JP5151485B2 - 電子写真感光体とその製造方法、及び画像形成装置、プロセスカートリッジ、画像形成方法 - Google Patents

電子写真感光体とその製造方法、及び画像形成装置、プロセスカートリッジ、画像形成方法 Download PDF

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本発明は、複写機やレーザープリンター及びファクシミリ等に応用される電子写真技術に関し、詳しくは、過酷な使用環境条件下(例えば、NOxガス等の暴露)でも安定し、長期使用においても極めて高い機械的耐久性及び安定した電気特性を維持して、残像等の異常画像が発生しない高い信頼性を実現した電子写真感光体の製造方法、その製造方法を用いて形成した電子写真感光体、それを用いた画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ及び画像形成方法に関する。
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能や様々な利点から、無機感光体に代わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンター及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、OPCの有する特性、例えば(i)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(ii)高感度、高安定な帯電特性等の電気的特性、(iii)材料の選択範囲の広さ、(iv)製造の容易さ、(v)低コスト、(vi)無毒性、等が挙げられる。
一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。
加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。
このような感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減し、安定した電気特性を長期間に渡り維持することが不可欠である。このため、さらに優れたクリーニング性、転写性を付与させるために、良好な表面性を有する有機感光体が必要とされており、これらが当分野でもっとも解決が迫られている課題である。
有機感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(特許文献1)、(2)高分子型電荷輸送物質を用いたもの(特許文献2)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(特許文献3)等が挙げられる。
これらの技術の内、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送物質との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇して画像濃度低下が発生し易い傾向がある。また、(2)の高分子型電荷輸送物質を用いたもの、及び(3)の無機フィラーを分散させたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。さらに(3)の無機フィラーを分散させたものは、無機フィラー表面に存在する電荷トラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
さらに、(1)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させた感光体も知られている(特許文献4)。しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能の硬化型アクリレートモノマーを含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送物質を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子の電荷輸送物質を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送物質の析出、クラックの発生が起こり、機械強度も低下してしまうことがあった。また相溶性向上のためにポリカーボネート樹脂を含有させる記載もあるが、この場合には硬化型アクリルモノマー含有量が減少し、結果的には十分な耐摩耗性を達成できていない。また、表面層に電荷輸送物質を含まない感光体については、露光部電位を低減するために表面層の膜厚を薄くするとの記載があるが、膜厚を薄くすると感光体の機械的寿命が短くなる。さらに、帯電電位や露光部電位の環境安定性が悪く、温湿度環境の影響によりその値は大きく変動し、十分な値を維持するには至っていないのが現状である。
前述に代わる有機感光体の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送物質及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることが知られており(特許文献5)、このバインダー樹脂としては、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送物質に対して反応性を有するものと、二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立させており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送物質との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、層分離により架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。
また、上記のようにバインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げるほか、この感光体において使用される上記モノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、この2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、上記モノマー及び上記バインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、上記電荷輸送物質の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性も充分とは言えないものであった。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する有機感光体も知られている(特許文献6)。しかし、この有機感光体は嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため硬化物中に歪みが発生して内部応力が高くなり、表面層の荒れや経時におけるクラックが発生しやすい場合があり、十分な耐久性を有していない。また、硬化物中の歪みが大きいことから、膜密度が十分に向上されていない場合があり、十分に高い耐摩耗性を達成することができない。さらに、膜密度が低いために緻密な架橋膜の形成が実現されておらず、酸化性ガスや湿度などの環境変化によって特性が安定しない場合があり、実使用環境において残像が異常画像として発生することがあった。つまり、長期に安定した画像出力が実現されていない。
さらに、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を硬化させた架橋型電荷輸送層を有する有機感光体も知られている(特許文献7〜20)。これらの提案においては、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を用いることにより、機械的及び電気的な耐久性と同時に感光層のクラックを抑制している。しかし、架橋表面層の形成方法によっては、架橋型電荷輸送層の膜密度が十分高くない場合があり、そのような場合に緻密な架橋表面層の形成が実現されず、酸化性ガスや湿度などの環境変化で特性が安定しない場合があり、実使用環境において残像が異常画像として発生することがあった。
また、酸化性ガスの影響を低減することを目的として架橋表面層塗工液中に複数種の酸化防止剤を添加することが知られている(特許文献21、22)。この提案によれば、より長期の高画質画像形成が達成されてはいるが、架橋表面層を光硬化する際に電荷輸送性構造を有する化合物や酸化防止剤についても高エネルギーの光が照射されるため、それら電荷輸送性構造を有する化合物や酸化防止剤の分解が避けられず十分に安定した電気特性及び電子写真感光体特性を維持することが困難であった。つまり、満足される期間に渡る高画質画像出力が維持できていないのが実情である。
また、酸化性ガスによる異常画像を解決することを目的として画像形成装置に関する従来技術が多数知られている(特許文献23、24)。しかし、電子写真感光体の温度を制御するヒーターや放電生成物を除去する部材等の追加部材を設ける必要があり、いずれも装置の大型化、消費電力の増加、コスト高といった大きな課題を残している。
以上のようなことから、上記従来技術における電荷輸送性構造を化学結合させた架橋型感光層を有する感光体においても、高い機械的耐久性と長期に安定した電気特性の両立は達成されておらず、長期間における高画質画像出力は実現されていない。つまり現状では充分な総合特性を有しているとは言えない。
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開2004─302450号公報 特開2004─302451号公報 特開2004─302452号公報 特開2005─099688号公報 特開2005─107401号公報 特開2005─107490号公報 特開2005─115322号公報 特開2005─140825号公報 特開2005─156784号公報 特開2005─157026号公報 特開2005─157297号公報 特開2005─189821号公報 特開2005─189828号公報 特開2006─71856号公報 特開2006─99028号公報 特開2006─11014号公報 特開2006─208996号公報 特開2003─76237号公報
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、過酷な環境下(例えば、NOxガス等の暴露)においても影響されることなく、長期に渡り極めて安定した電気特性と高い機械的耐久性を維持することによって、長期間、高精細で高画質な画像を得ることができる信頼性の高い電子写真感光体の製造方法、及びその製造方法を用いて形成した電子写真感光体、それを用いた画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジ、及び画像形成方法を提供することを目的とする。
本研究者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の〔1〕〜〔19〕に記載する発明によって上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
〔1〕:上記課題は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を順次形成してなる電子写真感光体の製造方法において、
前記表面保護層の形成を、予め重合性化合物を重合させて硬化樹脂層とした後、該硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて行い、
前記硬化樹脂層が、ラジカル重合性化合物の光重合により形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法により解決される。
ラジカル重合性を有する化合物を用いれば、高温に曝すことなく、変質や劣化等を伴うことなく短時間に硬化樹脂層とすることができる。酸化防止剤を含有していないため、重合反応の効率は高く、緻密な硬化樹脂層とすることができる。
〔2〕:上記〔1〕に記載の電子写真感光体の製造方法において、前記超臨界流体及び/または亜臨界流体が、二酸化炭素であることを特徴とする。
二酸化炭素は比較的容易に超臨界状態を作り出せ(超臨界圧力:7.3MPa、超臨界温度:31.0℃)、酸化防止剤等の有機材料を溶解させるのに適しており、有機材料に対する熱ダメージが小さく分解させずに処理することが可能であるため、本発明の硬化樹脂層への酸化防止剤や電荷輸送性化合物などの物質注入処理に好適である。また、不燃性・低毒性で取扱い性に優れる点で特に好ましい。
〔3〕:上記〔1〕または〔2〕に記載の電子写真感光体の製造方法において、前記超臨界流体及び/または亜臨界流体が、少なくとも二酸化炭素を含む混合物であることを特徴とする。
〔4〕:上記〔3〕に記載の電子写真感光体の製造方法において、前記二酸化炭素を含む混合物に混合されるものが、メタノール及びエタノールから選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
〔3〕あるいは〔4〕のように二酸化炭素を含む混合物、例えば、二酸化炭素に、有機材料に対して親和力が強い溶媒(エントレーナー)を選択して混合すれば、所望の溶質(酸化防止剤等の有機材料)に対して超臨界流体及び/または亜臨界流体の溶解度を調整することができ物質注入処理を、良好にすることができる。
〔5〕:上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記超臨界流体及び/または亜臨界流体に含まれる少なくとも一種以上の酸化防止剤の含有量が、0.5g/L以上であることを特徴とする。
上記酸化防止剤の含有量を0.5g/L以上とすることによって、所望の電子写真感光体を得るための物質注入処理における超臨界流体及び/または亜臨界流体と硬化樹脂層(架橋表面層)の接触時間を短時間にすることができる。
〔6〕:上記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記超臨界流体及び/または亜臨界流体の温度が、30〜140℃であることを特徴する。
上記温度範囲とすることで、超臨界流体及び/または亜臨界流体の溶解性や拡散性を良好に維持して溶質(酸化防止剤等の有機材料)の架橋表面層中への注入を容易としつつ、感光層や架橋表面層(あるいは表面保護層)の構成成分の変性や分解を回避することができ、所望の電子写真感光体が得られる。
〔7〕:上記〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記酸化防止剤の少なくとも一種が、フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする。
〔8〕:上記〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記酸化防止剤の少なくとも一種が、リン系酸化防止剤であることを特徴とする。
〔9〕上記〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記少なくとも一種以上の酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤から一種以上、リン系酸化防止剤から一種以上選ばれることを特徴とする。
〔7〕乃至〔9〕によれば、効率的に熱、光、ガスなどの影響で発生したラジカルを捕捉してラジカルの連鎖反応を抑制することができ、例えば、過酷な暴露条件下(NOxガス等)においても影響が少なく十分に満足できる画像特性(例えば、残像やカラーバランス等)を維持することができる。
〔10〕:上記〔1〕乃至〔9〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記超臨界流体及び/または亜臨界流体中に電荷輸送性化合物が含まれることを特徴とする。
〔11〕:上記〔10〕に記載の電子写真感光体の製造方法において、前記電荷輸送性化合物が、重合性官能基を有していないことを特徴とする。
〔10〕あるいは〔11〕によれば、電荷輸送性化合物の変性や分解を回避しつつ容易に架橋表面層中へ注入することができるため、特性劣化することなく長期間に渡り良好な電荷輸送性能が発揮される。
〔12〕:上記〔10〕または〔11〕に記載の電子写真感光体の製造方法において、前記電荷輸送性化合物が、トリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造及びカルバゾール構造を有する化合物よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする。
〔13〕:上記〔10〕乃至〔12〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記電荷輸送性化合物が、トリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする。
〔12〕あるいは〔13〕によれば、超臨界流体及び/または亜臨界流体に含有させた場合でも安定に用いることができ、長期繰り返し使用において良好な電気特性を維持することができ、特にトリアリールアミン構造を有する化合物は電荷輸送構造として高い効果を有し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を介した硬化樹脂層への注入性にも優れているため有効に用いられる。
〔14〕:上記〔1〕乃至〔13〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記重合性化合物が、電荷輸送性構造を有していない化合物であることを特徴とする。
〔15〕:上記〔1〕乃至〔14〕のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法において、前記重合性化合物が、重合性官能基を3個以上有することを特徴とする。
〔14〕あるいは〔15〕によれば、硬化樹脂層(あるいは表面保護層)の架橋密度を制御することができ、優れた機械的耐久性と電気的特性の両立を図ることができる。例えば、電荷輸送性を有する化合物(重合性官能基の有無)との併用において電気特性や耐摩耗性のバランスを調整することができる。
〔16〕:上記課題は、〔1〕乃至〔15〕のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする電子写真感光体により解決される。
〔17〕:上記課題は、〔16〕に記載の電子写真感光体と、少なくとも電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電させられた電子写真感光体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、潜像形成手段によって形成された静電潜像にトナーを付着させる現像手段と、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写させる転写手段と、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーを電子写真感光体表面から除去するクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置により解決される。
〔18〕:上記課題は、〔16〕に記載の電子写真感光体と、少なくとも電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電させられた電子写真感光体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、潜像形成手段によって形成された静電潜像にトナーを付着させる現像手段と、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写させる転写手段と、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーを電子写真感光体表面から除去するクリーニング手段からなる群から選ばれた一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジにより解決される。
〔19〕:上記課題は、少なくとも〔16〕に記載の電子写真感光体を帯電手段で帯電させ、帯電手段によって帯電した電子写真感光体表面に潜像形成手段で静電潜像を形成し、潜像形成手段によって形成された静電潜像に現像手段でトナーを付着させ、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写手段で転写させ、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーをクリーニング手段で電子写真感光体表面から除去して画像を形成することを特徴とする画像形成方法により解決される。
本発明の電子写真感光体の製造方法によれば、予め重合性化合物を重合させた硬化樹脂層に超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触処理して酸化防止剤の注入を行ない表面保護層を形成するので、酸化防止剤による重合反応の阻害がなく緻密な架橋構造が形成され、また従来のような高エネルギー付与による表面保護層形成での酸化防止剤の分解や変質などの問題が一切なく、酸化防止剤の特性が維持され、これによって過酷な環境下(例えば、NOxガス等の暴露)においても影響されることなく、また、電荷輸送性化合物等の注入も同時に行えるため、極めて安定した電気特性と高い機械的耐久性の両立が実現でき、長期間に渡り高精細で高画質な画像を出力可能な高信頼性を有する電子写真感光体が提供される。
本発明の電子写真感光体によれば、従来困難であった機械的耐久性と静電的耐久性を両立すると共に、分解や変質のない酸化防止剤が注入された表面保護層を備えているため、過酷な環境下においても画像特性(例えば、残像やカラーバランスなど)の劣化がなく、画像形成装置の高耐久化、小型化、高速化の要求に対応することができ、長期繰り返し使用においても摩耗による画質劣化が少なく、高精細な高画質画像を安定して出力することが可能である。
本発明の画像形成装置によれば、繰り返し画像形成を行っても電気特性が極めて安定し、かつ機械的耐久性が高く、残像などの異常画像の発生もなく、いつでも高画質画像を安定して出力可能である。例えば、タンデム方式の画像形成装置とすれば、フルカラーで高精細の画像が出力でき、電子写真感光体の経時変化が少ないため、繰り返し使用しても色再現性に優れる。
本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジによれば、長期繰り返し使用においても高安定な画像出力が可能で、しかも取扱いが良好であり、メンテナンス性と信頼性が向上する。
本発明の画像形成方法によれば、長期繰り返し印刷においても、残像などの異常画像の発生がなく高精細で高画質画像が安定して得られる。
前述のように本発明における電子写真感光体の製造方法は、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を順次形成してなる電子写真感光体の製造方法において、前記表面保護層の形成を、予め重合性化合物を重合させて硬化樹脂層とした後、該硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて行うことを特徴とするものであり、これによって過酷な環境下においても影響されることなく長期に渡って極めて安定な電気特性と高い機械的耐久性を維持することができる電子写真感光体を作製できることを見いだした。尚、以降、「硬化樹脂層」を「架橋表面層」と表現することがある。
つまり、本発明においては、重合終了後の架橋表面層、すなわち架橋膜に酸化防止剤を含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させることにより、十分に架橋構造が発達した架橋膜中に酸化防止剤を注入することができるため、架橋密度が極めて高く、より緻密な表面保護層を構築することができて高い機械的耐久性が実現される。
また、一般的に酸化防止剤はラジカル連鎖禁止剤として働くため、酸化防止剤を多量に混合した場合、重合性化合物の重合を阻害することが知られている。しかし、本発明においては重合性化合物の重合後に酸化防止剤の注入を行なうのでこのような重合阻害の影響を全く受けない。また、本発明の製造方法によって電子写真感光体を作製すれば、架橋表面層中の酸化防止剤に高エネルギー与えずに済み、架橋表面層における酸化防止剤の劣化が極めて少なく、長期間に渡り安定した電気特性を維持することが可能となる。これにより、長期に渡る高い機械的耐久性と安定した電気特性の両立を実現することが可能となった。
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
初めに超臨界流体及び亜臨界流体について説明する。超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界の温度・圧力(臨界点)を超えた状態にある流体を指す。超臨界流体の特徴としては、高密度状態において、一般に物質を溶かす能力がその流体の常温での溶解力よりも非常に大きいという特徴を有する。これは流体が高圧力下にあるため、流体の運動エネルギーが大きいこと、また、粘性が小さいためと考えられている。また、温度・圧力による密度の調整によって溶解性の制御ができるため、適用範囲が広いことも特筆すべき特性である。一般には密度0.2g/cm3以上の超臨界流体が化学物質に対する溶媒として用いられることが多い。また、超臨界流体は前述の通り、流体の運動エネルギーが大きいこと、また、粘性が小さいことから媒質への拡散が早い。このため、一般に用いられる溶媒では多孔質体へ浸透しにくいが、超臨界流体を用いれば比較的容易に多孔質体へ浸透することが知られている。さらに、熱伝導度は液体よりも大きいため、超臨界中で生じた化学反応による反応熱は速やかに除去することが可能である。また、亜臨界流体とは物質毎に決まっている超臨界状態よりも温度、圧力の両方、またはいずれか一方が低い状態で気体及び液体とは異なる性質を備えた流体であって、物質毎に異なるので一概には言えないが、例えば、一般的には温度が臨界点温度より0〜30℃、圧力が臨界点圧力より0〜5MPa低い状態の流体を言う。
前記超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上、かつ、臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力としては特に制限はない。
これらの流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、ブタン、ヘキサン、2
,3 −ジメチルブタン、ベンゼン、クロロトリフロロメタン、ジメチルエーテルなどが挙げられる臨界温度としては、−273〜300℃が好ましく、0〜140℃が特に好ましい。
超臨界流体に溶解させる媒質が熱により変性するようなものを用いる場合には臨界温度が低いものが好ましい。例えば、二酸化炭素(臨界温度31.0℃)、エタン(臨界温度32.2℃)、プロパン(臨界温度96.6℃)、アンモニア(臨界温度132.3℃)などが挙げられる。
また、亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度・圧力領域において高圧液体として存在する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体として挙げられる各種材料は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。本発明においては、超臨界流体及び/または亜臨界流体を単独で使用してもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
本明細書に記載するような有機材料(例えば、酸化防止剤、電荷輸送性化合物など)に対して超臨界流体及び/または亜臨界流体を適用する場合、媒体として二酸化炭素を主媒体として用いることが好ましい。二酸化炭素は超臨界圧力が7.3MPa、超臨界温度が31.0℃と比較的容易に超臨界状態を作り出せ、有機材料に対する熱ダメージが小さいこと、さらに不燃性・低毒性で取り扱いが容易であることが利点として挙げられる(食品工業の分野では広く用いられている。)。
超臨界流体及び亜臨界流体に対する本願発明に記載の有機材料の溶解性を制御するために、超臨界流体及び/または亜臨界流体に有機溶媒をエントレーナーとして添加することができる。一般には超臨界流体及び/または亜臨界流体に溶解させたい溶質、本願発明においては有機材料に対して親和力が強い溶媒をエントレーナーとして選択することが好ましい。エントレーナーの添加によって所望の溶質にたいする超臨界流体や亜臨界流体の溶解度を調整することができる。
エントレーナーとして用いる溶媒には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、プロパノール、アンモニア、メラミン、尿素、チオエチレングリコール、一酸化炭素、窒素、水、エタン、プロパンなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
前述のように本発明の導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を順次形成してなる電子写真感光体は、少なくとも重合性化合物を重合することにより硬化樹脂層を形成した後、硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させることで架橋構造を持つ硬化樹脂層(架橋表面層)、いわゆる架橋膜中に酸化防止剤を注入する。具体的には、導電性支持体上に感光層を設け、さらに硬化樹脂層を形成した感光体を高圧セル中に固定、密閉し、この高圧セル中に酸化防止剤を含有する超臨界流体及び/または亜臨界流体を導入し、両者を接触させることで架橋膜中への酸化防止剤の注入処理を行う。
この処理によって架橋膜中に超臨界流体及び/または亜臨界流体が入り込み、架橋膜を可塑化することによって架橋膜の粘性が低下し、超臨界流体及び/または亜臨界流体中に溶解している酸化防止剤が架橋膜中に入り込むことで酸化防止剤が注入される。つまり、架橋膜中に取り込まれた酸化防止剤は、超臨界流体及び/または亜臨界流体による大きな溶解性に伴う粘性低下により架橋膜中を比較的速く拡散することができるため、架橋膜深部に至るまで酸化防止剤が注入される。
したがって、本発明においては重合性化合物の重合後に酸化防止剤の注入を行なうので従来のような高エネルギー付与による酸化防止剤の分解が一切なく、これによって目的の機能を付与することができ、さらに長期間に渡り高画質画像出力が可能な高信頼性を有する電子写真感光体が実現できた。
次に、本願発明に用いられる酸化防止剤について説明する。酸化防止剤としては特に制限されず、プラスチック、ゴム、油脂類などの酸化防止剤として一般的に知られているものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等のラジカル連鎖禁止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等の過酸化物分解剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤等の連鎖開始阻害剤などが挙げられる。
ラジカル連鎖禁止剤は、電子写真感光体に当る熱や光、ガスなどの影響で発生したラジカルを捕捉してラジカルの連鎖反応を止める働きがある。過酸化物分解剤は、電子写真感光体の帯電時に生成するオゾンに起因する過酸化物(パーオキサイド)を不活性な化合物に分解して連鎖反応への寄与を切断する作用を有する。連鎖開始阻害剤は、光や熱等の要因で引き起こされる連鎖開始反応を抑える働きがある。以下に酸化防止剤の具体例を示す。
ラジカル連鎖禁止剤の中で、フェノール系酸化防止剤としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−ブチリデンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、2,2,4−トリメチル−6−ヒドロキシ−7−t−ブチルクロマン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2′−チオエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシアニソール、1−[2−{(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−[3−(3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペラジル、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、等を挙げることができる。
中でも、分子中のフェノール環にt−ブチル基を1個以上有するものが好ましく、特にその中でも、そのt−ブチル基がフェノール性水酸基の隣接した位置に結合したものがより好適である。その具体例を挙げると、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;2,2′−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のポリフェノール系酸化防止剤などが好適である。
またその他に、ラジカル連鎖禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン類を使用することもできる。その具体例としては、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなどが挙げられる。また、アミン系酸化防止剤としては、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、トリベンジルアミンなどが挙げられる。
さらに、これらの中でも、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが、電気特性の面で特に好ましい。
また、過酸化物分解剤の中で、リン系酸化防止剤しては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン、トリデシルホスフィン、トリオクタデシルホスフィンなどが挙げられる。イオウ系酸化防止剤として、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
さらに、連鎖反応開始阻害剤の中で、紫外線吸収剤及び光安定剤としては、例えば、フェニルサリチレート、モノグリコールサリチレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、レゾルシノールモノベンゾエートなどが挙げられる。また、金属不活性化剤としては、例えば、N−サリシロイル−N’−アルデヒドヒドラジン、N,N’−ジフェニルオキサミドなどが挙げられる。さらに、オゾン劣化防止剤としては、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
さらに、これら酸化防止剤の中では、電気特性の劣化を抑制できるフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。中でも、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンが良好である。
さらに本発明においては、ラジカル重合性官能基を有する酸化防止剤も良好に用いることができる。このような酸化防止剤としては、重合性フェノール系酸化防止剤やラジカル重合性ヒンダードアミン系酸化防止剤などが挙げられる。例えば、重合性フェノール系酸化防止剤として、Sumilizer GM(住友化学製)、Sumilizer GS(F)(住友化学製)などが市販されている。また、ラジカル重合性ヒンダードアミン系酸化防止剤として、例えば、LA−87(旭電化工業製)、LA−82(旭電化工業製)などが市販されている。
前記以外のラジカル重合性酸化防止剤としては、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,5−ジヒドロキシジフェニール、2,6−ジメチルハイドロキノンなどのハイドロキノン誘導体をアルカリ溶液中、アクリルクロライド、あるいはメタクリルクロライドを反応させモノエステル化することで得られるものがあり、トルエン−酢酸エチル混合溶媒を展開溶媒としてカラムクロマトで単離される。これらラジカル重合性酸化防止剤は重合と併せて用いることで、架橋表面保護層の機械的強度を低下させることなく電気特性の劣化を防止することができる。
尚、酸化防止剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。二種以上の酸化防止剤を使用する場合は同一類の酸化防止剤を用いても、また異種類の酸化防止剤を用いてもよいが、好ましくはラジカル連鎖禁止剤であるフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びハイドロキノン類の少なくとも一種と過酸化物分解剤であるリン系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤の少なくとも一種を含むことが好ましい。この中でもフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤の組み合わせが電子写真感光体の電気特性に対する副作用が小さく、酸化防止能も良好であるために特に好ましく用いることができる。
また、酸化防止剤の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、架橋表面層における酸化防止剤の含有量は、通常0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量部%である。0.1%未満であると含有量が少なすぎることから十分な酸化防止能が発揮されないことがあり、10重量%を超えると電子写真感光体の電気特性に好ましくない、露光部電位の上昇といった副作用を生じる可能性がある。
本願明細書に記載している「硬化樹脂膜に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて行う」とは、「硬化樹脂層(架橋表面層)」と「酸化防止剤を含有した超臨界流体及び/または亜臨界流体」の両者が物理的に接触していれば形態はとくに限定されない。
例えば、導電性支持体上に少なくとも感光層と硬化樹脂層を設け、これを高圧セル中に収容すると共に高圧セル中に一定量の酸化防止剤と超臨界流体及び/または亜臨界流体を導入した後封止し、所定時間経過後に超臨界流体及び/または亜臨界流体を高圧セルから取り除く。これにより、硬化樹脂層中に酸化防止剤を注入して表面保護層とし、電子写真感光体として取り出してもよいし(プロセス1)、あるいは、高圧セル中に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を連続的に供給、排出し、所定時間経過後に電子写真感光体を取り出してもよい(プロセス2)。
前者のプロセス1では高圧セル中に導入される酸化防止剤の量は、超臨界流体及び/または亜臨界流体中に含まれる量のみであり、電子写真感光体の硬化樹脂層内部と超臨界流体及び/または亜臨界流体中における酸化防止剤の濃度勾配は経時で小さくなり、注入速度も濃度勾配の減少に従って小さくなる。結果として、硬化樹脂膜(架橋表面層)中への酸化防止剤の注入速度は比較的小さいといった欠点がある一方で、製造設備が比較的単純で安価に電子写真感光体を製造することができる利点がある。
後者のプロセス2では、硬化樹脂膜(架橋表面層)には一定濃度の超臨界流体及び/または亜臨界流体が供給されるため、架橋表面層内部と超臨界流体及び/または亜臨界流体中の酸化防止剤の濃度勾配は前者のプロセスと比較して大きくなることから、短時間で所望量の酸化防止剤を注入することが可能である。しかしながら、超臨界流体及び/または亜臨界流体を循環させる装置が必要であること、さらに超臨界流体及び/または亜臨界流体中の酸化防止剤の濃度を制御する装置が必要であることから、比較的大がかりな製造装置を要するといった欠点が挙げられる。
本願発明においては上記いずれのプロセスも適用可能であり、目的に応じて適宜選択することができる。
超臨界流体及び/または亜臨界流体中の酸化防止剤の含有量としては0.5g/L以上であることが良く、好ましくは1g/L以上である。0.5g/Lを下回る場合は、架橋表面層中への酸化防止剤の注入速度が遅く、所望の電子写真感光体を得るために超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる時間が長くなる。
架橋表面層に、酸化防止剤を含有する超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる時間は、酸化防止剤の注入速度、架橋表面層の膜厚によって適宜決定するとよい。
また、エントレーナー効果が期待できる溶媒以外に、架橋表面層中に含有させたいレベリング剤や電荷輸送性化合物などを超臨界流体及び/または亜臨界流体中に予め溶解させておいてもよい。これによって、酸化防止剤と同時にこれらを注入することが可能となり、付与したい機能を有する電子写真感光体が実現できる。また、予め架橋表面層に含有されている物質が超臨界流体及び/または亜臨界流体の接触処理によって除去されるのを抑制するため、架橋表面層に含有されているのと同じ物質を超臨界流体及び/または亜臨界流体中に予め溶解させておいてもよい。
本願発明に記載の電子写真感光体は熱により変質・分解することがあることから、本願発明に記載の酸化防止剤を硬化樹脂層(架橋表面層)中に注入する工程での温度は、好ましくは30℃以上140℃以下、さらに好ましくは30℃以上100℃以下がよい。30℃を下回る場合には超臨界流体及び/または亜臨界流体の溶解性・拡散性が低いために酸化防止剤を架橋表面層中に注入することが困難となる場合が多く、また、140℃を上回る場合には、感光層や表面保護層の構成成分の変性・分解が生じたり、電子写真感光体が機能分離型積層感光体である場合には隣接層に含まれる構成成分のしみ出しなどの原因になるため好ましくない。
より効率的に酸化防止剤を架橋表面層中に注入するためには、温度条件を酸化防止剤の軟化点よりも5℃以上高い温度条件で行うことが好ましい。この場合、超臨界流体及び/または亜臨界流体中で酸化防止剤が溶融することにより、流体中での濃度が均一になりやすい。この場合、超臨界流体及び/または亜臨界流体中で粘性の下がった架橋表面層中に酸化防止剤が入り込みやすい状態となる。本現象の理由はまだ明確となっていないが、超臨界流体中または亜臨界流体中の酸化防止剤の濃度が飽和状態以上であり、溶け残っていたとしても、流体中で比較的均一な状態である。そして、架橋表面層中に酸化防止剤が注入されることで流体中の酸化防止剤の濃度が低下したとしても、流体中に均一に分散している酸化防止剤が速やかに流体中に溶解することにより、流体中の酸化防止剤の濃度が飽和状態を維持するためと考えられる。
以下に、本発明の電子写真感光体の構成について、図面に基づいて製造方法も含めて説明する。
図1は、本発明における電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、感光層33と表面保護層39が設けられている。
図2は、本発明における電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生層35、電荷輸送層37と表面保護層39が設けられている。
図3は、本発明におけるさらに別の構成を示す断面図であり、導電性支持体31上に、中間層41、電荷発生層35、電荷輸送層37と表面保護層39が設けられている。
図1、図2、図3の表面保護層39は、予め重合性化合物を重合させて硬化樹脂層(架橋表面層)とした後、該硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて形成されたものである。
<導電性支持体>
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板及びそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
この他、上記導電性支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
また、これらの中でも陽極酸化皮膜処理を簡便に行うことのできるアルミニウムからなる円筒状支持体が最も良好に使用できる。ここで言うアルミニウムとは、純アルミニウム系あるいはアルミニウム合金のいずれをも含むものである。具体的には、JIS 1000番台、3000番台、6000番台のアルミニウムあるいはアルミニウム合金が最も適している。陽極酸化皮膜は各種金属、各種合金を電解質溶液中において陽極酸化処理したものであるが、中でもアルミニウムもしくはアルミニウム合金を電解質溶液中で陽極酸化処理を行ったアルマイトと呼ばれる被膜が本発明に用いる感光体には最も適している。特に、反転現像(ネガ及びポジ現像)に用いた際に発生する点欠陥(黒ポチ、地汚れ)を防止する点で優れている。
陽極酸化処理は、クロム酸、硫酸、蓚酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸などの酸性浴中において行われる。このうち、硫酸浴による処理が最も適している。一例を挙げると、硫酸濃度:10〜20%、浴温:5〜25℃、電流密度:1〜4A/dm2、電解電圧:5〜30V、処理時間:5〜60分程度の範囲で処理が行われるが、これに限定するものではない。このように作製される陽極酸化皮膜は、多孔質であり、また絶縁性が高いため、表面が非常に不安定な状況である。
このため、作製後の経時変化が存在し、陽極酸化皮膜の物性値が変化しやすい。これを回避するため、陽極酸化皮膜をさらに封孔処理することが好ましい。封孔処理には、フッ化ニッケルや酢酸ニッケルを含有する水溶液に陽極酸化皮膜を浸漬する方法、陽極酸化皮膜を沸騰水に浸漬する方法、加圧水蒸気により処理する方法などがある。このうち、酢酸ニッケルを含有する水溶液に浸漬する方法が最も好ましい。
封孔処理に引き続き、陽極酸化皮膜の洗浄処理が行われる。これは、封孔処理により付着した金属塩等の過剰なものを除去することが主な目的である。これが導電性支持体(陽極酸化皮膜)表面に過剰に残存すると、この上に形成する塗膜の品質に悪影響を与えるだけでなく、一般的に低抵抗成分が残ってしまうため、逆に地汚れの発生原因にもなってしまう。
洗浄は純水1回の洗浄でも構わないが、通常は多段階の洗浄を行う。この際、最終の洗浄液が可能な限りきれい(脱イオンされた)ものであることが好ましい。また、多段階の洗浄工程のうち1工程に接触部材による物理的なこすり洗浄を施すことが好ましい。
以上のようにして形成される陽極酸化皮膜の膜厚は、5〜15μm程度が好ましい。これより薄すぎる場合には陽極酸化皮膜としてのバリア性の効果が充分でなく、これより厚すぎる場合には電極としての時定数が大きくなりすぎて、残留電位の発生や感光体のレスポンスが低下する場合がある。
<中間層>
本発明の感光体においては、導電性支持体と、感光層を構成する電荷発生層との間に中間層を設けることができる。中間層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶媒で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが好ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、中間層にはモアレ防止や、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの中間層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。さらに、本発明の中間層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の中間層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。中間層の膜厚は0〜5μmが適当である。
中間層41は、感光体の帯電時に電極側に誘起される逆極性の電荷の感光層への注入を防止する機能と、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込み時に生じるモアレを防止する機能の少なくとも2つの機能を有する。この機能を2つ以上の層に機能分離した機能分離型中間層は、本発明に用いられる感光体には有効な手段である。以下に、電荷ブロッキング層とモアレ防止層の機能分離型中間層について説明する。
(電荷ブロッキング層)
電荷ブロッキング層は、感光体帯電時に電極(導電性支持体31)に誘起される逆極性の電荷が、導電性支持体から感光層に注入するのを防止する機能を有する層である。負帯電の場合には正孔注入防止、正帯電の場合には電子注入防止の機能を有する。電荷ブロッキング層としては、酸化アルミ層に代表される陽極酸化被膜、SiOに代表される無機系の絶縁層、金属酸化物のガラス質ネットワークから形成される層、ポリフォスファゼンからなる層、アミノシラン反応生成物からなる層、この他には絶縁性の結着剤樹脂からなる層、硬化性の結着剤樹脂からなる層等が挙げられる。中でも湿式塗工法で形成可能な絶縁性の結着樹脂あるいは硬化性の結着樹脂から構成される層が良好に使用できる。電荷ブロッキング層は、その上にモアレ防止層や感光層を積層するものであるから、これらを湿式塗工法で設ける場合には、これらの塗工溶媒により塗膜が侵されない材料あるいは構成からなることが肝要である。
使用できる結着剤樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、例えば、活性水素(−OH基、−NH2基、−NH基等の水素)を複数個含有する化合物とイソシアネート基を複数個含有する化合物及び/またはエポキシ基を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂等も使用できる。
この場合、活性水素を複数個含有する化合物としては、例えば、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂等が挙げられる。
イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等とこれらのプレポリマー等が挙げられ、エポキシ基を複数有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等があげられる。中でも、成膜性、環境安定性、溶剤耐性の点などから、ポリアミドが最も良好に用いられる。その中でもN−メトキシメチル化ナイロンが最も好ましい。
ポリアミド樹脂は、電荷の注入を抑制する効果が高い上に残留電位に与える影響が少ない。また、これらのポリアミド樹脂は、アルコール可溶性の樹脂であって、ケトン系溶媒には不溶性を示し、また浸積塗工においても均一な薄膜を形成することができ、塗工性に優れている。特に、この下引き層は残留電位上昇の影響を最小限にするために薄膜にする必要がある上、膜厚の均一性が要求されるため、塗工性は画質安定性において重要な意味を持っている。
しかし、一般にアルコール可溶性樹脂は湿度依存性が大きく、それにより低湿環境下では抵抗が高くなり残留電位上昇が、高湿環境下では抵抗が低くなり、帯電低下が引き起こされ、環境依存性が大きいことが大きな課題であった。しかし、N−メトキシメチル化ナイロンは、高い絶縁性を示し、導電性支持体から注入される電荷のブロッキング性に非常に優れている上、残留電位に与える影響が少なく、さらに環境依存性が大幅に低減され、画像形成装置の使用環境が変化しても常に安定した画質を維持することが可能であるため、下引き層を積層した場合に最も好適に用いられる。加えて、N−メトキシメチル化ナイロンを用いた場合には残留電位の膜厚依存性が小さく、そのため残留電位への影響を低減し、かつ高い地汚れ抑制効果を得ることが可能となる。
N−メトキシメチル化ナイロンにおけるメトキシメチル基の置換率は、特に限定されるものではないが、15mol%以上であることが好ましい。N−メトキシメチル化ナイロンを用いたことによる上記効果は、メトキシメチル化度によって影響され、メトキシメチル基の置換率がこれより低い場合には、湿度依存性が増加したり、アルコール溶液とした場合に白濁したりする傾向が見られ、塗工液の経時安定性がやや低下する場合がある。
また、オイルフリーアルキド樹脂とアミノ樹脂、例えば、ブチル化メラミン樹脂等を熱重合させた熱硬化性樹脂、さらにまた、不飽和結合を有するポリウレタン、不飽和ポリエステル等の不飽和結合を有する樹脂と、チオキサントン系化合物、メチルベンジルフォルメート等の光重合開始剤との組合せ等の光硬化性樹脂も結着剤樹脂として使用できる。
また、整流性のある導電性高分子や、帯電極性に合わせてアクセプター(ドナー)性の樹脂・化合物などを加えて、基体(導電性支持体)からの電荷注入を制抑するなどの機能を持たせてもよい。
また、電荷ブロッキング層の膜厚は0.1μm以上2.0μm未満、好ましくは0.3μm以上2.0μm以下程度が適当である。電荷ブロッキング層が厚くなると、帯電と露光の繰返しによって、特に低温低湿で残留電位の上昇が著しく、また、膜厚が薄すぎるとブロッキング性の効果が小さくなる。また、電荷ブロッキング層には、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進材等を加えて、常法により、ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法などにより基体上に形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
(モアレ防止層)
モアレ防止層は、レーザー光のようなコヒーレント光による書き込みを行う際に、感光層内部での光干渉によるモアレ像の発生を防止する機能を有する層である。基本的には、前記書き込み光の光散乱を起こす機能を有する。このような機能を発現するために、モアレ防止層は屈折率の大きな材料を有することが有効である。一般には、無機顔料と結着剤樹脂(バインダー樹脂)を含有し、無機顔料がバインダー樹脂に分散された構成からなる。特に、無機顔料の中でも白色の顔料が有効に使用され、例えば、酸化チタン、フッ化カルシウム、酸化カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムなどが良好に用いられる。中でも、隠蔽力の大きな酸化チタンが最も有効に使用できる。
また、機能分離型中間層を有する感光体では導電性支持体31からの電荷注入を電荷ブロッキング層にて防止するものであるから、モアレ防止層においては少なくとも電子写真感光体表面に帯電される電荷とは同極性の電荷を移動できる機能を有することが残留電位防止の観点から好ましい。このため、例えば、負帯電型感光体の場合、モアレ防止層には電子伝導性を付与することが望ましく、使用する無機顔料に電子伝導性を有するものを使用するか、導電性のものを使用することが望ましい。あるいは、モアレ防止層に電子伝導性の材料(例えば、アクセプター)などを使用することは本発明の効果を一層顕著なものにするものである。
上記バインダー樹脂としては電荷ブロッキング層と同様のものを使用できるが、モアレ防止層の上に感光層33(電荷発生層35、電荷輸送層37)を積層することを考慮すると、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)の塗工溶媒に侵されないことが肝要である。
バインダー樹脂としては、熱硬化型樹脂が良好に使用される。特に、アルキッド/メラミン樹脂の混合物が最も良好に使用される。この際、アルキッド/メラミン樹脂の混合比は、モアレ防止層の構造及び特性を決定する重要な因子である。両者の比(重量比)が5/5〜8/2の範囲が良好な混合比の範囲として挙げることができる。5/5よりもメラミン樹脂がリッチであると、熱硬化の際に体積収縮が大きくなり塗膜欠陥を生じやすくり、感光体の残留電位を大きくする方向にあり望ましくない。また、8/2よりもアルキッド樹脂がリッチであると、電子写真感光体の残留電位低減には効果があるものの、バルク抵抗が低くなりすぎて地汚れが悪くなる方向になり望ましくない。
モアレ防止層においては、無機顔料とバインダー樹脂の容積比が重要な特性を決定する。このため、無機顔料とバインダー樹脂の容積比が1/1乃至3/1の範囲であることが重要である。両者の容積比が1/1未満である場合には、モアレ防止能が低下するだけでなく、繰り返し使用における残留電位の上昇が大きくなる場合が存在する。一方、容積比が3/1以上の領域ではバインダー樹脂における結着能が劣るだけでなく、塗膜の表面性が悪化し、上層の感光層の成膜性に悪影響を与える場合がある。この影響は感光層が積層タイプで構成され、電荷発生層のような薄層を形成する場合に深刻な問題になり得るものである。また容積比が3/1以上の場合には、無機顔料表面をバインダー樹脂が覆い尽くせない場合が存在し、電荷発生物質と直接接触することで、熱キャリア生成の確率が大きくなり、地汚れに対して悪影響を与える場合がある。
さらに、モアレ防止層には、平均粒径の異なる2種類の酸化チタンを用いることで、導電性基体に対する隠蔽力を向上させモアレを抑制することが可能となるとともに、異常画像の原因となるピンホールをなくすことができる。このためには、用いる2種の酸化チタンの平均粒径比が一定の範囲内(0.2<D2/D1≦0.5)にあることが重要である。
本発明で規定する範囲外の粒径比の場合、すなわち平均粒径の大きな酸化チタン(T1)の平均粒径に対する他方の酸化チタン(T2)の平均粒径の比が小さすぎる場合(0.2>D2/D1)は、酸化チタン表面での活性が増加し、電子写真感光体としたときの静電的安定性が著しく損なわれるようになる。また、一方の酸化チタン(T1)の平均粒径に対する他方の酸化チタン(T2)における平均粒径の比が大きすぎる場合(D2/D1>0.5)は、導電性基体に対する隠蔽力が低下し、モアレや異常画像に対する抑制力が低下する。ここで言う平均粒径は、水系で強分散を行なったときに得られる粒度分布測定から得られる。
また、粒径の小さい方の酸化チタン(T2)の平均粒径(D2)の大きさが重要な因子であり、0.05μm<D2<0.20μmであることが重要である。0.05μmよりも小さい場合には隠蔽力が低下し、モアレを発生させる場合がある。一方、0.20μmよりも大きな場合には、モアレ防止層の酸化チタンの充填率を低下させ、地汚れ抑制効果が十分に発揮できない。
また、2種の酸化チタンの混合比率(重量比)も重要な因子である。T2/(T1+T2)が0.2よりも小さい場合には、酸化チタンの充填率がそれほど大きくなく、地汚れ抑制効果が十分に発揮できない。一方、0.8よりも大きな場合には、隠蔽力が低下し、モアレを発生させる場合がある。従って、0.2≦T2/(T1+T2)≦0.8であることが重要である。
また、モアレ防止層の膜厚は1〜10μm、好ましくは2〜5μmとするのが適当である。膜厚が1μm未満では効果の発現性が小さく、10μmを越えると残留電位の蓄積を生じるので望ましくない。
前記無機顔料を溶剤及び結着剤樹脂(バインダー樹脂)と共に常法により、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライラー等により分散し、また、必要に応じて硬化(架橋)に必要な薬剤、溶剤、添加剤、硬化促進剤等を加えて塗工液とし、この塗工液溶液を用いて基体(導電性支持体)上に常法(ブレード塗工、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート法など)により塗工してモアレ防止層が形成される。塗布後は乾燥や加熱、光等の硬化処理により乾燥あるいは硬化させる。
<感光層>
次に、感光層について説明する。
感光層は電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単層構成の感光層(図1)でも構わないが、電荷発生層と電荷輸送層で構成される積層型(図2,図3)が感度、耐久性において優れた特性を示し、良好に使用される。説明の都合上、積層構成からなる感光層について先に述べる。
電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生物質としては、特に限定はなく、公知の材料を用いることができる。中でも、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンは有用に用いることができる。特に、特開2001−19871号公報に記載の結晶型、CuKαの特性X線(波長1.542Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有し、さらに9.4゜、9.6゜、24.0゜に主要なピークを有し、最も低角側の回折ピークとして7.3゜にピークを有し、7.3°のピークと9.4゜のピークの間にピークを有さないチタニルフタロシアニン結晶が良好に用いられ、さらに26.3°にピークを有さない結晶は有効に使用できる。
さらに、上記結晶型を有し、結晶合成時あるいは分散濾過処理により、平均粒子サイズを0.25μm以下にし、粗大粒子の存在しないチタニルフタロシアン結晶(例えば、特開2004−83859号公報、特開2004−78141号公報参照)は最も有用に使用できる。
電荷発生層は、前記電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂(結着剤樹脂)とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散して塗布液とし、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
必要に応じて電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
ここで用いられる溶剤としては、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
電荷輸送層は、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散して塗布液とし、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。中でも、環境への負荷低減等の意図から、非ハロゲン系溶媒の使用は望ましいものである。具体的には、テトラヒドロフランやジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテルやトルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、及びそれらの誘導体が良好に用いられる。
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層37は耐摩耗性に優れたものである。このような高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖及び/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記一般式(I)〜(X)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。これらを以下に例示し、具体例を示す。
[式(I)中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式(I―1):
〔式(I―1)中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、下記一般式(I―2)で表される2価基を表す。
(式(I―2)中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。)ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。〕で表される2価基を表す。]
尚、(I)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(II)中、R7
8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1、 Ar2、 Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。
X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(II)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(III)中、R9、 R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。
X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(III)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(IV)中、R11、 R12 は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7、Ar8,
Ar9は同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X,k,j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(IV)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(V)中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、
1、X2 は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。 X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(V)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(VI)中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13
Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、 Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。
X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(VI)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(VII)中、R19、R20
は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19
は同一又は異なるアリレン基を表す。 X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(VII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(VIII)中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23
は同一又は異なるアリレン基を表す。 X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(VIII)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(IX)中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。
X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(IX)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
〔式(X)中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。
X、k、j及びnは、(I)式の場合と同じである。〕
尚、(X)式は2つの共重合種が交互共重合体の形で記載されているが、ランダム共重合体でも構わない。
また、電荷輸送層に使用される高分子電荷輸送物質として、上述の高分子電荷輸送物質の他に、電荷輸送層の成膜時には電子供与性基を有するモノマーあるいはオリゴマーの状態で、成膜後に硬化反応あるいは架橋反応をさせることで、最終的に2次元あるいは3次元の架橋構造を有する重合体も含むものである。
さらに電荷輸送層の構成として、架橋構造からなる電荷輸送層も有効に使用される。架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成するものである。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現するものである。
また、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、電荷輸送層としての機能を十分に発現することが可能となる。電荷輸送能を有するモノマーとしては、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。
このような網目構造を有する電荷輸送層は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、電荷輸送層を積層構造として、下層(電荷発生層側)には低分子分散ポリマーの電荷輸送層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する電荷輸送層を形成してもよい。
これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層、あるいは架橋構造を有する重合体は耐摩耗性に優れたものである。通常、電子写真プロセスにおいては、帯電電位(未露光部電位)は一定であるため、繰り返し使用により感光体の表面層が摩耗すると、その分だけ感光体にかかる電界強度が高くなってしまう。この電界強度の上昇に伴い、地汚れの発生頻度が高くなるため、感光体の耐摩耗性が高いことは、地汚れに対して有利である。これら電子供与性基を有する重合体から構成される電荷輸送層は、自身が高分子化合物であるため成膜性に優れ、低分子分散型高分子からなる電荷輸送層に比べ、電荷輸送部位を高密度に構成することが可能で電荷輸送能に優れたものである。このため、高分子電荷輸送物質を用いた電荷輸送層を有する感光体には高速応答性が期待できる。
その他の電子供与性基を有する重合体としては、公知単量体の共重合体や、ブロック重合体、グラフト重合体、スターポリマーや、また、例えば特開平3―109406号公報、特開2000―206723号公報、特開2001―34001号公報等に開示されているような電子供与性基を有する架橋重合体などを用いることも可能である。
本発明において電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいは、オリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して、0〜1重量%が適当である。
上記は感光層が積層構成の場合について述べたが、本発明においては感光層が単層構成でも構わない。感光層を単層構成とするためには、少なくとも上述の電荷発生物質と結着樹脂(バインダー樹脂)を含有する単一層を設けることで感光層は構成され、バインダー樹脂としては電荷発生層や電荷輸送層の説明の所に記載したものが良好に使用される。また、単層感光層には電荷輸送物質を併用することで、高い光感度、高いキャリア輸送特性、低い残留電位が発現され、良好に使用できる。この際、使用する電荷輸送物質は、感光体表面に帯電させる極性に応じて、正孔輸送物質、電子輸送物質の何れかが選択される。さらに、上述した高分子電荷輸送物質もバインダー樹脂と電荷輸送物質の機能を併せ持つため、単層感光層には良好に使用される。
本発明における表面保護層は、予め形成した硬化樹脂層(架橋表面層)に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて形成されるが、この硬化樹脂層は少なくとも重合性化合物を重合することにより形成されるものが用いられる。この場合、機械的耐久性の観点から重合性官能基の数が3個以上であるものが好ましく用いられる。
つまり3官能以上である重合性化合物を重合することで3次元の網目構造が発達し、架橋密度が非常に高い高硬度、かつ高弾性な表面層が得られ、しかも均一で平滑性も高く、高い耐摩耗性、耐傷性が達成される。しかし、この様に感光体表面の架橋密度すなわち単位体積あたりの架橋結合数を増加させることが重要であるが、重合反応において瞬時に多数の結合を形成させるため体積収縮による内部応力が発生する。この内部応力は架橋型保護層の膜厚が厚くなるほど増加するため、表面保護層全層を硬化させるとクラックや膜剥がれが発生しやすくなる。この現象は初期的に現れなくても、電子写真プロセス上で繰り返し使用され帯電、現像、転写、クリーニングのハザード及び熱変動の影響を受けることにより、経時で発生しやすくなることもある。
上記問題を解決する方法としては、(1)架橋層及び架橋構造に高分子成分を導入する、(2)1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーを多量に用いる、(3)柔軟性基を有する多官能モノマーを用いる、などの硬化樹脂層(架橋表面層)を柔らかくする方法が挙げられる。しかし、いずれも架橋層の架橋密度が希薄となり、飛躍的な耐摩耗性が達成されない。
これに対し、本発明の製造方法により得られる電子写真感光体によれば、例えば、感光層を構成する電荷輸送層上に3次元の網目構造が発達した架橋密度の高い表面保護層を好ましくは1μm以上、15μm以下の膜厚で設けることで、上記のクラックや膜剥がれが発生せず、且つ非常に高い耐摩耗性が達成される。かかる表面保護層の膜厚を2μm以上、10μm以下の膜厚にすることにより、さらに上記問題に対する余裕度が向上することに加え、さらなる耐摩耗性向上に繋がる高架橋密度化の材料選択が可能となる。
本発明の電子写真感光体がクラックや膜剥がれを抑制できる理由としては、表面保護層を薄膜化できるために内部応力が大きくならないこと、表面保護層の下層に感光層もしくは電荷輸送層を有するために表面保護層の内部応力を緩和できることなどによる。
このため、表面保護層に高分子材料を多量に含有させる必要がなく、高分子材料の多量含有時に生ずる不相溶(高分子材料と重合性組成物の反応より生じる)が原因となる傷や、トナーフィルミングも起こりにくい。
さらに、一般的には表面保護層全層にわたる厚膜をエネルギー照射により重合する場合、表面保護層中に含有される酸化防止剤のエネルギー吸収によって、表面保護層の膜内部へのエネルギー透過が制限され、重合反応が十分に進行しないことがあったり、また酸化防止剤が重合反応で生じるラジカルを捕捉したり、重合開始反応を抑制するといった重合を抑制する現象が起こることがある。しかし、本発明の表面保護層においては重合終了後の硬化樹脂層(架橋表面層)に酸化防止剤を注入することから、エネルギー照射による重合阻害や酸化防止剤の劣化が全くない。つまり、表面保護層の内部まで均一に硬化反応が進行し、表面と同様に内部でも高い耐摩耗性が維持され、安定した電気特性を長期間の間維持することが可能となる。
また、本発明の表面保護層の形成においては、重合性化合物に加え、電荷輸送性化合物を含有することも可能である。尚、電荷輸送性化合物の重合性官能基の有無は問わないが、機械的耐久性の観点からは重合性官能基を有するものの方が好ましく使用できる。重合性官能基を有する電荷輸送性化合物としては、硬化樹脂構造の歪みや表面保護層の内部応力の観点から官能基数が少ない方が好ましく、1官能の電荷輸送性化合物が良好に用いることができる。
次に、本発明の表面保護層塗布液の構成材料について説明する。
本発明に用いられる重合性化合物のうち、電荷輸送性構造を有していない重合性化合物としては、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造、等を有しておらず、かつ重合性官能基を有するモノマーを指す。この重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、重合可能な基であれば何れでもよい。これら重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(a)で表される官能基が挙げられる。
[ただし、一般式(a)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基〔R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。〕、または−S−基を表す。]
上記の官能基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(b)で表される官能基が挙げられる。
[ただし、一般式(b)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基〔R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR1213(R12及びR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一または異なっていてもよい。)を表す。〕、また、X2は上記一般式(a)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表す。ただし、Y、X2の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。]
上記の官能基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
尚、これらX1、X2、Yについての置換基に更に置換される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらの重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。アクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中にある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、メタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、重合性官能基を2個以上有する単量体中の重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を有していない重合性化合物としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、本発明に用いられる重合性化合物のうち、電荷輸送性構造を有していない重合性化合物としては、表面保護層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋型表面保護層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下する傾向が出てくるため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有する化合物においては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
また、表面保護層に用いられる電荷輸送性構造を有していない重合性モノマーの成分割合は、表面保護層全量に対し20重量%以上、好ましくは30重量%以上である。モノマー成分が20重量%未満では表面保護層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が望めない傾向がある。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気特性の劣化が生じる傾向がある。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なり、それに伴い本感光体の表面保護層の膜厚も異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30重量%以上が最も好ましい。
本発明の表面保護層に用いられる電荷輸送性化合物には重合性官能基を有していないもの及び有するものいずれも良好に用いることができる。
また、電気特性的には光エネルギー照射時には電荷輸送性化合物は含まないことが好まれるが、さらなら機械的耐久性の向上等の高機能化を目的としては、重合性官能基を有する電荷輸送性化合物も同時に光硬化してもよい。
重合性官能基を有していない電荷輸送性化合物としては電荷輸送層の部分で記載した電荷輸送材料が良好に用いられる。また重合性官能基を有するものとしては従来から知られているもの(例えば、特開2005−107401、特開2006−011014、特開2006−154796参照)が良好に用いられるが、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば、縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環、等の電子輸送構造を有しており、かつ重合性官能基を有する化合物を指す。この重合性官能基としては、先の電荷輸送性構造を有していない重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高い効果を有し、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
[一般式(1)、(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7 (R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表し、Ar1、Ar2は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは無置換のアリール基を表し、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。m、nは0〜3の整数を表す。]
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換若しくは無置換のアリール基を表し、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
上記縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
上記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
上記複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基は、例えば、以下に示すような置換基を有してもよい。
〔1〕ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
〔2〕アルキル基、好ましくはC1〜C12、とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基若しくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
〔3〕アルコキシ基(−OR2)であり、R2は〔2〕で定義したアルキル基を表す。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
〔4〕アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。
具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
〔5〕アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
〔6〕下記一般式(c):
[一般式(c)中、R3及びR4は各々独立に水素原子、前記〔2〕で定義したアルキル基、またはアリール基を表す。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基またはナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい。]で表される基が挙げられる。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
〔7〕メチレンジオキシ基、またはメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基またはアルキレンジチオ基等が挙げられる。
〔8〕置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等が挙げられる。
前記Ar1、Ar2で表されるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基が挙げられる。
前記Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表す。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基が挙げられ、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基またはハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。
具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
上記置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基が挙げられ、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していてもよい。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
また、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、例えば、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールが挙げられ、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
上記ビニレン基としては、下記一般式(d)又は(e):
[一般式(d)または(e)中、R5は水素、アルキル基(前記〔2〕で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表されるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表す。]で表される基が挙げられる。
前記Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表す。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン2価変性基が挙げられる。
また、本発明の電荷輸送性構造を有する重合性化合物としてさらに好ましくは、下記一般式(3)で表される構造の化合物が挙げられる。
[一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表し、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表す。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、下記構造式(3−1)、(3−2)、(3−3)で表される2価基を表す。]
上記一般式(3)で表される化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、電荷輸送性構造を有していない重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)する。
重合性官能基を有する電荷輸送性化合物が、主鎖中に存在する場合であっても、また架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているために立体的位置取りに融通性ある状態で固定されている。このため、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であって、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
また本発明においては、下記一般式(4)で示した特定のアクリル酸エステル化合物も重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として良好に用いることができる。
(一般式(4)中、Ar5は置換または無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基を表す。Ar6は少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表す、B1、B2はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基またはビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基またはビニル基を有するアルコキシ基を表す。)
Ar5における置換または無置換の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していてもよい。
Ar6は、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表すが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(A)で表される。
(一般式(A)中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar7はアリール基を表す。wは1〜3の整数を表す。)
13、R14のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。R13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基はAr5の置換基で述べたアルキル基と同様である。R13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(B)で表される基を挙げることができる。
[一般式(B)式中、Bは −O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び下記一般式(B−1)、(B−2)で表される2価基を表す。R21は、水素原子、一般式(4)のAr5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、一般式(A)のR13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表す。]
[一般式(B−1)または(B−2)中、R22は、水素原子、一般式(4)のAr5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、一般式(A)のR13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表す。)]
21のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、
i−プロポキシ基、 n−ブトキシ基、 i−ブトキシ基、 s−ブトキシ基、 t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
一般式(A)のAr7のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基を挙げることができる。
一般式(A)のAr7、R13、R14は、一般式(4)のAr5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
また、前記3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、一般式(4)のAr5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
前述のように、B1、B2はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基またはビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基またはビニル基を有するアルコキシ基を表し、アルキル基、アルコキシ基は、一般式(4)のAr5で述べたものが同様に適用される。
一般式(4)のアクリル酸エステル化合物においてより好ましい構造として下記一般式(5)の化合物を挙げることができる。
[一般式(5)中、R8、R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar7、Ar8は、置換もしくは無置換のアリール基またはアリレン基、置換または無置換のベンジル基を表す。B1〜B4は、一般式(4)におけるB1、B2と同様である。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表す。]
尚、一般式(5)のR8、R9におけるアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記一般式(4)のAr5で述べたものが同様に適用される。Ar7、Ar8におけるアリール基は、一般式(A)のR13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
特定のアクリル酸エステル化合物は次のような特徴を有する。
スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。このような共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、架橋層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、さらに架橋結合間に固定化された場合でも分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、重合性の高いアクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、またはメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくすることが無く、さらに分子中の二重結合を使用するために分子量当りの架橋反応数を上げることができる。これによって、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に硬化樹脂層を作製できる(いわゆる最適な架橋膜の形成)。この様な架橋膜形成における架橋重合反応への参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、一般式(4)特に一般式(5)に示した重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、かつクラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、かつシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
本発明において用いられる電荷輸送性構造を有する重合性化合物の具体例を下記表1〜表12に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
また、本発明に用いられる重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し80重量%以下、好ましくは70重量%以下になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が80重量%を超えると電荷輸送構造を有していない重合性化合物の含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると70重量%以下の範囲が最も好ましい。
本発明の電子写真感光体を構成する表面保護層の形成には、塗工時の粘度調整、表面保護層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で機能性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することができる。
これらの機能性モノマー及び重合性オリゴマーとしては公知のものが利用できる。機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
但し、官能基数の低い1官能及び2官能の機能性重合性モノマーや重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋構造からなる表面保護層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このため、前記機能性重合性モノマーや重合性オリゴマーの含有量は架橋表面層全量に対して50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
また、本発明の表面保護層は、重合性化合物を重合することにより硬化樹脂層(架橋表面層)を形成した後、架橋表面層に酸化防止剤を含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させることで得られるが、必要に応じてこの重合時の反応効率向上を目的として、架橋表面層を形成(例えば、溶液塗布法により形成)するために用いる、塗布液[表面保護層形成用塗工液(表面保護層塗布液)]中に重合開始剤を含有させてもよい。重合開始剤としては従来から知られている熱重合開始剤及び光重合開始剤が良好に使用できる。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパンなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物などが挙げられる。
また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種または2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
さらに、本発明において硬化樹脂層形成に用いる表面保護層形成用塗工液には、必要に応じて、各種可塑剤(例えば、応力緩和や接着性の向上を図る目的で用いる)、レベリング剤、重合性を有していない低分子電荷輸送物質などの添加剤を含有することができる。
これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能であり、その使用量は塗工液の固形原料組成分の総量(総固形分)に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
本発明の電子写真感光体における表面保護層は、少なくとも上記の重合性化合物を含有する塗工液を前述の感光層あるいは電荷輸送層上に表面保護層塗工液を用いて塗布及び重合した後、酸化防止剤を含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させることにより形成されるが、かかる塗工液に用いる重合性化合物が液体である場合には、これに他の必要とする組成分を溶解して塗布することも可能であり、必要に応じて溶媒により希釈して塗布することができる。
このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は、組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗工液の塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
本発明においては、表面保護層の塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与えて重合性化合物を重合させ、硬化樹脂層(架橋表面層)を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。
熱エネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い、塗工表面側あるいは導電性支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は80℃以上、170℃以下が好ましく、80℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面層中に大きな歪みが発生する。重合反応を均一に進めるために、50℃未満の比較的低温で加熱後、さらに100℃以上に加温して反応を完結させる方法も有効である。
光エネルギーとしては、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせた可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm2以上、好ましくは500mW/cm2以上、より好ましくは1000mW/cm2以上である。1000mW/cm2より強い照射光を用いることで重合反応の進行速度が大幅に速くなり、より均一な架橋表面層を形成することが可能となる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱と光のエネルギーを用いたものが有用である。
次に、図面を用いて本発明の画像形成装置について詳しく説明する。
本発明の画像形成装置は、少なくとも電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電させられた電子写真感光体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、潜像形成手段によって形成された静電潜像にトナーを付着させる現像手段と、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写させる転写手段と、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーを電子写真感光体表面から除去するクリーニング手段とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の画像形成方法は、少なくとも前記本発明の製造方法により製造された電子写真感光体を帯電手段で帯電させ、帯電手段によって帯電した電子写真感光体表面に潜像形成手段で静電潜像を形成し、潜像形成手段によって形成された静電潜像に現像手段でトナーを付着させ、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写手段で転写させ、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーをクリーニング手段で電子写真感光体表面から除去して画像を形成することを特徴とするものである。
図4は、本発明の画像形成プロセス及び画像形成装置を説明するための概略図であり、下記に示すような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図4において、感光体1は導電性支持体上に少なくとも感光層と特定の表面保護層が設けられてなる。尚、特定の表面保護層とは、予め重合性化合物を重合させて硬化樹脂層とした後、該硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて形成されたものである。
図4において、感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。帯電手段を構成する帯電ローラ3、転写前チャージャ7、転写手段を構成する転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ、転写ローラを始めとする公知の手段が用いられる。尚、符号12は分離爪を示す。
これらの、帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式が望ましい。接触帯電方式においては帯電効率が高くオゾン発生量が少ないこと、装置の小型化が可能であること等のメリットを有する。ここで言う接触方式の帯電部材とは、感光体表面に帯電部材の表面が接触するタイプのものであり、帯電ローラ、帯電ブレード、帯電ブラシの形状がある。中でも帯電ローラや帯電ブラシが良好に使用される。
また、近接配置した帯電部材とは、感光体表面と帯電部材表面の間に200μm以下の空隙(ギャップ)を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。空隙の距離から、コロトロン、スコロトロンに代表される公知の帯電器とは区別されるものである。本発明において使用される近接配置された帯電部材は、感光体表面との空隙を適切に制御できる機構のものであればいかなる形状のものでもよい。
例えば、感光体の回転軸と帯電部材の回転軸を機械的に固定して、適正ギャップを有するような配置にすればよい。中でも、帯電ローラの形状の帯電部材を用い、帯電部材の非画像形成部両端にギャップ形成部材を配置して、この部分のみを感光体表面に当接させ、画像形成領域を非接触配置させる、あるいは感光体非画像形成部両端ギャップ形成部材を配置して、この部分のみを帯電部材表面に当接させ、画像形成領域を非接触配置させる様な方法が、簡便な方法でギャップを安定して維持できる方法である。特に特開2002−148904号公報、特開2002−148905号公報に記載された方法は良好に使用できる。帯電部材側にギャップ形成部材を配置した近接帯電機構の一例を図5に示す。
尚、図5の各符号について、1は感光体、3は帯電ローラ、21はギャップ形成部材、22は金属シャフト、23は画像形成領域、24は非画像形成領域を示す。
上記方式の採用により、帯電効率が高くオゾン発生量が少ないこと、装置の小型化が可能であること、さらには、トナー等による汚れが生じないこと、接触による機械的摩耗が発生しないこと、等の利点が発揮されることから良好に使用される。さらに、電圧の印加方式としては、交流重畳を用いることで、より帯電ムラが生じにくくなる等の利点があるために良好に使用できる。
このような接触方式の帯電部材あるいは非接触帯電方式の帯電部材を用いた場合、感光体の絶縁破壊を生じやすいという欠点を有している。しかしながら、本発明の画像形成装置に用いられる感光体は、電荷ブロッキング層とモアレ防止層の積層構成からなる中間層を有することができ、さらに感光層には電荷発生物質の粗大粒子が含有されていないため、感光体の耐圧性が極めて高い。このため、感光体の絶縁破壊に対する耐性が高く、上記帯電部材のメリット(帯電ムラ防止)が生かせるものである。
このような帯電手段を構成する帯電部材により感光体に帯電が施されるが、通常の画像形成装置においては、感光体に起因する地汚れが発生し易いため、感光体にかかる電界強度は低めに設定される(40V/μm以下、好ましくは30V/μm以下)。これは、地汚れの発生が電界強度に依存し、電界強度が上昇すると地汚れ発生確率が上昇するためである。
しかしながら、感光体にかかる電界強度を低下させることは、光キャリア発生効率を低下させ、光感度を低下させる。また、感光体表面と導電性支持体との間にかかる電界強度が低下するため、感光層で生成する光キャリアの直進性が低下し、クローン反発による拡散が大きくなり、結果として解像度の低下を生じる。
これに対して、本発明の電子写真感光体を用いることにより、地汚れ発生確率を極端に低下させることができる。従って、電界強度を必要以上に低下させる必要はなくなり、40V/μm以上の電界強度下でも使用できるようになる。このため、感光体光減衰におけるゲイン量を十分に確保でき、後述の現像(ポテンシャル)に対しても大きな余裕度を生み出し、解像度も低下させることなく現像ができるようになる。
また、潜像形成手段を構成する画像露光部5には、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの高輝度を確保できる光源が使用される。
除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800nmの長波長光を有するため、前述の電荷発生材料であるフタロシアニン顔料が高感度を示すことから良好に使用される。かかる光源等は、図4に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
図4において、現像手段を構成する現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写手段を構成する分離チャージャ11により転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段を構成するクリーニングブラシ(ファーブラシ)14及びクリーニングブレード15により、感光体から除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。尚、符号8はレジストローラを示す。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られ、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
図6の概略図に、本発明における画像形成装置構成及び画像形成プロセスの別の例を示す。図6において、感光体21には、導電性支持体上に少なくとも感光層と、前述の特定の表面保護層が設けられている。駆動ローラー22a,22bにより駆動され、帯電手段を構成する帯電チャージャ23による帯電、潜像形成手段を構成する像露光源24
による像露光、現像手段による(図示せず)現像、転写手段を構成する転写チャージャ(帯電器)25を用いる転写、クリーニング前露光光源26によるクリーニング前露光、クリーニング手段を構成するクリーニングブラシ27によるクリーニング、除電光源28による除電が繰返し行なわれる。
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、第6図において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段(潜像形成手段)、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な構成例として、図7の概略図に示すものが挙げられる。感光体1は導電性支持体上に少なくとも感光層と前述した特定の表面保護層が設けられてなる。
尚、図中、符号1は感光体、符号3は帯電手段を構成する帯電ローラ、符号5は潜像形成手段を構成する画像露光部、符号15はクリーニング手段を構成するクリーニングブラシ、符号16は現像手段を構成する現像ローラ、符号17は転写手段を構成する転写ローラをそれぞれ示す。
図8は、本発明における画像形成装置の他の例(タンデム方式のフルカラー電子写真装置)を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。図8において、符号1C,1M,1Y,1Kはドラム状の感光体であり、感光体1は導電性支持体上に少なくとも感光層と前述した特定の表面保護層が設けられてなる。
この感光体1C,1M,1Y,1Kは図中の矢印方向に回転し、その周りに少なくとも回転順に帯電手段を構成する帯電部材2C,2M,2Y,2K、現像手段を構成する現像部材4C,4M,4Y,4K、クリーニング手段を構成するクリーニング部材5C,5M,5Y,5Kが配置されている。帯電部材2C,2M,2Y,2Kは、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電部材2C,2M,2Y,2Kと現像部材4C,4M,4Y,4Kの間の感光体表面側より、図示しない潜像形成手段を構成する露光部材からのレーザー光3C,3M,3Y,3Kが照射され、感光体1C,1M,1Y,1Kに静電潜像が形成されるようになっている。
そして、このような感光体1C,1M,1Y,1Kを中心とした4つの画像形成要素6C,6M,6Y,6Kが、転写材搬送手段である転写搬送ベルト10に沿って並置されている。転写搬送ベルト10は各画像形成ユニット6C,6M,6Y,6Kの現像部材4C,4M,4Y,4Kとクリーニング部材5C,5M,5Y,5Kの間で感光体1C,1M,1Y,1Kに当接しており、転写搬送ベルト10の感光体側の裏側に当たる面(裏面)には転写バイアスを印加するための転写手段を構成する転写ブラシ11C,11M,11Y,11Kが配置されている。各画像形成要素6C,6M,6Y,6Kは現像装置内部のトナーの色が異なることであり、その他は全て同様の構成となっている。
図8に示す構成のカラー電子写真装置において、画像形成動作は次のようにして行われる。先ず、各画像形成要素6C,6M,6Y,6Kにおいて、感光体1C,1M,1Y,1Kが矢印方向(感光体と連れ周り方向)に回転する帯電部材2C,2M,2Y,2Kにより帯電され、次に感光体の外側に配置された潜像形成手段(図示しない)を構成する露光部でレーザー光3C,3M,3Y,3Kにより、作成する各色の画像に対応した静電潜像が形成される。次に現像部材4C,4M,4Y,4Kにより潜像を現像してトナー像が形成される。
現像部材4C,4M,4Y,4Kは、それぞれC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)のトナーで現像を行う現像部材で、4つの感光体1C,1M,1Y,1K上で作られた各色のトナー像は転写紙上で重ねられる。
転写紙7は給紙コロ8によりトレイから送り出され、一対のレジストローラ9で一旦停止し、上記感光体上への画像形成とタイミングを合わせて転写搬送ベルト10に送られる。
転写搬送ベルト10上に保持された転写紙7は搬送されて、各感光体1C,1M, 1Y,1Kとの当接位置(転写部)で各色トナー像の転写が行われる。
感光体上のトナー像は、転写ブラシ11C,11M,11Y,11Kに印加された転写バイアスと感光体1C,1M,1Y,1Kとの電位差から形成される電界により、転写紙7上に転写される。そして4つの転写部を通過して4色のトナー像が重ねられた記録紙7は定着手段である定着装置12に搬送され、トナーが定着されて、図示しない排紙部に排紙される。
また、転写部で転写されずに各感光体1C,1M,1Y,1K上に残った残留トナーは、
クリーニング手段を構成するクリーニング部材(クリーニング装置)5C,5M,5Y,5Kで回収される。
尚、第8図の例では画像形成要素は転写紙搬送方向上流側から下流側に向けて、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の色の順で並んでいるが、この順番に限るものでは無く、色順は任意に設定されるものである。また、黒色のみの原稿を作成する際には、黒色以外の画像形成要素(6C,6M,6Y)が停止するような機構を設けることは本発明に特に有効に利用できる。
さらに、図8において帯電部材は感光体と当接しているが、図5に示したような帯電機構にすることにより、両者の間に適当なギャップ(10−200 μm程度)を設けることにより、両者の摩耗量が低減できると共に、帯電部材へのトナーフィルミングが少なくて済み良好に使用できる。
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、各々の電子写真要素はプロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。前記のようにプロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段(潜像形成手段)、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
先ず、本発明に用いた電荷輸送性構造を有する化合物の合成例について示す。本発明における電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば、特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。下記にこの一例を示す。
<電荷輸送性構造を有する重合性化合物の合成例>
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(g)]の合成:
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物[下記構造式(f)]113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間かけて滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。
この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。
上記により、下記構造式(g)で示されるヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物の白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。得られた化合物の融点は64.0〜66.0℃であり、元素分析結果は下記表13に示すように計算値と良く一致した。
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(表3中の例示化合物No.54)の合成
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物[構造式(g)]82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。
その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。
この様にしてトリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物No.54)の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。得られた化合物の融点は117.5〜119.0℃であり、元素分析結果は下記表14に示すように計算値と良く一致した。
(3)アクリル酸エステル化合物の合成例
〈2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルの調製〉
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシベンジルアルコール(東京化成品製)38.4g、o−キシレン80mlを入れ、窒素気流下、亜リン酸トリエチル(東京化成品製)62.8gを80℃でゆっくり滴下し、さらに同温度で1時間反応を行った。その後、減圧蒸留により、生成したエタノール、溶媒のo−キシレン、未反応の亜リン酸トリエチルを除去し、66gの2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルを得た(収率90%)。得られた2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルの沸点は120.0℃/1.5mmHgであった。
〈2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンの調製〉
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、カリウム−tert−ブトキサイド14.8g、テトラヒドロフラン50mlを入れ、窒素気流下、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル9.90gと4−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)ベンズアルデヒド5.44gとをテトラヒドロフランに溶解させた溶液を室温でゆっくり滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。その後、水冷下、水を加え、次いで2規定の塩酸水溶液を加えて酸性化した後、テトラヒドロフランをエバポレーターにより除き、粗生成物をトルエンで抽出した。トルエン相を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。ろ過後、トルエンを除いてオイル状の粗収物を得、さらにシリカゲルによりカラム精製を行った後、ヘキサン中で晶析させ、5.09gの2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンを得た(収率72%)。得られたスチルベン化合物の融点は36.0〜138.0℃であった。
〈4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレートの調製〉
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン14.9g、テトラヒドロフラン100ml、12%濃度の水酸化ナトリウム水溶液21.5gを入れ、窒素気流下、5℃でアクリル酸クロリド5.17gを30分かけて滴下した。その後、同温度で3時間反応させた。反応液を水にあけ、トルエンで抽出した後、濃縮してシリカゲルによるカラム精製を行った。得られた粗収物をエタノールで再結晶し、黄色針状晶の4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレート(表6の例示化合物NO105)13.5gを得た(収率79.8%)。得られた例示化合物NO105の融点は104.1〜105.2℃であり、元素分析結果は下記表15に示すように計算値と良く一致した。
以上の様に、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸エステル誘導体と種々のアミノ置換ベンズアルデヒド誘導体を反応させることにより数多くの2−ヒドロキシスチルベン誘導体を合成し、そのアクリル化またはメタクリル化を行なう事で種々のアクリル酸エステル化合物を合成することができる。
以下、本発明について、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これら実施例により制約を受けるものではない。なお、部は、全て重量部である。
[実施例1]
長さ340mm、φ30mmアルミニウムシリンダー(JIS1050)上に下記組成の中間層用塗工液を用いて塗布後、130℃/20分間乾燥を行い、約3.5μmの中間層を形成した。続いて下記組成の電荷発生層用塗工液を用いて塗布後、130℃/20分間乾燥を行い、約0.2μmの電荷発生層を形成した。さらに、下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて塗布後、130℃/20分間乾燥を行い、約20μmの電荷輸送層を形成して感光体1を作製した。塗布はいずれもブレード塗工法を用いた。
(中間層用塗工液)
酸化チタンCR−EL(石原産業社製):50部
アルキッド樹脂ベッコライトM6401−50(固形分50重量%、
大日本インキ化学工業社製):15部
メラミン樹脂L−145−60(固形分60重量%、
大日本インキ化学工業社製):8部
2−ブタノン:120部
(電荷発生層用塗工液)
下記構造式(h)で示される非対称ビスアゾ顔料:2.5部
ポリビニルブチラール(「XYHL」UCC製):0.5部
メチルエチルケトン:110部
シクロヘキサノン:260部
(電荷輸送層用塗工液)
ポリカーボネートZポリカ(帝人化成社製):10部
下記構造式(i)で示される電荷輸送性化合物:7部
テトラヒドロフラン:80部
シリコーンオイル(KF50−100cs、信越化学工業社製):0.002部
上記のようにして得られた感光体について下記組成の架橋表面層用塗工液をウシオ製UVランプシステムを用いて、UV照射時間を90秒とし光硬化を行ない、更に70℃/20分乾燥を行い約7μmの架橋表面層を設けた。
(架橋表面層用塗工液)
ラジカル重合性化合物:KAYARAD TMPTA(日本化薬製、3官能):10部
重合開始剤:イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):1部
テトラヒドロフラン:50部
上記の様にして得られた感光体、及び酸化防止剤としてSumilizer 9A(住友化学製、アミン系酸化防止剤)0.6部及び下記構造式(j)で示される電荷輸送性化合物30部を内容積が700mLの耐圧容器内に収容し、超臨界流体として二酸化炭素を選択して下記の条件にて循環方式により処理を行った。
常温、0.10MPaにて、2〜3℃/分の加温速度、0.2MPa/分の加圧速度で加温及び加圧を行い、40℃、7MPaとした。ここで、流量を5.0L/分(標準状態換算値)として、2〜3℃/分の加温速度、10MPa/分の加圧速度で加温及び加圧を行い、90℃、30MPaの超臨界流体とした。流量を5.0L/分(標準状態換算値)を保ったまま2時間処理を行った。その後、流量を1.0〜3.0L/分(標準状態換算値)にして、2〜3℃/分の冷却速度、3〜5MPa/分の減圧速度で冷却減圧し、常温、0.1MPa(1気圧)まで戻した。以上のように実施例1の電子写真感光体を得た。
[実施例2]
実施例1の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤および電荷輸送性化合物を以下のように変更した以外は実施例1と同様に実施例2の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Sumilizer 9A(住友化学製、アミン系酸化防止剤):0.3部
Antigene 6C(住友化学製、アミン系酸化防止剤):0.3部
〔下記構造式(k)で示される電荷輸送性化合物〕
[実施例3]
実施例1の架橋表面層用塗工液の重合開始剤をイルガキュア784(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤及び電荷輸送性化合物を以下のように変更した以外は実施例1と同様に実施例3の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Sumilizer 224−S(住友化学製、アミン系酸化防止剤):0.3部
アデカスタブ PEP−24(旭電化工業製、リン系酸化防止剤):0.3部
〔下記構造式(i)で示される電荷輸送性化合物〕
[実施例4]
実施例1の架橋表面層用塗工液のラジカル重合性化合物をABE−300(新中村化学製、2官能)、重合開始剤を2−クロロチオキサントン(東京化成製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤及び電荷輸送性化合物を以下のように変更した以外は実施例1と同様に実施例4の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(東京化成製、フェノール系酸化防止剤):0.6部
〔下記構造式(m)で示される電荷輸送性化合物〕
[実施例5]
実施例1の架橋表面層用塗工液のラジカル重合性化合物をU−15HA(新中村化学製、15官能)、重合開始剤をイルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤及び電荷輸送性化合物を以下のように変更した以外は実施例1と同様に実施例5の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Irgafos 168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
リン系酸化防止剤):0.6部
〔下記構造式(n)で示される電荷輸送性化合物〕
[実施例6]
実施例1の架橋表面層用塗工液のラジカル重合性化合物をSR−295(化薬サートマー製、4官能)、重合開始剤をダロキュア1173(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤及び電荷輸送性化合物を以下のように変更した以外は実施例1と同様に実施例6の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Sumilizer GA−80(住友化学製、フェノール系酸化防止剤):0.6部
〔下記構造式(o)で示される電荷輸送性化合物〕
[実施例7]
実施例3の架橋表面層用塗工液のラジカル重合性化合物をKAYARAD DPHA(日本化薬製、5.5官能)、重合開始剤を2,4−ジエチルチオキサントン(東京化成製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤を以下のように変更した以外は実施例3と同様に実施例7の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Sanol LS−2626(三共製、アミン系酸化防止剤):0.3部
アデカスタブ HP−10(旭電化工業製、リン系酸化防止剤):0.3部
[実施例8]
実施例3における中間層を電荷ブロッキング層及びモアレ防止層の積層構成とし、下記組成の塗工液を用いて、0.5μmの電荷ブロッキング層、3.5μmのモアレ防止層を設け、架橋表面層用塗工液の重合性化合物をKAYARAD DPCA−120(日本化薬製、6官能)、重合開始剤をフェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(東京化成製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤を以下のように変更した以外は実施例3と同様に実施例8の電子写真感光体を得た。
(電荷ブロッキング層塗工液)
N−メトキシメチル化ナイロン(鉛市製、FR101):5部
メタノール:70部
n−ブタノール:30部
(モアレ防止層塗工液)
酸化チタン(石原産業社製、CR−EL):126部
アルキッド樹脂(大日本インキ化学工業製、
ベッコライトM6401-50-S):33.6部
メラミン樹脂(大日本インキ化学工業製、
スーパーベッカミンL-121-60):18.7部
2−ブタノン:100部
〔酸化防止剤〕
2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(東京化成製、フェノール系酸化防止剤):0.3部
アデカスタブ 2112(旭電化工業製、リン系酸化防止剤):0.3部
[実施例9]
実施例8の架橋表面層用塗工液の重合性化合物をKAYARAD TMPTA(日本化薬製、3官能)、重合開始剤をイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤を以下のように変更した以外は実施例8と同様に実施例9の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Irganox 1076(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
フェノール系酸化防止剤):0.3部
Irgafos 168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
リン系酸化防止剤):0.3部
[実施例10]
実施例3の架橋表面層用塗工液の重合開始剤をイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)に変更し、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤を以下のように変更した以外は実施例3と同様に実施例10の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Irganox 245(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
フェノール系酸化防止剤):0.3部
アデカスタブ HP−10(旭電化工業製、リン系酸化防止剤):0.3部
[実施例11]
実施例10の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤を以下のように変更した以外は実施例10と同様に実施例11の電子写真感光体を得た。
〔酸化防止剤〕
Irganox 1035(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、
フェノール系酸化防止剤):0.3部
アデカスタブ PEP−24(旭電化工業製、リン系酸化防止剤):0.3部
[実施例12]
実施例9の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤をIrganox 1076(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、フェノール系酸化防止剤)0.6部のみに変更した以外は実施例9と同様に実施例12の電子写真感光体を得た。
[実施例13]
実施例10の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤をIrganox 245(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、フェノール系酸化防止剤)0.6部のみに変更した以外は実施例10と同様に実施例13の電子写真感光体を得た。
[実施例14]
実施例11の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤をIrganox 1035(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、フェノール系酸化防止剤)0.6部のみに変更した以外は実施例11と同様に実施例14の電子写真感光体を得た。
[実施例15]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で超臨界流体として二酸化炭素とメタノールの混合物を選択した以外は実施例8と同様に実施例15の電子写真感光体を得た。
[実施例16]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で超臨界流体として二酸化炭素とエタノールの混合物を選択した以外は実施例8と同様に実施例16の電子写真感光体を得た。
[実施例17]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤の量をそれぞれ0.5部ずつとした以外は実施例8と同様に実施例17の電子写真感光体を得た。
[実施例18]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤の量をそれぞれ0.8部ずつとした以外は実施例8と同様に実施例18の電子写真感光体を得た。
[実施例19]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤の量をそれぞれ1.0部ずつとした以外は実施例8と同様に実施例19の電子写真感光体を得た。
[実施例20]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で保持した温度を90℃から30℃に変更した以外は実施例8と同様に実施例20の電子写真感光体を得た。
[実施例21]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で保持した温度を90℃から60℃に変更した以外は実施例8と同様に実施例21の電子写真感光体を得た。
[実施例22]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で保持した温度を90℃から120℃に変更した以外は実施例8と同様に実施例22の電子写真感光体を得た。
[実施例23]
実施例8の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で保持した温度を90℃から140℃に変更した以外は実施例8と同様に実施例23の電子写真感光体を得た。
[実施例24]
実施例9の架橋表面層用塗工液に下記構造式(p)に示す電荷輸送性構造を有する重合性化合物(表3の例示化合物番号:NO.54)を10部加えた以外は実施例9と同様に実施例24の電子写真感光体を得た。
[実施例25]
実施例9の架橋表面層用塗工液に下記構造式(q)に示す電荷輸送性構造を有する重合性化合物(表6の例示化合物番号:NO.105を10部加えた以外は実施例9と同様に実施例25の電子写真感光体を得た。
[実施例26]
実施例9の架橋表面層用塗工液に下記構造式(r)に示す電荷輸送性構造を有する重合性化合物(表12の例示化合物番号:NO.180)を10部加えた以外は実施例9と同様に実施例26の電子写真感光体を得た。
[実施例27]
実施例24の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた電荷輸送性化合物を0部に変更した以外は実施例24と同様に実施例27の電子写真感光体を得た。
[実施例28]
実施例25の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた電荷輸送性化合物を0部に変更した以外は実施例25と同様に実施例28の電子写真感光体を得た。
[実施例29]
実施例26の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた電荷輸送性化合物を0部に変更した以外は実施例26と同様に実施例29の電子写真感光体を得た。
[実施例30]
実施例1の架橋表面層用塗工液を以下のように変更し、UV照射を行わず、130℃/30分加熱乾燥を行い約7μmの架橋表面層を設けた以外は実施例1と同様に実施例30の電子写真感光体を得た。
(架橋表面層用塗工液)
重合性化合物:KAYARAD TMPTA(日本化薬製、3官能):10部
重合開始剤:パーカードックス12−EB(化薬アクゾ製熱重合開始剤):1部
テトラヒドロフラン:50部
[比較例1]
実施例1において架橋表面層を設けず、電荷輸送層を35μmとして比較例1の電子写真感光体を得た。
[比較例2]
実施例1において超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程を除いた以外は実施例1と同様に比較例2の電子写真感光体を得た。
[比較例3]
実施例1の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤をいずれも0部と変更した以外は実施例1と同様に比較例3の電子写真感光体を得た。
[比較例4]
実施例24の超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で加えた酸化防止剤をいずれも0部と変更した以外は実施例24と同様に比較例4の電子写真感光体を得た。
[比較例5]
特開2006−99028号公報の実施例5に準じて比較例2の架橋表面層用塗工液を以下のように変更した以外は比較例2と同様に比較例5の電子写真感光体を得た。
(架橋表面層用塗工液)
重合性化合物:KAYARAD TMPTA(日本化薬製、3官能):5部
重合性化合物:KAYARAD DPHA(日本化薬製、5.5官能):5部
電荷輸送性構造を有する重合性化合物(例示化合物番号:NO.54):10部
重合開始剤:イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):1部
テトラヒドロフラン(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、0.02部含有):80部
Sumilizer BP−76(住友化学製、フェノール系酸化防止剤):0.5部
[比較例6]
特開2006−11014号公報の実施例1に準じて比較例2の架橋表面層用塗工液を以下のように変更した以外は比較例2と同様に比較例6の電子写真感光体を得た。
(架橋表面層用塗工液)
重合性化合物:KAYARAD TMPTA(日本化薬製、3官能):10部
電荷輸送性構造を有する重合性化合物(例示化合物番号:NO.54):10部
重合開始剤:イルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):2部
テトラヒドロフラン:100部
Sumilizer GM(住友化学製、2官能型フェノール系酸化防止剤):2部
<NOxガス暴露評価>
上記実施例1〜30及び比較例1〜6で作製した電子写真感光体を図7に示すようなプロセスカートリッジに装着し、図8に示すようなタンデム型フルカラー画像形成装置に搭載し、NOxガス暴露評価を実施した。尚、画像露光光源に655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)を用い、帯電部材としてローラー帯電器、転写部材として転写ベルト、除電光源として655nmLEDを用いた。試験前のプロセス条件が下記になるように設定した。
〈試験前プロセス条件〉
感光体帯電電位(未露光部電位):−700V
現像バイアス:−500V
評価は、感光体未露光部電位及び露光部電位を測定して行った。測定方法としては、図8に示す現像部位置に、表面電位計を搭載し、感光体が初期状態で−700Vに帯電される印加バイアスに固定し、現像部位置における未露光部表面電位及び露光部表面電位を測定した。
また、図9に示す文字部とハーフトーン部からなる画像をいずれかの文字部が先頭になるように出力し、ハーフトーン部に形成される文字部の残像の程度を目視にて評価した。
評価基準としては、極めて良好なものをA、次に良好なものをB、その次に良好なものをC、劣るものをD、非常に悪いものをEの5段階評価で表した。これらの評価についてはNOxガス暴露前後で行なった。NOxガス暴露条件は以下に示した通りである。以上の結果を下記表16に示す。
〈NOxガス暴露条件〉
装置:ダイレック製NOx暴露試験装置
一酸化窒素濃度:50ppm
二酸化窒素濃度:50ppm
温度:35℃
相対湿度:55%
暴露期間:10日間
表16から明らかなように、実施例で作製した本発明の電子写真感光体ではいずれも、ガス暴露後においても残像の程度は良好であり、また未露光部電位の低下も少ない。
すなわち、実施例1乃至6はいずれも良好な結果であり、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程においてトリアリールアミン構造を有する電荷輸送性化合物を含む実施例1、2、3では露光部電位が低く、優れている。
また、実施例1乃至14で超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程において加えた酸化防止剤の種類がフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を含むものがNOxガス暴露後の残像が極めて良好であることがわかる。
実施例15、16は超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程において超臨界流体及び/または亜臨界流体としてメタノールおよびエタノールを混合したものであるが、実施例8と比較してもNOxガス暴露後の残像が良好である。
また、実施例8、17、18、19では超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程において加えた酸化防止剤の量が多くなるにつれてNOxガス暴露後の残像が良好である。
また、実施例8において超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程で保持した温度(90℃)を変えた実施例20、21、22、23では、温度が高いほどNOxガス暴露後の残像が良好である。
実施例24乃至29は架橋表面層塗工液中に電荷輸送性構造を有する重合性化合物を含んだものであり、実施例9と比較して若干露光部電位が高めであるが良好な特性であることがわかる。
また、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程において電荷輸送性化合物を含んでいる実施例24乃至26では、実施例27乃至29よりも低い露光部電位を示している。また重合エネルギーとして光エネルギーではなく、熱エネルギーを付与した実施例30においても残像特性及び電気特性が良好である。
これに対して、架橋表面保護層を設けていない比較例1では、NOxガス暴露後の残像の程度が悪い。また、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程を除いた比較例2は架橋表面層中に電荷輸送性化合物が存在しないために露光部電位が初期から大きく、評価を中止した。また、超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させる工程において酸化防止剤を含まない比較例3、4については、NOxガス暴露後の残像の程度が非常に悪く、露光部電位の低下も大きい。
また、特開2006−99028号公報に準じて作成した比較例5及び特開2006−11014号公報に準じて作成した比較例6では、NOxガス暴露後において程度の悪い残像画像が発生し、感光体表面電位についても大幅に低下している。これらはいずれも架橋表面層塗工液中に酸化防止剤を含有しており、架橋表面層を光硬化する際に、過剰のエネルギーが照射されることから電荷輸送性化合物や酸化防止剤の劣化を避けることができず、酸化性ガスの過酷な暴露条件下においては十分に満足できる特性を有していないことがわかる。
<実機加速疲労評価>
次に、実施例1乃至30及び比較例1、5、6で作製した電子写真感光体を図7に示すようなプロセスカートリッジに装着し、図8に示すようなタンデム型フルカラー画像形成装置に搭載して実機加速疲労評価を行った。尚、画像露光光源として655nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)、帯電部材としてローラー帯電器、転写部材として転写ベルト、除電光源として655nmLEDをそれぞれ用いた。
試験前のプロセス条件が下記になるように設定した。
〈試験前プロセス条件〉
感光体帯電電位(未露光部電位):−700V
現像バイアス:−500V
〈通紙条件〉
通紙条件としては書き込み率6%のチャート(A4全面に対して、画像面積として6%相当の文字が平均的に書かれている)を用い、クリーニングブレードの当接圧力及び電子写真感光体の通過電荷量が試験前プロセス条件の2倍になるように帯電部材への印加バイアス、半導体レーザーの光量を設定し連続10万枚印刷を行った。
評価は、10万枚の画像印刷前後における感光体未露光部電位及び露光部電位を測定して行った。測定方法としては、図8に示す現像部位置に表面電位計を搭載し、感光体が初期状態で−700Vに帯電される印加バイアスに固定し、現像部位置における未露光部表面電位及び露光部電位を測定した。また、全ての試験前後における膜厚の差(摩耗量)を評価した。尚、膜厚の測定は、電子写真感光体長手方向の両端5cmを除き、1cm間隔に測定し、その平均値を膜厚とした。更に、5万枚印刷後において全白画像を出力し、地肌部の汚れを評価した。
尚、地肌部の画像評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表した。
また、10万枚の印刷後において、ISO/JIS−SCID画像N1(ポートレート)を出力して、カラー色の再現性について評価した。尚、色再現性評価は4段階にて行ない、極めて良好なものを◎、良好なものを○、やや劣るものを△、非常に悪いものを×で表した。以上の結果を下記表17に示す。
表17から明らかなように、実施例で作製した本発明の電子写真感光体ではいずれも、10万枚通紙後においても極めて安定な電気特性を示しており、地肌汚れ及びカラーバランスなどの画像特性も良好であり、架橋表面層の摩耗量も小さい。
特に中間層に電荷ブロッキング層を設けている実施例8、9、12、15乃至29では、地肌汚れが極めて良好であることがわかる。
また、実施例1乃至9では、架橋表面層塗工液に含まれる重合性化合物の官能基が多い程、摩耗量が小さいことがわかる。
また、架橋表面層塗工液中に電荷輸送性構造を有する重合性化合物を含有する実施例24乃至29では、実施例9と比較するとこれらはいずれも摩耗量が若干多くなっており、架橋表面層の光硬化の際に加えた電荷輸送性構造を有する重合性化合物がUV光を吸収することから、重合効率にロスが発生し、その分若干ではあるが架橋密度が低下しているためと推定できる。また、重合エネルギーとして光エネルギーではなく熱エネルギーを用いた実施例30においても電気特性と機械的耐久性の両立が実現されている。
一方、架橋表面保護層を有していない比較例1は摩耗量が大きく、膜厚の減少量が大きいことから未露光部電位の低下も著しい。比較例5及び比較例6は露光部電位の上昇の程度が大きく、実施例と比較すると電気特性の安定性に欠け、カラーバランスが実施例に比べやや劣り、摩耗量についても大きく、架橋表面層中に含まれる電荷輸送性化合物や酸化防止剤によりUV光が吸収され、重合効率が低下したために実施例と比較すると架橋密度が低下したものと推定される結果となった。
以上の結果から本発明の実施例においてはいずれも良好な結果が得られており、電気特性が極めて安定し、かつ機械的耐久性が高く、残像などの異常画像が発生しない、高信頼性を有する電子写真感光体が実現されている。つまり、高い耐摩耗性、良好な電気特性を長期に渡り達成した電子写真感光体が実現されている。一方、比較例1乃至6では機会的耐久性が不足していたり、またNOxガス暴露後での残像やカラーバランスといった画像特性等が劣化しており、長期間にわたって信頼性の高い電子写真感光体は実現できていない。
したがって、導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を順次形成してなる電子写真感光体の製造方法において、前記表面保護層の形成を、予め重合性化合物を重合させて硬化樹脂層とした後、該硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて行うことにより、高い耐久性を維持し、極めて安定した電気特性を有することで、信頼性の極めて高い電子写真感光体が実現され、長期間にわたって高画質画像出力を実現できる電子写真感光体を提供できることが明らかとなった。また、本発明の電子写真感光体の製造方法、及びそれを用いた電子写真感光体、及びそれを用いた画像形成装置、及びそれを用いた画像形成装置用プロセスカートリッジ、及びそれを用いた画像形成方法、が高性能、高信頼性を有していることが明らかとなった。
本発明における電子写真感光体の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、感光層33と表面保護層39が設けられている 本発明における電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生層35、電荷輸送層37と表面保護層39が設けられている 本発明におけるさらに別の構成を示す断面図であり、導電性支持体31上に、中間層41、電荷発生層35、電荷輸送層37と表面保護層39が設けられている 本発明における画像形成装置構成及び画像形成プロセスの例を示す概略図である。 本発明の画像形成装置における近接帯電機構(帯電部材側にギャップ形成部材を配置)の一例を示す概略図である。 本発明における画像形成装置構成及び画像形成プロセスの別の例を示す概略図である。 本発明における画像形成装置用プロセスカートリッジの構成例を示す概略図である。 本発明における画像形成装置の他の例(タンデム方式のフルカラー電子写真装置)を説明するための概略図である。 本発明の実施例において残像評価に用いた出力画像である。
符号の説明
図1〜図3
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 表面保護層
41 中間層
図4
1 感光体
2 分離爪
3 帯電ローラ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 ブレード
図5
1 感光体
3 帯電ローラ
21 ギャップ形成部材
22 金属シャフト
23 画像形成領域
24 非画像形成領域
図6
21 感光体
22a、22b 駆動ローラー
23 帯電器チャージャ
24 像露光源
25 転写チャージャ
26 クリーニング前露光光源
27 クリーニングブラシ
28 除電光源
図7
1 感光体
3 帯電ローラ
5 画像露光部
15 クリーニングブラシ
16 現像ローラ
17 転写ローラ
図8
1C,1M,1Y,1K 感光体
2C,2M,2Y,2K 帯電部材
3C,3M,3Y,3K レーザ光
4C,4M,4Y,4K 現像部材
5C,5M,5Y,5K クリーニング部材
6C,6M,6Y,6K 画像形成要素
7 転写紙
8 給紙コロ
9 レジストローラ
10 転写搬送ベルト
11C,11M,11Y,11K 転写ブラシ
12 定着装置

Claims (19)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面保護層を順次形成してなる電子写真感光体の製造方法において、
    前記表面保護層の形成を、予め重合性化合物を重合させて硬化樹脂層とした後、該硬化樹脂層に酸化防止剤を少なくとも一種以上含む超臨界流体及び/または亜臨界流体を接触させて行い、
    前記硬化樹脂層が、ラジカル重合性化合物の光重合により形成されることを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記超臨界流体及び/または亜臨界流体が、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記超臨界流体及び/または亜臨界流体が、少なくとも二酸化炭素を含む混合物であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記二酸化炭素を含む混合物に混合されるものが、メタノール及びエタノールから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記超臨界流体及び/または亜臨界流体に含まれる少なくとも一種以上の酸化防止剤の含有量が、0.5g/L以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記超臨界流体及び/または亜臨界流体の温度が、30〜140℃であることを特徴する請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記酸化防止剤の少なくとも一種が、フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記酸化防止剤の少なくとも一種が、リン系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  9. 前記少なくとも一種以上の酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤から一種以上、リン系酸化防止剤から一種以上選ばれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  10. 前記超臨界流体及び/または亜臨界流体中に電荷輸送性化合物が含まれることを特徴とする請求項1乃9のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  11. 前記電荷輸送性化合物が、重合性官能基を有していないことを特徴とする請求項10に記載の電子写真感光体の製造方法。
  12. 前記電荷輸送性化合物が、トリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造及びカルバゾール構造を有する化合物よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項10または11に記載の電子写真感光体の製造方法。
  13. 前記電荷輸送性化合物が、トリアリールアミン構造を有する化合物であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  14. 前記重合性化合物が、電荷輸送性構造を有していない化合物であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  15. 前記重合性化合物が、重合性官能基を3個以上有することを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
  16. 請求項1乃至15のいずれかに記載の製造方法により製造されたことを特徴とする電子写真感光体。
  17. 請求項16に記載の電子写真感光体と、少なくとも電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電させられた電子写真感光体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、潜像形成手段によって形成された静電潜像にトナーを付着させる現像手段と、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写させる転写手段と、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーを電子写真感光体表面から除去するクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
  18. 請求項16に記載の電子写真感光体と、少なくとも電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電させられた電子写真感光体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、潜像形成手段によって形成された静電潜像にトナーを付着させる現像手段と、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写させる転写手段と、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーを電子写真感光体表面から除去するクリーニング手段からなる群から選ばれた一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
  19. 少なくとも請求項16に記載の電子写真感光体を帯電手段で帯電させ、帯電手段によって帯電した電子写真感光体表面に潜像形成手段で静電潜像を形成し、潜像形成手段によって形成された静電潜像に現像手段でトナーを付着させ、現像手段よって形成されたトナー像を被転写体に転写手段で転写させ、転写後に電子写真感光体表面に残留したトナーをクリーニング手段で電子写真感光体表面から除去して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
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