〔積層体〕
本発明の一実施形態に係る積層体は、基板と、接着層と、光を吸収することによって変質する分離層と、光透過性の支持体とがこの順番に積層された積層体であって、該分離層のOD値が、0.20以上、1.00以下である構成である。
すなわち、本実施形態に係る積層体は、被支持基板、接着層、分離層、および支持体がこの順に積層されており、被支持基板は、接着層および分離層を介して支持体に仮止めされている。
図1を参照して、本実施形態に係る積層体を説明する。本実施形態の積層体は、被支持基板を支持体に仮止めした積層体として用いるのであれば、具体的な用途は特に限定されない。以下の説明では、ウエハサポートシステムにおいて利用される、半導体ウエハ(被支持基板)をサポートプレート(支持体)に対して仮止めした積層体を例に挙げる。図1中(1)に示すように、本実施形態に係る積層体1は、基板11、サポートプレート(支持体)12、接着層14および分離層16を備えている。
(基板)
基板11は、サポートプレート12に支持された状態で、薄化、実装等のプロセスに供されるものである。基板11としては、ウエハ基板に限定されず、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を使用できる。また、基板11における接着層14側の面には、電気回路等の電子素子の微細構造が形成されていてもよい。
(サポートプレート)
サポートプレート12は、基板11を支持する支持体であり、光透過性を有している。そのため、積層体1の外からサポートプレート12に向けて光が照射されたときに、当該光がサポートプレート12を通過して分離層16に到達する。また、サポートプレート12は、必ずしも全ての光を透過させる必要はなく、分離層16に吸収されるべき(所定の波長を有している)光を透過させることができればよい。
(分離層)
分離層16は、支持体を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。本明細書において、分離層16が「変質する」とは、分離層16を、わずかな外力を受けて破壊され得る状態、又は分離層16と接する層との接着力が低下した状態にさせる現象を意味する。光の吸収によって生じる分離層16の変質の結果として、分離層16は、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層16が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離できる。
また、分離層16の変質は、吸収した光のエネルギーによる(発熱性又は非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化又は官能基の解離(そして、これらにともなう分離層の硬化、脱ガス、収縮又は膨張)等であり得る。分離層16の変質は、分離層16を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層16の変質の種類は、分離層16を構成する材料の種類に応じて変化し得る。
分離層16は、サポートプレート12における、接着層14を介して基板11が貼り合わされる側の表面に設けられている。すなわち、分離層16は、サポートプレート12と接着層14との間に設けられている。
分離層16の厚さは、例えば、0.05〜100μmであり、0.1〜50μmがより好ましく、0.1〜10μmがさらに好ましく、0.3〜1μmであることが特に好ましい。分離層16の厚さが0.05〜100μmの範囲内に収まっていれば、短時間の光の照射及び低エネルギーの光の照射によって、分離層16を所望のように変質させることができる。また、分離層16の厚さは、生産性の観点から1μm以下の範囲内に収まっていることが特に好ましい。
なお、積層体1において、分離層16とサポートプレート12との間に他の層がさらに形成されていてもよい。この場合、他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これによって、分離層16への光の入射を妨げることなく、積層体1に好ましい性質などを付与する層を、適宜追加できる。分離層16を構成している材料の種類によって、用い得る光の波長が異なる。よって、他の層を構成する材料は、すべての光を透過させる必要はなく、分離層16を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択し得る。
また、分離層16は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層16を形成してもよい。また、分離層16における接着層14に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層16の形成が容易に実施され、且つ接着層14との貼り付けにおいても均一に貼り付けることが可能となる。
分離層16は、以下に示すような分離層16を構成する材料を予めフィルム状に形成したものをサポートプレート12に貼り合わせて用いてもよいし、サポートプレート12上に分離層16を構成する材料を塗布してフィルム状に固化したものを用いてもよい。サポートプレート12上に分離層16を構成する材料を塗布する方法は、分離層16を構成する材料の種類に応じて、化学気相成長(CVD)法による堆積等の従来公知の方法から適宜選択できる。
分離層16は、レーザーから照射される光を吸収することによって変質するものであってもよい。すなわち、分離層16を変質させるために分離層16に照射される光は、レーザーから照射されたものであってもよい。分離層16に照射する光を発射するレーザーの例としては、YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー、YVO4レーザー、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー、Arレーザー、He−Neレーザー等の気体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー等のレーザー光、及ぶ非レーザー光が挙げられる。分離層16に照射する光を発射するレーザーは、分離層16を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層16を構成する材料を変質させ得る波長の光を照射するレーザーを選択すればよい。
<光吸収性を有している構造をその繰返し単位に含んでいる重合体>
分離層16は、光吸収性を有している構造をその繰返し単位に含んでいる重合体を含有していてもよい。当該重合体は光の照射を受けて変質する。当該重合体の変質は、上記構造が照射された光を吸収することによって生じる。分離層16は、重合体の変質の結果として、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって、分離層16が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離できる。
光吸収性を有している上記構造は、繰返し単位として当該構造を含んでいる重合体を、当該構造による光の吸収によって変質させる化学構造である。当該構造は、例えば、置換もしくは非置換のベンゼン環、縮合環又は複素環からなる共役π電子系を含んでいる化学部分である。より詳細には、当該構造は、カルド構造、又は上記重合体の側鎖に存在するベンゾフェノン構造、ジフェニルスルフォキシド構造、ジフェニルスルホン構造(ビスフェニルスルホン構造)、ジフェニル構造もしくはジフェニルアミン構造であり得る。上記構造が上記重合体の側鎖に存在する場合、当該構造は以下の式によって表され得る。
式中、Rはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、ハロゲン、水酸基、ケトン基、スルホキシド基、スルホン基又はN(R1)(R2)であり(ここで、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である)、Zは、存在しないか、又はCO−、−SO2−、−SO−若しくは−NH−であり、nは0又は1〜5の整数である。
また、上記重合体は、例えば、以下の式のうち、(a)〜(d)のいずれかによって表される繰返し単位を含んでいるか、(e)によって表されるか、又は(f)の構造をその主鎖に含んでいる。
式中、lは1以上の整数であり、mは0又は1〜2の整数であり、Xは、(a)〜(e)において上記の“化1”に示した式のいずれかであり、(f)において上記の“化1”に示した式のいずれかであるか、又は存在せず、Y1及びY2はそれぞれ独立して、−CO−又はSO2−である。lは好ましくは10以下の整数である。
上記の“化1”に示されるベンゼン環、縮合環及び複素環の例としては、フェニル、置換フェニル、ベンジル、置換ベンジル、ナフタレン、置換ナフタレン、アントラセン、置換アントラセン、アントラキノン、置換アントラキノン、アクリジン、置換アクリジン、アゾベンゼン、置換アゾベンゼン、フルオリン、置換フルオリン、フルオリノン、置換フルオリン、カルバゾール、置換カルバゾール、N−アルキルカルバゾール、ジベンゾフラン、置換ジベンゾフラン、フェナンスレン、置換フェナンスレン、ピレン及び置換ピレンが挙げられる。例示した置換基が置換を有している場合、その置換基は、例えば、アルキル、アリール、ハロゲン原子、アルコキシ、ニトロ、アルデヒド、シアノ、アミド、ジアルキルアミノ、スルホンアミド、イミド、カルボン酸、カルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステル、アルキルアミノ及びアリールアミノから選択される。
上記の“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO2−である場合の例としては、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,6‐ジヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3‐ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(2‐ヒドロキシフェニル)スルホン、及びビス(3,5‐ジメチル‐4‐ヒドロキシフェニル)スルホンなどが挙げられる。
上記の“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−SO−である場合の例としては、ビス(2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4‐ジヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,4‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5‐ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,3,4‐トリヒドロキシ‐6‐メチルフェニル)‐スルホキシド、ビス(5‐クロロ‐2,3,4‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシド、及びビス(5‐クロロ‐2,4,6‐トリヒドロキシフェニル)スルホキシドなどが挙げられる。
上記の“化1”に示される置換基のうち、フェニル基を2つ有している5番目の置換基であって、Zが−C(=O)−である場合の例としては、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,5,6’‐テトラヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,6‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2’‐ジヒドロキシ‐4,4’‐ジメトキシベンゾフェノン、4‐アミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジエチルアミノ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐4’‐メトキシ‐2’‐ヒドロキシベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ‐2’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノン、及び4‐ジメチルアミノ‐3’,4’‐ジヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している光を吸収可能である。例えば、上記構造が吸収可能な光の波長は、100〜2000nmであることがより好ましい。この範囲のうち、上記構造が吸収可能な光の波長は、より短波長側であり、例えば、100〜500nmである。例えば、上記構造は、好ましくは約300〜370nmの波長を有している紫外光を吸収することによって、当該構造を含んでいる重合体を変質させ得る。
上記構造が吸収可能な光は、例えば、高圧水銀ランプ(波長:254nm〜436nm)、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)、F2エキシマレーザー(波長:157nm)、XeClレーザー(308nm)、XeFレーザー(波長:351nm)若しくは固体UVレーザー(波長:355nm)から発せられる光、又はg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)若しくはi線(波長:365nm)などである。
上述した分離層16は、繰り返し単位として上記構造を含んでいる重合体を含有しているが、分離層16は、上記重合体以外の成分をさらに含み得る。当該成分としては、フィラー、可塑剤、及びサポートプレート12の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による光の吸収、及び重合体の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
<無機物>
分離層16は、無機物から構成され得る。当該無機物は、光の吸収によって変質する材料である。このような無機物によって構成されている分離層16は、光の吸収によって変質し、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。光の照射を受けた分離層16は、わずかな外力を受ける(例えば、サポートプレート12を持ち上げる等)ことによって破壊されるので、サポートプレート12と基板11とを容易に分離できる。
上記無機物は、光を吸収することによって変質する材料であればよく、当該無機物として、例えば、金属、金属化合物及びカーボンからなる群より選択される1種類以上の無機物を好適に用いることができる。金属化合物とは、金属原子を含む化合物を指し、例えば、金属酸化物、金属窒化物であり得る。このような無機物の例としては、これに限定されるものではないが、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン、クロム、SiO2、SiN、Si3N4、TiN、及びカーボンからなる群より選ばれる1種類以上の無機物が挙げられる。なお、カーボンとは炭素の同素体をも包含し得る概念であり、例えば、ダイヤモンド、フラーレン、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンナノチューブ等であり得る。
上記無機物は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層16に用いた無機物が吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することによって、上記無機物を好適に変質させ得る。
無機物からなる分離層16に照射する光として、上記無機物が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー、YVO4レーザー、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー、Arレーザー、He−Neレーザー等の気体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー等のレーザー光、又は非レーザー光を適宜用いればよい。
無機物からなる分離層16は、例えばスパッタ、化学蒸着(CVD)、メッキ、プラズマCVD、スピンコート等の公知の技術によって、サポートプレート12上に形成され得る。無機物からなる分離層16の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.05〜10μmの膜厚とすることがより好ましい。また、分離層16を構成する無機物からなる無機膜(例えば、金属膜)の両面又は片面に予め接着剤を塗布し、サポートプレート12及び基板11に貼り付けてもよい。
なお、分離層16として金属膜を使用する場合には、分離層16の膜質、レーザー光源の種類、レーザー出力等の条件によっては、レーザーの反射や膜への帯電等が起こり得る。そのため、反射防止膜や帯電防止膜を分離層16の上、下又はどちらか一方に設けることで、それらの対策をとることが好ましい。
<赤外線吸収性の構造を有する化合物>
分離層16は、赤外線吸収性の構造を有する化合物によって形成されていてもよい。当該化合物は、赤外線を吸収することにより変質する。分離層16は、化合物の変質の結果として、赤外線の照射を受ける前の強度又は接着性を失っている。よって、わずかな外力を加える(例えば、サポートプレートを持ち上げるなど)ことによって、分離層16が破壊されて、サポートプレート12と基板11とを容易に分離できる。
赤外線吸収性を有している構造又は赤外線吸収性を有している構造を含む化合物としては、たとえば、アルカン、アルケン(ビニル、トランス、シス、ビニリデン、三置換、四置換、共役、クムレン、環式)、アルキン(一置換、二置換)、単環式芳香族(ベンゼン、一置換、二置換、三置換)、アルコール及びフェノール類(自由OH、分子内水素結合、分子間水素結合、飽和第二級、飽和第三級、不飽和第二級、不飽和第三級)、アセタール、ケタール、脂肪族エーテル、芳香族エーテル、ビニルエーテル、オキシラン環エーテル、過酸化物エーテル、ケトン、ジアルキルカルボニル、芳香族カルボニル、1,3−ジケトンのエノール、o−ヒドロキシアリールケトン、ジアルキルアルデヒド、芳香族アルデヒド、カルボン酸(二量体、カルボン酸アニオン)、ギ酸エステル、酢酸エステル、共役エステル、非共役エステル、芳香族エステル、ラクトン(β−、γ−、δ−)、脂肪族酸塩化物、芳香族酸塩化物、酸無水物(共役、非共役、環式、非環式)、第一級アミド、第二級アミド、ラクタム、第一級アミン(脂肪族、芳香族)、第二級アミン(脂肪族、芳香族)、第三級アミン(脂肪族、芳香族)、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、アンモニウムイオン、脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、カルボジイミド、脂肪族イソニトリル、芳香族イソニトリル、イソシアン酸エステル、チオシアン酸エステル、脂肪族イソチオシアン酸エステル、芳香族イソチオシアン酸エステル、脂肪族ニトロ化合物、芳香族ニトロ化合物、ニトロアミン、ニトロソアミン、硝酸エステル、亜硝酸エステル、ニトロソ結合(脂肪族、芳香族、単量体、二量体)、メルカプタン及びチオフェノール及びチオール酸などの硫黄化合物、チオカルボニル基、スルホキシド、スルホン、塩化スルホニル、第一級スルホンアミド、第二級スルホンアミド、硫酸エステル、炭素−ハロゲン結合、Si−A1結合(A1は、H、C、O又はハロゲン)、P−A2結合(A2は、H、C又はO)、又はTi−O結合であり得る。
上記炭素−ハロゲン結合を含む構造としては、例えば、−CH2Cl、−CH2Br、−CH2I、−CF2−、−CF3、−CH=CF2、−CF=CF2、フッ化アリール、及び塩化アリールなどが挙げられる。
上記Si−A1結合を含む構造としては、SiH、SiH2、SiH3、Si−CH3、Si−CH2−、Si−C6H5、SiO脂肪族、Si−OCH3、Si−OCH2CH3、Si−OC6H5、Si−O−Si、Si−OH、SiF、SiF2、及びSiF3などが挙げられる。Si−A1結合を含む構造としては、特に、シロキサン骨格及びシルセスキオキサン骨格を形成していることが好ましい。
上記P−A2結合を含む構造としては、PH、PH2、P−CH3、P−CH2−、P−C6H5、A3 3−P−O(A3は脂肪族又は芳香族)、(A4O)3−P−O(A4はアルキル)、P−OCH3、P−OCH2CH3、P−OC6H5、P−O−P、P−OH、及びO=P−OHなどが挙げられる。
上記構造は、その種類の選択によって、所望の範囲の波長を有している赤外線を吸収可能である。たとえば、上記構造が吸収可能な赤外線の波長は、例えば1μm〜20μmの範囲内であり、2μm〜15μmの範囲内をより好適に吸収できる。さらに、上記構造がSi−O結合、Si−C結合及びTi−O結合である場合には、9μm〜11μmの範囲内であり得る。なお、各構造が吸収できる赤外線の波長は、当業者によって容易に理解される。例えば、各構造における吸収帯として、非特許文献:SILVERSTEIN・BASSLER・MORRILL著「有機化合物のスペクトルによる同定法(第5版)−MS、IR、NMR、UVの併用−」(1992年発行)第146頁〜第151頁の記載を参照すればよい。
分離層16の形成に用いられる、赤外線吸収性の構造を有する化合物としては、上述のような構造を有している化合物のうち、塗布のために溶媒に溶解でき、固化されて固層を形成できるものであれば、特に限定されるものではない。
一例を挙げて説明すれば、シロキサン骨格を有する化合物として、例えば、下記式(1)によって表される繰り返し単位及び下記式(2)によって表される繰り返し単位の共重合体である樹脂、あるいは下記式(1)によって表される繰り返し単位及びアクリル系化合物由来の繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
(式(2)中、R1は、水素、炭素数10以下のアルキル基、炭素数10以下のアルコキシ基である)
中でも、シロキサン骨格を有する化合物としては、上記式(1)によって表される繰り返し単位及び下記式(3)によって表される繰り返し単位の共重合体であるtert−ブチルスチレン(TBST)−ジメチルシロキサン共重合体がより好ましく、上記式(1)によって表される繰り返し単位及び下記式(3)によって表される繰り返し単位を1:1で含む、TBST−ジメチルシロキサン共重合体がさらに好ましい。
また、シルセスキオキサン骨格を有する化合物として、たとえば、下記式(4)によって表される繰り返し単位及び下記式(5)によって表される繰り返し単位の共重合体である樹脂を用いることができる。
(式(4)中、R2は、水素又は炭素数1以上、10以下のアルキル基であり、式(5)中、R3は、炭素数1以上、10以下のアルキル基、又はフェニル基である)
シルセスキオキサン骨格を有する化合物として、このほかにも、特許文献3:特開2007−258663号公報(2007年10月4日公開)、特許文献4:特開2010−120901号公報(2010年6月3日公開)、特許文献5:特開2009−263316号公報(2009年11月12日公開)及び特許文献6:特開2009−263596号公報(2009年11月12日公開)において開示されている各シルセスキオキサン樹脂を好適に利用できる。
中でも、シルセスキオキサン骨格を有する化合物としては、下記式(6)によって表される繰り返し単位及び下記式(7)によって表される繰り返し単位の共重合体がより好ましく、下記式(6)によって表される繰り返し単位及び下記式(7)によって表される繰り返し単位を、7:3の比率において含む共重合体がさらに好ましい。
シルセスキオキサン骨格を有する重合体としては、ランダム構造、ラダー構造、及び籠型構造があり得るが、何れの構造であってもよい。
また、Ti−O結合を含む化合物としては、たとえば、(i)テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、及びチタニウム−i−プロポキシオクチレングリコレートなどのアルコキシチタン、(ii)ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、及びプロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などのキレートチタン、(iii)i−C3H7O−[−Ti(O−i−C3H7)2−O−]n −i−C3H7、及びn−C4H9O−[Ti(O−n−C4H9)2−O−]n−n−C4H9などのチタンポリマー、(iv)トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、チタニウムステアレート、ジ−i−プロポキシチタンジイソステアレート、及び(2−n−ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタンなどのアシレートチタン、(v)ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタンなどの水溶性チタン化合物などが挙げられる。
中でも、Ti−O結合を含む化合物としては、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン(Ti(OC4H9)2[OC2H4N(C2H4OH)2]2)が好ましい。
上述した分離層16は、赤外線吸収性の構造を有する化合物を含有しているが、分離層16は、上記化合物以外の成分をさらに含み得る。当該成分としては、フィラー、可塑剤、及びサポートプレート12の剥離性を向上し得る成分などが挙げられる。これらの成分は、上記構造による赤外線の吸収、及び化合物の変質を妨げないか、又は促進する、従来公知の物質又は材料から適宜選択される。
<フルオロカーボン>
分離層16は、フルオロカーボンから構成され得る。フルオロカーボンは光の吸収によって変質する。フルオロカーボンによって構成されている分離層16は、光の吸収によって変質し、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。光の照射を受けた分離層16は、わずかな外力を受ける(例えば、サポートプレート12を持ち上げるなど)ことによって破壊されるので、サポートプレート12と基板11とを容易に分離できる。
また、一つの観点からいえば、分離層16を構成するフルオロカーボンは、プラズマCVD法によって好適に成膜され得る。なお、フルオロカーボンは、CxFy(パーフルオロカーボン)及びCxHyFz(x、y及びzは正の整数)を含み、これらに限定されないが、例えば、CHF3、CH2F2、C2H2F2、C4F8、C2F6、C5F8等で有り得る。また、分離層16を構成するために用いるフルオロカーボンに対して、必要に応じて窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、酸素、アルカン、アルケンなどの炭化水素、及び、二酸化炭素、水素を添加してもよい。また、これらのガスを複数混合して用いてもよい(フルオロカーボン、水素、窒素の混合ガス等)。また、分離層16は、単一種のフルオロカーボンから構成されていてもよいし、2種類以上のフルオロカーボンから構成されていてもよい。
フルオロカーボンは、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層16に用いたフルオロカーボンが吸収する範囲の波長の光を分離層に照射することによって、フルオロカーボンを好適に変質させ得る。
分離層16に照射する光としては、フルオロカーボンが吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー、YVO4レーザー、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザー、色素レーザー等の液体レーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー、Arレーザー、He−Neレーザー等の気体レーザー、半導体レーザー、自由電子レーザー等のレーザー光、又は非レーザー光を適宜用いればよい。フルオロカーボンを変質させ得る波長として、これに限定されるものではないが、例えば、600nm以下の範囲のものを用いることができる。
<赤外線吸収物質>
分離層16は、赤外線吸収物質を含有していてもよい。赤外線吸収物質は光の吸収によって変質する材料である。赤外線吸収物質を含有して構成されている分離層16は、光の吸収によって変質し、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う。光の照射を受けた分離層16は、わずかな外力を受ける(例えば、サポートプレート12を持ち上げる等)ことによって破壊されるので、サポートプレート12と基板11とを容易に分離できる。
赤外線吸収物質は、赤外線を吸収することによって変質する材料であればよく、当該赤外線吸収物質として、例えば、カーボンブラック、鉄粒子、又はアルミニウム粒子を好適に用いることができる。赤外線吸収物質は、その種類によって固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層16に用いた赤外線吸収物質が吸収する範囲の波長の光を分離層16に照射することによって、赤外線吸収物質を好適に変質させ得る。
<反応ガスを用いたプラズマ処理によって形成される層>
分離層16は、反応ガスを用いたプラズマ処理によって形成される層であり得る。当該反応ガスは、不飽和結合を有する有機化合物とフッ素化合物を含有していることが好ましい。
当該有機化合物としては、不飽和結合を有するものであればよく、例えば、アルケン、シクロアルケン、アルキン、及び芳香族化合物を挙げることができる。ここで、アルケンとしては、例えば、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、イソプレン、等を挙げることができる。又、シクロアルケンとしては、例えば、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン、等を挙げることができる。又、アルキンとしては、例えば、アセチレン等を挙げることができる。又、芳香族化合物しては、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等を挙げることができる。又、不飽和結合を有していれば、例えば、エーテル結合、エステル結合、及びシロキシ結合等を有する有機化合物を用いることもできる。エーテル結合及び/又はシロキシ結合を有する有機化合物としては、例えば、1−メトキシ−3−(トリメチルシリルオキシ)−1,3−ブタジエン、及び2−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。又、エステル結合を有する有機化合物としては、例えば、2,3−ブタジエン酸エチル等を挙げることができる。又、これら有機化合物は、2種類以上混合して用いてもよい。これら有機化合物をプラズマ処理の反応ガスとして用いることによって、分離層16に不飽和結合を導入することができる。これによって、高密度プラズマのみならず低密度プラズマにおいても、光を吸収することによって変質する分離層16を形成することが可能になる。
ここで、有機化合物は、アルケン又はシクロアルケンであることが好ましい。アルケン又はシクロアルケンは、低密度プラズマによって崩壊しにくい構造を有している。このため、反応ガスにアルケン又はシクロアルケンを含有させることで、プラズマ処理においアルケン又はシクロアルケンを過剰に崩壊させることなく好適に重合させることができる。又、プラズマ処理によって形成される分離層16に不飽和結合を導入することができる。従って、有機化合物としてアルケン又はシクロアルケンを用いることで、光を吸収することによって変質する分離層16を好適に形成することができる。
又、有機化合物は不飽和結合が2つ以上あることが好ましい。これにより、さらに好適に光を吸収することができる分離層16を形成することができる。
又、有機化合物は、沸点が30℃以上、100℃以下の範囲内であることが好ましく、30℃以上、60℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、40℃以上、50℃以下の範囲内であることが最も好ましい。有機化合物の沸点が、30℃以上、100℃以下の範囲内であれば、プラズマ処理のための条件において、反応ガスとして有機化合物を好適に使用することができる。
本実施形態に係る積層体の製造方法において用いる反応ガスが含有するフッ素化合物としては、例えば、フルオロカーボン、4フッ化炭素(CF4)、3フッ化窒素(NF3)及び6フッ化硫黄(SF6)等を挙げることができる。フルオロカーボンとしては、例えば、C4F8等を挙げることができる。反応ガスにフッ素化合物を含有することによって、分離層16の脆さを改善することができ、分離層16の耐薬品性を向上することができる。ここで、フッ素化合物は、フッ素化合物は、6フッ化硫黄(SF6)であることが特に好ましい。反応ガスに6フッ化硫黄(SF6)を含有させることによって、分離層16の脆さをさらに改善することができ、耐薬品性の良い分離層16を好適に形成することができる。
(プラズマ処理)
プラズマ処理に用いるプラズマ処理装置としては、特に限定されず、公知のプラズマ処理装置を用いることができる。
プラズマ処理装置が備える電極は、特に限定されず、例えば、デュアルコイルアンテナ、シングルコイルアンテナ、又は平行平板電極であってもよいが、平行平板電極を用いることにより、支持体上に形成する分離層16の表面積をより大きくすることが可能になり、その結果、直径のより大きい基板を用いて積層体を製造することが可能になる。
プラズマ処理装置の反応室の形状は、特に限定されず、ドーム型であってもよいし、円筒型等のその他の形状であってもよい。反応室のサイズは、処理対象の基板のサイズに応じて適宜選択すればよい。又、反応室の材質は、プラズマ処理及び分離層16の形成を阻害しない公知の材料を適宜選択することができる。
プラズマ処理装置において生じるプラズマには、コイル電極又は平行平板電極に印加される高周波電力による静電界による容量結合プラズマ(CCP:Conductive Coupled Plasma)とコイル電極に流れる高周波電流により発生する誘導電界による誘導結合プラズマ(ICP:Inductive Coupled Plasma)とが存在する。
本実施形態において、分離層形成工程のプラズマ処理は、低密度プラズマ処理であることが好ましい。ここで、低密度プラズマとは、イオン密度が1×1010cm−3以下であるプラズマであり、容量結合主体のプラズマのことをいう。分離層形成工程のプラズマ処理として低密度プラズマ処理を採用することによって、プラズマ処理装置の大型化が容易になる。このため、支持体上に形成する分離層16の表面積をより大きくすることが可能になる。従って、積層する基板の大型化が可能になる。
図2を用いて、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法が包含する分離層形成工程について、より詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る製造方法が包含する分離層製造工程について説明する模式図である。
図2に示す通り、本実施形態に係る積層体の製造方法が包含する分離層形成工程に用いるプラズマ処理装置100は、反応室101内に、一対の平行平板電極102、サポートプレート12を戴置するステージ103を備えている。ここで、プラズマ処理装置100は、配管116aによって液体マスフローコントローラ112及び気化器113を経るようにして、有機化合物を貯留した容器111と連通しており、配管116bによってマスフローコントローラ115を経るようにして、フッ素化合物ボンベ114に連通している。又、配管116aと116bとは、配管116に合流している。
反応室101は、プラズマ処理により、反応ガスから分離層16を形成するために用いられる。又、反応室101は、真空ポンプ(図示せず)によって、反応室101内の圧力を調整できるようになっている。
一対の平行平板電極102は、反応室101内に設けられており、高周波電力を印加することによって反応ガスを用いてプラズマを発生させる。
ステージ103は、一対の平行平板電極102の一方を備えており、サポートプレート12を戴置できるようになっている。
容器111は、反応ガスに用いる有機化合物を貯留しており、窒素加圧することによって、配管116aを介して有機化合物を液体マスフローコントローラ112に供給する。
液体マスフローコントローラ112は、有機化合物の流量を調整する装置であり、配管116aを介して気化器113に供給する有機化合物の流量を調整する。
フッ素化合物ボンベ114は、反応ガスに用いるフッ素化合物を貯留しているボンベであり、配管116bを介して、フッ素ガスをマスフローコントローラ115に供給する。
マスフローコントローラ115は、フッ素ガスの流量を調整する装置であり、配管116bを介して供給されたフッ素ガスの流量を調整する。
配管116aと配管116bとは、配管116に合流する。ここで、配管116は加熱されることによって、反応ガスの液化を防止できるようになっている。
図2に示す通り、分離層形成工程では、反応室101内において、一対の平行平板電極102の一方を備えたステージ103の上にサポートプレート12を戴置する。ここで、反応室101内とサポートプレート12とを予備加熱する予備加熱工程を行ってもよい。
又、予備処理においては、予備処理ガスに酸素ガスを含有させることによって、サポートプレート12の表面をクリーニングしてもよい。
分離層形成工程では、反応室101内に分離層16となる反応ガスを供給して、プラズマ処理によりサポートプレート12に分離層16を形成する。ここで、反応ガスに含有されている有機化合物は、容器111から供給され、液体マスフローコントローラ112によって流量を調整され、気化器113によって気化される。又、フッ素化合物は、フッ素化合物ボンベ114から供給され、マスフローコントローラ115によって流量を調整される。その後、気化した有機化合物とフッ素化合物は配管116において混合され、加熱されつつ反応室101内に供給される。
液体マスフローコントローラ112及びマスフローコントローラ115によって有機化合物及びフッ素ガスの流量を調整することで、反応ガスが含有する有機化合物とフッ素化合物との体積比を調整することができる。例えば、有機化合物とフッ素化合物との体積比が6:4〜9:1であれば、脆さがなく、耐薬品性の良い分離層16を形成することができる。又、サポートプレートを介して光を照射した後に、洗浄液によって好適に除去可能な分離層16を形成することができる。又、分離層形成工程の最中において、有機化合物とフッ素化合物の体積比を調整することもできる。
また、反応ガスには、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス、水素、酸素等の添加ガスを1種類以上添加してもよい。
反応室101内の目標温度は、特に限定されず、公知の温度を用いることができるが、100℃以上、300℃以下の範囲内であることがより好ましく、200℃以上、250℃以下の範囲内であることが特に好ましい。反応室内の温度を、このような範囲に設定することにより、プラズマ処理を好適に実行することができる。
分離層形成工程において形成される分離層16の厚さは特に限定されず、使用する光を十分に吸収し得る膜厚であればよいが、例えば、0.5μm以上、2.0μm以下の範囲内の膜厚とすることがより好ましく、1.0μm以上、1.5以下の範囲内の膜厚とすることが特に好ましい。分離層形成工程における分離層16の形成時間は、形成する膜厚に応じて設定すればよい。
<多層からなる分離層の例>
分離層16は、図3に示すように、第1の分離層16aおよび第2の分離層16bからなり得る。積層体20は、分離層16が2層である点を除いて、積層体1と同様の構成を有している。ここで、第1の分離層16aは、不飽和結合を有する有機化合物とフッ素化合物を含有している反応ガスを用いて、図2のプラズマ処理装置100によって形成されている。第2の分離層16bは、第1の分離層16aに該当しない、本明細書において例示されている光の照射によって変質する材料によって形成されている層である。
上記の構成によって、一実施形態に係る積層体20は、第1の分離層16aと第2分離層16bとが支持体上に形成されている。ここで、第1の分離層16aは様々な薬品処理における耐薬品性を備えており、第2の分離層16bは光を照射した後の良好な分離性を備えている。例えば、第2の分離層の16b上に第1の分離層16aがある場合、第2の分離層16bが薬品処理によって変質することを第1の分離層16aによって防止できる。逆に、第1の分離層16aの上に第2の分離層16bがある場合、第2の分離層16bが薬品処理によって変質しても、第1の分離層16aによって分離層としての機能を確保できる。又、支持体を介して分離層に光を照射することによって、分離層を好適に変質することができ、積層体から基板を容易に分離することができる。
(光学濃度)
一般には、光学濃度(以下、OD値という)は以下の式(1)で求められる。
D=−log(I/I0)・・・(1)
ここで、DはOD値であり、Iは入射光の強度であり、I0は透過光の強度である。
本実施形態においては、分離層16のOD値は、X−Rite310(OD値測定機:エックスライト社製)を用いて測定したOD値に基づき分離層16の評価を行う。
積層体1の分離層16のOD値は、0.20以上、1.00以下であることが好ましく、0.30以上、1.00以下であることがより好ましい。分離層16のOD値が0.20以上、1.00以下の範囲(特に、0.30以上、1.00以下の範囲、以下同様)において、基板11がダメージを受けないようにレーザー光を照射し得るとともに、分離層16の成膜時間を短縮し得ることを本発明者らは見出した。
特に、以下の条件において、基板11へのダメージを好適に防ぐことができる。言い換えれば、分離層16のOD値を、0.20以上、1.00以下としたとき、レーザー光の照射条件は、以下のように設定することが好ましい。
すなわち、レーザー光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下の範囲であることが好ましく、3.0W以上、4.0W以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザー光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下の範囲であることが好ましく、30kHz以上、50kHz以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザー光の波長は、300nm以上、700nm以下であることが好ましく、450nm以上、650nm以下の範囲であることがより好ましい。このような条件によれば、分離層16に照射するパルス光のエネルギーを、基板11へのダメージを防ぎつつ、分離層16を変質させるための適切な条件にすることができる。
また、上記分離層16の分離工程に使用されるパルス光のビームスポット径は、100μm以上、250μm以下であることが好ましく、120μm以上、230μm以下であることがより好ましい。
また、パルス光の照射ピッチは、隣接するビームスポットが重ならず、かつ分離層16を変質させることが可能なピッチであればよいが、110μm以上、250μm以下であることが好ましく、160μm以上、220μm以下であることがより好ましい。
さらに、パルス光の照射速度は、分離層16を変質させることが可能な速度であればよいが、4000mm/s以上、10000mm/s以下であることが好ましく、5000mm/s以上、8000mm/s以下であることがより好ましい。
上記条件とすることで、レーザー光のビームスポットの重複が回避される。つまり、分離層16へ照射されるレーザー光のエネルギーの機械的側面からのばらつき(レーザー装置の設定によるばらつき)を制御できる。従って、OD値が規定された本実施形態に係る積層体に対し用いるレーザー光の照射条件として、好適に用いることができる。
さらに、分離層16に照射するパルス光のパルス幅は、20ナノ秒以上であることが好ましい。より好ましくは、40ナノ秒以上であり、さらに好ましくは、70ナノ秒以上である。分離層16に照射するパルス光のパルス幅の上限値は、200ナノ秒であることが好ましく、150ナノ秒であることがより好ましい。これにより、分離層16に吸収されずに漏れた光が、基板11及び基板11に形成された電子素子に及ぼす悪影響を、より抑えることができる。
分離層16のOD値は、分離層16を構成する材料の種類によって変化する。また、例えば、化学気相成長(CVD)法によって分離層16を成膜する場合、分離層16を構成する材料の密度によっても変化する。この場合、化学気相成長(CVD)法による分離層16の成膜時間、原料ガスの注入速度等を変更することによって、分離層16の密度を調整できる。
また、分離層16は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、OD値を調整することもできる。
(接着層)
接着層14は、基板11をサポートプレート12に接着固定すると同時に、基板11の表面を覆って保護する構成である。よって、接着層は、基板11の加工又は搬送の際に、サポートプレート12に対する基板11の固定、及び基板11の保護すべき面の被覆を維持する接着性及び強度を有している必要がある。一方で、サポートプレート12に対する基板11の固定が不要になったときに、基板11から容易に剥離又は除去され得る必要がある。
したがって、接着層14は、通常は強固な接着性を有しており、何らかの処理によって接着性が低下するか、又は特定の溶剤に対する可溶性を有する接着剤によって構成される。接着層14の厚さは、例えば、1〜200μmであることがより好ましく、10〜150μmであることがさらに好ましい。接着層14は、以下に示すような接着材料を、スピン塗布のような従来公知の方法により基板11上に塗布することによって、形成可能である。
接着剤として、例えばアクリル系、ノボラック系、ナフトキサン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着剤が、本実施形態に係る接着層14を構成する接着剤として使用可能である。以下では、本実施形態における接着層14が含有する樹脂の組成について説明する。
接着層14が含有する樹脂は、接着性を備えたものであればよく、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、又はこれの組合せなどである。
<炭化水素樹脂>
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体組成物を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂としては、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びにテルペン樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、こられに限定されない。
樹脂(A)は、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。樹脂(A)の具体例としては、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる前記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエンなどの三環体、テトラシクロドデセンなどの四環体、シクロペンタジエン三量体などの五環体、テトラシクロペンタジエンなどの七環体、又はこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)置換体、アルケニル(ビニルなど)置換体、アルキリデン(エチリデンなど)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチルなど)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、又はこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーが好ましい。
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィンなどが挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィンモノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解性、低い熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィンモノマーの割合は、特に限定されないが、溶解性及び溶液での経時安定性の観点からは80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
また、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状又は分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性及び柔軟性の観点からは10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
なお、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制するうえで好ましい。
単量体成分を重合する際の重合方法や重合条件等については、特に制限はなく、常法に従い適宜設定すればよい。
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」及び「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」などが挙げられる。
樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移点が60℃以上であると、接着剤積層体が高温環境に曝されたときに接着剤層の軟化をさらに抑制できる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族又は芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は、特に限定されないが、80〜160℃であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、接着剤積層体が高温環境に曝されたときに軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、樹脂(B)は、接着剤積層体を剥離するときに良好な剥離速度を示す。
樹脂(B)の分子量は、特に限定されないが、300〜3000であることが好ましい。樹脂(B)の分子量が300以上であると、樹脂(B)は、充分な耐熱性を示し、高温環境下において脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の分子量が3000以下であると、樹脂(B)は、接着剤積層体を剥離するときに良好な剥離速度を示す。なお、本実施形態における樹脂(B)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量を意味するものである。
なお、樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合したものを用いてもよい。混合することによって、混合物は、良好な耐熱性及び剥離速度を示す。例えば、樹脂(A)と樹脂(B)との混合比率が、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であると、混合物は、剥離速度、高温環境時の熱耐性、及び柔軟性に優れるので好ましい。
<アクリル−スチレン系樹脂>
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン又はスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体として用いて重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
<マレイミド系樹脂>
マレイミド系樹脂としては、例えば、単量体として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミドなどのアルキル基を有するマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
例えば、下記化学式(8)によって表される繰り返し単位及び下記化学式(9)によって表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを、接着成分の樹脂として用いることができる。
(化学式(9)中、nは0又は1〜3の整数である。)
このようなシクロオレフィンコポリマーとして、APL 8008T、APL 8009T、及びAPL 6013T(全て三井化学株式会社製)などを使用できる。
なお、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて接着層14を形成することが好ましい。これは、光硬化性樹脂が、接着層14の剥離又は除去の後に、基板11の微小な凹凸の周辺に残渣として残ってしまう場合があり得るからである。特に、特定の溶剤に溶解する接着剤が接着層14を構成する材料として好ましい。これは、基板11に物理的な力を加えることなく、接着層14を溶剤に溶解させることによって除去可能なためである。接着層14を除去するときに、強度が低下した基板11からでさえ、基板11を破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層14を除去できる。
上述した分離層、接着層を形成するための希釈溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、メチルオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素、炭素数3から15の分岐状の炭化水素(例えば、)、p−メンタン、o−メンタン、m−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、又はジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類又は前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい);ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤等が挙げられる。
<エラストマー>
エラストマーは、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましい。接着剤として用いるエラストマーは、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲であることが好ましい。さらに、エラストマーは、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲であることが好ましい。
エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、エチレン−プロピレンターポリマー(EPT)、これらの水添物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、及び、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)等が挙げられる。
<その他の成分>
接着材料には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質をさらに含んでいてもよい。例えば、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤及び界面活性剤等、慣用されている種々の添加剤をさらに用いることができる。
〔積層体の分離方法〕
続いて、本実施形態に係る積層体の分離方法について説明する。
(照射工程)
本実施形態に係る積層体の分離方法においては、まず、図1中(1)に示すように、サポートプレート12を介して、パルス化されたレーザー光を分離層16に照射する(照射工程)。このとき、照射されたレーザー光は、光透過性を有するサポートプレート12を透過して、分離層16に到達する。分離層16は到達したレーザー光を吸収することによって、図1中(2)に示すように変質する。これにより、基板11とサポートプレート12との接着が弱まり、図1中(3)に示すように、基板11からサポートプレート12が容易に分離される。
積層体1からサポートプレート12を分離するために、サポートプレート12側からレーザー光を分離層16に照射したとき、分離層16からそのレーザー光が漏れることがある。
そのため、漏れた光が、基板11に到達してしまい、基板11自体又は基板11に形成されている保護されるべき電子回路等の電子素子が、漏れた光による悪影響を受けてしまうおそれがある。漏れた光による悪影響としては、基板11に実装されている電子回路の分解、基板11の損傷等が挙げられる。
この問題を回避するために、本発明者らは、分離層16に照射されるレーザー光によって、基板11及び基板11に形成された電子素子が受けるダメージについて鋭意検討を重ねた。その結果、分離層16のOD値として0.20以上、1.00以下を選択すればよいことを見出した。分離層16におけるこのようなOD値の選択は、レーザー光の照射によって、レーザー光の透過光が基板11にダメージを与えず、かつ分離層16を所望のように変質させることを可能にした。
特に、以下の条件において、基板11へのダメージを好適に防ぐことができる。言い換えれば、分離層16のOD値を、0.20以上、1.00以下としたとき、レーザー光の照射条件は、以下のように設定することが好ましい。
すなわち、レーザー光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下の範囲であることが好ましく、3.0W以上、4.0W以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザー光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下の範囲であることが好ましく、30kHz以上、50kHz以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザー光の波長は、300nm以上、700nm以下であることが好ましく、450nm以上、650nm以下の範囲であることがより好ましい。このような条件によれば、分離層16に照射するパルス光のエネルギーを、基板11へのダメージを防ぎつつ、分離層16を変質させるための適切な条件にすることができる。
また、上記分離層16の分離工程に使用されるパルス光のビームスポット径は、100μm以上、250μm以下であることが好ましく、120μm以上、230μm以下であることがより好ましい。
また、パルス光の照射ピッチは、隣接するビームスポットが重ならず、かつ分離層16を変質させることが可能なピッチであればよいが、110μm以上、250μm以下であることが好ましく、160μm以上、220μm以下であることがより好ましい。
さらに、パルス光の照射速度は、分離層16を変質させることが可能な速度であればよいが、4000mm/s以上、10000mm/s以下であることが好ましく、5000mm/s以上、8000mm/s以下であることがより好ましい。
上記条件とすることで、レーザー光のビームスポットの重複が回避される。つまり、分離層16へ照射されるレーザー光のエネルギーの機械的側面からのばらつき(レーザー装置の設定によるばらつき)を制御できる。従って、OD値が規定された本実施形態に係る積層体に対して用いるレーザー光の照射条件として、好適に用いることができる。
さらに、分離層16に照射するパルス光のパルス幅は、20ナノ秒以上であることが好ましい。より好ましくは、40ナノ秒以上であり、さらに好ましくは、70ナノ秒以上である。分離層16に照射するパルス光のパルス幅の上限値は、200ナノ秒であることが好ましく、150ナノ秒であることがより好ましい。これにより、分離層16に吸収されずに漏れた光が、基板11及び基板11に形成された電子素子に及ぼす悪影響を、より抑えることができる。
積層体の分離方法においてパルス光を照射する照射装置としては、分離層16にパルス幅が20ナノ秒以上のパルス光を照射することができれば、特に限定されず、YAGレーザー、ルビーレーザー、ガラスレーザー、YVO4レーザー、LDレーザー、ファイバーレーザー等の固体レーザー発振器、色素レーザー等の液体レーザー発振器、CO2レーザー、エキシマレーザー、Arレーザー、He−Neレーザー等の気体レーザー発振器、半導体レーザー発振器、自由電子レーザー発振器等から適宜選択した発振器を使用できる。照射装置は、分離層16を構成している材料に応じて適宜選択することが可能であり、分離層16を構成する材料を変質させ得る光を照射するレーザーを選択すればよい。上記レーザー光の周波数は300nmから700nmであることが好ましい。レーザー光の周波数が当該範囲内であると、分離層に照射されたレーザー光が基板11及び基板11に形成された電子素子にダメージを与えることなく分離層16を変質させることが容易となる。
照射工程においては、パルス光を積層体1の全体に均一に照射することが好ましいが、基板11とサポートプレート12とを容易に分離できるように、分離層16を変質させることができれば、積層体1に部分的にパルス光を照射してよい。
(分離工程)
OD値が0.20以上、1.00以下である分離層16を用いた積層体1に、上記条件のレーザー光照射を行った場合、分離層16はレーザー照射を受けて変質するため、サポートプレート12は単に持ち上げるだけで、基板11から容易に分離する。
積層体の分離方法によれば、分離層16のOD値を0.20以上、1.00以下に調整することで、パルス発振されたレーザー光の適切な繰り返し周波数、及び平均出力を設定可能である。従って適切に設定されたレーザー光照射するので、分離層16において吸収されずに漏れた光が、基板11に到達したとしても、基板11及び基板11に形成された電子素子にダメージを与えることがない。また、分離層16を変質させるのに必要なエネルギー強度の光を分離層16に照射できるので、基板11とサポートプレート12とを容易に分離できる。
すなわち、積層体の分離方法によれば、製造プロセス中には基板11とサポートプレート12との強固な接着を実現しつつ、製造プロセス後には光照射によって容易に基板11とサポートプレート12とを分離可能であるとともに、光による基板11への悪影響を防止できるという効果を奏する。
〔分離層の評価方法〕
また、他の観点から見れば、本発明は、分離層のOD値を測定する測定工程を包含する分離層の評価方法を提供する。すなわち、上述のように、分離層のOD値が所定の範囲内であれば、基板表面へのダメージを防止できる。よって、分離層のOD値を測定することによって、当該分離層が、基板表面へダメージを与える光を透過させないか否かを評価できる。
一実施形態において、分離層の評価方法では、測定工程において測定した分離層のOD値が0.20以上である場合、当該分離層が、基板表面へダメージを与えるような光を透過させないと決定できる。さらに好ましくは、測定工程において測定した分離層のOD値が0.20以上、1.00以下である場合、当該分離層が、基板表面へダメージを与える光を透過させないと決定できる。このようにして、照射工程において、基板表面が受けるダメージに起因する不良品の製造を回避できる。なお、このときの照射工程におけるレーザー光の平均出力値は、1.0W以上、5.0W以下の範囲であることが好ましく、3.0W以上、4.0W以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザー光の繰り返し周波数は、20kHz以上、60kHz以下の範囲であることが好ましく、30kHz以上、50kHz以下の範囲であることがより好ましい。また、レーザー光の波長は、300nm以上、700nm以下であることが好ましく、450nm以上、650nm以下の範囲であることがより好ましい。また、パルス光のビームスポット径は、100μm以上、250μm以下であることが好ましく、120μm以上、230μm以下であることがより好ましい。また、パルス光の照射ピッチは、隣接するビームスポットが重ならず、かつ分離層16を変質させることが可能なピッチであればよいが、110μm以上、250μm以下であることが好ましく、160μm以上、220μm以下であることがより好ましい。さらに、パルス光の照射速度は、分離層16を変質させることが可能な速度であればよいが、4000mm/s以上、10000mm/s以下であることが好ましく、5000mm/s以上、8000mm/s以下であることがより好ましい。さらに、分離層16に照射するパルス光のパルス幅は、20ナノ秒以上であることが好ましい。より好ましくは、40ナノ秒以上であり、さらに好ましくは、70ナノ秒以上である。分離層16に照射するパルス光のパルス幅の上限値は、200ナノ秒であることが好ましく、150ナノ秒であることがより好ましい。
以下に実施例を示し、本発明の実施形態のさらなる詳細を説明する。もちろん、本発明は、以下の実施例に限定されず、細部には種々の態様を採用可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
(出力と剥離可能範囲の評価)
12インチベアガラス(サポートプレート)に流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC4F8を使用したプラズマCVD法により、フルオロカーボン膜(0.5μm)を形成した(分離層形成工程)。
同じく分離層形成工程として、積層体を製造する平行平板電極を備えた反応室の条件は、高周波電源の出力電力1.0kW、圧力67Pa、及び成膜温度220℃に調整した。該反応室において、まず、流量200sccmに調整したイソプレンを反応ガスとして供給して、プラズマCVD法によるプラズマ処理を行なった。その後、プラズマ処理を中断せずに、流量100sccmに調整したイソプレンおよび流量100sccmに調整した6フッ化硫黄(SF6)を、1:1の割合において含有する反応ガスを供給して、プラズマCVD法によるプラズマ処理を行なった。これにより、イソプレンと6フッ化硫黄(SF6)から形成される分離層(膜厚0.5μm)を、12インチベアガラスに形成した。当該分離層を便宜的に「イソプレン膜」と称する。
また、12インチシリコンウエハ(基板)には接着剤組成物(TZNR−A3007、東京応化工業株式会社製)を塗布し、100℃、160℃、200℃で各3分焼いて接着剤層(膜厚50μm)を形成した(接着層形成工程)。そして、真空下の220℃、4000Kgの条件で3分間、フルオロカーボン膜を形成したガラス支持体と貼り合せを行い積層体とした(積層工程)。
そして、レーザー光の波長を532nm、レーザー光の直径を180μmとして、レーザパルスにおける被照射領域同士の中心間距離を180μm、走査速度を7200mm/sとして、レーザー光の平均出力及び繰り返し周波数を変更した条件でレーザー光照射を行い、分離層を剥離し得るか否かを判定した。
評価結果を表1に示す。なお、表1では、レーザー光を照射した後、サポートプレートが剥離できた条件を「○」、剥離できなかった条件を「×」で示す。
以上の結果を踏まえ、平均出力3.42W、繰り返し周波数40kHzを標準条件として、以下の検討を行った。
(OD値とSn−Ag装着基板へのダメージとの関係の検討)
続いて、CVD法による分離層の成膜時間の異なるサポートプレートを作成し、分離層のOD値を測定した後、レーザー光を発振するレーザー照射装置を用いて、レーザー光が基板に及ぼす影響を調べた。
12インチベアガラス(サポートプレート)に流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC4F8を使用したプラズマCVD法により、フルオロカーボン膜を形成した(分離層形成工程)。このとき、分離層の膜厚の目標をそれぞれ2000Å(0.2μm)、4500Å(0.45μm)、7000Å(0.7μm)として、成膜時間を3条件で変化させた。このとき、1つの条件につき、2点ずつ分離層を作成した(膜厚2000Åの分離層について(1)および(2)、膜厚4500Åの分離層について(3)および(4)、膜厚7000Åの分離層について(5)および(6))。
次に、X−Rite310(OD値測定機、エックスライト社製)を用いて上記各分離層の中心位置から一定距離ごとにOD値を測定した。結果を表2および図4(a)に示す。なお、OD値は、表2、図4(a)および(b)に示すとおり、サポートプレート上の分離層における中心からの距離が異なる各位置において測定した。分離層の中心から120mmまでの距離では6mmのピッチで、中心から120mm以上150mmまでは3mmのピッチで測定した。
また、フルオロカーボン膜またはイソプレン膜を、分離層として形成して、同様の条件下において、OD値を測定した。結果は表3および図5に示す通りである。
また、Sn−Ag板(スズ−銀板、0.3〜0.4μm)を装着した12インチシリコンウエハ(基板)のSn−Ag板上に接着剤組成物(TZNR−A3007、東京応化工業株式会社製)を塗布し、100℃、160℃、200℃において各3分間焼いて接着剤層(膜厚50μm)を形成した(接着層形成工程)。なお、上記Sn−Ag板を、ウエハ基板に実装される素子、電気回路等の代わりとして使用した。そして、真空下の220℃、4000Kgの条件で3分間、フルオロカーボン膜を形成したガラス支持体と貼り合せを行い積層体とした(積層工程)。
そして、レーザー光の波長を532nm、レーザー光の直径を180μmとして、レーザパルスにおける被照射領域同士の中心間距離を180μm、走査速度を7200mm/sとして、レーザー光の平均出力3.42W、繰り返し周波数40kHzでレーザー光照射を行った。
上記条件でレーザー光を照射した後、Sn−Ag板が受けるダメージについて、顕微鏡にて目視で確認した。Sn−Ag板上に、レーザー光のビームスポットが形成された場合には、ダメージ有とし、形成されていない場合には、ダメージ無とした。
確認の結果、全面的にOD値が0.30より低かったTarget:2000Aでは、(1)及び(2)共にいずれの位置においてもSn−Ag板上にダメージが認められた。Target:4500Aでは、(3)及び(4)共にOD値が0.29であった位置では、Sn−Ag板上にわずかなダメージが認められたが、OD値が0.30以上1.00以下の位置ではSn−Ag板上にダメージは認められなかった。全面的にOD値が0.30以上1.00以下であるTarget:7000Aでは、(5)及び(6)共にいずれの位置においてもSn−Ag板上にダメージは認められなかった。
(OD値と各種基板へのダメージとの関係の検討)
続いて、ウエハ基板に実装される素子、電気回路等の代わりに、各種の材料を装着した12インチシリコンウエハ(基板)を用いたそれぞれ積層体を作成し、CVD法による分離層の成膜時間を調整することで、異なるOD値を示す分離層を形成するサポートプレートを作成し、それぞれの条件を組み合わせた積層体を作成し、レーザー光を照射することで、レーザー光が各材料に及ぼす効果について、Sn−Ag板の場合と比較検討を行なった。
素子、電気回路の代わりに用いた材料は、Cu(1μm)、SiO2(1μm)、Al(0.2μm)、およびポリイミド(0.1μm)であり、これらを12インチシリコンウエハ(基板)に装着したものを評価に用いた。また、ベアシリコンウエハについても同様の評価を行い、Sn−Ag板の場合と比較した。
12インチベアガラス(サポートプレート)に流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W及び成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてC4F8を使用したプラズマCVD法により、フルオロカーボン膜を形成した(分離層形成工程)。この際、分離層の膜厚の目標をそれぞれ2000Å(0.2μm)、4500Å(0.45μm)、7000Å(0.7μm)として、成膜時間を3条件で変化させた。また、比較のため、分離層を形成しないサポートプレート(下記表3における「直接」)についても準備した。
次に、X−Rite310(OD値測定機、エックスライト社製)を用いて上記各分離層の中心位置から一定距離のOD値を測定した。分離層の膜厚目標が2000Åのものは、OD値はおよそ0.15、膜厚目標が4500Åのものは、OD値がおよそ0.30、膜厚目標が7000Åのものは、OD値がおよそ0.45となった。
次に、各種の材料を装着した(又は装着していない)12インチシリコンウエハ(基板)上に接着剤組成物(TZNR−A3007、東京応化工業株式会社製)を塗布し、100℃、160℃、200℃において各3分間焼いて接着剤層(膜厚50μm)を形成した(接着層形成工程)。次に、各種基板を、それぞれ、真空下の220℃、4000Kgの条件で3分間、各種ガラス支持体(フルオロカーボン膜を有している)と貼り合せを行い積層体とした(積層工程)。
そして、レーザー光の波長を532nm、レーザー光の直径を180μmとし、レーザパルスにおける被照射領域同士の中心間距離を180μm、走査速度を7300mm/sとし、レーザー光の平均出力3.42W、繰り返し周波数40kHzでレーザー光照射を行った。
上記条件でレーザー光を照射した後、各種基板が受けたダメージについて、顕微鏡にて目視で確認した。基板上に、レーザー光のビームスポットが形成された場合には、ダメージ有とし、形成されていない場合には、ダメージ無とした。確認の結果を表4に示す。
表4に示すように、基板に装着された材料の種類によって結果に違いが生じた。すなわち、レーザー光による基板上の素子、電気回路等へのダメージを回避するために必要なOD値は、基板によって異なっていた。ただし、基板に装着された材料の種類に合わせて適切なOD値を選択することによって、いずれの場合においても、レーザー光による基板上の素子、電気回路等へのダメージを回避し得ることが示された。
また、イソプレン膜の分離層としての作用を、フルオロカーボン膜の評価と同様の条件において評価した。その結果、イソプレン膜についても、フルオロカーボン膜と同様の結果が得られた。