以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る複合チップ1の構成を説明するための模式的な斜視図である。
複合チップ1は、図1Aに示すように、共通の基板2上に、本発明のチップ素子の一例としての抵抗器6およびコンデンサ101を搭載したペアチップである。抵抗器6およびコンデンサ101は、その境界領域7に対して左右対称となるように互いに隣り合って配置されている。
複合チップ1は、直方体形状をなしている。複合チップ1の平面形状は、抵抗器6およびコンデンサ101の並び方向(以下、基板2の横方向)に沿う辺(横辺82)および横辺82に直交する辺(縦辺81)を有する四角形である。複合チップ1の平面寸法は、たとえば、長さL(縦辺81の長さ)=約0.3mm、幅W=約0.15mmである03015サイズの抵抗器6およびコンデンサ101の組み合わせによって、0303サイズとされている。むろん、複合チップ1の平面寸法はこれに限るものではなく、たとえば、長さL=約0.4mm、幅W=約0.2mmである0402サイズの素子の組み合わせによって、0404サイズとされていてもよい。また、複合チップ1の厚さTは約0.1mmであり、互いに隣り合う抵抗器6とコンデンサ101との間の境界領域7の幅は約0.03mmであることが好ましい。
複合チップ1は、ウエハ上に多数個の複合チップ1を格子状に形成してから当該ウエハに溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々の複合チップ1に分離することによって得られる。
抵抗器6およびコンデンサ101は、複合チップ1の本体を構成する基板2と、外部接続電極となる第1接続電極3および第2接続電極4と、第1接続電極3および第2接続電極4によって外部接続される素子5とを主に備えている。この実施形態では、第1接続電極3は、抵抗器6およびコンデンサ101に跨るように形成されており、抵抗器6およびコンデンサ101の共通の電極となっている。
基板2は、略直方体のチップ形状である。基板2において図1Aにおける上面をなす一つの表面は、素子形成面2Aである。素子形成面2Aは、基板2において素子5が形成される表面であり、略長方形状である。基板2の厚さ方向において素子形成面2Aとは反対側の面は、裏面2Bである。素子形成面2Aと裏面2Bとは、ほぼ同寸法かつ同形状であり、互いに平行である。素子形成面2Aにおける一対の縦辺81および横辺82によって区画された四角形状の縁を、周縁部85ということにし、裏面2Bにおける一対の縦辺81および横辺82によって区画された四角形状の縁を、周縁部90ということにする。素子形成面2A(裏面2B)に直交する法線方向から見ると、周縁部85と周縁部90とは、重なっている(後述する図1C,D参照)。なお、基板2は、たとえば、裏面2B側からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
基板2は、素子形成面2Aおよび裏面2B以外の表面として、複数の側面(側面2C、側面2D、側面2Eおよび側面2F)を有している。当該複数の側面2C〜2Fは、素子形成面2Aおよび裏面2Bのそれぞれに交差(詳しくは、直交)して延びて、素子形成面2Aおよび裏面2Bの間を繋いでいる。
側面2Cは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける基板2の横方向に直交する縦方向(以下、基板2の縦方向)の一方側(図1Aにおける左手前側)の横辺82間に架設されていて、側面2Dは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける基板2の縦方向の他方側(図1Aにおける右奥側)の横辺82間に架設されている。側面2Cおよび側面2Dは、当該縦方向における基板2の両端面である。
側面2Eは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける基板2の横方向一方側(図1Aにおける左奥側)の縦辺81間に架設されていて、側面2Fは、素子形成面2Aおよび裏面2Bにおける基板2の横方向他方側(図1Aにおける右手前側)の縦辺81間に架設されている。側面2Eおよび側面2Fは、当該横方向における基板2の両端面である。
側面2Cおよび側面2Dのそれぞれは、側面2Eおよび側面2Fのそれぞれと交差(詳しくは、直交)している。そのため、素子形成面2A〜側面2Fにおいて隣り合うもの同士が直角を成している。
基板2では、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fのそれぞれの全域がパッシベーション膜23で覆われている。そのため、厳密には、図1Aでは、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fのそれぞれの全域は、パッシベーション膜23の内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、複合チップ1は、樹脂膜24を有している。
樹脂膜24は、素子形成面2A上のパッシベーション膜23の全域(周縁部85およびその内側領域)を覆っている。パッシベーション膜23および樹脂膜24については、以降で詳説する。
第1接続電極3および第2接続電極4は、基板2の素子形成面2A上において周縁部85を覆うように、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fに跨って形成された周縁部86,87を有している。この実施形態では、周縁部86,87は、基板2の側面2C〜2F同士が交わる各コーナー部11を覆うように形成されている。また、基板2は、各コーナー部11が平面視で面取りされたラウンド形状となっている。これにより、複合チップ1の製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる構造となっている。
第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で素子形成面2A上に積層することによって構成されている。
第1接続電極3は、平面視における4辺をなす1対の長辺3Aおよび短辺3Bを有している。長辺3Aと短辺3Bとは平面視において直交している。第2接続電極4は、平面視における4辺をなす1対の長辺4Aおよび短辺4Bを有している。長辺4Aと短辺4Bとは平面視において直交している。長辺3Aおよび長辺4Aは、基板2の横辺82と平行に延びていて、短辺3Bおよび短辺4Bは、基板2の縦辺81と平行に延びている。また、複合チップ1は、基板2の裏面2Bに電極を有していない。
図1Bは、複合チップ1が実装基板9に実装された状態の回路アセンブリ100の模式的な断面図である。図1Cは、回路アセンブリ100を複合チップ1の裏面2B側から見た模式的な平面図である。図1Dは、回路アセンブリ100を複合チップ1の素子形成面2A側から見た模式的な平面図である。なお、図1B〜図1Dでは、要部のみ示している。
図1B〜図1Dに示すように、複合チップ1は、実装基板9に実装される。この状態における複合チップ1および実装基板9は、回路アセンブリ100を構成している。
図1Bに示すように、実装基板9の上面は、実装面9Aである。実装面9Aには、複合チップ1用の実装領域89が区画されている。実装領域89は、この実施形態では、図1Cおよび図1Dに示すように、平面視正方形状に形成されており、ランド88が配置されたランド領域92と、ランド領域92を取り囲むソルダレジスト領域93とを含む。
ランド領域92は、たとえば、複合チップ1が03015サイズの抵抗器6およびコンデンサ101を一つずつ備えるペアチップである場合、410μm×410μmの平面サイズを有する四角形(正方形)状である。つまり、ランド領域92の一辺の長さL1=410μmである。一方、ソルダレジスト領域93は、そのランド領域92を縁取るように、たとえば幅L2が25μmの四角環状に形成されている。
ランド88は、ランド領域92の四隅に一つずつ、合計4つ配置されている。この実施形態では、各ランド88は、ランド領域92を区画する各辺から一定の間隔を空けた位置に設けられている。たとえば、ランド領域92の各辺から各ランド88までの間隔は、25μmである。また、互いに隣り合うランド88の間には、80μmの間隔が設けられている。各ランド88は、たとえばCuからなり、実装基板9の内部回路(図示せず)に接続されている。各ランド88の表面には、図1Bに示すように、半田13が当該表面から突出するように設けられている。
複合チップ1を実装基板9に実装する場合、図1Bに示すように、自動実装機(図示せず)の吸着ノズル91を複合チップ1の裏面2Bに吸着してから吸着ノズル91を動かすことによって、複合チップ1を搬送する。このとき、吸着ノズル91は、裏面2Bにおける基板2の縦方向略中央部分に吸着する。前述したように、第1接続電極3および第2接続電極4は、複合チップ1の片面(素子形成面2A)および側面2C〜2Fにおける素子形成面2A側の端部だけに設けられていることから、複合チップ1において裏面2Bは、電極(凹凸)がない平坦面となる。よって、吸着ノズル91を複合チップ1に吸着して移動させる場合に、平坦な裏面2Bに吸着ノズル91を吸着させることができる。換言すれば、平坦な裏面2Bであれば、吸着ノズル91が吸着できる部分のマージンを増やすことができる。これによって、吸着ノズル91を複合チップ1に確実に吸着させ、複合チップ1を途中で吸着ノズル91から脱落させることなく確実に搬送できる。
また、複合チップ1が抵抗器6およびコンデンサ101を一対備えるペアチップであるため、抵抗器もしくはコンデンサを一つだけ搭載した単品チップを2回マウントする場合に比べて、同じ機能を有するチップ部品を1回のマウント作業で実装できる。さらに、単品チップに比べて、チップ一つ当たりの裏面面積を抵抗器もしくはコンデンサ2つ分以上に大きくできるので、吸着ノズル91による吸着動作を安定させることができる。
そして、複合チップ1を吸着した吸着ノズル91を実装基板9まで移動させる。このとき、複合チップ1の素子形成面2Aと実装基板9の実装面9Aとが互いに対向する。この状態で、吸着ノズル91を移動させて実装基板9に押し付け、複合チップ1において、第1接続電極3および第2接続電極4を、各ランド88の半田13に接触させる。
次に、半田13を加熱すると、半田13が溶融する。その後、半田13が冷却されて固まると、第1接続電極3および第2接続電極4と、ランド88とが半田13を介して接合する。つまり、各ランド88が、第1接続電極3および第2接続電極4において対応する電極に半田接合される。これにより、実装基板9への複合チップ1の実装(フリップチップ接続)が完了して、回路アセンブリ100が完成する。
完成状態の回路アセンブリ100では、複合チップ1の素子形成面2Aと実装基板9の実装面9Aとが、隙間を隔てて対向しつつ、平行に延びている。当該隙間の寸法は、第1接続電極3または第2接続電極4において素子形成面2Aから突き出た部分の厚みと半田13の厚さとの合計に相当する。
この回路アセンブリ100では、第1接続電極3および第2接続電極4の周縁部86,87が、基板2の素子形成面2Aおよび側面2C〜2F(図1Bでは、側面2C,2Dのみ図示)に跨って形成されている。そのため、複合チップ1を実装基板9に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、第1接続電極3および第2接続電極4に対する半田13の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。
また、実装状態において、少なくとも基板2の素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fの二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品1の実装形状を安定させることができる。しかも、実装基板9へ実装後のチップ部品1を4つのランド88によって四点支持できるため、実装形状を一層安定させることができる。
また、複合チップ1が、03015サイズの抵抗器6およびコンデンサ101を一対備えるペアチップである。そのため、複合チップ1用の実装領域89の面積を、従来に比べて大幅に縮小できる。
たとえば、この実施形態では、実装領域89の面積は、図1Cを参照して、L3×L3=(L2+L1+L2)×(L2+L1+L2)=(25+410+25)×(25+410+25)=211600μm2で済む。
一方、図1Eに示すように、従来作製可能な最小サイズである0402サイズの単品チップ300を2つ実装基板9の実装面9Aに実装する場合には、319000μm2の実装領域301が必要であった。これから、この実施形態の実装領域89と、従来の実装領域301との面積を比較すると、この実施形態の構成では、約34%も実装面積を縮小できることが分かる。
なお、図1Eの実装領域301の面積は、ランド304が配置された各単品チップ300の実装エリア302の横幅L4=250μm、隣り合う実装エリア302の間隔L5=30μm、実装領域301の外周を構成するソルダレジスト領域303の幅L6=25μm、および実装エリア302の長さL7=500μmに基づき、(L6+L4+L5+L4+L6)×(L6+L7+L6)=(25+250+30+250+25)×(25+500+25)=319000μm2として算出した。
次に、図2〜図9を参照して抵抗器6の構成をより詳細に説明した後、図10〜図13を参照してコンデンサ101の構成をより詳細に説明する。
図2は、複合チップ1の抵抗器6の平面図であり、第1接続電極3、第2接続電極4および素子5の配置関係ならびに素子5の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図2を参照して、素子5は、回路素子であって、基板2の素子形成面2Aにおける第1接続電極3と第2接続電極4との間の領域に形成されていて、パッシベーション膜23および樹脂膜24によって上から被覆されている。抵抗器6において素子5は、抵抗である。
抵抗器6の素子5(抵抗)は、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを素子形成面2A上でマトリックス状に配列した抵抗回路網となっている。具体的に、素子5は、行方向(基板2の縦方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板2の横方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子5の抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板2の素子形成面2Aには、抵抗回路を素子5に対して電気的に組み込んだり、または、素子5から電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズFが設けられている。
複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第1接続電極3の内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第1接続電極3に対してそれぞれ切断可能(切り離し可能)に接続している。
図3Aは、図2に示す素子5の一部分を拡大して描いた平面図である。図3Bは、素子5における抵抗体Rの構成を説明するために描いた図3AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図3Cは、素子5における抵抗体Rの構成を説明するために描いた図3AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図3A、図3Bおよび図3Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
複合チップ1の抵抗器6は、前述した配線膜22、パッシベーション膜23および樹脂膜24の他に、絶縁膜20と抵抗体膜21とをさらに備えている(図3Bおよび図3C参照)。絶縁膜20、抵抗体膜21、配線膜22、パッシベーション膜23および樹脂膜24は、基板2(素子形成面2A)上に形成されている。
絶縁膜20は、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁膜20は、抵抗器6とコンデンサ101の境界領域7(図1A参照)を含む基板2の素子形成面2Aの全域を覆っている。絶縁膜20の厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜21は、絶縁膜20上に形成されている。抵抗体膜21は、TiN、TiONまたはTiSiONで形成されている。抵抗体膜21の厚さは、約2000Åである。抵抗体膜21は、第1接続電極3と第2接続電極4との間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン21A」という)を構成していて、抵抗体膜ライン21Aは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図3A参照)。
抵抗体膜ライン21A上には、配線膜22が積層されている。配線膜22は、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜22の厚さは、約8000Åである。配線膜22は、抵抗体膜ライン21A上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ライン21Aに接している。
この構成の抵抗体膜ライン21Aおよび配線膜22の電気的特徴を回路記号で示すと、図4の通りである。すなわち、図4(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ライン21A部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜22が積層された領域では、配線膜22が隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜22で抵抗体膜ライン21Aが短絡されている。よって、図4(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ライン21A同士は抵抗体膜21および配線膜22で接続されているから、図3Aに示す素子5の抵抗回路網は、図4(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜21および配線膜22は、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子5)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ライン21A(抵抗体膜21)と、抵抗体膜ライン21A上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜22とを含み、配線膜22が積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ライン21Aが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ライン21Aは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板2上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ライン21A上に積層された配線膜22は、抵抗体Rを形成すると共に、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図2参照)。
図5(a)は、図2に示す抵抗器6の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズFを含む領域の部分拡大平面図であり、図5(b)は、図5(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図5(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜21上に積層された配線膜22で形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライン21A上に積層された配線膜22と同じレイヤーに、配線膜22と同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜22は、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜21上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子5を第1接続電極3および第2接続電極4に接続するための配線膜が、配線膜22として、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜22と異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜22において、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図2および図5(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第1接続電極3の内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜22の下方にも抵抗体膜21が形成されている(図5(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜22において、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜22の一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜21)の一部と抵抗体膜21上の配線膜22の一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図6は、抵抗器6の素子5の一実施形態に係る電気回路図である。
図6を参照して、素子5は、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極3からこの順番で直列接続することによって構成されている。
基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図7および図8においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図5(a)参照)を介して直列に接続されている。
図6に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子5は、第1接続電極3および第2接続電極4間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)で第1接続電極3および第2接続電極4が接続された抵抗器6が構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFによって短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子5に組み込まれてはいない。
この実施形態に係る抵抗器6では、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。これにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子5に組み込まれることになる。よって、素子5の全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することによって、素子5(抵抗)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、各抵抗器6において所望の値の抵抗を発生させることができる。
図7は、抵抗器6の素子5の他の実施形態に係る電気回路図である。
図6に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子5を構成する代わりに、図7に示すように素子5を構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極3および第2接続電極4の間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子5を構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子5に対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子5から電気的に分離されるので、各抵抗器6全体の抵抗値を調整できる。
図8は、抵抗器6の素子5のさらに他の実施形態に係る電気回路図である。
図8に示す素子5の特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。したがって、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子5に電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。したがって、ヒューズFを溶断することによって、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり各抵抗器6では、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することによって、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値の抵抗器6を共通の設計で実現できる。
以上のように、この複合チップ1では、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図9は、抵抗器6の模式的な断面図である。
次に、図9を参照して、抵抗器6についてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図9では、前述した素子5については簡略化して示していると共に、基板2以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述した絶縁膜20、パッシベーション膜23および樹脂膜24について説明する。
絶縁膜20は、前述したように、基板2の素子形成面2Aの全域を覆っている。
パッシベーション膜23は、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。パッシベーション膜23は、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fのそれぞれにおけるほぼ全域に亘って設けられている。素子形成面2A上のパッシベーション膜23は、図9に示すように、抵抗体膜21および抵抗体膜21上の各配線膜22(つまり、素子5)を表面(図9の上側)から被覆していて、素子5における各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、パッシベーション膜23は、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜22も覆っている(図5(b)参照)。また、パッシベーション膜23は、素子5(配線膜22および抵抗体膜21)に接しており、抵抗体膜21以外の領域では絶縁膜20にも接している。また、パッシベーション膜23は、境界領域7をも覆っている。これにより、素子形成面2A上のパッシベーション膜23は、素子形成面2A全域を覆って素子5および絶縁膜20を保護する保護膜として機能している。また、素子形成面2Aでは、パッシベーション膜23によって、抵抗体R間における配線膜22以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ライン21A間における短絡)が防止されている。
一方、側面2C〜2Fのそれぞれに設けられたパッシベーション膜23は、第1接続電極3および第2接続電極4の側面部分と基板2の側面2C〜2Fとの間に介在されており、側面2C〜2Fのそれぞれを保護する保護層として機能している。これにより、第1接続電極3および第2接続電極4と基板2とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。なお、パッシベーション膜23は極めて薄い膜なので、この実施形態では、側面2C〜2Fのそれぞれを覆うパッシベーション膜23を、基板2の一部とみなすことにする。そのため、側面2C〜2Fのそれぞれを覆うパッシベーション膜23を、側面2C〜2Fそのものとみなすことにしている。
樹脂膜24は、パッシベーション膜23と共に複合チップ1の素子形成面2Aを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜24の厚みは、約5μmである。
樹脂膜24は、図9に示すように、素子形成面2A上のパッシベーション膜23の表面(パッシベーション膜23に被覆された抵抗体膜21および配線膜22、ならびに境界領域7も含む)の全域を被覆している。
樹脂膜24には、抵抗器6において、配線膜22における第1接続電極3および第2接続電極4の側面部分に対向する周縁部を露出させる切欠部25が1つずつ形成されている。各切欠部25は、樹脂膜24およびパッシベーション膜23を、それぞれの厚さ方向において連続して貫通している。そのため、切欠部25は、樹脂膜24だけでなくパッシベーション膜23にも形成されている。これにより、各配線膜22は、素子5に近い内側の周縁部、およびコンデンサ101に対向する周縁部が樹脂膜24によって選択的に覆われており、その他の、基板2の周縁部85に沿う周縁部が切欠部25を介して選択的に露出している。配線膜22において各切欠部25から露出された表面は、外部接続用のパッド領域22Aとなっている。
また、切欠部25から露出する配線膜22は、素子形成面2Aにおいて基板2の周縁部85から内方へ所定の間隔(たとえば、3μm〜6μm)離れて配置されている。また、切欠部25の側面には、絶縁膜26が全体的に形成されている。
抵抗器6において2つの切欠部25のうち、一方の切欠部25は、第1接続電極3によって埋め尽くされ、他方の切欠部25は、第2接続電極4によって埋め尽くされている。この第1接続電極3および第2接続電極4は、前述したように、素子形成面2Aに加えて側面2C〜2Fも覆う周縁部86,87を有している。また、第1接続電極3および第2接続電極4は、樹脂膜24から突出するように形成されていると共に、樹脂膜24の表面に沿って基板2の素子5側および境界領域7側へ引き出された引き出し部27を有している。
ここで、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、Ni層33、Pd層34およびAu層35を素子形成面2A側および側面2C〜2F側からこの順で有している。すなわち、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、素子形成面2A上の領域だけでなく、側面2C〜2F上の領域においても、Ni層33、Pd層34およびAu層35からなる積層構造を有している。そのため、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれにおいて、Ni層33とAu層35との間にPd層34が介装されている。第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれにおいて、Ni層33は各接続電極の大部分を占めており、Pd層34およびAu層35は、Ni層33に比べて格段に薄く形成されている。Ni層33は、複合チップ1が実装基板9に実装された際に(図1B〜図1D参照)、各切欠部25のパッド領域22Aにおける配線膜22のAlと、前述した半田13とを中継する役割を有している。
このように、第1接続電極3および第2接続電極4では、Ni層33の表面がAu層35によって覆われているので、Ni層33が酸化することを防止できる。また、第1接続電極3および第2接続電極4では、Au層35を薄くすることによってAu層35に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層33とAu層35との間に介装されたPd層34が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層33が外部に露出されて酸化することを防止できる。
そして、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれでは、Au層35が、最表面に露出している。第1接続電極3は、一方の切欠部25を介して、この切欠部25におけるパッド領域22Aにおいて配線膜22に対して電気的に接続されている。第2接続電極4は、他方の切欠部25を介して、この切欠部25におけるパッド領域22Aにおいて配線膜22に対して電気的に接続されている。第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれでは、Ni層33がパッド領域22Aに対して接続されている。これにより、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれは、素子5に対して電気的に接続されている。ここで、配線膜22は、抵抗体Rのまとまり、第1接続電極3および第2接続電極4のそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、切欠部25が形成された樹脂膜24およびパッシベーション膜23は、切欠部25から第1接続電極3および第2接続電極4を露出させた状態で素子形成面2Aを覆っている。そのため、樹脂膜24の表面において切欠部25からはみ出した(突出した)第1接続電極3および第2接続電極4を介して、複合チップ1と実装基板9との間における電気的接続を達成できる(図1B〜図1D参照)。
図10は、複合チップ1のコンデンサ101の平面図であり、第1接続電極3、第2接続電極4および素子5の配置関係ならびに素子5の平面視の構成を示す図である。図11は、コンデンサ101の模式的な断面図であり、図10のXI−XIに沿う断面構造を示す図である。図12は、コンデンサ101の一部の構成を分離して示す分解斜視図である。これから述べるコンデンサ101において、前述した抵抗器6で説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。
コンデンサ101は、基板2と、基板2上(基板2の素子形成面2A側)に配置された第1接続電極3と、同じく基板2上に配置された第2接続電極4とを備えている。
コンデンサ101では、抵抗器6と同様に、第1接続電極3および第2接続電極4は、基板2の素子形成面2A上において周縁部85を覆うように、素子形成面2Aおよび側面2C〜2Fに跨って形成された周縁部86,87を有している。
基板2の素子形成面2Aには、第1接続電極3および第2接続電極4の間のキャパシタ配置領域105内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が形成されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、コンデンサ101の素子5(ここでは、キャパシタ素子)を構成する複数の素子要素であり、第1接続電極3および第2接続電極4の間に接続されている。詳しくは、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、複数のヒューズユニット107(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極4に対して切り離し可能となるように電気的に接続されている。
図11および図12に示されているように、基板2の素子形成面2Aには絶縁膜20が形成されていて、絶縁膜20の表面に下部電極膜111が形成されている。下部電極膜111は、キャパシタ配置領域105のほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜111は、第1接続電極3の直下の領域にまで延びて形成されている。
より具体的には、下部電極膜111は、キャパシタ配置領域105においてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域111Aと、第2接続電極4の直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域111Bとを有している。キャパシタ電極領域111Aがキャパシタ配置領域105に位置していて、パッド領域111Bが第2接続電極4の直下に位置して第2接続電極4に接触している。
キャパシタ配置領域105において下部電極膜111(キャパシタ電極領域111A)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)112が形成されている。容量膜112は、キャパシタ電極領域111A(キャパシタ配置領域105)の全域にわたって形成されている。容量膜112は、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域105外の絶縁膜20を覆っている。
容量膜112の上には、上部電極膜113が形成されている。図10では、明瞭化のために、上部電極膜113を着色して示してある。上部電極膜113は、キャパシタ配置領域105に位置するキャパシタ電極領域113Aと、第1接続電極3の直下に位置して第1接続電極3に接触するパッド領域113Bと、キャパシタ電極領域113Aとパッド領域113Bとの間に配置されたヒューズ領域113Cとを有している。
キャパシタ電極領域113Aにおいて、上部電極膜113は、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)131〜139に分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分131〜139は、いずれも四角形状に形成されていて、ヒューズ領域113Cから第2接続電極4に向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分131〜139は、複数種類の対向面積で、容量膜112を挟んで(容量膜112に接しつつ)下部電極膜111に対向している。より具体的には、電極膜部分131〜139の下部電極膜111に対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分131〜139は、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分131〜138(または131〜137,139)を含む。これによって、各電極膜部分131〜139と容量膜112を挟んで対向する下部電極膜111とによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。
電極膜部分131〜139の対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分131〜135は、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分135,136,137,138,139は、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分135〜139は、キャパシタ配置領域105の第1接続電極3側の端縁から第2接続電極4側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分131〜134は、それよりも短く形成されている。
パッド領域113Bは、ほぼ四角形の平面形状を有している。図11に示すように、パッド領域113Bにおける上部電極膜113は、第1接続電極3に接している。
ヒューズ領域113Cは、基板2上において、パッド領域113Bの一つの長辺(基板2の周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域113Cは、パッド領域113Bの前記一つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニット107を含む。
ヒューズユニット107は、上部電極膜113のパッド領域113Bと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分131〜139は、1つまたは複数個のヒューズユニット107と一体的に形成されていて、それらのヒューズユニット107を介してパッド領域113Bに接続され、このパッド領域113Bを介して第1接続電極3に電気的に接続されている。
図10に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分131〜136は、一つのヒューズユニット107によってパッド領域113Bに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分137〜139は複数個のヒューズユニット107を介してパッド領域113Bに接続されている。全てのヒューズユニット107が用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニット107は未使用である。
ヒューズユニット107は、パッド領域113Bとの接続のための第1幅広部107Aと、電極膜部分131〜139との接続のための第2幅広部107Bと、第1および第2幅広部107A,7Bの間を接続する幅狭部107Cとを含む。幅狭部107Cは、レーザ光によって切断(溶断)できるように構成されている。それによって、電極膜部分131〜139のうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニット107の切断によって第1および第2接続電極3,4から電気的に切り離すことができる。
図10および図12では図示を省略したが、図11に表れている通り、上部電極膜113の表面を含むコンデンサ101の表面は、前述したパッシベーション膜23によって覆われている。パッシベーション膜23は、たとえば窒化膜からなっていて、コンデンサ101の上面のみならず、基板2の側面2C〜2Fまで延びて、側面2C〜2Fの全域をも覆うように形成されている。側面2C〜2Fにおいては、基板2と第1接続電極3および第2接続電極4との間に介在されている。さらに、パッシベーション膜23の上には、前述した樹脂膜24が形成されている。樹脂膜24は、素子形成面2Aを覆っている。
パッシベーション膜23および樹脂膜24は、コンデンサ101の表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極3および第2接続電極4に対応する領域に、前述した切欠部25がそれぞれ形成されている。切欠部25は、パッシベーション膜23および樹脂膜24を貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極3に対応した切欠部25は、容量膜112をも貫通している。
切欠部25には、第1接続電極3および第2接続電極4がそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極3は上部電極膜113のパッド領域113Bに接合しており、第2接続電極4は下部電極膜111のパッド領域111Bに接合している。第1および第2接続電極3,4は、樹脂膜24の表面から突出すると共に、樹脂膜24の表面に沿って基板2の内方(素子5側)へ引き出された引き出し部27を有している。
図13は、コンデンサ101の内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極3と第2接続電極4との間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極4との間には、一つまたは複数のヒューズユニット107でそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、各コンデンサ101の容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけコンデンサ101の容量値が減少する。
そこで、パッド領域111B,113Bの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でコンデンサ101の容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のコンデンサ101を提供できる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極3および第2接続電極4の間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することによって、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるコンデンサ101を共通の設計で実現できる。
コンデンサ101の各部の詳細について以下に説明を加える。
下部電極膜111は、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜111は、スパッタ法によって形成できる。上部電極膜113も同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜113は、スパッタ法によって形成できる。上部電極膜113のキャパシタ電極領域113Aを電極膜部分131〜139に分割し、さらに、ヒューズ領域113Cを複数のヒューズユニット107に整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜112は、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜112は、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
図14A〜図14Iは、図1Aに示す複合チップ1の製造方法の一部を工程順に示す図解的な断面図である。なお、図14A〜図14Iでは、図9に対応する抵抗器6の断面構造のみを示している。
複合チップ1の製造工程では、たとえば、まずコンデンサ101の素子5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニット107)が形成された後、抵抗器6の素子5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜22)が形成される。
具体的には、図14Aに示すように、基板2の元となるウエハ30を用意する。この場合、ウエハ30の表面30Aは、基板2の素子形成面2Aであり、ウエハ30の裏面30Bは、基板2の裏面2Bである。
次に、ウエハ30の表面30Aを熱酸化することによって、表面30Aの抵抗器6およびコンデンサ101を形成すべき領域の両方に、SiO2等からなる絶縁膜20が形成される。
次に、たとえばスパッタ法によって、図11に示すように、アルミニウム膜からなる下部電極膜111が絶縁膜20の表面全域に形成される。下部電極膜111の膜厚は8000Å程度とされてもよい。
次に、その下部電極膜111の表面に、下部電極膜111の最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることによって、図10等に示したパターンの下部電極膜111が得られる。下部電極膜111のエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、図11に示すように、窒化シリコン膜等からなる容量膜112が、下部電極膜111上に形成される。下部電極膜111が形成されていない領域では、絶縁膜20の表面に容量膜112が形成されることになる。
次に、その容量膜112の上に、上部電極膜113が形成される。上部電極膜113は、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。
次に、上部電極膜113の表面に上部電極膜113の最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングによって、上部電極膜113が、最終形状(図10等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜113は、キャパシタ電極領域113Aに複数の電極膜部分131〜139に分割された部分を有し、ヒューズ領域113Cに複数のヒューズユニット107を有し、それらのヒューズユニット107に接続されたパッド領域113Bを有するパターンに整形される。上部電極膜113のパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウエットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、コンデンサ101における素子5(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニット107)が形成される。
次に、図14Aに示すように、絶縁膜20上に素子5(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜22)が形成される。
具体的には、スパッタリングによって、まず、絶縁膜20の上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜21が全面に形成され、さらに、抵抗体膜21に接するように抵抗体膜21の上にアルミニウム(Al)の配線膜22が積層される。
その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングによって、抵抗体膜21および配線膜22を選択的に除去してパターニングすることによって、図3Aに示すように、平面視で、抵抗体膜21が積層された一定幅の抵抗体膜ライン21Aが一定間隔をあけて列方向に配列される構成が得られる。このとき、部分的に抵抗体膜ライン21Aおよび配線膜22が切断された領域も形成されると共に、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図2参照)。
次に、たとえばウエットエッチングによって、抵抗体膜ライン21Aの上に積層された配線膜22が選択的に除去される。その結果、抵抗体膜ライン21A上に一定間隔Rをあけて配線膜22が積層された構成の素子5が得られる。この際、抵抗体膜21および配線膜22が目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子5全体の抵抗値を測定してもよい。
ここで、抵抗器6およびコンデンサ101の素子5は、1枚のウエハ30に形成する複合チップ1の数に応じて、ウエハ30の表面30A上における多数の箇所に形成される。ウエハ30において抵抗器6およびコンデンサ101の素子5が一つずつ隣り合って形成された1つの領域をチップ部品領域Yというと、ウエハ30の表面30Aには、抵抗器6の素子(抵抗)およびコンデンサ101の素子(キャパシタ)をそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子5)が形成(設定)される。
1つのチップ部品領域Yは、完成した1つの複合チップ1を平面視したものと一致する。そして、ウエハ30の表面30Aにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、ウエハ30では多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果として複合チップ1の大量生産が可能になる。
次に、図14Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜45が、ウエハ30の表面30Aの全域に亘って形成される。絶縁膜45は、絶縁膜20および絶縁膜20上の素子5(ヒューズユニット107、抵抗体膜21、配線膜22等)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜45は、抵抗器6において前述したトリミング対象領域X(図2参照)における配線膜22も覆っている。
また、絶縁膜45は、ウエハ30の表面30Aにおいて全域に亘って形成されることから、表面30Aにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜45は、表面30A(表面30A上の素子5も含む)全域を保護する保護膜となる。
次に、図14Bに示すように、マスク65を用いたエッチングによって、絶縁膜45が選択的に除去される。これにより、抵抗器6においては絶縁膜45の一部に開口28が形成され、その開口28において各パッド領域22Aが露出する。1つの複合チップ1の半製品50につき、開口28は抵抗器6に2つずつ形成される。一方、コンデンサ101についても同様に、絶縁膜45の一部に開口が形成されることによって、パッド領域111B,113Bが露出する。
次の工程は、抵抗器6およびコンデンサ101のトリミング工程である。
まず、抵抗器6において、抵抗測定装置(図示せず)のプローブ70を各開口28のパッド領域22Aに接触させることによって、素子5の全体の抵抗値が検出される。そして、絶縁膜45越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図2参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜22がレーザ光でトリミングされて、当該ヒューズFが溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品50(換言すれば、各複合チップ1の抵抗器6)全体の抵抗値を調整できる。
次に、コンデンサ101において素子5全体の総容量値が検出された後、ヒューズユニット107を溶断するためのレーザトリミングが行われる(図14B参照)。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニット107にレーザ光が当てられて、そのヒューズユニット107の幅狭部107C(図10参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域113Bから切り離される。
抵抗器6およびコンデンサ11の素子5のトリミングの際、絶縁膜45が素子5を覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子5に付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜45がヒューズF(抵抗体膜21)およびヒューズユニット107を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFおよびヒューズユニット107に蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。
その後、必要に応じて、CVD法によって絶縁膜45上にSiNが形成され、絶縁膜45が厚くされる。最終的な絶縁膜45(図14Cに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜45の一部は、各開口28に入り込んで開口28を塞いでいる。
次に、図14Cに示すように、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体が、ウエハ30に対して、絶縁膜45の上からスプレー塗布されて、感光性樹脂の樹脂膜46が形成される。表面30A上の樹脂膜46の表面は、表面30Aに沿って平坦になっている。次に、樹脂膜46に熱処理(キュア処理)が施される。これにより、樹脂膜46の厚みが熱収縮すると共に、樹脂膜46が硬化して膜質が安定する。
次に、図14Dに示すように、樹脂膜46、絶縁膜45および絶縁膜20をパターニングすることによって、これらの膜の切欠部25と一致する部分が選択的に除去される。これにより、切欠部25が形成されると共に、境界領域Zにおいては表面30A(絶縁膜20)が露出することになる。
次に、図14Eに示すように、ウエハ30の表面30Aの全域に亘ってレジストパターン41が形成される。レジストパターン41には、開口42が形成されている。
図15は、図14Eの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図15を参照して、レジストパターン41の開口42は、多数の複合チップ1(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合う複合チップ1の輪郭の間の領域(図15においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口42の全体形状は、互いに直交する直線部分42Aおよび42Bを複数有する格子状になっている。
レジストパターン41では、チップ部品領域Yの四隅に接する位置に、チップ部品領域Yの外側に凸の湾曲形状のラウンド形状部43を有している。ラウンド形状部43は、チップ部品領域Yの隣接する二つの辺を滑らかな曲線で接続するように形成されている。したがって、このレジストパターン41をマスクとして行うプラズマエッチングによって溝44(後述)を形成すると、溝44は、チップ部品領域Yの四隅に接する位置に、チップ部品領域Yの外側に凸の湾曲形状のラウンド形状部を有することになる。したがって、チップ部品領域Yをウエハ30から切り出すための溝44を形成する工程において、同時に、チップ部品1のコーナー部11をラウンド形状に整形できる。すなわち、専用の工程を追加することなく、コーナー部11をラウンド形状に加工できる。
図14Eを参照して、レジストパターン41をマスクとするプラズマエッチングによって、ウエハ30が選択的に除去される。これにより、隣り合うチップ部品領域Yの間の境界領域Zにおける配線膜22から間隔を空けた位置でウエハ30の材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターン41の開口42と一致する位置(境界領域Z)には、ウエハ30の表面30Aからウエハ30の厚さ途中まで到達する所定深さの溝44が形成される。
溝44は、互いに対向する1対の側壁44Aと、当該1対の側壁44Aの下端(ウエハ30の裏面30B側の端)の間を結ぶ底壁44Bとによって区画されている。ウエハ30の表面30Aを基準とした溝44の深さは約100μmであり、溝44の幅(対向する側壁44Aの間隔)は約20μmであって、深さ方向全域に渡って一定である。
ウエハ30における溝44の全体形状は、平面視でレジストパターン41の開口42(図11参照)と一致する格子状になっている。そして、ウエハ30の表面30Aでは、各素子5が形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝44における四角形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。ウエハ30において素子5が形成された部分は、複合チップ1の半製品50である。ウエハ30の表面30Aでは、溝44に取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品50が1つずつ位置していて、これらの半製品50は、行列状に整列配置されている。
このように溝44を形成することによって、ウエハ30が、複数のチップ部品領域Y毎の基板2に分離される。溝44が形成された後、レジストパターン41が除去される。
次に、図14Fに示すように、CVD法によって、SiNからなる絶縁膜47が、ウエハ30の表面30Aの全域に亘って形成される。このとき、溝44の内周面(前述した側壁44Aの区画面44Cや底壁44Bの上面)の全域にも絶縁膜47が形成される。
次に、図14Gに示すように、絶縁膜47が選択的にエッチングされる。具体的には、絶縁膜47における表面30Aに平行な部分が選択的にエッチングされる。これにより、配線膜22のパッド領域22Aが露出すると共に、溝44においては、底壁44B上の絶縁膜47が除去される。
次に、無電解めっきによって、各切欠部25から露出した配線膜22からNi、PdおよびAuを順にめっき成長させる。めっきは、各めっき膜が表面30Aに沿う横方向に成長し、溝44の側壁44A上の絶縁膜47を覆うまで続けられる。これにより、図14Hに示すように、Ni/Pd/Au積層膜からなる第1接続電極3および第2接続電極4が形成される。
図16は、第1接続電極3および第2接続電極4の製造工程を説明するための図である。
詳しくは、図16を参照して、まず、パッド領域22Aおよびパッド領域111B,113Bの表面が浄化されることで、当該表面の有機物(炭素のしみ等のスマットや油脂性の汚れも含む)が除去(脱脂)される(ステップS1)。
次に、当該表面の酸化膜が除去される(ステップS2)。次に、当該表面においてジンケート処理が実施されて、当該表面における(配線膜22、下部電極膜111および上部電極膜113の)AlがZnに置換される(ステップS3)。
次に、当該表面上のZnが硝酸等で剥離されて、パッド領域22Aおよびパッド領域111B,113Bでは、新しいAlが露出される(ステップS4)。
次に、パッド領域22Aおよびパッド領域111B,113Bをめっき液に浸けることによって、パッド領域22Aおよびパッド領域111B,113Bにおける新しいAlの表面にNiめっきが施される。これにより、めっき液中のNiが化学的に還元析出されて、当該表面にNi層33が形成される(ステップS5)。
次に、Ni層33を別のめっき液に浸けることによって、当該Ni層33の表面にPdめっきが施される。これにより、めっき液中のPdが化学的に還元析出されて、当該Ni層33の表面にPd層34が形成される(ステップS6)。
次に、Pd層34をさらに別のめっき液に浸けることによって、当該Pd層34の表面にAuめっきが施される。これにより、めっき液中のAuが化学的に還元析出されて、当該Pd層34の表面にAu層35が形成される(ステップS7)。
これによって、第1接続電極3および第2接続電極4が形成され、形成後の第1接続電極3および第2接続電極4を乾燥させると(ステップS8)、第1接続電極3および第2接続電極4の製造工程が完了する。なお、前後するステップの間には、半製品50を水で洗浄する工程が適宜実施される。また、ジンケート処理は複数回実施されてもよい。
図14Hでは、各半製品50において第1接続電極3および第2接続電極4が形成された後の状態を示している。
以上のように、第1接続電極3および第2接続電極4を無電解めっきによって形成するので、電極材料であるNi,PdおよびAlを絶縁膜47上にも良好にめっき成長させることができる。また、第1接続電極3および第2接続電極4を電解めっきによって形成する場合に比べて、第1接続電極3および第2接続電極4についての形成工程の工程数(たとえば、電解めっきで必要となるリソグラフィ工程やレジストマスクの剥離工程等)を削減して複合チップ1の生産性を向上できる。さらに、無電解めっきの場合には、電解めっきで必要とされるレジストマスクが不要であることから、レジストマスクの位置ずれによる第1接続電極3および第2接続電極4についての形成位置にずれが生じないので、第1接続電極3および第2接続電極4の形成位置精度を向上して歩留まりを向上できる。
また、この方法では、配線膜22下部電極膜111および上部電極膜113が切欠部25から露出していて、配線膜22下部電極膜111および上部電極膜113から溝44までめっき成長の妨げになるものが無い。そのため、配線膜22下部電極膜111および上部電極膜113から溝44まで直線的にめっき成長させることができる。その結果、電極の形成にかかる時間の短縮を図ることができる。
このように第1接続電極3および第2接続電極4が形成されてから、第1接続電極3および第2接続電極4間での通電検査が行われた後に、ウエハ30が裏面30Bから研削される。
具体的には、溝44の形成後、図14Iに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面72を有する支持テープ71が、粘着面72において、各半製品50における第1接続電極3および第2接続電極4側(つまり、表面30A)に貼着される。これにより、各半製品50が支持テープ71に支持される。ここで、支持テープ71として、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品50が支持テープ71に支持された状態で、ウエハ30が裏面30B側から研削される。研削によって、溝44の底壁44B(図14H参照)の上面に達するまでウエハ30が薄型化されると、隣り合う半製品50を連結するものがなくなるので、溝44を境界としてウエハ30が分割され、半製品50が個別に分離して複合チップ1の完成品となる。
つまり、溝44(換言すれば、境界領域Z)においてウエハ30が切断(分断)され、これによって、個々の複合チップ1が切り出される。なお、ウエハ30を裏面30B側から溝44の底壁44Bまでエッチングすることによって複合チップ1を切り出しても構わない。
完成した各複合チップ1では、溝44の側壁44Aの区画面44Cをなしていた部分が、基板2の側面2C〜2Fのいずれかとなり、裏面30Bが裏面2Bとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝44を形成する工程(図14E参照)は、側面2C〜2Fを形成する工程に含まれる。また、絶縁膜45および絶縁膜47の一部がパッシベーション膜23となり、樹脂膜46が樹脂膜24となり、絶縁膜47の一部が絶縁膜26となる。
以上のように、溝44を形成してからウエハ30を裏面30B側から研削すれば、ウエハ30に形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々の複合チップ1(チップ部品)に分割できる(複数の複合チップ1の個片を一度に得ることができる)。よって、複数の複合チップ1の製造時間の短縮によって複合チップ1の生産性の向上を図ることができる。
なお、完成した複合チップ1における基板2の裏面2Bを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面2Bを綺麗にしてもよい。
図17A〜図17Dは、図14Iの工程後における複合チップ1の回収工程を示す図解的な断面図である。
図17Aでは、個片化された複数の複合チップ1が引き続き支持テープ71にくっついている状態を示している。
この状態で、図17Bに示すように、各複合チップ1の基板2の裏面2Bに対して、熱発泡シート73が貼着される。熱発泡シート73は、シート状のシート本体74と、シート本体74内に練り込まれた多数の発泡粒子75とを含んでいる。シート本体74の粘着力は、支持テープ71の粘着面72における粘着力よりも強い。
そこで、各複合チップ1の基板2の裏面2Bに熱発泡シート73を貼着した後に、図17Cに示すように、支持テープ71が各複合チップ1から引き剥がされて、複合チップ1が熱発泡シート73に転写される。このとき、支持テープ71に紫外線が照射されると(図17Bの点線矢印参照)、粘着面72の粘着性が低下するので、支持テープ71が各複合チップ1から剥がれやすくなる。
次に、熱発泡シート73が加熱される。これにより、図17Dに示すように、熱発泡シート73では、シート本体74内の各発泡粒子75が発泡してシート本体74の表面から膨出する。その結果、熱発泡シート73と各複合チップ1の基板2の裏面2Bとの接触面積が小さくなり、全ての複合チップ1が熱発泡シート73から自然に剥がれる(脱落する)。
このように回収された複合チップ1は、実装基板9(図1B参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープ71または熱発泡シート73から複合チップ1を1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数の複合チップ1が支持テープ71にくっついた状態で(図17A参照)、熱発泡シート73を用いずに、支持テープ71から複合チップ1を所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
図18A〜図18Cは、図14Iの工程後における複合チップ1の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図18A〜図18Cに示す別の方法によって、各複合チップ1を回収することもできる。
図18Aでは、図17Aと同様に、個片化された複数の複合チップ1が引き続き支持テープ71にくっついている状態を示している。
この状態で、図18Bに示すように、各複合チップ1の基板2の裏面2Bに転写テープ77が貼着される。転写テープ77は、支持テープ71の粘着面72よりも強い粘着力を有する。
そこで、図18Cに示すように、各複合チップ1に転写テープ77を貼着した後に、支持テープ71が各複合チップ1から引き剥がされる。この際、前述したように、粘着面72の粘着性を低下させるために支持テープ71に紫外線(図18Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
転写テープ77の両端には、回収装置(図示せず)のフレーム78が貼り付けられている。両側のフレーム78は、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープ71を各複合チップ1から引き剥がした後に、両側のフレーム78を互いが離間する方向に移動させると、転写テープ77が伸張して薄くなる。これによって、転写テープ77の粘着力が低下するので、各複合チップ1が転写テープ77から剥がれやすくなる。
この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズル76を複合チップ1の素子形成面2A側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、この複合チップ1が転写テープ77から引き剥がされて吸着ノズル76に吸着される。この際、図18Cに示す突起79によって、吸着ノズル76とは反対側から転写テープ77越しに複合チップ1を吸着ノズル76側へ突き上げると、複合チップ1を転写テープ77から円滑に引き剥がすことができる。このように回収された複合チップ1は、吸着ノズル76に吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、本発明の複合チップ部品の一例として、前述した実施形態では、互いに異なる機能を有する素子として抵抗器6およびコンデンサ101を備える複合チップ1を開示したが、複合チップ1は、ダイオードやインダクタを含んでいてもよい。
たとえば複合チップ1がインダクタを含む場合、当該インダクタにおいて前述した基板2上に形成された素子5は、複数のインダクタ要素(素子要素)を含んだインダクタ素子を含み、第1接続電極3および第2接続電極4の間に接続されている。素子5は、前述した多層基板の多層配線中に設けられ、配線膜22によって形成されている。また、インダクタでは、基板2上に、前述した複数のヒューズFが設けられていて、各インダクタ要素が、第1接続電極3および第2接続電極4に対して、ヒューズFを介して切り離し可能に接続されている。
この場合、当該インダクタでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することによって、複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現できる。
一方、複合チップ1がダイオードを含む場合、当該ダイオードにおいて前述した基板2上に形成された素子5は、複数のダイオード要素(素子要素)を含んだダイオード回路網(ダイオード素子)を含む。ダイオード素子は基板2に形成されている。このダイオードでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することによって、ダイオード回路網における複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、ダイオード回路網の電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現できる。
また、前述の実施形態では、抵抗器6やコンデンサ101が一対設けられたペアチップの例を示したが、たとえば、本発明の複合チップ部品は、互いに異なる機能を有する素子が3つ並べて配置された3連チップ、これらが4つ並べて配置された4連チップ、およびそれ以上のN連(Nは5以上の整数)チップであってもよい。
また、抵抗器6として、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、コンデンサ101においても、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、コンデンサ101では、上部電極膜113だけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜111だけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜113および下部電極膜111が両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したコンデンサ101では、上部電極膜113および下部電極膜111を有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜113上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
また、前述した第1接続電極3および第2接続電極4において、Ni層33とAu層35との間に介装されていたPd層34を省略することもできる。Ni層33とAu層35との接着性が良好なので、Au層35に前述したピンホールができないのであれば、Pd層34を省略しても構わない。
図19は、複合チップ1が用いられる電子機器の一例であるスマートフォンの外観を示す斜視図である。
スマートフォン201は、扁平な直方体形状の筐体202の内部に電子部品を収納して構成されている。筐体202は表側および裏側に長方形状の一対の主面を有しており、その一対の主面が4つの側面で結合されている。筐体202の一つの主面には、液晶パネルや有機ELパネル等で構成された表示パネル203の表示面が露出している。表示パネル203の表示面は、タッチパネルを構成しており、使用者に対する入力インターフェースを提供している。
表示パネル203は、筐体202の一つの主面の大部分を占める長方形形状に形成されている。表示パネル203の一つの短辺に沿うように、操作ボタン204が配置されている。この実施形態では、複数(3つ)の操作ボタン204が表示パネル203の短辺に沿って配列されている。使用者は、操作ボタン204およびタッチパネルを操作することによって、スマートフォン201に対する操作を行い、必要な機能を呼び出して実行させることができる。
表示パネル203の別の一つの短辺の近傍には、スピーカ205が配置されている。スピーカ205は、電話機能のための受話口を提供すると共に、音楽データ等を再生するための音響化ユニットとしても用いられる。一方、操作ボタン204の近くには、筐体202の一つの側面にマイクロフォン206が配置されている。マイクロフォン206は、電話機能のための送話口を提供するほか、録音用のマイクロフォンとして用いることもできる。
図20は、筐体202の内部に収容された回路アセンブリ100の構成を示す図解的な平面図である。回路アセンブリ100は、前述した実装基板9と、実装基板9の実装面9Aに実装された回路部品とを含む。複数の回路部品は、複数の集積回路素子(IC)212−220と、複数のチップ部品とを含む。複数のICは、伝送処理IC212、ワンセグTV受信IC213、GPS受信IC214、FMチューナIC215、電源IC216、フラッシュメモリ217、マイクロコンピュータ218、電源IC219およびベースバンドIC220を含む。複数のチップ部品は、チップインダクタ221,225,235、チップ抵抗器222,224,233、チップキャパシタ227,230,234、およびチップダイオード228,231を含む。
伝送処理IC212は、表示パネル203に対する表示制御信号を生成し、かつ表示パネル203の表面のタッチパネルからの入力信号を受信するための電子回路を内蔵している。表示パネル203との接続のために、伝送処理IC212には、フレキシブル配線209が接続されている。
ワンセグTV受信IC213は、ワンセグ放送(携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)の電波を受信するための受信機を構成する電子回路を内蔵している。ワンセグTV受信IC213の近傍には、複数のチップインダクタ221と、複数のチップ抵抗器222とが配置されている。ワンセグTV受信IC213、チップインダクタ221およびチップ抵抗器222は、ワンセグ放送受信回路223を構成している。チップインダクタ221およびチップ抵抗器222は、正確に合わせ込まれたインダクタンスおよび抵抗をそれぞれ有し、ワンセグ放送受信回路223に高精度な回路定数を与える。
GPS受信IC214は、GPS衛星からの電波を受信してスマートフォン201の位置情報を出力する電子回路を内蔵している。
FMチューナIC215は、その近傍において実装基板9に実装された複数のチップ抵抗器224および複数のチップインダクタ225と共に、FM放送受信回路226を構成している。チップ抵抗器224およびチップインダクタ225は、正確に合わせ込まれた抵抗値およびインダクタンスをそれぞれ有し、FM放送受信回路226に高精度な回路定数を与える。
電源IC216の近傍には、複数のチップキャパシタ227および複数のチップダイオード228が実装基板9の実装面に実装されている。電源IC216は、チップキャパシタ227およびチップダイオード228と共に、電源回路229を構成している。
フラッシュメモリ217は、オペレーティングシステムプログラム、スマートフォン201の内部で生成されたデータ、通信機能によって外部から取得したデータおよびプログラムなどを記録するための記憶装置である。
マイクロコンピュータ218は、CPU、ROMおよびRAMを内蔵しており、各種の演算処理を実行することによって、スマートフォン201の複数の機能を実現する演算処理回路である。より具体的には、マイクロコンピュータ218の働きによって、画像処理や各種アプリケーションプログラムのための演算処理が実現されるようになっている。
電源IC219の近くには、複数のチップキャパシタ230および複数のチップダイオード231が実装基板9の実装面に実装されている。電源IC219は、チップキャパシタ230およびチップダイオード231と共に、電源回路232を構成している。
ベースバンドIC220の近くには、複数のチップ抵抗器233、複数のチップキャパシタ234、および複数のチップインダクタ235が、実装基板9の実装面9Aに実装されている。ベースバンドIC220は、チップ抵抗器233、チップキャパシタ234およびチップインダクタ235と共に、ベースバンド通信回路236を構成している。ベースバンド通信回路236は、電話通信およびデータ通信のための通信機能を提供する。
このような構成によって、電源回路229,232によって適切に調整された電力が、伝送処理IC212、GPS受信IC214、ワンセグ放送受信回路223、FM放送受信回路226、ベースバンド通信回路236、フラッシュメモリ217およびマイクロコンピュータ218に供給される。マイクロコンピュータ218は、伝送処理IC212を介して入力される入力信号に応答して演算処理を行い、伝送処理IC212から表示パネル203に表示制御信号を出力して表示パネル203に各種の表示を行わせる。
タッチパネルまたは操作ボタン204の操作によってワンセグ放送の受信が指示されると、ワンセグ放送受信回路223の働きによってワンセグ放送が受信される。そして、受信された画像を表示パネル203に出力し、受信された音声をスピーカ205から音響化させるための演算処理が、マイクロコンピュータ218によって実行される。
また、スマートフォン201の位置情報が必要とされるときには、マイクロコンピュータ218は、GPS受信IC214が出力する位置情報を取得し、その位置情報を用いた演算処理を実行する。
さらに、タッチパネルまたは操作ボタン204の操作によってFM放送受信指令が入力されると、マイクロコンピュータ218は、FM放送受信回路226を起動し、受信された音声をスピーカ205から出力させるための演算処理を実行する。
フラッシュメモリ217は、通信によって取得したデータの記憶や、マイクロコンピュータ218の演算や、タッチパネルからの入力によって作成されたデータを記憶するために用いられる。マイクロコンピュータ218は、必要に応じて、フラッシュメモリ217に対してデータを書き込み、またフラッシュメモリ217からデータを読み出す。
電話通信またはデータ通信の機能は、ベースバンド通信回路236によって実現される。マイクロコンピュータ218は、ベースバンド通信回路236を制御して、音声またはデータを送受信するための処理を行う。
このような構成のスマートフォン201に本発明の複合チップ部品を用いれば、複数のチップ部品を一つのチップとして実装基板9に実装することができる。たとえば、ベースバンド通信回路236において、チップ抵抗器233とチップキャパシタ234を一つのチップとして実装すれば、ベースバンド通信回路236の実装面積を縮小することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
<第1参考例>
第1参考例の目的は、実装基板に対する接合面積(実装面積)を縮小でき、マウント作業の効率化を図ることができる多連チップ部品を提供することである。
第1参考例の他の目的は、第1参考例の多連チップ部品を備えた回路アセンブリ、およびこのような回路アセンブリを備えた電子機器を提供することである。
以下では、第1参考例の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図21Aは、第1参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器1aの構成を説明するための模式的な斜視図である。
第1参考例の多連チップ部品の一例としてのチップ抵抗器1aは、図21Aに示すように、共通の基板2a上に、第1参考例の複数のチップ素子の一例としての一対の抵抗器6aを搭載したペアチップである。一対の抵抗器6aは、その境界領域7aに対して左右対称となるように互いに隣り合って配置されている。
チップ抵抗器1aは、直方体形状をなしている。チップ抵抗器1aの平面形状は、一対の抵抗器6aの並び方向(以下、基板2aの横方向)に沿う辺(横辺82a)および横辺82aに直交する辺(縦辺81a)がそれぞれ0.63mm未満、0.6mm未満の四角形である。好ましくは、チップ抵抗器1aに搭載される各抵抗器6aが、平面寸法0.6mm×0.3mmである0603サイズ未満である。たとえば、各抵抗器6aが、長さL(縦辺81aの長さ)が約0.3mmであり、幅Wが約0.15mmである03015サイズであるか、もしくは、長さLが約0.4mmであり、幅Wが約0.2mmである0402サイズであってもよい。また、チップ抵抗器1aの厚さTは約0.1mmであり、互いに隣り合う抵抗器6aの間の境界領域7aの幅は約0.03mmであることが好ましい。
このチップ抵抗器1aは、基板上に多数個のチップ抵抗器1aを格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器1aに分離することによって得られる。
各抵抗器6aは、チップ抵抗器1aの本体を構成する基板2aと、外部接続電極となる第1接続電極3aおよび第2接続電極4aと、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aによって外部接続される素子5aとを主に備えている。
基板2aは、略直方体のチップ形状である。基板2aにおいて図21Aにおける上面をなす一つの表面は、素子形成面2Aaである。素子形成面2Aaは、基板2aにおいて素子5aが形成される表面であり、略長方形状である。基板2aの厚さ方向において素子形成面2Aaとは反対側の面は、裏面2Baである。素子形成面2Aaと裏面2Baとは、ほぼ同寸法かつ同形状であり、互いに平行である。素子形成面2Aaにおける一対の縦辺81aおよび横辺82aによって区画された四角形状の縁を、周縁部85aということにし、裏面2Baにおける一対の縦辺81aおよび横辺82aによって区画された四角形状の縁を、周縁部90aということにする。素子形成面2Aa(裏面2Ba)に直交する法線方向から見ると、周縁部85aと周縁部90aとは、重なっている(後述する図21C,D参照)。
基板2aは、素子形成面2Aaおよび裏面2Ba以外の表面として、複数の側面(側面2Ca、側面2Da、側面2Eaおよび側面2Fa)を有している。当該複数の側面2Ca〜2Faは、素子形成面2Aaおよび裏面2Baのそれぞれに交差(詳しくは、直交)して延びて、素子形成面2Aaおよび裏面2Baの間を繋いでいる。
側面2Caは、素子形成面2Aaおよび裏面2Baにおける基板2aの横方向に直交する縦方向(以下、基板2aの縦方向)の一方側(図21Aにおける左手前側)の横辺82a間に架設されていて、側面2Daは、素子形成面2Aaおよび裏面2Baにおける基板2aの縦方向の他方側(図21Aにおける右奥側)の横辺82a間に架設されている。側面2Caおよび側面2Daは、当該縦方向における基板2aの両端面である。
側面2Eaは、素子形成面2Aaおよび裏面2Baにおける基板2aの横方向一方側(図21Aにおける左奥側)の縦辺81a間に架設されていて、側面2Faは、素子形成面2Aaおよび裏面2Baにおける基板2aの横方向他方側(図21Aにおける右手前側)の縦辺81a間に架設されている。側面2Eaおよび側面2Faは、当該横方向における基板2aの両端面である。
側面2Caおよび側面2Daのそれぞれは、側面2Eaおよび側面2Faのそれぞれと交差(詳しくは、直交)している。そのため、素子形成面2Aa〜側面2Faにおいて隣り合うもの同士が直角を成している。
基板2aでは、素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Faのそれぞれの全域がパッシベーション膜23aで覆われている。そのため、厳密には、図21Aでは、素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Faのそれぞれの全域は、パッシベーション膜23aの内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、チップ抵抗器1aは、樹脂膜24aを有している。
樹脂膜24aは、素子形成面2Aa上のパッシベーション膜23aの全域(周縁部85aおよびその内側領域)を覆っている。パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aについては、以降で詳説する。
第1接続電極3aおよび第2接続電極4aは、基板2aの素子形成面2Aa上において周縁部85aを覆うように、素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Faに跨って形成された周縁部86a,87aを有している。この実施形態では、周縁部86a,87aは、基板2aの側面2Ca〜2Fa同士が交わる各コーナー部11aを覆うように形成されている。また、基板2aは、各コーナー部11aが平面視で面取りされたラウンド形状となっている。これにより、チップ抵抗器1aの製造工程や実装時におけるチッピングを抑制できる構造となっている。
第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で素子形成面2Aa上に積層することによって構成されている。
第1接続電極3aおよび第2接続電極4aは、前述した法線方向から見た平面視において、ほぼ同寸法かつ同形状である。第1接続電極3aは、平面視における4辺をなす1対の長辺3Aaおよび短辺3Baを有している。長辺3Aaと短辺3Baとは平面視において直交している。第2接続電極4aは、平面視における4辺をなす1対の長辺4Aaおよび短辺4Baを有している。長辺4Aaと短辺4Baとは平面視において直交している。長辺3Aaおよび長辺4Aaは、基板2aの横辺82aと平行に延びていて、短辺3Baおよび短辺4Baは、基板2aの縦辺81aと平行に延びている。また、チップ抵抗器1aは、基板2aの裏面2Baに電極を有していない。
素子5aは、回路素子であって、基板2aの素子形成面2Aaにおける第1接続電極3aと第2接続電極4aとの間の領域に形成されていて、パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aによって上から被覆されている。この実施形態の素子5aは、抵抗56aである。
抵抗56aは、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを素子形成面2Aa上でマトリックス状に配列した回路網によって構成されている。抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子5aは、後述する配線膜22aに電気的に接続されていて、配線膜22aを介して第1接続電極3aと第2接続電極4aとに電気的に接続されている。つまり、素子5aは、基板2a上に形成され、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの間に接続されている。
図21Bは、チップ抵抗器1aが実装基板9aに実装された状態の回路アセンブリ100aの模式的な断面図である。図21Cは、回路アセンブリ100aをチップ抵抗器1aの裏面2Ba側から見た模式的な平面図である。図21Dは、回路アセンブリ100aをチップ抵抗器1aの素子形成面2Aa側から見た模式的な平面図である。なお、図21B〜図21Dでは、要部のみ示している。
図21B〜図21Dに示すように、チップ抵抗器1aは、実装基板9aに実装される。この状態におけるチップ抵抗器1aおよび実装基板9aは、回路アセンブリ100aを構成している。
図21Bに示すように、実装基板9aの上面は、実装面9Aaである。実装面9Aaには、チップ抵抗器1a用の実装領域89aが区画されている。実装領域89aは、この実施形態では、図21Cおよび図21Dに示すように、平面視正方形状に形成されており、ランド88aが配置されたランド領域92aと、ランド領域92aを取り囲むソルダレジスト領域93aとを含む。
ランド領域92aは、たとえば、チップ抵抗器1aが03015サイズの抵抗器6aを一対備えるペアチップである場合、410μm×410μmの平面サイズを有する四角形(正方形)状である。つまり、ランド領域92aの一辺の長さL1=410μmである。一方、ソルダレジスト領域93aは、そのランド領域92aを縁取るように、たとえば幅L2が25μmの四角環状に形成されている。
ランド88aは、ランド領域92aの四隅に一つずつ、合計4つ配置されている。この実施形態では、各ランド88aは、ランド領域92aを区画する各辺から一定の間隔を空けた位置に設けられている。たとえば、ランド領域92aの各辺から各ランド88aまでの間隔は、25μmである。また、互いに隣り合うランド88aの間には、80μmの間隔が設けられている。各ランド88aは、たとえばCuからなり、実装基板9aの内部回路(図示せず)に接続されている。各ランド88aの表面には、図21Bに示すように、半田13aが当該表面から突出するように設けられている。
チップ抵抗器1aを実装基板9aに実装する場合、図21Bに示すように、自動実装機(図示せず)の吸着ノズル91aをチップ抵抗器1aの裏面2Baに吸着してから吸着ノズル91aを動かすことによって、チップ抵抗器1aを搬送する。このとき、吸着ノズル91aは、裏面2Baにおける基板2aの縦方向略中央部分に吸着する。前述したように、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aは、チップ抵抗器1aの片面(素子形成面2Aa)および側面2Ca〜2Faにおける素子形成面2Aa側の端部だけに設けられていることから、チップ抵抗器1aにおいて裏面2Baは、電極(凹凸)がない平坦面となる。よって、吸着ノズル91aをチップ抵抗器1aに吸着して移動させる場合に、平坦な裏面2Baに吸着ノズル91aを吸着させることができる。換言すれば、平坦な裏面2Baであれば、吸着ノズル91aが吸着できる部分のマージンを増やすことができる。これによって、吸着ノズル91aをチップ抵抗器1aに確実に吸着させ、チップ抵抗器1aを途中で吸着ノズル91aから脱落させることなく確実に搬送できる。
また、チップ抵抗器1aが抵抗器6aを一対備えるペアチップであるため、抵抗器6aを一つだけ搭載した単品チップを2回マウントする場合に比べて、同じ機能を有するチップ部品を1回のマウント作業で実装できる。さらに、単品チップに比べて、チップ一つ当たりの裏面面積を抵抗器2つ分以上に大きくできるので、吸着ノズル91aによる吸着動作を安定させることができる。
そして、チップ抵抗器1aを吸着した吸着ノズル91aを実装基板9aまで移動させる。このとき、チップ抵抗器1aの素子形成面2Aaと実装基板9aの実装面9Aaとが互いに対向する。この状態で、吸着ノズル91aを移動させて実装基板9aに押し付け、チップ抵抗器1aにおいて、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを、各ランド88aの半田13aに接触させる。次に、半田13aを加熱すると、半田13aが溶融する。その後、半田13aが冷却されて固まると、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aと、ランド88aとが半田13aを介して接合する。つまり、各ランド88aが、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aにおいて対応する電極に半田接合される。これにより、実装基板9aへのチップ抵抗器1aの実装(フリップチップ接続)が完了して、回路アセンブリ100aが完成する。完成状態の回路アセンブリ100aでは、チップ抵抗器1aの素子形成面2Aaと実装基板9aの実装面9Aaとが、隙間を隔てて対向しつつ、平行に延びている。当該隙間の寸法は、第1接続電極3aまたは第2接続電極4aにおいて素子形成面2Aaから突き出た部分の厚みと半田13aの厚さとの合計に相当する。
この回路アセンブリ100aでは、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの周縁部86a,87aが、基板2aの素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Fa(図21Bでは、側面2Ca,2Daのみ図示)に跨って形成されている。そのため、チップ抵抗器1aを実装基板9aに半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aに対する半田13aの吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。また、実装状態において、少なくとも基板2aの素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Faの二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品1aの実装形状を安定させることができる。しかも、実装基板9aへ実装後のチップ部品1aを4つのランド88aによって四点支持できるため、実装形状を一層安定させることができる。
また、チップ抵抗器1aが、03015サイズの抵抗器6aを一対備えるペアチップである。そのため、チップ抵抗器1a用の実装領域89aの面積を、従来に比べて大幅に縮小できる。
たとえば、この実施形態では、実装領域89aの面積は、図21Cを参照して、L3×L3=(L2+L1+L2)×(L2+L1+L2)=(25+410+25)×(25+410+25)=211600μm2で済む。
一方、図21Eに示すように、従来作製可能な最小サイズである0402サイズの単品チップ300aを2つ実装基板9aの実装面9Aaに実装する場合には、319000μm2の実装領域301aが必要であった。これから、この実施形態の実装領域89aと、従来の実装領域301aとの面積を比較すると、この実施形態の構成では、約34%も実装面積を縮小できることが分かる。
なお、図21Eの実装領域301aの面積は、ランド304aが配置された各単品チップ300aの実装エリア302aの横幅L4=250μm、隣り合う実装エリア302aの間隔L5=30μm、実装領域301aの外周を構成するソルダレジスト領域303aの幅L6=25μm、および実装エリア302aの長さL7=500μmに基づき、(L6+L4+L5+L4+L6)×(L6+L7+L6)=(25+250+30+250+25)×(25+500+25)=319000μm2として算出した。
次に、チップ抵抗器1aにおける他の構成を主に説明する。
図22は、チップ抵抗器1aの一方の抵抗器6aの平面図であり、第1接続電極3a、第2接続電極4aおよび素子5aの配置関係ならびに素子5aの平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図22を参照して、素子5aは、抵抗回路網となっている。具体的に、素子5aは、行方向(基板2aの縦方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板2aの横方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子5aの抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板2aの素子形成面2Aaには、抵抗回路を素子5aに対して電気的に組み込んだり、または、素子5aから電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズFが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第1接続電極3aの内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第1接続電極3aに対してそれぞれ切断可能(切り離し可能)に接続している。
図23Aは、図22に示す素子5aの一部分を拡大して描いた平面図である。図23Bは、素子5aにおける抵抗体Rの構成を説明するために描いた図23AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図23Cは、素子5aにおける抵抗体Rの構成を説明するために描いた図23AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図23A、図23Bおよび図23Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器1aの各抵抗器6aは、前述した配線膜22a、パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aの他に、絶縁膜20aと抵抗体膜21aとをさらに備えている(図23Bおよび図23C参照)。絶縁膜20a、抵抗体膜21a、配線膜22a、パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aは、基板2a(素子形成面2Aa)上に形成されている。
絶縁膜20aは、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁膜20aは、基板2aの素子形成面2Aaの全域を覆っている。絶縁膜20aの厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜21aは、絶縁膜20a上に形成されている。抵抗体膜21aは、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜21aの厚さは、約2000Åである。抵抗体膜21aは、第1接続電極3aと第2接続電極4aとの間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン21Aa」という)を構成していて、抵抗体膜ライン21Aaは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図23A参照)。
抵抗体膜ライン21Aa上には、配線膜22aが積層されている。配線膜22aは、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜22aの厚さは、約8000Åである。配線膜22aは、抵抗体膜ライン21Aa上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ライン21Aaに接している。
この構成の抵抗体膜ライン21Aaおよび配線膜22aの電気的特徴を回路記号で示すと、図24の通りである。すなわち、図24(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ライン21Aa部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜22aが積層された領域では、配線膜22aが隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜22aで抵抗体膜ライン21Aaが短絡されている。よって、図24(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ライン21Aa同士は抵抗体膜21aおよび配線膜22aで接続されているから、図23Aに示す素子5aの抵抗回路網は、図24(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜21aおよび配線膜22aは、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子5a)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ライン21Aa(抵抗体膜21a)と、抵抗体膜ライン21Aa上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜22aとを含み、配線膜22aが積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ライン21Aaが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ライン21Aaは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板2a上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ライン21Aa上に積層された配線膜22aは、抵抗体Rを形成すると共に、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図22参照)。
図25(a)は、図22に示す抵抗器6aの平面図の一部分を拡大して描いたヒューズFを含む領域の部分拡大平面図であり、図25(b)は、図25(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図25(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜21a上に積層された配線膜22aにより形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライン21Aa上に積層された配線膜22aと同じレイヤーに、配線膜22aと同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜22aは、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜21a上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子5aを第1接続電極3aおよび第2接続電極4aに接続するための配線膜が、配線膜22aとして、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜22aと異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜22aにおいて、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図22および図25(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第1接続電極3aの内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜22aの下方にも抵抗体膜21aが形成されている(図25(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜22aにおいて、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜22aの一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜21a)の一部と抵抗体膜21a上の配線膜22aの一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図26は、第1参考例の実施形態に係る素子5aの電気回路図である。
図26を参照して、素子5aは、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極3aからこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図27および図28においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図25(a)参照)を介して直列に接続されている。
図26に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子5aは、第1接続電極3aおよび第2接続電極4a間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極3aおよび第2接続電極4aが接続された抵抗器6aが構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子5aに組み込まれてはいない。
この実施形態に係る抵抗器6aでは、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子5aに組み込まれることになる。よって、素子5aの全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子5a(抵抗56a)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、各抵抗器6aにおいて所望の値の抵抗を発生させることができる。
図27は、第1参考例の他の実施形態に係る素子5aの電気回路図である。
図26に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子5aを構成する代わりに、図27に示すように素子5aを構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子5aを構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子5aに対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子5aから電気的に分離されるので、各抵抗器6a全体の抵抗値を調整できる。
図28は、第1参考例のさらに他の実施形態に係る素子5aの電気回路図である。
図28に示す素子5aの特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。したがって、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子5aに電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。したがって、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまり各抵抗器6aでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値の抵抗器6aを共通の設計で実現できる。
以上のように、このチップ抵抗器1aでは、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図29Aは、チップ抵抗器1aの模式的な断面図であり、図21のA−Aに沿う断面構造を示す図である。図29Bは、チップ抵抗器1aの模式的な断面図であり、図21のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
次に、図29Aおよび図29Bを参照して、チップ抵抗器1aについてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図29Aおよび図29Bでは、前述した素子5aについては簡略化して示していると共に、基板2a以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述した絶縁膜20a、パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aについて説明する。
絶縁膜20aは、前述したように、基板2aの素子形成面2Aaの全域を覆っている。具体的には、図29Bに示すように、境界領域7aを覆い、互いに隣り合う一対の抵抗器6a用の領域に跨って一体に形成されている。ここで、境界領域7aと各抵抗器6a用の領域との間は、段差のないフラットな表面で連続しており、絶縁膜20aは、このフラット面に形成されている。
パッシベーション膜23aは、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。パッシベーション膜23aは、素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Faのそれぞれにおけるほぼ全域に亘って設けられている。素子形成面2Aa上のパッシベーション膜23aは、図29Aに示すように、抵抗体膜21aおよび抵抗体膜21a上の各配線膜22a(つまり、素子5a)を表面(図29Aの上側)から被覆していて、素子5aにおける各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、パッシベーション膜23aは、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜22aも覆っている(図25(b)参照)。また、パッシベーション膜23aは、素子5a(配線膜22aおよび抵抗体膜21a)に接しており、抵抗体膜21a以外の領域では絶縁膜20aにも接している。また、パッシベーション膜23aは、境界領域7aをも覆っている。これにより、素子形成面2Aa上のパッシベーション膜23aは、素子形成面2Aa全域を覆って素子5aおよび絶縁膜20aを保護する保護膜として機能している。また、素子形成面2Aaでは、パッシベーション膜23aによって、抵抗体R間における配線膜22a以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ライン21Aa間における短絡)が防止されている。
一方、側面2Ca〜2Faのそれぞれに設けられたパッシベーション膜23aは、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの側面部分と基板2aの側面2Ca〜2Faとの間に介在されており、側面2Ca〜2Faのそれぞれを保護する保護層として機能している。これにより、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aと基板2aとを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。なお、パッシベーション膜23aは極めて薄い膜なので、本実施形態では、側面2Ca〜2Faのそれぞれを覆うパッシベーション膜23aを、基板2aの一部とみなすことにする。そのため、側面2Ca〜2Faのそれぞれを覆うパッシベーション膜23aを、側面2Ca〜2Faそのものとみなすことにしている。
樹脂膜24aは、パッシベーション膜23aと共にチップ抵抗器1aの素子形成面2Aaを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜24aの厚みは、約5μmである。
樹脂膜24aは、図29Aに示すように、素子形成面2Aa上のパッシベーション膜23aの表面(パッシベーション膜23aに被覆された抵抗体膜21aおよび配線膜22a、ならびに境界領域7aも含む)の全域を被覆している。
樹脂膜24aには、各抵抗器6aにおいて、配線膜22aにおける第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの側面部分に対向する周縁部を露出させる切欠部25aが1つずつ形成されている。各切欠部25aは、樹脂膜24aおよびパッシベーション膜23aを、それぞれの厚さ方向において連続して貫通している。そのため、切欠部25aは、樹脂膜24aだけでなくパッシベーション膜23aにも形成されている。これにより、各配線膜22aは、素子5aに近い内側の周縁部、および隣り合う抵抗器6aに対向する周縁部が樹脂膜24aによって選択的に覆われており、その他の、基板2aの周縁部85aに沿う周縁部が切欠部25aを介して選択的に露出している。配線膜22aにおいて各切欠部25aから露出された表面は、外部接続用のパッド領域22Aaとなっている。また、切欠部25aから露出する配線膜22aは、素子形成面2Aaにおいて基板2aの周縁部85aから内方へ所定の間隔(たとえば、3μm〜6μm)離れて配置されている。また、切欠部25aの側面には、絶縁膜26aが全体的に形成されている。
各抵抗器6aにおいて2つの切欠部25aのうち、一方の切欠部25aは、第1接続電極3aによって埋め尽くされ、他方の切欠部25aは、第2接続電極4aによって埋め尽くされている。この第1接続電極3aおよび第2接続電極4aは、前述したように、素子形成面2Aaに加えて側面2Ca〜2Faも覆う周縁部86a,87aを有している。また、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aは、樹脂膜24aから突出するように形成されていると共に、樹脂膜24aの表面に沿って基板2aの素子5a側および境界領域7a側へ引き出された引き出し部27aを有している。
ここで、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれは、Ni層33a、Pd層34aおよびAu層35aを素子形成面2Aa側および側面2Ca〜2Fa側からこの順で有している。すなわち、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれは、素子形成面2Aa上の領域だけでなく、側面2Ca〜2Fa上の領域においても、Ni層33a、Pd層34aおよびAu層35aからなる積層構造を有している。そのため、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれにおいて、Ni層33aとAu層35aとの間にPd層34aが介装されている。第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれにおいて、Ni層33aは各接続電極の大部分を占めており、Pd層34aおよびAu層35aは、Ni層33aに比べて格段に薄く形成されている。Ni層33aは、チップ抵抗器1aが実装基板9aに実装された際に(図21B〜図21D参照)、各切欠部25aのパッド領域22Aaにおける配線膜22aのAlと、前述した半田13aとを中継する役割を有している。
このように、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aでは、Ni層33aの表面がAu層35aによって覆われているので、Ni層33aが酸化することを防止できる。また、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aでは、Au層35aを薄くすることによってAu層35aに貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層33aとAu層35aとの間に介装されたPd層34aが当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層33aが外部に露出されて酸化することを防止できる。
そして、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれでは、Au層35aが、最表面に露出している。第1接続電極3aは、一方の切欠部25aを介して、この切欠部25aにおけるパッド領域22Aaにおいて配線膜22aに対して電気的に接続されている。第2接続電極4aは、他方の切欠部25aを介して、この切欠部25aにおけるパッド領域22Aaにおいて配線膜22aに対して電気的に接続されている。第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれでは、Ni層33aがパッド領域22Aaに対して接続されている。これにより、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれは、素子5aに対して電気的に接続されている。ここで、配線膜22aは、抵抗体Rのまとまり(抵抗56a)、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aのそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、切欠部25aが形成された樹脂膜24aおよびパッシベーション膜23aは、切欠部25aから第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを露出させた状態で素子形成面2Aaを覆っている。そのため、樹脂膜24aの表面において切欠部25aからはみ出した(突出した)第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを介して、チップ抵抗器1aと実装基板9aとの間における電気的接続を達成できる(図21B〜図21D参照)。
図30A〜図30Iは、図29A,Bに示すチップ抵抗器1aの製造方法を示す図解的な断面図である。なお、図30A〜図30Iでは、図29Aに対応する一方の抵抗器6aの断面構造のみを示しているが、他方の抵抗器6aも一方の抵抗器6aと同時並行で作製される。
まず、図30Aに示すように、基板2aの元となる基板30aを用意する。この場合、基板30aの表面30Aaは、基板2aの素子形成面2Aaであり、基板30aの裏面30Baは、基板2aの裏面2Baである。
そして、基板30aの表面30Aaを熱酸化して、表面30AaにSiO2等からなる絶縁膜20aを形成し、絶縁膜20a上に素子5a(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜22a)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁膜20aの上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜21aを全面に形成し、さらに、抵抗体膜21aに接するように抵抗体膜21aの上にアルミニウム(Al)の配線膜22aを積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜21aおよび配線膜22aを選択的に除去してパターニングし、図23Aに示すように、平面視で、抵抗体膜21aが積層された一定幅の抵抗体膜ライン21Aaが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ライン21Aaおよび配線膜22aが切断された領域も形成されると共に、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図22参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ライン21Aaの上に積層された配線膜22aを選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ライン21Aa上に一定間隔Rをあけて配線膜22aが積層された構成の素子5aが得られる。この際、抵抗体膜21aおよび配線膜22aが目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子5a全体の抵抗値を測定してもよい。
図30Aを参照して、素子5aは、1枚の基板30aに形成するチップ抵抗器1aの数に応じて、基板30aの表面30Aa上における多数の箇所に形成される。基板30aにおいて素子5a(前述した抵抗56a)が形成された1つの領域をチップ部品領域Yというと、基板30aの表面30Aaには、抵抗56aをそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子5a)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器1a(図29Aおよび図29B参照)を平面視したものと一致する。そして、基板30aの表面30Aaにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板30aでは多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器1aの大量生産が可能になる。
次に、図30Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜45aを、基板30aの表面30Aaの全域に亘って形成する。絶縁膜45aは、絶縁膜20aおよび絶縁膜20a上の素子5a(抵抗体膜21aや配線膜22a)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜45aは、前述したトリミング対象領域X(図22参照)における配線膜22aも覆っている。また、絶縁膜45aは、基板30aの表面30Aaにおいて全域に亘って形成されることから、表面30Aaにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜45aは、表面30Aa(表面30Aa上の素子5aも含む)全域を保護する保護膜となる。
次に、図30Bに示すようにマスク65aを用いたエッチングによって、絶縁膜45aを選択的に除去する。これにより、絶縁膜45aの一部に開口28aが形成され、その開口28aにおいて各パッド領域22Aaが露出する。1つのチップ抵抗器1aの半製品50aにつき、開口28aは各抵抗器6aに2つずつ形成される。
各半製品50aにおいて、絶縁膜45aに開口28aを形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブ70aを各開口28aのパッド領域22Aaに接触させて、素子5aの全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜45a越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図22参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜22aをレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品50a(換言すれば、各チップ抵抗器1a)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜45aが素子5aを覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子5aに付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜45aがヒューズF(抵抗体膜21a)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断できる。その後、必要に応じて、CVD法によって絶縁膜45a上にSiNを形成し、絶縁膜45aを厚くする。最終的な絶縁膜45a(図30Cに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜45aの一部は、各開口28aに入り込んで開口28aを塞いでいる。
次に、図30Cに示すように、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板30aに対して、絶縁膜45aの上からスプレー塗布して、感光性樹脂の樹脂膜46aを形成する。表面30Aa上の樹脂膜46aの表面は、表面30Aaに沿って平坦になっている。次に、樹脂膜46aに熱処理(キュア処理)を施す。これにより、樹脂膜46aの厚みが熱収縮すると共に、樹脂膜46aが硬化して膜質が安定する。
次に、図30Dに示すように、樹脂膜46a、絶縁膜45aおよび絶縁膜20aをパターニングすることによって、これらの膜の切欠部25aと一致する部分を選択的に除去する。これにより切欠部25aが形成されると共に、境界領域Zにおいては表面30Aa(絶縁膜20a)が露出することになる。
次に、図30Eに示すように、基板30aの表面30Aaの全域に亘ってレジストパターン41aを形成する。レジストパターン41aには、開口42aが形成されている。
図31は、図30Eの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図31を参照して、レジストパターン41aの開口42aは、多数のチップ抵抗器1a(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器1aの輪郭の間の領域(図31においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口42aの全体形状は、互いに直交する直線部分42Aaおよび42Baを複数有する格子状になっている。
レジストパターン41aでは、チップ部品領域Yの四隅に接する位置に、チップ部品領域Yの外側に凸の湾曲形状のラウンド形状部43aを有している。ラウンド形状部43aは、チップ部品領域Yの隣接する二つの辺を滑らかな曲線で接続するように形成されている。したがって、このレジストパターン41aをマスクとして行うプラズマエッチングによって溝44a(後述)を形成すると、溝44aは、チップ部品領域Yの四隅に接する位置に、チップ部品領域Yの外側に凸の湾曲形状のラウンド形状部を有することになる。したがって、チップ部品領域Yを基板30aから切り出すための溝44aを形成する工程において、同時に、チップ部品1aのコーナー部11aをラウンド形状に整形できる。すなわち、専用の工程を追加することなく、コーナー部11aをラウンド形状に加工できる。
図30Eを参照して、レジストパターン41aをマスクとするプラズマエッチングにより、基板30aを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子5a(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおける配線膜22aから間隔を空けた位置で基板30aの材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターン41aの開口42aと一致する位置(境界領域Z)には、基板30aの表面30Aaから基板30aの厚さ途中まで到達する所定深さの溝44aが形成される。溝44aは、互いに対向する1対の側壁44Aaと、当該1対の側壁44Aaの下端(基板30aの裏面30Ba側の端)の間を結ぶ底壁44Baとによって区画されている。基板30aの表面30Aaを基準とした溝44aの深さは約100μmであり、溝44aの幅(対向する側壁44Aaの間隔)は約20μmであって、深さ方向全域に渡って一定である。
基板30aにおける溝44aの全体形状は、平面視でレジストパターン41aの開口42a(図31参照)と一致する格子状になっている。そして、基板30aの表面30Aaでは、各素子5aが形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝44aにおける四角形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板30aにおいて素子5aが形成された部分は、チップ抵抗器1aの半製品50aである。基板30aの表面30Aaでは、溝44aに取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品50aが1つずつ位置していて、これらの半製品50aは、行列状に整列配置されている。このように溝44aを形成することによって、基板30aを複数のチップ部品領域Y毎の基板2aに分離する。溝44aが形成された後、レジストパターン41aを除去する。
次に、図30Fに示すように、CVD法によって、SiNからなる絶縁膜47aを、基板30aの表面30Aaの全域に亘って形成する。このとき、溝44aの内周面(前述した側壁44Aaの区画面44Caや底壁44Baの上面)の全域にも絶縁膜47aが形成される。
次に、図30Gに示すように、絶縁膜47aを選択的にエッチングする。具体的には、絶縁膜47aにおける表面30Aaに平行な部分を選択的にエッチングする。これにより、配線膜22aのパッド領域22Aaが露出すると共に、溝44aにおいては、底壁44aB上の絶縁膜47aが除去される。
次に、無電解めっきによって、各切欠部25aから露出した配線膜22aからNi、PdおよびAuを順にめっき成長させる。めっきは、各めっき膜が表面30Aaに沿う横方向に成長し、溝44aの側壁44Aa上の絶縁膜47aを覆うまで続けられる。これにより、図30Hに示すように、Ni/Pd/Au積層膜からなる第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを形成する。
図32は、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの製造工程を説明するための図である。
詳しくは、図32を参照して、まず、パッド領域22Aaの表面が浄化されることで、当該表面の有機物(炭素のしみ等のスマットや油脂性の汚れも含む)が除去(脱脂)される(ステップS1)。次に、当該表面の酸化膜が除去される(ステップS2)。次に、当該表面においてジンケート処理が実施されて、当該表面における(配線膜22aの)AlがZnに置換される(ステップS3)。次に、当該表面上のZnが硝酸等で剥離されて、パッド領域22Aaでは、新しいAlが露出される(ステップS4)。
次に、パッド領域22Aaをめっき液に浸けることによって、パッド領域22Aaにおける新しいAlの表面にNiめっきが施される。これにより、めっき液中のNiが化学的に還元析出されて、当該表面にNi層33aが形成される(ステップS5)。
次に、Ni層33aを別のめっき液に浸けることによって、当該Ni層33aの表面にPdめっきが施される。これにより、めっき液中のPdが化学的に還元析出されて、当該Ni層33aの表面にPd層34aが形成される(ステップS6)。
次に、Pd層34aをさらに別のめっき液に浸けることによって、当該Pd層34aの表面にAuめっきが施される。これにより、めっき液中のAuが化学的に還元析出されて、当該Pd層34aの表面にAu層35aが形成される(ステップS7)。これによって、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aが形成され、形成後の第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを乾燥させると(ステップS8)、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの製造工程が完了する。なお、前後するステップの間には、半製品50aを水で洗浄する工程が適宜実施される。また、ジンケート処理は複数回実施されてもよい。
図30Hでは、各半製品50aにおいて第1接続電極3aおよび第2接続電極4aが形成された後の状態を示している。
以上のように、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを無電解めっきによって形成するので、電極材料であるNi,PdおよびAlを絶縁膜47a上にも良好にめっき成長させることができる。また、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aを電解めっきによって形成する場合に比べて、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aについての形成工程の工程数(たとえば、電解めっきで必要となるリソグラフィ工程やレジストマスクの剥離工程等)を削減してチップ抵抗器1aの生産性を向上できる。さらに、無電解めっきの場合には、電解めっきで必要とされるレジストマスクが不要であることから、レジストマスクの位置ずれによる第1接続電極3aおよび第2接続電極4aについての形成位置にずれが生じないので、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの形成位置精度を向上して歩留まりを向上できる。
また、この方法では、配線膜22aが切欠部25aから露出していて、配線膜22aから溝44aまでめっき成長の妨げになるものが無い。そのため、配線膜22aから溝44aまで直線的にめっき成長させることができる。その結果、電極の形成にかかる時間の短縮を図ることができる。
このように第1接続電極3aおよび第2接続電極4aが形成されてから、第1接続電極3aおよび第2接続電極4a間での通電検査が行われた後に、基板30aが裏面30Baから研削される。
具体的には、溝44aを形成した後に、図30Iに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面72aを有する支持テープ71aが、粘着面72aにおいて、各半製品50aにおける第1接続電極3aおよび第2接続電極4a側(つまり、表面30Aa)に貼着される。これにより、各半製品50aが支持テープ71aに支持される。ここで、支持テープ71aとして、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品50aが支持テープ71aに支持された状態で、基板30aを裏面30Ba側から研削する。研削によって、溝44aの底壁44Ba(図30H参照)の上面に達するまで基板30aが薄型化されると、隣り合う半製品50aを連結するものがなくなるので、溝44aを境界として基板30aが分割され、半製品50aが個別に分離してチップ抵抗器1aの完成品となる。つまり、溝44a(換言すれば、境界領域Z)において基板30aが切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器1aが切り出される。なお、基板30aを裏面30Ba側から溝44aの底壁44Baまでエッチングすることによってチップ抵抗器1aを切り出しても構わない。
完成した各チップ抵抗器1aでは、溝44aの側壁44Aaの区画面44Caをなしていた部分が、基板2aの側面2Ca〜2Faのいずれかとなり、裏面30Baが裏面2Baとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝44aを形成する工程(図30E参照)は、側面2Ca〜2Faを形成する工程に含まれる。また、絶縁膜45aおよび絶縁膜47aの一部がパッシベーション膜23aとなり、樹脂膜46aが樹脂膜24aとなり、絶縁膜47aの一部が絶縁膜26aとなる。
以上のように、溝44aを形成してから基板30aを裏面30Ba側から研削すれば、基板30aに形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器1a(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器1aの個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器1aの製造時間の短縮によってチップ抵抗器1aの生産性の向上を図ることができる。
なお、完成したチップ抵抗器1aにおける基板2aの裏面2Baを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面2Baを綺麗にしてもよい。
図33A〜図33Dは、図30Iの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程を示す図解的な断面図である。
図33Aでは、個片化された複数のチップ抵抗器1aが引き続き支持テープ71aにくっついている状態を示している。この状態で、図33Bに示すように、各チップ抵抗器1aの基板2aの裏面2Baに対して、熱発泡シート73aを貼着する。熱発泡シート73aは、シート状のシート本体74aと、シート本体74a内に練り込まれた多数の発泡粒子75aとを含んでいる。
シート本体74aの粘着力は、支持テープ71aの粘着面72aにおける粘着力よりも強い。そこで、各チップ抵抗器1aの基板2aの裏面2Baに熱発泡シート73aを貼着した後に、図33Cに示すように、支持テープ71aを各チップ抵抗器1aから引き剥がして、チップ抵抗器1aを熱発泡シート73aに転写する。このとき、支持テープ71aに紫外線を照射すると(図33Bの点線矢印参照)、粘着面72aの粘着性が低下するので、支持テープ71aが各チップ抵抗器1aから剥がれやすくなる。
次に、熱発泡シート73aを加熱する。これにより、図33Dに示すように、熱発泡シート73aでは、シート本体74a内の各発泡粒子75aが発泡してシート本体74aの表面から膨出する。その結果、熱発泡シート73aと各チップ抵抗器1aの基板2aの裏面2Baとの接触面積が小さくなり、全てのチップ抵抗器1aが熱発泡シート73aから自然に剥がれる(脱落する)。このように回収されたチップ抵抗器1aは、実装基板9a(図21B参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープ71aまたは熱発泡シート73aからチップ抵抗器1aを1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数のチップ抵抗器1aが支持テープ71aにくっついた状態で(図33A参照)、熱発泡シート73aを用いずに、支持テープ71aからチップ抵抗器1aを所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
図34A〜図34Cは、図30Iの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図34A〜図34Cに示す別の方法によって、各チップ抵抗器1aを回収することもできる。
図34Aでは、図33Aと同様に、個片化された複数のチップ抵抗器1aが引き続き支持テープ71aにくっついている状態を示している。この状態で、図34Bに示すように、各チップ抵抗器1aの基板2aの裏面2Baに転写テープ77aを貼着する。転写テープ77aは、支持テープ71aの粘着面72aよりも強い粘着力を有する。そこで、図34Cに示すように、各チップ抵抗器1に転写テープ77aを貼着した後に、支持テープ71aを各チップ抵抗器1aから引き剥がす。この際、前述したように、粘着面72aの粘着性を低下させるために支持テープ71aに紫外線(図34Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
転写テープ77aの両端には、回収装置(図示せず)のフレーム78aが貼り付けられている。両側のフレーム78aは、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープ71aを各チップ抵抗器1から引き剥がした後に、両側のフレーム78aを互いが離間する方向に移動させると、転写テープ77aが伸張して薄くなる。これによって、転写テープ77aの粘着力が低下するので、各チップ抵抗器1aが転写テープ77aから剥がれやすくなる。この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズル76aをチップ抵抗器1aの素子形成面2Aa側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、このチップ抵抗器1aが転写テープ77aから引き剥がされて吸着ノズル76aに吸着される。この際、図34Cに示す突起79aによって、吸着ノズル76aとは反対側から転写テープ77a越しにチップ抵抗器1aを吸着ノズル76a側へ突き上げると、チップ抵抗器1aを転写テープ77aから円滑に引き剥がすことができる。このように回収されたチップ抵抗器1aは、吸着ノズル76aに吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
以上、第1参考例の実施形態について説明してきたが、第1参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第1参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器1aを開示したが、本発明は、チップコンデンサやチップダイオードやチップインダクタといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図35は、第1参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサ101aの平面図である。図36は、チップコンデンサ101aの模式的な断面図であり、図35のA−Aに沿う断面構造を示す図である。図37は、チップコンデンサ101aの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサ101aにおいて、前述したチップ抵抗器1aで説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサ101aにおいて、チップ抵抗器1aで説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器1aで説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器1aで説明した部分(特に、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aに関する部分について)と同じ作用効果を奏することができる。
図36を参照して、チップコンデンサ101aは、チップ抵抗器1aと同様に、共通の基板2a上に、第1参考例の複数のチップ素子の一例としての一対のコンデンサ106a(図35〜図37では一方のみ図示)を搭載したペアチップである。
各コンデンサ106aは、基板2aと、基板2a上(基板2aの素子形成面2Aa側)に配置された第1接続電極3aと、同じく基板2a上に配置された第2接続電極4aとを備えている。チップコンデンサ101aでは、チップ抵抗器1aと同様に、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aは、基板2aの素子形成面2Aa上において周縁部85aを覆うように、素子形成面2Aaおよび側面2Ca〜2Faに跨って形成された周縁部86a,87aを有している。そのため、チップコンデンサ101aが実装基板9aに実装された回路アセンブリ100a(図21Bおよび図21C参照)では、チップ抵抗器1aの場合と同様に、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aに対する半田13aの吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。
基板2aの素子形成面2Aaには、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの間のキャパシタ配置領域105a内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が形成されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子5a(ここでは、キャパシタ素子)を構成する複数の素子要素であり、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの間に接続されている。詳しくは、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、複数のヒューズユニット107a(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極4aに対して切り離し可能となるように電気的に接続されている。
図36および図37に示されているように、基板2aの素子形成面2Aaには絶縁膜20aが形成されていて、絶縁膜20aの表面に下部電極膜111aが形成されている。下部電極膜111aは、キャパシタ配置領域105aのほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜111aは、第1接続電極3aの直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜111aは、キャパシタ配置領域105aにおいてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域111Aaと、第1接続電極3aの直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域111Baとを有している。キャパシタ電極領域111Aaがキャパシタ配置領域105aに位置していて、パッド領域111Baが第1接続電極3aの直下に位置して第1接続電極3aに接触している。
キャパシタ配置領域105aにおいて下部電極膜111a(キャパシタ電極領域111Aa)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)112aが形成されている。容量膜112aは、キャパシタ電極領域111Aa(キャパシタ配置領域105a)の全域にわたって形成されている。容量膜112aは、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域105a外の絶縁膜20aを覆っている。
容量膜112aの上には、上部電極膜113aが形成されている。図35では、明瞭化のために、上部電極膜113aを着色して示してある。上部電極膜113aは、キャパシタ配置領域105aに位置するキャパシタ電極領域113Aaと、第2接続電極4aの直下に位置して第2接続電極4aに接触するパッド領域113Baと、キャパシタ電極領域113Aaとパッド領域113Baとの間に配置されたヒューズ領域113Caとを有している。
キャパシタ電極領域113Aaにおいて、上部電極膜113aは、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)131a〜139aに分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分131a〜139aは、いずれも四角形状に形成されていて、ヒューズ領域113Caから第1接続電極3aに向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分131a〜139aは、複数種類の対向面積で、容量膜112aを挟んで(容量膜112aに接しつつ)下部電極膜111aに対向している。より具体的には、電極膜部分131a〜139aの下部電極膜111aに対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分131a〜139aは、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分131a〜138a(または131a〜137a,139a)を含む。これによって、各電極膜部分131a〜139aと容量膜112aを挟んで対向する下部電極膜111aとによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分131a〜139aの対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分131a〜135aは、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分135a,136a,137a,138a,139aは、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分135a〜139aは、キャパシタ配置領域105aの第2接続電極4a側の端縁から第1接続電極3a側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分131a〜134aは、それよりも短く形成されている。
パッド領域113Baは、第2接続電極4aとほぼ相似形に形成されており、ほぼ四角形の平面形状を有している。図36に示すように、パッド領域113Baにおける上部電極膜113aは、第2接続電極4aに接している。
ヒューズ領域113Caは、基板2a上において、パッド領域113Baの一つの長辺(基板2aの周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域113Caは、パッド領域113Baの前記一つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニット107aを含む。
ヒューズユニット107aは、上部電極膜113aのパッド領域113Baと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分131a〜139aは、1つまたは複数個のヒューズユニット107aと一体的に形成されていて、それらのヒューズユニット107aを介してパッド領域113Baに接続され、このパッド領域113Baを介して第2接続電極4aに電気的に接続されている。図35に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分131a〜136aは、一つのヒューズユニット107aによってパッド領域113Baに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分137a〜139aは複数個のヒューズユニット107aを介してパッド領域113Baに接続されている。全てのヒューズユニット107aが用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニット107aは未使用である。
ヒューズユニット107aは、パッド領域113Baとの接続のための第1幅広部107Aaと、電極膜部分131a〜139aとの接続のための第2幅広部107Baと、第1および第2幅広部107Aa,107Baの間を接続する幅狭部107Caとを含む。幅狭部107Caは、レーザ光によって切断(溶断)できるように構成されている。それによって、電極膜部分131a〜139aのうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニット107aの切断によって第1および第2接続電極3a,4aから電気的に切り離すことができる。
図35および図37では図示を省略したが、図36に表れている通り、上部電極膜113aの表面を含むチップコンデンサ101aの表面は、前述したパッシベーション膜23aによって覆われている。パッシベーション膜23aは、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサ101aの上面のみならず、基板2aの側面2Ca〜2Faまで延びて、側面2Ca〜2Faの全域をも覆うように形成されている。側面2Ca〜2Faにおいては、基板2aと第1接続電極3aおよび第2接続電極4aとの間に介在されている。さらに、パッシベーション膜23aの上には、前述した樹脂膜24aが形成されている。樹脂膜24aは、素子形成面2Aaを覆っている。
パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aは、チップコンデンサ101aの表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aに対応する領域に、前述した切欠部25aがそれぞれ形成されている。切欠部25aは、パッシベーション膜23aおよび樹脂膜24aを貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極3aに対応した切欠部25aは、容量膜112aをも貫通している。
切欠部25aには、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aがそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極3aは下部電極膜111aのパッド領域111Baに接合しており、第2接続電極4aは上部電極膜113aのパッド領域113Baに接合している。第1および第2接続電極3a,4aは、樹脂膜24aの表面から突出すると共に、樹脂膜24aの表面に沿って基板2aの内方(素子5a側)へ引き出された引き出し部27aを有している。これにより、実装基板に対してチップコンデンサ101aをフリップチップ接合できる。
図38は、各コンデンサ106aの内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極3aと第2接続電極4aとの間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極4aとの間には、一つまたは複数のヒューズユニット107aでそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、各コンデンサ106aの容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけコンデンサ106aの容量値が減少する。
そこで、パッド領域111Ba,113Baの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でコンデンサ106aの容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のコンデンサ106aを提供できる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるコンデンサ106aを共通の設計で実現できる。
チップコンデンサ101aの各部の詳細について以下に説明を加える。
図36を参照して、基板2aは、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。基板2の材料としては、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。
絶縁膜20aは、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜111aは、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜111aは、スパッタ法によって形成できる。上部電極膜113aも同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜113aは、スパッタ法によって形成できる。上部電極膜113aのキャパシタ電極領域113Aaを電極膜部分131a〜139aに分割し、さらに、ヒューズ領域113Caを複数のヒューズユニット107aに整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜112aは、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜112aは、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
パッシベーション膜23aは、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜24aは、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成できる。
第1および第2接続電極3a,4aは、たとえば、下部電極膜111aまたは上部電極膜113aに接するニッケル層と、このニッケル層上に積層したパラジウム層と、そのパラジウム層上に積層した金層とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、めっき法(より具体的には無電解めっき法)で形成できる。ニッケル層は下部電極膜111aまたは上部電極膜113aに対する密着性の向上に寄与し、パラジウム層は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極3a,4aの最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサ101aの製造工程は、素子5aを形成した後のチップ抵抗器1aの製造工程と同じである。
チップコンデンサ101aにおいて素子5a(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板30a(基板2a)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁膜20aが形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜111aが絶縁膜20aの表面全域に形成される。下部電極膜111aの膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜111aの最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図35等に示したパターンの下部電極膜111aが得られる。下部電極膜111aのエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜112aが、下部電極膜111a上に形成される。下部電極膜111aが形成されていない領域では、絶縁膜20aの表面に容量膜112aが形成されることになる。次に、その容量膜112aの上に、上部電極膜113aが形成される。上部電極膜113aは、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次に、上部電極膜113aの表面に上部電極膜113aの最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜113aが、最終形状(図35等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜113aは、キャパシタ電極領域113Aaに複数の電極膜部分131a〜139aに分割された部分を有し、ヒューズ領域113Caに複数のヒューズユニット107aを有し、それらのヒューズユニット107aに接続されたパッド領域113Baを有するパターンに整形される。上部電極膜113aのパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサ101aにおける素子5a(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニット107a)が形成される。
この状態から、ヒューズユニット107aを溶断するためのレーザトリミングが行われる(図30B参照)。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニット107aにレーザ光を当てて、そのヒューズユニット107aの幅狭部107Ca(図35参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域113Baから切り離される。ヒューズユニット107aにレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜45aの働きによって、ヒューズユニット107aの近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニット107aが溶断する。これにより、チップコンデンサ101aの容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
その後、図30C〜図30Iの工程に倣って、チップ抵抗器1aの場合と同じ工程を実行すればよい。
以上、第1参考例のチップ部品(チップ抵抗器1aやチップコンデンサ101a)について説明してきたが、第1参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、抵抗器6aやコンデンサ106aが一対設けられたペアチップの例を示したが、たとえば、第1参考例のチップ抵抗器は、抵抗器6aやコンデンサ106aが3つ並べて配置された3連チップ、これらが4つ並べて配置された4連チップ、およびそれ以上のN連(Nは5以上の整数)チップであってもよい。
また、前述の実施形態では、チップ抵抗器1aの場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサ101aの場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器1aやチップコンデンサ101aでは、基板2aの表面に絶縁膜20aが形成されているが、基板2aが絶縁性の基板であれば、絶縁膜20aを省くこともできる。
また、チップコンデンサ101aでは、上部電極膜113aだけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜111aだけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜113aおよび下部電極膜111aが両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサ101aでは、上部電極膜113aおよび下部電極膜111aを有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜113a上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
チップコンデンサ101aでは、また、基板2aとして導電性基板を用い、その導電性基板を下部電極として用い、導電性基板の表面に接するように容量膜112aを形成してもよい。この場合、導電性基板の裏面から一方の外部電極を引き出してもよい。
また、第1参考例を、チップインダクタに適用した場合、当該チップインダクタにおいて前述した基板2a上に形成された素子5aは、複数のインダクタ要素(素子要素)を含んだインダクタ素子を含み、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aの間に接続されている。素子5aは、前述した多層基板の多層配線中に設けられ、配線膜22aによって形成されている。また、チップインダクタでは、基板2a上に、前述した複数のヒューズFが設けられていて、各インダクタ要素が、第1接続電極3aおよび第2接続電極4aに対して、ヒューズFを介して切り離し可能に接続されている。
この場合、チップインダクタでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現できる。
また、第1参考例を、チップダイオードに適用した場合、当該チップダイオードにおいて前述した基板2a上に形成された素子5aは、複数のダイオード要素(素子要素)を含んだダイオード回路網(ダイオード素子)を含む。ダイオード素子は基板2aに形成されている。このチップダイオードでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、ダイオード回路網における複数のダイオード要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、ダイオード回路網の電気的特性が様々なチップダイオードを共通の設計で実現できる。
チップインダクタおよびチップダイオードのいずれにおいても、チップ抵抗器1aおよびチップコンデンサ101aの場合と同じ作用効果を奏することができる。
また、前述した第1接続電極3aおよび第2接続電極4aにおいて、Ni層33aとAu層35aとの間に介装されていたPd層34aを省略することもできる。Ni層33aとAu層35aとの接着性が良好なので、Au層35aに前述したピンホールができないのであれば、Pd層34aを省略しても構わない。
図39は、第1参考例のチップ部品が用いられる電子機器の一例であるスマートフォンの外観を示す斜視図である。スマートフォン201aは、扁平な直方体形状の筐体202aの内部に電子部品を収納して構成されている。筐体202aは表側および裏側に長方形状の一対の主面を有しており、その一対の主面が4つの側面で結合されている。筐体202aの一つの主面には、液晶パネルや有機ELパネル等で構成された表示パネル203aの表示面が露出している。表示パネル203aの表示面は、タッチパネルを構成しており、使用者に対する入力インターフェースを提供している。
表示パネル203aは、筐体202aの一つの主面の大部分を占める長方形形状に形成されている。表示パネル203aの一つの短辺に沿うように、操作ボタン204aが配置されている。この実施形態では、複数(3つ)の操作ボタン204aが表示パネル203aの短辺に沿って配列されている。使用者は、操作ボタン204aおよびタッチパネルを操作することによって、スマートフォン201aに対する操作を行い、必要な機能を呼び出して実行させることができる。
表示パネル203aの別の一つの短辺の近傍には、スピーカ205aが配置されている。スピーカ205aは、電話機能のための受話口を提供すると共に、音楽データ等を再生するための音響化ユニットとしても用いられる。一方、操作ボタン204aの近くには、筐体202aの一つの側面にマイクロフォン206aが配置されている。マイクロフォン206aは、電話機能のための送話口を提供するほか、録音用のマイクロフォンとして用いることもできる。
図40は、筐体202aの内部に収容された回路アセンブリ100aの構成を示す図解的な平面図である。回路アセンブリ100aは、前述した実装基板9aと、実装基板9aの実装面9Aaに実装された回路部品とを含む。複数の回路部品は、複数の集積回路素子(IC)212a−220aと、複数のチップ部品とを含む。複数のICは、伝送処理IC212a、ワンセグTV受信IC213a、GPS受信IC214a、FMチューナIC215a、電源IC216a、フラッシュメモリ217a、マイクロコンピュータ218a、電源IC219aおよびベースバンドIC220aを含む。複数のチップ部品(本願発明のチップ部品に相当する)は、チップインダクタ221a,225a,235a、チップ抵抗器222a,224a,233a、チップキャパシタ227a,230a,234a、およびチップダイオード228a,231aを含む。
伝送処理IC212aは、表示パネル203aに対する表示制御信号を生成し、かつ表示パネル203aの表面のタッチパネルからの入力信号を受信するための電子回路を内蔵している。表示パネル203aとの接続のために、伝送処理IC212aには、フレキシブル配線209aが接続されている。
ワンセグTV受信IC213aは、ワンセグ放送(携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)の電波を受信するための受信機を構成する電子回路を内蔵している。ワンセグTV受信IC213aの近傍には、複数のチップインダクタ221aと、複数のチップ抵抗器222aとが配置されている。ワンセグTV受信IC213a、チップインダクタ221aおよびチップ抵抗器222aは、ワンセグ放送受信回路223aを構成している。チップインダクタ221aおよびチップ抵抗器222aは、正確に合わせ込まれたインダクタンスおよび抵抗をそれぞれ有し、ワンセグ放送受信回路223aに高精度な回路定数を与える。
GPS受信IC214aは、GPS衛星からの電波を受信してスマートフォン201aの位置情報を出力する電子回路を内蔵している。
FMチューナIC215aは、その近傍において実装基板9aに実装された複数のチップ抵抗器224aおよび複数のチップインダクタ225aと共に、FM放送受信回路226aを構成している。チップ抵抗器224aおよびチップインダクタ225aは、正確に合わせ込まれた抵抗値およびインダクタンスをそれぞれ有し、FM放送受信回路226aに高精度な回路定数を与える。
電源IC216aの近傍には、複数のチップキャパシタ227aおよび複数のチップダイオード228aが実装基板9aの実装面に実装されている。電源IC216aは、チップキャパシタ227aおよびチップダイオード228aと共に、電源回路229aを構成している。
フラッシュメモリ217aは、オペレーティングシステムプログラム、スマートフォン201aの内部で生成されたデータ、通信機能によって外部から取得したデータおよびプログラムなどを記録するための記憶装置である。
マイクロコンピュータ218aは、CPU、ROMおよびRAMを内蔵しており、各種の演算処理を実行することにより、スマートフォン201aの複数の機能を実現する演算処理回路である。より具体的には、マイクロコンピュータ218aの働きにより、画像処理や各種アプリケーションプログラムのための演算処理が実現されるようになっている。
電源IC219aの近くには、複数のチップキャパシタ230aおよび複数のチップダイオード231aが実装基板9aの実装面に実装されている。電源IC219aは、チップキャパシタ230aおよびチップダイオード231aと共に、電源回路232aを構成している。
ベースバンドIC220aの近くには、複数のチップ抵抗器233a、複数のチップキャパシタ234a、および複数のチップインダクタ235aが、実装基板9aの実装面9Aaに実装されている。ベースバンドIC220aは、チップ抵抗器233a、チップキャパシタ234aおよびチップインダクタ235aと共に、ベースバンド通信回路236aを構成している。ベースバンド通信回路236aは、電話通信およびデータ通信のための通信機能を提供する。
このような構成によって、電源回路229a,232aによって適切に調整された電力が、伝送処理IC212a、GPS受信IC214a、ワンセグ放送受信回路223a、FM放送受信回路226a、ベースバンド通信回路236a、フラッシュメモリ217aおよびマイクロコンピュータ218aに供給される。マイクロコンピュータ218aは、伝送処理IC212aを介して入力される入力信号に応答して演算処理を行い、伝送処理IC212aから表示パネル203aに表示制御信号を出力して表示パネル203aに各種の表示を行わせる。
タッチパネルまたは操作ボタン204aの操作によってワンセグ放送の受信が指示されると、ワンセグ放送受信回路223aの働きによってワンセグ放送が受信される。そして、受信された画像を表示パネル203aに出力し、受信された音声をスピーカ205aから音響化させるための演算処理が、マイクロコンピュータ218aによって実行される。
また、スマートフォン201aの位置情報が必要とされるときには、マイクロコンピュータ218aは、GPS受信IC214aが出力する位置情報を取得し、その位置情報を用いた演算処理を実行する。
さらに、タッチパネルまたは操作ボタン204aの操作によってFM放送受信指令が入力されると、マイクロコンピュータ218aは、FM放送受信回路226aを起動し、受信された音声をスピーカ205aから出力させるための演算処理を実行する。
フラッシュメモリ217aは、通信によって取得したデータの記憶や、マイクロコンピュータ218aの演算や、タッチパネルからの入力によって作成されたデータを記憶するために用いられる。マイクロコンピュータ218aは、必要に応じて、フラッシュメモリ217aに対してデータを書き込み、またフラッシュメモリ217aからデータを読み出す。
電話通信またはデータ通信の機能は、ベースバンド通信回路236aによって実現される。マイクロコンピュータ218aは、ベースバンド通信回路236aを制御して、音声またはデータを送受信するための処理を行う。
なお、この第1参考例の実施形態の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
(項1)
共通の基板上に互いに間隔を空けて配置され、それぞれの平面寸法が0.6mm×0.3mmである0603サイズ未満である複数のチップ素子と、
各前記チップ素子において、前記基板の表面に形成された一対の電極とを含む、多連チップ部品。
この構成によれば、複数のチップ素子が共通の基板上に配置された多連チップでありながら、さらに、各チップ素子の平面寸法が0603サイズ未満である。これにより、従来に比べて、実装基板に対する接合面積(実装面積)を縮小できる。
また、多連チップ部品をN連チップ(Nは、正の整数)としたことによって、素子を一つだけ搭載したチップ部品(単品チップ)をN回マウントする場合に比べて、同じ機能を有するチップ部品を1回のマウント作業で実装できる。さらに、単品チップに比べて、チップ一つ当たりの面積を大きくできるので、チップマウンタによる吸着動作を安定させることができる。
(項2)
前記基板において、互いに隣り合う前記チップ素子の境界領域と、各前記チップ素子用の領域との間は、段差のないフラットな表面で連続している、項1に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、基板のチップ素子の境界領域において、各チップ素子用の領域と同じ厚さを確保できるので、当該境界領域での強度の低下を防止できる。
(項3)
前記電極と前記基板との間に介在された絶縁膜をさらに含み、
前記絶縁膜は、前記基板の表面において、互いに隣り合う前記チップ素子の境界領域を覆うように形成されている、項1または2に記載の多連チップ部品。
(項4)
前記一対の電極は、互いに対向する前記基板の一方の側面側およびその反対の側面側にそれぞれ配置されており、
各前記電極は、前記基板の縁部を覆うように、前記基板の表面および側面に跨って形成された周縁部を有している、項1〜3のいずれか一項に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、基板の表面に加えて側面にも電極が形成されているので、多連チップ部品を実装基板に半田付けする際の接着面積を拡大できる。その結果、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。また、半田が基板の表面から側面に回り込むように吸着するので、実装状態において、基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持できる。そのため、チップ部品の実装形状を安定させることができる。
(項5)
前記多連チップ部品は、一対の前記チップ素子を共通の前記基板上に備えるペアチップ部品であり、
前記電極の前記周縁部は、前記基板の四隅の角部を覆うように形成されている、項4に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、実装基板へ実装後のペアチップ部品を四点支持できるため、実装形状を一層安定させることができる。
(項6)
前記基板の表面において前記縁部から間隔を空けて形成され、前記電極が電気的に接続された配線膜をさらに含む、項4または5に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、外部接続するための電極から配線膜が独立しているので、基板の表面に形成される素子パターンに合わせた配線設計を行うことができる。
(項7)
前記配線膜は、前記電極に覆われた前記基板の前記縁部に対向する部分が選択的に露出しており、当該露出部分を除く部分が樹脂膜で選択的に覆われている、項6に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、電極と配線膜との接合面積を増やすことができるので、接触抵抗を減らすことができる。
(項8)
前記電極は、前記樹脂膜の表面から突出するように形成されている、項7に記載の多連チップ部品。
(項9)
前記電極は、前記樹脂膜の表面に沿って横方向に引き出され、当該表面を選択的に覆う引き出し部を含む、項8に記載の多連チップ部品。
(項10)
前記電極が、Ni層と、Au層とを含み、前記Au層が最表面に露出している、項1〜9のいずれか一項に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、Ni層の表面がAu層によって覆われているので、Ni層が酸化することを防止できる。
(項11)
前記電極が、前記Ni層と前記Au層との間に介装されたPd層をさらに含む、項10に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、Au層を薄くすることによってAu層に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層とAu層との間に介装されたPd層が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層が外部に露出されて酸化することを防止できる。
(項12)
前記複数のチップ素子は、平面寸法が0.4mm×0.2mmである0402サイズであるチップ素子を含む、項1〜11のいずれか一項に記載の多連チップ部品。
(項13)
前記複数のチップ素子は、平面寸法が0.3mm×0.15mmである03015サイズであるチップ素子を含む、項1〜12のいずれか一項に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、多連チップ部品のサイズを一層小さくできるので、実装基板に対する接合面積(実装面積)をさらに縮小できる。
(項14)
前記複数のチップ素子は、前記一対の電極間に接続された抵抗体を有する抵抗器を含む、項1〜13のいずれか一項に記載の多連チップ部品。
(項15)
前記抵抗器は、
複数の前記抵抗体と、
前記基板上に設けられ、前記複数の抵抗体をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズと含む、項14に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値の抵抗器を共通の設計で実現できる。
(項16)
前記複数のチップ素子は、前記一対の電極間に接続されたキャパシタを有するコンデンサを含む、項1〜15のいずれか一項に記載の多連チップ部品。
(項17)
前記コンデンサは、
前記キャパシタを構成する複数のキャパシタ要素と、
前記基板上に設けられ、前記複数のキャパシタ要素をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとを含む、項16に記載の多連チップ部品。
この構成によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応できる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のコンデンサを共通の設計で実現できる。
(項18)
項1〜17のいずれか一項に記載の多連チップ部品と、
前記基板の表面に対向する実装面に、前記電極に半田接合されたランドを有する実装基板とを含む、回路アセンブリ。
この構成によれば、実装基板に対する接合面積(実装面積)を縮小でき、マウント作業の効率化を図ることができる多連チップ部品を備える回路アセンブリを提供できる。
(項19)
項18に記載の回路アセンブリと、
前記回路アセンブリを収容した筐体とを含む、電子機器。
この構成によれば、実装基板に対する接合面積(実装面積)を縮小でき、マウント作業の効率化を図ることができる多連チップ部品を備える電子部品を提供できる。
<第2参考例>
第2参考例の目的は、基板(下地基板)に優れた絶縁性を付与できると共に、高周波特性の低下を抑制することができるチップ部品を提供することである。
第2参考例の他の目的は、第2参考例のチップ部品を備えた回路アセンブリ、およびこのような回路アセンブリを備えた電子機器を提供することである。
以下では、第2参考例の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図41Aは、第2参考例の一実施形態に係るチップ抵抗器の構成を説明するための模式的な斜視図である。
このチップ抵抗器1bは、微小なチップ部品であり、図41Aに示すように、直方体形状をなしている。チップ抵抗器1bの平面形状は、直交する二辺(長辺81b、短辺82b)がそれぞれ0.4mm以下、0.2mm以下の矩形である。好ましくは、チップ抵抗器1bの寸法に関し、長さL(長辺81bの長さ)が約0.3mmであり、幅W(短辺82bの長さ)が約0.15mmであり、厚さTが約0.1mmである。
このチップ抵抗器1bは、基板上に多数個のチップ抵抗器1bを格子状に形成してから当該基板に溝を形成した後、裏面研磨(または当該基板を溝で分断)して個々のチップ抵抗器1bに分離することによって得られる。
チップ抵抗器1bは、チップ抵抗器1bの本体を構成する基板2bと、外部接続電極となる第1接続電極3bおよび第2接続電極4bと、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bによって外部接続される素子5bとを主に備えている。
基板2bは、その導電型を決めるためのドーパントを含有していないシリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、ガラス基板を用いてもよいし、樹脂フィルムを用いてもよい。つまり、基板2bをn型やp型にするときにドーピングされるn型不純物(たとえば、リン、ヒ素、アンチモン等)や、p型不純物(たとえば、ボロン等)を含有していない。これにより、基板2bは、抵抗値が100Ω・cm以上、好ましくは、1000Ω・cm以上の高抵抗基板となっている。このような基板2bは、下地基板(ウエハ)にn型不純物やp型不純物をドーピングしないことによって作製することができる。
基板2bにこのような構成を採用することによって、基板2bに優れた絶縁性を付与することができる。基板2bが良好な絶縁性を示すので、後述する絶縁膜20bを挟んで対向する基板2bと第1接続電極3bおよび第2接続電極4bとの間に形成される寄生容量をゼロにできるか、もしくは、ドーパントを含有する基板を用いる場合に比べて低減することができる。その結果、この寄生容量によるデバイス特性への影響を低減できるので、チップ抵抗器1bの高周波特性等を改善することができる。
基板2bは、略直方体のチップ形状である。基板2bにおいて図41Aにおける上面をなす一つの表面は、素子形成面2Abである。素子形成面2Abは、基板2bにおいて素子5bが形成される表面であり、略長方形状である。基板2bの厚さ方向において素子形成面2Abとは反対側の面は、裏面2Bbである。素子形成面2Abと裏面2Bbとは、ほぼ同寸法かつ同形状であり、互いに平行である。素子形成面2Abにおける一対の長辺81bおよび短辺82bによって区画された矩形状の縁を、周縁部85bということにし、裏面2Bbにおける一対の長辺81bおよび短辺82bによって区画された矩形状の縁を、周縁部90bということにする。素子形成面2Ab(裏面2Bb)に直交する法線方向から見ると、周縁部85bと周縁部90bとは、重なっている(後述する図41C参照)。
基板2bは、素子形成面2Abおよび裏面2Bb以外の表面として、複数の側面(側面2Cb、側面2Db、側面2Ebおよび側面2Fb)を有している。当該複数の側面は、素子形成面2Abおよび裏面2Bbのそれぞれに交差(詳しくは、直交)して延びて、素子形成面2Abおよび裏面2Bbの間を繋いでいる。
側面2Cbは、素子形成面2Abおよび裏面2Bbにおける長手方向一方側(図41Aにおける左手前側)の短辺82b間に架設されていて、側面2Dbは、素子形成面2Abおよび裏面2Bbにおける長手方向他方側(図41Aにおける右奥側)の短辺82b間に架設されている。側面2Cbおよび側面2Dbは、当該長手方向における基板2bの両端面である。側面2Ebは、素子形成面2Abおよび裏面2Bbにおける短手方向一方側(図41Aにおける左奥側)の長辺81b間に架設されていて、側面2Fbは、素子形成面2Abおよび裏面2Bbにおける短手方向他方側(図41Aにおける右手前側)の長辺81b間に架設されている。側面2Ebおよび側面2Fbは、当該短手方向における基板2bの両端面である。側面2Cbおよび側面2Dbのそれぞれは、側面2Ebおよび側面2Fbのそれぞれと交差(詳しくは、直交)している。そのため、素子形成面2Ab〜側面2Fbにおいて隣り合うもの同士が直角を成している。
基板2bでは、素子形成面2Abおよび側面2Cb〜2Fbのそれぞれの全域がパッシベーション膜23bで覆われている。そのため、厳密には、図41Aでは、素子形成面2Abおよび側面2Cb〜2Fbのそれぞれの全域は、パッシベーション膜23bの内側(裏側)に位置していて、外部に露出されていない。さらに、チップ抵抗器1bは、樹脂膜24bを有している。樹脂膜24bは、素子形成面2Ab上のパッシベーション膜23bの全域(周縁部85bおよびその内側領域)を覆っている。パッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bについては、以降で詳説する。
第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、基板2bの素子形成面2Ab上において周縁部85bを覆うように、素子形成面2Abおよび側面2Cb〜2Fbに跨るように一体的に形成されている。第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれは、たとえば、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)およびAu(金)をこの順番で素子形成面2Ab上に積層することによって構成されている。第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、素子形成面2Abの長手方向に互いに間隔を開けて配置されている。当該配置位置において、第1接続電極3bは、チップ抵抗器1bの一方の短辺82b(側面2Cb寄りの短辺82b)およびその両側の一対の長辺81bに沿う三方の側面2Cb,2Eb,2Fbを一体的に覆うように形成されている。一方、第2接続電極4bは、チップ抵抗器1bの他方の短辺82b(側面2Db寄りの短辺82b)およびその両側の一対の長辺81bに沿う三方の側面2Db,2Eb,2Fbを一体的に覆うように形成されている。これにより、基板2bの長手方向両端部において側面同士が交わる各コーナー部11bはそれぞれ、第1接続電極3bもしくは第2接続電極4bによって覆われている。
第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、前述した法線方向から見た平面視において、ほぼ同寸法かつ同形状である。第1接続電極3bは、平面視における4辺をなす1対の長辺3Abおよび短辺3Bbを有している。長辺3Abと短辺3Bbとは平面視において直交している。第2接続電極4bは、平面視における4辺をなす1対の長辺4Abおよび短辺4Bbを有している。長辺4Abと短辺4Bbとは平面視において直交している。長辺3Abおよび長辺4Abは、基板2bの短辺82bと平行に延びていて、短辺3Bbおよび短辺4Bbは、基板2bの長辺81bと平行に延びている。また、チップ抵抗器1bは、裏面2Bbに電極を有していない。
素子5bは、回路素子であって、基板2bの素子形成面2Abにおける第1接続電極3bと第2接続電極4bとの間の領域に形成されていて、パッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bによって上から被覆されている。この実施形態の素子5bは、抵抗56bである。抵抗56bは、等しい抵抗値を有する複数個の(単位)抵抗体Rを素子形成面2Ab上でマトリックス状に配列した回路網によって構成されている。抵抗体Rは、TiN(窒化チタン)、TiON(酸化窒化チタン)またはTiSiONからなる。素子5bは、後述する配線膜22bに電気的に接続されていて、配線膜22bを介して第1接続電極3bと第2接続電極4bとに電気的に接続されている。つまり、素子5bは、基板2b上に形成され、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの間に接続されている。
図41Bは、チップ抵抗器が実装基板に実装された状態の回路アセンブリをチップ抵抗器の長手方向に沿って切断したときの模式的な断面図である。なお、図41Bでは、要部のみ、断面で示している。
図41Bに示すように、チップ抵抗器1bは、実装基板9bに実装される。この状態におけるチップ抵抗器1bおよび実装基板9bは、回路アセンブリ100bを構成している。図41Bにおける実装基板9bの上面は、実装面9Abである。実装面9Abには、実装基板9bの内部回路(図示せず)に接続された一対(2つ)のランド88bが形成されている。各ランド88bは、たとえば、Cuからなる。各ランド88bの表面には、半田13bが当該表面から突出するように設けられている。
チップ抵抗器1bを実装基板9bに実装する場合、自動実装機(図示せず)の吸着ノズル91bをチップ抵抗器1bの裏面2Bbに吸着してから吸着ノズル91bを動かすことによって、チップ抵抗器1bを搬送する。このとき、吸着ノズル91bは、裏面2Bbの長手方向における略中央部分に吸着する。前述したように、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、チップ抵抗器1bの片面(素子形成面2Ab)および側面2Cb〜2Fbにおける素子形成面2Ab側の端部だけに設けられていることから、チップ抵抗器1bにおいて裏面2Bbは、電極(凹凸)がない平坦面となる。よって、吸着ノズル91bをチップ抵抗器1bに吸着して移動させる場合に、平坦な裏面2Bbに吸着ノズル91bを吸着させることができる。換言すれば、平坦な裏面2Bbであれば、吸着ノズル91bが吸着できる部分のマージンを増やすことができる。これによって、吸着ノズル91bをチップ抵抗器1bに確実に吸着させ、チップ抵抗器1bを途中で吸着ノズル91bから脱落させることなく確実に搬送できる。
そして、チップ抵抗器1bを吸着した吸着ノズル91bを実装基板9bまで移動させる。このとき、チップ抵抗器1bの素子形成面2Abと実装基板9bの実装面9Abとが互いに対向する。この状態で、吸着ノズル91bを移動させて実装基板9bに押し付け、チップ抵抗器1bにおいて、第1接続電極3bを一方のランド88bの半田13bに接触させ、第2接続電極4bを他方のランド88bの半田13bに接触させる。次に、半田13bを加熱すると、半田13bが溶融する。その後、半田13bが冷却されて固まると、第1接続電極3bと当該一方のランド88bとが半田13bを介して接合し、第2接続電極4bと当該他方のランド88bとが半田13bを介して接合する。つまり、2つのランド88bのそれぞれが、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bにおいて対応する電極に半田接合される。これにより、実装基板9bへのチップ抵抗器1bの実装(フリップチップ接続)が完了して、回路アセンブリ100bが完成する。なお、外部接続電極として機能する第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、半田濡れ性の向上および信頼性の向上のために、金(Au)で形成するか、または、後述するように表面に金メッキを施すことが望ましい。
完成状態の回路アセンブリ100bでは、チップ抵抗器1bの素子形成面2Abと実装基板9bの実装面9Abとが、隙間を隔てて対向しつつ、平行に延びている(図41Cも参照)。当該隙間の寸法は、第1接続電極3bまたは第2接続電極4bにおいて素子形成面2Abから突き出た部分の厚みと半田13bの厚さとの合計に相当する。
図41Cは、実装基板に実装された状態のチップ抵抗器を素子形成面側から見た模式的な平面図である。次に、図41Bおよび図41Cを参照して、チップ抵抗器1bの実装形状を説明する。
まず、図41Bに示すように、断面視においては、たとえば、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、素子形成面2Ab上の表面部分と側面2Cb,2Db上の側面部分とが一体的になってL字状に形成されている。そのため、図41Cに示すように、実装面9Ab(素子形成面2Ab)の法線方向(これらの面に直交する方向)から回路アセンブリ100b(厳密には、チップ抵抗器1bと実装基板9bとの接合部分)を見てみると、第1接続電極3bと一方のランド88bとを接合する半田13bは、第1接続電極3bの表面部分だけでなく、側面部分にも吸着している。同様に、第2接続電極4bと他方のランド88bとを接合する半田13bも、第2接続電極4bの表面部分だけでなく、側面部分にも吸着している。
このように、チップ抵抗器1bでは、第1接続電極3bが基板2bの三方の側面2Cb,2Eb,2Fbを一体的に覆うように形成され、第2接続電極4bが基板2bの三方の側面2Db,2Eb,2Fbを一体的に覆うように形成されている。すなわち、基板2bの素子形成面2Abに加えて側面2Cb〜2Fbにも電極が形成されているので、チップ抵抗器1bを実装基板9bに半田付けする際の接着面積を拡大することができる。その結果、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bに対する半田13bの吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。
また、図41Cに示すように、半田13bが基板2bの素子形成面2Abから側面2Cb〜2Fbに回り込むように吸着する。したがって実装状態において、第1接続電極3bを三方の側面2Cb,2Eb,2Fbで半田13bによって保持し、第2接続電極4bを三方の側面2Db,2Eb,2Fbで半田13bによって保持することによって、矩形状のチップ抵抗器1bの全ての側面2Cb〜2Fbを半田13bで固定することができる。これにより、チップ抵抗器1bの実装形状を安定化させることができる。
次に、チップ抵抗器1bにおける他の構成を主に説明する。
図42は、チップ抵抗器の平面図であり、第1接続電極、第2接続電極および素子の配置関係ならびに素子の平面視の構成(レイアウトパターン)を示す図である。
図42を参照して、素子5bは、抵抗回路網となっている。具体的に、素子5bは、行方向(基板2bの長手方向)に沿って配列された8個の抵抗体Rと、列方向(基板2bの幅方向)に沿って配列された44個の抵抗体Rとで構成された合計352個の抵抗体Rを有している。これらの抵抗体Rは、素子5bの抵抗回路網を構成する複数の素子要素である。
これら多数個の抵抗体Rが1個〜64個の所定個数毎にまとめられて電気的に接続されることによって、複数種類の抵抗回路が形成されている。形成された複数種類の抵抗回路は、導体膜D(導体で形成された配線膜)で所定の態様に接続されている。さらに、基板2bの素子形成面2Abには、抵抗回路を素子5bに対して電気的に組み込んだり、または、素子5bから電気的に分離したりするために切断(溶断)可能な複数のヒューズFが設けられている。複数のヒューズFおよび導体膜Dは、第1接続電極3bの内側辺沿いに、配置領域が直線状になるように配列されている。より具体的には、複数のヒューズFおよび導体膜Dが隣接するように配置され、その配列方向が直線状になっている。複数のヒューズFは、複数種類の抵抗回路(抵抗回路毎の複数の抵抗体R)を第1接続電極3bに対してそれぞれ切断可能(切り離し可能)に接続している。
図43Aは、図42に示す素子の一部分を拡大して描いた平面図である。図43Bは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図43AのB−Bに沿う長さ方向の縦断面図である。図43Cは、素子における抵抗体の構成を説明するために描いた図43AのC−Cに沿う幅方向の縦断面図である。
図43A、図43Bおよび図43Cを参照して、抵抗体Rの構成について説明をする。
チップ抵抗器1bは、前述した配線膜22b、パッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bの他に、絶縁膜20bと抵抗体膜21bとをさらに備えている(図43Bおよび図43C参照)。絶縁膜20b、抵抗体膜21b、配線膜22b、パッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bは、基板2b(素子形成面2Ab)上に形成されている。
絶縁膜20bは、SiO2(酸化シリコン)からなる。絶縁膜20bは、基板2bの素子形成面2Abの全域を覆っている。絶縁膜20bの厚さは、約10000Åである。
抵抗体膜21bは、絶縁膜20b上に形成されている。抵抗体膜21bは、TiN、TiONまたはTiSiONにより形成されている。抵抗体膜21bの厚さは、約2000Åである。抵抗体膜21bは、第1接続電極3bと第2接続電極4bとの間を平行に直線状に延びる複数本の抵抗体膜(以下「抵抗体膜ライン21Ab」という)を構成していて、抵抗体膜ライン21Abは、ライン方向に所定の位置で切断されている場合がある(図43A参照)。
抵抗体膜ライン21Ab上には、配線膜22bが積層されている。配線膜22bは、Al(アルミニウム)またはアルミニウムとCu(銅)との合金(AlCu合金)からなる。配線膜22bの厚さは、約8000Åである。配線膜22bは、抵抗体膜ライン21Ab上に、ライン方向に一定間隔Rを開けて積層されていて、抵抗体膜ライン21Abに接している。
この構成の抵抗体膜ライン21Abおよび配線膜22bの電気的特徴を回路記号で示すと、図44の通りである。すなわち、図44(a)に示すように、所定間隔Rの領域の抵抗体膜ライン21Ab部分が、それぞれ、一定の抵抗値rを有する1つの抵抗体Rを形成している。
そして、配線膜22bが積層された領域では、配線膜22bが隣り合う抵抗体R同士を電気的に接続することによって、当該配線膜22bで抵抗体膜ライン21Abが短絡されている。よって、図44(b)に示す抵抗rの抵抗体Rの直列接続からなる抵抗回路が形成されている。
また、隣接する抵抗体膜ライン21Ab同士は抵抗体膜21bおよび配線膜22bで接続されているから、図43Aに示す素子5bの抵抗回路網は、図44(c)に示す(前述した抵抗体Rの単位抵抗からなる)抵抗回路を構成している。このように、抵抗体膜21bおよび配線膜22bは、抵抗体Rや抵抗回路(つまり素子5b)を構成している。そして、各抵抗体Rは、抵抗体膜ライン21Ab(抵抗体膜21b)と、抵抗体膜ライン21Ab上にライン方向に一定間隔をあけて積層された複数の配線膜22bとを含み、配線膜22bが積層されていない一定間隔R部分の抵抗体膜ライン21Abが、1個の抵抗体Rを構成している。抵抗体Rを構成している部分における抵抗体膜ライン21Abは、その形状および大きさが全て等しい。よって、基板2b上にマトリックス状に配列された多数個の抵抗体Rは、等しい抵抗値を有している。
また、抵抗体膜ライン21Ab上に積層された配線膜22bは、抵抗体Rを形成すると共に、複数個の抵抗体Rを接続して抵抗回路を構成するための導体膜Dの役目も果たしている(図42参照)。
図45(a)は、図42に示すチップ抵抗器の平面図の一部分を拡大して描いたヒューズを含む領域の部分拡大平面図であり、図45(b)は、図45(a)のB−Bに沿う断面構造を示す図である。
図45(a)および(b)に示すように、前述したヒューズFおよび導体膜Dも、抵抗体Rを形成する抵抗体膜21b上に積層された配線膜22bにより形成されている。すなわち、抵抗体Rを形成する抵抗体膜ライン21Ab上に積層された配線膜22bと同じレイヤーに、配線膜22bと同じ金属材料であるAlまたはAlCu合金によってヒューズFおよび導体膜Dが形成されている。なお、配線膜22bは、前述したように、抵抗回路を形成するために、複数個の抵抗体Rを電気的に接続する導体膜Dとしても用いられている。
つまり、抵抗体膜21b上に積層された同一レイヤーにおいて、抵抗体Rを形成するための配線膜や、ヒューズFや、導体膜Dや、さらには、素子5bを第1接続電極3bおよび第2接続電極4bに接続するための配線膜が、配線膜22bとして、同一の金属材料(AlまたはAlCu合金)を用いて形成されている。なお、ヒューズFを配線膜22bと異ならせている(区別している)のは、ヒューズFが切断しやすいように細く形成されていること、および、ヒューズFの周囲に他の回路要素が存在しないように配置されていることによるからである。
ここで、配線膜22bにおいて、ヒューズFが配置された領域を、トリミング対象領域Xということにする(図42および図45(a)参照)。トリミング対象領域Xは、第1接続電極3bの内側辺沿いの直線状領域であって、トリミング対象領域Xには、ヒューズFだけでなく、導体膜Dも配置されている。また、トリミング対象領域Xの配線膜22bの下方にも抵抗体膜21bが形成されている(図45(b)参照)。そして、ヒューズFは、配線膜22bにおいて、トリミング対象領域X以外の部分よりも配線間距離が大きい(周囲から離された)配線である。
なお、ヒューズFは、配線膜22bの一部だけでなく、抵抗体R(抵抗体膜21b)の一部と抵抗体膜21b上の配線膜22bの一部とのまとまり(ヒューズ素子)を指していてもよい。
また、ヒューズFは、導体膜Dと同一のレイヤーを用いる場合のみを説明したが、導体膜Dでは、その上に更に別の導体膜を積層するようにし、導体膜D全体の抵抗値を下げるようにしてもよい。なお、この場合であっても、ヒューズFの上に導体膜を積層しなければ、ヒューズFの溶断性が悪くなることはない。
図46は、第2参考例の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図46を参照して、素子5bは、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とを第1接続電極3bからこの順番で直列接続することによって構成されている。基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2のそれぞれは、自身の末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の抵抗体Rを直列接続することで構成されている。抵抗回路R1は、1つの抵抗体Rで構成されている。抵抗回路R/2〜R/32のそれぞれは、自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の抵抗体Rを並列接続することで構成されている。抵抗回路の末尾の数の意味については、後述する図47および図48においても同じである。
そして、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに対して、ヒューズFが1つずつ並列的に接続されている。ヒューズF同士は、直接または導体膜D(図45(a)参照)を介して直列に接続されている。
図46に示すように全てのヒューズFが溶断されていない状態では、素子5bは、第1接続電極3bおよび第2接続電極4b間に設けられた8個の抵抗体Rの直列接続からなる基準抵抗回路R8の抵抗回路を構成している。たとえば、1個の抵抗体Rの抵抗値rをr=8Ωとすれば、8r=64Ωの抵抗回路(基準抵抗回路R8)により第1接続電極3bおよび第2接続電極4bが接続されたチップ抵抗器1bが構成されている。
また、全てのヒューズFが溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の複数種類の抵抗回路は、短絡された状態となっている。つまり、基準抵抗回路R8には、12種類13個の抵抗回路R64〜R/32が直列に接続されているが、各抵抗回路は、それぞれ並列に接続されたヒューズFにより短絡されているので、電気的に見ると、各抵抗回路は素子5bに組み込まれてはいない。
この実施形態に係るチップ抵抗器1bでは、要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断する。それにより、並列的に接続されたヒューズFが溶断された抵抗回路は、素子5bに組み込まれることになる。よって、素子5bの全体の抵抗値を、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路が直列に接続されて組み込まれた抵抗値とすることができる。
特に、複数種類の抵抗回路は、等しい抵抗値を有する抵抗体Rが、直列に1個、2個、4個、8個、16個、32個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の直列抵抗回路ならびに等しい抵抗値の抵抗体Rが並列に2個、4個、8個、16個…と、公比が2となる等比数列的に抵抗体Rの個数が増加されて接続された複数種類の並列抵抗回路を備えている。そのため、ヒューズF(前述したヒューズ素子も含む)を選択的に溶断することにより、素子5b(抵抗56b)全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調整して、チップ抵抗器1bにおいて所望の値の抵抗を発生させることができる。
図47は、第2参考例の他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図46に示すように基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を直列接続して素子5bを構成する代わりに、図47に示すように素子5bを構成してもかまわない。詳しくは、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの間で、基準抵抗回路R/16と、12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128の並列接続回路との直列接続回路によって素子5bを構成してもよい。
この場合、基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路には、それぞれ、ヒューズFが直列に接続されている。全てのヒューズFが溶断されていない状態では、各抵抗回路は素子5bに対して電気的に組み込まれている。要求される抵抗値に応じて、ヒューズFを選択的に、たとえばレーザ光で溶断すれば、溶断されたヒューズFに対応する抵抗回路(ヒューズFが直列に接続された抵抗回路)は、素子5bから電気的に分離されるので、チップ抵抗器1b全体の抵抗値を調整することができる。
図48は、第2参考例のさらに他の実施形態に係る素子の電気回路図である。
図48に示す素子5bの特徴は、複数種類の抵抗回路の直列接続と、複数種類の抵抗回路の並列接続とが直列に接続された回路構成となっていることである。直列接続される複数種類の抵抗回路には、先の実施形態と同様、抵抗回路毎に、並列にヒューズFが接続されていて、直列接続された複数種類の抵抗回路は、全てヒューズFで短絡状態とされている。したがって、ヒューズFを溶断すると、その溶断されるヒューズFで短絡されていた抵抗回路が、素子5bに電気的に組み込まれることになる。
一方、並列接続された複数種類の抵抗回路には、それぞれ、直列にヒューズFが接続されている。したがって、ヒューズFを溶断することにより、溶断されたヒューズFが直列に接続されている抵抗回路を、抵抗回路の並列接続から電気的に切り離すことができる。
かかる構成とすれば、たとえば、1kΩ以下の小抵抗は並列接続側で作り、1kΩ以上の抵抗回路を直列接続側で作れば、数Ωの小抵抗から数MΩの大抵抗までの広範な範囲の抵抗回路を、等しい基本設計で構成した抵抗の回路網を用いて作ることができる。つまりチップ抵抗器1bでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体Rを組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器1bを共通の設計で実現することができる。
以上のように、このチップ抵抗器1bでは、トリミング対象領域Xにおいて、複数の抵抗体R(抵抗回路)の接続状態が変更可能である。
図49は、チップ抵抗器の模式的な断面図である。
次に、図49を参照して、チップ抵抗器1bについてさらに詳しく説明する。なお、説明の便宜上、図49では、前述した素子5bについては簡略化して示していると共に、基板2b以外の各要素にはハッチングを付している。
ここでは、前述したパッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bについて説明する。
パッシベーション膜23bは、たとえばSiN(窒化シリコン)からなり、その厚さは、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)である。パッシベーション膜23bは、素子形成面2Abおよび側面2Cb〜2Fbのそれぞれにおけるほぼ全域に亘って設けられている。素子形成面2Ab上のパッシベーション膜23bは、抵抗体膜21bおよび抵抗体膜21b上の各配線膜22b(つまり、素子5b)を表面(図49の上側)から被覆していて、素子5bにおける各抵抗体Rの上面を覆っている。そのため、パッシベーション膜23bは、前述したトリミング対象領域Xにおける配線膜22bも覆っている(図45(b)参照)。また、パッシベーション膜23bは、素子5b(配線膜22bおよび抵抗体膜21b)に接しており、抵抗体膜21b以外の領域では絶縁膜20bにも接している。これにより、素子形成面2Ab上のパッシベーション膜23bは、素子形成面2Ab全域を覆って素子5bおよび絶縁膜20bを保護する保護膜として機能している。また、素子形成面2Abでは、パッシベーション膜23bによって、抵抗体R間における配線膜22b以外での短絡(隣り合う抵抗体膜ライン21Ab間における短絡)が防止されている。
一方、側面2Cb〜2Fbのそれぞれに設けられたパッシベーション膜23bは、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの側面部分と基板2bの側面2Cb〜2Fbとの間に介在されており、側面2Cb〜2Fbのそれぞれを保護する保護層として機能している。これにより、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bと基板2bとを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。ただし、この実施形態では、高抵抗の基板2bを用いているので、パッシベーション膜23bがなくても、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bと基板2bとの短絡を良好に防止することができる。なお、パッシベーション膜23bは極めて薄い膜なので、本実施形態では、側面2Cb〜2Fbのそれぞれを覆うパッシベーション膜23bを、基板2bの一部とみなすことにする。そのため、側面2Cb〜2Fbのそれぞれを覆うパッシベーション膜23bを、側面2Cb〜2Fbそのものとみなすことにしている。
樹脂膜24bは、パッシベーション膜23bと共にチップ抵抗器1bの素子形成面2Abを保護するものであり、ポリイミド等の樹脂からなる。樹脂膜24bの厚みは、約5μmである。
樹脂膜24bは、素子形成面2Ab上のパッシベーション膜23bの表面(パッシベーション膜23bに被覆された抵抗体膜21bおよび配線膜22bも含む)の全域を被覆している。
樹脂膜24bには、配線膜22bにおける第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの側面部分に対向する周縁部を露出させる切欠部25bが1つずつ形成されている。各切欠部25bは、樹脂膜24bおよびパッシベーション膜23bを、それぞれの厚さ方向において連続して貫通している。そのため、切欠部25bは、樹脂膜24bだけでなくパッシベーション膜23bにも形成されている。これにより、各配線膜22bは、素子5bに近い内側の周縁部のみが樹脂膜24bによって選択的に覆われており、その他の、基板2bの周縁部85bに沿う周縁部が切欠部25bを介して選択的に露出している。配線膜22bにおいて各切欠部25bから露出された表面は、外部接続用のパッド領域22Abとなっている。また、切欠部25bから露出する配線膜22bは、素子形成面2Abにおいて基板2bの周縁部85bから内方へ所定の間隔(たとえば、3μm〜6μm)離れて配置されている。また、切欠部25bの側面には、チップ抵抗器1bの一方の短辺82bから他方の短辺82bへ向かって、絶縁膜26bが全体的に形成されている。
2つの切欠部25bのうち、一方の切欠部25bは、第1接続電極3bによって埋め尽くされ、他方の切欠部25bは、第2接続電極4bによって埋め尽くされている。この第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、前述したように、素子形成面2Abに加えて側面2Cb〜2Fbも覆うように形成されている。また、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、樹脂膜24bから突出するように形成されていると共に、樹脂膜24bの表面に沿って基板2bの内方(素子5b側)へ引き出された引き出し部27bを有している。
ここで、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれは、Ni層33b、Pd層34bおよびAu層35bを素子形成面2Ab側および側面2Cb〜2Fb側からこの順で有している。すなわち、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれは、素子形成面2Ab上の領域だけでなく、側面2Cb〜2Fb上の領域においても、Ni層33b、Pd層34bおよびAu層35bからなる積層構造を有している。そのため、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれにおいて、Ni層33bとAu層35bとの間にPd層34bが介装されている。第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれにおいて、Ni層33bは各接続電極の大部分を占めており、Pd層34bおよびAu層35bは、Ni層33bに比べて格段に薄く形成されている。Ni層33bは、チップ抵抗器1bが実装基板9bに実装された際に(図41Bおよび図41C参照)、各切欠部25bのパッド領域22Abにおける配線膜22bのAlと、前述した半田13bとを中継する役割を有している。
このように、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bでは、Ni層33bの表面がAu層35bによって覆われているので、Ni層33bが酸化することを防止できる。また、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bでは、Au層35bを薄くすることによってAu層35bに貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層33bとAu層35bとの間に介装されたPd層34bが当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層33bが外部に露出されて酸化することを防止できる。
そして、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれでは、Au層35bが、最表面に露出している。第1接続電極3bは、一方の切欠部25bを介して、この切欠部25bにおけるパッド領域22Abにおいて配線膜22bに対して電気的に接続されている。第2接続電極4bは、他方の切欠部25bを介して、この切欠部25bにおけるパッド領域22Abにおいて配線膜22bに対して電気的に接続されている。第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれでは、Ni層33bがパッド領域22Abに対して接続されている。これにより、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれは、素子5bに対して電気的に接続されている。ここで、配線膜22bは、抵抗体Rのまとまり(抵抗56b)、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bのそれぞれに接続された配線を形成している。
このように、切欠部25bが形成された樹脂膜24bおよびパッシベーション膜23bは、切欠部25bから第1接続電極3bおよび第2接続電極4bを露出させた状態で素子形成面2Abを覆っている。そのため、樹脂膜24bの表面において切欠部25bからはみ出した(突出した)第1接続電極3bおよび第2接続電極4bを介して、チップ抵抗器1bと実装基板9bとの間における電気的接続を達成することができる(図41Bおよび図41C参照)。
図50A〜図50Iは、図49に示すチップ抵抗器の製造方法を示す図解的な断面図である。
まず、図50Aに示すように、基板2bの元となる基板30bを用意する。この場合、基板30bの表面30Abは、基板2bの素子形成面2Abであり、基板30bの裏面30Bbは、基板2bの裏面2Bbである。
そして、基板30bの表面30Abを熱酸化して、表面30AbにSiO2等からなる絶縁膜20bを形成し、絶縁膜20b上に素子5b(抵抗体Rおよび抵抗体Rに接続された配線膜22b)を形成する。具体的には、スパッタリングにより、まず、絶縁膜20bの上にTiN、TiONまたはTiSiONの抵抗体膜21bを全面に形成し、さらに、抵抗体膜21bに接するように抵抗体膜21bの上にアルミニウム(Al)の配線膜22bを積層する。その後、フォトリソグラフィプロセスを用い、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)等のドライエッチングにより抵抗体膜21bおよび配線膜22bを選択的に除去してパターニングし、図43Aに示すように、平面視で、抵抗体膜21bが積層された一定幅の抵抗体膜ライン21Abが一定間隔をあけて列方向に配列される構成を得る。このとき、部分的に抵抗体膜ライン21Abおよび配線膜22bが切断された領域も形成されると共に、前述したトリミング対象領域XにおいてヒューズFおよび導体膜Dが形成される(図42参照)。続いて、たとえばウェットエッチングにより抵抗体膜ライン21Abの上に積層された配線膜22bを選択的に除去する。この結果、抵抗体膜ライン21Ab上に一定間隔Rをあけて配線膜22bが積層された構成の素子5bが得られる。この際、抵抗体膜21bおよび配線膜22bが目標寸法で形成されたか否かを確かめるために、素子5b全体の抵抗値を測定してもよい。
図50Aを参照して、素子5bは、1枚の基板30bに形成するチップ抵抗器1bの数に応じて、基板30bの表面30Ab上における多数の箇所に形成される。基板30bにおいて素子5b(前述した抵抗56b)が形成された1つの領域をチップ部品領域Yというと、基板30bの表面30Abには、抵抗56bをそれぞれ有する複数のチップ部品領域Y(つまり、素子5b)が形成(設定)される。1つのチップ部品領域Yは、完成した1つのチップ抵抗器1b(図49参照)を平面視したものと一致する。そして、基板30bの表面30Abにおいて、隣り合うチップ部品領域Yの間の領域を、境界領域Zということにする。境界領域Zは、帯状をなしていて、平面視で格子状に延びている。境界領域Zによって区画された1つの格子の中にチップ部品領域Yが1つ配置されている。境界領域Zの幅は、1μm〜60μm(たとえば20μm)と極めて狭いので、基板30bでは多くのチップ部品領域Yを確保でき、結果としてチップ抵抗器1bの大量生産が可能になる。
次に、図50Aに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法によって、SiNからなる絶縁膜45bを、基板30bの表面30Abの全域に亘って形成する。絶縁膜45bは、絶縁膜20bおよび絶縁膜20b上の素子5b(抵抗体膜21bや配線膜22b)を全て覆っていて、これらに接している。そのため、絶縁膜45bは、前述したトリミング対象領域X(図42参照)における配線膜22bも覆っている。また、絶縁膜45bは、基板30bの表面30Abにおいて全域に亘って形成されることから、表面30Abにおいて、トリミング対象領域X以外の領域にまで延びて形成される。これにより、絶縁膜45bは、表面30Ab(表面30Ab上の素子5bも含む)全域を保護する保護膜となる。
次に、図50Bに示すようにマスク65bを用いたエッチングによって、絶縁膜45bを選択的に除去する。これにより、絶縁膜45bの一部に開口28bが形成され、その開口28bにおいて各パッド領域22Abが露出する。1つの半製品50bにつき、開口28bは2つ形成される。
各半製品50bにおいて、絶縁膜45bに2つの開口28bを形成した後に、抵抗測定装置(図示せず)のプローブ70bを各開口28bのパッド領域22Abに接触させて、素子5bの全体の抵抗値を検出する。そして、絶縁膜45b越しにレーザ光(図示せず)を任意のヒューズF(図42参照)に照射することによって、前述したトリミング対象領域Xの配線膜22bをレーザ光でトリミングして、当該ヒューズFを溶断する。このようにして、必要な抵抗値となるようにヒューズFを溶断(トリミング)することによって、前述したように、半製品50b(換言すれば、チップ抵抗器1b)全体の抵抗値を調整できる。このとき、絶縁膜45bが素子5bを覆うカバー膜となっているので、溶断の際に生じた破片などが素子5bに付着して短絡が生じることを防止できる。また、絶縁膜45bがヒューズF(抵抗体膜21b)を覆っていることから、レーザ光のエネルギーをヒューズFに蓄えてヒューズFを確実に溶断することができる。その後、必要に応じて、CVD法によって絶縁膜45b上にSiNを形成し、絶縁膜45bを厚くする。最終的な絶縁膜45b(図50Cに示された状態)は、1000Å〜5000Å(ここでは、約3000Å)の厚さを有している。このとき、絶縁膜45bの一部は、各開口28bに入り込んで開口28bを塞いでいる。
次に、図50Cに示すように、ポリイミドからなる感光性樹脂の液体を、基板30bに対して、絶縁膜45bの上からスプレー塗布して、感光性樹脂の樹脂膜46bを形成する。表面30Ab上の樹脂膜46bの表面は、表面30Abに沿って平坦になっている。次に、樹脂膜46bに熱処理(キュア処理)を施す。これにより、樹脂膜46bの厚みが熱収縮すると共に、樹脂膜46bが硬化して膜質が安定する。
次に、図50Dに示すように、樹脂膜46b、絶縁膜45bおよび絶縁膜20bをパターニングすることによって、これらの膜の切欠部25bと一致する部分を選択的に除去する。これにより切欠部25bが形成されると共に、境界領域Zにおいては表面30Ab(絶縁膜20b)が露出することになる。
次に、図50Eに示すように、基板30bの表面30Abの全域に亘ってレジストパターン41bを形成する。レジストパターン41bには、開口42bが形成されている。
図51は、図50Eの工程において溝を形成するために用いられるレジストパターンの一部の模式的な平面図である。
図51を参照して、レジストパターン41bの開口42bは、多数のチップ抵抗器1b(換言すれば、前述したチップ部品領域Y)を行列状(格子状でもある)に配置した場合において平面視で隣り合うチップ抵抗器1bの輪郭の間の領域(図51においてハッチングを付した部分であり、換言すれば、境界領域Z)に一致(対応)している。そのため、開口42bの全体形状は、互いに直交する直線部分42Abおよび42Bbを複数有する格子状になっている。
レジストパターン41bでは、開口42bにおいて互いに直交する直線部分42Abおよび42Bbは、互いに直交した状態を保ちながら(湾曲することなく)つながっている。そのため、直線部分42Abおよび42Bbの交差部分43bは、平面視で略90°をなすように尖っている。
図50Eを参照して、レジストパターン41bをマスクとするプラズマエッチングにより、基板30bを選択的に除去する。これにより、隣り合う素子5b(チップ部品領域Y)の間の境界領域Zにおける配線膜22bから間隔を空けた位置で基板30bの材料が除去される。その結果、平面視においてレジストパターン41bの開口42bと一致する位置(境界領域Z)には、基板30bの表面30Abから基板30bの厚さ途中まで到達する所定深さの溝44bが形成される。溝44bは、互いに対向する1対の側壁44Abと、当該1対の側壁44Abの下端(基板30bの裏面30Bb側の端)の間を結ぶ底壁44Bbとによって区画されている。基板30bの表面30Abを基準とした溝44bの深さは約100μmであり、溝44bの幅(対向する側壁44Abの間隔)は約20μmであって、深さ方向全域に渡って一定である。
基板30bにおける溝44bの全体形状は、平面視でレジストパターン41bの開口42b(図51参照)と一致する格子状になっている。そして、基板30bの表面30Abでは、各素子5bが形成されたチップ部品領域Yのまわりを溝44bにおける矩形枠体部分(境界領域Z)が取り囲んでいる。基板30bにおいて素子5bが形成された部分は、チップ抵抗器1bの半製品50bである。基板30bの表面30Abでは、溝44bに取り囲まれたチップ部品領域Yに半製品50bが1つずつ位置していて、これらの半製品50bは、行列状に整列配置されている。このように溝44bを形成することによって、基板30bを複数のチップ部品領域Y毎の基板2bに分離する。溝44bが形成された後、レジストパターン41bを除去する。
次に、図50Fに示すように、CVD法によって、SiNからなる絶縁膜47bを、基板30bの表面30Abの全域に亘って形成する。このとき、溝44bの内周面(前述した側壁44Abの区画面44Cbや底壁44Bbの上面)の全域にも絶縁膜47bが形成される。
次に、図50Gに示すように、絶縁膜47bを選択的にエッチングする。具体的には、絶縁膜47bにおける表面30Abに平行な部分を選択的にエッチングする。これにより、配線膜22bのパッド領域22Abが露出すると共に、溝44bにおいては、底壁44Bb上の絶縁膜47bが除去される。
次に、無電解めっきによって、各切欠部25bから露出した配線膜22bからNi、PdおよびAuを順にめっき成長させる。めっきは、各めっき膜が表面30Abに沿う横方向に成長し、溝44bの側壁44Ab上の絶縁膜47bを覆うまで続けられる。これにより、図50Hに示すように、Ni/Pd/Au積層膜からなる第1接続電極3bおよび第2接続電極4bを形成する。
図52は、第1接続電極および第2接続電極の製造工程を説明するための図である。
詳しくは、図52を参照して、まず、パッド領域22Abの表面が浄化されることで、当該表面の有機物(炭素のしみ等のスマットや油脂性の汚れも含む)が除去(脱脂)される(ステップS1)。次に、当該表面の酸化膜が除去される(ステップS2)。次に、当該表面においてジンケート処理が実施されて、当該表面における(配線膜22の)AlがZnに置換される(ステップS3)。次に、当該表面上のZnが硝酸等で剥離されて、パッド領域22Abでは、新しいAlが露出される(ステップS4)。
次に、パッド領域22Abをめっき液に浸けることによって、パッド領域22Abにおける新しいAlの表面にNiめっきが施される。これにより、めっき液中のNiが化学的に還元析出されて、当該表面にNi層33bが形成される(ステップS5)。
次に、Ni層33bを別のめっき液に浸けることによって、当該Ni層33bの表面にPdめっきが施される。これにより、めっき液中のPdが化学的に還元析出されて、当該Ni層33bの表面にPd層34bが形成される(ステップS6)。
次に、Pd層34bをさらに別のめっき液に浸けることによって、当該Pd層34bの表面にAuめっきが施される。これにより、めっき液中のAuが化学的に還元析出されて、当該Pd層34bの表面にAu層35bが形成される(ステップS7)。これによって、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bが形成され、形成後の第1接続電極3bおよび第2接続電極4bを乾燥させると(ステップS8)、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの製造工程が完了する。なお、前後するステップの間には、半製品50bを水で洗浄する工程が適宜実施される。また、ジンケート処理は複数回実施されてもよい。
図50Hでは、各半製品50bにおいて第1接続電極3bおよび第2接続電極4bが形成された後の状態を示している。
以上のように、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bを無電解めっきによって形成するので、電極材料であるNi,PdおよびAlを絶縁膜47b上にも良好にめっき成長させることができる。また、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bを電解めっきによって形成する場合に比べて、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bについての形成工程の工程数(たとえば、電解めっきで必要となるリソグラフィ工程やレジストマスクの剥離工程等)を削減してチップ抵抗器1bの生産性を向上できる。さらに、無電解めっきの場合には、電解めっきで必要とされるレジストマスクが不要であることから、レジストマスクの位置ずれによる第1接続電極3bおよび第2接続電極4bについての形成位置にずれが生じないので、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの形成位置精度を向上して歩留まりを向上できる。
また、この方法では、配線膜22bが切欠部25bから露出していて、配線膜22bから溝44bまでめっき成長の妨げになるものが無い。そのため、配線膜22bから溝44bまで直線的にめっき成長させることができる。その結果、電極の形成にかかる時間の短縮を図ることができる。
このように第1接続電極3bおよび第2接続電極4bが形成されてから、第1接続電極3bおよび第2接続電極4b間での通電検査が行われた後に、基板30bが裏面30Bbから研削される。
具体的には、溝44bを形成した後に、図50Iに示すように、PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる薄板状であって粘着面72bを有する支持テープ71bが、粘着面72bにおいて、各半製品50bにおける第1接続電極3bおよび第2接続電極4b側(つまり、表面30Ab)に貼着される。これにより、各半製品50bが支持テープ71bに支持される。ここで、支持テープ71bとして、たとえば、ラミネートテープを用いることができる。
各半製品50bが支持テープ71bに支持された状態で、基板30bを裏面30Bb側から研削する。研削によって、溝44bの底壁44Bb(図50H参照)の上面に達するまで基板30bが薄型化されると、隣り合う半製品50bを連結するものがなくなるので、溝44bを境界として基板30bが分割され、半製品50bが個別に分離してチップ抵抗器1bの完成品となる。つまり、溝44b(換言すれば、境界領域Z)において基板30bが切断(分断)され、これによって、個々のチップ抵抗器1bが切り出される。なお、基板30bを裏面30Bb側から溝44bの底壁44Bbまでエッチングすることによってチップ抵抗器1bを切り出しても構わない。
完成した各チップ抵抗器1bでは、溝44bの側壁44Abの区画面44Cbをなしていた部分が、基板2bの側面2Cb〜2Fbのいずれかとなり、裏面30Bbが裏面2Bbとなる。つまり、前述したようにエッチングによって溝44bを形成する工程(図50E参照)は、側面2Cb〜2Fbを形成する工程に含まれる。また、絶縁膜45bおよび絶縁膜47bの一部がパッシベーション膜23bとなり、樹脂膜46bが樹脂膜24bとなり、絶縁膜47bの一部が絶縁膜26bとなる。
以上のように、溝44bを形成してから基板30bを裏面30Bb側から研削すれば、基板30bに形成された複数のチップ部品領域Yを一斉に個々のチップ抵抗器1b(チップ部品)に分割できる(複数のチップ抵抗器1bの個片を一度に得ることができる)。よって、複数のチップ抵抗器1bの製造時間の短縮によってチップ抵抗器1bの生産性の向上を図ることができる。
なお、完成したチップ抵抗器1bにおける基板2bの裏面2Bbを研磨やエッチングすることによって鏡面化して裏面2Bbを綺麗にしてもよい。
図53A〜図53Dは、図50Iの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程を示す図解的な断面図である。
図53Aでは、個片化された複数のチップ抵抗器1bが引き続き支持テープ71bにくっついている状態を示している。この状態で、図53Bに示すように、各チップ抵抗器1bの基板2bの裏面2Bbに対して、熱発泡シート73bを貼着する。熱発泡シート73bは、シート状のシート本体74bと、シート本体74b内に練り込まれた多数の発泡粒子75bとを含んでいる。
シート本体74bの粘着力は、支持テープ71bの粘着面72bにおける粘着力よりも強い。そこで、各チップ抵抗器1bの基板2bの裏面2Bbに熱発泡シート73bを貼着した後に、図53Cに示すように、支持テープ71bを各チップ抵抗器1bから引き剥がして、チップ抵抗器1bを熱発泡シート73bに転写する。このとき、支持テープ71bに紫外線を照射すると(図53Bの点線矢印参照)、粘着面72bの粘着性が低下するので、支持テープ71bが各チップ抵抗器1bから剥がれやすくなる。
次に、熱発泡シート73bを加熱する。これにより、図53Dに示すように、熱発泡シート73bでは、シート本体74b内の各発泡粒子75bが発泡してシート本体74bの表面から膨出する。その結果、熱発泡シート73bと各チップ抵抗器1bの基板2bの裏面2Bbとの接触面積が小さくなり、全てのチップ抵抗器1bが熱発泡シート73bから自然に剥がれる(脱落する)。このように回収されたチップ抵抗器1bは、実装基板9b(図41B参照)に実装されたり、エンボスキャリアテープ(図示せず)に形成された収容空間に収容されたりする。この場合、支持テープ71bまたは熱発泡シート73bからチップ抵抗器1bを1つずつ引き剥がす場合に比べて、処理時間の短縮を図ることができる。もちろん、複数のチップ抵抗器1bが支持テープ71bにくっついた状態で(図53A参照)、熱発泡シート73bを用いずに、支持テープ71bからチップ抵抗器1bを所定個数ずつ直接引き剥がしてもよい。
図54A〜図54Cは、図50Iの工程後におけるチップ抵抗器の回収工程(変形例)を示す図解的な断面図である。
図54A〜図54Cに示す別の方法によって、各チップ抵抗器1bを回収することもできる。
図54Aでは、図53Aと同様に、個片化された複数のチップ抵抗器1bが引き続き支持テープ71bにくっついている状態を示している。この状態で、図54Bに示すように、各チップ抵抗器1bの基板2bの裏面2Bbに転写テープ77bを貼着する。転写テープ77bは、支持テープ71bの粘着面72bよりも強い粘着力を有する。そこで、図54Cに示すように、各チップ抵抗器1bに転写テープ77bを貼着した後に、支持テープ71bを各チップ抵抗器1bから引き剥がす。この際、前述したように、粘着面72bの粘着性を低下させるために支持テープ71bに紫外線(図54Bの点線矢印参照)を照射してもよい。
転写テープ77bの両端には、回収装置(図示せず)のフレーム78bが貼り付けられている。両側のフレーム78bは、互いが接近する方向または離間する方向に移動できる。支持テープ71bを各チップ抵抗器1bから引き剥がした後に、両側のフレーム78bを互いが離間する方向に移動させると、転写テープ77bが伸張して薄くなる。これによって、転写テープ77bの粘着力が低下するので、各チップ抵抗器1bが転写テープ77bから剥がれやすくなる。この状態で、搬送装置(図示せず)の吸着ノズル76bをチップ抵抗器1bの素子形成面2Ab側に向けると、搬送装置(図示せず)が発生する吸着力によって、このチップ抵抗器1bが転写テープ77bから引き剥がされて吸着ノズル76bに吸着される。この際、図54Cに示す突起79bによって、吸着ノズル76bとは反対側から転写テープ77b越しにチップ抵抗器1bを吸着ノズル76b側へ突き上げると、チップ抵抗器1bを転写テープ77bから円滑に引き剥がすことができる。このように回収されたチップ抵抗器1bは、吸着ノズル76bに吸着された状態で搬送装置(図示せず)によって搬送される。
以上、第2参考例の実施形態について説明してきたが、第2参考例はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、第2参考例のチップ部品の一例として、前述した実施形態では、チップ抵抗器1bを開示したが、第2参考例は、チップコンデンサやチップインダクタといったチップ部品にも適用できる。以下では、チップコンデンサについて説明する。
図55は、第2参考例の他の実施形態に係るチップコンデンサの平面図である。図56は、図55の切断面線A−Aから見た断面図である。図57は、前記チップコンデンサの一部の構成を分離して示す分解斜視図である。
これから述べるチップコンデンサ101bにおいて、前述したチップ抵抗器1bで説明した部分と対応する部分には、同一の参照符号を付し、当該部分についての詳しい説明を省略する。チップコンデンサ101bにおいて、チップ抵抗器1bで説明した部分と同一の参照符号が付された部分は、特に言及しない限り、チップ抵抗器1bで説明した部分と同じ構成を有していて、チップ抵抗器1bで説明した部分(特に、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bに関する部分について)と同じ作用効果を奏することができる。
図53を参照して、チップコンデンサ101bは、チップ抵抗器1bと同様に、基板2bと、基板2b上(基板2bの素子形成面2Ab側)に配置された第1接続電極3bと、同じく基板2b上に配置された第2接続電極4bとを備えている。基板2bは、この実施形態では、平面視において矩形形状を有している。基板2bの長手方向両端部に第1接続電極3bおよび第2接続電極4bがそれぞれ配置されている。第1接続電極3bおよび第2接続電極4bは、この実施形態では、基板2bの短手方向に延びたほぼ矩形の平面形状を有している。チップコンデンサ101bでは、チップ抵抗器1bと同様に、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bが、周縁部85bを覆うように、素子形成面2Abおよび側面2Cb〜2Fbに一体的に形成されている。そのため、チップコンデンサ101bが実装基板9bに実装された回路アセンブリ100b(図41Bおよび図41C参照)では、チップ抵抗器1bの場合と同様に、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bに対する半田13bの吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。また、第1接続電極3bを三方の側面2Cb,2Eb,2Fbで半田13bによって保持し、第2接続電極4bを三方の側面2Db,2Eb,2Fbで半田13bによって保持することによって、矩形状のチップコンデンサ101bの全ての側面2Cb〜2Fbを半田13bで固定することができる。これにより、チップコンデンサ101bの実装形状を安定化させることができる。
基板2bの素子形成面2Abには、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの間のキャパシタ配置領域105b内に、複数のキャパシタ要素C1〜C9が形成されている。複数のキャパシタ要素C1〜C9は、前述した素子5b(ここでは、キャパシタ素子)を構成する複数の素子要素であり、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの間に接続されている。詳しくは、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、複数のヒューズユニット107b(前述したヒューズFに相当する)を介してそれぞれ第2接続電極4bに対して切り離し可能となるように電気的に接続されている。
図56および図57に示されているように、基板2bの素子形成面2Abには絶縁膜20bが形成されていて、絶縁膜20bの表面に下部電極膜111bが形成されている。下部電極膜111bは、キャパシタ配置領域105bのほぼ全域にわたっている。さらに、下部電極膜111bは、第1接続電極3bの直下の領域にまで延びて形成されている。より具体的には、下部電極膜111bは、キャパシタ配置領域105bにおいてキャパシタ要素C1〜C9の共通の下部電極として機能するキャパシタ電極領域111Abと、第1接続電極3bの直下に配置される外部電極引き出しのためのパッド領域111Bbとを有している。キャパシタ電極領域111Abがキャパシタ配置領域105bに位置していて、パッド領域111Bbが第1接続電極3bの直下に位置して第1接続電極3bに接触している。
キャパシタ配置領域105bにおいて下部電極膜111b(キャパシタ電極領域111Ab)を覆って接するように容量膜(誘電体膜)112bが形成されている。容量膜112bは、キャパシタ電極領域111Ab(キャパシタ配置領域105b)の全域にわたって形成されている。容量膜112bは、この実施形態では、さらにキャパシタ配置領域105b外の絶縁膜20bを覆っている。
容量膜112bの上には、上部電極膜113bが形成されている。図55では、明瞭化のために、上部電極膜113bを着色して示してある。上部電極膜113bは、キャパシタ配置領域105bに位置するキャパシタ電極領域113Abと、第2接続電極4bの直下に位置して第2接続電極4bに接触するパッド領域113Bbと、キャパシタ電極領域113Abとパッド領域113Bbとの間に配置されたヒューズ領域113Cbとを有している。
キャパシタ電極領域113Abにおいて、上部電極膜113bは、複数の電極膜部分(上部電極膜部分)131b〜139bに分割(分離)されている。この実施形態では、各電極膜部分131b〜139bは、いずれも矩形形状に形成されていて、ヒューズ領域113Cbから第1接続電極3bに向かって帯状に延びている。複数の電極膜部分131b〜139bは、複数種類の対向面積で、容量膜112bを挟んで(容量膜112bに接しつつ)下部電極膜111bに対向している。より具体的には、電極膜部分131b〜139bの下部電極膜111bに対する対向面積は、1:2:4:8:16:32:64:128:128となるように定められていてもよい。すなわち、複数の電極膜部分131b〜139bは、対向面積の異なる複数の電極膜部分を含み、より詳細には、公比が2の等比数列をなすように設定された対向面積を有する複数の電極膜部分131b〜138b(または131b〜137b,139b)を含む。これによって、各電極膜部分131b〜139bと容量膜112bを挟んで対向する下部電極膜111bとによってそれぞれ構成される複数のキャパシタ要素C1〜C9は、互いに異なる容量値を有する複数のキャパシタ要素を含む。電極膜部分131b〜139bの対向面積の比が前述の通りである場合、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の比は、当該対向面積の比と等しく、1:2:4:8:16:32:64:128:128となる。すなわち、複数のキャパシタ要素C1〜C9は、公比が2の等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素C1〜C8(またはC1〜C7,C9)を含むことになる。
この実施形態では、電極膜部分131b〜135bは、幅が等しく、長さの比を1:2:4:8:16に設定した帯状に形成されている。また、電極膜部分135b,136b,137b,138b,139bは、長さが等しく、幅の比を1:2:4:8:8に設定した帯状に形成されている。電極膜部分135b〜139bは、キャパシタ配置領域105bの第2接続電極4b側の端縁から第1接続電極3b側の端縁までの範囲に渡って延びて形成されており、電極膜部分131b〜134bは、それよりも短く形成されている。
パッド領域113Bbは、第2接続電極4bとほぼ相似形に形成されており、ほぼ矩形の平面形状を有している。図56に示すように、パッド領域113Bbにおける上部電極膜113bは、第2接続電極4bに接している。
ヒューズ領域113Cbは、基板2b上において、パッド領域113Bbの一つの長辺(基板2bの周縁に対して内方側の長辺)に沿って配置されている。ヒューズ領域113Cbは、パッド領域113Bbの前記一つの長辺に沿って配列された複数のヒューズユニット107bを含む。
ヒューズユニット107bは、上部電極膜113bのパッド領域113Bbと同じ材料で一体的に形成されている。複数の電極膜部分131b〜139bは、1つまたは複数個のヒューズユニット107bと一体的に形成されていて、それらのヒューズユニット107bを介してパッド領域113Bbに接続され、このパッド領域113Bbを介して第2接続電極4bに電気的に接続されている。図55に示すように、面積の比較的小さな電極膜部分131b〜136bは、一つのヒューズユニット107bによってパッド領域113Bbに接続されており、面積の比較的大きな電極膜部分137b〜139bは複数個のヒューズユニット107bを介してパッド領域113Bbに接続されている。全てのヒューズユニット107bが用いられる必要はなく、この実施形態では、一部のヒューズユニット107bは未使用である。
ヒューズユニット107bは、パッド領域113Bbとの接続のための第1幅広部107Abと、電極膜部分131b〜139bとの接続のための第2幅広部107Bbと、第1bおよび第2幅広部107Ab,107Bbの間を接続する幅狭部107Cbとを含む。幅狭部107Cbは、レーザ光によって切断(溶断)することができるように構成されている。それによって、電極膜部分131b〜139bのうち不要な電極膜部分を、ヒューズユニット107bの切断によって第1および第2接続電極3b,4bから電気的に切り離すことができる。
図55および図57では図示を省略したが、図56に表れている通り、上部電極膜113bの表面を含むチップコンデンサ101bの表面は、前述したパッシベーション膜23bによって覆われている。パッシベーション膜23bは、たとえば窒化膜からなっていて、チップコンデンサ101bの上面のみならず、基板2bの側面2Cb〜2Fbまで延びて、側面2Cb〜2Fbの全域をも覆うように形成されている。側面2Cb〜2Fbにおいては、基板2bと第1接続電極3bおよび第2接続電極4bとの間に介在されている。さらに、パッシベーション膜23bの上には、前述した樹脂膜24bが形成されている。樹脂膜24bは、素子形成面2Abを覆っている。
パッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bは、チップコンデンサ101bの表面を保護する保護膜である。これらには、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bに対応する領域に、前述した切欠部25bがそれぞれ形成されている。切欠部25bは、パッシベーション膜23bおよび樹脂膜24bを貫通している。さらに、この実施形態では、第1接続電極3bに対応した切欠部25bは、容量膜112bをも貫通している。
切欠部25bには、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bがそれぞれ埋め込まれている。これにより、第1接続電極3bは下部電極膜111bのパッド領域111Bbに接合しており、第2接続電極4bは上部電極膜113bのパッド領域113Bbに接合している。第1および第2接続電極3b,4bは、樹脂膜24bの表面から突出すると共に、樹脂膜24bの表面に沿って基板2bの内方(素子5b側)へ引き出された引き出し部27bを有している。これにより、実装基板に対してチップコンデンサ101bをフリップチップ接合することができる。
図58は、前記チップコンデンサの内部の電気的構成を示す回路図である。第1接続電極3bと第2接続電極4bとの間に複数のキャパシタ要素C1〜C9が並列に接続されている。各キャパシタ要素C1〜C9と第2接続電極4bとの間には、一つまたは複数のヒューズユニット107bでそれぞれ構成されたヒューズF1〜F9が直列に介装されている。
ヒューズF1〜F9が全て接続されているときは、チップコンデンサ101bの容量値は、キャパシタ要素C1〜C9の容量値の総和に等しい。複数のヒューズF1〜F9から選択した1つまたは2つ以上のヒューズを切断すると、当該切断されたヒューズに対応するキャパシタ要素が切り離され、当該切り離されたキャパシタ要素の容量値だけチップコンデンサ101bの容量値が減少する。
そこで、パッド領域111Bb,113Bbの間の容量値(キャパシタ要素C1〜C9の総容量値)を測定し、その後に所望の容量値に応じてヒューズF1〜F9から適切に選択した一つまたは複数のヒューズをレーザ光で溶断すれば、所望の容量値への合わせ込み(レーザトリミング)を行うことができる。とくに、キャパシタ要素C1〜C8の容量値が、公比2の等比数列をなすように設定されていれば、最小の容量値(当該等比数列の初項の値)であるキャパシタ要素C1の容量値に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込む微調整が可能である。
たとえば、キャパシタ要素C1〜C9の容量値は次のように定められていてもよい。
C1=0.03125pF
C2=0.0625pF
C3=0.125pF
C4=0.25pF
C5=0.5pF
C6=1pF
C7=2pF
C8=4pF
C9=4pF
この場合、0.03125pFの最小合わせ込み精度でチップコンデンサ101bの容量を微調整できる。また、ヒューズF1〜F9から切断すべきヒューズを適切に選択することで、10pF〜18pFの間の任意の容量値のチップコンデンサ101bを提供することができる。
以上のように、この実施形態によれば、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの間に、ヒューズF1〜F9によって切り離し可能な複数のキャパシタ要素C1〜C9が設けられている。キャパシタ要素C1〜C9は、異なる容量値の複数のキャパシタ要素、より具体的には等比数列をなすように容量値が設定された複数のキャパシタ要素を含んでいる。それによって、ヒューズF1〜F9から1つまたは複数のヒューズを選択してレーザ光で溶断することにより、設計を変更することなく複数種類の容量値に対応でき、かつ所望の容量値に正確に合わせ込むことができるチップコンデンサ101bを共通の設計で実現することができる。
チップコンデンサ101bの各部の詳細について以下に説明を加える。
図55を参照して、基板2bは、たとえば平面視において0.3mm×0.15mm、0.4mm×0.2mmなどの矩形形状(好ましくは、0.4mm×0.2mm以下の大きさ)を有していてもよい。キャパシタ配置領域105bは、概ね、基板2bの短辺の長さに相当する一辺を有する正方形領域となる。基板2bの厚さは、150μm程度であってもよい。図56を参照して、基板2bは、たとえば、裏面側(キャパシタ要素C1〜C9が形成されていない表面)からの研削または研磨によって薄型化された基板であってもよい。
絶縁膜20bは、酸化シリコン膜等の酸化膜であってもよい。その膜厚は、500Å〜2000Å程度であってもよい。
下部電極膜111bは、導電性膜、とくに金属膜であることが好ましく、たとえばアルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる下部電極膜111bは、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜113bも同様に、導電性膜、とくに金属膜で構成することが好ましく、アルミニウム膜であってもよい。アルミニウム膜からなる上部電極膜113bは、スパッタ法によって形成することができる。上部電極膜113bのキャパシタ電極領域113Abを電極膜部分131b〜139bに分割し、さらに、ヒューズ領域113Cbを複数のヒューズユニット107bに整形するためのパターニングは、フォトリソグラフィおよびエッチングプロセスによって行うことができる。
容量膜112bは、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、その膜厚は500Å〜2000Å(たとえば1000Å)とすることができる。容量膜112bは、プラズマCVD(化学的気相成長)によって形成された窒化シリコン膜であってもよい。
パッシベーション膜23bは、たとえば窒化シリコン膜で構成することができ、たとえばプラズマCVD法によって形成できる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。樹脂膜24bは、前述の通り、ポリイミド膜その他の樹脂膜で構成することができる。
第1および第2接続電極3b,4bは、たとえば、下部電極膜111bまたは上部電極膜113bに接するニッケル層と、このニッケル層上に積層したパラジウム層と、そのパラジウム層上に積層した金層とを積層した積層構造膜からなっていてもよく、たとえば、めっき法(より具体的には無電解めっき法)で形成することができる。ニッケル層は下部電極膜111bまたは上部電極膜113bに対する密着性の向上に寄与し、パラジウム層は上部電極膜または下部電極膜の材料と第1および第2接続電極3b,4bの最上層の金との相互拡散を抑制する拡散防止層として機能する。
このようなチップコンデンサ101bの製造工程は、素子5bを形成した後のチップ抵抗器1bの製造工程と同じである。
チップコンデンサ101bにおいて素子5b(キャパシタ素子)を形成する場合には、まず、前述した基板30b(基板2b)の表面に、熱酸化法および/またはCVD法によって、酸化膜(たとえば酸化シリコン膜)からなる絶縁膜20bが形成される。次に、たとえばスパッタ法によって、アルミニウム膜からなる下部電極膜111bが絶縁膜20bの表面全域に形成される。下部電極膜111bの膜厚は8000Å程度とされてもよい。次に、その下部電極膜の表面に、下部電極膜111bの最終形状に対応したレジストパターンが、フォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとして、下部電極膜がエッチングされることにより、図55等に示したパターンの下部電極膜111bが得られる。下部電極膜111bのエッチングは、たとえば、反応性イオンエッチングによって行うことができる。
次に、たとえばプラズマCVD法によって、窒化シリコン膜等からなる容量膜112bが、下部電極膜111b上に形成される。下部電極膜111bが形成されていない領域では、絶縁膜20bの表面に容量膜112bが形成されることになる。次に、その容量膜112bの上に、上部電極膜113bが形成される。上部電極膜113bは、たとえばアルミニウム膜からなり、スパッタ法によって形成することができる。その膜厚は、8000Å程度とされてもよい。次に、上部電極膜113bの表面に上部電極膜113bの最終形状に対応したレジストパターンがフォトリソグラフィによって形成される。このレジストパターンをマスクとしたエッチングにより、上部電極膜113bが、最終形状(図55等参照)にパターニングされる。それによって、上部電極膜113bは、キャパシタ電極領域113Abに複数の電極膜部分131b〜139bに分割された部分を有し、ヒューズ領域113Cbに複数のヒューズユニット107bを有し、それらのヒューズユニット107bに接続されたパッド領域113Bbを有するパターンに整形される。上部電極膜113bのパターニングのためのエッチングは、燐酸等のエッチング液を用いたウェットエッチングによって行ってもよいし、反応性イオンエッチングによって行ってもよい。
以上によって、チップコンデンサ101bにおける素子5b(キャパシタ要素C1〜C9やヒューズユニット107b)が形成される。
この状態から、ヒューズユニット107bを溶断するためのレーザトリミングが行われる(図50B参照)。すなわち、前記総容量値の測定結果に応じて選択されたヒューズを構成するヒューズユニット107bにレーザ光を当てて、そのヒューズユニット107bの幅狭部107Cb(図55参照)が溶断される。これにより、対応するキャパシタ要素がパッド領域113Bbから切り離される。ヒューズユニット107bにレーザ光を当てるとき、カバー膜である絶縁膜45bの働きによって、ヒューズユニット107bの近傍にレーザ光のエネルギーが蓄積され、それによって、ヒューズユニット107bが溶断する。これにより、チップコンデンサ101bの容量値を確実に目的の容量値とすることができる。
その後、図50C〜図50Iの工程に倣って、チップ抵抗器1bの場合と同じ工程を実行すればよい。
以上、第2参考例のチップ部品(チップ抵抗器1bやチップコンデンサ101b)について説明してきたが、第2参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、チップ抵抗器1bの場合、複数の抵抗回路が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす抵抗値を有する複数の抵抗回路を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。また、チップコンデンサ101bの場合にも、キャパシタ要素が公比r(0<r、r≠1)=2の等比数列をなす容量値を有する複数のキャパシタ要素を有している例を示したが、当該等比数列の公比は2以外の数であってもよい。
また、チップ抵抗器1bやチップコンデンサ101bでは、基板2bの表面に絶縁膜20bが形成されているが、高抵抗の基板2bであるため、絶縁膜20bを省くこともできる。
また、チップコンデンサ101bでは、上部電極膜113bだけが複数の電極膜部分に分割されている構成を示したが、下部電極膜111bだけが複数の電極膜部分に分割されていたり、上部電極膜113bおよび下部電極膜111bが両方とも複数の電極膜部分に分割されていたりしてもよい。さらに、前述の実施形態では、上部電極膜または下部電極膜とヒューズユニットとが一体化されている例を示したが、上部電極膜または下部電極膜とは別の導体膜でヒューズユニットを形成してもよい。また、前述したチップコンデンサ101bでは、上部電極膜113bおよび下部電極膜111bを有する1層のキャパシタ構造が形成されているが、上部電極膜113b上に、容量膜を介して別の電極膜を積層することで、複数のキャパシタ構造が積層されてもよい。
また、第2参考例を、チップインダクタに適用した場合、当該チップインダクタにおいて前述した基板2b上に形成された素子5bは、複数のインダクタ要素(素子要素)を含んだインダクタ素子を含み、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bの間に接続されている。素子5bは、前述した多層基板の多層配線中に設けられ、配線膜22bによって形成されている。また、チップインダクタでは、基板2b上に、前述した複数のヒューズFが設けられていて、各インダクタ要素が、第1接続電極3bおよび第2接続電極4bに対して、ヒューズFを介して切り離し可能に接続されている。
この場合、チップインダクタでは、一つまたは複数のヒューズFを選択して切断することにより、複数のインダクタ要素の組み合わせパターンを任意のパターンとすることができるので、電気的特性が様々なチップインダクタを共通の設計で実現することができる。
チップインダクタにおいても、チップ抵抗器1bおよびチップコンデンサ101bの場合と同じ作用効果を奏することができる。
また、前述した第1接続電極3bおよび第2接続電極4bにおいて、Ni層33bとAu層35bとの間に介装されていたPd層34bを省略することもできる。Ni層33bとAu層35bとの接着性が良好なので、Au層35bに前述したピンホールができないのであれば、Pd層34bを省略しても構わない。
図59は、第2参考例のチップ部品が用いられる電子機器の一例であるスマートフォンの外観を示す斜視図である。スマートフォン201bは、扁平な直方体形状の筐体202bの内部に電子部品を収納して構成されている。筐体202bは表側および裏側に長方形状の一対の主面を有しており、その一対の主面が4つの側面で結合されている。筐体202bの一つの主面には、液晶パネルや有機ELパネル等で構成された表示パネル203bの表示面が露出している。表示パネル203bの表示面は、タッチパネルを構成しており、使用者に対する入力インターフェースを提供している。
表示パネル203bは、筐体202bの一つの主面の大部分を占める長方形形状に形成されている。表示パネル203bの一つの短辺に沿うように、操作ボタン204bが配置されている。この実施形態では、複数(3つ)の操作ボタン204bが表示パネル203bの短辺に沿って配列されている。使用者は、操作ボタン204bおよびタッチパネルを操作することによって、スマートフォン201bに対する操作を行い、必要な機能を呼び出して実行させることができる。
表示パネル203bの別の一つの短辺の近傍には、スピーカ205bが配置されている。スピーカ205bは、電話機能のための受話口を提供すると共に、音楽データ等を再生するための音響化ユニットとしても用いられる。一方、操作ボタン204bの近くには、筐体202bの一つの側面にマイクロフォン206bが配置されている。マイクロフォン206bは、電話機能のための送話口を提供するほか、録音用のマイクロフォンとして用いることもできる。
図60は、筐体202bの内部に収容された回路アセンブリ100bの構成を示す図解的な平面図である。回路アセンブリ100bは、前述した実装基板9bと、実装基板9bの実装面9Abに実装された回路部品とを含む。複数の回路部品は、複数の集積回路素子(IC)212b−220bと、複数のチップ部品とを含む。複数のICは、伝送処理IC212b、ワンセグTV受信IC213b、GPS受信IC214b、FMチューナIC215b、電源IC216b、フラッシュメモリ217b、マイクロコンピュータ218b、電源IC219bおよびベースバンドIC220bを含む。複数のチップ部品は、チップインダクタ221b,225b,235b、チップ抵抗器222b,224b,233b、チップキャパシタ227b,230b,234b、およびチップダイオード228b,231bを含む。
伝送処理IC212bは、表示パネル203bに対する表示制御信号を生成し、かつ表示パネル203bの表面のタッチパネルからの入力信号を受信するための電子回路を内蔵している。表示パネル203bとの接続のために、伝送処理IC212bには、フレキシブル配線209bが接続されている。
ワンセグTV受信IC213bは、ワンセグ放送(携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送)の電波を受信するための受信機を構成する電子回路を内蔵している。ワンセグTV受信IC213bの近傍には、複数のチップインダクタ221bと、複数のチップ抵抗器222bとが配置されている。ワンセグTV受信IC213b、チップインダクタ221bおよびチップ抵抗器222bは、ワンセグ放送受信回路223bを構成している。チップインダクタ221bおよびチップ抵抗器222bは、正確に合わせ込まれたインダクタンスおよび抵抗をそれぞれ有し、ワンセグ放送受信回路223bに高精度な回路定数を与える。
GPS受信IC214bは、GPS衛星からの電波を受信してスマートフォン201bの位置情報を出力する電子回路を内蔵している。
FMチューナIC215bは、その近傍において実装基板9bに実装された複数のチップ抵抗器224bおよび複数のチップインダクタ225bと共に、FM放送受信回路226bを構成している。チップ抵抗器224bおよびチップインダクタ225bは、正確に合わせ込まれた抵抗値およびインダクタンスをそれぞれ有し、FM放送受信回路226bに高精度な回路定数を与える。
電源IC216bの近傍には、複数のチップキャパシタ227bおよび複数のチップダイオード228bが実装基板9bの実装面に実装されている。電源IC216bは、チップキャパシタ227bおよびチップダイオード228bと共に、電源回路229bを構成している。
フラッシュメモリ217bは、オペレーティングシステムプログラム、スマートフォン201bの内部で生成されたデータ、通信機能によって外部から取得したデータおよびプログラムなどを記録するための記憶装置である。
マイクロコンピュータ218bは、CPU、ROMおよびRAMを内蔵しており、各種の演算処理を実行することにより、スマートフォン201bの複数の機能を実現する演算処理回路である。より具体的には、マイクロコンピュータ218bの働きにより、画像処理や各種アプリケーションプログラムのための演算処理が実現されるようになっている。
電源IC219bの近くには、複数のチップキャパシタ230bおよび複数のチップダイオード231bが実装基板9bの実装面に実装されている。電源IC219bは、チップキャパシタ230bおよびチップダイオード231bと共に、電源回路232bを構成している。
ベースバンドIC220bの近くには、複数のチップ抵抗器233b、複数のチップキャパシタ234b、および複数のチップインダクタ235bが、実装基板9bの実装面9Abに実装されている。ベースバンドIC220bは、チップ抵抗器233b、チップキャパシタ234bおよびチップインダクタ235bと共に、ベースバンド通信回路236bを構成している。ベースバンド通信回路236bは、電話通信およびデータ通信のための通信機能を提供する。
このような構成によって、電源回路229b,232bによって適切に調整された電力が、伝送処理IC212b、GPS受信IC214b、ワンセグ放送受信回路223b、FM放送受信回路226b、ベースバンド通信回路236b、フラッシュメモリ217bおよびマイクロコンピュータ218bに供給される。マイクロコンピュータ218bは、伝送処理IC212bを介して入力される入力信号に応答して演算処理を行い、伝送処理IC212bから表示パネル203bに表示制御信号を出力して表示パネル203bに各種の表示を行わせる。
タッチパネルまたは操作ボタン204bの操作によってワンセグ放送の受信が指示されると、ワンセグ放送受信回路223bの働きによってワンセグ放送が受信される。そして、受信された画像を表示パネル203bに出力し、受信された音声をスピーカ205bから音響化させるための演算処理が、マイクロコンピュータ218bによって実行される。
また、スマートフォン201bの位置情報が必要とされるときには、マイクロコンピュータ218bは、GPS受信IC214bが出力する位置情報を取得し、その位置情報を用いた演算処理を実行する。
さらに、タッチパネルまたは操作ボタン204bの操作によってFM放送受信指令が入力されると、マイクロコンピュータ218bは、FM放送受信回路226bを起動し、受信された音声をスピーカ205bから出力させるための演算処理を実行する。
フラッシュメモリ217bは、通信によって取得したデータの記憶や、マイクロコンピュータ218bの演算や、タッチパネルからの入力によって作成されたデータを記憶するために用いられる。マイクロコンピュータ218bは、必要に応じて、フラッシュメモリ217bに対してデータを書き込み、またフラッシュメモリ217bからデータを読み出す。
電話通信またはデータ通信の機能は、ベースバンド通信回路236bによって実現される。マイクロコンピュータ218bは、ベースバンド通信回路236bを制御して、音声またはデータを送受信するための処理を行う。
なお、この第2参考例の実施形態の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
(項1)
表面および側面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板上に形成された電極とを含み、
前記シリコン基板は、その導電型を決めるためのドーパントを含有していない、チップ部品。
(項2)
表面および側面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板上に形成された電極とを含み、
前記シリコン基板の抵抗値が、100Ω・cm以上である、チップ部品。
この構成によれば、シリコン基板に導電性を決めるためのドーパントが含有されていないか、シリコン基板の抵抗値が100Ω・cm以上である。これにより、チップ部品の下地基板となるシリコン基板に優れた絶縁性を付与することができる。シリコン基板が良好な絶縁性を示すので、当該シリコン基板と電極との間に絶縁膜が介在されていても、これらの間に形成される寄生容量をゼロにできるか、もしくは、ドーパントを含有するシリコン基板を用いる場合に比べて低減することができる。その結果、この寄生容量によるデバイス特性への影響を低減できるので、たとえば高周波特性等を改善することができる。
なお、シリコン基板に導電性を決めるためのドーパントとは、シリコンをn型やp型にするときにドーピングされる不純物である。当該不純物としては、たとえば、リン、ヒ素、アンチモン等のn型不純物や、ボロン等のp型不純物が挙げられる。したがって、第2参考例のシリコン基板には、シリコンの導電型に影響を与えない程度の少量の不純物であれば含有されていてもよい。
(項3)
前記チップ部品は、前記電極と前記シリコン基板との間に介在された絶縁膜をさらに含む、項1または2に記載のチップ部品。
第2参考例のチップ部品ではシリコン基板の抵抗値が非常に高いので、電極をシリコン基板に接するように形成しても、不要な短絡を避けることができるが、電極とシリコン基板との間に絶縁膜を設ければ、そのような短絡の発生を確実に防ぐことができる。
(項4)
前記電極は、前記シリコン基板の前記表面の縁部を覆うように、当該表面および前記側面に一体的に形成されている、項3に記載のチップ部品。
この構成によれば、シリコン基板の表面に加えて側面にも電極が形成されているので、チップ部品を実装基板に半田付けする際の接着面積を拡大することができる。その結果、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。また、半田がシリコン基板の表面から側面に回り込むように吸着するので、実装状態において、シリコン基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持することができる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化させることができる。
しかも、電極を単にシリコン基板の側面にも形成しただけではなく、電極とシリコン基板との間に絶縁膜を介在させている。これにより、たとえばシリコン基板と電極とを短絡させたくない場合に、その要求に応えることができる。
(項5)
前記シリコン基板は平面視において矩形状であり、
前記電極は、前記シリコン基板の三方の前記縁部を覆うように形成されている、項4に記載のチップ部品。
この構成によれば、実装状態において、チップ部品をシリコン基板の側面の三方向から保持することができるので、チップ部品の実装形状を一層安定化させることができる。
(項6)
前記シリコン基板の前記表面において前記縁部から間隔を空けて形成され、前記電極が電気的に接続された配線膜をさらに含む、項4または5に記載のチップ部品。
この構成によれば、外部接続するための電極から配線膜が独立しているので、シリコン基板の表面に形成される素子パターンに合わせた配線設計を行うことができる。
(項7)
前記配線膜は、前記電極に覆われた前記シリコン基板の前記縁部に対向する周縁部が選択的に露出しており、当該露出部分を除く周縁部が樹脂膜で選択的に覆われている、項6に記載のチップ部品。
この構成により、電極と配線膜との接合面積を増やすことができるので、接触抵抗を減らすことができる。
(項8)
前記電極は、前記樹脂膜の表面から突出するように形成されている、項7に記載のチップ部品。
(項9)
前記電極は、前記樹脂膜の前記表面に沿って横方向に引き出され、当該表面を選択的に覆う引き出し部を含む、項8に記載のチップ部品。
(項10)
前記電極が、Ni層と、Au層とを含み、前記Au層が最表面に露出している、項1〜9のいずれか一項に記載のチップ部品。
この構成の電極によれば、Ni層の表面がAu層によって覆われているので、Ni層が酸化することを防止できる。
(項11)
前記電極が、前記Ni層と前記Au層との間に介装されたPd層をさらに含む、項10に記載のチップ部品。
この構成の電極によれば、Au層を薄くすることによってAu層に貫通孔(ピンホール)ができてしまっても、Ni層とAu層との間に介装されたPd層が当該貫通孔を塞いでいるので、当該貫通孔からNi層が外部に露出されて酸化することを防止できる。
(項12)
前記電極が互いに間隔を空けて2つ設けられており、
前記チップ部品は、前記シリコン基板上に形成され前記2つの電極間に接続された抵抗体を含むチップ抵抗器である、項1〜11のいずれか一項に記載のチップ部品。
(項13)
複数の前記抵抗体と、前記シリコン基板上に設けられ、前記複数の抵抗体をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含む、項12に記載のチップ部品。
このチップ部品(チップ抵抗器)によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の抵抗値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、抵抗値の異なる複数の抵抗体を組み合わせることによって、様々な抵抗値のチップ抵抗器を共通の設計で実現することができる。
(項14)
前記電極が互いに間隔を空けて2つ設けられており、
前記チップ部品は、前記シリコン基板上に形成され前記2つの電極の間に接続されたキャパシタ素子を含むチップコンデンサである、項1〜11のいずれか一項に記載のチップ部品。
(項15)
前記キャパシタ素子を構成する複数のキャパシタ要素と、前記シリコン基板上に設けられ、前記複数のキャパシタ要素をそれぞれ切り離し可能に前記電極に接続する複数のヒューズとをさらに含む、項14に記載のチップ部品。
このチップ部品(チップコンデンサ)によれば、一つまたは複数のヒューズを選択して切断することにより、複数種類の容量値に、容易にかつ速やかに対応することができる。換言すれば、容量値の異なる複数のキャパシタ要素を組み合わせることによって、様々な容量値のチップコンデンサを共通の設計で実現することができる。
(項16)
項1〜15のいずれか一項に記載のチップ部品と、
前記シリコン基板の前記表面に対向する実装面に、前記電極に半田接合されたランドを有する実装基板とを含む、回路アセンブリ。
この構成により、シリコン基板(下地基板)に優れた絶縁性を付与できると共に、高周波特性の低下を抑制することができるチップ部品を備える回路アセンブリを提供することができる。
(項17)
前記チップ部品が、項4〜9のいずれか一項に記載のチップ部品であって、
前記実装面の法線方向から見たときに、前記半田が前記電極の表面部分および側面部分を覆うように形成されている、項16に記載の回路アセンブリ。
この構成によれば、電極に対する半田の吸着量を増やすことができるので、接着強度を向上させることができる。また、半田が電極の表面部分から側面部分に回り込むように吸着しているので、シリコン基板の表面および側面の二方向からチップ部品を保持することができる。そのため、チップ部品の実装形状を安定化させることができる。
(項18)
項16または17に記載の回路アセンブリと、
前記回路アセンブリを収容した筐体とを含む、電子機器。
この構成により、シリコン基板(下地基板)に優れた絶縁性を付与できると共に、高周波特性の低下を抑制することができるチップ部品を備える電子部品を提供することができる。
<第3参考例>
第3参考例の目的は、過電流が流入したときに、ヒューズ要素を可溶体部で確実に溶断することができるチップ型ヒューズおよびその製造方法を提供することである。
以下では、第3参考例の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図61は、第3参考例の一実施形態に係るチップ型ヒューズ1cの模式的な平面図である。まず、図61を参照して、チップ型ヒューズ1cの平面レイアウトを説明する。
チップ型ヒューズ1cは、基板2cと、基板2c上に形成された一対の電極3c,3cと、基板2c上において一対の電極3c,3c間に両端が接続されたヒューズ要素4cとを含む。
基板2cは、たとえば100Ω・cm以上の抵抗値を有する高抵抗基板である。基板2cは、この実施形態では、その表面21cの法線方向から見た平面視において互いに対向する一対の長辺5c,5cおよび一対の短辺6c,6cを有する矩形板状に形成されている。
一対の電極3c,3cは、基板2cの長辺5cに沿う長手方向の両端部にそれぞれ配置されている。各電極3cは、平面視において一対の短辺6c,6cに平行な一対の長辺7c,7cおよび一対の長辺5c,5cに平行な一対の短辺8c,8cを有する矩形状に形成されている。
ヒューズ要素4cは、一対の電極3c,3cそれぞれの下方に配置された一対のパッド部9c,9cと、一対のパッド9c,9c間に配置された可溶体部10cと、可溶体部10cと各パッド部9cとを接続する一対の配線部11cとを一体的に含む。この実施形態では、ヒューズ要素4cは、Al−Cu系合金からなるが、その他の金属材料からなっていてもよい。
各パッド部9cは、その全域が各電極3cの内方領域に収まるように、平面視において各電極3cよりも一回り小さい矩形状に形成されている。
可溶体部10cは、基板2cの長手方向に沿って延びるライン状に形成されており、その両端部に各配線部11cが接続されている。この実施形態では、可溶体部10cは、基板2cの長手方向に沿う直線状であるが、むろんS字状等の曲線状であってもよい。また、可溶体部10cは、この実施形態では、配線部11cとほぼ同じ幅で形成されているが、可溶体部10cをより容易に溶断させる観点から、配線部11cよりも幅狭に形成してもよい。
そして、この可溶体部10cの長手方向に直交する幅方向の両側方に、第3参考例の壁部の一例としての一対のダミーメタル12c,12cが配置されている。一対のダミーメタル12c,12cは、ヒューズ要素4cと同一の金属材料(この実施形態ではAl−Cu系合金)からなる。また、一対のダミーメタル12c,12cは、ライン状の可溶体部10cに沿って同じくライン状(直線状)に延びており、可溶体部10cとの間に側方の隙間13cを隔てて配置されている。この実施形態では、ライン状の可溶体部10cおよび一対のダミーメタル12c,12cをいずれも基板2cの長手方向に沿って形成することで、基板2cの幅方向に沿って形成する場合に比べて、サイズが制限された基板2c上の領域において比較的長い可溶体部10cおよび一対のダミーメタル12c,12cを形成できる。これにより、ある程度長い距離に亘って側方の隙間13cを形成できるので、可溶体部10cの熱を蓄える領域を増やすことができる。
一対の配線部11cは、基板2cの幅方向において、可溶体部10cに対して一方側およびその反対側に一つずつ配置されている。この実施形態では、各配線部11cは、可溶体部10cの端部から基板2cの長辺5cに垂直に延びる部分と、当該長辺5cに平行に延びる部分とを有する鉤形(L形)に形成されており、長辺5cに平行な部分がパッド部9cに接続されている。
図62は、図61のチップ型ヒューズ1cのA−A切断面、B−B切断面およびC−C切断面における断面図であって、A−A切断面は可溶体部10cおよびダミーメタル12cの構造を示し、B−B切断面は配線部11cの構造を示し、C−C切断面はパッド部9cの構造を示している。また、図63は、図61のチップ型ヒューズ1cのD−D切断面における断面図であって、可溶体部10cと配線部11cとの接続部分を示している。次に、図62および図63を参照して、チップ型ヒューズ1cの断面構造を説明する。
基板2cの表面21cには、その全域に亘ってパッド酸化膜14cが形成されている。パッド酸化膜14cは、酸化シリコン(SiO2)からなり、たとえば、1000Å〜30000Åの厚さを有している。ここで、パッド酸化膜14cが形成された表面21cは、その全域に亘って凹部が形成されていない平面状となっている。
パッド酸化膜14c上には、窒化膜15cを介してヒューズ要素4cが形成されている。窒化膜15cは、窒化シリコン(SiN)からなり、たとえば、8000Å以下の厚さを有している。この窒化膜15cは、ヒューズ要素4cの下方領域において、可溶体部10cの下方から除去されるように、ヒューズ要素4cの可溶体部10c以外の部分(この実施形態では、パッド部9cおよび配線部11c)の下方領域に選択的に形成されている。このように、可溶体部10c以外の部分が窒化膜15cからなる支持膜によって下側から選択的に支持されているので、可溶体部10cは、その両端部に接続された部分(この実施形態では、配線部11c)によって基板2cに対して浮いた状態で両持ち支持されている。これにより、可溶体部10cは、パッド酸化膜14cで覆われた基板2cとの間に下方の隙間16cを隔てて配置されている。また、可溶体部10cの側方のダミーメタル12cも同様に、基板2cとの間に下方の隙間16cを隔てて配置されている。ここで、図62のA−A切断面に示すように、可溶体部10cとダミーメタル12cとの間の側方の隙間13cは、後述する被覆酸化膜18cの厚さを考慮して、0.6μm以下となっている。
この実施形態では、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cは、その下面が第3参考例の第1絶縁膜の一例としての下地酸化膜17cで被覆され、さらにヒューズ要素4c全体を被覆するように、第3参考例の第2絶縁膜の一例としての被覆酸化膜18cが形成されている。ヒューズ要素4cを下地酸化膜17cおよび被覆酸化膜18cで完全に被覆することによって、可溶体部10cをその周囲から確実に絶縁することができる。被覆酸化膜18cは、基板2cの表面21cの全域に亘って形成されており、図62のB−B切断面およびC−C切断面、ならびに図63のD−D切断面に示すように、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの形成領域以外の領域において、パッド酸化膜14cに固定されている。ダミーメタル12cは、被覆酸化膜18cに被覆されることで、被覆酸化膜18cのパッド酸化膜14cに固定された部分によって基板2cに対して浮いた状態で支持されている。
そして、可溶体部10cおよびダミーメタル12cを覆うように、第3参考例の天井部の一例としての酸化膜19c、窒化膜20cおよび表面保護膜22cの積層膜が形成されている。酸化膜19cは、酸化シリコン(SiO2)からなり、たとえば、10000Å以下の厚さを有している。窒化膜20cは、窒化シリコン(SiN)からなり、たとえば、11000Å〜13000Åの厚さを有している。表面保護膜22cは、ポリイミドからなり、たとえば、20000Å〜100000Åの厚さを有している。
この積層膜19c,20c,22cは、可溶体部10cおよびダミーメタル12cの上方においては、図62のA−A切断面に示すように、可溶体部10cを介して一対のダミーメタル12c,12cの間に跨るように形成されている。これにより、可溶体部10cと一対のダミーメタル12c,12cとの間に側方の隙間13cは、その上方が積層膜19c,20c,22cで塞がれている。また、積層膜19c,20c,22cにおいて酸化膜19cは、側方の隙間13cに対向する部分が選択的に除去されている。これにより、酸化膜19cには、側方の隙間13cと同一パターンの隙間23cが形成されている。
積層膜19c,20c,22cと被覆酸化膜18cとの間には、窒化膜24cが介在している。窒化膜24cは、可溶体部10cおよびダミーメタル12cの上方領域から選択的に除去されている。これにより、積層膜19c,20c,22cは、被覆酸化膜18cで被覆された可溶体部10cとの間に上方の隙間25cを隔てて配置されている。
一対の電極3c,3cは、図62のC−C切断面に示すように、積層膜19c,20c,22c、窒化膜24cおよび被覆酸化膜18cを貫通して、その下面がパッド部9cに接続されている。
以上、このチップ型ヒューズ1cによれば、図62のA−A切断面に示すように、可溶体部10cの両側方さらには上方および下方の四方全体に隙間13c,16c,25cが形成されている。そのため、可溶体部10cで発生した熱をその周囲(隙間13c,16c,25c)に効率よく蓄えることができる。したがって、チップ型ヒューズ1cの一対の電極3c間に過電流が流入したときには、ヒューズ要素4cを可溶体部10cで確実に溶断することができる。
また、可溶体部10cの四方全体を隙間13c,16c,25cで取り囲むことによって、可溶体部10cの移動や歪曲に対応可能なスペースを確保することができる。
さらに、基板2cとして100Ω・cm以上の抵抗値を有する高抵抗基板を採用しているので、可溶体部10cの溶断時にパッド酸化膜14cが破壊されても、当該破壊箇所から露出する基板2cを介してリーク電流が流れることを防止することができる。
図64〜図70は、図61のチップ型ヒューズ1cの製造工程の一部を工程順に説明するための断面図であって、図62と同じA−A切断面、B−B切断面およびC−C切断面を示している。次に、図64〜図70を参照して、チップ型ヒューズ1cの製造方法を説明する。
チップ型ヒューズ1cを製造するには、まず図64に示すように、たとえば熱酸化法によって、基板2c上にパッド酸化膜14cが形成される。次に、たとえばCVD法によって窒化シリコン(SiN)をパッド酸化膜14c上に堆積することによって、第3参考例の第1犠牲層の一例としての窒化膜15cが形成される。窒化膜15cの厚さは、後のエッチング工程(図67参照)においてサイドエッチングが可能な大きさに設定され、たとえば8000Å以下である。次に、たとえばCVD法によってUSG(Un-doped Silicate Glass)を窒化膜15c上に堆積することによって、第3参考例の第1絶縁膜の一例としての下地酸化膜17cが形成される。下地酸化膜17cの厚さは、後の2回のエッチング工程(図67および図69参照)で消失しない大きさに設定され、たとえば7000Å〜9000Åである。ただし、この下地酸化膜17cを省略し、後述するヒューズ要素材料膜26cを窒化膜15c上に直接堆積させてもよい。次に、たとえばスパッタ法によってAl−Cu系合金を下地酸化膜17c上に堆積することによって、ヒューズ要素材料膜26cが形成される。ヒューズ要素材料膜26cの厚さは、たとえば4000Å〜6000Åである。
次に、図65に示すように、ヒューズ要素材料膜26c上に、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cを形成すべき領域を選択的に覆うマスク(図示せず)が形成され、当該マスクを利用するドライエッチングによって、ヒューズ要素材料膜26cが選択的に除去される。これにより、ヒューズ要素4c(パッド部9c、可溶体部10cおよび配線部11c)およびダミーメタル12cが同時に形成される。次に、ヒューズ要素4cの形成に利用したマスクを利用するドライエッチングによって、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの下方領域以外の下地酸化膜17cおよび窒化膜15cが選択的に除去される。
次に、図66に示すように、たとえばCVD法によってUSG(Un-doped Silicate Glass)を基板2c上に堆積することによって、第3参考例の第2絶縁膜の一例としての被覆酸化膜18cが形成される。被覆酸化膜18cは、隣り合うヒューズ要素4c(可溶体部10c)と一対のダミーメタル12c,12cとの間に側方の隙間13cが形成されるように、その一方表面および他方表面がヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの上面および側面に沿って形成される。このとき、被覆酸化膜18cの厚さは、後の2回のエッチング工程(図67および図69参照)で消失しない大きさ、かつ後の窒化膜24cの堆積工程(図68参照)において側方の隙間13cが埋まらない大きさに設定される。この実施形態では、側方の隙間13cが0.6μm以下となるように、たとえば7000Å〜9000Åの厚さに設定される。
次に、図67に示すように、たとえば酸化シリコン(SiO2)に比べて窒化シリコン(SiN)に対して相対的に速いエッチングレートを有するエッチングガスまたはエッチング液を用いて、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの下方領域の窒化膜15cが選択的に除去される。この実施形態では、側方の隙間13cにある被覆酸化膜18cが除去された後、フッ素系ガスを利用するドライエッチングによって、側方の隙間13cの底部から当該窒化膜15cが等方的にエッチング(サイドエッチング)されて除去される。これにより、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの下方領域に下方の隙間16cが形成され、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cが基板2cに対して浮いた状態となる。
次に、図68に示すように、たとえばCVD法によって窒化シリコン(SiN)およびUSG(Un-doped Silicate Glass)を基板2c上に順に堆積することによって、第3参考例の第2犠牲層の一例としての窒化膜24cおよび酸化膜19cが形成される。この際、側方の隙間13cが0.6μm以下であるので、窒化膜24cおよび酸化膜19cは、可溶体部10cを覆うように一対のダミーメタル12c,12cの間に跨って形成される。
次に、図69に示すように、たとえば酸化シリコン(SiO2)に比べて窒化シリコン(SiN)に対して相対的に速いエッチングレートを有するエッチングガスまたはエッチング液を用いて、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの上方領域の窒化膜24cが選択的に除去される。この実施形態では、酸化膜19cに側方の隙間13cと同一パターンの隙間23cが形成された後、フッ素系ガスを利用するドライエッチングによって、当該隙間23cの底部から当該窒化膜24cが等方的にエッチング(サイドエッチング)されて除去される。これにより、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの上方領域に上方の隙間25cが形成される。
次に、図70に示すように、たとえばCVD法によって窒化シリコン(SiN)を酸化膜19c上に堆積することによって、窒化膜20cが形成される。次に、ポリイミドを窒化膜20c上に塗布し、当該ポリイミドをキュアすることによって、表面保護膜22cが形成される。次に、ヒューズ要素4cのパッド部9c上の積層膜18c,24c,19c,20c,22cをエッチングによって選択的に除去することによって、電極3c用のコンタクトホール27cが形成される。
その後は、コンタクトホール27cから露出するパッド部9cにめっきすることによって、一対の電極3c,3cが同時に形成される。以上の工程を経て、チップ型ヒューズ1cが得られる。
以上、このチップ型ヒューズ1cの製造方法によれば、窒化膜15cと、下地酸化膜17cおよび被覆酸化膜18cとのエッチングレートの差を利用して、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの下方領域の窒化膜15cを等方性エッチングによって簡単にエッチングすることができる(図67参照)。同様のエッチングレートの差を利用して、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cの上方領域の窒化膜24cを簡単にエッチングすることができる(図69参照)。さらに、ヒューズ要素4cおよびダミーメタル12cが同一の材料であるAl−Cu系合金からなるので、図65に示すように、これらを同一工程で形成することができる。
したがって、過電流が流入したときにヒューズ要素4cを可溶体部10cで確実に溶断できるチップ型ヒューズ1cを効率よく製造することができる。
以上、第3参考例の一実施形態について説明したが、第3参考例はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、チップ型ヒューズ1cのベースとなる基板として、シリコン基板に代表される半導体基板を用いてもよいし、半導体基板に代えて、セラミック基板等の絶縁性基板を用いてもよい。
また、可溶体部10cの両側方に形成され、ダミーメタル12cを一例として挙げた壁部は、基板2cに対して浮いている必要はなく、基板2c上に固定されていてもよい。
また、前述の実施形態では、下方の隙間16cおよび上方の隙間25cは等方性のドライエッチングによって形成されたが、これらの隙間16c,25cはウエットエッチングによって形成されてもよい。
なお、この第3参考例の実施形態の内容から、特許請求の範囲に記載した発明以外にも、以下のような特徴が抽出され得る。
(項1)
基板と、
前記基板上に形成された一対の電極と、
前記基板上において前記一対の電極間に両端が接続され、前記基板との間に下方の隙間を隔てて形成された可溶体部を選択的に有する金属製のヒューズ要素と、
前記ヒューズ要素の長手方向に直交する幅方向の両側から前記可溶体部を挟むように形成され、それぞれが前記可溶体部との間に側方の隙間を隔てて配置された一対の壁部とを含む、チップ型ヒューズ。
この構成によれば、少なくとも可溶体部の下方および両側方の三方に隙間が形成されているので、可溶体部で発生した熱をその周囲(隙間)に効率よく蓄えることができる。したがって、チップ型ヒューズに過電流が流入したときには、ヒューズ要素を可溶体部で確実に溶断することができる。
(項2)
前記ヒューズ要素は、前記可溶体部と同一の金属材料で一体的に形成され、前記基板上の領域に接するように配置された配線部を含み、
前記可溶体部は、前記基板に対して浮いた状態で前記配線部によって支持されている、項1に記載のチップ型ヒューズ。
(項3)
前記壁部は、前記ヒューズ要素と同一の金属材料からなるダミーメタルを含む、項1または2に記載のチップ型ヒューズ。
この構成によれば、壁部をヒューズ要素と同一工程で形成できるので、製造工程の工程数を増やすことなく、可溶体部で確実に溶断できる構造を形成することができる。
(項4)
前記可溶体部を覆うように前記一対の壁部の間に跨って形成され、前記可溶体部との間に上方の隙間を隔てて配置された絶縁材料からなる天井部をさらに含む、項1〜3のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズ。
この構成によれば、可溶体部の上方にも隙間が形成されているので、可溶体部の四方全てを隙間で取り囲むことができる。よって、ヒューズ要素を可溶体部で確実に溶断するという第3参考例の効果をより効果的に実現することができる。
(項5)
前記チップ型ヒューズは、その表面を覆う表面保護膜を含み、
前記天井部は、前記表面保護膜の前記可溶体部を覆う部分を利用して形成されている、項4に記載のチップ型ヒューズ。
この構成によれば、天井部を表面保護膜と同一工程で形成できるので、製造工程の工程数の増加を防止することができる。
(項6)
前記ヒューズ要素は、前記可溶体部と同一の金属材料で一体的に形成され、前記一対の電極それぞれの下方において各前記電極の下面に接続されたパッド部を含む、項1〜5のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズ。
第3参考例によればヒューズ要素を可溶体部で確実に溶断できるので、この構成のようにパッド部を可溶体部と同一の金属材料で一体的に形成していても、過電流の流入時にパッド部が溶断することがほとんどない。したがって、可溶体部とパッド部とを同一工程で形成することができる。
(項7)
前記可溶体部を被覆する絶縁膜をさらに含む、項1〜6のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズ。
この構成によれば、可溶体部をその周囲から確実に絶縁することができる。
(項8)
前記ヒューズ要素は、Al-Cu系合金からなる、項1〜7のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズ。
(項9)
前記基板は、シリコン基板を含む、項1〜8のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズ。
(項10)
基板上に第1犠牲層を形成する工程と、
前記第1犠牲層上に、一端および他端を有する金属製のヒューズ要素を形成する工程と、
前記第1犠牲層上において、前記ヒューズ要素の長手方向の中間部分の当該長手方向に直交する幅方向の両側方に、前記中間部分との間に側方の隙間を隔てるように一対の壁部を選択的に形成する工程と、
少なくとも前記ヒューズ要素の前記中間部分の下方の前記第1犠牲層を除去することによって、前記中間部分と前記基板との間に下方の隙間を形成する工程と、
前記ヒューズ要素の一端および他端にそれぞれ接続されるように、一対の電極を前記基板上に形成する工程とを含む、チップ型ヒューズの製造方法。
この方法によれば、少なくともヒューズ要素の中間部分の下方および両側方の三方に隙間が形成されるので、この中間部分を可溶体部とする第3参考例のチップ型ヒューズを製造することができる。
(項11)
前記下方の隙間を形成する工程は、前記第1犠牲層を等方性エッチングによって除去することによって前記下方の隙間を形成する工程を含む、項10に記載のチップ型ヒューズの製造方法。
この方法によれば、等方性エッチングを採用することによって、ヒューズ要素の中間部分の下方に効率よくエッチングガスまたはエッチング液を供給できるので、第1犠牲層を簡単にエッチングすることができる。
(項12)
前記壁部を形成する工程は、前記ヒューズ要素を形成するときに同時に、前記ヒューズ要素と同一の金属材料を用いてダミーメタルを形成する工程を含む、項10または11に記載のチップ型ヒューズの製造方法。
この方法によれば、壁部をヒューズ要素と同一工程で形成できるので、製造工程の工程数を増やすことなく、可溶体部(ヒューズ要素の中間部分)で確実に溶断できる構造を形成することができる。
(項13)
前記側方の隙間が埋まらないように、前記中間部分を覆って前記一対の壁部に跨る第2犠牲層を形成する工程と、
前記ヒューズ要素の前記中間部分に対向するように、前記第2犠牲層上に絶縁材料からなる天井部を形成する工程と、
前記天井部の下方の前記第2犠牲層を除去することによって、前記中間部分と前記天井部との間に上方の隙間を形成する工程とをさらに含む、項10〜12のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズの製造方法。
この方法によれば、ヒューズ要素の中間部分(可溶体部)の上方にも隙間が形成されるので、天井部をさらに含む第3参考例のチップ型ヒューズを製造することができる。
(項14)
前記壁部を形成する工程は、前記ヒューズ要素の前記中間部分との間隔が0.6μm以下となるように、前記壁部を形成する工程を含み、
前記第2犠牲層を形成する工程は、前記第2犠牲層の材料をCVD法で堆積することによって、前記第2犠牲層を形成する工程を含む、項13に記載のチップ型ヒューズの製造方法。
この方法によれば、ヒューズ要素の中間部分と壁部との間隔を0.6μm以下にすることによって、CVDによって第2犠牲層の材料を堆積するときに、中間部分と壁部との隙間が当該材料で埋まらないようにすることができる。
(項15)
前記ヒューズ要素の形成前に、前記第1犠牲層上に前記第1犠牲層に対してエッチング選択比を有する第1絶縁膜を形成する工程と、
前記第1絶縁膜上に前記ヒューズ要素を形成し、当該ヒューズ要素を被覆するように前記第1犠牲層に対してエッチング選択比を有する第2絶縁膜を、前記一対の壁部との間に前記側方の隙間を隔てるように形成する工程とをさらに含む、項10〜14のいずれか一項に記載のチップ型ヒューズの製造方法。
この方法によれば、第1および第2絶縁膜によってエッチングガス等からヒューズ要素を保護しつつ、第1および第2絶縁膜と第1犠牲層とのエッチングレートの差を利用して、第1犠牲層を選択的に除去することができる。
(項16)
前記第1犠牲層は窒化シリコン(SiN)からなり、前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜は酸化シリコン(SiO2)からなる、項15に記載のチップ型ヒューズの製造方法。
以上、本発明および第1〜第3参考例の実施形態を説明したが、前述の実施形態は、本発明および第1〜第3参考例の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明および第1〜第3参考例はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
また、たとえば、前述の各実施形態の開示から把握される上記特徴は、異なる実施形態間でも互いに組み合わせることができる。
本出願は、2013年4月4日に日本国特許庁に提出された特願2013−078825号、2013年4月15日に日本国特許庁に提出された特願2013−085087号、2013年4月19日に日本国特許庁に提出された特願2013−088586号および2013年5月7日に日本国特許庁に提出された特願2013−097950号に対応しており、これらの出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。