JPWO2017175791A1 - ポリカーボネート樹脂用流動性向上剤およびその製造方法ならびにポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
ポリカーボネート樹脂に、ビフェノール(A)0〜55モル%、ビスフェノール(B)5〜60モル%およびジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物の重縮合物であるポリエステルであって、その末端が分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されている流動性向上剤および酸化防止剤を配合することによって、本来の特性を損なうことなく、樹脂の成形加工時の流動性を向上させることができる。
Description
本発明は、ポリカーボネート樹脂用流動性向上剤およびその製造方法ならびにポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は優れた機械特性、熱的性質を有しているため、電気・電子・OA機器、光学部品、精密機械、自動車、保安・医療、建材、雑貨等の幅広い分野に使用されている。しかしながら、通常、ポリカーボネート樹脂は溶融粘度が高いため、流動性が悪く、成形性に劣るという欠点がある。
そして近年、ポリカーボネート樹脂組成物の成形品の大型化、薄肉化、形状複雑化、高性能化が進み、また、環境問題への関心の高まりも伴って、ポリカーボネート樹脂の優れた特性を損なうことなく、ポリカーボネート系樹脂組成物の溶融流動性を向上させ、かつ、射出成形性を高める樹脂改質剤、およびこれを用いたポリカーボネート樹脂組成物が求められている。
さらに、ポリカーボネート樹脂には、高温成形時にポリカーボネート樹脂が変色する、高温高湿条件下で加水分解する等の問題もあることから、安定性に優れたポリカーボネート樹脂が求められている。
例えば、特許文献1によって、ペンタエリスリトール系エステル化合物とのエステル交換反応によって変性させたポリカーボネート樹脂をポリカーボネート樹脂に添加することで、ポリカーボネート樹脂組成物の流動性を向上させる方法が知られている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、エステル交換反応によってポリカーボネート樹脂が黄変してしまうことが懸念される。また、特許文献1に記載の方法によれば、ポリカーボネート樹脂の流動性はある程度向上すると考えられるが、さらに優れたポリカーボネート樹脂の流動性が要求されている。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリカーボネート樹脂本来の特性(耐衝撃性、高剛性、機械強度、透明性、耐熱性等)を損なうことなく、ポリカーボネート樹脂の成形時の流動性を向上させることができるポリカーボネート樹脂用流動性向上剤およびその製造方法ならびに高温高湿度条件下でのポリカーボネート樹脂の着色や加水分解が抑制された、安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および当該樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ビスフェノール成分、脂肪族ジカルボン酸成分および、任意でビフェノール成分を特定の比率で重縮合したポリエステルであって、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって封止された特定のポリエステルからなるポリカーボネート樹脂用流動性向上剤と、ポリカーボネート樹脂とを溶融混練することにより、ポリカーボネート樹脂本来の有用な特性(特に、透明性や衝撃強度)を損なうことなく、成形加工時の流動性を向上させ、かつ安定性の高いポリカーボネート樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、下記<1>〜<10>で示される発明である。
<1> 下記一般式(1)
(式中、X1〜X4は各々同一であってもよく、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるビフェノール(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
(式中、X5〜X8は各々同一であっても、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO2−を示す。)
で表されるビスフェノール(B)5〜60モル%、および、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記のモル%は、モノマー(A)、(B)および(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)の重縮合物であるポリエステルであり、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されている、ポリカーボネート用流動性向上剤。
で表されるビフェノール(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
で表されるビスフェノール(B)5〜60モル%、および、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記のモル%は、モノマー(A)、(B)および(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)の重縮合物であるポリエステルであり、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されている、ポリカーボネート用流動性向上剤。
<2> 上記末端封止剤が、フェノール系化合物、脂肪族モノカルボン酸および酸無水物からなる群より選択される1種または2種以上である、<1>に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
<3> さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する、<1>または<2>に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
<4> さらに同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤を含有する、<1>〜<3>のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
<5> 数平均分子量が2000〜30000である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
<6> 上記ジカルボン酸(C)に由来する部分のR1に相当する部分が、直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖である、<1>〜<5>のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
<7> 上記ジカルボン酸(C)に由来する部分のR1に相当する部分が−(CH2)8−、−(CH2)10−、または−(CH2)12−のいずれかである、<1>〜<6>のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
<8> ポリカーボネート樹脂70〜99.9質量%と、<1>〜<7>のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤0.1〜30質量%とを含有するポリカーボネート樹脂組成物。
<9> <8>に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
<10> <1>〜<7>のいずれか1つに記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤の製造方法であって、融点が200℃以上の酸化防止剤存在下で、
下記一般式(1)
(式中、X1〜X4は各々同一であっても、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるビフェノール(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
(式中、X5〜X8は各々同一であっても、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO2−を示す。)
で表されるビスフェノール(B)5〜60モル%、および、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記のモル%は、モノマー(A)、(B)および(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)と、末端封止剤とを重縮合する、ポリカーボネート用流動性向上剤の製造方法。
下記一般式(1)
で表されるビフェノール(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
で表されるビスフェノール(B)5〜60モル%、および、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記のモル%は、モノマー(A)、(B)および(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)と、末端封止剤とを重縮合する、ポリカーボネート用流動性向上剤の製造方法。
本発明のポリカーボネート用流動性向上剤によれば、ポリカーボネート樹脂本来の特性(耐衝撃性、高剛性、機械強度、透明性、耐熱性等)を損なうことなく、ポリカーボネート樹脂の成形加工時の流動性を向上させることができる。なお、ここでいう「損なう」とは、樹脂としての要求特性を満たさないほどに悪くなることをいう。すなわち、本発明のポリカーボネート用流動性向上剤を添加することによりポリカーボネート樹脂の一部の特性が低下した場合でも、当該樹脂が用いられている用途における要求特性を満たす限り、ポリカーボネート樹脂本来の特性は損なわれたわけではない。上記の記載は、「ポリカーボネート樹脂本来の特性を実質的に損なうことなく」と言い換えることができる。また、本発明のポリカーボネート用流動性向上剤を含有したポリカーボネート樹脂組成物によれば、高温高湿条件下、ポリカーボネート樹脂の着色や加水分解が抑制されるため、安定性に優れたポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供できるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
[実施形態:ポリカーボネート樹脂用流動性向上剤]
本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂用流動性向上剤(以下、「流動性向上剤」ということがある)は、下記一般式(2)にて表されるビスフェノール(B)および下記一般式(3)にて表される脂肪族ジカルボン酸(C)、および、任意で下記一般式(1)にて表されるビフェノール(A)を、特定の比率で重縮合してなる重縮合物であるポリエステルであって、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されているものである。
本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂用流動性向上剤(以下、「流動性向上剤」ということがある)は、下記一般式(2)にて表されるビスフェノール(B)および下記一般式(3)にて表される脂肪族ジカルボン酸(C)、および、任意で下記一般式(1)にて表されるビフェノール(A)を、特定の比率で重縮合してなる重縮合物であるポリエステルであって、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されているものである。
本明細書において、「ポリカーボネート樹脂用流動性向上剤」とは、ポリカーボネート樹脂本来の特性(例えば、耐衝撃性、高剛性、機械強度、透明性、耐熱性等であり、特に透明性および衝撃強度)を損なうことなく、成形加工時のポリカーボネート樹脂の流動性を向上させることができる添加剤をいう。
より詳細には、本発明の一実施形態に係る流動性向上剤は、その主鎖構造において、下記一般式(1)
(式中、X1〜X4は各々同一であっても、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるビフェノール(A)に由来する部分を0〜55モル%含み、
下記一般式(2)
(式中、X5〜X8は各々同一であっても、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO2−を示す。)
で表されるビスフェノール(B)に由来する部分を5〜60モル%含み、かつ、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)に由来する部分を40〜60モル%を含む(ただし、ビフェノールに由来する部分、ビスフェノールに由来する部分およびジカルボン酸に由来する部分の含有率の合計は100モル%とする)ポリエステル(重縮合物)からなり、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されているものである。
で表されるビフェノール(A)に由来する部分を0〜55モル%含み、
下記一般式(2)
で表されるビスフェノール(B)に由来する部分を5〜60モル%含み、かつ、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)に由来する部分を40〜60モル%を含む(ただし、ビフェノールに由来する部分、ビスフェノールに由来する部分およびジカルボン酸に由来する部分の含有率の合計は100モル%とする)ポリエステル(重縮合物)からなり、当該ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されているものである。
以下の説明では、本発明における上記ポリエステルにおいて、一般式(1)にて表されるビフェノール(A)に由来する部分をビフェノール成分(A)と称し、一般式(2)にて表されるビスフェノール(B)に由来する部分をビスフェノール成分(B)と称し、一般式(3)にて表されるジカルボン酸(C)に由来する部分をジカルボン酸成分(C)と称する。
本発明における流動性向上剤は、一般式(2)にて表されるビスフェノール(B)5〜60モル%および任意の一般式(1)にて表されるビフェノール(A)0〜55モル%からなるジオールと、一般式(3)にて表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%とを含むモノマー混合物と、末端封止剤とを重縮合することによって製造され得る(ただし、ビフェノール(A)、ビスフェノール(B)およびジカルボン酸(C)の含有率の合計を100モル%とする)。
上記流動性向上剤は低分子化合物ではないことから、流動性向上剤を添加したポリカーボネート樹脂組成物を成形するときに、ブリードアウトが発生することを抑制することができる。
また、上記分子構造を有する流動性向上剤は、ポリカーボネート樹脂との相溶性が高いために、ポリカーボネート樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性を効率的に向上させることができ、かつ、ポリカーボネート樹脂が本来有している種々の特性(例えば、耐衝撃性、高剛性、機械強度、透明性、耐熱性等)を損なわない。
上記流動性向上剤中に含まれるビフェノール成分(A)の含有率は、ビフェノール成分(A)、ビスフェノール成分(B)およびジカルボン酸成分(C)の含有量の合計を100モル%とした場合に、0〜55モル%であり、好ましくは10〜40モル%であり、より好ましくは20〜30モル%である。ビスフェノール成分(B)の含有率は、ビフェノール成分(A)、ビスフェノール成分(B)およびジカルボン酸成分(C)の含有量の合計を100モル%とした場合に、5〜60モル%であり、好ましくは10〜50モル%であり、より好ましくは20〜30モル%である。ジカルボン酸成分(C)の含有率は、ビフェノール成分(A)、ビスフェノール成分(B)およびジカルボン酸成分(C)の含有量の合計を100モル%とした場合に、40〜60モル%であり、好ましくは45〜55モル%である。なお、上記含有率は、上記流動性向上剤であるポリエステルを重縮合するときに用いるモノマー混合物における、ビフェノール(A)、ビスフェノール(B)、ジカルボン酸(C)の各モノマーの含有率(ただし、ビフェノール(A)、ビスフェノール(B)およびジカルボン酸(C)の合計を100モル%とする)に相当する。また、上記各成分は、それぞれ、1種類でもよく、2種類以上でもよい。上記各成分の含有率は、各成分が2種類以上である場合には、その2種類以上の成分の合計である。
上記流動性向上剤中に含まれるジオール成分は、ビスフェノール成分(B)および任意のビフェノール成分(A)からなる。上記ジオール成分が、ビフェノール成分(A)およびビスフェノール成分(B)からなる場合には、ビフェノール成分(A)とビスフェノール成分(B)とのモル比((A)/(B))は、好ましくは1/9〜9/1であり、より好ましくは1/7〜7/1であり、さらに好ましくは1/5〜5/1であり、最も好ましくは1/3〜3/1である。(A)/(B)が1/9以上となるように、ビフェノール成分(A)を多く含有する場合には、上記ポリエステル自体の結晶性が向上し、ガラス転移温度が低くなることを阻害し、貯蔵時における流動性向上剤のペレット同士の融着を防ぐことができる面において好ましい。(A)/(B)が9/1以下となるようにビスフェノール成分(B)を多く含有する場合には、ポリカーボネート樹脂との相溶性が不十分となり、ポリカーボネート樹脂に流動性向上剤を添加して得られるポリカーボネート樹脂組成物を4mm以上の厚肉の成形品に成形したときに、徐冷される途中に厚みの中心部分で相分離が起こることを阻害し、ポリカーボネート樹脂の各種物性が低下することを防ぐことができる面において好ましい。
一般式(1)中のX1〜X4は各々同一であってもよく、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。流動性向上剤自体の結晶性を高め、ペレット貯蔵時の融着を防ぐ等の取り扱い性を良くするために、X1〜X4は全て水素原子であることがより好ましい。
一般式(2)中のX5〜X8は各々同一であってもよく、異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。ポリカーボネート樹脂との相溶性を高めるために、X5〜X8は全て水素原子であることがより好ましい。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO2−を示す。
一般式(2)で表されるビスフェノール成分(B)としては、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕がポリカーボネート樹脂との相溶性が高まる点で好適である。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン等のビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類等が挙げられる。これらのビスフェノール成分(B)は、それぞれ単独で用いてもよいし、本発明の効果を失わない範囲で2種以上を混合して用いてもよい。
ジカルボン酸成分(C)において、下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
中のR1は、主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を表す。ここで主鎖原子数とは主鎖骨格の原子の数であり、例えば−R1−が−(CH2)8−である場合には、主鎖原子数は炭素原子の数であり「8」となる。流動性向上剤自体の溶融粘度が低くなることから、R1は、分岐を含まない直鎖状置換基であることが好ましく、さらには分岐を含まない直鎖の脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。また、R1は飽和でも不飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。不飽和結合を含む場合には、上記流動性向上剤が屈曲性を十分に得られないことがあり、流動性向上剤自体の溶融粘度の増加を招く場合がある。上記流動性向上剤の重合の容易さ、およびガラス転移点の向上を両立することができる点で、R1は炭素数2〜18の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数4〜16の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがより好ましく、炭素数8〜14の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがさらに好ましく、炭素数8の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが最も好ましい。上記流動性向上剤のガラス転移点の向上は、ポリカーボネート樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性の向上につながる。流動性向上剤自体の溶融粘度が低下する点で、R1の主鎖原子数は偶数であることが好ましい。以上の点から、R1は特に−(CH2)8−、−(CH2)10−、−(CH2)12−から選ばれる1種であることが好ましい。
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
中のR1は、主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を表す。ここで主鎖原子数とは主鎖骨格の原子の数であり、例えば−R1−が−(CH2)8−である場合には、主鎖原子数は炭素原子の数であり「8」となる。流動性向上剤自体の溶融粘度が低くなることから、R1は、分岐を含まない直鎖状置換基であることが好ましく、さらには分岐を含まない直鎖の脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。また、R1は飽和でも不飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。不飽和結合を含む場合には、上記流動性向上剤が屈曲性を十分に得られないことがあり、流動性向上剤自体の溶融粘度の増加を招く場合がある。上記流動性向上剤の重合の容易さ、およびガラス転移点の向上を両立することができる点で、R1は炭素数2〜18の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数4〜16の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがより好ましく、炭素数8〜14の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがさらに好ましく、炭素数8の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが最も好ましい。上記流動性向上剤のガラス転移点の向上は、ポリカーボネート樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性の向上につながる。流動性向上剤自体の溶融粘度が低下する点で、R1の主鎖原子数は偶数であることが好ましい。以上の点から、R1は特に−(CH2)8−、−(CH2)10−、−(CH2)12−から選ばれる1種であることが好ましい。
本発明の流動性向上剤は、その効果を失わない程度に他のモノマーを共重合してなるものであっても構わない。他のモノマーとしては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸またはカプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂環族ジカルボン酸、および脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノール等が挙げられる。
上記流動性向上剤を構成する上記他のモノマーの含有率は、流動性向上剤全体のモル数に対して、50モル%未満であり、好ましくは、30モル%未満、より好ましくは、10モル%未満、最も好ましくは、5モル%未満である。上記他のモノマーの含有率が、上記流動性向上剤全体のモル数に対して、50モル%未満であることは、上記流動性向上剤のポリカーボネート樹脂に対する相溶性が良好であり、上記流動性向上剤がポリカーボネート樹脂と相溶する面において好ましい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4”−ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3−カルボキシフェニル)エタン、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジオールの具体例としては、ピロカテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ジヒドロキシビナフチル、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィド、2,2’−ジアミノビナフチル、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、7−アミノ−2−ナフトエ酸、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオールおよび脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等の直鎖状または分鎖状脂肪族ジオール、およびそれらの反応性誘導体等が挙げられる。
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、およびそれらの反応性誘導体等が挙げられる。
本発明の流動性向上剤は、ポリエステルの末端に存在しうるカルボン酸や水酸基のような反応性官能基が末端封止剤によって封止されていることを特徴とし、流動性向上剤の末端の60%以上が封止されている。分子鎖の全末端に対する封止率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは95%以上である。封止率が60%以上であることは、封止されていない反応性官能基によってポリカーボネート樹脂と上記流動性向上剤とのエステル交換や加水分解を起こりにくくし、十分な長期安定性が得られる面において好ましい。
流動性向上剤の末端封止率は、封止された末端官能基および封止されていない末端官能基の数をそれぞれ測定し、下記式(4)により求めることができる。上記末端封止率の具体的な算出方法としては、1H−NMRを用いて、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から各末端基の数を求め、その結果に基づいて、下記式(4)を用いて上記末端封止率を算出する方法が、精度、簡便さの点で好ましい。
末端封止率(%)={[封止された末端官能基数]/([封止された末端官能基数]+[封止されていない末端官能基数])}×100 ・・・(4)
末端封止率(%)={[封止された末端官能基数]/([封止された末端官能基数]+[封止されていない末端官能基数])}×100 ・・・(4)
上記末端封止剤の数平均分子量に特に制限はないが、数平均分子量は160以上が好ましく、200以上がより好ましい。数平均分子量が160以上であることは、重合中における末端封止剤の揮発を防ぎ、十分な封止を行える面において好ましい。本発明の流動性向上剤の末端を容易に封止できることから、末端封止剤としては、フェノール系化合物、脂肪族モノカルボン酸、酸無水物が好ましい。
フェノール系化合物の具体例としては、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−t−アミルフェノール、4−ヒドロキシビフェニル、また、フェノール系化合物誘導体である4,4’−ジアセトキシビフェニル、ビスフェノールAジアセタートおよびこれらの任意の混合物等が挙げられる。これらのなかでも、高沸点であるため、重合の際の高温条件下でも末端封止剤が揮発しにくいことから、p−クミルフェノール、4−ヒドロキシビフェニルが好ましい。
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪族モノカルボン酸、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。これらのなかでも、高沸点であり、重合の際の高温条件下でも末端封止剤が揮発しにくいことから、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。
酸無水物の具体例としては、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロム酢酸、無水ジブロム酢酸、無水トリブロム酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水吉草酸、無水ピバル酸等が挙げられる。これらのなかでも、安価に入手可能であることから無水トリクロル酢酸が好ましい。
これらの他にも末端封止剤として、炭素数11〜20のモノアミン、カルボジイミド、エポキシ、またはオキサゾリンなども挙げられる。モノアミンの具体例としては、アミノウンデカン、ステアリルアミン、ジヘキシルアミン等の脂肪族モノアミン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。カルボジイミドの例としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ポリ(2,4,6−トリイソプロピルフェニレン−1,3−ジイソシアネート)、1,5−(ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドおよびこれらの任意の混合物等が挙げられる。エポキシの例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリエチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−グリシジルエーテル、4,4’−ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、メタクリル酸グルシジルエステルポリマー、メタクリル酸グルシジルエステルポリマー含有化合物およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。オキサゾリンの例としては、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの末端封止剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明における流動性向上剤の数平均分子量とは、ポリスチレンを標準物質とし、p−クロロフェノールとトルエンとの体積比が3:8の混合溶媒に、本発明における樹脂を濃度が0.25質量%となるように溶解して調製した溶液を用いて、GPCにて80℃で測定した値である。本発明における上記流動性向上剤の数平均分子量は、好ましくは2000〜30000であり、より好ましくは3000〜20000であり、さらに好ましくは4000〜15000である。上記流動性向上剤の数平均分子量が2000以上であることは、ポリカーボネート樹脂に流動性向上剤を添加して得られる本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形するとき等に、流動性向上剤がブリードアウトするのを防ぐことができる面において好ましい。また、上記流動性向上剤の数平均分子量が30000以下であることは、流動性向上剤自体の溶融粘度が低くなり、ポリカーボネート樹脂に流動性向上剤を添加して得られる本発明のポリカーボネート樹脂組成物の成形加工時の流動性を効果的に向上させることができる面において好ましい。
本発明における流動性向上剤は、公知のいかなる方法で製造されていても構わない。製造方法の一例としては、モノマーおよび末端封止剤の水酸基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いてそれぞれ個別に、または一括して低級脂肪酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、カルボン酸と脱低級脂肪酸重縮合反応させる方法が挙げられる。重縮合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で、通常、220〜330℃、好ましくは240〜310℃の温度で、窒素ガス等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下に、0.5〜5時間行われる。反応温度が220℃よりも低い場合は反応の進行が遅く、330℃よりも高い場合は分解等の副反応が起こり易い。減圧下で反応させる場合は、段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合には、ジカルボン酸モノマーや末端封止に用いる低分子化合物が揮発し、望む組成、または分子量の樹脂が得られない場合がある。到達真空度は、40Torr以下が好ましく、30Torr以下がより好ましく、20Torr以下がさらに好ましく、10Torr以下が特に好ましい。到達真空度が40Torrよりも高い場合には、脱酸が十分に進まず、重合時間が長くなり、樹脂が着色することがある。重縮合反応は、多段階の反応温度を採用しても構わないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したら直ちに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。得られたポリエステル樹脂はそのままで使用してもよいし、未反応原料を除去する、または、物性を向上させる意図でさらに固相重合を行なうこともできる。固相重合を行なう場合には、得られたポリエステル樹脂を粒径3mm以下、好ましくは1mm以下の粒子に機械的に粉砕し、固相状態のまま100〜350℃で窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、または減圧下に1〜30時間処理することが好ましい。ポリエステル樹脂の粒子の粒径が3mmより大きくなると、処理が十分でなく、物性上の問題を生じるため好ましくない。固相重合時の処理温度や昇温速度は、ポリエステル樹脂粒子同士が融着を起こさないように選ぶことが好ましい。
本発明の流動性向上剤の製造に用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては、炭素数2〜5の低級脂肪酸の酸無水物、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロム酢酸、無水ジブロム酢酸、無水トリブロム酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸等が挙げられる。このうち、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。低級脂肪酸の酸無水物の使用量は、用いるモノマーおよび末端封止剤が有する水酸基等の官能基の合計に対し1.01〜1.5倍当量、好ましくは1.02〜1.2倍当量である。低級脂肪酸の酸無水物の使用量が1.01倍当量未満である場合には、低級脂肪酸の酸無水物が揮発することによって、水酸基等の官能基が低級脂肪酸の無水物と反応しきらないことがあり、低分子量の樹脂が得られることがある。
本発明の流動性向上剤は、製造時の酸化劣化を抑制するために、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。流動性向上剤中のヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、流動性向上剤の重量に対して0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.5質量%であることが最も好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が0.005質量%以上であることは、重合時の酸化によって生じる着色を防ぐことができる面において好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が5質量%以下であることは、ポリカーボネート樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の衝撃強度の面において好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(またはジ、またはトリ)(α−メチルベンジル)フェノール、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
商品名では、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上、いずれも大内新興化学工業株式会社製)、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−616、アデカスタブAO−635、アデカスタブAO−658、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−15、アデカスタブAO−18、アデカスタブ328、アデカスタブAO―330、アデカスタブAO−37(以上、いずれも株式会社アデカ製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−565、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1035、IRGANOX−1076、IRGANOX−1081、IRGANOX−1098、IRGANOX−1222、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上、いずれもBASF JAPAN Ltd.製)、SumilizerGA−80(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。これらのなかでも、融点が200℃以上の酸化防止剤を使用すると、重合時の揮発が抑制され、特に白色度の高い流動性向上剤が得られることから、特にアデカスタブAO−20、アデカスタブAO−330が好ましい。
さらにフェノール系酸化防止剤として、アクリレート基とフェノール基とを併せもつモノアクリレートフェノール系安定剤を用いることもできる。モノアクリレートフェノール系安定剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート(商品名:スミライザーGS)等が挙げられる。
本発明の流動性向上剤は、製造時の酸化劣化を抑制するために、酸化防止剤として同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤を含有してもよい。流動性向上剤中の同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤の含有量は、流動性向上剤の重量に対して0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.5質量%であることが最も好ましい。同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤が0.005質量%以上である場合には、重合時の酸化によって生じる着色が効果的に抑制される。同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤の含有量が5質量%以下である場合には、ポリカーボネート樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の衝撃強度に影響がより少ない。
同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が好ましく用いられる。
(式中、R2、R3、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R4は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。A2は単結合、硫黄原子または−CHR7−基を表す。
R7は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。
A1は炭素数2〜8のアルキレン基または*−COR8−基を表す。R8は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*を付した−CO−は式(5)におけるホスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。
A3およびA4は、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
ただし、A3がヒドロキシル基であるときは、R5およびR6の一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表す。
また、式(5)における2個のR2は互いに同一であっても、異なっていてもよい。さらに式(5)における2個のR3は互いに同一でもよく、異なってもよい。そして、式(5)における2個のR4は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
R7は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。
A1は炭素数2〜8のアルキレン基または*−COR8−基を表す。R8は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*を付した−CO−は式(5)におけるホスファイト構造の酸素原子と結合していることを表す。
A3およびA4は、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。
ただし、A3がヒドロキシル基であるときは、R5およびR6の一方は炭素数3〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表す。
また、式(5)における2個のR2は互いに同一であっても、異なっていてもよい。さらに式(5)における2個のR3は互いに同一でもよく、異なってもよい。そして、式(5)における2個のR4は互いに同一であっても、異なっていてもよい。)
本発明における酸化防止剤として式(5)で表される化合物におけるR2およびR3は、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基または炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましく、R5はi−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基または2−エチルヘキシル基であることが好ましく、R6は水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基またはt−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。
式(5)で表される化合物におけるR4は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。また、式(5)におけるA2は、単結合、硫黄原子またはメチレン基であることが好ましい。
式(5)で示される化合物におけるA1は、プロピレン基、*−CO−基または*−CO−CH2CH2−基(*は−CO−がホスファイト構造の酸素原子と結合していることを示す)であることが好ましい。また、A3はヒドロキシル基であることが好ましく、A4は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましい。
式(5)で表される化合物において、特に好ましい化合物の具体例としては以下のようなものが挙げられる:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:スミライザーGP)、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジエチル−4,8−ジ−t−ブチル−6[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[2,2−ジメチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン。
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:スミライザーGP)、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,10−ジエチル−4,8−ジ−t−ブチル−6[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[2,2−ジメチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン。
本発明における流動性向上剤の製造には重合触媒を使用してもよい。重合触媒としては、従来からポリエステルの重合触媒として公知の触媒を使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒が挙げられる。なかでも、流動性向上剤自体の変色を防止することができること、ポリカーボネート樹脂組成物の変色を防止することができることから、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウムがより好ましい。
上記重合触媒の添加量は、ポリエステル樹脂の総重量に対し、通常、0〜100×10−2質量%、好ましくは0.5×10−3〜50×10−2質量%が好適である。
本発明における流動性向上剤の形状に関しては特に制限はなく、例えば、ペレット状、フレーク状、パウダー状等が挙げられる。その粒子径は、ポリカーボネート樹脂と溶融混練する押出機に投入することができる程度に小さければよく、6mm以下であることが好ましい。
本発明の流動性向上剤をポリカーボネート樹脂に添加して得られる本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂70〜99.9質量%と、本発明の流動性向上剤0.1〜30質量%とを含有する。本発明のポリカーボネート樹脂組成物(100質量%)中の流動性向上剤の含有率は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物(100質量%)中の流動性向上剤の含有率は、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。本発明のポリカーボネート樹脂組成物(100質量%)中の流動性向上剤の含有率が0.1質量%以上であれば、成形加工時の流動性が向上する。本発明のポリカーボネート樹脂組成物(100質量%)中の流動性向上剤の含有率が30質量%以下であれば、ポリカーボネート樹脂の耐熱性や機械物性が大きく損なわれない。本発明の流動性向上剤は、ガラス転移温度がポリカーボネート樹脂よりも低いために、ポリカーボネート樹脂に相溶させて得られる樹脂組成物のガラス転移点を低下させる。従って、本発明のポリカーボネート樹脂組成物における流動性向上剤の含有量を30質量%以下に抑えることは、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐熱性の面において好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、良好な色調のポリカーボネート樹脂組成物が得られる点で、上記フェノール系酸化防止剤のほかにホスファイト系酸化防止剤を含有していてもよい。その理由は、本発明の流動性向上剤をポリカーボネート樹脂に添加し、溶融混練する際の変色を防止するため、および、流動性向上剤の重合に使用される重合触媒を失活させ、流動性向上剤とポリカーボネート樹脂とを混合するときに発生するおそれのある、流動性向上剤に含まれるポリエステルとポリカーボネート樹脂とのエステル交換や加水分解反応による変色を防止することができるためであると考えられる。これによりポリカーボネート樹脂の分子量の減少をより効果的に抑制することができるため、流動性向上剤を含有する本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂本来の特性を損なうことなく、流動性のみを向上させることができる。流動性向上剤中のホスファイト系酸化防止剤の含有量は、流動性向上剤の重量に対して0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.5質量%であることが最も好ましい。ホスファイト系酸化防止剤の含有量が0.005質量%以上であることは、ポリカーボネート樹脂に本発明の流動性向上剤を配合したときに着色が生じる虞を回避できる面において好ましい。また、ホスファイト系酸化防止剤の含有量が5質量%以下であることは、ポリカーボネート樹脂に本発明の流動性向上剤を添加して得られる、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の衝撃強度の面において好ましい。
ホスファイト系酸化防止剤は各種の化合物が知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー出版発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242頁)等に記載された種々の化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ホスファイト系酸化防止剤として、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4―ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等が挙げられる。商品名では、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8F、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−11C、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブP、アデカスタブQL、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(以上、いずれも株式会社アデカ製)、Irgafos38、Irgafos126、Irgafos168、IrgafosP−EPQ(以上、いずれもBASF JAPAN Ltd.製)等を例示することができる。これらのなかでも、特にエステル交換反応や加水分解反応を抑制する効果を顕著に示し得ること、酸化防止剤自体の融点が高く樹脂から揮発し難いこと等から、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブPEP−24G、Irgafos126等がより好ましい。
上記ポリカーボネート樹脂としては、特に制限はなく、種々の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を用いることができる。例えば、2価のフェノールとハロゲン化カルボニルとを界面重縮合させる方法や、2価のフェノールと炭酸ジエステルとを溶融重合させる方法(エステル交換法)等によって製造したポリカーボネート樹脂を用いることができる。
上記ポリカーボネート樹脂の原料である2価のフェノールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これら2価のフェノールのなかでも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、さらに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料とした2価のフェノールが特に好ましい。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等が挙げられる。具体的には、ホスゲン;2価のフェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物等が挙げられる。
また、上記ポリカーボネート樹脂は、そのポリマー鎖の分子構造が直鎖構造である樹脂の他、これに分岐構造を有している樹脂でもよい。このような分岐構造を導入するための分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等が挙げられる。また、分子量調節剤として、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール等を用いることができる。
さらに、本発明に用いる上記ポリカーボネート樹脂は、上記2価のフェノールのみを用いて製造された単独重合体の他、ポリカーボネート構造単位とポリオルガノシロキサン構造単位とを有する共重合体、またはこれら単独重合体と共重合体とからなる樹脂組成物であってもよい。また、テレフタル酸等の二官能性カルボン酸やそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下で2価のフェノール等の重合反応を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。さらに、種々の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を溶融混練して得られる樹脂組成物を用いることもできる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂、流動性向上剤、および酸化防止剤以外の成分として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色剤、光拡散剤、無機充填剤その他の助剤等の添加剤、あるいは充填剤を、本発明の効果を失わない範囲で添加することができる。これらの添加剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂に流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物100重量部に対して、合計で0〜100重量部の範囲であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単純スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等の装置を用いて、流動性向上剤、ポリカーボネート樹脂、および必要に応じて光拡散剤等の添加剤を配合し、溶融混練する公知の方法によって製造される。流動性向上剤に含まれるポリエステルとポリカーボネート樹脂とのエステル交換反応、およびポリカーボネート樹脂の熱劣化等によるポリカーボネート樹脂組成物の黄変を抑制する目的で、溶融混練の温度はできるだけ低温であることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を各種押出成形することにより、本発明の成形品として、例えば、各種異形押出成形品、押出成形によるシート、フィルム等の形状に成形することができる。上記各種押出成形としては、コールドランナー方式、ホットランナー方式の成形法はもとより、さらには射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入による場合を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等の射出成形法が挙げられる。また、シート、フィルムの成形には、インフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけることにより、熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を回転成形やブロー成形等で成形することにより、中空成形品とすることも可能である。
本発明の成形品は、各種筐体、ハードコート品、グレージング材、光拡散板、光ディスク基板、導光板、医療材料、雑貨等の幅広い用途に使用することができる。本発明の成形品は、具体的には、例えば、OA機器や家電製品の外装材、各種容器、雑貨、例えば、パソコン、ノートパソコン、ゲーム機、ディスプレイ装置(CRT、液晶、プラズマ、プロジェクタ、および有機EL等)、マウス、並びにプリンター、コピー機、スキャナーおよびファックス(これらの複合機を含む)等の外装材、キーボードのキー、スイッチ成形品、携帯情報端末(いわゆるPDA)、携帯電話、携帯書籍(辞書類等)、携帯テレビ、記録媒体(CD、MD、DVD、ブルーレイディスク、ハードディスク等)のドライブ、記録媒体(ICカード、スマートメディア、メモリースティック等)の読取装置、光学カメラ、デジタルカメラ、パラボラアンテナ、電動工具、VTR、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器、照明機器、冷蔵庫、エアコン、空気清浄機、マイナスイオン発生器、およびタイプライター等に形成された樹脂製品として用いることができる。また、トレー、カップ、皿、シャンプー瓶、OA筐体、化粧品瓶、飲料瓶、オイル容器、射出成形品(ゴルフティー、綿棒の芯、キャンディーの棒、ブラシ、歯ブラシ、ヘルメット、注射筒、皿、カップ、櫛、剃刀の柄、テープのカセットおよびケース、使い捨てのスプーンやフォーク、ボールペン等の文房具等)等にも有用である。
また、本発明の成形品は、結束テープ(結束バンド)、プリペイドカード、風船、パンティーストッキング、ヘアーキャップ、スポンジ、セロハンテープ、傘、合羽、プラ手袋、ヘアーキャップ、ロープ、チューブ、発泡トレー、発泡緩衝材、緩衝材、梱包材、煙草のフィルター等の多分野にわたる用途に用いることが可能である。
さらに、本発明の成形品は、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、インストルメンタルパネル、センターコンソールパネル、ディフレクター部品、カーナビゲーション部品、カーオーディオビジュアル部品、オートモバイルコンピュータ部品等の車両用部品にも用いることができる。
また、本発明には、上述した流動性向上剤を用いて、ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させる方法も含まれ得る。換言すれば、本発明には、上述した流動性向上剤と、ポリカーボネート樹脂とを混合する工程を含む、ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させる方法が含まれていてもよい。他の態様では、上述した流動性向上剤の使用であって、ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させるための使用とも表現できる。
次に、本発明の流動性向上剤およびポリカーボネート樹脂組成物について、製造例、実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、以下に挙げる各試薬は、特記しない限り、和光純薬工業株式会社製の試薬を精製せずに用いた。
<評価方法>
[数平均分子量の測定方法]
本発明における流動性向上剤を、p−クロロフェノール(東京化成工業株式会社製)とトルエンとの体積比が3:8の混合溶媒に、濃度が0.25質量%となるように溶解して試料溶液を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。そして、高温GPC(Viscotek社製:350 HT−GPC System)を用いて、カラム温度80℃、流速1.00mL/分の条件で測定した。検出器は、示差屈折計(RI)を使用した。
[数平均分子量の測定方法]
本発明における流動性向上剤を、p−クロロフェノール(東京化成工業株式会社製)とトルエンとの体積比が3:8の混合溶媒に、濃度が0.25質量%となるように溶解して試料溶液を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。そして、高温GPC(Viscotek社製:350 HT−GPC System)を用いて、カラム温度80℃、流速1.00mL/分の条件で測定した。検出器は、示差屈折計(RI)を使用した。
[流動性の測定方法]
樹脂組成物のスパイラルフロー(mm)を、射出成形機(IS−100、東芝機械株式会社製)を用いて評価した。ポリカーボネート樹脂組成物は成形温度280℃、金型温度100℃、射出圧力200MPaとし、成形品の肉厚は1mm、幅は10mmとした。
樹脂組成物のスパイラルフロー(mm)を、射出成形機(IS−100、東芝機械株式会社製)を用いて評価した。ポリカーボネート樹脂組成物は成形温度280℃、金型温度100℃、射出圧力200MPaとし、成形品の肉厚は1mm、幅は10mmとした。
[曲げ弾性率および曲げ強度の測定方法]
機械的特性を評価するため、AUTOGRAPH AG−I(株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K7171に準拠して(測定温度23℃、曲げ試験片の寸法:長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)、樹脂組成物の曲げ弾性率(MPa)および曲げ強度(MPa)を測定した。
機械的特性を評価するため、AUTOGRAPH AG−I(株式会社島津製作所製)を用いて、JIS K7171に準拠して(測定温度23℃、曲げ試験片の寸法:長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)、樹脂組成物の曲げ弾性率(MPa)および曲げ強度(MPa)を測定した。
[荷重たわみ温度の測定方法]
耐熱性を評価するため、HOT.TESTER S−3(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7191に準拠して(試験条件:荷重1.8MPa、昇温速度120℃/時間)、樹脂組成物の荷重たわみ温度(℃)を測定した。
耐熱性を評価するため、HOT.TESTER S−3(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7191に準拠して(試験条件:荷重1.8MPa、昇温速度120℃/時間)、樹脂組成物の荷重たわみ温度(℃)を測定した。
[IZOD衝撃強度の測定方法]
ASTM D256に従い、樹脂組成物のノッチ付きの試験片を製作し、この試験片のIZOD衝撃強度(J/m)を測定した。
ASTM D256に従い、樹脂組成物のノッチ付きの試験片を製作し、この試験片のIZOD衝撃強度(J/m)を測定した。
[全光線透過率、ヘイズの測定方法]
射出成形により縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、ヘイズメーターHZ−V3(スガ試験機株式会社製)を用いて、樹脂組成物の全光線透過率(%)およびヘイズ(%)を測定した。
射出成形により縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、ヘイズメーターHZ−V3(スガ試験機株式会社製)を用いて、樹脂組成物の全光線透過率(%)およびヘイズ(%)を測定した。
[初期黄変度(YI)の測定方法]
射出成形により縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、分光測色計SC−P(スガ試験機株式会社製)を用いて、樹脂組成物の初期黄変度(YI)を測定した。
射出成形により縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、分光測色計SC−P(スガ試験機株式会社製)を用いて、樹脂組成物の初期黄変度(YI)を測定した。
[加水分解試験方法]
耐加水分解性を評価するため、縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、恒温恒湿機(ナガノサイエンス株式会社製LH41−12P)を用いて、高温高湿条件下(温度85℃、湿度85%RH)で200時間保存し、保存する前後の数平均分子量の変化を測定した。なお、測定方法は数平均分子量の測定方法と同様に行った。
耐加水分解性を評価するため、縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、恒温恒湿機(ナガノサイエンス株式会社製LH41−12P)を用いて、高温高湿条件下(温度85℃、湿度85%RH)で200時間保存し、保存する前後の数平均分子量の変化を測定した。なお、測定方法は数平均分子量の測定方法と同様に行った。
<使用材料>
[樹脂]
(A−1)ポリカーボネート:パンライトL1225Y(帝人株式会社製)
[酸化防止剤]
(B−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:AO330(株式会社アデカ製)
(B−2)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:AO60(株式会社アデカ製)
(B−3)ホスファイト系酸化防止剤:PEP36(株式会社アデカ製)
(B−4)同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤:スミライザーGP(住友化学株式会社製)
[樹脂]
(A−1)ポリカーボネート:パンライトL1225Y(帝人株式会社製)
[酸化防止剤]
(B−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:AO330(株式会社アデカ製)
(B−2)ヒンダードフェノール系酸化防止剤:AO60(株式会社アデカ製)
(B−3)ホスファイト系酸化防止剤:PEP36(株式会社アデカ製)
(B−4)同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤:スミライザーGP(住友化学株式会社製)
〔実施例1、2〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて30:20:50の割合で仕込み、さらにセバシン酸に対して0.2当量のp−クミルフェノールを末端封止剤として加えた。モノマーおよび末端封止剤中のフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。ここで無水酢酸と反応し生成した4,4’−ジアセトキシビフェニルおよびビスフェノールAジアセタートは末端封止剤としても機能する。さらに生成するポリエステルの質量に対し、酸化防止剤(B−1)を0.2質量%添加した。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から2.5時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は3,900であり、末端の封止率は89%であった。得られたポリエステルを(C−1)とする。
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて30:20:50の割合で仕込み、さらにセバシン酸に対して0.2当量のp−クミルフェノールを末端封止剤として加えた。モノマーおよび末端封止剤中のフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。ここで無水酢酸と反応し生成した4,4’−ジアセトキシビフェニルおよびビスフェノールAジアセタートは末端封止剤としても機能する。さらに生成するポリエステルの質量に対し、酸化防止剤(B−1)を0.2質量%添加した。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から2.5時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は3,900であり、末端の封止率は89%であった。得られたポリエステルを(C−1)とする。
流動性向上剤の性能を評価すべく、樹脂、酸化防止剤、得られた流動性向上剤を表1に示す割合(重量部)で配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
〔実施例3〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて29:22:49の割合で仕込み、モノマーのフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。ここで無水酢酸と反応し生成した4,4’−ジアセトキシビフェニルおよびビスフェノールAジアセタートは末端封止剤としても機能する。さらに生成するポリエステルの質量に対し、酸化防止剤(B−1)を0.2質量%添加した。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は22,000であり、末端の封止率は100%であった。得られたポリエステルを(C−2)とする。
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて29:22:49の割合で仕込み、モノマーのフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。ここで無水酢酸と反応し生成した4,4’−ジアセトキシビフェニルおよびビスフェノールAジアセタートは末端封止剤としても機能する。さらに生成するポリエステルの質量に対し、酸化防止剤(B−1)を0.2質量%添加した。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は22,000であり、末端の封止率は100%であった。得られたポリエステルを(C−2)とする。
流動性向上剤の性能を評価すべく、樹脂、酸化防止剤、得られた流動性向上剤を表1に示す割合(重量部)で配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
〔実施例4〕
重合時に酸化防止剤を加えない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は4,500であり、末端の封止率は91%であった。得られたポリエステルを(C−3)とする。また、実施例1と同様にして、表1に示す割合(重量部)で樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
重合時に酸化防止剤を加えない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は4,500であり、末端の封止率は91%であった。得られたポリエステルを(C−3)とする。また、実施例1と同様にして、表1に示す割合(重量部)で樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
〔実施例5〕
重合時に加える酸化防止剤を(B−4)にする以外は実施例3と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は11,300であり、末端の封止率は100%であった。得られたポリエステルを(C−6)とする。また、実施例1と同様にして、表1に示す割合(重量部)で樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
重合時に加える酸化防止剤を(B−4)にする以外は実施例3と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は11,300であり、末端の封止率は100%であった。得られたポリエステルを(C−6)とする。また、実施例1と同様にして、表1に示す割合(重量部)で樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
〔比較例1〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて20:30:50の割合で仕込み、モノマー中のフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から5時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、生成したポリエステルの質量に対し、酸化防止剤(B−2)および(B−3)をそれぞれ0.2質量%ずつ添加し、5分間攪拌して流動性向上剤を得た。その後、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は10,200であり、全末端の50%がカルボン酸であった。得られたポリエステルを(C−4)とする。
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて20:30:50の割合で仕込み、モノマー中のフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から5時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、生成したポリエステルの質量に対し、酸化防止剤(B−2)および(B−3)をそれぞれ0.2質量%ずつ添加し、5分間攪拌して流動性向上剤を得た。その後、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は10,200であり、全末端の50%がカルボン酸であった。得られたポリエステルを(C−4)とする。
流動性向上剤の性能を評価すべく、樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を表1に示す割合(重量部)で配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
〔比較例2〕
末端封止剤をp−t−ブチルフェノールに変更し、酸化防止剤を加えない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は6,500であり、末端の封止率は100%であった。得られたポリエステルを(C−5)とする。また、実施例1と同様にして、表1に示す割合(重量部)で樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
末端封止剤をp−t−ブチルフェノールに変更し、酸化防止剤を加えない以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は6,500であり、末端の封止率は100%であった。得られたポリエステルを(C−5)とする。また、実施例1と同様にして、表1に示す割合(重量部)で樹脂、酸化防止剤、および得られた流動性向上剤を配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、流動性向上剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
〔比較例3〕
樹脂および酸化防止剤を表1に示す割合(重量部)で配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、添加剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
樹脂および酸化防止剤を表1に示す割合(重量部)で配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。そして、樹脂組成物の物性を測定することによって、添加剤の性能を評価した。上記樹脂組成物の各種物性を表2に示す。
実施例1〜5と比較例3との対比から、本発明の流動性向上剤の添加により、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度、および光学特性(ヘイズ、全光線透過率、YI)を損なうことなく、樹脂の流動性(スパイラルフロー)を向上させることができることが分かる。さらに、実施例1〜5と比較例1の対比から、末端を封止することにより、耐加水分解性を向上させ、高温高湿条件下でポリカーボネート樹脂組成物の分解の抑制に効果的であることが分かる。さらに実施例1と比較例2の対比から、末端封止剤の分子量が160より小さい場合、末端封止剤が揮発し、流動性向上剤を製造する際に目的の分子量でとめることができず、分子量が増加していく現象が確認された。また、実施例1および5と実施例4との比較から、重合時に酸化防止剤を添加することで、初期黄変(YI)が抑えられていることが分かる。
本発明の流動性向上剤によれば、ポリカーボネート樹脂本来の特性(高剛性、機械強度、透明性、耐熱性等)を損なうことなく樹脂の成形加工時の流動性を向上させることができる。さらにそれを含有した樹脂組成物は、高温高湿条件下で樹脂の着色や加水分解を抑制し、安定性に優れる。そのため、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、大型化、薄肉化、形状複雑化した成形品の成形を実現することができ、電気・電子・OA機器用、光学部品用、精密機械用、自動車用、保安・医療用、建材用、雑貨用等の幅広い用途に好適に用いられる。
Claims (10)
- 下記一般式(1)
で表されるビフェノール(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
で表されるビスフェノール(B)5〜60モル%、および、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記モル%は、モノマー(A)、(B)および(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)の重縮合物であるポリエステルであり、
上記ポリエステルの末端が数平均分子量160以上の末端封止剤によって60%以上封止されていることを特徴とするポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。 - 上記末端封止剤が、フェノール系化合物、脂肪族モノカルボン酸および酸無水物からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
- さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有する、請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
- さらに同一分子内にホスファイト構造とヒンダードフェノール構造とを有する酸化防止剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
- 数平均分子量が2000〜30000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
- 上記ジカルボン酸(C)に由来する部分のR1に相当する部分が、直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
- 上記ジカルボン酸(C)に由来する部分のR1に相当する部分が−(CH2)8−、−(CH2)10−、または−(CH2)12−のいずれかである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤。
- ポリカーボネート樹脂70〜99.9質量%と、請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤0.1〜30質量%とを含有するポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項8に記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリカーボネート樹脂用流動性向上剤の製造方法であって、
融点が200℃以上の酸化防止剤存在下で、
下記一般式(1)
で表されるビフェノール(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
で表されるビスフェノール(B)5〜60モル%、および、
下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
(式中、R1は主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記モル%は、モノマー(A)、(B)および(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)と末端封止剤とを重縮合することを特徴とするポリカーボネート樹脂用流動性向上剤の製造方法。
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