミッタからの舵角指令値に対して乗じる、請求項6に記載の電動パワーステアリング装置。
  8. 前記ECUは、アシストマップ徐変ゲインが入力されてアシスト制御出力を出力するアシスト制御部をさらに有しており、かつ、前記アシスト制御部の出力にアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を乗じる、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  9. 車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
    前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
    を有しており、
    前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
    前記ECUは、
    前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
    前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
    前記舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
    を有しており、
    前記舵角制御部は、
    前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
    入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、比例ゲインKvと位相遅れ補償を用いた制御により算出する舵角速度制御部と、
    ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
    を有する、電動パワーステアリング装置。
  10. 前記舵角制御部は、ハンドル振動周波数成分を低減するフィルタ、または位相遅れ補償により振動周波数成分を低減させるハンドル振動除去手段をさらに有している、請求項9に記載の電動パワーステアリング装置。
  11. 前記舵角制御部は、前記徐変完了まで前記舵角速度指令値ωrefをリミッタで制限する上下限可変リミッタをさらに有している、請求項9または10に記載の電動パワーステアリング装置。
  12. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度制御徐変ゲインを、前記舵角速度制御部の中の信号に乗じる、請求項9から11のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  13. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度指令徐変ゲインを、前記舵角速度指令値ωrefに乗じる、請求項9から12のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  14. 前記舵角制御部は、前記舵角指令値をレートリミット処理し、該舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避ける可変レートリミッタをさらに有する、請求項9から13のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  15. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した舵角指令徐変ゲインを、前記可変レートリミッタからの舵角指令値に対して乗じる、請求項14に記載の電動パワーステアリング装置。
  16. 前記ECUは、アシストマップ徐変ゲインが入力されてアシスト制御出力を出力するアシスト制御部をさらに有しており、かつ、前記アシスト制御部の出力にアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を乗じる、請求項9から15のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  17. 車両のステアリングに操舵アシスト力を付与するモータと、
    前記車両の目標軌道に基づき演算された舵角指令値に応じて前記ステアリングの制御信号を生成するECUと、
    を有しており、
    前記舵角指令値により前記モータを駆動して前記車両の前記ステアリングをアシスト制御するとともに、自動操舵制御モードと手動操舵制御モードとを相互に切り換える電動パワーステアリング装置であって、
    前記ECUは、
    前記舵角指令値が入力され、前記ステアリングの舵角を制御する舵角制御部と、
    前記ステアリングに前記モータの回転力で操舵補助力を付与するアシスト制御部と、
    前記舵角制御出力とアシスト制御出力に乗じる徐変ゲインを生成し、該徐変ゲインを乗じて前記舵角制御部による舵角制御モードと前記アシスト制御部によるアシスト制御モードとの切換判定をする切換判定/徐変ゲイン生成部と、
    を有しており、
    前記舵角制御部は、
    前記ステアリングの目標操舵角θtと実操舵角θrとの偏差に比例ゲインを乗じ、さらにFFフィルタを用いて舵角速度指令値ωrefを算出する位置制御部と、
    入力された目標舵角速度ωtと実舵角速度ωrとに基づき、前記実舵角速度ωrが前記目標舵角速度ωtに追従するよう前記モータに対する電流指令値を、比例制御により算出する舵角速度制御部と、
    ドライバーによる操舵介入時の操舵トルクに基づき、該操舵介入による前記ステアリングのトーションバーの捩れを解消する方向への電流指令値を出力する操舵介入補償兼ハンドル制振手段と、
    を有する、電動パワーステアリング装置。
  18. 前記舵角制御部は、ハンドル振動周波数成分を低減するフィルタ、または位相遅れ補償により振動周波数成分を低減させるハンドル振動除去手段をさらに有している、請求項17に記載の電動パワーステアリング装置。
  19. 前記舵角制御部は、前記徐変完了まで前記舵角速度指令値ωrefをリミッタで制限する上下限可変リミッタをさらに有している、請求項17または18に記載の電動パワーステアリング装置。
  20. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度制御徐変ゲインを、前記舵角速度制御部の中の信号に乗じる、請求項17から19のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  21. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した速度指令徐変ゲインを、前記舵角速度指令値ωrefに乗じる、請求項17から20のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  22. 前記舵角制御部は、前記舵角指令値をレートリミット処理し、該舵角指令値θrefの急変によって舵角制御出力としての舵角制御電流指令値が急激に変動することを避ける可変レートリミッタをさらに有する、請求項17から21のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。
  23. 前記ECUは、前記切換判定/徐変ゲイン生成部により前記舵角制御部へ出力した舵角指令徐変ゲインを、前記可変レートリミッタからの舵角指令値に対して乗じる、請求項22に記載の電動パワーステアリング装置。
  24. 前記ECUは、アシストマップ徐変ゲインが入力されてアシスト制御出力を出力するアシスト制御部をさらに有しており、かつ、前記アシスト制御部の出力にアシスト制御出力徐変ゲインGFT1を乗じる、請求項17から23のいずれか一項に記載の電動パワーステアリング装置。


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