以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。以下の説明においては、本発明の実施の形態に係る積層体の製造方法に関する概略の説明を行い、その中で、分離層を形成する分離層形成工程に関して詳細に説明することとする。
〔積層体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、基板と、接着層と、光を吸収することによって変質する分離層と、光透過性の支持体とがこの順番に積層された積層体を製造する方法である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法によって製造される積層体10は、半導体ウエハ(基板)1、半導体ウエハ1を支持する光透過性の支持体4、半導体ウエハ1と支持体4とを接着する接着層2、および半導体ウエハ1と支持体4との間に設けられ、支持体4を介して照射される光を吸収することによって変質する分離層3を備えている。そして、図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、(1)接着層形成工程、(2)分離層形成工程、および(3)貼り合わせ工程を包含している。そして、製造された積層体10から支持体4を分離する方法として、さらに、(4)照射工程、(5)分離工程、および(6)洗浄工程を包含している。
(1)接着層形成工程
接着層形成工程では、図1で「(1) 接着剤塗布」として示すように、半導体ウエハ1上に接着剤を塗布して、当該半導体ウエハ1上に接着層2を形成する。
半導体ウエハ1は、支持体4に支持された状態で、薄化や搬送、実装等の製造プロセスに供される。上記半導体ウエハ1における接着層2が設けられる側の面には、電気回路等の電子素子の微細構造が形成されていてもよい。また、他の実施形態において、積層体10は、半導体ウエハ1の代わりに、薄いフィルム基板、フレキシブル基板等の任意の基板を採用することができる。
接着層2は、半導体ウエハ1を支持体4に接着して固定すると同時に、半導体ウエハ1の表面を覆って保護する機能を備えている。従って、接着層2は、半導体ウエハ1の加工または搬送のときに、支持体4に対する半導体ウエハ1の固定、および半導体ウエハ1の保護すべき面の被覆を維持する接着性および強度を有している必要がある。一方で、接着層2は、支持体4に対する半導体ウエハ1の固定が不要になったときに、半導体ウエハ1から容易に剥離または除去される必要がある。
従って、接着層2は、通常は強固な接着性を有しているものの、何らかの処理によって接着性が低下するか、または特定の溶剤に対する可溶性を有する接着剤によって構成される。接着層2の厚さは、例えば、1〜200μmであることがより好ましく、10〜150μmであることがさらに好ましい。接着層2は、以下に例示する接着剤(接着材料)を、スピン塗布等の従来公知の方法により半導体ウエハ1上に塗布することによって、形成することができる。
上記接着層2を構成する接着剤として、例えば、アクリル系、ノボラック系、ナフトキサン系、炭化水素系、ポリイミド系、エラストマー等の、当該分野において公知の種々の接着材料を含む接着剤を使用することができる。次に、接着材料である樹脂の組成を説明する。
接着層2に含有される樹脂は、接着性を備えたものであればよく、具体的には、例えば、炭化水素樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、マレイミド系樹脂、エラストマー樹脂等、またはこれらの組み合わせ等が挙げられる。
(炭化水素樹脂)
炭化水素樹脂は、炭化水素骨格を有し、単量体成分(組成物)を重合してなる樹脂である。炭化水素樹脂として、シクロオレフィン系ポリマー(以下、「樹脂(A)」ということがある)、並びに、テルペン樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが、これに特に限定されるものではない。
樹脂(A)は、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を重合してなる樹脂であってもよい。具体的には、樹脂(A)として、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分の開環(共)重合体、シクロオレフィン系モノマーを含む単量体成分を付加(共)重合させてなる樹脂等が挙げられる。
樹脂(A)を構成する単量体成分に含まれる上記シクロオレフィン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン、ジヒドロキシペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、テトラシクロペンタジエン等の七環体、またはこれら多環体のアルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)置換体、アルケニル(ビニル等)置換体、アルキリデン(エチリデン等)置換体、アリール(フェニル、トリル、ナフチル等)置換体等が挙げられる。これらの中でも特に、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはこれらのアルキル置換体からなる群より選ばれるノルボルネン系モノマーがより好ましい。
そして、樹脂(A)を構成する単量体成分として、シクロオレフィン系モノマーを含有することが、高耐熱性(低い熱分解、熱重量減少性)の観点から好ましい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィン系モノマーの割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。また、樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するシクロオレフィン系モノマーの割合は、特に限定されるものではないが、溶解性および溶液での経時安定性の観点から、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
樹脂(A)を構成する単量体成分は、上述したシクロオレフィン系モノマーと共重合可能な他のモノマーを含有していてもよく、例えば、アルケンモノマーを含有することが好ましい。アルケンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、α−オレフィン等が挙げられる。アルケンモノマーは、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
即ち、樹脂(A)を構成する単量体成分として、直鎖状または分岐鎖状のアルケンモノマーを含有してもよい。樹脂(A)を構成する単量体成分全体に対するアルケンモノマーの割合は、溶解性および柔軟性の観点から、10〜90モル%であることが好ましく、20〜85モル%であることがより好ましく、30〜80モル%であることがさらに好ましい。
また、樹脂(A)は、例えば、シクロオレフィン系モノマーとアルケンモノマーとからなる単量体成分を重合させてなる樹脂のように、極性基を有していない樹脂であることが、高温下でのガスの発生を抑制する上でより好ましい。
単量体成分を重合するときの重合方法や重合条件等は、特に限定されるものではなく、常法に従い適宜設定すればよい。
樹脂(A)として用いることのできる市販品としては、例えば、ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS」、三井化学株式会社製の「APEL」、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR」および「ZEONEX」、JSR株式会社製の「ARTON」等が挙げられる。
樹脂(A)のガラス転移点(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。樹脂(A)のガラス転移点が60℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層の軟化をさらに抑制することができる。
樹脂(B)は、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である。具体的には、テルペン系樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン等が挙げられる。石油樹脂としては、例えば、脂肪族または芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン・インデン石油樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水添テルペン樹脂、水添石油樹脂がより好ましい。
樹脂(B)の軟化点は特に限定されるものではないが、80〜160℃の範囲内であることが好ましい。樹脂(B)の軟化点が80℃以上であると、積層体が高温環境に曝されたときに接着層が軟化することを抑制することができ、接着不良を生じない。一方、樹脂(B)の軟化点が160℃以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好となる。
樹脂(B)の分子量は特に限定されるものではないが、300〜3,000の範囲内であることが好ましい。樹脂(B)の分子量が300以上であると、耐熱性が充分となり、高温環境下における脱ガス量が少なくなる。一方、樹脂(B)の分子量が3,000以下であると、積層体を剥離するときの剥離速度が良好となる。尚、樹脂(B)の分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の分子量で示している。
さらに、炭化水素樹脂として、樹脂(A)と樹脂(B)とを混合して用いてもよい。樹脂(A)と樹脂(B)とを混合することにより、耐熱性および剥離速度が良好となる。樹脂(A)と樹脂(B)との混合割合は、例えば、(A):(B)=80:20〜55:45(質量比)であることが、剥離速度、高温環境時の熱耐性、および柔軟性に優れるので好ましい。
(アクリル−スチレン系樹脂)
アクリル−スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンまたはスチレンの誘導体と、(メタ)アクリル酸エステル等とを単量体成分として用いて共重合した樹脂が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。尚、当該アルキル基は、分岐鎖状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルは、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有していてもよい。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、フェノキシエチルアクリレートがより好ましい。
(マレイミド系樹脂)
マレイミド系樹脂としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−イソブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−へプチルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド等の、アルキル基を有するマレイミド;N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シクロオクチルマレイミド等の、脂肪族炭化水素基を有するマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−m−メチルフェニルマレイミド、N−o−メチルフェニルマレイミド、N−p−メチルフェニルマレイミド等の、アリール基を有する芳香族マレイミド;等を単量体成分として(共)重合して得られる樹脂が挙げられる。
また、接着材料である樹脂として、下記化学式(1)で表される繰り返し単位および下記化学式(2)で表される繰り返し単位の共重合体であるシクロオレフィンコポリマーを用いることもできる。
(化学式(2)中、nは0または1〜3の整数である。)
上記シクロオレフィンコポリマーとして用いることのできる市販品としては、例えば、三井化学株式会社製の「APL 8008T」、「APL 8009T」および「APL 6013T」等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、接着層は、光硬化性樹脂(例えば、UV硬化性樹脂)以外の樹脂を用いて形成することが好ましい。光硬化性樹脂を用いた場合には、接着層の剥離または除去の後に、半導体ウエハの微小な凹凸の周辺に、接着層が残渣として残ってしまうおそれがある。接着層を構成する接着材料として、特定の溶剤に溶解する樹脂が特に好ましい。特定の溶剤に溶解する樹脂を用いることにより、半導体ウエハに物理的な力を加えることなく、溶剤に溶解させることによって接着層を除去することができる。このため、接着層の除去にあたり、例えば強度が低下した半導体ウエハからでも、半導体ウエハを破損させたり、変形させたりせずに、容易に接着層を除去することができる。
接着層を構成する接着材料(樹脂)を希釈若しくは溶解する溶剤としては、具体的には、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、メチルオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状の炭化水素;炭素数4から15の分岐鎖状の炭化水素;o−メンタン、m−メンタン、p−メンタン、ジフェニルメンタン、1,4−テルピン、1,8−テルピン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、ツジャン、カラン、ロンギホレン、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、イソメントール、ネオメントール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、テルピネン−1−オール、テルピネン−4−オール、ジヒドロターピニルアセテート、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ボルネオール、カルボン、ヨノン、ツヨン、カンファー、d−リモネン、l−リモネン、ジペンテン等のテルペン系溶剤;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン(CH)、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等の、エステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物の、モノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル、またはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の、多価アルコール類の誘導体(これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)がより好ましい);ジオキサン等の環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル等の芳香族系有機溶剤;等が挙げられる。
(エラストマー樹脂)
エラストマー樹脂は、主鎖の構成単位としてスチレン単位を含んでいることが好ましい。接着剤として用いるエラストマー樹脂は、当該スチレン単位の含有量が14重量%以上、50重量%以下の範囲内であることが好ましい。さらに、エラストマー樹脂は、重量平均分子量が10,000以上、200,000以下の範囲内であることが好ましい。
エラストマー樹脂としては、例えば、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(SEP)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−ブタジエン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SBBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー)(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEEPS)、およびこれらコポリマーの水添物等が挙げられる。
(その他の成分)
接着層を構成する接着材料には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、混和性のある他の物質がさらに含まれていてもよい。例えば、接着材料は、接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着補助剤、安定剤、着色剤、酸化防止剤および界面活性剤等、慣用されている各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
(2)分離層形成工程
分離層形成工程では、図1で「(2) 分離層形成」として示すように、プラズマ処理によって、支持体4上に分離層3を形成する。
半導体ウエハ1を支持する支持体4は、ガラス、シリコン、アクリル系樹脂、セラミック等で構成されており、半導体ウエハ1の薄化や搬送、実装等の製造プロセス時に、半導体ウエハ1の破損または変形を防ぐために必要な強度を有している。尚、支持体4は、サポートプレートと称されることもある。
支持体4は、光透過性を有しているので、積層体10の外側から支持体4に向けて光が照射されたときに、当該光が支持体4を透過して分離層3に到達する。また、支持体4は、照射された全ての波長の光を透過させる必要はなく、分離層3に吸収されるべき(所定の波長を有している)光を透過させることができればよい。
分離層3は、支持体4を介して照射される光を吸収することによって変質する材料から形成されている層である。本明細書において、分離層が「変質する」とは、分離層の強度が低下し、僅かな外力を受けることによって分離層が破壊され得る状態、または、分離層と当該分離層に接する層との接着力が低下し、僅かな外力を受けることによって分離層と当該分離層に接する層とが分離され得る状態となる現象を指す。光を吸収することによって分離層が変質するので、結果として、分離層は、光の照射を受ける前の強度または接着力を失う。よって、例えば、支持体を持ち上げる等の僅かな外力を加えることにより分離層が破壊若しくは分離されて、支持体と半導体ウエハとを容易に分離することができる。
分離層の変質としては、吸収した光のエネルギーによる(発熱性または非発熱性の)分解、架橋、立体配置の変化または官能基の解離(そして、これらに伴う分離層の硬化、脱ガス、収縮または膨張)等が挙げられる。分離層の変質は、当該分離層を構成する材料による光の吸収の結果として生じる。よって、分離層の変質の種類は、分離層を構成する材料の種類に応じて変化する。
分離層3は、支持体4における、接着層2を介して半導体ウエハ1が貼り合わされる側の表面に設けられている。即ち、分離層3は、支持体4と接着層2との間に設けられている。
分離層3の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、0.05〜50μmの範囲内であることがより好ましく、0.3〜1μmの範囲内であることがさらに好ましい。分離層3の厚さが0.05〜50μmの範囲内に収まっていれば、短時間の光の照射または低エネルギーの光の照射によって、分離層3に所望の変質を生じさせることができる。また、分離層3の厚さは、生産性の観点からは1μm以下であることが好ましい。
尚、積層体10において、分離層3と支持体4との間には、他の層がさらに形成されていてもよい。この場合には、上記他の層は光を透過する材料から構成されていればよい。これにより、分離層3への光の照射を妨げることなく、積層体10に、好ましい性質等を付与する層を、適宜追加することができる。分離層3を構成する材料の種類によって変質に用いる光の波長が異なるので、他の層を構成する材料は、照射された全ての波長の光を透過させる必要はない。従って、他の層を構成する材料は、分離層3を構成する材料を変質させ得る波長の光を透過させることができる材料から適宜選択すればよい。
分離層3は、光を吸収する構造を有する材料のみから形成されていることが好ましいものの、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、光を吸収する構造を有していない材料を添加して、分離層3を形成してもよい。また、分離層3における接着層2に対向する側の面が平坦である(凹凸が形成されていない)ことが好ましく、これにより、分離層3の形成を容易に行うことができ、かつ、半導体ウエハ1と支持体4とを均一に貼り付けることが可能となる。
分離層3を構成する材料は、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって支持体4上に分離層3を形成することができ、かつ、光を吸収することによって変質する性質を備えていればよく、特に限定されるものではないが、例えば、有機化合物とフッ素化合物とを含む反応ガスが挙げられる。上記反応ガスは、プラズマ処理装置のチャンバー(プラズマ処理を行う処理室)に導入される。
以下、分離層3を構成する材料を具体的に説明する。尚、分離層3における光の吸収率は、80%以上であることが好ましい。
(反応ガス)
分離層3は、常温(25℃)において液状または気体状の有機化合物とフッ素化合物とを含む反応ガスからなっている。分離層3は、上記反応ガスによって構成されることにより、光を吸収することによって変質する性質を備えることができ、光の照射を受けると、光の照射を受ける前の強度または接着力を失う。よって、例えば、支持体4を持ち上げる等の僅かな外力を加えることにより分離層3が破壊若しくは分離されて、半導体ウエハ1と支持体4とを容易に分離することができる。また、上記反応ガスによって構成することにより、積層する基板の大型化が可能な分離層を形成できることができる。
反応ガスに含まれる有機化合物は、不飽和結合を有していれよく、例えば、アルケン、シクロアルケン、アルキン、および芳香族化合物が挙げられる。アルケンとしては、例えば、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。シクロアルケンとしては、例えば、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。アルキンとしては、例えば、アセチレン等が挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン等が挙げられる。また、不飽和結合を有していれば、上記有機化合物として、例えば、エーテル結合、エステル結合、およびシロキシ結合等を有する有機化合物を用いることもできる。エーテル結合および/またはシロキシ結合を有する有機化合物としては、例えば、1−メトキシ−3−(トリメチルシリルオキシ)−1,3−ブタジエン、2−トリメチルシリルオキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。エステル結合を有する有機化合物としては、例えば、2,3−ブタジエン酸エチル等が挙げられる。これら有機化合物は、2種類以上、混合して用いてもよい。これら有機化合物をプラズマ処理の反応ガスとして用いることによって、分離層3に不飽和結合を導入することができる。これにより、高密度プラズマのみならず低密度プラズマにおいても、光を吸収することによって変質する性質を備える分離層3を形成することが可能になる。
ここで、上記有機化合物は、アルケンまたはシクロアルケンであることがより好ましい。アルケンまたはシクロアルケンは、低密度プラズマによって崩壊し難い構造を有している。このため、反応ガスにアルケンまたはシクロアルケンを含有させることで、プラズマ処理においてアルケンまたはシクロアルケンを過剰に崩壊させることなく、好適に重合させることができる。また、プラズマ処理によって形成される分離層3に不飽和結合を導入することができる。従って、有機化合物としてアルケンまたはシクロアルケンを用いることで、光を吸収することによって変質する性質を備える分離層3を好適に形成することができる。
また、有機化合物は、不飽和結合を2つ以上有していることがより好ましい。これにより、分離層をさらに好適に形成することができる。
さらに、有機化合物は、液状である場合に、沸点が30℃以上、100℃以下の範囲内であることがより好ましく、30℃以上、60℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、40℃以上、50℃以下の範囲内であることが最も好ましい。有機化合物の沸点が30℃以上、100℃以下の範囲内であれば、プラズマ処理のための条件において、反応ガスとして有機化合物を好適に使用することができる。
反応ガスに含まれるフッ素化合物としては、例えば、フルオロカーボン、3フッ化窒素(NF3)、6フッ化硫黄(SF6)等が挙げられる。フルオロカーボンは、CxFy(パーフルオロカーボン)若しくはCxHyFz(x、yおよびzは自然数)で示され、例えば、CHF3、CH2F2、4フッ化炭素(CF4)、C2H2F2、C4F8、C2F6、C5F8等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらフッ素化合物は、2種類以上、混合して用いてもよい。これらフッ素化合物をプラズマ処理の反応ガスとして用いることによって、分離層3の脆さを改善することができ、分離層3の耐薬品性を向上させることができる。上記フッ素化合物は、6フッ化硫黄(SF6)であることが特に好ましい。6フッ化硫黄(SF6)反応ガスとして用いることによって、分離層の脆さをさらに改善することができ、耐薬品性のよい分離層をさらに好適に形成することができる。
また、分離層3を構成するために用いる反応ガスには、必要に応じて、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス;CH4等のアルカン;および、水素、酸素、二酸化炭素;等の添加ガスを添加してもよい。また、これらガスを複数種類、混合して用いてもよい。添加ガスの添加量は、特に限定されるものではないが、例えば、水素を添加する場合には、反応ガス全体に対して5%以上、20%以下の割合で添加することが好ましい。酸素は、極めて微量を添加するか、または添加しないことが好ましい。
さらに、反応ガスは、フッ素化合物を主成分としてもよく、有機化合物を主成分としてもよい。ここで、主成分とは、後述するプラズマ処理装置のチャンバー(プラズマ処理を行う処理室)に導入する反応ガスにおいて最も含有量(体積%)が多いガスを指す。また、添加ガスとして不活性ガスを適量添加することにより、反応ガスを好適に攪拌して、分離層3を均一に成膜することもできる。
フッ素化合物および有機化合物は、種類毎に、その種類に固有の範囲の波長を有する光を吸収する。分離層3の形成に用いたフッ素化合物および有機化合物が吸収する範囲の波長の光を分離層3に照射することにより、分離層3を好適に変質させることができる。
分離層3は、有機化合物とフッ素化合物とを含む上記反応ガスによって構成されるが、さらに、上記反応ガス以外の成分を含んで構成されていてもよい。当該成分としては、例えば、フィラー、可塑剤、および支持体4の剥離性を向上し得る成分等が挙げられる。これら成分は、上記構造による赤外光の吸収および重合体の変質を妨げないか、または促進する、従来公知の物質または材料から適宜選択される。
分離層3を構成する上記反応ガスは、形成を所望する膜の機能に応じて有機化合物およびフッ素化合物等が適宜選択されて、後述するプラズマ処理装置のチャンバー(プラズマ処理を行う処理室)に導入される。従って、上記反応ガスは、支持体4上に形成される膜によって機能的に分類される。
上記機能的な分類として、例えば、支持体との良好な密着性を有する膜(以下、「密着性膜」と記す)を形成することができる反応ガス(以下、「反応ガスa」と記す)、撥水性を有する膜(以下、「撥水性膜」と記す)を形成することができる反応ガス(以下、「反応ガスb」と記す)、リソグラフィー工程時に耐薬品性を示す膜(以下、「耐性膜」と記す)を形成することができる反応ガス(以下、「反応ガスc」と記す)、および、水または低級アルコールで良好な洗浄性を示す膜(以下、「洗浄性膜」と記す)を形成することができる反応ガス(以下、「反応ガスd」と記す)が挙げられる。
半導体ウエハ1の洗浄に用いる上記低級アルコールとしては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール等の、炭素数1〜5のアルコールが挙げられる。洗浄性膜は、水または上記低級アルコールで洗浄可能である。
上記反応ガスaに分類される代表的な材料としては、例えば、イソプレン等のアルケンとアルゴン等の不活性ガスとの混合ガスが挙げられる。
上記反応ガスbに分類される代表的な材料としては、例えば、CHF3、C4F8等のフルオロカーボンが挙げられる。
上記反応ガスcに分類される代表的な材料としては、例えば、イソプレン等のアルケンと、アルゴン等の不活性ガスと、NF3等のフッ素化合物と、CHF3等のフルオロカーボンとの混合ガスが挙げられる。
上記反応ガスdに分類される代表的な材料としては、例えば、C4F8等のフルオロカーボンとCH4等のアルカンとの混合ガスが挙げられる。
分離層3の形成に用いる上記複数の反応ガスa〜dのうちの一つは、反応ガスa若しくは反応ガスbであることがより好ましい。また、反応ガスaおよび反応ガスbを両方用いることがさらに好ましい。そして、反応ガスaおよび反応ガスbのうちの少なくとも一つと、反応ガスc、および/または、反応ガスdとを用いることが特に好ましい。
分離層3は、密着性膜、撥水性膜、耐性膜、および洗浄性膜のうちの、2つ以上の膜を組み合わせて積層した積層膜である。これら密着性膜、撥水性膜、耐性膜、および洗浄性膜の組み合わせとしては、例えば、支持体4上に、(1) 密着性膜、耐性膜、撥水性膜がこの順に形成された組み合わせ;(2) 密着性膜、耐性膜、撥水性膜、洗浄性膜がこの順に形成された組み合わせ;(3) 密着性膜、耐性膜、洗浄性膜がこの順に形成された組み合わせ;(4) 撥水性膜、耐性膜、洗浄性膜がこの順に形成された組み合わせ;等が好適であるが、特に限定されるものではない。また、積層膜の中間層として撥水性膜を形成することにより、分離層3は、親水性を有する密着性膜を用いた場合においても、リソグラフィー工程時に用いる例えばフッ酸等の親水性溶媒が支持体4表面(貼り合わされる側の面)に浸透することを防止することができる。尚、撥水性膜は通常、柔軟性を備えている。
分離層3に所望する機能によって反応ガスa〜dを適宜組み合わせることにより、当該機能に応じた良好な膜を成膜することができる。積層膜の全体の膜厚は、分離層3に所望する機能や性能に応じて設定すればよく、従って、各膜の厚さはこれら機能や性能に応じて適宜調節すればよい。尚、各膜の厚さは、通常、支持体4上に各膜を単独で形成する場合の一般的な膜厚よりも薄くすることができる。
また、分離層3は、上記密着性膜、撥水性膜、耐性膜、および洗浄性膜のうちの、2つ以上の膜の他に、レーザ分離性に優れた膜(分離性膜)をさらに組み合わせて積層した積層膜であってもよい。
(プラズマ処理装置)
本発明に係る積層体の製造方法においては、複数の反応ガスを順次導入することができるように、プラズマ処理装置に反応ガスを供給する供給装置を改良するだけでよく、従って、公知のプラズマ処理装置を転用することができる。但し、より良好な分離層3を形成することができるように、下記構成のプラズマ処理装置を使用することが好ましい。
図2および図3を参照しながら、分離層形成工程において用いるプラズマ処理装置の一構成例を説明する。図2に示すように、プラズマ処理装置100は、ベース101上に排気リング104が重ねられ、排気リング104上にチャンバー胴部105が重ねられ、チャンバー胴部105上にチャンバー上部106が重ねられ、チャンバー上部106上に天板108が重ねられた構造を備えると共に、排気リング104下方の開口をステージ103が塞いだ構造を備えており、上記ベース101、排気リング104、チャンバー胴部105、チャンバー上部106、天板108およびステージ103にて閉ざされた内部空間として、チャンバー102を有している。
排気リング104、チャンバー胴部105およびチャンバー上部106は、例えば、石英によって構成されている。一方、天板108およびステージ103は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属によって構成されている。
チャンバー102の上部は、ドーム形状(伏鉢形状)を有するドーム部112となっており、チャンバー102の下部は、円筒形状を有する円筒部113となっている。従って、チャンバー102は、ベルジャー型の形状を有している。ドーム部112は、チャンバー上部106の上部によって構成され、円筒部113は、チャンバー上部106の下部と、チャンバー胴部105とによって構成されている。
排気リング104には、排気孔109が設けられており、チャンバー102内から排ガスを排出する。
天板108は、ドーム部112の頂上に設けられた開口部を塞ぐように配置されている。天板108には、チャンバー102内に反応ガスを供給する供給口110が設けられている。また、天板108は接地されている。さらに、プラズマ処理装置100は、供給口110の上流側に、反応ガスを供給する供給装置(図示しない)を備えている。当該供給装置は、反応ガスが複数の成分からなる場合には、予め混合して混合ガスとした後、供給口110を介して混合ガスをプラズマ処理装置100のチャンバー102内に供給するようになっている。また、供給装置は、分離層形成工程時に、上述した反応ガスa〜dの切り替えを適宜行うようになっている。
ステージ103は、被処理物である支持体4を載置するステージであると共に、下部電極として働く。ステージ103は接地されている。また、ステージ103は、支持体4を必要に応じて持ち上げる複数のピン(図示しない)を備えており、プラズマCVD法の条件に応じて支持体4を持ち上げる(ピン−アップ)ようになっている。
ドーム部112の外周には、キャップ型コイル107が配置されており、チャンバー102内におけるキャップ型コイル107によって囲まれた部分(プラズマ発生部114、図2中、直線Aよりも上方の部分)においてプラズマを発生させるようになっている。具体的には、チャンバー102内に、分離層3を形成する材料となる複数の反応ガスを供給口110から順次導入すると共に、キャップ型コイル107とステージ103との間に高周波電圧(電力)を印加することにより、プラズマ発生部114においてプラズマを発生させ、プラズマと共に生じるラジカルによって支持体4上に分離層3を形成させる。即ち、分離層3は、プラズマCVD(化学気相堆積)法によって好適に成膜することができる。
反応ガスは、形成する分離層3に所望する機能に応じて適宜選択すればよい。例えば、分離層3としてフッ素化合物の膜を形成する場合には、フッ素化合物を主成分として含有するガスを用いればよい。また、分離層3として有機化合物の膜を形成する場合には、有機化合物を主成分として含有するガスを用いればよい。フッ素化合物または有機化合物を主成分として含有する反応ガスを用いてプラズマCVD法を実行することにより、分離層3を好適に形成することができる。
反応ガスの流量およびチャンバー102内の圧力は、特に限定されるものではなく、所望する分離層3の機能に応じて、種々の条件に設定すればよい。尚、反応ガスは、供給口110から供給されると共に、排気孔109からポンプ等によって排気されることが好ましい。
プラズマCVD法を行うときのチャンバー102内の目標温度は、特に限定されるものではなく、公知の温度とすればよいが、例えば、100℃以上、300℃以下の範囲内とすることがより好ましく、200℃以上、250℃以下の範囲内とすることが特に好ましい。チャンバー102内の温度を、上記範囲内に設定することにより、プラズマCVD法を好適に行うことができる。
また、キャップ型コイル107に印加する高周波電力は、これに限定するものではないが、モードジャンプを起こす電力よりも大きくなるように設定することが好ましい。容量結合主体のプラズマ(Eモードプラズマ)は、一般にプラズマ密度が低い場合に発生し、誘導結合主体のプラズマ(Hモードプラズマ)は、一般にプラズマ密度が高い場合に発生する。EモードからHモードへの遷移は誘電電界に依存し、誘電電界が或る値以上になると容量結合から誘導結合へ切り替る。この現象は一般に「モードジャンプ」または「密度ジャンプ」と呼ばれている。即ち、モードジャンプを起こす電力以下で生じているプラズマがEモードプラズマであり、モードジャンプを起こす電力よりも大きい電力で生じているプラズマがHモードプラズマである(例えば、特許3852655号、特許4272654号等を参照のこと)。これにより、高品質な分離層3を形成することができる。
ここで、プラズマ処理装置100は、下記(A)〜(D)に示す構成のうちの何れか一つを有していればよいが、複数の構成を備えていることがより好ましく、全ての構成を備えていることが特に好ましい。
(A:ダウンフロー領域)
図2に示すように、プラズマ処理装置100のチャンバー102には、プラズマ発生部114とステージ103との間に、ダウンフロー領域111が存在する。ダウンフロー領域111とは、プラズマ発生部114において発生したラジカルが再結合する領域である。プラズマ発生部114において発生したラジカルがダウンフロー領域111において再結合した後に、支持体4上に堆積するため、良好な分離層3を形成することができる。
ここで、従来のプラズマCVD装置では、成膜速度を向上させるため、プラズマ発生部およびステージ間の距離が短くなっている。そして、カソードバイアスを掛けることによって、不要な堆積物を排除している。しかしながら、本発明者らの独自の知見によれば、このようなプラズマCVD装置を用いた場合には、光吸収性が高い良好な分離層を形成することが困難である。例えば、C4F8を反応ガスとして用いた場合には、プラズマ発生部においてCF2が生成し、これがそのまま堆積すると、透明の分離層が形成されてしまう。
一方、プラズマ処理装置100では、プラズマ発生部114において発生したラジカルが再結合した後に、支持体4上に堆積するため、良好な分離層3を形成することができる。特に、プラズマ発生部114において発生した炭素ラジカルが再結合したものは、二重結合を有しているため、光吸収性が高く、良好な分離層3の形成に寄与する。この場合、好適な例において、分離層3は、両端がフッ素リッチであり、中央部が炭素リッチである粒子が堆積されてなる。
ダウンフロー領域111の高さ、即ち、ステージ103の上面から、プラズマ発生部114の下端(キャップ型コイル107の下端)までの距離は、特に限定されるものではなく、上述した炭素ラジカル等が好適に再結合し得る距離に設定すればよい。例えば、ダウンフロー領域111の高さは、10cm以上、20cm以下、より好ましくは10cm以上、15cm以下とすることができる。
(B:天板)
天板108は、隣接するチャンバー上部106等を構成する石英とは異なる材質である金属(アルミニウム、アルミニウム合金等の金属)で構成されている。従来のプラズマCVD装置では、このような構成は避けられている。なぜならば、金属と石英とを繋ぐためにOリング等のパッキンが必要となるため、当該パッキンに起因する汚染が生じ得るからである。しかしながら、プラズマ処理装置100では、天板108に反応ガスの供給口110を設けていることにより、プラズマ発生部114の上方から反応ガスを供給することができ、ダウンフロー領域111へのラジカルの流れが好適に生まれ、良好な分離層3を形成することができる。従って、プラズマ処理装置100では、天板108を、あえてアルミニウム、アルミニウム合金等の金属で構成することによって、より低い電力でモードジャンプを起こし、誘導結合性プラズマを発生させることができる。
特に、天板108を接地することにより、モードジャンプに必要な電力をより低減することができる。これにより、電力供給設備や、消費電力等のコストを低減することができる。
チャンバー102内には、容量結合性プラズマと、誘導結合性プラズマとの二種類のプラズマが存在し、誘導結合性プラズマを用いることによって、より高品質な分離層3を形成することができる。特に、本発明者らの独自の知見によれば、誘導結合性プラズマを用いた場合に、炭素ラジカルの発生量を増大させることができる。そのため、誘導結合性プラズマを発生させることにより、炭素ラジカルが再結合してなる光吸収性が高い粒子を支持体4上に好適に堆積させることができる。
(C:キャップ型コイル)
図2に示すように、プラズマ処理装置100では、キャップ型コイル107が、ドーム部112の外周に設けられている。即ち、キャップ型コイル107は、下方に向かって直径が徐々に大きくなるように構成されている。これにより、高周波電力を供給したときのキャップ型コイル107における抵抗成分を低減することができる。換言すれば、抵抗成分を大きくすることなく、キャップ型コイル107の巻き数を多くすることができる。
図3に示すように、キャップ型コイル107は、二重のコイル(キャップ型コイル107aおよびキャップ型コイル107b)によって構成されている。これにより、平面上におけるプラズマの均一性を向上させることができる。また、両コイルは互いの端部(BとD、CとE)が重ならないように配置されており、特に、互いの端部(BとD、CとE)が、線対称の位置に配置されていることが好ましい。これにより、平面上におけるプラズマの均一性をさらに向上させることができる。
(D:サイズ)
プラズマ処理装置100においては、被処理物である支持体4の外周と、チャンバー102の内壁とを接近させて、チャンバー102の容量が小さくなるように構成されている。従来のプラズマCVD装置では、通常、被処理物に対し、チャンバーを大きく構成している。なぜならば、チャンバーの縁部におけるプラズマは粗密のバラツキが大きくなることが多く、均質な分離層を形成することが困難であるためである。しかしながら、本発明者らの知見によれば、被処理物である支持体4の外周と、チャンバー102の内壁とを接近させて、チャンバー102の容量が小さくなるように構成することにより、反応ガスのロスが少なくなり、成膜速度を向上させることができる。
(変形例)
図2に示されているプラズマ処理装置100は、分離層形成工程において用いられるプラズマ処理装置の一構成例であり、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、充分なダウンフロー領域を確保し得る構造であれば、例えば、図4に示されている構造の(図2に示されているプラズマ処理装置よりもダウンフロー領域111がより大きい)プラズマ処理装置を分離層形成工程に用いてもよいし、その他の構造のプラズマ処理装置を用いてもよい。
また、例えば、チャンバーの側壁をチャンバー胴部およびチャンバー上部の二つの部材で構成する必要はなく、一つの部材または三つ以上の部材で構成してもよい。さらに、チャンパーの外側および内側の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、チャンバー内壁に適宜、凹凸が設けられていてもよい。また、排気孔の位置も特に限定されるものではない。
(分離層形成方法)
支持体上に分離層をプラズマCVD法で形成する方法の一例として、上述した反応ガスa〜dおよびプラズマ処理装置100を用いて分離層3を形成する方法を、手順に沿って以下に説明する。尚、以下の説明においては、反応ガスa、反応ガスc、反応ガスb、反応ガスdを、この順にプラズマ処理を行う処理室であるチャンバー102内に導入して分離層3を形成する方法を例に挙げることとする。また、プラズマ処理装置に係る一般的な(従来と同様の)操作に関しては、その説明を省略する。
先ず、プラズマ処理装置100のステージ103上に支持体4を載置し、チャンバー102内を所定の圧力に減圧する。次に、反応ガスa〜dのうちの一つである反応ガスaをチャンバー102内に導入し、高周波の照射出力、チャンバー102内の圧力、反応ガスの体積、成膜の温度等を所望の処理条件に調節した後、プラズマ処理を所望の時間行って、密着性膜を形成する。
所望の時間が経過したら、プラズマ処理を行いながら、先に導入している反応ガスaと、その次に導入する反応ガスcとの切り替えを行う。このとき、必要に応じて、照射出力等の処理条件も適宜変更(調節)する。先に導入している反応ガスaと、その次に導入する反応ガスcとの切り替えは、20秒間以内に行うことが好ましく、5秒間以内に行うことがより好ましい。切り替え時間が20秒間を過ぎると、異常な成膜が起こるおそれがある。反応ガスの切り替えを行った後、プラズマ処理を所望の時間行って、耐性膜を連続的に形成する。
その後、上記反応ガスaと反応ガスcとの切り替えと同様にして、プラズマ処理を行いながら、先に導入している反応ガスcと、その次に導入する反応ガスbとの切り替え、並びに、反応ガスbと、その次に導入する反応ガスdとの切り替えを行い、プラズマ処理を所望の時間行って、撥水性膜および洗浄性膜を連続的に形成する。このように、チャンバー102内に複数の反応ガスa〜dを順次導入して連続的にプラズマ処理を行い、支持体4上に分離層3を形成する。
本発明に係る分離層形成方法においては、一つの(同一の)チャンバー102内で、プラズマ処理を中断することなく(プラズマの形成を止めずに)、反応ガスを順次切り替えて分離層3を形成する。
このように、互いに異なる性質を有する複数の反応ガスを順次導入して支持体4上に連続的に分離層3を形成するので、切り替え前後の反応ガスからなるグラデーション膜が、先に導入した反応ガスで形成された膜とその次に導入した反応ガスで形成された膜との境界に形成される。それゆえ、各膜間に界面は形成されない。従って、各膜が一体化され(見かけ上、1層となり)、各膜間で剥離することはない。これにより、所望の性質を備えた分離層を支持体上にプラズマCVD法で形成することができる。
上記複数の反応ガスa〜dをチャンバー102内に導入する順番は、分離層3に要求する機能に応じて決定すればよく、特に限定されるものではないが、一例を挙げれば、下記何れかの順番;(i) 反応ガスa、反応ガスc、反応ガスb:(ii)反応ガスa、反応ガスc、反応ガスb、反応ガスd:(iii) 反応ガスa、反応ガスc、反応ガスd:(iv)反応ガスb、反応ガスc、反応ガスd:が挙げられる。つまり、密着性膜は分離層3の最下層(支持体4側)に形成されていることが好ましく、洗浄性膜は分離層3の最上層(半導体ウエハ1側)に形成されていることが好ましく、耐性膜は密着性膜の上に形成されていることが好ましい。
(3)貼り合わせ工程
貼り合わせ工程では、図1で「(3) 支持体貼り付け」として示すように、半導体ウエハ1と支持体4との間に分離層3を備えるようにして、接着層2を介して半導体ウエハ1と支持体4とを積層する。
具体的な方法としては、半導体ウエハ1における接着層2が形成された面と、支持体4における分離層3が形成された面とを貼り合わせ、真空下でベークして圧着することで半導体ウエハ1と支持体4とを積層する工程が挙げられる。
上述した(1)接着層形成工程、(2)分離層形成工程、および(3)貼り合わせ工程を順次行うことにより、本発明の一実施形態に係る積層体10、即ち、本発明に係る製造方法によって製造された積層体が得られる。積層体10は、支持体4を必要とする所望の製造プロセス(例えば、ウエハ薄化工程や、リソグラフィー工程、裏面配線工程等)を経た後、支持体4を半導体ウエハ1から分離するために、以下の工程に供される。
(4)照射工程
照射工程では、図1で「(4) レーザ照射」として示すように、分離層3に対して支持体4側からレーザ8を照射して、当該分離層3を変質させる。
分離層3に照射するレーザ8としては、例えば、YAGレーザ、リビーレーザ、ガラスレーザ、YVO4レーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、CO2レーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He−Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ(光)が挙げられる。これらレーザは、分離層3が吸収可能な波長に応じて選択すればよい。また、レーザ8の代わりに、非レーザの光を適宜用いることもできる。分離層3に吸収されるべき光の波長としては、特に限定されるものではないが、例えば、600nm以下の波長が挙げられる。また、別の観点から、レーザ8として、分離層3における光の吸収率が80%以上となる光を用いることが好ましい。
尚、レーザ8は、分離層3の面に対して垂直な方向から照射してもよく、斜めの方向から照射してもよい。また、レーザ8は、分離層3のほぼ全面に対して同時に照射してもよく、分離層3の面内を走査するように照射してもよい。
ここで、支持体4側からレーザ8を照射するのは、照射されたレーザ8が半導体ウエハ1上に形成された回路や素子等の構造物に悪影響を及ぼすことを回避するためである。支持体4側からレーザ8を照射することにより、レーザ8が分離層3に吸収され、半導体ウエハ1にレーザ8が到達することを回避することができる。
そして、上述したように、分離層3は、光が照射されることによって変質するようになっている。それゆえ、レーザ8の照射が完了すると、分離層3は変質した状態となる。即ち、レーザ8を照射することにより、支持体4と半導体ウエハ1とを容易に剥離することができる。
(5)分離工程
分離工程では、図1で「(5) 分離工程」として示すように、半導体ウエハ1から支持体4を分離する。光の照射によって変質した分離層3は、その強度または接着力が著しく低下している。従って、例えば、支持体4を持ち上げる等の僅かな外力を加えることにより分離層3が破壊若しくは分離されて、支持体4と半導体ウエハ1とを容易に分離することができる。
尚、図1「(5) 分離工程」では、分離層3と接着剤2との界面で分離が生じるように表現されているが、分離が生じる位置は上記界面に限定されるものではなく、例えば、支持体4と分離層3との界面、或いは、分離層3内で生じる場合もある。
(6)洗浄工程
洗浄工程では、図1で「(6) 洗浄」として示すように、支持体4が分離された半導体ウエハ1上に残った接着層2を除去する。接着層2の除去は、例えば、接着層2に、当該接着層2に含有される接着材料(樹脂)を溶解させる溶剤を噴霧することにより行うことができる。これにより、接着層2が除去された半導体ウエハ1を得ることができる。上記溶剤としては、例えば、水または上述した低級アルコールが挙げられる。
ここで、支持体4の分離後、半導体ウエハ1上に分離層3を構成する材料の一部が付着している場合がある。この場合、少量の材料が付着しているだけであれば、接着層2に含有される接着材料(樹脂)を溶解させる溶剤を噴霧することにより、接着層2と共に当該材料を除去することができる。或いは、分離層3を構成する材料を溶解させる溶剤を噴霧し、その後、接着層2に含有される接着材料(樹脂)を溶解させる溶剤を噴霧するようにしてもよい。
上述した(4)照射工程、(5)分離工程、および(6)洗浄工程を順次行うことにより、本発明の一実施形態に係る積層体10から支持体4を分離することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔実施例1〕
プラズマ発生部から支持体としてのガラス基板までの距離(ダウンフロー領域の高さ)が146mmである本実施形態に係るプラズマ処理装置を用いて、ガラス基板上に密着性膜、耐性膜、撥水性膜および洗浄性膜がこの順に連続的に形成された積層膜である分離層を作製した。
即ち、プラズマ処理装置のチャンバー内に、12インチのガラス基板(厚さ100μm)を設置し、密着性膜、耐性膜、撥水性膜および洗浄性膜の成膜毎に、高周波の照射出力(W)、チャンバー内の圧力(Pa)、各反応ガスの種類および体積(sccm)、成膜の温度(℃)(ガラス基板を載置するステージの温度、ガラス基板(プレート)表面の温度、およびチャンバーの側壁の温度)、ピン−アップのON,OFF、並びにプラズマCVDの時間(秒)を表1に記載の通りに調節して、表1に記載の膜厚(μm)を有する密着性膜、耐性膜、撥水性膜および洗浄性膜がこの順に連続的に形成された積層膜である分離層を、4種類(表2の(i)〜(iv))作製した。
密着性膜の成膜時に導入している反応ガスと、耐性膜の成膜の成膜時に導入している反応ガスとを切り替える切り替え時間;耐性膜の成膜時に導入している反応ガスと、撥水性膜の成膜の成膜時に導入している反応ガスとを切り替える切り替え時間;撥水性膜の成膜時に導入している反応ガスと、洗浄性膜の成膜の成膜時に導入している反応ガスとを切り替える切り替え時間;は、それぞれ5秒間とした。切り替え時もプラズマCVDを連続的に行った。反応ガスが複数の成分からなる場合には、予め混合して混合ガスとしてからチャンバー内に供給した。また、切り替え時に、照射出力や圧力も徐々に調節した。尚、表1に記載のCVD時間(秒)には、切り替え時の秒数は含まれない。また、表1に記載の膜厚(μm)には、切り替え時に形成された膜の厚さは含まれない。
また、表1には、密着性膜、耐性膜、撥水性膜および洗浄性膜が単独で形成された場合の膜特性も記載した。尚、表1には、上記各膜を製造するための条件および上記各膜の特性を記載した。これら各膜を積層膜である分離層(グラデーション膜)にしたときのデータは表2に記載した。
表1中の膜特性における「レーザ分離」は、下記方法で測定された特性である。即ち、先ず、12インチシリコンウエハに接着剤組成物であるTZNR−A4012(登録商標;東京応化工業株式会社製)をスピン塗布して、100℃、160℃、200℃で各3分間加熱して接着層を形成した(膜厚50μm)。そして、真空下、220℃、4000Kgの条件で3分間、接着層および上記密着性膜、耐性膜、撥水性膜および洗浄性膜がこの順に連続的に形成された積層膜である分離層を介して、上記シリコンウエハとガラス基板との貼り合せを行い、積層体を作製した。その後、532nmの波長を有するパルスレーザを、積層体のガラス基板側から分離層に向けて照射した。レーザ照射の条件は、電流が19A、照射速度が6,500mm/sec、パルス周波数が40kHz、照射ピッチが180μm、照射範囲がφ309mmであった。そして、「レーザ分離」は、当該レーザの照射を受けたときに、照射を受ける前の強度または接着力を失うかどうかを示しており、僅かな外力を加えることにより分離層が破壊若しくは分離される場合を“容易に可能”、外力を加えることにより半導体ウエハを破損させることなく分離層が破壊若しくは分離される場合を“可能”、外力を加えても分離層が破壊若しくは分離しない場合を“不可能”とした。
表1中の膜特性における「レーザ遮光」は、上記方法による測定において、照射された532nmの波長を有するパルスレーザを遮光することができるかどうかを示しており、分光濃度が0.30以上の場合を“容易に可能”、分光濃度が0.25以下の場合を“不可能”とした。上記分光濃度は、透過濃度計 X−rite 310TR(サカタインクスエンジニアリング株式会社製)を用いて測定した。
表1中の膜特性における「耐薬品性」は、60℃の条件下、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)に10分間浸漬して溶解するかどうかを示しており、溶解しない場合を“非常に良い”、一部溶解するものの、大部分が溶け残る場合を“良い”、大部分は溶解するものの、一部溶け残る場合を“悪い”、全て溶解する場合を“非常に悪い”とした。
表1中の膜特性における「洗浄性」は、下記方法で測定された特性である。即ち、23℃の条件下、剥離液1(SL Remover、東京応化工業株式会社製)で処理した後、剥離液2(TZNR(登録商標)−HCシンナー、東京応化工業株式会社製)で3分間処理した。そして、「洗浄性」は、剥離液1による3分間未満の処理で残渣が発生しない場合を“非常に良い”、剥離液1による3分間以上の処理で残渣が発生しない場合を“良い”、剥離液1の処理時間に関係無く、残渣が一部発生する場合を“悪い”、剥離液1の処理時間に関係無く、残渣が全面に発生する場合を“非常に悪い”とした。
表1中の膜特性における「耐水性」は、接触角が100°以上の場合を“非常に良い”、接触角が80°以上、100°未満の場合を“良い”、接触角が60°以上、80°未満の場合を“悪い”、接触角が60°未満の場合を“非常に悪い”とした。
表1中の膜特性における「密着性」は、下記方法で測定された特性である。即ち、ガラス基板に積層した分離層を、垂直方向に10mm/sの速度で引っ張ることによって、ピール強度(Kgf/cm2)を測定した。そして、「密着性」は、0.8以上の場合を“非常に良い”、0.5以上、0.8未満の場合を“良い”、0.3以上、0.5未満の場合を“悪い”、0.3未満の場合を“非常に悪い”とした。
表1中、ピン−アップ「ON」とは、ガラス基板を持ち上げている状態を表し、ピン−アップ「OFF」とは、ガラス基板を持ち上げていない状態を表す。
得られた4種類(表2の(i)〜(iv))の分離層は、見かけ上、1層であり、耐薬品性および撥水性に優れると共に、良好な洗浄性および密着性を有していた。得られた4種類の分離層(グラデーション膜)の膜特性を表2に記載した。