JP2012078551A - 電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及びプロセスカートリッジ Download PDF

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Abstract

【課題】耐摩耗性が高く、電気特性が良好で残像などの劣化画像を抑制し、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供すること
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを積層してなる電子写真感光体において、前記表面層が少なくとも、(イ)電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、(ロ)1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化させた架橋性樹脂を含み、かつ前記感光層が下記の一般式(I)等で表される電荷輸送剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。
Figure 2012078551

【選択図】なし

Description

本発明は、耐摩耗性が高く、繰り返し使用後においても電気特性が良好で残像などの劣化画像を抑制し、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体に関する。また、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
近年、有機感光体(OPC)は良好な性能、様々な利点から、無機感光体に換わり複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ及びこれらの複合機に多く用いられている。この理由としては、例えば(1)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(2)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(3)材料の選択範囲の広さ、(4)製造の容易さ、(5)低コスト、(6)無毒性、等が挙げられる。
一方、最近画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。この観点からみると、有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送剤と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を挙げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。
この様な感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
したがって、有機感光体の高耐久化においては前述の摩耗量を低減することが不可欠であり、これが当分野でもっとも解決が迫られている課題である。
感光層の耐摩耗性を改良する技術としては、(1)表面層に硬化性バインダーを用いたもの(例えば、特許文献1参照。)、(2)高分子型電荷輸送剤を用いたもの(例えば、特許文献2参照。)、(3)表面層に無機フィラーを分散させたもの(例えば、特許文献3参照。)等が挙げられる。
これらの技術の内、(1)の硬化性バインダーを用いたものは、電荷輸送剤との相溶性が悪いためや重合開始剤、未反応残基などの不純物により残留電位が上昇し画像濃度低下が発生し易い傾向がある。
また、(2)の高分子型電荷輸送剤を用いたものは、ある程度の耐摩耗性向上が可能であるものの、有機感光体に求められている耐久性を十二分に満足させるまでには至っていない。また、高分子型電荷輸送剤は材料の重合、精製が難しく高純度なものが得にくいため材料間の電気的特性が安定しにくい。更に塗工液が高粘度となる等の製造上の問題を起こす場合もある。
(3)の無機フィラーを分散させたものは、通常の低分子電荷輸送剤を不活性高分子に分散させた感光体に比べ高い耐摩耗性が発揮されるが、無機フィラー表面に存在するトラップにより残留電位が上昇し、画像濃度低下が発生し易い傾向にある。また、感光体表面の無機フィラーとバインター樹脂の凹凸が大きい場合には、クリーニング不良が発生し、トナーフィルミングや画像流れの原因となることがある。これら(1)、(2)、(3)の技術では、有機感光体に求められる電気的な耐久性、機械的な耐久性をも含めた総合的な耐久性を十二分に満足するには至っていない。
更に、(1)の耐摩耗性と耐傷性を改良するために多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させた感光体も知られている(特許文献4参照)。しかし、この感光体においては、感光層上に設けた保護層にこの多官能のアクリレートモノマー硬化物を含有させる旨の記載があるものの、この保護層においては電荷輸送剤を含有せしめてもよいことが記載されているのみで具体的な記載はなく、しかも、単に表面層に低分子の電荷輸送物を含有させた場合には、上記硬化物との相溶性の問題があり、これにより、低分子電荷輸送剤の析出、白濁現象が起こり、機械強度も低下してしまうことがあった。
さらに、この感光体は、具体的には高分子バインダーを含有した状態でモノマーを反応させるため、硬化が充分に進行しないことや、硬化物とバインダー樹脂との相溶性の問題があり、硬化時に相分離による表面凹凸が生じクリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。
これらに換わる感光層の耐摩耗技術として、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと、炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送材及びバインダー樹脂からなる塗工液を用いて形成した電荷輸送層を設けることが知られており(例えば、特許文献5参照。)、このバインダー樹脂には、炭素−炭素二重結合を有し、上記電荷輸送剤に対して反応性を有するものと、上記二重結合を有せず反応性を有しないものが含まれる。この感光体は耐摩耗性と良好な電気的特性を両立しており注目されるが、バインダー樹脂として反応性を有しないものを使用した場合においては、バインダー樹脂と、上記モノマーと電荷輸送剤との反応により生成した硬化物との相溶性が悪く、相分離から架橋時に表面凹凸が生じ、クリーニング不良を引き起こす傾向が見られた。
また、上記したように、この場合バインダー樹脂がモノマーの硬化を妨げるほか、この感光体において使用される上記モノマーとして具体的に記載されているものは2官能性のものであり、この2官能性モノマーでは官能基数が少なく充分な架橋密度が得られず、これらのことから耐摩耗性の点では未だ満足するには至らなかった。また、反応性を有するバインダーを使用した場合においても、上記モノマーおよび上記したバインダー樹脂に含有される官能基数の低さから、上記電荷輸送剤の結合量と架橋密度との両立は難しく、電気特性及び耐摩耗性も充分とは言えないものであった。
また、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層も知られている(例えば、特許文献6参照。)。
しかし、この感光層は嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため硬化物中に歪みが発生し内部応力が高くなり、表面層の荒れや経時におけるクラックが発生しやすい場合がある。
さらに、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物とを硬化させた架橋型電荷輸送層も知られており(特許文献7、特許文献8、特許文献9)、電荷輸送性構造を有する1官能のラジカル重合性化合物を用い、表面層を硬化することで、機械的および電気的な耐久性と同時に感光層のクラックを抑制している。
一方で、有機物質を用いた電子写真感光体では、長期的な繰り返し使用や、高温高湿下、低温低湿下で電気特性が変わりやすい。そこで、高応答性であり、高速で繰り返し使用しても電子写真特性、特に初期電位と繰り返し使用後の電位の再現性が安定している電子写真感光体が求められている。また、高温高湿から低温低湿までさまざま使用環境においても電気特性が安定し、高品質の画像が得られることが求められている。そのため電気特性の環境安定性についてはさまざまな電荷移動剤が研究されている。
例えば、特許文献10には、電荷輸送層に、特定構造のインドリン系電荷輸送物質(本発明におけるインドリン系電荷輸送物質とは異なる。)を用いた電子写真感光体が開示されている。特許文献11、特許文献12においても同様に、本発明における電荷移動物質の構造に近いが異なる電荷移動剤が開示されている。一方、特許文献13は、明細書比較例においてX線回折スペクトルのブラッグ角(2θ±0.2°)27.2°が最大ピークを有する特定結晶構造のオキシチタニウムフタロシアニンと特定構造のインドリン系電荷輸送物質(本発明におけるインドリン系電荷輸送物質とは異なる。)を既に開示している。
また、架橋型表面層など保護層を用いた電子写真感光体では、長期的な繰り返し使用が要求されるため、電荷輸送層についても長期的な安定性が求められるようなった。さらに架橋型表面層との電荷注入性、溶け込みによる硬化不良を起こさないことなどの架橋表面層との相性も重要となる。
本発明の課題は、耐摩耗性が高く、電気特性が良好で残像などの劣化画像を抑制し、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供することであり、それらの長寿命、高性能感光体を使用した画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、表面層が電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化させた架橋性樹脂を含み、感光層中に特定の電荷輸送剤を用いた電子写真感光体が、前記従来の技術の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを積層してなる電子写真感光体において、前記表面層が少なくとも(イ)電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、(ロ)1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化させた架橋性樹脂を含み、かつ前記感光層が一般式(I)、または一般式(II)、または一般式(III)で表される電荷輸送剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。
Figure 2012078551

(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
Figure 2012078551

(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
Figure 2012078551

(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
(2)前記感光層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする(1)記載の電子写真感光体。
(3)前記表面層が、紫外線照射により硬化され形成されることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記(ロ)のラジカル重合性化合物の電荷輸送性構造が、トリアリールアミン構造であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載の電子写真感光体。
(5)前記(ロ)のラジカル重合性化合物が、アクリロイルオキシ基およびメタクリルイルオキシ基よりなる群から選ばれた官能基を有するものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(6)前記(イ)の3官能以上のラジカル重合性モノマーが、アクリロイルオキシ基およびメタクリルイルオキシ基よりなる群から選ばれた官能基を3個以上有するものであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真感光体。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体を用い、電子写真感光体表面上に静電潜像を形成し、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成し、前記可視像を記録媒体に転写し、クリーニング手段が電子写真感光体表面上の転写残トナーを取り除くことを特徴とする画像形成方法。
(9)画像形成装置へ組み込むプロセスカートリッジであって、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、(1)〜(6)のいずれかに記載の電子写真感光体とが一体に支持されて、画像形成装置に着脱可能なことを特徴とするプロセスカートリッジ。
本発明によれば、表面層が少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化させた架橋性樹脂と、を含み、感光層中に特定の電荷輸送剤を含有させることにより、機械的耐久性を著しく向上させるともに、さまざまな使用環境下においても電気的特性が良好で残像などの劣化画像を抑制し、長期間にわたり高画質を実現した電子写真感光体を提供することができる。したがって、この感光体を用いることにより、長期的にかつ、さまざまな環境下において良好な画像を提供できる高性能で且つ信頼性の高い画像形成プロセス、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供できる。
本発明の電子写真感光体の層構成を示す図である。 本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。 本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。 本発明の実施例に用いた残像評価チャートである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送剤とを含有する感光層と表面層とを積層してなる電子写真感光体において、前記表面層が少なくとも(イ)電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、(ロ)1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化させた架橋性樹脂を含み、かつ前記電荷輸送剤が一般式(I)、または一般式(II)、または一般式(III)で表される化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体である。
Figure 2012078551

(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
Figure 2012078551

(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
Figure 2012078551

(式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
上記の化合物を電荷輸送層の電荷輸送剤として用いることで、電荷輸送層から架橋表面層への電荷注入性が向上し、長期的な繰り返し使用後や低温低湿環境下においても電気特性の劣化を防ぐことができる。また、長期的な繰り返し使用後の高温高湿下において膜の低抵抗化が起こり残像などが発生しやすくなるが、本発明の電荷輸送剤を用いることで残像を抑制することができる。
一般式(I)〜(III)において、特に次式(Ia)〜(Ie)、(IIa)〜(IIe)、(IIIa)〜(IIIe)に示す化合物が特に前記機能に優れ、好ましい。以下具体的化合物を示すがこれに限定されるものではない。
Figure 2012078551
Figure 2012078551
Figure 2012078551
また、本発明における電荷輸送層に他の電荷輸送剤を添加してもよい。他の電荷輸送剤としては、ポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物を用いることができる。又、低分子化合物として、トリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、ヒドラゾン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、スチルベン等を使用することができる。また、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸等の高分子化合物にLiイオン等の金属イオンをドープした高分子固体電解質等も用いることができる。さらに、テトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタンで代表される電子供与性化合物と電子受容性化合物で形成された有機電荷輸送錯体等も用いることができ、これらを1種だけ添加して又は2種以上の化合物を混合して添加してもよい。
本発明における電荷輸送層には、特性を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤等を添加して、感光体の特性、耐久性、機械特性の向上を図ることができる。
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で電荷輸送層に酸化防止剤を添加することが好ましい。本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明の電荷輸送層電子写真感光体に添加される紫外線吸収剤、酸化防止剤の添加量は、結着樹脂に電荷輸送剤100重量部に対して3〜20重量部とすることが好ましい。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送剤の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送剤を用いる場合は、単独で使用してもよく、結着樹脂と併用してもよい。
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いることができるが、電荷輸送剤及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
電荷輸送層には、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。
本発明の感光体の最表面層の形成においては、3官能以上のラジカル重合性モノマーを用いるものであり、これにより3次元の網目構造が発達し、架橋度が非常に高い高硬度表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。これに対し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーのみを用いた場合は、架橋表面層中の架橋結合が希薄となり飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。架橋表面層に高分子材料が含有されている場合、3次元網目構造の発達が阻害され架橋度の低下が起こり、本発明に比べ充分な耐摩耗性が得られない。更に、含有される高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーや電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との相溶性が悪く、相分離から局部的な摩耗が生じ、表面の傷となって現れる。
また、本発明の最表面層の形成においては、上記3官能性ラジカル重合性モノマーに加え、さらに1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送剤を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送剤の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する。一方、2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂中に歪みが発生し架橋表面層の内部応力が高くなり、キャリア付着等でクラックや傷の発生が頻発する。
更に、本発明の感光体は良好な電気的特性を有し、このため長期間にわたり高画質化が実現される。これは1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化したことに起因する。上記のように官能基を有しない電荷輸送剤は析出、白濁現象が起こり、感度の低下、残留電位の上昇等繰り返し使用における劣化が著しい。2官能以上の電荷輸送性化合物を主成分として用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こる。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細り等の画像として現れる。以下に本発明で用いた、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)と電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)を含有する架橋表面層塗布液の構成材料について説明する。
―電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)―
電荷輸構送造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾール等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しておらず、かつラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基等が挙げられる。
1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(1)で表される官能基が好適に挙げられる。
Figure 2012078551
ただし、前記一般式(1)中、X1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R30)−基(ただし、R30は、水素原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わす。)、又は−S−基を表わす。
これらの置換基としては、具体的には、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
1,1−置換エチレン官能基としては、例えば、下記一般式(2)で表される官能基が好適に挙げられる。
Figure 2012078551
ただし、前記一般式(2)中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR31基(ただし、R31は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、)又は−CONR3233(ただし、R32及びR33は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表し、互いに同一又は異なっていてもよい。)、また、X2は前記一般式(1)のX1と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表わす。
ただし、Y、X2の少なくともいずれか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
これらの置換基としては、例えばα−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX1、X2、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば、水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なってもよい。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)の具体例としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマー(イ)としては、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性(アルキレン変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性(エチレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性(プロピレンオキシ変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性(エピクロロヒドリン変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレート等が挙げられる。前記変性を行なった理由はモノマーの粘度を下げ、扱いやすくするためである。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)は、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。
架橋表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー(イ)の成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。モノマー成分が20質量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80質量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
―1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)―
本発明に用いられる1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、例えばトリアリールアミン構造、ヒドラゾン構造、ピラゾリン構造、カルバゾール構造等の正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環等の電子輸送構造を有しており、かつラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先にラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また、電荷輸送性構造としては、トリアリールアミン構造が効果が高い。
さらに、下記一般式(3)又は(4)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 2012078551
一般式(3)、(4)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR2(R2は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR34(R3及びR4は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わし、Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わし、mとnは0〜3の整数を表わす。
前記一般式(3)、(4)において、R1における、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていてもよい。R1のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わす。本発明においては該アリール基としては、縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基を含むものであり、以下の基が挙げられる。
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、As−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基。好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基には、さらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR)。Rは(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基。具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)下記式(α)で示されるす基。
Figure 2012078551
式中、R10及びR11は各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R10及びR11は共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
Xにおけるアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基には、さらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
Xにおけるシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的なシクロアルキレン基としてはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
Xにおけるアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
Xにおけるビニレン基は、下記の2つの構造式で表される。
Figure 2012078551
ただし、R12は水素、アルキル基〔前記(2)で定義されるアルキル基と同じ〕、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
Zは、置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、前記Xのアルキレンエーテル基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル基としては、カプロラクトン変性基が挙げられる。
本発明の1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)として、さらに好ましくは、下記一般式(5)の構造の化合物が挙げられる。
Figure 2012078551
式中、p、q、oはそれぞれ0または1の整数、R5は水素原子、メチル基を表わし、R6、R7は水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なってもよい。s、tは0〜3の整数を表わす。Z2は単結合、メチレン基、エチレン基、
Figure 2012078551
のいずれかを表わす。
上記一般式(5)で表わされる化合物としては、R6、R7の置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
本発明で用いる上記一般式(3)及び(4)、特に(5)で表される1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在する(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが、架橋される分子内架橋鎖とがある)が、主鎖中に存在する場合であっても、また架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず、鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため、立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。
また本発明においては下記一般式(6)で示した特定のアクリル酸エステル化合物も電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として良好に用いることができる。
1−Ar5−CH=CH−Ar6−B2 一般式(6)
Ar5は、置換基を持つ又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基、または二価基を表わす。芳香族炭化水素骨格としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、等が挙げられる。置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していてもよい。
Ar6は、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基、もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表わすが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(7)で表される。
Figure 2012078551
式中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表わす。Ar7はアリール基を表わす。wは1〜3の整数を表わす。
13、R14のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基は、Ar5の置換基で述べたアルキル基と同様である。
13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(8)で表される基を挙げることができる。
Figure 2012078551
式中、Bは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−及び以下の二価基から選ばれる。
Figure 2012078551
ここで、R21は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、Ar5で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表わす。
21のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
Ar7のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基を挙げることができる。
Ar7、R13、R14は、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、Ar5で定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
1、B2はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表わす。アルキル基、アルコキシ基は、Ar5で述べたものが同様に適用される。これらB1、B2はどちらか一方のみが存在し、両方の存在は除外される。
一般式(6)のアクリル酸エステル化合物と同様に下記一般式(9)の化合物も良好に用いることができる。
Figure 2012078551
一般式(9)中、R8、R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar7、Ar8は、置換もしくは無置換のアリール基またはアリーレン基、置換又は無置換のベンジル基を表わす。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記Ar5で述べたものが同様に適用される。
アリール基は、一般式(7)におけるR13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリーレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
1〜B4は、一般式(6)におけるB1、B2と同様の基を表し、いずれか1つのみが存在し、2つ以上の存在は除外される。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表わす。
特定のアクリル酸エステル化合物は、次のような特徴を有する。スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、架橋層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、さらに架橋結合間に固定化された場合でも、分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、ラジカル重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に有しており、ラジカル重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくすることがなく、しかも分子中の二重結合を使用するために分子量当りの架橋反応数を上げることができるために、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。このようなラジカル重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、一般式(6)特に一般式(9)に示したラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、かつ、クラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、かつシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
ラジカル重合性官能基の数については、架橋構造の均一性については官能基数の少ないものが好ましく、耐摩耗性については官能基数の多いものが好ましい。本発明においては、両者のバランスから良好に選択して使用することが可能である。
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物(ロ)は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20質量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇等の電気特性の劣化が現れる。また、80質量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概にはいえないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
本発明の表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
また、本発明の表面層は少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために重合開始剤を使用してもよい。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
更に、本発明の塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送剤などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層に酸化防止剤を添加することができる。本発明における架橋表面層に添加することができる酸化防止剤としては電荷輸送層に添加する酸化防止剤として挙げたものと同様のものを用いることができる。
本発明の架橋表面層における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%であることが好ましい。
本発明の架橋表面層は、少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有する塗工液を塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、外部からエネルギーを与え硬化させ、架橋表面層を形成するものであるが、このとき用いられる外部エネルギーとしては熱、光、放射線がある。熱のエネルギーを加える方法としては、空気、窒素などの気体、蒸気、あるいは各種熱媒体、赤外線、電磁波を用い塗工表面側あるいは支持体側から加熱することによって行なわれる。加熱温度は100℃以上、170℃以下が好ましく、100℃未満では反応速度が遅く、完全に反応が終了しない。170℃より高温では反応が不均一に進行し架橋表面層中に大きな歪みが発生する。硬化反応を均一に進めるために、100℃未満の比較的低温で加熱後、更に100℃以上に加温し反応を完結させる方法も有効である。
光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の荒れが激しくなる。放射線のエネルギーとしては電子線を用いるものが挙げられる。これらのエネルギーの中で 、反応速度制御の容易さ、装置の簡便さから熱及び光のエネルギーを用いたものが有用である。
光エネルギーまたは放射線エネルギーにより架橋表面層を硬化した場合は、硬化後に残留溶媒を除去するため、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の温度及び時間は、架橋表面層の塗工液に用いられた溶媒の沸点により任意に選択できるが、概ね100℃〜150℃、10分〜30分程度が好ましい。
架橋表面層の膜厚は、1μm〜8μm、好ましくは2μm〜6μmである。1μmより薄い場合、作像プロセスでの長期の使用により表面層が剥離する可能性がる。また、8μmより厚い場合、残留電位が増大し、画像濃度低下を引き起こす場合がある。
表面層塗工液に含有される組成物においては、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、あるいはバインダー樹脂を含有させることも感光体表面性、電気特性、あるいは耐久性を損なわない範囲であれば可能である。しかし、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有すると、電荷輸送性構造の嵩高さから硬化反応時に内部応力が発生し表面に凹凸が発生しやすくなる。また、塗工液にバインダー樹脂などの高分子材料を含有させると、ラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の硬化反応より生成した高分子との相溶性の悪さから相分離が生じ、架橋層表面の凹凸が激しくなる。したがって、2官能以上の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物、あるいはバインダー樹脂は使用しない方が好ましい。
塗工液の希釈溶媒については、下層を容易に溶解する溶媒を多量に用いると下層の樹脂バインダーや低分子電荷輸送剤などの組成物が最表面層に混入し、硬化反応の妨げになるばかりでなく、塗工液中に予め非硬化材料を多量に含有させた場合と同様な状態となり架橋表面の乱れの原因となる。逆に、下層を全く溶解しない溶媒を使用した場合、架橋表面層と下層の接着性が低下し、硬化反応時の体積収縮から架橋表面層にクレーター状のはじきが現れ表面粗さが激しくなる。これらの対策としては、混合溶媒を使用し下層の溶解性をコントロールする、液組成や塗工法により塗工最表面層に含有される溶媒量を低減する、下層に高分子電荷輸送剤などを用い下層成分の混入を抑える、下層と架橋表面層の間に溶解性の低い中間層や良好な接着性の中間層を設ける、などが挙げられる。
本発明の架橋表面層においては、電気的特性を維持するため嵩高い電荷輸送性構造を含有させ、且つ高強度化のため架橋結合密度を高める必要がある。この様な表面層塗工後の硬化にあたっては、非常に高いエネルギーを外部から加え急激に反応を進めると、硬化が不均一に進行し架橋膜表面の凹凸が激しくなる。このため加熱条件、光の照射強度、重合開始剤量により反応速度制御が可能な熱や光の外部エネルギーを用いたものが好ましい。
<電子写真感光体の層構造>
本発明の電子写真感光体の層構造を図1に基づいて説明する。
図1は、電子写真感光体の層構造を表わす部分断面図である。図1(A)は導電性支持体(31)上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層(32)が設けられた単層構造の感光層に、架橋表面層(33)が積層した感光体である。図1(B)は、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(34)と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層(35)とが積層された積層構造の感光層に、架橋表面層(33)が積層した感光体である。
(導電性支持体)
導電性支持体(31)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特公昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体(31)として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体(31)として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体(31)として良好に用いることができる。
(感光層)
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
(積層構造の感光層)
(電荷発生層)
電荷発生層(34)は、電荷発生機能を有する電荷発生剤を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生剤としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生剤は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(34)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送剤、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
電荷発生層(34)には低分子電荷輸送剤を含有させることができる。電荷発生層(34)に併用できる低分子電荷輸送剤には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体、ジスチリル誘導体等、挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層(34)を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
溶液分散系からのキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生剤を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
(電荷輸送層)
電荷輸送層(35)は電荷輸送機能を有する層であり、電荷輸送機能を有する電荷輸送剤および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層(34)上に塗布、乾燥することにより形成する。既に示したように、本発明においては一般式(I)、(II)、(III)で表される電荷輸送剤が含有される。特に既に示した式(Ia)〜(Ie)、(IIa)〜(IIe)、(IIIa)〜(IIIe)で表わされる電荷輸送剤により応答性のよい電子写真感光体が提供できる。また本発明の電荷輸送層に他の電荷輸送剤、酸化防止剤、可塑剤などを添加してもよい。電荷輸送層の形成には浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができ、膜厚は5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
(単層構造の感光層)
単層構造の感光層(32)は、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層であり、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生剤と電荷輸送機能を有する電荷輸送剤と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。本発明においては既に述べた一般式(I)〜(III)で表される電荷輸送剤が含有される。また、電荷発生剤の分散方法、それぞれ電荷発生剤、電荷輸送剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、軟化剤、硬化剤、架橋剤、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層(34)、電荷輸送層(35)において既に述べたものと同様なものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層(35)の説明で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層(34)で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。単層構造の感光層中に含有される電荷発生剤は感光層全量に対し1〜30質量%が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は全量の20〜80質量%、電荷輸送剤は10〜70質量%が良好に用いられる。感光層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
(下引き層)
本発明の感光体の製造方法においては、導電性支持体(31)と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤については既に示したものが使用できる。
<画像形成方法及び装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、本発明は平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
図2は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラーが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、 ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図3に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101)を内蔵し、他に帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
<1官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成例>
本発明における1官能の電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。また、下記にこの一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。
融点:64.0〜66.0℃
Figure 2012078551
Figure 2012078551
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(例示化合物(1))の合成)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして例示化合物(1)の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。
融点:117.5〜119.0℃
Figure 2012078551
Figure 2012078551
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて重量部を表わす。
<実施例1>
φ40mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
メチルエチルケトン 50部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(C)のチタニルフタロシアニン顔料: 1.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製): 1.0部
メチルエチルケトン: 80部
Figure 2012078551
次に電荷発生層上に電荷輸送層を形成した。電荷輸送層用塗工液は下記組成で調製した。電荷輸送層には、式(Ia)で表わされる電荷輸送物剤を使用した。電荷発生層を形成した基体を該電荷輸送層用塗工液に浸漬塗工し、130℃で20分乾燥し膜厚23μmの電荷輸送層を形成した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
式(Ia)で表される電荷輸送剤 10部
結着樹脂
ビスフェノールZポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
酸化防止剤
2.6−ジ−tert-ブチル-4-メチルフェノール 0.5部
(和光純薬工業製)
溶媒
テトラヒドロフラン 100部
可塑剤
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
さらに電荷輸送層上に架橋表面層を形成した。架橋表面層用塗工液は下記組成で調製した。架橋表面層用塗工液を電荷輸送層上にスプレー塗工し、紫外線照射装置Fusion製UVランプシステムを用い、支持体を30rpmで回転させながら紫外線照射を行い、硬化させた。紫外線照射のランプにはVバルブを使用し、紫外線ランプと感光体表面の距離を53mm、照射強度を500mW/cm2とし、60秒間の紫外線照射を行い、塗布膜を硬化させた。紫外線照射後は、130℃20分の乾燥を加え、膜厚5μmの表面層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔架橋表面層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物(1))
光重合開始剤 2部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
<実施例2>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(Ib)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例3>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(Ic)に変更し、酸化防止剤をジステアリル3,3´チオジプロピオネート(セミライザーTPS 住友化学製)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例4>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(Id)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例5>
実施例3で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(Ie)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例6>
実施例1で用いた架橋強表面層の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を例示化合物(2)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<実施例7>
実施例1で用いた架橋強表面層の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記の化合物に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー
ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート 10部
(KAYARAD DPCA−120、日本化薬製、官能基数:6官能)
<実施例8>
実施例1で用いた架橋表面層の光重合開始剤を以下の熱重合開始剤に変更し、塗工後は紫外線照射を行わずに130℃30分の乾燥を行い、架橋表面層を設けた。それ以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
熱重合開始剤: 1部
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシ)プロパン
(パーカドックス 12−EB20 化薬アクゾ製)
<実施例9>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIa)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例10>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIb)に変更し、酸化防止剤を添加しなかった以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例11>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIc)に変更し、架橋強表面層の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記の化合物に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(ヘキサアクリレート(a=5、b=1)とペンタアクリレート(a=6、b=0)の質量比1:1混合物)
(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)
(官能基数:5官能化合物と6官能化合物(質量比1:1))
<実施例12>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IId)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例13>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIe)に変更し、酸化防止剤をサノールLS2626(チバ・ジャパン製)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例14>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIIa)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例15>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIIb)に変更し、酸化防止剤を添加しなかった以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例16>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIIc)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例17>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIId)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<実施例18>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を(IIIe)に変更し、酸化防止剤をDP−45(ADEKA製)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例1>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を下記構造の電荷輸送剤に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例2>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を下記構造の電荷輸送剤に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例3>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を下記構造の電荷輸送剤に変更し、酸化防止剤をジステアリル3,3´チオジプロピオネート(セミライザーTPS 住友化学製)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例4>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を下記構造の電荷輸送剤に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例5>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を下記構造の電荷輸送剤に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例6>
実施例1で用いた電荷輸送層の式(Ia)で表される電荷輸送剤を下記構造の電荷輸送剤に変更し、酸化防止剤をサノールLS2626(チバ・ジャパン製)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例7>
実施例1で用いた架橋表面層の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物をなくし、電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを20部に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
<比較例8>
実施例1で用いた電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーを下記構造式の2官能のラジカル重合性モノマー(A−MPD、東亜合成製)に変更した以外は全て実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
Figure 2012078551
<比較例9>
実施例1において電荷輸送層の膜厚を28μmとし、架橋表面層を設けずに電子写真感光体を作製した。
[評価]
実施例1〜19、比較例1〜9の電子写真感光体について、リコー製imagioMPC4500に感光体を搭載し、A4用紙10万枚の通紙を行った。プロセスカートリッジの現像ユニット位置に電位センサー(Trek社製表面電位計Model344)を取り付け、通紙前後での常温常湿環境下(23℃55%)、低温低湿環境下(10℃15%)において、画像面積率100%の画像を出力し、そのときの露光部電位の測定を行った。また通紙前後での常温常湿環境下、高温高湿環境下(30℃90%)において図4に示す残像評価用チャートを出力し、下記の評価基準で残像評価を行った。
(残像評価基準)
◎:残像発生なし
○:僅かに残像発生したが、品質上問題無い
△:残像が発生
×:強度の残像が発生
さらに、通紙後の感光体の摩耗量を測定した。摩耗量は、渦電流式膜厚計フィッシャースコープMMS(フィッシャー製)を用い、軸方向に10mm間隔で30点を測定し、それらの平均値を膜厚とし、前後の膜厚差から求めた。
表3に露光部電位(−V)、表4に残像評価、表5に摩耗量の結果を示す。
Figure 2012078551
Figure 2012078551
Figure 2012078551
表3、4、5の結果より本発明の電荷輸送剤を使用し、本発明の架橋表面層を有する感光体は、繰り返し使用後および低温低湿下においても電気特性が良好で、残像も未発生であり、かつ耐摩耗性も高いことが確認された。
本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性が高く、繰り返し使用後やさまざまな環境下においても電気特性が良好で残像などの劣化画像を抑制し、長期間にわたり高画質化を実現した電子写真感光体を提供できるので、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができる。
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
101 感光体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段
特開昭56−48637号公報 特開昭64−1728号公報 特開平4−281461号公報 特許第3262488号公報 特許第3194392号公報 特開2000−66425号公報 特開2004−302450号公報 特開2004−302451号公報 特開2004−302452号公報 特開平3−75660号公報 特開平5−6011号公報 特開平11−149170号公報 特開2004−279939号公報

Claims (9)

  1. 導電性支持体上に少なくとも感光層と表面層とを積層してなる電子写真感光体において、前記表面層が少なくとも、(イ)電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと、(ロ)1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物と、を硬化させた架橋性樹脂を含み、かつ前記感光層が下記一般式(I)、または一般式(II)、または一般式(III)で表される電荷輸送剤を含有することを特徴とする電子写真感光体。
    Figure 2012078551

    (式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
    Figure 2012078551

    (式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
    Figure 2012078551

    (式中、R〜Rは、各々独立に水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。)
  2. 前記感光層が、酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 前記表面層が、紫外線照射により硬化され形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記(ロ)のラジカル重合性化合物の電荷輸送性構造が、トリアリールアミン構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
  5. 前記(ロ)のラジカル重合性化合物が、アクリロイルオキシ基およびメタクリルイルオキシ基よりなる群から選ばれた官能基を有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体。
  6. 前記(イ)の3官能以上のラジカル重合性モノマーが、アクリロイルオキシ基およびメタクリルイルオキシ基よりなる群から選ばれた官能基を3個以上有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体と、電子写真感光体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、電子写真感光体上の転写残トナーを取り除くクリーニング手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体を用い、電子写真感光体表面上に静電潜像を形成し、前記静電潜像を、トナーを用いて現像して可視像を形成し、前記可視像を記録媒体に転写し、クリーニング手段が電子写真感光体表面上の転写残トナーを取り除くことを特徴とする画像形成方法。
  9. 画像形成装置へ組み込むプロセスカートリッジであって、静電潜像形成手段、露光手段、現像手段、転写手段、及びクリーニング手段の少なくとも1つと、請求項1〜6のいずれかに記載の電子写真感光体とが一体に支持されて、画像形成装置に着脱可能なことを特徴とするプロセスカートリッジ。
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CN110209019A (zh) * 2018-02-28 2019-09-06 佳能株式会社 处理盒和图像形成设备

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