JP2017186446A - 芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物および光拡散性成形品 - Google Patents

芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物および光拡散性成形品 Download PDF

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秀輔 吉原
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Abstract

【課題】得られる成形品の透明性、光拡散性を損なうことなく、成形加工時の流動性が向上した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物および光拡散性成形品を提供すること。【解決手段】芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と特定構造のポリエステルからなる流動性向上剤(II)と光拡散剤(III)とを含有する芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物およびそれを成形してなる光拡散性成形品。【選択図】なし

Description

本発明は、得られる成形品の透明性、光拡散性を損なうことなく、成形加工時の流動性が向上した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物および光拡散性成形品に関する。
芳香族ポリカーボネート系樹脂は、優れた機械特性、熱的性質を有しているため、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電子・電気機器、家庭電化機器、自動車用部材、建築材料等、工業的に広く利用されている。また、芳香族ポリカーボネート系樹脂に無機微粒子、高分子微粒子等の光拡散剤を配合した樹脂組成物からなる光拡散性成形品は、アクリル樹脂からなる光拡散性成形品に比べ、耐熱性および寸法安定性に優れることから、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置または画像表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置等のバックライトモジュールに使用される光拡散板、プロジェクターテレビ等の投影型表示スクリーンに使用される光拡散板等)、光拡散フィルム(例えば、液晶表示装置の輝度向上等に利用される高透過光拡散フィルム等)等、幅広い分野で使用されている。近年の画像表示装置の大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化等に伴って、光拡散性成形品、特に画像表示装置に用いられる光拡散板および光拡散フィルムにも、大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化等の要望が高まっており、成形加工時の流動性に優れた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物が求められている。
特許文献1には、ペンタエリスリトール系エステル化合物を添加し、エステル交換により芳香族ポリカーボネート系樹脂を低分子量化することで流動性を向上させることが記載されている。
国際公開第2012/068075号パンフレット
しかし、特許文献1の方法では諸特性を大きく損なうことなく、流動性を向上させることができるが、衝撃強度の維持が不十分であり、エステル交換による黄変も懸念される。さらに、可塑剤として他の樹脂に常用されるジオクチルフタレートやジブチルフタレート等のフタル酸の脂肪族エステル類、あるいはトリクレジルホスフェートやジフェニルクレジルホスフェート等のリン酸エステル類等に関しても、芳香族ポリカーボネート系樹脂との親和性に欠け、また機械的・熱的特性を著しく低下させるという課題があった。
本発明は、得られる成形品の透明性、光拡散性を損なうことなく、成形加工時の流動性が向上した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物および光拡散性成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂の流動性を向上させるために、ビスフェノール成分および脂肪族ジカルボン酸成分、並びに、任意でビフェノール成分を特定の比率で重縮合したポリエステルからなる流動性向上剤を用い、この流動性向上剤とポリカーボネート樹脂および光拡散剤を溶融混練することにより、得られる成形品の透明性、光拡散性を損なうことなく、成形加工時の流動性が向上した芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物および光拡散性成形品を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、下記1)〜7)で示される発明に関する。
1)芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と流動性向上剤(II)と光拡散剤(III)とを含有し、前記流動性向上剤(II)が
下記一般式(1)
Figure 2017186446
(式中、X〜Xは各々同一であっても異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるビフェノール成分(A)0〜55モル%、
下記一般式(2)
Figure 2017186446
(式中、X〜Xは各々同一であっても異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO−を示す。)
で表されるビスフェノール成分(B)5〜60モル%、
下記一般式(3)
HOOC−R−COOH ・・・(3)
(式中、Rは主鎖原子数2〜18の、分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸成分(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記の(A)、(B)、(C)のモル%は、モノマー(A)、(B)、(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)の重縮合物である、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
2)芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)の粘度平均分子量が12000〜40000である1)に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
3)流動性向上剤(II)の数平均分子量が2000〜30000である、1)または2)のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
4)前記流動性向上剤(II)中の(C)成分のRに相当する部分が、直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖である、1)〜3)のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
5)前記流動性向上剤(II)の末端が一官能性の低分子化合物で封止され、その封止率が60%以上である、1)〜4)のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
6)芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と流動性向上剤(II)の重量比が70:30〜99.9:0.1である1)〜5)のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
7)1)〜6)のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる光拡散性成形品。
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、得られる光拡散性成形品の優れた特性(透明性、光拡散性等)を損なうことなく、従来のものに比べ溶融流動性(成形性)に優れる。
また、本発明の光拡散性成形品は、透明性、光拡散性に優れ、かつ大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化が可能である
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
本発明における芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)としては、特に制限はなく、種々の構造単位を有するポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、2価のフェノールとハロゲン化カルボニルとを界面重縮合させる方法や、2価のフェノールと炭酸ジエステルとを溶融重合(エステル交換)させる方法等によって製造したポリカーボネート系樹脂を用いることができる。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)の原料である2価のフェノールとしては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これら2価のフェノールのなかでも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、さらに、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料とした2価のフェノールが特に好ましい。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、ハロホルメート等が挙げられる。具体的には、ホスゲン;2価のフェノールのジハロホルメート、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート等のジアリールカーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジアミルカーボネート、ジオクチルカーボネート等の脂肪族カーボネート化合物等が挙げられる。
また、上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)は、そのポリマー鎖の分子構造が直鎖構造である樹脂の他、これに分岐構造を有している樹脂でもよい。このような分岐構造を導入するための分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログルシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)等が挙げられる。また、分子量調節剤として、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール等を用いることができる。
さらに、本発明に用いる芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)は、上記2価のフェノールのみを用いて製造された単独重合体の他、ポリカーボネート構造単位とポリオルガノシロキサン構造単位とを有する共重合体、またはこれら単独重合体と共重合体とからなる樹脂組成物であってもよい。また、テレフタル酸等の二官能性カルボン酸やそのエステル形成誘導体等のエステル前駆体の存在下で2価のフェノール等の重合反応を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。
芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)の分子量は、高い流動性を有する樹脂組成物を得る観点から、溶媒として塩化メチレンを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、12000〜40000のものを使用することが好ましく、12000〜25000がより好ましく、12000〜18000が特に好ましい。
さらに、種々の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を溶融混練して得られる樹脂組成物を用いることもできる。芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)を含む樹脂材料として、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)と後述の他の樹脂またはエラストマーとを組み合わせた芳香族ポリカーボネート系ポリマーアロイを用いてもよい。
芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物には、芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)が本来有する優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、自己消火性(難燃性)等を損なわない範囲、具体的には芳香族ポリカーボネート系樹脂(A)100質量部に対して50質量部以下の範囲で、他の樹脂またはエラストマーを配合してもよい。
他の樹脂としては、ポリスチレン(PSt)、スチレン系ランダム共重合体(アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)等)、スチレンと無水マレイン酸との交互共重合体、グラフト共重合体(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリル−アクリレート−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)等)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、これらの共重合体等のポリエステル;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、メタクリル酸メチル単位を有する共重合体等のアクリル系樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリウレタン;シリコーン樹脂;シンジオタクチックPS;6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;ポリアリレート;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルケトン;ポリスルホン;ポリエーテルスルホンポリアミドイミド;ポリアセタール等、各種汎用樹脂またはエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
エラストマーとしては、イソブチレン−イソプレンゴム;ポリエステル系エラストマー;スチレン−ブタジエンゴム、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)等のスチレン系エラストマー;エチレン−プロピレンゴム等のポリオレフィン系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;アクリル系エラストマー;ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム等を含有する、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン樹脂(MAS樹脂)に代表されるコアシェル型の耐衝撃性改良剤等が挙げられる。
本発明における流動性向上剤(II)は、ビスフェノール成分および脂肪族ジカルボン酸成分、並びに、任意でビフェノール成分を、特定の比率で重縮合したポリエステルからなる。
本発明の1形態である、流動性向上剤の主鎖の構造には、下記一般式(1)
Figure 2017186446
(式中、X〜Xは各々同一であっても異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるビフェノール成分(A)を0〜55モル%、
下記一般式(2)
Figure 2017186446
(式中、X〜Xは各々同一であっても異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO−を示す。)
で表されるビスフェノール成分(B)を5〜60モル%、
下記一般式(3)
HOOC−R−COOH ・・・(3)
(式中、Rは主鎖原子数2〜18の、分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
で表されるジカルボン酸成分(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記の(A)、(B)、(C)のモル%は、モノマー(A)、(B)、(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)の重縮合物であることを特徴とする。
本発明における流動性向上剤(II)は、ビスフェノール成分(B)および任意のビフェノール成分(A)からなるジオール成分と、(C)成分であるジカルボン酸成分とを重縮合することで製造されるポリエステルである。
上記流動性向上剤は低分子化合物ではないことから、流動性向上剤を添加したポリカーボネート樹脂組成物を成形するときに、ブリードアウトが発生することを抑制することができる。
また、上記分子構造を有する流動性向上剤は、ポリカーボネート樹脂との相溶性が高いために、ポリカーボネート樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の流動性を効率的に向上させることができ、かつ、ポリカーボネート樹脂が本来有している透明性や衝撃強度等の種々の特性を損なわない。
上記流動性向上剤中に含まれるビフェノール成分(A)は0〜55モル%が好ましく、より好ましくは10〜40モル%、最も好ましくは20〜30%である。ビスフェノール成分(B)は5〜60モル%含まれていることが好ましく、より好ましくは10〜50モル%、最も好ましくは20〜30モル%である。ジカルボン酸成分(C)は40〜60モル%含まれていることが好ましく、より好ましくは45〜55%である。
ジオール成分として(A)成分および(B)成分を用いる場合において、(A)成分と(B)成分とのモル比((A)/(B))は、好ましくは1/9〜9/1であり、より好ましくは1/7〜7/1であり、さらに好ましくは1/5〜5/1であり、最も好ましくは1/3〜3/1である。(A)/(B)が1/9よりもさらに(A)成分が少ない場合は、上記ポリエステル自体が完全に非晶性となり、ガラス転移温度が低くなることから、貯蔵時における流動性向上剤のペレット同士の融着を引き起こす場合がある。(A)/(B)が9/1よりもさらに(B)成分が少ない場合には、芳香族ポリカーボネート系樹脂との相溶性が不十分となり、芳香族ポリカーボネート系樹脂に流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物を4mm以上の厚肉の成形品に成形したときに、徐冷される途中に厚みの中心部分で相分離を起こす場合がある。
一般式(1)中のX1〜X4は各々同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。流動性向上剤自体の結晶性を高め、ペレット貯蔵時の融着を防ぐ等の取り扱い性を良くするために、X1〜X4は全て水素原子であることがより好ましい。
一般式(2)中のX5〜X8は各々同一であっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示す。芳香族ポリカーボネート系樹脂との相溶性を高めるために、X5〜X8は全て水素原子であることがより好ましい。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO2−を示す。
一般式(2)で表されるビスフェノール成分としては、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が芳香族ポリカーボネート系樹脂との相溶性が高まる点で好適である。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン等のビス(ヒドロキシアリール)アリールアルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニル等のジヒドロキシジフェニル類等が挙げられる。これらのビスフェノール成分は、それぞれ単独で用いてもよいし、本発明の効果を失わない範囲で二種以上を混合して用いてもよい。
本発明における流動性向上剤(II)の末端構造は特に限定されないが、特に芳香族ポリカーボネート系樹脂とのエステル交換を抑制し、芳香族ポリカーボネート系樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の黄変を抑制するため、および加水分解を抑制し長期安定性を確保するために、一官能性の低分子化合物で封止されていることが好ましい。
また、分子鎖の全末端に対する封止率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、最も好ましくは90%以上である。
流動性向上剤の末端封止率は、封止された末端官能基および封止されていない末端官能基の数をそれぞれ測定し、下記式(4)により求めることができる。上記末端封止率の具体的な算出方法としては、1H−NMRを用いて、各末端基に対応する特性シグナルの積分値から各末端基の数を求め、その結果に基づいて、下記式(4)を用いて上記末端封止率を算出する方法が、精度、簡便さの点で好ましい。
末端封止率(%)={[封止された末端官能基数]/([封止された末端官能基数]+[封止されていない末端官能基数])}×100 ・・・(4)
封止に用いる一官能性の低分子化合物としては、一価のフェノール、炭素数1〜20のモノアミン、脂肪族モノカルボン酸、カルボジイミド、エポキシまたはオキサゾリンなどが挙げられる。一価のフェノールの具体例としては、フェノール、p−クレゾール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、p−t−アミルフェノール、4−ヒドロキシビフェニル、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。これらのなかでも、高沸点で重合が容易である点から、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましい。モノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン、およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。カルボジイミドの例としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド、ビス−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、ポリ(2,4,6−トリイソプロピルフェニレン−1,3−ジイソシアネート)、1,5−(ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、2,6,2′,6′−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドおよびこれらの任意の混合物等が挙げられる。エポキシの例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリエチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−グリシジルエーテル、4,4’−ジフェニルメタンジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、メタクリル酸グルシジルエステル、メタクリル酸グルシジルエステルポリマー、メタクリル酸グルシジルエステルポリマー含有化合物およびこれらの任意の混合物等が挙げられる。オキサゾリンの例としては、スチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、1,3−フェニレンビス(2−オキサゾリン)およびこれらの混合物等が挙げられる。
成分(C)において、下記一般式(3)
HOOC−R1−COOH ・・・(3)
中のR1は、主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を表す。ここで主鎖原子数とは主鎖骨格の原子の数であり、例えば−R1−が−(CH28−である場合には、主鎖原子数は炭素原子の数であり「8」となる。流動性向上剤自体の溶融粘度が低くなることから、R1は、分岐を含まない直鎖状置換基であることが好ましく、さらには分岐を含まない直鎖の脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。また、R1は飽和でも不飽和でもよいが、飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。不飽和結合を含む場合には、上記流動性向上剤が屈曲性を十分に得られないことがあり、流動性向上剤自体の溶融粘度の増加を招く場合がある。上記流動性向上剤の重合の容易さ、およびガラス転移点の向上を両立することができる点で、R1は炭素数2〜18の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数4〜16の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがより好ましく、炭素数8〜14の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることがさらに好ましく、炭素数8の直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖であることが最も好ましい。上記流動性向上剤のガラス転移点の向上は、芳香族ポリカーボネート系樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の耐熱性の向上につながる。流動性向上剤自体の溶融粘度が低下する点で、R1の主鎖原子数は偶数であることが好ましい。以上の点から、R1は特に−(CH28−、−(CH210−、−(CH212−から選ばれる1種であることが好ましい。ジカルボン酸成分は、単独で用いても良いし、本発明の効果を失わない範囲で2種類以上を混合しても良い。
本発明における流動性向上剤(II)は、その効果を失わない程度に他のモノマーを共重合しても構わない。他のモノマーとしては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、芳香族アミノカルボン酸またはカプロラクタム類、カプロラクトン類、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、脂肪族ジアミン、脂環族ジカルボン酸、および脂環族ジオール、芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールが挙げられる。
ただし、上記流動性向上剤を構成する上記他のモノマーの含有率は、流動性向上剤全体のモル数に対して、50モル%未満であり、好ましくは、30モル%未満、より好ましくは、10モル%未満、最も好ましくは、5モル%未満である。上記他のモノマーの含有率が、上記流動性向上剤全体のモル数に対して、50モル%以上である場合には、上記流動性向上剤の芳香族ポリカーボネート系樹脂に対する相溶性が低下し、上記流動性向上剤が芳香族ポリカーボネート系樹脂と相溶することが困難になる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−7−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、4’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、3’−ヒドロキシフェニル−4−安息香酸、4’−ヒドロキシフェニル−3−安息香酸、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシビフェニル、3,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4”−ジカルボキシターフェニル、ビス(4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、ビス(3−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3−カルボキシフェニル)エタン、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジオールの具体例としては、ピロカテコール、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノールエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ジヒドロキシビナフチル、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミンの具体例としては、4−アミノフェノール、N−メチル−4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、4−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルエーテル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルメタン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルスルフィド、2,2’−ジアミノビナフチル、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
芳香族ジアミンおよび芳香族アミノカルボン酸の具体例としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、N−メチル−1,4−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルスルフィド(チオジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルスルホン、2,5−ジアミノトルエン、4,4’−エチレンジアニリン、4,4’−ジアミノビフェノキシエタン、4,4’−ジアミノビフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’−ジアミノビフェニルエーテル(オキシジアニリン)、4−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、7−アミノ−2−ナフトエ酸、およびそれらのアルキル、アルコキシまたはハロゲン置換体等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,2−エチレンジアミン、1,3−トリメチレンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジオールおよび脂環族ジオールの具体例としては、ヘキサヒドロテレフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジオール、シス−1,4−シクロヘキサンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール等の直鎖状または分鎖状脂肪族ジオール、およびそれらの反応性誘導体等が挙げられる。
芳香族メルカプトカルボン酸、芳香族ジチオールおよび芳香族メルカプトフェノールの具体例としては、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−6−ナフトエ酸、2−メルカプト−7−ナフトエ酸、ベンゼン−1,4−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、2,6−ナフタレン−ジチオール、2,7−ナフタレン−ジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、6−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、7−メルカプト−2−ヒドロキシナフタレン、およびそれらの反応性誘導体等が挙げられる。
本発明における流動性向上剤は、良好な色調の樹脂組成物が得られる点で、ホスファイト系酸化防止剤を予め含有していてもよい。〔ここで、ホスファイト系酸化防止剤を予め含有する流動性向上剤とは、ホスファイト系酸化防止剤と流動性向上剤の混合物を意味している。このホスファイト系酸化防止剤は、樹脂組成物中でも酸化防止剤として機能する。すなわち本発明の樹脂組成物の最も単純な製造法は、ポリカーボネート樹脂、流動性向上剤およびホスファイト系酸化防止剤の3成分を一度に混合することであるが、「ポリカーボネート樹脂」と「ホスファイト系酸化防止剤と流動性向上剤の混合物」を混合することも、本発明の実施形態に含まれる。〕
その理由は、流動性向上剤自体の変色を防止するため、および、流動性向上剤の重合に使用される重合触媒を失活させ、流動性向上剤と芳香族ポリカーボネート系樹脂とを混合するときに発生するおそれのある、流動性向上剤に含まれる上記ポリエステルと芳香族ポリカーボネート系樹脂とのエステル交換や加水分解反応による変色を防止することができるためであると考えられる。これにより芳香族ポリカーボネート系樹脂の分子量の減少をより効果的に抑制することができるため、流動性向上剤を含有する樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート系樹脂本来の特性を損なうことなく、流動性のみを向上させることができる。流動性向上剤中のホスファイト系酸化防止剤の含有量は、流動性向上剤の重量に対して0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.05質量%であることが最も好ましい。ホスファイト系酸化防止剤の含有量が0.005質量%未満の場合には、ホスファイト系酸化防止剤の含有量が少なく、芳香族ポリカーボネート系樹脂に上記流動性向上剤を配合したときに着色が生じる場合がある。また、ホスファイト系酸化防止剤の含有量が5質量%よりも多い場合には、芳香族ポリカーボネート系樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の衝撃強度を低下させる場合がある。
ホスファイト系酸化防止剤は各種の化合物が知られており、例えば大成社発行の「酸化防止剤ハンドブック」、シーエムシー出版発行の「高分子材料の劣化と安定化」(235〜242頁)等に記載された種々の化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ホスファイト系酸化防止剤として、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4―ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等が挙げられる。商品名では、アデカスタブPEP−36、アデカスタブPEP−4C、アデカスタブPEP−8、アデカスタブPEP−8F、アデカスタブPEP−8W、アデカスタブPEP−11C、アデカスタブPEP−24G、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブ260、アデカスタブP、アデカスタブQL、アデカスタブ522A、アデカスタブ329K、アデカスタブ1178、アデカスタブ1500、アデカスタブC、アデカスタブ135A、アデカスタブ3010、アデカスタブTPP(以上、いずれも株式会社アデカ製)、Irgafos38、Irgafos126、Irgafos168、IrgafosP−EPQ(以上、いずれもBASF JAPAN Ltd.製)等を例示することができる。これらのなかでも、特にエステル交換反応や加水分解反応を抑制する効果を顕著に示し得ること、酸化防止剤自体の融点が高く樹脂から揮発し難いこと等から、アデカスタブPEP−36、アデカスタブHP−10、アデカスタブ2112、アデカスタブPEP−24G、Irgafos126等がより好ましい。
本発明における流動性向上剤は、良好な色調のポリカーボネート樹脂組成物が得られる点で、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を予め含有していてもよい。流動性向上剤中のヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、流動性向上剤の重量に対して0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.05質量%であることが最も好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が0.005質量%未満の場合には、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が少なく、芳香族ポリカーボネート系樹脂に上記流動性向上剤を配合したときに着色が生じる場合がある。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量が5質量%よりも多い場合には、芳香族ポリカーボネート系樹脂に上記流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の衝撃強度を低下させる場合がある。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、モノ(またはジ、またはトリ)(α−メチルベンジル)フェノール、2,2'−メチレンビス(4−エチル
−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチル
フェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、
4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチ
ルハイドロキノン、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]o−クレゾール、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
商品名では、ノクラック200、ノクラックM−17、ノクラックSP、ノクラックSP−N、ノクラックNS−5、ノクラックNS−6、ノクラックNS−30、ノクラック300、ノクラックNS−7、ノクラックDAH(以上、いずれも大内新興化学工業株式会社製)、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−616、アデカスタブAO−635、アデカスタブAO−658、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−15、アデカスタブAO−18、アデカスタブ328、アデカスタブAO330、アデカスタブAO−37(以上、いずれも株式会社アデカ製)、IRGANOX−245、IRGANOX−259、IRGANOX−565、IRGANOX−1010、IRGANOX−1024、IRGANOX−1035、IRGANOX−1076、IRGANOX−1081、IRGANOX−1098、IRGANOX−1222、IRGANOX−1330、IRGANOX−1425WL(以上、いずれもBASF JAPAN Ltd.製)、SumilizerGA−80(以上、住友化学株式会社製)等が挙げられる。これらのなかでも、酸化防止剤自体が特に変色し難い点、およびホスファイト系酸化防止剤との併用によって樹脂の着色を効率よく抑制することができる点から、アデカスタブAO−60、IRGANOX−1010等がより好ましい。
さらにフェノール系酸化防止剤として、アクリレート基とフェノール基とを併せもつモノアクリレートフェノール系安定剤を用いることもできる。モノアクリレートフェノール系安定剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート(商品名:スミライザーGS)等が挙げられる。
ホスファイト系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤の組み合わせとしては、アデカスタブPEP−36、アデカスタブ2112やIrgafos126と、アデカスタブAO−60やIRGANOX−1010との組み合わせが、樹脂の着色を特に抑制することができる点で好ましい。
本発明における流動性向上剤の数平均分子量とは、ポリスチレンを標準物質とし、p−クロロフェノールとトルエンとの体積比が3:8の混合溶媒に、本発明における樹脂を濃度が0.25質量%となるように溶解して調製した溶液を用いて、GPCにて80℃で測定した値である。本発明における上記ポリエステルの数平均分子量は、好ましくは2000〜30000であり、より好ましくは3000〜25000であり、さらに好ましくは4000〜20000である。上記ポリエステルの数平均分子量が2000未満の場合には、芳香族ポリカーボネート系樹脂に流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物を成形するとき等に、流動性向上剤がブリードアウトする場合がある。また、上記流動性向上剤の数平均分子量が30000を超える場合には、流動性向上剤自体の溶融粘度が高くなり、芳香族ポリカーボネート系樹脂に流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物の成形加工時の流動性を効果的に向上させることができない場合がある。
本発明における流動性向上剤(II)は、公知のいかなる方法で製造されていても構わない。製造方法の一例としては、モノマーの水酸基を無水酢酸等の低級脂肪酸を用いてそれぞれ個別に、または一括して低級脂肪酸エステルとした後、別の反応槽または同一の反応槽で、カルボン酸と脱低級脂肪酸重縮合反応させる方法が挙げられる。重縮合反応は、実質的に溶媒の存在しない状態で、通常、220〜330℃、好ましくは240〜310℃の温度で、窒素ガス等の不活性ガスの存在下、常圧または減圧下に、0.5〜5時間行われる。反応温度が220℃よりも低い場合は反応の進行が遅く、330℃よりも高い場合は分解等の副反応が起こり易い。減圧下で反応させる場合は、段階的に減圧度を高くすることが好ましい。急激に高真空度まで減圧した場合には、ジカルボン酸モノマーや末端封止に用いる低分子化合物が揮発し、望む組成、または分子量の樹脂が得られない場合がある。到達真空度は、40Torr以下が好ましく、30Torr以下がより好ましく、20Torr以下がさらに好ましく、10Torr以下が特に好ましい。到達真空度が40Torrよりも高い場合には、脱酸が十分に進まず、重合時間が長くなり、樹脂が着色することがある。重縮合反応は、多段階の反応温度を採用しても構わないし、場合により昇温中あるいは最高温度に達したら直ちに反応生成物を溶融状態で抜き出し、回収することもできる。得られたポリエステル樹脂はそのままで使用してもよいし、未反応原料を除去する、または、物性を向上させる意図でさらに固相重合を行なうこともできる。固相重合を行なう場合には、得られたポリエステル樹脂を粒径3mm以下、好ましくは1mm以下の粒子に機械的に粉砕し、固相状態のまま100〜350℃で窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、または減圧下に1〜30時間処理することが好ましい。ポリエステル樹脂の粒子の粒径が3mmより大きくなると、処理が十分でなく、物性上の問題を生じるため好ましくない。固相重合時の処理温度や昇温速度は、ポリエステル樹脂粒子同士が融着を起こさないように選ぶことが好ましい。
本発明における流動性向上剤の製造に用いられる低級脂肪酸の酸無水物としては、炭素数2〜5の低級脂肪酸の酸無水物、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロム酢酸、無水ジブロム酢酸、無水トリブロム酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸等が挙げられる。このうち、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリクロル酢酸が特に好適に用いられる。低級脂肪酸の酸無水物の使用量は、用いるモノマーおよび末端封止剤が有する水酸基等の官能基の合計に対し1.01〜1.5倍当量、好ましくは1.02〜1.2倍当量である。低級脂肪酸の酸無水物の使用量が1.01倍当量未満である場合には、低級脂肪酸の酸無水物が揮発することによって、水酸基等の官能基が低級脂肪酸の無水物と反応しきらないことがあり、低分子量の樹脂が得られることがある。
本発明における流動性向上剤の製造には重合触媒を使用してもよい。重合触媒としては、従来からポリエステルの重合触媒として公知の触媒を使用することができ、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、N−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒が挙げられる。なかでも、流動性向上剤自体の変色を防止することができること、ポリカーボネート樹脂組成物の変色を防止することができることから、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウムがより好ましい。
上記重合触媒の添加量は、少ないほど、芳香族ポリカーボネート系樹脂の分子量低下や黄変を抑制することができる。従って、上記重合触媒の添加量は、ポリエステル樹脂の総重量に対し、通常、0〜100×10-2質量%、好ましくは0.5×10-3〜50×10-2質量%が好適である。
本発明における流動性向上剤の形状に関しては特に制限はなく、例えば、ペレット状、フレーク状、パウダー状等が挙げられる。その粒子径は、芳香族ポリカーボネート系樹脂と溶融混練する押出機に投入することができる程度に小さければよく、6mm以下であることが好ましい。
光拡散剤(III)は、光拡散能を有する微粒子である。このような微粒子としては、無機微粒子および高分子微粒子が挙げられる。
無機微粒子としては、ガラス充填材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、ワラストナイト、酸化チタン等が挙げられる。これらのうち、炭酸カルシウムが好ましい。
無機微粒子の形状は、繊維状よりは粒状(不定形を含む)または板状が好ましい。例えば、ガラス充填材の場合、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、極薄ガラスフレーク(ゾル−ゲル法により製造される)、不定形ガラス等が挙げられる。他の無機微粒子においても同様に、様々な形状のものを採用できる。
無機微粒子は、シランカップリング剤、ポリオルガノ水素シロキサン化合物等の各種シリコーン化合物、脂肪酸エステル化合物、オレフィン化合物等で表面処理されていてもよい。表面処理された無機微粒子は熱安定性および耐加水分解性の向上において効果的である。
無機微粒子の屈折率は、1.4〜1.8が好ましい。無機微粒子の屈折率がこの範囲にあれば、光拡散性および全光線透過率の両方が良好となる。無機微粒子の屈折率は、各種の文献によって公知であり、液浸法等により簡便に測定できる。
高分子微粒子は、光拡散性の観点から球状であるものが好ましく、真球状に近い形態であるほどより好ましい。
高分子微粒子としては、非架橋性モノマーと架橋性モノマーとを重合して得られる有機架橋粒子;シリコーン系架橋粒子;ポリエーテルサルホン粒子等の非晶性耐熱ポリマー粒子;エポキシ樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、フェノール樹脂粒子等が挙げられる。非晶性耐熱ポリマー粒子の場合、芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と加熱しながら混練した際に粒子の形態が損なわれることがないため、必ずしも架橋性モノマーを必要としない。これら高分子微粒子のうち、有機架橋粒子が特に好ましい。
有機架橋粒子に用いられる非架橋性モノマーとしては、アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、アクリロニトリル系モノマー等の非架橋性ビニル系モノマー;オレフィン系モノマー等が挙げられる。
アクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン(ビニルトルエン)、エチルスチレン等のアルキルスチレン;ブロモ化スチレン等のハロゲン化スチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレンが特に好ましい。
アクリロニトリル系モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。
オレフィン系モノマーとしては、エチレン、各種ノルボルネン型化合物等が挙げられる。
共重合可能な他のモノマーとしては、メタクリル酸グリシジル、N−メチルマレイミド、無水マレイン酸等が挙げられ、結果として、有機架橋粒子は、N−メチルグルタルイミド等の単位を有することもできる。
これらモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機架橋粒子に用いられる架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
有機架橋粒子の製造方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、過硫酸カリウム等の開始剤を用いるソープフリー重合法、シード重合法、二段階膨潤重合法等が挙げられる。また、懸濁重合法として、水相とモノマー相とを個別に保持して両者を正確に連続式の分散機に供給し、粒子径を分散機の回転数で制御する方法;同様に連続式の製造方法において分散能を有する水性液体中にモノマー相を数〜数十μmの細径オリフィスまたは多孔質フィルターを通すことにより供給し粒径を制御する方法等も採用できる。
シリコーン系架橋粒子は、シロキサン結合を主骨格としてケイ素原子に有機置換基を有するものであり、ポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものと、メチルシリコーンゴム粒子に代表される架橋度の低いものがある。本発明においては、ポリメチルシルセスキオキサンに代表される架橋度の高いものが好ましい。
シリコーン系架橋粒子のケイ素原子に結合する有機置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;カルボキシル基、カルボニル基、エステル基、エーテル基等が挙げられる。
シリコーン系架橋粒子の製造方法としては、水中における3官能性のアルコキシシラン等の加水分解および縮合反応によって、シロキサン結合を成長させながら3次元架橋した粒子を形成させる方法が挙げられる。シリコーン系架橋粒子の粒子径は、触媒であるアルカリの量、攪拌条件等により制御できる。
他の高分子微粒子の製造方法としては、スプレードライ法、液中硬化法(凝固法)、相分離法(コアセルベーション法)、溶媒蒸発法、再沈殿法が挙げられる。また、これら方法にノズル振動法等を組み合わせてもよい。
高分子微粒子の構造としては、単相構造、コア−シェル構造、2種以上の成分が相互に絡み合ったIPN構造等が挙げられる。また、無機微粒子をコアとし、有機架橋粒子の成分をシェルとする複合型粒子、有機架橋粒子をコアとし、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等をシェルとする複合型粒子等であってもよい。
高分子微粒子の屈折率は、通常、1.33〜1.7程度である。高分子微粒子の屈折率がこの範囲であれば、樹脂組成物に配合した状態において充分な光拡散機能を発揮する。
光拡散剤(III)としては、無機微粒子よりも高分子微粒子の方が好ましい。高分子微粒子を用いることにより、光拡散性と全光線透過率との両立がより高いレベルにおいて実現可能である。
光拡散剤(III)の平均粒子径は、0.01〜50μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましく、0.1〜8μmがさらに好ましい。平均粒子径は、レーザー光散乱法で求められる粒度の積算分布の50%(D50)で表される。
光拡散剤(III)は、粒径の分布が狭いものが好ましく、平均粒子径±2μmの範囲にあ
る微粒子が全体の70質量%以上となるような分布を有するものがより好ましい。
光拡散剤(III)の屈折率と、芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)の屈折率との差の絶対値は、0.02〜0.2であることが好ましい。屈折率の差がこの範囲にあることにより、光拡散性と全光線透過率とを高いレベルで両立させることが可能となる。光拡散剤(III)の屈折率は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)の屈折率よりも低いことがより好ましい。
光拡散剤(III)の配合量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と他の樹脂および/またはエラストマーと流動性向上剤(II)との合計100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.3〜20質量部がより好ましく、0.4〜15質量部がさらに好ましく、0.5〜10質量部が特に好ましい。光拡散剤(III)の配合量がこの範囲にあれば、高い光拡散機能を発揮する。
本発明の樹脂組成物は芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)70〜99.9質量%と、流動性向上剤(II)0.1〜30質量%とを含有する。(ただし、(I)と(II)の合計を100質量%とする)流動性向上剤(II)の含有率は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましい。流動性向上剤の含有率の上限は、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下が特に好ましい。流動性向上剤の含有率が0.1質量%以上であれば、成形加工時の流動性が向上する。樹脂組成物(100質量%)中の流動性向上剤の含有率が30質量%以下であれば、芳香族ポリカーボネート系樹脂の耐熱性が大きく損なわれない。本発明における流動性向上剤は、ガラス転移温度が芳香族ポリカーボネート系樹脂よりも低いために、ポリカーボネート樹脂に相溶させて得られる樹脂組成物のガラス転移点を低下させる。従って、30質量%よりも過剰に本発明における流動性向上剤を含有させると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下する場合がある。
本発明における流動性向上剤を芳香族ポリカーボネート系樹脂に添加して得られる樹脂組成物は、上記流動性向上剤にホスファイト系酸化防止剤が予め含まれているかどうかにかかわらず、さらにホスファイト系酸化防止剤を別途含んでいてもよい。上記流動性向上剤にホスファイト系酸化防止剤が予め含まれていない場合には、上記ホスファイト系酸化防止剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂と流動性向上剤との合計質量に対して、0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.05質量%であることが最も好ましい。
上記流動性向上剤にヒンダードフェノール系酸化防止剤が予め含まれているかどうかにかかわらず、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤を別途含んでいてもよい。上記流動性向上剤にヒンダードフェノール系酸化防止剤が予め含まれていない場合には、上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂と流動性向上剤との合計質量に対して、0.005〜5質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることがさらに好ましく、0.02〜0.05質量%であることが最も好ましい。
本発明の樹脂組成物には、芳香族ポリカーボネート系樹脂、流動性向上剤、光拡散剤および酸化防止剤(ホスファイト系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)以外の成分として、さらに目的に応じて他のいかなる成分、例えば、補強剤、増粘剤、離型剤、カップリング剤、難燃剤、耐炎剤、顔料、着色剤、その他の助剤等の添加剤、あるいは充填剤を、本発明の効果を失わない範囲で、添加することができる。これらの添加剤の使用量は、ポリカーボネート樹脂に流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物100重量部に対し、合計で0〜100重量部の範囲であることが好ましい。
難燃剤の使用量は、芳香族ポリカーボネート系樹脂に流動性向上剤を添加して得られる樹脂組成物100重量部に対して、7〜80重量部であることがより好ましく、10〜60重量部であることがさらに好ましく、12〜40重量部であることが特に好ましい。難燃剤は各種の化合物が知られており、例えばシーエムシー出版発行の「高分子難燃化の技術と応用」(149〜221頁)等に記載された種々の化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これら難燃剤のなかでも、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤を好ましく用いることができる。
リン系難燃剤としては、具体的には、リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リン等が挙げられる。これらのリン系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
ハロゲン系難燃剤としては、具体的には、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン、臭素化架橋芳香族重合体等が挙げられる。なかでも、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルが特に好ましい。これらのハロゲン系難燃剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、これらのハロゲン系難燃剤のハロゲン元素含量は、15〜87%であることが好ましい。
本発明における樹脂組成物に対して、機械的強度、寸法安定性等を向上させるために、あるいは、増量を目的として、無機充填剤をさらに添加してもよい。
上記無機充填剤としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンチモン、硫酸エステル、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム等の硫酸金属化合物;酸化チタン等のチタン化合物;炭酸カリウム等の炭酸塩化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化金属化合物;合成シリカ、天然シリカ等のシリカ系化合物;アルミン酸カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂;硝酸ナトリウム等の硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物およびその変性物;二酸化珪素および酸化アルミニウムニウムの複合体微粒子等が挙げられる。
また、上記以外の無機充填剤として、例えば、チタン酸カリウムウイスカー、鉱物繊維(ロックウール等)、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維(ステンレス繊維等)、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、ボロン繊維、テトラポット状酸化亜鉛ウイスカー、タルク、クレー、カオリンクレー、天然マイカ、合成マイカ、パールマイカ、アルミニウム箔、アルミナ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスバルーン、カーボンブラック、黒鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アスベスト、石英粉等も挙げられる。
これらの無機充填剤は、無処理であってもよく、化学的または物理的な表面処理を予め施しておいてもよい。その表面処理に用いる表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤系、高級脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、不飽和有機酸系、有機チタネート系、樹脂酸系、ポリエチレングリコール系等の化合物が挙げられる。
本発明における樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。樹脂組成物は、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等の装置を用いて、芳香族ポリカーボネート系樹脂、流動性向上剤および光拡散剤等の添加剤を配合し、溶融混練する公知の方法によって製造される。流動性向上剤に含まれるポリエステルと芳香族ポリカーボネート系樹脂とのエステル交換反応、および芳香族ポリカーボネート系樹脂の熱劣化等による樹脂組成物の黄変を抑制する目的で、溶融混練の温度はできるだけ低温であることが好ましい。
本発明における樹脂組成物を各種押出成形することにより、本発明の成形品として、例えば、各種異形押出成形品、押出成形によるシート、フィルム等の形状に成形することができる。上記各種押出成形としては、コールドランナー方式、ホットランナー方式の成形法はもとより、さらには射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入による場合を含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形等の射出成形法が挙げられる。また、シート、フィルムの成形には、インフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法等も用いることができる。さらに、特定の延伸操作をかけることにより、熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形等で成形することにより、中空成形品とすることも可能である。
本発明の光拡散性成形品としては、光拡散板、光拡散フィルム、電子・電気機器、OA
機器の部品、車両部品、機械部品、農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、雑貨等が挙げられる。具体的には、画像表示装置用光拡散板(液晶表示装置等のバックライトモジュールに用いられる光拡散板、プロジェクターテレビ等の投影型表示装置のスクリーンに用いられる光拡散板等)、画像読取装置用光拡散板、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、車輌用屋根材、船舶用屋根材、住宅用屋根材、太陽電池カバー等が挙げられる。液晶表示装置等のバックライトモジュールとしては、各種の光源(冷陰極管、LED等)を用いることができる。
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、とりわけ大型かつ薄肉の光拡散板(特に画像表示装置用光拡散板)の製造に適している。本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物によれば、表面積が500〜50000cmである光拡散板が得られる。光拡散板の表面積は1000〜25000cmが好ましく、厚さは0.3〜3mmが好ましい。このように、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物によれば、大型であり、寸法安定性が高く、かつ薄肉(軽量)である光拡散板を製造できる。
光拡散板は、フレネルレンズ形状、シリンドリカルレンズ形状等の表面形状を有する単層板であってもよく、フレネルレンズ形状、シリンドリカルレンズ形状等の表面形状を有する他の材料を光拡散板に積層した積層板であってもよい。
フレネルレンズ形状、シリンドリカルレンズ形状等の表面形状を有する単層板は、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等により所望の形状に成形することで製造できる。表面にフレネルレンズ形状(凹凸形状)を形成する方法としては、(i)金型キャビティ表面または転写ロール表面にフレネルレンズ形状に対応する凹凸を設け、凹凸を成形品表面に転写する方法;(ii)フレネルレンズ形状に対応する凹凸が設けられた別材料を、金型キャビティ内にインサートする、または押出成形時に積層することにより、該別材料と成形品とを一体化した後、別材料を除去して成形品表面に凹凸を転写する方法、等が挙げられる。
また、光拡散板に光輝性顔料を含む層を積層することにより、フレネルレンズ形状等の凹凸形状を省略してもよい。さらに、画像表示装置用光拡散板は、その光源側の面(観察者とは反対側の面)に光源からの光の反射を防止するため各種の光反射防止膜を形成したものであってもよい。
本発明の光拡散性成形品は、表面改質を施すことができ、結果、他の機能を付与することができる。「表面改質」とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着等)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキ等)、塗装、コーティング、印刷等によって光拡散性成形品の表面に新たな層を設けることをいう。
表面改質法としては、通常の樹脂成形品において採用されている公知の表面改質法が挙げられる。
光拡散性成形品の表面に金属層または金属酸化物層を設ける表面改質法としては、例えば、蒸着法(物理蒸着法および化学蒸着法)、溶射法、メッキ法等が挙げられる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング等が挙げられる。化学蒸着(CVD)法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等が挙げられる。溶射法としては、大気圧プラズマ溶射法、減圧プラズマ溶射法等が挙げられる。メッキ法としては、無電解メッキ(化学メッキ)法、溶融メッキ法、電気メッキ法等が挙げられる。電気メッキ法としては、レーザーメッキ法が挙げられる。
これら表面改質法のうち、光拡散性成形品の表面に金属層を設ける場合は、蒸着法またはメッキ法が好ましく、光拡散性成形品の表面に金属酸化物層を設ける場合は、蒸着法が好ましい。蒸着法およびメッキ法は、これらを組み合わせて用いてもよい。例えば、蒸着法で形成された金属層を利用して電気メッキを行う方法等を採用することができる。
次に、本発明における流動性向上剤および樹脂組成物について、実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、以下に挙げる各試薬は、特記しない限り、和光純薬工業株式会社製の試薬を精製せずに用いた。
<評価方法>
[数平均分子量の測定方法]
本発明の流動性向上剤(ポリエステル)を、p−クロロフェノール(東京化成工業株式会社製)とトルエンとの体積比が3:8の混合溶媒に、濃度が0.25質量%となるように溶解して試料溶液を調製した。標準物質はポリスチレンとし、同様の試料溶液を調製した。そして、高温GPC(Viscotek社製:350 HT−GPC System)を用いて、カラム温度80℃、流速1.00mL/分の条件で測定した。検出器は、示差屈折計(RI)を使用した。
[流動性の測定方法]
樹脂組成物のスパイラルフロー(mm)を、射出成形機(IS−100、東芝機械株式会社製)を用いて評価した。ポリカーボネート樹脂組成物は成形温度280℃、金型温度100℃、射出圧力200MPaとした。そして、成形品の肉厚は1mm、幅は10mmとした。
[全光線透過率の測定方法]
射出成形により縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、ヘイズメーターHZ−V3(スガ試験機株式会社製)を用いて、樹脂組成物の全光線透過率(%)を測定した。
[荷重たわみ温度の測定方法]
耐熱性を評価するため、HOT.TESTER S−3(株式会社東洋精機製作所製)
を用いて、JIS K7191に準拠して(試験条件:荷重1.8MPa、昇温速度12
0℃/時間)、樹脂組成物の荷重たわみ温度(℃)を測定した。
[光拡散性]
射出成形により縦4cm×横4cm×厚さ2mmの試験片を作製し、下側に冷陰極管から構成されたバックライトユニットを置き、上側から光拡散性成形品を観察し、光の均一性について評価した。均一性が良好であるものを○、均一性が悪いものを×とした。
<使用材料>
[芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)]
(I−1)ポリカーボネート、パンライトL1225Y(帝人株式会社製)
[酸化防止剤]
ホスファイト系酸化防止剤:PEP36(株式会社アデカ製)
ヒンダードフェノール系酸化防止剤:AO60(株式会社アデカ製)
[光拡散剤(III)]
(III−1)ビーズ状架橋シリコーン粒子:「トスパール120」、平均粒子径:2μm(ジーイー東芝シリコーン(株)製)
[流動性向上剤(II)]
〔製造例1〕
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管および攪拌棒を備え付けた密閉型反応器に、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて20:30:50の割合で仕込み、モノマー中のフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加えた。常圧、窒素ガス雰囲気下で145℃にてモノマーを反応させて均一な溶液を得た後、生じた酢酸を留去しながら2℃/分で240℃まで昇温し、240℃で2時間撹拌した。引き続きその温度を保ったまま、約60分間かけて5Torrまで減圧した後、その減圧状態を維持した。減圧開始から3時間後、密閉型反応器内を窒素ガスで常圧に戻し、生成したポリエステルの質量に対し、PEP36およびAO60をそれぞれ0.2質量%ずつ添加し、5分間撹拌して流動性向上剤を得た。その後、反応器から流動性向上剤を取り出した。得られたポリエステルの数平均分子量は10,200であった。得られたポリエステルを流動性向上剤(II−1)とする。
〔製造例2〕
モノマーとして、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて30:20:50の割合で仕込み、さらに末端封止剤としてp−クミルフェノールをセバシン酸に対して0.2当量加え、モノマーおよび末端封止剤中のフェノール性水酸基に対して1.05当量の無水酢酸を加え、減圧開始から流動性向上剤を取り出すまでの時間を1.5時間にした以外は実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は3,900であり、末端の封止率は90%であった。得られたポリエステルを(II−2)とする。
〔製造例3〕
モノマーとしてビスフェノールA、セバシン酸を、モル比率にて50:50の割合で仕込み、減圧開始から流動性向上剤を取り出すまでの時間を1時間にした以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。得られたポリエステルの数平均分子量は11,000であった。得られたポリエステルを(II−3)とする。
〔実施例1〜3、比較例1〕
芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)、流動性向上剤(II)、光拡散剤(III)およびPEP36とAO60をそれぞれ0.2部ずつ、表1に示す割合(重量部)で配合して二軸押出機に供給し、260℃で溶融混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物の各種物性を合わせて表1に示す。
Figure 2017186446
評価結果から明らかなように、実施例1〜3で得られた芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、流動性が著しく向上し、その光拡散性成形品は、全光線透過率と拡散率のバランスに非常に優れていた。
一方、比較例1で得られた光拡散性芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、流動性向上剤を含んでおらず、充分な流動性が得られなかった。
本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物は、得られる光拡散性成形品の優れた特性(透明性、光拡散性)を損なうことなく、溶融流動性(成形性)が向上している。よって、本発明の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物からなる光拡散性成形品は、透明性、光拡散性等に優れ、かつ大型化、薄肉化(軽量化)、形状複雑化、高性能化が可能であり、特に、大型でかつ薄肉であることが要求される画像表示装置用の光拡散板(例えば、液晶表示装置等のバックライトモジュールに使用される光拡散板、プロジェクションテレビ等の投影型表示装置のスクリーンに使用される光拡散板等)、印刷加工等により表面処理された高機能光拡散フィルム(例えば、液晶表示装置の輝度向上等に利用されている高透過光拡散フィルム等)として好適である。また、本発明の光拡散性成形品は、画像表示装置用の光拡散板、光拡散フィルム以外にも、例えば、電灯カバー、メーター、看板(特に内照式)、樹脂窓ガラス、画像読取装置用の光拡散板、車輌用屋根材、船舶用屋根材、住居用屋根材、太陽電池カバー、電気・電子機器部品、OA機器部品、車両部品、機械部品、農業資材、漁業資材、搬送容器、包装容器、雑貨等として有用であり、産業的価値は極めて高い。

Claims (7)

  1. 芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と流動性向上剤(II)と光拡散剤(III)とを含有し、前記流動性向上剤(II)が
    下記一般式(1)
    Figure 2017186446

    (式中、X〜Xは各々同一であっても異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
    で表されるビフェノール成分(A)0〜55モル%、
    下記一般式(2)
    Figure 2017186446

    (式中、X〜Xは各々同一であっても異なっていてもよい、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基を示す。Yはメチレン基、イソプロピリデン基、環状のアルキリデン基、アリール置換アルキリデン基、アリーレンジアルキリデン基、−S−、−O−、カルボニル基または−SO−を示す。)
    で表されるビスフェノール成分(B)5〜60モル%、
    下記一般式(3)
    HOOC−R−COOH ・・・(3)
    (式中、Rは主鎖原子数2〜18で分岐を含んでいてもよい2価の直鎖状置換基を示す。)
    で表されるジカルボン酸成分(C)40〜60モル%を含むモノマー混合物(ただし上記の(A)、(B)、(C)のモル%は、モノマー(A)、(B)、(C)の合計を100モル%とした場合の数値である)の重縮合物である、芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  2. 芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)の粘度平均分子量が12000〜40000である請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  3. 流動性向上剤(II)の数平均分子量が2000〜30000である、請求項1または2のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  4. 前記流動性向上剤(II)中の(C)成分のRに相当する部分が、直鎖の飽和脂肪族炭化水素鎖である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  5. 前記流動性向上剤(II)の末端が一官能性の低分子化合物で封止され、その封止率が60%以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  6. 芳香族ポリカーボネート系樹脂(I)と流動性向上剤(II)の重量比が70:30〜99.9:0.1である請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6に記載の芳香族ポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる光拡散性成形品。
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CN113088058A (zh) * 2019-12-23 2021-07-09 中石化南京化工研究院有限公司 汽车灯罩用聚碳酸酯基光扩散材料及制备方法
KR20220144946A (ko) * 2021-04-21 2022-10-28 한국화학연구원 하이퍼브랜치 고분자를 포함하는 유동성 개질제 및 이를 포함하여 유동성이 향상된 고분자 조성물
KR20220144945A (ko) * 2021-04-21 2022-10-28 한국화학연구원 선형 고분자를 포함하는 유동성 개질제 및 이를 포함하여 유동성이 향상된 고분자 조성물

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KR102514248B1 (ko) * 2021-04-21 2023-03-24 한국화학연구원 선형 고분자를 포함하는 유동성 개질제 및 이를 포함하여 유동성이 향상된 고분자 조성물

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